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特開2024-166902獣害対策用防護設備の維持管理システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166902
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】獣害対策用防護設備の維持管理システム
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/30 20110101AFI20241122BHJP
   G16Y 10/05 20200101ALI20241122BHJP
【FI】
A01M29/30
G16Y10/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083323
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】512050014
【氏名又は名称】株式会社 アイエスイー
(74)【代理人】
【識別番号】230115336
【弁護士】
【氏名又は名称】山下 あや理
(72)【発明者】
【氏名】高橋 完
(72)【発明者】
【氏名】山端 直人
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA01
2B121BB30
2B121BB35
2B121DA63
2B121EA26
2B121FA12
2B121FA14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】農作物の獣害対策用防護設備を、その管理ユーザーの遠く離れた居住地からでも省力的にタイミング良く維持管理できるようにする。
【解決手段】防護設備に異常事態の検知センサーとして配線された光ファイバーケーブルと、上記防護設備の異常事態に起因する光ファイバーケーブルの付随的な異常事態(イベント)を測定すべく、そのケーブルの基端部に接続使用される光パルス試験器(R)と、その試験器の測定結果であるOTDR波形データの撮影カメラ(34)を有するIOT観測装置(A)と、その観測装置から上記イベントの測定結果であるOTDR波形データの撮影画像を受信した時、そのイベントの発生個所を表示するクラウドサーバ(W)とを備え、上記防護設備の管理ユーザーがその使用する管理ユーザー端末(M)からインターネットを介しクラウドサーバへアクセスして、その表示されているイベントの発生個所を閲覧する。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯電話サービスのエリヤ内にある農作物や果実などの栽培地域に、獣害対策用として張り巡らされたフェンスやネット、その他の防護設備と、
上記防護設備の破損や歪み、倒壊、その他の異常事態を検知するセンサーとして、その防護設備の延在する距離方向に沿って連続的な配線状態に取り付け一体化された光ファイバーケーブルと、
上記防護設備の異常事態に起因する光ファイバーケーブルの断線や過度な屈曲、押し潰し、その他の付随的な異常事態(イベント)を検知すべく、その光ファイバーケーブルの基端部に接続使用される光パルス試験器(OTDR)と、
その光パルス試験器による測定の結果、光ファイバーケーブルの異常事態としてその距離と損失レベルとの2軸で表示される波形データ又は同じく距離と損失レベルとの2列のリストで表示されるイベントリストデータを撮影するカメラと、GPS機能を有するIOT観測装置と、
そのIOT観測装置からモバイル通信により、上記光ファイバーケーブルの異常事態として表示された上記波形データ又はイベントリストデータの撮影画像を受信した時、その異常事態とその発生個所とを表示するほか、その異常事態を通報するクラウドサーバと、
そのクラウドサーバからインターネットを介して、上記光ファイバーケーブルの異常事態を受信する上記防護設備の管理ユーザー端末とを備え、
上記防護設備の管理ユーザーがその使用する端末からクラウドサーバへ、定期的に又は上記光ファイバーケーブルの異常事態を受信するたび毎の随時にアクセスして、
そのクラウドサーバに表示されている上記光ファイバーケーブルの付随的な異常事態とその発生個所を閲覧することにより、上記防護設備の設置現場において、その光ファイバーケーブルの異常事態とその発生原因になっている防護設備の異常事態とを、修繕又は新品と取り替えることを特徴とする獣害対策用防護設備の維持管理システム。
【請求項2】
クラウドサーバはIOT観測装置のカメラにより撮影された画像の解析部を備え、その画像解析部での数値化されたデジタル表示画像を正常値と比較することにより、異常値であれば、光ファイバーケーブルの異常事態であると自動的に判定して管理ユーザー端末へアラートを発信することを特徴とする請求項1記載の獣害対策用防護設備の維持管理システム。
【請求項3】
IOT観測装置はそれ自身の保有するカメラにより撮影された画像の解析部も備え、その画像解析部での数値化されたデジタル表示画像を正常値と比較することにより、異常値であれば、光ファイバーケーブルの異常事態であると自動的に判定して、クラウドサーバから管理ユーザー端末へアラートを発信することを特徴とする請求項1記載の獣害対策用防護設備の維持管理システム。
【請求項4】
携帯電話サービスのエリヤ外にある農作物や果実などの栽培地域に、獣害対策用として張り巡らされたフェンスやネット、その他の防護設備と、
上記防護設備の破損や歪み、倒壊、その他の異常事態を検知するセンサーとして、その防護設備の延在する距離方向に沿って連続的な配線状態に取り付け一体化された光ファイバーケーブルと、
上記防護設備の異常事態に起因する光ファイバーケーブルの断線や過度な屈曲、押し潰し、その他の付随的な異常事態(イベント)を検知すべく、その光ファイバーケーブルの基端部に接続使用される光パルス試験器(OTDR)と、
その光パルス試験器による測定の結果、光ファイバーケーブルの異常事態としてその距離と損失レベルとの2軸で表示される波形データ又は同じく距離と損失レベルとの2列のリストで表示されるイベントリストデータを撮影するカメラと、その撮影画像の解析部並びにGPS機能を有するIOT観測装置と、
そのIOT観測装置を子機として、その子機から無線通信により、上記光ファイバーケーブルにおける付随的な異常事態の検知出力信号を受けるべく、携帯電話サービスのエリヤ内に設置された親機と、
その親機からモバイル通信により、同じく光ファイバーケーブルの異常事態として表示された上記波形データ又はイベントリストデータの撮影画像を受信した時、その異常事態とその発生個所とを表示するほか、その異常事態を通報するクラウドサーバと、
そのクラウドサーバからインターネットを介して、上記光ファイバーケーブルの異常事態を受信する上記防護設備の管理ユーザー端末とを備え、
上記防護設備の管理ユーザーがその使用する端末からクラウドサーバへ、定期的に又は上記光ファイバーケーブルの異常事態を受信するたび毎の随時にアクセスして、
そのクラウドサーバに表示されている上記光ファイバーケーブルの付随的な異常事態とその発生個所を閲覧することにより、上記防護設備の設置現場において、その光ファイバーケーブルの異常事態とその発生原因になっている防護設備の異常事態とを、修繕又は新品と取り替えることを特徴とする獣害対策用防護設備の維持管理システム。
【請求項5】
光ファイバーケーブルの基端部に接続使用される光パルス試験器(OTDR)は、防護設備に取り付けられた固定型としてGPS機能を有し、
その光ファイバーケーブル内へ入射した測定光パルスが反射又は散乱された戻り光の受光レベルを定期的に測定した結果を、上記光ファイバーケーブルの距離と損失レベルとの2軸で表す波形データ又は光ファイバーケーブルの距離と損失レベルとの2列のリストで表すイベントリストデータとして、
その何れかのデータをIOT観測装置からモバイル通信によりクラウドサーバへ、又はIOT観測装置から無線通信により親機を経て、その親機から更にモバイル通信によりクラウドサーバへ、何れも送信するように定めたことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の獣害対策用防護設備の維持管理システム。
【請求項6】
IOT観測装置は防水・防錆処理された開閉可能な制御ボックスを備え、
その制御ボックスの内部には光ファイバーケーブルの基端部に接続使用される光パルス試験器と、その光パルス試験器の測定結果表示画面を撮影するカメラとが向かい合う対応位置関係として、しかも各別に出し入れできるように格納設置されていることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の獣害対策用防護設備の維持管理システム。
【請求項7】
クラウドサーバの測定結果表示部に表示される光ファイバーケーブルの異常事態を、光パルス試験器により測定された光ファイバーケーブルの距離と損失レベルとの2軸で表す波形データ又は同じく距離と損失レベルとの2列のリストで表すイベントリストデータとし、
その上記異常事態の発生個所をクラウドサーバの地図表示部へ表示する手段として、防護設備に取り付けられた光ファイバーケーブルの配線図を、栽培地域の地図上に描画すると共に、
上記配線図における異常事態の発生個所に、その異常事態が発生していない着色カラーのピンと識別できる着色カラーのピンをプロットしておき、
その異常事態が発生している着色カラーのピンを、防護設備の管理ユーザー端末からクリックすれば、その異常事態の内容と発生個所を上記測定結果表示部における波形データ又はイベントリストデータの閲覧によって確認することができるように定めたことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の獣害対策用防護設備の維持管理システム。
【請求項8】
携帯電話サービスのエリヤ内又はエリヤ外にある農作物や果実などの栽培地域に、獣害対策用として張り巡らされたフェンスやネット、その他の防護設備と、
上記防護設備の破損や歪み、倒壊、その他の異常事態を検知するセンサーとして、その防護設備の延在する距離方向に沿って連続的な配線状態に取り付け一体化された光ファイバーケーブルと、
上記防護設備の異常事態に起因する光ファイバーケーブルの断線や過度な屈曲、押し潰し、その他の付随的な異常事態(イベント)を検知すべく、その光ファイバーケーブルの基端部へ光コネクターを介して着脱自在に接続使用される可搬型の光パルス試験器(OTDR)とを備え、
上記防護設備の設置現場において、その防護設備の管理ユーザーが光ファイバーケーブルの基端部へ接続した光パルス試験器により、その光ファイバーケーブルの上記異常事態を測定すると共に、
その測定結果として光パルス試験器の表示画面に、上記光ファイバーケーブルの距離と損失レベルとの2軸で表示された波形データ又は同じく距離と損失レベルとの2列のリストで表示されたイベントリストデータを閲覧することにより、その光ファイバーケーブルの異常事態とその発生原因になっている防護設備の異常事態とを、修繕又は新品と取り替えることを特徴とする獣害対策用防護設備の維持管理システム。
【請求項9】
光ファイバーケーブルをその長さが一定なケーブル単位体の複数本から、光コネクターにより着脱自在に接続一本化して、そのケーブル単位体毎に新品と取り替えることができるように定めると共に、
その取り替えた新品から光ファイバーケーブルの先端部に至るまでの中継状態について、上記光コネクターへ光パルス試験器を接続使用することにより、その光ファイバーケーブルの損失や反射、その他の異常事態の有無を確認することができるように定めたことを特徴とする請求項8記載の獣害対策用防護設備の維持管理システム。
【請求項10】
光ファイバーケーブルを防護設備における地面からの一定な高さ位置にある上端部又は/及びその地面とほぼ同等の高さ位置にある下端部への配線状態として、その光ファイバーケーブルの延在する距離方向に沿って列設すると共に、
上記光ファイバーケーブルをその長さが一定なケーブル単位体の複数本から、プッシュ・プル方式の光コネクターによる着脱・交換自在として、しかも全体的な直列状態に接続一本化したことを特徴とする請求項1、4又は8記載の獣害対策用防護設備の維持管理システム。
【請求項11】
防護設備における地面からの一定な高さ位置にある上端部と、その地面とほぼ同等高さ位置にある下端部との2列に配線された光ファイバーケーブルを、その先端部において連続する滑らかな円弧状にUターンさせたことを特徴とする請求項10記載の獣害対策用防護設備の維持管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は農作物や果実などを栽培している各地域(集落)に、獣害対策用として張り巡らされているフェンス(柵)やネット、その他の防護設備をタイミング良く点検し、維持管理するために有用なシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自治体の市区町村ではその各地域(集落)にある農作物や果実、樹木の新芽などが、鹿や猪、猿、熊、その他の野生動物から被害を受けないための対策として、田畑や果樹園、山林などの周囲にフェンス(柵)やネット、その他の防護設備を張り巡らすことが行われており、その防護設備を住民の自治協議会に属する地域(集落)毎に管理し、その地域住民の出会い作業によって、防護設備を点検している通例である。
【0003】
ところが、上記防護設備は地域住民の居住地から遠く離れた山間部にあり、また狩猟者や農林業に従事する青年男子が減少している最近では、その防護設備を定期的にパトロールして、保守・点検・修繕することがますます困難になっている。
【0004】
殊更、上記防護設備の突破や損傷、倒壊、歪み変形などの異常事態とその発生個所を、居住地の遠方からタイミング良く知る術はなく、その現場に張り巡らされた長い距離の全体を見て廻らなければわからないため、その管理には多大の時間と労力を要し、徒労に終わることも稀ではない結果、その異常事態のままに長時間放置されていることが殆どであり、このようなことは野生動物による獣害のみならず、台風などの自然現象による防護設備の倒壊やその他の異常事態についても同様に言える。
【0005】
この点、特許文献1には建物やその敷地を監視領域として、その監視領域である敷地内への不法侵入を検知する侵入検知システムが開示されており、これは光ファイバーを検知センサーとして利用している点で、本発明と類似する公知技術であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4401232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1に開示された「侵入検知システム」では、監視領域である建物やその敷地自体を保守・点検することがそもそも求められておらず、その破損の発生事態が問題視されていない結果、これを修繕する必要性の説明もない。
【0008】
本発明において利用されている光ファイバーケーブルは、上記野生動物が防護設備の内部へ侵入することを検知するためのものではなく、野生動物が侵入を試みた行動の結果として、その防護設備に発生した破損や歪みなどを初め、台風などの自然現象により発生した防護設備の倒壊なども、遠隔地から定期的に又は随時に自ずと点検して、必要な修繕や新品との取り替えなどをタイミング良く行うという維持管理に資するものであるため、特許文献1に記載の発明とは目的が異なり、その特許文献1に記載の発明を獣害対策用防護設備にそのまま適用したとしても、本発明のような維持管理システムを成立させることはできない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題の解決を目的としており、その目的を達成するために、請求項1では獣害対策用防護設備の維持管理システムとして、携帯電話サービスのエリヤ内にある農作物や果実などの栽培地域に、獣害対策用として張り巡らされたフェンスやネット、その他の防護設備と、
【0010】
上記防護設備の破損や歪み、倒壊、その他の異常事態を検知するセンサーとして、その防護設備の延在する距離方向に沿って連続的な配線状態に取り付け一体化された光ファイバーケーブルと、
【0011】
上記防護設備の異常事態に起因する光ファイバーケーブルの断線や過度な屈曲、押し潰し、その他の付随的な異常事態(イベント)を検知すべく、その光ファイバーケーブルの基端部に接続使用される光パルス試験器(OTDR)と、
【0012】
その光パルス試験器による測定の結果、光ファイバーケーブルの異常事態としてその距離と損失レベルとの2軸で表示される波形データ又は同じく距離と損失レベルとの2列のリストで表示されるイベントリストデータを撮影するカメラと、GPS機能を有するIOT観測装置と、
【0013】
そのIOT観測装置からモバイル通信により、上記光ファイバーケーブルの異常事態として表示された上記波形データ又はイベントリストデータの撮影画像を受信した時、その異常事態とその発生個所とを表示するほか、その異常事態を通報するクラウドサーバと、
【0014】
そのクラウドサーバからインターネットを介して、上記光ファイバーケーブルの異常事態を受信する上記防護設備の管理ユーザー端末とを備え、
【0015】
上記防護設備の管理ユーザーがその使用する端末からクラウドサーバへ、定期的に又は上記光ファイバーケーブルの異常事態を受信するたび毎の随時にアクセスして、
【0016】
そのクラウドサーバに表示されている上記光ファイバーケーブルの付随的な異常事態とその発生個所を閲覧することにより、上記防護設備の設置現場において、その光ファイバーケーブルの異常事態とその発生原因になっている防護設備の異常事態とを、修繕又は新品と取り替えることを特徴とする。
【0017】
請求項2ではクラウドサーバがIOT観測装置のカメラにより撮影された画像の解析部を備え、その画像解析部での数値化されたデジタル表示画像を正常値と比較することにより、異常値であれば、光ファイバーケーブルの異常事態であると自動的に判定して管理ユーザー端末へアラートを発信することを特徴とする。
【0018】
請求項3ではIOT観測装置がそれ自身の保有するカメラにより撮影された画像の解析部も備え、その画像解析部での数値化されたデジタル表示画像を正常値と比較することにより、異常値であれば、光ファイバーケーブルの異常事態であると自動的に判定して、クラウドサーバから管理ユーザー端末へアラートを発信することを特徴とする。
【0019】
請求項4では携帯電話サービスのエリヤ外にある農作物や果実などの栽培地域に、獣害対策用として張り巡らされたフェンスやネット、その他の防護設備と、
【0020】
上記防護設備の破損や歪み、倒壊、その他の異常事態を検知するセンサーとして、その防護設備の延在する距離方向に沿って連続的な配線状態に取り付け一体化された光ファイバーケーブルと、
【0021】
上記防護設備の異常事態に起因する光ファイバーケーブルの断線や過度な屈曲、押し潰し、その他の付随的な異常事態(イベント)を検知すべく、その光ファイバーケーブルの基端部に接続使用される光パルス試験器(OTDR)と、
【0022】
その光パルス試験器による測定の結果、光ファイバーケーブルの異常事態としてその距離と損失レベルとの2軸で表示される波形データ又は同じく距離と損失レベルとの2列のリストで表示されるイベントリストデータを撮影するカメラと、その撮影画像の解析部並びにGPS機能を有するIOT観測装置と、
【0023】
そのIOT観測装置を子機として、その子機から無線通信により、上記光ファイバーケーブルにおける付随的な異常事態の検知出力信号を受けるべく、携帯電話サービスのエリヤ内に設置された親機と、
【0024】
その親機からモバイル通信により、同じく光ファイバーケーブルの異常事態として表示された上記波形データ又はイベントリストデータの撮影画像を受信した時、その異常事態とその発生個所とを表示するほか、その異常事態を通報するクラウドサーバと、
【0025】
そのクラウドサーバからインターネットを介して、上記光ファイバーケーブルの異常事態を受信する上記防護設備の管理ユーザー端末とを備え、
【0026】
上記防護設備の管理ユーザーがその使用する端末からクラウドサーバへ、定期的に又は上記光ファイバーケーブルの異常事態を受信するたび毎の随時にアクセスして、
【0027】
そのクラウドサーバに表示されている上記光ファイバーケーブルの付随的な異常事態とその発生個所を閲覧することにより、上記防護設備の設置現場において、その光ファイバーケーブルの異常事態とその発生原因になっている防護設備の異常事態とを、修繕又は新品と取り替えることを特徴とする。
【0028】
請求項5では光ファイバーケーブルの基端部に接続使用される光パルス試験器(OTDR)が、防護設備に取り付けられた固定型としてGPS機能を有し、
【0029】
その光ファイバーケーブル内へ入射した測定光パルスが反射又は散乱された戻り光の受光レベルを定期的に測定した結果を、上記光ファイバーケーブルの距離と損失レベルとの2軸で表す波形データ又は光ファイバーケーブルの距離と損失レベルとの2列のリストで表すイベントリストデータとして、
【0030】
その何れかのデータをIOT観測装置からモバイル通信によりクラウドサーバへ、又はIOT観測装置から無線通信により親機を経て、その親機から更にモバイル通信によりクラウドサーバへ、何れも送信するように定めたことを特徴とする。
【0031】
請求項6ではIOT観測装置が防水・防錆処理された開閉可能な制御ボックスを備え、
【0032】
その制御ボックスの内部には光ファイバーケーブルの基端部に接続使用される光パルス試験器と、その光パルス試験器の測定結果表示画面を撮影するカメラとが向かい合う対応位置関係として、しかも各別に出し入れできるように格納設置されていることを特徴とする。
【0033】
請求項7ではクラウドサーバの測定結果表示部に表示される光ファイバーケーブルの異常事態を、光パルス試験器により測定された光ファイバーケーブルの距離と損失レベルとの2軸で表す波形データ又は同じく距離と損失レベルとの2列のリストで表すイベントリストデータとし、
【0034】
その上記異常事態の発生個所をクラウドサーバの地図表示部へ表示する手段として、防護設備に取り付けられた光ファイバーケーブルの配線図を、栽培地域の地図上に描画すると共に、
【0035】
上記配線図における異常事態の発生個所に、その異常事態が発生していない着色カラーのピンと識別できる着色カラーのピンをプロットしておき、
【0036】
その異常事態が発生している着色カラーのピンを、防護設備の管理ユーザー端末からクリックすれば、その異常事態の内容と発生個所を上記測定結果表示部における波形データ又はイベントリストデータの閲覧によって確認することができるように定めたことを特徴とする。
【0037】
請求項8では携帯電話サービスのエリヤ内又はエリヤ外にある農作物や果実などの栽培地域に、獣害対策用として張り巡らされたフェンスやネット、その他の防護設備と、
【0038】
上記防護設備の破損や歪み、倒壊、その他の異常事態を検知するセンサーとして、その防護設備の延在する距離方向に沿って連続的な配線状態に取り付け一体化された光ファイバーケーブルと、
【0039】
上記防護設備の異常事態に起因する光ファイバーケーブルの断線や過度な屈曲、押し潰し、その他の付随的な異常事態(イベント)を検知すべく、その光ファイバーケーブルの基端部へ光コネクターを介して着脱自在に接続使用される可搬型の光パルス試験器(OTDR)とを備え、
【0040】
上記防護設備の設置現場において、その防護設備の管理ユーザーが光ファイバーケーブルの基端部へ接続した光パルス試験器により、その光ファイバーケーブルの上記異常事態を測定すると共に、
【0041】
その測定結果として光パルス試験器の表示画面に、上記光ファイバーケーブルの距離と損失レベルとの2軸で表示された波形データ又は同じく距離と損失レベルとの2列のリストで表示されたイベントリストデータを閲覧することにより、その光ファイバーケーブルの異常事態とその発生原因になっている防護設備の異常事態とを、修繕又は新品と取り替えることを特徴とする。
【0042】
請求項9では光ファイバーケーブルをその長さが一定なケーブル単位体の複数本から、光コネクターにより着脱自在に接続一本化して、そのケーブル単位体毎に新品と取り替えることができるように定めると共に、
【0043】
その取り替えた新品から光ファイバーケーブルの先端部に至るまでの中継状態について、上記光コネクターへ光パルス試験器を接続使用することにより、その光ファイバーケーブルの損失や反射、その他の異常事態の有無を確認することができるように定めたことを特徴とする。
【0044】
請求項10では光ファイバーケーブルを防護設備における地面からの一定な高さ位置にある上端部又は/及びその地面とほぼ同等の高さ位置にある下端部への配線状態として、その光ファイバーケーブルの延在する距離方向に沿って列設すると共に、
【0045】
上記光ファイバーケーブルをその長さが一定なケーブル単位体の複数本から、プッシュ・プル方式の光コネクターによる着脱・交換自在として、しかも全体的な直列状態に接続一本化したことを特徴とする。
【0046】
請求項11では防護設備における地面からの一定な高さ位置にある上端部と、その地面とほぼ同等高さ位置にある下端部との2列に配線された光ファイバーケーブルを、その先端部において連続する滑らかな円弧状にUターンさせたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0047】
請求項1の構成によれば、獣害対策用防護設備の管理ユーザーがその使用する端末からクラウドサーバへアクセスして、光パルス試験器(OTDR)による光ファイバーケーブルの定期的な測定結果を、そのクラウドサーバの測定結果表示部と地図表示部から閲覧することにより、その光ファイバーケーブルのイベント(障害/異常事態)とその発生個所(障害点)を確認することができるようになっている。
【0048】
また、上記光パルス試験器によって光ファイバーケーブルにおけるイベントの発生が検知された場合には、その検知出力信号を受信したクラウドサーバから管理ユーザー端末へ、異常事態であることの通報が配信されるようになってもいる。
【0049】
そのため、上記防護設備の管理ユーザーとしては従来のように、その防護設備の設置現場へ定期的に出向して、これの全体を見て廻ることにより、破損や歪み、倒壊、その他の異常事態が発生しているか否かを点検(探索)する必要がなく、その設置現場から遠く離れた管理ユーザーの居住地において、上記防護設備の異常事態とその発生個所を知ることができ、これを予め確認した上で、設置現場にある防護設備の異常事態が発生している個所へ直行し、その異常事態の修繕(補修)をワンポイント的に早く行えるのであり、その防護設備における維持管理の省力化に役立ち、農作物や果実などを獣害から防護することができる。
【0050】
その場合、請求項2や請求項3の構成を採用するならば、クラウドサーバの画像解析部やIOT観測装置の画像解析部によって、そのIOT観測装置のカメラによって撮影された測定結果(OTDR波形データ又はイベントリストデータ)の画像を数値化し、デジタル表示画像としてクラウドサーバに表示するようになっているため、光ファイバーケーブルのイベントとその発生個所を容易に正しく確認することができるほか、そのケーブルのイベントが発生した時には、クラウドサーバから管理ユーザー端末へアラートが発信されるため、防護設備の修繕をタイミング良く行えるのである。
【0051】
他方、請求項4の構成によれば、携帯電話サービスのエリヤ外にある奥深い山間部の栽培地域でも、請求項1と同等の上記効果を得られるのであり、その防護設備の維持管理を省力的に行うことができる。
【0052】
上記請求項1、4の何れにあっても、獣害対策用防護設備の異常事態検知センサーとして機能する光ファイバーケーブルが、その防護設備自身の距離方向に沿って全体的な連続の配線状態に取り付け一体化されているため、光パルス試験器(OTDR)により光ファイバーケーブルを測定した結果から、その光ファイバーケーブルのイベントを検知することができれば、そのイベントの発生は防護設備自体の破損や歪み変形、倒壊、その他の異常事態に起因する付随的なものと合理的に判定することができ、しかもそのイベントの発生個所から上記防護設備における異常事態の発生個所を特定することもできるため、上記効果を得られるのである。
【0053】
請求項5の構成を採用するならば、防護設備が携帯電話サービスのエリヤ内とエリヤ外との何れに設置されていても、その防護設備に取り付けられた固定型の光パルス試験器によって、光ファイバーケーブルのイベントを定期的に測定し、その測定結果としてのOTDR波形データ又はイベントリストデータをIOT観測装置からクラウドサーバへ、確実に安定良く送信することができる。
【0054】
また、請求項6の構成を採用するならば、IOT観測装置の具備するカメラによって、光パルス試験器の測定結果表示画面を円滑に正しく撮影することができるほか、その光パルス試験器とカメラとを何れも制御ボックスから取り出して、各々携帯や新品との交換などを行える利便性もある。
【0055】
請求項7の構成を採用するならば、各栽培地域に複数の防護設備が設置されているような場合に、その各防護設備に取り付けられた光ファイバーケーブルの配線図を利用して、その配線図上にプロットされた着色カラーのピンを識別することにより、そのピンを管理ユーザー端末からクリックすることとも相俟って、異常事態の発生している光ファイバーケーブルを極めて容易に特定することができ、その異常事態の内容も正しく確認し得るのである。
【0056】
更に、請求項8の構成によれば、固定型の光パルス試験器やIOT観測装置などを防護設備の端部位置や出入り口付近へ据え付け設置する必要がなく、可搬型(携帯式)の光パルス試験器を防護設備の設置現場へ持参して、その防護設備に配線されている光ファイバーケーブルの基端部(始端部)へ接続使用することにより、その光ファイバーケーブルのイベント(障害/異常事態)を測定することができるため、その測定結果を光パルス試験器の表示部から閲覧し得ることとも相俟って、著しく便利であると共に、必要な構成を簡素化できる効果もある。
【0057】
その場合、請求項9の構成を採用するならば、イベントが発生した異常事態のケーブル単位体だけを、言わば部分的に新品のケーブル単位体と取り替えて、残余の正常なケーブル単位体と光コネクターを介して復旧的に接続配線することができ、長い一本物の光ファイバーケーブルを修繕作業する必要がない。
【0058】
請求項10の構成を採用するならば、上記防護設備の野生動物による破損や歪みなどのほか、強風を受けた倒木による光ファイバーケーブルのイベント(障害/異常事態)を検知(測定)しやすく、その光ファイバーケーブルが断線や折れ曲がり、押し潰しなどの異常状態を発生した場合、その異常事態が発生した一定長さのケーブル単位体だけを新品と取り替えて、残余の正常な状態にあるケーブル単位体と光コネクターを介して接続すれば足り、光ファイバーケーブルにおける全体の煩雑な修繕作業を省略できる効果がある。
【0059】
請求項11の構成を採用するならば、光ファイバーケーブルを上下2列に配線しつつも、これと接続使用する光パルス試験器やIOT観測装置は一基あれば足り、必要な構成の簡素化に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】本発明の第1実施形態に係る獣害対策用防護設備(フェンス)の設置状態を示す正面図である。
図2図1の一部を詳しく示す拡大図である。
図3】忍び返しを張り出し形成したフェンスの断面模式図である。
図4図3の模式的な斜面図である。
図5】フェンスユニット(フェンス単位体)の正面図である。
図6図5の平面図である。
図7】光ファイバーケーブル単位体の正面図である。
図8】光コネクターを分解して示す断面図である。
図9(a)】フェンスに対する光ファイバーケーブルの取付方法を示す断面模式図である。
図9(b)】図9(a)と別な取付方法を示す断面模式図である。
図10】ケーブルホルダーの平面図である。
図11図10の11-11線断面図である。
図12図10と別なケーブルホルダーの斜面図である。
図13】フェンスの支柱に対する光コネクターの縛り付け状態と、その光コネクターに対するパルス試験器の接続使用法を示す正面図である。
図14】本発明の第1実施形態に係る維持管理システムの全体構成を示すブロック図である。
図15】光パルス試験器による光ファイバーケーブルのイベント検知方式を示す作用説明図である。
図16】光パルス試験器の構成を示すブロック図である。
図17(a)】光ファイバーケーブルの測定結果におけるOTDR波形データの表示を説明する正面図である。
図17(b)】光ファイバーケーブルの測定結果におけるイベントリストデータの表示を説明する正面図である。
図18図14に示した維持管理システムの動作シーケンス図である。
図19図1のIOT観測装置を詳しく示す拡大断面図である。
図20】クラウドサーバの地図表示部におけるイベント発生個所の表示方法を示す説明図である。
図21】上記第1実施形態の第1部分変形実施形態に係る維持管理システムの全体構成を示すブロック図である。
図22図21に示した維持管理システムの動作シーケンス図である。
図23】上記第1実施形態の第2部分変形実施形態に係る維持管理システムの全体構成を示すブロック図である。
図24図23に示した維持管理システムの動作シーケンス図である。
図25】本発明の第2実施形態に係る維持管理システムの全体構成を示すブロック図である。
図26図25に示した維持管理システムの動作シーケンス図である。
図27】光ファイバーケーブルの一端部(基端部/始端部)に対する可搬型光パルス試験器の接続使用状態を例示する図1に対応する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、図面に基いて本発明の好適な実施形態を詳述する。図1~〇はその第1実施形態に係る獣害対策用防護設備の維持管理システムを示しており、(F)は携帯電話サービスのエリヤ内にある農作物や果実などの栽培地域(市区町村の集落)毎に、例えばその田畑の周囲に沿って張り巡らされた防護設備としてのフェンス(柵)であって、多数の支柱(11)と網面体(12)とを備えている。
【0062】
その支柱(11)は金属パイプや棒杭などから成り、地面(GL)に打ち込み固定されている。網面体(12)は金網やワイヤーメッシュ、樹脂ネットなどから成り、その支柱(11)と連接一体化された状態にある。その網面体(12)の網目としては、約10cm以下に小さく形成することが好ましい。
【0063】
また、上記フェンス(防護設備)(F)の高さ(H)は例えば約2.0~2.5mとして、鹿の侵入を防ぐことができるようになっており、その支柱(11)同士の隣り合う間隔ピッチ(L1)は例えば約2mとして、網面体(12)を安定良く強固に支持している。
【0064】
その場合、図3、4に例示する如く、フェンス(F)の上端部から約45cmだけ斜め外向きに忍び返し(13)を張り出すことによって、鹿の飛び越しを防止したり、同じくフェンス(F)の下端部から約50cmだけ外向き水平に忍び返し(14)を張り出して、これを地面(GL)へ埋め込むと共に、その忍び返し(14)の張り出し先端部をアンカーピンやペグ(15)などにより、地面(GL)へ固定して、猪による穴堀りやフェンス(F)の持ち上げなどを防止したりすることが望ましい。
【0065】
更に、上記フェンス(F)における地面(GL)から高さ:約20cmまでの地際には、金属パイプ(16)を水平に固定横架させることにより、猪のくぐり抜けや突破などを防止すべく、その網面体(12)を増強することが好ましい。この高さ位置にある金属パイプ(16)は草刈り作業の境界線として使うことができ、これよりも上側に後述の光ファイバーケーブルを配線する一方、下側に草刈り刃(図示省略)を挿入して草刈り作業することにより、その草刈り作業に起因して光ファイバーケーブルが断線してしまうおそれを予防できる利点もある。
【0066】
特に、上記フェンス(F)は図5、6のようにその高さ(H)と、支柱(11)の間隔ピッチ(L1)を備えた一定単位の矩形なフェンスユニット(Fu)として、その多数のフェンスユニット(Fu)を例えば隣り合う支柱(11)同士の着脱可能なクランプ金具(図示省略)などによる連接構造に組み立てることにより、フェンス(F)に後述の破損や歪み、倒壊、その他の異常事態が発生した場合、そのフェンスユニット(フェンス単位体)(Fu)毎に新品のそれと取り替えることもできるように設定しておくことが好ましい。
【0067】
尚、獣害対策用防護設備としてのフェンス(F)を田畑の周囲(区画の境界部)に張り巡らす旨として説明したが、そのフェンス(F)を全体的な閉鎖回路となる設置状態に限定する趣旨ではなく、フェンス(F)としてはその切り離し端部や出入り口がある平面視の直線や曲線などに配列設置されることもあり得る。
【0068】
何れにしても、上記防護設備としてのフェンス(F)には鹿や猪、熊、その他の野生動物の摂餌行動による破損や歪み変形などを初め、強風を受けたり、蔓性植物が絡み付いたりして起こる倒木や、経年劣化による損壊、その他の異常事態を検知すべく、そのセンサーとして機能する光ファイバーケーブル(17)が、そのフェンス(F)の延在する距離(長さ/道程)方向に沿って連続的な配線状態に取り付け一体化されている。
【0069】
図1はその光ファイバーケーブル(17)における配線状態の一例を示しており、上記フェンス(防護設備)(F)における地面(GL)からの一定な高さ位置(先に例示した約2.0~2.5m)にある上端部と、その地面(GL)とほぼ同等の高さ位置にある下端部との2列に配線されている。その上下2列の配線によって、鹿と猪の侵入行動に対処し得るようになっている。
【0070】
その場合、光ファイバーケーブル(17)を図7に示すように、その長さ(L2)が一定(例えば約10m)な光ファイバーケーブル単位体(17u)の複数本から、プッシュ・プル方式やネジ締め方式、バヨネット締結式などの各種光コネクター(C)による着脱・交換自在に接続一本化することが望ましい。その短いケーブル単位体(17u)毎に新品との取り替えを行えるからである。
【0071】
図8はそのプッシュ・プル方式の光コネクター(C)を例示しており、(18)は光アダプター(SCアダプター)(19)を介して抜き差し自在に差し込み接続されたSCコネクターであって、そのフェルール(20)に光ファイバーの切り離し端部が固定されている。(21)は光アダプター(19)に内蔵された割スリーブであり、これによってフェルール(20)を同芯状態に突き合わせ固定するようになっている。
【0072】
特に、上記野生動物の侵入行動や倒木などによる強大な引張り力が光ファイバーケーブル(17)に突然作用した時、自ずと切り離される(引き抜かれる)こととなるプッシュ・プル方式の光コネクター(C)(18)を用いて、その光ファイバーケーブル(17)のケーブル単位体(17u)同士を接続配線しておくことにより、意図的な断線状態を起生させ、そのランダムに破損した光ファイバーケーブル(17)の復旧(修繕)作業に必要となる多大な時間と労力並びに経費を省略できるように定めることが好ましい。
【0073】
また、上記フェンス(F)の上端部と下端部へ2列に配線した光ファイバーケーブル(17)を、図1に併記する如く、その距離方向へ延びる先端部(終端部)において、光コネクター(C)を介して連続する滑らかな円弧状にUターン(弯曲)させることも好適である。
【0074】
そうすれば、そのUターンされた上端部にある光コネクター(C)と、同じく下端部にある光コネクター(C)との間隔距離(D)は、上記フェンス(F)の高さ(H)とほぼ同じ寸法(先に例示した約2.0~2.5m)として、光ファイバーケーブル(17)におけるケーブル単位体(17u)の長さ(L2)(先に例示した約10m)よりも小さく(短く)なるため、後述するIOT測定装置のOTDR測定部によって光ファイバーケーブル(17)の損失分布特性や測定光パルスの伝送不能な異常事態/障害(以下、イベントということもある)を測定(検知)する際、その測定(検知)を光コネクター(C)による接続部も支障なく行えることが相俟って、上記Uターン部分を光ファイバーケーブル(17)における上下分かれ目(分岐点)の位置であると特定できる利点がある。
【0075】
尚、フェンス(防護設備)(F)における上端部と下端部との2列に配線された状態を説明したが、そのフェンス(F)を設置する栽培地域の現場状況次第では、上記フェンス(F)の上端部における光ファイバーケーブル(17)の配線を省略し、その下端部だけに配線しても良く、また上端部と下端部に加えて、その上下相互間における適当な中途高さ位置(例えば地面から約50cmまでの高さ位置)にも、光ファイバーケーブル(17)を配線することができる。上記した下端部の配線に代えて又は加えて、地面(GL)から一定深さ(例えば約5~10cm)までの地中へ、埋込み配線状態に敷設しても良い。
【0076】
更に、光ファイバーケーブル(17)を上記フェンス(防護設備)(F)へ取り付け一体化する方法としては、そのフェンス(F)の網面体(12)へ光ファイバーケーブル(17)を図9(a)のように編み込み固定する方法や、図9(b)のようにフェンス(F)の支柱(11)と網面体(12)へ、結束線材や結束バンドなどの適当な結束具(22)を介して縛り付け固定する方法などを採用することができる。
【0077】
その何れの方法を採用する場合でも、フェンス(F)に配線された光ファイバーケーブル(17)が、そのフェンス(F)から脱落しないことは勿論のこと、強風を受けた倒木や野生動物の強い能動勢力によって、特に上下方向へ過度に大きく弯曲変形されず、常時直線状態を安定良く維持できるように、図10~12のような光ファイバーケーブル(17)の通し込み可能なケーブルホルダー(23)(24)を、フェンス(F)の支柱(11)又は/及び網面体(12)へ組み付け固定して、そのケーブルホルダー(23)(24)へ光ファイバーケーブル(17)を通し込んだり、またその通し込む方法に代えて又は加えて、図2のように上記フェンス(F)の下端部に配線された光ファイバーケーブル(17)が、猪によって持ち上げられないようペグやアンカーピン(25)を地面(GL)へ打ち込み固定したり、更に上記光コネクター(C)(18)の就中光アダプター(19)を図13のように、フェンス(F)の支柱(11)や網面体(12)へ上記結束具(22)によってクロス状態などに縛り付け固定したりしておくことが望ましい。
【0078】
(26)は図10、11に例示したケーブルホルダー(23)のケーブル受け入れ半筒、(27)はそのフェンス(F)の支柱(11)に抱き付く包囲バンド、(28)はその包囲バンド(27)とケーブル受け入れ半筒(26)との張り出しフランジ(27y)(26x)同士をフェンス(F)の網面体(12)へ挟み付け固定する複数のネジ締結具、(29)は図12に例示した別なケーブルホルダー(24)のケーブル受け入れ凹溝、(30)はそのフェンス(F)の網面体(12)へ弾圧的に喰い付き固定される複数の係止爪であり、上記凹溝(29)に受け入れた光ファイバーケーブル(17)を網面体(12)へ押し付けるようになっている。
【0079】
本発明の第1実施形態に係る上記フェンス(防護設備)(F)の維持管理システムは図14のように、そのフェンス(F)の破損や歪み変形、倒壊、その他の異常事態に起因する上記光ファイバーケーブル(17)の断線や過度な屈曲(折れ曲がり)、押し潰し、その他の付随的なイベント(障害/測定光パルスの伝送不能な異常事態)を検知(測定)するための光パルス試験器(Optical Time Domain Reflectometer)(R)と、その光パルス試験器(OTDR)(R)による測定の結果が光ファイバーケーブル(17)のイベントとして、光パルス試験器(R)に表示されたOTDR波形データをカメラ撮影する(センサー情報を取得する)ためのIOT観測装置(A)と、そのIOT観測装置(A)に4Gや5G、LTEなどのモバイル回線を介して接続されたクラウドサーバ(ウェブサーバ)(W)と、そのクラウドサーバ(W)にインターネットを介して接続された管理ユーザー端末(M)とから構成されており、上記フェンス(F)の管理ユーザーがその設置現場にあるフェンス(F)の異常事態を直に見て廻り点検する必要なく、その維持管理を軽労力でのタイミング良く行えるようになっている。
【0080】
先ず、光パルス試験器(OTDR)(R)は自ら測定光パルスを光ファイバーケーブル(17)へ入射し、その光ファイバーケーブル(17)から戻ってくる反射戻り光(後方散乱光)の強さの時間的な変化を測定することにより、光ファイバーケーブル(17)に存在する損失分布特性やイベントの発生個所(障害点)を検知する。
【0081】
つまり、図15を参照して言えば、光パルス試験器(R)から光ファイバーケーブル(17)に入射された測定光パルス(P1)が、イベント(障害)(X)に到達すると、その位置から後方散乱光(P2)が発生するため、イベント(X)を検知することができるのみならず、そのイベント(X)までの判明(測定)した距離(Y)をイベント(X)の発生個所(障害点)として特定することもできることになる。
【0082】
そのために、光パルス試験器(R)は図16のブロック図に示すようなOTDR波形の測定部(31)と、その波形を解析してイベントを検知する制御部(CPU)(32)と、その波形の解析結果のデータを表示する表示部(液晶画面)(33)を備えており、上記フェンス(F)に取り付け一体化された光ファイバーケーブル(17)における配線上の一端部(基端部/始端部)へ、光コネクター(C)を介して接続使用されるようになっている。
【0083】
そして、光パルス試験器(R)による光ファイバーケーブル(17)の測定(検知)は定期的(定時)(例えば1日に少なくとも1回や毎日朝・昼・夜の3回)に行われ、その検知出力信号に相当する測定結果が、図17(a)に例示するような光ファイバーケーブル(17)の距離と損失レベルとの2軸で表す波形データとして、光パルス試験器(R)の表示部(33)に表示されることになる。
【0084】
但し、その表示方法としては波形データに代えて、図17(b)に例示するような光ファイバーケーブル(17)の同じく距離と損失レベルとの2列のリストで表すイベントリストデータを、その光パルス試験器(R)の表示部(33)に表示しても良い。尚、上記測定を行う定期的な周期の設定は、フェンス(F)における設置現場の状況や野生動物の多さなどを考慮して、クラウドサーバ(W)上から遠隔的に変更調整することができる。
【0085】
IOT観測装置(A)は図14のブロック図に示す如く、上記光パルス試験器(R)の表示部(33)に表示された測定結果としての波形データ又はイベントリストデータを撮影するカメラ(34)のほかに、GPS取得部(35)や制御部(36)、その電源となるバッテリー(37)、そのバッテリー充電用のソーラーパネル(38)、クラウドサーバ(W)へ無線通信するモバイル回線部(39)も備え、上記フェンス(F)の一端部や出入り口付近などへ据え付け固定型として設置されており、そのカメラ(34)による上記波形データ又はイベントリストデータの撮影画像が図18の動作シーケンス図から明白なように、IOT観測装置(A)のモバイル回線部(39)からクラウドサーバ(W)へ無線送信されるようになっている。
【0086】
その場合、光パルス試験器(R)の表示部(33)に表示された上記光ファイバーケーブル(17)の波形データ又はイベントリストデータ(測定結果)を、IOT観測装置(A)のカメラ(34)によって定期的に安定良く撮影できる限りでは、その光パルス試験器(R)とカメラ(34)とを向かい合う対応位置関係として、何れも据え付け固定してさしつかえないが、図19に例示するような上記フェンス(F)の一端部や出入り口付近などに据え立てた支柱(40)へ、IOT観測装置(A)の防水・防錆処理された開閉可能な制御ボックス(41)を取り付け、その内部に据え付けた試験器受け台(42)とカメラ支持台(43)へ、上記光パルス試験器(R)とカメラ(34)を向かい合う対応位置関係として、しかも各別に制御ボックス(41)へ出し入れできるように格納設置し、その光パルス試験器(R)の就中測定部(31)を光ファイバーケーブル(17)の一端部(基端部/始端部)へ、光コネクター(C)によって接続使用することが好ましい。(44)は光パルス試験器(R)の表示部(液晶画面)(33)に対するカメラ(34)の指向角度を調整し得る回動枢軸であり、ネジ締結具(図示省略)から成る。
【0087】
そうすれば、上記IOT観測装置(A)のカメラ(34)をその支持台(43)から、また光パルス試験器(R)をその受け台(42)から各々取り外し、何れも制御ボックス(41)から外部へ抜き出して、自由自在に持ち運んだり(携帯したり)、その新品と交換したりすることができ、著しく便利である。
【0088】
特に、光パルス試験器(R)はそれ自身図13に示唆するような光アダプター(SCアダプター)(19)を具備しているため、これを上記制御ボックス(41)から取り出して携帯し、後述する光ファイバーケーブル(17)の異常事態が発生したケーブル単位体(17u)だけを新品のそれと取り替えた時、その取り替えたケーブル単位体(17u)の光コネクター(SCコネクター)(C)(18)へ光パルス試験器(R)の光アダプター(SCアダプター)(19)を接続使用することにより、その新品のケーブル単位体(17u)から光ファイバーケーブル(17)の他端部(先端部/終端部)に至るまで、測定光パルスが支障なく伝送可能になったか否かという中継状態の試験(確認)を、フェンス(F)の設置現場において即席的に便利良く行える利点がある。
【0089】
上記クラウドサーバ(W)は図14のブロック図に示すような制御部(45)と通信部(46)並びにデータベース(47)のほか、測定結果表示部(48)と地図表示部(49)も備えており、上記IOT観測装置(A)から光パルス試験器(R)による光ファイバーケーブル(17)の定期的な測定結果(上記波形データ又はイベントリストデータ)の撮影画像を受信した時には、これをデータベース(47)に記憶(蓄積)すると共に、その測定結果としての上記波形データ又はイベントリストデータを測定結果表示部(48)に表示し、更に上記光ファイバーケーブル(17)におけるイベントの発生個所(障害点)を地図表示部(49)に表示する。
【0090】
その地図表示部(49)への表示手段としては図20に例示する如く、各栽培地域の地図上へフェンス(F)に取り付けられた光ファイバーケーブル(17)の配線図(50)を描画して、その配線図(50)における上記イベントの発生個所(障害点)に、着色カラーが好ましくは赤色のピン(51)又は×印のマークをプロットしておく一方、イベントの発生していない正常な状態にある配線図(50)には、その赤色と識別できる適当な着色カラー(例えば青色)のピン(52)をプロットしておく。しかも、その正常な状態を示すピン(52)の着色カラーは、市区町村の地域(集落)毎に異なるものとして、識別できるように定めることが望ましい。
【0091】
そして、上記クラウドサーバ(W)の地図表示部(49)におけるイベント(X)の発生個所にプロットされた赤色のピン(51)又は×印のマークを、フェンス(F)の管理ユーザーがその使用する管理ユーザー端末(M)からクリックすれば、そのイベントの内容と発生個所を同じくクラウドサーバ(W)の測定結果表示部(48)に表示された上記波形データ又はイベントリストデータの閲覧によって、具体的に確認することができるように定めることが好ましい。
【0092】
更に、上記管理ユーザー端末(M)は自治体(市区町村)の獣害対策課や管理事務所、栽培地域毎の自治会、管理委託業者などに設置されたパソコンや、これらのスタッフが所持するスマートフォン、タブレット端末、その他のモバイル通信端末として、図14のブロック図に示すような制御部(53)と通信部(54)並びに表示部(55)を備えており、上記フェンス(F)の管理ユーザー(上記スタッフである管理者や地域住民など)が図18の動作シーケンス図に示す如く、その使用する端末(M)からクラウドサーバ(W)へアクセスして、上記パルス試験器(R)による光ファイバーケーブル(17)の定期的な測定結果(イベントの検知出力信号)を、そのクラウドサーバ(W)の上記測定結果表示部(48)と地図表示部(49)から閲覧することにより、その光ファイバーケーブル(17)のイベントとその発生個所(障害点)を確認することができるようになっている。
【0093】
また、上記光パルス試験器(R)によって光ファイバーケーブル(17)におけるイベント(障害/異常事態)の発生が検知された時には、その検知出力信号(上記測定結果)の撮影画像を受信したクラウドサーバ(W)の通信部(46)から図18のように、管理ユーザー端末(M)へメールやLINEなどによって、異常事態であることの通報(配信)を行うようになってもいる。
【0094】
そのため、上記フェンス(F)の管理ユーザーとしてはその異常通報を受けた随時に、クラウドサーバ(W)の測定結果表示部(48)と地図表示部(49)をタイミング良く閲覧して、上記イベントの内容と発生個所(障害点)を具体的に確認することができる。
【0095】
その結果、フェンス(F)の管理ユーザーとしては従来のように、そのフェンス(F)の設置現場へ定期的に出向して、これが延在する全体距離分を直かに見て廻ることにより、破損や歪み変形、倒壊、その他の異常事態が発生しているか否か点検(探索)する必要はなく、その設置現場から遠く離れた管理ユーザーの居住地において、上記フェンス(F)の異常事態とその発生個所を把握(知得)することができ、その予め確認した上で、設置現場にあるフェンス(F)の異常事態が発生している個所へ直行し、その異常事態の修繕(補修)をワンポイント的に早く行えるのであり、フェンス(F)における維持管理の省力化に著しく寄与する。
【0096】
その場合、上記フェンス(F)を多数のフェンスユニット(フェンス単位体)(Fu)からクランプ金具などによって、着脱可能な連接状態に組み立てると共に、そのフェンス(F)に取り付け配線する光ファイバーケーブル(17)を、これも複数本の光ファイバーケーブル単位体(17u)から光コネクター(C)によって、着脱・交換自在に接続一本化するならば、上記フェンス(F)とその異常事態の検知センサーとして機能する光ファイバーケーブル(17)とを修繕する代わりに、そのフェンスユニット(フェンス単位体)(Fu)毎や光ファイバーケーブル単位体(17u)毎の言わば部分的に新品と取り替えることも可能となるため、煩雑な上記修繕作業を行う必要がなくなり、その省力化にますます優れる。
【0097】
次に、図21~24は上記第1実施形態に係るフェンス(防護設備)維持管理システムの第1、2部分変形実施形態を示しており、その図21、22の第1部分変形実施形態では上記IOT観測装置(A)の構成中に、それ自身の保有するカメラ(34)によって撮影された画像の解析部(56)も具備している。
【0098】
つまり、上記光パルス試験器(OTDR)(R)の表示部(33)に表示された光ファイバーケーブル(17)の測定結果である波形データ又はイベントリストデータを、IOT観測装置(A)のカメラ(34)によって撮影した画像からは、未だそのイベントの発生個所(障害点)を管理ユーザーの誰もが、必ず正確に読み取れる(把握できる)とは限らないため、その一目瞭然に正しく理解できるように、IOT観測装置(A)の画像解析部(56)において上記測定結果(波形データ又はイベントリストデータ)を数値化し、そのデジタル表示画像の正常値であるか異常値であるかを、自動的に判定するようになっている。
【0099】
そして、その定期的な測定結果の数値化されたデジタル表示画像が、正常値であれば、その正常な状態としてIOT観測装置(A)からクラウドサーバ(W)へ送信されるので、管理ユーザーとしてはクラウドサーバ(W)へアクセスして、その測定結果表示部(48)と地図表示部(49)を閲覧することになる。
【0100】
他方、上記測定結果の数値化されたデジタル表示画像が異常値であれば、その光ファイバーケーブル(17)にイベント(障害/異常事態)が発生している事態として、IOT観測装置(A)からクラウドサーバ(W)へ送信され、そのクラウドサーバ(W)の通信部(46)から管理ユーザー端末(M)へ、アラートが発信されるようになっている。
【0101】
そのため、上記フェンス(F)の管理ユーザーがクラウドサーバ(W)の測定結果表示部(48)と地図表示部(49)を閲覧して、そのイベントの発生個所(障害点)を正しく確認した上で、管理しているフェンス(F)の設置現場へ直行することができる。
【0102】
また、図23、24の第2部分変形実施形態ではクラウドサーバ(W)の構成中に、上記IOT観測装置(A)のカメラ(34)によって撮影された画像の解析部(57)を備えており、そのクラウドサーバ(W)の画像解析部(57)において上記光パルス試験器(R)による測定結果(光ファイバーケーブルの波形データ又はイベントリストデータ)の数値化を行うと共に、そのデジタル表示画像の正常値であるか異常値であるかを、やはり自動的に判定するようになっている。その他の構成と動作シーケンスは上記第1部分変形実施形態と同じである。
【0103】
尚、その第1、2部分変形実施形態におけるその他の構成と動作シーケンスは図1~20の上記第1実施形態と実質的に同じであるため、その図21~24に図1~20と同じ符号を記入するにとどめて、その詳細な説明を省略する。
【0104】
更に、図25、26は本発明の第2実施形態に係る獣害対策用防護設備の維持管理システムを示しており、その構成上図1~20の第1実施形態と異なる点は下記の通りである。
【0105】
即ち、その第2実施形態では上記防護設備としてのフェンス(F)が、携帯電話サービスのエリヤ外にある栽培地域(市区町村の集落など)毎に、第1実施形態のそれと同様に張り巡らされている。そのフェンス(F)の物理的な構造やこれに対する光ファイバーケーブル(17)の取付方法並びに配線状態などについては、上記第1実施形態と同一であって良い。
【0106】
その光パルス試験器(OTDR)(R)によって検知(測定)された光ファイバーケーブル(17)の上記イベント(障害/測定光パルスの伝送不能な異常事態)とその発生個所が表示された試験器(R)自身の表示部(33)を、カメラ(34)によって撮影するIOT観測装置(A)は、第2実施形態の場合上記第1実施形態のモバイル回線部(39)に代わる無線通信部(58)を備えた据え付け固定型の子機として、やはりフェンス(F)の端部位置や出入り口付近などに設置されている。
【0107】
しかも、その第2実施形態の子機(IOT観測装置)(A)は図21、22に示した上記第1実施形態の第1部分変形実施形態と同じく、自身の保有するカメラ(34)によって定期的に撮影した画像の解析部(56)も備えており、その画像解析部(56)での数値化されたデジタル表示画像を、上記無線通信部(58)から携帯電話サービスのエリヤ内に設置された親機(基地局)(B)へ、無線送信し得るようになっている。
【0108】
その親機(基地局)(B)は上記子機(IOT観測装置)(A)からの無線通信を受信する無線通信部(59)のほか、制御部(60)とそのソーラーパネル(61)により充電されるバッテリー(電源)(62)並びに子機(A)から受けた光ファイバーケーブル(17)の上記測定結果(イベントの検知出力信号)を、クラウドサーバ(W)へモバイル通信するためのモバイル回線部(63)も備えている。
【0109】
その場合、親機(B)は複数の子機(A)から上記測定結果(イベントの検知出力信号)の無線送信を受けることができるようになっている。各子機(A)は位置情報(GPS)の取得機能を有するため、その複数の設置場所を識別できることは言うまでもない。また、上記子機(A)から親機(B)への無線通信としては、山間部での遠距離用にふさわしい150MHzのLPWA通信方式を採用することが望ましい。
【0110】
尚、第2実施形態におけるクラウドサーバ(W)と管理ユーザー端末(M)の構成やその図26に示す動作シーケンスなどについては、上記第1実施形態やその第1実施形態の第1部分変形実施形態と実質的に同一であるため、その図25、26に図1~20と同じ符号を記入するにとどめて、その詳細な説明を省略する。
【0111】
上記第1、2実施形態の何れにおいても、獣害対策用防護設備としてのフェンス(F)が携帯電話サービスのエリヤ内にあるか否かを問わず、その異常事態の検知機能を有する光ファイバーケーブル(17)が、フェンス(F)自体の延在する距離(長さ/道程)方向に沿って全体的に連続する配線状態に取り付け一体化されているため、上記光パルス試験器(OTDR)(R)により光ファイバーケーブル(17)を測定した結果(イベントの検知出力信号)の波形データ又はイベントリストデータに基づいて、その光ファイバーケーブル(17)のイベント(障害/異常事態)を検知することができれば、そのイベントの発生はフェンス(F)自体の破損や歪み変形、倒壊、その他の異常事態に起因する付随的なものとみなすことができ、しかもそのイベントの発生個所(障害点)から上記フェンス(F)における異常事態の発生個所を特定(知得)することもできる。
【0112】
その結果、図18、22、24、26の動作シーケンス図から明白なように、上記フェンス(F)の管理ユーザーとしてはその保有する管理ユーザー端末(M)を使用して、クラウドサーバ(W)の測定結果表示部(48)と地図表示部(49)を閲覧することにより、フェンス(F)における異常事態の発生個所を確認した上で、設置現場にあるフェンス(F)の異常事態発生個所へ直行し、その異常事態をピンポイント的に早く修繕することができ、フェンス(F)の距離方向に沿う全体長さ分を定期的にパトロールして、その異常事態の煩わしい調査(探索)を行う必要はない。そのための多大な労力や時間などを省略しつつも、農作物や果実などを獣害から防護できるのである。
【0113】
特に、上記第1実施形態の第1部分変形実施形態と第2実施形態ではそのIOT観測装置(子機)(A)に各々画像解析部(56)を備え、また同じく第1実施形態の第2部分変形実施形態ではそのクラウドサーバ(W)に画像解析部(57)を備えており、その何れにおいても光パルス試験器(OTDR)(R)の測定結果(光ファイバーケーブルの波形データ又はイベントリストデータ)をカメラ(34)が撮影した画像を、上記画像解析部(56)(57)によりデジタル表示画像として数値化し、その異常事態にある場合クラウドサーバ(W)から管理ユーザー端末(M)へ、アラートを発信するようになっているため、上記フェンス(F)の修繕(補修)をますますタイミング良く速やかに実行できる利点がある。
【0114】
殊更、光ファイバーケーブル(17)の断線や過度な屈曲、押し潰し、その他のイベント(障害/異常事態)を前提として、フェンス(F)における破損や歪み変形、倒壊、その他の異常事態を検知する方式ではなく、その光ファイバーケーブル(17)を図8に例示したような複数本のケーブル単位体(17u)から、プッシュ・プル方式の光コネクター(SCコネクター)(C)(18)による着脱・交換自在に接続一本化しておき、その光ファイバーケーブル(17)に突然強大な引張り力が加わった時だけ、自ずと光コネクター(C)(18)の就中光アダプター(SCアダプター)(19)から分離して(引き抜けて)、意図的な断線状態が起生されることとなるように設定することが好ましい。
【0115】
そうすれば、フェンス(F)の距離方向に沿って長く延在する連続的な配線状態の光ファイバーケーブル(17)としては、その発生したイベントの修繕作業を行う必要がなく、イベントが発生した異常事態の光ファイバーケーブル単位体(17u)だけを、言わば部分的に新品と取り替えて、そのイベントの発生していない残余の正常なケーブル単位体(17u)と光コネクター(C)(18)を介して、復旧的に接続配線すれば足りる。
【0116】
その場合、光ファイバーケーブル(17)が上下方向へ過度に大きく弯曲形成すると、その光アダプター(SCアダプター)(19)を介して接続された配線状態にある光コネクター(SCコネクター)(C)(18)同士の着脱(抜き差し)作用が、自ずと円滑に営まれないおそれがあるため、図10~13に基づいて説示したように、その複数本のケーブル単位体(17u)から成る光ファイバーケーブル(17)の接続状態を、上記ケーブルホルダー(23)(24)や光アダプター(19)の適当な結束具(22)などによって、常時安定な直線に保てるように取り付けておくことが望ましい。
【0117】
図示実施形態の何れにあっても、獣害対策用防護設備のフェンス(F)にその破損や歪み変形、その他の異常事態の検知センサーとなる光ファイバーケーブル(17)を、好ましくは複数本の上記ケーブル単位体(17u)から各種光コネクター(C)によって、着脱・交換可能な接続配線状態として取り付け固定しておき、そのフェンス(F)の管理ユーザーが可搬型(携帯式)の光パルス試験器(OTDR)(R)を持参して、フェンス(F)の設置現場へ定期的に出向し、その設置現場において上記接続配線状態にある光ファイバーケーブル(17)の一端部(基端部/始端部)へ図13図27のように、その光パルス試験器(R)を光コネクター(C)を介して接続使用し、上記光ファイバーケーブル(17)のイベント(障害/異常事態)を測定することにより、そのイベントの発生個所(障害点)を特定(検知)することも可能である。
【0118】
その測定結果である光ファイバーケーブル(17)の波形データ又はイベントリストデータは、光パルス試験器(R)自身の表示部(液晶画面)(33)に表示されるため、これを管理ユーザーが直に閲覧(目視観察)して、その光ファイバーケーブル(17)におけるイベントの発生原因となっているフェンス(F)の異常事態を確認し、そのフェンス(F)の修繕(補修)を行えば良い。
【0119】
その場合でも、光ファイバーケーブル(17)におけるイベントが発生した異常事態のケーブル単位体(17u)だけを、部分的に新品のケーブル単位体(17u)と取り替えて、そのイベントが発生していない残余の正常なケーブル単位体(17u)と光コネクター(C)(18)を介して、復旧的に接続配線すれば足り、その光ファイバーケーブル(17)の他端部(先端部/終端部)に至るまで測定光パルスが伝送可能になったか否か(異常事態の有無)という中継状態についても、上記可搬型(携帯式)の光パルス試験器(R)を用いて、その場での即席的に試験(確認)することができ、著しく便利である。
【0120】
更に、フェンス(F)の設置現場において可搬型(携帯式)光パルス試験器(R)の使用により、光ファイバーケーブル(17)のイベント(障害/異常事態)を測定する場合にも、光ファイバーケーブル(17)に突然強大な引張り力が作用した時だけ、そのケーブル単位体(17u)の隣り合う同士が自ずとプッシュ・プル式光コネクター(C)(18)の就中光アダプター(19)から切り離されて、意図的な断線状態を生成し得るように定めておくならば、全体的な長い1本物の光ファイバーケーブル(17)を修繕する必要がなく、そのケーブル単位体(17u)の部分的な取り替えと上記フェンス(F)のワンポイント的な修繕だけを行えば足り、省力化の効果を得られる。
【0121】
尚、図示実施形態の何れにあっても光ファイバーケーブル(17)におけるイベントの発生個所(障害点)と対応位置するフェンス(F)の異常事態を修繕すべく、異常事態の発生個所をフェンス(F)の設置現場において位置確認しやすくするため、例えばフェンス(F)の就中支柱(11)や光ファイバーケーブル(17)の就中光コネクター(C)における一定な間隔距離(例えば50mや200m)を保つ毎に、番号や記号、着色、その他の目印(図示省略)を直接又は間接的に付与しておくことが望ましい。
【0122】
そうすれば、フェンス(F)における管理ユーザーの誰もがその管理上共有する目印の位置を基準として、そこからフェンス(F)自体に発生している異常事態の位置まで、僅かな短距離だけを見て歩けば良く、フェンス(F)の長くなればなる程その時間と労力などの節減に役立つ。
【符号の説明】
【0123】
(11)・・・・・・・支柱
(12)・・・・・・・網面体
(17)・・・・・・・光ファイバーケーブル
(17u)・・・・・・ケーブル単位体
(18)・・・・・・・SCコネクター
(19)・・・・・・・光アダプター
(23)(24)・・・ケーブルホルダー
(31)・・・・・・・測定部
(33)・・・・・・・表示部
(34)・・・・・・・カメラ
(35)・・・・・・・GPS取得部
(41)・・・・・・・制御ボックス
(48)・・・・・・・測定結果表示部
(49)・・・・・・・地図表示部
(50)・・・・・・・配線図
(51)(52)・・・ピン
(56)(57)・・・画像解析部
(A)・・・・・・・・IOT観測装置(子機)
(B)・・・・・・・・親機
(C)・・・・・・・・光コネクター
(F)・・・・・・・・防護設備(フェンス)
(GL)・・・・・・・地面
(M)・・・・・・・・管理ユーザー端末
(R)・・・・・・・・光パルス試験器
(X)・・・・・・・・イベント(障害/異常事態)
(Y)・・・・・・・・距離
(W)・・・・・・・・クラウドサーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9(a)】
図9(b)】
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17(a)】
図17(b)】
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
【手続補正書】
【提出日】2023-05-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0061
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0061】
以下、図面に基いて本発明の好適な実施形態を詳述する。図120はその第1実施形態に係る獣害対策用防護設備の維持管理システムを示しており、(F)は携帯電話サービスのエリヤ内にある農作物や果実などの栽培地域(市区町村の集落)毎に、例えばその田畑の周囲に沿って張り巡らされた防護設備としてのフェンス(柵)であって、多数の支柱(11)と網面体(12)とを備えている。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0074
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0074】
そうすれば、そのUターンされた上端部にある光コネクター(C)と、同じく下端部にある光コネクター(C)との間隔距離(D)は、上記フェンス(F)の高さ(H)とほぼ同じ寸法(先に例示した約2.0~2.5m)として、光ファイバーケーブル(17)におけるケーブル単位体(17u)の長さ(L2)(先に例示した約10m)よりも小さく(短く)なるため、後述する光パルス試験器(OTDR)によって光ファイバーケーブル(17)の損失分布特性や測定光パルスの伝送不能な異常事態/障害(以下、イベントということもある)を測定(検知)する際、その測定(検知)を光コネクター(C)による接続部も支障なく行えることが相俟って、上記Uターン部分を光ファイバーケーブル(17)における上下分かれ目(分岐点)の位置であると特定できる利点がある。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0116
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0116】
その場合、光ファイバーケーブル(17)が上下方向へ過度に大きく弯曲変形すると、その光アダプター(SCアダプター)(19)を介して接続された配線状態にある光コネクター(SCコネクター)(C)(18)同士の着脱(抜き差し)作用が、自ずと円滑に営まれないおそれがあるため、図10~13に基づいて説示したように、その複数本のケーブル単位体(17u)から成る光ファイバーケーブル(17)の接続状態を、上記ケーブルホルダー(23)(24)や光アダプター(19)の適当な結束具(22)などによって、常時安定な直線に保てるように取り付けておくことが望ましい。