IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ミラー装置、及びキャビネット装置 図1
  • 特開-ミラー装置、及びキャビネット装置 図2
  • 特開-ミラー装置、及びキャビネット装置 図3
  • 特開-ミラー装置、及びキャビネット装置 図4
  • 特開-ミラー装置、及びキャビネット装置 図5
  • 特開-ミラー装置、及びキャビネット装置 図6
  • 特開-ミラー装置、及びキャビネット装置 図7
  • 特開-ミラー装置、及びキャビネット装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166889
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】ミラー装置、及びキャビネット装置
(51)【国際特許分類】
   A47G 1/02 20060101AFI20241122BHJP
   A47K 1/02 20060101ALI20241122BHJP
   A47B 67/02 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
A47G1/02 A
A47K1/02 B
A47K1/02 E
A47B67/02 502A
A47B67/02 502G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083292
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】舩木 速人
【テーマコード(参考)】
3B111
【Fターム(参考)】
3B111AA08
3B111AB01
3B111AB04
3B111AC02
3B111AD01
(57)【要約】
【課題】ミラー機能、表示機能及び操作機能を有するスマートミラーに対して意匠性を付与する。
【解決手段】スマートミラー20は、ハーフミラー22、ディスプレイ装置25、操作デバイス23、及び、絵柄が印刷された印刷シート21を備える。印刷シート21は、第1色ドットを含む第1色パターン層、第2色ドットを含む第2色パターン層、及び、第3色ドットを含む第3色パターン層を有する。第1色ドット、第2色ドット及び第3色ドットは、バインダーと顔料チップとを含む。これらの顔料チップのそれぞれは、反射光側の干渉光として発色する赤色干渉顔料、緑色干渉顔料及び青色干渉顔料のいずれかである。赤色干渉顔料、緑色干渉顔料及び青色干渉顔料のうち少なくとも1つの干渉顔料は、5μm~25μmの粒径範囲を含む小粒子径グレードの干渉顔料と、25μm~40μmの粒径範囲を含む大粒子径グレードの干渉顔料とを含んで構成される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハーフミラーと、
前記ハーフミラーの背面に表示面を向けるように配置されたディスプレイ装置と、
前記ディスプレイ装置に表示された画像に対する操作入力を行うための操作デバイスと、
前記ハーフミラーの表面に配置され、絵柄が印刷された印刷シートと、を備え、
前記印刷シートは、透光性基材と絵柄印刷層とを有し、
前記絵柄印刷層は、
前記透光性基材の一方の面上に設けられ、複数の第1色ドットにより構成された第1色パターン層と、
前記第1色パターン層の上に設けられ、複数の第2色ドットにより構成された第2色パターン層と、
前記第2色パターン層の上に設けられ、複数の第3色ドットにより構成された第3色パターン層と、を有し、
前記複数の第1色ドットのそれぞれが、第1色用バインダーと前記第1色用バインダーの内部に分散された複数の第1色顔料チップとを含み、
前記複数の第2色ドットのそれぞれが、第2色用バインダーと前記第2色用バインダーの内部に分散された複数の第2色顔料チップとを含み、
前記複数の第3色ドットのそれぞれが、第3色用バインダーと前記第3色用バインダーの内部に分散された複数の第3色顔料チップとを含み、
前記第1色顔料チップ、前記第2色顔料チップ及び前記第3色顔料チップのそれぞれは、反射光側の干渉光として発色する赤色干渉顔料、緑色干渉顔料及び青色干渉顔料のいずれかであり、
前記赤色干渉顔料、前記緑色干渉顔料及び前記青色干渉顔料のうち少なくとも1つの干渉顔料は、5μm~25μmの粒径範囲を含む小粒子径グレードの干渉顔料と、25μm~40μmの粒径範囲を含む大粒子径グレードの干渉顔料とを含んで構成されており、
前記小粒子径グレードの干渉顔料が前記大粒子径グレードの干渉顔料同士の隙間を埋めるように配置され、
前記干渉光を加法混色する、ミラー装置。
【請求項2】
前記大粒子径グレードの干渉顔料は、25μm~60μmの粒径範囲を含む、
請求項1に記載のミラー装置。
【請求項3】
前記印刷シートは、
前記絵柄印刷層の上に設けられ、複数のシルバードットにより構成された白色パターン層を更に有し、
前記複数のシルバードットのそれぞれが、シルバー用バインダーと前記シルバー用バインダーの内部に分散された複数のシルバー顔料チップとを含む、
請求項1又は2に記載のミラー装置。
【請求項4】
前記印刷シートは、
前記絵柄印刷層に対して前記透光性基材とは反対側の最表面上に設けられた透過性スモーク印刷層を更に有する、
請求項1又は2に記載のミラー装置。
【請求項5】
前記操作デバイスは、前記ハーフミラーと前記ディスプレイ装置との間に配置され、前記ディスプレイ装置と連動するように構成されたタッチセンサである、
請求項1又は2に記載のミラー装置。
【請求項6】
前記印刷シートは、前記ディスプレイ装置の前記表示面及び前記操作デバイスの操作面よりも面方向において広く、
前記表示面及び前記操作面は、前記面方向に直交する方向から見た場合に、前記印刷シートの内側に配置されている、
請求項1又は2に記載のミラー装置。
【請求項7】
前記ハーフミラーを支持するミラーフレームと、
前記ディスプレイ装置を保持するディスプレイ保持フレームと、を更に備える、
請求項1又は2に記載のミラー装置。
【請求項8】
前記ハーフミラーは、枠形状の接着部によって前記ミラーフレームに固定され、
前記操作デバイスは、前記ハーフミラーと前記ミラーフレームとの間であって前記接着部の内側に位置する、
請求項7に記載のミラー装置。
【請求項9】
請求項1又は2に記載のミラー装置と、
前記ミラー装置が取り付けられたキャビネットと、
を備える、キャビネット装置。
【請求項10】
前記キャビネットには、前記ミラー装置を収納するための収納部が設けられ、
前記収納部には、前記ミラー装置を係止するための引っ掛け部が設けられている、
請求項9に記載のキャビネット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラー装置、及びキャビネット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、マジックミラー部と、マジックミラー部の後側に配置された表示部と、表示部に表示された画像に対する操作入力を行うための操作部とが設けられたミラー装置が開示されている。このような操作入力が可能なミラー装置は、例えば、スマートミラーとも呼ばれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-039084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スマートミラーのようなミラー装置は、スマートミラーの利用者を映す鏡としてのミラー機能、各種の情報を画像(映像含む)として表示する表示機能、及び、利用者がスマートミラーを操作するための情報を入力する操作機能を有している。このミラー装置では、ミラー機能と、表示機能における視認性とを両立することが必要とされる。このようなミラー装置において、意匠性を付与することが望まれている。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためのものであり、ミラー機能、表示機能及び操作機能を有するスマートミラーに対して意匠性を付与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は、一側面として、ミラー装置に関する。このミラー装置は、ハーフミラーと、ハーフミラーの背面に表示面を向けるように配置されたディスプレイ装置と、ディスプレイ装置に表示された画像に対する操作入力を行うための操作デバイスと、ハーフミラーの表面に配置され、絵柄が印刷された印刷シートと、を備える。印刷シートは、透光性基材と絵柄印刷層とを有する。絵柄印刷層は、透光性基材の一方の面上に設けられ、複数の第1色ドットにより構成された第1色パターン層と、第1色パターン層の上に設けられ、複数の第2色ドットにより構成された第2色パターン層と、第2色パターン層の上に設けられ、複数の第3色ドットにより構成された第3色パターン層と、を有する。複数の第1色ドットのそれぞれが、第1色用バインダーと第1色用バインダーの内部に分散された複数の第1色顔料チップとを含む。複数の第2色ドットのそれぞれが、第2色用バインダーと第2色用バインダーの内部に分散された複数の第2色顔料チップとを含む。複数の第3色ドットのそれぞれが、第3色用バインダーと第3色用バインダーの内部に分散された複数の第3色顔料チップとを含む。第1色顔料チップ、第2色顔料チップ及び第3色顔料チップのそれぞれは、反射光側の干渉光として発色する赤色干渉顔料、緑色干渉顔料及び青色干渉顔料のいずれかである。赤色干渉顔料、緑色干渉顔料及び青色干渉顔料のうち少なくとも1つの干渉顔料は、5μm~25μmの粒径範囲を含む小粒子径グレードの干渉顔料と、25μm~40μmの粒径範囲を含む大粒子径グレードの干渉顔料とを含んで構成されている。小粒子径グレードの干渉顔料が大粒子径グレードの干渉顔料同士の隙間を埋めるように配置される。このミラー装置では、各干渉光を加法混色する。
【0007】
このミラー装置では、ディスプレイ装置がハーフミラーの背面に表示面を向けるように配置され、また、ディスプレイ装置に表示された画像に対する操作入力を行うための操作デバイスが設けられている。このため、このミラー装置は、ミラー機能、表示機能及び操作機能を有する。加えて、このミラー装置では、絵柄印刷層を有する印刷シートがハーフミラーの表面に配置されている。このため、このミラー装置には意匠性が付与される。したがって、このミラー装置によれば、ミラー機能、表示機能及び操作機能を有するスマートミラーに対して意匠性を付与することができる。
【0008】
また、本発明者らの検討によれば、絵柄印刷層に用いられる干渉顔料の粒径が小さい場合、発色性は弱いものの、その印刷物を黒い画面の前方に置いたとしても絵柄が暗く見えることを抑制できることが判明した。一方、絵柄印刷層に用いられる干渉顔料の粒径が大きい場合、その印刷物の透明度が上がってしまうものの、絵柄の発色性を優れたものにできることが判明した。そこで、本発明者らは、赤色干渉顔料、緑色干渉顔料及び青色干渉顔料の少なくともいずれかの顔料において、小粒子径グレードの干渉顔料と大粒子径グレードの干渉顔料とを含むように干渉顔料を構成し、小粒子径グレードの干渉顔料を大粒子径グレードの干渉顔料同士の隙間を埋めるように配置することで、絵柄が暗く見えてしまうことが抑制されると共に絵柄の発色性が優れた印刷シートを想到するに到った。よって、上記構成の印刷シートを備えたミラー装置によれば、視認性と発色性とが優れた絵柄を提供することができる。さらに、このミラー装置では、大粒子径グレードの干渉顔料を含むことにより、絵柄印刷層の透過性の低下が抑制される。したがって、このミラー装置によれば、電源がオンの際に、ディスプレイ装置の画像の視認性の低下が良好に抑制される。
【0009】
(2)上記(1)のミラー装置では、大粒子径グレードの干渉顔料は、25μm~60μmの粒径範囲を含んでいてもよい。この場合、絵柄の発色性をより優れたものにすることができる。また、絵柄印刷層の透過性の必要以上の低下を抑制して、ディスプレイ装置の画像の視認性を向上させることができる。
【0010】
(3)上記(1)又は(2)のミラー装置では、印刷シートは、絵柄印刷層の上に設けられ、複数のシルバードットにより構成された白色パターン層を更に有してもよい。複数のシルバードットのそれぞれが、シルバー用バインダーとシルバー用バインダーの内部に分散された複数のシルバー顔料チップとを含んでもよい。この場合、絵柄印刷層の発色性が優れる。さらに、絵柄印刷層が白っぽい印象を与える絵柄を有することができる。
【0011】
(4)上記(1)~(3)のいずれかのミラー装置では、印刷シートは、絵柄印刷層に対して透光性基材とは反対側の最表面上に設けられた透過性スモーク印刷層を更に有してもよい。この場合、絵柄印刷層の発色性が優れる。さらに、透過性スモーク印刷層が透過性を有するため、ディスプレイ装置の映像の視認性の低下が良好に抑制される。
【0012】
(5)上記(1)~(4)のいずれかのミラー装置では、操作デバイスは、ハーフミラーとディスプレイ装置との間に配置され、ディスプレイ装置と連動するように構成されたタッチセンサである。この場合、ディスプレイ装置に表示された画像に対する操作入力をより直観的に行いやすくなり、操作性を向上することができる。
【0013】
(6)上記(1)~(5)のいずれかのミラー装置では、印刷シートは、ディスプレイ装置の表示面及び操作デバイスの操作面よりも面方向において広く、表示面及び操作面は、面方向に直交する方向から見た場合に、印刷シートの内側に配置されていてもよい。この場合、スマートミラーにおいてより広い領域に意匠性を付与できる。
【0014】
(7)上記(1)~(6)のいずれかのミラー装置は、ハーフミラーを支持するミラーフレームと、ディスプレイ装置を保持するディスプレイ保持フレームと、を更に備えてもよい。この場合、ハーフミラーとディスプレイ装置とをより確実に保持することができる。
【0015】
(8)上記(7)のミラー装置では、ハーフミラーは、枠形状の接着部によってミラーフレームに固定され、操作デバイスは、ハーフミラーとミラーフレームとの間であって接着部の内側に位置してもよい。この場合、コンパクトな構成のスマートミラーを提供することができる。
【0016】
(9)本発明は、別の側面として、キャビネット装置に関する。このキャビネット装置は、上記(1)~(8)のいずれかのミラー装置と、ミラー装置が取り付けられたキャビネットと、を備える。この場合、上記同様、ミラー機能、表示機能及び操作機能を有するスマートミラーが組み込まれたキャビネット装置に対して意匠性を付与することができる。
【0017】
(10)上記(9)のキャビネット装置では、キャビネットには、ミラー装置を収納するための収納部が設けられ、収納部には、ミラー装置を係止するための引っ掛け部が設けられていてもよい。この場合、キャビネット内にミラー装置がより確実に取り付けられたキャビネット装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ミラー機能、表示機能及び操作機能を有するスマートミラーに対して意匠性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、一実施形態に係るキャビネット装置を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1に示すキャビネット装置に組み込まれるスマートミラーを背面側から示す斜視図である。
図3図3は、図1に示すキャビネット装置の断面図である。
図4図4は、図2に示すスマートミラーの分解斜視図である。
図5図5は、図2に示すスマートミラーが備える印刷シートを模式的に示す断面図である。
図6図6は、図5に示す印刷シートが有する絵柄印刷層を模式的に示す断面図である。
図7図7は、図5に示す印刷シートが有する白色パターン層を模式的に示す断面図である。
図8図8は、実験例1~3に係る印刷シートの構成を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態に係るスマートミラー及び当該スマートミラーを備えたキャビネット装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面には、X軸、Y軸、及びZ軸により規定される直交座標系が示されている。X軸は、スマートミラー及びキャビネット装置の背面から前面に向かう方向を示し、Y軸は、スマートミラー及びキャビネット装置の左右方向を示し、Z軸方向は、スマートミラー及びキャビネット装置の上下方向(高さ方向)を示す。
【0021】
図1は、一実施形態に係るキャビネット装置を模式的に示す斜視図である。図1に示すように、キャビネット装置1は、キャビネット10及びスマートミラー20(ミラー装置)を備えている。スマートミラー20は、ミラー機能、モニター機能及び操作機能を有する。ミラー機能は、光の反射によりキャビネット装置1の利用者などの像を映す鏡としての機能である。モニター機能は、各種の情報を映像や画像などで表示する機能である。操作機能は、利用者が各種の操作用の情報を入力することができる機能である。
【0022】
キャビネット10は、スマートミラー20や一般的な鏡を取り付け可能な複数の収納部11,12,13を有している。各収納部11~13は、同一の方向(前方)に開口している。各収納部11~13は、各収納部が開口する方向(X方向)に対して直交するY方向に並ぶように配置されている。図1に示すキャビネット10では、このような収納部が3つ設けられているが、これに限定されるものではなく、1つの収納部(例えば、収納部12)のみが設けられてもよく、2つの収納部が設けられてもよく、4つ以上の収納部が設けられてもよい。
【0023】
本実施形態では、一例として、キャビネット10の収納部12は、Y軸方向に沿った幅が他の収納部11,13の幅よりも大きくなるように形成されている。但し、キャビネット10の収納部11~13の各幅は互いに等しくてもよい。収納部11~13のZ軸方向に沿った高さは、本実施形態では等しいが、異なっていてもよい。収納部11には、例えば棚板18が設けられており、内部が複数の領域に分割されている。
【0024】
キャビネット10の中央に位置する収納部12には、本実施形態では、スマートミラー20が取り付けられるようになっている。収納部12の背面12aには、スペーサ16が設けられている。スペーサ16は、収納部12の背面12aから前方に突出するように形成されている。スペーサ16の突出する量は、スマートミラー20の仕様(例えば、X方向における厚み)に応じて任意に設定することができる。
【0025】
スペーサ16は、例えば、空洞を有する箱状に形成されている。スペーサ16の内部の空洞には、スマートミラー20に電気的に接続するためのコンセントボックス17が設けられている。スマートミラー20がコンセントボックス17に接続されることで、スマートミラー20に電力が供給される。なお、スペーサ16は、空洞の無いブロック状に形成されてもよい。
【0026】
キャビネット10の左右に位置する収納部11,13には、鏡14,15が取り付けられている。鏡14,15は、スマートミラー20におけるハーフミラー22(詳細は後述する)と同様に、光の反射により利用者などの像を写すミラー機能を奏する。但し、鏡14,15における光の反射率は、ハーフミラー22における光の反射率よりも高くてもよく、鏡14,15の可視光反射率は、例えば、JIS規格で規定されている83%以上であってもよい。これにより、鏡14,15に映る像は、ハーフミラー22に映る像よりも明るくてもよい。このような鏡14,15は、収納部11,13に対して開閉可能な扉として取り付けられてもよい。
【0027】
次に、図2図4を参照して、スマートミラー20について詳細に説明する。図2は、スマートミラー20を背面側から示す斜視図である。図3は、スマートミラー20が組み込まれたキャビネット装置1の断面図である。図4は、スマートミラー20の分解斜視図である。
【0028】
図2図4に示すように、スマートミラー20は、印刷シート21、ハーフミラー22、操作デバイス23、ミラーフレーム24、ディスプレイ装置25、ディスプレイ保持フレーム26、温度センサ27、及び、接着部28を備えている。
【0029】
印刷シート21は、絵柄を表現するためのシートであり、スマートミラー20に対して意匠性を付与するシートである。印刷シート21の全光線透過率は、例えば、30%~70%である。ここでいう全光線透過率は分光光度計(例えば、(株)島津製作所製、分光光度計UV-2100)を使用して全光線透過率を測定した値を意味する。印刷シート21は、透明な接着剤や粘着剤等を用いてハーフミラー22の表面22a上に配置される。この場合、印刷シート21とハーフミラー22との間に空気層が生成されることを抑制できる。印刷シート21は、不図示の支持機構によって、ハーフミラー22の表面22a上に配置されてもよい。この場合、印刷シート21を容易に配置する、又は取り換えることができる。印刷シート21の詳細については、後述する。
【0030】
ハーフミラー22は、スマートミラー20の利用者を映す鏡として機能する板状部材である。ハーフミラー22は、ハーフミラー22の表面22aに入射する光を反射し、ハーフミラー22の背面22bに入射する光を表面22a側に透過させるように構成されている。ハーフミラー22は、スマートミラー20のミラー機能を担っている。ハーフミラー22の表面22aにおける可視光反射率は、例えば60%~70%であり、ハーフミラー22の可視光透過率は、例えば20%~40%である。ハーフミラー22は、ガラスやプラスチックなどの透明な基材に、銀やアルミニウムなどの金属薄膜を蒸着させることによって作製される。ハーフミラー22の可視光反射率は、通常の鏡14,15の反射率と比較して低いが、これに限定されるものではない。ハーフミラー22は、正面から見たキャビネット10の中央の収納部12に対応するサイズの矩形状に形成されている。
【0031】
操作デバイス23は、スマートミラー20の操作機能(タッチ操作機能)を担う部材であり、ディスプレイ装置25に表示された画像に対する操作入力を利用者が行うためのタッチセンサである。操作デバイス23は、ハーフミラー22とディスプレイ装置25との間に配置され、ディスプレイ装置25と連動するように構成されている。操作デバイス23は、例えば、静電容量式のタッチセンサであり、ハーフミラー22の表面22a側からの利用者の操作を検知できるように構成されている。操作デバイス23は、光を透過可能なフィルム状に形成されており、ディスプレイ装置25が表示した画像等を利用者が視認するのを阻害しない。なお、操作デバイス23は、ディスプレイ装置25と連動して操作入力ができるものであれば、タッチセンサでなくてもよく、利用者の操作入力を捉えることができるカメラなどの画像取得装置であってもよい。
【0032】
また、操作デバイス23は、ディスプレイ装置25の表示面25aに対応する大きさ(例えば、略同じ大きさ)を有しており、印刷シート21やハーフミラー22よりも面方向において小さくなるように形成されている。但し、操作デバイス23は、印刷シート21やハーフミラー22に対応する大きさ(例えば、略同じ大きさ)を有していてもよい。このような操作デバイス23は、例えば、水貼り等によってハーフミラー22の背面22bに固定される。これにより、利用者の手指がハーフミラー22の表面22a(特に表面22aのうち操作デバイス23と重なる領域)に触れることで、操作用の情報を入力することができる。
【0033】
操作デバイス23は、接続部23a及び制御用基板23bを更に有している。操作デバイス23は、接続部23aによって、操作デバイス23の動作を制御するための制御用基板23bに接続される。接続部23aは、例えば、フレキシブルケーブルであってもよい。制御用基板23bからは接続配線23cが延びている。接続配線23cは、ディスプレイ装置25に接続される。これにより、利用者が手や指でハーフミラー22に触れることで、ディスプレイ装置25に表示される画像における操作(例えば表示面25aに表示される情報の切り換えや選択など)を行うことができる。なお、操作デバイス23は、上述した通り、ハーフミラー22の表面22aから見て、ディスプレイ装置25の表示面25aに重なる領域に配置される。これにより、スマートミラー20の利用者は、ディスプレイ装置25の表示面25aに表示された情報に触れる感覚で、ディスプレイ装置25に表示される画像に対して操作を行うことができる。
【0034】
ミラーフレーム24は、ハーフミラー22を支持するための部材であり、ハーフミラー22の背面22bに固定される。ミラーフレーム24は、枠板状の固定部24aと、固定部24aの背面側に設けられる収納部24bとを有している。固定部24aは、ハーフミラー22を固定する部分であり、ハーフミラー22の外形と同じ又は広い外形を有している。固定部24aは、ハーフミラー22の背面22bに固定された操作デバイス23を囲む環状(図示例では矩形環状)に形成されており、操作デバイス23と重ならないように構成されている。固定部24aの内縁は、操作デバイス23(操作面23d)及びディスプレイ装置25(表示面25a)のサイズに対応する矩形状に形成されている。なお、ハーフミラー22は、接着剤から構成される接着部28によって固定部24aに固定される。固定部24aとハーフミラー22との間には、例えば接着部28と共に防水性や気密性を保持するためのコーキング材が介在してもよい。
【0035】
また、ミラーフレーム24は、収納部24bに対してディスプレイ保持フレーム26を着脱できるように構成されていてもよい。収納部24bは、固定部24aの内縁から後方に延びる筒状の部分である。収納部24bは、固定部24aがハーフミラー22の背面22bに固定された状態で、ハーフミラー22の背面22b側に開口する。収納部24bには、ディスプレイ装置25が収容される。収納部24bは、前後方向から見て、固定部24aの内縁に対応する矩形状に形成されている。収納部24bは、ディスプレイ装置25の体積よりも大きい容積となるように形成されているため、ディスプレイ装置25を収納部24bに収容した状態では、収納部24bに隙間が残る。具体的に、上下方向における収納部24bの寸法がディスプレイ装置25の寸法よりも大きい。このため、ディスプレイ装置25を収納部24bの上端に寄せて配置した場合、収納部24bの下端部に隙間が残る。
【0036】
ディスプレイ装置25は、スマートミラー20のモニター機能を担っており、発光により各種の視覚的な情報(文字や図形)などの画像を表示面25aに表示する。ディスプレイ装置25は、ハーフミラー22の背面22bに、表示面25aを向けるように配置される。この状態においては、ディスプレイ装置25の表示面25aがハーフミラー22の背面22bに対向する。これにより、ディスプレイ装置25の光(画像)がハーフミラー22の背面22bから表面22aに透過することで、ディスプレイ装置25に表示される各種の情報をハーフミラー22の表面22aにおいて視認することができる。
【0037】
本実施形態において、ハーフミラー22の表面22aから見たディスプレイ装置25の表示面25aのサイズ(面積)は、ハーフミラー22の表面22aのサイズよりも小さいが、例えばハーフミラー22のサイズと同等であってもよい。すなわち、ハーフミラー22の表面22a全体がディスプレイ装置25の表示面25aに対応していてもよい。
【0038】
ディスプレイ保持フレーム26は、ミラーフレーム24(収納部24b)と共に、ディスプレイ装置25を保持し収納する部材であり、ミラーフレーム24に対して着脱自在に取り付けられる。ディスプレイ保持フレーム26は、有底の筒形状を有し、ミラーフレーム24に取り付けられた状態で収納部24bの背面側の開口を覆う。ディスプレイ保持フレーム26は、前後方向に延びる筒部26aと、筒部26aの後方側の端部を塞ぐ背面部26bと、を有する。筒部26aは、前後方向から見て収納部24bに対応する矩形状に形成されている。これにより、ディスプレイ保持フレーム26をミラーフレーム24に取り付けた状態では、ディスプレイ保持フレーム26の筒部26aがミラーフレーム24の収納部24bの外側に重ねて配置される。ディスプレイ保持フレーム26の背面部26bは、ミラーフレーム24の収納部24bの背面側の開口を覆う。
【0039】
ディスプレイ保持フレーム26は、収納部24bと筒部26aとをビス31によって固定することで、ミラーフレーム24に着脱自在に固定される。これにより、ディスプレイ保持フレーム26がミラーフレーム24から不意に外れることが抑制又は防止される。また、ディスプレイ保持フレーム26をミラーフレーム24に取り付けた状態では、ディスプレイ保持フレーム26の背面部26bが、ミラーフレーム24の収納部24bに収容されたディスプレイ装置25の背面25bに対向する。ディスプレイ装置25は、その背面25b側に位置する背面部26bに対してボルト32により着脱自在に取り付けられる。これにより、ディスプレイ装置25がディスプレイ保持フレーム26に保持される。本実施形態では、ディスプレイ装置25が収納部24bに収容されると共にディスプレイ保持フレーム26に保持された状態では、ディスプレイ装置25の表示面25aがハーフミラー22の背面22b(操作デバイス23)に対して間隔をあけて位置する。この間隔は小さいことが好ましい。
【0040】
温度センサ27は、キャビネット装置1の利用者の肌温度を検出する。温度センサ27は、例えば、赤外線により肌温度(例えば手の温度)を検出する赤外線センサである。温度センサ27は、ディスプレイ装置25に接続されていてもよい。これにより、温度センサ27が検出した肌温度をディスプレイ装置25に表示することができる。温度センサ27は、ディスプレイ装置25と共にミラーフレーム24の収納部24bに収容される。温度センサ27は、収納部24bの下端部(ディスプレイ装置25の下側)の隙間に収容されてもよい。収納部24bに収納された温度センサ27は、収納部24bの壁部に形成された貫通孔を通して収納部24bの外側に露出する。一例として、温度センサ27は、収納部24bの下側に露出する。これにより、収納部24bの下側に利用者の手などをかざすことで、温度センサ27が利用者の肌温度を検出する。
【0041】
このような構成を有するスマートミラー20は、図2及び図3に示すように、ディスプレイ保持フレーム26の背面部26bの背面側に設けられた係止部26c,26dによって引っ掛けることにより、キャビネット10のスペーサ16の引っ掛け部に係止される。なお、係止部26c,26dは、例えば金属等から成り、Z軸方向に延在するフック部材であってもよい。ディスプレイ装置25は、他の部材に比較して重いものの、このような強度を有するフック部材により、キャビネット10に確実に固定される。
【0042】
本実施形態では、上記したように、キャビネット10に、機能デバイスとして1つのスマートミラー20と、2つの鏡14,15とが取り付けられており、これにより三面鏡として構成される。但し、スマートミラー20及び鏡14,15の配列は、これに限られるものではなく、例えば、収納部11,13の何れかにスマートミラー20を配置し、残りの収納部に鏡を配置してもよい。
【0043】
次に図5図7を参照しつつ、スマートミラー20に意匠性を付与する印刷シート21の構成について説明する。図5は、図1に示すスマートミラー20が備える印刷シート21を模式的に示す断面図である。図6は、図5に示す印刷シート21が有する絵柄印刷層を模式的に示す断面図である。図7は、図5に示す印刷シート21が有する白色パターン層を模式的に示す断面図である。印刷シート21は、透光性基材41と、絵柄印刷層42と、白色パターン層43と、透過性スモーク印刷層44と、を有する。印刷シート21は、透過性スモーク印刷層44をハーフミラー22の表面22aに向けるようにして、表面22a上に配置される。印刷シート21は、表面22aの全体を覆っている。印刷シート21は、ハーフミラー22のうちディスプレイ装置25の表示面25aと重なっている部分の全体と重なっている。
【0044】
透光性基材41は、可視光透過性を有する基材である。透光性基材41は、例えば、透明性を有する樹脂製である。透明性を有する樹脂としてPET、PMMA、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等が挙げられる。透光性基材41は、ガラス基材であってもよい。透光性基材41の厚さは、例えば、25~250μmである。ガラス基材の場合は、例えば、数mm~10mm程度である。なお、必要に応じて、透光性基材41の表面側(絵柄印刷層42とは反対側)に表面保護層を設けていてもよい。
【0045】
絵柄印刷層42は、印刷シート21の絵柄を表現する層である。絵柄印刷層42は、透光性基材41の一方の面41a上に設けられた第1色パターン層50と、第1色パターン層50の上に設けられた第2色パターン層60と、第2色パターン層60の上に設けられた第3色パターン層70と、を備える。
【0046】
第1色パターン層50は、例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、オフセット印刷(以下「スクリーン印刷等」とも記す)によって、面41a上に設けることができる。第1色パターン層50は、図6に示すように、複数の第1色ドット51により構成されている。ここで、「ドット」とは、印刷画像を構成する要素となる点の意味であり、その形状は円形に限定されるものではなく、矩形や多角形やその他の形状でもかまわない。第2色パターン層60及び第3色パターン層70におけるドットの形状も同様である。複数の第1色ドット51のそれぞれが、第1色用バインダー52と第1色用バインダー52の内部に分散された複数の第1色顔料チップ53とを含んでいる。複数の第1色顔料チップ53の含有率は、第1色用バインダー52を100重量部とした場合、例えば、0.5重量部以上20重量部以下の範囲内である。
【0047】
第1色用バインダー52としては、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂などのビニル系樹脂、アクリル系樹脂、熱可塑性ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。第1色パターン層50の厚さは、例えば、1μm~10μmである。第1色パターン層50には硬化剤を含有させてもよい。この場合、第1色パターン層50の耐熱性、及び、第1色パターン層50の透光性基材41への密着性を向上させることができる。なお、第2色パターン層60及び第3色パターン層70におけるバインダーも同様の材料から形成され、且つ、同様の厚みを有してもよい。
【0048】
複数の第1色顔料チップ53は、それぞれが干渉光を生成する第1干渉顔料54である。第1干渉顔料54のそれぞれは、可視光透過性を有する薄片(不図示)と、当該薄片を被覆する金属酸化膜(不図示)とから構成される。透光性基材41側から第1色パターン層50への入射光Lのうち金属酸化膜の表面において反射される光と、金属酸化膜内を通過し、薄片の表面において反射される光とが干渉し、第1干渉光L1が生成される。金属酸化膜の膜厚と金属酸化膜の屈折率とを調整することにより、所望の波長を有する干渉光を生成できる。
【0049】
第1干渉顔料54のそれぞれは、例えば、二酸化チタン被覆雲母である。第1干渉顔料54を構成する薄片は、雲母以外であってもよく、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、ポリケイ酸塩であってもよい。第1干渉顔料54を構成する金属酸化膜は、二酸化チタン以外であってもよく、例えば、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化スズであってもよい。
【0050】
第1干渉顔料54は、5μm~25μmの粒径範囲を含む小粒子径グレードの複数の二酸化チタン被覆雲母55と、25μm~40μmの粒径範囲を含む大粒子径グレードの複数の二酸化チタン被覆雲母56とを含んでいる。二酸化チタン被覆雲母55の平均粒径(D50)は、例えば、約15μmであり、二酸化チタン被覆雲母56の平均粒径(D50)は、例えば、約25μmである。即ち、二酸化チタン被覆雲母55の平均粒径は、二酸化チタン被覆雲母56の平均粒径よりも小さくなっている。二酸化チタン被覆雲母56は、25μm~60μmの粒径範囲を含んでいてもよい。この場合、二酸化チタン被覆雲母56の平均粒径(D50)は、例えば、約35μmである。複数の二酸化チタン被覆雲母55のそれぞれは、図6に示すように、複数の二酸化チタン被覆雲母56同士の隙間を埋めるように配置されている。ここで、「粒径」とは、粒子断面の最長径を意味する。
【0051】
第1干渉顔料54の二酸化チタン被覆雲母55,56のそれぞれからは、第1色パターン層50へ入射光Lが入射することにより、第1干渉光L1が生成される。第1干渉顔料54は、例えば、赤色干渉顔料(赤色パール顔料)、緑色干渉顔料(緑色パール顔料)及び青色干渉顔料(青色パール顔料)の何れかであり、一例として、赤色干渉顔料(赤色パール顔料)である。第1干渉顔料54の二酸化チタン被覆雲母55,56の各配合量は、同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0052】
第2色パターン層60は、例えば、スクリーン印刷等によって、第1色パターン層50上に設けることができる。第2色パターン層60は、図6に示すように、複数の第2色ドット61により構成されている。複数の第2色ドット61のそれぞれが、第2色用バインダー62と、第2色用バインダー62の内部に分散された複数の第2色顔料チップ63とを含んでいる。複数の第2色顔料チップ63の含有率は、第2色用バインダー62を100重量部とした場合、例えば、0.5重量部以上20重量部以下の範囲内である。
【0053】
複数の第2色顔料チップ63は、干渉光を生成する第2干渉顔料64である。第2干渉顔料64のそれぞれは、可視光透過性を有する薄片(不図示)と、当該薄片を被覆する金属酸化膜(不図示)とから構成される。透光性基材41側から第2色パターン層60への入射光Lのうち金属酸化膜の表面において反射される光と、金属酸化膜内を通過し、薄片の表面において反射される光とが干渉し、第2干渉光L2が生成される。金属酸化膜の膜厚と金属酸化膜の屈折率とを調整することにより、所望の波長を有する干渉光を生成できる。
【0054】
第2干渉顔料64のそれぞれは、例えば、二酸化チタン被覆雲母である。第2干渉顔料64を構成する薄片は、雲母以外であってもよく、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、ポリケイ酸塩であってもよい。第2干渉顔料64を構成する金属酸化膜は、二酸化チタン以外であってもよく、例えば、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化スズであってもよい。
【0055】
第2干渉顔料64は、第1干渉顔料54と同様に、5μm~25μmの粒径範囲を含む小粒子径グレードの複数の二酸化チタン被覆雲母65と、25μm~40μmの粒径範囲を含む大粒子径グレードの複数の二酸化チタン被覆雲母66とを含んでいる。二酸化チタン被覆雲母65の平均粒径(D50)は、例えば、約15μmであり、二酸化チタン被覆雲母66の平均粒径(D50)は、例えば、約25μmである。即ち、二酸化チタン被覆雲母65の平均粒径は、二酸化チタン被覆雲母66の平均粒径よりも小さくなっている。二酸化チタン被覆雲母66は、25μm~60μmの粒径範囲を含んでいてもよい。この場合、二酸化チタン被覆雲母66の平均粒径(D50)は、例えば、約35μmである。複数の二酸化チタン被覆雲母65のそれぞれは、図6に示すように、複数の二酸化チタン被覆雲母66同士の隙間を埋めるように配置されている。
【0056】
第2干渉顔料64の二酸化チタン被覆雲母65,66のそれぞれからは、第2色パターン層60へ入射光Lが入射することにより、第2干渉光L2が生成される。第2干渉顔料64は、例えば、赤色干渉顔料(赤色パール顔料)、緑色干渉顔料(緑色パール顔料)及び青色干渉顔料(青色パール顔料)の何れかであり、一例として、緑色干渉顔料(緑色パール顔料)である。第2干渉顔料64の二酸化チタン被覆雲母65,66の各配合量は、同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0057】
第3色パターン層70は、例えば、スクリーン印刷等によって、第2色パターン層60上に設けることができる。第3色パターン層70は、図6に示すように、複数の第3色ドット71により構成されている。複数の第3色ドット71のそれぞれが、第3色用バインダー72と、第3色用バインダー72の内部に分散された複数の第3色顔料チップ73とを含んでいる。複数の第3色顔料チップ73の含有率は、第3色用バインダー72を100重量部とした場合、例えば、0.5重量部以上20重量部以下の範囲内である。
【0058】
複数の第3色顔料チップ73は、干渉光を生成する第3干渉顔料74である。第3干渉顔料74のそれぞれは、可視光透過性を有する薄片(不図示)と、当該薄片を被覆する金属酸化膜(不図示)とから構成される。透光性基材41側から第3色パターン層70への入射光Lのうち金属酸化膜の表面において反射される光と、金属酸化膜内を通過し、薄片の表面において反射される光とが干渉し、第3干渉光L3が生成される。金属酸化膜の膜厚と金属酸化膜の屈折率とを調整することにより、所望の波長を有する干渉光を生成できる。
【0059】
第3干渉顔料74のそれぞれは、例えば、二酸化チタン被覆雲母である。第3干渉顔料74を構成する薄片は、雲母以外であってもよく、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、ポリケイ酸塩であってもよい。第3干渉顔料74を構成する金属酸化膜は、二酸化チタン以外であってもよく、例えば、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化スズであってもよい。
【0060】
第3干渉顔料74は、第1干渉顔料54及び第2干渉顔料64と同様に、5μm~25μmの粒径範囲を含む小粒子径グレードの複数の二酸化チタン被覆雲母75と、25μm~40μmの粒径範囲を含む大粒子径グレードの複数の二酸化チタン被覆雲母76とを含んでいる。二酸化チタン被覆雲母75の平均粒径(D50)は、例えば、約15μmであり、二酸化チタン被覆雲母76の平均粒径(D50)は、例えば、約25μmである。即ち、二酸化チタン被覆雲母75の平均粒径は、二酸化チタン被覆雲母76の平均粒径よりも小さくなっている。二酸化チタン被覆雲母76は、25μm~60μmの粒径範囲を含んでいてもよい。この場合、二酸化チタン被覆雲母76の平均粒径(D50)は、例えば、約35μmである。複数の二酸化チタン被覆雲母75のそれぞれは、図6に示すように、複数の二酸化チタン被覆雲母76同士の隙間を埋めるように配置されている。ここで、「粒径」とは、粒子断面の最長径を意味する。
【0061】
第3干渉顔料74の二酸化チタン被覆雲母75,76のそれぞれからは、第3色パターン層70へ入射光Lが入射することにより、第3干渉光L3が生成される。第3干渉顔料74は、例えば、赤色干渉顔料(赤色パール顔料)、緑色干渉顔料(緑色パール顔料)及び青色干渉顔料(青色パール顔料)の何れかであり、一例として、青色干渉顔料(青色パール顔料)である。第3干渉顔料74の二酸化チタン被覆雲母75,76の各配合量は、同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。なお、第1干渉顔料54が赤色、緑色、青色の何れかの干渉顔料であり、第2干渉顔料64が赤色、緑色、青色のうち第1干渉顔料54と異なる何れかの干渉顔料であり、第3干渉顔料74が赤色、緑色、青色のうち第1干渉顔料54及び第2干渉顔料64と異なる残りの干渉顔料であることにより、絵柄印刷層42がRGB干渉顔料印刷層として機能する。
【0062】
白色パターン層43は、例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、オフセット印刷によって、第3色パターン層70上に設けることができる。白色パターン層43は、図7に示すように、複数のシルバードット43aにより構成されている。ここで、「ドット」とは、印刷画像を構成する要素となる点の意味であり、その形状は円形に限定されるものではなく、矩形や多角形やその他の形状でもかまわない。複数のシルバードット43aのそれぞれが、シルバー用バインダー43bとシルバー用バインダー43bの内部に分散された複数のシルバー顔料チップ43cとを含んでいる。複数のシルバー顔料チップ43cの含有率は、シルバー用バインダー43bを100重量部とした場合、例えば、0.5重量部以上20重量部以下の範囲内である。
【0063】
シルバー用バインダー43bとしては、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、熱可塑性ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。白色パターン層43の厚さは、例えば、1μm~10μmである。なお、白色パターン層43には硬化剤を含有させてもよい。この場合、白色パターン層43の耐熱性、及び、白色パターン層43の第3色パターン層70への密着性を向上させることができる。
【0064】
透過性スモーク印刷層44は、印刷シート21を透過する視点手前側からの光を減衰させる機能を有している。透過性スモーク印刷層44は、絵柄印刷層42に対して透光性基材41とは反対側の最表面上に設けられる。透過性スモーク印刷層44は、図5に示すように、白色パターン層43上に設けられる。透過性スモーク印刷層44は、ビニル系、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリカーボネート系等の樹脂バインダーにカーボンブラックを少量分散させたインキを用いて、例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、オフセット印刷によって、白色パターン層43上に設けることができる。透過性スモーク印刷層44の厚さは、例えば、1μm~10μmである。なお、透過性スモーク印刷層44には硬化剤を含有させてもよい。この場合、透過性スモーク印刷層44の耐熱性、及び、透過性スモーク印刷層44の白色パターン層43への密着性を向上させることができる。
【0065】
印刷シート21では、図6に示すように、第1干渉顔料54が生成する第1干渉光L1と、第2干渉顔料64が生成する第2干渉光L2と、第3干渉顔料74が生成する第3干渉光L3とを加法混色することにより、絵柄印刷層42における絵柄が表現されている。
【0066】
印刷シート21の全光線透過率は、例えば、30~70%である。ここでいう全光線透過率は分光光度計(例えば、(株)島津製作所製、分光光度計UV-2100)を使用して全光線透過率を測定した値を意味する。
【0067】
以上に説明したスマートミラー20では、ディスプレイ装置25がハーフミラー22の背面22bに表示面25aを向けるように配置され、また、ディスプレイ装置25に表示された画像に対する操作入力を行うための操作デバイス23が設けられている。このため、スマートミラー20は、ミラー機能、表示機能及び操作機能を有する。加えて、このスマートミラー20では、絵柄印刷層42を有する印刷シート21がハーフミラー22の表面22aに配置されている。このため、スマートミラー20には意匠性が付与される。したがって、このスマートミラー20によれば、ミラー機能、表示機能及び操作機能を有するスマートミラーに対して意匠性を付与することができる。
【0068】
また、本実施形態に係るスマートミラー20では、第1色パターン層50、第2色パターン層60及び第3色パターン層70の各パターン層において、5μm~25μmの粒径範囲を含む小粒子径グレードの複数の二酸化チタン被覆雲母のそれぞれが、25μm~40μmの粒径範囲を含む大粒子径グレードの複数の二酸化チタン被覆雲母同士の隙間を埋めるように配置されている。このため、スマートミラー20によれば、小粒子径グレードの干渉顔料によって絵柄が暗く見えてしまうことを抑制すると共に、大粒子径グレードの干渉顔料によって絵柄の発色性が優れた印刷シート21を提供することができる。また、スマートミラー20では、印刷シート21において大粒子径グレードの干渉顔料を含むことにより、絵柄印刷層42の透過性の低下が抑制される。したがって、スマートミラー20によれば、電源がオンの際に、ディスプレイ装置25の画像の視認性の低下が良好に抑制される。
【0069】
スマートミラー20では、印刷シート21において大粒子径グレードの二酸化チタン被覆雲母56,66,76は、25μm~60μmの粒径範囲を含む構成であってもよい。この場合、絵柄印刷層42における絵柄の発色性がより優れる。また、絵柄印刷層42の透過性の必要以上の低下を抑制して、ディスプレイ装置25の画像の視認性を向上させることができる。
【0070】
スマートミラー20では、第1干渉顔料54、第2干渉顔料64及び第3干渉顔料74は、二酸化チタン被覆雲母を含む干渉顔料である。このため、二酸化チタン膜の膜厚を調整することにより、干渉光の波長を調整することができる。また、雲母表面の平滑性を高めることによって、輝度感を向上させることができる。
【0071】
スマートミラー20では、印刷シート21は、絵柄印刷層42の上に設けられ、複数のシルバードット43aにより構成された白色パターン層43を有し、複数のシルバードット43aのそれぞれが、シルバー用バインダー43bとシルバー用バインダー43bの内部に分散された複数のシルバー顔料チップ43cとを含む。これにより、絵柄印刷層42の発色性が優れる。さらに、絵柄印刷層42が白っぽい印象を与える絵柄を有することができる。
【0072】
スマートミラー20では、印刷シート21は、絵柄印刷層42に対して透光性基材41とは反対側の最表面上に設けられた透過性スモーク印刷層44を有する。これにより、絵柄印刷層42の発色性が優れる。さらに、透過性スモーク印刷層44が透過性を有するため、ディスプレイ装置25の映像の視認性の低下が良好に抑制される。
【0073】
スマートミラー20では、操作デバイス23は、ハーフミラー22とディスプレイ装置25との間に配置され、ディスプレイ装置25と連動するように構成されたタッチセンサであってもよい。これにより、ディスプレイ装置25に表示された画像に対する操作入力をより直観的に行いやすくなり、操作性を向上することができる。
【0074】
スマートミラー20では、印刷シート21は、ディスプレイ装置25の表示面25a及び操作デバイス23の操作面23dよりも面方向において広く、表示面25a及び操作面23dは、面方向に直交する方向から見た場合に、印刷シート21の内側に配置されている。これにより、スマートミラー20においてより広い領域に意匠性を付与できる。
【0075】
スマートミラー20は、ハーフミラー22を支持するミラーフレーム24と、ディスプレイ装置25を保持するディスプレイ保持フレーム26と、を更に備えている。これにより、ハーフミラー22とディスプレイ装置25とをより確実に保持することができる。
【0076】
スマートミラー20では、ハーフミラー22は、枠形状の接着部28によってミラーフレーム24に固定され、操作デバイス23は、ハーフミラー22とミラーフレーム24との間であって接着部28の内側に位置している。これにより、コンパクトな構成のスマートミラーを提供することができる。
【0077】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0078】
例えば、上述したスマートミラー20を備えるキャビネット装置1では、収納部11,13に鏡14,15が取り付けられていたが、他の機能デバイスを取り付けてもよい。このような機能デバイスとしては、例えばディスプレイミラー、ディスプレイモニター、オーディオデバイス、照明デバイスなどがあり、これらを収納部11,13に取り付けてもよい。
【0079】
ディスプレイミラーは、ミラー機能及びモニター機能を有するデバイスであり、例えばスマートミラー20から操作デバイス23を除いた構成を有する装置である。ディスプレイミラーは、例えばスマートミラー20と同様に、収納部11,13に取り付けられてもよい。ディスプレイミラーをスマートミラー20と共にキャビネット10に取り付けた場合、ディスプレイミラーをスマートミラー20と電気的に接続することで、ディスプレイによる表示面積を拡張することができ、モニター機能の向上を図ることができる。なお、ディスプレイミラーとスマートミラー20とを接続する接続配線は、キャビネット10の内部に収容することができる。
【0080】
ディスプレイモニターは、モニター機能を有するデバイスであり、例えばスマートミラー20からハーフミラー22及び操作デバイス23を除いた構成を有する装置である。ディスプレイモニターは、ディスプレイミラーの場合と同様に、収納部11,13に取り付けられてもよく、スマートミラー20と電気的に接続されてもよい。
【0081】
オーディオデバイスは、音を出力するスピーカ機能を有するデバイスである。オーディオデバイスは、例えばスマートミラー20と同様に、収納部11,13に取り付けられてもよい。オーディオデバイスは、スマートミラー20と電気的に接続されることが好ましく、この場合、スマートミラー20の操作デバイス23によってオーディオデバイスを操作(例えば音の出力のON/OFFなどの切り換え、音量の調整などの操作)するように構成してもよい。これにより、オーディオデバイスに操作部を設ける必要がなくなり、オーディオデバイスをシンプルな構成とすることができる。なお、オーディオデバイスとスマートミラー20とを接続する接続配線は、ディスプレイミラーなどと同様に、キャビネット10の内部に収容することができる。
【0082】
照明デバイスは、LEDや有機ELなどの光源を有するデバイスである。照明デバイスは、例えばスマートミラー20と同様に、収納部11,13に取り付けられてもよい。照明デバイスは、スマートミラー20と電気的に接続されることが好ましく、この場合、スマートミラー20の操作デバイス23によって照明デバイスを操作(例えば照明のON/OFFの切り換え、光の強さの調整などの操作)するように構成してもよい。これにより、照明デバイスに操作部を設ける必要がなくなり、照明デバイスをシンプルな構成とすることができる。なお、照明デバイスとスマートミラー20とを接続する接続配線は、ディスプレイミラーなどの場合と同様に、キャビネット10の内部に収容することができる。
【0083】
また、スマートミラー20の印刷シート21は、ハーフミラー22の表面の全体を覆っているが、印刷シート21は、ハーフミラー22のうちディスプレイ装置25の表示面と重なっている部分の全体と重なっていれば、ハーフミラー22の表面の全体を覆っていなくてもよい。また、上記実施形態では、スマートミラー20の印刷シート21は、白色パターン層43及び透過性スモーク印刷層44の両方を備えた構成であったが、印刷シート21は、何れか一方の層を有する形態であってもよく、若しくは、白色パターン層43及び透過性スモーク印刷層44の両方を有しない形態であってもよい。
【0084】
[実験例]
ここで、印刷シートの絵柄印刷層に含まれる二酸化チタン被覆雲母の粒径による、ミラー装置の表示情報と絵柄との見え方の傾向について、実験例を用いて説明する。図8及び後述する実験例1~3に示すように、二酸化チタン被覆雲母の粒径を調整した印刷シートを作製した。図8は、実験例1~3に係る印刷シートの構成を示す図表である。実験例1~3に係る印刷シートの裏面側(透過性スモーク印刷層側)にミラー装置を設置した。印刷シートは、透明な接着剤を介してハーフミラーの表面に貼り合わされている。ハーフミラーの可視光反射率は60%~70%程度であり、可視光透過率は30%~40%程度のものを使用した。ディスプレイ装置には、液晶モニターを使用した。液晶モニターの電源がオンの状態とオフの状態の視認性(後述する項目1~4)を評価した。項目1~4に対して、4人により官能評価を実施し、評点の平均点を算出した。
【0085】
<実験例1>
透明PETである透明基材上に、第1色パターン層、第2色パターン層、第3色パターン層、白色パターン層、及び、透過性スモーク印刷層を順に設けることにより印刷シートを作製した。実験例1では、第1色用バインダー(ウレタン系樹脂)と第1色用バインダーの内部に分散された赤色干渉顔料とを含むインキを用いて、スクリーン印刷技術により第1色パターン層を形成した。赤色干渉顔料の含有率として、第1色用バインダーを100重量部とした場合、10~40μmの粒径を有する赤色干渉顔料を8重量部、5~25μmの粒径を有する赤色干渉顔料を2重量部とした。
【0086】
実験例1では、第2色用バインダー(ウレタン系樹脂)と第2色用バインダーの内部に分散された緑色干渉顔料とを含むインキを用いて、スクリーン印刷技術により第2色パターン層を形成した。緑色干渉顔料の含有率として、第2色用バインダーを100重量部とした場合、10~40μmの粒径を有する緑色干渉顔料を4重量部、及び、5~25μmの粒径を有する緑色干渉顔料を1重量部とした。
【0087】
実験例1では、第3色用バインダー(ウレタン樹脂系)と第3色用バインダーの内部に分散された青色干渉顔料とを含むインキを用いて、スクリーン印刷技術により第3色パターン層を形成した。青色干渉顔料の含有率として、第3色用バインダーを100重量部とした場合、10~40μmの粒径を有する青色干渉顔料を1重量部、及び、5~25μmの粒径を有する青色干渉顔料を1重量部とした。赤色干渉顔料、緑色干渉顔料、及び、青色干渉顔料はいずれも二酸化チタン被覆雲母である。
【0088】
実験例1では、シルバー用バインダー(ウレタン系樹脂)とシルバー用バインダーの内部に分散されたシルバー顔料チップとを含むインキを用いて、スクリーン印刷技術により白色パターン層を形成した。シルバー顔料チップの含有率として、シルバー用バインダーを100重量部とした場合、5~25μmの粒径を有するシルバー顔料チップを1重量部とした。さらに、メジウムインキと黒インキとを40:1の割合で配合したインキを用いて、スクリーン印刷技術により透過性スモーク印刷層を形成した。
【0089】
<実験例2>
透明PETである透明基材上に、第1色パターン層、第2色パターン層、第3色パターン層、白色パターン層、及び、透過性スモーク印刷層を順に設けることにより印刷シートを作製した。実験例2では、第1色用バインダー(ウレタン系樹脂)と第1色用バインダーの内部に分散された赤色干渉顔料とを含むインキを用いて、スクリーン印刷技術により第1色パターン層を形成した。赤色干渉顔料の含有率として、第1色用バインダーを100重量部とした場合、10~40μmの粒径を有する赤色干渉顔料を8重量部、5~25μmの粒径を有する赤色干渉顔料を2重量部とした。
【0090】
実験例2では、第2色用バインダー(ウレタン系樹脂)と第2色用バインダーの内部に分散された緑色干渉顔料とを含むインキを用いて、スクリーン印刷技術により第2色パターン層を形成した。緑色干渉顔料の含有率として、第2色用バインダーを100重量部とした場合、10~40μmの粒径を有する緑色干渉顔料を4重量部、及び、5~25μmの粒径を有する緑色干渉顔料を1重量部とした。
【0091】
実験例2では、第3色用バインダー(ウレタン樹脂系)と第3色用バインダーの内部に分散された青色干渉顔料とを含むインキを用いて、スクリーン印刷技術により第3色パターン層を形成した。青色干渉顔料の含有率として、第3色用バインダーを100重量部とした場合、10~40μmの粒径を有する青色干渉顔料を1重量部とした。赤色干渉顔料、緑色干渉顔料、及び、青色干渉顔料はいずれも二酸化チタン被覆雲母である。
【0092】
実験例2では、シルバー用バインダー(ウレタン系樹脂)とシルバー用バインダーの内部に分散されたシルバー顔料チップとを含むインキを用いて、スクリーン印刷技術により白色パターン層を形成した。シルバー顔料チップの含有率として、シルバー用バインダーを100重量部とした場合、5~25μmの粒径を有するシルバー顔料チップを1重量部とした。さらに、メジウムインキと黒インキとを40:1の割合で配合したインキを用いて、スクリーン印刷技術により透過性スモーク印刷層を形成した。
【0093】
<実験例3>
透明PETである透明基材上に、第1色パターン層、第2色パターン層、第3色パターン層、及び、透過性スモーク印刷層を順に設けることにより印刷シートを作製した。実験例3では、第1色用バインダー(ウレタン系樹脂)と第1色用バインダーの内部に分散された赤色干渉顔料とを含むインキを用いて、スクリーン印刷技術により第1色パターン層を形成した。赤色干渉顔料の含有率として、第1色用バインダーを100重量部とした場合、10~40μmの粒径を有する赤色干渉顔料を8重量部、5~25μmの粒径を有する赤色干渉顔料を2重量部とした。
【0094】
実験例3では、第2色用バインダー(ウレタン系樹脂)と第2色用バインダーの内部に分散された緑色干渉顔料とを含むインキを用いて、スクリーン印刷技術により第2色パターン層を形成した。緑色干渉顔料の含有率として、第2色用バインダーを100重量部とした場合、5~25μmの粒径を有する緑色干渉顔料を4重量部とした。
【0095】
実験例3では、第3色用バインダー(ウレタン樹脂系)と第3色用バインダーの内部に分散された青色干渉顔料とを含むインキを用いて、スクリーン印刷技術により第3色パターン層を形成した。青色干渉顔料の含有率として、第3色用バインダーを100重量部とした場合、5~25μmの粒径を有する青色干渉顔料を1重量部とした。赤色干渉顔料、緑色干渉顔料、及び、青色干渉顔料はいずれも二酸化チタン被覆雲母である。
【0096】
実験例3では、メジウムインキと黒インキとを40:1の割合で配合したインキを用いて、スクリーン印刷技術により透過性スモーク印刷層を形成した。
【0097】
<項目1:表示内容の鮮明度について>
液晶モニターの電源をオンとした際における、液晶モニターに表示されている情報(肌温度・時刻・気象情報等)の鮮明度について評価した。
<評点>
5点:液晶モニターに表示されている情報に対して絵柄の存在感が弱く、情報が鮮明に見える。
3点:液晶モニターに表示されている情報に対して絵柄の存在感がやや強く、情報に絵柄がやや被って見える。
1点:液晶モニターに表示されている情報に対して絵柄の存在感が強く、情報に絵柄が被って見える。
【0098】
<項目2:表示内容の輝度について>
液晶モニターの電源をオンとした際における、液晶モニターに表示されている情報(肌温度・時刻・気象情報等)の輝度について評価した。
<評点>
5点:液晶モニターに表示されている情報が明るく見える。
3点:液晶モニターに表示されている情報がやや暗く見える。
1点:液晶モニターに表示されている情報がかなり暗く見える。
【0099】
<項目3:絵柄の視認性について>
液晶モニターの電源をオフとした際における、絵柄の視認性について評価した。
<評点>
5点:絵柄が十分に視認できる。
3点:絵柄の視認性がやや悪い(絵柄透明性やや高)。
1点:絵柄の視認性がかなり悪い(絵柄透明性高)。
【0100】
<項目4:絵柄の発色について>
液晶モニターの電源をオフとした際における、絵柄の発色について評価した。
<評点>
5点:絵柄の発色が良好である。
3点:絵柄の発色がやや弱く、絵柄の色が薄く/白っぽく見える。
1点:絵柄の発色が弱く、絵柄の色がかなり薄く/白く見える。
【0101】
実験例1~3に対する項目1~4の官能評価の結果を下記表1に示す。なお、何れも3点以上の評価となっているものを実用上問題ないレベルと判断した。実験例1から、絵柄の視認性が十分高いレベルで表現される傾向にあることが分かった。また、絵柄の発色や表示情報の鮮明度・輝度についても高い評価結果が得られた。また、実験例2から、絵柄の視認性を確保しつつ、絵柄の発色や表示情報の鮮明度・輝度についても全般的に良好な仕上がりとなる傾向にあることが分かった。また、実験例3から、絵柄の視認性は申し分ない結果にあることが分かった。また、絵柄の発色や表示情報の鮮明度・輝度についても実用上問題ないレベルの性能を有していた。
【0102】
【表1】
【符号の説明】
【0103】
1…キャビネット装置、10…キャビネット、11,12,13…収納部、20…スマートミラー、21…印刷シート、22…ハーフミラー、22a…表面、22b…背面、23…操作デバイス、24…ミラーフレーム、25…ディスプレイ装置、25a…表示面、26…ディスプレイ保持フレーム、41…透光性基材、42…絵柄印刷層、43…白色パターン層、43a…シルバードット、43b…シルバー用バインダー、43c…シルバー顔料チップ、44…透過性スモーク印刷層、50…第1色パターン層、51…第1色ドット、52…第1色用バインダー、53…第1色顔料チップ、54…第1干渉顔料、55,56…二酸化チタン被覆雲母、60…第2色パターン層、61…第2色ドット、62…第2色用バインダー、63…第2色顔料チップ、64…第2干渉顔料、65,66…二酸化チタン被覆雲母、70…第3色パターン層、71…第3色ドット、72…第3色用バインダー、73…第3色顔料チップ、74…第3干渉顔料、75,76…二酸化チタン被覆雲母。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8