(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166937
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】積層コンデンサ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
H01G4/30 201L
H01G4/30 311Z
H01G4/30 311D
H01G4/30 517
H01G4/30 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083374
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100168273
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 昌稔
(72)【発明者】
【氏名】横山 智康
(72)【発明者】
【氏名】菊地 諒介
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC03
5E001AC09
5E001AD02
5E001AD03
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE01
5E082EE19
5E082EE22
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
(57)【要約】
【課題】塗布法によって合成可能な誘電体に適した構造を持つ積層コンデンサを提供する。
【解決手段】本開示の積層コンデンサ100において、積層体20は、複数の中間層21と複数の誘電体層25とを有し、中間層21と誘電体層25とが交互に積層されており、複数の中間層21の各々は、内部電極層22と、内部電極層22の面内方向において内部電極層22に隣接して設けられた絶縁部23とを有し、絶縁部23の材料の組成は、誘電体層25の材料の組成と異なり、内部電極層22は、第1外部電極11又は第2外部電極12に電気的に接続され、絶縁部23は、第2外部電極12と内部電極層22との間に位置して内部電極層22と第2外部電極12とを絶縁している、又は、第1外部電極11と内部電極層22との間に位置して内部電極層22と第1外部電極11とを絶縁している。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1外部電極と、
前記第1外部電極に向かい合う第2外部電極と、
前記第1外部電極及び前記第2外部電極に接するように前記第1外部電極と前記第2外部電極との間に配置された積層体と、
を備え、
前記積層体は、複数の中間層と複数の誘電体層とを有し、前記中間層と前記誘電体層とが交互に積層されており、
前記複数の中間層の各々は、内部電極層と、前記内部電極層の面内方向において前記内部電極層に隣接して設けられた絶縁部とを有し、
前記絶縁部の材料の組成は、前記誘電体層の材料の組成と異なり、
前記内部電極層は、前記第1外部電極又は前記第2外部電極に電気的に接続され、
前記絶縁部は、前記第2外部電極と前記内部電極層との間に位置して前記内部電極層と前記第2外部電極とを絶縁している、又は、前記第1外部電極と前記内部電極層との間に位置して前記内部電極層と前記第1外部電極とを絶縁している、
積層コンデンサ。
【請求項2】
前記第1外部電極に向かい合う前記絶縁部と前記第2外部電極に向かい合う前記絶縁部とが前記積層体の厚さ方向において交互に配置されている、
請求項1に記載の積層コンデンサ。
【請求項3】
前記複数の中間層は、前記誘電体層を介して隣接する第1中間層及び第2中間層を有し、
前記第1中間層の前記内部電極層が前記第1外部電極に電気的に接続され、
前記第1中間層の前記絶縁部が前記第2外部電極と前記第1中間層の前記内部電極層との間に位置し、
前記第2中間層の前記内部電極層が前記第2外部電極に電気的に接続され、
前記第2中間層の前記絶縁部が前記第1外部電極と前記第2中間層の前記内部電極層との間に位置している、
請求項1に記載の積層コンデンサ。
【請求項4】
前記誘電体層の面積は、前記内部電極層の面積と前記絶縁部の面積との合計以下かつ前記内部電極層の面積以上である、
請求項1に記載の積層コンデンサ。
【請求項5】
前記誘電体層は、ハロゲン化物を含む、
請求項1に記載の積層コンデンサ。
【請求項6】
前記誘電体層は、1価のカチオンA、2価のカチオンB、ハロゲン元素Xを含み、AB2X5で表される組成を有する化合物を含む、
請求項1に記載の積層コンデンサ。
【請求項7】
前記絶縁部は、絶縁性の化合物を含み、
前記絶縁性の化合物は、前記内部電極層に含まれた金属を含む化合物である、
請求項1に記載の積層コンデンサ。
【請求項8】
複数の内部電極層と複数の誘電体層とを有する積層コンデンサの製造方法であって、
前記内部電極層としての導電性基材の外周部に絶縁部を設けることと、
塗布法によって前記導電性基材の上に前記誘電体層を形成することと、
を含む、積層コンデンサの製造方法。
【請求項9】
前記絶縁部が積層体の第1側面に現れる層と前記絶縁部が前記積層体の第2側面に現れる層とが前記積層体の厚さ方向において交互に配置されるように、前記導電性基材、前記絶縁部及び前記誘電体層をそれぞれ有する接合シートを積層して前記積層体を形成することと、
前記積層体の前記第1側面に第1外部電極を取り付けることと、
前記積層体の前記第2側面に第2外部電極を取り付けることと、
をさらに含む、請求項8に記載の積層コンデンサの製造方法。
【請求項10】
前記誘電体層は、1価のカチオンA、2価のカチオンB、ハロゲン元素Xを含み、組成AB2X5で表される化合物を含む、
請求項8に記載の積層コンデンサの製造方法。
【請求項11】
前記導電性基材の陽極酸化によって前記導電性基材の前記外周部に前記絶縁部を設ける、
請求項8に記載の積層コンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層コンデンサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の積層コンデンサには、誘電体としてセラミック材料が使用されている。
【0003】
特許文献1には、BaTiO3などの酸化物が含まれた誘電体層を有する積層セラミックコンデンサが記載されている。特許文献1に記載された積層セラミックコンデンサは、典型的には、セラミックチップからなる素体と、一対の外部電極とを有する。素体内には、複数の内部電極層がそれぞれ対向して配置され、各内部電極層の端部が長さ方向の両端面に交互に露出している。一対の外部電極は、内部電極層の露出した端部と導通するように、素体の両端面にそれぞれ形成される。上記構成の積層セラミックコンデンサは、典型的には、誘電体の原料粉末を含むグリーンシート上に、所定の内部電極パターンをそれぞれ印刷した後、積層、裁断及び焼成する工程を経て製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、塗布法によって合成可能な誘電体に適した構造を持つ積層コンデンサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
第1外部電極と、
前記第1外部電極に向かい合う第2外部電極と、
前記第1外部電極及び前記第2外部電極に接するように前記第1外部電極と前記第2外部電極との間に配置された積層体と、
を備え、
前記積層体は、複数の中間層と複数の誘電体層とを有し、前記中間層と前記誘電体層とが交互に積層されており、
前記複数の中間層の各々は、内部電極層と、前記内部電極層の面内方向において前記内部電極層に隣接して設けられた絶縁部とを有し、
前記絶縁部の材料の組成は、前記誘電体層の材料の組成と異なり、
前記内部電極層は、前記第1外部電極又は前記第2外部電極に電気的に接続され、
前記絶縁部は、前記第2外部電極と前記内部電極層との間に位置して前記内部電極層と前記第2外部電極とを絶縁している、又は、前記第1外部電極と前記内部電極層との間に位置して前記内部電極層と前記第1外部電極とを絶縁している、
積層コンデンサを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、塗布法によって合成可能な誘電体に適した構造を持つ積層コンデンサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】
図1Aは、本開示の実施の形態1に係る積層コンデンサの斜視図である。
【
図1C】
図1Cは、
図1Aに示す積層コンデンサのIC-IC線に沿って矢印方向に視た断面図である。
【
図2B】
図2Bは、
図2Aに示す中間層のIIB-IIB線に沿って矢印方向に視た部分拡大断面図である。
【
図3A】
図3Aは、CsSnCl
3の結晶構造を示す図である。
【
図3B】
図3Bは、CsSnCl
3の結晶構造を示す図である。
【
図4A】
図4Aは、CsSn
2Cl
5の結晶構造を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、CsSn
2Cl
5の結晶構造を示す図である。
【
図4C】
図4Cは、CsSn
2Cl
5の結晶構造を示す図である。
【
図4D】
図4Dは、(NH
4)Sn
2Cl
5の結晶構造を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の積層コンデンサの製造方法を示す工程図である。
【
図6】
図6は、絶縁部の作製方法の一例を示す図である。
【
図7A】
図7Aは、実施の形態2に係る積層体の分解斜視図である。
【
図8A】
図8Aは、実施の形態3に係る積層体の分解斜視図である。
【
図9A】
図9Aは、実施の形態4に係る積層体の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示の基礎となった知見)
近年、電子機器の小型化及びその機能の向上に伴い、電子回路の小型化、電子回路の集積度の向上、及び電子回路の動作周波数の向上が進んでいる。電子回路に用いられる電子部品に関しても同様に小型化及び性能の向上が求められている。例えば、小形で高い静電容量を有するコンデンサを提供できれば、電子部品の小型化及びその性能の向上に貢献できると考えられる。静電容量はコンデンサに用いられる誘電体の比誘電率に依存し、その比誘電率が高いほど静電容量が大きくなる。高い比誘電率を示す誘電体として、酸化物誘電体を用いた積層コンデンサが広く開発されている。しかし、酸化物を合成するには500℃以上の高温での焼成が必要であることが多い。大面積のセラミックグリーンシートを焼成すると、原料粉末が収縮することでクラックが生じやすい。そのため、小面積の積層コンデンサしか作製できず、酸化物誘電体を用いた積層コンデンサの容量の向上には限界がある。さらに、高温焼成のため積層コンデンサの製造コストが高くなりやすい。さらに、酸化物の弾性定数は小さいことが多く、粉末の加圧成形体の充填率を高めにくく、積層コンデンサの性能を高めにくい。加えて、曲げ応力に対しても酸化物は高い強度を有しにくい。
【0010】
例えばハロゲン化物は、酸化物のこのようなデメリットを解消できる可能性がある。ハロゲン化物は、一般的に、水及び有機溶媒への溶解性が高いので塗布法によって合成が可能である。加えて、200℃以下の低温でハロゲン化物を合成することができるので、積層コンデンサの面積の増加及び製造コストの低減が期待される。また、高温に対する耐久性が高くないフィルム等の基板の上にもハロゲン化物を成膜できるので、フレキシブルなコンデンサの実現が期待される。さらに、ハロゲン化物の弾性定数は概して酸化物の弾性定数よりも高いので、粉末の加圧成形体の充填率を高めやすい。しかし、ハロゲン化物のような塗布法で合成可能な誘電体の比誘電率は低いため、これまで塗布法かつ低温焼成により積層コンデンサを作製することは検討されていなかった。
【0011】
塗布法によって内部電極上に誘電体層を形成する場合、内部電極の大きさが誘電体層の大きさに一致するか、内部電極の大きさが誘電体層の大きさを上回る。誘電体層の形成後、内部電極を所定寸法に切断し、複数の内部電極を積層して積層体を作製すると、内部電極が全ての端面に露出する。積層体に1対の外部電極を取り付けると、内部電極は、1対の外部電極の両方に電気的に接続される。この場合、外部電極に電圧を印加しても内部電極間に電位差が生じず、電荷を蓄えることができない。したがって、塗布法によって作製可能な誘電体に適した構造が必要である。
【0012】
上記の知見に基づいて、本発明者らは本開示の積層コンデンサを案出した。
【0013】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本開示は、以下の実施形態に限定されない。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、本開示の実施の形態1に係る積層コンデンサの斜視図である。
図1Bは、
図1Aに示す積層コンデンサの分解斜視図である。
図1Cは、
図1Aに示す積層コンデンサのIC-IC線に沿って矢印方向に視た断面図である。積層コンデンサ100は、第1外部電極11、第2外部電極12及び積層体20を備えている。第1外部電極11と第2外部電極12とは、X方向(第1方向)において互いに向かい合っている。積層体20は、第1外部電極11及び第2外部電極12に接するように第1外部電極11と第2外部電極12との間に配置されている。第1外部電極11及び第2外部電極12を介して、積層体20に電荷が蓄積され、積層体20から電荷が取り出される。
【0015】
積層体20は、直方体の形状を有し、平面視で矩形の形状を有する。積層体20の縦方向、横方向及び高さ方向をそれぞれX方向(第1方向)、Y方向(第2方向)及びZ方向(第3方向)と定義する。第1外部電極11及び第2外部電極12は、X方向において互いに向かい合っている。Y方向及びZ方向に平行な積層体20の2つの側面に第1外部電極11及び第2外部電極12が取り付けられている。
【0016】
積層体20は、複数の中間層21及び複数の誘電体層25を有する。積層体20において、中間層21と誘電体層25とは交互に積層されている。中間層21及び誘電体層25の積層方向はZ方向である。複数の中間層21の各々は、内部電極層22及び絶縁部23を有する。絶縁部23は、内部電極層22の面内方向において内部電極層22に隣接して設けられており、第1外部電極11又は第2外部電極12に向かい合っている。内部電極層22の面内方向は、例えば、X方向及びY方向の両方に平行な方向である。
【0017】
内部電極層22は、第1外部電極11又は第2外部電極12に電気的に接続されている。絶縁部23は、第2外部電極12と内部電極層22との間に位置して内部電極層22と第2外部電極12とを絶縁している。あるいは、絶縁部23は、第1外部電極11と内部電極層22との間に位置して内部電極層22と第1外部電極11とを絶縁している。ただし、本実施の形態では、絶縁部23の材料の組成が誘電体層25の材料の組成と異なる。中間層21に絶縁部23を設けることで、内部電極層22が第1外部電極11及び第2外部電極12の両方に同時に電気的に接続されることを阻止できる。これにより、積層コンデンサ100が正常に機能しうる。絶縁部23の材料の組成が誘電体層25の材料の組成と異なるので、絶縁部23の材料選択の余地がある。このことは、積層コンデンサ100の設計自由度を高める。
【0018】
第1外部電極11に向かい合う絶縁部23と第2外部電極12に向かい合う絶縁部23とが積層体20の厚さ方向(Z方向)において交互に配置されている。詳細には、複数の中間層21は、誘電体層25を介して隣接する第1中間層21a及び第2中間層21bを有する。第1中間層21aの内部電極層22が第1外部電極11に電気的に接続されている。第1中間層21aの絶縁部23が第2外部電極12と第1中間層21aの内部電極層22との間に位置している。第2中間層21bの内部電極層22が第2外部電極12に電気的に接続されている。第2中間層21bの絶縁部23が第1外部電極11と第2中間層21bの内部電極層22との間に位置している。このような構成によれば、内部電極層22が第1外部電極11及び第2外部電極12の両方に同時に電気的に接続されることを阻止できる。また、積層コンデンサ100を製造しやすい。
【0019】
図2Aは、中間層21の平面図である。
図2Bは、
図2Aに示す中間層21のIIB-IIB線に沿って矢印方向に視た部分拡大断面図である。絶縁部23は、矩形状の中間層21の一辺に設けられている。絶縁部23は、矩形状の断面を有し、シート状の中間層21において一定の幅Wを占めている。幅Wは、内部電極層22と第1外部電極11(又は第2外部電極12)とを絶縁するのに十分な幅である。中間層21を平面視したとき、内部電極層22の面積に対する絶縁部23の面積の比率は、例えば、0.1%から20%の範囲にある。
【0020】
図2Bに示すように、中間層21の第1主面21p及び第2主面21qにおいて、内部電極層22と絶縁部23との間には段差がない。内部電極層22の厚さと絶縁部23の厚さが等しく、内部電極層22と絶縁部23とが面一で接している。このような構成は、積層体20の寸法精度を高める観点で有利である。「主面」は、最も広い面積を有する面を意味する。
【0021】
図2Cは、
図2Bとは別の中間層の部分拡大断面図である。
図2Dは、
図2B、
図2Cとは更に別の中間層の部分拡大断面図である。
図2Cに示す絶縁部231は、U字状の断面を有する。
図2Dに示す絶縁部232は、L字状の断面を有する。絶縁部231及び絶縁部232は、内部電極層22の表面にのみ設けられている。このような形状の絶縁部231及び絶縁部232も本開示の積層コンデンサ100に採用可能である。
【0022】
図1Bから理解できるように、本実施の形態において、誘電体層25の面積は、中間層21の面積に等しい。つまり、誘電体層25の面積は、内部電極層22の面積と絶縁部23の面積との合計に等しい。絶縁部23に重なる部分には電荷が殆ど蓄積されないので、誘電体層25の面積は、中間層21の面積より小さく、内部電極層22の面積以上であってもよい。このような構成によれば、積層コンデンサ100の容量を最大限に確保することができる。
【0023】
本実施の形態では、第1外部電極11及び第2外部電極12が取り付けられていない積層体20の2つの側面に内部電極層22が露出している。これらの側面は、例えば、樹脂などの絶縁物で被覆されていてもよい。
【0024】
中間層21の厚さは特に限定されない。中間層21が薄い場合、積層コンデンサ100の積層数を増やして容量を増やすことができる。中間層21の厚さは、例えば、0.1μmから100μmの範囲にある。内部電極層22と内部電極層22との間の絶縁性を確保できる限りにおいて、誘電体層25の厚さも特に限定されない。誘電体層25の厚さは、例えば、5nmから100μmの範囲にある。
【0025】
次に、第1外部電極11、第2外部電極12及び積層体20のそれぞれの材料について説明する。
【0026】
第1外部電極11及び第2外部電極12をなす材料は、特定の材料に限定されない。第1外部電極11及び第2外部電極12のそれぞれは、例えば、金属を含んでいる。第1外部電極11及び第2外部電極12のそれぞれは、例えば弁金属を含んでいる。弁金属の例は、Al、Ta、Nb、及びBiである。第1外部電極11及び第2外部電極12のそれぞれは、例えば、弁金属として、Ta、Nb、及びBiからなる群より選択される少なくとも1つを含んでいる。第1外部電極11及び第2外部電極12のそれぞれは、金、白金などの貴金属を含んでいてもよいし、ニッケルを含んでいてもよいし、13族、14族、又は15族の金属元素を含んでいてもよい。
【0027】
積層体20の中間層21において、内部電極層22をなす材料は、特定の材料に限定されない。内部電極層22は、例えば、金属を含んでいる。内部電極層22は、例えば弁金属を含んでいる。弁金属の例は、Al、Ta、Nb、Sn、Pb及びBiである。内部電極層22は、例えば、弁金属として、Ta、Nb、及びBiからなる群より選択される少なくとも1つを含んでいる。内部電極層22は、金、白金などの貴金属を含んでいてもよいし、ニッケルを含んでいてもよいし、13族、14族、又は15族の金属元素を含んでいてもよい。
【0028】
内部電極層22をなす金属材料、第1外部電極11をなす金属材料及び第2外部電極12をなす金属材料は、同じ金属材料であってもよい。
【0029】
内部電極層22は金属シート又は金属箔によって構成されていてもよい。内部電極層22は、導電性を有する樹脂フィルムによって構成されていてもよい。
【0030】
積層体20の中間層21において、絶縁部23は、絶縁性の化合物を含む。絶縁性の化合物は、有機化合物であってもよく、無機化合物であってもよい。絶縁性の化合物は、例えば、内部電極層22に含まれた金属を含む化合物である。このような構成によれば、内部電極層22としての金属シート又は金属箔の一部に絶縁性を付与することによって、絶縁部23を形成することができる。
【0031】
絶縁部23をなす材料は、内部電極層22に含まれる金属の酸化物、窒化物、硫化物、又はハロゲン化物であってもよい。酸化物の例としては、Al2O3、Ta2O5、Nb2O5、SnO2、PbO、Bi2O3などが挙げられる。窒化物の例としては、AlNが挙げられる。ハロゲン化物の例としては、AlF3、TaF5、NbF5、SnF2、PbF2、BiF3などが挙げられる。
【0032】
絶縁部23をなす材料は、内部電極層22に含まれる材料と異なっていてもよい。絶縁部23は誘電体で構成されていてもよい。絶縁部23を構成する誘電体は、例えば、誘電体層25の比誘電率より高い比誘電率を有する。絶縁部23を構成する誘電体は、BaTiO3、PbTiO3、SrTiO3などのペロブスカイト化合物であってもよいし、層状ペロブスカイト化合物であってもよい。絶縁部23を構成する誘電体は、Ruddlesden-Popper化合物、Dion-Jacobson化合物、タングステンブロンズ化合物、及びパイロクロア化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0033】
絶縁部23をなす材料は高分子であってもよい。高分子の例としては、ポリエチレンオキシド、PEDOT:PSSなどが挙げられる。PEDOT:PSSは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)とを含む複合材料である。
【0034】
誘電体層25は、塗布法で合成できる化合物を含むことが望ましい。塗布法で合成できる化合物を誘電体層25が含むことにより、積層コンデンサ100の製造コストの低減及び積層コンデンサ100の大面積化が容易になる。
【0035】
誘電体層25は、例えばハロゲン化物を含む。本発明者らの知見によれば、高い比誘電率を有するハロゲン化物誘電体を塗布法で合成することができる。そのようなハロゲン化物誘電体は、誘電体層25に適した材料である。
【0036】
誘電体層25の材料としてのハロゲン化物は、AB2X5で表される組成を有していてもよい。この組成において、Aは1価のカチオンを表す。Bは2価のカチオンを表す。Xはハロゲン元素である。当該ハロゲン化物は、塗布法で合成でき、かつ、高い比誘電率を有するので、誘電体層25に適した材料である。
【0037】
上記の組成におけるBは、Sn又はPbであってもよい。Sn又はPbは、孤立電子対を有している。孤立電子対は、特定の原子に属する2個の電子が対となって入ってつくられた電子対であり他の原子と共有されていないものである。例えば、Sn2+イオンは、孤立電子対を有する。Sn2+イオンではSnから電子が2個奪われており、最外殻のs軌道を満たす2つの電子が孤立電子対をなす。孤立電子対をなす電子は、周りのイオンと結合を生じさせにくく、不安定な電子状態又は特殊な結晶構造を生じさせうる。このため、ハロゲン化物におけるスズイオンが孤立電子対を有していると、ハロゲン化物の比誘電率が高くなりやすい。一方、スズのイオンとして、Sn2+イオン以外にSn4+イオンも存在しうる。Sn4+イオンでは、Snから電子が4個奪われ、最外殻のs軌道は空になっている。このため、Sn4+イオンは、孤立電子対を有しない。この場合、低配位数の結晶構造が形成されやすく、材料の比誘電率が高くなりにくい。
【0038】
上記の組成におけるBの全てが孤立電子対を有していてもよいし、AB2X5におけるBの一部のみが孤立電子対を有していてもよい。
【0039】
上記の組成におけるXは、例えば、F、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでいる。この場合、ハロゲン化物が高い比誘電率をより有しやすい。
【0040】
上記の組成におけるAは、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、Cu+、Ag+、In+、Tl+など1価のカチオン群より選ばれてもよい。この場合、ハロゲン化物が高い比誘電率をより有しやすい。
【0041】
上記の組成におけるAは、分子性カチオンを有していてもよい。分子性カチオンであるAは、窒素原子及び水素原子のみを有していてもよいし、炭素原子をさらに有していてもよい。この場合、ハロゲン化物が高い比誘電率をより有しやすい。
【0042】
上記の組成におけるAは、例えば、下記式(I)で表されるアンモニウムイオンである。式(I)において、R1、R2、R3、及びR4のそれぞれは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はNH2である。この場合、分子イオンであるカチオンが所望の分極性を有しやすく、ハロゲン化物が高い比誘電率をより有しやすい。
【0043】
【0044】
ハロゲン化物は、例えば、逆ペロブスカイト型構造を有する。このような構成によれば、ハロゲン化物が高い比誘電率をより有しやすい。
【0045】
逆ペロブスカイト型構造は、通常のペロブスカイト型の化合物におけるカチオン及びアニオンの配置が入れ替わった構造である。換言すると、ペロブスカイト型の化合物の中で特定のサイトを占めるイオンが有する電荷の正負と、逆ペロブスカイト型構造の化合物の中でその特定のサイトを占めるイオンが有する電荷の正負とが逆になっている。
【0046】
図3A及び
図3Bは、CsSnCl
3の結晶構造を示す図である。
図3Bは、
図3Aに示す結晶構造をc軸負方向に沿って見た図である。CsSnCl
3はペロブスカイト型構造を有する。
図4A、
図4B、及び
図4Cは、CsSn
2Cl
5の結晶構造を示す図である。
図4Aは、カチオンを中心とする配位多面体によって表したCsSn
2Cl
5の結晶構造を示す図である。
図4Bは、アニオンを中心とする配位多面体によって表したCsSn
2Cl
5の結晶構造を示す図である。
図4Cは、
図4Bに示す結晶構造をc軸負方向に沿って見た図である。CsSn
2Cl
5は逆ペロブスカイト型構造を有する。
図3Aに示す通り、CsSnCl
3では、ペロブスカイト型構造のAサイトにCsが配置され、BサイトにSnが配置され、XサイトにClが配置されている。一方、
図4Bに示す通り、CsSn
2Cl
5では、ペロブスカイト型構造のAサイトに相当するサイトにCl
4が配置され、Bサイトに相当するサイトにClが配置され、Xサイトに相当するサイトにCs又はSnが配置されている。換言すると、CsSn
2Cl
5は、ABX
3の表記では(Cl
4)Cl(CsSn
2)と表される。第一原理計算によると、CsSnCl
3の比誘電率は39.4と算出され、CsSn
2Cl
5の比誘電率は79.5と算出された。
【0047】
図4Bに示す通り、CsSn
2Cl
5は、頂点共有の複数の八面体の頂点にカチオンであるCs
+又はSn
2+が配置され、かつ、その八面体の中心にアニオンであるCl
-が配置されている部位を有する。このため、頂点共有の複数の八面体の頂点にカチオンが配置され、かつ、その八面体の中心にアニオンが配置されている部位を有する逆ペロブスカイト型構造の化合物は、ペロブスカイト型構造の化合物よりも高い比誘電率を有することが期待される。本発明者らの検討によれば、逆ペロブスカイト型構造の化合物がこのような部位を有することにより、逆ペロブスカイト型構造においてイオンが直線に沿って並びやすく、分極が大きくなりやすいと考えられる。このため、ハロゲン化物が高い比誘電率を有しやすく、ハロゲン化物を誘電体層25に用いた積層コンデンサ100の静電容量が高くなりやすい。
【0048】
図4Dは、(NH
4)Sn
2Cl
5の結晶構造を示す図である。(NH
4)Sn
2Cl
5も逆ペロブスカイト型構造を有する。
【0049】
AB2X5の組成を有するハロゲン化物が有する逆ペロブスカイト型構造は、特定の構造に限定されない。逆ペロブスカイト型構造は、NH4Pb2Br5型構造であってもよいし、Cs3CoCl5型構造であってもよいし、La2CuSbS5型構造であってもよいし、La4FeSb2S10型構造であってもよいし、Ba4In2Te2S5型構造であってもよいし、Y2HfS5型構造であってもよいし、TlPb2Cl5型構造であってもよい。
【0050】
ハロゲン化物の比誘電率は特定の値に限定されない。ハロゲン化物の室温における比誘電率は、例えば、1MHzにおいて、40より高くてもよいし、45以上、50以上、60以上、70以上、80以上、90以上、又は100以上であってもよい。室温は、例えば、20℃から25℃の範囲における特定の温度である。ハロゲン化物の室温における比誘電率は、例えば、1MHzにおいて、10000以下である。換言すると、ハロゲン化物の室温における比誘電率は、例えば、1MHzにおいて、40以上10000以下である。
【0051】
次に、積層コンデンサ100の製造方法を説明する。
図5は、本開示の積層コンデンサの製造方法を示す工程図である。
【0052】
図5(a)に示すように、内部電極層22として金属シート221などの導電性基材を準備する。
【0053】
次に、
図5(b)に示すように、導電性基材の外周部に絶縁部23を設ける。これにより、内部電極層22及び絶縁部23を有する中間層21が得られる。例えば、導電性基材の一辺に絶縁処理を施すことによって絶縁部23を設けることができる。絶縁処理としては、絶縁性の被膜で導電性基材の一部を被覆すること、化成処理によって導電性基材の一部に絶縁性の被膜を形成すること、電気化学的な処理によって導電性基材の一部の電気的性質を導電性から絶縁性に変化させることなどが挙げられる。
【0054】
図6は、絶縁部23の作製方法の一例を示す図である。例えば、導電性基材が金属シートである場合、上記の絶縁処理として、陽極酸化を採用できる。導電性基材の陽極酸化によって導電性基材の外周部に絶縁部23を設けることができる。例えば、
図6に示すように、金属シート221の一部を希硫酸などの電解液に浸漬させ、金属シート221と対極222とを電気的に接続する。対極222は、例えば、炭素板又は白金板である。金属シート221と対極222との間に電圧を印加する。これにより、電解液に浸漬した金属シート221の一部が酸化され、絶縁部23が形成される。
【0055】
陽極酸化によると耐電圧に優れた酸化被膜を絶縁部23として形成できる。その結果、絶縁部23によって、第1中間層21aの内部電極層22が第2外部電極12に導通すること、又は、第2中間層21bの内部電極層22が第1外部電極11に導通することを阻止できる。また、陽極酸化によると、
図2Aから
図2Cを参照して説明したように、内部電極層22と絶縁部23との間に段差が生じることを回避できる。つまり、均一な厚さの中間層21を形成できる。
【0056】
絶縁性の被膜で導電性基材の一部を被覆する方法としては、ポリエチレンオキシドなどの高分子を含む溶液に導電性基材の一部を浸漬して高分子の被膜を形成することが挙げられる。導電性基材の種類にも依存するが、化成処理によって絶縁性の被膜を形成する方法としては、リン酸塩処理などが挙げられる。
【0057】
次に、
図5(c)に示すように、塗布法によって中間層21としての導電性基材の上に誘電体層25を形成する。中間層21は予め絶縁部23を有するので、塗布法によって誘電体層25を形成するのに適している。塗布法によれば、大面積の誘電体層25を比較的容易に形成できる。
【0058】
塗布法によって誘電体層25を形成するために、誘電体の原料又は誘電体を含む溶液を調製する。例えば、誘電体がNH4Pb2Br5である場合、NH4BrとPbBr2とをジメチルスルホキシドなどの溶媒に溶解させて溶液を調製する。この溶液を中間層21に塗布して塗布膜を形成する。塗布膜を100℃から200℃の温度で焼成する。これにより、溶媒が揮発し、中間層21の上に誘電体層25が形成される。
【0059】
誘電体層25を形成するための塗布法としては、スピンコーティング、インクジェット、ダイコーティング、ロールコーティング、バーコーティング、ラングミュア・ブロジェット、ディップコーティング、スプレーコーティングなどが挙げられる。
【0060】
中間層21への溶液の塗布は、ロールツーロール方式によって行ってもよい。すなわち、繰り出しロールから巻取りロールへと長尺の中間層21を搬送しながら、中間層21への溶液の塗布、及び、塗布膜の焼成を行うことができる。このような方法は、生産性に優れる。
【0061】
誘電体層25を形成したのち、中間層21を誘電体層25とともに所定寸法に切断する。これにより、中間層21及び誘電体層25を有する所定寸法の電極-誘電体接合シート30が得られる。例えば、長尺の導電性基材を用いて電極-誘電体接合シート30を作製する場合、
図1Aに示すX-Z平面に平行な側面が切断面となる。
【0062】
次に、
図5(d)に示すように、複数の電極-誘電体接合シート30を積層して積層体20を形成する。具体的には、絶縁部23が積層体20の第1側面20rに現れる層と絶縁部23が積層体20の第2側面20sに現れる層とが積層体20の厚さ方向(Z方向)において交互に配置されるように、複数の電極-誘電体接合シート30を積層する。第1側面20r及び第2側面20sは、
図1Aに示すY-Z平面に平行な側面である。
【0063】
電極-誘電体接合シート30の積層数は特に限定されず、目的とする容量に応じて適宜設定される。10層以上100層以下の電極-誘電体接合シート30が積層されてもよい。積層された複数の電極-誘電体接合シート30は、熱圧着法、静水圧プレス法などの加圧方法によって加圧されて一体化される。これにより、積層体20が作製される。
【0064】
次に、
図5(e)に示すように、積層体20の第1側面20rに第1外部電極11を取り付け、積層体20の第2側面20sに第2外部電極12を取り付ける。これにより、本開示の積層コンデンサ100が得られる。例えば、ニッケルなどの卑金属材料を含む導電ペーストを積層体20の第1側面20r及び第2側面20sに塗布して塗布層を形成する。塗布層を乾燥させることによって、第1外部電極11及び第2外部電極12が形成される。第1外部電極11及び第2外部電極12の表面に半田めっきが施されてもよい。
【0065】
(実施の形態2)
図7Aは、実施の形態2に係る積層体の分解斜視図である。
図7Bは、
図7Aに示す積層体に用いられた中間層の平面図である。積層体201は、複数の中間層211及び複数の誘電体層25を有する。
図1Aに示す積層コンデンサ100において、積層体20に代えて、積層体201を用いることができる。
【0066】
中間層211は、内部電極層22及び絶縁部23を有する。矩形状の中間層211の1対の向かい合う辺に絶縁部23が設けられている。詳細には、絶縁部23は、第1外部電極11及び第2外部電極12に接する1対の辺から選ばれる一辺に設けられた第1部分23jと、第2外部電極12及び第1外部電極11に接する1対の辺から選ばれる他の一辺に設けられた第2部分23kとを含む。第1部分23jは、中間層211の一辺の全部に設けられているので、第1部分23jは、内部電極層22と第1外部電極11(又は第2外部電極12)とを絶縁する。第2部分23kは、中間層211の他の一辺の一部にのみ設けられているので、第2部分23kが設けられていない部分を介して内部電極層22と第2外部電極12(又は第1外部電極11)とが導通する。このような構成によれば、仮に、ある中間層211の絶縁部23jが劣化して絶縁性が低下したとしても、その中間層211の上下に位置した中間層211の絶縁部23kによって内部電極層221同士が短絡することを防ぐことができる。
【0067】
図7Aに示す4つの中間層211は、同一の構造を有する。ただし、積層体201において、4つの中間層211の向きは互いに異なる。積層体201の厚さ方向において絶縁部23の第1部分23jが千鳥状に配置されるように、各中間層211の向きが定められている。4つの中間層211及び4つの誘電体層25によって、1周期の繰り返し構造が形成されている。
【0068】
(実施の形態3)
図8Aは、実施の形態3に係る積層体の分解斜視図である。
図8Bは、
図8Aに示す積層体に用いられた中間層の平面図である。積層体203は、複数の中間層213及び複数の誘電体層25を有する。
図1Aに示す積層コンデンサ100において、積層体20に代えて、積層体203を用いることができる。
【0069】
中間層213は、内部電極層22及び絶縁部23を有する。本実施の形態において、絶縁部23は、矩形状の中間層213の3つの辺に設けられている。中間層213を平面視したとき、内部電極層22がU字状の絶縁部23によって囲まれており、一辺のみにおいて内部電極層22が中間層213の側面に露出している。絶縁部23が設けられていない一辺において、内部電極層22が第1外部電極11又は第2外部電極12に電気的に接続される。このような構成によれば、内部電極層22が積層コンデンサ100の側面に露出しない。
【0070】
(実施の形態4)
図9Aは、実施の形態4に係る積層体の分解斜視図である。
図9Bは、
図9Aに示す積層体に用いられた中間層の平面図である。積層体205は、複数の中間層215及び複数の誘電体層25を有する。
図1Aに示す積層コンデンサ100において、積層体20に代えて、積層体205を用いることができる。
【0071】
中間層215は、内部電極層22及び絶縁部23を有する。本実施の形態において、絶縁部23は、矩形状の中間層215の4つの辺に設けられている。ただし、絶縁部23は、中間層215の一辺において一部にのみ設けられ、残りの3つの辺の全部に設けられている。絶縁部23が設けられていない一辺において、内部電極層22が第1外部電極11又は第2外部電極12に電気的に接続される。つまり、本実施の形態における中間層215は、実施の形態2の中間層211(
図7B)と実施の形態3の中間層213(
図8B)との組み合わせである。そのため、本実施の形態によれば、実施の形態2及び実施の形態3の両方の利益が得られる。
【0072】
(他の実施の形態)
図10Aは、本開示の電気回路の一例を模式的に示す図である。電気回路3は、積層コンデンサ100を備えている。電気回路3は、能動回路であってもよいし、受動回路であってもよい。電気回路3は、放電回路であってもよいし、平滑回路であってもよいし、デカップリング回路であってもよいし、カップリング回路であってもよい。電気回路3が積層コンデンサ100を備えているので、電気回路3が所望の性能を発揮しやすい。例えば、電気回路3において積層コンデンサ100によりノイズが低減されやすい。
【0073】
図10Bは、本開示の回路基板の一例を模式的に示す図である。
図10Bに示す通り、回路基板5は積層コンデンサ100を備えている。例えば、回路基板5において、積層コンデンサ100を含む電気回路3が形成されている。回路基板5は、組み込みボードであってもよいし、マザーボードであってもよい。
【0074】
図10Cは、本開示の機器の一例を模式的に示す図である。
図10Cに示す通り、機器7は、例えば、積層コンデンサ100を備えている。機器7は、例えば、積層コンデンサ100を含む回路基板5を備えている。機器7は、積層コンデンサ100を備えているので、機器7が所望の性能を発揮しやすい。機器7は、電子機器であってもよいし、通信機器であってもよいし、信号処理装置であってもよいし、電源装置であってもよい。機器7は、サーバーであってもよいし、ACアダプタであってもよいし、アクセラレータであってもよいし、液晶表示装置(LCD)などのフラットパネルディスプレイであってもよい。機器7は、USB充電器であってもよいし、ソリッドステートドライブ(SSD)であってもよいし、PC、スマートフォン、タブレットPCなどの情報端末であってもよいし、イーサーネットスイッチであってもよい。
【0075】
(付記)
以上の記載より、下記の技術が開示される。
【0076】
(技術1)
第1外部電極と、
前記第1外部電極に向かい合う第2外部電極と、
前記第1外部電極及び前記第2外部電極に接するように前記第1外部電極と前記第2外部電極との間に配置された積層体と、
を備え、
前記積層体は、複数の中間層と複数の誘電体層とを有し、前記中間層と前記誘電体層とが交互に積層されており、
前記複数の中間層の各々は、内部電極層と、前記内部電極層の面内方向において前記内部電極層に隣接して設けられた絶縁部とを有し、
前記絶縁部の材料の組成は、前記誘電体層の材料の組成と異なり、
前記内部電極層は、前記第1外部電極又は前記第2外部電極に電気的に接続され、
前記絶縁部は、前記第2外部電極と前記内部電極層との間に位置して前記内部電極層と前記第2外部電極とを絶縁している、又は、前記第1外部電極と前記内部電極層との間に位置して前記内部電極層と前記第1外部電極とを絶縁している、
積層コンデンサ。
【0077】
技術1によれば、塗布法によって合成可能な誘電体に適した構造を持つ積層コンデンサを提供できる。
【0078】
(技術2)
前記第1外部電極に向かい合う前記絶縁部と前記第2外部電極に向かい合う前記絶縁部とが前記積層体の厚さ方向において交互に配置されている、技術1に記載の積層コンデンサ。
【0079】
(技術3)
前記複数の中間層は、前記誘電体層を介して隣接する第1中間層及び第2中間層を有し、前記第1中間層の前記内部電極層が前記第1外部電極に電気的に接続され、前記第1中間層の前記絶縁部が前記第2外部電極と前記第1中間層の前記内部電極層との間に位置し、前記第2中間層の前記内部電極層が前記第2外部電極に電気的に接続され、前記第2中間層の前記絶縁部が前記第1外部電極と前記第2中間層の前記内部電極層との間に位置している、技術1又は2に記載の積層コンデンサ。
【0080】
技術2及び技術3によれば、内部電極層が第1外部電極及び第2外部電極の両方に同時に電気的に接続されることを阻止できる。また、積層コンデンサを製造しやすい。
【0081】
(技術4)
前記誘電体層の面積は、前記内部電極層の面積と前記絶縁部の面積との合計以下かつ前記内部電極層の面積以上である、技術1から3のいずれか1項に記載の積層コンデンサ。このような構成によれば、積層コンデンサの容量を最大限に確保することができる。
【0082】
(技術5)
前記誘電体層は、ハロゲン化物を含む、技術1から4のいずれか1項に記載の積層コンデンサ。ハロゲン化物は、塗布法で形成される誘電体層に適した材料である。
【0083】
(技術6)
前記誘電体層は、1価のカチオンA、2価のカチオンB、ハロゲン元素Xを含み、AB2X5で表される組成を有する化合物を含む、技術1から4のいずれか1項に記載の積層コンデンサ。当該ハロゲン化物は、塗布法で合成でき、かつ、高い比誘電率を有するので、誘電体層に適した材料である。
【0084】
(技術7)
前記絶縁部は、絶縁性の化合物を含み、前記絶縁性の化合物は、前記内部電極層に含まれた金属を含む化合物である、技術1から6のいずれか1項に記載の積層コンデンサ。このような構成によれば、内部電極層としての金属シート又は金属箔の一部に絶縁性を付与することによって、絶縁部を形成することができる。
【0085】
(技術8)
複数の内部電極層と複数の誘電体層とを有する積層コンデンサの製造方法であって、
前記内部電極層としての導電性基材の外周部に絶縁部を設けることと、
塗布法によって前記導電性基材の上に前記誘電体層を形成することと、
を含む、積層コンデンサの製造方法。
【0086】
塗布法によれば、大面積の誘電体層を比較的容易に形成できる。
【0087】
(技術9)
前記絶縁部が積層体の第1側面に現れる層と前記絶縁部が前記積層体の第2側面に現れる層とが前記積層体の厚さ方向において交互に配置されるように、前記導電性基材、前記絶縁部及び前記誘電体層をそれぞれ有する接合シートを積層して前記積層体を形成することと、前記積層体の前記第1側面に第1外部電極を取り付けることと、前記積層体の前記第2側面に第2外部電極を取り付けることと、をさらに含む、技術8に記載の積層コンデンサの製造方法。これにより、本開示の積層コンデンサが得られる。
【0088】
(技術10)
前記誘電体層は、1価のカチオンA、2価のカチオンB、ハロゲン元素Xを含み、組成AB2X5で表される化合物を含む、技術8又は9に記載の積層コンデンサの製造方法。当該ハロゲン化物は、塗布法で合成でき、かつ、高い比誘電率を有するので、誘電体層に適した材料である。
【0089】
(技術11)
前記導電性基材の陽極酸化によって前記導電性基材の前記外周部に前記絶縁部を設ける、技術8から10のいずれか1項に記載の積層コンデンサの製造方法。陽極酸化によると耐電圧に優れた酸化被膜を絶縁部として形成できる。
【実施例0090】
アセトンで満たされた容器に内部電極層であるスズ箔(20mm角、厚み0.1mm)を浸した状態で超音波洗浄を10分間行い、スズ箔の表面を洗浄した。その後、スズ箔の表面に付着したアセトンを蒸発させ、純水でスズ箔の表面を洗浄した。その後、スズ箔を大気中で乾燥させた。
【0091】
H3PO4が加えられた水溶液中において、スズ箔と、対極としての白金箔とを所定の間隔で配置した。スズ箔は、水面から5mmの位置に固定し浸水させた。水溶液に浸されていないスズ箔の部分を電源装置の正極に接続し、水溶液に浸されていない白金箔の部分を電源装置の負極に接続した。定電圧で電源装置から電流を流し、スズ箔と対極との間に64Vの電圧を30分間印加した。陽極であるスズ箔の表面において電気化学反応を生じさせ、スズ箔の一辺に絶縁部(酸化スズ)を形成した。絶縁部が形成されたスズ箔を水溶液中から取り出し、純水で洗浄して大気中で乾燥させた。
【0092】
次に、0.5mmolのNH4Br及び1mmolのPbBr2をDMSO及びDMFの混合溶媒1mlに添加し、混合溶液を得た。混合溶媒におけるDMSO:DMFの体積比は、1:4であった。
【0093】
グローブボックス内で、混合溶液(80μL)をスピンコート法によりスズ箔に滴下し、塗布膜を得た。グローブボックスの内部はN2で満たされており、その酸素濃度は0.1ppm以下であった。
【0094】
次に、塗布膜を摂氏80度に維持されたホットプレート上で30分間焼成した。このようにして、誘電体層を形成した。誘電体層は、組成式NH4Pb2Br5の逆ペロブスカイト化合物を主成分として含有していた。
【0095】
誘電体層が製膜された3枚のスズ箔を絶縁部が互い違いになるように積層し、2MPaの圧力を加えて積層体を得た。
【0096】
最後に、積層体の2つの側面にAgペーストを塗布し、乾燥させることで第1外部電極及び第2外部電極を形成した。これにより、内部電極層が金属スズで形成され、誘電体層が組成式NH4Pb2Br5の逆ペロブスカイト化合物で形成された積層コンデンサを得た。