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特開2024-166927ホイールナット緩み検出システム及び該検出システムを備えるハブユニット軸受、並びに車軸管式懸架装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166927
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】ホイールナット緩み検出システム及び該検出システムを備えるハブユニット軸受、並びに車軸管式懸架装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 41/00 20060101AFI20241122BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20241122BHJP
   F16C 33/78 20060101ALI20241122BHJP
   F16C 19/38 20060101ALI20241122BHJP
   F16C 19/52 20060101ALI20241122BHJP
   F16J 15/3256 20160101ALI20241122BHJP
   B60B 35/02 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
F16C41/00
G01L5/00 K
F16C33/78 Z
F16C19/38
F16C19/52
F16J15/3256
B60B35/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083363
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】若林 達男
(72)【発明者】
【氏名】平川 裕雅
【テーマコード(参考)】
2F051
3J043
3J216
3J217
3J701
【Fターム(参考)】
2F051AA01
2F051AB05
2F051BA07
3J043AA17
3J043CA02
3J043CA05
3J043CB13
3J043CB20
3J043DA20
3J043HA01
3J043HA04
3J216AA03
3J216AA14
3J216AB03
3J216BA30
3J216CA02
3J216CA04
3J216CB03
3J216CB07
3J216CB18
3J216CC03
3J216CC14
3J216CC15
3J216CC35
3J216CC41
3J216CC68
3J216EA03
3J216EA05
3J216EA10
3J217JA02
3J217JA13
3J217JA24
3J217JA34
3J217JA38
3J217JA43
3J217JA47
3J217JB04
3J217JB44
3J217JB55
3J217JB64
3J217JB89
3J701AA16
3J701AA25
3J701AA32
3J701AA43
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA77
3J701BA79
3J701BA80
3J701EA01
3J701EA74
3J701FA26
3J701FA48
3J701GA03
(57)【要約】
【課題】ホイールナットの緩みを精度よく、安価に検出することができるホイールナット緩み検出システム及び該検出システムを備えるハブユニット軸受、並びに車軸管式懸架装置を提供する。
【解決手段】ホイールナット緩み検出システム10の検出装置40は、回転側部材30に固定され、周面に被検出面が形成されたエンコーダ41と、検出面をエンコーダ41の被検出面に対向させ、静止側部材25に支持固定されたセンサ51、52と、演算部と、を備える。演算部は、回転側部材30の一回転内で、鉛直方向成分の荷重変化パターンのずれの有無を監視することにより、ホイールナットの緩みの有無を検出し、エンコーダ41が、ハブユニット軸受のインボード側端部よりアウトボード側に奥まった位置に配置される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転しない静止側部材と、
複数のボルト部材及び複数のホイールナットを用いて、外周部にホイール及び制動用回転部材が取り付けられる回転フランジと一体に回転する回転側部材と、
前記静止側部材と前記回転側部材との間に転動自在に設けられた複数の転動体と、
前記ホイールナットの緩みを検出する検出装置と、
を備えるホイールナット緩み検出システムであって、
前記検出装置は、
前記回転側部材、又は、前記回転側部材と共に回転及び変位する部分に固定され、被検出面が形成されたエンコーダと、
検出面を前記エンコーダの被検出面に対向させ、前記静止側部材、又は前記静止側部材と共に回転しない部分に支持固定された一対のセンサと、
演算部と、を備え、
前記演算部は、前記回転側部材の一回転内で、鉛直方向成分の荷重変化パターンのずれの有無を監視することにより、前記ホイールナットの緩みの有無を検出し、
前記エンコーダが、ハブユニット軸受のインボード側端部よりアウトボード側に奥まった位置に配置される、
ホイールナット緩み検出システム。
【請求項2】
前記静止側部材は、外周面に内輪軌道を有し、回転しないアクスルケースまたはスタブアクスルに外嵌固定される内輪であり、
前記回転側部材は、前記回転フランジと、内周面に外輪軌道を有する外輪とを有するハブであり、
前記エンコーダが非磁性カバーで保護される、
請求項1に記載のホイールナット緩み検出システム。
【請求項3】
前記静止側部材は、回転しないアクスルケースまたはスタブアクスルであり、
前記回転側部材は、前記回転フランジと、内周面に外輪軌道を有する外輪とを有するハブであり、
前記エンコーダが非磁性カバーで保護され、
前記エンコーダが前記外輪のインボード側端部よりもアウトボード側に奥まった位置に配置される、
請求項1に記載のホイールナット緩み検出システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のホイールナット緩み検出システムを備えるハブユニット軸受。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載のホイールナット緩み検出システムを、左右輪のうち片輪のみに備える車軸管式懸架装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールナット緩み検出システム及び該検出システムを備えるハブユニット軸受、並びに車軸管式懸架装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大型車の車輪脱落事故発生の防止のため、国土交通省と日本自動車工業会では、特に事故発生率の高い左後輪のホイールナットの緩みを検出可能なインジケータの取付けを推奨している。
【0003】
特許文献1に記載のホイールナットキャップは、図15に示すように、全体が樹脂製でドーム状のキャプ本体110と、各ホイールナット100に取り付けられる略三角形状のインジケータ120とを有する。そして、隣接するホイールナット100に取り付けたインジケータ120の向きが対向するように、或いは全てのインジケータ120の向きが同一方向を向くように、インジケータ120をホイールナット100に取り付け、インジケータ120の向きが変化したことを視認することでホイールナット100の緩みを検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-7274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のホイールナットキャップは安価であるものの、以下の3つの課題などがあり、さらなる改善が望まれていた。
1. インジケータ120の取付け可能位相に限りがあるため、隣接するホイールナット100同士のインジケータ120の向きを完全に対向させることが難しく、その分、ナット緩みの検出精度が低下する。
2. 取付け箇所が多く、取り付けに手間がかかる。また、手間を考えると、すべての車輪に取付けることが難しい。
3. 気流で外れる虞があるので、前輪には適用しづらい。
【0006】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ホイールナットの緩みを精度よく、安価に検出することができるホイールナット緩み検出システム及び該検出システムを備えるハブユニット軸受、並びに車軸管式懸架装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、ホイールナット緩み検出システムに係る下記[1]及びハブユニット軸受に係る下記[2」、並びに車軸管式懸架装置のタイヤ支持構造に係わる下記[3]の構成により達成される。
[1] 回転しない静止側部材と、
複数のボルト部材及び複数のホイールナットを用いて、外周部にホイール及び制動用回転部材が取り付けられる回転フランジと一体に回転する回転側部材と、
前記静止側部材と前記回転側部材との間に転動自在に設けられた複数の転動体と、
前記ホイールナットの緩みを検出する検出装置と、
を備えるホイールナット緩み検出システムであって、
前記検出装置は、
前記回転側部材、又は、前記回転側部材と共に回転及び変位する部分に固定され、被検出面が形成されたエンコーダと、
検出面を前記エンコーダの被検出面に対向させ、前記静止側部材、又は前記静止側部材と共に回転しない部分に支持固定された一対のセンサと、
演算部と、を備え、
前記演算部は、前記回転側部材の一回転内で、鉛直方向成分の荷重変化パターンのずれの有無を監視することにより、前記ホイールナットの緩みの有無を検出し、
前記エンコーダが、ハブユニット軸受のインボード側端部よりアウトボード側に奥まった位置に配置される、
ホイールナット緩み検出システム。
[2] [1]に記載のホイールナット緩み検出システムを備えるハブユニット軸受。
[3] [1]に記載のホイールナット緩み検出システムを、左右輪のうち片輪のみに備える車軸管式懸架装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明のホイールナット緩み検出システム、該検出システムを備えるハブユニット軸受、及び車軸管式懸架装置によれば、ホイールナットの緩みを精度よく、安価に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るタイヤ支持構造の断面図である。
図2図2は、図1の要部を180°反転して示す拡大図である。
図3図3(a)は、シール部材内の検出装置を示す要部拡大図であり、図3(b)は、シール部材内の検出装置の変形例を示す要部拡大図である。
図4図4(a)は、図1のハブを軸方向インボード側から見た図であり、図4(b)は、図4(a)の状態に対し鉛直方向荷重が増加した状態を示す図である。
図5図5(a)は、ホイールナットの緩みがない状態のタイヤ支持構造の断面図であり、図5(b)は、ホイールナットの緩みがある状態のタイヤ支持構造の断面図である。
図6図6(a)は、第2実施形態の検出装置を示した要部拡大図であり、図6(b)は、第2実施形態の第1変形例に係る検出装置を示した要部拡大図である。
図7図7は、第3実施形態に係るタイヤ支持構造の断面図である。
図8図8(a)は、第3実施形態の検出装置を示した要部拡大図であり、図8(b)は、第3実施形態の第1変形例に係る検出装置を示した要部拡大図である。
図9図9(a)は、センサの取付構造の第1変形例を示すモデル図であり、図9(b)は、センサの取付構造の第2変形例を示すモデル図であり、図9(c)は、センサの取付構造の第3変形例を示すモデル図である。
図10図10は、第4実施形態に係るタイヤ支持構造の断面図である。
図11図11(a)は、第4実施形態の検出装置を示した要部拡大図であり、図11(b)は、第4実施形態の第1変形例に係る検出装置を示した要部拡大図であり、図11(c)は、第4実施形態の第2変形例に係る検出装置を示した要部拡大図であり、図11(d)は、第4実施形態の第3変形例に係る検出装置を示した要部拡大図である。
図12図12は、第1実施形態の第1変形例に係るタイヤ支持構造の断面図である。
図13図13は、第1実施形態の第2変形例に係るタイヤ支持構造の断面図である。
図14図14は、第1実施形態の第3変形例に係るタイヤ支持構造の断面図である。
図15図15は、従来のホイールナットキャップがホイールナットに取り付けられたホイールの正面図ある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るホイールナット緩み検出システム及び該検出システムを備えるハブユニット軸受の各実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1及び図2に示すように、本実施形態のホイールナット緩み検出システム10では、車両のフレームにバネを介して(以上、図示せず)支持されたアクスルケース12の内部に、駆動源からの駆動トルクをハブ30に伝達するアクスルシャフト11が配置されている。アクスルシャフト11の端部には,径方向に延びるフランジ部11aが一体的に形成されている。フランジ部11aの外周部に対して、ハブ30が複数のボルト13によって取り付けられている。
【0012】
なお、本実施形態におけるハブ30は、径方向外側に延びる回転フランジ32が一体に形成されている。
回転フランジ32には、ダブルタイヤ14のディスクホイール15が、ブレーキドラム(制動用回転部材)16と共に複数のボルト部材17及び複数のホイールナット18(図1は、1本のみ示す)によって取付けられている。
【0013】
ハブ30の内周面側には、ハブユニット軸受を構成する外輪軌道24a、24bが形成された外輪24が嵌合固定されている。外輪24は、ハブ30の円筒部31に内嵌し、アウトボード側の端部を円筒部31の段部34に突き当てた状態で、インボード側の端部をハブ30に形成されたリング溝36に嵌合する止め輪37により軸方向が位置決めされている。
【0014】
ハブ30は、アクスルケース12に対して、互いにアクスルシャフト11の軸方向に隔置して配置された複列の軸受、即ち、インボード側軸受部21及びアウトボード側軸受部22によって回転自在に支持されている。これにより、ダブルタイヤ14がアクスルケース12に対して回転自在に支持される。即ち、本実施形態においては、ハブ30が回転側部材の一部を構成する。
【0015】
インボード側軸受部21及びアウトボード側軸受部22は、円すいころ軸受であり、各軸受部21、22の外輪軌道24a、24bが外輪24の内周面に直接形成されている。また、インボード側軸受部21の内輪25とアウトボード側軸受部22の内輪26とは、アクスルケース12の外周面12aにガタのない隙間嵌めで嵌合している。内輪25及び26の外周面には、それぞれ内輪軌道25a及び26aが形成されている。外輪軌道24aと内輪軌道25a、及び外輪軌道24bと内輪軌道26aとの間には、保持器27に回動自在に保持された転動体である複数の円錐ころ23が、転動自在に装填されている。
【0016】
インボード側軸受部21の内輪25は、大鍔側においてアクスルケース12の段部12bによって車両の内側に向かう変位が規制されており、アウトボード側軸受部22の内輪26は、その大鍔側においてハブナット19によって車両の外側に向かう変位が規制されてアクスルケース12に固定されている。即ち、本実施形態においては、内輪25、26が静止側部材の一部を構成する。
【0017】
そして、ハブナット19をアクスルケース12の端部外面に形成された雄ねじ部12cにねじ込んで締め付けることにより、インボード側軸受部21及びアウトボード側軸受部22に対して予圧を与えて、軸受の剛性を高めると共に、円錐ころ23と外輪軌道24a、24b及び内輪軌道25a、26aとの間に生じる隙間を吸収させる。なお、シール部材20a、20bは,軸受内部の潤滑剤が外部へ流出することを防止し、且つ、シール部材20aは外部から塵埃等の異物が、シール部材20bはアクスルケース12内のデフオイルが軸受内部に進入することを防止している。
【0018】
ここで、軸受内部のインボード側端部に設けられたシール部材20aは、ホイールナット18の緩みを検出する検出装置40を兼ねる。
シール部材20aは、外輪24側に取付けられるシールリング61と、内輪25側に取付けられるスリンガ62と、検出装置40と、を有する。この構成は、図3を参照するとよい。
【0019】
シールリング61は、芯金63と、シールリップ64と、を有する。
芯金63は、円環状の非磁性体からなる板材をプレス加工等することで、断面視で略L字状に屈曲形成されている。これにより、芯金63は、芯金円筒部63aと、芯金円環部63bと、を有する。
芯金円筒部63aは、外輪24内周面のインボード側端部に固定される。芯金円環部63bは、芯金円筒部63aのインボード側端部からスリンガ62に向けて内径側に延びる。
シールリップ64は、芯金円環部63bの内径側端部に設けられており、少なくとも一部がスリンガ62に接している。
【0020】
スリンガ62は、円環状の板材をプレス加工等することで、断面視で略L字状に屈曲形成されている。スリンガ62は、スリンガ円筒部62aと、スリンガ円環部62bと、を有する。
スリンガ円筒部62aは、内輪25のインボード側端部に固定される。スリンガ円環部62bは、スリンガ円筒部62aのインボード側端部から外径側に延びる。
スリンガ62の一部にシールリップ64の一部が摺接することにより、軸受内部から外部へのグリース漏れや、外部から軸受内部への泥水等の侵入を防止できる。
【0021】
外輪24のインボード側端部には、外径側に切り欠かれたシール用段部28が形成される。
スリンガ円環部62bは、外径側端部がシール用段部28内に進出することにより、外輪24と内輪25との間に形成される径方向の隙間より長く(或いは同程度に)形成されている。
また、止め輪37は、内輪25に向けて延設され、側面視でスリンガ円環部62bの端部側とラップしている。
【0022】
これにより、スリンガ円環部62bと、シール用段部28と、止め輪37と、によって、エンコーダ41の1極分の弧長(エンコーダ41の隣接極間で磁気ショートを発生させうる大きさ)よりも狭い凹凸状の隙間であるラビリンスが形成される。この構成は、図3(a)を参照するとよい。
【0023】
検出装置40は、磁性ゴムから成る永久磁石製のエンコーダ41と、一対のセンサ51、52と、演算部と、を有する。
エンコーダ41は、芯金円環部63bのアウトボード側の取付面に取付固定されている。エンコーダ41のアウトボード側にはバックヨーク44が設けられている。
センサ51、52は、回転センサであって、スリンガ円環部62bのアウトボード側の取付面に取付固定されている。
すなわち、センサ51、52の検出面と、エンコーダ41の被検出面とは、芯金63を介して、軸方向で水平に対向する。
また、センサ51、52は、スリンガ62と芯金63との間に形成されるセンサ設置空間に設けられる。センサ設置空間は、シールリップ64により軸受空間との間が密閉される。センサ設置空間は、スリンガ円環部62bと、シール用段部28と、止め輪37と、からなるラビリンスにより、外部との間も密閉される。
以上によれば、エンコーダ41が、ハブユニット軸受のインボード側端部よりアウトボード側に奥まった位置に配置される。この構成は、図3(a)を参照するとよい。
【0024】
なお、センサ設置空間は、ラビリンスに代えて、スリンガ円環部62bの外径側端部に取付けられる第2シールリップ67によって、外部との間を密閉してもよい。
この場合、外輪24にシール用段部28を形成する必要も、スリンガ円環部62bを長くする必要もなくなるため、コストを低く抑えることができる。この構成は、図3(b)を参照するとよい。
【0025】
エンコーダ41は、永久磁石製であり、特性変化部である環状のエンコーダ41の被検出面には、N極に着磁した部分と、S極に着磁した部分とが、円周方向に関して交互に且つ等間隔で配置されている。
エンコーダ41は、芯金円環部63bに取付けられることにより、その被検出面が、軸方向のインボード側に向けられている。
【0026】
一対のセンサ51、52は、その検出面が、非磁性材である芯金63の芯金円環部63bを介して、被検出面であるエンコーダ41の被検出面に近接対向すると共に、径方向同一位相、かつ周方向に離間して静止側部材である内輪25側に設けたスリンガ円環部62bに固定され、一対のセンサ51、52からは、車体側に設けられた不図示の演算部接続するための、不図示のワイヤーハーネス及びソケットが軸方向インボード側に伸びている。具体的には、一対のセンサ51、52は、スリンガ円環部62bの周方向に対して、180°位相がずれた位置に取付けられる。
一対のセンサ51、52は、その検出面が、非磁性材である芯金63の芯金円環部63bを介して、被検出面であるエンコーダ41の被検出面に近接対向すると共に、周方向同一位置、かつ径方向に離間して静止側部材である内輪25に固定されるようにしてもよい。
尚、センサ51、52の検出面には、ホールIC、ホール素子、MR素子、GMR素子等の磁気検知素子が組み込まれて、エンコーダ41の磁力の変化を検出する。
【0027】
上述の検出装置40によれば、各センサ51、52の検出面と、エンコーダ41の被検出面とが、軸(水平)方向で常に対向する。また、芯金63は、エンコーダ41と、各センサ51、52との間に配置され、非磁性体からなるエンコーダカバー(非磁性カバー)として機能する。
【0028】
そして、不図示の演算部は、両センサ51、52の出力信号の位相差の変化の有無、位相差の変化が存在する場合にはその大きさ及び変化の方向に基づいて、ハブ30(外輪24)と内輪25との間の鉛直方向変位量を求めることができる。
すなわち、演算部は、ハブ30と内輪25との間の鉛直方向の変位量に基づいて、軸受に掛かる鉛直方向の荷重の変化を検出できる。
【0029】
例えば、図4(b)は、図1のハブ30を軸方向インボード側から見た図であり、ハブ30(エンコーダ41)が時計回りに回転している状態(図4(a)の状態)から鉛直方向荷重が増加し、ハブ30が鉛直方向上側へ変位した状態を誇張して示す図である。図4(b)の状態では、図4(a)の状態に対し、センサ51側ではエンコーダ41が回転方向と逆側に変位するので、センサ51の出力信号は図4(a)の状態に対し位相の遅れが発生する。一方、センサ52側ではエンコーダ41が回転方向と同じ側に変位するので、センサ52の出力信号は図4(a)の状態に対し位相の進みが発生する。演算部は、センサ51とセンサ52の出力信号の位相差の変化を捉え、鉛直方向の変位量に基づいて、軸受に掛かる鉛直方向の荷重の変化を検出する。
【0030】
一方、図5(a)に示すように、ボルト部材17及びホイールナット18によってダブルタイヤ14がディスクホイール15を介してハブ30の回転フランジ32に固定されたトラックでは、通常、0.5~1°(路面側が狭い、正のキャンバ角)のキャンバ角が付いており、直進走行において、各タイヤ14には、車体外側(図5(a)では右方向)へ向かうキャンバスラストが作用している。この時、タイヤ半径は位相に係わらず一定である。
【0031】
しかし、車両左右両側に配置されたタイヤ14の内、片側のタイヤ14のいずれかのホイールナット18が緩むと、緩んだホイールナット18が路面側にくる円周方向位相で、図5(b)に示すように、ダブルタイヤ14のディスクホイール15がハの字形に開き、緩んだホイールナット18が路面側に来た時だけタイヤ半径が小さくなったのと同様の状態が発生する。このため、ダブルタイヤ14の内、車両外側のタイヤ14に作用するキャンバスラストの方向が逆転し、車両内側のタイヤ14のキャンバスラストと相殺し、ダブルタイヤ14としてはキャンバスラストが失われる。これにより、車両反対側のタイヤ14のキャンバスラストに押されて車体が後方に流れ、走行が不安定になると共に、ダブルタイヤ14の鉛直方向荷重が、一瞬、抜けた様な状態になる。その後、緩んだホイールナット18が路面側から外れる円周方向位相になった瞬間、キャンバスラストが復元すると共に、ダブルタイヤ14の鉛直方向荷重が、一瞬、突き上げた様な状態になる。
【0032】
キャンバスラストの変化は鉛直方向荷重にも影響し、ホイールナット18が緩むことで発生するダブルタイヤ14の鉛直方向荷重の変化は、ディスクホイール15を介して回転側部材であるハブ30に伝達され、ハブ30が固定側部材である内輪25に対して鉛直方向に相対変位する。
【0033】
このハブ30と内輪25との鉛直方向の相対変位は、前述したように検出装置40の一対のセンサ51、52の出力信号の位相変化として検出され、演算部により鉛直方向相対変位量が求められる。
【0034】
具体的に説明すると、緩んだホイールナット18が路面側に来る位相では、一時的に軸受に掛かる鉛直方向の荷重が減少し、再びホイールナット18が閉まっている位相が路面側に来ると、軸受に掛かる鉛直方向の荷重が衝撃的(瞬間的)に増加する。このため、検出装置40によって軸受に掛かる荷重を継続的にモニタリングし、タイヤが一回転する間での鉛直方向の荷重変化を検出した場合には、ホイールナット18の緩みがあると判断する。
【0035】
このように、検出装置40によりタイヤ14が1周する間に、軸受負荷のラジアル成分が急激に変化するポイント(円周方向位相)、即ち、ハブ30と内輪25との鉛直方向相対変位が発生するポイントの有無を監視することで、ホイールナット18の緩みを精度よく検出することができる。
【0036】
以上説明したように、ホイールナット18の緩みにより、内輪25に対してハブ30(外輪24)が鉛直方向に相対変位すると、検出装置40の一対のセンサ51、52の出力信号に位相差の変化が生じる。出力信号の位相差の変化の大きさは、ハブ30と内輪25との鉛直方向相対変位の大きさに比例するので、ホイールナット18の緩みを精度よく検出することができる。また、出力信号に位相差の変化が生じる位置は、緩みが発生したホイールナット18が、路面側にくる位相であるので、緩みが発生したホイールナット18を特定することができる。
【0037】
さらに、エンコーダ41と一対のセンサ51、52とで構成される検出装置40は、ABSセンサに対して速度センサが1つ増えるだけなので、振動計やGセンサを用いるシステムに比較して安価にホイールナット18の緩みが検出可能となる。また、センサ51、52は、静止側部材に設けることができるので、不図示のワイヤーハーネス及びソケットを用いて、有線での結線も可能となる。
【0038】
また、上述の検出装置40によれば、芯金63を非磁性体からなるエンコーダカバーとして機能させることができる。すなわち、軸受内端とブレーキロータが近接することで、ブレーキの際に発生する高温の摩擦粉や火花が、軸受の回りを回転する鉄粉環境となった場合であっても、非磁性材からなる芯金63により、エンコーダ41に鉄粉や火花が付着することを防止できる。磁力は距離の2乗で影響するため、エンコーダ41とセンサ51、52との間に芯金円環部63bを挟むことで、摩耗粉の付着が大幅に減少する。
また、センサ設置空間を、止め輪37よりも軸方向アウトボード側の軸受内に配置することで、エンコーダ41が発する磁束が止め輪37に吸い寄せられ、エンコーダ41が発する磁束信号の誤差が大きくなることを防止できる。
【0039】
なお、上記実施形態では、ホイールナット緩み検出システム1は、ダブルタイヤ14が、アクスルケース12に対して、ハブ30を介して回転自在に支持される構成に適用されるとしたが、後述の図12に示す変形例のように、シングルタイヤ(図示せず)を有する前輪にも適用することができる。
【0040】
(第2実施形態)
本実施形態のホイールナット緩み検出システム10は、図6(a)に示すように、センサ51、52の検出面と、エンコーダ41の被検出面とが、径方向で対向する点で、第1実施形態と異なる。
【0041】
シール部材20aは、シールリング61と、スリンガ62と、検出装置40と、を有する。
シールリング61を構成する芯金63は、円環状の板材をプレス加工等することで、断面視でL字状に屈曲形成され、芯金円筒部63aと、芯金円環部63bと、を有する。
芯金円筒部63aは、外輪24内周面のインボード側端部に固定される。芯金円環部63bは、芯金円筒部63aのアウトボード側端部からスリンガ62に向けて内径側に延びる。
すなわち、芯金円環部63bを、芯金円筒部63aのアウトボード側端部から延在させたことにより、芯金円環部63bと、スリンガ円環部62bと、の軸方向の間に形成されるセンサ設置空間を広くして、センサ設置空間に、センサ51、52及びエンコーダ41を配置する。
【0042】
検出装置40は、エンコーダ41と、一対のセンサ51、52と、を有する。
エンコーダ41は、芯金円筒部63aの内周面に加硫接着成形されている。エンコーダ41の内径側(内輪25側)には非磁性材のエンコーダカバー46が設けられている。
センサ51、52は、スリンガ円環部62bのアウトボード側の取付面に取付固定されている。
すなわち、センサ51、52及びエンコーダ41は、センサ51、52の検出面と、エンコーダ41の被検出面とが径方向で対向するようにセンサ設置空間内に配置される。このとき、エンコーダ41と、センサ51、52との間に、非磁性材のエンコーダカバー46が配置される。
【0043】
また、センサ51、52は、図3(a)に示す第1実施形態と同様に、スリンガ62と芯金63との間に形成されるセンサ設置空間は、スリンガ円環部62bと、シール用段部28と、止め輪37と、からなるラビリンスを有する。
このとき、シール用段部28の径方向の面は、エンコーダ41及びエンコーダカバー46のインボード側の端面と面一に形成されているため、ラビリンスが長くなる。この構成は、図6(a)を参照するとよい。
その他の構成は、図2に示す第1実施形態のホイールナット緩み検出システム10と同様である。
【0044】
(第2実施形態の第1変形例)
本変形例のホイールナット緩み検出システム10は、図6(b)に示すように、シール用段部28を設けない点で、第2実施形態と異なる。
【0045】
検出装置40は、エンコーダ41と、一対のセンサ51、52と、を有する。
エンコーダ41は、芯金円筒部63aの内周面に取付固定されている。エンコーダ41の内径側(内輪25側)にはエンコーダカバー46が設けられている。
センサ51、52は、スリンガ円環部62bのアウトボード側の取付面に取付固定されている。
すなわち、センサ51、52及びエンコーダ41は、センサ51、52の検出面と、エンコーダ41の検出面と、が径方向で対向するようにセンサ設置空間内に配置される。このとき、エンコーダ41と、センサ51、52との間に、非磁性体のエンコーダカバー46が配置される。
【0046】
センサ51、52が取付られるスリンガ円環部62bは、延設方向の中途部が芯金63側(アウトボード側)に向けてクランク状に屈曲形成される。
スリンガ円環部62bの外径側端部と、エンコーダカバー46との間には、エンコーダ41の1極分の弧長より狭い隙間を持つラビリンスリップ69が加硫成形される。ラビリンスリップ69は、接触リップとしてもよい。
なお、スリンガ円環部62bに設けたラビリンスリップ69との接触を避けるために、センサ51、52がL字状に形成されている。
その他の構成は、図2に示す第1実施形態のホイールナット緩み検出システム10と同様である。
【0047】
これにより、エンコーダ41及びセンサ51、52を保護できる。
また、外輪24にシール用段部28を形成する必要がなくなるため、製造コストを低く抑えることができる。
【0048】
(第3実施形態)
本実施形態のホイールナット緩み検出システム10は、図7及び図8(a)に示すように、センサ51、52が、静止側部材であるアクスルケース12に固定されている点で、第1実施形態と異なる。
【0049】
シール部材20aは、シールリング61と、スリンガ62と、エンコーダ41と、を有する。
シールリング61を構成する芯金63は、円環状の板材をプレス加工等することで、断面視でL字状に屈曲形成され、芯金円筒部63aと、芯金円環部63bと、を有する。
芯金円筒部63aは、外輪24内周面のインボード側端部に固定される。芯金円環部63bは、芯金円筒部63aのインボード側端部がスリンガ62に向けて内径側に延びる。
すなわち、芯金円環部63bのアウトボード側にエンコーダ41及びバックヨーク44を設置するスペースを確保できる。この構成は、図8(a)を参照するとよい。
【0050】
検出装置40は、エンコーダ41と、一対のセンサ51、52と、を有する。
エンコーダ41は、芯金円環部63bのアウトボード側の取付面に取付固定されている。エンコーダ41のアウトボード側にはバックヨーク44が設けられている。
センサ51、52は、アクスルケース12に固定される固定部51c、52cと、固定部51c、52cの外径側端部から軸受に向けて延設される挿入部51b、52bと、先端側に配置される検出面51a、52aと、を有する。
これにより、センサ51、52は、センサ51、52の検出面51a、52aと、エンコーダ41の被検出面と、が非磁性材の芯金円環部63bを介して、軸方向で水平に対向した状態で、アクスルケース12に取付けられる。
【0051】
スリンガ62は、スリンガ円環部62bを短くすることにより、軸受内にセンサ51、52の挿入部51b、52bを挿入するためのスペースを確保している。この構成は、図8(a)を参照するとよい。
その他の構成は、図2に示す第1実施形態のホイールナット緩み検出システム10と同様である。
【0052】
これにより、ハブユニット軸受をアクスルケース12に組付ける際に、細かい位相調整をすることなく、一対のセンサ51、52を、エンコーダ41に水平に対向させることができる。このため、検出装置40の組付作業が容易になる。
また、センサ51、52を内輪25に備える場合と異なり、センサ51、52から延びるワイヤーハーネスと接続用のソケットが不要になるため、軸受の組付け性が向上すると共に、コストダウンにもつながる。
なお、上記構成によれば、一対のセンサ51、52をアクスルケース12に取付けた後で、ハブユニット軸受を取付けてもよいし、ハブユニット軸受の取付後に一対のセンサ51、52を取付けてもよい。
【0053】
(第3実施形態の第1変形例)
本実施形態のホイールナット緩み検出システム10は、図8(b)に示すように、センサ51、52の検出面と、エンコーダ41の被検出面とが、径方向で対向する点で、第3実施形態と異なる。
【0054】
シール部材20aは、シールリング61と、スリンガ62と、エンコーダ41と、を有する。
シールリング61を構成する芯金63は、円環状の板材をプレス加工等することで、断面視でL字状に屈曲形成され、芯金円筒部63aと、芯金円環部63bと、を有する。
芯金円筒部63aは、外輪24内周面のインボード側端部に固定される。芯金円環部63bは、芯金円筒部63aのアウトボード側端部がスリンガ62に向けて内径側に延びる。
すなわち、芯金円環部63bを、芯金円筒部63aのアウトボード側端部から延在させたことにより、芯金円環部63bと、スリンガ円環部62bと、の軸方向の間に形成されるセンサ設置空間が広くなる。これにより、センサ設置空間で、センサ51、52の検出面51a、52aと、エンコーダ41の被検出面と、を径方向で対向配置させるスペースを確保できる。
【0055】
検出装置40は、エンコーダ41と、一対のセンサ51、52と、を有する。
エンコーダ41は、芯金円筒部63aの内周面に取付固定されている。エンコーダ41の内径側(内輪25側)にはエンコーダカバー46が設けられている。
センサ51、52は、アクスルケース12に固定される固定部51c、52cと、固定部51c、52cの外径側端部から軸受に向けて延設される挿入部51b、52bと、挿入部51b、52bの先端側の外周面に配置される検出面51a、52aと、を有する。
これにより、センサ51、52は、センサ51、52の検出面51a、52aと、エンコーダ41の被検出面と、が非磁性材のエンコーダカバー46を介して、径方向で水平に対向した状態で、アクスルケース12に取付けられる。
その他の構成は、第3実施形態のホイールナット緩み検出システム10と同様である。
【0056】
なお、図示する例では、センサ51、52は、一体的なL字形状をしているが、これに限られない。たとえば、センサ51、52にセンサホルダを設けたものであってもよいし、径方向に延びるセンサホルダに対して、センサ51、52を軸方向に取付けるものであってもよい。
【0057】
また、センサ51、52は、図9(a)に示すように、アクスルケース12に嵌合するようにして組付けられるリング状の樹脂センサホルダ56の外周面近傍にモールド固定してもよい。このとき、アクスルケース12側に嵌合された樹脂センサホルダ56は、径方向に締結される固定ねじ57によってアクスルケース12側にねじ止めされる。
これにより、リング状の樹脂センサホルダ56をアクスルケース12に嵌合することで、一対のセンサ51、52を適した位置にセットして固定できるため、組付作業がスムーズ且つ容易になる。
【0058】
また、センサ51、52は、図9(b)に示すように、リング状の樹脂センサホルダ56の外周面に形成した切欠き56a内に圧入や接着固定してもよい。
これにより、センサ51、52を樹脂センサホルダ56にモールドする場合と比較して容易に作成できる。
【0059】
また、樹脂センサホルダ56は、図9(c)に示すように、センサ51、52がモールド固定されたリング状の樹脂センサホルダ56に、一部を不連続にする間欠部58を設け、間欠部58によって離間している端部同士を固定ねじ57によって連結可能にしてもよい。このとき、間欠部58には、固定ねじ57をリング状の樹脂センサホルダ56の接線方向に沿って設けるための切欠き59が形成されている。
該構成によれば、樹脂センサホルダ56は、固定ねじ57の締結量を調整することでリング状の樹脂センサホルダ56の径を調整できる。すなわち、樹脂センサホルダ56は、アクスルケース12側に取付けた後に、樹脂センサホルダ56を縮径してアクスルケース12側に固定することができる。
これにより、樹脂センサホルダ56をアクスルケース12側に取付ける際に、アクスルケース12側に固定ねじ57を固定するためのネジ孔を形成する必要がないため、コストをより低く抑えることができる。
【0060】
(第4実施形態)
本実施形態のホイールナット緩み検出システム10は、図10及び図11(a)に示すように、一対のセンサ51、52をアクスルケース12に取付固定した点は第3実施形態と共通しているが、外輪24を内輪25に対して軸方向のインボード側に延長し、その延長部をエンコーダ41の取付スペースとした点で、第3実施形態と異なる。
【0061】
外輪24は、インボード側端部を、内輪25よりも軸方向内(インボード)側に延在する延長部を有する。延長部には、内径を拡径する方向に凹設する段部24cが形成される。
芯金63は、外輪24に嵌合する芯金円筒部63aの内径面が被覆ゴム部65によって覆われている。
【0062】
検出装置40は、エンコーダ41と、一対のセンサ51、52と、を有する。
エンコーダ41は、外輪24のインボード側端部を内径側に凹設した段部24cに取付固定されている。具体的には、外輪24に形成した段部24cにインボード側端部が屈曲形成されたバックヨーク44が取付けられ、バックヨーク44にエンコーダ41が加硫接着成形される。
センサ51、52は、アクスルケース12に固定されている。センサ51、52は、板状に形成され、検出面51a、52aがエンコーダ41と径方向で対向している。
【0063】
すなわち、本実施形態では、検出装置40をシール部材20aの中ではなく、シール部材20aの軸方向のインボード側の回転側部材と静止側部材とに設けている。このため、検出装置40のメンテナンス作業が容易になる。
また、この様態では、段部24cによってエンコーダ41の設置スペースが確保されているため、シール部材20aと、エンコーダ41の組付け順序を任意に変更できる。
その他の構成は、図2に示す第1実施形態のホイールナット緩み検出システムと同様である。
【0064】
(第4実施形態の第1変形例)
本変形例のホイールナット緩み検出システム10は、図11(b)に示すように、外輪24のインボード側端部の内径に段部24cを形成しない点で、第4実施形態と異なる。
【0065】
外輪24は、インボード側端部を、内輪25よりも軸方向内(インボード)側に延在する延長部を有する。
エンコーダ41は、内輪25よりも軸方向インボード側に延長し、芯金円筒部63aが嵌合する内周面から連続する外輪24のインボード側端部に直接取付固定されている。具体的には、外輪24のインボード側端部の内周面にインボード側端部が屈曲形成されたバックヨーク44が取付けられ、バックヨーク44にエンコーダ41が嵌合される。
【0066】
この様態では、シール部材20aの組付け後にエンコーダ41が組付けられる。
この場合も、路面側位相での排水を妨げないように、エンコーダ41の内径は芯金円筒部63aの内径に設けた被覆ゴム部65の内径より大径となっている。
その他の構成は、図2に示す第1実施形態のホイールナット緩み検出システムと同様である。
【0067】
(第4実施形態の第2変形例)
本変形例のホイールナット緩み検出システム10は、図11(c)に示すように、インボード側に延長した芯金63にエンコーダ41を取付けた点で、第4実施形態と異なる。
【0068】
芯金63は、芯金円筒部63aのインボード側の端部を延長し、延長した部分を外輪24に形成した段部24cに沿って径方向外側に向けて拡径することにより、バックヨーク部63cが形成されている。バックヨーク部63cには、エンコーダ41が加硫接着成形される。外輪24の段部24cと、芯金63のバックヨーク部63cと、の間には隙間66が設けられる。
その他の構成は、図2に示す第1実施形態のホイールナット緩み検出システムと同様である。
【0069】
(第4実施形態の第3変形例)
本変形例のホイールナット緩み検出システム10は、図11(d)に示すように、外輪24のインボード側端部に段部24cを形成しない点で、第4実施形態の変形例2と異なる。
【0070】
この様態では、芯金63のバックヨーク部63cが外輪24の内周面に嵌合し、芯金円筒部63aと、外輪24の内周面と、の間には隙間66が設けられている。
その他の構成は、図2に示す第1実施形態のホイールナット緩み検出システムと同様である。
【0071】
(第1実施形態の第1変形例)
本変形例のホイールナット緩み検出システム10では、図12に示すように、ハブ30は、ハブユニット軸受を構成する一体型外輪24と、一体型外輪24の外周部の軸方向中間部に径方向外側に延びる回転フランジ32と、が一体的に形成されている。したがって、回転フランジ32と一体型外輪24とは一体に回転する。
【0072】
なお、シール部材20aは、図3(a)、図3(b)、図6(a)、図6(b)、図8(a)、図8(b)、または図9(a)~図9(c)と同様の検出装置40を有する。本変形例の場合、ハブ30にエンコーダ41が取付けられる芯金63が固定され、内輪25側にセンサ51、52が取付けられるスリンガ62が固定されている。
また、外輪24を内輪25に対して軸方向インボード側に延長し、その延長部をエンコーダ41の取付スペースとすることで、図11と同様の検出装置40も使用できる。
その他の構成は、図2に示す第1実施形態のホイールナット緩み検出システム10と同様である。
【0073】
(第1実施形態の第2変形例)
図13に示すように、本発明に係るホイールナット緩み検出システム10は、シングルタイヤ(図示せず)を有する前輪にも同様に適用することができる。
【0074】
本実施形態のホイールナット緩み検出システム10は、車両のフレームにバネを介して取付けられたアクスルビームにスラスト軸受とキングピン(以上、図示せず)を用いて支持されたスタブアクスル12dの外径側に、インボード側軸受部21及びアウトボード側軸受部22を介してハブ30が回転自在に支持されている。
【0075】
インボード側軸受部21の内輪25及びアウトボード側軸受部22の内輪26は、それぞれの外周面に内輪軌道25a及び26aを備え、スタブアクスル12dの外周面12eにガタのない隙間嵌めで嵌合し、スタブアクスル12dの段部12f及びハブナット19によって軸方向位置が規制されている。
【0076】
ハブ30は、内周面に外輪軌道24a、24bが一体に形成され、外周面のアウトボード寄り端部に回転フランジ32が設けられている。回転フランジ32には、シングルタイヤのディスクホイール15が、ブレーキドラム16と共に複数のボルト部材17及び複数のホイールナット18によって取付けられている。
【0077】
ハブ30の一体型外輪24のアウトボード側内径端部には、ハブ30のアウトボード側開口を塞ぐように、ハブキャップ35が内嵌固定されている。また、インボード側軸受部21のインボード側には、一体型外輪24とインボード側軸受部21の内輪25の間にシール部材20aが取り付けられて、軸受内部の潤滑剤が外部へ流出することを防止し、且つ、外部から塵埃等の異物がインボード側軸受部21及びアウトボード側軸受部22の内部に進入することを防止している。
【0078】
シール部材20aには、図3(a)、図3(b)、図6(a)、図6(b)、図8(a)、図8(b)、または図9(a)~図9(c)と同様の検出装置40が設けられている。すなわち、ハブ30側にエンコーダ41が取付けられる芯金63が固定され、内輪25側にセンサ51、52が取付けられるスリンガ62が固定されている。
【0079】
このようなホイールナット緩み検出システム10において、ホイールナット18が緩むと、そのホイールナット18の位相が路面側にきた際に、シングルタイヤのキャンバ角が負の側に傾き、キャンバスラストが減少する、或いは逆転すると共に、タイヤ半径が小さくなったかのような変化が起き、それに伴い鉛直方向荷重の変化が起きる。これにより、スタブアクスル12d(内輪25、26)に対してハブ30が鉛直方向に相対変位する。この鉛直方向の相対変位は、ダブルタイヤ14を例にして図5(a)及び図5(b)で説明したと同様に、検出装置40により検出することで、ホイールナット18の緩みを検出できる。
また、外輪24を内輪25に対して軸方向インボード側に延長し、その延長部をエンコーダ41の取付スペースとすることで、図11と同様の検出装置40も使用できる。
【0080】
(第1実施形態の第3変形例)
本変形例のホイールナット緩み検出システム10は、図14に示すように、ハブ30の内周面に、内周面に外輪軌道24a、24bが形成された外輪24が嵌合固定されている。外輪24は、ハブ30の円筒部31に内嵌し、アウトボード側の端部をハブ30の円筒部31の段部34に突き当てた状態で、インボード側の端部をハブ30に形成されたリング溝36に嵌合する止め輪37により軸方向が位置決めされている。
【0081】
シール部材20aは、図3(a)、図3(b)、図6(a)、図6(b)、図8(a)、図8(b)、または図9(a)~図9(c)と同様の検出装置40を有する。本変形例の場合、一体型外輪24側にエンコーダ41が取付けられる芯金63が圧入固定され、内輪25側にセンサ51、52が取付けられるスリンガ62が圧入固定されている。
また、外輪24を内輪25に対して軸方向インボード側に延長し、その延長部をエンコーダ41の取付スペースとすることで、図11と同様の検出装置40も使用できる。
その他の構成は、図13に示す第1実施形態の第2変形例のホイールナット緩み検出システム10と同様である。
【0082】
尚、本発明は、前述した各実施形態及び各変形例に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
【0083】
なお、車軸管式の懸架装置では、左右輪が連成運動を行う為、前述の様に、緩んだホイールナット18が路面側に来る位相ではタイヤ半径が若干小さくなったのと同様の状態となり、緩んだホイールナット18が路面側に来る位相において、アクスルケース12(駆動輪)やアクスルビーム(従動輪)が、ナット18が緩んだ側が路面に近くなる方向に傾く結果、ホイールナット18が緩んでない側の車輪の正のキャンバ角とそれによるキャンバスラストが失われる為、その結果は両輪のうち、それぞれの車輪が支承する水平方向荷重の変化としても現れる。
【0084】
従って、左右輪が連成運動を行う車軸管式の懸架装置においては、左右輪のうち片輪のみに上述したホイールナット緩み検出システム10を付けただけでも、反対側車輪のホイールナット緩みを検出可能である。
特に大型トラックでは3~4軸車が多い為、ホイールナット緩み検出システム10を1対の車輪の片輪だけに設ければ、コスト増を最小限に抑えることができる。
【0085】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 回転しない静止側部材と、
複数のボルト部材及び複数のホイールナットを用いて、外周部にホイール及び制動用回転部材が取り付けられる回転フランジと一体に回転する回転側部材と、
前記静止側部材と前記回転側部材との間に転動自在に設けられた複数の転動体と、
前記ホイールナットの緩みを検出する検出装置と、
を備えるホイールナット緩み検出システムであって、
前記検出装置は、
前記回転側部材、又は、前記回転側部材と共に回転及び変位する部分に固定され、被検出面が形成されたエンコーダと、
検出面を前記エンコーダの被検出面に対向させ、前記静止側部材、又は前記静止側部材と共に回転しない部分に支持固定された一対のセンサと、
演算部と、を備え、
前記演算部は、前記回転側部材の一回転内で、鉛直方向成分の荷重変化パターンのずれの有無を監視することにより、前記ホイールナットの緩みの有無を検出し、
前記エンコーダが、ハブユニット軸受のインボード側端部よりアウトボード側に奥まった位置に配置される、
ホイールナット緩み検出システム。
この構成によれば、センサの出力信号が変化するパターンに基づいて、ホイールナットの緩みを精度よく、安価に検出することができる。
【0086】
(2) 前記静止側部材は、外周面に前記外輪軌道と対向する内輪軌道を有し、回転しないアクスルケースまたはスタブアクスルに外嵌固定される内輪であり、
前記回転側部材は、前記回転フランジと、内周面に外輪軌道を有する外輪とを有するハブであり、
前記エンコーダが非磁性カバーで保護される、
(1)に記載のホイールナット緩み検出システム。
この構成によれば、エンコーダに摩耗粉の付着することを防止できる。
【0087】
(3) 前記静止側部材は、回転しないアクスルケースまたはスタブアクスルであり、
前記回転側部材は、前記回転フランジと、内周面に外輪軌道を有する外輪とを有するハブであり、
前記エンコーダが非磁性カバーで保護され、
前記エンコーダが前記外輪のインボード側端部よりもアウトボード側に奥まった位置に配置される、
(1)に記載のホイールナット緩み検出システム。
この構成によれば、エンコーダに摩耗粉の付着することを防止できる。
【0088】
(4) (1)~(3)のいずれかに記載のホイールナット緩み検出システムを備えるハブユニット軸受。
この構成によれば、精度よく、安価なホイールナット緩み検出システムを備えるハブユニット軸受を提供できる。
【0089】
(5) (1)~(3)のいずれかに記載のホイールナット緩み検出システムを、左右輪のうち片輪のみに備える車軸管式懸架装置。
この構成によれば、軸数の多い大型トラックにホイールナット緩み検出システムを設置する際のコスト増を最小限に抑えることができる。
【符号の説明】
【0090】
10 ホイールナット緩み検出システム
12 アクスルケース(回転しない部分)
12d スタブアクスル(回転しない部分)
15 ディスクホイール(ホイール)
16 ブレーキドラム(制動用回転部材)
17 ボルト部材
18 ホイールナット
21 インボード側軸受部
22 アウトボード側軸受部
23 円錐ころ(転動体)
24 外輪、一体型外輪
24a、24b 外輪軌道
25、26 内輪(静止側部材)
25a、26a 内輪軌道
30 ハブ(回転側部材)
32 回転フランジ
40 検出装置
41 エンコーダ
51、52 センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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