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  • 特開-基礎型枠の跨ぎ足場構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166953
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】基礎型枠の跨ぎ足場構造
(51)【国際特許分類】
   E04G 3/00 20060101AFI20241122BHJP
   E04G 17/00 20060101ALI20241122BHJP
   E02D 27/01 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
E04G3/00 Q
E04G17/00 Z
E02D27/01 C
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083398
(22)【出願日】2023-05-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】志水 洸介
(72)【発明者】
【氏名】松原 由幸
(72)【発明者】
【氏名】萩原 侑大
(72)【発明者】
【氏名】中島 孝雄
【テーマコード(参考)】
2D046
2E150
【Fターム(参考)】
2D046BA12
2E150BA32
2E150BA52
2E150BA53
2E150CA01
2E150DA03
2E150FA23
2E150HC17
2E150HG01
2E150MA02Z
(57)【要約】
【課題】基礎に交差する方向への移動を助ける足場として、基礎型枠の任意箇所に容易に設置可能で、不要になれば簡単に取り外すこともできる跨ぎ足場構造を提供する。
【解決手段】鋼製の型枠パネル10を連結して構築される基礎型枠の両側面に、基礎の幅方向に相対させて一対の跨ぎ足場2を仮設する。跨ぎ足場2は、型枠パネル10の上枠材12に載架される掛止部21と、掛止部21の前縁から型枠パネル10の外側面に沿って垂下する垂壁部22と、垂壁部22の下部から型枠パネル10と離隔する向きに張り出す踏み板部23と、を具備する。掛止部21には掛止ピン挿込孔24が形成され、型枠パネル10の上枠材12に形成された取付孔17に重ねて固定ピン6で固定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリートからなる基礎の立ち上がり部を成型するための基礎型枠の両側面に、前記基礎の幅方向に相対させて一対の跨ぎ足場を仮設することにより、前記基礎型枠を跨いで移動することを補助する基礎型枠の跨ぎ足場構造であって、
前記基礎型枠は、矩形の面板の四周に枠材を結合するとともに、前記面板の中間部分に補剛用の縦リブまたは横リブを設けてなる鋼製の型枠パネルを、前記基礎の幅間隔で対置させ、前記基礎の延設方向に連結して構築されるものであり、
前記跨ぎ足場は、前記型枠パネルの上枠材に載架される掛止部と、前記掛止部の前縁から前記型枠パネルの外側面に沿って垂下する垂壁部と、前記垂壁部の下部から前記型枠パネルと離隔する向きに張り出す踏み板部と、を具備し、
前記掛止部には掛止ピン挿込孔が形成されて、前記掛止ピン挿込孔を前記型枠パネルの上枠材に形成された取付孔に重ね、上方から固定ピンを挿し込んで固定することにより、前記跨ぎ足場が前記基礎型枠の側面に着脱自在に添設されて、前記基礎型枠の高さ方向における中間部側方に前記踏み板部が保持される
ことを特徴とする基礎型枠の跨ぎ足場構造。
【請求項2】
請求項1に記載された基礎型枠の跨ぎ足場構造において、
前記掛止部を前記型枠パネルの上枠材に載架した状態で、前記垂壁部が、前記型枠パネルの側縁または中間部分に設けられた少なくとも2本の縦リブに当接するように設定されている
ことを特徴とする基礎型枠の跨ぎ足場構造。
【請求項3】
請求項1に記載された基礎型枠の跨ぎ足場構造において、
前記掛止部を前記型枠パネルの上枠材に載架した状態で、前記踏み板部の高さが、前記型枠パネルの中間部分に設けられた横リブの高さと揃うように設定されている
ことを特徴とする基礎型枠の跨ぎ足場構造。
【請求項4】
請求項1、2または3に記載された基礎型枠の跨ぎ足場構造において、
前記掛止部の少なくとも一部分が下向きに開口する溝形の断面形状をなすように形成されて、前記型枠パネルの上枠材に上方から掛止される
ことを特徴とする基礎型枠の跨ぎ足場構造。
【請求項5】
請求項1、2または3に記載された基礎型枠の跨ぎ足場構造において、
前記掛止部の前縁の左右各端部または前記垂壁部の左右各側縁の上部と、前記踏み板部の左右各側縁の前端部とが、左右一対の補強斜材を介してそれぞれ連結されている
ことを特徴とする基礎型枠の跨ぎ足場構造。
【請求項6】
請求項5に記載された基礎型枠の跨ぎ足場構造において、
前記垂壁部及び前記踏み板部の左右幅を前記左右の補強斜材の間隔よりも部分的に小さくすることにより、複数個の跨ぎ足場を積み重ね得るように構成されている
ことを特徴とする基礎型枠の跨ぎ足場構造。
【請求項7】
請求項1、2、3または請求項1を引用する請求項5に記載された基礎型枠の跨ぎ足場構造において、
前記掛止部の左右両端部に、前記基礎型枠の片側から反対側に保持された前記踏み板部の位置を視認しやすくする目印部が設けられている
ことを特徴とする基礎型枠の跨ぎ足場構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願が開示する発明は、建物のコンクリート基礎を施工するに際して、基礎の立ち上がり部を成型する基礎型枠を跨いで移動しやすくするための跨ぎ足場構造に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅その他の比較的小規模な建物の基礎構造として、土中に埋設されるベース部上に立ち上がり部を設けた逆T字形断面の布基礎(連続フーチング基礎)がよく採用される。このような基礎の施工現場では、基礎の立ち上がり部を成型するための基礎型枠の周囲に、作業用の足場を設けることがある。その種の足場としては、例えば、特許文献1、2、3等に開示されているように、基礎型枠を支保する縦バタ材もしくは横バタ材、あるいは基礎型枠を構成する鋼製の型枠パネル(メタルフォーム)の縦リブに、ブラケット状の足場受け具を適宜間隔で複数個、取り付け、それらの足場受け具に足場板を載せて、基礎の延設方向と平行に延びる歩行用足場を設けるものが公知である。
【0003】
また、例えば、特許文献4、5等には、基礎型枠の上縁に足場受け具を相対させて設置し、それら両足場受け部に単管等の軸材を通して基礎型枠の側方に突出させ、その軸材の突出端に足場板を載せることにより、基礎の延設方向と平行に延びる歩行用足場を、基礎型枠の両側方に設ける構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭58-165152号公報
【特許文献2】特開2005-016181号公報
【特許文献3】特開平07-252932号公報
【特許文献4】実開平06-074742号公報
【特許文献5】特開2005-256291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基礎の延設方向と平行に設置される前記従来のような歩行用足場は、基礎型枠を組み上げた後、アンカーボルトを位置決めしたり、コンクリートを打設したりする作業においては有用である。しかし、鉄筋結束作業や基礎型枠同士の連結作業など、基礎型枠の組み上げが完了するまでの作業段階では、まだ設置することができない。そのような作業中には、仮設資材や鉄筋等を運びながら、組み上げ途中の基礎型枠を跨いで移動する作業が頻繁に発生するので、前述のような基礎と平行に延びる歩行用足場ではなく、基礎の延設方向に交差する方向への移動を助ける足場が求められるところである。
【0006】
特許文献3には、型枠パネルの側面に取り付けた足場受け具に足場板を載せないで踏み板として使用する態様も開示されているが、この足場受け具は基礎型枠の任意の位置に簡単に着脱できるようなものではない。また、基礎型枠を跨ぐ際の踏み外しを防止し得るような配慮も特にされてはいない。
【0007】
本願が開示する発明は、かかる事情に鑑みて着想されたものであり、基礎の延設方向に交差する方向への移動を助ける足場構造として、組み上げ途中の基礎型枠の任意の箇所に容易に設置することができ、不要になればすぐに取り外すこともできる跨ぎ足場構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の目的を達成するために本願が開示する発明は、鉄筋コンクリートからなる基礎の立ち上がり部を成型するための基礎型枠の両側面に、前記基礎の幅方向に相対させて一対の跨ぎ足場を仮設することにより、前記基礎型枠を跨いで移動することを補助する基礎型枠の跨ぎ足場構造として、前記基礎型枠は、矩形の面板の四周に枠材を結合するとともに、前記面板の中間部分に補剛用の縦リブまたは横リブを設けてなる鋼製の型枠パネルを、前記基礎の幅間隔で対置させ、前記基礎の延設方向に連結して構築されるものであり、前記跨ぎ足場は、前記型枠パネルの上枠材に載架される掛止部と、前記掛止部の前縁から前記型枠パネルの外側面に沿って垂下する垂壁部と、前記垂壁部の下部から前記型枠パネルと離隔する向きに張り出す踏み板部と、を具備し、前記掛止部には掛止ピン挿込孔が形成されて、前記掛止ピン挿込孔を前記型枠パネルの上枠材に形成された取付孔に重ね、上方から固定ピンを挿し込んで固定することにより、前記跨ぎ足場が前記基礎型枠の側面に着脱自在に添設されて、前記基礎型枠の高さ方向における中間部側方に前記踏み板部が保持される、との基本的構成を採用する。
【0009】
さらに、本願が開示する発明は、前記基本的構成に係る基礎型枠の跨ぎ足場構造において、前記掛止部を前記型枠パネルの上枠材に載架した状態で、前記垂壁部が、前記型枠パネルの側縁または中間部分に設けられた少なくとも2本の縦リブに当接するように設定されている、との付加的構成を採用する。
【0010】
また、本願が開示する発明は、前記基本的構成に係る基礎型枠の跨ぎ足場構造において、前記掛止部を前記型枠パネルの上枠材に載架した状態で、前記踏み板部の高さが、前記型枠パネルの中間部分に設けられた横リブの高さと揃うように設定されている、との付加的構成を採用する。
【0011】
また、本願が開示する発明は、前記基本的構成に係る基礎型枠の跨ぎ足場構造において、前記掛止部の少なくとも一部分が下向きに開口する溝形の断面形状をなすように形成されて、前記型枠パネルの上枠材に上方から掛止される、との付加的構成を採用する。
【0012】
また、本願が開示する発明は、前記基本的構成に係る基礎型枠の跨ぎ足場構造において、前記掛止部の前縁の左右各端部または前記垂壁部の左右各側縁の上部と、前記踏み板部の左右各側縁の前端部とが、左右一対の補強斜材を介してそれぞれ連結されている、との付加的構成を採用する。
【0013】
この付加的構成に係る基礎型枠の跨ぎ足場構造においては、前記垂壁部及び前記踏み板部の左右幅を前記左右の補強斜材の間隔よりも部分的に小さくすることにより、複数個の跨ぎ足場を積み重ね得るように構成されていると、より好ましい。
【0014】
また、前記基本的構成に係る基礎型枠の跨ぎ足場構造においては、前記掛止部の左右両端部に、前記基礎型枠の片側から反対側に保持された前記踏み板部の位置を視認しやすくする目印部が設けられていると、より好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本願が開示する基礎型枠の跨ぎ足場構造は、跨ぎ足場の掛止部を型枠パネルの上枠材に載架するだけで、前記基礎型枠の高さ方向における中間部側方に踏み板部を設置することができるように構成されている。したがって、作業者が基礎型枠の片側に立った状態から、基礎型枠を跨ぐことなく、基礎型枠の両側に跨ぎ足場を容易に設置し、また不要になれば撤去することが可能になる。
【0016】
さらに、この跨ぎ足場は、掛止部が基礎型枠の上に見える状態で設置されるので、作業者が基礎型枠の片側から基礎型枠を跨ごうとするときに、基礎型枠の反対側に設置されている跨ぎ足場の踏み板部の位置を把握しやすくなって、移動時の安全性も向上する。
【0017】
また、この跨ぎ足場を積み重ね可能な形態にすることで、運搬時や撤去時の作業性が向上し、施工現場での保管(仮置き)や施工現場間の搬送等に際しての省スペース化にも寄与する。これらにより、基礎工事における作業効率が大きく改善されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本願が開示する基礎型枠の跨ぎ足場構造の基本的構成を示す斜視図である。
図2】前記跨ぎ足場構造の、基礎の延設方向に交差する方向の縦断面図である。
図3】跨ぎ足場の他の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本願が開示する発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1及び図2は、本願が開示する基礎型枠の跨ぎ足場構造の基本的構成を示している。この跨ぎ足場構造は、基礎の立ち上がり部を成型する基礎型枠1の両側面に、基礎の幅方向に相対させて一対の跨ぎ足場2を仮設するものである。跨ぎ足場2が仮設される基礎型枠1は、鋼製の型枠パネル10を基礎の幅間隔で対置させ、その間隔をセパレータ(図示せず)等で保持して、基礎の延設方向に連結することにより構築される。基礎型枠1は、例えば地中に埋設されるベース部型枠3等の上に立設されるが、本願が開示する発明はベース部型枠3の詳細な構造を限定するものではない。
【0021】
型枠パネル10は、コンクリートの剥離性を高める表面処理を施した面板11の四周に枠材(上枠材12、下枠材13、縦枠材14)を結合し、さらに面板11の背面の中間部分に補剛用のリブ(縦リブ15、横リブ16)を接合して構成されている。枠材には、例示形態では扁平断面の角筒材を使用しているが、これに替えて溝形鋼材や山形鋼材等も使用可能である。また、例示形態の型枠パネル10には、複数本の縦リブ15と横リブ16とが格子状に設けられているが、これらリブの本数や配置は、型枠パネル10のサイズに応じて適宜、変更可能である。なお、建て込んだ型枠パネル10の外側面をバタ材等で支保する都合上、枠材の縁端とリブの縁端とは面一に揃えられているのが通常である。
【0022】
左右の縦枠材14には、隣接する型枠パネル10同士をUピン(U字クリップ)4等によって連結するための連結孔(図示せず)が、互いの位置を揃えて複数箇所に貫通形成されている。Uピン4は、直棒状の連結軸部41と、連結軸部41の中間部から連結軸部41と交差する向きに延び出すJ字状のクリップ部42と、を具備しており、縦枠材14同士の隣接箇所に形成された連結孔に連結軸部41を側方から挿入し、その連結軸部41を軸周りに回動させて隣接する縦枠材14の両側にクリップ部42を嵌装させることで、隣接する型枠パネル10同士が連結される。ただし、本願が開示する発明は、型枠パネル10同士の連結構造や、Uピン4その他の連結具の詳細な形態を限定するものではない。
【0023】
型枠パネル10の上枠材12には、アンカーボルト位置決め用の定規プレート5等をピンまたはボルト・ナットで留め付けるための取付孔17が、所定間隔で複数箇所に貫通形成されている。例示した定規プレート5は、型枠パネル10の上枠材12と略等幅の側枠板51と、それら側枠板51同士を連結する三箇所のアンカーボルト位置決め板52と、を有して、側枠板51及びアンカーボルト位置決め板52に複数個の取付孔53が形成されており、必要に応じて型枠パネル10上の適所に載架される。
【0024】
本願が開示する発明の要部は、型枠パネル10の上枠材12や定規プレート5の側枠板51に形成されたこれらの取付孔17、53を利用して、型枠パネル10に跨ぎ足場2を取り付ける点にある。跨ぎ足場2は基本的に、型枠パネル10の上枠材12に載架される掛止部21と、掛止部21の前縁から型枠パネル10の外側面に沿って垂下する垂壁部22と、垂壁部22の下部から型枠パネル10と離隔する向きに張り出す踏み板部23と、を具備するものとして構成される。図1に例示した跨ぎ足場2は、一枚の鋼板を側面視略Z字状に屈折させることにより、掛止部21、垂壁部22及び踏み板部23を略等幅で連続一体的に形成したものである。
【0025】
掛止部21は、型枠パネル10の上枠材12と略等幅の帯板状をなす平坦な部位である。掛止部21には、型枠パネル10の上枠材12の取付孔17に合致する掛止ピン挿込孔24が適宜間隔で複数箇所に形成されている。この掛止部21が型枠パネル10の上枠材12に載架され、それらの取付孔17と掛止ピン挿込孔24とを合致させて、上方から固定ピン6を挿し込むことにより、跨ぎ足場2が型枠パネル10に取り付けられる。型枠パネル10の上に定規プレート5が留め付けられる箇所では、その定規プレート5の上から掛止部21が載架され、上枠材12及び定規プレート5に対してピン固定される。
【0026】
例示形態の掛止部21は、垂壁部22とは反対側の側縁の両端部近傍に下向きの掛止片25を突出させることで、当該部分が下向きに開口した溝形の断面形状をなすように形成されている。これにより、型枠パネル10に掛止部21を載架したときの安定性を高めることができる。なお、下向きに突出する掛止片25は、掛止部21の側縁全体にわたって設けられていてもよい。
【0027】
掛止部21が型枠パネル10に載架されると、垂壁部22が型枠パネル10のリブに当接した状態で略垂直に保持される。例示形態では、垂壁部22が2本の縦リブ15と2本の横リブ16とに当接するように、垂壁部22の高さ及び横幅が設定されている。このようにして垂壁部22を複数本のリブに当接させることで、載架状態における垂壁部22が、揺れたり捻れたりせず安定的に保持される。
【0028】
踏み板部23は、垂壁部22の下部から垂壁部22と略直交するようにして30cm程度張り出し、片持ち状態で保持される。踏み板部23の高さは、基礎型枠1全体の高さにもよるが、基礎型枠1の高さの略半分程度とするのが実用的である。例示形態では、踏み板部23の高さを型枠パネル10の横リブ16の高さと揃えるようにして、踏み板部23に作業者が登ったときの荷重を横リブ16で支持している。こうして保持された踏み板部23を足掛かりとすることで、基礎型枠1を跨いで移動する際の作業負担を大きく軽減することができる。
【0029】
なお、図2中に二点鎖線で示すように、基礎型枠1の両側に載架した一対の跨ぎ足場2の掛止部21の上に、例えば帯板状の連結部材26を載せた状態でピン固定すれば、相対する跨ぎ足場2、2同士を一体的に連結することができ、跨ぎ足場2、2の載架状態がさらに安定する。
【0030】
この跨ぎ足場2は、型枠パネル10の上枠材12に掛止するだけで所望の位置に設置できるように構成されているので、作業者が基礎型枠1の片側に立った状態から、基礎型枠1を跨いで移動しなくても、基礎型枠1の反対側に容易に設置することができる。工事の進捗次第で跨ぎ足場2が不要になれば、固定ピン6を抜いて持ち上げるだけで、簡単に撤去することができる。その際も、基礎型枠1の片側から、両側の跨ぎ足場2を撤去することが可能である。
【0031】
さらに、この跨ぎ足場2は、掛止部21が基礎型枠1の上に見える状態で設置されるので、作業者が基礎型枠1の片側から基礎型枠1を跨ごうとするときに、基礎型枠1の反対側に設置されている跨ぎ足場2の位置を把握しやすい。したがって、基礎型枠1の反対側に足を運ぶときに、反対側の踏み板部23を踏み外しにくくなって、移動時の安全性が向上する。基礎型枠1の反対側に設置されている跨ぎ足場2の位置をさらに目立たせるため、例えば掛止部21を視認性の高い色に塗装したり、掛止部21にトラテープを張着したりするのも好ましい。また、掛止部21の左右両端部に、例えば躓きにくい突起形状(図示せず)からなる目印部を設けるなどして視認性を高めてもよい。
【0032】
図3は、跨ぎ足場2の他の実施形態を示す。例示形態は、前述の跨ぎ足場2を、より実用的に改良したものであるが、基本的構成は前述の形態に準じるので、前述の形態と機能または作用が共通する部位には同一の符号を付して、当該部位の説明は簡略化する。
【0033】
前述の形態と相違する点は、掛止部21と踏み板部23とが補強斜材27を介して連結されることにより、踏み板部23の剛性が強化された点にある。例示形態の補強斜材27は細幅の帯板状部材で、その上端部が掛止部21の前縁の両端部近傍に接合され、その下端部が踏み板部23の左右各側縁の前端部近傍箇所に接合されている。このような補強斜材27を付加することで、作業者が踏み板部23に登ったとき、踏み板部23の前縁が下方に撓み変形するのを低減することができる。なお、補強斜材27の上端は、掛止部21の両端部近傍ではなく、垂壁部22の左右各側縁の上部近傍に接合することもできる。また、例示のような帯板状部材ではなく、例えば側面視直角三角形状の板状部材からなる補強斜材27を、垂壁部22及び踏み板部23と直交するようにして、それらの側縁に接合してもよい。
【0034】
また、例示の形態では、垂壁部22及び踏み板部23の左右幅を左右の補強斜材27、27の間隔よりも小さくして、垂壁部22と踏み板部23との直交接続部分が左右の補強斜材27、27の間に収まるようにすることで、複数個の跨ぎ足場2を積み重ねられるようにしている。さらに、垂壁部22は左右一定幅の縦枠部分を残して中間部分を矩形にくり抜き、また、踏み板部23にもスリット状の開口部28を形成することで、全体の軽量化を図っている。これらの改良により、運搬性や保管性を大幅に向上させることができる。
【0035】
以上に説明したように、本願が開示する発明の基礎型枠の跨ぎ足場構造を採用することで、基礎工事における作業効率を大きく改善することができる。跨ぎ足場は、基礎型枠を組み上げた後のコンクリート打設作業や、コンクリート硬化後の脱型作業の段階でも使用可能である。
【0036】
なお、本願が開示する発明の技術的範囲は、例示した実施形態によって限定的に解釈されるべきものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて概念的に解釈されるべきものである。特許請求の範囲および明細書において使用している構成要素の名称は、発明を具体的に理解し易くするための便宜的なものであって、その名称が当該構成要素の概念や性状を必要以上に限定するものではない。本願が開示する発明の実施に際しては、特許請求の範囲において具体的に特定していない構成要素の詳細な形状、寸法、構造、材質、数量、他要素との結合形態、相対的な位置関係等を、例示形態と実質的に均等な動作原理を利用する範囲内で、あるいは例示形態と実質的に同等程度以上の作用効果が得られる範囲内で、適宜、改変することができる。
【0037】
また、本明細書に開示した実施形態その他の事項は、以下の付記に示す技術的思想として把握することもできる。
(付記1)
鉄筋コンクリートからなる基礎の立ち上がり部を成型するための基礎型枠の両側面に、前記基礎の幅方向に相対させて一対の跨ぎ足場を仮設することにより、前記基礎型枠を跨いで移動することを補助する基礎型枠の跨ぎ足場構造であって、
前記基礎型枠は、矩形の面板の四周に枠材を結合するとともに、前記面板の中間部分に補剛用の縦リブまたは横リブを設けてなる鋼製の型枠パネルを、前記基礎の幅間隔で対置させ、前記基礎の延設方向に連結して構築されるものであり、
前記跨ぎ足場は、前記型枠パネルの上枠材に載架される掛止部と、前記掛止部の前縁から前記型枠パネルの外側面に沿って垂下する垂壁部と、前記垂壁部の下部から前記型枠パネルと離隔する向きに張り出す踏み板部と、を具備し、
前記掛止部には掛止ピン挿込孔が形成されて、前記掛止ピン挿込孔を前記型枠パネルの上枠材に形成された取付孔に重ね、上方から固定ピンを挿し込んで固定することにより、前記跨ぎ足場が前記基礎型枠の側面に着脱自在に添設されて、前記基礎型枠の高さ方向における中間部側方に前記踏み板部が保持される
ことを特徴とする基礎型枠の跨ぎ足場構造。
(付記2)
付記1に記載された基礎型枠の跨ぎ足場構造において、
前記掛止部を前記型枠パネルの上枠材に載架した状態で、前記垂壁部が、前記型枠パネルの側縁または中間部分に設けられた少なくとも2本の縦リブに当接するように設定されている
ことを特徴とする基礎型枠の跨ぎ足場構造。
(付記3)
付記1に記載された基礎型枠の跨ぎ足場構造において、
前記掛止部を前記型枠パネルの上枠材に載架した状態で、前記踏み板部の高さが、前記型枠パネルの中間部分に設けられた横リブの高さと揃うように設定されている
ことを特徴とする基礎型枠の跨ぎ足場構造。
(付記4)
付記1、2または3に記載された基礎型枠の跨ぎ足場構造において、
前記掛止部の少なくとも一部分が下向きに開口する溝形の断面形状をなすように形成されて、前記型枠パネルの上枠材に上方から掛止される
ことを特徴とする基礎型枠の跨ぎ足場構造。
(付記5)
付記1、2または3に記載された基礎型枠の跨ぎ足場構造において、
前記掛止部の前縁の左右各端部または前記垂壁部の左右各側縁の上部と、前記踏み板部の左右各側縁の前端部とが、左右一対の補強斜材を介してそれぞれ連結されている
ことを特徴とする基礎型枠の跨ぎ足場構造。
(付記6)
付記5に記載された基礎型枠の跨ぎ足場構造において、
前記垂壁部及び前記踏み板部の左右幅を前記左右の補強斜材の間隔よりも部分的に小さくすることにより、複数個の跨ぎ足場を積み重ね得るように構成されている
ことを特徴とする基礎型枠の跨ぎ足場構造。
(付記7)
付記1、2、3または付記1を引用する付記5に記載された基礎型枠の跨ぎ足場構造において、
前記掛止部の左右両端部に、前記基礎型枠の片側から反対側に保持された前記踏み板部の位置を視認しやすくする目印部が設けられている
ことを特徴とする基礎型枠の跨ぎ足場構造。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本願が開示する発明は、様々な建物の基礎基礎型枠工事において幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 基礎型枠
10 型枠パネル
11 面板
12 上枠材
13 下枠材
14 縦枠材
15 縦リブ
16 横リブ
17 取付孔
2 跨ぎ足場
21 掛止部
22 垂壁部
23 踏み板部
24 掛止ピン挿込孔
25 掛止片
26 連結部材
27 補強斜材
28 開口部
3 ベース部型枠
4 Uピン
41 連結軸部
42 クリップ部
5 定規プレート
51 側枠板
52 アンカーボルト位置決め板
53 取付孔
6 固定ピン
図1
図2
図3