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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166894
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】火災検知システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20241122BHJP
   G08B 17/06 20060101ALI20241122BHJP
   G08B 17/12 20060101ALI20241122BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20241122BHJP
   A62C 37/50 20060101ALI20241122BHJP
   A62C 37/40 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
G08B17/00 K
G08B17/06 J
G08B17/12 A
G01J1/02 J
A62C37/50
A62C37/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083306
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 孝治
(72)【発明者】
【氏名】岩間 三典
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 拓実
【テーマコード(参考)】
2E189
2G065
5C085
5G405
【Fターム(参考)】
2E189FB06
2E189GA02
2E189HA19
2G065AB02
2G065AB26
2G065BA02
2G065BA04
2G065BA06
2G065BA37
2G065BC33
2G065BC35
2G065DA06
5C085AA11
5C085AB01
5C085BA35
5C085CA14
5G405AB05
5G405CA13
5G405CA29
(57)【要約】
【課題】火災検知用のセンサを複数備える火災検知システムにおける複数のセンサの動作試験を、センサの数よりも少ない数の試験部を用いて行えるようにする。
【解決手段】放水装置30は、センサ部33、及び試験部37を備える。センサ部33は、赤外光を受光する赤外線カメラ331及び赤外線センサ332を含む。試験部37は、試験光となる赤外光を、赤外線カメラ331及び赤外線センサ332の各々に順番に照射し、赤外線カメラ331及び赤外線センサ332の動作試験を行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の波長帯域の光を受光する火災検知用の複数のセンサと、
前記所定の波長帯域の試験光を前記複数のセンサに順番に照射し、前記複数のセンサの動作試験を行う試験部と、
を備える火災検知システム。
【請求項2】
前記複数のセンサは、赤外線カメラと赤外線センサとを含み、
前記試験部は、前記試験光を発する発光部を有し、
前記発光部は、前記赤外線カメラの動作試験においては点灯し、前記赤外線センサの動作試験においては点滅する
請求項1に記載の火災検知システム。
【請求項3】
前記赤外線カメラと前記赤外線センサとは、俯仰方向に沿って並べて配置され、前記赤外線カメラ及び前記赤外線センサのうち一方の動作試験が完了した後、前記赤外線カメラ及び前記赤外線センサのうち他方が前記発光部の正面に位置するように前記俯仰方向に回動する
請求項2に記載の火災検知システム。
【請求項4】
前記赤外線カメラは、前記発光部の正面となる位置を基準に俯仰方向に所定角度ずつ回動し、前記発光部の赤外線画像を前記所定角度毎に撮影し、
前記赤外線画像を用いて前記赤外線カメラの動作試験が行われる、
請求項2に記載の火災検知システム。
【請求項5】
前記赤外線カメラは、前記発光部が消灯した状態及び点灯した状態の夫々において、前記発光部の正面となる位置を基準に前記俯仰方向に沿って前記所定角度ずつ回動し、前記消灯した状態の前記発光部の第1赤外線画像と、前記点灯した状態の前記発光部の第2赤外線画像とを前記所定角度毎に撮影し、
前記第1赤外線画像の画素値と前記第2赤外線画像の画素値とに応じた前記赤外線カメラの出力値の差を用いて前記赤外線カメラの動作試験が行われる、
請求項4に記載の火災検知システム。
【請求項6】
前記複数のセンサ及び前記試験部を収容する筐体の扉が一旦開けられてから閉じられると、前記複数のセンサの動作試験が開始される、
請求項1に記載の火災検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ノズルユニットのセルフチェック試験を実施する消火システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-86621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、火災検知用のセンサが複数ある場合、これらのセンサの動作試験を行うには、火災検知用のセンサと同数の試験部、即ち複数の試験部を設ける必要があった。しかし、試験部の数が増えると、システムの製造コストが増加し、試験部が占める設置面積も大きくなる。
【0005】
本開示は上記課題に鑑みて為されたのであり、火災検知用のセンサを複数備える火災検知システムにおける複数のセンサの動作試験を、センサの数よりも少ない数の試験部を用いて行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本開示の第1の態様に係る火災検知システムは、火災検知用の複数のセンサと、試験部と、を備える。複数のセンサは、所定の波長帯域の光を受光する。試験部は、前記所定の波長帯域の試験光を前記複数のセンサに順番に照射し、前記複数のセンサの動作試験を行う。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、火災検知用のセンサを複数備える火災検知システムにおける複数のセンサの動作試験を、センサの数よりも少ない数の試験部を用いて行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る放水システムの構成の一例を示す図である。
図2】放水装置の構成の一例を示す図である。
図3】扉を閉じた状態の放水装置の正面図である。
図4】放水装置を正面から見た透視図である。
図5】センサ部の正面図である。
図6】試験部の斜視図である。
図7】試験部における2個の発光部の旋回方向における配置間隔と赤外線カメラの撮像素子における画素の配列との関係を説明するための図である。
図8】赤外線カメラの動作試験における試験部とセンサ部との位置関係を説明するための図である。
図9】赤外線カメラの動作試験において撮像される赤外線画像に写る発光部の位置の一例を示す図である。
図10】火災発生時の放水装置の動作を示すフローチャートである。
図11】放水装置のセルフチェックにおける処理の流れを示すフローチャートである。
図12】赤外線カメラの動作試験における処理の流れ示すフローチャートである。
図13】赤外線センサの動作試験における処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(A:実施形態)
(A-1:放水システムの構成)
図1は、本実施形態に係る放水システム1の構成の一例を示す図である。放水システム1は、監視領域で火災が発生すると炎を検知し、火源に向けて放水する。放水システム1は、本開示における火災検知システムの一例である。放水システム1は、例えば一般アトリウムや体育館等の中規模空間に設置される。例えば放水システム1が体育館に設置される場合、放水システム1の設置先の体育館内が監視領域となる。図1に示されるように、放水システム1は、火災検知器10と、火災受信機15と、中央制御盤20と、現地制御盤25と、放水装置30とを備える。火災受信機15には、信号線を介して火災検知器10が接続されている。火災受信機15と中央制御盤20とは、信号線を介して接続されている。中央制御盤20と放水装置30とは、信号線を介してループ接続されている。同様に、現地制御盤25と放水装置30とは、信号線を介してループ接続されている。なお、図1では、火災検知器10、火災受信機15、現地制御盤25、及び放水装置30が夫々一つずつ示されているが、これらの装置が夫々複数設けられてもよい。
【0010】
火災検知器10は、監視領域に設置され、当該監視領域において発生する火災を検知する。火災検知器10の例としては、煙を検知する煙感知器が挙げられる。火災検知器10は、火災を検知すると火災信号を火災受信機15に送信する。火災受信機15は、火災検知器10から火災信号を受信すると、火災移報信号を中央制御盤20に送信する。なお、火災受信機15に発信機が接続されている場合、発信機の押し釦の押下に応じて火災受信機15から中央制御盤20に火災移報信号が送信されてもよい。中央制御盤20は、放水システム1に含まれる各装置を制御する。中央制御盤20は、火災受信機15から火災移報信号を受信すると、放水装置30を起動して火源位置を特定させる。
【0011】
放水システム1に複数の放水装置30が含まれている場合、中央制御盤20は、何れかの放水装置30から火源の位置情報を受信すると、複数の放水装置30のうちで火源に最も近い放水装置30を選択し、選択した放水装置30からの放水を現地制御盤25に指示する。現地制御盤25は、中央制御盤20からの指示に従って、火源に最も近い放水装置30から火源位置に向けて放水を行わせる。放水装置30は、中央制御盤20からの制御に従って火源位置を特定し、火源の位置情報を中央制御盤20に送信する。また、放水装置30は、現地制御盤25の制御の下、火源位置に向けて放水を行う。
【0012】
(A-1-1:放水装置の電気的な構成)
図2は、放水装置30の電気的な構成の一例を示す図である。放水装置30は、制御部31と、通信部32と、センサ部33と、放水ノズル34と、旋回駆動部35と、俯仰駆動部36と、試験部37と、を備える。放水装置30の各部は、バスにより接続されている。
【0013】
制御部31は、放水装置30の各部を制御する。図2では詳細な図示を省略したが、制御部31は、メモリ等の記憶部とプロセッサとにより構成される。記憶部は、例えばRAMとEEPROMとを含み、放水装置30の機能を実現するためのプログラムを記憶する。プロセッサは、例えば一又は複数のCPUを含み、記憶部に記憶されたプログラムを実行する。なお、制御部31の少なくとも一部は、センサ部33に含まれてもよい。
【0014】
本実施形態では、制御部31のプロセッサは、記憶部に記憶されたプログラムに従って作動することにより、火源探索処理及び炎検知処理を実行する。火源探索処理は、監視領域の赤外線画像において高温となる部分を熱源、即ち火源として特定する処理である。炎検知処理は、火源探索処理にて特定された火源が炎であるか否かを判定する処理である。
【0015】
通信部32は、中央制御盤20及び現地制御盤25と各種の信号の送受信、即ち、中央制御盤20及び現地制御盤25との通信を行う。
【0016】
センサ部33は、旋回方向及び俯仰方向の二つの軸方向に回動し、火源を探査して火源位置を確定するための動作を行う。旋回方向は左右方向ともいい、略水平方向である。一方、俯仰方向は上下方向ともいい、略鉛直方向である。旋回方向と俯仰方向とは、互いに直交する。センサ部33は、赤外線カメラ331と、赤外線センサ332とを有する。赤外光は、本開示における所定の波長帯域の光の一例であり、赤外線カメラ331及び赤外線センサ332は、所定の波長帯域の光を受光する火災検知用の複数のセンサの一例である。
【0017】
赤外線カメラ331は、旋回方向及び俯仰方向に回動しながら赤外線画像を撮像する。火源探索処理では、赤外線カメラ331により撮影された監視領域の赤外線画像に基づいて火源が特定される。
【0018】
赤外線センサ332は、例えば焦電素子332bを有し、炎から発せられる赤外光を感知することにより炎を検知する。赤外線センサ332は、二波長赤外線センサであってもよい。炎検知処理では、赤外線センサ332の出力に基づいて、火源探索処理にて特定された火源が炎であるか否かが判定される。
【0019】
放水ノズル34は、センサ部33により火源が確定されると、制御部31による制御の下、旋回方向に回動して火源の方向を向く。放水ノズル34は、制御部31による制御の下、現地制御盤25の制御に従って火源に向けて放水する。つまり、制御部31は、放水ノズル34の放水を制御する。
【0020】
旋回駆動部35は、制御部31による制御の下、センサ部33及び放水ノズル34を旋回軸AX1を中心に旋回方向に回動させる。旋回駆動部35は、例えばモータと、モータドライバと、エンコーダとを含む。モータは、モータドライバによる制御の下、センサ部33及び放水ノズル34を旋回方向に回動させる。つまり、本実施形態では、センサ部33と放水ノズル34とは共に旋回方向に回動する。モータドライバは、制御部31による制御の下、モータを制御する。エンコーダは、旋回角を検出する。制御部31は当該エンコーダにより検出された旋回角に応じてモータドライバを制御することにより、旋回駆動部35を制御する。
【0021】
俯仰駆動部36は、制御部31による制御の下、センサ部33を俯仰軸AX2を中心に俯仰方向に回動させる。つまり、本実施形態では、センサ部33は放水ノズル34とは独立して俯仰方向に回動する。俯仰駆動部36は、例えばモータと、モータドライバと、エンコーダとを含む。モータは、モータドライバによる制御の下、センサ部33を俯仰方向に回動させる。モータドライバは、制御部31による制御の下、モータを制御する。エンコーダは、俯仰角を検出する。制御部31は当該エンコーダにより検出された俯仰角に応じてモータドライバを制御することにより、俯仰駆動部36を制御する。
【0022】
試験部37は、赤外線カメラ331及び赤外線センサ332の各々の動作試験を行うための装置である。試験部37の詳細については後に明らかにする。
【0023】
(A-1-2:放水装置の構造)
図3は、放水装置30の外観の一例を示す図である。図3においてZ軸は鉛直方向の座標軸である。図3においてY軸及びX軸は、互いに直交し、且つ各々Z軸と直交する座標軸、即ち監視領域の底面と平行な座標軸である。本実施形態では、Y軸の方向は正面の方向と称される。図3は、放水装置30の正面図である。図4は、放水装置30を正面から見た透視図である。
【0024】
放水装置30の筐体内の空間は、図3に示されるように、鉛直方向に沿って収容空間SP3、収容空間SP2、及び収容空間SP1に区分けされる。収容空間SP1は、鉛直方向において収容空間SP2の上方に位置し、収容空間SP3は鉛直方向において収容空間SP2の下方に位置する。図4に示されるように、収容空間SP1には、旋回駆動部35が収容される。収容空間SP2には、センサ部33、放水ノズル34、及び試験部37が収容される。なお、図4では、収容空間SP3の図示は省略されている。また、図4では詳細な図示を省略したが、収容空間SP1には、制御部31及び通信部32も収容される。収容空間SP2には、俯仰駆動部36も収容される。
【0025】
放水装置30の筐体は、収容空間SP2を外部空間に連通させる開口部と、当該開口部を開閉する扉38を有する。扉38は、モータに励磁がかかっている間はきちんと閉じる。ただし、放水ノズル34が格納状態に移行した後にモータの励磁が切れると、放水システム1の設置先において地震が発生したり、ボール等が放水装置30にぶつかったりする等して外部からの衝撃が放水装置30に加わることにより、扉38が少し開く場合がある。
【0026】
(A-1-3:放水ノズルの構造)
放水ノズル34は、図4における旋回軸AX1を中心に、旋回方向D1に回動する。本実施形態における旋回方向D1は、Z軸に直交する平面(以下、XY面)内の回転方向である。図4に示されるように、放水ノズル34は筒状の部材である。図4では図示を省略したが、放水ノズル34の側面には、俯仰方向D2に並ぶ複数の噴出口が配置される。放水ノズル34の側面には俯仰方向D2に並ぶ複数の噴出口が設けられ、火災の発生が検知された場合には放水ノズル34を火源位置に向けてこれら複数の噴出口から放水が為される。このため、本実施形態では、俯仰方向D2に沿って帯状の放水が為され、放水ノズル34が俯仰方向D2に回動させなくても、俯仰方向D2の範囲にわたる放水ができる。なお、放水ノズル34は、必ずしも帯状の放水を行わなくてもよい。例えば監視領域をY方向(俯仰方向D2)に沿って放水装置30から近い近傍範囲と放水装置30から遠い遠方範囲とに分割し、放水ノズル34は近傍範囲と遠方範囲のうち火源位置を含む方に放水してもよい。近傍範囲と遠方範囲とは一部が重複してもよい。この構成であっても、放水ノズル34は俯仰方向D2の範囲にわたって放水し得る。
【0027】
(A-1-4:センサ部の構造)
センサ部33は、放水ノズル34とは別個に旋回軸AX1に配置される。放水ノズル34とセンサ部33とは、旋回方向D1に沿って離れて配置される。放水ノズル34からの放水による水しぶきがセンサ部33にかかり難くするためである。本実施形態では、筒状の放水ノズル34の軸方向とセンサ部33の正面の方向とが120度の角度を為すように配置されるが、放水ノズル34とセンサ部33とが為す角度は120度には限定されない。センサ部33は、後述する図5に示される俯仰軸AX2を中心に、図4に示される俯仰方向D2に回動する。
【0028】
図5は、センサ部33の正面図である。図5に示されるように、センサ部33は、赤外線カメラ331と、赤外線センサ332と、赤外線カメラ331及び赤外線センサ332を収容する筐体333とを備える。センサ部33の筐体333の内部における配線は、配線からの電磁波ノイズ対策のため、フェライトコアで覆われている。赤外線カメラ331と赤外線センサ332とを一つの筐体333に収容したのは、各々を別々の筐体に収容するとセンサ部33が重くなり、センサ部33の回転速度が遅くなるからである。筐体333は、センサ部33の正面を覆う蓋部を有するが、図5では、蓋部の図示は省略されている。
【0029】
図5に示されるように、赤外線カメラ331と赤外線センサ332とは、Z軸に沿って、即ち俯仰方向D2に沿って、並べて配置される。より具体的には、赤外線カメラ331はZ軸方向において俯仰軸AX2より上方に配置される。赤外線カメラ331をZ軸方向において俯仰軸AX2よりも上方に配置することにより、赤外線カメラ331を下方に向けたときでも、放水装置30の筐体が撮影範囲に入り難くなる。赤外線センサ332は、Z軸方向において俯仰軸AX2よりも下方、即ち赤外線カメラ331の下方に配置される。
【0030】
赤外線カメラ331の正面には、透過部331aが設けられる。赤外線カメラ331は、例えばCCDイメージセンサ等の撮像素子331bを備える。赤外線センサ332の正面には、透過部332aが設けられる。赤外線センサ332は、焦電素子332bを備える。透過部331a及び透過部332aは、夫々、光が入射する孔と当該孔を通過した光のうちの赤外光を透過させる光学フィルタとにより構成される。孔は、筐体333の蓋部に形成される。透過部331aは例えばシリコン窓であり、透過部332aは例えばサファイヤ窓である。赤外線カメラ331の透過部と赤外線センサ332の透過部とを共通にすると、当該透過部を大きくすることが必要になり、赤外線カメラ331と赤外線センサ332の各々適した波長帯を全て透過するようにしなくてはならないため、ノイズが多くなる。そのため、赤外線カメラ331の透過部331aと赤外線センサ332の透過部332aとは別々に設けられる。
【0031】
(A-1-5:試験部の構造)
図6は、試験部37の斜視図である。図6に示されるように、試験部37は、長方形状の基板371と、基板371上に設けられる発光部372a及び372bと、カバー373とを有する。図6に示されるように、基板371は、長辺がZ軸に沿うように配置される。カバー373は、基板371を覆う。カバー373には、基板371に設けられた発光部372a及び372bに対応する位置に円形の開口部373aが設けられる。カバー373は、発光部372a及び372bに埃がかぶらないように設けられる。また、カバー373は、水滴や霧状の水が基板371にかかるのを抑制する役割も担う。なお、水滴や霧状の水が基板371にかかるのを抑制するために、開口部373aにシリコン窓を設けてもよい。
【0032】
発光部372a及び372bは、制御部31による制御の下、赤外線カメラ331及び赤外線センサ332の各々の動作試験のための試験光を開口部373aを介して照射する。本実施形態における試験光は、赤外光である。発光部372a及び372bは、例えば麦球であり、制御部31による制御の下で電力を供給されるフィラメントにより表面のガラスが加熱されて赤外光を発する。以下では、発光部372a及び372bの各々を区別する必要がない場合には、発光部372a及び372bは発光部372と称される。
【0033】
本実施形態では、図6に示されるように、2個の発光部372は、旋回方向D1に沿って並んで配置される。旋回方向D1における2個の発光部372の間隔は、赤外線カメラ331の1画素×n+半画素である(nは1以上の整数)。例えば、図7に示す例では、旋回方向D1における2個の発光部372の間隔は、3.5画素である。旋回方向D1における2個の発光部372の間隔は、赤外線カメラ331の1画素×n+半画素とした理由は次の通りである。
【0034】
本実施形態における赤外線カメラ331の解像度は例えば80×80と粗く、画素の間には約1画素分のスペースがある。図7では、赤外線カメラ331の撮像素子331bのセンサ面における各画素が、ハッチングを付与した正方形で示されている。図7において白抜きの正方形は、画素間のスペースを表す。発光部372が画素間のスペースに入ると、温度が低く見える(画素欠け)。図7(2)は、図7(1)に示す状態から試験部37に対して赤外線カメラ331の位置が矢印D1Rの示す方向にずれた状態を表し、図7(3)は、図7(1)に示す状態から試験部37に対して赤外線カメラ331の位置が矢印D1Lの示す方向にずれた状態を表す。
【0035】
本実施形態では、旋回方向D1における2個の発光部372の間隔は、赤外線カメラ331の1画素×n+半画素とされているため、図7(1)~(3)に示されるように、一方の発光部372が画素と画素の間に入っても、他方の発光部372には画素が入る。このように、一方の発光部372が画素と画素の間に入っても、他方の発光部372には画素が入るようにするため、本実施形態では、旋回方向D1における2個の発光部372の間隔は、赤外線カメラ331の1画素×n+半画素とされている。なお、旋回方向D1について後述する俯仰方向D2と同様に、センサ部33を1/2画素ずつ旋回方向D1に回動させて赤外線画像を撮影することも考えられるが、旋回方向D1についてはセンサ部33が放水ノズル34とともに回動するため、1/2画素ずつ回動させるような微動は難しく、その分だけ時間もかかるので、本実施形態では、旋回方向D1に沿って2個の発光部372が並べて配置されている。
【0036】
また、本実施形態では、制御部31は、赤外線カメラ331の動作試験を行う場合と赤外線センサ332の動作試験を行う場合とで、発光部372の発光態様を異ならせる。具体的には、赤外線カメラ331の動作試験を行う場合、制御部31は、発光部372を点灯させる。赤外線カメラ331は温度を計測するためのセンサであり、赤外線カメラ331の動作試験中は、発光部372の温度をできるだけ高温にするためである。これに対して、赤外線センサ332の動作試験を行う場合、制御部31は、発光部372を点滅させる。焦電素子は、ちらつきがないと出力がでないためである。本実施形態では、俯仰角が0度であるときに、赤外線センサ332が発光部372の正面を向く位置となるようにセンサ部33及び試験部37が配置されている。
【0037】
赤外線カメラ331の動作試験は以下の要領で行われる。赤外線カメラ331の動作試験では、制御部31は、まず、図8(1)に示されるように、赤外線センサ332が発光部372の正面を向く位置(俯仰角が0度の位置)にセンサ部33を移動させる。本実施形態において俯仰角が0度であるときに、赤外線センサ332が発光部372の正面を向く位置となるようにセンサ部33及び試験部37を配置したのは、赤外線センサ332と発光部372との間の距離を短くするためである。俯仰角が0度のときに赤外線カメラ331が発光部372の正面を向く位置となるように、センサ部33及び試験部37を配置すると、赤外線センサ332を発光部372に向けたときの両者の間の距離が本実施形態よりも長くなり、赤外線センサ332の動作試験の際に、赤外線センサ332の出力が低くなるからである。
【0038】
続いて、制御部31は、センサ部33を俯仰方向D2に回動させることにより、図8(2)に示されるように、俯仰角がθ1となる位置にセンサ部33を移動させる。そして、制御部31は、俯仰角θ1からθ3の角度範囲で1/2画素に対応する角度ずつ俯仰方向D2にセンサ部33を回動させる。図8(3)は、俯仰角がθ2の状態を表し、図8(4)は、俯仰角がθ3の状態を表す。ここで、θ2は発光部372が画像の中心に位置する俯仰角であり、例えば22.9度である。θ1はθ2-(1画素の角度)×規定画素数であり、例えば22.9度-3度である。θ3はθ2+(1画素の角度)×規定画素数であり、例えば22.9度+3度である。なお、本実施形態では、1画素の角度は例えば1度であり、1/2画素の角度は例えば0.5度である。また、本実施形態では、規定画素数は例えば3である。
【0039】
制御部31は、1/2画素に対応する角度毎に発光部372の赤外線画像を赤外線カメラ331に撮影させる。本実施形態では、22.9度-3度~22.9度+3度の角度範囲、即ち6度の幅の角度範囲において0.5度毎に赤外線画像が撮像されるため、合計12枚の赤外線画像が撮像される。上記角度範囲において撮像される赤外線画像が1枚だけであると、発光部372が画素と画素との間に入ってしまう可能性があるが、1/2画素に対応する角度ずつ俯仰方向D2にセンサ部33を回動させながら撮影することにより、図9に示されるように、少なくとも一枚の赤外線画像では、画素欠けのない画像となる。また、赤外線カメラ331では透過部331aに広角レンズが使用されており、歪みの影響は端になるほど大きくなる。1/2画素に対応する角度毎に発光部372の赤外線画像を赤外線カメラ331に撮影させるのは、できるだけ歪みの少ない画像の中心に発光部372が写るようにするためである。さらに、上述した6度の幅の角度範囲において1/2画素に対応する角度ずつ俯仰方向D2にセンサ部33を回動させながら撮影することにより、欠陥画素を回避することができる。欠陥画素は正常な値を出力しない画素であり、例えば欠陥画素については輝度が0として出力される。赤外線カメラ331の撮像素子331bには欠陥画素が含まれるが、欠陥画素が連なる画素数は仕様で定められている。欠陥画素が連なる最大の画素数が5画素である場合、6度の幅の角度範囲において1/2画素に対応する角度ずつ俯仰方向D2にセンサ部33を回動させながら撮影することにより、試験光源を連続する6つの画素で撮影することができるため、少なくとも二枚の赤外線画像では、欠陥画素ではない正常な画素の画像となる。このように、欠陥画素が連続する最大サイズ+1画素の角度範囲において、1/2画素に対応する角度ずつ俯仰方向D2にセンサ部33を回動させながら撮影することにより、欠陥画素と画素欠けの両方を回避することができる。
【0040】
(A-2:放水システムの動作)
(A-2-1:火災発生時の動作)
図10は、放水装置30の動作の一例を示す図である。中央制御盤20は、火災受信機15から火災移報信号を受信すると、放水装置30に起動信号を送信する。中央制御盤20から起動信号を受信すると、制御部31はセンサ部33を用いて火源の探査を開始する(スキャン開始)。
【0041】
火源の探査が開始されると、まず制御部31は旋回駆動部35によりセンサ部33を例えば60度等の所定角度ずつ旋回方向D1に回動させる。このとき、センサ部33の俯仰角は、監視領域の底面全体を撮影し得る角度に固定される。センサ部33に含まれる赤外線カメラ331は、所定角度毎に監視領域の赤外線画像を撮影する。制御部31は、赤外線画像において高温となる部分をおおよその火源位置として特定する(プレスキャン)。
【0042】
所定の角度が60度である場合、センサ部33は、制御部31の制御に従って、まず、図10に示される監視領域の範囲R1の赤外線画像を赤外線カメラ331を用いて撮影する。続いて、旋回駆動部35は、制御部31の制御に従って、センサ部33を旋回方向D1に所定の角度だけ回動させる。センサ部33は、制御部31の制御に従って、監視領域の範囲R2の赤外線画像を赤外線カメラ331を用いて撮影する。続いて、旋回駆動部35は、制御部31の制御に従って、センサ部33を旋回方向D1に所定の角度だけ回動させる。センサ部33は、制御部31の制御に従って、監視領域の範囲R3の赤外線画像を赤外線カメラ331を用いて撮影する。制御部31は、赤外線カメラ331により撮影された監視領域の範囲R1~R3の赤外線画像を解析する。図10に示される例では、範囲R2に火源が含まれるため、範囲R2の赤外線画像には高温の部分が含まれる。そのため、制御部31は、範囲R2の赤外線画像において高温の部分をおおよその熱源位置として特定する。
【0043】
プレスキャンが完了すると、制御部31は俯仰駆動部36によりセンサ部33を俯仰方向D2に回動させ、赤外線カメラ331を用いて俯仰方向D2における熱源位置を特定する(俯仰角詳細スキャン)。
【0044】
具体的には、俯仰角詳細スキャンでは、俯仰駆動部36は、制御部31の制御に従って、センサ部33が熱源位置の近傍を向く俯仰角の範囲において、センサ部33を俯仰方向D2に所定角度ずつ回動させる。この所定角度は、プレスキャンで用いられる所定角度より小さい。このとき、センサ部33の旋回角は、制御部31の制御に従って、熱源位置周辺の方向を向く角度に固定される。赤外線カメラ331は、俯仰方向D2に回動し、制御部31の制御に従って所定角度毎に赤外線画像を撮影する。制御部31は、赤外線カメラ331により撮影された赤外線画像を解析し、その赤外線画像の解析結果から俯仰方向D2における熱源位置を特定する。この俯仰角詳細スキャンで特定される俯仰方向D2における熱源位置は、上述したプレスキャンにより特定される熱源位置よりも精度が高い。
【0045】
続いて、制御部31は旋回駆動部35によりセンサ部33を旋回方向D1に回動させ、赤外線カメラ331を用いて旋回方向D1におけるより詳細な熱源位置を特定する(旋回角詳細スキャン)。
【0046】
具体的には、旋回角詳細スキャンでは、旋回駆動部35は、制御部31の制御に従って、センサ部33が熱源位置の近傍を向く旋回角の範囲において、センサ部33を旋回方向D1に所定角度ずつ回動させる。この所定角度は、プレスキャンで用いられる所定角度より小さい。つまり、旋回角詳細スキャンでは、上述したプレスキャンによりも熱源位置が細かく探査される。このとき、センサ部33の俯仰角は、俯仰角詳細スキャンにおいて特定された熱源位置の方向を向く角度に固定される。赤外線カメラ331は、旋回方向D1に回動し、制御部31の制御に従って所定角度毎に赤外線画像を撮影する。制御部31は、赤外線カメラ331により撮影された赤外線画像を解析し、その赤外線画像の解析結果から旋回方向D1における熱源位置を特定する。この旋回角詳細スキャンで特定される旋回方向D1における熱源位置は、上述したプレスキャンにより特定される熱源位置よりも精度が高い。
【0047】
俯仰角詳細スキャン及び旋回角詳細スキャンが完了すると、制御部31は、赤外線センサ332の正面が俯仰角詳細スキャン及び旋回角詳細スキャンにおいて特定された熱源位置の方向を向くように、旋回駆動部35及び俯仰駆動部36によりセンサ部33を旋回方向D1及び俯仰方向D2に回動させる(赤外線センサの向きを調整)。赤外線センサ332の正面が俯仰方向D2において火源位置の方向に向くとは、赤外線センサ332のセンサ面の中心と火源位置とを通る直線が当該センサ面の直交する状態にするこという。赤外線センサ332は、正面の熱源位置から炎の検知を行う。
【0048】
次いで、制御部31は、赤外線センサ332による検知結果に応じて、炎の有無を判定する(炎有無判定)。制御部31により炎が有ると判定されると、通信部32は、火源の位置情報を中央制御盤20に送信する(位置情報送信)。この位置情報としては、俯仰角詳細スキャン及び旋回角詳細スキャンにおいて特定された熱源位置の旋回角及び俯仰角が用いられる。
【0049】
中央制御盤20は、位置情報に基づいて火源位置に最も近い放水装置30を選択し、その放水装置30から火源位置に向けた放水を指示する放水信号を当該放水装置30を介して現地制御盤25に送信する。当該放水信号を中継した放水装置30の制御部31は、旋回駆動部35により、火源位置の方向を向くように放水ノズル34を、旋回方向D1に回動させる。現地制御盤25は、選択された放水装置30の放水ノズル34の弁を制御し、火源位置に向けて放水を開始させる。
【0050】
(A-2-2:セルフチェック時の動作)
次いで、放水装置30のセルフチェックについて図11を参照しつつ説明する。図11は、放水装置30のセルフチェックにおける処理の流れを示すフローチャートである。放水装置30のセルフチェックは、例えば現地制御盤25から動作試験指示を受信したことを契機に開始される。このセルフチェックには、赤外線カメラ331の動作試験及び赤外線センサ332の動作試験が含まれる。
【0051】
放水装置30のセルフチェックでは、放水装置30の制御部31は、まず、扉駆動部(図示せず)により放水装置30の筐体に設けられている扉38を一旦少し開き、その後、きちんと閉じる(筐体の扉を開閉)。前述したように、扉38は通常閉じられているが、外部からの衝撃によって少し開く場合あり、扉38がきちんと閉じていない状態でセルフチェックを継続すると、外光等がセンサ部33に入射することにより、正常に出力低下が検出できない、もしくは赤外線センサ332と発光部372が旋回方向D1に所定の角度を持つため、赤外線センサ332の出力が低下して試験が失敗する場合がある。このため、放水装置30の制御部31は、まず、放水装置30の筐体に設けられている扉38を一旦少し開き、その後、きちんと閉じる。
【0052】
制御部31は、扉38が一旦開き、その後、閉じられたことを契機として、動作試験の初期位置にセンサ部33を移動させる(初期位置に移動)。具体的には、制御部31は、センサ部33の俯仰角を0度とし、且つ赤外線センサ332が発光部372の正面を向く位置にセンサ部33を旋回方向D1に移動させる。そして、制御部31は、赤外線カメラ331が正常に温度を検出できるか否かを判定する試験を行う(赤外線カメラの動作試験)。赤外線カメラ331の動作試験の具体的な内容については、後に明らかにする。
【0053】
赤外線カメラ331の動作試験が終了すると、制御部31は、センサ部33を、再度、初期位置に移動させ(初期位置に移動)、赤外線センサ332が正常に赤外線を検出できるか否かを判定する試験を行う(赤外線センサの動作試験)。赤外線センサ332の動作試験の具体的な内容については、後に明らかにする。赤外線センサ332の動作試験が終了すると、制御部31は、試験部37と対向する位置にセンサ部33を旋回方向D1に移動させ、且つその位置においてセンサ部33を真下に向けて(待機状態へ移行)、セルフチェックを終了する。待機状態とは、試験部37とセンサ部33とが対向し、且つセンサ部33を真下に向けた状態をいう。待機状態に移行してセルフチェックを終了するのは、センサ部33のセンサ面を汚れから保護するためである。
以上がセルフチェックにおける処理の流れである。
【0054】
(A-2-3:赤外線カメラの動作試験時の動作)
次いで、赤外線カメラ331の動作試験における処理の流れを説明する。図12は、赤外線カメラ331の動作試験における処理の流れを示すフローチャートである。赤外線カメラ331の動作試験では、制御部31は、まず、初期位置に位置しているセンサ部33を俯仰方向D2に回動させ、俯仰角がθ1となる位置にセンサ部33を移動させる(俯仰角がθ1となる位置に移動)。
【0055】
次いで、制御部31は、消灯状態の赤外線画像を赤外線カメラ331に撮影させる(消灯状態の赤外線画像を撮影)。消灯状態の赤外線画像の撮影では、制御部31は、発光部372を点灯させる前に、センサ部33を俯仰角θ1からθ3の角度範囲で1/2画素に対応する角度ずつ俯仰方向D2に回動させ、各角度において消灯状態の発光部372の赤外線画像を赤外線カメラ331に撮影させる。消灯状態の赤外線画像の撮影では、合計12枚の赤外線画像が撮影され、これら12枚の赤外線画像は、参照画像として、記憶部(図2では図示略)に記憶される。参照画像は本開示における第1赤外線画像の一例である。
【0056】
消灯状態の赤外線画像の撮影が終了すると、制御部31は、発光部372を点灯させる(発光部を点灯)。そして、制御部31は、安定時間が経過するまで待機する(安定時間待機)。安定時間は、発光部372の温度が発光により安定するまでに要する時間であり、例えば5分である。
【0057】
発光部372の点灯から安定時間が経過すると、制御部31は、センサ部33を俯仰方向D2に回動させ、俯仰角がθ1となる位置にセンサ部33を移動させ(俯仰角がθ1となる位置に移動)、点灯状態の赤外線画像を赤外線カメラ331に撮影させる(点灯状態の赤外線画像を撮影)。点灯状態の赤外線画像の撮影では、制御部31は、発光部372を点灯させた状態で、センサ部33を俯仰角θ1からθ3の角度範囲で1/2画素に対応する角度ずつ俯仰方向D2に回動させ、各角度において点灯状態の発光部372の赤外線画像を赤外線カメラ331に撮影させる。点灯状態の赤外線画像の撮影では、合計12枚の赤外線画像が撮影され、これら12枚の赤外線画像は記憶部(図2では図示略)に記憶される。点灯状態の赤外線画像は本開示における第2赤外線画像の一例である。
【0058】
点灯状態の赤外線画像の撮影が終了すると、制御部31は、赤外線画像と参照画像とを用いて、赤外線カメラ331が正常に温度の検出ができる状態であるか否かを判定する(赤外線カメラの状態を判定)。具体的には、制御部31は、点灯状態を撮影した12枚の赤外線画像から最大画素値と、最大画素値の俯仰角度及び画素番号を取得する。画素番号とは、例えば赤外線画像の左上隅を原点とする二次元座標における、最大画素値の画素の座標を示す情報である。
【0059】
次いで、制御部31は、俯仰角度が同じ参照画像から、画素番号が同じ画素の画素値を取得する。制御部31は、赤外線画像における最大画素値と、対応する参照画像の画素値から発光部372の点灯時と消灯時との赤外線カメラ331の出力値の差を算出する。出力値の差は、例えば赤外線画像における最大画素値と、対応する参照画像の画素値とを温度に換算し、プランクの法則によりそれらの温度に応じた赤外線エネルギー量を算出し、それらの赤外線エネルギー量の差を求めることにより得られる。赤外線カメラ331の窓材の汚損の影響が顕著に現れるのは赤外線エネルギー量であるため、赤外線エネルギー量の差を用いることにより、赤外線カメラ331の窓材の汚損をより正確に把握することができる。ただし、出力値の差は赤外線エネルギー量の差に限定されず、画素値の輝度差でもよいし、画素値を温度に換算した温度の差でもよい。当該差が所定値以上である場合に、制御部31は、赤外線カメラ331は正常に温度の検出ができる状態であると判定する。当該差が所定値未満である場合、制御部31は、赤外線カメラ331は正常に温度の検出ができない状態であると判定する。この正常に温度の検出ができない状態には、例えば赤外線カメラ331の故障及び赤外線カメラ331の窓材の汚損が含まれる。出力値の差を用いるのは、例えば環境温度が-15の場合には、点灯しても5度~10度しか温度が変わらない場合があるため、環境温度の影響をオフセットするためである。なお、赤外線カメラ331についての動作試験の結果、即ち出力値の差と所定の閾値との比較結果については、現地制御盤25又は中央制御盤20に送信されてもよく、現地制御盤25又は中央制御盤20において当該比較結果に応じた報知(例えば試験結果の表示等)が行われてもよい。
以上が赤外線カメラ331の動作試験における処理の流れである。
【0060】
(A-2-4:赤外線センサの動作試験時の動作)
次いで、赤外線センサ332の動作試験における処理の流れを説明する。図13は、赤外線センサ332の動作試験における処理の流れを示すフローチャートである。赤外線センサ332の動作試験では、制御部31は、まず、赤外線センサ332が発光部372の正面に位置するように、センサ部33を俯仰方向D2に回動させ、発光部372を点滅させる(発光部を点滅)。本実施形態では、赤外線カメラ331の動作試験が終了すると、赤外線センサ332が発光部372の正面に位置するようにセンサ部33を俯仰方向D2に回動させるので、赤外線カメラ331の動作試験に後続する赤外線センサ332の動作試験の精度を高めることができる。
【0061】
制御部31は、発光部372の点滅を開始させた時点を起算点として、前述の安定時間が経過するまで待機する(安定時間待機)。発光部372の点滅から安定時間が経過すると、制御部31は、赤外線センサ332の出力を測定する(赤外線センサの出力を測定)。具体的には、制御部31は、解析区間として定められた時間内に属する全ての出力に対し、振幅を1波毎に算出する。そして、制御部31は、赤外線センサ332の出力の測定値に基づいて、赤外線センサ332が正常に赤外線の検出ができる状態である動作しているか否かを判定する(赤外線センサの状態を判定)。具体的には、閾値を超える振幅を有する波の数が所定値以上である場合には、赤外線センサ332は正常に赤外線の検出ができる状態であると判定する。逆に、閾値を超える振幅を有する波の数が所定値未満である場合には、制御部31は、赤外線センサ332は正常に赤外線の検出ができない状態であると判定する。この正常に赤外線の検出ができない状態には、例えば赤外線センサ332の故障及び赤外線センサ332の窓材の汚損が含まれる。なお、赤外線センサ332についての動作試験の結果、即ち判定結果は、現地制御盤25又は中央制御盤20に送信されてもよく、現地制御盤25又は中央制御盤20において当該判定結果に応じた報知(例えば試験結果の表示等)が行われてもよい。
以上が赤外線センサ332の動作試験における処理の流れである。
【0062】
以上説明したように本実施形態の放水装置30では、一つの試験部37により、赤外線カメラ331の動作試験と赤外線センサ332の動作試験とを行うことができる。本実施形態の放水装置30によれば、一つの試験部37により複数のセンサの動作試験を行うことができるため、複数の試験部により複数のセンサの動作試験を行う場合に比して、試験部の数を減らすことができる。その結果、試験部の製造コスト及び設置面積を削減することができる。
【0063】
(B:変形例)
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形され得る。また、以下の変形例は組み合わされてもよい。
(1)必ずしも赤外線カメラ331の動作試験の後に、赤外線センサ332の動作試験が行われなくてもよい。赤外線センサ332の動作試験が先に行われ、赤外線カメラ331の動作試験が後に行われてもよい。このとき、消灯状態の赤外線画像の撮影までは、赤外線センサ332の動作試験の前に行われてもよい。
【0064】
(2)発光部372は必ずしも2個でなくてもよく、1個、又は3個以上であってもよい。
【0065】
(3)赤外線カメラに代えて可視光カメラが用いられてもよい。また、焦電素子に代えて、フォトダイオードが用いられてもよい。また、センサ部33に設けられる火災検知用のセンサの数は2個には限定されず、3個以上の火災検知用のセンサが用いられてもよい。
【0066】
(4)火源探査用センサと炎検知用のセンサとは必ずしも1つの筐体に収容されなくてもよい。火源探査用センサと炎検知用のセンサとは、夫々別々の筐体に収容され、夫々旋回軸AX1に固定されてもよい。
【0067】
(5)放水ノズル34は本開示の必須構成要素ではなく、本開示は放水機能を有さない火災検知システムに適用されてもよい。要は、火災検知用の複数のセンサを備える火災検知システムであれば、本開示の適用が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1:放水システム、10:火災検知器、15:火災受信機、20:中央制御盤、25:現地制御盤、30:放水装置、31:制御部、32:通信部、33:センサ部、34:放水ノズル、35:旋回駆動部、36:俯仰駆動部、37…試験部、331:赤外線カメラ、332:赤外線センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13