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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166896
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
B60H1/00 102P
B60H1/00 102H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083311
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 均
(72)【発明者】
【氏名】久保田 悠斗
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA06
3L211BA51
3L211DA10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ケースを大型化させることなく、車室内の空間に向けて空気を吹き出す複数の吹出口のうち、所望の吹出口からの吹出温度を個別に制御する。
【解決手段】ケース内部に導入された空気を温調して車室内の複数の空間に供給する車両用空調装置であって、ケース内部に複数の空間に供給する空気の温度調整を夫々独立して行う複数の温度調整部と、温度調整部毎に設けられ、温調された空気を所定の方向に吹き出す第1吹出口及び第2吹出口と、第1吹出口を複数の吹出領域に仕切ると共に、一方側の吹出領域から吹き出す空気を流通させる一方側流通路及び他方側の吹出領域から吹き出す空気を流通させる他方側流通路を形成する仕切部と、を備え、一方側流通路は、温度調整部に連通すると共に、ケースの内部の他の流通路と連通し、他方側流通路は、温度調整部に連通し、一方側流通路と他方側流通路は、互いに異なる温度の空気を流通可能である車両用空調装置。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースの内部に導入された空気を温調して車室内の複数の空間に供給する車両用空調装置であって、
前記ケースの内部に複数の前記空間に対応して設けられ、前記空間に供給する空気の温度調整を夫々独立して行う複数の温度調整部と、
前記温度調整部毎に設けられ、前記温度調整部に連通し、温調された空気を前記温度調整部に対応する前記空間の所定の方向に吹き出す第1吹出口と、前記第1吹出口と異なる方向に吹き出す第2吹出口と、
前記第1吹出口を複数の吹出領域に仕切ると共に、一方側の吹出領域から吹き出す空気を流通させる一方側流通路及び他方側の吹出領域から吹き出す空気を流通させる他方側流通路を形成する仕切部と、を備え、
前記一方側流通路は、前記温度調整部に連通すると共に、前記ケースの内部に設けられた他の流通路と連通し、
前記他方側流通路は、前記温度調整部に連通し、
前記一方側流通路と前記他方側流通路は、互いに異なる温度の空気を流通可能である、車両用空調装置。
【請求項2】
前記温度調整部は、高温の空気と低温の空気とを混合させる混合空間と、前記混合空間に流入する高温の空気と低温の空気との割合を調整する第1ダンパと、を有し、
前記他の流通路は、低温の空気が流通する冷風通路である、請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記一方側流通路の上流側端部に、第2ダンパが設けられ、
前記第2ダンパは、前記温度調整部で温調された空気及び前記他の流通路を通過した空気が前記一方側流通路に流入する割合を調整する、請求項1又は請求項2記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記第1吹出口には、前記第1吹出口から吹き出される空気を前記車室内に導くダクトを接続可能であり、
前記第1吹出口の一方側の前記吹出領域から吹き出した空気と、他方側の前記吹出領域から吹き出した空気とが、前記ダクト内で混合されて温度調整される、請求項1又は請求項2記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記ケース内部に、
前記温度調整部の上流側に配置され、空気を冷却する冷却器と、
前記温度調整部の上流側かつ前記冷却器の下流側に配置され、空気を加熱する加熱器と、を備え、
前記他の空気通路は、前記冷却器の下流側に、前記加熱器を迂回して前記一方側流通路と連通するように形成されている、請求項1又は請求項2記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に適用される車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車室内の複数の空間に供給する空気の吹出温度を、供給先の空間毎に独立して制御することができる車両用空調装置が提案されている。
【0003】
このような車両用空調装置の一例として、特許文献1には、車室内の運転席側及び助手席側への吹出温度を個別に設定し、制御することができる空調装置が開示されている。この空調装置では、個別に動作する2つのエアミックスドア(温度調節手段)と、各エアミックスドアの開度を調整することで流入した高温の空気と低温の空気とを混合する混合空間としての運転席側ダクト及び助手席側ダクトがケース内にそれぞれ設けられている。
【0004】
これにより、一方のエアミックスドアの開閉制御によって運転席側ダクトにおいて高温の空気と低温の空気とを混合して運転席側に導く空気の温度を調節し、他方のエアミックスドアの開閉制御により助手席側ダクトにおいて高温の空気と低温の空気とを混合して助手席側に導く空気の温度を調節している。
【0005】
そして、運転席側ダクトにおいて温度調節された空気は、運転席側ダクトの下流端に設けられたフェイスダクト、フットダクト、及び、デフロスタダクトの各吹出口から運転席側に吹き出される。同様に、助手席側ダクトにおいて温度調節された空気は、助手席側ダクトの下流端に設けられたフェイスダクト及びフットダクトの各吹出口から助手席側に吹き出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3480074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、車両用空調装置では、車室内に供給される空気を、供給先の空間に対応してケース内に設けられた温度調節手段及び混合空間によってそれぞれ温度調整し、温調された空気を、各混合空間に連通する複数の吹出口から供給先の空間に吹き出している。
したがって、各混合空間に連通する複数の吹出口における吹出温度は概ね同じ温度となり、所望の吹出口の吹出温度を個別に制御することができない。所望の吹出口の吹出温度を個別に制御する場合には、当該吹出口から吹き出す空気の温度調整を行うために十分な大きさの温度調節手段や混合空間をケース内に設ける必要があり、ケースが大型化してしまうという問題がある。
一方、車両用空調装置は、車室内空間の確保などの理由から、車両における搭載空間に制限があり、小型化、省スペース化が求められている。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ケースを大型化させることなく、車室内の空間に向けて空気を吹き出す複数の吹出口のうち、所望の吹出口からの吹出温度を個別に制御すること、などが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態は、ケースの内部に導入された空気を温調して車室内の複数の空間に供給する車両用空調装置であって、前記ケースの内部に複数の前記空間に対応して設けられ、前記空間に供給する空気の温度調整を夫々独立して行う複数の温度調整部と、前記温度調整部毎に設けられ、前記温度調整部に連通し、温調された空気を前記温度調整部に対応する前記空間の所定の方向に吹き出す第1吹出口と、前記第1吹出口と異なる方向に吹き出す第2吹出口と、前記第1吹出口を複数の吹出領域に仕切ると共に、一方側の吹出領域から吹き出す空気を流通させる一方側流通路及び他方側の吹出領域から吹き出す空気を流通させる他方側流通路を形成する仕切部と、を備え、前記一方側流通路は、前記温度調整部に連通すると共に、前記ケースの内部に設けられた他の流通路と連通し、前記他方側流通路は、前記温度調整部に連通し、前記一方側流通路と前記他方側流通路は、互いに異なる温度の空気を流通可能である、車両用空調装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ケースを大型化させることなく、車室内の空間に向けて空気を吹き出す複数の吹出口のうち、所望の吹出口からの吹出温度を個別に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の外観の概略構成を示す斜視図である。
図2図1のA-A断面図である。
図3図1のB-B断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る車両用空調装置のフット吹出口にダクトを接続した状態を示す斜視図である。
図5図1のB-B断面図であって、本発明の実施形態に係る車両用空調装置における冷房モード運転時の空気の流れを示す参考図である。
図6図1のB-B断面図であって、本発明の実施形態に係る車両用空調装置における冷房モード(除湿冷房モード)運転時の空気の流れを示す参考図である。
図7図1のB-B断面図であって、本発明の実施形態に係る車両用空調装置における冷房モード運転時の空気の流れを示す参考図である。
図8図1のB-B断面図であって、本発明の実施形態に係る車両用空調装置における暖房モード運転時の空気の流れを示す参考図である。
図9図1のB-B断面図であって、本発明の実施形態に係る車両用空調装置における暖房モード(除湿暖房モード)運転時の空気の流れを示す参考図である。
図10図1のB-B断面図であって、本発明の実施形態に係る車両用空調装置における暖房モード運転時の空気の流れを示す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明において、同一の符号は同一の機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0013】
図1は本発明の実施形態に係る車両用空調装置1の外観を示す全体斜視図、図2図1のA-A断面図、図3図1のB-B断面図である。各図において、X方向は車両の前後方向、Y方向は車両の左右方向(幅方向)、すなわち、X-Y方向が水平方向を示し、Z方向が鉛直方向を示している。また、以下の説明における「上流側」及び「下流側」なる記載は、車両用空調装置1における空気の流通方向の上流側及び下流側を示している。
【0014】
図1から図3に示すように、車両用空調装置1は、ブロワユニット2、及び、ブロワユニット2と接続される熱交換器ユニット3を備えている。車両用空調装置1は、車両の前方のフロントパネルにおいて、ブロワユニット2が車両の前方側に、熱交換器ユニット3が車両の後方側に位置するように搭載される。車両用空調装置1は、車室内の複数の空間、例えば、運転席側と助手席側の2つの空間に供給する空気を、個別に設定し、設定された内容に従って独立して温度調整することができる。
【0015】
ブロワユニット2は、ブロワ及びインテーク部品が一体的に配備され、車両の内気(内気モード)又は外気を取り込み(外気モード)、取り込んだ空気を熱交換器ユニット3に供給する。より具体的には、ブロワユニット2は、ブロワケース21、ブロワケース21内に設けられたブロワ、ブロワを駆動するブロワモータ、インテークダンパ、インテークダンパを駆動するインテークアクチュエータ、内気フィルタ、及び、内気モード又は外気モードを切り替えるレバー等の切替機構(いずれも図示せず)を有している。
【0016】
ブロワケース21には、周方向に複数のブレードを有するブロワが収容される。ブロワケース21において、2つのブロワは、車両用空調装置1が車両に設置されたときに、2つのブロワの回転軸が略一直線上に位置するように、車両の幅方向(図中Y方向)に並んで配置されている。ブロワユニット2内に取り込まれた空気は、ブロワの回転により熱交換器ユニット3に供給される。
【0017】
熱交換器ユニット3は、熱交換器ケース31と、熱交換器ケース31に収容される冷却器としてのエバポレータ32及び加熱器としてのヒータコア33を有している。
熱交換器ケース31は、第1ケース31A、第2ケース31B、及び、第1ケース31Aと第2ケース31Bとの間に設けられる隔壁35を備えている。熱交換器ケース31では、第1ケース31Aと第2ケース31Bとを結合させることで、エバポレータ32及びヒータコア33の収容空間、車室内へ供給する空気を温調する空間、空気を流通させる流通路、温調された空気を熱交換器ケース31の外部に気吹き出す複数の吹出口が形成される。
【0018】
ここで、第1ケース31Aと第2ケース31Bとの結合に際して、第1ケース31Aと第2ケース31Bと間に隔壁35を挟んで結合させることで、熱交換器ケース31の内部には、空気を温調する空間として、独立した2つの空間が形成される。
すなわち、第1ケース31Aと第2ケース31Bとを隔壁35を挟んで結合させることで、車室内において仮想的に区分けされた運転席側と助手席側の2つの空間に対応し、各空間に供給する空気の温度調整を行う第1温度調整部34Aと第2温度調整部34Bとが形成される。第1温度調整部34Aと第2温度調整部34Bとの間は、隔壁35によって相互の空気の流通が行われず、第1温度調整部34A及び第2温度調整部34Bは導入された空気を互いに独立して温度調整可能となっている。
【0019】
また、第1ケース31Aと第2ケース31Bとを隔壁35を挟んで結合させることで、第1温度調整部34Aに連通する空気の流通路と複数の吹出口、第2温度調整部34Bに連通する空気の流通路と複数の吹出口が形成される。
第1ケース31Aと第2ケース31Bとの結合により、第1温度調整部34Aに連通する吹出口として、第1温度調整部34Aにおいて温調された空気を主として運転席側のフロントガラスに向けて吹き出すデフロスタ吹出口(第2吹出口)41A,42Aと、運転席側の乗員の上半身に向けて吹き出すフェイス吹出口(第2吹出口)43Aと、運転席側の乗員の足元に向けて吹き出すフット吹出口(第1吹出口)45Aが形成される。
【0020】
同様に、第1ケース31Aと第2ケース31Bとの結合により、第2温度調整部34Bに連通する吹出口として、第2温度調整部34Bにおいて温調された空気を主として助手席側のフロントガラスに向けて吹き出すデフロスタ吹出口(第2吹出口)41B,42B、助手席側の乗員の上半身に向けて吹き出すフェイス吹出口(第2吹出口)43B、及び、助手席側の乗員の足元に向けて吹き出すフット吹出口(第1吹出口)45Bが形成される。
【0021】
以下、熱交換器ケース31の内部構造について説明する。
図2に示すように、第1温度調整部34A及び第2温度調整部34Bは、熱交換器ケース31の内部において、車両用空調装置1が車両に設置されたときに、車両の幅方向(図中Y方向)に並ぶように配置される。
【0022】
熱交換器ケース31の内部において、第1温度調整部34A及び第2温度調整部34Bの上流側にエバポレータ32が配置され、第1温度調整部34A及び第2温度調整部34Bの上流側、かつ、エバポレータ32の下流側にヒータコア33が配置される。エバポレータ32及びヒータコア33は、熱交換器ケース31において、車両幅方向の一端側から他端側に亘り、第1温度調整部34A及び第2温度調整部34Bの双方に跨るように設けられている。
【0023】
第1温度調整部34Aは、エバポレータ32によって冷却された低温の空気と、ヒータコア33によって加熱された高温の空気とを混合させる第1混合空間341Aと第1混合空間341Aに導入する低温の空気と高温の空気との割合を調整する第1エアミックスダンパ342Aを備えている。第1エアミックスダンパ342Aは、図中Y方向において第1ケース31Aの側面から隔壁35までと略同等の長さを有する板材であり、図中X方向において断面が円弧状になるようにY方向に沿って湾曲し、Y方向に沿う軸線を中心として回転可能に第1ケース31Aの側面と隔壁35とに挟持されている。第1エアミックスダンパ342Aの回転角度を制御することで、第1混合空間341Aに流入する低温の空気と高温の空気との割合を調整する。
【0024】
同様に、第2温度調整部34Bは、エバポレータ32によって冷却された低温の空気とヒータコア33によって加熱された高温の空気とを混合させる第2混合空間341Bと、第2混合空間341Bに導入する低温の空気と高温の空気との割合を調整する第2エアミックスダンパ342Bを備えている。第2エアミックスダンパ342Bは、図中Y方向において第2ケース31Bの側面から隔壁35までと略同等の長さを有する板材であり、図中X方向の断面が円弧状になるようにY方向に沿って湾曲し、Y方向に沿う軸線を中心として回転可能に第2ケース31Bの側面と隔壁35とに挟持されている。第2エアミックスダンパ342Bの回転角度を制御することで、第2混合空間341Bに流入する低温の空気と高温の空気との割合を調整する。
【0025】
第1混合空間341A及び第2混合空間341Bには、第1エアミックスダンパ342A及び第2エアミックスダンパ342Bの回転角度を制御することで、低温の空気と高温の空気を所望の割合で流入させることができる他、低温の空気のみ又は高温の空気のみを流入させることもできる。
【0026】
以下、より具体的に、第1温度調整部34A又は第2温度調整部34Bとエバポレータ32及びヒータコア33の位置関係と、空気の流れについて図3を用いて説明する。なお、第1温度調整部34Aと第2温度調整部34Bとは隔壁35を挟んで車両の左右方向において対称に形成されるため、本実施形態においては、代表して第2温度調整部34Bとエバポレータ32及びヒータコア33の位置関係と空気の流れについて説明し、第1温度調節部34Aに関する図示及びその説明を省略する。
【0027】
図3示すように、熱交換器ケース31の内部において、エバポレータ32は、熱交換器ユニット3とブロワユニット2との接続部近傍に、図中Y-Z方向に沿いつつ、Z方向上側が車両の後方に向かってやや傾斜するように配置される。
【0028】
ヒータコア33は、車両用空調装置1が車両に設置されたときに、エバポレータ32よりも車両後方側(下流側)に、水平方向に対して、車両の後方側が高く、車両の前方側が低くなるように傾斜して配置されている。
【0029】
第2温度調整部34Bは、エバポレータ32よりも車両後方側(下流側)、かつ、ヒータコア33よりも鉛直方向上側(下流側)に形成されている。エバポレータ32の車両後方側(下流側)であって、ヒータコア33の鉛直方向下側(上流側)には、エバポレータ32を通過して冷却された低温の空気が流通する冷風通路36Bが形成されている。
【0030】
第2温度調整部34Bは、デフロスタ吹出口41B,42B、フェイス吹出口43B、及び、フット吹出口45Bと連通している。これらの各吹出口のうち、フット吹出口45Bには、フット吹出口45Bの中央部から第2温度調整部34Bに向かって仕切部38Bが設けられている。仕切部38Bは、フット吹出口45Bを2つの吹出領域451B,452Bに仕切ると共に、第2温度調整部34Bの下流であってフット吹出口45Bの上流に2つの流通路345B,346Bを形成する。
【0031】
仕切部38Bによって形成される一方の流通路345Bは、一方側の吹出領域451Bから吹き出す空気を流通させ、他方の流通路346Bは、他方側の吹出領域452Bから吹き出す空気を流通させる。流通路345Bの上流側端部は、冷風通路36Bの下流側端部と連通している。また、流通路345Bの上流側端部に、第2温度調整部34Bで温調された空気と、冷風通路36Bを通過した空気が流通路345Bに流入する割合を調整するダンパ37Bが設けられている。
【0032】
ダンパ37Bは、図中Y方向において第2ケース31Bの側面から隔壁35までと略同等の長さを有する板材であり、板材の長辺の一端が、ヒータコア33の車両後方側端部近傍に軸支されている。
従って、ダンパ37Bの開度を制御することで、流通路345Bには、第2温度調整部34Bで温調された空気と冷風通路36Bを通過した空気とを所望の割合で流入させることができる他、第2温度調整部34Bで温調された空気のみ、又は、冷風通路36Bを通過した空気のみを流入させることもできる。
【0033】
つまり、一方側の吹出領域451Bに対応する一方側の流通路345Bは、第2温度調整部34Bに連通すると共に冷風通路36Bに連通しており、第2温度調整部34Bにおいて温調された空気と冷風通路36Bを通過した低温の空気とを流通させることができる。他方側の吹出領域452Bに対応する他方側の流通路346Bは、第2温度調整部34Bに連通し、第2温度調整部34Bにおいて温調された空気を流通させることができる。
【0034】
したがって、流通路345Bと流通路346Bとは、互いに異なる温度に調整された空気を流通させることができ、この場合、フット吹出口45Bから2つの温度帯の空気を吹き出すことができる。
【0035】
デフロスタ吹出口41B,42B、フェイス吹出口43B及びフット吹出口45Bには、各吹出口から吹き出された空気を車室内まで導くダクトが接続され、デフロスタ吹出口41B,42B及びフェイス吹出口43Bからは、第2温度調整部34Bにおいて温調された空気が吹き出され、接続されたダクトを介して、車室内に供給される。なお、デフロスタ吹出口41B,42B、フェイス吹出口43B及びフット吹出口45Bには、各吹出口から吹き出される空気の風量を調節するダンパ411B,421B,431B,455Bが設けられている。ダンパ411B,421B,431B,455Bの開度はユーザによって所望の開度に設定することができる。
【0036】
図4に、一例として、フット吹出口45A,45Bにフット吹出口45A,45Bから吹き出される空気を車室内まで導くダクト50A,50Bを接続した場合の車両用空調装置1の斜視図を示す。フット吹出口45Bにおいては、流通路345Bを通過した空気が吹出領域451Bからダクト50B内に吹き出すと共に、流通路346Bを通過してきた空気が吹出領域452Bからダクト50B内に吹き出し、ダクト50Bの内部において混合されることで温度調整される。
【0037】
このように、デフロスタ吹出口41B,42B及びフェイス吹出口43Bからは、いずれも第2温度調整部34Bにおいて温調された略同一の温度の空気が吹き出され、ダクトを介して車室内に第2温度調整部34Bにおいて温調された空気が供給される。これに対し、フット吹出口45Bからは、第2温度調整部34Bにおいて温調された空気と冷風通路36Bを通過した空気とが吹き出され、ダクト50Bにおいて混合されながら流れ車室内に供給される。つまり、熱交換器ケース31に、車室内の空間に対応した温度調整部(混合空間とエアミックスダンパ)を設けるだけの構成で、フット吹出口45Bを他の吹出口から吹き出す空気と異なる温度に制御することができる。
【0038】
続いて、車両用空調装置1における冷房モード及び暖房モードの運転時における空気の流れについて、図5から図10を用いて説明する。図5から図10において、白抜きの矢印は低温の空気を示し、黒の矢印は高温の空気を示す。なお、図5から図10は、図3と同様に図1のB-B断面図であるため、助手席側に供給する空気を温調する際の流れについて説明し、運転席側に供給する空気を温調する際の流れについては図示及びその説明を省略する。
【0039】
図5から図10の例では、各吹出口に設けられる風量を調節するダンパ411B,421B,431B,455Bが閉じた状態を示しているが、この状態に限定するものではなく、上述のように、ダンパ411B,421B,431B,455Bは、ユーザによって自由に開度を設定することができる。
【0040】
(1)冷房モード(除湿冷房モード)
図5から図7は、車両用空調装置1において冷房モードを実行する場合における空気の流れを示している。
図5の例では、第2エアミックスダンパ342Bが、ヒータコア33の下流から第2混合空間341Bへの流通路を閉塞し、第2混合空間341Bにエバポレータ32において冷却された空気のみが流入するようになっている。また、第2ダンパ37Bが冷風通路36Bから流通路345Bへの流通路を全開とする一方で第2混合空間341Bから流通路345Bへの流通路を閉塞する。
【0041】
これにより、フット吹出口45Bの吹出領域451Bからは冷風通路36Bを通過した冷風が吹き出され、吹出領域452Bからは第2混合空間341Bを通過した冷風が吹き出される。図5の例においては、デフロスタ吹出口41B,42B及びフェイス吹出口43Bからも冷風が吹き出される。
この結果、図5の例においては、デフロスタ吹出口41B,42B、フェイス吹出口43B及びフット吹出口45Bの全て吹出口から、エバポレータ32によって冷却された低温の空気であって略同一の温度の空気が吹き出される。
【0042】
図6の例は、フット吹出口45Bから除湿された空気を吹き出す、いわゆる除湿冷房モードである。この例では、第2エアミックスダンパ342Bが、ヒータコア33の下流から第2混合空間341Bへの流通路を閉塞し、第2混合空間341Bにエバポレータ32において冷却された空気のみが流入するようになっている。また、第2ダンパ37Bが冷風通路36Bから流通路345Bへの流通路を閉塞する一方で、第2混合空間341Bのヒータコア33の下流から流通路345Bへの流通路を全開とする。
【0043】
これにより、エバポレータ32を通過して冷却された空気がヒータコア33において加熱されて除湿され、第2混合空間341Bのうち第2エアミックスダンパ342Bによって仕切られてヒータコア33側に形成される流通路を通過して吹出領域451Bから吹き出される。また、吹出領域452Bからは、エバポレータ32で冷却された低温の空気が第2混合空間341Bのうち第2エアミックスダンパ342Bによって仕切られてエバポレータ32側に形成される流通路を通過して吹出領域452Bから吹き出される。
【0044】
図6の例においては、デフロスタ吹出口41B,42B及びフェイス吹出口43Bからもエバポレータ32で冷却されて第2混合空間341Bのうち第2エアミックスダンパ342Bによって仕切られてエバポレータ32側に形成される流通路を通過した冷風が吹き出される。
この結果、図6の例においては、デフロスタ吹出口41B,42B及びフェイス吹出口43Bからは吹き出される空気の温度と、フット吹出口45Bから吹き出される温度は互いに異なる温度となる。
【0045】
図7の例では、第2エアミックスダンパ342Bの開度を制御して、エバポレータ32からの低温の空気と、ヒータコア33からの高温の空気とを共に第2混合空間341Bに流入させて、混合させる。このとき、図7に示すように、第2エアミックスダンパ342Bは、エバポレータ32側よりもヒータコア33側の第2混合空間341Bへの流通路を絞るような開度に制御されている。したがって、低温の空気が、高温の空気よりも多く流入することとなる。
【0046】
また、第2ダンパ37Bは、冷風通路36Bから流通路345Bへの流通路と、第2混合空間341Bのヒータコア33の下流から流通路345Bへの流通路とを、共に開放するような開度に制御される。
【0047】
これにより、流通路345Bには、エバポレータ32で冷却された空気とヒータコア33で加熱された高温の空気とが第2混合空間341Bを通過して流入すると共に、エバポレータ32で冷却された空気が冷風通路36Bから流入する。したがって、これらの空気が流通路345Bで混合されて吹出領域451Bから吹き出される。また、流通路346Bには、第2混合空間341Bにおいてエバポレータ32で冷却された空気とヒータコア33で加熱された高温の空気とが混合された空気が流入して吹出領域452Bから吹き出される。図7の例においては、デフロスタ吹出口41B,42B及びフェイス吹出口43Bからも、第2混合空間341Bにおいてエバポレータ32で冷却された空気とヒータコア33で加熱された高温の空気とが混合された空気が吹き出される。
【0048】
この結果、図7の例においては、デフロスタ吹出口41B,42B及びフェイス吹出口43Bからは吹き出される空気の温度と、フット吹出口45Bから吹き出される温度は互いに異なる温度となる。
(2)暖房モード(除湿暖房モード)
【0049】
図8から図10は、車両用空調装置1において暖房モードを実行する場合における空気の流れを示している。
図8の例では、第2エアミックスダンパ342Bが、エバポレータ32の下流から第2混合空間341Bへの流通路を閉塞し、第2混合空間341Bにヒータコア33において加熱された空気のみが流入するようになっている。また、第2ダンパ37Bが冷風通路36Bから流通路345Bへの流通路を全閉とする一方で第2混合空間341Bから流通路345Bへの流通路を全開とする。
【0050】
これにより、フット吹出口45Bの吹出領域451B及び吹出領域452Bからは、共に第2混合空間のうち第2エアミックスダンパ342Bによって仕切られてヒータコア33側に形成される流通路を通過した温風が吹き出される。図8の例においては、デフロスタ吹出口41B,42B及びフェイス吹出口43Bからも温風が吹き出される。
この結果、図8の例においては、デフロスタ吹出口41B,42B、フェイス吹出口43B及びフット吹出口45Bの全て吹出口から、ヒータコア33によって加熱された高温の空気であって略同一の温度の空気が吹き出される。
【0051】
図9の例は、フット吹出口45Bから除湿された空気吹き出す、いわゆる除湿暖房モードである。この例では、図9の例では、第2エアミックスダンパ342Bが、エバポレータ32の下流から第2混合空間341Bへの流通路を閉塞し、第2混合空間341Bにヒータコア33において加熱された空気のみが流入するようになっている。また、第2ダンパ37Bが冷風通路36Bから流通路345Bへの流通路を全開とする一方で、第2混合空間341Bのヒータコア33の下流から流通路345Bへの流通路を閉塞する。
【0052】
これにより、エバポレータ32で冷却された低温の空気が冷風通路36Bを通過してフット吹出口45Bの吹出領域451Bから吹き出される。また、吹出領域452Bからは、ヒータコア33で加熱された高温の空気が第2混合空間341Bを通過してフット吹出口45Bの吹出領域452Bから吹き出される。図9の例においては、デフロスタ吹出口41B,42B及びフェイス吹出口43Bからもヒータコア33で加熱された高温の空気が第2混合空間341Bを通過した温風が吹き出される。
この結果、図9の例においては、デフロスタ吹出口41B,42B及びフェイス吹出口43Bからは吹き出される空気の温度と、フット吹出口45Bから吹き出される温度は互いに異なる温度となる。
【0053】
図10の例では、第2エアミックスダンパ342Bの開度を制御して、エバポレータ32からの低温の空気と、ヒータコア33からの高温の空気とを共に第2混合空間341Bに流入させて、混合させる。このとき、図10に示すように、第2エアミックスダンパ342Bは、ヒータコア33側よりもエバポレータ32側の第2混合空間341Bへの流通路を絞るような開度に制御されている。したがって、高温の空気が、低温の空気よりも多く流入することとなる。
【0054】
また、第2ダンパ37Bは、冷風通路36Bから流通路345Bへの流通路と、第2混合空間341Bのヒータコア33の下流から流通路345Bへの流通路とを、共に開放するような開度に制御される。
【0055】
これにより、流通路345Bには、エバポレータ32で冷却された空気とヒータコア33で加熱された高温の空気とが第2混合空間341Bを通過して流入すると共に、エバポレータ32で冷却された空気が冷風通路36Bから流入する。したがって、これらの空気が流通路345Bで混合されて吹出領域451Bから吹き出される。
【0056】
また、流通路346Bには、第2混合空間341Bにおいてエバポレータ32で冷却された空気とヒータコア33で加熱された高温の空気とが混合された空気が流入して吹出領域452Bから吹き出される。図10の例においては、デフロスタ吹出口41B,42B及びフェイス吹出口43Bからも、第2混合空間341Bにおいてエバポレータ32で冷却された空気とヒータコア33で加熱された高温の空気とが混合された空気が吹き出される。
【0057】
この結果、図10の例においては、デフロスタ吹出口41B,42B及びフェイス吹出口43Bからは吹き出される空気の温度と、フット吹出口45Bから吹き出される温度は互いに異なる温度となる。
【0058】
このように、第2吹出口としてのデフロスタ吹出口、フェイス吹出口、及び、第1吹出口としてのフット吹出口は、いずれも温度調整部に連通し、温度調整部において温調された略同一の温度の空気を吹き出すことができる。一方で、第1吹出口であるフット吹出口は、その一方の吹出領域に繋がる流通路が、温度調整部を迂回した他の流通路である冷風通路とも連通している。このためフット吹出口の複数の吹出領域からは互いに異なる温度の空気を吹き出すことができ、フット吹出口から吹き出された空気を車室内に導くダクトの内部においてこれらの異なる温度の空気を混合させて温度調整することができる。つまり、フット吹出口から吹き出す空気の温度を、デフロスタ吹出口及びフェイス吹出口から吹き出す空気の温度とは別に独立して調整することができる。
従って、本実施形態によれば、熱交換器ケースを大型化させることなく、車室内の空間に向けて空気を吹き出す複数の吹出口のうち、所望の吹出口からの吹出温度を個別に制御することができる。
【0059】
上記した実施形態では、フット吹出口について独立して温度制御を行う例について説明したが、個別に温度制御を行う吹出口は任意に定めることができる。また、冷却器の一例としてエバポレータを、加熱器の一例としてヒータコアを適用した例について説明したが、「冷却器」は冷媒を含む各種熱媒体に対して吸熱作用を有し空気を冷却する熱交換器であればよく、同様に、「加熱器」は冷媒を含む各種熱媒体に対して放熱作用を有し空気を加熱する熱交換器であればよく、種類や名称は問わない。
【0060】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1:車両用空調装置、2:ブロワユニット、3:熱交換器ユニット
21:ブロワケース、31:熱交換器ケース
32:エバポレータ、33:ヒータコア、35:隔壁、36B:冷風通路
37B:ダンパ、38B:仕切部
41A,42A,41B,42B:デフロスタ吹出口(第2吹出口)
43A,43B:フェイス吹出口(第2吹出口)
45A,45B:フット吹出口(第1吹出口)
50A,50B:ダクト
342A:第1エアミックスダンパ、342B:第2エアミックスダンパ
345B,346B:流通路
411B,421B,431B,455B:ダンパ、451B,452B:吹出領域

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10