(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166885
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】毛髪化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/86 20060101AFI20241122BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20241122BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
A61K8/86
A61K8/39
A61Q5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083284
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】596154365
【氏名又は名称】株式会社ウテナ
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 博之
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC012
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC181
4C083AC182
4C083AC302
4C083AC342
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC482
4C083AC532
4C083AD111
4C083AD112
4C083AD152
4C083AD442
4C083AD452
4C083AD662
4C083BB04
4C083BB11
4C083CC31
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE21
(57)【要約】
【課題】毛髪に強いツヤ感を付与し得、且つ洗い流し性にも優れた毛髪化粧料を提供する。
【解決手段】
(A)水、(B)全量に対し60質量%以上、90%質量以下の油性成分、(C)非イオン性界面活性剤、を含有することを特徴とする毛髪化粧料。(B)油性成分として極性油を含む場合、極性油は化粧料の全量に対し15質量%以下であることが好適である。また、(D)多価アルコール、をさらに含有してもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水
(B)全量に対し60質量%以上、90%質量以下の油性成分
(C)非イオン性界面活性剤 を含有すること
を特徴とする毛髪化粧料。
【請求項2】
(B)油性成分として極性油を含む場合、極性油は化粧料の全量に対し15質量%以下であること
を特徴とする請求項1に記載の毛髪化粧料。
【請求項3】
(C)非イオン性界面活性剤として、POEアルキルエーテル類またはポリグリセリン脂肪酸エステルに該当する物質から選択される1種以上の物質を含むこと
を特徴とする請求項1に記載の毛髪化粧料。
【請求項4】
(D)多価アルコール をさらに含有すること
を特徴とする請求項1に記載の毛髪化粧料。
【請求項5】
(D)多価アルコールとして、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールから選択される1種以上の物質を含むこと
を特徴とする請求項1に記載の毛髪化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪に対して使用する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人のヘアスタイルは多様化しており、化粧品メーカー等においては、顧客のニーズに合わせた毛髪化粧料の検討がなされている。特に最近では、毛髪が濡れているような強いツヤを発する「濡れ髪」と呼ばれるスタイルが流行しており、シーンに合わせて「濡れ感」を毛髪に付与する化粧料の需要が高まっている。
【0003】
毛髪にツヤを付与するには、油分を含む化粧料を用いることが有効であり、こうした化粧料としては、O/W型またはW/O型の乳化化粧料や、数種の油分を混合したオイル化粧料等がある。
【0004】
尚、毛髪に対しスタイリング等を目的に使用される毛髪化粧料に関する技術を記載した先行技術文献としては、例えば下記特許文献1、2等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-189311号公報
【特許文献2】特開2022-52237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
毛髪に付与されるツヤ感は、一般に油剤を多く使用した化粧料ほど強くなる。つまり、毛髪が濡れているように見えるほどの強いツヤを毛髪に付与するには、それだけ多くの油剤を化粧料に含有する必要がある。
【0007】
しかしながら、O/W型の乳化化粧料やW/O型の乳化化粧料では、水分量に対し油分の含有量を多くしすぎれば安定性の悪化を招いてしまう。また、オイル化粧料では、混合される各種油剤について均一性を保つ必要があるため、実際に選択できる油剤の種類が限定的になり、化粧料としての使用性が調整しづらいという問題があった。
【0008】
さらに、W/O型の乳化化粧料やオイル化粧料は水との馴染みが悪く、水での洗浄がしにくいという性質がある。これらの化粧料では、洗浄しても流しきれない化粧料が毛髪に残ることでごわつきや毛穴詰まりの原因となったり、洗い流そうと何度もシャンプーをすることで毛髪を痛めてしまうという問題も生じがちである。つまり、強いツヤ感が求められる毛髪化粧料においては、ツヤ感と洗い流し性の両立が難しいという課題があった。
【0009】
例えば、上記特許文献1に記載の毛髪用化粧料では、目指す作用効果のひとつとしてツヤの付与が挙げられているものの、毛髪が濡れているように見えるほどの強いツヤを付与するには十分ではなかった。
【0010】
また、上記特許文献2には、ポリマーやエタノール、オイル等を含有することにより、ヘアケア性や整髪力、使用感および製剤の均一性といった機能を向上させた整髪剤組成物が記載されているが、やはり選択し得る油剤の種類は限定されてしまうし、洗い流し性にも改善の余地があった。
【0011】
本発明は、斯かる実情に鑑み、毛髪に強いツヤ感を付与し得、且つ洗い流し性にも優れた毛髪化粧料を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための手段として、本発明は、
(A)水
(B)全量に対し60質量%以上、90%質量以下の油性成分
(C)非イオン性界面活性剤 を含有すること
を特徴とする毛髪化粧料を提供する。
【0013】
本発明の毛髪化粧料において、(B)油性成分として極性油を含む場合、極性油の含有量は全量に対し15質量%以下とすることが好適である。
【0014】
本発明の毛髪化粧料においては、(C)非イオン性界面活性剤として、POEアルキルエーテル類またはポリグリセリン脂肪酸エステルに該当する物質から選択される1種以上の物質を含むことが好適である。
【0015】
本発明の毛髪化粧料は、さらに(D)多価アルコールを含有してもよい。
【0016】
本発明の毛髪化粧料において、(D)多価アルコールを含有する場合、(D)多価アルコールとして、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールから選択される1種以上の物質を含むことが好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の毛髪化粧料によれば、毛髪に強いツヤ感を付与し得、且つ洗い流し性にも優れるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明者は、毛髪化粧料において強いツヤ感と洗い流し性の両立を実現し得る成分について鋭意研究を重ねた結果、(A)水と、(B)60質量%以上90質量%以下の油性成分、および(C)非イオン性界面活性剤を配合した毛髪化粧料は、毛髪に強いツヤを与えることができ、且つ水との馴染みがよいことから洗い流し性にも優れることを見出し、本発明を完成するに至った。以下、本発明の毛髪化粧料の具体的な組成や効果等について説明する。
【0019】
本発明の毛髪化粧料においては、上記の組成により強いツヤの付与と洗い流し性の両立を実現するが、その作用機序としては、(A)水と(C)非イオン性界面活性剤による液晶構造の形成が関与している可能性がある。すなわち、これらの成分により液晶構造が形成され、その内部に(B)油性成分を保持する形で化粧料に(B)油性成分を多く含有し、これによって毛髪に強いツヤを付与することができる一方、その(B)油性成分のキャリアは(A)水と(C)非イオン性界面活性剤による液晶構造であるため、水による洗い流しも容易なのである。尚、具体的な液晶構造など、実際の作用機序の詳細は今のところ明らかでないものの、本毛髪化粧料の乳化状態を光学顕微鏡で観察すると、一般的なO/W型またはW/O型の乳化液に見られる1μm~10μm程度の乳化粒子が確認できないことがわかっており、これは液晶構造を形成する液体の特徴と一致している。この観察結果によれば、本毛髪化粧料においては、例えば(A)水と(C)非イオン性界面活性剤がキュービック液晶構造を形成していること等が考えられる。
【0020】
(B)油性成分としては、セラミド類(例えば、セラミドNG、セラミドNP、セラミドAP、セラミドAS、セラミドEOP)、スフィンゴ脂質類(スフィンゴ脂質、スフィンゴ糖脂質、フィトスフィンゴシン)、炭化水素油(例えば、流動パラフィン、流動イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、スクワレン、α-オレフィンオリゴマー)、油脂{例えば、植物油[例えば、大豆油、菜種油、コーン油、ゴマ油、亜麻仁油、紅花油、ひまわり油、綿実油、ナッツ油(マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、ピーナッツ油、アーモンド油、クルミ油等)、種子油(ブドウ種子油、カボチャ種子油等)、レモン油、椿油、茶実油、エゴマ油、ボラージ油、オリーブ油、米油、米糠油、小麦胚芽油、カニナバラ果実油、月見草油、ヤシ油、パーム油、パームオレイン、パーム核油等]、動物油(例えば、魚油、肝油等)、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)等}、エステル油{例えば、アジピン酸エステル(例えば、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジ2-エチルへキシル、アジピン酸ジブチル)、イソオクタン酸エステル[例えば、トリイソオクタン酸グリセリン(トリイソオクタン酸グリセリド)]、イソノナン酸エステル(例えば、イソノナン酸イソノニル)、ミリスチン酸エステル(例えば、ミリスチン酸イソプロピル)、イソステアリン酸エステル(例えば、イソステアリン酸バチル)、セバシン酸エステル(例えば、セバシン酸ジエチル)、パルミチン酸エステル(例えば、パルミチン酸エチルヘキシル)、オクタン酸エステル(例えば、オクタン酸セチル等)、リンゴ酸エステル(リンゴ酸ジイソステアリル)、グリセリン脂肪酸エステル(例えば、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル等)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル、シリコーン油(例えば、メチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等)、脂肪酸(例えば、イソステアリン酸等)、高級アルコール、等を挙げることができる。ただし、本発明において(B)油性成分として用い得る物質はこれらに限定されない。
【0021】
(B)油性成分の含有量は、化粧料の全量に対し60質量%以上90質量%以下とすることが好適である。(B)油性成分が少なすぎると毛髪に対しツヤを効果的に付与できず、多すぎれば化粧料としての安定性が損なわれるためである。
【0022】
さらに、(B)油性成分として極性油を含有する場合、極性油の含有量は化粧料の全量に対し15質量%以下とすることが好適である。上述の通り、本発明の毛髪化粧料においては(A)水と(C)非イオン性界面活性剤によって形成される液晶構造が作用効果に関与している可能性があるが、極性油は、この液晶構造の安定性に影響すると考えられるからである。
【0023】
(C)非イオン性界面活性剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸ポリグリセリル-2、ペンタオレイン酸ポリグリセリル-10、ラウリン酸ポリグリセリル-10、ミリスチン酸ポリグリセリル-10、ステアリン酸ポリグリセリル-10、イソステアリン酸ポリグリセリル-10、オレイン酸ポリグリセリル-10、ジステアリン酸ポリグリセリル-10、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10、トリステアリン酸ポリグリセリル-10、トリオレイン酸ポリグリセリル-10、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-10、ペンタヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-10、ペンタイソステアリン酸ポリグリセリル-10、ペンタオレイン酸ポリグリセリル-10、デカオレイン酸ポリグリセリル-10、ステアリン酸ポリグリセリル-2、イソステアリン酸ポリグリセリル-2、ミリスチン酸ポリグリセリル-6、ラウリン酸ポリグリセリル-6、ステアリン酸ポリグリセリル-6、トリステアリン酸ポリグリセリル-6、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-6、オレイン酸ポリグリセリル-4、ステアリン酸ポリグリセリル-6等)、PEG(ポリエチレングリコール又はポリオキシエチレン(POE))、水添ヒマシ油(POE硬化ヒマシ油;例えば、PEG-5水添ヒマシ油、PEG-10水添ヒマシ油、PEG-20水添ヒマシ油、PEG-40水添ヒマシ油、PEG-50水添ヒマシ油、PEG-60水添ヒマシ油、PEG-100水添ヒマシ油等)、POEヒマシ油(例えば、POEヒマシ油3、POEヒマシ油4、POEヒマシ油6POEヒマシ油7、POEヒマシ油10、POEヒマシ油13.5、POEヒマシ油17、POEヒマシ油20、POEヒマシ油25、POEヒマシ油30、POEヒマシ油35、POEヒマシ油50等)、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、セスキオレイン酸ソルビタン、ラウリン酸ソルビタン、パルミチン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等)、ポリソルベート(POEソルビタン脂肪酸エステル;例えば、モノラウリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)、トリオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート85)等)、POE・POPグリコール類(例えば、POEPOPグリコール(196E.O.)(67P.O.)(ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコールとも表記;以下同様の表現において同じ。別名ポロキサマー407)、POEPOPグリコール(20E.O.)(20P.O.)、POEPOPグリコール(42E.O.)(67P.O.)(ポロキサマー403)、POEPOPグリコール(54E.O.)(39P.O.)(ポロキサマー235)、POEPOPグリコール(124E.O.)(39P.O.)、POEPOPグリコール(160E.O.)(30P.O.)、POEPOPグリコール(200E.O.)(70P.O.)、POEPOPグリコール(30E.O.)(150P.O.)(ポロキサマー188)等)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール類(例えば、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(2E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(4E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(9E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(10E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(23E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(25E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(32E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40E.O.)、ステアリン酸ポリオキシル40、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(45E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(55E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(75E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(140E.O.)等)、POEアルキルエーテル類(例えば、POE(2)ラウリルエーテル、POE(9)ラウリルエーテル、POE(4.2)ラウリルエーテル、POE(21)ラウリルエーテル、POE(25)ラウリルエーテル、POE(2)セチルエーテル、POE(10)セチルエーテル、POE(15)セチルエーテル、POE(20)セチルエーテル、POE(25)セチルエーテル、POE(2)ステアリルエーテル、POE(4)ステアリルエーテル、POE(20)ステアリルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(例えば、POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE-POPアルキルエーテル類、POE(10)ノニルフェニルエーテル等)、等を挙げることができ、特に好適には、POEアルキルエーテル類またはポリグリセリン脂肪酸エステルに該当する物質から選択される1種類以上の物質を使用することができる。ただし、本発明において(C)非イオン性界面活性剤として用い得る物質はこれらに限定されない。
【0024】
(C)非イオン性界面活性剤の含有量は、化粧料の全量に対し0.5質量%以上20質量%以下、特に好ましくは1.0質量%以上15質量%以下とするのが適当である。液晶構造の形成においては、(A)水に対する(C)非イオン性界面活性剤の比率が適当である必要があり、(C)非イオン性界面活性剤が多すぎても少なすぎても、安定した液晶構造を保つことが難しいためである。
【0025】
(D)多価アルコールとしては、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセリン、ソルビトール、マルチトール、ジグリセリン、ペンチレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、等を挙げることができ、特に好適には、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールから選択される1種以上の物質を使用することができる。ただし、本発明において(D)多価アルコールとして用い得る物質はこれらに限定されない。
【0026】
(D)多価アルコールの含有量は、化粧料の全量に対し0.1質量%以上20質量%以下、特に好ましくは1.0質量%以上10質量%以下とするのが適当である。多価アルコールは、毛髪化粧料に対しある程度の量を添加すると、化粧料の伸びが向上して使用感が良くなるが、含有量が多すぎると液晶構造に影響し、本願発明の企図する効果が十分に奏されなくなる虞があるためである。
【0027】
また、本発明の化粧料は、上記(A)~(D)にあたる物質のほか、キレート剤、pH調整剤、安定化剤、香料、防腐剤、植物エキス、毛髪コンディショニング成分、からなる群より選択される1種又は2種以上の組合せを更に含んでもよい。
【0028】
キレート剤の例としては、メタリン酸ナトリウム、EDTA・2ナトリウム塩、EDTA・カルシウム・2ナトリウム塩、等を挙げることができるが、本発明においてキレート剤として用い得る物質はこれらに限定されない。
【0029】
pH調整剤の例としては、無機酸(塩酸、硫酸など)、有機酸(乳酸、乳酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸ナトリウムなど)、無機塩基(水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなど)、有機塩基(トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンなど)、等を挙げることができるが、本発明においてpH調整剤として用い得る物質はこれらに限定されない。
【0030】
安定化剤の例としては、ポリアクリル酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ピロ亜硫酸ナトリウム、トコフェロール、等を挙げることができるが、本発明において安定化剤として用い得る物質はこれらに限定されない。
【0031】
香料の例としては、ラベンダー油、ローズマリー油、パルマローザ、ゼラニウム油、ユーカリ油等のハーブ系精油、ペパーミント油、スペアミント油、ハッカ油等のミント系精油、オレンジ油、レモン油、グレープフルーツ油等の柑橘系精油のような各種精油、調合香料、等を挙げることができるが、本発明において香料として用い得る物質はこれらに限定されない。
【0032】
防腐剤の例としては、安息香酸、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ベンジル、パラオキシ安息香酸メチル、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビン酸及びその塩、グルコン酸クロルヘキシジン、アルカンジオール、グリセリン脂肪酸エステル、等を挙げることができるが、本発明において防腐剤として用い得る物質はこれらに限定されない。
【0033】
植物エキスの例としては、アロエベラ葉エキス、コメヌカエキス、コプチスチネンシス根茎エキス、ボタンエキス、ハトムギ種子エキス、フキタンポポ花エキス、オタネニンジン根エキス、トウキ根エキス、ナツメ果実エキス、センキュウ根茎エキス、シャクヤク根エキス、マグワ根皮エキス、クララ根エキス、キハダ樹皮エキス、オウゴン根エキス、アセンヤクエキス、ダイズ種子エキス、センブリエキス、褐藻エキス、桑エキス、絹エキス、ハマメリス葉エキス、ローヤルゼリーエキス、ストロベリーエキス、フラガリアチロエンシス果汁、タチバナ果皮エキス、エブリコエキス、オレンジ果実エキス、ユズ果実エキス、クマザサ葉エキス、クダモノトケイソウ果実エキス、ミルシアリアデュビア果実エキス、レモングラス葉/茎エキス、ユーカリ葉エキス、ゲンチアナ根エキス、レンゲソウエキス、アルニカ花エキス、シナノキエキス、モモ果実エキス、トウヒエキス、センチフォリアバラ花エキス、チャ葉エキス、ブドウ葉エキス、ソメイヨシノ葉エキス、オウゴンエキス、ユキノシタエキス、ラベンダー花エキス、ローズマリー葉エキス、ヨクイニンエキス、トウキンセンカ花エキス、タイソウエキス、オウバクエキス、ウメ果実エキス、ヨモギ葉エキス、ハイブリッドローズ花エキス、アサイヤシ果実エキス、カミツレ花エキス、等を挙げることができるが、本発明において植物エキスとして用い得る物質はこれらに限定されない。
【0034】
毛髪コンディショニング成分としては、タンパク質類とその誘導体またはその塩(例えば、加水分解シルク、加水分解ケラチン、加水分解コラーゲン、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解シルク、(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル加水分解シルク、イソステアロイル加水分解コラーゲン、(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル加水分解ケラチン、イソステアロイル加水分解シルクAMP、イソステアロイル加水分解コラーゲン等)、糖類とその誘導体(例えば、トレハロース、トリメチルグリシン等)、多糖類(例えば、シロキクラゲ多糖体、水添デンプン等)、カチオンポリマー(例えば、ポリクオタニウム-6、ポリクオタニウム-7、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-11、ポリクオタニウム-22等)、アミノ酸類とその塩(例えばDL-アラニン、L-アスパラギン酸、L-アラニン、L-イソロイシン、L-グルタミン酸、L-グルタミン酸ナトリウム、L-スレオニン、L-セリン、L-チロシン、L-トレオニン、L-バリン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-ロイシン等)、等を挙げることができるが、本発明において毛髪コンディショニング成分として用い得る物質はこれらに限定されない。
【0035】
尚、化粧料に含まれる上記(B)~(D)に該当する成分として、上にキレート剤、pH調整剤、安定化剤、香料、防腐剤、植物エキス、毛髪コンディショニング成分、として例示した物質の一部を用いることもでき、また、上記(B)~(D)に該当する成分をキレート剤、pH調整剤、安定化剤、香料、防腐剤、植物エキス、毛髪コンディショニング成分、のいずれかとして用いることもできる。
【0036】
[実験1]界面活性剤の種類に関する検証
【0037】
成分(A)および成分(B)を含む毛髪化粧料において、これらに加えてどのような界面活性剤を含有することが、上記した作用効果の実現に有効かについて検証する実験を行った。まず、毛髪化粧料として10種類のサンプル(サンプルA1~A10)を調製した。各サンプルの組成は下記表1の通りである。表中、数値の単位は質量%(化粧料全体に対する各成分の割合)である。
【表1】
【0038】
これらのサンプルA1~A10を、それぞれ10名の被験者において自己の毛髪に対し実際に使用してもらい、各サンプルについて「ツヤ」「洗い流しやすさ」および「伸び」を評価してもらった。各被験者において、各サンプルの「ツヤ」「洗い流しやすさ」「伸び」は、それぞれ「使用によって毛髪にツヤが付与された/ツヤを感じなかった」、「使用後、水洗によって洗い流しやすかった/洗い流しにくかった」、「使用時に伸びが良かった/伸びが悪かった」の二択にて評価した。各サンプルについて10名分の評価を集計し、それぞれ各項目に関する評価を次のように判定した。
(ツヤについて)
・◎:10名中、9~10名が「ツヤが付与された」と回答。
・○:10名中、7~8名が「ツヤが付与された」と回答。
・△:10名中、5~6名が「ツヤが付与された」と回答。
・×:10名中、6名以上が「ツヤを感じなかった」と回答。
(洗い流しやすさについて)
・○:10名中、8~10名が「洗い流しやすかった」と回答。
・△:10名中、5~7名が「洗い流しやすかった」と回答。
・×:10名中、6名以上が「洗い流しにくかった」と回答。
(伸びについて)
・◎:10名中、9~10名が「伸びが良かった」と回答。
・○:10名中、7~8名が「伸びが良かった」と回答。
・△:10名中、5~6名が「伸びが良かった」と回答。
・×:10名中、6名以上が「伸びが悪かった」と回答。
【0039】
各サンプルに関しては、以上に加えて安定性の評価も行った。各サンプルを毛髪化粧料として調製してから1ヶ月、50℃以下の温度条件下に静置し、製造後1ヶ月の時点における状態を観察し、以下の基準により経時安定性を判定した。
(安定性について)
・○:油浮き、分離、その他の外観上の変化が全く見られない。
・△:若干の油浮きは見られるが、分離やその他の外観上の変化は見られない。
・×:顕著な油浮きや油層分離、粘度変化など、大きな外観上の変化を生じている。
【0040】
サンプルA1~A6は、いずれも(B)油性成分を70%~80%含んでおり、界面活性剤としては(C非イオン性界面活性剤を5%~15%含む毛髪化粧料として調製した。(B)油性成分としては、サンプルA1、A2、A4は非極性油のみを含み、サンプルA3、A5、A6は極性油を化粧料の全量に対し2%~5%含んでいる。さらに、サンプルA1~A6はいずれも(D)多価アルコールを4%含む。
【0041】
これらのサンプルA1~A6においては、いずれも「ツヤ」の評価は「◎」、「洗い流しやすさ」の評価は「○」であり、従来の毛髪化粧料では難しかった強いツヤの付与と洗い流し性の両立が実現されていた。また、「伸び」の評価もいずれも「◎」であった。すなわち、毛髪上での伸びがよく、化粧料としての使用感がよい毛髪化粧料であると言える。「経時安定性」についても、いずれも「○」または「△」であり、物によっては若干の油層の分離が見られたものの、ある程度の期間にわたって化粧料としての安定性を保つことができていた。
【0042】
サンプルA7は、W/O型の化粧料として調製されたサンプルである。(B)油性成分の含有量は30%であり、サンプルA1~A6と比べると低い。このサンプルA7では、「ツヤ」が「△」、「洗い流しやすさ」が「×」との評価であり、強いツヤの付与、洗い流し性のいずれの点においても、本願発明の目指す作用効果を奏するには至らなかった。
【0043】
サンプルA8~A10は、界面活性剤として(C)非イオン性界面活性剤ではなく(C')カチオン性界面活性剤または(C')アニオン性界面活性剤を用い、O/W型の化粧料として調製されたサンプルである。(B)油性成分の含有量は、35%(サンプルA8、A10)または55%(サンプルA9)である。これらのサンプルは、O/W型であるため水での洗い流し性は良好であったが(「洗い流しやすさ」の項目はいずれも「○」)、A8およびA10では「ツヤ」の項目の評価が「×」であり、やはりツヤの付与という機能は十分ではなかった。そこで(B)油性成分を増やすと(サンプルA9)、「ツヤ」の評価は「○」と向上したが、「経時安定性」の項目が「×」となり、O/W型の化粧料において(B)油性成分を増やしてしまうと長期の安定性が保てないことが確認された。
【0044】
以上より、(B)油性成分を70%~80%程度含む毛髪化粧料において、界面活性剤として(C)非イオン性界面活性剤を5%~15%程度含む場合に、毛髪に対する強いツヤの付与と、水での洗い流し性を両立し、且つ安定性にも優れた毛髪化粧料を実現し得ることが示された。
【0045】
[実験2]油性成分の含有量に関する検証
【0046】
続いて、このような毛髪化粧料において、上記作用効果を実現し得る(B)油性成分の含有量の数値範囲について、さらに検証を行った。毛髪化粧料として、(B)油性成分をそれぞれ90%、80%、60%、40%、95%含む5種類のサンプル(サンプルB1~B5)を調製した。各サンプルの組成は下記表2の通りである。
【表2】
【0047】
サンプルB1~B5は、(B)油性成分をそれぞれ異なる割合で含むが、(B)油性成分としては非極性油のみを含み、極性油は含まない。界面活性剤としては、(C)非イオン性界面活性剤をそれぞれ1.5%~6%含む。また、(D)多価アルコールをそれぞれ1~3%含んでいる。
【0048】
このサンプルB1~B5を、実験1と同じ10名の被験者に使用してもらい、各サンプルについて「ツヤ」「洗い流しやすさ」「伸び」を実験1と同様に評価してもらい、これを集計して判定を行った。また、実験1と同じ方法で、経時安定性に関する評価も行った。
【0049】
「洗い流しやすさ」については、いずれも「○」と良好であったが、「ツヤ」の項目の評価は、(B)油性成分の割合が低いサンプルB4(40%)において「△」であった。また、「経時安定性」の項目については、(B)油性成分の割合が高いサンプルB5(95%)において「×」であった。
【0050】
以上より、(B)油性成分の割合が60%以上90%以下の場合に、毛髪に対し強いツヤを付与することができ、且つ化粧料としての安定性も良好な毛髪化粧料を実現し得ることが示された。すなわち、(B)油性成分の割合が低すぎると毛髪に対しツヤを十分に付与できず、高すぎれば化粧料としての安定性が損なわれるのである。
【0051】
[実験3]極性油の含有量および多価アルコールの配合に関する検証
【0052】
上記のような毛髪化粧料における極性油および多価アルコールの影響について、さらに検証を行った。毛髪化粧料として、(B)油性成分をそれぞれ60%~80%含む5種類のサンプル(サンプルC1~C5)を調製した。各サンプルの組成は下記表3の通りである。
【表3】
【0053】
サンプルC1~C5は、(B)油性成分をそれぞれ異なる組成で含み、且つ(B)油性成分として含まれる非極性油と極性油の割合がそれぞれ異なっている。化粧料の全量に対する極性油の割合は、それぞれ1%、0%、15%、20%、60%である。尚、サンプルC5に限っては、(B)油性成分として非極性油を含まず、極性油のみを含んでいる。
【0054】
界面活性剤としては、(C)非イオン性界面活性剤をそれぞれ3.5%~6%含む。また、サンプルC1、C2、C5は(D)多価アルコールをそれぞれ2.5~6%含むが、サンプルC3、C4は(D)多価アルコールを含まない。
【0055】
このサンプルC1~C5を、実験1、2と同じ10名の被験者に使用してもらい、各サンプルについて「ツヤ」「洗い流しやすさ」「伸び」を実験1、2と同様に評価してもらい、これを集計して判定を行った。また、実験1、2と同じ方法で、経時安定性に関する評価も行った。
【0056】
「ツヤ」と「洗い流しやすさ」については、いずれのサンプルでも「◎」「○」と良好であったが、「経時安定性」の項目において、極性油を20%以上含むサンプルC4、C5のみ、評価が「×」であった。すなわち、化粧料としての安定性を保つためには、極性油の含有量が化粧料全体に対して多すぎない必要があり、極性油の含有量が15%以下の場合において、十分な安定性を確保し得ることが示された。
【0057】
また、(D)多価アルコールを含まないサンプルC3、C4においては、「ツヤ」と「洗い流しやすさ」の評価は良好であったものの、「伸び」の項目が「△」と低評価であった。(D)多価アルコールは、液晶構造をもつ化粧料に添加した場合、液晶構造の安定性に大きく影響することなく化粧料の粘度を低下させ、伸びを良くする効果があると考えられる。よって、本願発明のように、(A)水、(B)油性成分および(C)非イオン性界面活性剤を適当な割合で含有する毛髪化粧料に対して(D)多価アルコールを加えた場合には、「ツヤ」「洗い流しやすさ」「経時安定性」という機能を損なうことなく毛髪化粧料に伸びの良さを付与し、使用感を向上し得ることが示された。
【0058】
[実施例]
【0059】
上記毛髪化粧料の組成の例を、下記表4に実施例1、2として示す。ただし、本発明の毛髪化粧料の組成はこれに限定されるものではない。
【表4】
【0060】
尚、本発明の毛髪化粧料は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。