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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166890
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】ガスエンジンシステム
(51)【国際特許分類】
   F02M 21/02 20060101AFI20241122BHJP
   F02D 19/08 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
F02M21/02 N
F02D19/08 C
F02M21/02 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083293
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河合 泰典
(72)【発明者】
【氏名】久城 款
【テーマコード(参考)】
3G092
【Fターム(参考)】
3G092AB06
3G092AB08
3G092AB12
3G092AC08
3G092BB08
3G092FA15
3G092HB03Z
(57)【要約】
【課題】主配管の流体の流れにより副配管から副燃料ガスを吸引してガスエンジンに供給するものにおいて、副燃料ガスの利用機会を高める。
【解決手段】ガスエンジンシステムは、ガスエンジンと、ガスエンジンに接続され少なくとも主燃料ガスが流れる主配管と、副燃料ガスが流れる副配管と、主配管に設けられ主配管の流体の流れによるベンチュリ効果によって副配管から副燃料ガスを吸引して混合するミキサと、主配管におけるミキサの下流側に接続されて副燃料ガスを追加供給する補助配管と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスエンジンと、
前記ガスエンジンに接続され、少なくとも主燃料ガスが流れる主配管と、
副燃料ガスが流れる副配管と、
前記主配管に設けられ、該主配管の流体の流れによるベンチュリ効果によって前記副配管から副燃料ガスを吸引して混合するミキサと、
前記主配管における前記ミキサの下流側に接続されて前記副燃料ガスを追加供給する補助配管と、
を備えるガスエンジンシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のガスエンジンシステムであって、
前記副配管に設けられ、該副配管を流れる流体の圧力を予め設定された設定圧力に調圧する第1調圧器と、
前記主配管における前記ミキサよりも下流側で且つ前記補助配管の接続点よりも上流側に設けられ、該主配管を流れる流体の圧力を予め設定された設定圧力に調圧する第2調圧器と、
を備え、
前記補助配管は、前記副配管から分岐して前記主配管に接続され、
前記第1調圧器の設定圧力は、前記第2調圧器の設定圧力よりも高い、
ガスエンジンシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のガスエンジンシステムであって、
前記補助配管に設けられ、該補助配管を流れる流体の流量を制限する流量調整器を備え、
前記第1調圧器の設定圧力は、前記流量調整器の出力圧よりも高く、
前記第2調圧器の設定圧力は、前記流量調整器の出力圧よりも低い、
ガスエンジンシステム。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか1項に記載のガスエンジンシステムであって、
前記補助配管の開放と閉鎖とを行なう開閉弁と、
前記ガスエンジンの状態に基づいて前記開閉弁を制御する制御部と、
を備えるガスエンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、ガスエンジンシステムについて開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、都市ガス等の主燃料ガスとバイオガス等の副燃料ガスとを混焼させてガスエンジンを運転するガスエンジンシステムにおいて、主燃料ガスが供給される主燃料配管と、副燃料ガスが供給される副燃料配管と、副燃料配管に設けられた圧力レギュレータと、ガスエンジンに供給される流体の流れに応じて主燃料ガスと副燃料ガスとを混合するミキサと、を備え、特別な制御を行なうことなく、ガスエンジンに供給される副燃料ガスの供給量を所定の割合以下に保つものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-196360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流体の流れによるベンチュリ効果により生じる負圧によって副燃料ガスを吸引するミキサにおいては、流体の流速が遅いほど吸引力が弱くなる。このため、例えばガスエンジンの始動時や低出力時など、ガスエンジンに供給される流体の流れが遅い状況においては、ミキサが副燃料ガスを十分に吸引することができなくなり、副燃料ガスの利用機会が少なくなる場合が生じる。
【0005】
本開示のガスエンジンシステムは、ガスエンジンに供給される流体の流れにより副配管から副燃料ガスを吸引してガスエンジンに供給するガスエンジンシステムにおいて、副燃料ガスの利用機会を高めることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のガスエンジンシステムは、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示のガスエンジンシステムは、
ガスエンジンと、
前記ガスエンジンに接続され、少なくとも主燃料ガスが流れる主配管と、
副燃料ガスが流れる副配管と、
前記主配管に設けられ、該主配管の流体の流れによるベンチュリ効果によって前記副配管から副燃料ガスを吸引して混合するミキサと、
前記主配管における前記ミキサの下流側に接続されて前記副燃料ガスを追加供給する補助配管と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
本開示のガスエンジンシステムでは、ガスエンジンに接続された主配管の流体の流れによるベンチュリ効果によって副配管から副燃料ガスを吸引して混合するミキサに加えて、主配管におけるミキサの下流側に接続されて副燃料ガスを追加供給する補助配管を備える。これにより、例えばガスエンジンの始動時や低出力時などにおいて、ガスエンジンに供給される流体の流量が低下し、負圧低下によりミキサにおける副燃料ガスの吸引量が低下しても、補助配管が主配管に副燃料ガスを追加供給するため、副燃料ガスの利用機会を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態のガスエンジンシステムの概略構成図である。
図2】ガスエンジンでの燃料ガスの消費量に対する理想的な副燃料ガスの混合量とその許容範囲とを示す説明図である。
図3】ミキサのみを用いて主燃料ガスに副燃料ガスを混合する場合の混合量と補助配管のみを用いて主燃料ガスに副燃料ガスを混合する場合の混合量とを示す説明図である。
図4】ミキサと補助配管とを用いて主燃料ガスに副燃料ガスを混合する場合の混合量を示す説明図である。
図5】他の実施形態に係るガスエンジンシステムの概略構成図である。
図6】他の実施形態に係るガスエンジンシステムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、本実施形態のガスエンジンシステム1の概略構成図である。本実施形態のガスエンジンシステム1は、ガスエンジン2と、ガスエンジン2を運転制御する制御装置3と、主燃料ガスに副燃料ガスを混合してガスエンジンに供給する副燃料ガス混合装置10と、を備える。
【0012】
ガスエンジン2は、燃料ガスと燃焼用空気との混合ガスを燃焼させて動力を得るものである。燃料ガスには、主燃料ガス源5からの主燃料ガスに副燃料ガス源6からの副燃料ガスを混合したものが用いられる。ガスエンジン2は、例えば、コンプレッサと、室外熱交換器と、膨張弁と、室内熱交換器と、これらを接続する循環配管と、を有し、循環配管内を冷媒が循環することにより室内の冷暖房を行なうガスエンジンヒートポンプ(GHP)において、コンプレッサの駆動源として用いられる。また、ガスエンジン2は、発電機を駆動して発電するガスエンジン発電機に用いられてもよい。なお、本実施形態のガスエンジンシステム1は、複数のガスエンジン2を備え、副燃料ガス混合装置10からの燃料ガスを複数のガスエンジン2のそれぞれに分配するが、単一のガスエンジン2のみを備えるものとしてもよい。
【0013】
制御装置3は、ガスエンジン2を制御するものであり、ガスエンジン2に要求される要求出力に応じて、吸入する燃焼用空気の量を調整する吸入空気量調整制御や、吸入された燃焼用空気に対して所定の空燃比となるように燃料ガスの供給量を調整する空燃比制御、筒内に供給された燃焼用空気と燃料ガスとの混合気を点火する点火制御などの各種制御を行なう。
【0014】
主燃料ガスには、例えば、天然ガス(都市ガス)やプロパンガス等が用いられる。
【0015】
副燃料ガスには、例えば、バイオガスが用いられる。副燃料ガス源6は、発酵槽を備えており、有機物(食物残渣等)のメタン発酵によりバイオガスを生成する。
【0016】
副燃料ガス混合装置10は、主配管11と、副配管12と、補助配管13と、混合ガス配管14と、ミキサ21と、圧力調整器31,32,33と、流量調整器34と、を備える。主配管11は、主として主燃料ガスを流すための配管である。主配管11の一端には主燃料ガス源5が接続され、主配管11の他端には混合ガス配管14が接続されている。副配管12は、副燃料ガスを流し、ミキサ21において副燃料ガスを主配管11に供給するための配管である。副配管12の一端には副燃料ガス源6が接続され、副配管12の他端には圧力調整器22を介してミキサ21が接続されている。補助配管13は、主配管11に補助的に副燃料ガスを供給するための配管である。補助配管13は、副配管12から分岐してミキサ21の下流側で主配管11および混合ガス配管14に接続される。混合ガス配管14の一端には主配管11の他端が接続され、混合ガス配管14の他端には分岐管を介して複数のガスエンジン2が接続されている。
【0017】
ミキサ21は、主燃料ガスを作動流体として、流体の流れによるベンチュリ効果により負圧状態をつくり出し、負圧によって副燃料ガスを吸引して混合するものである。ミキサ21は、主配管11の上流側に接続されるノズル部と、主配管11の下流側に接続されるディフューザ部と、ノズル部とディフューザ部との間に設けられると共に副配管12に接続される吸引部とを有する。
【0018】
圧力調整器31,32,33は、一次側に供給される圧力に対して二次側に出力する圧力(出力圧)予め定められた設定圧力に調整するものである。圧力調整器31は、主配管11におけるミキサ21の上流側に設けられている。圧力調整器32は、副配管12における補助配管13との分岐点の上流側に設けられている。圧力調整器33は、主配管11におけるミキサ21の下流側で且つ補助配管13の接続点の上流側に設けられている。
【0019】
流量調整器34は、補助配管13に設けられている。流量調整器34は、例えば、オリフィスやニードルバルブ等で構成され、補助配管13を流れる流体(副燃料ガス)の流量に上限を設け、予め定められた設定流量以下に制限する。
【0020】
本実施形態では、圧力調整器31の設定圧力は、圧力調整器32よりも高く、圧力調整器32の設定圧力は、流量調整器34の出力圧よりも高く、圧力調整器33の設定圧力は、流量調整器34の出力圧よりも低くなるように設定されている。例えば、圧力調整器31の設定圧力は12kPaであり、圧力調整器32の設定圧力は2.5kPaであり、流量調整器34の出力圧は2.3kPaであり、圧力調整器33の設定圧力は2.0kPaである。これにより、主配管11には、ミキサ21によって副燃料ガスが供給されるのに加えて、主配管11と補助配管13との圧力差によって主配管11に副燃料ガスが追加で供給され、混合ガス配管14を通してガスエンジン2に供給されることとなる。
【0021】
ここで、バイオガス等の副燃料ガスは、天然ガス等の主燃料ガスに比して、メタン濃度が低く、熱量が小さいため、副燃料ガスの混合量が多すぎると、混合ガスの燃焼が不安定となり、エンジンストールのおそれが生じる。一方、副燃料ガスの混合量が少なすぎると、メタン発酵等の副燃料ガス源6において絶え間なく生成される副燃料ガスを十分に消費することができない。このため、副燃料ガスの混合量は、ガスエンジン2での燃料ガス(主燃料ガスと副燃料ガスとの混合ガス)の消費量が多くなるにつれて、比例して多くするのが理想的である(図2中、実線参照)。但し、理想的な副燃料ガスの混合量に対して副燃料ガスの混合量の変動幅が所定範囲内であれば(図2中、ハッチング部分参照)、制御装置3によるガスエンジン2の制御によってカバーできるため、当該副燃料ガスの混合量の変動は許容される。
【0022】
制御装置3は、ガスエンジン2の要求出力に応じて吸入空気量調整制御や空燃比制御等を行なっており、燃料ガス(主燃料ガスと副燃料ガスとの混合ガス)の供給量は、要求出力が低いときには少なく、要求出力が高くなるにつれて多くなる。また、燃料ガスの供給量は、複数のガスエンジン2のうち同時に稼動するガスエンジン2の数が多くなるにつれて多くなる。一方、上述したように、ミキサ21は、主配管11の流体(主燃料ガス)の流れによるベンチュリ効果によって副燃料ガスを吸引して混合する。ベンチュリ効果は、流体の流れのエネルギと圧力のエネルギとの和が一定であるというベルヌーイの定理によって導かれ、圧力(負圧)は、流速の二乗に比例する関係を有する。このため、主配管11における流体の流速が低くなるガスエンジン2の低出力時においては、ミキサ21における負圧が弱く、副燃料ガスを十分に吸引することができない(図3(a)参照)。本実施形態では、こうした場合であっても、主配管11と補助配管13との圧力差によって当該補助配管13から主配管11に副燃料ガスが追加供給されるため、ガスエンジン2の運転領域の全域において、副燃料ガスの十分な利用機会を確保することができる。補助配管13には、流量調整器34が設けられているから、補助配管13から主配管11に追加供給される副燃料ガスの供給量は、予め設定された設定流量(上限)以下に制限される(図3(b)参照)。したがって、副燃料ガス混合装置10は、ミキサ21による混合量と、補助配管13による混合量との和の量の副燃料ガスを混合し(図4参照)、その混合ガスは、混合ガス配管14を介してガスエンジン2に供給されることとなる。これにより、主配管11に適量の副燃料ガスを追加供給することができる。さらに、副燃料ガス混合装置10は、電気的な制御を要しないミキサ21や圧力調整器31,32,33を用いて副燃料ガスの供給量を制御するため、より簡易な構成とすることができる。
【0023】
上述した実施形態では、補助配管13には、副燃料ガスの流量を設定流量(上限)以下に制限する流量調整器34が設けられるものとした。しかし、図5の他の実施形態に係る副燃料ガス混合装置110に示すように、流量調整器34を省略してもよい。この場合、補助配管13を流れる副燃料ガスの流量を予め定められた設定流量(上限)以下に制限することはできないが、主配管11と補助配管13との圧力差を事前に調整しておくことで、副燃料ガスを主配管11に追加供給することは可能である。
【0024】
また、図6の他の実施形態に係る副燃料ガス混合装置210に示すように、補助配管13には、制御装置3によって制御される開閉弁235が設けられてもよい。ガスエンジン2での燃料ガスの燃焼が不安定となるときに、制御装置3により開閉弁235を閉弁することで、燃焼を安定させることができる。例えば、制御装置3は、ガスエンジン2の起動を開始してからその暖機が完了するまでの間、開閉弁235を閉弁して補助配管13から主配管11への副燃料ガスの流入を遮断するようにしてもよい。また、例えば、制御装置3は、ガスエンジン2の起動が失敗すると、自動的に起動をリトライするように制御するものとし、起動の失敗回数が所定回数に達したときに、開閉弁235を閉弁してから起動をリトライするようにしてもよい。これにより、ガスエンジン2の起動性をより向上させることができる。
【0025】
上述した実施形態では、主燃料ガス源5から主配管11を流れる主燃料ガスに副燃料ガス源6からの副燃料ガスが混合されるものとしたが、更に燃焼用空気が混合されてもよい。
【0026】
以上、本開示を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本開示はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本開示は、ガスエンジンシステムの製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 ガスエンジンシステム、2 ガスエンジン、3 制御装置(制御部)、11 主配管、12 副配管、13 補助配管、21 ミキサ、32 圧力調整器(第1調圧器)、33 圧力調整器(第2調圧器)、34 流量調整器、235 開閉弁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6