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特開2024-166882有機トランジスタの製造方法、有機トランジスタ、液晶素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166882
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】有機トランジスタの製造方法、有機トランジスタ、液晶素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20241122BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20241122BHJP
   H10K 10/46 20230101ALI20241122BHJP
   G02F 1/1368 20060101ALI20241122BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20241122BHJP
   G02F 1/139 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
H01L29/78 618C
H01L29/78 618A
H01L29/78 618B
H10K10/46
G02F1/1368
G02F1/1337 520
G02F1/139
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083278
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】弁理士法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】都甲 康夫
(72)【発明者】
【氏名】太田 めぐみ
【テーマコード(参考)】
2H088
2H192
2H290
5F110
【Fターム(参考)】
2H088FA29
2H088HA03
2H088HA08
2H088JA10
2H088KA27
2H088MA20
2H192AA24
2H192CB06
2H192CB36
2H192DA02
2H192GD06
2H192GD12
2H192HA01
2H192HA22
2H192JA02
2H192JA03
2H192JA13
2H290AA02
2H290AA03
2H290AA33
2H290BE03
2H290BF13
2H290BF23
2H290CA46
5F110BB01
5F110CC04
5F110DD02
5F110EE02
5F110EE07
5F110FF01
5F110FF02
5F110FF03
5F110GG05
5F110GG42
5F110GG57
5F110HK02
5F110HK07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】有機トランジスタのチャネル部の高精細化並びにチャネル部のエッジ部分における盛り上がりを低減する有機トランジスタの製造方法、有機トランジスタ及び液晶措置を提供する。
【解決手段】有機トランジスタの製造方法は、第1基板11の一面にゲート電極21を形成すること、第1基板の一面側にゲート電極を覆うようにゲート絶縁膜13を形成すること、第1基板のゲート絶縁膜の一面側であってゲート電極とそれぞれ部分的に重なる位置に、相互間に所定距離をあけてドレイン電極22及びソース電極23を形成すること、第1基板のゲート絶縁膜の一面側に、ドレイン電極及びソース電極を覆うように液晶用配向膜15を形成すること、液晶用配向膜のゲート電極と平面視において重なる領域にエッチャント51を滴下することによって開口部15bを形成すること及び液晶用配向膜の開口部に有機半導体膜を形成することを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機トランジスタの製造方法であって、
(a)基板の一面にゲート電極を形成すること、
(b)前記基板の一面側に前記ゲート電極を覆うようにゲート絶縁膜を形成すること、
(c)前記基板の前記ゲート絶縁膜の一面側であって前記ゲート電極とそれぞれ部分的に重なる位置に、相互間に所定距離をあけてドレイン電極及びソース電極を形成すること、
(d)前記基板の前記ゲート絶縁膜の一面側に、前記ドレイン電極及び前記ソース電極を覆うように液晶用配向膜を形成すること、
(e)前記液晶用配向膜の前記ゲート電極と平面視において重なる領域にエッチャントを滴下することによって開口部を形成すること、
(f)前記液晶用配向膜の前記開口部に有機半導体膜を形成すること、
を含む、有機トランジスタの製造方法。
【請求項2】
前記(e)において、前記開口部は平面視において略円形状又は略楕円形状に形成される、
請求項1に記載の有機トランジスタの製造方法。
【請求項3】
前記(f)において、前記有機半導体膜は、前記開口部に有機半導体材料を滴下することによって形成される、
請求項1に記載の有機トランジスタの製造方法。
【請求項4】
前記(d)における前記液晶用配向膜は、垂直配向膜である、
請求項1に記載の有機トランジスタの製造方法。
【請求項5】
前記(f)において、前記有機半導体膜と前記液晶用配向膜の各々の高さが略同一となるように前記有機半導体材料の滴下量が設定される、
請求項1に記載の有機トランジスタの製造方法。
【請求項6】
前記(d)は、前記液晶用配向膜に一軸配向処理を行うことを含む、
請求項1に記載の有機トランジスタの製造方法。
【請求項7】
(g)前記(c)と前記(d)の間に、前記ドレイン電極及び前記ソース電極の各一面に対して自己組織化単分子膜を形成すること、を更に含む、
請求項1に記載の有機トランジスタの製造方法。
【請求項8】
液晶素子の製造方法であって、
(A)請求項1に記載の製造方法によって製造される前記基板と対向基板とを両者間に間隙を設けて貼り合わせること、
(B)前記基板と前記対向基板との間に液晶層を形成すること、
を含む、液晶素子の製造方法。
【請求項9】
前記(B)は、誘電率異方性が負の液晶材料を用いて前記液晶層を形成する、
請求項8に記載の液晶素子の製造方法。
【請求項10】
前記(B)は、誘電率異方性が負の液晶材料であって高級アルコールが添加されている当該液晶材料を用いて前記液晶層を形成する、
請求項8に記載の液晶素子の製造方法。
【請求項11】
請求項1に記載の製造方法によって製造される、有機トランジスタ。
【請求項12】
請求項8に記載の製造方法によって製造される、液晶素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有機トランジスタの製造方法、有機トランジスタ、液晶素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-154174号公報(特許文献1)には、有機半導体層をインクジェット印刷で形成できる表示素子が記載されている。具体的には、この文献に記載の液晶表示素子は、主基板上に配置されたゲート電極と、ゲート電極を覆うように配置されたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に配置されたソース電極およびドレイン電極と、ドレイン電極に接続された主電極と、ソース電極の一部、ドレイン電極の一部およびゲート電極に相当する箇所に開口部を備える液晶配向層と、液晶配向層の開口部内、ソース電極の一部およびドレイン電極の一部に接するように配置された有機半導体層と、主基板と対向配置されており主電極に対向する対向電極を有する対向基板と、基板間に配置されており液晶配向層と接する液晶層とを含む。そして、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極および有機半導体層が有機トランジスタを構成する。しかし、有機トランジスタのチャネル部を構成する有機半導体層のサイズをより小さくすることが難しいという点や、チャネル部のエッジ部分が盛り上がることによる液晶層の配向不良が生じ得るという点で改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-154174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示に係る具体的態様は、有機トランジスタのチャネル部の高精細化並びにチャネル部のエッジ部分における盛り上がりの低減を実現することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]本開示に係る一態様の有機トランジスタの製造方法は、
(a)基板の一面にゲート電極を形成すること、
(b)前記基板の一面側に前記ゲート電極を覆うようにゲート絶縁膜を形成すること、
(c)前記基板の前記ゲート絶縁膜の一面側であって前記ゲート電極とそれぞれ部分的に重なる位置に、相互間に所定距離をあけてドレイン電極及びソース電極を形成すること、
(d)前記基板の前記ゲート絶縁膜の一面側に、前記ドレイン電極及び前記ソース電極を覆うように液晶用配向膜を形成すること、
(e)前記液晶用配向膜の前記ゲート電極と平面視において重なる領域にエッチャントを滴下することによって開口部を形成すること、
(f)前記液晶用配向膜の前記開口部に有機半導体膜を形成すること、
を含む、有機トランジスタの製造方法である。
[2]本開示に係る一態様の液晶素子の製造方法は、
(A)前記[1]に記載の製造方法によって製造される前記基板と対向基板とを両者間に間隙を設けて貼り合わせること、
(B)前記基板と前記対向基板との間に液晶層を形成すること、
を含む、液晶素子の製造方法である。
[3]本開示に係る一態様の有機トランジスタは、前記[1]に記載の製造方法によって製造される、有機トランジスタである。
[4]本開示に係る一態様の液晶素子は、前記[2]に記載の製造方法によって製造される、液晶素子である。
【0006】
上記構成によれば、チャネル部の高精細化並びにチャネル部のエッジ部分における盛り上がりの低減が実現された有機トランジスタとその製造方法、並びに当該有機トランジスタを備える液晶素子を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態の液晶素子の構造を示す模式的な部分断面図である。
図2図2は、液晶素子の構成を説明するための模式的な平面図である。
図3図3(A)~図3(D)は、有機トランジスタの製造方法及びこれを備える液晶素子の製造方法を説明するための模式的な部分断面図である。
図4図4(A)~図4(C)は、有機トランジスタの製造方法及びこれを備える液晶素子の製造方法を説明するための模式的な部分断面図である。
図5図5(A)、図5(B)は、有機トランジスタの製造方法及びこれを備える液晶素子の製造方法を説明するための模式的な部分平面図である。
図6図6(A)、図6(B)は、有機トランジスタの製造方法及びこれを備える液晶素子の製造方法を説明するための模式的な部分平面図である。
図7図7(A)及び図7(B)は、有機トランジスタの製造方法及びこれを備える液晶素子の製造方法を説明するための模式的な部分平面図である。
図8図8は、開口部15bの段差形状及び配向膜15の外縁の段差形状を測定した結果の一例を示す図である。
図9図9(A)~図9(D)は、変形例に係る製造方法について説明するための模式的な部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、一実施形態の液晶素子の構造を示す模式的な部分断面図である。図1に示す本実施形態の液晶素子100は、概略構成として、一面同士が対向するように配置された第1基板11と第2基板12と、第1基板11と第2基板12の間に配置された液晶層17と、液晶層17を囲むように配置されたシール材18を備えている。
【0009】
第1基板11及び第2基板12は、それぞれガラス基板やプラスティック基板などの透明基板であり、一面同士を向かい合わせて配置されている。第1基板11と第2基板12の間には図示しないスペーサが配置されている。このスペーサにより、第1基板11と第2基板12の一面同士の間には例えば数μmの間隙が設けられている。
【0010】
液晶層17は、例えば流動性を有するネマティック液晶材料を用いて構成されており、第1基板11と第2基板12の各一面の間に配置されている。液晶層17の層厚は上記したスペーサに応じて定まるものであり、例えば数μmである。液晶材料としては、誘電率異方性が正の材料、負の材料のいずれが用いられてもよい。
【0011】
第1基板11の一面には、ゲート絶縁膜13、配向膜15、ゲート電極21、ドレイン電極22、画素電極22a、ソース電極23、有機半導体膜24等が設けられている。ゲート絶縁膜13、ゲート電極21、ドレイン電極22、有機半導体膜24を含んで有機トランジスタ(薄膜トランジスタ)が構成されている。また、画素電極22aは、ドレイン電極22と一体に構成されている。
【0012】
ゲート電極21は、第1基板11の一面に設けられている。このゲート電極21は、後述する図5(A)等に示すゲート配線121と接続されている。本実施形態ではゲート電極21とゲート配線121は一体に構成されている。ゲート電極21及びゲート配線121は、例えばITO(インジウム錫酸化物)などの透明導電膜、あるいは金属膜など導電性を有する膜を用いて形成することができる。
【0013】
ゲート絶縁膜13は、第1基板11の一面においてゲート電極21及びゲート配線121を覆うように設けられている。ゲート絶縁膜13は、例えば有機系絶縁膜を用いて構成することや、SiN、SiOなどの無機絶縁膜を用いて構成することができる。
【0014】
ドレイン電極22は、第1基板11の一面側においてゲート絶縁膜13の一面(液晶層17側の面)に設けられている。このドレイン電極22は、上記のように画素電極22aと接続されている。本実施形態ではドレイン電極22と画素電極22aは一体に構成されている。ドレイン電極22及び画素電極22aは、例えばITO(インジウム錫酸化物)などの透明導電膜、あるいは金属膜など導電性を有する膜を用いて形成することができる。
【0015】
ソース電極23は、第1基板11の一面側においてゲート絶縁膜13の一面(液晶層17側の面)に設けられている。このソース電極23は、後述する図5(A)等に示すソース配線123と接続されている。本実施形態ではゲート電極21とゲート配線121は一体に構成されている。ソース電極23及びソース配線123は、例えばITO(インジウム錫酸化物)などの透明導電膜、あるいは金属膜など導電性を有する膜を用いて形成することができる。
【0016】
図示のように、ドレイン電極22とソース電極23は、それぞれがゲート電極21と部分的に重なる位置に設けられている。また、ドレイン電極22とソース電極23との間には隙間が設けられている。この隙間がチャネル部の長さに対応する。チャネル部は、例えばチャネル長を10μm、チャネル幅を50μmとすることができる。ゲート電極21は、これらドレイン電極22とソース電極23との間の隙間と平面視において重なるように配置されている。
【0017】
有機半導体膜24は、少なくとも一部分がドレイン電極22とソース電極23との間の隙間を埋めるように設けられている。有機半導体膜24は、ドレイン電極22、ソース電極23のそれぞれの一部分と物理的に接し、相互間で導通可能に設けられている。
【0018】
有機半導体膜24を構成するための有機材料としては、例えば、ペンタセンやナフタセンといった高度に拡張したπ骨格を持つポリアセン類が好ましい。不安定性を回避するためチオフェンのようなヘテロ芳香族を組み込むこともできる。チエノアセンは優れた安定性と高いキャリア移動度を示す。チエノアセンをベースとした有機半導体の中で、例えばBTBT([1]benzothieno[3,2-b][1]benzothiophene)やDNTT(dinaphtho[2,3-b:2’3’-f]thieno[3,2-b]thiophene)といったチエノ[3,2-b]チオフェン構造を内部に有する化合物は、高い移動度や大気安定性、良好な再現性を持ち、PFET用p型有機半導体として優れており、シグマアルドリッチ社等から入手可能である。
【0019】
配向膜15は、ドレイン電極22、ソース電極23等を覆うようにしてゲート絶縁膜13の一面側に設けられている。配向膜15としては、水平配向膜、垂直配向膜などが適宜用いられる。配向膜15にはラビング等の一軸配向処理が施されていてもよい。図示のように、配向膜15は、ゲート電極21と平面視において重なる領域に開口部を有しており、有機半導体膜24はこの開口部に配置されている。
【0020】
また、配向膜15は、第1基板11及び第2基板12の端部(図中では左側端部)に近い位置に隆起部(盛り上がり部)15aを有している。この隆起部15aは、配向膜15の他の部分よりも膜厚が大きい部分である。本実施形態では、この隆起部15aは、部分的にシール材18と重なって配置されている。
【0021】
第2基板12の一面には、共通電極(対向電極)14、配向膜16が設けられている。
【0022】
共通電極14は、第2基板12の一面において、画素電極22aと対向するように配置されている。共通電極14は、例えばITO(インジウム錫酸化物)などの透明導電膜、あるいは金属膜など導電性を有する膜を用いて形成することができる。
【0023】
配向膜16は、共通電極14を覆うようにして第2基板12の一面側に設けられている。配向膜16としては、水平配向膜、垂直配向膜などが適宜用いられる。ラビング等の一軸配向処理が施されていてもよい。
【0024】
図2は、液晶素子の構成を説明するための模式的な平面図である。液晶素子100は、概略、矩形状の平面視形状を有している。液晶層17を封止するためのシール材18は、図示のように液晶素子100の外縁から少し内側に沿って平面視で矩形の枠状に設けられている。本実施形態のシール材18は、一部を開口させた注入口18aを有している。この注入口18aは、液晶層17を形成する工程において用いられるものであり、図示しないエンドシール材で封止されている。図示のように、シール材18に囲まれた内側部分は、画像表示に寄与する表示部30である。表示部30の図中左側には上記したゲート配線121と接続されたゲート取り出し電極部31が設けられており、図中上側にはソース配線123と接続されたソース取り出し電極部32が設けられている。
【0025】
図3(A)~図3(D)及び図4(A)~図4(C)は、有機トランジスタの製造方法及びこれを備える液晶素子の製造方法を説明するための模式的な部分断面図である。また、図5(A)、図5(B)、図6(A)、図6(B)、図7(A)及び図7(B)は、有機トランジスタの製造方法及びこれを備える液晶素子の製造方法を説明するための模式的な部分平面図である。なお、図3(A)~図3(D)及び図4(A)~図4(C)に示す断面図は、図5(A)に示すaーa線の断面に対応している。また、各図において点線130は表示部30の境界線を示している。
【0026】
図3(A)及び図5(A)に示すように、第1基板11の一面に各ゲート電極21及び各ゲート配線121が形成され、それらを覆うゲート絶縁膜13が形成され、さらに各ドレイン電極22、各画素電極22a、各ソース電極23及び各ソース配線123が形成される。
【0027】
図5(A)に示すように、各ゲート配線121は、互いに間隔をあけて図中左右方向に延在して設けられ、各ソース電極123は互いに間隔をあけて図中上下方向に延在して設けられる。各ドレイン電極22及び各画素電極22aは、平面視において各ゲート配線121の間かつ各ソース配線123の間にそれぞれ設けられる。
【0028】
次に、図3(B)及び図5(B)に示すように、第1基板11の一面側に各ドレイン電極22、各画素電極22a、各ソース電極23を覆うようにして配向膜15が形成される。第1基板11の端部近傍の配向膜15には隆起部15aが生じる。配向膜15は、例えばフレキソ印刷によって成膜し、レベリングを行った後、例えば90℃で仮焼成することによって形成することができる。
【0029】
図5(B)に示すように配向膜15は、点線130で示される表示部30の境界よりわずかに大きいサイズ(例えば100μm以上大きいサイズ)に形成される。また、配向膜15は、ゲート取り出し電極部31とソース取り出し電極部32には重ならないように形成される。配向膜15は、シール材18を設ける領域と重ならないように形成するか、図4(B)に示すように一部が重なるように形成することができる。
【0030】
次に、図3(C)及び図6(A)に示すように、各ドレイン電極22と各ソース電極23の間の各領域(チャネル部となるべき各領域)に、例えばディスペンサ50を用いてエッチャント51が滴下される。エッチャント51としては、例えばNMP(N-メチル-2-ピロリドン)を用いることができる。なお、エッチャント51はNMPに限らず、他の極性溶媒やアルカリ溶液(KOHやNaOHなど)及びそれらをゲル化した溶液を用いることができる。
【0031】
エッチャント51によって配向膜15が部分的に溶かされるので、その後配向膜15に対して純水等を用いた洗浄が行われることで、図3(D)及び図6(B)に示すように、配向膜15に各開口部(チャネル開口部)15bが形成される。
【0032】
ここではエッチャント51を点状に滴下したので各開口部15bは図示のように平面視で略円形状となるが、エッチャント51を線状に滴下した場合に各開口部15bの平面視形状が楕円形状となる。
【0033】
また、配向膜15が垂直配向膜である場合には、配向膜15が撥水性を有するようになるので、滴下されたエッチャント51が広がりにくい。そのため、各開口部15bの径をより制御しやすくなり、例えば、50μm~200μm程度に制御することができる。各開口部15bが形成されることで、各ドレイン電極22、各ソース電極23が部分的に露出する。
【0034】
このような工程によれば、フォトマスクなどを用いたフォトリソグラフィ工程を行うことなく、低コストかつ高精細に各開口部15bを設けることができる。
【0035】
配向膜15に各開口部15bを形成した後、配向膜15に対して本焼成が行われる。本焼成は、例えば200℃、1.5時間の条件で行うことができる。その後、配向膜15には適宜ラビング処理や光配向処理などの一軸配向処理が行われる。なお、各開口部15bの形成前に配向膜15の本焼成が行われてもよい。また、ラビングなどの配向処理を行った後に純水やイソプロピルアルコールなどの低級アルコールで洗浄してもよい。この洗浄によりラビング時に発生する繊維ゴミを除去できるとともに、有機トランジスタのチャネル部(開口部)のゲート絶縁膜の表面を洗浄でき、有機トランジスタの性能改善を図ることができる。
【0036】
次に、図4(A)及び図7(A)に示すように、各開口部15bに対して有機半導体材料が滴下されることで各有機半導体膜24が形成される。有機半導体材料の滴下については、例えばインクジェット法を用いて行うことができる。垂直配向膜を用いた場合には配向膜15に撥水性があり、滴下された有機半導体材料がはじかれるので、各開口部15bとほぼ同じ大きさの各有機半導体膜24が得られる。有機半導体膜24の膜厚は、例えば配向膜15と同等の40μm程度にすることができる。つまり、有機半導体膜24の膜厚と配向膜15の膜厚とが略同一になるように有機半導体材料の滴下量が設定されることが好ましい。
【0037】
なお、各有機半導体膜24の形成後にラビングなどの配向処理が行われてもよいが、各有機半導体膜24の劣化をより確実に防ぐには各有機半導体膜24の形成前に配向処理が行われることがより好ましい。
【0038】
ここまでの工程を経ることで第1基板11に複数の有機トランジスタが完成する。
【0039】
次に、図4(C)及び図7(B)に示すように、シール材18を形成する。シール材18は、平面視において点線130によって示される表示部30の境界線よりも外側に形成される。また、シール材18は、配向膜15の平面視での外縁よりわずかに外側となるか、又はシール材18の幅方向での半分程度以下が配向膜15の外縁と重なるように形成される(図示の例では後者)。
【0040】
他方で、予め、第2基板(対向基板)12の一面側に共通電極14が形成され、この共通電極14を覆うように配向膜16が形成される。
【0041】
次に、第1基板11の一面又は第2基板12の一面にスペーサ剤(図示せず)が散布される。シール材18にもスペーサ剤が添加されていてもよい。その後、図4(C)に示すように、第1基板11と第2基板12が重ね合わせられ、シール材18の焼成が行われる。焼成は、例えば150℃、2時間の条件で行うことができる。
【0042】
その後、図4(C)に示すように、第1基板11と第2基板12の隙間に液晶材料が注入されることによって液晶層17が形成される。本実施形態では、上記した注入口18aを用いて真空注入法により液晶層17が形成される。
【0043】
ここでは、例えば誘電率異方性が負の液晶材料であって、高級アルコール(長期アルキル鎖で末端がOH基の分子構造材料)が添加されているもの(いわゆるセルフアライメント液晶材料)、つまり配向膜がなくても垂直配向性を示す液晶材料を用いることが好ましい。本実施形態では有機半導体膜24の領域で配向膜15が存在しない構造となるので、当該領域においても液晶層17の良好な配向を確保し、表示品位を向上させるためである。
【0044】
以上の工程を経ることで複数の有機トランジスタを有する液晶素子100が完成する。
【0045】
図8は、開口部15bの段差形状及び配向膜15の外縁の段差形状を測定した結果の一例を示す図である。図8においては、各段差形状の比較を容易とするため、段差の立ち上がり地点で揃えて表示している。ここでは、上記した実施形態に即して作製された液晶素子のサンプルを用いて測定を行った。なお、配向膜15の外縁の段差形状とは上記の図3(D)に示したb部付近の形状であり、以下では「境界b」と呼ぶ。また、開口部15bの段差形状とは上記の図3(D)に示したc部付近の形状であり、以下では「境界c」と呼ぶ。図示のように、それぞれの段差形状における高さや幅が大きく異なっていることが分かる。図示のサンプルの例では、境界bの高さ(盛り上がり)H1は境界cの高さ(盛り上がり)H2よりも約9倍大きく、境界bの長さ(幅)L1は境界cの長さ(幅)L2よりも約3.2倍大きい。
【0046】
フレキソ印刷によって形成される配向膜15の外縁において隆起部15aのような盛り上がり部分が生じる現象はコーヒーリング現象と呼ばれる。この盛り上がり部分はフレキソ印刷やインクジェット法を用いる場合には避けることが難しいため、配向膜15の高精細なパターン形成が難しく、また高さのムラ(すなわち膜厚ムラ)から液晶層17の配向不良を引き起こす。このため、表示部30の内部にこのような盛り上がり部分が生じることは好ましくない。一方、開口部15bの段差形状は高精細であり、盛り上がり部分もほとんどない。このため、液晶層17の配向性に対して悪影響は与えないと推察される。
【0047】
本実施形態に係る液晶素子100の構造の特徴について以下に挙げる。
1)各有機半導体膜24と液晶層17が直接的に接している部分を有する。液晶層17は液晶分子が密にパッキングしており水分を通しにくいため、液晶層17が各有機半導体膜24に対するパッシベーション膜としても機能する。
2)各有機半導体膜24の表面はラビング等の配向処理がなされておらず、各有機半導体膜24の周囲に存在する配向膜15の表面には配向処理がなされている。
3)配向膜15は、シール材18とあまり重ならないように大きくパターン形成されており、微細な各開口部15bを有しており、それらの開口部15bの一部もしくは全部に有機半導体膜24が形成されている。
4)配向膜15の外縁部のエッジ形状と各開口部15bの外縁部のエッジ形状が異なっており、それぞれの外縁部の盛り上がりは配向膜15の外縁部の方が各開口部15bの外縁部より2倍以上高く(例えば約9倍)、外縁部の幅(境界の幅)は配向膜15の外縁部の方が各開口部15bの外縁部より2倍以上広い(例えば3.2倍)。
5)配向膜15は垂直配向膜であり、液晶層17を構成する液晶材料は誘電率異方性が負の液晶であり、高級アルコール(長期アルキル鎖で末端がOH基の分子構造材料)が添加されており、有機半導体膜24の領域においても均一な垂直配向性を示している。
【0048】
以上のような実施形態によれば、有機トランジスタのチャネル部の高精細化並びにチャネル部のエッジ部分における盛り上がりの低減を実現することが可能となる。
【0049】
なお、本開示は上記した実施形態の内容に限定されるものではなく、本開示の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば、上記した実施形態におけるドレイン電極22及びソース電極23の表面に自己組織化単分子膜(SAM膜)を設けてもよい。この変形例に係る製造方法について図9(A)~図9(D)を参照しながら説明する。なお、SAM膜に関する工程以外は上記した実施形態と同様であるので、共通する工程については説明を省略する。
【0050】
上記した実施形態と同様に、図9(A)に示すように第1基板11のゲート絶縁膜13の一面側にドレイン電極22、ソース電極23を形成する。次いで、図9(B)に示すようにドレイン電極22及びソース電極23に対してSAM剤を用いてSAM膜25を形成する。SAM剤としては、例えば2PAC、MeO-2PAC、PFBPA、pCF3-PhPA、NPPAといったものを用いることができる。
【0051】
その後は上記した実施形態と同様に、図9(C)に示すようにSAM膜25の設けられたドレイン電極22、ソース電極23を覆うように配向膜15を形成し、開口部15bを形成する。そして、図9(D)に示すように開口部15bに有機半導体膜24を形成する。
【0052】
この変形例の製造方法に係る有機トランジスタ及び液晶素子では、図示のように開口部15bを除いた部分では配向膜15の下にSAM膜25が設けられた構造となる。このようなSAM膜25を設けることで、有機トランジスタの移動度の向上を図ることができる。
【0053】
本開示は、以下に付記する特徴を有する。
(付記1)
有機トランジスタの製造方法であって、
(a)基板の一面にゲート電極を形成すること、
(b)前記基板の一面側に前記ゲート電極を覆うようにゲート絶縁膜を形成すること、
(c)前記基板の前記ゲート絶縁膜の一面側であって前記ゲート電極とそれぞれ部分的に重なる位置に、相互間に所定距離をあけてドレイン電極及びソース電極を形成すること、
(d)前記基板の前記ゲート絶縁膜の一面側に、前記ドレイン電極及び前記ソース電極を覆うように液晶用配向膜を形成すること、
(e)前記液晶用配向膜の前記ゲート電極と平面視において重なる領域にエッチャントを滴下することによって開口部を形成すること、
(f)前記液晶用配向膜の前記開口部に有機半導体膜を形成すること、
を含む、有機トランジスタの製造方法。
(付記2)
前記(e)において、前記開口部は平面視において略円形状又は略楕円形状に形成される、
付記1に記載の有機トランジスタの製造方法。
(付記3)
前記(f)において、前記有機半導体膜は、前記開口部に有機半導体材料を滴下することによって形成される、
付記1又は2に記載の有機トランジスタの製造方法。
(付記4)
前記(d)における前記液晶用配向膜は、垂直配向膜である、
付記1~3の何れかに記載の有機トランジスタの製造方法。
(付記5)
前記(f)において、前記有機半導体膜と前記液晶用配向膜の各々の高さが略同一となるように前記有機半導体材料の滴下量が設定される、
付記1~4の何れかに記載の有機トランジスタの製造方法。
(付記6)
前記(d)は、前記液晶用配向膜に一軸配向処理を行うことを含む、
付記1~5の何れかに記載の有機トランジスタの製造方法。
(付記7)
(g)前記(c)と前記(d)の間に、前記ドレイン電極及び前記ソース電極の各一面に対して自己組織化単分子膜を形成すること、を更に含む、
付記1~6の何れかに記載の有機トランジスタの製造方法。
(付記8)
液晶素子の製造方法であって、
(A)付記1~7の何れかに記載の製造方法によって製造される前記基板と対向基板とを両者間に間隙を設けて貼り合わせること、
(B)前記基板と前記対向基板との間に液晶層を形成すること、
を含む、液晶素子の製造方法。
(付記9)
前記(B)は、誘電率異方性が負の液晶材料を用いて前記液晶層を形成する、
付記8に記載の液晶素子の製造方法。
(付記10)
前記(B)は、誘電率異方性が負の液晶材料であって高級アルコールが添加されている当該液晶材料を用いて前記液晶層を形成する、
付記8に記載の液晶素子の製造方法。
(付記11)
付記1~7の何れかに記載の製造方法によって製造される、有機トランジスタ。
(付記12)
付記8~10の何れかに記載の製造方法によって製造される、液晶素子。
【符号の説明】
【0054】
11:第1基板、12:第2基板、13:ゲート絶縁膜、14:共通電極、15、16:配向膜、15a:隆起部、15b:開口部、17:液晶層、18:シール材、21:ゲート電極、22:ドレイン電極、22a:画素電極、23:ソース電極、24:有機半導体膜、25:SAM膜、100:液晶素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9