IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

特開2024-166874レーザー干渉計およびレーザー干渉計の光軸調整方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166874
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】レーザー干渉計およびレーザー干渉計の光軸調整方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 9/02061 20220101AFI20241122BHJP
【FI】
G01B9/02061
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083266
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】北川 潤
(72)【発明者】
【氏名】林 暢仁
(72)【発明者】
【氏名】山田 耕平
【テーマコード(参考)】
2F064
【Fターム(参考)】
2F064AA15
2F064BB03
2F064CC07
2F064EE01
2F064FF01
2F064GG20
2F064GG23
2F064GG34
2F064GG38
2F064GG39
2F064HH03
2F064HH08
(57)【要約】
【課題】干渉縞の発生が抑制され、受光信号におけるS/N比の低下の抑制が図られているレーザー干渉計、および、かかるレーザー干渉計の光軸の調整を効率よく行うことができるレーザー干渉計の光軸調整方法を提供すること。
【解決手段】レーザー光を射出するレーザー光源、レーザー光の周波数を変調し、参照光を生成する光変調器、レーザー光が対象物に照射されて生成される物体光および参照光を受光し、受光信号を出力する受光素子、受光素子に入射する光路上に配置され、参照光の光軸に対する物体光の光軸の位置ずれを検出する第1開口素子、および、受光信号に基づいて参照光の光軸に対する物体光の光軸の角度ずれを検出する角度ずれ検出部、を有し、非同軸光学系である光干渉部と、位置ずれの検出結果および角度ずれの検出結果に基づいて、光干渉部と対象物との相対的な配置を変更する指示を出す指示部と、を備えるレーザー干渉計。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を射出するレーザー光源、
前記レーザー光の周波数を変調し、参照光を生成する光変調器、
前記レーザー光が対象物に照射されることによって生成される物体光および前記参照光を受光し、受光信号を出力する受光素子、
前記物体光および前記参照光が前記受光素子に入射する光路上に配置され、前記参照光の光軸に対する前記物体光の光軸の位置ずれを検出する第1開口素子、および、
前記受光信号に基づいて、前記参照光の光軸に対する前記物体光の光軸の角度ずれを検出する角度ずれ検出部、
を有し、非同軸光学系である光干渉部と、
前記位置ずれの検出結果および前記角度ずれの検出結果に基づいて、前記光干渉部と前記対象物との相対的な配置を変更する指示を出す指示部と、
を備えることを特徴とするレーザー干渉計。
【請求項2】
前記第1開口素子は、
前記参照光および前記物体光が通過する第1開口と、
前記第1開口に隣り合う位置に設けられ、前記参照光の光軸に対して光軸の位置がずれた前記物体光を検出する光検出領域と、
を有する請求項1に記載のレーザー干渉計。
【請求項3】
前記指示部は、前記対象物に対する前記光干渉部の相対的な変位方向を指示する請求項1または2に記載のレーザー干渉計。
【請求項4】
前記第1開口素子と前記受光素子との間に配置される絞り素子を備え、
前記絞り素子は、前記第1開口を通過した前記参照光および前記物体光が通過する貫通孔を有する請求項1または2に記載のレーザー干渉計。
【請求項5】
前記第1開口素子と前記絞り素子との間に配置され、前記第1開口を通過した前記参照光および前記物体光を前記貫通孔に集光させる集光レンズを備える請求項4に記載のレーザー干渉計。
【請求項6】
前記絞り素子と前記受光素子との間に配置され、前記貫通孔を通過した前記参照光および前記物体光を平行化させる平行化レンズを備える請求項5に記載のレーザー干渉計。
【請求項7】
前記第1開口素子と前記受光素子との間に配置される第2開口素子を備え、
前記第2開口素子は、前記第1開口を通過した前記参照光の光軸に対する、前記第1開口を通過した前記物体光の光軸の位置ずれを検出する請求項1または2に記載のレーザー干渉計。
【請求項8】
レーザー干渉計の光軸調整方法であって、
前記レーザー干渉計は、
レーザー光を射出するレーザー光源、
前記レーザー光の周波数を変調し、参照光を生成する光変調器、
前記レーザー光が対象物に照射されることによって生成される物体光および前記参照光を受光し、受光信号を出力する受光素子、
前記物体光および前記参照光が前記受光素子に入射する光路上に配置され、前記参照光の光軸に対する前記物体光の光軸の位置ずれを検出する第1開口素子、および、
前記受光信号に基づいて、前記参照光の光軸に対する前記物体光の光軸の角度ずれを検出する角度ずれ検出部、
を有し、非同軸光学系である光干渉部を備え、
前記位置ずれの検出結果および前記角度ずれの検出結果に基づいて、前記光干渉部と前記対象物との相対的な配置を変更する指示を出すステップと、
前記指示に基づいて、前記配置を変更するステップと、
を有することを特徴とするレーザー干渉計の光軸調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー干渉計およびレーザー干渉計の光軸調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、物体の振動速度を測定する装置として、レーザー振動計が開示されている。このレーザー振動計では、被測定物にレーザー光を照射し、ドップラーシフトを受けた散乱レーザー光に基づいて、振動速度を計測する。
【0003】
特許文献1に記載のレーザー振動計は、所定の周波数を発生させる振動素子を備える。この振動素子は、その振動周波数に基づいて、入射するレーザー光の周波数をシフトさせ、入射レーザー光とは異なる周波数の反射レーザー光を生成する。レーザー振動計では、この反射レーザー光を、参照光として用いる。そして、被測定物に由来する散乱レーザー光と、参照光と、が合波された光を光検出器で受光することにより、ビート信号を電気的に取り出す。そして、このビート信号から被測定物の振動速度を計測する。
【0004】
しかしながら、レーザー光源では、戻り光が侵入することにより、レーザー発振が不安定になることがある。戻り光とは、レーザー光源から射出されたレーザー光が、光学部品で反射されたとき、意図せず、レーザー光源に向かって戻る光のことをいう。レーザー発振が不安定になると、レーザー光の品質が低下する。これにより、レーザー振動計では、S/N比(信号対雑音比)の低下や、レーザー光の位相の不連続化を招く。その結果、物体の振動速度の計測精度が低下する。
【0005】
戻り光を抑制する技術として、非同軸光学系が知られている。非同軸光学系は、光学部品に入射する光(入射光)と、この光が光学部品で反射してなる光(反射光)と、が互いに異なる軸に沿って伝搬するように、光学部品の反射面を傾けた光学系である。反射面を傾けることにより、反射光の一部がレーザー光源に向かって戻ったとしても、レーザー光源からずれた位置に戻ることになる。このため、レーザー光源の光出射部に戻り光が侵入するのを抑制することができる。
【0006】
以上のような非同軸光学系をレーザー振動計に適用すれば、戻り光に伴うレーザー発振の不安定化を抑制できると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-285898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載のレーザー振動計に非同軸光学系を適用する場合、被測定物に由来する散乱レーザー光(物体光)と、参照光と、が合波され、光検出器で受光される。このとき、物体光の光軸と参照光の光軸とが非平行である場合、両者のビームが重なった領域(重なり領域)で干渉が生じる。ビーム同士の光軸が平行である場合、重なり領域の各点で光路長に差がないため、干渉状態にも差は生じない。ところが、ビーム同士の光軸が非平行である場合、重なり領域の各点で光路長に差が生じ、干渉状態にも差が生じる。このため、各光軸に交差する観察面で観察した場合、明暗の縞(干渉縞)が観測されることになる。
【0009】
光検出器は、この観察面に置かれることになるため、干渉縞の強度が積算、平均化されて検出される。このため、明暗の縞の強度が互いに打ち消し合い、受光信号のS/N比が低くなる。
【0010】
そこで、非同軸光学系の重なり領域において、干渉縞が発生するのを抑制するように光軸の調整を行い、受光信号におけるS/N比の低下を抑制することが課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の適用例に係るレーザー干渉計は、
レーザー光を射出するレーザー光源、
前記レーザー光の周波数を変調し、参照光を生成する光変調器、
前記レーザー光が対象物に照射されることによって生成される物体光および前記参照光を受光し、受光信号を出力する受光素子、
前記物体光および前記参照光が前記受光素子に入射する光路上に配置され、前記参照光の光軸に対する前記物体光の光軸の位置ずれを検出する第1開口素子、および、
前記受光信号に基づいて、前記参照光の光軸に対する前記物体光の光軸の角度ずれを検出する角度ずれ検出部、
を有し、非同軸光学系である光干渉部と、
前記位置ずれの検出結果および前記角度ずれの検出結果に基づいて、前記光干渉部と前記対象物との相対的な配置を変更する指示を出す指示部と、
を備える。
【0012】
本発明の適用例に係るレーザー干渉計の光軸調整方法は、
レーザー干渉計の光軸調整方法であって、
前記レーザー干渉計は、
レーザー光を射出するレーザー光源、
前記レーザー光の周波数を変調し、参照光を生成する光変調器、
前記レーザー光が対象物に照射されることによって生成される物体光および前記参照光を受光し、受光信号を出力する受光素子、
前記物体光および前記参照光が前記受光素子に入射する光路上に配置され、前記参照光の光軸に対する前記物体光の光軸の位置ずれを検出する第1開口素子、および、
前記受光信号に基づいて、前記参照光の光軸に対する前記物体光の光軸の角度ずれを検出する角度ずれ検出部、
を有し、非同軸光学系である光干渉部を備え、
前記位置ずれの検出結果および前記角度ずれの検出結果に基づいて、前記光干渉部と前記対象物との相対的な配置を変更する指示を出すステップと、
前記指示に基づいて、前記配置を変更するステップと、
を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係るレーザー干渉計を示す機能ブロック図である。
図2図1のレーザー干渉計が備えるセンサーヘッド部を示す概略構成図である。
図3図2に示す振動素子の構成例を示す斜視図である。
図4図2に示す振動素子の他の構成例を示す斜視図である。
図5図2に示す第1開口素子および受光素子を検光子側から見た斜視図である。
図6図2に示す受光素子で発生する参照光と物体光の位置ずれおよび角度ずれのイメージ、ならびに、それに伴う影響について列挙した表である。
図7】受光信号のAC成分の一例を示す波形である。
図8】実施形態に係るレーザー干渉計の光軸調整方法の構成を示すフローチャートである。
図9図5に示す物体光の照射位置が、方向a~fの6方向に移動する例を模式的に示す斜視図である。
図10】物体光の照射位置が図9に示す方向a~fの6方向に移動するとき、正規化座標(X,Y)のX座標およびY座標の経時変化を示すグラフである。
図11図7のAC振幅が最大になる場合の配置例を模式的に示す図である。
図12図11に示す配置例よりもAC振幅が小さくなる場合の配置例を模式的に示す図である。
図13図12の配置例の場合に観測される受光信号のAC振幅およびDCレベルの一例を示す波形である。
図14】第1変形例に係るレーザー干渉計が備える干渉光学系の一部を示す概略構成図である。
図15図14の第1開口素子、絞り素子および受光素子を示す斜視図である。
図16】第1変形例に係るレーザー干渉計の光軸調整方法の構成を示すフローチャートである。
図17】第2変形例に係るレーザー干渉計が備える干渉光学系の一部を示す概略構成図である。
図18図17の第1開口素子、第2開口素子および受光素子を示す斜視図である。
図19】第2変形例に係るレーザー干渉計の光軸調整方法の構成を示すフローチャートである。
図20図17の第2変形例に係るレーザー干渉計が備える干渉光学系を示す概略構成図において、物体光が辿る光跡が異なる3例を比較した図である。
図21】第3変形例に係るレーザー干渉計が備える干渉光学系の一部を示す概略構成図である。
図22】第3変形例に係るレーザー干渉計の光軸調整方法の構成を示すフローチャートである。
図23】第4変形例に係るレーザー干渉計が備える干渉光学系の一部を示す概略構成図である。
図24】第5変形例に係るレーザー干渉計が備える干渉光学系の一部を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のレーザー干渉計およびレーザー干渉計の光軸調整方法を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1は、実施形態に係るレーザー干渉計1を示す機能ブロック図である。図2は、図1のレーザー干渉計1が備えるセンサーヘッド部51を示す概略構成図である。
【0016】
図1に示すレーザー干渉計1は、図2に示す対象物14および光変調器12にレーザー光を照射する。そして、対象物14から出射したレーザー光および光変調器12から出射したレーザー光を干渉させ、干渉光を受光素子10で受光する。そして、光ヘテロダイン干渉法により、対象物14に由来する情報を取り出し、その情報に基づいて、対象物14の変位や速度を計測する。
【0017】
図1に示すレーザー干渉計1は、センサーヘッド部51と、本体部59と、を備える。
図1に示すセンサーヘッド部51は、干渉光学系50(光干渉部)および信号生成部60を備える。センサーヘッド部51は、小型化および軽量化が容易で、可搬性および設置容易性を持たせやすいため、例えばレーザー干渉計1による計測対象である、図2に示す対象物14の近くに配置可能である。
【0018】
本体部59は、復調演算部52と、第1位置ずれ算出部56と、角度ずれ検出部57と、指示部58と、を備える。本体部59は、センサーヘッド部51と一体になっていてもよいが、センサーヘッド部51から離して配置可能であり、例えばラック等に収容可能な据置型であってもよいし、持ち運び可能な可搬型であってもよい。また、本体部59が備える上記の各機能部の少なくとも1つは、センサーヘッド部51に配置されていてもよい。
【0019】
1.レーザー干渉計
図1に示すセンサーヘッド部51は、干渉光学系50および信号生成部60を備える。
【0020】
1.1.干渉光学系
図2に示す干渉光学系50は、マイケルソン型干渉光学系である。干渉光学系50は、レーザー光源2と、コリメートレンズ3と、遮蔽素子17、光分割器4と、1/2波長板6と、1/4波長板7と、1/4波長板8と、検光子9と、受光素子10と、第1開口素子11と、光変調器12と、を備える。
【0021】
レーザー光源2は、レーザー光である射出光L1を射出する。受光素子10は、受光した干渉光を電気信号に変換する。光変調器12は、振動素子30を備えており、射出光L1の周波数を変化させ、変調成分を含むレーザー光である参照光L2を生成する。変調成分は、光変調器12によって射出光L1に付加される周波数成分の変化である。対象物14に入射した射出光L1は、対象物14に由来するサンプル由来成分を含むレーザー光である物体光L3として反射する。サンプル由来成分は、対象物14の変位に伴うドップラー信号であって、射出光L1に付加される周波数成分の変化である。
【0022】
光分割器4とレーザー光源2とを結ぶ光路を、光路18とする。光分割器4と光変調器12とを結ぶ光路を、光路20とする。光分割器4と対象物14とを結ぶ光路を、光路22とする。光分割器4と受光素子10とを結ぶ光路を、光路24とする。なお、本明細書の「光路」は、光学部品同士の間に設定された、光が進行する経路を指している。
【0023】
光路18上には、光分割器4側から1/2波長板6、遮蔽素子17およびコリメートレンズ3がこの順で配置されている。光路20上には、1/4波長板8が配置されている。光路22上には、1/4波長板7が配置されている。光路24上には、光分割器4側から検光子9および第1開口素子11がこの順で配置されている。
【0024】
レーザー光源2から射出された射出光L1は、光路18を経て、光分割器4で2つに分割される。射出光L1の一部である第1分割光L1aは、光路20を経て、光変調器12に入射する。また、射出光L1の別の一部である第2分割光L1bは、光路22を経て、対象物14に入射する。光変調器12で周波数がシフトして生成された参照光L2は、光路20および光路24を経て、受光素子10に入射する。対象物14での反射により生成された物体光L3は、光路22および光路24を経て、受光素子10に入射する。
【0025】
なお、本明細書の「光路」は、光学部品同士の間に設定された、光が進行する経路を指している。また、後述する「光軸」とは、光路に沿って進行する光束の中心軸を指している。
【0026】
以上のような干渉光学系50では、光ヘテロダイン干渉法により、対象物14の位相情報を求める。具体的には、周波数がわずかに異なる2つの光(参照光L2および物体光L3)を干渉させ、得られた干渉光から位相情報を取り出す。そして、後述する復調演算部52において位相情報から対象物14の変位を求める。光ヘテロダイン干渉法によれば、干渉光から位相情報を取り出すとき、外乱の影響、特にノイズとなる迷光の影響を受けにくく、高いロバスト性が与えられる。
【0027】
また、干渉光学系50は、非同軸光学系になっている。非同軸光学系では、光路20を通過する第1分割光L1aの光軸および参照光L2の光軸が、互いにずれている。また、光路22を通過する第2分割光L1bの光軸および物体光L3の光軸も、互いにずれている。このような非同軸光学系によれば、仮に、参照光L2が、光分割器4で反射された後、意図せず、戻り光L5としてレーザー光源2に向かった場合でも、射出光L1の出射部からずれた位置に到達することになる。また、物体光L3が、光分割器4を透過した後、戻り光L5としてレーザー光源2に向かった場合も、射出光L1の出射部からずれた位置に到達することになる。このため、レーザー光源2におけるレーザー発振の不安定化を抑制できる。なお、出射部とは、射出光L1が射出される面を指す。
【0028】
以下、干渉光学系50の各部についてさらに説明する。
1.1.1.レーザー光源
レーザー光源2は、可干渉性を有する射出光L1を射出するレーザー光源である。レーザー光源2には、線幅がMHz帯以下の光源が好ましく用いられる。具体的には、He-Neレーザーのようなガスレーザー、DFB-LD(Distributed FeedBack - Laser Diode:分布帰還型レーザーダイオード)、FBG-LD(Fiber Bragg Grating Laser Diode:ファイバーブラッググレーティング付きレーザーダイオード)、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:垂直共振器面発光レーザーダイオード)、FP-LD(Fabry-Perot Laser Diode:ファブリーペロー型半導体レーザーダイオード)のような半導体レーザー素子等が挙げられる。
【0029】
レーザー光源2は、特に半導体レーザー素子であるのが好ましい。これにより、レーザー光源2を特に小型化することが可能になる。このため、レーザー干渉計1の小型化を図ることができる。特に、レーザー干渉計1のうち、干渉光学系50が収容されるセンサーヘッド部51の小型化および軽量化が図られるため、センサーヘッド部51の設置自由度といった、レーザー干渉計1の操作性を高められる点で有用である。
【0030】
1.1.2.コリメートレンズ
コリメートレンズ3は、レーザー光源2と光分割器4との間に配置される光学素子であり、一例として非球面レンズが挙げられる。コリメートレンズ3は、レーザー光源2から射出された射出光L1を平行化する。なお、レーザー光源2から射出される射出光L1が十分に平行化されている場合、例えばHe-Neレーザーのようなガスレーザーをレーザー光源2として用いた場合には、コリメートレンズ3が省略されていてもよい。
【0031】
一方、レーザー光源2が半導体レーザー素子である場合には、コリメートレンズ3を設けることが好ましい。これにより、射出光L1がコリメート光になるため、射出光L1を受光する各種光学部品の大型化を抑制することができ、レーザー干渉計1の小型化を図ることができる。
【0032】
コリメート光となった射出光L1は、1/2波長板6を通過することにより、P偏光とS偏光の強度比が例えば50:50である直線偏光に変換され、光分割器4に入射する。
【0033】
1.1.3.遮蔽素子
遮蔽素子17は、コリメートレンズ3と光分割器4との間に配置される絞りである。遮蔽素子17は、光路18に対応して設けられた開口172を有する。遮蔽素子17は、図2に示すように、戻り光L5がレーザー光源2に入射するのをより確実に抑制する。なお、遮蔽素子17は、スリットやピンホール等を備える部材であればよく、その構造は特に限定されない。また、遮蔽素子17は、必要に応じて設けられればよく、遮蔽素子17がなくても戻り光L5の出射部への入射を防止できる場合には、省略されていてもよい。
【0034】
1.1.4.光分割器
光分割器4は、レーザー光源2と光変調器12との間、および、レーザー光源2と対象物14との間に配置される偏光ビームスプリッターである。光分割器4は、P偏光を透過し、S偏光を反射させる機能を有する。この機能により、光分割器4は、射出光L1を、光分割器4での反射光である第1分割光L1a、および、光分割器4の透過光である第2分割光L1b、に分割する。
【0035】
光分割器4で反射したS偏光である第1分割光L1aは、1/4波長板8で円偏光に変換され、光変調器12に入射する。光変調器12に入射した第1分割光L1aは、f[Hz]の周波数シフトを受け、参照光L2として反射する。したがって、参照光L2は、周波数f[Hz]の変調成分を含む。参照光L2は、再び1/4波長板8を透過するときP偏光に変換される。参照光L2のP偏光は、光分割器4および検光子9を透過して受光素子10に入射する。
【0036】
光分割器4を透過したP偏光である第2分割光L1bは、1/4波長板7で円偏光に変換され、動いている状態の対象物14に入射する。対象物14に入射した第2分割光L1bは、f[Hz]のドップラーシフトを受け、物体光L3として反射する。したがって、物体光L3は、周波数f[Hz]のサンプル由来成分を含む。物体光L3は、再び1/4波長板7を透過するときS偏光に変換される。物体光L3のS偏光は、光分割器4で反射され、検光子9を透過して受光素子10に入射する。
【0037】
射出光L1は可干渉性を有しているため、参照光L2および物体光L3は、干渉光として受光素子10に入射する。したがって、光分割器4は、換言すれば、射出光L1を一部(第1分割光L1a)および別の一部(第2分割光L1b)に分割する機能、第1分割光L1aを光変調器12に照射させ、第2分割光L1bを対象物14に照射させる機能、および、光変調器12から戻ってきた参照光L2および対象物14から戻ってきた物体光L3を混合する機能、を有する。これにより、光分割器4でレーザー光の分割、混合を行えるため、干渉光学系50の省スペース化を図ることができ、レーザー干渉計1の小型化に寄与できる。
【0038】
なお、偏光ビームスプリッターに代えて無偏光ビームスプリッターを用いるようにしてもよい。この場合、1/2波長板6、1/4波長板7および1/4波長板8等が不要となるため、部品点数の削減によるレーザー干渉計1の小型化を図ることができる。また、ビームスプリッター以外の光分割器を用いるようにしてもよい。
【0039】
1.1.5.検光子
互いに直交するS偏光およびP偏光は、互いに独立しているので、単純に重ね合わせただけでは干渉によるうなりが現れない。そこで、S偏光とP偏光を重ね合わせた光波を、S偏光およびP偏光の双方に対して45°傾けた検光子9に通す。検光子9を用いることにより、互いに共通した成分同士の光を透過させ、干渉を生じさせることができる。その結果、検光子9では、参照光L2と物体光L3とが干渉し、|f-f|[Hz]の周波数を持つ干渉光が生成される。
【0040】
1.1.6.受光素子
干渉光が受光素子10に入射すると、受光素子10は、干渉光の強度に応じた光電流(受光信号)を出力する。この受光信号から後述する方法でサンプル由来成分を復調することにより、最終的に、対象物14の動き、すなわち変位や速度を求めることができる。受光素子10としては、例えばフォトダイオード等が挙げられる。なお、受光素子10で受光するのは、サンプル由来成分および変調成分を含む光であればよく、上記のような変調成分を含む参照光L2とサンプル由来成分を含む物体光L3との干渉光に限定されない。また、本明細書における「受光信号からサンプル由来成分を復調する」には、光電流(受光信号)から変換された様々な信号からサンプル由来成分を復調することを含む。
【0041】
1.1.7.光変調器
次に、振動素子30を備える光変調器12について説明する。
【0042】
図2に示す光変調器12は、振動素子30を有する。振動素子30は、駆動信号Sdにより振動する。また、振動素子30は、レーザー光源2から射出された射出光L1を反射する。これにより、射出光L1の周波数がシフトし、変調成分を含む参照光L2が生成される。つまり、光変調器12は、射出光L1の周波数を変調する。
【0043】
振動素子30としては、例えば、水晶振動子、シリコン振動子、セラミック振動子、ピエゾ素子等が挙げられる。このうち、振動素子30は、水晶振動子、シリコン振動子またはセラミック振動子であるのが好ましい。これらの振動子は、その他の振動子、例えばピエゾ素子等とは異なり、機械共振現象を利用した振動子であるため、Q値が高く、固有振動数の安定化を容易に図ることができる。
【0044】
また、振動素子30を有する光変調器12によれば、例えば音響光学変調器(Acousto-Optics Modulator:AOM)や電気光学変調器(Electro-Optic Modulator:EOM)を有する光変調器に比べて、体積や重量を大きく削減することができる。このため、レーザー干渉計1の小型化、軽量化および低消費電力化を図ることができる。なお、これらの効果が多少低下してもよい場合には、AOMやEOMを用いた光変調器で上記の光変調器12が置き換えられていてもよい。
【0045】
光変調器12としては、例えば、特開2022-38156号公報に開示されている光変調器が挙げられる。この公報には、振動素子として水晶AT振動子が挙げられている。また、振動素子30には、SCカット水晶振動子、音叉型水晶振動子、水晶表面弾性波素子等が用いられてもよい。
【0046】
シリコン振動子は、単結晶シリコン基板からMEMS技術を用いて製造される単結晶シリコン片と、圧電膜と、を備える振動子である。MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)は、微小電気機械システムのことである。単結晶シリコン片の形状としては、例えば、2脚音叉型、3脚音叉型等の片持ち梁形状、両持ち梁形状等が挙げられる。シリコン振動子の発振周波数は、例えば1kHzから数100MHz程度である。
【0047】
セラミック振動子は、圧電セラミックスを焼き固めて製造される圧電セラミック片と、電極と、を備える振動子である。圧電セラミックスとしては、例えば、チタン酸ジルコニウム酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム(BTO)等が挙げられる。セラミック振動子の発振周波数は、例えば数100kHzから数10MHz程度である。
【0048】
図3は、図2に示す振動素子30の構成例を示す斜視図である。
図3に示す振動素子30は、板形状の振動片431と、振動片431に設けられた回折格子434と、を備えている。
【0049】
振動片431は、電位を加えることにより、面に沿う方向に歪むように振動するモードを繰り返す材料で構成されている。図3に示す振動片431は、MHz帯の高周波領域で、振動方向436に沿って厚みすべり振動する水晶AT振動子である。また、振動片431の表面には、回折格子434が設けられている。回折格子434は、振動方向436と交差する成分を持つ溝432、すなわち、振動方向436と交差する方向に延在する直線状の複数の溝432を有している。
【0050】
振動片431は、互いに表裏の関係を有する表面4311および裏面4312を有している。表面4311には、回折格子434が配置されている。また、表面4311には、振動片431に電位を加えるためのパッド433が設けられている。一方、裏面4312にも、振動片431に電位を加えるためのパッド435が設けられている。
【0051】
振動片431の大きさは、例えば、長辺が0.50mm以上10.0mm以下程度とされる。また、振動片431の厚さは、例えば、0.10mm以上2.0mm以下程度とされる。一例として、振動片431の形状は、1辺が1.6mmの正方形とされ、その厚さは0.35mmとされる。
【0052】
回折格子434の大きさは、例えば、長辺が0.20mm以上3.0mm以下程度とされる。また、回折格子434の厚さは、例えば、0.003mm以上0.50mm以下程度とされる。
【0053】
本実施形態では、振動片431が厚みすべり振動するが、この振動は、図3に振動方向436として示すように、面内振動であることから、振動片431単体の表面に対して垂直に光を入射しても、光変調はできない。そこで、振動素子30では、振動片431に回折格子434を設けることにより、光変調を可能にしている。
【0054】
図3に示す回折格子434は、一例としてブレーズド回折格子である。ブレーズド回折格子とは、回折格子の断面形状が階段状になっているものをいう。なお、回折格子434の形状は、これに限定されない。
【0055】
図4は、図2に示す振動素子30の他の構成例を示す斜視図である。なお、図4では、互いに直交する3つの軸として、A軸、B軸およびC軸を設定し、矢印で示している。矢印の先端側を「プラス」とし、矢印の基端側を「マイナス」とする。また、例えば、A軸のプラス側およびマイナス側の両方向を「A軸方向」という。B軸方向およびC軸方向もそれぞれ同様である。
【0056】
図4に示す振動素子30は、音叉型水晶振動子である。図4に示す振動素子30は、基部401と、第1振動腕402および第2振動腕403とを有する振動基板を有する。このような音叉型水晶振動子は、製造技術が確立されているため、容易に入手可能であり、かつ、発振も安定している。このため、音叉型水晶振動子は、振動素子30として好適である。また、振動素子30は、振動基板に設けられた、電極404、405および光反射面406を有する。
【0057】
基部401は、A軸に沿って延在する部位である。第1振動腕402は、基部401のA軸マイナス側の端部からB軸プラス側に向かって延びる部位である。第2振動腕403は、基部401のA軸プラス側の端部からB軸プラス側に向かって延びる部位である。
【0058】
電極404は、第1振動腕402および第2振動腕403のうち、A-B面と平行な側面に設けられている導電膜である。なお、図4には図示していないが、電極404は、互いに対向する側面にそれぞれ設けられ、互いに極性が異なるように電圧が印加されることで、第1振動腕402を駆動する。
【0059】
電極405は、第1振動腕402および第2振動腕403のうち、A-B面と交差する側面に設けられている導電膜である。なお、図4には図示していないが、電極405も、互いに対向する側面にそれぞれ設けられ、互いに極性が異なるように電圧が印加されることで、第2振動腕403を駆動する。
【0060】
光反射面406は、第1振動腕402および第2振動腕403のうち、A-B面と交差する側面に設定され、第1分割光L1aを反射する機能を有する。側面とは、第1振動腕402および第2振動腕403の延在方向に沿って広がる面のことを指す。図4に示す光反射面406は、第1振動腕402の側面のうち、特に、電極405の表面に設定されている。第1振動腕402に設けられた電極405は、光反射面406としての機能も有している。なお、電極405とは別に、図示しない光反射膜を設けるようにしてもよい。
【0061】
音叉型水晶振動子には、水晶基板から切り出された水晶片を用いる。音叉型水晶振動子の製造に用いられる水晶基板としては、例えば、水晶Zカット平板等が挙げられる。図4には、A軸と平行なX軸、B軸と平行なY’軸、C軸と平行なZ’軸を設定している。水晶Zカット平板は、例えば、X軸が電気軸、Y’軸が機械軸、Z’軸が光軸となるように、水晶の単結晶から切り出された基板である。具体的には、X軸、Y’軸およびZ’軸からなる直交座標系において、X軸まわりに、X軸およびY’軸からなるX-Y’平面を反時計方向に約1°から5°傾けた主面を持つ基板が、水晶の単結晶から切り出され、水晶基板として好ましく用いられる。そして、このような水晶基板をエッチングすることにより、図4に示す振動素子30に用いられる水晶片が得られる。エッチングは、ウェットエッチングであっても、ドライエッチングであってもよい。
【0062】
一方、光反射面406を、電極404の表面に設定してもよい。この場合、音叉型水晶振動子が面外振動するように、例えば、面外振動するスプリアスを励振するように、各電極に印加する信号を調整すればよい。
【0063】
1.1.8.第1開口素子
第1開口素子11は、検光子9と受光素子10との間に配置される。第1開口素子11は、参照光L2の光軸に対する物体光L3の光軸の位置ずれを検出する。なお、本実施形態で「位置ずれ」とは、第1開口素子11が広がる面内において前述した光軸同士の位置がずれている状態をいう。
【0064】
図5は、図2に示す第1開口素子11および受光素子10を検光子9側から見た斜視図である。
【0065】
図5に示す第1開口素子11は、中央に第1開口110を有する4分割型フォトダイオードである。4分割型フォトダイオードは、受光面が4つの光検出領域に分割され、各光検出領域で独立した感度を有する。第1開口素子11は、2×2の行列状に分割された光検出領域11A、11B、11C、11Dを有する。また、4つの光検出領域11A、11B、11C、11Dに隣り合う位置に、平面視で円形をなす第1開口110が設けられている。第1開口110は、第1開口素子11を厚さ方向に貫通している。
【0066】
第1開口素子11は、図5に示すように、参照光L2が第1開口110を通過するように配置される。このため、参照光L2は、第1開口素子11で検出されない。これに対し、物体光L3の光軸の位置は、レーザー干渉計1から対象物14までの距離や対象物14の角度等に応じて変化する。物体光L3の光軸の位置が、参照光L2の光軸からずれている場合、物体光L3は、図5に示すように、第1開口110を通過できずに、第1開口素子11で検出される。
【0067】
第1開口素子11に照射された物体光L3は、光検出領域11A、11B、11C、11Dのいずれかにおいて検出され、検出信号が第1位置ずれ算出部56に出力される。各光検出領域で検出された光量に基づいて、第1位置ずれ算出部56は、物体光L3の位置を算出する。この算出結果に基づいて、指示部58は、例えば図示しない表示装置等に、配置の変更を指示する表示を行う。レーザー干渉計1のユーザーは、この指示に基づいて、レーザー干渉計1または対象物14のいずれか、または双方の配置を変更し、物体光L3の光軸を調整することができる。指示にしたがって配置の変更を行うことにより、物体光L3の光軸を参照光L2の光軸に近づけることができる。これにより、参照光L2の光軸と物体光L3の光軸との位置ずれを修正することができる。
【0068】
第1開口110の口径は、参照光L2のビーム径の90%以上150%以下程度であるのが好ましく、95%以上110%以下程度であるのがより好ましい。これにより、第1開口素子11は、参照光L2の光軸に対して位置ずれを生じている物体光L3を、より確実に検出できる。
【0069】
図6は、図2に示す受光素子10で発生する参照光L2と物体光L3の位置ずれおよび角度ずれのイメージ、ならびに、それに伴う影響について列挙した表である。図6では、位置ずれがない場合と、ある場合と、を2例ずつ示している。また、位置ずれがない場合でも、角度ずれがある場合とない場合とを比較している。さらに、位置ずれがある場合でも、ずれが小さい場合とずれが大きい場合とを比較している。なお、本実施形態で「角度ずれ」とは、受光素子10において参照光L2の光軸と物体光L3の光軸とが非平行である状態をいう。
【0070】
まず、受光素子10での位置ずれがなく、角度ずれがある場合、図5に示す受光素子10の受光面101では、角度ずれに伴う干渉縞(明暗の縞)が発生する。干渉縞が発生した場合、受光信号のAC成分(光ビート信号)の振幅(AC振幅)は、明と暗が打ち消し合うことによって小さくなる。そうすると、光ビート信号のS/N比の低下を招く。一方、受光素子10での位置ずれも角度ずれもない場合、受光面に干渉縞は発生しないため、受光信号のAC振幅は大きくなる。また、位置ずれがないため、干渉が生じない領域(非干渉領域)は発生せず、受光信号のDCレベルは小さくなる。
【0071】
一方、受光素子10での位置ずれがあるものの、角度ずれがない場合、干渉縞は発生しないものの、位置ずれの程度によって、AC振幅およびDCレベルが左右される。位置ずれが大きい場合、参照光L2と物体光L3のビーム同士の重なり領域が小さく、非干渉領域が大きいため、受光信号のAC振幅は小さくなり、DCレベルが大きくなる。一方、位置ずれが小さい場合、ビーム同士の重なり領域がやや大きく、非干渉領域がやや小さくなるため、受光信号のAC領域がやや大きくなり、DCレベルはやや小さくなる。
【0072】
本実施形態に係るレーザー干渉計およびその光軸調整方法では、上記のような位置ずれや角度ずれとそれによって生じる影響との関係に基づいて、位置ずれおよび角度ずれの双方の解消を図るように指示を出す。つまり、ユーザーによる光軸調整を支援して、光軸ずれに伴う影響の低減を図ることができる。これにより、非同軸光学系が持つ課題であるS/N比の低下を抑制し、非同軸光学系を採用しつつ、対象物14に対する計測精度の高いレーザー干渉計1を実現することができる。
【0073】
なお、第1開口素子11における光検出領域の分割数は、複数であれば4つに限定されない。例えば、分割数が8つであってもよく、それ未満またはそれ超であってもよい。また、第1開口素子11は、非分割型のフォトダイオードを複数配列したものであってもよい。
【0074】
1.2.信号生成部
図1に示す信号生成部60は、振動素子30に入力される駆動信号Sd、および、復調演算部52に入力される基準信号Ssを出力する。
【0075】
本実施形態では、図1に示すように、信号生成部60が発振回路61を備えている。発振回路61は、振動素子30を信号源として動作し、精度の高い周期信号を生成する。これにより、発振回路61は、精度の高い駆動信号Sdを出力するとともに、基準信号Ssを出力する。そうすると、駆動信号Sdおよび基準信号Ssは、外乱を受けた場合、互いに同じ影響を受けることになる。その結果、駆動信号Sdにより駆動された振動素子30を介して付加される変調成分、および、基準信号Ssも、互いに同じ影響を受ける。このため、変調成分および基準信号Ssが、復調演算部52における演算に供されたとき、演算の過程で、双方が含む外乱の影響を互いに相殺または低減させることができる。その結果、復調演算部52では、外乱を受けても、対象物14の位置や速度を精度よく求めることができる。また、レーザー干渉計1の小型化、軽量化、低消費電力化を図ることができる。
【0076】
発振回路61としては、例えば、特開2022-38156号公報に開示されている発振回路が挙げられる。
【0077】
また、信号生成部60は、発振回路61に代えて、ファンクションジェネレーターやシグナルジェネレーターのような信号発生器を備えていてもよい。
【0078】
1.3.復調演算部
図1に示す本体部59が備える復調演算部52は、前処理部53、復調処理部54および復調信号出力部55を有する。これらの機能部が発揮する機能は、例えば、プロセッサー、メモリー、外部インターフェース、入力部、表示部等を備えるハードウェアによって実現される。具体的には、メモリーに格納されているプログラムをプロセッサーが読み出し、実行することによって実現される。なお、これらの構成要素は、外部バスによって互いに通信可能になっている。
【0079】
プロセッサーとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等が挙げられる。なお、これらのプロセッサーがソフトウェアを実行する方式に代えて、FPGA(Field-Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等が上述した機能を実現する方式を採用するようにしてもよい。
【0080】
メモリーとしては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等が挙げられる。
【0081】
外部インターフェースとしては、例えば、USB(Universal Serial Bus)等のデジタル入出力ポート、イーサネット(登録商標)ポート、無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)等が挙げられる。
【0082】
入力部としては、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、タッチパッド等の各種入力装置が挙げられる。表示部としては、例えば、液晶ディスプレイパネル、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイパネル等が挙げられる。
【0083】
なお、外部インターフェース、入力部および表示部は、必要に応じて設けられればよく、省略されていてもよい。
【0084】
前処理部53および復調処理部54には、例えば、特開2022-38156号公報に開示されている前処理部および復調部が適用できる。
【0085】
前処理部53は、基準信号Ssに基づいて受光信号に前処理を行う。前処理は、受光信号を2つの信号に分けた後、一方に基準信号を乗算し、その後、2つの信号を合算して前処理済み信号を出力する。
【0086】
復調処理部54は、前処理部53から出力された前処理済み信号から、基準信号Ssに基づいて対象物14の速度や位置に応じたサンプル由来成分を復調する。
【0087】
復調信号出力部55は、サンプル由来成分、具体的には、前処理済み信号に含まれる対象物14に由来する位相情報から対象物14の位置を算出することができ、この場合、レーザー干渉計1は変位計として用いられる。また、対象物14の位置から速度を求めることができ、この場合、レーザー干渉計1は速度計として用いられる。
【0088】
1.4.第1位置ずれ算出部
図1に示す本体部59が備える第1位置ずれ算出部56は、第1開口素子11から出力される検出信号に基づいて、物体光L3の照射位置を算出する。物体光L3の照射位置は、例えば、以下のようにして算出することができる。
【0089】
まず、光検出領域11A、11B、11C、11Dで検出される光量をそれぞれPA、PB、PC、PDとするとき、第1開口素子11で検出される光量の合計は、PA+PB+PC+PDとなる。
【0090】
ここで、図5に示すX軸およびY軸で表され、第1開口素子11の中心を原点とする直交座標系において、正規化座標(X,Y)を考える。図5では、X軸を矢印で表し、先端方向をプラス側、基端方向をマイナス側とする。Y軸も同様である。この場合、物体光L3の照射位置の正規化座標(X,Y)は、下記式(1)で表される。
【0091】
【数1】
【0092】
正規化座標(X,Y)の原点は、光検出領域11A、11B、11C、11Dに囲まれた第1開口110の中心に位置している。このため、検出信号から求められる正規化座標の符号を、下記表1に照らすことにより、物体光L3の現在位置(物体光L3が到達した光検出領域)を推定することができる。
【0093】
【表1】
【0094】
第1位置ずれ算出部56は、上記のような演算を行うことにより、物体光L3の現在位置を推定する。これにより、第1開口110を通過する参照光L2の光軸に対して、物体光L3の光軸が位置ずれしている方向を求めることができる。なお、物体光L3の現在位置の算出方法は、上記の方法に限定されない。例えば、第1開口素子11として、分割型フォトダイオード以外の素子を用いた場合、上記とは異なる算出方法が用いられていてもよい。
【0095】
1.5.角度ずれ検出部
図1に示す本体部59が備える角度ずれ検出部57は、受光素子10から出力される受光信号に基づいて、参照光L2の光軸に対する物体光L3の光軸の角度ずれを検出する。
【0096】
このような角度ずれが生じている場合、位置ずれが生じていなくても、図6に示すように、受光素子10において干渉縞の発生が観測される。そこで、角度ずれ検出部57では、受光信号に基づいて角度ずれを検出する。
【0097】
干渉縞が発生すると、前述したように、参照光L2と物体光L3とが干渉しているにもかかわらず、受光信号のAC振幅が小さくなる。そこで、角度ずれ検出部57は、受光信号のAC振幅に基づいて角度ずれを検出する。
【0098】
図7は、受光信号のAC成分の一例を示す波形である。なお、図7では、受光素子10の感度幅(PD感度幅)を併せて図示している。
【0099】
図7に示すように、受光信号のAC成分は所定の周期で振動する周期信号である。そこで、角度ずれ検出部57では、受光信号のAC成分の振幅(AC振幅)を検出する。そして、AC振幅がしきい値以上であるか否かを判定する。しきい値以上であった場合、角度ずれは発生していないとみなせる。一方、しきい値未満であった場合、角度ずれが発生しているとみなせる。以上のようにして、角度ずれの有無を検出することができる。なお、AC振幅は、受光信号から復調されるサンプル由来成分のS/N比(信号対雑音比)に影響を及ぼすため、大きなAC振幅を確保することにより、対象物14の計測精度の向上を図ることができる。
【0100】
1.6.指示部
図1に示す本体部59が備える指示部58は、第1位置ずれ算出部56による算出結果(第1開口素子11での位置ずれの検出結果)、および、角度ずれ検出部57による検出結果(角度ずれの検出結果)、に基づいて、配置を変更する指示を出す。配置とは、レーザー干渉計1(干渉光学系50)と対象物14との相対的な配置である。具体的には、レーザー干渉計1と対象物14との距離を変更したり、レーザー干渉計1や対象物14の姿勢を変更したりすることにより、両者の相対的な配置を変更する。
【0101】
指示部58による指示の内容としては、例えば、位置ずれや角度ずれの現在値を表す表示、位置ずれや角度ずれの修正を誘導する表示等が挙げられる。指示の方法としては、例えば、前述した表示部に文字や図形等を表示する方法、指示の内容に応じて光の色または点滅パターンや音の大小または高低を変える方法、指示の内容を読み上げる方法等が挙げられる。例えば、対象物14に対するレーザー干渉計1(干渉光学系50)の相対的な変位方向を指示するものであってもよい。このような指示にしたがうことで、ユーザーは、配置の変更を簡単に行うことができ、光軸の調整を効率よく行うことができる。
【0102】
2.レーザー干渉計の光軸調整方法
次に、実施形態に係るレーザー干渉計の光軸調整方法について説明する。なお、以下の説明では、一例として、上述したレーザー干渉計1の光軸を調整する方法について説明する。
【0103】
図8は、実施形態に係るレーザー干渉計の光軸調整方法の構成を示すフローチャートである。
【0104】
図8に示すステップS102では、第1位置ずれ算出部56の算出結果に基づき、指示部58は、物体光L3が第1開口110を通過しているか否かを判定する。なお、レーザー干渉計1では、前述したように、あらかじめ参照光L2が第1開口110を通過するように、光軸が調整されている。したがって、第1開口素子11で検出される光は、全て物体光L3であることが好ましいが、多少であれば、参照光L2の一部が第1開口素子11で検出されても構わない。第1開口素子11で検出された光量がゼロであった場合、指示部58は、物体光L3のビーム全体が第1開口110を通過していると判定する。この場合、ステップS102での判定結果はYesとなり、ステップS112に移行する。一方、第1開口素子11で検出された光量がゼロ超であった場合、指示部58は、物体光L3のビームの少なくとも一部が第1開口110を通過していないと判定する。この場合、ステップS102での判定結果はNoとなり、ステップS104に移行する。なお、上記「ゼロ」には、所定の許容幅があってもよい。つまり、上記の「ゼロ」は、厳密なゼロの状態に加え、ゼロとみなせる程度の微小な幅を持つ概念である。後述する他の「ゼロ」についても同様である。
【0105】
ステップS104では、指示部58が、第1位置ずれ算出部56の算出結果に基づいて配置を変更する指示を出す。ここでは、指示の一例として、位置ずれが解消する方向に物体光L3の光軸が移動するように配置の変更を誘導する指示について説明する。
【0106】
図9は、図5に示す物体光L3の照射位置が、方向a~fの6方向に移動する例を模式的に示す斜視図である。また、図10は、物体光L3の照射位置が図9に示す方向a~fの6方向に移動するとき、正規化座標(X,Y)のX座標およびY座標の経時変化を示すグラフである。
【0107】
配置を変更する前の時点では、図9に示す物体光L3の照射位置は、光検出領域11Cである。つまり、正規化座標(X,Y)のX座標およびY座標は、それぞれ負の値である。その後、物体光L3の照射位置が例えば方向aに移動するように配置を変更した場合、X座標は、図10の最も上のグラフに示すように、配置の変更開始とともに徐々に大きくなった後、物体光L3が第1開口110に到達したタイミングでほぼゼロになる。そして、物体光L3が第1開口110を通り過ぎたタイミングで、正の値になる。一方、Y座標も、図10の最も上のグラフに示すように、配置の変更開始とともに徐々に大きくなり、物体光L3が第1開口110に到達したタイミングでほぼゼロになる。そして、物体光L3が第1開口110を通り過ぎたタイミングで、正の値になる。
【0108】
第1位置ずれ算出部56は、以上のようなX座標およびY座標の経時変化を、あらかじめパターンとして保有しておく。そして、光軸調整を行うときには、図10に示すようなX座標およびY座標の変化を取得し、保有しているパターンと照合することにより、物体光L3の照射位置が光検出領域11Cから方向aに移動したことを検出することができる。この場合、指示部58は、方向aに移動した旨を、表示部等を介してユーザーに報知する。そうすると、ユーザーは、配置の変更内容と、物体光L3の照射位置の移動方向と、を容易に紐づけることができる。つまり、ユーザーは、物体光L3の照射位置が光検出領域11Cから第1開口110を経由して光検出領域11Aに移動したことを容易に理解できる。その結果、ユーザーは、物体光L3の照射位置を光検出領域11Aから第1開口110に移動させる配置の変更内容を、容易に見出すことができる。以上、指示の内容の一例について説明したが、指示の内容は、上記に限定されない。
【0109】
ステップS106では、指示にしたがって、ユーザーが配置を変更する。これにより、物体光L3の光軸を第1開口110に容易に合わせることができる。その結果、参照光L2の光軸に対する物体光L3の光軸の位置ずれを解消することができる。その後、ステップS102に戻る。
【0110】
一方、前述したように、ステップS102での判定結果がYesであった場合、ステップS112に移行する。ステップS112では、受光信号のAC振幅がしきい値以上であるか否かを判定する。AC振幅がしきい値以上であった場合、角度ずれは発生していないとみなせる。この場合、ステップS112の判定結果がYesとなるため、ステップS122に移行する。ステップS122では、指示部58が、例えば表示部等に光軸調整の完了を表示させる。これにより、ユーザーは、光軸調整を終了させることができる。一方、AC振幅がしきい値未満であった場合、角度ずれが発生しているとみなせる。この場合、ステップS112の判定結果はNoとなるため、ステップS114に移行する。
【0111】
ステップS114では、指示部58が、角度ずれの検出結果に基づいて配置を変更する指示を出す。指示の一例として、AC振幅をリアルタイムで定量的に表示する指示が挙げられる。ユーザーは、リアルタイムに変化する数値等の表示を見ながら、配置を変更する操作を行うことができる。この場合、数値等が大きくなる方向へ配置を変更すればよいので、操作を効率よく行うことができる。
【0112】
ここで、配置が異なる2つの例について説明する。
図11は、図7のAC振幅が最大になる場合の配置例を模式的に示す図である。また、図12は、図11に示す配置例よりもAC振幅が小さくなる場合の配置例を模式的に示す図である。さらに、図13は、図12の配置例の場合に観測される受光信号のAC振幅およびDCレベルの一例を示す波形である。
【0113】
図11に示す配置例は、図6において太線で囲んだ配置例に対応している。この配置例では、光分割器4と光変調器12との光学的距離をLqomとし、光分割器4と対象物14との光学的距離をLsamとするとき、Lqom=Lsamが成り立っている。この式が成り立つことにより、位置ずれおよび角度ずれの双方をなくすことができる。これにより、AC振幅を最大化できるとともに、DCレベルを最小化できる。DCレベルを最小化できれば、AC振幅が大きくなっても、受光素子10の感度幅をはみ出しにくくなる。
【0114】
図12に示す配置例は、図6において位置ずれがあり、角度ずれがない配置例に対応している。この配置例では、角度ずれがないとみなせる状態を維持しながら、光学的距離Lsamが図11よりも大きくなっている。このため、干渉縞は発生しないものの、観測される受光信号のAC振幅は、図13に示すように、図7に示すAC振幅よりも小さくなる。また、受光素子10の受光面101には、非干渉領域が発生するため、受光信号のDCレベルが大きくなる。このようにDCレベルが大きくなると、AC振幅が図13に示すPD感度幅を超えるおそれがある。
【0115】
これに対し、本実施形態では、図12に示すように、非干渉領域となる物体光L3のビームの一部を、第1開口素子11でカットできる。このため、本実施形態では、受光面101において非干渉領域が発生したとしても、受光信号のDCレベルの増大を抑制できる。
【0116】
図11および図12の配置例を踏まえると、レーザー干渉計1から対象物14に向かって射出される第2分割光L1bの射出口と、光分割器4と、の光学的距離は、上記の光学的距離Lqomと等しく設計されることが好ましい。このように設計することで、光学的距離Lsamは、必然的に光学的距離Lqomより長くなる。その結果、上記の効果、つまり、受光信号のDCレベルの増大を抑制できるという効果を享受することができる。
【0117】
ステップS116では、AC振幅を示す表示を見ながら、ユーザーが配置を変更する。これにより、角度ずれを小さくする方向へ配置を変更することができる。なお、原則として、AC振幅を最大化するように調整を行うが、この調整の過程では、第1開口素子11に光が照射され、前述したステップS102における合格基準を満たさなくなる状況も発生し得る。その場合、ステップS102まで戻ってもよいが、角度ずれの低減を優先した配置の変更を行うべく、図8に示すようにステップS112に戻る処理を行うことが好ましい。
【0118】
3.第1変形例
次に、前記実施形態の第1変形例に係るレーザー干渉計およびその光軸調整方法について説明する。
【0119】
図14は、第1変形例に係るレーザー干渉計1が備える干渉光学系50の一部を示す概略構成図である。図15は、図14の第1開口素子11、絞り素子13および受光素子10を示す斜視図である。図16は、第1変形例に係るレーザー干渉計の光軸調整方法の構成を示すフローチャートである。
【0120】
以下、第1変形例について説明するが、以下の説明では、前記実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、本変形例の各図において、前記実施形態と同様の構成については、同一の符号を付している。
【0121】
第1変形例に係るレーザー干渉計1は、第1開口素子11と受光素子10との間に配置された絞り素子13を備えること以外、前記実施形態に係るレーザー干渉計1と同様である。
【0122】
絞り素子13は、貫通孔130を有する光学素子である。絞り素子13は、図14に示すように、第1開口素子11の第1開口110を通過した参照光L2が貫通孔130を通過するように配置される。このため、物体光L3の光軸が、参照光L2の光軸に対して非平行である場合、つまり、両者の光軸に角度ずれが生じている場合、物体光L3は、図15に示すように、第1開口110を通過したとしても、貫通孔130を通過できずに、絞り素子13で遮蔽される。これにより、角度ずれが生じている物体光L3は受光素子10に到達できない。
【0123】
一方、角度ずれが生じていない物体光L3は、第1開口110および貫通孔130の双方を通過して、受光素子10に到達できる。つまり、第1変形例では、そもそも角度ずれが発生していない物体光L3のみが受光素子10に到達できる。したがって、第1変形例では、受光信号のAC振幅に基づいて角度ずれを検出するのではなく、受光信号のDCレベルに基づいて角度ずれを検出することが可能になる。このため、ユーザーは、前記実施形態よりも直感的かつ精度よく、角度ずれの有無や程度を把握することができる。
【0124】
貫通孔130の口径は、参照光L2のビーム径の90%以上150%以下程度であるのが好ましく、95%以上110%以下程度であるのがより好ましい。これにより、絞り素子13は、参照光L2の光軸に対して角度ずれを生じている物体光L3を、より確実に遮蔽できる。また、貫通孔130の口径は、第1開口110の口径と等しいことが好ましい。等しいとは、第1開口110の口径の100%±5%の範囲内であることをいう。
【0125】
また、第1変形例に係るレーザー干渉計の光軸調整方法は、ステップS112、S114、S116がステップS132、S134、S136に置き換えられていること以外、前記実施形態に係るレーザー干渉計の光軸調整方法と同様である。
【0126】
図16に示すステップS102、S104、S106は、図8と同様である。図16に示すステップS102での判定結果がYesであった場合、ステップS132に移行する。
【0127】
図16に示すステップS132では、受光信号のDCレベルがしきい値以上であるか否かを判定する。DCレベルは、周期信号である受光信号のDCオフセットである。DCレベルがしきい値以上であった場合、角度ずれは発生していないとみなせる。この場合、ステップS132の判定結果がYesとなるため、ステップS122に移行する。一方、DCレベルがしきい値未満であった場合、角度ずれが発生しているとみなせる。この場合、ステップS132の判定結果はNoとなるため、ステップS134に移行する。
【0128】
ステップS134では、指示部58が、角度ずれの検出結果に基づいて配置を変更する指示を出す。指示の一例として、DCレベルをリアルタイムで定量的に表示する指示が挙げられる。ユーザーは、リアルタイムに変化する数値等の表示を見ながら、配置を変更する操作を行うことができる。この場合、数値等が大きくなる方向へ配置を変更すればよいので、操作を効率よく行うことができる。特にDCレベルは、配置の変更と連動する場合が多い。このため、ユーザーは直感的に配置を変更することができ、効率よく光軸の調整を行える。
【0129】
ステップS136では、DCレベルを示す表示を見ながら、ユーザーが配置を変更する。これにより、角度ずれを小さくする方向に配置を効率よく変更することができる。なお、原則として、DCレベルを最大化するように調整を行うが、この調整の過程では、第1開口素子11に光が照射され、前述したステップS102における合格基準を満たさなくなる状況も発生し得る。その場合、ステップS102まで戻ってもよいが、角度ずれの低減を優先した配置の変更を行うべく、図16に示すようにステップS132に戻る処理を行うことが好ましい。
【0130】
図16に示すステップS122は、図8と同様である。
以上のような第1変形例においても、前記実施形態と同様の効果が得られる。
【0131】
4.第2変形例
次に、前記実施形態の第2変形例に係るレーザー干渉計およびその光軸調整方法について説明する。
【0132】
図17は、第2変形例に係るレーザー干渉計1が備える干渉光学系50の一部を示す概略構成図である。図18は、図17の第1開口素子11、第2開口素子15および受光素子10を示す斜視図である。図19は、第2変形例に係るレーザー干渉計の光軸調整方法の構成を示すフローチャートである。
【0133】
以下、第2変形例について説明するが、以下の説明では、前記実施形態または前記変形例との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、本変形例の各図において、前記実施形態または前記変形例と同様の構成については、同一の符号を付している。
【0134】
第2変形例に係るレーザー干渉計1は、第1開口素子11と受光素子10との間に配置された第2開口素子15を備えること以外、前記実施形態に係るレーザー干渉計1と同様である。
【0135】
図18に示す第2開口素子15は、第1開口素子11と同様、中央に第2開口150を有する4分割型フォトダイオードである。4分割型フォトダイオードは、受光面が4つの光検出領域に分割され、各光検出領域で独立した感度を有する。第2開口素子15は、2×2の行列状に分割された光検出領域15A、15B、15C、15Dを有する。また、4つの光検出領域15A、15B、15C、15Dに隣り合う位置に、平面視で円形をなす第2開口150が設けられている。第2開口150は、第2開口素子15を厚さ方向に貫通している。
【0136】
第2開口素子15は、図18に示すように、第1開口素子11の第1開口110を通過した参照光L2が第2開口150を通過するように配置される。このため、物体光L3の光軸が、参照光L2の光軸に対して非平行である場合、つまり、両者の光軸に角度ずれが生じている場合、物体光L3は、図18に示すように、第1開口110を通過したとしても、第2開口150を通過できずに、光検出領域15A、15B、15C、15Dのいずれかに照射される。これにより、角度ずれが生じている物体光L3は受光素子10に到達できない。
【0137】
一方、角度ずれが生じていない物体光L3は、第1開口110および第2開口150の双方を通過して、受光素子10に到達できる。つまり、第2変形例では、そもそも角度ずれが発生していない物体光L3のみが受光素子10に到達できる。したがって、第2変形例では、受光信号のAC振幅に基づいて角度ずれを検出するのではなく、受光信号のDCレベルに基づいて角度ずれを検出できる。このため、ユーザーは、前記実施形態よりも直感的かつ精度よく、角度ずれの有無や程度を把握することができる。
【0138】
第2開口150の口径は、参照光L2のビーム径の90%以上150%以下程度であるのが好ましく、95%以上110%以下程度であるのがより好ましい。これにより、第2開口素子15は、参照光L2の光軸に対して角度ずれを生じている物体光L3を、より確実に遮蔽できる。また、第2開口150の口径は、第1開口110の口径と等しいことが好ましい。等しいとは、第1開口110の口径の100%±5%の範囲内であることをいう。
【0139】
また、図17に示すレーザー干渉計1には、第2位置ずれ算出部71が追加されている。第2位置ずれ算出部71は、第2開口素子15から出力される検出信号に基づいて、物体光L3の位置を算出する。物体光L3の位置の算出方法は、第1位置ずれ算出部56と同様である。物体光L3の位置を算出することにより、物体光L3の現在位置を推定できる。これにより、第2開口150を通過する参照光L2の光軸に対して、物体光L3の光軸が位置ずれしている方向を求めることができる。なお、本変形例で「位置ずれ」とは、第1開口素子11が広がる面内または第2開口素子15が広がる面内において前述した光軸同士の位置がずれている状態をいう。なお、物体光L3の現在位置の算出方法は、これに限定されない。例えば、第2開口素子15として、分割型フォトダイオード以外の素子を用いた場合、上記とは異なる算出方法が用いられていてもよい。
【0140】
図17に示す指示部58は、第1位置ずれ算出部56による算出結果(位置ずれの検出結果)、第2位置ずれ算出部71による算出結果(位置ずれの検出結果)、および、角度ずれ検出部57による検出結果(角度ずれの検出結果)、に基づいて、配置を変更する指示を出す。なお、第2位置ずれ算出部71による算出結果は、第2開口素子15における位置ずれの方向を含んでいるが、そもそも、第2開口素子15には、位置ずれが発生していない物体光L3しか到達しない。よって、第2開口素子15における位置ずれの方向は、結果的に角度ずれの方向を表しているといえる。したがって、図17に示す指示部58が出す指示にしたがって配置を変更することにより、角度ずれを効率よく修正することができる。
【0141】
また、第2変形例に係るレーザー干渉計の光軸調整方法は、ステップS112、S114、S116がステップS132、S134、S136に置き換えられているとともに、ステップS142、S144、S146が追加されていること以外、前記第1変形例に係るレーザー干渉計の光軸調整方法と同様である。
【0142】
図19に示すステップS102、S104、S106は、図8と同様である。図19に示すステップS102での判定結果がYesであった場合、ステップS142に移行する。
【0143】
ステップS142では、受光信号のレベル、および、第2位置ずれ算出部71による算出結果に基づき、指示部58が、受光信号のレベルがゼロ超であり、かつ、物体光L3が第2開口150を通過しているか否かを判定する、レーザー干渉計1では、前述したように、あらかじめ参照光L2が第2開口150を通過するように、光軸が調整されている。したがって、受光信号のレベルは、原則としてゼロ超である。受光信号のレベルがゼロ超であるとは、受光素子10で何らかの光を受光して受光信号に振幅がある状態をいう。また、第2開口素子15で検出される光は、原則として、全て物体光L3である。第2開口素子15で検出された光量がゼロであった場合、指示部58は、物体光L3のビーム全体が第2開口150を通過していると判定する。この場合、ステップS142での判定結果はYesとなり、ステップS132に移行する。一方、第2開口素子15で検出された光量がゼロ超であった場合、指示部58は、物体光L3のビームの少なくとも一部が第2開口150を通過していないと判定する。この場合、ステップS142での判定結果はNoとなり、ステップS144に移行する。
【0144】
ここで、第1開口素子11での位置ずれおよび角度ずれの状態が異なる3つの例について説明する。
【0145】
図20は、図17の第2変形例に係るレーザー干渉計1が備える干渉光学系50を示す概略構成図において、物体光L3が辿る光跡が異なる3例を比較した図である。
【0146】
図20の左図は、第1開口素子11での位置ずれがあり、かつ、角度ずれがない場合を模式的に示している。この場合、受光信号のレベルはゼロ超であり、かつ、第2開口素子15で検出される光量はゼロであるから、ステップS142での判定結果はYesとなる。
【0147】
図20の中央図は、第1開口素子11での位置ずれがあり、かつ、角度ずれもある場合を模式的に示している。ただし、角度ずれはあるものの、物体光L3のビーム全体が、第2開口150を通過している。この場合、受光信号のレベルはゼロ超であり、かつ、第2開口素子15で検出される光量はゼロであるから、ステップS142での判定結果はYesとなる。
【0148】
図20の右図は、第1開口素子11での位置ずれはないものの、角度ずれがある場合を模式的に示している。そして、物体光L3のビームの一部が、第2開口150から外れている。この場合、受光信号のレベルはゼロ超であり、かつ、第2開口素子15で検出される光量がゼロ超になる。よって、ステップS142での判定結果はNoとなる。
【0149】
ところで、図20の中央図と右図とを比較した場合、角度ずれの程度が異なっている。具体的には、右図は、中央図に比べて角度ずれが大きい。ステップS142での判定は、右図の状態を検出することができる。これにより、右図の状態の角度ずれを修正させることができる。
【0150】
ステップS144では、指示部58が、受光信号のレベル、および、第2位置ずれ算出部71による算出結果に基づいて配置を変更する指示を出す。指示の内容は、前記実施形態のステップS104において、位置ずれを解消する方向に配置の変更を誘導する内容と同様である。
【0151】
ステップS146では、指示にしたがって、ユーザーが配置を変更する。これにより、角度ずれを小さくする方向に配置を効率よく変更することができる。その後、ステップS142に戻る。
【0152】
図19に示すステップS132、S134、S136は、図16と同様である。また、図19に示すステップS122は、図8と同様である。
【0153】
以上のような第2変形例においても、前記実施形態および前記変形例と同様の効果が得られる。
【0154】
5.第3変形例
次に、前記実施形態の第3変形例に係るレーザー干渉計およびその光軸調整方法について説明する。
【0155】
図21は、第3変形例に係るレーザー干渉計1が備える干渉光学系50の一部を示す概略構成図である。図22は、第3変形例に係るレーザー干渉計の光軸調整方法の構成を示すフローチャートである。
【0156】
以下、第3変形例について説明するが、以下の説明では、前記実施形態または前記変形例との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、本変形例の各図において、前記実施形態または前記変形例と同様の構成については、同一の符号を付している。
【0157】
第3変形例に係るレーザー干渉計1は、図21に示すテーブルデータ検定部72を備えること以外、前記第2変形例に係るレーザー干渉計1と同様である。
【0158】
テーブルデータ検定部72は、第1開口素子11で検出した物体光L3の位置(検出位置)と、第1開口素子11で検出した物体光L3の光量および受光素子10で検出した光量とのバランス(光量バランス)と、の比を記録したテーブルデータを有している。以下、この比を「検出位置-光量バランス比」という。
【0159】
図20の左図のように、角度ずれがない場合、検出位置-光量バランス比は、検出位置ごとに一意に決まる。そこで、図21に示すテーブルデータ検定部72は、検出位置-光量バランス比を取得し、テーブルデータに照らし合わせる処理を行う。これにより、角度ずれの有無を検定することができる。このような検定は、図20の左図の状態と中央図の状態とを識別する場合に有用である。図20の左図の状態と中央図の状態とは、前述した第2変形例のステップS102、S142、S132の各判定においても区別することができない。これに対し、テーブルデータ検定部72による検定を追加することにより、これらを区別することが可能になる。
【0160】
具体的には、角度ずれがない場合の検出位置-光量バランス比は、前述したように一意に決まることから、その値を、テーブルデータとしてテーブルデータ検定部72に格納しておく。そして、テーブルデータ検定部72は、取得した検出位置-光量バランス比が、テーブルデータの範囲に入っていた場合、角度ずれがないとみなす。このような状態は、例えば図20の左図の状態に対応する。一方、テーブルデータ検定部72は、取得した検出位置-光量バランス比が、テーブルデータの範囲から外れていた場合、角度ずれがあるとみなす。このような状態は、例えば図20の中央図の状態に対応する。
【0161】
テーブルデータ検定部72が以上のような処理を行うことにより、図20の左図の状態と中央図の状態とを識別することができる。その結果、図20の中央図の状態、干渉縞が発生し得る状態を排除しながら、光軸調整を行うことができる。
【0162】
図21に示す指示部58は、第1位置ずれ算出部56による算出結果、第2位置ずれ算出部71による算出結果、角度ずれ検出部57による検出結果、および、テーブルデータ検定部72による検定結果、に基づいて、配置を変更する指示を出す。
【0163】
また、第3変形例に係るレーザー干渉計の光軸調整方法は、ステップS152、S154、S156が追加されていること以外、前記第2変形例に係るレーザー干渉計の光軸調整方法と同様である。
【0164】
図22に示すステップS102からステップS136までは、図19と同様である。
図22に示すステップS152では、テーブルデータ検定部72が取得した検出位置-光量バランス比がテーブルデータの範囲に入っているか否かを検定する。検出位置-光量バランス比は、第1開口素子11で検出した物体光L3の位置(検出位置)と、第1開口素子11で検出した物体光L3の光量および受光素子10で検出した光量とのバランス(光量バランス)と、の比であるから、第1位置ずれ算出部56、第1開口素子11および受光素子10から取得した値に基づいて算出できる。そして、検定結果が合格(Yes)であった場合、ステップS122に移行する。一方、検定結果が不合格(No)であった場合、ステップS154に移行する。
【0165】
ステップS154では、指示部58が、検出位置-光量バランス比に基づいて配置を変更する指示を出す。指示の内容としては、例えば、リアルタイムに取得された検出位置-光量バランス比と、テーブルデータの範囲と、の差が挙げられる。
【0166】
ステップS156では、指示にしたがって、ユーザーが配置を変更する。例えば、図20の左図と中央図との違いは、主に、図11および図12に示す光学的距離Lsamの違いに起因している。そこで、光学的距離Lsamを変更して、検出位置-光量バランス比がテーブルデータの範囲内に入るようにすればよい。これにより、角度ずれを小さくする方向に配置を効率よく変更することができる。その後、ステップS152に戻る。
【0167】
以上のような第3変形例においても、前記実施形態および前記変形例と同様の効果が得られる。
【0168】
6.第4変形例
次に、前記実施形態の第4変形例に係るレーザー干渉計について説明する。
【0169】
図23は、第4変形例に係るレーザー干渉計1が備える干渉光学系50の一部を示す概略構成図である。
【0170】
以下、第4変形例について説明するが、以下の説明では、前記実施形態または前記変形例との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、本変形例の各図において、前記実施形態または前記変形例と同様の構成については、同一の符号を付している。
【0171】
第4変形例に係るレーザー干渉計1は、図23に示すハーフミラー112、152およびカメラ114、154を備えること以外、前記第2変形例に係るレーザー干渉計1と同様である。
【0172】
ハーフミラー112は、検光子9と第1開口素子11との間に配置され、参照光L2および物体光L3の各光量の一部を分岐させる。カメラ114は、ハーフミラー112で分岐された参照光L2および物体光L3の各光量の一部について、二次元の画像を取得する。この画像の各画素は、輝度情報を有している。このため、画像から参照光L2および物体光L3の各光軸の位置を検出することができる。したがって、ハーフミラー112およびカメラ114は、第1開口素子11の機能を代替できる。
【0173】
なお、ハーフミラー112とカメラ114との光学的距離L114は、ハーフミラー112と第1開口素子11との光学的距離L112と同じにしておく。これにより、第1開口素子11における位置ずれを、画像上に再現できる。
【0174】
ハーフミラー152は、第1開口素子11と第2開口素子15との間に配置され、参照光L2および物体光L3の各光量の一部を分岐させる。カメラ154は、ハーフミラー152で分岐された参照光L2および物体光L3の各光量の一部について、二次元の画像を取得する。この画像の各画素は、輝度情報を有している。このため、画像から参照光L2および物体光L3の各光軸の位置を検出することができる。したがって、ハーフミラー152およびカメラ154は、第2開口素子15の機能を代替できる。
【0175】
なお、ハーフミラー152とカメラ154との光学的距離L154は、ハーフミラー152と第1開口素子11との光学的距離L152と同じにしておく。これにより、第2開口素子15における位置ずれを、画像上に再現できる。
【0176】
以上のような第4変形例においても、前記実施形態および前記変形例と同様の効果が得られる。また、第4変形例は、画像上に位置ずれを再現できるため、より感覚的に配置の変更を行うことができるという点で有用である。さらに、ハーフミラー112およびカメラ114は、図2図14図17および図21に示す干渉光学系50にも適用可能である。
【0177】
7.第5変形例
次に、前記実施形態の第5変形例に係るレーザー干渉計について説明する。
【0178】
図24は、第5変形例に係るレーザー干渉計1が備える干渉光学系50の一部を示す概略構成図である。
【0179】
以下、第5変形例について説明するが、以下の説明では、前記実施形態または前記変形例との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、本変形例の各図において、前記実施形態または前記変形例と同様の構成については、同一の符号を付している。
【0180】
第5変形例に係るレーザー干渉計1は、図24に示す集光レンズ81およびコリメートレンズ82(平行化レンズ)を備えること以外、前記第1変形例に係るレーザー干渉計1と同様である。
【0181】
集光レンズ81は、第1開口素子11と絞り素子13との間に配置され、第1開口110を通過した参照光L2を貫通孔130に集光させる。これにより、集光後の参照光L2は、貫通孔130を通過できる。つまり、集光レンズ81は、その主平面に対して参照光L2が垂直に入射し、貫通孔130に集光させるように配置されている。また、貫通孔130の口径は、集光後の参照光L2が通過できる程度まで、前記第1変形例よりも小さくしておくのが好ましい。
【0182】
また、物体光L3のうち、参照光L2と角度ずれがないものを「物体光L31」とする。集光レンズ81は、第1開口110を通過した物体光L31を貫通孔130に集光させる。これにより、集光後の物体光L31も、貫通孔130を通過できる。
【0183】
一方、物体光L3のうち、参照光L2と角度ずれがあるものを「物体光L32」とする。第1開口110を通過した物体光L32は、集光レンズ81に入射しても、主平面に対して傾斜する角度で入射するため、貫通孔130には集光されず、絞り素子13で遮蔽される。
【0184】
よって、集光レンズ81を設けることにより、物体光L32をより確実に遮蔽することができる。その結果、角度ずれの少ない物体光L31のみを、受光素子10に到達させることができる。これにより、例えば、図20の左図の状態と中央図の状態とを区別することができる。具体的には、図20の左図の状態は、物体光L31が第1開口110を通過している状態である。したがって、図20の左図に集光レンズ81を追加した場合、物体光L31は、集光レンズ81で集光された後、貫通孔130を通過できる。これに対し、図20の中央図の状態は、物体光L32が第1開口110を通過している状態である。したがって、図20の中央図に集光レンズ81を追加した場合、物体光L32は、集光レンズ81で集光されても、貫通孔130を通過できない。このため、物体光L32は、受光素子10に到達できない。これにより、干渉縞の発生をより確実に抑制することができる。
【0185】
また、コリメートレンズ82は、絞り素子13と受光素子10との間に配置され、貫通孔130を通過した参照光L2および物体光L31を平行光に戻して受光素子10に受光させる。これにより、集光レンズ81とともに、両側テレセントリック光学系を構築することができる。つまり、平行光であった参照光L2および物体光L31を集光レンズ81によって集束させた後、コリメートレンズ82によって再び平行光に戻すことができる。その結果、受光素子10において干渉条件が崩れにくくなる。なお、コリメートレンズ82は、必要に応じて設けられればよく、省略されていてもよい。
【0186】
以上のような第5変形例においても、前記実施形態および前記変形例と同様の効果が得られる。
【0187】
8.前記実施形態が奏する効果
以上のように、前記実施形態に係るレーザー干渉計1は、非同軸光学系である干渉光学系50(光干渉部)と、指示部58と、を備える。干渉光学系50は、レーザー光源2、光変調器12、受光素子10、第1開口素子11および角度ずれ検出部57を有する。レーザー光源2は、射出光L1(レーザー光)を射出する。光変調器12は、射出光L1の周波数を変調し、参照光L2を生成する。受光素子10は、射出光L1が対象物14に照射されることによって生成される物体光L3および参照光L2を受光し、受光信号を出力する。第1開口素子11は、物体光L3および参照光L2が受光素子10に入射する光路24上に配置され、参照光L2の光軸に対する物体光L3の光軸の位置ずれを検出する。角度ずれ検出部57は、受光信号に基づいて、参照光L2の光軸に対する物体光L3の光軸の角度ずれを検出する。指示部58は、位置ずれの検出結果および角度ずれの検出結果に基づいて、干渉光学系50と対象物14との相対的な配置を変更する指示を出す。
【0188】
このような構成によれば、位置ずれや角度ずれとそれによって生じる影響との関係に基づいて、位置ずれおよび角度ずれの双方の解消を図ることができる。つまり、ユーザーによる光軸調整を支援して、位置ずれに伴う非干渉領域の発生を抑制するとともに、角度ずれに伴う干渉縞の発生を抑制することができる。これにより、非同軸光学系を採用した場合でも、受光信号におけるS/N比の低下の抑制が図られ、対象物14に対する計測精度の高いレーザー干渉計1を実現することができる。
【0189】
また、第1開口素子11は、第1開口110と、光検出領域11A、11B、11C、11Dと、を有する。第1開口110は、参照光L2および物体光L3が通過する。光検出領域11A、11B、11C、11Dは、第1開口110に隣り合う位置に設けられ、参照光L2の光軸に対して光軸の位置がずれた物体光L3を検出する。
【0190】
このような構成によれば、第1開口素子11において、参照光L2および物体光L3の位置ずれを検出することができる。そして、検出結果に基づいて、配置を変更することにより、位置ずれの修正を効率よく行うことができる。
【0191】
また、指示部58は、対象物14に対する干渉光学系50(光干渉部)の相対的な変位方向を指示するように構成されていてもよい。
【0192】
このような構成によれば、ユーザーは、指示にしたがって配置の変更を簡単に行うことができ、光軸の調整を効率よく行うことができる。
【0193】
また、前記実施形態に係るレーザー干渉計1は、絞り素子13を備える。絞り素子13は、第1開口素子11と受光素子10との間に配置される。この絞り素子13は、第1開口110を通過した参照光L2および物体光L3が通過する貫通孔130を有する。
【0194】
このような構成によれば、角度ずれが生じていない物体光L3は、第1開口110および貫通孔130の双方を通過して、受光素子10に到達できる。このため、受光信号のDCレベルに基づいて角度ずれを検出できる。これにより、ユーザーは、直感的かつ精度よく、角度ずれの程度を把握することができる。
【0195】
また、前記実施形態に係るレーザー干渉計1は、集光レンズ81を備える。集光レンズ81は、第1開口素子11と絞り素子13との間に配置され、第1開口110を通過した参照光L2および物体光L3を貫通孔130に集光させる。
【0196】
このような構成によれば、参照光L2に対して角度ずれがある物体光L32をより確実に遮蔽することができる。これにより、角度ずれの少ない物体光L31のみを、受光素子10に到達させることができる。その結果、干渉縞の発生をより確実に抑制することができる。
【0197】
また、前記実施形態に係るレーザー干渉計1は、コリメートレンズ82(平行化レンズ)を備える。コリメートレンズ82は、絞り素子13と受光素子10との間に配置され、貫通孔130を通過した参照光L2および物体光L3を平行化させる。
【0198】
このような構成によれば、集束された参照光L2および物体光L31を、平行光に戻すことができる。
【0199】
また、前記実施形態に係るレーザー干渉計1は、第2開口素子15を備える。第2開口素子15は、第1開口素子11と受光素子10との間に配置される。この第2開口素子15は、第1開口110を通過した参照光L2の光軸に対する、第1開口110を通過した物体光L3の光軸の位置ずれを検出する。
【0200】
このような構成によれば、第2開口素子15における検出結果に基づいて、第2開口150を通過する参照光L2の光軸に対して、物体光L3の光軸が位置ずれしている方向を求めることができる。これにより、角度ずれを効率よく修正することができる。
【0201】
また、前記実施形態に係るレーザー干渉計の光軸調整方法は、非同軸光学系である干渉光学系50(光干渉部)を備えるレーザー干渉計1の光軸調整方法である。干渉光学系50は、レーザー光源2、光変調器12、受光素子10、第1開口素子11および角度ずれ検出部57を有する。レーザー光源2は、射出光L1(レーザー光)を射出する。光変調器12は、射出光L1の周波数を変調し、参照光L2を生成する。受光素子10は、射出光L1が対象物14に照射されることによって生成される物体光L3および参照光L2を受光し、受光信号を出力する。第1開口素子11は、物体光L3および参照光L2が受光素子10に入射する光路24上に配置され、参照光L2の光軸に対する物体光L3の光軸の位置ずれを検出する。角度ずれ検出部57は、受光信号に基づいて、参照光L2の光軸に対する物体光L3の光軸の角度ずれを検出する。
【0202】
そして、前記実施形態に係るレーザー干渉計の光軸調整方法は、位置ずれの検出結果および角度ずれの検出結果に基づいて、干渉光学系50と対象物14との相対的な配置を変更する指示を出すステップと、指示に基づいて、配置を変更するステップと、を有する。
【0203】
このような構成によれば、位置ずれや角度ずれとそれによって生じる影響との関係に基づいて、位置ずれおよび角度ずれの双方の解消を容易に図ることができる。つまり、ユーザーによる光軸調整を支援して、位置ずれに伴う非干渉領域の発生を抑制するとともに、角度ずれに伴う干渉縞の発生を抑制する作業を容易に行うことができる。これにより、レーザー干渉計1に非同軸光学系が用いられた場合でも、光軸の調整を効率よく行うことができる。
【0204】
以上、本発明のレーザー干渉計を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明のレーザー干渉計は、前記実施形態に限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、前記実施形態に係るレーザー干渉計には、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【0205】
本発明のレーザー干渉計は、前述した変位計や速度計の他、例えば、振動計、傾斜計、距離計(測長器)等にも適用可能である。また、本発明のレーザー干渉計の用途としては、距離計測、3Dイメージング、分光等を可能にする光コム干渉計測技術、角速度センサー、角加速度センサー等を実現する光ファイバージャイロ、移動ミラーデバイスを備えるフーリエ分光器等が挙げられる。
【0206】
また、光源、光変調器および受光素子のうちの2つ以上は、同一の基板上に載置されていてもよい。これにより、干渉光学系の小型化および軽量化を容易に図るとともに、組立容易性を高めることができる。
【0207】
また、前記実施形態は、いわゆるマイケルソン型干渉光学系を有するが、本発明のレーザー干渉計は、その他の方式の干渉光学系、例えばマッハツェンダー型干渉光学系を有するものにも適用可能である。
【符号の説明】
【0208】
1…レーザー干渉計、2…レーザー光源、3…コリメートレンズ、4…光分割器、6…1/2波長板、7…1/4波長板、8…1/4波長板、9…検光子、10…受光素子、11…第1開口素子、11A…光検出領域、11B…光検出領域、11C…光検出領域、11D…光検出領域、12…光変調器、13…絞り素子、14…対象物、15…第2開口素子、15A…光検出領域、15B…光検出領域、15C…光検出領域、15D…光検出領域、17…遮蔽素子、18…光路、20…光路、22…光路、24…光路、30…振動素子、50…干渉光学系、51…センサーヘッド部、52…復調演算部、53…前処理部、54…復調処理部、55…復調信号出力部、56…第1位置ずれ算出部、57…角度ずれ検出部、58…指示部、59…本体部、60…信号生成部、61…発振回路、71…第2位置ずれ算出部、72…テーブルデータ検定部、81…集光レンズ、82…コリメートレンズ、101…受光面、110…第1開口、112…ハーフミラー、114…カメラ、130…貫通孔、150…第2開口、152…ハーフミラー、154…カメラ、172…開口、401…基部、402…第1振動腕、403…第2振動腕、404…電極、405…電極、406…光反射面、431…振動片、432…溝、433…パッド、434…回折格子、435…パッド、436…振動方向、4311…表面、4312…裏面、L1…射出光、L112…光学的距離、L114…光学的距離、L152…光学的距離、L154…光学的距離、L1a…第1分割光、L1b…第2分割光、L2…参照光、L3…物体光、L31…物体光、L32…物体光、L5…戻り光、Lqom…光学的距離、Lsam…光学的距離、S102…ステップ、S104…ステップ、S106…ステップ、S112…ステップ、S114…ステップ、S116…ステップ、S122…ステップ、S132…ステップ、S134…ステップ、S136…ステップ、S142…ステップ、S144…ステップ、S146…ステップ、S152…ステップ、S154…ステップ、S156…ステップ、Sd…駆動信号、Ss…基準信号、a…方向、b…方向、c…方向、d…方向、e…方向、f…方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24