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特開2024-166892屋根に取り付ける融雪パネル及び融雪システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166892
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】屋根に取り付ける融雪パネル及び融雪システム
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/00 20060101AFI20241122BHJP
   H02S 40/12 20140101ALI20241122BHJP
   E04D 13/18 20180101ALI20241122BHJP
   E04H 9/16 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
E04D13/00 A
H02S40/12
E04D13/18 ETD
E04H9/16 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083303
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】523190376
【氏名又は名称】株式会社コンフォート
(74)【代理人】
【識別番号】100204098
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 良往
(72)【発明者】
【氏名】東本 幸三
【テーマコード(参考)】
2E108
2E139
5F251
【Fターム(参考)】
2E108LL01
2E108MM00
2E108NN07
2E139AA03
2E139DA01
2E139DA04
2E139DB04
2E139DB13
2E139DC13
5F251AA02
5F251AA05
5F251JA02
5F251JA15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】社会問題化している屋根の雪降ろし問題を解決し、かつ既に太陽電池モジュールが設置されている屋根にも発電効率を損なうことなく、太陽電池モジュールの受光面の上に併設できる融雪パネルを提供する。また、融雪パネルの融雪機能の開始、停止を効果的に適切に制御して、大幅に融雪のための消費電力を削減する融雪システムを提供する。
【解決手段】屋根に取り付ける融雪パネル10からなる融雪システム30であって、透明な樹脂基板、その樹脂基板に埋め込まれた電気をエネルギーとする発熱体、を含み屋根に取り付けられている太陽電池モジュール20の受光面に取り付けることができる構造を有する融雪パネル10、降雪を感知するセンサー33、融雪装置を備え常に積雪が無い状態を有するパイロット太陽電池34、積雪を感知する圧力センサー、発熱体の電流を制御する融雪パネル制御部、を含む融雪システム30である。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根に取り付ける融雪パネルであって、
透明な樹脂基板と
前記樹脂基板に取り付けられた電気をエネルギーとする発熱体とを含み
屋根に取り付けられている太陽電池モジュールの受光面の上部に重ねて取り付けることができる構造を有することを特徴とする融雪パネル。
【請求項2】
前記樹脂基板がアクリル板であり、前記発熱体がニクロム線であることを特徴とする請求項1記載の融雪パネル。
【請求項3】
前記融雪パネルを前記太陽電池モジュールに取り付けた状態で、発電効率を上げるために前記発熱体が前記太陽電池モジュールのセル以外の発電しない周辺に位置するように配線された構造を有することを特徴とする請求項1又は2いずれか1項に記載の融雪パネル。
【請求項4】
屋根に取り付ける融雪パネルからなる融雪システムであって、
透明な樹脂基板と前記樹脂基板に取り付けられた電気をエネルギーとする発熱体とを含み屋根に取り付けられている太陽電池モジュールの受光面の上部に重ねて取り付けることができる構造を有する融雪パネルと
降雪を感知するセンサーと
融雪装置を備え常に積雪が無い状態を有するパイロット太陽電池と
積雪を感知する圧力センサーと
前記発熱体の電流を制御する融雪パネル制御部を含むことを特徴とする融雪システム。
【請求項5】
前記樹脂基板がアクリル板であり、前記発熱体がニクロム線であることを特徴とする請求項4記載の融雪システム。
【請求項6】
前記融雪パネルを前記太陽電池モジュールに取り付けた状態で、発電効率を上げるために前記発熱体が前記太陽電池モジュールのセル以外の発電しない周辺に位置するように配線された構造を有することを特徴とする請求項4又は5いずれか1項に記載の融雪システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根に取り付ける融雪パネル及び融雪パネルを用いた融雪システム関する。
【背景技術】
【0002】
積雪量の多い地域では、雪降ろし作業を頻繁に行う必要があるが、近年、これらの地域では、高齢化が進み、高齢者が雪降ろし作業を行うことを余儀なくされており、雪降ろし作業中に滑落して死亡する事故が多発している。そこで、雪降ろし作業に代わり、人手を介することなく、融雪する方法が提案されている。これには主に、電気式、ボイラー式、散水式などの方法が実用化されている。屋根の融雪に関しては、電熱ヒーターなどによって雪を溶かす電気式の融雪方法が比較的構造が簡単で、安価に構築できるため普及している。例えば、特許文献1では、発熱体として面状金属を用い、この面状金属を覆う表面部材及び裏面部材とを備えた融雪装置が提案されている。
【0003】
また、近年、積雪量の多い地域でも太陽電池が採用されるケースが増加してきているが、太陽電池モジュールに積雪があると、当然、晴天の日でも発電をすることができないので、太陽電池モジュール表面の積雪を十分に除去する必要がある。これらの融雪技術としては、発熱体を備えた新たな太陽電池モジュールを開発して融雪する方法や太陽電池モジュールに逆電圧を加えて、太陽電池モジュール自体を発熱させて融雪する方法などが提案されている。
【0004】
発熱体を備えた新たな太陽電池モジュールとしては、当初、太陽電池モジュールの裏面に発熱体を設け、裏面から太陽電池モジュールを温める方法が採用されていたが、この方法では太陽電池セルを通して太陽電池モジュールの表面を温める必要があるため、融雪効率が悪くかつ太陽電池セルに悪影響を及ぼす恐れがあった。そこで、例えば、特許文献2では、太陽電池モジュールの受光面側に透明な発熱体を設けることが提案されている。ただ、透明な発熱体であっても、光の透過度が落ちるのを否めないため、発電効率の低下を免れないし、透明な発熱体は高価であるなどの問題がある。
【0005】
太陽電池モジュール事態を発熱させて融雪する方法は、太陽電池セルに逆電圧を加えるとセルに漏れ電流が流れ、これにより、セル自体を発熱させて、融雪を図ろうとするものである。例えば、特許文献3では、太陽電池モジュールを逆電圧によるセルの漏れ電流を大きくした構造とし、逆電圧を加えた場合の発熱量を大きくして、融雪することが提案されている。しかしながら、この方式では、発熱量を大きくするためにはセルの漏れ電流を大きくする必要があり、特殊な構造の太陽電池モジュールとなるためコスト高となること、発電時と融雪時の切り替え運転を行う必要があり、この切り替えタイミングが難しいこと、セル部分しか発熱しないためフレーム部分が融雪できないことなどの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実登3130739号公報
【特許文献2】特開平8-250756号公報
【特許文献3】特開2017-153195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、社会問題化している屋根の雪降ろし問題を解決し、かつ既に太陽電池モジュールが設置されている屋根にも発電効率を損なうことなく、太陽電池モジュールの受光面の上に重ねて取り付けることができる融雪パネルを提供する。また、通常行われている融雪方法としては、降雪センサーで降雪を検知すると、同時に発熱体に電力を供給して融雪を開始し、降雪センサーが降雪を検知しなくなると、ある一定の時間遅延して発熱体への電力供給を停止するという方法がとられている。しかし、この方法では、積雪の有無にかかわらず降雪と同時に融雪のための電力が発熱体に供給されるため、融雪に係る電力以外に多くの電力が消費されてしまう。また、まだ積雪が残っているにもかかわらず融雪を停止してしまう恐れがあり、太陽電池モジュールが積雪のため十分な出力を出せない可能性がある。従って、融雪パネルの融雪機能の開始、停止を効果的に適切に制御して、大幅に融雪のための消費電力を削減することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、屋根に取り付ける融雪パネルであって、透明な樹脂基板と透明な樹脂基板に取り付けられた電気をエネルギーとする発熱体とを含み、屋根に取り付けられている太陽電池モジュールの受光面の上部に重ねて取り付けることができる構造を有する。
【0009】
請求項2の発明は、透明樹脂基板がアクリル板であり、発熱体がニクロム線であることを特徴とする融雪パネルである。
【0010】
請求項3の発明は、融雪パネルを太陽電池モジュールに取り付けた状態で、発電効率を上げるために発熱体が太陽電池モジュールのセル以外の発電しない周辺に位置するように配線された構造を有することを特徴とする融雪パネルである。
【0011】
請求項4の発明は、屋根に取り付ける融雪パネルからなる融雪システムであって、透明な樹脂基板と、その樹脂基板に取り付けられた電気をエネルギーとする発熱体と、を含み屋根に取り付けられている太陽電池モジュールの受光面の上部に重ねて取り付けることができる構造を有する融雪パネルと、降雪を感知するセンサーと、融雪装置を備え常に積雪が無い状態を有するパイロット太陽電池と、積雪を感知する圧力センサーと、発熱体の電流を制御する融雪パネル制御部と、を含むことを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、透明な樹脂基板がアクリル板であり、発熱体がニクロム線であることを特徴とする融雪システムである。
【0013】
請求項6の発明は、融雪パネルを太陽電池モジュールに取り付けた状態で、発電効率を上げるために発熱体が太陽電池モジュールの発電しない周辺に位置するように配線された構造を有することを特徴とする融雪システムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の融雪パネルによれば、社会問題化している屋根の雪降ろし問題を解決でき、既に太陽電池モジュールが設置されている屋根にも融雪パネルを太陽電池モジュールの受光面の上にも発電効率を損なうことなく併設することができる。また、本発明の融雪システムによれば、降雪時に常に発熱体に通電するのではなく、融雪機能の開始、停止を効果的に適切に制御することにより、大幅に融雪のための消費電力を削減することができる。また、本発明の融雪システムによれば、融雪バネル上の積雪の有無を適切に判断できるので、これまでの融雪方法に比べて、太陽光モジュールの発電量の増加が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)は本発明の融雪パネル10を家屋1の屋根2に取付けた場合の斜視図であり、(b)は家屋1の屋根2の平面図である。
図2】(a)は太陽電池モジュール20の一例の平面図であり、(b)は本発明の融雪パネル10の平面図である。
図3】太陽電池モジュール20の断面の一部の拡大図である。
図4】(a)は透明樹脂基板11に発熱体12を埋め込んだ融雪パネル10の一部の拡大断面図であり、(b)は透明樹脂基板11の裏面に発熱体12を印刷した融雪パネルの一部の拡大断面図である。
図5】太陽電池モジュール20に融雪パネル10を取り付けた状態の一部の拡大断面図である。
図6】融雪パネル20を用いた融雪システム30のブロック図である。
図7】融雪パネル制御部の機能を表わすブロック図である。
図8】(a)は太陽電池モジュールがある場合の融雪開始判断のフローチャートで、(b)は融雪停止判断のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について図に基づいて説明する。
図1(a)は本発明の融雪パネル10を家屋1の屋根2に取付けた場合の斜視図であり、図1(b)は家屋1の屋根2の平面図を示している。図1は、本発明の実施例として、南向屋根2aには数枚の単結晶シリコン系太陽電池モジュール20の受光面の上に重ねて単結晶シリコン系太陽電池モジュール20と同数の融雪パネル10を設置し、北向屋根2bは太陽光の照射量が比較的少ないので、太陽電池モジュール20を設置せず融雪パネル10のみを設置した場合を示している。もちろん、実際的には北向屋根2bに太陽光の照射が少ない場合にも比較的効率よく光エネルギーを電気エネルギーに変換できるアモルファスシリコン系太陽電池を設置し、その受光面の上に融雪パネル10を重ねて設置するようにすれば、コストが少し高くなるが、その分より余分にアモルファスシリコン系太陽電池で発電される電力量が増加するので経済的な見地からはより好ましい。
【0017】
図2(a)は太陽電池モジュール20の一例の平面図であり、(b)は本発明の融雪パネル10の平面図である。太陽電池モジュール20は光エネルギーを電気エネルギーに変換するセル23が数十個縦横に配列され、その外周をフレーム27で囲む構造をしている。南向屋根2aには、南向屋根2aを覆うように数枚の太陽電池モジュール20が取り付けられ、太陽電池アレイを構成している。その受光面の上方に接して、太陽電池モジュール20と同数の本発明の融雪パネル10が設置されている。
【0018】
融雪パネル10は、図2(b)に示すように太陽電池モジュール20と同じ大きさで、透明樹脂基板11、発熱体12、センサー部16及び電極15a、15bで構成されている。
透明樹脂基盤11としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン樹脂、シリコン樹脂などがあるが、透明度、熱伝導性、コストの観点からアクリル樹脂が好ましい。発熱体12としては、ニクロム線、コンスタンタン線、ステンレス線、銅線などがあるが、発熱効率、強度、耐久性の観点からニクロム線が好ましい。センサー部16は融雪パネル10の透明樹脂基板11の表面温度を計測する温度センサーと融雪パネル10に積雪した雪の重さを計測する圧力センサーを有している。
【0019】
図3は太陽電池モジュール20の断面の一部を拡大した模式図である。太陽電池モジュール20は光エネルギーを電気エネルギーに変換するセル23を内部接続線22により互いに接続して大きな電力を得ることができる構造を有している。セル23を保護するためにセル23を挟み込むように上面には強化ガラス21、下面にはバックカバー25が配置され、その内部は充填材24が封入されている。その周囲を保護するためにアルミまたはステンレスのフレーム27がシール材26を介して取り付けられている。ここで、注目すべき点は、光エネルギーを電気エネルギーに変換しているのはセル23であり、セル23以外の部分は発電に寄与していないことである。このため、セル23以外の部分の上方に不透明な物体があって、照射光を遮っても発電効率を低下させない。従って、融雪パネル10の発熱体11として高価な透明な電熱線を用いなくても、受光面の上方のセル23以外の部分に設置するのであれば、その部分に透明でない電熱線を配置しても、発電効率に影響を与えることはない。
【0020】
そこで、融雪パネル10の発熱体12は、図2(b)に示すように、セル23に照射される太陽光に影響を与えないようにセル23以外の部分に蛇行状に配置される。また、融雪パネル11全体が発熱するように、特にフレーム14も発熱して融雪可能なように配置される。発熱体12へ供給される電気エネルギーは端子15a、15bを介して電力会社の外部電源35から供給される。
【0021】
図4(a)は融雪パネル10の一部の断面図である。透明樹脂基板11に発熱体12aが太陽電池モジュール20のセル23への太陽光の照射に影響を与えない位置に埋め込まれている。また、透明樹脂基板11の周囲は水による漏電などを防止するために融雪パネルシール材13を介して、融雪パネルフレーム14が取り付けられている。この透明樹脂基板11を製造する方法としては、ニクロム線、コンスタンタン線、ステンレス線、銅線などで形成された配線パターンを透明樹脂で挟み込んで成形する方法や既存のフィルムヒーター製造方法によることができる。フィルムヒーター製造方法はアルミニウムやステンレス、銅などの薄箔を発熱体とし、エッチングや抜き型でパターン形状に抜き出し、そのパターンを透明樹脂で挟み込んで製作する。また、図4(b)に示すように、透明樹脂基板11の裏面に、例えば、銀粒子を混合したカーボンペーストからなる導電性インクを使用して、配線形状をスクリーン印刷する方法やロボットにより描画する方法を採用してもよい。ただし、強度、発熱量、コストを考えると、ニクロム線、コンスタンタン線、ステンレス線、銅線などで形成された配線パターンを透明樹脂で挟み込んで成形する方法がより好ましい。
【0022】
図5は太陽電池モジュール20に融雪パネル10を取り付けた状態の断面図である。融雪パネル10を太陽電池モジュール20へ取り付ける方法としては、直線部分は図5に示すように既存の標準製品であるC型クランプ28で取り付け、直角(コーナ)はコーナークランプ(図示せず。)により取り付ける。C型クランプ28はアルファベットのCのような形をしたクランプで、別名「シャコ万力」、「G型クランプ」、「B型クランプ」とも呼ばれ、金属のくわえ部分とねじにより、強力に締め付けられるのが特徴である。コーナークランプは、対象物の角を垂直に固定するクランプで、太陽電池モジュール20の上に融雪パネル10を置き、ねじを締めつけて固定する。
【0023】
図6は、融雪パネル20を用いた太陽電池モジュール融雪システム30のブロック図である。太陽電池システムは太陽電池モジュール20で発電した直流電力を太陽電池モジュール制御部32で交流電力に変換して、家屋1内の電源系統である内部電源36に供給し、一部は、電力会社の外部電源35に売電の形態で供給し、また一部の余剰電力を蓄電池に蓄電する。融雪パネル制御部31は太陽電池モジュール制御部32、降雪センサー33、パイロット太陽電池34及び融雪パネル10のセンサー部16からの情報に基づき、外部電源35から融雪パネル10への電力供給を制御する。また融雪パネル制御部31は、図7に示すような手段を有する。各手段についての詳細は後述する。
【0024】
降雪センサー33は、降雪を感知し、融雪パネル制御部31に、降雪情報を送信する。降雪センサー33としては、雪がセンサーに落ちたときに生じる重量変化を検出するウェイト・センサー、レーザーや光電センサーを使用して、降雪量や降雪強度を測定するために光学的な変化を検出するオプティカル・センサー、雪がセンサーの前面を通過するときに生じる超音波の反射を利用して、降雪量を測定する超音波センサー、降雪中に送信されたマイクロ波信号が雪の粒子によって反射され、それを検出することで降雪量を測定するマイクロ波センサーなど各種のセンサーが製品化されており、これらを任意に利用できる。
【0025】
降雪時にいつ融雪パネル10の発熱体12に電気を供給し融雪を開始するのか、また、いつどのようにして積雪が無くなったことを検知して、融雪を停止するのかが、発熱に要する電力を抑える観点から非常に重要となる。通常行われている方法としては、降雪センサー33で降雪を検知すると、同時に発熱体12に電力を供給して融雪を開始し、降雪センサー33が降雪を検知しなくなると、ある一定の時間遅延して発熱体12への電力供給を停止するという方法が採用されている。しかしながら、この方法では、積雪の有無にかかわらず降雪と同時に融雪のための電力が消費され、また、積雪が残っているにもかかわらず融雪を停止してしまう恐れがある。融雪パネル10の上に積雪の残った状態で、融雪を停止してしまうと太陽モジュール20は既定の出力の発電ができない。これを回避するために、画像処理により積雪があるかどうかの判断をして融雪を停止することも考えられるが、完全に積雪の有無の判断をするにはかなり大掛かりなシステムが必要となる可能性がある。本発明は、このような課題を解決のために、融雪パネル制御部31は、圧力センサー融雪手段M1とパイロット太陽電池融雪手段M2の2つの手段を有している。
【0026】
図7は、融雪パネル制御部の機能を表わすブロック図である。圧力センサー融雪手段M1は、融雪パネル10の圧力センサー部16からの圧力の値が、積雪により規定値以上に達したら、発熱体12に電力を供給して融雪を開始し、融雪中に融雪パネル10の圧力センサー部16からの圧力値がある規定値以下に達したら融雪機能を停止する制御を行う。これにより、どのような大雪であっても融雪パネル10上の積雪量が一定の範囲に保たれる。
【0027】
パイロット太陽電池融雪手段M2は天候が回復して、太陽電池モジュール20が発電できる状態に達すると、圧力センサー融雪手段M1により、一定の範囲に保たれている積雪を十分に融雪するために融雪パネル10の発熱体12に電力を供給して融雪を開始し、積雪が無くなったときに発熱体12への電力の供給を停止する。この融雪の開始及び停止のタイミングをパイロット太陽電池34の出力と太陽電池モジュール20との出力比により行う。
【0028】
パイロット太陽電池34は、1つの太陽電池セルとその周囲に発熱体を有した構造であって、降雪時にわずかな電力で発熱して、パイロット太陽電池34のセル上に常に積雪が生じないようにした小さな太陽電池である。パイロット太陽電池34は、常に積雪の無い状態に維持されているため、雪が止んで太陽光が照射されると発電を開始するので、太陽電池モジョール20も発電を開始できる状態に達したことを検知できる。この時、融雪パネル10の発熱体12に電力を供給し融雪を開始すれば、圧力センサー融雪手段M1により、積雪が一定の範囲に制御されているため、あまり時間をかけず融雪を完了することができる。また、太陽電池モジュール20の出力は天候に左右されるため、パイロット太陽電池34との出力比が規定値内に達していれば、融雪パネル10上の積雪が正常に発電できる状態まで十分に融けたと判断できるので、発熱体12への電力供給を停止する。この制御により、大幅な節電効果が期待できる。
【0029】
温度センサーによる保護手段M3は、融雪パネル10のセンサー部16の温度センサーにより、融雪パネル10上の温度を検知して、融雪パネルの温度を適温に維持する。また、その他保護手段M4は、地絡や過電流を検出して、融雪パネル10や太陽電池モジュール20を保護すると同時に人に危険を生じないようにする。
【0030】
図8(a)は太陽電池モジュール20がある場合の融雪開始判断のフローチャートであり、(b)は融雪停止判断のフローチャートである。以下、パイロット太陽電池融雪手段M2の融雪開始判断の詳細について説明する。ステップS11では降雪センサー33により降雪を検知したかどうか判断する。降雪を検知した場合は、ステップ12でパイロット太陽電池34の融雪機能をONにして、パイロット太陽電池34への積雪を防止する。天候が回復してくると、パイロット太陽電池34の出力が上がってくるので、ステップ13でパイロット太陽電池34の出力が一定の設定値に達しているかどうか判断して、一定の出力に達していれば、ステップS14で融雪パネル10の融雪機能をONにして融雪を開始する。また、パイロット太陽電池34の融雪機能をOFFにする。
【0031】
次に、融雪停止の判断について説明する。まず、ステップS21で融雪パネル10が融雪中かどうかを判断する。融雪状態であれば、ステップ22でパイロット太陽電池34の出力と太陽電池モジュール20の出力比が規定値以上に達したかを判断する。パイロット太陽電池34はその天候における太陽光の照射量に見合った出力を出しているので、パイロット太陽電池34の出力と太陽電池モジュール20の出力の比が一定値に達していれば、融雪パネル上の積雪が解けて、太陽電池モジュール20の出力が太陽光の照射量に見合った出力を出していると判断できる。従って、規定値以上に達していれば、既に雪が十分に融けていると判断できるので、融雪パネルの融雪機能を停止する。
【0032】
この制御により、融雪は天候が回復し雪が止んだ状態で開始し、融雪パネル10上の雪が十分に溶けた状態で融雪が停止されるため、融雪時間が大幅に短縮され、融雪パネル上の積雪が十分に融けた状態で停止できるため大幅な電力削減を図ることができる。また、十分に積雪がない状態にできるので、積雪にる太陽電池モジュール20の出力の低下を招くことなく、発電電力量を確保できる。なお、太陽電池モジュール20を設置しない北向屋根2bの融雪については、圧力センサー融雪手段M1のみを適用して、北向屋根2bの融雪ができる。

本発明の適用範囲は上述した実施形態及び実施例に限定されない。本発明の趣旨に沿ったシステム及び方法に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 家屋
2 屋根
2a 南向屋根
2b 北向屋根
10 融雪パネル
10a 太陽電池パネルに取付けた融雪パネル
10b 太陽電池パネルが取付けられていない融雪パネル
11 透明樹脂基板
12 発熱体
12a 透明樹脂基板に埋め込まれた発熱体
12b 透明樹脂基板に印刷された発熱体
13 融雪パネルシール材
14 融雪パネルフレーム
15a、15b 発熱体端子
16 融雪パネルセンサー部
20 太陽電池パネル
21 強化ガラス
22 内部の接続線
23 セル
24 充填材
25 バックカバー
26 太陽電池モジュールシール材
27 太陽電池モジュールフレーム
28 C型クランプ
30 制御部
31 融雪パネル制御部
32 太陽電池モジュール制御部
33 降雪センサー
34 パイロット太陽電池
35 外部電源
36 内部電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8