(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166956
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】収入特定方法および収入特定プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0201 20230101AFI20241122BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20241122BHJP
【FI】
G06Q30/0201
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083401
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 真沙
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 英吾
【テーマコード(参考)】
5L010
5L030
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA04
5L030BB02
5L049AA04
5L049BB02
(57)【要約】
【課題】対象者の収入を簡単かつ正確に推定できること。
【解決手段】収入特定装置100は、対象者Uの移動軌跡データmを取得し、移動軌跡データmにおいて、対象者Uが所定時間以上滞在していた滞在場所P01,P02と、滞在場所P01,P02での対象者Uの滞在時間Tと、に基づき、対象者Uの収入を特定する。さらに、滞在場所P01,P02の地価を取得し、取得した地価を含め、対象者Uの収入を特定することもできる。これにより、対象者Uの移動状態に基づき対象者Uの収入を特定できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の移動軌跡データを取得し、
前記移動軌跡データにおいて、前記対象者が所定時間以上滞在していた滞在場所と、前記滞在場所での前記対象者の滞在時間と、に基づき、前記対象者の収入を特定する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする収入特定方法。
【請求項2】
前記滞在場所の地価を取得し、
取得した前記地価を含め、前記対象者の収入を特定する、
処理を含むことを特徴とする請求項1に記載の収入特定方法。
【請求項3】
前記滞在場所における前記対象者の前記滞在時間が長いほど、推定する前記収入に与える影響が大きくなる重みに基づき、前記対象者の収入を調整する、
ことを特徴とする請求項1に記載の収入特定方法。
【請求項4】
予め収入の真値が分かっている複数のサンプルの個人の移動軌跡データから、所定時間以上滞在していた滞在場所を特定し、
前記滞在場所の地価を取得し、
個人の前記収入の真値、前記滞在場所、前記滞在場所での滞在時間、前記地価に基づき、個人の前記収入を推定する収入推定モデルを作成し、
作成した前記収入推定モデルに、前記対象者の前記滞在場所での前記滞在時間の情報を入力して、前記対象者の前記収入を推定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の収入特定方法。
【請求項5】
前記対象者が所定の時間帯での滞在時間が所定時間以上滞在した前記滞在場所を、前記対象者の自宅と推定し、
推定した前記自宅の地価および重みを含め、前記対象者の前記収入を調整する、
ことを特徴とする請求項1に記載の収入特定方法。
【請求項6】
特定した前記対象者の前記収入を、前記対象者の実世界上での行動を仮想空間上で表現し、所定の施策探索の処理を行うデジタルツインに対し、当該デジタルツインが扱う属性情報として出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載の収入特定方法。
【請求項7】
前記所定の施策探索の処理は、前記対象者の前記収入に適応する情報コンテンツを前記対象者に配信する、
ことを特徴とする請求項6に記載の収入特定方法。
【請求項8】
対象者の移動軌跡データを取得し、
前記移動軌跡データにおいて、前記対象者が所定時間以上滞在していた滞在場所と、前記滞在場所での前記対象者の滞在時間と、に基づき、前記対象者の収入を特定する、
処理をコンピュータに実行させすることを特徴とする収入特定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収入特定方法および収入特定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
人の行動をデジタルで再現し、課題解決や施策探索を試みるものとして、デジタルツイン(SDT:Social Degital Twin)がある。SDTにより現実世界での人の行動を仮想空間上で再現するためには、人の移動軌跡および属性、例えば、年齢、性別、収入などの属性情報が必要となる。属性情報は、施策に対する人の反応を決定する重要な要因となる。
【0003】
先行技術としては、例えば、所定のエリアで活動を行う個人の現在の収支を銀行口座等から取得して将来の収入を推定するものがある。また、ユーザの早朝や夜の位置情報から自宅の位置を推定し、昼間の位置情報から勤務先を推定し、自宅の地価から生活レベルを推定し、勤務先から企業リスト情報を利用して年収を推定し、推定結果に基づき広告などの情報コンテンツを配信するものがある。また、ユーザの位置情報と移動場所の情報を取得し、移動場所の情報には利用対象の性別、年齢、平均客単価に基づく年収等の情報が格納され、ユーザが移動した移動場所の情報をもとにユーザの年収を推定するものがある(例えば、下記特許文献1~3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-101324号公報
【特許文献2】特開2010-237305号公報
【特許文献3】特開2018-180996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、対象者の収入を正確に推定できなかった。特許文献3では移動場所である店舗の平均客単価のみで対象者の収入を推定しており、対象者別の収入を正確に推定できない。
【0006】
一つの側面では、本発明は、対象者の収入を正確に特定できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの実施態様によれば、対象者の移動軌跡データを取得し、前記移動軌跡データにおいて、前記対象者が所定時間以上滞在していた滞在場所と、前記滞在場所での前記対象者の滞在時間と、に基づき、前記対象者の収入を特定する、収入特定方法および収入特定プログラムが提案される。
【発明の効果】
【0008】
一態様によれば、対象者の収入を正確に特定できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態にかかる収入特定方法の一実施例を示す説明図である。
【
図2】
図2は、SDTの施策探索における属性情報の用途の説明図である。
【
図4】
図4は、実施の形態にかかる収入特定装置の機能例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、収入特定装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、移動軌跡データの記憶内容の例を示す図表である。
【
図7】
図7は、場所-用途データの記憶内容の例を示す図表である。
【
図8】
図8は、滞在場所・時間データの記憶内容の例を示す図表である。
【
図9】
図9は、滞在場所・時間データに基づく自宅位置の推定例を示す図表である。
【
図10】
図10は、収入推定モデル作成に用いる各種データを示す図表である。
【
図12】
図12は、収入特定処理に用いる各種データ例を示す図表である。
【
図13】
図13は、実施の形態の収入特定装置の処理例を示すフローチャートである。(その1)
【
図14】
図14は、実施の形態の収入特定装置の処理例を示すフローチャートである。(その2)
【
図15】
図15は、収入特定結果のサービス適用例を示すブロック図である。
【
図16】
図16は、対象者の収入レベルに対応する情報コンテンツ配信例の説明図である。
【
図17】
図17は、他の実施の形態にかかる収入特定方法の一実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照して、本発明にかかる収入特定方法および収入特定プログラムの実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
(実施の形態にかかる収入特定方法の一実施例)
図1は、実施の形態にかかる収入特定方法の一実施例を示す説明図である。実施の形態の収入特定方法は、例えば、収入を推定する対象者の移動軌跡データに基づき、対象者が所定時間以上滞在していた商業施設等の滞在場所を特定し、滞在場所の地価を取得し、取得した地価に基づいて収入を算出する。そして、滞在場所での滞在時間に基づいて重みを設定し、重みを用いて算出した収入を調整することで、より正確に対象者の収入を推定する。これにより、対象者の収入に関する属性情報が取得できない場合でも、収入を特定する。さらには、例えば、特定した収入を含む属性情報を用いて収入別の対象者に適応した情報、たとえば情報コンテンツの配信等を可能にする。
【0012】
実施の形態の収入特定方法は、サーバ等の収入特定装置100がプログラム実行することで実現できる。また、収入特定装置100は、SDTが行う施策探索の一機能(収入特定)として用いることができる。この場合、サーバは、例えば、収入特定装置100の機能と、SDTの機能を有する。さらには、サーバの機能をネットワーク上のクラウドにより実現することもできる。
【0013】
実施の形態の収入特定方法では、下記(1)~(4)の処理を含み対象者の収入の特定に関する処理を実施する。
(1)対象者の移動軌跡データの取得
(2)対象者の滞在場所の特定
(3)滞在場所の地価と滞在時間とを取得し、地価に基づく対象者の収入の推定
(4)滞在場所での滞在時間に対応する重みに基づき推定した対象者の収入の調整
【0014】
収入特定装置100が行う処理例について、
図1を用いて説明する。
(1)対象者Uの移動軌跡データは、例えば、対象者Uが携帯するスマートフォン等のGPS(Global Positioning System)が出力する位置情報を用いることができる。収入特定装置100は、例えば、対象者Uの位置情報および地図情報を管理する管理サーバ等から対象者Uの時間経過毎の位置情報の変化である移動軌跡データmを取得する。
【0015】
(2)対象者の滞在場所の特定は、例えば、移動軌跡データmのうち、対象者が所定時間以上滞在していた滞在場所を特定する。例えば、収入特定装置100は、管理サーバ等が管理する地図情報E上での移動軌跡データmに基づき、対象者Uが滞在した施設等の滞在場所を特定する。例えば、対象者Uが商業施設P01,P02で商品等を購買する際には、該当する地図情報E上の商業施設P01,P02の範囲内で所定時間滞在することとなる。収入特定装置100は、移動軌跡データmに基づき、所定時間滞在した場所を滞在場所(商業施設)P01,P02として特定することができる。
【0016】
(3)滞在場所の地価と滞在時間とを取得し、地価に基づく対象者の収入の推定、のうち、地価については、収入特定装置100は、地図情報E上で特定した滞在場所(商業施設)に関する地価データのデータベースを参照して取得できる。また、滞在時間については、収入特定装置100は、対象者Uが滞在場所(商業施設)P01,P02の範囲内に留まった時間に基づき算出できる。
【0017】
また、地価に基づく対象者の収入の推定については、例えば、収入特定装置100は、地価データ、特定した対象者Uの滞在場所(商業施設)P01,P02および滞在時間、の各データを用いて対象者Uの収入を推定する。
【0018】
また、収入特定装置100は、予め作成した収入推定モデルを用いて対象者の収入を特定することとしてもよい。収入推定モデルは、対象者Uの収入を推定するために参照するモデルであり、例えば、収入特定装置100は、複数の個人の収入に関する各種情報を組み合わせた関係式として予め作成しておく。各種情報は、例えば、個人毎の年収、自宅位置と自宅の地価、移動軌跡データmに基づく滞在場所、滞在時間、滞在場所(施設)の地価、等である。
【0019】
そして、収入特定装置100は、収入推定モデルに対し、上述した移動軌跡データmが示す対象者Uに関する各種情報(滞在場所、滞在時間、自宅の地価等)を入力することで、対象者Uの収入を推定する。
【0020】
このように、実施の形態の収入特定装置100は、対象者Uの移動軌跡データmに基づき、収入と正の相関があると考えられる「自宅の地価」と、「滞在場所(商業施設)の地価および滞在時間」を利用して個人の収入を算出する。
【0021】
ここで、収入特定装置100による収入特定における各種情報の用い方について説明する。自宅の地価については、自宅の地価が高い=収入が高い、とする。商業施設の地価および滞在時間について、物価と地価は正の相関がある。また、消費者物価地域差指数と地価は正の相関があることが研究報告等により分かっている(下記技術文献1参照。)。また、購買価格と滞在時間は正の相関がある。滞在時間と売上単価は関連性がないようにも見えるが、実際にはそれぞれに大きな因果関係があることが報告されている(下記技術文献2参照。)。また、購買に影響するのは対象者Uの「買いたい」気持ち以上に滞在時間の長さであることが報告されている。(下記技術文献3参照。)。
【0022】
技術文献1:山下隆之,量販店と小売価格変動に関する研究,静岡大学学術リポジトリ,1998/3
技術文献2:長居したいお店って?,日経TECH,2007/5/28,https://xtech.nikkei.com/it/article/COLUMN/20070523/271995/
技術文献3:駅ビル内の回遊行動を考える,EKISUMER Vol.37,駅消費研究センター,2018/7/18,http://www.jeki.co.jp/ekishoken/upload/docs/EKISUMER_vol_37.pdf
【0023】
以上のことから、収入特定装置100は、地価が高い滞在場所(商業施設)に対象者Uが長時間滞在する=購買価格が高い=収入が高い、との前提に基づき対象者Uの収入を推定する。
【0024】
(4)滞在場所での滞在時間に対応する重みに基づき推定した収入の調整について、例えば、収入特定装置100は、滞在場所(商業施設)P01,P02における対象者Uの滞在時間が長いほど、収入の推定値に与える影響が大きくなる重みwを設定する。この重みwを用いることでより正確に収入を特定する。滞在場所での滞在時間が長いほうが商品等を購入する確率が高くなることから、滞在時間が長いほど収入が高いと特定する。滞在時間の長さにより、推定した収入を調整することで、正確に収入を特定できるようになる。
【0025】
例えば、収入特定装置100は、収入推定モデルに予め重みwを設定しておくことができる。この場合、収入特定装置100は、収入推定モデル作成用のサンプルとなる複数の個人の個々について、収入に対する重みwを求める。そして、収入特定装置100は、算出した重みwを含む所定の関係式からなる収入推定モデルを作成しておく。
【0026】
図1を用いて重みを用いた収入特定例を説明すると、対象者Uの移動軌跡データmにより、収入特定装置100は、対象者Uの滞在場所について、商業施設P01,P02の2箇所を特定する。この場合、収入特定装置100は、商業施設P01の地価「A万円」滞在時間「T
A」、商業施設P02の地価「B万円」滞在時間「T
B」に基づき、対象者Uの収入を特定する。
【0027】
収入特定装置100は、滞在時間:TA>TBに基づき、重み:wA>wBとし、商業施設P01は重みwA×A万円、商業施設P02は重みwB×B万円の調整を行った後、これら重みwA×A万円+重みwB×B万円を対象者Uの収入と特定し、出力する。収入推定モデルと、自宅地価を含む滞在施設への重み付け等による詳細な収入特定の処理については後述する。
【0028】
このように、実施の形態の収入特定装置によれば、複数の滞在場所(商業施設)がある場合、これら複数の滞在場所それぞれの地価に基づき、対象者の収入を推定する。さらに、収入特定装置は、滞在時間が長い滞在場所ほど重みを高くする調整により、対象者の収入をより正確に特定することができる。
【0029】
(既存技術の課題について)
図2は、SDTの施策探索における属性情報の用途の説明図である。SDTでは、対象者の移動軌跡および属性情報(年齢・性別・収入等)が必要となる。属性情報は、立案した施策探索時、施策に対する人(対象者)の反応を決定する重要な要因となる。
【0030】
例えば、
図2に示すように、交通渋滞解消のために、混雑する道路に課金する施策探索例について説明する。SDTは、属性情報「収入」の値別の対象者A,Bの施策(課金)に対する反応を探索する。
図2に示す地図上で混雑する所定領域に混雑解消のための課金エリアXを設けた場合、SDTでは、対象者がどのように行動するか(移動軌跡)の反応を推定する。課金エリアXは、この課金エリアXを通過した対象者に対して課金を行うエリアである。
【0031】
ここで、対象者Aの属性情報「収入」が20万円、対象者Bの属性情報「収入」が80万円であるとする。図中点線は、施策実施前の対象者が通るルート、図中実線は施策実施後の対象者が通るルートである。
【0032】
収入の値が低い対象者Aは、施策実施後、課金エリアXを避けるルートを通る反応をする。一方、収入の値が高い対象者Bは、施策実施後であっても課金エリアXを避けない反応をする。このように、SDTが対象者の移動軌跡および各属性情報のうち「収入」を用いることで、施策前後の対象者の反応を探索する。
【0033】
しかしながら、GPS等で比較適容易に入手できる移動軌跡データに比較して、対象者の属性情報は入手することが困難である。特に、各属性情報のうち、「収入」については、個人情報保護の観点から提供する企業が少ない。また、属性が付与された移動軌跡データは高価である。このように、対象者の「収入」が取得できない場合、
図2に示した施策探索が困難となる。
【0034】
次に、既存技術のSDTにおける属性情報と移動軌跡データとの関連について説明する。SDTにより、ある地域Sの実人口に基づき、移動軌跡上の地域S’の合成人口の施策探索を例に説明する。SDTは、合成人口データから得られた属性情報の「収入」を対象者の移動軌跡データに割り当てる。SDTは、ある地域Sの在住者統計情報から、この地域Sの在住人数と属性情報を得る。合成人口データとは、在住者統計情報から作成した移動軌跡上の地域S’における仮想人口群の人口データである。
【0035】
そして、SDTは、地域S’の属性情報の分布が、地域Sの実人口の分布と同一になるように合成人口のデータを作成する。例えば、SDTは、地域S’における合成人口データの属性情報「収入」の分布を、地域Sでの実人口の分布と同じになるように、ランダムに移動軌跡に付与する。
【0036】
図3は、施策探索の課題の説明図である。上述したように、移動軌跡データに対し属性情報がランダムに付与されると、対象者の現実の収入と合致しない属性情報「収入」の値が割り当てられる場合がある。移動軌跡データに合致しない属性情報「収入」が割り当てられた場合、施策に対して現実とは異なる反応をすることで施策探索の精度が低くなる。
【0037】
例えば、
図2を用いて説明した混雑する道路に課金する施策探索において、移動軌跡データに対し属性情報がランダムに付与されたとする。この場合、
図3に示すように、対象者Bについて、現実では実線に示す課金エリアXを避けないのに対し、SDTの施策探索では、課金エリアを避ける反応をしてしまう。この場合、施策の効果が正しく測定されず、施策探索の精度が低くなる。
【0038】
これに対し、実施の形態の収入特定装置100では、上述したように、対象者の移動軌跡データに基づき、収入と正の相関があると考えられる「滞在場所(商業施設)の地価および滞在時間」を利用して個人の収入を算出する。さらに、「自宅の地価」を加えることで、さらに算出する収入の値の精度を向上できる。このように、実施の形態の収入特定装置100によれば、属性情報「収入」を外部から取得する必要がなく、また、収入の値を精度よく算出できる。
【0039】
また、SDTにおいて、対象者自身の収入に合致する属性情報「収入」を割り当てることができる。合致する属性情報「収入」を割り当てることで、施策に対して現実に近い反応をするため、SDTにおける施策探索の精度を向上できる。例えば、上述した施策探索(混雑する道路への課金)では、
図2に示したように、対象者の収入に応じた各対象者の反応をより正確に得ることができるようになる。
【0040】
(収入特定装置の構成例)
図4は、実施の形態にかかる収入特定装置の機能例を示すブロック図である。収入特定装置100は、複数のデータベース(DB)等の記憶部110、収入推定モデル作成部121、滞在場所・時間データ作成部122、自宅位置推定部123、収入特定部124、通信部125を含む。
【0041】
記憶部110は、対象者の収入を特定するための複数のデータを記憶する。記憶部110は、例えば、対象者別の収入の真値データ111,自宅や滞在場所等の場所別の地価データ112、対象者の移動軌跡である移動軌跡データ113を含み記憶する。また、記憶部110は、自宅や滞在場所等の場所別の用途である場所-用途データ114、対象者の滞在場所別の滞在時間である滞在場所・時間データ115を含み記憶する。また、記憶部110は、収入推定モデル作成部121が作成した収入推定モデル116を記憶する。
【0042】
滞在場所・時間データ作成部122は、移動軌跡データ113、場所-用途データ114に基づき、対象者が滞在した滞在場所および滞在場所毎の滞在時間である滞在場所・時間データ115を作成する。
【0043】
自宅位置推定部123は、滞在場所・時間データ115に基づき、自宅位置を推定する。収入推定モデル作成部121は、収入の真値データ111、地価データ112、滞在場所・時間データ115に基づき、収入推定モデル116を作成する。
【0044】
収入特定部124は、作成した収入推定モデル116と、対象者の滞在場所・時間データ、滞在場所の地価データ112とに基づき、対象者の収入を特定する。
【0045】
収入特定部124が特定した推定対象の対象者の収入特定結果は、通信部125を介して収入特定結果を利用する各種アプリケーションを実装した装置、例えば、SDTや情報コンテンツ配信装置等に出力できる。
【0046】
収入特定装置100は、通信部125を介して対象者の端末150に通信接続する。端末150は、GPS等により端末150の現在位置(緯度・経度等)を取得する位置情報取得部151、収入特定装置100と通信接続する通信部152を含む。収入特定装置100は、通信部125を介して取得した端末150の現在位置を滞在場所・時間データ作成部122に出力する。
【0047】
(収入特定装置のハードウェア構成例)
図5は、収入特定装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図5において、収入特定装置100は、汎用のサーバを用いることができる。収入特定装置100は、プロセッサ等のCPU(Central Processing Unit)501と、メモリ502と、ネットワークIF503と、記録媒体IF504と、記録媒体505と、を含む。また、各構成部は、バス500によってそれぞれ接続される。
【0048】
ここで、CPU501は、収入特定装置100の全体の制御を司る制御部として機能する。CPU501は、複数のコアを有していてもよい。メモリ502は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびフラッシュROMなどを有する。具体的には、例えば、フラッシュROMがOSのプログラムを記憶し、ROMがアプリケーションプログラムを記憶し、RAMがCPU501のワークエリアとして使用される。メモリ502に記憶されるプログラムは、CPU501にロードされることで、コーディングされている処理をCPU501に実行させる。
【0049】
ネットワークIF503は、通信回線を通じてネットワークNWに接続され、ネットワークNWを介して外部のコンピュータ(例えば、
図4に示した端末150)に接続される。そして、ネットワークIF503は、ネットワークNWと装置内部とのインターフェースを司り、外部のコンピュータからのデータの入出力を制御する。ネットワークIF503には、例えば、モデムやLANアダプタなどを採用することができる。
【0050】
記録媒体IF504は、CPU501の制御に従って記録媒体505に対するデータのリード/ライトを制御する。記録媒体505は、書き込まれたデータを記憶する。記録媒体505としては、HDD等の磁気ディスクや光ディスク、SSD(Solid State Drive)、USB(Universal Serial Bus)メモリなどがある。
【0051】
なお、収入特定装置100は、上述した構成部のほかに、例えば、入力装置、ディスプレイなどを有してもよい。
【0052】
図4に示した収入推定モデル作成部121、滞在場所・時間データ作成部122、自宅位置推定部123、収入特定部124の各機能は、
図5に示したCPU501をプログラム実行することで実現できる。
図4に示した記憶部110の各データは、
図5に示したメモリ502、記録媒体504を用いて記憶することができる。
図4に示した通信部125の機能は、
図5に示したネットワークIF503を用いて実現できる。
【0053】
また、
図4に示した端末150についても、
図5同様のハードウェアを用いて機能実現できる。
図4に示した位置情報取得部151は、GPSセンサにより機能実現できる。端末150は、例えば、対象者が携帯するスマートフォンを用いることができ、この場合、端末150は、GPS機能(位置情報取得部151)のほか、タッチディスプレイやスピーカ等の機能を有する。
【0054】
(収入特定装置が記憶するデータの記憶内容)
次に、収入特定装置が記憶する各種データの記憶内容を作成例とともに説明する。
【0055】
(移動軌跡データの記憶内容)
図6は、移動軌跡データの記憶内容の例を示す図表である。移動軌跡データ113は、滞在場所・時間データ作成部122が取得した端末150の対象者の位置情報に基づき作成する。移動軌跡データ113は、対象者別の個人ID、時刻、緯度、経度の各項目を含む。
【0056】
図6の例では、個人ID「I01」のレコードには、時刻「t
I01」のとき、緯度「lat
I01」、経度「lon
I01」が記憶されている。
【0057】
(場所-用途データの記憶内容)
図7は、場所-用途データの記憶内容の例を示す図表である。場所-用途データ114は、地図上の商業施設等の施設(滞在場所相当)および施設用途を示す情報であり、例えば、予め作成された地図情報を用いることができる。場所-用途データ114は、場所別の場所ID、施設の形状、用途の各項目を含む。
【0058】
図7の例では、場所ID「P01」のレコードには、施設の多角形の頂点の緯度経度「(lat
P011,lon
P011),(lat
P012,lon
P012),(lat
P013,lon
P013),…」と、用途「商業施設」が記録されている。また、場所ID「P03」のレコードの用途は「住宅」である。
【0059】
(滞在場所・時間データの記憶内容)
図8は、滞在場所・時間データの記憶内容の例を示す図表である。滞在場所・時間データ作成部122は、移動軌跡データ113と、場所-用途データ114とに基づき、滞在場所・時間データ115を作成する。滞在場所・時間データ115は、対象者別の個人ID、滞在場所ID(
図7の場所ID)、滞在場所での滞在時間の各項目を含む。
【0060】
滞在場所・時間データ作成部122は、移動軌跡データ113が示す対象者の移動軌跡が示す位置に対応する場所-用途データ114の施設のうち、滞在時間が所定の閾値以上の滞在場所を判断し、滞在場所・時間データ115を作成する。この際、滞在場所・時間データ作成部122は、対象者の移動軌跡がある場所IDの形状(
図7に示す多角形の形状)内を移動している場合は、同一の場所に滞在していると判断する。
【0061】
図8の例では、個人ID「I01」のレコードには、滞在場所「P01(商業施設)」、滞在時間(開始~終了)「(t
I01P011~t
I01P012)」が記録されている。また、個人ID「I03」のレコードには、滞在場所「P03(住宅)」、滞在時間(開始~終了)「(t
I03P031~t
I03P032)」が記録されている。
【0062】
(滞在場所・時間データを用いた自宅位置の推定)
図9は、滞在場所・時間データに基づく自宅位置の推定例を示す図表である。
図9に示す滞在場所・時間データ115は、
図8同様の内容であり、滞在時間の項目のみ実時間を記載してある。自宅位置推定部123は、滞在場所・時間データ115に基づき、対象者の自宅位置を推定する。
【0063】
自宅位置推定部123は、例えば、滞在場所・時間データ115のうち、対象者が自宅に滞在していると想定する判定用の時間帯、例えば、深夜から朝(例:23:00~06:00)にかけて最も滞在時間が長い場所を自宅として推定する。
【0064】
図9の例では、個人ID「I01」は、滞在場所「P03」での滞在時間が「21:00~07:30」である。自宅位置推定部123は、個人ID「I01」の対象者の自宅を滞在場所「P03」として推定し、この滞在場所を該当する対象者の自宅位置データとして記憶保持する。また、自宅位置推定部123は、対象者に対するアンケート等で自宅位置の真値が得られている場合は、この真値を滞在場所として利用する。
【0065】
(収入推定モデル作成のための各種データ例)
図10は、収入推定モデル作成に用いる各種データを示す図表である。収入推定モデル作成部121が収入推定モデル作成用にサンプル収集する各種データについて説明する。収入推定モデルは、収入の真値が分かっているサンプル対象の複数の個人のデータを収集して作成する。
【0066】
なお、実施の形態では、収入推定モデル作成のためにサンプル収集する対象を「個人」とし、作成した収入推定モデルを用いた収入の推定対象を「対象者」として説明する。
【0067】
図10(a)は自宅位置推定部123が推定した自宅位置データ1001である。自宅位置データ1001は、個人ID別の自宅場所を示す場所IDを含む。
図10(b)は収入の真値データ111である。収入の真値データ111は、個人ID別の収入を含む。収入推定モデル作成部121は、サンプルとなる複数の個人の収入の値(データ)を収集する。
【0068】
図10(c)は地価データ112である。地価データ112は、場所ID別の地価を含む。地価データ112は、公表された地価公示価格等の情報を用いることができる。
図10(d)は上述した滞在場所・時間データ115である。
【0069】
(収入推定モデルの作成例)
図11は、収入推定モデル作成例の説明図である。収入推定モデル作成部121は、
図10(a)~(d)に示した自宅位置データ1001、収入の真値データ111、地価データ112、滞在場所・時間データ115を、
図11(a)の関係式に代入する。これにより、商業施設の重みw
c,自宅の重みw
lの値を算出して一つの収入推定モデルを作成する。
【0070】
図11(a)の関係式には、
図10に示した個人ID「I01」でのデータ代入状態を具体的に説明する。この個人「I01」の自宅位置は、自宅位置データ1001が示す場所ID「P07」である。この自宅位置の地価は、地価データ112が示す「100万」である。また、個人「I01」の収入は、真値データ111が示す「50万」である。また、滞在場所は、滞在場所・時間データ115が示す2箇所(滞在場所ID「P01」,滞在時間「12:00~17:00」と、滞在場所ID「P02」,滞在時間「17:30~18:00」)である。また、滞在した2箇所の地価は、地価データ112が示す地価「150万」、「80万」である。
【0071】
また、関係式中、(300分/330分)、(30分/330分)は、個人ID「I01」の個人が自宅以外の滞在時間全体である330分(P01での滞在時間300分+P02での滞在時間30分)に対する該当の場所の滞在時間の割合を示す項である。
【0072】
そして、収入推定モデル作成部121は、
図11(b)に示すように、サンプルとなる複数(例えば100人以上多数)の各個人(個人ID:I01,I02,I03)について、それぞれ
図11(a)に示す関係式に代入する。そして、収入推定モデル作成部121は、複数の個人別の関係式を汎用の最小二乗法を用いて、w
c,w
lの値を算出する。最小二乗法では、既知の複数のx,yの値と誤差が最も小さくなる一次関数y=ax+bの傾きaおよび接点bを求める。なお、
図11に示すデータ例では、w
c=0.1305、w
l=0.3169となる。
【0073】
(収入推定モデルを用いた収入特定例)
収入特定部124は、下記式(1)に示す収入推定モデル116を用いて、対象者の収入(収入値I)を特定する。
【0074】
【0075】
図12は、収入特定処理に用いる各種データ例を示す図表である。収入特定部124は、対象者(個人ID「I04」)の
図12(a)に示す滞在場所・時間データ115と、
図12(b)に示す滞在場所別の地価データ112のデータを収入推定モデル116に代入して、収入を特定する。なお、自宅位置推定部123は、
図12(a)に示す対象者(個人ID「I04」)の自宅位置を滞在場所ID「P13」と推定しているとする。
【0076】
収入特定部124は、例えば、個人ID「I04」の対象者の収入値は下記のように特定する。wc=0.1305、wl=0.3169としたとき、0.1305×{(120分/540分)×150万)+(420分/540分)×80万)}+0.3169×40万≒25.2万
【0077】
(収入特定装置の処理例)
図13、
図14は、実施の形態の収入特定装置の処理例を示すフローチャートである。
図13は、収入特定装置100が事前に行う収入推定モデルの作成処理例であり、収入特定装置100の制御部(CPU501)が以下の処理をプログラム実行する。
【0078】
はじめに、収入特定装置100(滞在場所・時間データ作成部122)は、収入の真値が分かっているサンプルとなる個人の移動軌跡データをもとに滞在場所・時間データ115を作成する(ステップS1301)。
【0079】
次に、収入特定装置100(自宅位置推定部123)は、移動軌跡データ113をもとに個人の自宅の位置を推定する(ステップS1302)。ステップS1302の処理は、自宅の位置が不明な場合に実行するものであり、個人の自宅位置が取得できる場合には、処理を省くことができる。
【0080】
次に、収入特定装置100(収入推定モデル作成部121)は、滞在場所・時間データ115をもとに個人の滞在場所および自宅の地価データ112を取得する(ステップS1303)。
【0081】
そして、収入特定装置100(収入推定モデル作成部121)は、収入の真値データ111、滞在場所・時間データ115、地価データ112をもとに収入推定モデル116を作成し(ステップS1304)、以上の処理を終了する。
【0082】
図14は、収入特定装置100が行う収入推定モデルを用いた推定対象の対象者の収入特定処理例である。はじめに、収入特定装置100(滞在場所・時間データ作成部122)は、収入を推定する対象者の移動軌跡データをもとに滞在場所・時間データ115を作成する(ステップS1401)。
【0083】
次に、収入特定装置100(自宅位置推定部123)は、移動軌跡データ113をもとに対象者の自宅の位置を推定する(ステップS1402)。ステップS1402の処理は、自宅の位置が不明な場合に実行するものであり、個人の自宅位置が取得できる場合には、処理を省くことができる。
【0084】
次に、収入特定装置100(収入推定モデル作成部121)は、滞在場所・時間データ115をもとに対象者の滞在場所および自宅の地価データ112を取得する(ステップS1403)。
【0085】
そして、収入特定装置100(収入特定部124)は、収入推定モデル116に対象者の滞在場所・時間データ115を入力することで対象者の収入を特定し(ステップS1404)、以上の処理を終了する。
【0086】
(収入特定結果のサービス適用例)
図15は、収入特定結果のサービス適用例を示すブロック図である。上述した収入特定装置100による対象者の収入特定結果は、各種サービスに適用することができる。
図15の例では、収入特定結果を情報コンテンツ配信部1500に出力することで、対象者の収入に応じた情報コンテンツを配信する構成例である。情報コンテンツ配信部1500の機能は、収入特定装置100の一部機能としてもよい。また、SDTが収入特定装置100、および情報コンテンツ配信部1500の機能を有することとしてもよい。
【0087】
図15に示す収入特定装置100の各機能は、上述した実施の形態(
図4参照)と同様である。また、対象者の端末150は、情報コンテンツを表示する表示部1510を含む。端末150は、対象者が使用するコンピュータであり、例えば、PC(Personal Computer)、タブレットPC、スマートフォンなどである。
【0088】
収入特定装置100は、対象者の収入特定結果を、通信部125を介して情報コンテンツ配信部1500に出力する。情報コンテンツ配信部1500は、情報コンテンツデータ1501、情報コンテンツ抽出部1502、通信部1503を含む。
【0089】
情報コンテンツ配信部1500の通信部1503は、収入特定装置100が出力する対象者の収入特定結果を情報コンテンツ抽出部1502に出力する。情報コンテンツ抽出部1502は、情報コンテンツデータ1501のなかから収入特定結果(対象者の収入値)に対応する情報コンテンツを抽出し、配信する情報コンテンツとして通信部1503を介して端末150に出力する。端末150は、通信部152を介して入力される情報コンテンツを表示部1510に表示出力する。
【0090】
図16は、対象者の収入レベルに対応する情報コンテンツ配信例の説明図である。情報コンテンツ配信部1500の情報コンテンツデータ1501は、収入レベルの高/低、例えば、収入値の段階別の複数の情報コンテンツを含む。
【0091】
情報コンテンツ抽出部1502は、情報コンテンツデータ1501のなかから、収入特定結果が示す収入値に対応した収入レベルに適応した情報コンテンツ1501aを抽出し、端末150に出力(配信)する。これにより、端末150の表示部1510には、対象者の収入に適応した情報コンテンツを表示することができる。
【0092】
上述した実施の形態では、対象者の滞在場所が2箇所(商業施設P01,P02)として説明したが、滞在場所は3か所以上であってもよく、各滞在場所での滞在時間別の重みを算出し、収入値を重みで調整すればよい。滞在場所の数が増えるほど、対象者の収入値をより正確に推定できる。
【0093】
(他の実施の形態にかかる収入特定方法の一実施例)
図17は、他の実施の形態にかかる収入特定方法の一実施例を示す説明図である。他の実施の形態の収入特定方法は、例えば、収入を特定する対象者の移動軌跡データを取得し、移動軌跡データにおいて、対象者が所定時間以上滞在していた滞在場所と、滞在場所での対象者の滞在時間と、滞在場所の地価とに基づき、対象者の収入を特定する。これにより、対象者の収入に関する属性情報が取得できない場合でも、収入を特定する。さらには、例えば、特定した収入を含む属性情報を用いて収入別の対象者に適応した情報、たとえば情報コンテンツの配信等を可能にする。
【0094】
他の実施の形態の収入特定方法では、下記(1)~(4)の処理を含み対象者の収入の特定に関する処理を実施する。
(1)対象者の移動軌跡データの取得
(2)対象者の滞在場所の特定
(3)滞在場所での滞在時間、地価の取得
(4)地価と滞在時間による収入の特定
【0095】
図17に示す収入特定例を説明すると、収入特定装置100は、対象者U1について、移動軌跡データm1により、対象者U1の滞在場所について商業施設P01の1箇所を特定する。この場合、収入特定装置100は、商業施設P01での滞在時間「T
A」、地価「A万円」に基づき、対象者U1の収入を特定する。
【0096】
また、収入特定装置100は、対象者U2について、移動軌跡データm2により、対象者U2の滞在場所について商業施設P02の1箇所を特定する。この場合、収入特定装置100は、商業施設P02での滞在時間「TB」、地価「B万円」に基づき、対象者U2の収入を特定する。
【0097】
例えば、対象者U1が商業施設P01で滞在時間「1時間」滞在し、対象者U2が商業施設P02で滞在時間「3時間」滞在したとする。ここで、仮に商業施P01とP02の地価が同じであったとすると、収入特定装置100は、滞在時間に応じて、長い滞在時間ほど収入に対する重みを高くし、対象者U1の収入に対し対象者U2の収入の方を高く算出する。滞在場所別の地価は、上記の滞在時間と同様に、収入に対する重み(係数)として用いることができる。
【0098】
また、さらに他の実施形態としては、対象者の収入の算出に滞在場所での地価を用いず、滞在場所と滞在時間のみから収入を特定することとしてもよい。さらには、滞在場所の店名ごとに収入に対する重み付けを行うこともできる。例えば、店名の違いから店舗ごとの高級度合いを重みとして用いることもできる。例えば、高級百貨店の店名の店舗の方が、100円均一ショップの店名の店舗よりも、高級度合いが高い(重みが高い)設定を保持しておく。そして、収入特定装置100は、対象者が滞在した店舗名と、この店舗での滞在時間とを取得することで、対象者の収入を特定することができる。
【0099】
以上説明した実施の形態によれば、SDTにおける各種の施策探索や課題解決の精度を向上することができるようになる。SDTが扱う対象者の属性情報のうち、「収入」について、外部機関等からの購入で入手する必要を省き、精度よく収入値を特定できるため、立案した施策や課題に対するSDT上での反応を現実に近づけることができ、施策探索や課題解決の精度を向上できるようになる。
【0100】
また、実施の形態では、対象者の収入に適応する情報コンテンツの配信サービス例を説明したが、これに限らず、収入特定装置が特定した収入値を用いて、収入レベル別の対象者の状態監視や、将来の行動予測の各種サービスに適用することもできる。
【0101】
以上説明したように、収入特定装置は、対象者の移動軌跡データを取得し、移動軌跡データにおいて、対象者が所定時間以上滞在していた滞在場所と、滞在場所での対象者の滞在時間と、に基づき、対象者の収入を特定する、処理を行う。これにより、対象者の収入の情報を対象者の移動状態に基づき推定することができ、外部入手等の手間なく対象者の収入を特定できる。
【0102】
また、収入特定装置は、滞在場所の地価を取得し、取得した地価を含め、対象者の収入を特定する、処理を含むこととしてもよい。このように、滞在場所の地価を含めることで、対象者の収入をより精度よく特定できる。
【0103】
また、収入特定装置は、滞在場所における対象者の滞在時間が長いほど、推定する収入に与える影響が大きくなる重みに基づき、対象者の収入を調整することとしてもよい。滞在時間と購買価格との間の正の相関、および滞在時間が長いほど購買に影響を与えるため、対象者の収入が高くなることに基づき、滞在時間に重み付けすることで、より正確に対象者の収入を推定できるようになる。
【0104】
また、収入特定装置は、予め収入の真値が分かっている複数のサンプルの個人の移動軌跡データから、所定時間以上滞在していた滞在場所を特定し、滞在場所の地価を取得し、個人の収入の真値、滞在場所、滞在場所での滞在時間、地価に基づき、個人の収入を推定する収入推定モデルを作成し、作成した収入推定モデルに、対象者の滞在場所での滞在時間の情報を入力して、対象者の収入を推定する収入推定モデルを作成してもよい。そして、作成した収入推定モデルに、対象者の滞在場所での滞在時間の情報を入力して、対象者の収入を推定することができる。このように、収入推定モデルを用いることでモデルが示す個人の行動状況に似た対象者の行動状況に基づき、正確に対象者の収入を特定できるようになる。
【0105】
また、収入特定装置は、対象者が所定の時間帯での滞在時間が所定時間以上滞在した滞在場所を、対象者の自宅と推定し、推定した自宅の地価および重みを含め、対象者の収入を調整することとしてもよい。自宅の地価についても収入特定に有効であり、より特定の精度を高めることができる。
【0106】
また、収入特定装置は、特定した対象者の収入を、対象者の実世界上での行動を仮想空間上で表現し、所定の施策探索の処理を行うデジタルツインに対し、デジタルツインが扱う属性情報として出力することとしてもよい。これにより、デジタルツインが実施する各種施策探索上必要な属性情報の一部を提供できるようになる。
【0107】
また、収入特定装置は、所定の施策探索の処理は、対象者の収入に適応する情報コンテンツを対象者に配信することとしてもよい。これにより、多数の情報コンテンツのなかから対象者の収入に適応し、個々の対象者により好適な情報コンテンツを配信できるようになる。
【0108】
なお、本実施の形態で説明した収入特定方法は、予め用意されたプログラムをPCやワークステーションなどのコンピュータで実行することにより実現することができる。本実施の形態で説明した収入特定プログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。また、本実施の形態で説明した収入特定プログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布してもよい。
【0109】
上述した実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0110】
(付記1)対象者の移動軌跡データを取得し、
前記移動軌跡データにおいて、前記対象者が所定時間以上滞在していた滞在場所と、前記滞在場所での前記対象者の滞在時間と、に基づき、前記対象者の収入を特定する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする収入特定方法。
【0111】
(付記2)前記滞在場所の地価を取得し、
取得した前記地価を含め、前記対象者の収入を特定する、
処理を含むことを特徴とする付記1に記載の収入特定方法。
【0112】
(付記3)前記滞在場所における前記対象者の前記滞在時間が長いほど、推定する前記収入に与える影響が大きくなる重みに基づき、前記対象者の収入を調整する、
ことを特徴とする付記1に記載の収入特定方法。
【0113】
(付記4)予め収入の真値が分かっている複数のサンプルの個人の移動軌跡データから、所定時間以上滞在していた滞在場所を特定し、
前記滞在場所の地価を取得し、
個人の前記収入の真値、前記滞在場所、前記滞在場所での滞在時間、前記地価に基づき、個人の前記収入を推定する収入推定モデルを作成し、
作成した前記収入推定モデルに、前記対象者の前記滞在場所での前記滞在時間の情報を入力して、前記対象者の前記収入を推定する、
ことを特徴とする付記1に記載の収入特定方法。
【0114】
(付記5)前記対象者が所定の時間帯での滞在時間が所定時間以上滞在した前記滞在場所を、前記対象者の自宅と推定し、
推定した前記自宅の地価および重みを含め、前記対象者の前記収入を調整する、
ことを特徴とする付記1に記載の収入特定方法。
【0115】
(付記6)特定した前記対象者の前記収入を、前記対象者の実世界上での行動を仮想空間上で表現し、所定の施策探索の処理を行うデジタルツインに対し、当該デジタルツインが扱う属性情報として出力する、
ことを特徴とする付記1に記載の収入特定方法。
【0116】
(付記7)前記所定の施策探索の処理は、前記対象者の前記収入に適応する情報コンテンツを前記対象者に配信する、
ことを特徴とする付記6に記載の収入特定方法。
【0117】
(付記8)対象者の移動軌跡データを取得し、
前記移動軌跡データにおいて、前記対象者が所定時間以上滞在していた滞在場所と、前記滞在場所での前記対象者の滞在時間と、に基づき、前記対象者の収入を特定する、
処理をコンピュータに実行させすることを特徴とする収入特定プログラム。
【0118】
(付記9)対象者の移動軌跡データを取得し、
前記移動軌跡データにおいて、前記対象者が所定時間以上滞在していた滞在場所と、前記滞在場所での前記対象者の滞在時間と、に基づき、前記対象者の収入を特定する、
処理を行う制御部を有することを特徴とする収入特定装置。
【0119】
(付記10)前記制御部は、前記対象者の実世界上での行動を仮想空間上で表現し、所定の施策探索の処理を行うデジタルツインの一機能として設けたことを特徴とする付記9に記載の収入特定装置。
【符号の説明】
【0120】
100 収入特定装置
110 記憶部
111 収入の真値データ
112 地価データ
113 移動軌跡データ
114 場所-用途データ
115 滞在場所・時間データ
116 収入推定モデル
121 収入推定モデル作成部
122 滞在場所・時間データ作成部
123 自宅位置推定部
124 収入特定部
125,152 通信部
150 端末
151 位置情報取得部
501 CPU
502 メモリ
503 ネットワークIF
505 記録媒体
1001 自宅位置データ
1500 情報コンテンツ配信部
1501 情報コンテンツデータ
1501a 情報コンテンツ
1502 情報コンテンツ抽出部
1503 通信部
1510 表示部
E 地図情報
I 収入値
NW ネットワーク
P01,P02 施設(商業施設)
m 移動軌跡データ
U(U1,U2) 対象者