(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166881
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】車両構造
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20241122BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20241122BHJP
B60R 1/04 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
B60R13/02 A
B60R11/02 Z
B60R1/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083277
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】小林 優一
(72)【発明者】
【氏名】西畑 直輝
【テーマコード(参考)】
3D020
3D023
【Fターム(参考)】
3D020BA01
3D020BA20
3D020BB01
3D020BC02
3D020BD05
3D023BA01
3D023BB03
3D023BC01
3D023BD01
3D023BE03
(57)【要約】
【課題】天井材の貫通孔付近の剛性を高め易い上に、運転席および助手席の乗員の視界を広くし易くかつ見栄えの良い車両構造を提供する。
【解決手段】インナーミラーを取り付けるための貫通孔が設けられた天井材と、ウインドシールドの上部における車内に臨む面に取り付けられた車載機器と、を備え、前記天井材は、前記貫通孔と前記ウインドシールドとの間に設けられた前方領域を有し、前記前方領域は、車両後方および車両上方の少なくとも一方に向かって窪むように設けられた凹部を有し、前記車載機器は、前記凹部に近づけて配置されている後部を有する、車両構造。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナーミラーを取り付けるための貫通孔が設けられた天井材と、
ウインドシールドの上部における車内に臨む面に取り付けられた車載機器と、を備え、
前記天井材は、前記貫通孔と前記ウインドシールドとの間に設けられた前方領域を有し、
前記前方領域は、車両後方および車両上方の少なくとも一方に向かって窪むように設けられた凹部を有し、
前記車載機器は、前記凹部に近づけて配置されている後部を有する、
車両構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インナーミラーを取り付けるための貫通孔が設けられた天井材と、ウインドシールドの上部における車内に臨む面に取り付けられた車載機器とを備える車両構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インナーミラーを取り付けるための貫通孔が設けられた天井材が開示されている。
【0003】
特許文献2には、ウインドシールドの上部における車内に臨む面に取り付けられた車載機器が開示されている。車載機器は、カメラとカバーとを備える。カメラは、前方の先行車両などの障害物との距離などを測定する。カバーは、カメラを車内から覆っている。特許文献3には、特許文献2と同様の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-35364号公報
【特許文献2】特開2016-187988号公報
【特許文献3】特開2016-203772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、天井材に貫通孔が設けられていることによって、天井材における貫通孔付近の剛性が低下し易い。上記剛性の低下を抑制するために、例えば天井材の板厚や材質を変更したり貫通孔付近に追加で取付部材などを設けたりすると、コストおよび重量が増加し易く、生産性が低下し易い。
【0006】
特許文献2および特許文献3では、車載機器の一部が運転席および助手席の乗員の視界に入り易い。そのため、上記乗員の視界が狭くなり易い上に見栄えが悪い。
【0007】
本発明の目的の一つは、天井材の貫通孔付近の剛性を高め易い上に、運転席および助手席の乗員の視界を広くし易くかつ見栄えの良い車両構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る車両構造は、
インナーミラーを取り付けるための貫通孔が設けられた天井材と、
ウインドシールドの上部における車内に臨む面に取り付けられた車載機器と、を備え、
前記天井材は、前記貫通孔と前記ウインドシールドとの間に設けられた前方領域を有し、
前記前方領域は、車両後方および車両上方の少なくとも一方に向かって窪むように設けられた凹部を有し、
前記車載機器は、前記凹部に近づけて配置されている後部を有する。
【発明の効果】
【0009】
上記車両構造では、天井材の貫通孔よりも前方に位置する前方領域が凹部を有することで、貫通孔に起因する天井材における貫通孔付近の剛性の低下を抑制し易い。よって、上記車両構造は、貫通孔に起因する天井材の振動を抑制し易い。上記車両構造は、上記剛性の低下を抑制するために、天井材の板厚や材質を変更したり、貫通孔付近に追加で取付部材などを設けたりしなくてもよいので、コストの増加、重量の増加、および生産性の低下を抑制し易い。また、上記車両構造は、前方領域が凹部を有することによって、車載機器をウインドシールドの上端に限りなく近づけることができる。そのため、車両の運転席および助手席の乗員の視界に入る車載機器の領域が少なくなり易い。よって、上記乗員の視界が広くなり易いので、上記乗員の視界が良好になり易い。その上、上記車両構造は、見栄えが良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態の車両構造の概略を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態の車両構造の概略を示す部分縦断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態の車両構造を下方から見た状態を示す下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の車両構造の実施形態を
図1から
図3を参照しつつ以下に説明する。図中の同一符号は同一または相当部分を示す。各図面が示す部材の大きさは、説明を明確にする目的で表現されており、必ずしも実際の寸法を表すものではない。図中の「UP」は実施形態の車両構造1を備える車両の上方、「LWR」は下方、「FR」は前方、「RR」は後方、「RH」は右方、「LH」は左方を示す。以下の説明の「上」、「下」、「前」、「後」、「右」、および「左」のそれぞれは、上記車両の「上方」、「下方」、「前方」、「後方」、「右方」、および「左方」のそれぞれに対応している。
【0012】
《実施形態》
〔車両構造〕
実施形態の車両構造1は、
図1に示されるように、天井材2と車載機器3とを備える。天井材2には、インナーミラー6を取り付けるための貫通孔21が設けられている。車載機器3は、ウインドシールド9の上部における車内に臨む面に取り付けられている。ウインドシールド9の車内に臨む面を単にウインドシールド9の内面ということがある。実施形態の車両構造1の特徴の一つは、天井材2が特定の箇所に設けられた特定の凹部24を有し、車載機器3が凹部24に対して特定の位置に配置される点にある。
【0013】
[天井材]
天井材2は、
図2に示されるように、ルーフアウタパネル100の車室側を覆う部材である。
図2に示す縦断面図は、車長および車高に沿った断面である。天井材2に設けられた貫通孔21は、図示しないマップランプよりも前方に設けられている。貫通孔21は、上述したようにインナーミラー6を取り付けるための孔である。
【0014】
インナーミラー6は公知のインナーミラーである。本例のインナーミラー6は、
図2に示されるように、ベース部61とアーム部62とミラー本体部63とを備える。
図2では、説明の便宜上、インナーミラー6の断面ではなく側面が示されている。ベース部61は、フロントヘッダパネル110の車幅に沿った方向の中央に固定される。フロントヘッダパネル110は、ルーフアウタパネル100の前方部分に車幅に沿って延びるように固定されている。アーム部62は、ベース部61とミラー本体部63とをつないでいる。アーム部62の途中は、貫通孔21とミラーカバー7との間を通る。ミラーカバー7は、貫通孔21の開口縁とアーム部62との間の部分を塞いで、ベース部61を覆う。ミラーカバー7は、貫通孔21の周縁部に取り付けられている。アーム部62の下端は、天井材2およびミラーカバー7から車内に露出している。ミラー本体部63は、運転者に車両の後方を視認させるためのものである。ミラー本体部63は、鏡を有するものだけでなく、ディスプレイを備えるルームミラーモニター本体を含む。ミラー本体部63は、アーム部62の下端に設けられる。アーム部62の前端とウインドシールド9との間には、ミラー本体部63の振動および振動に起因するびびり音を抑制する防振部材8が取り付けられている。防振部材8は公知の防振部材である。本例の防振部材8は棒状である。
【0015】
天井材2は、ウインドシールド9と貫通孔21との間の前方領域22と、貫通孔21よりも後方の後方領域23とを有する。前方領域22は、本例では後方領域23に対して交差するように構成されている。前方領域22は、本例とは異なり、後方領域23に沿うように設けられていてもよい。前方領域22の前端は、ウインドシールド9につながっている。前方領域22は、ウインドシールド9に沿って湾曲している。即ち、前方領域22の車幅の中央部分は左方部分および右方部分よりも車両の前方に位置するように湾曲している。
【0016】
前方領域22は、車両後方および車両上方の少なくとも一方に向かって窪むように設けられている凹部24を有する。凹部24が車両後方および車両上方の少なくとも一方に向かって窪むとは、凹部24が車両後方にのみ向かって窪んでいる場合、凹部24が車両上方にのみ向かって窪んでいる場合、凹部24が車両後方かつ車両上方に向かって窪んでいる場合のいずれかである。前方領域22が凹部24を有することで、貫通孔21が設けられていることによる貫通孔21付近の剛性の低下が抑制され易い。前方領域22に凹部24が設けられていることで、後述する車載機器3をウインドシールド9の上端に限りなく近づけることができる。そのため、運転席および助手席の乗員の視界に入る車載機器3の領域が少なくなり易い。よって、上記乗員の視界が広くなり易いので、上記乗員の視界が良好になり易い。その上、車両構造1は、見栄えが良い。本例の凹部24は、車両後方かつ車両上方に向かって窪んでいる。
【0017】
凹部24の幅は、長いほど上記剛性の低下を抑制し易い。凹部24の幅とは、車幅に沿った方向の長さである。凹部24の幅は、例えば貫通孔21の幅の0.5倍以上、更に0.75倍以上、特に1.0倍以上であってもよい。貫通孔21の幅とは、貫通孔21の前縁の車幅に沿った長さである。本例の凹部24の幅は、
図3に示されるように、貫通孔21の幅の1.0倍超、即ち貫通孔21の幅よりも長い。本例の凹部24の幅は、車載機器3の後部35の幅よりも長い。
図3では、説明の便宜上、インナーミラー6の図示が省略されている。
【0018】
凹部24の車幅に沿った位置は、貫通孔21に対応する位置である。貫通孔21に対応する位置とは、車幅に沿った方向において凹部24が貫通孔21の前縁に重複することをいう。凹部24の幅が貫通孔21の幅よりも短い場合、凹部24は、車幅に沿った方向において貫通孔21の中央に位置していてもよいし、中央よりも右方または左方に位置していてもよい。本例のように凹部24の幅が貫通孔21の幅よりも長い場合、凹部24は、車幅に沿った方向において貫通孔21の全長にわたって重複している。本例の凹部24の上記位置は、車幅に沿った方向の中央である。本例の凹部24の上記位置は、後述する車載機器3の後部35に対応する位置である。
【0019】
凹部24の深さは、深いほど後部35を凹部24の内部に配置し易い。凹部24の深さとは、
図2に示される凹部24の車長および車高に沿った断面において、凹部24の開口部をまたぐ仮想線24aから凹部24の底面の最も遠位の位置までの距離である。
図2では、説明の便宜上、仮想線24aが太い二点鎖線で示されている。仮想線24aは、凹部24の開口部の前縁と後縁とを前方領域22における凹部24よりも前方の部分と凹部24よりも後方の部分との曲線を補完するようにつないだ曲線である。本例では後部35が凹部24の内部に配置される程度の深さであるとよい。
【0020】
本例の天井材2は、
図1、
図3に示されるように、切欠25を有している。切欠25は、車載機器3のカメラ31に接続するワイヤーハーネスを天井材2から引き出すためのものである。切欠25は、車幅に沿った方向においてカバー34に重なる位置に設けられている。本例では切欠25は、凹部24よりも左方の位置に設けられている。切欠25が設けられていても、凹部24が設けられていることで剛性の低下を抑制し易い。
【0021】
[車載機器]
車載機器3は、本例では、
図2に示されるように、カメラ31とカバー34とを備える。
図2では、説明の便宜上、カメラ31の断面ではなく側面が示されている。カメラ31は、例えば前方の先行車両などの障害物との距離などを測定する。カメラ31は公知のカメラである。カバー34は、カメラ31を車内から覆っている。
【0022】
カメラ31は、本例では
図2に示されるように、ベース部材32と保持部材33とによってウインドシールド9に取り付けられる。
図2では、説明の便宜上、ベース部材32および保持部材33の断面ではなく側面が示されている。ウインドシールド9の内面には、
図3に示されるように、セラミックライン90が設けられている。セラミックライン90は、黒色のセラミックがコーティングされて構成されている。セラミックライン90は、ウインドシールド9の内面の中央に設けられる取付領域91を有する。取付領域91は車両の下方に位置する下底が車両の上方に位置する上底よりも短い台形状に構成されている。
図2に示されるベース部材32は、接着剤または両面テープによって
図3に示される取付領域91に固定されている。ベース部材32は、公知のベース部材である。保持部材33は、カメラ31を保持する部材である。保持部材33は公知の保持部材である。カメラ31は保持部材33に着脱自在に取り付けられている。カメラ31を保持している保持部材33は、ベース部材32に着脱自在に取り付けられている。ウインドシールド9に取り付けられたベース部材32に保持部材33が取り付けられることで、保持部材33に取り付けられたカメラ31がウインドシールド9に取り付けられる。
【0023】
カバー34は、ベース部材32に着脱自在に取り付けられている。ベース部材32に対するカバー34の取り付け方は、特に限定されない。カバー34をウインドシールド9の内面に沿ってウインドシールド9の前方かつ下方から後方かつ上端に向かう方向にスライド移動させることで、カバー34がベース部材32に取り付けられてもよい。また、カバー34をベース部材32に向かって車両の下方から上方に向かって移動させてベース部材32に嵌めることで、カバー34がベース部材32に取り付けられてもよい。
【0024】
車載機器3は、凹部24に近づけて配置されている後部35を有する。凹部24に近づけて配置とは、車載機器3と天井材2との間に最小クリアランスを空けていれば、後部35が凹部24の内部に配置されていてもよいし、後部35が凹部24の外部に配置されていてもよい。後部35が凹部24の内部に配置されているとは、
図2に示される凹部24の車長および車高に沿った断面において、後部35が仮想線24aに接する位置よりも凹部24の底面に近い位置に配置されている場合と、後部35が仮想線24aに接する位置に配置されている場合とを含む。後部35が凹部24の外部に配置されているとは、最小クリアランスが凹部24の上記深さ超となる場合であって、後部35が仮想線24aに接する位置よりも凹部24の底面から遠位な位置に配置されている場合である。この場合、後部35と仮想線24aとの間の距離と上記深さとの合計が最小クリアランスに相当する位置に後部35が配置される。最小クリアランスとは、車両の振動時に車載機器3と天井材2とが接触しない非振動時の車載機器3と天井材2との間の最小の距離である。最小クリアランスは、車種によって異なる。車載機器3の後部35とは、車載機器3のうち最も天井材2に接近する部分である。本例の車載機器3の後部35は、
図3に示されるように、カバー34の後部のうち車幅に沿った方向の中央に2つに分かれて構成されている。本例では後部35は凹部24の内部に配置されている。後部35の幅は、凹部24の幅以下である。
【0025】
本例の車載機器3は、
図2、
図3に示されるように、後部35を凹部24に近づけて配置した際、車載機器3と防振部材8とが互いに干渉しないように設けられた凹部36を有する。本例の凹部36は、カバー34の後部に設けられている。凹部36は、
図3に示されるように2つの後部35の間に設けられている。
図3に示されるように凹部36を下方から見た際、凹部36の形状はU字状である。凹部36の後方は開口している。凹部36の後方の開口は天井材2の前方領域22に覆われている。凹部36は、防振部材8の後方を囲うことなく防振部材8の左方、右方、および前方を囲っている。防振部材8の左方、右方、および前方が凹部36によって囲まれていて、防振部材8の後方が前方領域22によって覆われていることで、防振部材8が外部から見難いため、見栄えが良い。
【0026】
本例とは異なり、車載機器3は、カメラ31ではなく、例えば、レーザレーダ、ミリ波レーダ、超音波センサ、ETC(Electronic Toll Collection System)車載器、GPS(Global Positioning System)、湿度センサを備えていてもよい。
【0027】
本発明は、これらの例示に限定されず、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0028】
1 車両構造
2 天井材
21 貫通孔
22 前方領域
23 後方領域
24 凹部
24a 仮想線
25 切欠
3 車載機器
31 カメラ
32 ベース部材
33 保持部材
34 カバー
35 後部
36 凹部
6 インナーミラー
61 ベース部
62 アーム部
63 ミラー本体部
7 ミラーカバー
8 防振部材
9 ウインドシールド
90 セラミックライン
91 取付領域
100 ルーフアウタパネル
110 フロントヘッダパネル