(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166959
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/32 20060101AFI20241122BHJP
B60H 1/22 20060101ALI20241122BHJP
F25B 39/04 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
B60H1/32 613K
B60H1/22 651C
B60H1/32 613E
F25B39/04 N
B60H1/22 651A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083406
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内門 巌
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA32
3L211DA24
3L211EA42
3L211EA50
3L211EA56
3L211EA90
3L211FB05
3L211GA99
(57)【要約】
【課題】空調効率を向上する車両用空調装置を提供すること。
【解決手段】空調回路20と、空気冷却部22で生じた凝縮水を排出する排水口83を有したHVAC80と、凝縮水を外部へ排出する排水ユニット90とを備え、排水ユニット90は、少なくとも冷房運転時に空気加熱部21と凝縮水を熱交換させる位置に設けられた熱交換部91aを有した熱交換経路91と、熱交換部91aを経由することなく外部に凝縮水を排出する排出経路92と、排水口83の接続先を熱交換経路91または排出経路92に切り替え可能な弁部93とを有する車両用空調装置10。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、空気加熱部と、減圧装置と、空気冷却部を備えた空調回路と、
前記空気冷却部で生じた凝縮水を排出する排水口を有したHVACと、
前記凝縮水を外部へ排出する排水ユニットと、
を備えた車両用空調装置であって、
前記排水ユニットは、少なくとも冷房運転時に前記空気加熱部と前記凝縮水を熱交換させる位置に設けられた熱交換部を有した熱交換経路と、前記熱交換部を経由することなく外部に凝縮水を排出する排出経路と、前記排水口の接続先を前記熱交換経路または前記排出経路に切り替え可能な弁部とを有することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記弁部は、車室外温度に応じて、前記排水口の接続先を前記熱交換経路または前記排出経路に切り替えるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記弁部は、前記熱交換部の上流側における前記空気加熱部を流れる媒体の温度、および、前記熱交換部の上流側における凝縮水の温度に応じて、前記排水口の接続先を前記熱交換経路または前記排出経路に切り替えるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記熱交換経路は、凝縮水を貯留可能な凝縮水貯留部を有し、
前記熱交換部は、前記凝縮水貯留部に貯留された凝縮水と前記空気加熱部を流れる媒体とを熱交換させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記熱交換部は、前記空気加熱部の配管を流れる媒体と前記熱交換経路の配管を流れる凝縮水とを熱交換させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記空調回路は、前記圧縮機と前記減圧装置と前記圧縮機の下流側に配置された高温側熱交換器とを有した冷媒回路と、車室外放熱器を有した車室外放熱器回路とを備え、
前記高温側熱交換器は、冷房運転時に前記車室外放熱器回路に接続され、前記圧縮機によって圧縮された冷媒および前記車室外放熱器回路を流れる熱媒体を熱交換させるように構成され、
前記高温側熱交換器および前記車室外放熱器回路は、冷房運転時に、前記空気加熱部を構成し、
前記熱交換部は、前記車室外放熱器の下流側に位置する配管を流れる熱媒体と凝縮水とを熱交換させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両に搭載される車両用空調装置として、圧縮機と空気加熱部と減圧装置と空気冷却部を備えた空調回路を備えたものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述したような車両用空調装置においては、空調効率の観点で改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、これらの問題点を解決するものであり、簡素な構成で、空調効率を向上する車両用空調装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、圧縮機と、空気加熱部と、減圧装置と、空気冷却部を備えた空調回路と、前記空気冷却部で生じた凝縮水を排出する排水口を有したHVACと、前記凝縮水を外部へ排出する排水ユニットと、を備えた車両用空調装置であって、前記排水ユニットは、少なくとも冷房運転時に前記空気加熱部と前記凝縮水を熱交換させる位置に設けられた熱交換部を有した熱交換経路と、前記熱交換部を経由することなく外部に凝縮水を排出する排出経路と、前記排水口の接続先を前記熱交換経路または前記排出経路に切り替え可能な弁部とを有することにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、簡素な構成で、空調効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用空調装置の冷房運転時における状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の一実施形態に係る車両用空調装置10について、図面に基づいて説明する。
なお、本明細書で使用する「上流」「下流」の用語は、冷媒、熱媒体、凝縮水の流れ方向における上流または下流を意味する。
【0010】
まず、車両用空調装置10は、自動車等の車両に搭載され、車室内の空調を行うものであり、
図1に示すように、空調回路20と、HVAC80と、排水ユニット90と、車両用空調装置10の各部を制御する制御装置(図示しない)とを備えている。
【0011】
以下に、車両用空調装置10の具体的構成について、図面に基づいて説明する。
【0012】
まず、本実施形態の空調回路20は、
図1に示すように、冷媒回路30と、HVAC80内に設置されるヒータコア41を有したヒータコア回路40と、HVAC80内に設置されるクーラコア51を有したクーラコア回路50と、車室外に設置される車室外放熱器61を有した車室外放熱器回路60と、流路切替弁70A、B、Cとを備えている。
【0013】
冷媒回路30は、ハイドロフルオロオレフィン等の冷媒を用いた回路として構成され、ヒータコア回路40とクーラコア回路50と車室外放熱器回路60とは、クーラント(水)等の熱媒体を用いた回路として構成されている。
【0014】
冷媒回路30は、
図1に示すように、冷媒を圧縮して冷媒を高圧・高温状態にする圧縮機31と、圧縮機31によって圧縮された冷媒と後述する各回路を流れる熱媒体とを熱交換させる高温側熱交換器32と、高温側熱交換器32によって熱交換された冷媒を減圧する減圧装置33と、減圧装置33によって減圧された冷媒と後述する各回路を流れる熱媒体とを熱交換させる低温側熱交換器34と、冷媒を貯留可能な冷媒貯留部35と、上記各部31~35を接続する配管とを備えている。
【0015】
ヒータコア回路40は、
図1に示すように、HVAC80内において車室内に供給する空気を加熱するためのヒータコア41と、熱媒体を流すための配管42とを備えている。
【0016】
クーラコア回路50は、
図1に示すように、HVAC80内において車室内に供給する空気を冷却するためのクーラコア51と、熱媒体を流すための配管52とを備えている。
【0017】
車室外放熱器回路60は、
図1に示すように、車室外の空気に熱媒体の熱を放熱(熱交換)するためのラジエータ等の車室外放熱器61と、熱媒体を流すための配管62とを備えている。
【0018】
なお、
図1、2の符号11は、車室内外を隔てるファイヤーウォールを模式的に表しており、当該ファイヤーウォール11の図面左側が車室外の区域であり、当該ファイヤーウォール11の図面右側が車室内の区域である。
【0019】
流路切替弁70A、B、Cは、
図1に示すように、各回路の配管を接続または非接続とするものであり、本実施形態では、3方弁または4方弁から構成されている。
【0020】
空調回路20は、上記に説明した設備以外にも、熱媒体を圧送する複数のポンプ(図示しない)や、各部の冷媒や熱媒体や後述する凝縮水等の温度を検出する温度センサー(図示しない)等を備えている。
【0021】
HVAC80は、車室内空気を通気循環させるためのHVAC(Heating,Ventilation,and Air Conditioning)として構成され、
図1に示すように、空気取り入れ口から空気送出口に向かう空気流を生成するブロワ81と、ヒータコア41を設置した通路への空気の流れを制御するエアミックスドア82とを有している。
【0022】
ここで、車室内に供給する空気を空気冷却部22(本実施形態ではクーラコア51)で冷却する時に凝縮水が生じることがあり、HVAC80は、
図1に示すように、空気冷却部22で生じた凝縮水をHVAC80外に排出するための排水口83を有している。
【0023】
排水ユニット90は、排水口83から排出された凝縮水をその自重を利用して車室外(車両外)へ排出するものであり、
図1に示すように、熱交換部91aを有した熱交換経路91と、熱交換部91aを経由することなく外部に凝縮水を排出する排出経路92と、排水口83の接続先を熱交換経路91または排出経路92のいずれかに切り替え可能な弁部93と、排水口83と弁部93とを接続する配管94とを有している。
【0024】
熱交換経路91は、凝縮水を流すための配管等から構成され、
図1に示すように、少なくとも冷房運転時(本実施形態では冷房運転時のみ)において後述する空気加熱部21と凝縮水を熱交換させる位置に設けられた熱交換部91aと、その末端(熱交換部91aよりも下流側)において車室外(車両外)に凝縮水を排出する排水部91bとを有している。
【0025】
熱交換部91aは、空気加熱部21の配管を流れる媒体と熱交換経路91の配管を流れる凝縮水とを熱交換させるように構成され、具体的には、
図1に示すように、車室外放熱器回路60の車室外放熱器61の下流側かつ高温側熱交換器32の上流側に位置する配管を流れる熱媒体と凝縮水とを熱交換させるように構成されている。
【0026】
本実施形態では、熱交換部91aが、
図1に示すように、空気加熱部21の配管に熱交換経路91の配管を巻き付けた所謂二重管構造で構成されている。しかしながら、熱交換部91aの具体的構造については、空気加熱部21と凝縮水を熱交換させることが可能なものであれば如何なるものでもよく、例えば、
図3(a)に示すように、空気加熱部21の配管に取り付けられた熱伝導率の高い金属プレートと熱交換経路91の配管に取り付けられた熱伝導率の高い金属プレートとを接触させることで熱交換を行う所謂プレート熱交換器の態様で、熱交換部91aを構成してよい。
【0027】
また、熱交換部91aの変形例として、
図3(b)に示すように、熱交換経路91の配管の一部に、凝縮水を貯留可能な凝縮水貯留部91cを形成し、凝縮水貯留部91cに貯留された凝縮水と空気加熱部21の配管を流れる媒体とを熱交換させるように、熱交換部91aを構成することも考えられる。この場合、凝縮水貯留部91cに貯留された凝縮水によって、空気加熱部21の媒体を良好に冷やすことができる。
また、このような凝縮水貯留部91cを形成した場合、凝縮水貯留部91cに貯留された凝縮水によって、排水部91bから配管内に侵入した外気が凝縮水貯留部91cよりも上流側に進むことを防止できる。
【0028】
また、熱交換部91aとは関係無く、熱交換経路91の排水部91bや排出経路92の排水部92aの手前(上流側)に凝縮水貯留部を形成してもよく、この場合も、凝縮水貯留部に貯留された凝縮水によって、排水部91b、92aから配管内に侵入した外気が凝縮水貯留部よりも上流側に進むことを防止できる。
【0029】
排出経路92は、凝縮水を流すための配管から構成され、
図1に示すように、その末端において車室外(車両外)に凝縮水を排出する排水部92aを有している。
【0030】
弁部93は、本実施形態では、車室外温度に応じて、排水口83の接続先を熱交換経路または排出経路に切り替えるように構成されており、具体的には、エンジンルーム内温度等の車室外温度が所定温度(例えば15℃)以上である場合に、HVAC80の排水口83から排出された凝縮水を熱交換経路91に流し、車室外温度が所定温度(例えば15℃)よりも低い場合に、HVAC80の排水口83から排出された凝縮水を排出経路92に流すように構成されている。
【0031】
なお、本実施形態では、弁部93が、車室外温度を検知する温度検知部を有し前記接続先を自動的に切り替える機能を備えたサーモスタッドバルブから構成されているが、弁部93の具体的態様は、上記に限定されず、例えば、弁部93とは別途に設けられた温度センサによって測定された車室外温度の情報を受信して、前記接続先を切り替えるように、弁部93を構成してもよい。なお、コストの観点からは、弁部93を上述したようなサーモスタッドバルブから構成するのが有利である。
【0032】
また、上記では、車室外温度の情報を基に接続先を切り替えるように弁部93が構成されているものとして説明したが、その他の情報、例えば、熱交換部91aの上流側における空気加熱部21(本実施形態では車室外放熱器回路60)の配管を流れる媒体(熱媒体)の温度、および、熱交換部91aの上流側(例えば配管94)における凝縮水の温度の情報を受信して、これら温度に応じて接続先を切り替えるように、弁部93を構成してもよい。具体的には、前記媒体の温度と前記凝縮水の温度との間の温度差が所定値以上である場合に前記接続先を熱交換経路91にし、前記温度差が前記所定値よりも低い場合に前記接続先を排出経路92にするように、弁部93を構成することが考えられる。
また、熱交換部91aの上流側における空気加熱部21(本実施形態では車室外放熱器回路60)の配管を流れる媒体(熱媒体)の温度に応じて、接続先を切り替えるように弁部93を構成することも考えられ、具体的には、前記媒体の温度が所定値以上である場合に前記接続先を熱交換経路91にし、前記媒体の温度が所定温度よりも低い場合に前記接続先を排出経路92にするように、弁部93を構成することが考えられる。
【0033】
制御装置は、車両用空調装置10の各部に接続され、車両用空調装置10の各部の動作を制御するものである。本実施形態では、制御装置(図示しない)はPLC(プログラマブルロジックコントローラ)から構成されるが、制御装置(図示しない)の具体的態様は、上記各部の動作を制御可能なものであれば、如何なるものでもよい。
【0034】
次に、本実施形態における空調回路20の運転時の動作について、以下に説明する。
【0035】
まず、冷房運転時(すなわち、操作パネル等を通じて使用者等による冷房運転の要求を受け付けた時)には、
図1に示すように、流路切替弁70A、B、Cによって、冷媒回路30の高温側熱交換器32と車室外放熱器回路60(およびヒータコア回路40)が接続された状態となり、これにより、高温側熱交換器32において、圧縮機31によって圧縮された冷媒と車室外放熱器回路60(およびヒータコア回路40)を流れる熱媒体との間で熱交換が行われ、また、車室外放熱器61において、車室外放熱器回路60(およびヒータコア回路40)の熱媒体の熱が車室外の空気に放熱される。
【0036】
また、冷房運転時には、
図1に示すように、流路切替弁70A、B、Cによって、冷媒回路30の低温側熱交換器34とクーラコア回路50が接続された状態となり、これにより、低温側熱交換器34において、減圧装置33によって減圧された冷媒とクーラコア回路50を流れる熱媒体との間で熱交換が行われ、また、クーラコア51において、クーラコア回路50の熱媒体によって車室内に供給する空気が冷却される。
【0037】
このように、本実施形態の空調回路20では、
図1に示すように、冷房運転時に、高温側熱交換器32(および、圧縮機31と高温側熱交換器32との間の配管、および、減圧装置33と高温側熱交換器32との間の配管)と車室外放熱器回路60(およびヒータコア回路40)とが、空気加熱部21を構成し、また、低温側熱交換器34(および、圧縮機31と低温側熱交換器34との間の配管、および、減圧装置33と低温側熱交換器34との間の配管)とクーラコア回路50とが、空気冷却部22を構成する。
【0038】
また、本実施形態の空調回路20では、
図1に示すように、冷房運転時には、排水ユニット90の熱交換部91aが、空気加熱部21側に接続されることになる。
【0039】
次に、暖房運転時(すなわち、操作パネル等を通じて使用者等による暖房運転の要求を受け付けた時)には、
図2に示すように、流路切替弁70A、B、Cによって、冷媒回路30の高温側熱交換器32とヒータコア回路40が接続された状態となり、これにより、高温側熱交換器32において、圧縮機31によって圧縮された冷媒とヒータコア回路40を流れる熱媒体との間で熱交換が行われ、また、ヒータコア41において、ヒータコア回路40の熱媒体によって車室内に供給する空気が加熱される。
【0040】
また、暖房運転時には、
図2に示すように、流路切替弁70A、B、Cによって、冷媒回路30の低温側熱交換器34と車室外放熱器回路60が接続された状態となり、これにより、低温側熱交換器34において、減圧装置33によって減圧された冷媒と車室外放熱器回路60を流れる熱媒体との間で熱交換が行われ、また、車室外放熱器61において、車室外放熱器回路60を流れる熱媒体と車室外の空気との間で熱交換が行われる。
【0041】
このように、本実施形態の空調回路20では、暖房運転時に、高温側熱交換器32(および、圧縮機31と高温側熱交換器32との間の配管、および、減圧装置33と高温側熱交換器32との間の配管)とヒータコア回路40とが、空気加熱部21を構成し、また、低温側熱交換器34(および、圧縮機31と低温側熱交換器34との間の配管、および、減圧装置33と低温側熱交換器34との間の配管)と車室外放熱器回路60とが、空気冷却部22を構成する。
【0042】
なお、暖房運転時には、クーラコア回路50(クーラコア51)は、
図2に示すように、冷媒回路30等から切り離された状態となる。
【0043】
また、本実施形態の空調回路20では、
図2に示すように、暖房運転時には、排水ユニット90の熱交換部91aが、空気加熱部21側に接続されず、空気冷却部22側に接続されることになる。
【0044】
次に、除湿暖房運転時(すなわち、操作パネル等を通じて使用者等による除湿暖房の要求を受け付けた時)における動作について説明する。
ここで、除湿暖房運転時の動作については、以下に説明する点を除いて暖房運転時の動作と同じであるため、以下には、除湿暖房運転時の動作と暖房運転時の動作との間の相違点のみを説明する。
【0045】
すなわち、上述した暖房運転時には、クーラコア回路50(クーラコア51)が冷媒回路30等から切り離された状態になるものとして説明したが、除湿暖房運転時には、流路切替弁70A、B、Cによって、クーラコア回路50(クーラコア51)が、車室外放熱器回路60と共に冷媒回路30の低温側熱交換器34に接続された状態となる。
これにより、除湿暖房運転時には、クーラコア51において、クーラコア回路50の熱媒体によって車室内に供給する空気が冷却(除湿)される。
このように、除湿暖房運転時には、クーラコア回路50および車室外放熱器回路60が、空気冷却部22を構成する。
【0046】
このようにして得られた本実施形態の車両用空調装置10では、排水ユニット90が、熱交換部91aを有した熱交換経路91と、熱交換部91aを経由することなく外部に凝縮水を排出する排出経路92と、排水口83の接続先を熱交換経路91または排出経路92に切り替え可能な弁部93とを備えている。これにより、冷房運転時には、凝縮水によって空気加熱部21を冷却して冷房効率の向上を図りつつ、除湿暖房運転時等、ヒータコア41での加熱要求がある場合には、空気加熱部21と凝縮水を熱交換させずに凝縮水を排出することが可能であるため、空調効率が損なわれることを回避できる。
【0047】
また、本実施形態の車両用空調装置10では、熱交換部91aは、空気加熱部21の配管を流れる媒体と熱交換経路91の配管を流れる凝縮水とを熱交換させるように構成されていることにより、車室外放熱器61等に対して凝縮水を直接的に供給(散水)した場合に生じる、エンジンルーム内での凝縮水の飛散を回避でき、これにより、凝縮水の飛散に起因した車載機器の故障の発生等を防止できる。
【0048】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記または下記の実施形態や変形例の各構成を任意に組み合わせて車両用空調装置10を構成する等、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
【0049】
例えば、上述した実施形態では、空調回路20が、冷媒回路30と各種熱媒体回路(ヒータコア回路40、クーラコア回路50、車室外放熱器回路60)とから構成されるものとして説明したが、空調回路20の具体的態様は、上記に限定されず、例えば、冷媒回路のみから空調回路20を構成してもよい。
この空調回路20を冷媒回路のみから構成する変形例の場合、空調回路20は、少なくとも冷房運転時において空調回路20を構成する構成要素として、冷媒を圧縮して冷媒を高圧・高温状態にする圧縮機と、圧縮機の下流側に設置された高温側熱交換器(凝縮器)と、高温側熱交換器の下流側に設置され冷媒を減圧する減圧装置と、減圧装置の下流側に設置された低温側熱交換器(蒸発器)と、上記各部を接続する配管とを備える。
当該変形例の場合、少なくとも冷房運転時において、高温側熱交換器(および、高温側熱交換器と圧縮機との間の配管、および、高温側熱交換器と減圧装置との間の配管)が、空気加熱部21を構成し、また、低温側熱交換器(および、低温側熱交換器と圧縮機との間の配管、および、低温側熱交換器と減圧装置との間の配管)が、空気冷却部22を構成する。
そして、当該変形例の場合、排水ユニット90の熱交換部91aを、少なくとも冷房運転時において空気加熱部21の一部と凝縮水とを熱交換させる位置(例えば、高温側熱交換器と減圧装置との間の配管を流れる冷媒と凝縮水とを熱交換させる位置)に設ければよい。
【0050】
また、上述した実施形態では、熱交換部91aが、
図1に示すような冷房運転時において、空気加熱部21側に接続され(すなわち、空気加熱部21を構成する高温側熱交換器32に接続される回路を流れる媒体と凝縮水とを熱交換させるように設けられ)、
図2に示すような暖房運転時(および除湿暖房運転時)には、空気加熱部21側に接続されず、空気冷却部22側(すなわち、空気冷却部22を構成する低温側熱交換器34に接続される回路側)に接続されるものとして説明した。
しかしながら、熱交換部91aの設置態様は、上記に限定されず、例えば、
図1、2において符号Pで示す位置のように、冷房運転時、暖房運転時、除湿暖房運転時のいずれの場合であっても、空気加熱部21側に接続される位置(すなわち、空気加熱部21を構成する高温側熱交換器32に接続される回路を流れる媒体と凝縮水とを熱交換させる位置)、具体的には、流路切替弁70A、B、Cによる流路の切り替えに関わらず、常に高温側熱交換器32の上流側に位置する配管上に、熱交換部91aを設けてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 ・・・ 車両用空調装置
11 ・・・ ファイヤーウォール
20 ・・・ 空調回路
21 ・・・ 空気加熱部
22 ・・・ 空気冷却部
30 ・・・ 冷媒回路
31 ・・・ 圧縮機
32 ・・・ 高温側熱交換器
33 ・・・ 減圧装置
34 ・・・ 低温側熱交換器
35 ・・・ 冷媒貯留部
40 ・・・ ヒータコア回路
41 ・・・ ヒータコア
42 ・・・ 配管
50 ・・・ クーラコア回路
51 ・・・ クーラコア
52 ・・・ 配管
60 ・・・ 車室外放熱器回路
61 ・・・ 車室外放熱器
62 ・・・ 配管
70A、B、C ・・・ 流路切替弁
80 ・・・ HVAC
81 ・・・ ブロワ
82 ・・・ エアミックスドア
83 ・・・ 排水口
90 ・・・ 排水ユニット
91 ・・・ 熱交換経路
91a ・・・ 熱交換部
91b ・・・ 排水部
91c ・・・ 凝縮水貯留部
92 ・・・ 排出経路
92a ・・・ 排水部
93 ・・・ 弁部
94 ・・・ 配管