(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166879
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】ロータリ圧縮機及び冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F04C 18/32 20060101AFI20241122BHJP
F04C 29/00 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
F04C18/32
F04C29/00 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083275
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】細越 悠月
(72)【発明者】
【氏名】石野 拓也
(72)【発明者】
【氏名】福永 剛
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA01
3H129AA13
3H129AA32
3H129AB03
3H129BB42
3H129BB44
3H129BB50
3H129CC03
3H129CC05
(57)【要約】
【課題】圧縮機構の損傷が抑制されやすい信頼性の高いロータリ圧縮機、及び、これを備えた冷凍サイクル装置を提供する。
【解決手段】ロータリ圧縮機は、ピストン70と、シリンダと、フロントヘッドと、リアヘッドと、クランク軸と、を備える。ピストンでは、円筒状のローラ72と、ローラ72の外周面72aから第1端部74aへと延びるブレード74と、が一体化されている。シリンダは、内部にピストンを収容する。シリンダには、ローラが揺動するローラ空間と、ローラの揺動に応じてブレードが出入りするブレード空間と、が形成されている。シリンダは、上下の端部が開口している。フロントヘッドは、シリンダの上側の端部を閉塞する。リアヘッドは、シリンダの下側の端部を閉塞する。クランク軸は、偏心部を有する。クランク軸は、偏心部においてローラと連結される。ピストンは、ブレードの表面のみに化成処理層90を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のローラ(72)と、前記ローラの外周面(72a)から第1端部(74a)へと延びるブレード(74)と、が一体化されたピストン(70,170a,170b)と、
前記ローラが揺動する第1空間(62)と、前記ローラの揺動に応じて前記ブレードが出入りする第2空間(64)と、が形成されており、上下の端部が開口している、内部に前記ピストンを収容するシリンダ(60,160a,160b)と、
前記シリンダの上側の前記端部を閉塞する第1部材(52,152,156)と、
前記シリンダの下側の前記端部を閉塞する第2部材(54,156,154)と、
偏心部(42)において前記ローラと連結されるクランク軸(40)と、
を備え、
前記ピストンのうち、前記ブレードの表面のみに化成処理層(90)を有する、
ロータリ圧縮機(100,200)。
【請求項2】
前記ブレードの少なくとも下面(76b)に、前記化成処理層を有する、
請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項3】
前記ブレードは、前記ローラの揺動に応じて前記第1空間に出入りする第1部分(75a)と、前記ローラが揺動しても前記第1空間には出入りしない第2部分(75b)と、を含み、
前記第2部分のみが、前記化成処理層を有する、
請求項1又は2に記載のロータリ圧縮機。
【請求項4】
所定時間のなじみ運転後の前記ロータリ圧縮機では、前記ブレードの前記第1端部の前記クランク軸の軸方向における厚み(T1)が、前記ブレードの前記ローラとの連結部(74b)の前記軸方向における厚み(T2)より小さい、
請求項1又は2に記載のロータリ圧縮機。
【請求項5】
前記化成処理層は、リューブライト処理層である、
請求項1又は2に記載のロータリ圧縮機。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のロータリ圧縮機を備えた、
冷凍サイクル装置(1000)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ロータリ圧縮機及びロータリ圧縮機を備えた冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ローラとブレードとが一体化されたピストンを備えたロータリ圧縮機では、偏心部においてローラと接続されているクランク軸の運転中の傾きや、偏心部の外周面とピストン内周面の加工公差の影響等で、ピストンが運転中に傾く場合がある。
【0003】
このようなピストンの傾きが生じると、ピストンのブレードの先端部が上下に動き、シリンダの上下を覆う部材に片当たりして、ブレードとヘッドとの焼き付き等の不具合が生じる可能性がある。
【0004】
これに対し、特許文献1(特開2017-2734号公報)には、ブレードの先端部にローラに向かって延びる2つの溝を設け、ブレードの先端部がヘッドに片当たりした際に、ブレードの、ヘッドとの接触部を弾性変形させるようにすることで、ブレードとヘッドとの焼き付き等の不具合の発生を抑制したロータリ圧縮機が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ロータリ圧縮機には、ブレードとヘッドとの焼き付きや、ブレード及びヘッドの損傷の抑制に関し、更なる信頼性の向上が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1観点に係るロータリ圧縮機は、ピストンと、シリンダと、第1部材と、第2部材と、クランク軸と、を備える。ピストンでは、円筒状のローラと、ローラの外周面から第1端部へと延びるブレードと、が一体化されている。シリンダは、内部にピストンを収容する。シリンダには、ローラが揺動する第1空間と、ローラの揺動に応じてブレードが出入りする第2空間と、が形成されている。シリンダは、上下の端部が開口している。第1部材は、シリンダの上側の端部を閉塞する。第2部材は、シリンダの下側の端部を閉塞する。クランク軸は、偏心部を有する。クランク軸は、偏心部においてローラと連結される。ピストンは、ブレードの表面のみに化成処理層を有する。
【0007】
第1観点のロータリ圧縮機では、ブレードの表面に化成処理層を設けることで、ブレードの潤滑性を改善することができる。そのため、第1観点のロータリ圧縮機では、ブレードが第1部材又は第2部材に接触しても、ブレードと第1部材又は第2部材との焼き付きの発生等が抑制されやすい。
【0008】
第2観点に係るロータリ圧縮機は、第1観点に係るロータリ圧縮機であって、ブレードの少なくとも下面に、化成処理層を有する。
【0009】
第2観点のロータリ圧縮機では、重力の影響で特に第2部材と接触しやすいブレードの下面に化成処理層が少なくとも設けられるので、ブレードと第1部材又は第2部材との焼き付きの発生等が抑制されやすい。
【0010】
第3観点に係るロータリ圧縮機は、第1観点又は第2観点に係るロータリ圧縮機であって、ブレードは、第1部分と、第2部分と、を含む。ブレードの第1部分は、ローラの揺動に応じて第1空間に出入りする。ブレードの第2部分は、ローラが揺動しても第1空間には出入りしない。ブレードでは、第2部分のみが、化成処理層を有する。
【0011】
化成処理層は、所定時間のなじみ運転を経ることで、化成処理により生じた皮膜の凹凸が摩耗し平滑な面となる。そのため、化成処理層をブレードの第1部分にも設けたとすると、ブレードの第1部分と第1部材又は第2部材との間に隙間が生じて、ロータリ圧縮機の効率が低下するおそれがある。
【0012】
これに対し、第3観点のロータリ圧縮機では、ブレードの全体ではなく、ブレードの第2部分にのみ化成処理層を設けることで、効率低下は抑制しつつ、信頼性の向上を図ることができる。
【0013】
第4観点に係るロータリ圧縮機は、第1観点から第3観点のいずれかに係るロータリ圧縮機であって、所定時間のなじみ運転後のロータリ圧縮機では、ブレードの第1端部のクランク軸の軸方向における厚みが、ブレードのローラとの連結部の軸方向における厚みより小さい。
【0014】
第4観点のロータリ圧縮機では、ピストンが傾いた際に、ブレードの先端が第1部材及び第2部材に片当たりしにくいので、ブレードと第1部材又は第2部材との焼き付きの発生が抑制されやすい。
【0015】
第5観点に係るロータリ圧縮機は、第1観点から第4観点のいずれかに係るロータリ圧縮機であって、化成処理層は、リューブライト処理層である。
【0016】
第5観点のロータリ圧縮機では、高潤滑性のリューブライト処理層により、ブレードと第1部材又は第2部材との焼き付き等の発生を抑制することができる。
【0017】
第6観点に係る冷凍サイクル装置は、第1観点から第5観点のいずれかに係るロータリ圧縮機を備える。
【0018】
第6観点の冷凍サイクル装置では、圧縮機における焼き付きの発生が抑制されやすい、信頼性の高い冷凍サイクル装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】冷凍サイクル装置の一実施形態に係る空気調和装置の概略構成図である。
【
図2】
図1の空気調和装置で使用される、一実施例に係るロータリ圧縮機の概略縦断面図である。
【
図3】
図2のIII-III矢視の、ロータリ圧縮機の圧縮機構の概略断面図である。
【
図4】
図2のロータリ圧縮機のピストンを斜め上方から見た斜視図であり、ハッチングは化成処理層を示す。
【
図6】
図2のロータリ圧縮機の他の例に係るピストンを、斜め下方から見た斜視図であり、ハッチングは化成処理層を示す。
【
図7】
図2のロータリ圧縮機の更に他の例に係るピストンを、斜め上方から見た斜視図であり、ハッチングは化成処理層を示す。
【
図8A】
図2のロータリ圧縮機の圧縮工程を説明するための図であり、クランク角が0°の時のピストンの状態を描画した断面図である。
【
図8B】
図2のロータリ圧縮機の圧縮工程を説明するための図であり、クランク角が90°の時のピストンの状態を描画した断面図である。
【
図8C】
図2のロータリ圧縮機の圧縮工程を説明するための図であり、クランク角が180°の時のピストンの状態を描画した断面図である。
【
図8D】
図2のロータリ圧縮機の圧縮工程を説明するための図であり、クランク角が270°の時のピストンの状態を描画した断面図である。
【
図9】ピストンの傾きにより生じる、ブレードと、フロントヘッド又はリアヘッドとの接触を説明するための図であり、ピストンと、フロントヘッド及びリアヘッドを模式的に描画している。
【
図10】変形例Aに係るロータリ圧縮機の概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示のロータリ圧縮機及び、本開示のロータリ圧縮機を備える冷凍サイクル装置の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0021】
以下では、ロータリ圧縮機における位置や向きを説明するため、便宜上、「上」、「下」等の表現を用いる場合がある。また、以下では、「平行」、「直交」、「水平」、「垂直」、「同一」等の表現を用いる場合があるが、これらの表現は、厳密な意味に限定されず、実質的に「平行」、「直交」、「水平」、「垂直」、「同一」である場合を含む意味で用いられる。
【0022】
(1)空気調和装置
ロータリ圧縮機の一実施形態に係るロータリ圧縮機100を備えた、冷凍サイクル装置の一実施形態に係る空気調和装置1000について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、空気調和装置1000の概略構成図である。
【0023】
冷凍サイクル装置は、蒸気圧縮式冷凍サイクルを利用して、温度調整対象を冷却又は加熱する装置である。ここでは、冷凍サイクル装置が空気調和装置1000である場合を例に、冷凍サイクル装置を説明する。空気調和装置1000は、温度調整対象としての空調対象空間の空気を冷却したり加熱したりする。ただし、本開示の冷凍サイクル装置の種類は、空気調和装置に限定されるものではなく、給湯装置、床暖房装置、冷蔵装置等であってもよい。
【0024】
空気調和装置1000は、冷媒回路600を備える。冷媒回路600は、
図1のように、ロータリ圧縮機100、流路切換機構250、熱源熱交換器300、利用熱交換器400、及び膨張機構500を有する。冷媒回路600では、ロータリ圧縮機100と、流路切換機構250と、熱源熱交換器300と、利用熱交換器400と、膨張機構500と、が、冷媒配管により接続されている。
【0025】
ロータリ圧縮機100は、冷凍サイクルにおける低圧(以後、単に低圧と呼ぶ場合がある)のガス冷媒を吸入して圧縮し、冷凍サイクルにおける高圧のガス冷媒(以後、単に高圧と呼ぶ場合がある)として吐出する装置である。ロータリ圧縮機100についての詳細は後述する。
【0026】
流路切換機構250は、冷媒回路600の状態を、冷房状態と、暖房状態と、の間で切り換える機構である。限定するものではないが、流路切換機構250は、四路切換弁である。冷媒回路600が冷房状態にある時、冷媒は、ロータリ圧縮機100、流路切換機構250、熱源熱交換器300、膨張機構500、利用熱交換器400、流路切換機構250、ロータリ圧縮機100の順に冷媒回路600を流れる(冷房状態時の、流路切換機構250による冷媒配管の接続状態については、
図1の流路切換機構250内の実線参照)。冷媒回路600が暖房状態にある時、冷媒は、ロータリ圧縮機100、流路切換機構250、利用熱交換器400、膨張機構500、熱源熱交換器300、流路切換機構250、ロータリ圧縮機100の順に冷媒回路600を流れる(暖房時の、流路切換機構250による冷媒配管の接続状態については、
図1の流路切換機構250内の破線参照)。
【0027】
熱源熱交換器300は、熱源となる媒体(例えば水や空気)と冷媒との間で熱交換を行わせる熱交換器である。
【0028】
利用熱交換器400は、温度調整対象(ここでは、空調対象空間の空気)と冷媒との間で熱交換を行わせる熱交換器である。
【0029】
膨張機構500は、膨張機構500を通過する高圧の冷媒を減圧し、低圧の冷媒にする。膨張機構500は、例えば電子膨張弁や、感温筒を有する温度自動膨張弁や、キャピラリチューブである。
【0030】
冷房運転時と暖房運転時との空気調和装置1000の動作について説明する。
【0031】
空気調和装置1000が冷房運転を行う場合、ロータリ圧縮機100は、低圧のガス冷媒を吸入して加圧し、高圧のガス冷媒として吐出する。ロータリ圧縮機100が吐出する高圧のガス冷媒は、流路切換機構250を通過して、凝縮器(放熱器)として機能する熱源熱交換器300に供給される。熱源熱交換器300は、熱源となる媒体と高圧のガス冷媒とを熱交換させて、高圧のガス冷媒を凝縮させ、高圧の液冷媒にする。熱源熱交換器300から流出する高圧の液冷媒は、膨張機構500を通過して低圧の気液二相冷媒となり、蒸発器(吸熱器)として機能する利用熱交換器400に供給される。利用熱交換器400は、空調対象空間の空気と低圧の気液二相冷媒とを熱交換させて、気液二相冷媒に含まれる液冷媒を蒸発させ、低圧のガス冷媒にする。この際、空調対象空間の空気は、冷媒により冷却される。利用熱交換器400から流出する低圧のガス冷媒は、流路切換機構250を通過し、ロータリ圧縮機100に再び吸入される。
【0032】
空気調和装置1000が暖房運転を行う場合、ロータリ圧縮機100は、低圧のガス冷媒を吸入して加圧し、高圧のガス冷媒として吐出する。ロータリ圧縮機100が吐出する高圧のガス冷媒は、流路切換機構250を通過して、凝縮器(放熱器)として機能する利用熱交換器400に供給される。利用熱交換器400は、空調対象空間の空気と高圧のガス冷媒とを熱交換させて、高圧のガス冷媒を凝縮させ、高圧の液冷媒にする。この際、空調対象空間の空気は、冷媒により加熱される。利用熱交換器400から流出する高圧の液冷媒は、膨張機構500を通過して低圧の気液二相冷媒となり、蒸発器(吸熱器)として機能する熱源熱交換器300に供給される。熱源熱交換器300は、熱源となる媒体と低圧の気液二相冷媒とを熱交換させて、気液二相冷媒に含まれる液冷媒を蒸発させ、低圧のガス冷媒にする。熱源熱交換器300から流出する低圧のガス冷媒は、流路切換機構250を通過し、ロータリ圧縮機100に再び吸入される。
【0033】
なお、ここでは、冷凍サイクル装置の一例としての空気調和装置1000が、冷房運転と暖房運転とを実行する装置である場合を例に説明したが、空気調和装置1000は、冷房運転と暖房運転との一方だけを行う装置であってもよい。この場合、空気調和装置1000は、流路切換機構250を有していなくてもよい。
【0034】
(2)ロータリ圧縮機の全体構成
ロータリ圧縮機100の全体構成について、
図2及び
図3を参照しながら説明する。
図2は、ロータリ圧縮機100の概略の縦断面図である。
図3は、ロータリ圧縮機100の圧縮機構50の、
図2のIII-III矢視の概略断面図である。
【0035】
ロータリ圧縮機100は、空気調和装置1000の冷媒回路600から低圧の冷媒を吸入して圧縮し、高圧になった冷媒を冷媒回路600に吐出する機器である。ロータリ圧縮機100では、冷媒として例えばR32が使用される。ただし、冷媒の種類は、R32に限定されるものではなく、例えば、R410A,R1234yf、R1234ze(E)、R290,CO2等であってもよい。
【0036】
ロータリ圧縮機100は、ケーシング20と、モータ30と、クランク軸40と、圧縮機構50と、を主に有する。ケーシング20には、モータ30と、クランク軸40と、圧縮機構50と、が収容されている。ケーシング20内には、モータ30がケーシング20の上下方向における中央部付近に配置されており、モータ30の下方に圧縮機構50が配置されている。
【0037】
(3)ロータリ圧縮機の詳細構成
(3-1)ケーシング
ケーシング20は、上下の端部が閉じられた、縦型円筒状の容器である。
【0038】
ケーシング20は、円筒部材22と、碗状の、上蓋24a及び下蓋24bと、を主に有する(
図2参照)。円筒部材22は、上下が開口した円筒状の部材である。上蓋24aは、円筒部材22の上端に設けられ、円筒部材22の上側の開口端を閉じる。下蓋24bは、円筒部材22の下端に設けられ、円筒部材22の下側の開口端を閉じる。円筒部材22と、上蓋24a及び下蓋24bとは、気密を保つように溶接により固定されている。
【0039】
円筒部材22の下部には、吸入管26が設けられる(
図2参照)。吸入管26は、圧縮機構50と、空気調和装置1000の冷媒回路600の配管と、を連通させる。冷媒回路600における低圧の冷媒は、冷媒回路600から、吸入管26を介して、圧縮機構50内に(具体的には、後述する圧縮機構50の圧縮室C1の低圧室C1aに)供給される。
【0040】
上蓋24aには、吐出管28が設けられている(
図2参照)。吐出管28は、ケーシング20内の高圧空間S1と、冷媒回路600の配管と、を連通させる。ケーシング20内の高圧空間S1は、圧縮機構50により圧縮された高圧の冷媒が吐出される空間である。圧縮機構50により圧縮され、高圧空間S1に吐出された高圧の冷媒は、吐出管28から冷媒回路600に吐出される。
【0041】
ケーシング20の下部には、油溜空間25が形成される(
図2参照)。油溜空間25には、圧縮機構50等を潤滑するための冷凍機油が貯留される。
【0042】
(3-2)モータ
モータ30は、圧縮機構50を駆動する。
【0043】
モータ30は、
図2に示すように、ケーシング20の上下方向における中央部に収容されている。モータ30は、圧縮機構50の上方に配置される。
【0044】
モータ30は、主として、ステータ32と、ロータ34と、を有する。
【0045】
ステータ32は、筒状に形成されている。ステータ32は、その外周面が、円筒部材22の内面とスポット溶接により固定されている。ただし、ステータ32と円筒部材22との固定方法は例示であって、これに限定されるものではない。
【0046】
ロータ34は、円筒状の部材である。ロータ34は、環状に形成されたステータ32の内側に、ステータ32とわずかな隙間を隔てて配置される。ロータ34の中空部には、クランク軸40が挿嵌されている。ロータ34は、ステータ32に巻き付けられた巻線36に電流が流されることで発生する回転磁界により回転する。ロータ34が回転すると、クランク軸40が回転し、クランク軸40を介して、モータ30から圧縮機構50に駆動力が付与される。
【0047】
(3-3)クランク軸
クランク軸40は、上下方向に延び、圧縮機構50と、モータ30のロータ34とを連結する(
図2参照)。
【0048】
クランク軸40は、
図2に示すように、その上部がモータ30のロータ34と連結されている。また、クランク軸40は、
図2に示すように、モータ30の下方で、圧縮機構50と連結されている。具体的には、クランク軸40は、クランク軸40の軸心Oに対して偏心している偏心部42を有する。偏心部42は、後述する圧縮機構50のピストン70のローラ72と連結されている(
図2参照)。より具体的には、偏心部42は、モータ30の力を伝達可能な状態で、円筒状のローラ72の内部に嵌っている。
【0049】
クランク軸40は、後述する圧縮機構50の、フロントヘッド52の上部軸受部52a及びリアヘッド54の下部軸受部54aによって、回転自在に支持されている。
【0050】
クランク軸40は、モータ30が駆動されると、軸心O周りに回転する。軸心Oに対して偏心している偏心部42は、偏心回転し、圧縮機構50のローラ72を公転させる。
【0051】
クランク軸40の下端部には、油溜空間25の冷凍機油を汲み上げるための油ポンプ44が設けられている。クランク軸40の内部には、油ポンプ44によって汲み上げられた冷凍機油が流れる給油通路46が形成されている(
図2参照)。給油通路46は、クランク軸40に沿って上下方向に延びる主給油通路46aを有する(
図2参照)。また、給油通路46は、主給油通路46aからクランク軸40の径方向外方へ延びる複数の副給油通路(図示せず)を有する。副給油通路は、上部軸受部52aの下端付近、下部軸受部54aの上端付近、及び偏心部42においてクランク軸40の側面に開口し、複数の給油口46bを形成する(
図2参照)。油溜空間25から油ポンプ44によって汲み上げられた冷凍機油は、主給油通路46a及び副給油経路を通過して、給油口46bから、クランク軸40と上部軸受部52a及び下部軸受部54aとの摺動部や、圧縮機構50の摺動部に供給される。
【0052】
(3-4)圧縮機構
圧縮機構50は、吸入管26を介して吸入する冷媒を圧縮し、高圧空間S1へと吐出する機構である。圧縮機構50は、シリンダ60、フロントヘッド52、リアヘッド54、ピストン70、及びブッシュ80、を主に有する(
図2及び
図3参照)。
【0053】
(3-4-1)シリンダ
シリンダ60は、両端(上下の端部)が開口しており、内部にピストン70を収容する部材である。材質を限定するものではないが、シリンダ60は、例えば鋳鉄製である。
【0054】
シリンダ60の中央部には、円形状のシリンダ孔61が形成されている。シリンダ孔61は、シリンダ60の上下の端部において開口している。言い換えれば、シリンダ60の中央部には、シリンダ60を上下に貫通するように、シリンダ孔61が形成されている。シリンダ60のシリンダ孔61は、シリンダ60に形成されるローラ空間62(特許請求の範囲における第1空間の一例)の側方を囲む。クランク軸40の軸方向視において、シリンダ60のシリンダ孔61の内周面は、ローラ空間62の境界を規定する。ローラ空間62には、ピストン70のローラ72が収容される。ローラ72は、ローラ空間62内で揺動する。
【0055】
シリンダ60のシリンダ孔61の中心から見て、シリンダ孔61の外周側には、第1孔63aが形成されている(
図3参照)。第1孔63aは、シリンダ孔61と隣接して配置され、空間64aを形成する。また、シリンダ孔61の中心から見て、第1孔63aの外周側には、第2孔63bが形成されている(
図3参照)。第2孔63bは、第1孔63aと隣接して配置され、空間64bを形成する。第1孔63a及び第2孔63bは、シリンダ60の上下の端部において開口している。言い換えれば、第1孔63a及び第2孔63bは、シリンダ60を上下に貫通するように形成されている。
【0056】
空間64aには、ブッシュ80が配置される。第1孔63aは、空間64aに配置されるブッシュ80を揺動可能に保持する。
【0057】
空間64a及び空間64bは、特許請求の範囲における第2空間の一例としてのブレード空間64として機能する。ブレード空間64は、ローラ空間62と連通している。ピストン70が揺動し、ローラ72がローラ空間62内で公転する時に、ブレード空間64には、空間64aに配置されるブッシュ80により揺動可能に支持されるブレード74が出入りする。
【0058】
また、シリンダ60には、クランク軸40の軸方向と交差する方向に、シリンダ60の外周面からシリンダ孔61まで延びる吸入通路66が形成されている(
図3参照)。吸入通路66は、ローラ空間62と連通する。吸入通路66には、吸入管26の先端部が挿入される。冷媒回路600における低圧の冷媒は、吸入管26及び吸入通路66を介して、ローラ空間62(特には、ローラ空間62内に形成される後述の低圧室C1a)へと導かれる。
【0059】
(3-4-2)フロントヘッド
フロントヘッド52は、
図2に示すように、シリンダ60の上方に配置される。材質を限定するものではないが、フロントヘッド52は、例えば鋳鉄製である。
【0060】
フロントヘッド52は、シリンダ60の一方の(上側の)端部(端部の開口)を閉塞する。具体的には、フロントヘッド52は、シリンダ60のシリンダ孔61、第1孔63a、第2孔63bの上方の開口を塞ぐ。フロントヘッド52は、圧縮室C1の天面を形成する。圧縮室C1は、シリンダ孔61の内周面と、ローラ空間62に配置されるローラ72の外周面72aと、フロントヘッド52と、リアヘッド54と、に囲まれて形成される。圧縮機構50では、圧縮室C1において冷媒が圧縮される。
【0061】
フロントヘッド52には、フロントヘッド52を貫通して延び、圧縮室C1と連通する吐出ポート53が形成されている。
図3中では、吐出ポート53が二点鎖線で描画されている。
【0062】
なお、以下の説明では、圧縮室C1のうち、吐出ポート53の配置される側の空間(言い換えれば、吐出ポート53と連通する空間)を高圧室C1bと呼ぶ。また、圧縮室C1のうち、吐出ポート53の配置されない側の空間(言い換えれば、吐出ポート53とは連通しない空間)を低圧室C1aと呼ぶ。吸入通路66から圧縮室C1に導かれる冷媒は、まず低圧室C1aに流入する。その後、冷媒は、ローラ72の回転に伴って高圧室C1bに流入する。低圧室C1a及び高圧室C1bについては、後程、詳しく説明する。
【0063】
フロントヘッド52の上面には、マフラ56が取り付けられている。マフラ56は、フロントヘッド52の上方に、マフラ空間S2を形成する。フロントヘッド52には、吐出ポート53の上方に吐出弁(図示省略)が設けられている。吐出弁は、高圧室C1bの圧力と後述するマフラ空間S2の圧力との圧力差で開く。吐出弁が開くと、高圧室C1bの冷媒は、吐出ポート53を通ってマフラ空間S2に流入する。
【0064】
マフラ56には、マフラ空間S2とマフラ56の周囲の高圧空間S1とを連通するマフラ吐出孔(図示省略)が形成されている。圧縮室C1で圧縮された冷媒(高圧室C1bの高圧の冷媒)は、吐出ポート53及びマフラ空間S2を介して高圧空間S1に流入する。
【0065】
フロントヘッド52は、圧縮室C1の天面を形成するとともに、クランク軸40を軸支する軸受としても機能する。具体的には、フロントヘッド52の上部には、クランク軸40が挿通される、円筒状の上部軸受部52aが設けられている。上部軸受部52aは、クランク軸40を回転自在に支持する。
【0066】
(3-4-3)リアヘッド
リアヘッド54は、
図2に示すように、シリンダ60の下方に配置される材質を。限定するものではないが、リアヘッド54は、例えば鋳鉄製である。
【0067】
リアヘッド54は、シリンダ60の一方の(下側の)端部(端部の開口)を閉塞する。具体的には、リアヘッド54は、シリンダ60のシリンダ孔61、第1孔63a、第2孔63bの下方の開口を塞ぐ。リアヘッド54は、圧縮室C1の底面を形成する。
【0068】
リアヘッド54は、圧縮室C1の底面を形成すると共に、クランク軸40を軸支する軸受としても機能する。具体的には、リアヘッド54の上部には、クランク軸40が挿通される、円筒状の下部軸受部54aが形成されている。下部軸受部54aは、クランク軸40を回転自在に支持する。
【0069】
(3-4-4)ピストン
図2~
図3に加え、
図4~
図5を更に参照しながらピストン70について説明する。
図4は、ロータリ圧縮機100のピストン70を斜め上方から見た斜視図であり、ハッチングは後述する化成処理層の形成されている位置を示す。
図5は、ピストン70の側面図である。
【0070】
ピストン70は、環状のローラ72と、ローラ72の外周面72aから、環状のローラ72の径方向に延びるブレード74と、を含む。ローラ72及びブレード74は、一体に形成されている。
【0071】
ピストン70は、クランク軸40が回転することで揺動する部材である。材質を限定するものではないが、ピストン70は(ピストン70の基材は)、例えば鋳鉄製である。
【0072】
ローラ72は、クランク軸40の軸方向視において、環状形状を有する、円筒状の部材である。ローラ72の内部には、クランク軸40の偏心部42が嵌め込まれている(
図2及び
図3参照)。
【0073】
ローラ72は、シリンダ60、フロントヘッド52、及びリアヘッド54と共に、圧縮室C1を形成する。圧縮室C1は、ローラ72の外周面72aと、シリンダ60のシリンダ孔61の内周面と、フロントヘッド52の下面52bと、リアヘッド54の上面54bと、により囲まれた空間である(
図2参照)。クランク軸40が回転すると、ローラ72は、シリンダ孔61の内周面に沿って偏心回転運動を行い(シリンダ孔61の内周面に沿って公転し)、シリンダ60の吸入通路66を介して圧縮室C1に吸入される冷媒を圧縮する。
【0074】
ブレード74は、ローラ72と一体に形成されている板状の部材である。ブレード74は、ローラ72の自転を規制する機能を有する。ブレード74は、環状のローラ72の外周面72aと接続される連結部としての第2端部74bから、第1端部74aへと、環状のローラ72の径方向外側に延びる。ブレード74の第1端部74aは、第2端部74bとは反対側の、ローラ72の外周面72aに対する遠位側の端部である。ブレード74は、シリンダ60に形成される空間64aに配置された1対のブッシュ80により挟み込まれ、ブッシュ80により揺動可能に支持される。
【0075】
ブレード74は、圧縮室C1を、低圧室C1aと高圧室C1bとに区画する。低圧室C1aは、圧縮室C1のうち、ブレード74よりも吸入通路66側に配置される空間である。言い換えれば、低圧室C1aは、圧縮室C1のうち、吸入通路66と連通する空間である。高圧室C1bは、圧縮室C1のうち、ブレード74よりもフロントヘッド52に形成されている吐出ポート53側に配置される空間である。言い換えれば、高圧室C1bは、圧縮室C1のうち、吐出ポート53と連通する空間である。
【0076】
クランク軸40が回転し、ローラ空間62においてピストン70が揺動すると、ブッシュ80により支持されるブレード74も揺動し、ローラ72の公転に応じて、ブレード74はブレード空間64を出入りする。
【0077】
ブレード74は、第1面76aと、第2面76bと、第3面76cと、第4面76dと、を有する。第1面76aは、ブレード74の上面である。第1面76aは、シリンダ60のシリンダ孔61の一方の開口を塞ぐフロントヘッド52の下面52bと対向し、フロントヘッド52の下面52bと摺動する。第2面76bは、ブレード74の下面である。第2面76bは、シリンダ60のシリンダ孔61の一方の開口を塞ぐリアヘッド54の上面54bと対向し、リアヘッド54の上面54bと摺動する。第3面76cは、第1面76a及び第2面76bと直交する面である。第3面76cは、ローラ空間62のうち、ブレード74よりも、吐出ポート53側に配置される高圧室C1bに面する。なお、第3面76cが高圧室C1bに面するという表現は、第3面76cの全体が高圧室C1bに面することを意味するものではなく、第3面76cの少なくとも一部が高圧室C1bに面することを意味する。また、第3面76cが高圧室C1bに面するという表現は、第3面76cが常に高圧室C1bに面することを意味するものではなく、ピストン70が揺動し、ローラ72がローラ空間62を1回公転する間に、少なくとも一時的に第3面76cが高圧室C1bに面することを意味する。第4面76dは、低圧室C1aに面する面である。なお、第4面76dが低圧室C1aに面するという表現は、第4面76dの全体が低圧室C1aに面することを意味するものではなく、第4面76dの少なくとも一部が低圧室C1aに面することを意味する。また、第4面76dが低圧室C1aに面するという表現は、第4面76dが常に低圧室C1aに面することを意味するものではなく、ピストン70が揺動し、ローラ72がローラ空間62を1回公転する間に、少なくとも一時的に第4面76dが低圧室C1aに面することを意味する。
【0078】
<化成処理層>
ロータリ圧縮機100は、ピストン70のブレード74の表面に化成処理層90を有している。化成処理層90は、ピストン70のうち、ブレード74の表面にのみ設けられている。
図4及び
図5では、化成処理層90を、斜線のハッチングで表している。
図4及び
図5に示す例では、ピストン70は、ブレード74の表面全体が、化成処理層90を有している。
【0079】
なお、ここで「化成処理層」とは、基材となる金属にたいして「化成処理」が行われている層のことを意味する。「化成処理」とは、基材となる金属(ここでは、金属製のピストン70のブレード74)をリン酸塩等の処理溶液に浸すことで、基材となる金属の表面に化学反応を起こさせ、処理を行った部分に、基材となる素材とは異なる性質を与える処理を意味する。なお、「化成処理」の目的には様々なものがあるが、ここでの「化成処理」は、特に、潤滑性の向上を目的とした処理を意味する。要するに、ブレード74の表面に対して「化成処理」が行われることで、「化成処理」の行われた部分が基材の金属に比べて高い潤滑性を有する場合には、ブレード74が「化成処理層」を有していることになる。また、「化成処理」の行われた部分が基材の金属に比べて高い潤滑性を有しているとは、例えば、ブレード74の基材となる金属に化成処理を行った後に、この部材をフロントヘッド52の下面52bやリアヘッド54の上面54bと摺動させた際の(所定のなじみ運転後の)摩擦力が、同条件で、ブレード74の基材となる金属(化成処理を行わないもの)をフロントヘッド52の下面52bやリアヘッド54の上面54bと摺動させた際の摩擦力より小さいことを意味する。
【0080】
ここでの化成処理は、具体例を挙げれば、例えば、潤滑性が高く、耐摩耗性にも優れた化成処理層を形成できる、リン酸マンガン皮膜処理(リューブライト処理)である。ただし、化成処理の種類はリューブライト処理に限定されるものではなく、リン酸亜鉛処理、リン酸カルシウム処理等であってもよい。また、潤滑性の向上に寄与する化成処理であれば、ここで例示した以外の処理であってもよい。
【0081】
化成処理層90をブレード74に設ける目的について説明する。
【0082】
まず、ロータリ圧縮機100の運転時に起こり得るブレード74の動きを説明する。
【0083】
モータ30によりクランク軸40が回転させられると、理想的には、ピストン70は水平面に沿って揺動する。しかし、実際には、クランク軸40の傾斜、クランク軸40の偏心部42とピストン70のローラ72の内周面との加工公差等を原因として、ピストン70が傾斜する場合がある。この際、特に、ローラ72から離れたブレード74の第1端部74aの近傍は、最も上下の移動量が大きくなりやすく、
図9のように、フロントヘッド52の下面52bや、リアヘッド54の上面54bと接触する(片当たりする)可能性がある。
【0084】
なお、
図9は、ピストン70の傾きにより生じる、ブレード74と、フロントヘッド52又はリアヘッド54との接触を説明する図である。
図9では、二点鎖線で、ブレード74の第1端部74aがフロントヘッド52の下面52bと接触するピストン70を描画しており、破線で、ブレード74の第1端部74aがリアヘッド54の上面54bと接触するピストン70を描画している。なお、
図9では、理解のしやすさの観点から、ピストン70とフロントヘッド52及びリアヘッド54との隙間の大きさや、ピストン70の傾きの大きさを誇張して描画している。実際には、ピストン70とフロントヘッド52及びリアヘッド54との間の隙間は僅かであり、生じ得るピストン70の傾きも僅かである。
【0085】
ピストン70が傾き、
図9における二点鎖線で描画した状態と破線で描画した状態とを取るようにピストン70が運動する場合(ピストン70が歳差運動をする場合)、ピストン70のブレード74の第1端部74a付近はフロントヘッド52やリアヘッド54に強く押し付けられ、異常摩耗が生じ、ブレード74がフロントヘッド52の下面52bやリアヘッド54の上面54bを損傷させたり、ブレード74とフロントヘッド52の下面52bやリアヘッド54の上面54bとの焼き付きが生じたりするおそれがある。
【0086】
これに対し、本開示のロータリ圧縮機100では、ピストン70のブレード74に化成処理層90を設けてブレード74部分の潤滑性を上げることで、圧縮機構50の損傷や、ブレード74とフロントヘッド52の下面52bやリアヘッド54の上面54bとの焼き付き等を抑制できる。
【0087】
例えば、ブレード74と、フロントヘッド52の下面52bやリアヘッド54の上面54bとの間に冷凍機油が十分に供給されていないような条件であっても、ブレード74が潤滑性の高い化成処理層90を有していれば、圧縮機構50における損傷や焼き付き等は発生しにくい。
【0088】
また、ロータリ圧縮機100のなじみ運転(慣らし運転)の段階では、ブレード74とフロントヘッド52又はリアヘッド54との摩擦が比較的大きいが(ブレード74やフロントヘッド52又はリアヘッド54の表面の凹凸が比較的大きい状態ではあるが)、ピストン70のブレード74に化成処理層90を設けてブレード74とフロントヘッド52又はリアヘッド54との摩擦を低減することで、圧縮機構50の損傷や焼き付き等の発生が抑制されやすい。
【0089】
なお、潤滑性の向上の観点だけから見れば、ピストン70全体に化成処理層90を設けるということも考えられる。しかし、以下の理由から、本開示のロータリ圧縮機100では、ローラ72には化成処理層90は設けられない。
【0090】
一般に、金属製の基材に対して化成処理を行うと、金属製の基材の表面に皮膜が形成され、基材の表面には凹凸が多く存在する状態にある。そして、他の部材と接触する位置に設けられているこのような凹凸は、所定時間のロータリ圧縮機100のなじみ運転を経ると、他の部材との接触により摩耗し、概ね平滑な面となる。
【0091】
そのため、仮にローラ72の表面に化成処理層を設けたとすると、ローラ72の端面(フロントヘッド52の下面52bやリアヘッド54の上面54bと摺動する面)が摩耗し、ローラ72とフロントヘッド52の下面52bやリアヘッド54の上面54bとの間に隙間が生じて、ロータリ圧縮機100の効率が低下するおそれがある。
【0092】
これに対し、本開示のロータリ圧縮機100では、ブレード74の表面にだけ化成処理層90を設けているので、なじみ運転により化成処理層90が平滑な面となっても(ローラ72には化成処理層90が無いので)、ロータリ圧縮機100の運転効率に与える影響は比較的小さい。
【0093】
なお、
図4に描画されているブレード74では、第1面76a~第4面76dの全ての面であって、それぞれの面の全体に、化成処理層90が設けられているが、これに限定されるものではない。
【0094】
例えば、ブレード74の側面である第3面76c及び第4面76dは、フロントヘッド52の下面52bやリアヘッド54の上面54bとは接触しないため、第3面76c及び第4面76dには化成処理層90は設けられなくてもよい。
【0095】
なお、ブレード74の第2面(下面)76bには、重力の影響で、リアヘッド54の上面54bと接触しやすいため、第1面76a、第3面76c及び第4面76dに化成処理層90が形成されないとしても、
図6のように、少なくともブレード74の第2面(下面)76bには、化成処理層90が設けられることが好ましい。
【0096】
また、ブレード74は、第2端部74bの近傍よりも、第1端部74aの近傍でフロントヘッド52の下面52bやリアヘッド54の上面54bと接触しやすいため、第1端部74aと第2端部74bとの中央よりも、第1端部74aに近い部分だけに化成処理層90が設けられてもよい。
【0097】
また、ロータリ圧縮機100の効率の観点からは、ブレード74は、第2部分75bのみに化成処理層90を有し、第1部分75aは化成処理層90を有さないことが好ましい。
【0098】
第1部分75a及び第2部分75bについて説明する。
【0099】
ロータリ圧縮機100では、クランク軸40が回転すると、クランク角の変化に連れて、
図8A~
図8Dに示すようにローラ72がローラ空間62内を公転し、これに連れて、ブレード74は、ブレード空間64を出入りする。第1部分75aは、ブレード74のうち、少なくとも一時的にローラ空間62(ローラ72の揺動する空間)に入り込む部分である。言い換えれば、第1部分75aは、ローラ72の揺動に応じて、ローラ空間62に出入りする部分である。
図8A~
図8Dでいえば、ブレード74の内、ハッチングの付されている部分よりローラ72側の部分が第1部分75aである。第2部分75bは、ブレード74のうち、ローラ空間62には入り込まない部分である。言い換えれば、第2部分75bは、ブレード74のうち、ブレード空間64だけを移動する部分である。さらに言い換えれば、第2部分75bは、ブレード74のうち、ローラ72が揺動しても、ローラ空間62には出入りしない部分である。
図8A~
図8Dでいえば、ブレード74の内、ハッチングの付されている部分が第2部分75bである。
【0100】
化成処理層90を第2部分75bのみに配置することで、化成処理層90がなじみ運転により摩耗しても、ブレード74による低圧室C1aと高圧室C1bとのシールには影響を与えないので、ロータリ圧縮機100の効率には影響が生じにくい。
【0101】
なお、ブレード74の第2部分75bのみに化成処理層90を設ける場合、化成処理層90は、ブレード74の第2部分75bの表面の全体に対して設けられてもよいし、ブレード74の第2部分75bの一部(例えば、ブレード74の第1端部74aの近傍)にだけ設けられてもよい。
【0102】
なお、ブレード74とフロントヘッド52又はリアヘッド54との焼き付き等の圧縮機構50の損傷を抑制するためには、所定時間のなじみ運転後のロータリ圧縮機100では、
図5に示すようにブレード74の第1端部74aのクランク軸40の軸方向(ここでは上下方向)における厚みT1が、ブレード74のローラ72との連結部(言い換えれば第2端部74b)の軸方向における厚みT2より小さいことが好ましい。なお、好ましくは、ブレード74の一部がフロントヘッド52又はリアヘッド54と片当たりすることを避けるため、
図5に符号“78”で示す部分のように、ブレード74の軸方向の厚みが、ブレード74が第1端部74a向かって次第に小さくなるように、ブレード74の第1端部74a近傍の形状はテーパ形状となることが好ましい。
【0103】
なお、
図5では、ブレード74の第1端部74aのクランク軸40の軸方向における厚みT1と、ブレード74の第2端部74bの軸方向における厚みT2との差を比較的大きく描画している。このように、厚みT1と厚みT2とに比較的大きな差を設ける際には、化成処理を行う前から、ブレード74の第1端部74aのクランク軸40の軸方向における厚みT1を、ブレード74の第2端部74bの軸方向における厚みT2より予め小さく形成しておいてもよい。
【0104】
ただし、これに限定されるものではなく、化成処理を行う前の状態では、ブレード74の第1端部74aのクランク軸40の軸方向における厚みT1を、ブレード74の第2端部74bの軸方向における厚みT2と概ね同一としておいて、化成処理及びなじみ運転を経て、最終的に、ブレード74の第1端部74aのクランク軸40の軸方向における厚みT1が、ブレード74のローラ72との連結部(言い換えれば第2端部74b)の軸方向における厚みT2よりも薄くなるような設計としてもよい。
【0105】
(3-4-5)ブッシュ
圧縮機構50は、1対のブッシュ80を有する(
図3参照)。ブッシュ80は、ブレード74を挟んで揺動可能に支持する部材である。
【0106】
ブッシュ80は、ブレード空間64の第1孔63aに配置される。各ブッシュ80は、半円筒形状(円柱を軸方向に沿って概ね2つに分割した形状)の部材である。1対のブッシュ80は、その間でブレード74を挟み、ブレード74を揺動可能に支持する。
【0107】
(4)ロータリ圧縮機の動作
ロータリ圧縮機100の動作について説明する。
【0108】
ロータリ圧縮機100では、モータ30が運転され、ロータ34が回転すると、クランク軸40が回転し偏心部42が偏心回転する。その結果、偏心部42が内部に嵌め込まれたローラ72がシリンダ60のシリンダ孔61に沿って公転する。ローラ72の自転は、ローラ72と一体に形成されたブレード74によって規制される。
【0109】
公転するローラ72の動きにより、以下のように、冷媒が、ロータリ圧縮機100の外部から吸入され、圧縮される。
【0110】
まず、吸入工程について説明する。ローラ72が上死点にある
図8Aの状態から回転すると、吸入通路66から、低圧室C1aへの冷媒の吸入が開始される。クランク軸40の回転角が大きくなると、次第に、低圧室C1aの容積が増大し(
図8B~
図8D参照)、低圧室C1aへ吸入される冷媒量が増加する。
【0111】
その後、吐出工程へと移行する。具体的には、低圧室C1aにおける冷媒の吸入が開始され、ローラ72が上死点まで回転すると、低圧室C1aにおける冷媒の閉じ込みが完了し、吸入通路66に連通していた低圧室C1aが、フロントヘッド52に形成された吐出ポート53と連通する高圧室C1bとなる。高圧室C1bの冷媒の圧力は、ローラ72が回転し、高圧室C1bの体積減少に伴って上昇する。高圧室C1bの圧力とマフラ空間S2との圧力が所定の圧力関係になると、吐出ポート53に設けられた図示しない吐出弁が開き、高圧室C1bの冷媒は、マフラ空間S2に吐出される。マフラ空間S2に吐出された冷媒は、マフラ56に形成されている図示しない吐出通路を介して高圧空間S1に吐出され、最終的に、吐出管28を介してロータリ圧縮機100の外部へと吐出される。
【0112】
(5)特徴
(5-1)
ロータリ圧縮機100は、ピストン70と、シリンダ60と、第1部材の一例としてのフロントヘッド52と、第2部材の一例としてのリアヘッド54と、クランク軸40と、を備える。ピストン70は、円筒状のローラ72と、ローラ72の外周面72aから第1端部74aへと延びるブレード74と、を含む。ピストン70では、円筒状のローラ72と、ブレード74と、が一体化されている。シリンダ60は、内部にピストン70を収容する。シリンダ60には、ローラ72が揺動する第1空間の一例としてのローラ空間62と、ローラ72の揺動に応じてブレード74が出入りする第2空間の一例としてのブレード空間64と、が形成されている。シリンダ60は、上下の端部が開口している。フロントヘッド52は、シリンダ60の上側の端部を閉塞する。リアヘッド54は、シリンダ60の下側の端部を閉塞する。クランク軸40は、偏心部42を有する。クランク軸40は、偏心部42においてローラ72と連結される。ピストン70は、ブレード74の表面のみに化成処理層90を有する。
【0113】
ロータリ圧縮機100では、ブレード74の表面に化成処理層90を設けることで、ブレード74の潤滑性を改善することができる。そのため、ロータリ圧縮機100では、ブレード74がフロントヘッド52又はリアヘッド54に接触しても、ブレード74とフロントヘッド52又はリアヘッド54との焼き付きの発生等が抑制されやすい。
【0114】
また、ロータリ圧縮機100では、化成処理層90によりブレード74の潤滑性が改善されているため、ブレード74とフロントヘッド52又はリアヘッド54との摩擦力が比較的大きくなりやすい「なじみ運転」の際にも(言い換えれば、ブレード74やフロントヘッド52又はリアヘッド54の表面の凹凸が比較的大きい状態であっても)、ブレード74とフロントヘッド52又はリアヘッド54との焼き付きの発生等が抑制されやすい。また、ロータリ圧縮機100では、冷凍機油によるブレード74とフロントヘッド52又はリアヘッド54との摺動部分の潤滑が不十分な状態が仮に発生しても、潤滑性の高い化成処理層90により、ブレード74とフロントヘッド52又はリアヘッド54との焼き付きの発生が抑制されやすい。
【0115】
なお、化成処理層90は、なじみ運転後には、化成処理により生じた皮膜の凹凸が摩耗し平滑な面となる。そのため、化成処理層90をピストン70全体に設けたとすると、ローラ72の端面(フロントヘッド52の下面52bやリアヘッド54の上面54bと摺動する面)が摩耗し、ローラ72とフロントヘッド52又はリアヘッド54との間に微小な隙間が生じて、ロータリ圧縮機100の効率が低下するおそれがある。
【0116】
これに対し、本ロータリ圧縮機100では、ピストン70の全体ではなく、ブレード74にのみ化成処理層90を設けることで、効率低下は抑制しつつ、信頼性の向上を図ることができる。
【0117】
(5-2)
ロータリ圧縮機100は、ブレード74の少なくとも第2面76b(下面)に、化成処理層90を有する。
【0118】
ロータリ圧縮機100では、重力の影響で特にリアヘッド54と接触しやすいブレード74の第2面76bに少なくとも化成処理層90が設けられるので、ブレード74とフロントヘッド52又はリアヘッド54との焼き付きの発生等が抑制されやすい。
【0119】
(5-3)
ロータリ圧縮機100では、ブレード74は、第1部分75aと、第2部分75bと、を含む。ブレード74の第1部分75aは、ローラ72の揺動に応じてローラ空間62に出入りする。ブレード74の第2部分75bは、ローラ72が揺動してもローラ空間62には出入りしない。ブレード74の第2部分75bのみが、化成処理層90を有する。
【0120】
化成処理層90は、所定時間のなじみ運転を経ることで、化成処理により生じた皮膜の凹凸が摩耗し平滑な面となる。そのため、化成処理層90をブレード74の第1部分75aにも設けたとすると、ブレード74の第1部分75aとフロントヘッド52又はリアヘッド54との間に隙間が生じて、ロータリ圧縮機100の効率が低下するおそれがある。
【0121】
これに対し、ロータリ圧縮機100では、ブレード74の全体ではなく、ブレード74の第2部分75bにのみ化成処理層90を設けることで、効率低下は抑制しつつ、信頼性の向上を図ることができる。
【0122】
(5-4)
所定時間のなじみ運転後のロータリ圧縮機100では、ブレード74の第1端部74aのクランク軸40の軸方向(上下方向)における厚みT1が、ブレード74のローラ72との連結部である第2端部74bの軸方向における厚みT2より小さい。
【0123】
ロータリ圧縮機100では、ピストン70が傾いた際に、ブレード74の先端(第1端部74a又はその近傍)がフロントヘッド52及びリアヘッド54に片当たりしにくいので、ブレード74とフロントヘッド52又はリアヘッド54との焼き付きの発生が抑制されやすい。
【0124】
(5-5)
ロータリ圧縮機100では、化成処理層90は、リューブライト処理層である。
【0125】
ロータリ圧縮機100では、高潤滑性の化成処理層90により、ブレード74とフロントヘッド52又はリアヘッド54との焼き付き等の発生を抑制することができる。
【0126】
(6)変形例
(6-1)変形例A
本開示のロータリ圧縮機は、
図10に符号200で示すような、2つのシリンダ160a,160bを有する2シリンダ型のロータリ圧縮機であってもよい。
【0127】
ロータリ圧縮機200の圧縮機構150は、
図10のように、フロントヘッド152、リアヘッド154、ミドルプレート156、シリンダ160a,160b、ピストン170a,170bを有する。
【0128】
2シリンダ型のロータリ圧縮機については、従来から知られているので、ここでは2シリンダ型のロータリ圧縮機の基本的な構造や動作等についての説明は省略し、本開示のロータリ圧縮機200の特徴的な部分についてのみ説明する。なお、
図10及び以下での説明では、上記実施形態と同様の構成については同じ参照符号を用いている。
【0129】
ロータリ圧縮機200は、2つのピストン170a,170bと、2つのシリンダ160a,160bと、フロントヘッド152と、リアヘッド154と、ミドルプレート156と、偏心部42aにおいてピストン170aのローラ72と連結され、偏心部42bにおいてピストン170bのローラ72と連結されるクランク軸40と、を備える。
【0130】
ピストン170a,170bは、それぞれ、円筒状のローラ72と、ローラ72の外周面72aから第1端部74aへと延びるブレード74と、を有しており、ローラ72とブレード74とは一体化されている。
【0131】
シリンダ160aには、ピストン170aのローラ72が揺動するローラ空間62と、ピストン170aのローラ72の揺動に応じてピストン170aのブレード74が出入りするブレード空間64と、が形成されている。シリンダ160aは、上下の端部が開口している。シリンダ160aは、内部にピストン170aを収容する。
【0132】
シリンダ160bには、ピストン170bのローラ72が揺動するローラ空間62と、ピストン170bのローラ72の揺動に応じてピストン170bのブレード74が出入りするブレード空間64と、が形成されている。シリンダ160bは、上下の端部が開口している。シリンダ160bは、内部にピストン170bを収容する。
【0133】
シリンダ160aの上側の端部は、第1部材の一例としてのフロントヘッド152により閉塞され、シリンダ160bの下側の端部は、第2部材の一例としてのミドルプレート156により閉塞される。
【0134】
シリンダ160bの上側の端部は、第1部材の一例としてのミドルプレート156により閉塞され、シリンダ160bの下側の端部は、第2部材の一例としてのリアヘッド154により閉塞される。
【0135】
そして、このロータリ圧縮機200では、ピストン170a,170bのそれぞれが、ブレード74の表面のみに化成処理層90を有する。ピストン170a,170bの構造や、ピストン170a,170bのブレード74のどの部分に化成処理層90を設けるかについては、上記実施形態で説明したとおりである。ここでは、記載の重複を避けるため、説明は省略する。
【0136】
なお、2シリンダ型のロータリ圧縮機において、ピストン170a,170bのいずれか一方ではブレード74の焼き付き等が起こりにくい等の傾向がある場合には、焼き付き等が起こりにくい方のピストン170a,170bについては、化成処理層90が設けられなくてもよい。
【0137】
また、2シリンダ型のロータリ圧縮機において、ピストン170a,170bの両方に化成処理層90を設ける際に、ピストン170aに設けられる化成処理層90の位置と、ピストン170bに設けられる化成処理層90の位置とは、同一では無くてもよい。
【0138】
<付記>
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0139】
40 クランク軸
42 偏心部
52 フロントヘッド(第1部材)
54 リアヘッド(第2部材)
60 シリンダ
62 ローラ空間(第1空間)
64 ブレード空間(第2空間)
70 ピストン
72 ローラ
72a 外周面
74 ブレード
74a 第1端部
74b 第2端部(連結部)
75a 第1部分
75b 第2部分
76b 第2面(下面)
90 化成処理層
100 ロータリ圧縮機
152 フロントヘッド(第1部材)
154 リアヘッド(第2部材)
156 ミドルプレート(第2部材、第1部材)
160a シリンダ
160b シリンダ
170a ピストン
170b ピストン
200 ロータリ圧縮機
1000 空気調和装置(冷凍サイクル装置)
T1 厚み
T2 厚み
【先行技術文献】
【特許文献】
【0140】