特開 2024-166994 ポンプ装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024166994

(43)【公開日】2024-11-29

(54)【発明の名称】ポンプ装置

(51)【国際特許分類】

   F04B 43/02 20060101AFI20241122BHJP

   A61M 1/16 20060101ALI20241122BHJP

【ＦＩ】

F04B43/02 A

A61M1/16 135

【審査請求】未請求

【請求項の数】9

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2023083477

(22)【出願日】2023-05-19

(71)【出願人】

【識別番号】000226242

【氏名又は名称】日機装株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100095614

【弁理士】

【氏名又は名称】越川 隆夫

(72)【発明者】

【氏名】望月 洋明

(72)【発明者】

【氏名】▲徳▼永 誠

【テーマコード（参考）】

3H077

4C077

【Ｆターム（参考）】

3H077AA07

3H077CC02

3H077CC09

3H077CC12

3H077DD02

3H077EE02

3H077EE16

3H077EE26

3H077FF06

3H077FF38

3H077FF43

3H077FF44

4C077AA05

4C077BB01

4C077DD10

4C077DD12

4C077DD26

4C077EE03

4C077JJ02

4C077JJ07

4C077JJ16

4C077JJ19

4C077JJ24

4C077KK23

(57)【要約】

【課題】チャンバのシールを容易かつ確実に行うことができるとともに、別個のポンプを不要とすることができ、且つ、高精度に液体の流量制御を行わせることができるポンプ装置を提供する。
【解決手段】所定容量の液体を収容可能なチャンバ２と、チャンバ２に取り付けられた可撓性部材から成り、チャンバ２内を第１領域３及び第２領域４に区画するとともに、第１領域３及び第２領域４に交互に変位することにより、第１領域３に対する液体の吸込み及び吐出と第２領域４に対する排液の吸込み及び吐出とを行わせる隔膜５と、隔膜５に形成され、モータＭの駆動によってチャンバ２内を往復動することによって隔膜５を第１領域３及び第２領域４に変位させる芯材６とを備えたポンプ装置１である。
【選択図】図４

【特許請求の範囲】

【請求項1】

所定容量の液体を収容可能なチャンバと、
前記チャンバに取り付けられた可撓性部材から成り、前記チャンバ内を第１領域及び第２領域に区画する隔膜と、
前記隔膜に形成され、駆動源の駆動によって前記チャンバ内を往復動することによって前記隔膜を前記第１領域及び第２領域に変位させる芯材と、を備え、
前記隔膜は、前記第１領域及び第２領域に交互に変位することにより、前記第１領域に対する液体の吸込み及び吐出と前記第２領域に対する排液の吸込み及び吐出とを行わせる、ポンプ装置。

【請求項2】

前記芯材は、前記隔膜内に一体化された請求項１記載のポンプ装置。

【請求項3】

前記芯材は、所定の軸部材を中心として揺動することにより前記チャンバ内で往復動し、前記隔膜を前記チャンバ内で変位させる請求項１記載のポンプ装置。

【請求項4】

前記チャンバは、前記芯材の揺動軌跡に沿った扇形の収容空間を有する請求項３記載のポンプ装置。

【請求項5】

前記隔膜は、前記第１領域及び第２領域を区画する区画部と、前記第１領域及び第２領域をそれぞれシールするシール部とが一体的に形成された請求項１～４の何れか１つに記載のポンプ装置。

【請求項6】

前記駆動源は、モータから成り、前記モータの回転力は、カム部材を介して前記芯材に伝達され、前記芯材を往復動させる請求項１記載のポンプ装置。

【請求項7】

前記第１領域に対する液体の吸込み及び吐出と前記第２領域に対する排液の吸込み及び吐出とを行わせる弁を具備したことを特徴とする請求項１記載のポンプ装置。

【請求項8】

前記隔膜を有した前記チャンバが一対設けられ、それぞれの前記チャンバの前記第１領域及び前記第２領域を接続するとともに、前記駆動源の駆動によりそれぞれの前記チャンバの前記隔膜を逆位相にて変位させて前記液体の吸い込み及び吐出をそれぞれの前記チャンバにて交互に行わせる請求項１記載のポンプ装置。

【請求項9】

前記隔膜を有した前記チャンバが一対設けられ、それぞれの前記チャンバの前記第１領域及び前記第２領域を接続するとともに、前記駆動源の駆動によりそれぞれの前記チャンバの前記隔膜を逆位相にて変位させて一方のチャンバで液体の吸い込み及び他方のチャンバで液体の吐出を行わせる請求項１記載のポンプ装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、第１領域に対する液体の吸込み及び吐出と第２領域に対する排液の吸込み及び吐出とを行わせるポンプ装置に関するものである。

【背景技術】

【0002】

血液透析治療において用いられるダイアライザ等の血液浄化器には、透析液を供給するための透析液供給ラインと、透析排液を排出するための透析液排出ラインとが接続される。これら透析液供給ライン及び透析液排出ラインは、透析装置本体から延設されて血液浄化器に接続され、透析液を血液浄化器に供給しつつ当該血液浄化器からの透析排液を排出し得るよう構成されている。

【0003】

また、透析装置本体には、透析液供給ラインと透析液排出ラインとに跨ってポンプ装置が配設されている。従来のポンプ装置（第１従来例）として、例えば特許文献１にて開示されているように、一対のポンプ室にピストンがそれぞれ取り付けられたシリンダを具備した往復動形定量ポンプが挙げられる。かかる往復動形定量ポンプによれば、電動モータ等でクランク機構を駆動させることにより、ピストンが各シリンダ内で往復動し、透析器に透析液を送液可能とされている。

【0004】

さらに、従来の他のポンプ装置（第２従来例）として、例えば特許文献２にて開示されているように、ダイアフラム等の弾性体により第１領域及び第２領域に区画されたチャンバを具備し、第１領域及び第２領域にそれぞれ接続された流路に電磁弁が配設されたものが挙げられる。かかるポンプ装置によれば、電磁弁を制御して各流路を任意タイミングで開閉させることにより、透析器に透析液を送液可能とされている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0005】

【特許文献1】特開昭５５－１６７００９号公報

【特許文献2】特開昭５３－１４２３８２号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0006】

しかしながら、第１従来例のポンプ装置においては、ピストンとシリンダの間にシール部が形成されているものの、ピストンがシリンダ内で往復動する過程でシール部から液漏れしてしまう可能性があった。また、第２従来例のポンプ装置においては、チャンバに送液するための別個のポンプが必要であった。

【0007】

本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、チャンバのシールを容易かつ確実に行うことができるとともに、別個のポンプを不要とすることができ、且つ、高精度に液体の流量制御を行わせることができるポンプ装置を提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0008】

本発明に係る一実施形態の血液浄化装置は、所定容量の液体を収容可能なチャンバと、前記チャンバに取り付けられた可撓性部材から成り、前記チャンバ内を第１領域及び第２領域に区画する隔膜と、前記隔膜に形成され、駆動源の駆動によって前記チャンバ内を往復動することによって前記隔膜を前記第１領域及び第２領域に変位させる芯材と、を備え、前記隔膜は、前記第１領域及び第２領域に交互に変位することにより、前記第１領域に対する液体の吸込み及び吐出と前記第２領域に対する排液の吸込み及び吐出とを行わせるものである。

【発明の効果】

【0009】

本発明によれば、第１領域及び第２領域に交互に変位することにより、第１領域に対する液体の吸込み及び吐出と第２領域に対する排液の吸込み及び吐出とを行わせる隔膜と、隔膜に形成され、駆動源の駆動によってチャンバ内を往復動することによって隔膜を第１領域及び第２領域に変位させる芯材とを備えたので、チャンバのシールを容易かつ確実に行うことができるとともに、別個のポンプを不要とすることができ、且つ、高精度に液体の流量制御を行わせることができる。

【図面の簡単な説明】

【0010】

【図1】本願発明の実施形態に係るポンプ装置を示す正面側の外観斜視図

【図2】同ポンプ装置を示す背面側の外観斜視図

【図3】同ポンプ装置を示す３面図

【図4】図３におけるＩＶ－ＩＶ線断面図であって隔膜が中間位置にある状態を示す図

【図5】図３におけるＩＶ－ＩＶ線断面図であって隔膜が第２領域に変位した状態を示す図

【図6】図３におけるＩＶ－ＩＶ線断面図であって隔膜が第１領域に変位した状態を示す図

【図7】図３におけるＶ－Ｖ線断面図

【図8】同ポンプ装置の主要部品を示す分解斜視図

【図9】同ポンプ装置における芯材が一体形成された隔膜を示す斜視図

【図10】同ポンプ装置における芯材を示す斜視図

【図11】同ポンプ装置におけるモータ近傍を示す斜視図

【図12】同ポンプ装置におけるモータ及びカム部材を示す斜視図

【図13】同ポンプ装置におけるカム受け部材及びその近傍を示す斜視図

【図14】同ポンプ装置が接続された血液透析装置の配管（透析液及び排液の流路）を示す模式図

【図15】本願発明の他の実施形態に係るポンプ装置が接続された血液透析装置の配管を示す模式図

【図16】同ポンプ装置における血液浄化器に対する透析液の供給を示すグラフ

【図17】本願発明のさらに他の実施形態に係るポンプ装置が接続された血液透析装置の配管を示す模式図

【発明を実施するための形態】

【0011】

以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るポンプ装置１は、図１４に示すように、血液透析装置に適用され、血液浄化器Ｈに透析液を供給しつつ血液浄化器Ｈから排液を排出させるもので、図１～８に示すように、第１チャンバ２ａ及び第２チャンバ２ｂから成るチャンバ２と、チャンバ２内に配設された隔膜５と、隔膜５に形成された芯材６と、駆動源としてのモータＭとを有して構成されている。

【0012】

チャンバ２は、図８に示すように、第１チャンバ２ａ及び第２チャンバ２ｂを左右から合致して組み合わせることにより内部に収容空間が形成されたもので、当該収容空間に所定容量の液体（本実施形態においては透析液）を収容可能とされている。本実施形態に係るポンプ装置１は、一対の枠状部ｆａを有したフレームｆが配設されるとともに、枠状部ｆａに対して左右から第１チャンバ２ａ及び第２チャンバ２ｂが取り付けられて収容空間が形成されるよう構成されている。なお、本実施形態に係る第１チャンバ２ａ及び第２チャンバ２ｂは、図示の如く複数のボルトにて締結されている。

【0013】

また、第１チャンバ２ａは、第１接続ポート（Ｐ１、Ｐ２）が突出形成されるとともに、第２チャンバ２ｂは、第２接続ポート（Ｐ３、Ｐ４）が突出形成されている。本実施形態に係る第１接続ポート（Ｐ１、Ｐ２）及び第２接続ポート（Ｐ３、Ｐ４）は、図１４に示すように、血液浄化器Ｈに透析液を導入する透析液導入ライン（Ｌ１ａ、Ｌ１ｂ）及び血液浄化器Ｈから排液を排出する透析液排出ライン（Ｌ２ａ、Ｌ２ｂ）にそれぞれ接続可能な突出部材から成る。

【0014】

具体的には、第１接続ポートＰ１は、透析液の供給源（不図示）に連結された透析液導入ラインＬ１ａに接続されるとともに、第１接続ポートＰ２は、血液浄化器Ｈの透析液導入ポートｃに連結された透析液導入ラインＬ１ｂに接続されており、且つ、第２接続ポートＰ３は、排液手段（不図示）に連結された透析液排出ラインＬ２ａに接続されるとともに、第２接続ポートＰ４は、血液浄化器Ｈの透析液排出ポートｄに接続されている。

【0015】

また、透析液導入ライン（Ｌ１ａ、Ｌ１ｂ）及び透析液排出ライン（Ｌ２ａ、Ｌ２ｂ）には、それぞれ逆止弁Ｖが取り付けられており、透析液の流動方向が規制されている。具体的には、透析液導入ラインＬ１ａに配設された逆止弁Ｖによって、透析液導入ラインＬ１ａにおいて供給源からポンプ装置１に向かう透析液の流れを許容しつつ逆方向の流れを規制するとともに、透析液導入ラインＬ１ｂに配設された逆止弁Ｖによって、透析液導入ラインＬ１ｂにおいてポンプ装置１から血液浄化器Ｈに向かう透析液の流れを許容しつつ逆方向の流れを規制している。

【0016】

さらに、透析液排出ラインＬ２ｂに配設された逆止弁Ｖによって、透析液排出ラインＬ２ｂにおいて血液浄化器Ｈからポンプ装置１に向かう透析液の流れを許容しつつ逆方向の流れを規制するとともに、透析液排出ラインＬ２ａに配設された逆止弁Ｖによって、透析液排出ラインＬ２ａにおいてポンプ装置１から透析液の排液手段に向かう透析液の流れを許容しつつ逆方向の流れを規制している。なお、逆止弁Ｖに代えて電磁弁を接続するようにしてもよく、その場合、シール性能を向上させることができる。

【0017】

しかるに、本実施形態に適用される血液浄化器Ｈは、患者の血液を体外循環させる動脈側血液回路Ｎａに接続可能な血液導入ポートａと、静脈側血液回路Ｎｂに接続可能な血液導出ポートｂと、透析液導入ラインＬ１ｂに接続可能な透析液導入ポートｃと、透析液排出ラインＬ２ｂに接続可能な透析液排出ポートｄとを有するとともに、筐体内に複数の中空糸膜（血液浄化膜）が配設されている。

【0018】

なお、血液浄化器Ｈ内に形成された中空糸膜には複数の微少孔が形成されているため、中空糸内部で血液を通過させつつ中空糸外部で透析液を通過させると、中空糸膜を介して血液中の不要物（老廃物）が透析液側に透析除去し得るよう構成されている。また、透析液排出ラインＬ２ａと透析液排出ラインＬ２ｂとの間には、バイパスラインＬ３が接続されており、そのバイパスラインＬ３には除水ポンプＱが配設されている。そして、かかる除水ポンプＱを駆動させることにより、血液浄化器Ｈを通過する患者の血液から水分を除去する除水が行われることとなる。

【0019】

隔膜５は、チャンバ２の内部（収容空間）に取り付けられた可撓性部材（例えばゴム材や樹脂材等）から成り、図４～８に示すように、チャンバ２内を第１領域３及び第２領域４に区画するとともに、第１領域３及び第２領域４に交互に変位することにより、第１領域３に対する透析液の吸込み及び吐出と第２領域４に対する排液の吸込み及び吐出とを行わせるものである。具体的には、隔膜５は、図６に示すように第１領域３に対する揺動、及び図５に示すように第２領域４に対する揺動が行われることにより、第１領域３に対する透析液の吸込み及び吐出と第２領域４に対する排液の吸込み及び吐出とを行わせることとなる。

【0020】

また、第１領域３は、第１接続ポート（Ｐ１、Ｐ２）を介して透析液導入ライン（Ｌ１ａ、Ｌ１ｂ）と連通されるとともに、第２領域４は、第２接続ポート（Ｐ３、Ｐ４）を介して透析液排出ライン（Ｌ２ａ、Ｌ２ｂ）と連通されている。そして、本実施形態に係る隔膜５は、可撓性部材から成り、チャンバ２内を区画しつつ変位することから、ダイアフラムとして機能し、第１領域３に対する透析液の吸込み及び吐出と第２領域４に対する排液の吸込み及び吐出とを行わせることができる。

【0021】

すなわち、隔膜５が第１領域３に変位（図６に示すように隔膜５が揺動）すると、第１領域３内の透析液が透析液導入ラインＬ１ｂを介して血液浄化器Ｈに吐出されるとともに、血液浄化器Ｈの排液が透析液排出ラインＬ２ｂを介して第２領域４に吸い込まれることとなる。一方、隔膜５が第２領域４に変位（図５に示すように隔膜５が揺動）すると、第２領域４内の透析液が透析液排出ラインＬ２ａを介して排液手段に吐出されるとともに、供給源からの透析液が透析液導入ラインＬ１ａを介して第１領域３に吸い込まれることとなる。

【0022】

さらに、本実施形態に係る隔膜５は、図９に示すように、第１領域３及び第２領域４を区画する区画部５ａと、第１領域３及び第２領域４をそれぞれシールするシール部５ｂとが一体的に形成されている。すなわち、隔膜５は、チャンバ２内に組付けられることにより、中央部位の区画部５ａがチャンバ２の収容空間内に位置して第１領域３及び第２領域４を区画するとともに、周縁部位のシール部５ｂが第１チャンバ２ａ及び第２チャンバ２ｂと枠状部ｆａとの間に位置してシールするようになっている。

【0023】

芯材６は、隔膜５に形成され、モータＭ（駆動源）の駆動によってチャンバ２内を往復動することによって隔膜５を第１領域３及び第２領域４に変位させるもので、図１０に示すように、幅広の先端部６ａと、先端部６ａから延設された延設部６ｂとを有した金属製部材又は硬質樹脂材等から成る。先端部６ａは、複数の孔又は凹部が形成されるとともに、延設部６ｂは、軸部材Ｌ（図４、５参照）を挿通する挿通孔６ｂａと、カム受け部材８を連結するためのネジを挿通するネジ孔６ｂｂとが形成されている。

【0024】

ここで、本実施形態に係る芯材６は、図９に示すように、先端部６ａが隔膜５内に一体化されるとともに、延設部６ｂが隔膜５から突出した状態とされており、チャンバ２内に位置する先端部６ａが第１領域３の透析液や第２領域４の排液に接触しないよう構成されている。具体的には、芯材６は、隔膜５に対してインサート成形にて一体成形されており、先端部６ａが隔膜５に対して強固に固定されて一体化されている。さらに、芯材６は、図４に示すように、延設部６ｂのネジ孔６ｂｂにネジを挿通させることにより、溝部８ａを有したカム受け部材８が連結されている。

【0025】

また、芯材６は、延設部６ｂの挿通孔６ｂａに対して軸部材Ｌが挿通された状態でポンプ装置１に組付けられており、モータＭの駆動力によって軸部材Ｌを中心として揺動することによりチャンバ２内で往復動し、隔膜５をチャンバ２内で変位させることができるよう構成されている。しかるに、本実施形態に係るチャンバ２は、図４に示すように、芯材６の揺動軌跡に沿った扇形の収容空間（軸部材Ｌを中心とした扇状の空間）を有している。

【0026】

モータＭは、図７、１１に示すように、駆動により回転可能な出力軸Ｍａを具備しており、出力軸Ｍａの先端部には、カム部材７が取り付けられている。かかるカム部材７は、図１２に示すように、回転方向に対して偏心した位置に凸部７ａが突出形成されており、その凸部７ａが芯材６に連結されたカム受け部材８の溝部８ａに挿入した状態で組付けられている。なお、溝部８ａは、図１１、１３に示すように、芯材６の延設部６ｂに対してその延設方向に延びて形成されており、凸部７ａを挿通させ得る溝幅とされている。

【0027】

これにより、モータＭの出力軸Ｍａと共にカム部材７が回転すると、その回転力をカム受け部材８が受けることによって芯材６を左右方向に揺動させる力に変換させることができる。したがって、モータＭを駆動させると、その回転力がカム部材７及びカム受け部材８を介して芯材６に伝達され、軸部材Ｌを中心として芯材６を揺動させ得ることができ、隔膜５を第１領域３及び第２領域４に対して交互に変位させることができる。

【0028】

すなわち、図１４を参照すると、モータＭの駆動により芯材６が揺動して隔膜５が第１領域３に変位する（図６参照）と、第１領域３内の透析液が透析液導入ラインＬ１ｂを介して血液浄化器Ｈに吐出されるとともに、血液浄化器Ｈの排液が透析液排出ラインＬ２ｂを介して第２領域４に吸い込まれ、続いて芯材６が揺動して隔膜５が第２領域４に変位する（図５参照）と、第２領域４内の透析液が透析液排出ラインＬ２ａを介して排液手段に吐出されるとともに、供給源からの透析液が透析液導入ラインＬ１ａを介して第１領域３に吸い込まれることとなる。

【0029】

本実施形態によれば、第１領域３及び第２領域４に交互に変位することにより、第１領域３に対する透析液の吸込み及び吐出と第２領域４に対する排液の吸込み及び吐出とを行わせる隔膜５と、隔膜５に形成され、モータＭ（駆動源）の駆動によってチャンバ２内を往復動することによって隔膜５を第１領域３及び第２領域４に変位させる芯材６とを備えたので、チャンバ２のシールを容易かつ確実に行うことができるとともに、電磁弁や別個のポンプを不要とすることができる。

【0030】

すなわち、モータＭから成る駆動源にて隔膜５を第１領域３及び第２領域４に変位させるとともに、逆止弁Ｖにて透析液及び排液の流動を所望方向に設定できるので、透析液導入ライン（Ｌ１ａ、Ｌ１ｂ）及び透析液排出ライン（Ｌ２ａ、Ｌ２ｂ）において別個のポンプや電磁弁を必要としないので、別個のポンプや電磁弁のための電力が不要とされる。

【0031】

また、本実施形態に係る芯材６は、隔膜５内に一体化されたので、製造コストを低下させることができ、且つ、隔膜５を確実かつ良好に追従させることができるとともに、第１領域３内の透析液及び第２領域４内の排液に接触してしまうのを回避することができる。しかるに、従来は駆動部分(摺動部)から液漏れしないようにするための精密なシール構造が必要とされ、精密なシール構造を成立させるためには関連する部品に厳しい寸法精度が要求されていたため、部品のコストが高くなっていた。これに対し、本実施形態においては、芯材６を隔膜５内に一体化することによって、精密なシール構造が不要となるため、部品に要求される寸法精度を緩和することができ製造コストを抑制することができる。さらに、芯材６は、所定の軸部材Ｌを中心として揺動することによりチャンバ２内で往復動し、隔膜５をチャンバ２内で変位させるので、芯材６が摺動等して隔膜５を変位させるものに比べ、シールすべき部位を少なくしてシール部５ｂによるシールを確実に行わせることができる。

【0032】

またさらに、チャンバ２は、芯材６の揺動軌跡に沿った扇形の収容空間を有するので、芯材６の往復動に応じた隔膜５の変位を良好に行わせることができるとともに、隔膜５のダイアフラムとしての作用をより円滑且つ確実に行わせることができる。また、本実施形態に係る隔膜５は、第１領域３及び第２領域４を区画する区画部５ａと、第１領域３及び第２領域４をそれぞれシールするシール部５ｂとが一体的に形成されたので、隔膜５によるダイアフラムとしての作用を区画部５ａにて行わせつつシール部５ｂによるシール機能を維持することができる。

【0033】

さらに、芯材６を動作させる駆動源は、モータＭから成り、モータＭの回転力は、カム部材７を介して芯材６に伝達され、芯材６を往復動させるので、汎用的なモータを駆動源として利用することができ、必要な駆動力を確保しつつ構成を簡素化させることができる。なお、モータＭに代えてシリンダ等の他の駆動源としてもよく、カム部材７に代えてリンク機構等の他の伝達手段にて駆動力を伝達するようにしてもよい。

【0034】

次に、本発明の他の実施形態に係るポンプ装置ついて説明する。
本実施形態に係るポンプ装置は、図１５に示すように、隔膜５を有したチャンバ（一方のチャンバＡ及び他方のチャンバＢ）が一対設けられ、それぞれのチャンバ（Ａ、Ｂ）の第１領域３及び第２領域４を可撓性チューブ等で接続するとともに、モータＭ（駆動源）の駆動によりそれぞれのチャンバ（Ａ、Ｂ）の隔膜５を逆位相にて変位させて液体の吸い込み及び吐出をそれぞれのチャンバ（Ａ、Ｂ）にて交互に行わせるものである。なお、同図において、一方のチャンバＡの芯材６と他方のチャンバＢの芯材６とは、カム部材７を介してモータＭとそれぞれ接続されている。本実施形態においては、図１６（ａ）に示すように、一方のチャンバＡ及び他方のチャンバＢからの透析液が流量Ｑｄでそれぞれ血液浄化器Ｈに供給されることとなるので、図１６（ｂ）で示すように、透析液を連続的に供給することができる。

【0035】

次に、本発明のさらに他の実施形態に係るポンプ装置ついて説明する。
本実施形態に係るポンプ装置は、図１７に示すように、隔膜５を有したチャンバ（一方のチャンバＡ及び他方のチャンバＢ）が一対設けられ、それぞれのチャンバ（Ａ、Ｂ）の第１領域３及び第２領域４を可撓性チューブ等で接続するとともに、モータＭ（駆動源）の駆動によりそれぞれのチャンバ（Ａ、Ｂ）の隔膜５を逆位相にて変位させて一方のチャンバＡで液体の吸い込み及び他方のチャンバＢで液体の吐出を行わせるものである。なお、同図において、一方のチャンバＡの芯材６と他方のチャンバＢの芯材６とは、カム部材７を介してモータＭとそれぞれ接続されている。本実施形態においては、一方のチャンバＡにおいては専ら給液が行われるとともに、他方のチャンバＢにおいては専ら排液が行われることとなる。

【0036】

以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば芯材６が隔膜５内にインサート成形にて一体化されず、隔膜５内に単に挿通して取り付けられることにより一体化されたものであってもよく、芯材６が左右方向のほか、上下方向等、他の方向に揺動するもの、或いは芯材６が揺動とは異なる動作（平行移動等）にて往復動するものであってもよい。また、第１接続ポート（Ｐ１、Ｐ２）及び第２接続ポート（Ｐ３、Ｐ４）に接続される流路は、本実施形態に係る透析液導入ライン（Ｌ１ａ、Ｌ１ｂ）及び透析液排出ライン（Ｌ２ａ、Ｌ２ｂ）に限らず、種々の液体を流通させる流路であってもよい。

【0037】

本発明の第１の実施の態様は、所定容量の液体を収容可能なチャンバ２と、チャンバ２に取り付けられた可撓性部材から成り、チャンバ２内を第１領域３及び第２領域４に区画する隔膜５と、隔膜５に形成され、モータＭ（駆動源）の駆動によってチャンバ２内を往復動することによって隔膜５を第１領域及３び第２領域４に変位させる芯材６と、を備え、隔膜５は、第１領域３及び第２領域４に交互に変位することにより、第１領域３に対する液体の吸込み及び吐出と第２領域４に対する排液の吸込み及び吐出とを行わせるポンプ装置１である。これにより、チャンバ２のシールを容易かつ確実に行うことができるとともに、別個のポンプを不要とすることができ、且つ、高精度に液体の流量制御を行わせることができるという効果を奏する。

【0038】

本発明の第２の実施の態様は、第１の実施の態様において、芯材６は、隔膜５内に一体化されたポンプ装置１である。これにより、製造コストを低下させることができ、且つ、隔膜５を確実かつ良好に追従させることができるとともに、第１領域３内の透析液及び第２領域４内の排液に接触してしまうのを回避することができるという効果を奏する。

【0039】

本発明の第３の実施の態様は、第１の実施の態様において、芯材６は、所定の軸部材Ｌを中心として揺動することによりチャンバ２内で往復動し、隔膜５をチャンバ２内で変位させるポンプ装置１である。これにより、芯材６が摺動等して隔膜５を変位させるものに比べ、シールすべき部位を少なくしてシール部５ｂによるシールを確実に行わせることができるという効果を奏する。

【0040】

本発明の第４の実施の態様は、第３の実施の態様において、チャンバ２は、芯材６の揺動軌跡に沿った扇形の収容空間を有するポンプ装置である。これにより、芯材６の往復動に応じた隔膜５の変位を良好に行わせることができるとともに、隔膜５のダイアフラムとしての作用をより円滑且つ確実に行わせることができるという効果を奏する。

【0041】

本発明の第５の実施の態様は、第１～４の何れか１つの実施の態様において、隔膜５は、第１領域３及び第２領域４を区画する区画部５ａと、第１領域３及び第２領域４をそれぞれシールするシール部５ｂとが一体的に形成されたポンプ装置である。これにより、隔膜５によるダイアフラムとしての作用を区画部５ａにて行わせつつシール部５ｂによるシール機能を維持することができるという効果を奏する。

【0042】

本発明の第６の実施の態様は、第１の実施の態様において、芯材６を動作させる駆動源は、モータＭから成り、モータＭの回転力は、カム部材７を介して芯材６に伝達され、芯材６を往復動させるポンプ装置である。これにより、汎用的なモータを駆動源として利用することができ、必要な駆動力を確保しつつ構成を簡素化させることができるという効果を奏する。

【0043】

本発明の第７の実施の態様は、第１の実施の態様において、第１領域３に対する液体の吸込み及び吐出と第２領域４に対する排液の吸込み及び吐出とを行わせる弁を具備したポンプ装置である。これにより、第１領域３及び第２領域４に対する液体の流れを正確に制御することができる。

【0044】

本発明の第８の実施の態様は、第１の実施の態様において、隔膜５を有したチャンバが一対設けられ、それぞれのチャンバの第１領域３及び第２領域４を接続するとともに、駆動源の駆動によりそれぞれのチャンバの隔膜５を逆位相にて変位させて液体の吸い込み及び吐出をそれぞれのチャンバにて交互に行わせるポンプ装置である。これにより、液体を連続的に流動させることができるとともに、より高精度に液体の流量制御を行わせることができるという効果を奏する。

【0045】

本発明の第９の実施の態様は、第１の実施の態様において、隔膜５を有したチャンバが一対設けられ、それぞれのチャンバの第１領域３及び第２領域４を接続するとともに、駆動源の駆動によりそれぞれのチャンバの隔膜５を逆位相にて変位させて一方のチャンバＡで液体の吸い込み及び他方のチャンバＢで液体の吐出を行わせるポンプ装置である。これにより、別個のポンプを不要とすることができ、且つ、高精度に液体の流量制御を行わせることができるという効果を奏する。

【産業上の利用可能性】

【0046】

本発明と同様の趣旨であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。

【符号の説明】

【0047】

１ ポンプ装置
２ チャンバ
２ａ 第１チャンバ
２ｂ 第２チャンバ
３ 第１領域
４ 第２領域
５ 隔膜
５ａ 区画部
５ｂ シール部
６ 芯材
６ａ 先端部
６ｂ 延設部
６ｂａ 挿通孔
６ｂｂ ネジ孔
７ カム部材
７ａ 凸部
８ カム受け部材
８ａ 溝部
Ｍ モータ（駆動源）
Ｍａ 出力軸
Ｌ 軸部材
Ｐ１、Ｐ２ 第１接続ポート
Ｐ３、Ｐ４ 第２接続ポート
Ｖ 逆止弁
Ｈ 血液浄化器

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】