(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166897
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 9/02 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
F28F9/02 301D
F28F9/02 301E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083312
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 章博
(57)【要約】
【課題】2パス構造の熱交換器の、熱媒体の流出口が設けられない側のヘッダタンクにおいて、熱媒体の通水抵抗を低減化させ熱交換器の能力を保ち、チューブ群の一端側と他端側のヘッダタンクの形状を共通化し、製造コストの増加を抑制することを可能とする。
【解決手段】第1チューブ群と、第1チューブ群と平行に設けられた第2チューブ群の一端に第1ヘッダタンクが設けられ他端に第2ヘッダタンクが設けられる2パス構造の熱交換器であって、第1ヘッダタンク及び第2ヘッダタンクは、チューブと接続するヘッダプレートと、ヘッダプレートと結合するタンクプレートと、を備え、第2ヘッダタンクは、内部にヘッダプレートとタンクプレートに挟持される柱部材が設けられ、柱部材は、第2ヘッダタンク内において熱媒体が第2ヘッダタンク内において第1チューブ群から第2チューブ群への流動が可能に設けられる熱交換器を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層配置されるチューブからなる第1チューブ群と、前記第1チューブ群と平行に設けられた第2チューブ群の一端に第1ヘッダタンクが設けられ他端に第2ヘッダタンクが設けられる熱交換器であって、
前記熱交換器は、
前記第1ヘッダタンクに熱媒体の流入口及び流出口が設けられ、
熱媒体は、
前記流入口から前記第1ヘッダタンクに流入し、前記第1チューブ群を介して前記第2ヘッダタンクに流入し、前記第2チューブ群を介して前記第1ヘッダタンクに戻り前記流出口から流出し、
前記第1ヘッダタンク及び前記第2ヘッダタンクは、
前記第1チューブ群および前記第2チューブ群と接続するヘッダプレートと、
前記ヘッダプレートと結合するタンクプレートと、を備え、
前記第2ヘッダタンクは、
内部に前記ヘッダプレートと前記タンクプレートに挟持され、前記第2ヘッダタンクを補強する柱部材が設けられ、
前記柱部材は、
前記第2ヘッダタンク内において熱媒体が前記第1チューブ群から前記第2チューブ群への流動が可能に設けられる熱交換器。
【請求項2】
前記柱部材は、
前記第2ヘッダタンクにおける前記チューブの積層方向の少なくとも一部に設けられている請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記柱部材は、
前記第2ヘッダタンクにおける前記チューブの積層方向の中心に設けられている請求項1に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記柱部材は、
前記第2ヘッダタンクにおける前記第1チューブ群と前記第2チューブ群の配列方向に連通する連通部が設けられ、
前記連通部は、
前記柱部材における前記チューブの積層方向端部につれて増大することを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記柱部材は、
前記チューブの積層方向において前記第2ヘッダタンクより長く、
前記第2ヘッダタンクを形成する筒状部材の一端を閉塞するキャップ部材に設けられる貫通穴から前記第2ヘッダタンクの外に露出している請求項1に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッダタンクを備えた熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、積層されたチューブ群の両端にヘッダタンクが設けられ、熱媒体はチューブを2度経由して熱交換を行う、熱媒体の流路が所謂2パス構造である熱交換器が知られている(下記特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のような2パス構造の熱交換器では、チューブ群の一端側に設けられるヘッダタンクには、ヘッダタンク短手方向の一端側に熱媒体を流入させる流入口が設けられ、ヘッダタンク短手方向の他端側に熱媒体を流出させる流出口が設けられている。また、ヘッダタンク内部にはヘッダタンクの長手方向に沿ってヘッダタンク短手方向の一端側と他端側の領域を仕切る仕切面が設けられている。また、チューブ群の他端に設けられるヘッダタンクにも同様にヘッダタンク内部に仕切面が設けられている。
【0004】
熱媒体は、流入口からチューブ群の一端に設けられるヘッダタンクの短手方向一端側に流入し、チューブを介してチューブ群の他端に設けられるヘッダタンクの短手方向一端側に流入する。流入した熱媒体は、ヘッダタンクの長手方向の一端に設けられるスペースを介してヘッダタンクの短手方向の他端側に流れ、再びチューブを介してチューブ群の一端に設けられるヘッダタンクの短手方向の他端側に流れ、流出口から流出していく。熱媒体はチューブの通過中に、例えば空気と熱交換を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のようにチューブ群の他端に設けられるヘッダタンクにおいて、熱媒体がヘッダタンクの長手方向の一端に設けられるスペースを介してヘッダタンクの短手方向の移動を行う熱交換器は、タンクに流入してくる熱媒体の量に対してタンク短手方向の移動スペースが小さいことから通水抵抗が大きく、熱媒体回路全体で圧力損失を生じさせ熱交換器が搭載される機器の能力の低下の要因となる。
【0007】
一方で、チューブ群の他端に設けられるヘッダタンクにおいて短手方向の領域を仕切る仕切面を取り除く構造とすれば、熱媒体の通水抵抗の低減化は可能であるが、仕切面はヘッダタンクの補強も担っていることからヘッダタンク自体の強度を保つにはヘッダタンクに設けられるリブの数を増やすか、特殊な形状のリブを設ける必要があり、チューブ群の一端に設けられるヘッダタンクと異なる形成が必要であることから製造コストの増加につながる。
【0008】
本発明は、このような事情に対処するために提案されたものである。すなわち、特許文献1のような2パス構造の熱交換器の、熱媒体の流入出口が設けられない側のヘッダタンクにおいて、熱媒体の通水抵抗を低減化させ熱交換器の能力を保ち、チューブ群の一端側と他端側のヘッダタンクの形状を共通化し、製造コストの増加を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、本発明に係る熱交換器は、積層配置されるチューブからなる第1チューブ群と、前記第1チューブ群と平行に設けられた第2チューブ群の一端に第1ヘッダタンクが設けられ他端に第2ヘッダタンクが設けられる熱交換器であって、前記熱交換器は、前記第1ヘッダタンクに熱媒体の流入口及び流出口が設けられ、熱媒体は、前記流入口から前記第1ヘッダタンクに流入し、前記第1チューブ群を介して前記第2ヘッダタンクに流入し、前記第2チューブ群を介して前記第1ヘッダタンクに戻り前記流出口から流出し、前記第1ヘッダタンク及び前記第2ヘッダタンクは、前記第1チューブ群および前記第2チューブ群と接続するヘッダプレートと、前記ヘッダプレートと結合するタンクプレートと、を備え、前記第2ヘッダタンクは、内部に前記ヘッダプレートと前記タンクプレートに挟持され、前記第2ヘッダタンクを補強する柱部材が設けられ、前記柱部材は、前記第2ヘッダタンク内において熱媒体が前記第1チューブ群から前記第2チューブ群への流動が可能に設けられる。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴によると、本発明は、2パス構造の熱交換器の、熱媒体の流出口が設けられない側のヘッダタンクにおいて、熱媒体の通水抵抗を低減化させ熱交換器の能力を保ち、チューブ群の一端側と他端側のヘッダタンクの形状を共通化し、製造コストの増加を抑制することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る熱交換器の全体斜視図。
【
図2】本発明の実施形態に係る第1ヘッダタンクの分解斜視図。
【
図3】本発明の実施形態に係る第2ヘッダタンクの分解斜視図。
【
図4】本発明の実施形態に係る第1ヘッダタンクの短手方向断面図。
【
図5】本発明の実施形態に係る第2ヘッダタンクの短手方向断面図。
【
図6】柱部材を設けない第2ヘッダタンクの短手方向断面図。
【
図7】本発明の実施形態に係る第2ヘッダタンクの変形例。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明において、同一の符号は同一の機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0013】
図1に示すように、熱交換器1は、第1ヘッダタンク11と、第2ヘッダタンク12と、第1ヘッダタンク11と第2ヘッダタンク12との間に形成された熱交換コア部10で構成される。
【0014】
熱交換コア部10は、複数のチューブ100からなる、空気の流通方向(図示Y軸方向)に平行に配列される第1チューブ群100a及び第2チューブ群100bと、複数のチューブ100の間に設けられるフィン(不図示)と、複数のチューブ100の積層方向(図示X軸方向)の両端に設けられた一対のサイドプレート101とを有している。第1チューブ群100a及び第2チューブ群100bは、複数のチューブ100が図示X軸方向に積層に配置されて構成されている。熱交換器1では、第1ヘッダタンク11又は第2ヘッダタンク12を介して熱交換コア部10のチューブ100を図中Z軸方向に流れる熱媒体(冷却水等)と、熱交換コア部10を図中Y軸方向に沿って通過する流体(例えば、空気)との間で熱交換が行われる。
【0015】
図1に示す熱交換器1は、熱媒体が入口パイプ2から第1ヘッダタンク11に流入し、熱交換コア部10の第1チューブ群100aを通過して第2ヘッダタンク12に流入した後、熱交換コア部10の第2チューブ群100bを通過して第1ヘッダタンクに戻り出口パイプ3へ流出していく所謂2パス構造の熱交換器である。
【0016】
第1ヘッダタンク11及び第2ヘッダタンク12は、チューブ100の積層方向(図示X軸方向)の両端において開口する筒状部材13と、筒状部材13の開口を閉塞するキャップ部材として、タンクキャップ50及びパイプキャップ60を有する。また、筒状部材13は、熱交換コア部10の空気の流通方向(図示Y軸方向)に間延びしたU字形状のタンクプレート20とヘッダプレート30とから形成されている(
図2参照)。以下の説明において、第1ヘッダタンク11及び第2ヘッダタンク12、筒状部材13、タンクプレート20及びヘッダプレート30の短手方向は、熱交換コア部10の空気の流通方向(図示Y軸方向)とし、長手方向は、チューブ100の積層方向(図示X軸方向)とする。
【0017】
タンクプレート20とヘッダプレート30とを結合し、形成された筒状部材13の長手方向の両端をタンクキャップ50及びパイプキャップ60で閉塞することで、内部に熱媒体の溜まり空間が形成される。図示の例では、第1ヘッダタンク11及び第2ヘッダタンク12は筒状部材の一端の開口をタンクキャップ50、他端の開口をパイプキャップ60で閉塞している。
【0018】
次に、
図2、3を用いて、本発明における第1ヘッダタンク11及び第2ヘッダタンク12の構成について説明する。
図2には第1ヘッダタンク11の分解斜視図を、
図3には第2ヘッダタンク12の分解斜視図を示している。
第1ヘッダタンク11及び第2ヘッダタンク12は、タンクプレート20とヘッダプレート30から形成される筒状部材13とタンクキャップ50及びパイプキャップ60から形成されており、第1ヘッダタンク11は、仕切板40が設けられ、第2ヘッダタンクは、柱部材70が設けられている。
【0019】
仕切板40は、第1ヘッダタンク11の長手方向(図示X軸方向)に沿うように設けられている。仕切板40は、第1ヘッダタンク11の内部を第1ヘッダタンク11の短手方向(図示Y軸方向)の一端側の領域α1と、第1ヘッダタンク11の短手方向(図示Y軸方向)の他端側の領域β1に仕切るように設けられており(
図4参照)、領域α1に溜まる熱媒体と領域β1に溜まる熱媒体は互いに侵入できないようになっている。具体的には、領域α1には、入口パイプ2から流入してきた熱媒体が溜まり、領域β1には、第2ヘッダタンク12から熱交換コア部10の第2チューブ群100bを通過してきた熱媒体が溜まるようになっている。また、仕切板40は、第1ヘッダタンク11内を熱媒体が流れることで生じる内圧に対して耐久性を高める効果も有する。
【0020】
柱部材70は、第2ヘッダタンク12の長手方向に沿うように設けられている。柱部材70は、第2ヘッダタンク12の内部において第2ヘッダタンク12の短手方向(図示Y軸方向)の一端側の領域α2と、第2ヘッダタンク12の短手方向(図示Y軸方向)の他端側の領域β2の中間に設けられ(
図5参照)、第2ヘッダタンク12の補強のために設けられている。柱部材70は、熱媒体が第2ヘッダタンク12の短手方向(図示Y軸方向)の一端側の領域α2から第2ヘッダタンク12の短手方向(図示Y軸方向)の他端側の領域β2へ流動可能とするように連通する連通部71と、タンクプレート20及びヘッダプレート30を支える壁面72を有する。熱媒体の具体的な流れについては後述する。
【0021】
タンクプレート20の内側には、タンクプレート20の短手方向(図示Y軸方向)中心部にタンクプレート20の長手方向に沿って仕切板40及び柱部材70を固定する固定溝24が設けられている。組み立て時は、仕切板40及び柱部材70の鉛直方向(図示Z軸方向)の一端をタンクプレート20の固定溝24に固定し、他端をヘッダプレート30の短手方向の一端側のリブ31と他端側のリブ31との間に固定し、タンクプレート20及びヘッダプレート30に挟持するようにして固定する。以下の説明において、仕切板40及び柱部材70の短手方向は鉛直方向(図示Z軸方向)とし、長手方向はチューブ100の積層方向(図示X軸方向)とする。
【0022】
タンクプレート20及びヘッダプレート30には、ヘッダタンクの強度を向上させるために、それぞれ内面側に突出するリブ21,31が設けられている。ヘッダプレート30のリブ31には、チューブ100を差し込むためのチューブ挿入部31Dが設けられている。タンクプレート20及びヘッダプレート30において、リブ21,31が形成された部分の外面側はリブ溝21A,21B,31A,31Bが形成されている。タンクプレート20及びヘッダプレート30の長手方向両端に形成されるリブ溝21B,31Bは、後述する加締めをする専用のリブ溝として、その他のリブ溝21A,31Aとは異なる形状を有している。また、ヘッダプレート30の長手方向両端に形成されるリブ溝31Bはサイドプレート101を挿入するためのサイドプレート挿入部31Cが設けられている。
【0023】
ヘッダプレート30は、ヘッダプレート30の短手方向端部32から延在する加締爪32Aを有している。加締爪32Aは、タンクプレート20のリブ溝21Aに加締めることで、タンクプレート20とヘッダプレート30とを固定するために設けられている。
【0024】
タンクキャップ50及びパイプキャップ60には、加締めによってキャップ部材と筒状部材13を固定するための加締爪51,61が設けられている。それぞれ加締爪51,61は、タンクプレート20及びヘッダプレート30の長手方向両端に設けられるリブ溝21B,31Bに加締めることでキャップ部材と筒状部材13固定する。図示では、タンクプレート20及びヘッダプレート30に加締め専用のリブ溝21B,31Bが設けたが、専用の形状でないリブ溝21A,31Aであっても加締めは可能である。
【0025】
パイプキャップ60には、入口パイプ2及び出口パイプ3を接続するための接続口63が設けられており、入口パイプ2が接続される接続口63が熱媒体の流入口となり、出口パイプ3が接続される接続口63が熱媒体の流出口となる。本実施例では第2ヘッダタンク12に備えられるパイプキャップ60には入口パイプ2及び出口パイプ3は接続されないため、第2ヘッダタンク12に設けられるパイプキャップ60の接続口63は塞がれている。
【0026】
また、タンクキャップ50及びパイプキャップ60には仕切板40及び柱部材70の両端を固定する固定溝52,62が設けられている。すなわち、仕切板40及び柱部材70は、仕切板40及び柱部材70の短手方向の一端をタンクプレート20の固定溝24に固定し、他端をヘッダプレート30の短手方向の一端側のリブ31と他端側のリブ31との間に固定してタンクプレート20とヘッダプレート30に挟持され、長手方向の両端をタンクキャップ50及びパイプキャップ60の固定溝52,62に固定しタンクキャップ50とパイプキャップ60に挟持されて固定される。
【0027】
次に、本発明における第1ヘッダタンク11及び第2ヘッダタンク12の組み立てついて説明する。
図4、
図5に示すように、第1ヘッダタンク11及び第2ヘッダタンク12の筒状部材13は、タンクプレート20の短手方向端部22がヘッダプレート30の内側に入り込むようにして組み立てられる。第1ヘッダタンク11は、タンクプレート20とヘッダプレート30を組み立てる際に前述したように仕切板40を組み込み、第2ヘッダタンク12は、タンクプレート20とヘッダプレート30を組み立てる際に前述したように柱部材70を組み込む。また、図示していないが、第1ヘッダタンク11及び第2ヘッダタンク12の組み立ては、ヘッダプレート30のチューブ挿入部31Dにチューブ100が差し込まれた状態で行う。
【0028】
タンクプレート20の固定溝24と、ヘッダプレート30の短手方向の一端側のリブ31と他端側のリブ31との間で仕切板40及び柱部材70を固定し、タンクプレート20とヘッダプレート30を結合し筒状部材13を形成した後、筒状部材13の長手方向一端の開口をパイプキャップ60で閉塞し、筒状部材13の長手方向他端の開口をタンクキャップ50で閉塞する。
【0029】
その後、ヘッダプレート30の短手方向端部32に設けられる加締爪32Aと、タンクキャップ50及びパイプキャップ60に設けられる加締爪51,61で加締めをして、最後にロウ付けを行うことで第1ヘッダタンク11及び第2ヘッダタンク12は形成される。
【0030】
加締めは、ヘッダプレート30の加締爪32Aをタンクプレート20のリブ溝21Aに加締め、タンクキャップ50及びパイプキャップ60の加締爪51,61を、タンクプレート20及びヘッダプレート30のリブ溝21B及び31Bに加締めることで行われる。タンクキャップ50及びパイプキャップ60の加締爪51,61をヘッダプレート30のリブ溝31Bに加締める際は、サイドプレート挿入部31Cにサイドプレート101が挿入された状態のリブ溝31Bに加締める。
【0031】
次に、熱媒体の流れについて説明する。熱媒体は、入口パイプ2からパイプキャップ60の接続口63を介して第1ヘッダタンク11の領域α1に流入する。領域α1に流入した熱媒体は、熱交換コア部10の第1チューブ群100aを通過して第2ヘッダタンク12の領域α2に流入する。そして、領域α2から柱部材70に設けられる連通部71を通って領域β2に流れた後、熱交換コア部10の第2チューブ群100bを通過し第1ヘッダタンク11の領域β1に流入し、その後、出口パイプ3へ流出していく。
【0032】
このような経路で熱媒体を流す所謂2パス構造の熱交換器は、第2ヘッダタンク12は、流路の折り返し地点となっており、効率よく熱交換を行うには熱媒体が第2ヘッダタンク12の短手方向(図示Y軸方向)の流動、すなわち、領域α2から領域β2への流動をスムーズに行う必要がある。そのため、柱部材70の壁面72は可能な限り熱媒体の流れを妨げない形状であることが望ましい。
図3に示す柱部材70の連通部71及び壁面72は、熱媒体の流動性を考慮した形状となっており、第2ヘッダタンク12において熱媒体の流動は妨げられ難い。
【0033】
仮に、第2ヘッダタンク12に柱部材70を設けない構造とするのであれば、第2ヘッダタンク12内において熱媒体のα2からβ2への流動を妨げるものはなく、効率のよい熱交換が可能となる。
【0034】
図6に柱部材70を設けない第2ヘッダタンク12の短手方向の断面図を示す。
図6に示す第2ヘッダタンク12は柱部材70が設けられていないため、熱媒体は、領域α2から領域β2への流動をスムーズに行うことが可能である。しかし、柱部材70が設けられていない第2ヘッダタンク12は熱媒体がタンク内を流れることで発生する内圧に対する強度が低く、例えば図示する矢印のような向きの力が加わるとヘッダタンクが破損する恐れがある。特にヘッダタンクの長手方向(図示X軸方向)の中心が最も強度が低く、また、内圧による破損はタンクが大きいほど生じやすい。
【0035】
このような問題から、本発明は第2ヘッダタンク12に柱部材70を設けることでヘッダタンクが内圧によって破損ことを抑制する。柱部材70が第2ヘッダタンク12内でロウ付けされていることで、柱部材70とタンクプレート20及びヘッダプレート30とのロウ付け部分が内圧によるヘッダタンクの破損を抑制する。
図7に柱部材70が設けられる第2ヘッダタンク12の変形例を示す。前述したようにヘッダタンクは長手方向(図示X軸方向)の中心が最も強度が低いため、
図7に示す第2ヘッダタンク12は、第2ヘッダタンク12の長手方向の中心付近に柱部材70が設けられている。
【0036】
図7に示す柱部材70は、長手方向中心に壁面72を広く確保している。これによって第2ヘッダタンク12の長手方向において最も撓みやすい部分を補強することが可能となる。また、熱媒体は、連通部71や柱部材70が設けられていない箇所から第2ヘッダタンク12短手方向の流動が可能であり、第2ヘッダタンク12に流入してくる熱媒体の量に対して、第2ヘッダタンク12の短手方向への流動スペースが十分に確保されていることから、通水抵抗による圧力損失は生じない。
【0037】
以上、説明したように、
図3や
図7に示すような柱部材70を備えた第2ヘッダタンク12であれば、熱媒体の流れの妨げを生じさせ難く、リブの形状や数を第1ヘッダタンク11と異なるものとせずとも第2ヘッダタンク12の強度を確保することが可能となる。
【0038】
柱部材70は、長手方向中心部に壁面72を有し、柱部材70の長手方向端部側につれて連通部71の数や面積が増大する形状のものであってもよい。上述したように、ヘッダタンクは長手方向中心部が強度の最も低い部分であり、ヘッダタンクの長手方向端部につれて強度は上がるため、ヘッダタンクの長手方向中心部に柱部材70の壁面72を設け、柱部材70の長手方向端部につれてヘッダタンクの強度を考慮して連通部71の面積を増大させた形状とすることで、ヘッダタンクの強度を確保しつつ熱媒体の流動を妨げ難くすることが可能となる。
【0039】
また、例えば筒状部材13よりも長手方向において長い柱部材70を設けてもよい。その際は、パイプキャップ60の固定溝62を貫通させて、柱部材70が貫通穴を設ける。柱部材70はパイプキャップ60を貫通して第2ヘッダタンク12の外に露出する。これによって、第2ヘッダタンク12を組み立てた際に、内部に柱部材70が設けられているかを確認することが可能となり、柱部材70の組み込み忘れを抑制できる。
【0040】
また、ここまでの説明では、柱部材70は第2ヘッダタンク12の長手方向に沿って延在する形状であったが、これに限られず、例えば、第2ヘッダタンク12の長手方向(図示X軸方向)より鉛直方向(図示Z軸方向)に長い形状のものを設けるとしてもよいし、柱部材70を複数設けてもよい。第2ヘッダタンク12は、ヘッダタンクの規模に合わせて必要な強度を確保できるように、少なくとも第2ヘッダタンク12の長手方向の一部に柱部材70が設けられているものであればよい。
【0041】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は説明した実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
1:熱交換器、2:入口パイプ、3:出口パイプ、10:熱交換コア部、
11:第1ヘッダタンク、12:第2ヘッダタンク、13:筒状部材、
20:タンクプレート、30:ヘッダプレート、
21,31:リブ、21A,21B,31A,31B:リブ溝、
31C:サイドプレート挿入部、31D:チューブ挿入部、
22,32:短手方向端部、40:仕切板、
50:タンクキャップ、60:パイプキャップ、
32A,51,61:加締爪、24,52,62:固定溝、63:接続口、
70:柱部材、71:連通部、72:壁面、
100:チューブ、100a:第1チューブ群、100b:第2チューブ群、
101:サイドプレート