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特開2024-166875自律走行車両制御システムおよび自律走行車両制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166875
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】自律走行車両制御システムおよび自律走行車両制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20241122BHJP
【FI】
G05D1/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083269
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石島 透
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG10
5H301LL01
5H301LL06
5H301LL12
(57)【要約】
【課題】自律走行ロボットを走行させることなく、進入禁止領域を更新し、障害物への接触リスクを低減する。
【解決手段】カメラ4は、ロボット稼働エリアの天井に設置されており、天井から床方向に向けて、障害物可動領域の平面化画像を撮影する。サーバ3は、カメラ4によって撮影された障害物可動領域の平面化画像から、障害物可動領域内の障害物5、6を特定し、障害物5、6を包含する進入禁止領域を設定した環境地図を作成し、自律走行ロボット2に提供する。自律走行ロボット2は、最新の進入禁止領域が設定された環境地図に基づいて、進入禁止領域に入らないように、各種センサで周囲の状況(障害物)を検知しながら障害物可動領域内を走行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
障害物を含む走行環境を俯瞰して撮影する撮像装置と、
所定のタイミングで、前記撮像装置が撮影した前記走行環境の平面化画像を取得し、前記平面化画像から前記走行環境内の障害物を特定し、前記特定した障害物を包含する進入禁止領域を設定した環境地図を作成するサーバと、
前記進入禁止領域が設定された前記環境地図に基づいて、前記走行環境を走行する走行車両と、
を備えることを特徴とする自律走行車両制御システム。
【請求項2】
前記所定のタイミングは、
前記走行車両が前記走行環境に差し掛かった時点である、
ことを特徴とする請求項1に記載の自律走行車両制御システム。
【請求項3】
前記所定のタイミングは、
所定の時間周期である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の自律走行車両制御システム。
【請求項4】
前記サーバは、
前記進入禁止領域を設定する際に、前記障害物の周囲に境界領域を設定し、前記境界領域を包含するように前記進入禁止領域を設定し、
前記境界領域のサイズは、前記走行車両の個体差に応じて設定される、
ことを特徴とする請求項1に記載の自律走行車両制御システム。
【請求項5】
撮像装置によって障害物を含む走行環境を俯瞰して撮影すること、
所定のタイミングで、前記撮像装置が撮影した前記走行環境の平面化画像を取得すること、
前記平面化画像から前記走行環境内の障害物を特定すること、
前記特定した障害物を包含する進入禁止領域を設定した環境地図を作成すること、
前記進入禁止領域が設定された前記環境地図に基づいて、走行車両を走行させること、
を含むことを特徴とする自律走行車両制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行車両制御システムおよび自律走行車両制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、居住空間または商業施設で稼働するサービスロボット(以下、自律走行ロボットという)がある。自律走行ロボットは、各種センサにより障害物を検知し、障害物との接触を避けて走行するように制御されるが、障害物の形状または材質によっては各種センサで正しく検知ができず、自律走行ロボットが走行中に障害物が接触してしまうことがある。検知の難しい障害物の例としては、ガラス材質またはメッシュ状のもの、鉛直方向の断面形状が複雑なもの、脚の細いテーブルまたは椅子等が挙げられる。一般的に、自律走行ロボットの走行する領域内にこれらの検知が難しい障害物が存在する場合の対処としては、自律走行用の環境地図上で障害物が存在する場所に対して進入禁止領域を設定することがある。これにより、自律走行ロボットは、進入禁止領域を走行しないように制御されるため、自律走行ロボットが障害物を検知することができなかったとしても障害物との接触を回避できる。
しかしながら、障害物の周囲に対して進入禁止領域を設定したとしても、障害物が移動してしまった場合、あるいは障害物の数の増減があった場合には、進入禁止領域を再設定する必要がある。特に、自律走行ロボットの走行する領域が居住空間である場合には、障害物が移動するおそれが高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-184148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献1では、鉛直方向の断面形状が複雑な障害物である棚を対象に、その周囲に進入禁止領域を設定し、自律走行ロボットと障害物との接触リスクを低減させる例が示されている。特許文献1では、棚に対して正しく進入禁止領域を設定するために、センサを多数搭載した自律走行ロボットを棚の付近を走行させることで、その棚の外形を取得し、その外形をもとに進入禁止領域を設定している。
自律走行ロボットの走行する領域が居住空間であった場合には、特許文献1では進入禁止領域を更新するため、その都度、自律走行ロボットを、自律走行ロボットの走行する領域を走行させる必要がある。また、その自律走行ロボットはセンサを多数搭載した自律走行ロボットである必要がある。
【0005】
本発明の目的は、自律走行ロボットの走行する領域内に設置されている障害物、特に自律走行ロボットで検知が困難な障害物が移動する環境において、進入禁止領域を更新するために自律走行ロボットを走行させる必要がなく、自律走行ロボット自身のセンサ構成または性能を制限せずに進入禁止領域を更新し、障害物への接触リスクを低減することができる自律走行車両制御システムおよび自律走行車両制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の自律走行車両制御システムは、障害物を含む走行環境を俯瞰して撮影する撮像装置と、所定のタイミングで、前記撮像装置が撮影した前記走行環境の平面化画像を取得し、前記平面化画像から前記走行環境内の障害物を特定し、前記特定した障害物を包含する進入禁止領域を設定した環境地図を作成するサーバと、前記進入禁止領域が設定された前記環境地図に基づいて、前記走行環境を走行する走行車両と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の自律走行車両制御方法は、撮像装置によって障害物を含む走行環境を俯瞰して撮影すること、所定のタイミングで、前記撮像装置が撮影した前記走行環境の平面化画像を取得すること、前記平面化画像から前記走行環境内の障害物を特定すること、前記特定した障害物を包含する進入禁止領域を設定した環境地図を作成すること、前記進入禁止領域が設定された前記環境地図に基づいて、走行車両を走行させること、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、自律走行ロボットの走行する領域内に設置されている障害物、特に自律走行ロボットで検知が困難な障害物が移動する環境において、進入禁止領域を更新するために自律走行ロボットを走行させる必要がなく、自律走行ロボット自身のセンサ構成または性能を制限せずに進入禁止領域を更新し、障害物への接触リスクを低減することができる自律走行車両制御システムおよび自律走行車両制御方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態による自律走行車両制御システム1の構成を示す模式図である。
図2】本実施形態による自律走行ロボット2の外観の一例を示す模式図である。
図3】本実施形態による自律走行車両制御システム1の構成を示すブロック図である。
図4】本実施形態による自律走行車両制御システム1の動作を説明するためのフローチャートである。
図5】本実施形態による実空間と平面化画像を説明する概念図である。
図6】本実施形態による環境地図と平面化画像の向き・スケールの合わせ方法を説明するための概念図である。
図7】本実施形態による障害物の特定および進入禁止領域の設定方法を説明するための概念図である。
図8】本実施形態による障害物可動領域で移動された椅子41、42の境界領域設定方法を説明するための概念図である。
図9】実施形態による進入禁止領域の他の設定方法について説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明による自律走行ロボット制御システムの形態について、図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態による自律走行車両制御システム1の構成を示す模式図である。図1において、自律走行車両制御システム1は、自律走行ロボット2(走行車両)、サーバ3およびカメラ4(撮像装置)を備えている。自律走行ロボット2は、環境地図および各種センサ(後述)の検知結果に基づいて自己の位置を推定しながら走行する(以下の説明では、自律走行ロボット2の走行する領域をロボット稼働エリアという)。その際、環境地図に進入禁止領域(論理的な壁)が設定されている場合は、進入禁止領域を走行しないように制御される。すなわち、進入禁止領域は、ロボット稼働エリア内の障害物5、6を含む領域であり、進入禁止領域に入らなければ、障害物5、6に接触するリスクは高くない。なお、本実施形態では、障害物5、6としては、ロボット稼働エリア内に設置された、移動可能な家具(テーブル、椅子、棚など)を想定しているが、進入禁止領域内には、それ以外の障害物として、壁や、柱、パーティションなども含まれてもよい。また、進入禁止領域は、障害物5、6を含む領域以外の領域、例えば、窓ガラス等の視認が困難な可能性のある構造物の近傍などの、自律走行ロボット2を走行させたくない領域として設定することも可能である。また、以下では、障害物5、6の移動についてのみ説明するが、障害物5、6の移動以外にも、追加されたり、取り除かれたりする場合も含んでもよい。
【0012】
サーバ3は、カメラ4によって撮影された障害物可動領域を平面化処理した平面化画像から、障害物可動領域内の障害物5、6が存在する進入禁止領域を設定した環境地図を作成し、自律走行ロボット2に提供する。カメラ4は、ロボット稼働エリアの天井に設置されており、天井から床方向に向けて、障害物可動領域の全域(少なくとも自律走行ロボット2が走行する領域)を撮影する。なお、図1では、1つのカメラ4が設置されているが、複数のカメラを設置し、これら複数のカメラで撮影された撮影画像を合成した、障害物可動領域の全域(少なくとも自律走行ロボット2が走行する領域)を網羅した1つの画像を平面化処理した画像を、平面化画像として用いてもよい。
【0013】
自律走行ロボット2とサーバ3とは、無線通信7を介して、データ通信することが可能となっている。図1では、自律走行ロボット2は、障害物可動領域内に進入する前に(障害物不動領域で)、サーバ3に対して、無線通信7を介して、環境地図の更新を要求する。ここで、障害物不動領域とは、障害物が移動しない領域(固定された領域)である。また、障害物可動領域とは、障害物が移動する可能性がある領域であり、障害物としては、例えば、テーブルや、椅子などを想定している。サーバ3は、自律走行ロボット2から環境地図の更新要求があると、カメラ4で障害物可動領域の全域を撮影し、平面化処理した平面化画像から障害物可動領域内の障害物5、6を特定し、特定した障害物5、6を包含する進入禁止領域を設定した環境地図を作成し、無線通信7を介して、作成した環境地図を自律走行ロボット2に送信する。自律走行ロボット2は、進入禁止領域が設定された環境地図に従って、障害物可動領域内を走行する。
この実施形態において、ロボット稼働エリアは、上述の説明から明らかなように、障害物不動領域と、障害物可動領域とからなる。ここで、障害物可動領域は、自律走行ロボット2の走行環境を構成している。
【0014】
図2は、本実施形態による自律走行ロボット2の外観の一例を示す模式図である。図2に示すように、自律走行ロボット2の筐体10の外側には、LiDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)11、深度カメラ12、複数の超音波センサ13、13、…が設置されており、筐体10の下部には、走行用の車輪14、14が配設されている。LiDAR11は、筐体10の所定の位置に配設されており、所定の角度範囲にパルス状にレーザー光を発光するセンサであり、レーザー照射に対する反射光を測定し、ロボット稼働エリアにおける障害物5、6までの距離、位置や形状を検知する。本実施形態による自律走行ロボット2は、障害物可動領域内を走行する際に、LiDAR11において検知した結果を用いて、サーバ3で作成された環境地図に従って障害物5、6を避けながら走行することができる。深度カメラ12は、深度センサを内蔵しており、障害物可動領域内における障害物5、6の奥行きの情報(立体)を取得するが、省略可能である。複数の超音波センサ13、13、…は、各々、超音波を発信して、受信するまでの時間などを測定して、障害物可動領域内における障害物5、6の有無や距離を測定するが、省略可能である。なお、自律走行ロボット2に、深度カメラ12、または超音波センサ13、13、…以外のセンサを設けて、障害物可動領域内における障害物5、6の形状等の情報を取得するようにしてもよい。
【0015】
図3は、本実施形態による自律走行車両制御システム1の構成を示すブロック図である。なお、図1または図2に対応する部分には同一の符号を付けて説明を省略する。図3において、自律走行ロボット2は、上述したLiDAR11に加えて、制御部(CPU)15、記憶部16、操作部17、無線通信部18、および車輪駆動部19を備えている。制御部15は、記憶部16に記憶されている自律走行プログラムに従って、サーバ3で作成された環境地図、およびLiDAR11により検知・測定した結果を用いて、障害物5、6を避けながら走行するように各部を制御する。記憶部16は、上記自律走行プログラムや、各種データなど、特に、障害物可動領域内の障害物の位置、サイズ、進入禁止領域が設定された環境地図(データ)を記憶する。なお、環境地図は、1つの画像データに限定されず、LiDAR11で作成したベース環境地図のレイヤと進入禁止領域が示された環境地図のレイヤとから構成されていてもよい。環境地図は、自律走行ロボット2が障害物可動領域内に進入する前に、サーバ3によって更新され得る。
【0016】
操作部17は、ユーザが走行開始や、停止などの指示を行うための各種スイッチ等からなる。無線通信部18は、サーバ3との間で無線通信を確立し、データ通信を行う。特に、本実施形態では、自律走行ロボット2からサーバ3に対して環境地図の更新を要求する際に、または、環境地図の更新要求に応じて、サーバ3から送信される、更新された環境地図を受信する際に用いられる。車輪駆動部19は、車輪14、14を駆動する駆動系を含み、制御部15の制御の下、走行、停止、旋回などを行うよう車輪14、14を駆動する。
【0017】
サーバ3は、一般的なコンピュータであり、制御部(CPU)21、記憶部22、無線通信部23、表示部24、および操作部25を備えている。制御部15は、記憶部16に記憶されている環境地図作成プログラムに従って、自律走行ロボット2から環境地図の更新の要求があると、カメラ4で障害物可動領域の全域を撮影し、画像処理により、撮影画像の平面化処理、環境地図と平面化画像の向き・スケール合わせを行い、画像認識処理により、平面化画像から障害物を特定し、障害物の特定結果から進入禁止領域を設定した環境地図を作成する。このとき、障害物可動領域内の障害物が移動した場合には、移動した障害物に応じて、新たな進入禁止領域が設定されることになる。記憶部22は、上記環境地図作成プログラムや、各種データ、進入禁止領域を設定した環境地図(データ)などを記憶する。無線通信部23は、自律走行ロボット2との間で無線通信を確立し、データ通信を行う。特に、本実施形態では、自律走行ロボット2からの環境地図の更新要求を受信する際に、または、環境地図の更新要求に応じて作成した、更新された環境地図を送信する際に用いられる。表示部24は、動作状況などの各種情報を表示する。操作部25は、ユーザが動作の指示を行うためのキーボード等からなる。
【0018】
図4は、本実施形態による自律走行車両制御システム1の動作を説明するためのフローチャートである。自律走行ロボット2において、制御部15は、障害物不動領域を走行時、自己位置を認識し(ステップS10)、現地点から先の走行経路が障害物可動領域であるか否かを判断する(ステップS12)。そして、障害物可動領域でない場合には(ステップS12のNO)、ステップS10に戻り、走行を継続する。
【0019】
一方、現地点から先の走行経路が障害物可動領域である場合には(ステップS12のYES)、制御部15は、車輪駆動部19を介して、走行を一時停止する(ステップS14)。次に、制御部15は、無線通信部18を介して、環境地図の更新要求をサーバ3に送信する(ステップS16)。このとき、制御部15は、現在、自律走行ロボット2の記憶部16に保持されている環境地図を送信する。そして、制御部15は、サーバ3からの応答を受信したか否かを判断し(ステップS18)、応答を受信していない場合には(ステップS18のNO)、応答を受信するまで待機する。
【0020】
一方、サーバ3において、制御部21は、自律走行ロボット2から更新要求を受信したか否かを判断しており(ステップS30)、更新要求を受信していない場合には(ステップS30のNO)、更新要求を受信するまで待機する。一方、自律走行ロボット2から更新要求(および環境地図)を受信した場合には(ステップS30のYES)、制御部21は、カメラ4から撮影画像を取得し(ステップS32)、取得した撮影画像を画像処理により平面化する(ステップS34)。
【0021】
ここで、図5は、本実施形態による実空間と平面化画像を説明する概念図である。図5(a)には、障害物可動領域を含む実空間30を模擬的に示しており、複数の障害物を模したブロックが置かれている。図5(b)には、図5(a)に示す実空間30を、天井に設置したカメラ4から撮影した撮影画像を平面化処理した平面化画像31を示している。このように、平面化画像31では、障害物可動領域内に配置された障害物は略真上から俯瞰した画像となる。例えば、図5(c)に示すように、障害物5、6において、高さ方向の断面形状に段差がある場合、自律走行ロボット2のセンシング位置SP1、SP2によっては、障害物5、6の実際の大きさ(最大サイズ)ではなく、凹部を障害物5、6のサイズと認識してしまう可能性がある。このように、実際のサイズより小さく認識してしまうと、実際に走行した際には、障害物5、6と接触するリスクがある。これに対して、天井に設置したカメラ4から撮影した撮影画像を平面化処理した平面化画像31を用いれば、図5(c)に示すように、障害物5、6を上方から俯瞰した領域R1、R2を障害物と特定することができるので、自律走行ロボット2のセンシング位置SP1、SP2によらず、障害物5、6を正確に避けるように進入禁止領域を設定することが可能となる。
【0022】
次に、制御部21は、環境地図と平面化画像の向き・スケールを合わせる(ステップS36)。ここで、図6(a)、(b)は、本実施形態による環境地図と平面化画像の向き・スケールの合わせ方法を説明するための概念図である。図6(a)に示すように、実空間30において、平面化画像31が、点線で示される範囲DLであり、環境地図32が破線で示される範囲BLであるとする。次の(1)~(6)の情報を予め設定しておくことで、移動・回転・拡大縮小といった基本的な幾何学変換(画像処理)によって、図6(b)に示すように、平面化画像31と環境地図32とを重畳(一致)させることができる。
【0023】
(1)平面化画像内における基準方向ベクトル(例えば、N1(北))
(2)平面化画像の縮尺(pixel/meter)
(3)環境地図内における基準方向ベクトル(例えば、N2(北))
(4)環境地図の縮尺(pixel/meter)
(5)平面化画像の基準点(例えば、点D1)
(6)環境地図内における平面化画像の基準点(例えば、点D2)
【0024】
なお、走行性能や、筐体サイズ等が異なる異種の自律走行ロボットに対して適用するには、平面化画像は同じであるので、異種の自律走行ロボットのそれぞれに対しては、上記(3)、(4)、(6)を事前に設定しておく必要がある。
【0025】
次に、制御部21は、向き・スケールを合わせた平面化画像から画像認識処理を用いて障害物を特定し(ステップS38)、障害物の特定結果から、平面化画像に進入禁止領域を設定する(ステップS40)。制御部21は、進入禁止領域を環境地図に適用し(ステップS42)、環境地図に更新があったか否かを判断する(ステップS44)。
【0026】
ここで、図7は、本実施形態による障害物の特定および進入禁止領域の設定方法を説明するための概念図である。カフェやレストランなどで稼働する配膳用の自律走行ロボット2の一例について説明する。図7(a)に示すように、椅子やテーブルなどの移動する可能性のある障害物(例えば、椅子41、42)が存在する環境(障害物可動領域)の実空間40において、自律走行ロボット2が走行する場合を想定する。予め進入禁止領域を環境地図上に設定すれば、自律走行ロボット2は、進入禁止領域内を走行しないので、センサによる検知可否に依らずに障害物との接触を回避することができる。
【0027】
しかしながら、図7(b)に示すように、それらの障害物、図示の例では2脚の椅子41、42が移動し、環境地図43における進入禁止領域の境界L1、L2の外に出てしまう場合が想定される。椅子やテーブルなどの障害物は、自律走行ロボット2が備える各種センサで認識しにくい形状であったり、センサ(特に、LiDAR)の取付位置によっては正確に認識できなかったりする。ゆえに、図7(b)の点線矢印で示すように、環境地図43に設定されている進入禁止領域に基づいて走行し、かつ各種センサを用いたとしても、図7(b)の×印の位置で自律走行ロボット2が障害物である椅子41、42と接触するリスクが高まる。
【0028】
このような問題に対して、本実施形態では、自律走行ロボット2がその環境(障害物可動領域)を走行する直前に、天井のカメラ4で撮影した画像から、実空間の障害物(図7(b)の椅子41、42)の位置および大きさを認識して、図7(c)に示すように、移動された椅子41、42の境界領域(点線の矩形)を含む、L1’、L2’を境界とする新たな進入禁止領域に設定し直し、該新たな進入禁止領域を環境地図43に適用する。このように、環境地図43を更新することで、実空間40において障害物である椅子41、42が移動したとしても、その移動に対応することができる。ゆえに、自律走行ロボット2は、更新された環境地図43に基づいて、図7(d)の実線矢印に示すように実空間40を走行でき、従来方法と比べて移動した障害物(椅子41、42)との接触のリスクを大幅に低減することができる。
【0029】
ここで、図8は、本実施形態による障害物可動領域で移動された椅子41、42の境界領域設定方法を説明するための概念図である。図8(a)に示すような障害物5、6を、天井のカメラ4で撮影し、撮影した画像を平面化処理すると、図8(b)に示す平面化画像が得られる。平面化画像において、平面化画像5’、6’がそれぞれ障害物5、6に対応する。サーバ3では、図8(b)に示す平面化画像から、障害物5、6(平面化画像5’、6’)の位置、および図8(c)に示すその見かけ上のサイズA1、A2を特定する。そして、障害物5、6のサイズA1、A2から進入禁止領域を設定するわけであるが、このとき、自律走行ロボット2が障害物5、6に接近したとしても接触しないように、自律走行ロボット2の個体差(筐体10のサイズや、自己位置認識(各種センサ)の精度、駆動系の精度など)を考慮して、障害物5、6(平面化画像5’、6’)に境界領域を設定する。
【0030】
例えば、自律走行ロボット2の筐体10のサイズが比較的小さい場合や、自己位置認識(各種センサ)の精度が高い、あるいは駆動系の精度が高い場合などには、図8(d)に示すように、障害物5、6(平面化画像5’、6’)の周囲に比較的小さい(障害物までの距離が小)境界領域A1’、A2’を設定する。一方、自律走行ロボット2の筐体10のサイズが比較的大きい場合や、自己位置認識(各種センサ)精度が低い、あるいは駆動系の精度が低い場合などには、図8(e)に示すように、障害物5、6(平面化画像5’、6’)の周囲に比較的大きい(障害物までの距離が大)境界領域A1”、A2”を設定する。進入禁止領域は、障害物5、6(平面化画像5’、6’)の周囲に設定された境界領域A1’、A2’、または境界領域A1”、A2”を包含するように設定される。
【0031】
図4に説明を戻すと、サーバ3の制御部21は、環境地図に更新があった場合、すなわち、障害物可動領域において、障害物の変化(移動、追加など)があった場合には(ステップS44のYES)、無線通信部23を介して、自律走行ロボット2に新たな進入禁止領域が適用された更新された環境地図を送信する(ステップS46)。一方、環境地図が更新されていなかった場合、すなわち、障害物可動領域において、障害物の変化がなかった場合には(ステップS44のNO)、制御部21は、無線通信部23を介して、自律走行ロボット2に更新不要通知を送信する(ステップS48)。その後、制御部21は、当該処理を終了する(もしくは、終了指示があるまで、ステップS30に戻り、当該処理を継続する)。
【0032】
一方、ステップS18で、サーバ3からの応答を待機していた自律走行ロボット2の制御部15は、サーバ3からの応答を受信すると(ステップS18のYES)、サーバ3から更新された進入禁止領域が適用された環境地図を受信したか否かを判断し(ステップS20)、環境地図を受信した場合には(ステップS20のYES)、制御部15は、記憶部16に保持していた環境地図を、受信した新たな環境地図に更新し(ステップS22)、車輪駆動部19を介して、走行を再開する(ステップS24)。すなわち、自律走行ロボット2は、新たな進入禁止領域が適用された環境地図に従って、障害物可動領域内を走行する。更新された環境地図では、障害物の変化(移動、追加など)に応じて新たな進入禁止領域が適用されているので、自律走行ロボット2は、移動した障害物(椅子41、42)に接触することなく走行することができる。その後、制御部15は、予め設定されていた目的地に到達するか、予め設定されていたジョブが終了すると、当該処理を終了する(もしくは、終了指示があるまで、ステップS10に戻り、当該処理を継続する)。
【0033】
一方、サーバ3から更新不要通知を受信した場合には(ステップS20のNO)、制御部15は、記憶部16に保持していた環境地図を更新することなく、車輪駆動部19を介して、走行を再開する(ステップS24)。すなわち、自律走行ロボット2は、既に保持している環境地図の進入禁止領域に従って、障害物可動領域内を走行する。この場合、障害物の変化(移動、追加など)はないので、自律走行ロボット2は、既に保持している環境地図の進入禁止領域に従って走行すれば、障害物(テーブルや、椅子)に接触することなく走行することができる。その後、制御部15は、予め設定されていた目的地に到達するか、予め設定されていたジョブが終了すると、当該処理を終了する(もしくは、終了指示があるまで、ステップS10に戻り、当該処理を継続する)。
【0034】
上述した実施形態によれば、自律走行ロボット2が障害物可動領域を走行するのに先だって、サーバ3に環境地図を要求すると、サーバ3によって、カメラ4で障害物可動領域を撮影し、撮影画像を平面化処理した平面化画像から障害物可動領域内の障害物5、6を特定し、特定した障害物5、6を包含する進入禁止領域を設定した環境地図を作成するようにしたので、自律走行ロボット2は、障害物5、6を検知することが難しい場合や、障害物5、6が移動した場合であっても、最新の進入禁止領域が設定された環境地図に基づいて、障害物可動領域内を走行することができ、障害物5、6への接触リスクを低減することができる。
【0035】
上述した実施形態によれば、自律走行ロボット2が障害物可動領域に差し掛かった時点で、サーバ3に環境地図を要求するようにしたので、予め障害物可動領域の最新の環境地図を取得することができ、障害物5、6を検知することが難しい場合や、障害物5、6が移動した場合であっても、より正確な進入禁止領域が設定された最新の環境地図に基づいて障害物可動領域を走行することができ、障害物5、6への接触リスクを低減することができる。
【0036】
また、上述した実施形態では、自律走行ロボット2から環境地図の更新が要求されたことを契機に、サーバ3が新たな進入禁止領域を反映した環境地図を更新するようにしたが、自律走行ロボット2からの要求ではなく、所定の時間周期でサーバ3が新たな進入禁止領域を反映した環境地図を更新し、自律走行ロボット2から要求があると、直近で更新した環境地図を送信するようにしてもよい。これによれば、サーバ3によって所定の時間周期で最新の進入禁止領域が設定された環境地図を作成するようにしたので、自律走行ロボット2は、障害物5、6を検知することが難しい場合や、障害物5、6が移動した場合であっても、常に最新の進入禁止領域が設定された環境地図に従って障害物可動領域を走行することができ、障害物5、6への接触リスクを低減することができる。
【0037】
また、自律走行ロボット2が障害物可動領域に差し掛かった時点で、および所定の時間周期の双方で、サーバ3によって最新の進入禁止領域が設定された環境地図を作成するようにしてもよい。これによれば、自律走行ロボット2は、障害物5、6を検知することが難しい場合や、障害物5、6が移動した場合であっても、最新の進入禁止領域が設定された環境地図に従って障害物可動領域を走行することができ、障害物5、6への接触リスクを低減することができる。
【0038】
また、上述した実施形態によれば、サーバ3により、障害物5、6の周囲に、自律走行ロボット2の個体差(筐体10のサイズや、自己位置認識(各種センサ)の精度、駆動系の精度など)に応じて異なるサイズの境界領域A1’、A2’または境界領域A1”、A2”を設定し、該境界領域A1’、A2’は境界領域A1”、A2”を包含するように進入禁止領域を設定するようにしたので、自律走行ロボット2の個体差に応じた進入禁止領域を設定することができ、障害物5、6を検知することが難しい場合や、障害物5、6が移動した場合であっても、障害物5、6への接触リスクを低減することができる。
【0039】
なお、上述した実施形態では、自律走行ロボット2から環境地図の更新が要求されたことを契機に、サーバ3が新たな進入禁止領域を反映した環境地図を更新するようにしたが、サーバ3が定期的に障害物可動領域を監視し、障害物が移動したことを検知(動体検知)したことを契機に、新たな進入禁止領域を反映した環境地図を作成するようにしてもよい。
【0040】
また、上述した実施形態では、図1に記載のように、自律走行ロボット2が、障害物可動領域内に進入する前に、障害物不動領域で、環境地図の更新を要求するようにしたが、これに限定されない。例えば、ロボット稼働エリアにおける障害物可動領域を複数とし、複数の障害物可動領域のうちの1つの障害物可動領域(「障害物可動領域A」とする)から、複数の障害物可動領域のうちの他の1つの障害物可動領域(障害物可動領域B」とする)に進入する際に、障害物可動領域Aで、障害物可動領域Bの環境地図の更新を要求するようにしてもよい。
【0041】
また、上述した実施形態において、環境地図の更新は、障害物が固定されているエリアでは行う必要がない。図7(a)~(d)に示すように、障害物が移動するような環境を障害物可動領域として設定し、その障害物可動領域に絞って、上述した自律走行ロボット制御システムを適用することで、処理負荷の低減・カメラ台数の限定など、システム全体の合理化を図ることができる。
【0042】
また、上述した実施形態では、図1に記載のような自律走行ロボット2の外部にあるサーバ3において、進入禁止領域を設定した環境地図を作成するようにしたが、これに限らず、サーバを自律走行ロボット2の内部に設けて、自律走行ロボット2が障害物可動領域に進入する直前で、カメラ4からの撮影画像を取得し、自律走行ロボット2のサーバが撮影画像を平面化処理した平面化画像から新たな進入禁止領域を設定した環境地図を作成(更新)するようにしてもよい。
【0043】
また、上述した実施形態では、天井に設置した少なくとも1つのカメラ4によって撮影した撮影画像から平面化画像を生成し、該平面化画像から障害物の位置、大きさなどを認識するようにしたが、障害物をより正確に認識するために、あるいは、障害物以外の例えば人を除外するために、カメラ4以外の深度カメラや、LiDARなどのセンサを設置し、これらカメラやセンサなど取得した情報から障害物の位置、大きさなどを認識するようにしてもよい。
【0044】
また、上述した実施形態では、天井に設置した少なくとも1つのカメラ4によって撮影した撮影画像から平面化画像を生成し、該平面化画像から個々の障害物の位置、大きさなどを認識し、進入禁止領域に移動した個々の障害物が包含されるようにしたが、これに限定されない。ここで、図9は、実施形態による進入禁止領域の他の設定方法について説明するための概念図である。図9(a)に示す平面化画像から認識した個々の障害物の位置、大きさ(障害物を囲む点線)に基づいて、その都度、図9(b)に示すように、近接した複数の障害物を包含する凹包絡線(または凸包絡線)50、51、52、これら凹包絡線(または凸包絡線)50、51、52を導出することで、進入禁止領域を作成するようにしてもよい。
【0045】
したがって、本実施形態によれば、カメラ画像を解析することによって、障害物5、6を検知するので、進入禁止領域を更新するために自律走行ロボット2を走行させる必要がなく、自律走行ロボット2自身のセンサ構成または性能を制限せずに進入禁止領域を更新し、障害物への接触リスクを低減することができる自律走行車両制御システムおよび自律走行車両制御方法を提供することができる。
【0046】
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 自律走行車両制御システム 30、40 実空間
2 自律走行ロボット(走行車両) 31 平面化画像
3 サーバ 32、43 環境地図
4 カメラ(撮像装置) 41、42 椅子
5、6 障害物 50、51、52 凹包絡線
7 無線通信 R1、R2 領域
11 LiDAR SP1、SP2 センシング位置
12 深度カメラ L1、L2、L1’、L2’ 境界
13 超音波センサ S1、S2 サイズ
14 車輪 A1’、A2’、A1”、A2” 境界領域
15、21 制御部(CPU)
16、22 記憶部
17、25 操作部
18、23 無線通信部
19 車輪駆動部
24 表示部
図1
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図9