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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016692
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】紫外線殺菌装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/32 20230101AFI20240131BHJP
【FI】
C02F1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118996
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 貴文
(72)【発明者】
【氏名】和田 聡
【テーマコード(参考)】
4D037
【Fターム(参考)】
4D037AA01
4D037AB03
4D037BA18
4D037BB04
(57)【要約】
【課題】紫外光の照射性能が優れた殺菌効果の高い紫外線殺菌装置を提供する。
【解決手段】紫外発光素子100と、紫外発光素子100が出射する紫外線UVにより殺菌する水Wを収容する殺菌室220を内部に有する装置本体部200と、を有し、装置本体部200は、筒形状の側壁部211と底部212を有する有底箱形状の本体部210と、側壁部211の上部を覆う上板部230で構成され、紫外発光素子100は、側壁部211の周方向Rに沿って配置され、紫外線UVは筒形状の中心線Lの方向に照射され、側壁部211には、殺菌する水Wを側壁部211の周方向Rに沿って殺菌室220内に流入させるための流入口215を設けて構成する。これにより、水Wは、流入口215から渦を巻きながら流れ、紫外発光素子100から紫外線UVが繰り返して照射されるので、流路長を延長大型化せずに確保することが可能となり、殺菌時間を稼ぐことができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外発光素子と、
前記紫外発光素子が出射する紫外線により殺菌する水を収容する殺菌室を内部に有する装置本体部と、を有し、
前記装置本体部は、筒形状の側壁部と底部を有する有底箱形状の本体部と、前記側壁部の上部を覆う上板部で構成され、
前記紫外発光素子は、前記側壁部の周方向、又は、前記底部、前記上板部に沿って配置され、前記紫外線は前記殺菌室の方向に照射され、
前記側壁部には、前記殺菌する水を前記側壁部の周方向に沿って前記殺菌室内に流入させるための流入口が設けられている、
紫外線殺菌装置。
【請求項2】
前記上板部は、前記紫外発光素子により殺菌された前記水を取り出すための流出口を前記上板部の中心部に有する、請求項1に記載の紫外線殺菌装置。
【請求項3】
前記流入口から前記殺菌室に流入した前記水は、前記側壁部の周方向に沿って、前記殺菌室の中心に向かって渦を巻きながら流れる、請求項1又は2に記載の紫外線殺菌装置。
【請求項4】
前記側壁部の内側壁から前記中心に向かって水圧が低下する負圧構造となる、請求項3に記載の紫外線殺菌装置。
【請求項5】
前記装置本体部は、扁平形状であり、
前記側壁部の内側壁の内径Dと、前記側壁部の側壁高さHと、
が次式
D≧2H
を満たす、請求項1又は2に記載の紫外線殺菌装置。
【請求項6】
筒形状の連結側壁部と、上下に重ねられて配置される各殺菌室を連通させる連通口が形成された連結底部とを備えた連結本体部を有し、
請求項1に記載の前記本体部、及び、前記上板部と、必要な段数だけ重ねた前記連結本体部で多段に構成された、紫外線殺菌装置。
【請求項7】
前記装置本体部は、前記殺菌室に加え、冷却室を有し、前記殺菌室に流入する前の前記水が、前記冷却室において前記紫外発光素子を冷却する、請求項1に記載の紫外線殺菌装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線殺菌装置において、円柱状の処理槽の軸と平行に流れる水に同じく平行に光を照射して殺菌する構造を開示したものがある(例えば、特許文献1参照)。この紫外線殺菌装置は、処理流路を区画する直管と、処理流路に向けて直管の軸方向に紫外光を照射する光源と、光源から出力される紫外光の一部を受光する受光部と、を備えて構成されている。
【0003】
また、流路を長くし照射時間を増やすように工夫された構造のものを開示したものがある(例えば、特許文献2参照)。この紫外線殺菌装置は、第一の端面及び第二の端面と筒状の側面とで囲まれた中空部を有する筐体と、筐体の第一の端面側に紫外発光素子を設置するための取り付け部と、中空部に配置されて中空部を2つの閉じた空間に区画すると共に、この2つの空間を連通する第一の開口部を備えた第一の仕切りと、を備える。2つの空間を連通する開口部を介して流路を構成することにより、流路を長くする構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-30078号公報
【特許文献2】特開2017-104773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
殺菌効率は紫外線照度×照射時間で定義されている為、従来構造は流路を長くし照射時間を増やす事が容易であるため主流とされている。しかし、特許文献1の構成によれば、遠方まで光を照射する必要がある為、レンズやリフレクタを使用し光源の照射角を狭配光化する必要があり、槽内で流れのムラが生じやすく、殺菌性能にムラが出やすいという問題があった。
【0006】
また、特許文献2の構成によれば、紫外発光素子から出射される紫外光は、指向性を有するものの放射状に拡散する。このため、紫外発光素子から離れた領域では紫外光の強度が低下し、水の殺菌効果が低いという問題があった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、紫外光の照射性能が優れた殺菌効果の高い紫外線殺菌装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]本発明は、紫外発光素子と、前記紫外発光素子が出射する紫外線により殺菌する水を収容する殺菌室を内部に有する装置本体部と、を有し、前記装置本体部は、筒形状の側壁部と底部を有する有底箱形状の本体部と、前記側壁部の上部を覆う上板部で構成され、前記紫外発光素子は、前記側壁部の周方向、又は、前記底部、前記上板部に沿って配置され、前記紫外線は前記殺菌室の方向に照射され、前記側壁部には、前記殺菌する水を前記側壁部の周方向に沿って前記殺菌室内に流入させるための流入口が設けられている、紫外線殺菌装置を提供する。
[2]前記上板部は、前記紫外発光素子により殺菌された前記水を取り出すための流出口を前記上板部の中心部に有するようにされていてもよい。
[3]また、前記流入口から前記殺菌室に流入した前記水は、前記側壁部の周方向に沿って、前記殺菌室の中心に向かって渦を巻きながら流れるようにされていてもよい。
[4]また、前記側壁部の内側壁から前記中心に向かって水圧が低下する負圧構造となるようにされていてもよい。
[5]また、前記装置本体部は、扁平形状であり、前記側壁部の内側壁の内径Dと、前記側壁部の側壁高さHと、が次式
D≧2H
を満たすようにされていてもよい。
[6]また、筒形状の連結側壁部と、上下に重ねられて配置される各殺菌室を連通させる連通口が形成された連結底部とを備えた連結本体部を有し、上記[1]に記載の前記本体部、及び、前記上板部と、必要な段数だけ重ねた前記連結本体部で多段に構成されてもよい。
[7]また、前記装置本体部は、前記殺菌室に加え、冷却室を有し、前記殺菌室に流入する前の前記水が、前記冷却室において前記紫外発光素子を冷却するようにされていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の紫外線殺菌装置によれば、紫外光の照射性能が優れた殺菌効果の高い紫外線殺菌装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る紫外線殺菌装置の全体斜視図であり、図1(b)は、図1(a)におけるA―A断面図である。
図2図2(a)は、図1(a)において上板部がない状態で、殺菌される水の流れを模式的に矢印で示す斜視図による説明図であり、図2(b)は、図1(b)で示す中心線(円筒軸線)に直交する断面において、殺菌される水の流れを模式的に矢印で示す断面図による説明図である。
図3図3(a)は、本発明の第2の実施の形態に係る紫外線殺菌装置の全体斜視図であり、図2(b)は、図3(a)におけるB―B断面図である。
図4図4(a)は、殺菌される水の圧力を斜視図により示すシミュレーション結果図であり、図4(b)は、中心線(円筒軸線)を含む断面において、水の圧力をハッチングの種類で示すシミュレーション結果図であり、図4(c)は、図4(b)の中心線(円筒軸線)に直交する一断面における水の圧力をハッチングの種類で示すシミュレーション結果図である。
図5図5(a)は、殺菌される水の殺菌線量を斜視図により示すシミュレーション結果図であり、図5(b)は、中心線(円筒軸線)を含む断面において、殺菌線量をハッチングの種類で示すシミュレーション結果図であり、図5(c)は、図5(b)の中心線(円筒軸線)に直交する一断面における殺菌線量をハッチングの種類で示すシミュレーション結果図である。
図6図6(a)は、本発明の第3の実施の形態に係る紫外線殺菌装置の全体斜視図であり、図6(b)は、図6(a)におけるC方向から見た正面図である。
図7図7は、図6(b)におけるD―D断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔本発明の第1の実施の形態〕
図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る紫外線殺菌装置の全体斜視図であり、図1(b)は、図1(a)におけるA―A断面図である。また、図2(a)は、図1(a)において上板部がない状態で、殺菌される水の流れを模式的に矢印で示す斜視図による説明図であり、図2(b)は、図1(b)で示す中心線(円筒軸線)に直交する断面において、殺菌される水の流れを模式的に矢印で示す断面図による説明図である。
【0012】
(紫外線殺菌装置1の全体構成)
図1図2に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る紫外線殺菌装置1は、紫外発光素子100と、紫外発光素子100が出射する紫外線UVにより殺菌する水Wを収容する殺菌室220を内部に有する装置本体部200と、を有し、装置本体部200は、筒形状の側壁部211と底部212を有する有底箱形状の本体部210と、側壁部211の上部を覆う上板部230で構成され、紫外発光素子100は、側壁部211の周方向R、又は、底部212、上板部230に沿って配置され、紫外線UVは殺菌室220の方向に照射され、側壁部211には、殺菌する水Wを側壁部211の周方向Rに沿って殺菌室220内に流入させるための流入口215が設けられて構成されている。
【0013】
本発明の実施の形態において、紫外発光素子100が出射する紫外線UVにより殺菌される対象は、上記示した水Wとして説明するが、これには限定されず、流体であれば殺菌対象とすることが可能である。
【0014】
(紫外発光素子100)
紫外発光素子100は、殺菌される対象、本実施の形態では、水Wを殺菌する紫外光を出射する発光素子である。紫外発光素子100は、一例として、紫外光として、紫外線(特にUVC)を放出するLEDモジュールが使用できる。特に、紫外発光素子100は、深紫外領域の100~280nmの波長である紫外線UVを発する。一例として、LEDモジュールは、AlGaN系の発光ダイオードを好適に使用できる。
【0015】
また、紫外発光素子100は、LEDモジュールの光出力に応じて、使用する個数を増減できる。本実施の形態では、一例として、図2(b)に示すように、3個のLEDモジュールを使用する。紫外発光素子100は、パッケージ110にLED素子120を備え、出射光を反射、拡散させるためのリフレクタ130を備えてモジュール化されている。
【0016】
(装置本体部200)
装置本体部200は、筒形状の側壁部211と底部212を有する有底箱形状の本体部210と、筒形状の中心線Lの上部を覆う上板部230で構成されている。筒形状は、一例として、円筒状である。図1(a)、(b)に示すように、筒形状の中心線Lを円筒状の円筒軸として、側壁部211が円筒状に形成され、底部212を有することにより、有底円筒形状とされている。本体部210は、一例として、SUS304等のステンレス鋼やABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)、等の合成樹脂で形成できる。
【0017】
なお、図1(b)に示すように、側壁部211の内側面には、紫外線の吸収を抑制して反射しやすくするために、一例として、PTFE(Polytetrafluoroethylene)の等の樹脂層としてUV反射材213が設けられている。また、UV反射材213は、側壁部211以外に、底部212、上板部230に設けてもよい。
【0018】
図1図2に示すように、本体部210の上部(開口部)は、上板部230で覆われている。本体部210と上板部230は、例えば、接着、ネジ止め等により、密着して固定され、内部は外部から水密な殺菌室220とされている。
【0019】
紫外発光素子100は、図1(a)、図2(a)、(b)に示すように、側壁部211の周方向Rに沿って、殺菌室220の中心、中心線Lに向くように配置されている。また、底部212、上板部230に配置されてもよい。これにより、紫外線UVは殺菌室内に照射される。
【0020】
側壁部211には、殺菌する水Wを側壁部211の周方向Rに沿って殺菌室220内に流入させるための流入口215が、円筒接線方向に設けられて構成されている。図2(a)、(b)に示すように、流入口215から殺菌室220内に流入した水Wは、側壁部211に沿って流入し、殺菌室220の中心、中心線Lを中心にしてT方向(渦巻方向T)に渦を巻くように中心部に流れるように制御される。
【0021】
上板部230には、紫外発光素子100により殺菌された水Wを取り出すための流出口235が中心部に形成されている。これにより、流入口215から殺菌室220に流入した水Wは、側壁部211の周方向に沿って、殺菌室220の中心、中心線Lに向かってT方向に渦を巻きながら中心部に流れ、渦中心である流出口235から排出される。すなわち、側壁部211の内側壁から殺菌室220の中心、中心線Lに向かって水圧が低下する負圧構造となっている。
【0022】
上記のことから、水Wは、流入口215から渦中心である流出口235まで渦を巻きながら流れるので、紫外発光素子100から紫外線UVが繰り返して照射される。水Wを渦を巻かせながら制御することにより、流路長を延長大型化せずに確保することが可能となり、殺菌時間を稼ぐことができる。これにより、紫外光の照射性能が優れた殺菌効果の高い紫外線殺菌装置を提供することが可能となる。
【0023】
また、本体部210と上板部230で構成される装置本体部200は、扁平形状とされる。本実施の形態では、本体部210が円筒状の扁平形状、すなわち、円盤状である。
【0024】
図1(b)に示すように、扁平形状は、側壁部211の内側壁の内径Dと、側壁部211の側壁高さHとが、一例として、D≧2Hの条件を満たす。側壁部211の内側壁の内径Dと側壁高さHとの関係は、紫外発光素子100の光出力、照射時間、水Wの流速等を考慮して、必要な殺菌効果を得られるように、設定することが可能である。本体部の扁平度合いは内部の紫外線の光分布が均一に保たれる範囲で扁平であるほど殺菌効果は期待できるが、D≧2Hの条件に限られず、例えば、D=0.5H、D=H、D=1.5H等、任意に設定可能である。
【0025】
〔本発明の第2の実施の形態〕
図3(a)は、本発明の第2の実施の形態に係る紫外線殺菌装置の全体斜視図であり、図2(b)は、図3(a)におけるB―B断面図である。本発明の第2の実施の形態は、紫外線殺菌装置を積み重ねて、多段に構成したものである。
【0026】
(紫外線殺菌装置2の全体構成)
図3(a)、(b)に示すように、第2の実施の形態に係る紫外線殺菌装置2は、筒形状の連結側壁部251と、上下に重ねられて配置される各殺菌室220を連通させる連通口256が形成された連結底部252とを備えた連結本体部250を有し、第1の実施の形態の本体部210、及び、上板部230と、必要な段数だけ重ねた連結本体部250で多段に構成されている。第2の実施の形態では、一例として、3段に重ねて構成される例を示すが、必要な段数だけ重ねた構成にすることが可能である。
【0027】
図3(a)、(b)に示すように、連結本体部250は、筒形状の連結側壁部251と連結底部252を有する有底箱形状である。第1の実施の形態と同様に、紫外発光素子100は、連結側壁部251の周方向に沿って配置され、紫外線UVは筒形状の中心線Lの方向に照射され、連結側壁部251には、殺菌する水Wを連結側壁部251の周方向に沿って殺菌室220内に流入させるための流入口255が設けられて構成されている。また、連結本体部250の連結底部252の中心部には、各殺菌室220を連通させる連通口256が形成されている。
【0028】
その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0029】
図4(a)は、殺菌される水の圧力を斜視図により示すシミュレーション結果図であり、図4(b)は、中心線(円筒軸線)を含む断面において、水の圧力をハッチングの種類で示すシミュレーション結果図であり、図4(c)は、図4(b)の中心線(円筒軸線)に直交する一断面における水の圧力をハッチングの種類で示すシミュレーション結果図である。
【0030】
図4(a)に示すように、流入口215、255から流入した水Wは、側壁部211、連結側壁部251に沿って流入し、殺菌室220の中心、中心線Lを中心にして渦を巻くように中心部に流れるように制御される。このときの水Wの圧力(水圧)は、円筒の中心に向かって低下し、中心部の圧力が小さくなっている。図4(b)、図4(c)を参照すると、それぞれの段において側壁部よりも中心部の圧力が小さくなっている。
【0031】
また、水Wは、連通口256を通って、下の段から上の段に流れ込む。図4(b)を参照すると、各段の中心部付近、すなわち、連通口256においては、下の段の圧力が上の段の圧力よりも大きいことがわかる。これにより、水Wは、側壁部211、連結側壁部251に沿って流入し、殺菌室220の中心、中心線Lを中心にして渦を巻くように中心部に流れ、連通口256を通って下の段から上の段に流れて、流出口235から外部へ排出される。
【0032】
以上から、水Wの圧力は、各段において、側壁部から中心部付近に向かって負圧となっており、また、下の段から上の段に向かって負圧となっている。このように水流を制御する構成とすることにより、整流化することが可能となり、安定して水Wへの紫外線照射ができる。
【0033】
図5(a)は、殺菌される水の殺菌線量を斜視図により示すシミュレーション結果図であり、図5(b)は、中心線(円筒軸線)Lを含む断面において、殺菌線量をハッチングの種類で示すシミュレーション結果図であり、図5(c)は、図5(b)の中心線(円筒軸線)Lに直交する一断面における殺菌線量をハッチングの種類で示すシミュレーション結果図である。図5(a)、(b)に示すように、流入口215、255から流入した水Wは、側壁部211、連結側壁部251に沿って流入し、殺菌室220の中心、中心線Lを中心にして渦を巻くように中心部に流れるので、中心に近い水流ほど繰り返して紫外線UVが照射される。また、図5(c)は、図5(b)の中心線(円筒軸線)に直交する一断面における殺菌線量をハッチングの種類で示すシミュレーション結果図である。これにより、各段において、中心に近い水流ほど繰り返して紫外線UVが照射され、中心に近いほど殺菌線量が高いことがわかる。また、下の段から連通口256を通って上の段へ水Wが流れるので、中心部に近いほど、さらに殺菌線量が高くなっていることがわかる。
【0034】
〔本発明の第3の実施の形態〕
図6(a)は、本発明の第3の実施の形態に係る紫外線殺菌装置の全体斜視図であり、図6(b)は、図6(a)におけるC方向から見た正面図である。また、図7は、図6(b)におけるD―D断面図である。本発明の第3の実施の形態に係る紫外線殺菌装置3は、第1、第2の実施の形態の装置本体部において、殺菌室に加え、冷却室を有し、殺菌室に流入する前の水が、冷却室において紫外発光素子を冷却するように構成したものである。
【0035】
図6(a)、(b)、図7に示すように、第3の実施の形態に係る紫外線殺菌装置3は、第1、2の実施の形態に係る紫外線殺菌装置の装置本体部に相当する装置本体部300が、殺菌室320に加え、冷却室340を有し、殺菌室320に流入する前の水Wが、冷却室340において紫外発光素子100を冷却するように構成されている。
【0036】
(装置本体部300)
装置本体部300は、筒形状の側壁部311と底部312を有する有底箱形状の本体部310と、筒形状の上部を覆う上蓋部330で構成されている。筒形状は、一例として、円筒状である。図6(a)、(b)、図7に示すように、本体部310は、側壁部311が円筒状に形成され、底部312を有することにより、有底円筒形状とされている。上蓋部330は、例えば、ネジ止めにより、本体部310に密着して固定されている。紫外線殺菌装置3の下部には水Wを流入させるための流入口315、上部には殺菌された水Wを流出させるための流出口335が設けられている。
【0037】
図7に示すように、本体部310の内部には、殺菌室320が設けられている。殺菌室320は、壁部321、上板部322、底板部323で水Wを収容可能とされている。壁部321は、側壁部311と同様に円筒状に形成され、水Wを冷却室340から殺菌室320に流入させるための流入口321aが開口されている。また、上板部322には、殺菌された水Wを排出する排出口324が開口されている。
【0038】
また、底板部323は中央部に紫外線UVを通過させるための出射開口部325が設けられている。底板部323の下側には、冷却室340が設けられている。この冷却室340には、紫外発光素子100を備えた発光ユニット150が配置されている。
【0039】
発光ユニット150は、紫外発光素子100を内部に有し、紫外線UVを透過する防水板155で密封されて外部から水密に構成されている。紫外発光素子100から出射する紫外線UVは、防水板155を透過して殺菌室320の中に照射され、殺菌室320内の水Wを殺菌することができる。
【0040】
流入口315から流入した水Wは、まず、冷却室340に流入し、冷却室340内の発光ユニット150を冷却する。冷却室340内の水Wは、流入口321aから殺菌室320に流入する。殺菌室320に流入した水Wは、紫外発光素子100から出射される紫外線UVにより殺菌される。殺菌された水Wは、排出口324を通って流出口335から外部に排出される。
【0041】
ここで、図7に、水Wの流れを矢印で示す。流入口321aから殺菌室320に流入した水Wは、第1の実施の形態と同様に、壁部321に沿って流入し、殺菌室320の中心が負圧となって渦を巻くように中心部に流れるように制御される。これにより、水Wは、流入口321aから排出口324まで渦を巻きながら流れるので、紫外発光素子100から紫外線UVが繰り返して照射される。水Wを渦を巻かせながら制御することにより、流路長を延長大型化せずに確保することが可能となり、殺菌時間を稼ぐことができる。これにより、紫外光の照射性能が優れた殺菌効果の高い紫外線殺菌装置を提供することが可能となる。
【0042】
〔本発明の実施の形態の効果〕
発明の第1の実施の形態に係る紫外線殺菌装置1は、紫外発光素子100と、紫外発光素子100が出射する紫外線UVにより殺菌する水Wを収容する殺菌室220を内部に有する装置本体部200と、を有し、装置本体部200は、筒形状の側壁部211と底部212を有する有底箱形状の本体部210と、側壁部211の上部を覆う上板部230で構成され、紫外発光素子100は、側壁部211の周方向R、又は、底部212、上板部230に沿って配置され、紫外線UVは殺菌室220の方向に照射され、殺菌室220の中心、側壁部211には、殺菌する水Wを側壁部211の周方向Rに沿って殺菌室220内に流入させるための流入口215を設けて構成している。上板部230には、紫外発光素子100により殺菌された水Wを取り出すための流出口235が形成されている。
(1)流出口235の配置は、任意の位置に設定できるが、上板部230の中心部に形成されていることが好ましい。これにより、水Wは、側壁部211の周方向に沿って、殺菌室220の中心、中心線Lに向かってT方向に渦を巻きながら中心部に流れ、渦中心である流出口235から排出される。このような構成により、水の流れを処理槽である殺菌室の中で円周方向に渦を巻く構造とすることができる。また、流入口215から殺菌室220に流入した水Wは、側壁部211の周方向に沿って、殺菌室220の中心、中心線Lに向かってT方向に渦を巻きながら中心部に流れ、渦中心である流出口235から排出される。すなわち、側壁部211の内側壁から殺菌室220の中心、中心線Lに向かって水圧が低下する負圧構造とすることができる。これにより、処理槽内で水が整流化され、滞留時間が均一化するため、照射ムラが少なくなり殺菌性能も安定化する。殺菌性バラつきを抑制する筐体の小型化・構造の簡略化が可能となる。
(2)本実施の形態では、装置本体部200を扁平形状とする。すなわち、本体部210が円筒状の扁平形状、すなわち、円盤状とされている。このような構成により、水の流れを処理槽である殺菌室の中で円周方向に渦を巻く構造とすることができ、整流化しやすい。
(3)紫外発光素子100は、側壁部211の周方向R、又は、底部212、上板部230に沿って配置され、紫外線UVは殺菌室220の方向に照射する。このような構成により、光源付近を水Wが何度も通過するため、配光制御技術も必要としない上、従来技術に比べ照射距離が短くて済む。また、流入口から流出口へショートカットする水流が減り、渦を巻きながら繰り返して紫外線UVを照射するため、殺菌に必要な紫外線量が安定して確保できる。流出口は軸方向に設け渦中心から水を排出し、光源を円周上かつ中心に向けるように設置することで排出するまでの間照射し続けられる。よって、紫外線UVの照射時間を増加させることができ、殺菌性能の向上が期待できる。
(4)また、円周接線方向に流入口を設けることで流れる中心を軸に渦を巻くように制御するので、殺菌時間を稼ぐことができ、渦を巻かせることで流路長を延長大型化することなく、紫外線殺菌装置1を小型化できる。
【0043】
また、第2の実施の形態に係る紫外線殺菌装置2は、筒形状の連結側壁部251と、上下に重ねられて配置される各殺菌室220を連通させる連通口256が形成された連結底部252とを備えた連結本体部250を有し、第1の実施の形態の本体部210、及び、上板部230と、必要な段数だけ重ねた連結本体部250で多段に構成している。これにより、第1の実施の形態に係る紫外線殺菌装置1の効果に加えて、次のような効果を有する。
(5)連結本体部250は、必要な段数だけ積層して紫外線殺菌装置2を構成することが可能となる。よって、水Wは、何段にも亘って紫外線UVが照射されるので、殺菌時間をさらに稼ぐことができ、殺菌性能のさらなる向上が期待できる。
(6)また、第3の実施の形態に係る紫外線殺菌装置3は、第1、2の実施の形態に係る紫外線殺菌装置の装置本体部に相当する装置本体部300が、殺菌室320に加え、冷却室を有し、殺菌室320に流入する前の水Wが、冷却室において紫外発光素子100を冷却するように構成されている。流入口315から流入した水Wは、まず、冷却室340に流入し、冷却室340内の発光ユニット150を冷却する。冷却に使用した水Wは、流入口321aから殺菌室320に流入する。これにより、紫外発光素子100、発光ユニット150の冷却手段の別途設けなくとも、殺菌対象の水Wを使用することで冷却できる。したがって、紫外発光素子100の発光パワーを増加させることが可能となり、紫外光の照射性能が優れた殺菌効果の高い紫外線殺菌装置を提供することが可能となる。
【0044】
実施例として、紫外発光素子100の1モジュール当たり光出力を50mW、紫外線の照射エネルギー密度12mJ/cm、水の流量5L/minの1段構成の紫外線殺菌装置1に対して、3段構成の紫外線殺菌装置2では、3段構成で、15L/min、12mJ/cmで駆動することができる。
【0045】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。本実施の形態では、1段または複数段の紫外線殺菌装置を縦向きに設置した使用例として説明したが、例えば、1段または複数段の紫外線殺菌装置を横向きに設置して使用してもよい。
【0046】
また、上記の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0047】
1、2、3…紫外線殺菌装置、
100…紫外発光素子、110…パッケージ、120…LED素子、130…リフレクタ、155…防水板、200…装置本体部、210…本体部、211…側壁部、212…底部、213…UV反射材、215…流入口、220…殺菌室、230…上板部、235…流出口
250…連結本体部、251…連結側壁部、252…連結底部、255…流入口、256…連通口
300…装置本体部、310…本体部、311…側壁部、312…底部、315…流入口、320…殺菌室、321…壁部、321a…流入口、322…上板部、323…底板部、324…排出口、325…出射開口部、330…上蓋部、335…流出口、340…冷却室
D…内径、H…側壁高さ、L…中心線、R…周方向、T…渦巻方向、UV…紫外線、W…水
図1
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図3
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図5
図6
図7