(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166981
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】鉄道車両取引支援システム、鉄道車両取引支援方法、鉄道車両取引支援プログラムおよびトレーサビリティ情報管理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/06 20230101AFI20241122BHJP
【FI】
G06Q30/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083458
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩和
【テーマコード(参考)】
5L030
5L049
【Fターム(参考)】
5L030BB21
5L049BB21
(57)【要約】
【課題】鉄道車両の取引で必要な情報を信頼性が確保された状態で売り手側から買い手側に提供することが可能な鉄道車両取引支援システムを得ること。
【解決手段】鉄道車両取引支援システム100は、鉄道事業者が保有する鉄道車両のトレーサビリティ情報および鉄道車両に搭載される機器のトレーサビリティ情報の少なくとも一方をブロックチェーン技術により分散管理するトレーサビリティ情報管理システム1と、売却対象車両の情報、および、売却対象機器の情報を取得して管理し、管理している情報を売却対象車両または売却対象機器の購入検討者からの要求に応じて購入検討者に提供する鉄道中古車市場管理システム2と、を含み、鉄道中古車市場管理システム2は、トレーサビリティ情報の要求を購入検討者から受けた場合、要求されたトレーサビリティ情報をトレーサビリティ情報管理システム1から取得して購入検討者に提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道事業者が保有する鉄道車両のトレーサビリティ情報および前記鉄道車両に搭載される機器のトレーサビリティ情報の少なくとも一方を含む情報をブロックチェーン技術により分散管理するトレーサビリティ情報管理システムと、
前記鉄道事業者が売却を検討している鉄道車両である売却対象車両の情報、および、前記鉄道車両に搭載される機器のうち、前記鉄道事業者が売却を検討している機器である売却対象機器の情報を各鉄道事業者から取得して管理し、管理している情報を前記売却対象車両または前記売却対象機器の購入検討者からの要求に応じて前記購入検討者に提供する鉄道中古車市場管理システムと、
を含み、
前記鉄道中古車市場管理システムは、前記売却対象車両または前記売却対象機器の前記トレーサビリティ情報の要求を前記購入検討者から受けた場合、要求されたトレーサビリティ情報を前記トレーサビリティ情報管理システムから取得して前記購入検討者に提供する、
ことを特徴とする鉄道車両取引支援システム。
【請求項2】
前記鉄道中古車市場管理システムは、前記売却対象車両の情報および前記売却対象機器の情報をブロックチェーン技術により分散管理する、
ことを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両取引支援システム。
【請求項3】
前記トレーサビリティ情報は、前記売却対象車両または前記売却対象機器の使用履歴の情報を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両取引支援システム。
【請求項4】
前記売却対象機器には、前記売却対象車両に搭載されている状態の前記機器と、前記売却対象車両に搭載されていない状態の前記機器とが含まれる、
ことを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両取引支援システム。
【請求項5】
前記売却対象車両の情報および前記売却対象機器の情報は価格の情報を含む、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の鉄道車両取引支援システム。
【請求項6】
鉄道車両の取引を支援する鉄道車両取引支援方法であって、
鉄道事業者が保有する鉄道車両のトレーサビリティ情報および前記鉄道車両に搭載される機器のトレーサビリティ情報の少なくとも一方を含む情報をブロックチェーン技術により分散管理する第1のステップと、
前記鉄道事業者が売却を検討している鉄道車両である売却対象車両の情報、および、前記鉄道車両に搭載される機器のうち、前記鉄道事業者が売却を検討している機器である売却対象機器の情報を各鉄道事業者から取得して管理する第2のステップと、
管理している情報を前記売却対象車両または前記売却対象機器の購入検討者からの要求に応じて前記購入検討者に提供する第3のステップと、
を含み、
前記第3のステップでは、前記売却対象車両または前記売却対象機器の前記トレーサビリティ情報の要求を前記購入検討者から受けた場合、要求されたトレーサビリティ情報を取得して前記購入検討者に提供する、
ことを特徴とする鉄道車両取引支援方法。
【請求項7】
鉄道車両または前記鉄道車両に搭載される機器の購入検討者からの購入希望条件を取得する第1のステップと、
前記購入希望条件に応じて、ブロックチェーン技術により分散管理された鉄道事業者が保有する鉄道車両および前記鉄道車両に搭載される機器の情報から、売却対象車両および売却対象機器の情報を前記購入検討者に提示する第2のステップと、
トレーサビリティ情報が必要な前記売却対象車両または前記売却対象機器の前記購入検討者からの指定を受け付ける第3のステップと、
前記購入検討者から指定された前記売却対象車両または前記売却対象機器のトレーサビリティ情報を、ブロックチェーン技術により分散管理されたトレーサビリティ情報の中から取得する第4のステップと、
前記第4のステップで取得した前記トレーサビリティ情報を前記購入検討者に提示する第5のステップと、
を含むことを特徴とする鉄道車両取引支援方法。
【請求項8】
鉄道車両または前記鉄道車両に搭載される機器の購入検討者からの購入希望条件を取得する第1のステップと、
前記購入希望条件に応じて、ブロックチェーン技術により分散管理された鉄道事業者が保有する鉄道車両および前記鉄道車両に搭載される機器の情報から、売却対象車両および売却対象機器の情報を前記購入検討者に提示する第2のステップと、
トレーサビリティ情報が必要な前記売却対象車両または前記売却対象機器の前記購入検討者からの指定を受け付ける第3のステップと、
前記購入検討者から指定された前記売却対象車両または前記売却対象機器のトレーサビリティ情報を、ブロックチェーン技術により分散管理されたトレーサビリティ情報の中から取得する第4のステップと、
前記第4のステップで取得した前記トレーサビリティ情報を前記購入検討者に提示する第5のステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする鉄道車両取引支援プログラム。
【請求項9】
鉄道事業者が売却を検討している鉄道車両である売却対象車両の情報、および、前記鉄道車両に搭載される機器のうち、前記鉄道事業者が売却を検討している機器である売却対象機器の情報を各鉄道事業者から取得して管理し、管理している情報を前記売却対象車両または前記売却対象機器の購入検討者からの要求に応じて前記購入検討者に提供する鉄道中古車市場管理システムとともに鉄道車両取引支援システムを構成するトレーサビリティ情報管理システムであって、
鉄道事業者が保有する鉄道車両のトレーサビリティ情報および前記鉄道車両に搭載される機器のトレーサビリティ情報の少なくとも一方を含む情報をブロックチェーン技術により分散管理し、
前記鉄道中古車市場管理システムが前記売却対象車両または前記売却対象機器の前記トレーサビリティ情報の要求を前記購入検討者から受けた場合、要求されたトレーサビリティ情報を前記鉄道中古車市場管理システムに出力する、
ことを特徴とするトレーサビリティ情報管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄道車両の売買を支援する鉄道車両取引支援システム、鉄道車両取引支援方法、鉄道車両取引支援プログラムおよびトレーサビリティ情報管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道事業者は、保有する鉄道車両を、使用を開始してからの経過時間、経年劣化の度合いなどに基づいて、適宜新しい車両と入れ替える。入れ替え対象となり使用を終了する車両は、運用履歴、故障履歴、劣化の度合いなどに応じて、廃棄されたり、他の鉄道事業者に売却されたりする。
【0003】
中古車両を売買する際の価格は、車両の状態および車両に搭載された各種機器の状態などに基づき、売り手側の鉄道事業者より決定される。車両の買い手側の鉄道事業者は、購入を希望する車両の価格が適正か否かを、売り手側の鉄道事業者より提供される情報に基づいて判断する。公正な取引を実現するためには売り手側から買い手側に提供される情報の信頼性の確保が重要となる。
【0004】
このような課題に対し、特許文献1には、ブロックチェーンを構成する台帳に自動車の車両の価値に関わる各種情報を登録して管理することで公正な取引を実現する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術は、自動車の売買市場を前提とされており、運用中の全ての車両を対象として情報が公開される。鉄道車両の場合、運用中の車両の全てが売買の対象となるのではなく、一部が対象となることが一般的であり、本来公開する必要が無い情報、すなわち、廃棄予定の車両に関する情報も公開されてしまう問題があった。また、鉄道車両の取引においては、車両および車両に搭載される機器の使用履歴の情報が重要となる。車両および機器が、いつ頃、何処でどのように使用されたかといった情報を知ることにより、買い手側は、車両および機器の劣化状態を把握することが可能となり、価格が適正であるか否かの判断、すなわち、車両を購入するか否かの判断が可能となる。特許文献1に記載の技術は、公開する情報を限定するといったことは行わないため、特許文献1に記載の技術を鉄道車両の取引に適用した場合、使用履歴情報以外の情報といった、鉄道車両の取引では必要とされない情報も公開されてしまう懸念がある。情報管理の観点から、公開される情報は、取引において必要な情報に限定されることが望ましい。取引を行う上で不要な情報までもが開示されてしまう場合、情報漏洩の懸念から市場への参加が消極的となり、中古車両が有効利用される機会が失われるおそれがある。
【0007】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、鉄道車両の取引で必要な情報を信頼性が確保された状態で売り手側から買い手側に提供することが可能な鉄道車両取引支援システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示にかかる鉄道車両取引支援システムは、鉄道事業者が保有する鉄道車両のトレーサビリティ情報および鉄道車両に搭載される機器のトレーサビリティ情報の少なくとも一方を含む情報をブロックチェーン技術により分散管理するトレーサビリティ情報管理システムと、鉄道事業者が売却を検討している鉄道車両である売却対象車両の情報、および、鉄道車両に搭載される機器のうち、鉄道事業者が売却を検討している機器である売却対象機器の情報を各鉄道事業者から取得して管理し、管理している情報を売却対象車両または売却対象機器の購入検討者からの要求に応じて購入検討者に提供する鉄道中古車市場管理システムと、を含み、鉄道中古車市場管理システムは、売却対象車両または売却対象機器のトレーサビリティ情報の要求を購入検討者から受けた場合、要求されたトレーサビリティ情報をトレーサビリティ情報管理システムから取得して購入検討者に提供することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、鉄道車両の取引で必要な情報を信頼性が確保された状態で売り手側から買い手側に提供することが可能な鉄道車両取引支援システムを実現できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態にかかる鉄道車両取引支援システムの構成および動作の概要を示す図
【
図2】実施の形態にかかる鉄道車両取引支援システムの構成例を示す図
【
図4】検修情報管理部が管理する検修情報の一例を示す図
【
図5】トレーサビリティ情報管理装置の構成例を示す図
【
図6】トレーサビリティ情報管理部が管理するトレーサビリティ情報の一例を示す図
【
図8】市場公開情報管理部が管理する市場公開情報の一例を示す図
【
図9】トレーサビリティ情報管理装置、市場公開情報管理装置および検修管理システムのそれぞれを実現するハードウェアの一例を示す図
【
図10】検修管理システムの動作の一例、具体的には、検修情報を取得する動作の一例を示すフローチャート
【
図11】市場公開情報管理装置の動作の一例を示すフローチャート
【
図12】トレーサビリティ情報管理装置の動作の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示の実施の形態にかかる鉄道車両取引支援システム、鉄道車両取引支援方法、鉄道車両取引支援プログラムおよびトレーサビリティ情報管理システムを図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
実施の形態.
図1は、実施の形態にかかる鉄道車両取引支援システム100の構成および動作の概要を示す図である。
【0013】
鉄道車両取引支援システム100は、トレーサビリティ情報管理システム1と、鉄道中古車市場管理システム2と、を含む。
【0014】
トレーサビリティ情報管理システム1は、複数の鉄道事業者(
図1の例では鉄道事業者A,鉄道事業者B)のそれぞれが有する検修管理システム3からトレーサビリティ情報を取得して管理する。各鉄道事業者が有する検修管理システム3は、鉄道事業者が保有する各鉄道車両に搭載された機器の検査、修理などを行う検修業務の計画作成、検修業務のスケジュール管理、検修業務にかかる作業の実施結果の管理などを行う。検修管理システム3が管理する検修業務にかかる作業の実施結果には、機器がどの車両にいつからいつまで設置されていたか、いつからいつまで倉庫に保管されていたか、といった、機器の設置および取外しの履歴である使用履歴を示すトレーサビリティ情報が含まれる。トレーサビリティ情報が示す使用履歴には、機器が設置された車両が運用されていた路線の情報も含まれる。また、使用履歴から算出される機器の累積稼働時間がトレーサビリティ情報に含まれていてもよい。機器の累積稼働時間は設置された車両ごとの累積稼働時間としてもよいし、機器が設置された車両が運用されていた路線ごとの累積稼働時間としてもよい。このトレーサビリティ情報は、検修管理システム3で管理されるが、上述したようにトレーサビリティ情報管理システム1でも管理される。トレーサビリティ情報管理システム1は、ブロックチェーン技術を使用して複数の装置の間でトレーサビリティ情報を分散管理することで、管理する情報の改竄を防止してトレーサビリティ情報の信頼性を確保する。
【0015】
鉄道中古車市場管理システム2は、売り手となる各鉄道事業者が売却を検討している鉄道車両である売却対象車両の情報、鉄道車両に搭載される機器のうち、各鉄道事業者が売却を検討している機器である売却対象機器の情報などを各鉄道事業者から取得して管理する。また、鉄道中古車市場管理システム2は、管理している情報を鉄道車両の中古車の購入を検討している鉄道事業者などの購入検討者に提供する。また、鉄道中古車市場管理システム2は、買い手となる鉄道事業者により購入を希望する車両が指定されるか機器が指定された場合、指定された車両に搭載されている各機器のトレーサビリティ情報、または、指定された機器のトレーサビリティ情報をトレーサビリティ情報管理システム1から取得して購入検討者に提供する。なお、鉄道中古車市場管理システム2は、鉄道車両を1編成単位で売却する場合の情報に加えて、1車両を単位として売却する場合の情報、車両に搭載される1つの機器を単位として売却する場合の情報を管理し、これらの情報を購入検討者に提供することで、1車両単位での売買、1機器単位での売買を可能としてもよい。鉄道中古車市場管理システム2は、トレーサビリティ情報管理システム1と同様にブロックチェーン技術を使用して情報を管理するようにしてもよい。本実施の形態では、鉄道中古車市場管理システム2もブロックチェーン技術を使用して情報を分散管理するものとして説明を行う。
【0016】
図2は、実施の形態にかかる鉄道車両取引支援システム100の構成例を示す図である。
【0017】
鉄道車両取引支援システム100は、各鉄道事業者が有するトレーサビリティ情報管理装置10により構成されるトレーサビリティ情報管理システム1と、各鉄道事業者が有する市場公開情報管理装置20により構成される鉄道中古車市場管理システム2と、を備える。
【0018】
各鉄道事業者が有するトレーサビリティ情報管理装置10は、通信ネットワークを介して他のトレーサビリティ情報管理装置10と接続され、ブロックチェーン技術を用いて、検修管理システム3から取得したトレーサビリティ情報を他のトレーサビリティ情報管理装置10とともに分散管理する。
【0019】
各鉄道事業者が有する市場公開情報管理装置20は、通信ネットワークを介して他の市場公開情報管理装置20と接続され、ブロックチェーン技術を用いて、売却対象車両の情報を他の市場公開情報管理装置20とともに分散管理する。
【0020】
鉄道中古車市場管理システム2には、鉄道中古車市場管理システム2で管理されている情報を鉄道車両の購入または鉄道車両に搭載される機器の購入を検討している鉄道事業者(以下、購入検討者と称する)が検索するための検索装置200が接続される。鉄道中古車市場管理システム2は、検索装置200からの要求に応じて、要求で指定された購入希望条件に合う売却対象車両または売却対象機器の情報を検索装置200に提供する。また、鉄道中古車市場管理システム2は、検索装置200から売却対象車両または売却対象機器のトレーサビリティ情報が要求された場合、要求されたトレーサビリティ情報をトレーサビリティ情報管理システム1から取得して検索装置200に提供する。なお、鉄道事業者が有する市場公開情報管理装置20に検索装置200が直接接続される形態であってもよい。
【0021】
図3は、検修管理システム3の構成例を示す図である。検修管理システム3は、検修情報取得部31と、検修情報管理部32と、トレーサビリティ情報抽出部33とを備える。
【0022】
検修情報取得部31は、外部から、例えば、検修業務の担当者から、検修業務に関する情報を取得する。検修業務に関する情報の例は、検修業務のスケジュール、検修業務の作業内容、検修業務にかかる作業の実施結果などである。情報の取得方法については問わない。担当者に情報を手入力させることで取得してもよいし、他の装置から取得してもよい。ここでの他の装置とは、パーソナルコンピュータ、持ち運び可能な記憶装置、などが該当する。また、通信ネットワークを介して情報を取得する形態であってもよい。
【0023】
検修情報管理部32は、検修情報取得部31が取得した検修業務に関する情報(以下、この情報を検修情報と称する)を管理する。検修情報管理部32は、例えば、検修情報を台帳に登録して管理する。
図4は、検修情報管理部32が管理する検修情報321の一例を示す図である。
図4に示す検修情報321において、「ID」は、鉄道車両に搭載される機器の識別情報である。「版」は、1つのIDと対応付けられ、対応付けられたIDの機器に対して実行された検査、修理などの情報が検修情報321に追加されるごとに繰り上がる。「編成番号」は、機器が搭載された車両が含まれる編成の識別番号、「車両番号」は、機器が搭載された車両の編成内における識別番号である。なお、機器が車両に搭載されていない場合、「編成番号」には機器が存在する場所、例えば、保管場所の情報が登録される。故障発生に伴い修理に出されている場合は製造元、販売会社などの情報が登録される。「載せ替え日」は、機器が車両に取り付けられた日または機器が車両から取り外された日である。機器は、車両から取り外された場合、そのまま直ぐに他の車両に取り付けられる(再搭載される)場合もあるし、他の車両に再搭載されることなく倉庫などで保管される場合もある。
図4に示す例では、ID=1の機器である台車1について、2020/8/1に編成番号=A1001、車両番号=2の車両に取り付けられたこと(版=1)、この車両から2021/5/1に取り外されて編成番号=A1001、車両番号=1の車両に取り付けられたこと(版=2)、この車両から2022/6/1に取り外されて他の車両に再搭載されることなく倉庫に保管されたこと(版=3)を示している。検修情報321においては「編成番号」、「車両番号」および「載せ替え日」がトレーサビリティ情報に該当する。故障履歴がある機器のトレーサビリティ情報には、機器の故障情報(故障の内容、故障の発生日時、などの情報)、修理情報(修理の内容、修理を行った期間、などの情報)も含まれる。
【0024】
トレーサビリティ情報抽出部33は、検修情報管理部32が管理する検修情報321からトレーサビリティ情報を抽出してトレーサビリティ情報管理装置10に出力する。トレーサビリティ情報抽出部33は、例えば、検修情報管理部32が管理する検修情報321の台帳にトレーサビリティ情報が追加登録された場合に、追加登録されたトレーサビリティ情報を台帳から抽出してトレーサビリティ情報管理装置10に出力する。
【0025】
なお、トレーサビリティ情報が含まれる構成の検修情報321を
図4で例示したが、検修管理システム3が管理する検修情報には、トレーサビリティ情報が含まれない構成のものもある。例えば、検修業務のスケジュール、検修業務の作業内容、検修業務の作業担当者などがこれに該当する。
【0026】
図5は、トレーサビリティ情報管理装置10の構成例を示す図である。トレーサビリティ情報管理装置10は、トレーサビリティ情報登録部11と、トレーサビリティ情報管理部12と、要求受付部13と、トレーサビリティ情報出力部14とを備える。
【0027】
トレーサビリティ情報登録部11は、検修管理システム3から出力されるトレーサビリティ情報をトレーサビリティ情報管理部12が管理する台帳に登録する。このとき、トレーサビリティ情報登録部11は、トレーサビリティ情報管理システム1を構成する他のトレーサビリティ情報管理装置10のトレーサビリティ情報登録部11との間で、ブロックチェーン実現のための処理を実施する。すなわち、トレーサビリティ情報登録部11は、トレーサビリティ情報が格納されたブロックチェーンのブロックを生成し、生成したブロックをトレーサビリティ情報管理部12が管理する台帳に登録する。ブロックチェーンは公知の技術であるため、ブロックを生成する処理の詳細については説明を省略する。
【0028】
トレーサビリティ情報管理部12は、トレーサビリティ情報が格納されたブロックを台帳に登録して管理する。すなわち、トレーサビリティ情報管理部12は、トレーサビリティ情報が格納されたブロックが登録される台帳を管理する。
図6は、トレーサビリティ情報管理部12が管理するトレーサビリティ情報121の一例を示す図である。
図6に示すように、トレーサビリティ情報121は、
図4に示す検修情報321に含まれる情報の中の「ID」、「版」、「編成番号」、「車両番号」および「載せ替え日」を含む。トレーサビリティ情報は、機器の使用履歴の情報に加えて、機器の故障履歴および修理履歴の情報をさらに含んでいてもよい。
【0029】
要求受付部13は、トレーサビリティ情報管理装置10に対する外部からの各種要求、例えば、トレーサビリティ情報管理部12が管理するトレーサビリティ情報の提供の要求を受け付ける。
【0030】
トレーサビリティ情報出力部14は、トレーサビリティ情報管理部12が管理するトレーサビリティ情報の提供の要求を要求受付部13が受け付けた場合に、要求されたトレーサビリティ情報をトレーサビリティ情報管理部12が管理する台帳から抽出して要求元に向けて出力する。
【0031】
なお、トレーサビリティ情報管理装置10で構成されるトレーサビリティ情報管理システム1は、各鉄道事業者の検修管理システム3で管理されている全てのトレーサビリティ情報を管理する。すなわち、トレーサビリティ情報管理システム1が管理するトレーサビリティ情報には、売却対象機器ではない機器のトレーサビリティ情報も含まれることになる。売却対象機器ではない機器のトレーサビリティ情報も管理対象とすることで、全ての機器のトレーサビリティ情報の改竄を防止し、売却対象機器ではない機器が将来的に売却対象となる場合でも、売却時点のトレーサビリティ情報の信頼性を確保して公正な取引の実現が可能となる。
【0032】
図7は、市場公開情報管理装置20の構成例を示す図である。市場公開情報管理装置20は、市場公開情報登録部21と、市場公開情報管理部22と、要求受付部23と、トレーサビリティ情報取得部24と、情報提供部25とを備える。
【0033】
市場公開情報登録部21は、鉄道中古車市場管理システム2が鉄道車両の購入検討者に公開する売却対象車両の情報または売却対象機器の情報を市場公開情報管理部22に登録する。このとき、市場公開情報登録部21は、鉄道中古車市場管理システム2を構成する他の市場公開情報管理装置20の市場公開情報登録部21との間で、ブロックチェーン実現のための処理を実施する。すなわち、市場公開情報登録部21は、売却対象車両または売却対象機器の情報である市場公開情報が格納されたブロックチェーンのブロックを生成し、生成したブロックを市場公開情報管理部22が管理する台帳に登録する。市場公開情報は、例えば、鉄道事業者の担当者が、図示を省略したマウス、キーボードなどの入力装置を用いて入力する。
【0034】
市場公開情報管理部22は、市場公開情報が格納されたブロックを台帳に登録して管理する。すなわち、市場公開情報管理部22は、市場公開情報が格納されたブロックが登録される台帳を管理する。
図8は、市場公開情報管理部22が管理する市場公開情報の一例を示す図である。
図8に示す例では、編成情報221、車両情報222および機器情報223が市場公開情報として市場公開情報管理部22に登録される。編成情報221は、編成単位で売買を行う場合の売却対象の編成の情報であり、売却対象編成がどの路線で運用されていたどの編成であるかを示す。車両情報222は、車両単位で売買を行う場合の売却対象の車両の情報であり、売却対象車両がどの路線で運用されていたどの編成のどの車両であるかを示す。機器情報223は、機器単位で売買を行う場合の売却対象機器の情報であり、売却対象機器がどの路線で運用されていたどの編成のどの車両で使用されていた機器であるかを示す。なお、市場公開情報である編成情報221、車両情報222および機器情報223は、売却対象車両の価格、売却対象機器の価格、売却対象車両の売却可能時期、などの情報をさらに含んでいてもよい。
【0035】
要求受付部23は、市場公開情報管理装置20に対する外部からの各種要求、例えば、検索装置200からの、市場公開情報管理部22が管理する市場公開情報の提供の要求を受け付ける。
【0036】
トレーサビリティ情報取得部24は、市場公開情報管理部22が管理する市場公開情報に対応する機器のトレーサビリティ情報を外部に提供する必要がある場合に、トレーサビリティ情報管理システム1からトレーサビリティ情報を取得する。
【0037】
情報提供部25は、市場公開情報管理部22が管理する市場公開情報、トレーサビリティ情報取得部24が取得したトレーサビリティ情報を、外部に提供する。例えば、検索装置200に提供する。
【0038】
つづいて、トレーサビリティ情報管理装置10、市場公開情報管理装置20および検修管理システム3のハードウェア構成について説明する。
図9は、トレーサビリティ情報管理装置10、市場公開情報管理装置20および検修管理システム3のそれぞれを実現するハードウェアの一例を示す図である。
【0039】
トレーサビリティ情報管理装置10、市場公開情報管理装置20および検修管理システム3のそれぞれは、
図9に示すプロセッサ91、メモリ92、表示装置93、入力装置94および通信装置95により実現することができる。
【0040】
プロセッサ91の例は、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)ともいう)、システムLSI(Large Scale Integration)などである。メモリ92の例は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリー、等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスクなどである。表示装置93の例は、液晶モニタ、ディスプレイなどである。入力装置94の例は、マウス、キーボード、タッチパネルなどである。通信装置95の例は、ネットワークインタフェースカードなどである。
【0041】
例えば、トレーサビリティ情報管理装置10のトレーサビリティ情報登録部11、トレーサビリティ情報管理部12、要求受付部13およびトレーサビリティ情報出力部14は、これらの各部として動作するためのプログラムをプロセッサ91が実行することにより実現される。トレーサビリティ情報登録部11、トレーサビリティ情報管理部12、要求受付部13およびトレーサビリティ情報出力部14として動作するためのプログラムはメモリ92に予め格納されている。プロセッサ91は、上記プログラムをメモリ92から読み出して実行することにより、トレーサビリティ情報登録部11、トレーサビリティ情報管理部12、要求受付部13およびトレーサビリティ情報出力部14として動作する。
【0042】
なお、メモリ92に格納される、トレーサビリティ情報登録部11、トレーサビリティ情報管理部12、要求受付部13およびトレーサビリティ情報出力部14として動作するためのプログラムは、例えば、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROMなどの記憶媒体に書き込まれた状態でユーザ等に提供される形態であってもよいし、ネットワークを介してユーザ等に提供される形態であってもよい。
【0043】
また、
図9に示すプロセッサ91、メモリ92、表示装置93、入力装置94および通信装置95は、電子計算機を構成するハードウェアであってもよい。すなわち、トレーサビリティ情報管理装置10は、電子計算機と、電子計算機で実行されるプログラムとで実現される形態であってもよい。複数の電子計算機が連携して動作することでトレーサビリティ情報管理装置10の各機能が実現される形態であってもよい。
【0044】
図9に示すプロセッサ91、メモリ92、表示装置93、入力装置94および通信装置95によりトレーサビリティ情報管理装置10を実現する場合について説明したが、市場公開情報管理装置20および検修管理システム3のそれぞれについても同様に、プロセッサ91、メモリ92、表示装置93、入力装置94および通信装置95により実現可能である。
【0045】
つづいて、トレーサビリティ情報管理装置10、市場公開情報管理装置20および検修管理システム3の動作例について説明する。
【0046】
まず、検修管理システム3の動作を説明する。
図10は、検修管理システム3の動作の一例、具体的には、検修情報を取得する動作の一例を示すフローチャートである。
【0047】
検修管理システム3は、検修情報を取得し(ステップS11)、取得した検修情報を台帳に登録する(ステップS12)。具体的には、検修情報取得部31が、検修業務の担当者などから検修情報を取得し、検修情報管理部32が保持する検修情報管理台帳に登録する。
【0048】
検修管理システム3は、次に、ステップS11で取得した検修情報にトレーサビリティ情報が含まれているかを確認し(ステップS13)、トレーサビリティ情報が含まれない場合(ステップS13:No)、動作を終了する。例えば、取得した検修情報が検修業務の作業内容である場合はトレーサビリティ情報が含まれない。また、取得した検修情報が
図4に示す検修情報321の「ID=1,版=3」の行に記載の情報である場合はトレーサビリティ情報が含まれる。トレーサビリティ情報が含まれる場合(ステップS13:Yes)、トレーサビリティ情報をトレーサビリティ情報管理装置10へ出力する(ステップS14)。具体的には、トレーサビリティ情報抽出部33が、ステップS12で検修情報管理台帳に登録された検修情報からトレーサビリティ情報を抽出し、トレーサビリティ情報管理装置10に出力する。検修管理システム3は、ステップS14の処理が完了すると動作を終了する。
【0049】
このように、検修管理システム3は、検修情報を取得すると、トレーサビリティ情報が含まれているかを確認し、トレーサビリティ情報が含まれている場合にはトレーサビリティ情報をトレーサビリティ情報管理装置10へ送信する。
【0050】
次に、鉄道中古車市場管理システム2を構成する市場公開情報管理装置20の動作について説明する。
図11は、市場公開情報管理装置20の動作の一例、具体的には、鉄道中古車市場管理システム2の利用者からの要求に応じて、利用者に提供するトレーサビリティ情報をトレーサビリティ情報管理システム1から取得する動作の一例を示すフローチャートである。なお、市場公開情報管理装置20は、売却対象車両および売却対象機器の情報を取得済みであるものとする。
【0051】
市場公開情報管理装置20は、まず、売却対象車両および売却対象機器の情報を購入検討者に提示し(ステップS21)、トレーサビリティ情報が必要な機器の指定を受け付ける(ステップS22)。具体的には、ステップS21では、情報提供部25が、購入検討者からの要求に応じて、市場公開情報管理部22で管理されている売却対象車両および売却対象機器の情報を購入検討者に提示する。なお、購入検討者からの要求は要求受付部23が受け付ける。情報提供部25は、例えば、購入検討者が有する検索装置200へ売却対象車両および売却対象機器の情報を送信し、検索装置200を介して購入検討者にこれらの情報を提示する。売却対象車両および売却対象機器の情報は、
図8に示した編成情報221、車両情報222および機器情報223である。情報提供部25が購入検討者に提示する情報は、購入検討者より条件の指定を受け付けるようにして、指定された条件を満たすものに絞り込んでもよい。条件の指定は要求受付部23が受け付ける。ステップS22では、要求受付部23が、トレーサビリティ情報の確認を希望する機器の指定を、例えば検索装置200を介して購入検討者より受け付ける。
【0052】
市場公開情報管理装置20は、次に、ステップS22で購入検討者により指定された機器のトレーサビリティ情報をトレーサビリティ情報管理システム1から取得する(ステップS23)。具体的には、トレーサビリティ情報取得部24が、購入検討者により指定された機器のトレーサビリティ情報をトレーサビリティ情報管理システム1から取得する。市場公開情報管理装置20は、次に、取得したトレーサビリティ情報を購入検討者に提示する(ステップS24)。具体的には、情報提供部25が、例えば、トレーサビリティ情報を購入検討者が有する検索装置200へ送信し、検索装置200を介して購入検討者にこれらの情報を提示する。
【0053】
このように、鉄道中古車市場管理システム2を構成する市場公開情報管理装置20は、管理している売却対象車両の情報および売却対象機器の情報を購入検討者に提示する。また、市場公開情報管理装置20は、購入検討者から機器のトレーサビリティ情報の提示要求を受けた場合、提示要求で指定された機器のトレーサビリティ情報をトレーサビリティ情報管理システム1から取得して購入検討者に提示する。
【0054】
なお、市場公開情報管理装置20が購入検討者から機器のトレーサビリティ情報の提示要求を受け付ける単位は、例えば、機器単位、車両単位、または、編成単位とする。機器単位での提示要求受付では、1または複数の機器の指定を購入検討者より受け付ける。この場合、市場公開情報管理装置20は、指定された各機器のトレーサビリティ情報をトレーサビリティ情報管理システム1から取得し、購入検討者に提示する。また、車両単位での提示要求受付では、1または複数の車両の指定を購入検討者より受け付ける。この場合、市場公開情報管理装置20は、指定された各車両に搭載されている機器それぞれのトレーサビリティ情報をトレーサビリティ情報管理システム1から取得し、購入検討者に提示する。また、編成単位での提示要求受付では、1または複数の編成の指定を購入検討者より受け付ける。この場合、市場公開情報管理装置20は、指定された各編成に含まれる各車両のそれぞれに搭載されている機器それぞれのトレーサビリティ情報をトレーサビリティ情報管理システム1から取得し、購入検討者に提示する。
【0055】
次に、トレーサビリティ情報管理システム1を構成するトレーサビリティ情報管理装置10の動作について説明する。
図12は、トレーサビリティ情報管理装置10の動作の一例、具体的には、検修管理システム3から受け取ったトレーサビリティ情報を台帳に登録して管理する動作、および、鉄道中古車市場管理システム2からの要求に応じて、要求で指定された機器のトレーサビリティ情報を鉄道中古車市場管理システム2へ送信する動作の一例を示すフローチャートである。
【0056】
トレーサビリティ情報管理装置10は、まず、検修管理システム3からトレーサビリティ情報の入力があるかを確認し(ステップS31)、入力がある場合(ステップS31:Yes)、トレーサビリティ情報を台帳に登録する(ステップS32)。具体的には、検修管理システム3からのトレーサビリティ情報の入力の有無をトレーサビリティ情報登録部11が確認し、トレーサビリティ情報の入力がある場合、トレーサビリティ情報登録部11は、トレーサビリティ情報を、ブロックチェーン技術により情報の改ざん防止が実現された台帳であって、トレーサビリティ情報管理部12で管理されている台帳に登録する。
【0057】
トレーサビリティ情報管理装置10は、検修管理システム3からのトレーサビリティ情報の入力が無い場合(ステップS31:No)、または、ステップS32の処理を実行した場合、鉄道中古車市場管理システム2からトレーサビリティ情報の要求があるかを確認する(ステップS33)。トレーサビリティ情報管理装置10は、トレーサビリティ情報の要求が無い場合(ステップS33:No)、ステップS31に戻り、動作を継続する。
【0058】
トレーサビリティ情報管理装置10は、トレーサビリティ情報の要求がある場合(ステップS33:Yes)、要求されたトレーサビリティ情報を鉄道中古車市場管理システム2に出力する(ステップS34)。具体的には、要求受付部13が、ステップS33でトレーサビリティ情報の要求の有無を確認し、要求がある場合、トレーサビリティ情報出力部14が、要求された機器のトレーサビリティ情報をトレーサビリティ情報管理部12から抽出して鉄道中古車市場管理システム2へ出力する。
【0059】
このように、トレーサビリティ情報管理システム1を構成するトレーサビリティ情報管理装置10は、検修管理システム3からトレーサビリティ情報が入力されると、この情報をブロックチェーン技術により情報の改ざん防止が実現された台帳に登録して管理する。また、トレーサビリティ情報管理装置10は、鉄道中古車市場管理システム2からトレーサビリティ情報の要求を受けた場合、要求されたトレーサビリティ情報を鉄道中古車市場管理システム2に出力する。なお、
図12に示したステップS31~S34の処理は、ステップS33およびS34の処理を先に実行し、その後にステップS31およびS32の処理を実行するようにしてもよい。
【0060】
以上説明したように、鉄道車両取引支援システム100は、鉄道事業者が保有する鉄道車両に搭載される機器のトレーサビリティ情報をブロックチェーンにより分散管理するトレーサビリティ情報管理システム1と、鉄道事業者が売却を検討している鉄道車両である売却対象車両の情報および鉄道事業者が売却を検討している機器である売却対象機器の情報をブロックチェーンにより分散管理する鉄道中古車市場管理システム2とを含む。鉄道中古車市場管理システム2は、管理している情報を、鉄道車両の中古車または鉄道車両に搭載される機器の中古品の購入を検討している購入検討者からの要求に応じて提供し、また、購入検討者が購入を検討する機器のトレーサビリティ情報を要求する場合、要求されたトレーサビリティ情報をトレーサビリティ情報管理システム1から取得して購入検討者に提示する。これにより、鉄道車両の購入検討者に公開する情報を売却対象車両に搭載された機器または売却対象機器のトレーサビリティ情報に限定することができ、取引の際に必要な情報以外の情報が公開されてしまうのを防止できる。また、ブロックチェーン技術を使用して情報を管理するため、情報の改竄を防止し、信頼性が確保された状態で購入検討者に情報を提供することができる。
【0061】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【0062】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0063】
(付記1)
鉄道事業者が保有する鉄道車両のトレーサビリティ情報および前記鉄道車両に搭載される機器のトレーサビリティ情報の少なくとも一方を含む情報をブロックチェーン技術により分散管理するトレーサビリティ情報管理システムと、
前記鉄道事業者が売却を検討している鉄道車両である売却対象車両の情報、および、前記鉄道車両に搭載される機器のうち、前記鉄道事業者が売却を検討している機器である売却対象機器の情報を各鉄道事業者から取得して管理し、管理している情報を前記売却対象車両または前記売却対象機器の購入検討者からの要求に応じて前記購入検討者に提供する鉄道中古車市場管理システムと、
を含み、
前記鉄道中古車市場管理システムは、前記売却対象車両または前記売却対象機器の前記トレーサビリティ情報の要求を前記購入検討者から受けた場合、要求されたトレーサビリティ情報を前記トレーサビリティ情報管理システムから取得して前記購入検討者に提供する、
ことを特徴とする鉄道車両取引支援システム。
(付記2)
前記鉄道中古車市場管理システムは、前記売却対象車両の情報および前記売却対象機器の情報をブロックチェーン技術により分散管理する、
ことを特徴とする付記1に記載の鉄道車両取引支援システム。
(付記3)
前記トレーサビリティ情報は、前記売却対象車両または前記売却対象機器の使用履歴の情報を含む、
ことを特徴とする付記1または2に記載の鉄道車両取引支援システム。
(付記4)
前記売却対象機器には、前記売却対象車両に搭載されている状態の前記機器と、前記売却対象車両に搭載されていない状態の前記機器とが含まれる、
ことを特徴とする付記1から3のいずれか一つに記載の鉄道車両取引支援システム。
(付記5)
前記売却対象車両の情報および前記売却対象機器の情報は価格の情報を含む、
ことを特徴とする付記1から4のいずれか一つに記載の鉄道車両取引支援システム。
(付記6)
鉄道車両の取引を支援する鉄道車両取引支援方法であって、
鉄道事業者が保有する鉄道車両のトレーサビリティ情報および前記鉄道車両に搭載される機器のトレーサビリティ情報の少なくとも一方を含む情報をブロックチェーン技術により分散管理する第1のステップと、
前記鉄道事業者が売却を検討している鉄道車両である売却対象車両の情報、および、前記鉄道車両に搭載される機器のうち、前記鉄道事業者が売却を検討している機器である売却対象機器の情報を各鉄道事業者から取得して管理する第2のステップと、
管理している情報を前記売却対象車両または前記売却対象機器の購入検討者からの要求に応じて前記購入検討者に提供する第3のステップと、
を含み、
前記第3のステップでは、前記売却対象車両または前記売却対象機器の前記トレーサビリティ情報の要求を前記購入検討者から受けた場合、要求されたトレーサビリティ情報を取得して前記購入検討者に提供する、
ことを特徴とする鉄道車両取引支援方法。
(付記7)
鉄道車両または前記鉄道車両に搭載される機器の購入検討者からの購入希望条件を取得する第1のステップと、
前記購入希望条件に応じて、ブロックチェーン技術により分散管理された鉄道事業者が保有する鉄道車両および前記鉄道車両に搭載される機器の情報から、売却対象車両および売却対象機器の情報を前記購入検討者に提示する第2のステップと、
トレーサビリティ情報が必要な前記売却対象車両または前記売却対象機器の前記購入検討者からの指定を受け付ける第3のステップと、
前記購入検討者から指定された前記売却対象車両または前記売却対象機器のトレーサビリティ情報を、ブロックチェーン技術により分散管理されたトレーサビリティ情報の中から取得する第4のステップと、
前記第4のステップで取得した前記トレーサビリティ情報を前記購入検討者に提示する第5のステップと、
を含むことを特徴とする鉄道車両取引支援方法。
(付記8)
鉄道車両または前記鉄道車両に搭載される機器の購入検討者からの購入希望条件を取得する第1のステップと、
前記購入希望条件に応じて、ブロックチェーン技術により分散管理された鉄道事業者が保有する鉄道車両および前記鉄道車両に搭載される機器の情報から、売却対象車両および売却対象機器の情報を前記購入検討者に提示する第2のステップと、
トレーサビリティ情報が必要な前記売却対象車両または前記売却対象機器の前記購入検討者からの指定を受け付ける第3のステップと、
前記購入検討者から指定された前記売却対象車両または前記売却対象機器のトレーサビリティ情報を、ブロックチェーン技術により分散管理されたトレーサビリティ情報の中から取得する第4のステップと、
前記第4のステップで取得した前記トレーサビリティ情報を前記購入検討者に提示する第5のステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする鉄道車両取引支援プログラム。
(付記9)
鉄道事業者が売却を検討している鉄道車両である売却対象車両の情報、および、前記鉄道車両に搭載される機器のうち、前記鉄道事業者が売却を検討している機器である売却対象機器の情報を各鉄道事業者から取得して管理し、管理している情報を前記売却対象車両または前記売却対象機器の購入検討者からの要求に応じて前記購入検討者に提供する鉄道中古車市場管理システムとともに鉄道車両取引支援システムを構成するトレーサビリティ情報管理システムであって、
鉄道事業者が保有する鉄道車両のトレーサビリティ情報および前記鉄道車両に搭載される機器のトレーサビリティ情報の少なくとも一方を含む情報をブロックチェーン技術により分散管理し、
前記鉄道中古車市場管理システムが前記売却対象車両または前記売却対象機器の前記トレーサビリティ情報の要求を前記購入検討者から受けた場合、要求されたトレーサビリティ情報を前記鉄道中古車市場管理システムに出力する、
ことを特徴とするトレーサビリティ情報管理システム。
【符号の説明】
【0064】
1 トレーサビリティ情報管理システム、2 鉄道中古車市場管理システム、3 検修管理システム、10 トレーサビリティ情報管理装置、11 トレーサビリティ情報登録部、12 トレーサビリティ情報管理部、13,23 要求受付部、14 トレーサビリティ情報出力部、20 市場公開情報管理装置、21 市場公開情報登録部、22 市場公開情報管理部、24 トレーサビリティ情報取得部、25 情報提供部、31 検修情報取得部、32 検修情報管理部、33 トレーサビリティ情報抽出部、100 鉄道車両取引支援システム、121 トレーサビリティ情報、221 編成情報、222 車両情報、223 機器情報、321 検修情報。