(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166962
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】需給計画装置および需給計画方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20241122BHJP
G06Q 50/06 20240101ALI20241122BHJP
【FI】
H02J3/00 170
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083410
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 潤
(72)【発明者】
【氏名】高山 厚
(72)【発明者】
【氏名】石川 倫明
(72)【発明者】
【氏名】黒田 英佑
(72)【発明者】
【氏名】桐原 健太
(72)【発明者】
【氏名】今井 秀岳
(72)【発明者】
【氏名】板井 準
【テーマコード(参考)】
5G066
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5G066AA02
5G066AA03
5G066AE09
5G066HB01
5G066HB06
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】実際の系統運用状態を反映した運用制約条件を加味した網羅的な検証シナリオの生成と処理時間の低減を両立することができる需給計画装置を提供する。
【解決手段】各種の運用制約条件を満たした上で運用計画を策定する需給計画装置200であって、過去時点における運用実績の情報を含む過去実績情報および過去時点において設定された制約情報の情報を含む過去制約情報に基づき、過去実績情報と過去制約情報を比較評価する過去実績評価部と、過去実績評価部の過去実績評価結果に基づき、各種の運用制約条件の組み合わせとして規定される検証シナリオを生成するシナリオ生成部17と、を備える。需給計画装置200は、さらに、過去運用実績を反映した過去時点における運用制約を含む推定制約情報を算出し、算出された過去時点における推定制約情報に基づき、将来時点の推定制約情報を算出する制約条件推定部15を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種の運用制約条件を満たした上で運用計画を策定する需給計画装置であって、
過去時点における運用実績の情報を含む過去実績情報および過去時点において設定された制約情報の情報を含む過去制約情報に基づき、前記過去実績情報と前記過去制約情報を比較評価する過去実績評価部と、
前記過去実績評価部の過去実績評価結果に基づき、各種の運用制約条件の組み合わせとして規定される検証シナリオを生成するシナリオ生成部と、を備える
ことを特徴とする需給計画装置。
【請求項2】
前記過去実績情報は、指定された過去情報のデータ期間、過去情報の取得日時、過去情報の対象設備、過去情報の対象エリアのいずれか1つ以上の条件を満たす過去情報を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の需給計画装置。
【請求項3】
前記過去実績評価部は、指定期間におけるkWh制約、指定期間における計画停止制約のいずれか1つ以上の制約項目を含む制約条件について前記過去実績情報と前記過去制約情報を比較評価する
ことを特徴とする請求項1に記載の需給計画装置。
【請求項4】
前記過去実績評価部は、前記過去実績情報から算出された平均値、上限値、下限値、度数分布のいずれか1つ以上を含む統計的な評価指標値を用いて前記過去実績情報と前記過去制約情報を比較評価する
ことを特徴とする請求項1に記載の需給計画装置。
【請求項5】
前記需給計画装置は、さらに、前記過去実績評価部において算出した過去実績情報の評価値と前記過去制約情報に基づき、前記過去運用実績を反映した過去時点における運用制約を含む推定制約情報を算出する制約条件推定部を備え、
前記シナリオ生成部は、前記制約条件推定部で算出された推定制約情報に基づき、各種の運用制約条件の組み合わせとして規定される検証シナリオを生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の需給計画装置。
【請求項6】
前記制約条件推定部は、算出された過去時点における推定制約情報に基づき、将来時点の推定制約情報を算出する
ことを特徴とする請求項5に記載の需給計画装置。
【請求項7】
前記制約条件推定部は、制約項目の過去実績情報との適合度を用いて、過去時点における運用制約を含む推定制約情報を算出する
ことを特徴とする請求項5に記載の需給計画装置。
【請求項8】
前記需給計画装置は、前記過去時点および前記将来時点の推定制約情報に基づき、各制約項目の設定値の増減における上下限および変化幅、制約の考慮対象となる期間の増減における開始時間、終了時間、および期間長の上下限および変化幅、制約の考慮対象となる期間の年度、季節、曜日、平休日種別、時刻のいずれか1つ以上を含む制約変更情報を生成する制約変更条件生成部をさらに備え、
前記シナリオ生成部は、前記推定制約情報及び前記制約変更情報に基づき、前記推定制約情報及び前記制約変更情報を加味した需給計画を策定する
ことを特徴とする請求項6に記載の需給計画装置。
【請求項9】
前記需給計画装置は、前記検証シナリオに含まれる制約情報に基づき、前記制約情報を加味した需給計画を策定する計画策定部をさらに備える
ことを特徴とする請求項6に記載の需給計画装置。
【請求項10】
各種の運用制約条件を満たした上で運用計画を策定する需給計画方法であって、
過去時点における運用実績の情報を含む過去実績情報および過去時点において設定された制約情報の情報を含む過去制約情報に基づき、前記過去実績情報と前記過去制約情報を比較評価する過去実績評価ステップと、
前記過去実績評価ステップにおいて算出した過去実績情報の評価値と前記過去制約情報に基づき、前記過去運用実績を反映した過去時点における運用制約を含む推定制約情報を算出する制約条件推定ステップと、
前記制約条件推定ステップで算出された推定制約情報に基づき、各種の運用制約条件の組み合わせとして規定される検証シナリオを生成するシナリオ生成ステップと、
前記検証シナリオに含まれる制約情報に基づき、前記制約情報を加味した需給計画を策定する計画策定ステップと、を有する
ことを特徴とする需給計画方法。
【請求項11】
前記需給計画方法は、さらに、前記推定制約情報に基づき、各制約項目の設定値の増減における上下限および変化幅、制約の考慮対象となる期間の増減における開始時間、終了時間、および期間長の上下限および変化幅、制約の考慮対象となる期間の年度、季節、曜日、平休日種別、時刻のいずれか1つ以上を含む制約変更情報を生成する制約変更条件生成ステップを有し、
前記シナリオ生成ステップにおいて、前記推定制約情報及び前記制約変更情報に基づき、前記推定制約情報及び前記制約変更情報を加味した需給計画を策定する
ことを特徴とする請求項10に記載の需給計画方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、需給計画装置および需給計画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統は、多くの発電機、負荷、送配電機器および制御装置から構成されている。電力系統を安定かつ低コストで運用するため、時々刻々と変動する電力需要に対して、電力の供給量のバランスを保つための需給計画の策定が必要となる。天候に依存して出力が大きく変動する再生可能エネルギー電源を大量に導入しつつ高効率な系統運用を実現するため、各国において市場主導型の電力系統運用への移行が進められている。
【0003】
電力系統運用を実現するための必要機能として、次世代の中央給電指令所におけるセキュリティ制約付き発電機起動停止計画(SCUC:Security Constrained Unit Commitment)およびセキュリティ制約付き経済配分(SCED:Security Constrained Economic Dispatch)機能があり、広域メリットオーダーと各種運用制約を充足する発電起動停止計画および出力配分を策定することが可能である。前記のSCUC/SCED機能において発電計画を求めるための最適化問題として、目的関数は運用コスト最小化、遵守すべき運用制約は発電ユニット制約(出力上下限、出力変化速度、最小起動停止時間など)、系統制約(潮流制約など)が設定される。
【0004】
今般、燃料備蓄量不足や想定外の需要変動などを原因とした需給逼迫(kWh制約)や、気象急変による再生可能エネルギーの長期出力低下(DDD:Dark Doldrums、または風力発電タービンの凍結など)が発生している。また、再生可能エネルギー、分散型電源、EV、BESSの導入量増大に伴い、電力消費傾向・変動トレンドの事前想定が困難となり、かつ事故時の影響が複雑化していく傾向にある。
【0005】
前記2点を背景として、系統の長期安定運用を担う責任者(日本国内では一般送配電事業者)が長期的な安定運用への投資と説明責任を果たすため、月間・年間以上の長期制約を検討範囲とする計画策定、および各種の想定外変動を加味した複数の検証シナリオを考慮した計画策定による事前対策検証が必要となる。ここで検証シナリオとは、電力需給状況や設備運用特性などに基づき、電力系統の運用において満たすべき制約条件を定義した情報を指す。上記の検証シナリオにより定義される制約条件を満たしつつ、コスト最小化などの指標に基づく最適な需給計画が策定される。
【0006】
前記の背景の元、電力系統を運用する事業者が様々な生じ得る系統状態を想定した上で最適な電力系統の運用方法を決定するための需給計画技術が考案されている。例えば、特許文献1には、「電力系統の設備計画の策定のために評価される複数の評価対象設備から1つの設備を選択設備として選択し、電力系統の系統構成を示す系統構成情報を用いて選択設備の存在の有無を変更した系統構成を示す変更系統構成情報を作成する構成変更反映部、を備える。優先度算出装置は、変更系統構成情報と負荷量を用いて潮流計算を行う潮流計算部と、潮流計算の結果を用いて、電力系統を構成する設備であって選択設備以外の設備である他設備への影響の度合いを選択設備の更新の優先度として算出する優先度算出部と、を備え、優先度算出装置は、選択設備を変更することにより、複数の評価対象設備のそれぞれの優先度を算出する。」という記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、太陽光発電や風力発電に代表される再生可能エネルギーが系統に大量導入されつつある。それらの再生可能エネルギーは急峻かつ事前想定困難な発電出力変動を伴い、この結果として、電力需給状況が大きく変化する可能性がある。また、火力発電機の運用においては、天然ガスや石油などの資源産出国の政治情勢、燃料輸送や貯蔵施設におけるトラブル、燃料価格高騰・調達困難を起因としてkWh制約の観点で発電可能量に影響が生じる事象が発生している。さらに、気象予報から乖離した想定外の気象状況による電力需要増加に発電機の作業停止の時期が重なることにより、供給力不足による需給逼迫が発生する可能性がある。
【0009】
前記の系統運用状況を考慮し、網羅的なシナリオ検証に基づく事前対策とともに、実際の運用状態に伴い今後の系統運用において想定されるシナリオを随時更新する必要がある。ここで、機械的に検証シナリオを設定すると、目的に対してシナリオが過剰になることによる計画策定の計算時間増大、またはシナリオ不足により重要シナリオの検証漏れが生じる恐れがある。以上の観点より、検証目的および実際の運用状態を反映した過不足のない検証シナリオの生成・抽出が必要となる。
【0010】
特許文献1に記載の技術では、ある1つの設備の故障有無に対する影響を評価するため、複数設備故障の組合せや設備故障以外の過酷事象など、事前に規定されていない系統状態の評価が困難であり、または評価ケースの入力の労力が増大するため、網羅的なシナリオ検証の実現が困難である。また、シナリオ設定において実際の運用状態に基づく制約条件を反映しないため、系統運用状態の変化により検証が必要となるシナリオの検証漏れや、実情を反映しない不要なシナリオ検証に計算リソースを消費する恐れがある。
【0011】
本発明の目的は、実際の系統運用状態を反映した運用制約条件を加味した網羅的な検証シナリオの生成と処理時間の低減を両立することができる需給計画装置および需給計画方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明の需給計画装置は、各種の運用制約条件を満たした上で運用計画を策定する需給計画装置であって、過去時点における運用実績の情報を含む過去実績情報および過去時点において設定された制約情報の情報を含む過去制約情報に基づき、前記過去実績情報と前記過去制約情報を比較評価する過去実績評価部と、前記過去実績評価部の過去実績評価結果に基づき、各種の運用制約条件の組み合わせとして規定される検証シナリオを生成するシナリオ生成部と、を備えることを特徴とする。本発明のその他の態様については、後記する実施形態において説明する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、実際の系統運用状態を反映した運用制約条件を加味した網羅的な評価シナリオの生成と処理時間の低減を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る需給計画装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る需給計画システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】検証シナリオ生成処理の全体処理の一例を示す図である。
【
図5A】制約拡張情報の一例(制約対象設備の増減、制約量の増減を対象とする場合)を示す図である。
【
図5B】制約拡張情報の一例(制約対象期間の増減を対象とする場合)を示す図である。
【
図7A】過去計画情報の一例(複数の発電機に対する各時間インターバルの発電量)を示す図である。
【
図7B】過去制約情報の一例(各時間インターバルにおいて各制約項目の制約条件が有効あるいは無効のいずれであるか)を示す図である。
【
図8】過去実績情報の評価指標情報の一例を示す図である。
【
図9】過去時点における推定制約情報の一例を示す図である。
【
図10A】将来期間における推定制約情報の一例を示す図である。
【
図10B】
図10Aに示す過去制約情報および将来推定制約情報を時系列グラフ上に表示した一例を示す図である。
【
図11A】将来時点における制約変更情報を示す図であり、制約対象設備の増減、あるいは制約量の増減を対象とする場合の制約拡張情報の一例を示す図である。
【
図11B】将来時点における制約変更情報を示す図であり、制約対象期間の増減を対象とする場合の制約拡張情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。尚、下記はあくまでも実施の例に過ぎず、下記具体的内容に発明自体が限定されることを意図する趣旨ではない。
本発明の実施形態について、図面を参照しながら以下説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る需給計画装置200の機能構成の一例を示す図である。需給計画装置200は、需給計画決定部10と、計画策定部18と、情報記憶部30と、を含む。需給計画決定部10は、計測装置21(
図2参照)に接続されていても良い。計測装置21は、複数の地点の計測装置21a、21b、・・・の計測情報を計測する。情報記憶部30は、制約情報DB31、制約拡張情報DB32、過去実績DB33、過去計画DB34を格納する。
【0017】
需給計画決定部10は、制約情報取得部11と、過去実績取得部12と、過去計画取得部13と、過去実績評価部14と、制約条件推定部15と、制約変更条件生成部16と、シナリオ生成部17と、を含む。
【0018】
制約情報取得部11は、制約情報DB31、制約拡張情報DB32から、制約情報、制約拡張情報を取得する。過去実績取得部12は、過去実績DB33から、過去実績情報を取得する。過去計画取得部13は、過去計画DB34より過去の発電計画および過去の発電計画に関連する制約情報のいずれかを含む過去情報を取得する。
【0019】
なお、過去実績情報、過去計画情報として、各種発電機における発電出力、または送電線、変電所を含む各種系統設備における電力潮流のいずれか1つ以上を含むものとする。
【0020】
以下、発電機における発電出力を過去実績情報および過去計画情報として用いる実施例について記載する。
【0021】
過去実績評価部14は、過去実績取得部12において取得した過去実績情報に基づき、過去の発電実績に基づく制約情報およびその統計情報を評価値として算出する。過去実績評価部14は、過去実績取得部12において取得した過去実績情報および過去計画取得部13において取得した過去計画情報に基づき、過去の発電実績に基づく制約情報およびその統計情報を算出し、過去計画情報に含まれる過去の発電計画および過去の発電計画に関連する制約情報との比較により差分を算出する。
【0022】
すなわち、過去実績評価部14は、過去時点における運用実績の情報を含む過去実績情報および過去時点において設定された制約情報の情報を含む過去制約情報に基づき、過去実績情報と過去制約情報を比較評価する。過去実績評価部14は、指定期間におけるkWh制約、指定期間における計画停止制約のいずれか1つ以上の制約項目を含む制約条件について過去実績情報と過去制約情報を比較評価する。
【0023】
制約条件推定部15は、過去実績評価部14において算出した過去実績情報の評価値と過去計画情報に含まれる過去の発電計画および過去の発電計画に関連する制約情報を用いて、過去の運用実績における制約情報を推定する。また、前記の過去の運用実績における制約情報の推定結果を用いて、将来における制約情報の推定値を算出する。
【0024】
すなわち、制約条件推定部15は、過去実績評価部14において算出された過去実績情報の評価値と過去制約情報に基づき、過去運用実績を反映した過去時点における運用制約を含む推定制約情報を算出する。制約条件推定部15は、算出された過去時点における推定制約情報に基づき、将来時点の推定制約情報を算出する。
【0025】
制約変更条件生成部16は、制約条件推定部15において算出した将来における制約情報の推定値および制約拡張情報に基づき、制約変更情報を生成する。
【0026】
シナリオ生成部17は、制約情報取得部11が制約情報DB31および制約拡張情報DB32より取得した制約情報および制約拡張情報、制約条件推定部15により算出した推定制約情報、および制約変更条件生成部16により算出した制約変更情報に基づいて、制約条件項目ごとの設定値の組み合わせにより定義されるシナリオを生成する。
【0027】
計画策定部18は、シナリオ生成部17において生成された前記検証シナリオに含まれる制約情報を加味した需給計画を策定する。ここで、計画策定手法として、セキュリティ制約付き発電機起動停止計画(SCUC:Security Constrained Unit Commitment)およびセキュリティ制約付き経済配分(SCED:Security Constrained Economic Dispatch)機能と呼ばれる既知の数理計画手法を適用し、目的関数として運用コスト最小化、遵守すべき運用制約として発電ユニット制約(出力上下限、出力変化速度、最小起動停止時間)、系統制約(潮流制約)を設定して良い。また、適用する目的関数および運用制約は左記に限定されるものではなく、現状の電力系統運用において適用される各種の目的関数および運用制約を設定して良い。
【0028】
図2は、本実施形態に係る需給計画システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
図2に示すように、本実施形態における需給計画システムは、発電機101と、変電所102と、調相機器103と、電力負荷104と、外部電力系統105と、計測装置21a,21b,・・・と、情報通信ネットワーク108と、需給計画装置200と、を含む。以下、発電機101と、変電所102と、調相機器103と、電力負荷104と、計測装置21a,21b,・・・を含む電力系統を自系統と呼ぶことがある。
【0029】
発電機101は、電力を発生させる発電機であり、火力発電、水力発電、原子力発電、太陽光発電、風力発電、バイオマス発電、潮流発電を含む何れかの発電手法により電力を発生させる発電機である。
【0030】
発電機101aは、電力系統において変電所102の高電圧側に設置される火力発電、水力発電、原子力発電などを含む大規模発電機であり、計測装置21aおよび情報通信ネットワーク108を通じて発電量を含む系統状態量を需給計画装置200に送信する。また、発電機101aは、計測装置21aおよび情報通信ネットワーク108を通じて需給計画装置200より送信された制御指令情報を受信し、制御指令情報に応じて発電量を含む系統状態量を変化させる。
【0031】
発電機101bは、電力系統において変電所102の低電圧側に設置される太陽光発電、風力発電、コジェネレーションなどを含む中小規模発電機であり、計測装置21bおよび情報通信ネットワーク108を通じて発電量を含む系統状態量を需給計画装置200に送信する。
【0032】
変電所102は、電力系統内の送電線間に設置され、大規模発電機である発電機101aが設置される高電圧側より送電される電力の電圧値を変更し、電力負荷104が設置されている低電圧側に送電する。変電所102には、電力コンデンサ、分路リアクトルなどの調相機器103が接続される。
【0033】
調相機器103は、電力系統内における無効電力を変化させることにより、電力系統内の電圧分布を制御する機器であり、電力コンデンサ、分路リアクトル、STATCOM(Static Synchronous Compensator:自励式無効電力補償装置)、SVC(Static Var Compensator:静止型無効電力補償装置)、などを含む。一部の調相機器103は、計測装置21cおよび情報通信ネットワーク108を通じて需給計画装置200より送信された制御指令情報を受信し、制御指令情報に応じて発電量を含む系統状態量を変化させる。
【0034】
電力負荷104は、電力を消費する電動機や照明器具などを含む施設であり、家庭、工場、ビルなどの施設を表す。
【0035】
外部電力系統105は、需給計画装置200からの制御が不可能である外部の電力系統であり、連系線により自系統と接続されている。
【0036】
計測装置21a,21b,・・・は、発電機101aにおける発電量、調相機器103における調相量、送電線における潮流値、電圧値、などの系統状態量を計測するセンサを含み、計測した系統状態量を、情報通信ネットワーク108を通じて需給計画装置200に送信する。
【0037】
情報通信ネットワーク108は、双方向にデータを伝送可能なネットワークである。情報通信ネットワーク108は、例えば、有線ネットワーク若しくは無線ネットワーク、又はそれらの組合せである。情報通信ネットワーク108は、いわゆるインターネットであっても良いし、専用線のネットワークであっても良い。
【0038】
需給計画装置200は、
図1に示す需給計画機能を実現するための装置である。需給計画装置200は、計測装置21a,21b,・・・において計測された系統状態量を、情報通信ネットワーク108を通じて受信する。また、需給計画装置200は、送信された系統の系統状態量および内部に蓄積された情報を用いて算出した制御指令情報を、情報通信ネットワーク108を通じて計測装置21に送信する。
【0039】
需給計画装置200の内部構成として、CPU(Central Processing Unit)201と、表示装置202と、通信手段203と、入力手段204と、メモリ205と、記憶装置206と、がバス線211に接続されている。CPU201は、記憶装置206に格納された計算プログラムを実行して、系統状態の算出や、制御信号の生成、画像データの生成などを行い、画像データを表示装置202に表示させる。メモリ205は、表示用の画像データ、系統状態の算出結果データなどを一旦格納するメモリであり、例えば、RAM(Random Access Memory)などである。通信手段203は、情報通信ネットワーク108を通じて計測装置21から潮流値、電圧値などの系統状態量を取得する。制約情報取得部11は、通信手段203を用いて、複数の計測装置21で計測された時系列の計測情報を受信する。
【0040】
需給計画装置200のユーザ(管理者)は、入力手段204の所定のインタフェースを通じて各種閾値などのパラメータを設定又は変更し、自系統の需給計画装置200の動作を適切に設定できる。また、ユーザは、入力手段204の所定のインタフェースを通じて確認したいデータの種類を選択し、表示装置202に表示させることができる。
【0041】
記憶装置206は、各種プログラムおよびデータを保持する。記憶装置206は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)又はフラッシュメモリなどである。記憶装置206は、例えば、後述する各種機能を実現し得るプログラムおよびデータなどを保持する。記憶装置206に記憶されているプログラムおよびデータは、必要に応じてCPU201に読み出されて実行される。なお、記憶装置206は、情報記憶部30を実現し、各種のデータベース(DB)を格納する。
【0042】
計測装置21は、系統内の計測地点における計測情報を計測し、制約情報取得部11に送信する。計測情報は、有効電力潮流、無効電力潮流、系統電圧、系統電流、電圧位相の中の少なくとも一つの種別を含む。計測装置21は、複数の計測地点に夫々配置された計測装置21a,21b,・・・,21nを含む。計測装置21は、例えばPMU(Power Monitoring Unit)などであり、電力に関する定期的な計測を行い、時系列の計測情報を送信する。
【0043】
図1に戻り、情報記憶部30は、需給計画において考慮すべき制約情報を格納した制約情報DB31、および制約情報を拡張して検証シナリオを生成するためのパラメータを格納した制約拡張情報DB32を含む。
【0044】
制約情報DB31には、各種制約項目が反映される対象設備を示す制約対象設備、各種設備の運用量の上限値を規定する制約上限量、各種設備の運用量の下限値を規定する制約下限量、各種設備の運用量の指定値を規定する制約指定量、各種制約項目が反映される期間を示す制約対象期間、の各種データ項目を含む制約情報が格納される。
【0045】
また、制約拡張情報DB32には、各種制約上限量、制約下限量、または制約指定量のいずれかの値を一定の範囲内で変更可能とする際の数量増減時の下限値および上限値、左記の数量増減時の下限値および上限値の範囲内で制約値を変動させる場合の刻み幅を規定する数量増減時の変化刻み幅、制約対象期間を一定の範囲内で変更可能とする際の期間増減時の開始時間および終了時間の下限値および上限値、左記の期間増減時の下限値および上限値の範囲内で制約値を変動させる場合の刻み幅を規定する期間増減時の変化刻み幅、各種制約項目が反映される期間の種別(時刻、昼間・夜間、平日・休日、曜日、月など)を示す制約対象期間種別、の各種データ項目を含む制約拡張情報が格納される。
【0046】
ここで、制約情報の一例として、
図4に示す制約項目2に関連する制約情報では、制約対象設備として送電線A-1およびA-2、制約上限量として300[MW]、制約対象期間としては各時刻が設定されており、制約下限量および制約指定量は規定されていないことを表している。
【0047】
また、制約拡張情報の一例として、
図5Aの制約上限量について説明すると、元となる制約情報の50%から200%の範囲内において制約量の10%を刻み幅として設定可能とする制約拡張情報が示されている。
【0048】
ここで、
図4に示す制約項目2に示す制約情報をベース制約とする場合、前記の制約拡張情報に基づき、300[MW]×50[%]=150[MW]を下限、300[MW]×200[%]=600[MW]を上限、300[MW]×10[%]=30[MW]を刻み幅として、当該の制約対象設備における制約上限量を150、180、…、570、600[MW]のいずれかに設定された検証シナリオが作成される。
【0049】
また、制約拡張情報の別の一例として、制約対象期間について
図5Bに示す制約拡張情報を用いて、制約期間を2023年4月から2035年3月までとする制約情報をベース制約とする場合、制約対象期間の開始時間としては2023年4月から2028年4月までの1ヶ月刻み、終了時間としては2032年3月から2035年3月までの1ヶ月刻み、制約対象期間種別としては全日、休日のみ、平日の0時から7時および19時から23時、のいずれかを設定された検証シナリオが作成される。
【0050】
<検証シナリオ生成処理S300>
需給計画装置200による検証シナリオ生成処理S300について説明する。
図3は、検証シナリオ生成処理S300の全体処理を示す。本処理の実施目的の1つは、過去の計画策定時に設定された運用制約条件の実績値または推定値、および過去の計画策定時点から本機能を使用する現時点までの間に取得された運用実績値(発電機における発電出力値、送電線などの送配電設備における潮流値、発電機や変圧器などの送配電設備における制御指令値情報など)に基づき、過去の計画策定時に設定された運用制約条件の適用状況を実績値との比較により評価することである。
【0051】
また、前記の評価の情報に基づき、現時点より将来の運用制約条件を推定し、推定された将来の運用制約条件に基づき将来の運用計画を算出することも本処理の目的の1つである。
【0052】
本処理が必要となる背景として、発送分離などの事業制度変更を経て電力事業の自由化が進む中で、送配電事業者が安定な電力系統運用を実現するため、多様な事業者の運用状態を限定された公開情報に基づき推定する必要が生じることがあげられる。
【0053】
(ステップS301)
まず、制約情報取得部11は、需給計画の策定において考慮が必要となる制約情報を情報記憶部30に含まれる制約情報DB31より取得する(ステップS301)。ここで、制約情報の取得方法として、使用者による分析ツール・ソフトウェアを用いた手動入力、制約情報が格納されたファイルインポート、他システムとのDB連携のいずれかを採用して良い。
【0054】
(制約情報)
図4は、制約情報31Aの一例を示す図である。
図4には、制約情報DB31に格納される制約情報31Aの一例を示す。
図4の各行で表される各制約項目に対して、制約対象設備311、制約上限量312、制約下限量313、制約指定量314、制約対象期間315の設定値が格納される。ここで、制約対象設備311と制約対象期間315については、いずれの制約項目についても設定が必要であり、制約上限量312、制約下限量313、制約指定量314については、そのいずれか1つ以上の設定が必要である。
【0055】
制約対象設備311は、当該の制約が適用される対象設備が設定される。設定される設備種別として、発電機、送電線、変電所、電力負荷、連系点ノードのいずれか、あるいはそれら設備の組合せを設定して良い。
【0056】
制約上限量312は、当該の制約項目において、指定された設定値以上の値を保つ必要があることを意味する。制約上限量として、有効電力[kW]または[MW]、無効電力[kvar]または[Mvar]、有効電力量[kWh]または[MWh]、系統電圧[V]または[kV]、力率[%]、電流位相あるいは電圧位相[deg]または[rad]を設定して良い。
【0057】
制約下限量313は、当該の制約項目において、指定された設定値以下の値を保つ必要があることを意味する。制約下限量として、有効電力[kW]または[MW]、無効電力[kvar]または[Mvar]、有効電力量[kWh]または[MWh]、系統電圧[V]または[kV]、力率[%]、電流位相あるいは電圧位相[deg]または[rad]を設定して良い。
【0058】
制約指定量314は、当該の制約項目において、指定された設定値と同値を保つ必要があることを意味する。制約指定量として、有効電力[kW]または[MW]、無効電力[kvar]または[Mvar]、有効電力量[kWh]または[MWh]、系統電圧[V]または[kV]、力率[%]、電流位相あるいは電圧位相[deg]または[rad]を設定して良い。
【0059】
制約対象期間315は、制約の遵守可否を判定するための期間が設定される。制約対象期間として、ある複数の時間インターバルを含む期間を設定して良い。また、個々の時間インターバルに対して個別の制約値が設定される制約項目に対して、制約対象期間として個々の時間インターバルを設定して良い。また、制約対象期間として、ある一定の条件を満たす期間を設定して良い。左記の条件として、年度、季節、曜日、平休日種別、時刻のいずれかを用いて、制約対象期間の条件を設定して良い。
【0060】
(ステップS302)
次に、制約情報取得部11は、検証シナリオ生成において制約情報の変更に用いられるパラメータが格納された制約拡張情報を情報記憶部30に含まれる制約拡張情報DBより取得する(ステップS302)。
【0061】
ここで、制約拡張情報の取得方法として、使用者による分析ツール・ソフトウェアを用いた手動入力、制約拡張情報が格納されたファイルインポート、他システムとのDB連携のいずれかを採用して良い。
【0062】
(制約拡張情報)
図5Aは、制約拡張情報32Aの一例(制約対象設備の増減、制約量の増減を対象とする場合)を示す図である。
図5Bは、制約拡張情報32Bの一例(制約対象期間の増減を対象とする場合)を示す図である。
図5A、
図5Bは、制約拡張情報DB32に格納される制約拡張情報の一例を示す。
【0063】
図5Aは、制約対象設備321の増減、あるいは制約量(制約上限量322、制約下限量323)の増減を対象とする場合の制約拡張情報32Aの一例を示している。制約対象設備321の増減について、検証シナリオとして設定可能とする各制約項目の対象とする系統設備の組合せ条件を指定して良い。
図5Aでは、ベースとする制約条件における当該制約項目の対象となる系統設備の設備数に対する割合を用いて、制約対象設備として設定可能とする設備数の上下限を指定する例を示す。
【0064】
制約量の増減について、
図4に示す制約上限量312、制約下限量313、制約指定量314のいずれかに対して、検証シナリオとして設定可能とする制約量の上下限および変動幅を指定して良い。
図5Aでは、ベースとする制約条件における当該制約項目の制約量に対する割合を用いて、制約量として設定可能とする範囲の上下限を指定する例を示す。
【0065】
具体的には、制約対象設備321は、ベース制約の設備数の50%から対象系統の全連系設備であるのに対し、制約上限量322は、ベース制約の制約量の50%からベース制約の制約量の200%の範囲であり、制約下限量323は、ベース制約の制約量の80%からベース制約の制約量の120%の範囲であることが示されている。
【0066】
図5Bには、制約対象期間324の増減を対象とする場合の制約拡張情報32Bの一例を示している。制約対象期間324の増減について、検証シナリオとして設定可能とする各制約項目の適用対象期間を指定して良い。
図5Bでは、ベースとする制約条件における当該制約項目の適用対象期間に対して、当該期間の開始時間、終了時間の上下限値、変化幅、および期間種別を用いて、検証シナリオとして設定可能とする制約対象期間を指定する例を示す。ここで、期間種別として、年度、季節、曜日、平休日種別、時刻を設定して良い。
【0067】
(ステップS303)
次に、過去実績取得部12は、各種発電機における発電出力、または送電線、変電所を含む各種系統設備における電力潮流のいずれか1つ以上を含む過去の電力系統運用実績から構成される過去実績情報を情報記憶部30に含まれる過去実績DB33より取得する(ステップS303)。ここで、過去実績情報の取得方法として、使用者による分析ツール・ソフトウェアを用いた手動入力、制約拡張情報が格納されたファイルインポート、他システムとのDB連携のいずれかを採用して良い。
【0068】
図6は、過去実績情報33Aの一例を示す図である。
図6には、過去実績DB33に格納される過去実績情報33Aの一例を
図6に示す。過去実績情報33Aは、指定された過去情報のデータ期間、過去情報の取得日時、過去情報の対象設備、過去情報の対象エリアのいずれか1つ以上の条件を満たす過去情報を含む。
図6には、需給計画に含まれる各系統設備の過去実績情報33Aの一例として、複数の発電機(発電機a-1,a―2,b-1,b-2)に対する各時間インターバルの発電量を示している。過去実績情報に含まれる系統設備の種別として、発電機以外の各種設備、すなわち送電線、変電所、電力負荷、連系点ノードにおける電力潮流量を過去計画情報として取得して良い。
【0069】
(ステップS304)
次に、過去計画取得部13は、各種発電機における発電出力、または送電線、変電所を含む各種系統設備における電力潮流のいずれか1つ以上を含む過去時点において策定した電力系統運用計画から構成される過去計画情報を情報記憶部30に含まれる過去計画DB34より取得する(S304)。ここで、過去計画情報の取得方法として、使用者による分析ツール・ソフトウェアを用いた手動入力、制約拡張情報が格納されたファイルインポート、他システムとのDB連携のいずれかを採用して良い。
【0070】
図7Aは、過去計画情報34Aの一例(複数の発電機に対する各時間インターバルの発電量)を示す図である。
図7Bは、過去計画情報34Bの一例(各時間インターバルにおいて各制約項目の制約条件が有効あるいは無効のいずれであるか)を示す図である。
図7A、
図7Bは、過去計画DB34に格納される過去計画情報の一例を示す。
【0071】
図7Aには、需給計画に含まれる各系統設備の過去計画情報34Aの一例として、複数の発電機(発電機a-1,a―2,b-1,b-2)に対する各時間インターバルの発電量を示している。過去計画情報に含まれる系統設備の種別として、発電機以外の各種設備、すなわち送電線、変電所、電力負荷、連系点ノードにおける電力潮流量を過去計画情報として取得して良い。
【0072】
図7Bには、需給計画策定において加味された過去計画情報34Bの一例として、各時間インターバルにおいて各制約項目の制約条件(発電機グループAのkWh制約、発電機b-1の計画停止制約、発電機b-2の計画停止制約、発電機グルーブBのkWh制約)が有効あるいは無効のいずれであるかを示している。図において、チェックが付記されているものが有効を意味する。
【0073】
ここで、過去制約情報として、制約条件の有効無効状態に加え、各制約項目において設定された制約量、すなわち制約上限量、制約下限量、制約指定量を取得して良い。また、複数の系統設備に関わる制約項目については、各時間インターバルにおいて、いずれの系統設備が各制約項目の対象となっているかを過去制約情報として取得して良い。
【0074】
図7Bに示す発電機グループAのkWh制約の過去制約情報を用いて、
図4に示す制約項目1として反映する場合、発電機グループAが
図4の制約対象設備に、制約条件が有効となっている時間コマの情報が
図4の制約対象期間に、それぞれ設定される。また、
図7Bに記載された情報に加えて、発電機グループAのkWh制約の上限値が過去制約情報に含まれる場合は、左記情報に基づき
図4の制約上限量312が設定される。
【0075】
(ステップS305)
次に、過去実績評価部14は、過去実績情報に基づく評価指標を算出する(ステップS305)。ここで、評価指標は、ある一定期間の過去実績情報に基づき、平均値、最大値、最小値、度数分布(ヒストグラム)を例とした統計的指標値として算出される。
【0076】
図8は、過去実績情報33Aの評価指標情報35Aの一例を示す図である。
図8は、過去実績評価部14において算出される評価指標の一例を示す。
図8に示す過去実績の評価指標情報35Aの例では、評価指標の種別として、各時刻の発電機の出力を表す発電出力351、発電機が起動してから次に停止するまでの時間間隔を表す起動時間長352、発電機が停止してから次に起動するまでの時間間隔を表す停止時間長353、ある一定期間において発電機が起動または停止した回数を表す起動停止回数354、を算出した例を示す。
【0077】
これらの評価指標種別それぞれについて、平均値、最大値、最小値、度数分布(ヒストグラム)を例とした統計的指標値が過去実績情報33Aより算出される。ここで、各統計的指標値を算出する期間については、事前設定された固定値、本装置を使用するユーザによる手動設定などの手段により設定される。
【0078】
過去実績評価部14は、過去実績情報から算出された平均値、上限値、下限値、度数分布のいずれか1つ以上を含む統計的な評価指標値を用いて過去実績情報と過去制約情報を比較評価する。
【0079】
(ステップS306)
次に、ステップS305において過去実績評価部14により算出された過去実績情報33Aの評価指標に基づき、制約条件推定部15は、過去の電力系統運用において適用された制約条件を推定する(ステップS306)。
【0080】
ここで、過去実績情報33Aの評価指標および過去計画情報34A,34Bに含まれる過去制約情報31AP(制約情報31Aのうち過去制約情報)(
図9参照)を比較評価することにより、過去の電力系統運用において適用された制約条件を推定して良い。
【0081】
このとき、過去制約情報31AP(
図9参照)において規定される各制約項目について、過去実績情報33Aの評価指標との適合度を算出する。
図4の例に示す制約項目1は、制約の対象設備が発電機a-1、発電機a-2、発電機b-1の発電出力であり、制約の内容として制約下限量313が設定され、制約対象期間315が複数の時間刻みを含む一定期間(
図4の例では1.5年)である。このような制約項目の過去実績情報33Aとの適合度を算出する場合、制約対象期間315と同等の期間における発電量[Wh]の実績値EN
Rを過去実績情報33Aより抽出し、過去制約情報31APにおける電力量下限EN
lowと比較する。このとき、本制約項目における過去実績情報33Aとの適合度r
1を(1)式より算出して良い。ここで、α
lowは事前設定される固定パラメータとする。
【数1】
【0082】
同様に、制約項目として電力量上限EN
highが過去制約情報において規定される場合、本制約項目における過去実績情報との適合度r2を(2)式より算出して良い。ここで、α
highは事前設定される固定パラメータとする。
【数2】
【0083】
また、
図4の例に示す制約項目2は、制約の対象設備が送電線A-1、送電線A-2の電力潮流であり、制約の内容として電力潮流上限が設定され、制約対象期間が各時刻である。このような制約項目の過去実績情報との適合度を算出する場合、ある期間における電力潮流の平均値PN
Ravgを過去実績情報の評価指標より抽出し、過去制約情報における潮流上限PN
highと比較する。このとき、本制約項目における過去実績情報との適合度r
3を(3)式より算出して良い。ここで、β
highは事前設定される固定パラメータとする。
【数3】
【0084】
また、本制約項目に関する適合度算出の別手法として、ある期間における電力潮流の度数分布f(PN
R)を過去実績情報の評価指標より抽出し、過去制約情報における潮流上限PN
highと比較する。このとき、本制約項目における過去実績情報との適合度r
4を(4)式より算出して良い。ここで、f
%(PN
R)は、度数分布f(PN
R)より算出される相対度数、β
highは事前設定される固定パラメータとする。
【数4】
【0085】
また、
図4の例に示す制約項目3は、制約の対象設備が発電機a-1の発電出力であり、制約の内容として発電出力指定値が設定され、制約対象期間が各時刻である。このような制約項目の過去実績情報との適合度を算出する場合、ある期間における発電出力の過去実績値P
R(t)を過去実績情報より抽出し、過去制約情報における出力指定値P
fixと比較する。このとき、本制約項目における過去実績情報との適合度r5を(5)式より算出して良い。ここで、γは事前設定される固定パラメータ、g(P
R(t))は時刻tにおける適合度、nは適合度を評価する過去実績情報の時間幅あるいは時間コマ数、とする。
【数5】
【0086】
以上の事例に示す通り、過去制約情報において制約として規定される制約項目のそれぞれについて適合度rnを算出する。
【0087】
次に、前記において算出された適合度r
nを用いて推定制約情報31Eを算出する。
図9は、過去時点における推定制約情報31Eの一例を示す図である。
図9には、過去実績情報33Aの評価指標および過去計画情報34A,34Bに含まれる過去制約情報31APにより推定される推定制約情報31Eを示す。
【0088】
図9の例では、過去制約情報31APとして制約項目1、制約項目2、制約項目3が規定され、適合度の判定閾値として0.5が指定された例を示す。このとき、制約項目2については、過去実績情報より算出された適合度が0.3であり、判定閾値を下回っている。判定結果より、過去制約情報に格納された制約上限量300[MW]に対して情報更新が必要と判定され、
図8に示す過去実績情報33Aの評価指標、例えば過去の一定期間における対象設備の運用実績の平均値である400[MW]を新たな制約上限量として設定することを表す。
【0089】
ここで、制約項目1および制約項目3については、適合度が判定閾値を上回っているため、推定制約情報は過去制約情報と同等の内容になる。また、制約項目2については、適合度が判定閾値を下回っているため、過去の計画策定時点において想定した運用制約とは異なる運用制約が適用された影響が過去実績に表れていると推測される。
【0090】
このような場合は、推定制約情報31Eとして、過去制約情報31APと異なる値が設定される。ここで、制約項目2は制約上限に関する制約項目であるため、過去実績情報の評価指標における一定期間における上限値を推定制約情報として設定して良い。同様に、制約下限に関する制約項目について過去制約情報と異なる推定制約情報を設定する場合は、過去実績情報の評価指標における一定期間における下限値を推定制約情報として設定して良い。また、制約指定量に関する制約項目について過去制約情報と異なる推定制約情報を設定する場合は、過去実績情報の評価指標における一定期間における平均値または中央値を推定制約情報として設定して良い。
【0091】
(ステップS307)
次に、制約条件推定部15は、将来の電力系統運用において適用される将来推定制約情報を算出する(ステップS307)。ここで、過去計画策定時点、および過去計画策定時点より未来の1つ以上の時点における推定制約情報を用いて、将来の推定制約情報を算出して良い。
【0092】
図10Aは、将来期間における推定制約情報31Eの一例を示す図である。
図10Bは、
図10Aに示す過去推定制約情報31EP(太い破線)および将来推定制約情報31EF(太い実線)を時系列グラフ上に表示した一例を示す図である。
【0093】
図10Aには、制約条件推定部15において算出される将来推定制約情報31EFの一例を示す。
図10Aの例では、制約項目1、制約項目2、制約項目3、の各制約項目について、過去期間1、過去期間2、過去期間3の各期間において過去実績情報を用いて過去推定制約情報31EPを算出した結果を示す。さらに、それらの過去期間における過去推定制約情報31EPを用いて、将来期間4、将来期間5における将来推定制約情報31EFを算出した例を示す。
【0094】
ここで、過去期間における推定制約情報31Eを用いて、時系列方向の制約条件値の変更を自己回帰(AR)、移動平均(MA)、自己回帰移動平均(ARMA)などの線形時系列解析手法を用いてモデル化し、将来期間における将来推定制約情報を算出して良い。また、電力需要、電力市場取引、送電容量など電力系統運用に影響を及ぼす外部要因との相関関係を多変量線形回帰、非線形回帰などの手法を用いてモデル化し、上記の外部要因の将来予測値を上記のモデルの入力とすることで、将来期間における将来推定制約情報を算出して良い。
【0095】
(ステップS308)
次に、制約変更条件生成部16は、制約拡張情報32A,32B、過去実績情報33A、過去時点における過去推定制約情報31EP、および将来推定制約情報31EFを用いて、制約変更情報31Mを算出する(ステップS308)。
【0096】
図11Aは、将来時点における制約変更情報31Mを示す図であり、制約対象設備の増減、あるいは制約量の増減を対象とする場合の制約拡張情報32AMの一例を示す図である。
図11Bは、将来時点における制約変更情報31Mを示す図であり、制約対象期間の増減を対象とする場合の制約拡張情報32BMの一例を示す図である。
図11Aは、
図5Aの制約拡張情報32Aに対し、制約変更条件生成部16において算出される制約変更情報31Mの例である。また、
図11Bは、
図5Bの制約拡張情報32Bに対し、制約変更条件生成部16において算出される制約変更情報31Mの例である。なお、制約変更情報31Mには、過去制約情報からの変更点が明記されている。
【0097】
図11Aの制約対象設備の増減について、検証シナリオとして設定可能とする各制約項目の対象とする系統設備の組合せ条件を指定して良い。
図11Aでは、ベースとする制約条件における当該制約項目の対象となる系統設備の設備数に対する割合を用いて、制約対象設備として設定可能とする設備数の上下限を指定する例を示す。制約量の増減について、制約上限量、制約下限量、制約指定量のいずれかに対して、検証シナリオとして設定可能とする制約量の上下限および変動幅を指定して良い。
【0098】
図11Bの制約対象期間の増減について、検証シナリオとして設定可能とする各制約項目の適用対象期間を指定して良い。
図11Bでは、ベースとする制約条件における当該制約項目の適用対象期間に対して、当該期間の開始時間、終了時間の上下限値、変化幅、および期間種別を用いて、検証シナリオとして設定可能とする制約対象期間を指定する例を示す。ここで、期間種別として、年度、季節、曜日、平休日種別、時刻を設定して良い。
【0099】
過去時点における計画策定に用いられた制約拡張情報に対し、過去実績情報より統計的な指標を算出し、その算出結果を過去制約拡張情報に反映して良い。このとき、kWh制約に関連する制約項目については、過去計画情報を用いて一定期間の発電エネルギー積算値を算出し、複数の期間あるいは条件に対して左記のエネルギー積算値をそれぞれ算出し、取得した複数期間のエネルギー積算値の集合に対する統計情報、すなわち平均値、中央値、分散、標準偏差、事前規定した閾値に基づく分位点におけるサンプル値、のいずれかをkWh制約における制約上限または制約下限として、過去制約情報および過去制約拡張情報を設定して良い。
【0100】
同様に、計画停止に関連する制約については過去計画情報から事前規定した設備の停止期間を抽出し、上記と同様の積算値を用いた統計情報に基づき、作業停止制約における制約上限または制約下限として、過去制約情報および過去制約拡張情報を設定して良い。上記以外の制約項目について、各種制約に関連する過去計画情報の特徴量を算出し、統計分析を適用することにより、過去制約情報および過去制約拡張情報を設定して良い。
【0101】
また、過去時点における推定制約情報、および将来推定制約情報を用いて、過去制約拡張情報を設定して良い。一例として、将来時点における推定制約情報に含まれる制約上限値が過去時点において想定された過去制約情報の設定値よりも大きな値を取る場合、制約上限の緩和が将来的に想定される。このようなケースにおいて、
図11Aの例に示す「数量増減時の上限」の「制約上限量」の設定値200%をさらに増加させることにより、将来時点において制約上限が想定より緩和される条件を含む検証シナリオを設定することができる。
【0102】
制約変更条件生成部16は、過去時点および将来時点の推定制約情報に基づき、各制約項目の設定値の増減における上下限および変化幅、制約の考慮対象となる期間の増減における開始時間、終了時間、および期間長の上下限および変化幅、制約の考慮対象となる期間の年度、季節、曜日、平休日種別、時刻のいずれか1つ以上を含む制約変更情報31Mを生成する。
【0103】
(ステップS309)
次に、シナリオ生成部17は、推定制約情報と制約変更情報に基づき、検証シナリオ情報37を生成する(ステップS309)。ここで、推定制約情報31Eに含まれるそれぞれの制約項目について、ステップS308において算出した制約変更情報31Mに含まれるそれぞれの制約項目の変動範囲、すなわち変動上限、変動下限、変動幅に基づき生じ得る制約設定値の組合せを算出し、選択した全ての制約項目について左記制約設定値の組合せのいずれかを選択し、左記設定値の総ての組合せ条件を規定することで検証シナリオを生成して良い。
【0104】
図12は、検証シナリオ情報37の一例を示す図である。
図12は、シナリオ生成部17により生成される検証シナリオ情報37の一例を示す。
図12の例では、各行に示される個々の検証シナリオ(シナリオa―0、シナリオa―1、シナリオb-0)に対して、各制約項目371(制約項目1),372(制約項目2)の適用有無、各制約項目の制約対象設備、各制約項目の制約量、各制約項目の制約対象期間、およびシナリオ生成条件を検証シナリオ情報として格納している。
【0105】
図12の例では、
図10に示す制約項目であるkWh制約および計画停止制約を用いて、制約適用有無、制約対象設備、制約量、制約対象期間を
図11に示す制約拡張情報に基づく範囲内で設定し、各制約項目の制約条件を組合せることで検証シナリオを生成する例を示す。ここで、シナリオ生成条件373として、制約情報31Aおよび制約拡張情報32A、32Bに基づき、ベースとなる制約条件に対してどのような操作を加えて検証シナリオにおける制約条件を設定したか、の情報を格納して良い。
図12の例では、ベースの制約条件における制約量の増減、および複数の制約項目を
図11に示す制約拡張情報に基づく範囲内で設定した条件のいずれを組み合わせて当該検証シナリオにおける制約条件を設定したか、の情報をシナリオ生成条件として格納している。
【0106】
(ステップS310)
計画策定部18は、ステップS309において生成された検証シナリオを用いて、検証シナリオに基づく発電計画を算出する(ステップS310)。このとき、検証シナリオにより規定された制約条件を反映した最適化問題を以下の例に示す通り定式化し、最適化問題の計算結果に基づき、発電機の起動停止状態および発電出力を含む発電計画を算出して良い。ここで、下記の制約条件を満たした上で、目的関数を最小化する問題として最適化問題が定義される。
【0107】
ここで目的関数の一例は、以下の(6)式で表される。ここで、数式中の各記号は、t:時刻を表すインデックス、i:発電機を表すインデックス、C
i(p):発電機iの発電出力pに対する運用コスト、SUC
i:発電機iの起動コスト、D
i(r):発電機iの調整力拠出rに対する運用コスト、PC:制約違反に伴うペナルティコスト、をそれぞれ表す。
【数6】
【0108】
制約条件は以下のいずれか1つ以上を含む。(a)需給バランス制約:割当対象の電力需要が発電出力の合計と一致する、(b)発電機出力上下限制約:各発電機が出力下限から出力上限の範囲内の出力値を取る、(c)発電機出力変化速度制約:異なる時刻間の各発電機の出力値の変化幅が出力変化速度上限以内となる、(d)最小起動時間・最小停止時間制約:発電機の連続した起動時間または停止時間が規定された最小時間以上となるよう運用する、(e)指定起動・停止期間:運用者が指定した期間において発電機を強制的に停止または運転する、(f)運転予備力・必要調整力制約:実運用時と需給計画との電力需要の誤差を補正する発電機余力の必要量を確保する。
【0109】
ここで、検証シナリオにおいて規定されない制約条件についても、最適化問題における制約条件として設定して良い。このとき、過去計画情報より一定の期間を抽出し、当該期間において設定されている制約情報の中で、左記検証シナリオにおいて規定されている以外の制約条件を抽出し、その設定値を用いて最適化問題の制約条件を設定して良い。
【0110】
本実施形態の需給計画装置200および需給計画方法は、次の特徴を有する。
(1)各種の運用制約条件を満たした上で運用計画を策定する需給計画装置200であって、過去時点における運用実績の情報を含む過去実績情報33Aおよび過去時点において設定された制約情報の情報を含む過去制約情報31APに基づき、過去実績情報33Aと過去制約情報31APを比較評価する過去実績評価部14と、過去実績評価部14の過去実績評価結果に基づき、各種の運用制約条件の組み合わせとして規定される検証シナリオを生成するシナリオ生成部17と、を備える。これにより、実際の系統運用状態を反映した運用制約条件を加味した網羅的な検証シナリオの生成と処理時間の低減を両立することができる。
【0111】
すなわち、供給力不足による需給逼迫などの事前対策検証のため、各種の想定外変動を加味した複数シナリオを考慮した計画策定が必要となる。このとき、系統運用状況を考慮した網羅的なシナリオ検証に基づく事前対策とともに、実際の運用状態に伴い今後の系統運用において想定されるシナリオを随時更新する必要がある。ここで、機械的に検証シナリオを設定すると、目的に対してシナリオが過剰になることによる計画策定の計算時間増大、またはシナリオ不足により重要シナリオの検証漏れが生じる恐れがある。このため、実際の系統運用状態を反映した運用制約条件を加味した発電機起動停止計画・出力配分を策定することにより、網羅的な評価シナリオの生成と処理時間の低減を両立することができる。
【0112】
(2)前記(1)において、過去実績情報33Aは、指定された過去情報のデータ期間、過去情報の取得日時、過去情報の対象設備、過去情報の対象エリアのいずれか1つ以上の条件を満たす過去情報を含む。
【0113】
(3)前記(1)において、過去実績評価部14は、指定期間におけるkWh制約、指定期間における計画停止制約のいずれか1つ以上の制約項目を含む制約条件について過去実績情報33Aと過去制約情報31APを比較評価する。
【0114】
(4)前記(1)において、過去実績評価部14は、過去実績情報33Aから算出された平均値、上限値、下限値、度数分布のいずれか1つ以上を含む統計的な評価指標値を用いて過去実績情報33Aと過去制約情報31APを比較評価する。
【0115】
(5)前記(1)において、需給計画装置200は、さらに、過去実績評価部14において算出した過去実績情報33Aの評価値と過去制約情報31APに基づき、過去運用実績を反映した過去時点における運用制約を含む推定制約情報31Eを算出する制約条件推定部15を備え、シナリオ生成部17は、制約条件推定部15で算出された推定制約情報31Eに基づき、各種の運用制約条件の組み合わせとして規定される検証シナリオを生成する。
【0116】
(6)前記(5)において、制約条件推定部15は、算出された過去時点における推定制約情報31E((過去推定制約情報31EP)に基づき、将来時点の推定制約情報(将来推定制約情報31EF)を算出する。
【0117】
(7)前記(5)において、制約条件推定部15は、制約項目の過去実績情報との適合度を用いて、過去時点における運用制約を含む推定制約情報31Eを算出する。
【0118】
(8)前記(6)において、需給計画装置200は、過去時点および将来時点の推定制約情報31Eに基づき、各制約項目の設定値の増減における上下限および変化幅、制約の考慮対象となる期間の増減における開始時間、終了時間、および期間長の上下限および変化幅、制約の考慮対象となる期間の年度、季節、曜日、平休日種別、時刻のいずれか1つ以上を含む制約変更情報31Mを生成する制約変更条件生成部16をさらに備え、シナリオ生成部17は、推定制約情報31E及び制約変更情報31Mに基づき、推定制約情報31E及び制約変更情報31Mを加味した需給計画を策定する。
【0119】
(9)前記(6)において、需給計画装置200は、検証シナリオに含まれる制約情報に基づき、制約情報を加味した需給計画を策定する計画策定部18をさらに備える。
【0120】
(10)各種の運用制約条件を満たした上で運用計画を策定する需給計画方法であって、
過去時点における運用実績の情報を含む過去実績情報33Aおよび過去時点において設定された制約情報の情報を含む過去制約情報31APに基づき、過去実績情報33Aと過去制約情報31APを比較評価する過去実績評価ステップ(ステップS306参照)と、過去実績評価ステップにおいて算出した過去実績情報33Aの評価値と過去制約情報31APに基づき、過去運用実績を反映した過去時点における運用制約を含む推定制約情報31Eを算出する制約条件推定ステップ(ステップS307参照)と、制約条件推定ステップで算出された推定制約情報に基づき、各種の運用制約条件の組み合わせとして規定される検証シナリオを生成するシナリオ生成ステップ(ステップS309参照)と、検証シナリオに含まれる制約情報に基づき、前記制約情報を加味した需給計画を策定する計画策定ステップ(ステップS310参照)と、を有する。これにより、実際の系統運用状態を反映した運用制約条件を加味した網羅的な検証シナリオの生成と処理時間の低減を両立することができる。
【0121】
(11)前記(10)において、需給計画方法は、さらに、推定制約情報に基づき、各制約項目の設定値の増減における上下限および変化幅、制約の考慮対象となる期間の増減における開始時間、終了時間、および期間長の上下限および変化幅、制約の考慮対象となる期間の年度、季節、曜日、平休日種別、時刻のいずれか1つ以上を含む制約変更情報を生成する制約変更条件生成ステップ(ステップS308参照)を有し、シナリオ生成ステップにおいて、推定制約情報31E及び制約変更情報31Mに基づき、推定制約情報31E及び制約変更情報31Mを加味した需給計画を策定する。
【符号の説明】
【0122】
10 需給計画決定部
11 制約情報取得部
12 過去実績取得部
13 過去計画取得部
14 過去実績評価部
15 制約条件推定部
16 制約変更条件生成部
17 シナリオ生成部
18 計画策定部
21 計測装置
30 情報記憶部
31 制約情報DB
31A 制約情報
31AP 過去制約情報
31E 推定制約情報
31EF 将来推定制約情報
31EP 過去推定制約情報
31M 制約変更情報
32 制約拡張情報DB
32A,32B 制約拡張情報
32AM、32BM 制約拡張情報
33 過去実績DB
33A 過去実績情報
34 過去計画DB
34A,34B 過去計画情報
35A 評価指標情報
37 検証シナリオ情報
101 発電機
102 変電所
103 調相機器
104 電力負荷
105 外部電力系統
108 情報通信ネットワーク
200 需給計画装置