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  • 特開-火災分析装置およびプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166914
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】火災分析装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08B 31/00 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
G08B31/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083344
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】桑名 秀明
【テーマコード(参考)】
5C087
【Fターム(参考)】
5C087AA02
5C087AA03
5C087AA04
5C087AA09
5C087AA25
5C087BB73
5C087DD04
5C087DD20
5C087EE14
5C087FF01
5C087FF02
5C087GG02
5C087GG09
5C087GG70
(57)【要約】
【課題】SNS等の投稿情報から、物理的な尺度による火災の分析を可能とする火災分析装置等を提供する。
【解決手段】火災分析装置3は、インターネット上に投稿された火災画像について、火災の発生位置を投稿された火災画像に付随する情報に基づいて取得する取得手段101と、火災画像から火炎の寸法を求める寸法推定手段102と、火炎の寸法、および、地図情報106と気象情報を用いて延焼シミュレーションを実行するシミュレーション手段104を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターネット上に投稿された火災画像について、火災の発生位置を前記投稿された火災画像に付随する情報に基づいて取得する取得手段と、
前記火災画像から火炎の寸法を求める寸法推定手段と、
を備えることを特徴とする火災分析装置。
【請求項2】
前記火炎の寸法、および、地図情報と気象情報を用いて延焼シミュレーションを実行するシミュレーション手段をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の火災分析装置。
【請求項3】
前記シミュレーション手段は、延焼シミュレーションを行うことにより、所定位置が延焼に至る予測時間を求めることを特徴とする請求項2記載の火災分析装置。
【請求項4】
前記予測時間を被通知者の端末に通知する通知手段をさらに備えることを特徴とする請求項3記載の火災分析装置。
【請求項5】
前記火炎の寸法を用いて、前記発生位置における火災の時系列変化を求める時系列変化推定手段をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の火災分析装置。
【請求項6】
コンピュータを、
インターネット上に投稿された火災画像について、火災の発生位置を前記投稿された火災画像に付随する情報に基づいて取得する取得手段と、
前記火災画像から火炎の寸法を求める寸法推定手段と、
を備える火災分析装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災の分析を行う火災分析装置とそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン等のモバイル端末の普及により、災害の発生地にいる一般人が、災害に関する情報をテキストや画像で各種SNS(Social Networking Service)上に投稿する事例が増えている。これらの投稿情報により、災害の発生を、別の位置にいてもリアルタイムで把握できるようになった。
【0003】
特許文献1には、SNSから火災等の災害関連の投稿情報を収集し、ハザードマップを作成する技術について記載されており、これにより火災等の災害の危険性を迅速に把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-109730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、SNSに投稿されたテキストから災害の影響レベルの判断をしているものの、災害の物理的な尺度に基づく判断は行われておらず、火災等の分析精度の面では発展の余地があった。
【0006】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、SNS等の投稿情報から、物理的な尺度による火災の分析を可能とする火災分析装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決するための第1の発明は、インターネット上に投稿された火災画像について、火災の発生位置を前記投稿された火災画像に付随する情報に基づいて取得する取得手段と、前記火災画像から火炎の寸法を求める寸法推定手段と、を備えることを特徴とする火災分析装置である。
【0008】
本発明では、SNS等のインターネット上の投稿情報から火災の分析を行う際に、火災の発生位置を取得するのに加え、火災画像(静止画または動画)から火炎の寸法という物理的尺度を推定することで、火災の分析精度を高めることができる。
【0009】
第1の発明の火災分析装置は、前記火炎の寸法、および、地図情報と気象情報を用いて延焼シミュレーションを実行するシミュレーション手段をさらに備えることが望ましい。
本発明では、前記のように火災の分析精度を高め、延焼シミュレーションを行うことで、所定位置が延焼に至る予測時間や、所定位置の延焼の可能性など、火災の危険性に関し確度の高い推定が可能となる。
【0010】
前記シミュレーション手段は、延焼シミュレーションを行うことにより、所定位置が延焼に至る予測時間を求めることが望ましい。また第1の発明の火災分析装置は、前記予測時間を被通知者の端末に通知する通知手段をさらに備えることも望ましい。
上記の予測時間を算出することにより、所定位置における火災対策の緊急性を把握することができる。これを被通知者端末に送信して通知することで、所定位置において、速やかな避難や可燃物の撤去等の火災対策を事前に行うことが可能となる。
【0011】
第1の発明の火災分析装置は、前記火炎の寸法を用いて、前記発生位置における火災の時系列変化を求める時系列変化推定手段をさらに備えることが望ましい。
これにより、発生位置における火災の推移を把握することができる。
【0012】
第2の発明は、コンピュータを、インターネット上に投稿された火災画像について、火災の発生位置を前記投稿された火災画像に付随する情報に基づいて取得する取得手段と、前記火災画像から火炎の寸法を求める寸法推定手段と、を備える火災分析装置として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、SNS等の投稿情報から、物理的な尺度による火災の分析を可能とする火災分析装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】火災分析システム1を示す図。
図2】火災分析装置3のハードウェア構成を示す図。
図3】火災分析装置3の機能を示す図
図4】火災分析装置3の処理を示すフローチャート。
図5】火災画像100の例。
図6】火災ハザードマップ200の例。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
(1.火災分析装置3)
図1は、本発明の実施形態に係る火災分析装置3を含む火災分析システム1を示す図である。火災分析システム1は、火災の発生地にいる投稿者がインターネット上に投稿した火災関連の投稿情報に基づき、火災分析装置3が火災の分析を行うものであり、火災分析装置3、投稿者端末4、サーバ5、被通知者端末6等を有する。
【0017】
図2は火災分析装置3のハードウェア構成を示す図である。火災分析装置3は、制御部31、記憶部32、入力部33、表示部34、通信部35等をバス等で接続して構成されたコンピュータにより実現できる。ただしこれに限ることは無く、適宜様々な構成をとることができる。
【0018】
制御部31はCPU、ROM、RAMなどから構成される。CPUは、記憶部32、ROMなどの記憶媒体に格納された火災分析装置3の処理に係るプログラムをRAM上のワークエリアに呼び出して実行する。ROMは不揮発性メモリであり、ブートプログラムやBIOSなどのプログラム、データなどを恒久的に保持している。RAMは揮発性メモリであり、記憶部32、ROMなどからロードしたプログラムやデータを一時的に保持するとともに、制御部31が各種処理を行うために使用するワークエリアを備える。
【0019】
記憶部32はハードディスクドライブやソリッドステートドライブ、フラッシュメモリ等であり、後述する処理に際し火災分析装置3が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OSなどが格納される。
【0020】
入力部33は、火災分析装置3に各種の入力を行うものであり、キーボード、マウス、テンキー等の入力装置を有する。
【0021】
表示部34は液晶ディスプレイ等であり、火災分析装置3の処理に係る各種の情報を表示する。
【0022】
通信部35は、サーバ5や被通知者端末6等と火災分析装置3との間の通信を媒介する通信インタフェースである。
【0023】
投稿者端末4は、SNS等のインターネット上に投稿を行う投稿者が用いる端末である。本実施形態では特に、投稿者端末4で撮影した火災画像が投稿情報としてインターネット上に投稿されるものとし、投稿者端末4としては、スマートフォンなどカメラ付きのモバイル端末が用いられる。
【0024】
サーバ5は、SNS等のインターネットサービスを提供する事業者のサーバであり、制御部、記憶部、通信部等を有するコンピュータによって実現できる。
【0025】
被通知者端末6は、火災の分析結果(後述する予測時間等)の通知を受ける被通知者が用いる端末であり、スマートフォンなどのモバイル端末が用いられるが、これに限ることはない。
【0026】
図3は、火災分析装置3の機能を示すブロック図である。図3に示すように、火災分析装置3は、取得手段101、寸法推定手段102、時系列変化推定手段103、シミュレーション手段104、通知手段105等を有し、記憶部32には地図情報106がデータベースとして格納される。
【0027】
取得手段101は、火災分析装置3の制御部31が、通信部35を介し、インターネット上に投稿された火災画像中の火災の発生位置を、当該火災画像に付随する情報に基づいて取得するものである。この付随情報については後述する。
【0028】
寸法推定手段102は、火災分析装置3の制御部31が、火災画像から火炎の寸法を求めるものである。
【0029】
時系列変化推定手段103は、火災分析装置3の制御部31が、火炎の寸法等を用いて、発生位置における火災の時系列変化を求めるものである。
【0030】
シミュレーション手段104は、火災分析装置3の制御部31が、火炎の寸法、地図情報106、気象情報等を用いて延焼シミュレーションを実行するものである。シミュレーション手段104は、延焼シミュレーションを行うことにより、所定位置が延焼に至る予測時間等を火災の分析結果として求める。
【0031】
通知手段105は、火災分析装置3の制御部31が、通信部35を介し、上記の予測時間等を被通知者端末6に通知するものである。
【0032】
地図情報106は、対象地域の建物や地理に関する情報を含む。建物に関する情報は、建物の平面形状、高さ、隣接建物との距離、構造(木造、鉄骨造等)、防耐火性能(耐火建築物、準耐火建築物、防火木造、木造建築物等)などの、建物内の延焼の推定に使用しうる情報を含み、地理に関する情報は、河川、公園、緑地、道路等の建物間の延焼の推定に使用しうる情報を含む。
【0033】
(2.火災分析方法)
次に、本実施形態の火災分析装置3が行う処理(火災分析方法)について説明する。図4は火災分析装置3の処理を示すフローチャートである。図4の各ステップは、火災分析装置3の制御部31が火災分析装置3の各部を制御して実行する。
【0034】
本実施形態において、火災分析装置3は、まず、インターネット上に投稿された火災画像を取得する(S1)。火災画像は、火災の発生位置にいる投稿者が投稿者端末4により撮影し、SNS等に投稿した投稿情報であり、静止画と動画の双方が含まれる。
【0035】
S1において、火災分析装置3は、サーバ5が提供するSNS等のウェブサイトにアクセスし、投稿者がインターネット上に投稿した火災画像を取得する。図5は火災画像100の例である。火災画像100は、画像中に火炎が含まれる画像であり、S1では、例えば、投稿日時が直近の日時の画像の中から、画像中に火炎の含まれる画像を火災画像100として取得する。画像中に火炎が含まれるかどうかは既知の画像認識技術を用いて判定できる。上記の投稿日時の代わりに、画像のExif(Exchangeable Image File Format)情報等から取得できる撮影日時を用いることも可能である。
【0036】
次に、火災分析装置3は、火災画像100中の火災の発生位置を取得する(S2)。
【0037】
S2において、火災分析装置3は、火災の発生位置を、火災画像100に付随する情報に基づいて取得する。例えば、火災画像100に付随する情報として、火災画像100の投稿時の投稿者端末4のGPS(Global Positioning System)データ等の位置情報が取得できる場合は、その位置を火災の発生位置とすることができる。また火災画像100に付随する情報として、Exif情報等のメタデータから火災画像100の撮影位置がわかる場合は、当該撮影位置を火災の発生位置とすることもできる。また火災画像100に付随する情報として、火災画像100が「○○(場所)で火災発生」のようなテキストとともに投稿されているケースでは、テキスト中に記載された場所を火災の発生位置とできる場合もある。
【0038】
その後、火災分析装置3は、火災画像100を分析することで火炎の寸法(実寸法)を推定する(S3)。
【0039】
S3において、火災分析装置3は、火炎の寸法をAI(人工知能)により求めることができる。例えば、様々な寸法の火炎がその他の被写体と共に映り込んだ多数の画像を、各画像の火炎の寸法と紐付けて教師データとし、既知の機械学習を行うことで、画像の特徴量と火炎の寸法との関係を求める。これにより、当該関係を用いて、火災画像100の特徴量から火炎の寸法を推定することが可能になる。上記の特徴量としては、例えば人物や電信柱、建物の窓など被写体の種類、画像中の火炎や被写体の大きさなどが挙げられる。被写体の種類は既知の画像認識技術を用いて判定することができる。
【0040】
その他、大きさを仮定した被写体が火災画像100中に存在する場合に、火災画像100中の被写体の大きさと火炎の大きさの関係から、火炎の大きさを推定することもできる。例えば大人の男性が火災画像100に被写体として映り込んでおり、当該火災画像100中の火炎の大きさが、3点透視図法等の図法により3次元的な寸法を抽出することで当該被写体の2倍であると算出できるとき、大人の男性の大きさを平均的な1.7mと仮定すれば、火炎の大きさを3.4mと推定できる。
【0041】
火災分析装置3は、火炎の寸法、および地図情報106等を用いて、火災の発生位置における火災の時系列変化を推定する(S4)。
【0042】
S4において、火災分析装置3は、火炎の寸法、火炎からの放射受熱量、火災の発生位置から可燃物(例えば、隣接建物等)までの距離等を用いて、可燃物の延焼の有無を判定し、延焼すると判定される場合、当該可燃物の寸法等を用いて次の可燃物への延焼の有無を同様に判定する。これを時間経過を考慮して繰返し演算することで、火災の規模と時系列変化を求めることが可能となる。
【0043】
火炎からの放射受熱量や可燃物までの距離以外にも、煙の色(黒、白、黄色など)、消防隊の存在(消防隊の有無、隊員の数)なども火災画像100から取得し、時系列変化の推定に用いることができる。例えば、消防隊の隊員が多数存在する場合は、発生位置における火災は早期に収束すると考えられる。また火災分析装置3は、火災画像100から取得したその他の周辺状況を時系列変化の推定に用いることもでき、火災画像100が動画のケースなど、火災画像100に付随する音声データが存在する場合は、当該音声データを分析・解析することで、音声データの特徴量(例えば、音声の大きさ等)を時系列変化の推定に用いることもできる。
【0044】
次に、火災分析装置3は、火災の発生位置周辺の延焼シミュレーションを行い(S4)、火災の拡大過程を求める。S4において、火災分析装置3は、気象庁や民間気象予測会社のウェブサイトを介し、風向、風速、天候等の気象情報を取得する。そして、火炎の寸法から得られる火災の規模、地図情報106、気象情報等を用いて、延焼シミュレーションを行う。
【0045】
延焼シミュレーションは、対象地域の建物や地理などの地図情報106や風向・風速等の気象情報を用いて、所定の計算式による延焼計算を行うものであり、その一例として国土交通省総合技術開発プロジェクト「まちづくりにおける防災評価・対策技術の開発」による延焼シミュレーションプログラム(http://www.nilim.go.jp/lab/jdg/result.htm、令和5年5月8日検索)等がある。特に本実施形態では、火災の発生位置の隣接建物や延焼した建物の隣接建物が延焼するかを判定するために、火災の発生位置、火災の規模、対象地域の建物、地理等の地図情報106、気象情報等を入力値としてシミュレーションを行う。当該シミュレーションにより、隣接建物が延焼するまでの時間を得ることができる。この時間は、例えば、建物内が延焼する時間と、当該建物から当該建物の隣接建物へと延焼するまでの時間から構成される。
【0046】
前記した通り、地図情報106のうち建物の情報には、建物の構造や防耐火性能が含まれるが、これらについては、別の情報、例えば新築・既存住宅の別、建物の階数などから仮定してもよい。例えば、新築・既存住宅のうち低層建物(1階~2階建の建物)の60%が木造であり、住宅火災件数のうち火元が木造建物であるケースが55%であることから、低層建物=燃えやすい建物と暫定的に仮定することも考えられる。
【0047】
延焼シミュレーションの結果は、火災ハザードマップとして作成することができる。図6(a)~(d)は火災ハザードマップ200の例であり、火災の発生位置周辺の対象地域の地図において、延焼すると予測される建物を彩色して示したものである。火災ハザードマップ200により、上記地域内の各位置での火災対策の緊急性を把握することが可能になる。図6(a)~(d)はそれぞれ、火災発生後10分、1時間、2時間、3時間…の時点での火災ハザードマップ200の例を示したものである。
【0048】
火災分析装置3は、延焼シミュレーションを行い、火災ハザードマップを作成することで、上記地域内の所定位置にある対象地点が延焼に至る予測時間を算出する(S5)。例えば図6の例では、対象地点Aが延焼に至る予測時間が、火災発生後3時間として算出される。
【0049】
そして、火災分析装置3は、被通知者端末6に上記の予測時間等の通知を送信し、どの時点で対象地点Aが危険になるかについて、被通知者に情報提供を行う(S6)。被通知者は、例えば対象地点Aが建設現場である場合の施工管理者であるが、建物管理者、保守管理者、その他建物の責任者等の一般市民も対象として良い。
【0050】
通知する情報は、上記の予測時間の他、火災画像100、火災に関する注意を促す警報やテキストによるメッセージ、火災発生位置から対象地点Aまでの直線距離、図6(a)~(d)のように時系列に沿って延焼範囲の推移が示される動画、対象地点Aの延焼可能性を確率として示したもの、避難や可燃物の移動の必要性、避難先の示唆等が挙げられる。送信する情報の内容は、施工管理者か否かで変えても良いし、同じであっても良い。
【0051】
風向きが変わる等して延焼状況が悪化した場合は、延焼シミュレーションの実施による最新の予測時間等を随時被通知者端末6に送信して注意を促すことも考えられる。逆に延焼状況が好転した場合(早期に火災が鎮火した情報を得た場合や、消防隊が火災を消し止めて帰る等の情報を得た場合)は、被通知者端末6への通知を停止することもできる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態では、SNS等のインターネット上の投稿情報から火災の分析を行う際に、火災の発生位置を取得するのに加え、火災画像100から火炎の寸法という物理的尺度を推定することで、火災の分析精度を高めることができる。また本実施形態では、上記のように火災の分析精度を高め、前記のS5(図4参照)において延焼シミュレーションを行うことで、対象地点Aが延焼に至る予測時間や、対象地点Aの延焼の可能性など、火災の危険性に関し確度の高い推定が可能となる。
【0053】
また本実施形態では、S6において対象地点Aが延焼に至る予測時間を算出することにより、対象地点Aにおける火災対策の緊急性を把握することができ、S7において、予測時間等を被通知者端末6に送信して通知することで、対象地点Aにおいて、速やかな避難や可燃物の撤去等の火災対策を事前に行うことが可能となる。
【0054】
また本実施形態では、前記のS4において、火災の発生位置における時系列変化を求めることで、発生位置における火災の推移を把握することができる。
【0055】
しかしながら、本発明は上記の実施形態に限定されない。例えば本実施形態では、投稿者から投稿された火災画像100から延焼シミュレーションを行っているが、同じ発生位置の火災に関する火災画像100が後に投稿された場合は、その火災画像100を用いて入力値を更新し、延焼シミュレーションを新たに行っても良い。
【0056】
また本実施形態では地図情報106が記憶部32のデータベース内に格納されているが、地図情報106は、予め別のサーバに格納されてもよい。また対象地域の現地調査の結果やその他の公的なデータを入手できる場合は、そのデータを地図情報106に加えてS5の延焼シミュレーション等に用いることも可能である。
【0057】
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0058】
1:火災分析システム
3:火災分析装置
4:投稿者端末
5:サーバ
6:被通知者端末
100:火災画像
101:取得手段
102:寸法推定手段
103:時系列変化推定手段
104:シミュレーション手段
105:通知手段
200:火災ハザードマップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6