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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166995
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 43/02 20060101AFI20241122BHJP
   A61M 1/16 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
F04B43/02 D
A61M1/16 135
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083478
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼永 誠
(72)【発明者】
【氏名】望月 洋明
【テーマコード(参考)】
3H077
4C077
【Fターム(参考)】
3H077AA07
3H077CC02
3H077CC09
3H077CC17
3H077DD02
3H077EE26
3H077EE35
3H077EE37
3H077FF06
3H077FF09
3H077FF57
4C077AA05
4C077BB01
4C077DD10
4C077DD12
4C077DD26
4C077EE03
4C077JJ02
4C077JJ07
4C077JJ16
4C077JJ19
4C077JJ24
4C077KK25
(57)【要約】
【課題】ポンプ本体部からチャンバを取り外す際に、残余した透析液や排液が外部に飛散するのを防止することができるポンプ装置を提供する。
【解決手段】供給側収容部S1が形成された供給チャンバ2と、排出側収容部S2が形成された排出チャンバ3と、供給側収容部S1及び排出側収容部S2を閉止した可撓性部材から成り、供給側収容部S1及び排出側収容部S2に対して変位することにより、給液側接続ポートを介して供給側収容部S1に対する透析液の吸込み及び吐出と、排液側接続ポートを介して排出側収容部S2に対する排液の吸込み及び吐出とを行わせる隔膜4と、隔膜4で供給側収容部S1または排出側収容部S2がそれぞれ閉止された供給チャンバ2または排出チャンバ3を脱着可能とされ、モータMの駆動によって動作して隔膜4を変位させるピストンPを有したポンプ本体部7とを備えたポンプ装置1である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給液側接続ポートが接続されるとともに、所定容量の透析液を収容する供給側収容部が形成された供給チャンバと、
排液側接続ポートが接続されるとともに、所定容量の排液を収容する排出側収容部が形成された排出チャンバと、
前記供給チャンバ及び排出チャンバにそれぞれ取り付けられて前記供給側収容部及び排出側収容部を閉止した可撓性部材から成り、前記供給側収容部及び排出側収容部に対して変位することにより、前記給液側接続ポートを介して前記供給側収容部に対する透析液の吸込み及び吐出と、前記排液側接続ポートを介して前記排出側収容部に対する排液の吸込み及び吐出とを行わせる隔膜と、
前記隔膜で前記供給側収容部または排出側収容部がそれぞれ閉止された前記供給チャンバまたは排出チャンバを脱着可能とされ、駆動源の駆動によって動作して前記隔膜を変位させる駆動部を有したポンプ本体部と、
を備えたポンプ装置。
【請求項2】
前記ポンプ本体部は、前記隔膜と重なる従動膜が取り付けられるとともに、前記従動膜と前記駆動部との間に非圧縮性の液体が充填された請求項1記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記隔膜及び従動膜の間を負圧としてこれら隔膜及び従動膜を密着させる負圧ポートを具備した請求項2記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記隔膜及び従動膜の間の圧力を検出する圧力検出部を具備した請求項2記載のポンプ装置。
【請求項5】
前記従動膜と前記駆動部との間に前記非圧縮性の液体を導入及び排出する充填ポートを具備した請求項2記載のポンプ装置。
【請求項6】
前記駆動部は、前記ポンプ本体部内で往復動するピストンから成り、前記ピストンの両端部に対応する位置に前記供給チャンバ及び排出チャンバがそれぞれ取り付けられた請求項2記載のポンプ装置。
【請求項7】
前記ピストンは、前記ポンプ本体部内に複数取り付けられるとともに、それぞれのピストンの両端部に対応する位置に前記供給チャンバ及び排出チャンバがそれぞれ取り付けられ、且つ、前記駆動源の駆動により複数の前記ピストンを逆位相にて往復動させる請求項6記載のポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給液側接続ポートを介して供給側収容部に対する透析液の吸込み及び吐出と、排液側接続ポートを介して排出側収容部に対する排液の吸込み及び吐出とを行わせるポンプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
血液透析治療において用いられるダイアライザ等の血液浄化器には、透析液を供給するための透析液供給ラインと、透析排液を排出するための透析液排出ラインとが接続される。これら透析液供給ライン及び透析液排出ラインは、透析装置本体から延設されて血液浄化器に接続され、透析液を血液浄化器に供給しつつ当該血液浄化器からの透析排液を排出し得るよう構成されている。
【0003】
また、透析装置本体には、透析液供給ラインと透析液排出ラインとに跨ってポンプ装置が配設されている。従来のポンプ装置(第1従来例)として、例えば特許文献1にて開示されているように、一対のポンプ室にピストンがそれぞれ取り付けられたシリンダを具備した往復動形定量ポンプが挙げられる。かかる往復動形定量ポンプによれば、電動モータ等でクランク機構を駆動させることにより、ピストンが各シリンダ内で往復動し、透析器に透析液を送液可能とされている。
【0004】
さらに、従来の他のポンプ装置(第2従来例)として、例えば特許文献2にて開示されているように、ダイアフラム等の弾性体により給液側領域及び排液側領域に区画されたチャンバを具備し、給液側領域及び排液側領域にそれぞれ接続された流路に電磁弁が配設されたものが挙げられる。かかるポンプ装置によれば、電磁弁を制御して各流路を任意タイミングで開閉させることにより、透析器に透析液を送液可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭55-167009号公報
【特許文献2】特開昭53-142382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、第1従来例のポンプ装置においては、ピストンがシリンダ内で往復動する過程でシール部から液漏れしてしまう可能性があり、第2従来例のポンプ装置においては、複数の電磁弁を高精度に制御する必要があるとともに、チャンバに送液するための別個のポンプが必要であった。そこで、本出願人は、駆動源で駆動するピストンの動作によりダイアフラム等の弾性体を変位させて、透析液の吸込み及び吐出と排液の吸込み及び吐出とを行わせることを検討するに至った。しかるに、その場合、チャンバの交換時、ポンプ装置からチャンバを取り外そうとする際、チャンバ内に残余した透析液や排液が外部に飛散してしまう虞がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ポンプ本体部からチャンバを取り外す際に、残余した透析液や排液が外部に飛散するのを防止することができるポンプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る一実施形態のポンプ装置は、給液側接続ポートが接続されるとともに、所定容量の透析液を収容する供給側収容部が形成された供給チャンバと、排液側接続ポートが接続されるとともに、所定容量の排液を収容する排出側収容部が形成された排出チャンバと、前記供給チャンバ及び排出チャンバにそれぞれ取り付けられて前記供給側収容部及び排出側収容部を閉止した可撓性部材から成り、前記供給側収容部及び排出側収容部に対して変位することにより、前記給液側接続ポートを介して前記供給側収容部に対する透析液の吸込み及び吐出と、前記排液側接続ポートを介して前記排出側収容部に対する排液の吸込み及び吐出とを行わせる隔膜と、前記隔膜で前記供給側収容部または排出側収容部がそれぞれ閉止された前記供給チャンバまたは排出チャンバを脱着可能とされ、駆動源の駆動によって動作して前記隔膜を変位させる駆動部を有したポンプ本体部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、供給チャンバ及び排出チャンバにそれぞれ取り付けられて供給側収容部及び排出側収容部を閉止した可撓性部材から成る隔膜を有し、隔膜で供給側収容部または排出側収容部がそれぞれ閉止された供給チャンバまたは排出チャンバをポンプ本体部に対して脱着可能とされたので、チャンバをポンプ本体部から取り外す際に、残余した透析液や排液が外部に飛散するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本願発明の実施形態に係るポンプ装置を示す外観斜視図
図2】同ポンプ装置を示す外観斜視図
図3】同ポンプ装置を示す4面図
図4図3におけるIV-IV線断面図
図5】同ポンプ装置における主要部品の分解斜視図
図6】同ポンプ装置における供給チャンバ又は排出チャンバをポンプ本体部から取り外した状態を示す斜視図
図7】同ポンプ装置における駆動源及び駆動部を示す斜視図
図8】同ポンプ装置が接続された血液透析装置の配管(透析液及び排液の流路)を示す模式図
図9】本発明の他の実施形態に係るポンプ装置を示す外観斜視図
図10】同ポンプ装置を示す縦断面図
図11】本発明のさらに他の実施形態に係るポンプ装置を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るポンプ装置1は、図8に示すように、血液透析装置に適用され、血液浄化器Hに透析液を供給しつつ血液浄化器Hから排液を排出させるもので、図1~7に示すように、供給チャンバ2及び排出チャンバ3と、隔膜4と、従動膜5と、ポンプ本体部7と、駆動源としてのモータMとを有して構成されている。
【0012】
供給チャンバ2は、図1~3に示すように、ポンプ装置1の一方側に形成されたもので、給液側接続ポート(P1、P2)が接続されるとともに、所定容量の透析液を収容する供給側収容部S1が形成されたチャンバから成る。すなわち、隔膜4によって供給チャンバ2内に供給側収容部S1が形成されるとともに、隔膜4の変位によって、給液側接続ポートP1から透析液が供給側収容部S1に吸い込まれ、且つ、給液側接続ポートP2から透析液が吐出されるようになっている。
【0013】
また、給液側接続ポート(P1、P2)は、供給チャンバ2からそれぞれ突出形成された接続ポートから成り、本実施形態においては、図8に示すように、給液側接続ポートP1が透析液の供給源(不図示)に連結された透析液導入ラインL1aに接続されるとともに、給液側接続ポートP2が血液浄化器Hの透析液導入ポートcに連結された透析液導入ラインL1bに接続される。
【0014】
排出チャンバ3は、図1~3に示すように、ポンプ装置1の他方側に形成されたもので、排液側接続ポート(P3、P4)が接続されるとともに、所定容量の排液を収容する排出側収容部S2が形成されたチャンバから成る。すなわち、隔膜4によって排出チャンバ3内に排出側収容部S2が形成されるとともに、隔膜4の変位によって、排液側接続ポートP3から排液が排出側収容部S2に吸い込まれ、且つ、排液側接続ポートP4から排液が吐出されるようになっている。
【0015】
また、排液側接続ポート(P3、P4)は、排出チャンバ3からそれぞれ突出形成された接続ポートから成り、本実施形態においては、図8に示すように、排液側接続ポートP4が排液手段(不図示)に連結された透析液排出ラインL2aに接続されるとともに、排液側接続ポートP3が血液浄化器Hの透析液排出ポートdに連結された透析液排出ラインL2bに接続される。
【0016】
隔膜4は、供給チャンバ2及び排出チャンバ3にそれぞれ取り付けられて供給側収容部S1及び排出側収容部S2を閉止した可撓性部材(例えばゴム材や樹脂材等から成るダイアフラム)から成り、供給側収容部S1及び排出側収容部S2に対して撓んで変位することにより、給液側接続ポート(P1、P2)を介して供給側収容部S1に対する透析液の吸込み及び吐出と、排液側接続ポート(P3、P4)を介して排出側収容部S2に対する排液の吸込み及び吐出とを行わせるものである。
【0017】
すなわち、供給チャンバ2及び排出チャンバ3には、それぞれ供給側収容部S1及び排出側収容部S2を閉止した状態(液密状態)で隔膜4が取り付けられており、これら供給チャンバ2及び排出チャンバ3がポンプ本体部7から取り外された際、図6に示すように、隔膜4によって、供給側収容部S1及び排出側収容部S2の閉止状態が維持されるようになっている。
【0018】
ポンプ本体部7は、隔膜4で供給側収容部S1または排出側収容部S2がそれぞれ閉止された供給チャンバ2または排出チャンバ3を脱着可能とされ、モータM(駆動源)の駆動によって動作して隔膜4を変位させるピストンP(駆動部)を有したものである。具体的には、ポンプ本体部7は、供給チャンバ2及び排出チャンバ3に隣接した位置にそれぞれ配設された一対の固定部7aと、これら一対の固定部7aの間に配設されたカバー部7bとを有しており、これら一対の固定部7a及びカバー部7bに亘ってピストンPが移動可能に収容されている。
【0019】
また、ポンプ本体部7の固定部7aは、隔膜4と重なる従動膜5が取り付けられるとともに、従動膜5とピストンP(駆動部)の端部との間には、所定容量の充填部(S3,S4)がそれぞれ形成されて非圧縮性の液体が充填されている。かかる従動膜5は、隔膜4と同様、可撓性部材(例えばゴム材や樹脂材等から成るダイアフラム)から成り、充填部(S3、S4)に充填された非圧縮性の液体を介してピストンPの動作が伝達されて撓むことにより変位可能とされている。
【0020】
また、従動膜5は、供給チャンバ2側の固定部7a及び排出チャンバ3側の固定部7aにおいて充填部S3及び充填部S4を閉止した状態(液密状態)で取り付けられており、供給チャンバ2及び排出チャンバ3がポンプ本体部7から取り外された際、従動膜5によって、充填部(S3,S4)の閉止状態が維持されるようになっている。なお、充填部(S3、S4)は、充填ポートP6と連結されており、充填ポートP6を介して非圧縮性の液体を導入及び排出可能とされている。
【0021】
さらに、供給チャンバ2に取り付けられた隔膜4と固定部7aに取り付けられた従動膜5との間、及び排出チャンバ3に取り付けられた隔膜4と固定部7aに取り付けられた従動膜5との間には、それぞれ枠状の介在部材6が配設されている。かかる介在部材6は、一方の面側に隔膜4が接するとともに、他方の面側に従動膜5が接するようになっており、これら隔膜4及び従動膜5の間から空気を排出して負圧とし得る負圧ポートP5が形成されている。
【0022】
そして、負圧ポートP5を介して隔膜4及び従動膜5の間から空気を排出することにより、これら隔膜4及び従動膜5の間が負圧となって互いに密着させることができる。このように、隔膜4及び従動膜5を密着した状態で重ねることにより、ピストンPが動作して従動膜5が変位すると、その変位に精度よく追従して隔膜4を変位させることができ、供給側収容部S1に対する透析液の吸込み及び吐出と、排出側収容部S2に対する排液の吸込み及び吐出とを精度よく行わせることができる。
【0023】
さらに、本実施形態においては、図8に示すように、隔膜4及び従動膜5の間の圧力を検出する圧力センサJ(圧力検出部)が取り付けられている。これにより、隔膜4または従動膜5が破損した場合、隔膜4及び従動膜5の間に圧力上昇が生じるので、その隔膜4または従動膜5の破損を圧力センサJで検知することができる。すなわち、隔膜4及び従動膜5の何れかの膜が破損した場合には、破損部から液体が流入して負圧状態から陽圧状態に変化することとなるので、その圧力変化を圧力センサJで検知することにより破損を検知することができるのである。
【0024】
駆動源としてのモータMは、図7に示すように、その出力軸Maにカム部8が取り付けられており、カム部8を介してピストンPを駆動させ得るようになっている。すなわち、モータMを駆動させて出力軸Maが回転すると、カム部8の作用によってピストンPが同図中左右に動作することとなり、供給チャンバ2及び排出チャンバ3の従動膜5及び隔膜4を変位可能とされている。
【0025】
しかるに、供給チャンバ2または排出チャンバ3、隔膜4、介在部材6及び従動膜5は、固定部7aに対して、図示しないボルト等の締結手段を挿通させて互いに連結されており、メンテナンスや部品交換時、当該締結手段による連結を解くことにより、隔膜4が取り付けられた供給チャンバ2または排出チャンバ3と介在部材6とが、従動膜5が取り付けられた固定部7aからそれぞれ取り外し可能とされている。
【0026】
ここで、本実施形態においては、ポンプ本体1のメンテナンスや部品交換のため、供給チャンバ2及び排出チャンバ3をポンプ本体部7から取り外す際、図6に示すように、供給側収容部S1及び排出側収容部S2が隔膜4により閉止されているので、透析治療後に残余した透析液または排液を供給側収容部S1または排出側収容部S2内に封入させた状態とすることができる。
【0027】
次に、本実施形態に係るポンプ装置1が適用される血液浄化装置について、図8を用いて説明する。
【0028】
透析液導入ライン(L1a、L1b)及び透析液排出ライン(L2a、L2b)には、それぞれ逆止弁Vが取り付けられており、透析液の流動方向が規制されている。具体的には、透析液導入ラインL1aに配設された逆止弁Vによって、透析液導入ラインL1aにおいて供給源からポンプ装置1に向かう透析液の流れを許容しつつ逆方向の流れを規制するとともに、透析液導入ラインL1bに配設された逆止弁Vによって、透析液導入ラインL1bにおいてポンプ装置1から血液浄化器Hに向かう透析液の流れを許容しつつ逆方向の流れを規制している。
【0029】
さらに、透析液排出ラインL2aに配設された逆止弁Vによって、透析液排出ラインL2aにおいてポンプ装置1から透析液の排液手段に向かう透析液の流れを許容しつつ逆方向の流れを規制するとともに、透析液排出ラインL2bに配設された逆止弁Vによって、透析液排出ラインL2bにおいて血液浄化器Hからポンプ装置1に向かう透析液の流れを許容しつつ逆方向の流れを規制している。
【0030】
しかるに、本実施形態に適用される血液浄化器Hは、患者の血液を体外循環させる動脈側血液回路Naに接続可能な血液導入ポートaと、静脈側血液回路Nbに接続可能な血液導出ポートbと、透析液導入ラインL1bに接続可能な透析液導入ポートcと、透析液排出ラインL2bに接続可能な透析液排出ポートdとを有するとともに、筐体内に複数の中空糸膜(血液浄化膜)が配設されている。
【0031】
なお、血液浄化器H内に形成された中空糸膜には複数の微少孔が形成されているため、中空糸内部で血液を通過させつつ中空糸外部で透析液を通過させると、中空糸膜を介して血液中の不要物(老廃物)が透析液側に透析除去し得るよう構成されている。また、透析液排出ラインL2aと透析液排出ラインL2bとの間には、バイパスラインL3が接続されており、そのバイパスラインL3には除水ポンプQが配設されている。そして、かかる除水ポンプQを駆動させることにより、血液浄化器Hを通過する患者の血液から水分を除去する除水が行われることとなる。
【0032】
そして、ポンプ装置1のモータMを駆動させると、血液浄化器Hに対する透析液の導入及び排液の排出が行われることとなる。すなわち、ポンプ装置1のモータMが駆動してピストンPがポンプ本体部7内にて往復動する過程において、供給チャンバ2に向かってピストンPが動作すると、隔膜4及び従動膜5の変位により供給側収容部S1の容量が減少するとともに排出側収容部S2の容量が増加する。これにより、給液側接続ポートP2から透析液が吐出されて血液浄化器Hに透析液が導入されるとともに、排液側接続ポートP3から排液が吸い込まれて血液浄化器Hから排液が排出されることとなる。
【0033】
一方、ポンプ装置1のモータMが駆動してピストンPがポンプ本体部7内にて往復動する過程において、排出チャンバ3に向かってピストンPが動作すると、隔膜4及び従動膜5の変位により供給側収容部S1の容量が増加するとともに排出側収容部S2の容量が減少する。これにより、給液側接続ポートP1から供給側収容部S1に透析液が吸い込まれるとともに、排液側接続ポートP4から排液が吐出されることにより排出側収容部S2から排液が排出されることとなる。
【0034】
しかるに、本実施形態においては、逆止弁Vにて透析液及び排液の流動を所望方向に設定できるので、透析液導入ライン(L1a、L1b)及び透析液排出ライン(L2a、L2b)において別個のポンプや電磁弁を不要とすることができる。なお、本実施形態においては、透析液導入ライン(L1a、L1b)及び透析液排出ライン(L2a、L2b)に逆止弁Vが接続されているが、ポンプ装置1の供給チャンバ2または排出チャンバ3に逆止弁を取り付けるようにしてもよい。
【0035】
本実施形態によれば、供給チャンバ2及び排出チャンバ3にそれぞれ取り付けられて供給側収容部S1及び排出側収容部S2を閉止した可撓性部材から成る隔膜4を有し、隔膜4で供給側収容部S1または排出側収容部S2がそれぞれ閉止された供給チャンバ2または排出チャンバ3をポンプ本体部7に対して脱着可能とされたので、チャンバ(供給チャンバ2又は排出チャンバ3)をポンプ本体部7から取り外す際に、残余した透析液や排液が外部に飛散するのを防止することができる。
【0036】
また、本実施形態に係るポンプ本体部7は、隔膜4と重なる従動膜5が取り付けられるとともに、従動膜5とピストンP(駆動部)との間に非圧縮性の液体が充填されたので、非圧縮性の液体を介してピストンPの動作を隔膜4及び従動膜5に伝達して変位させることができるとともに、チャンバ(供給チャンバ2又は排出チャンバ3)をポンプ本体部7から取り外す際に、従動膜5による閉止によって非圧縮性の液体が外部に飛散してしまうのを防止することができる。
【0037】
さらに、隔膜4及び従動膜5の間を負圧としてこれら隔膜4及び従動膜5を密着させる負圧ポートP5を具備したので、チャンバ(供給チャンバ2又は排出チャンバ3)をポンプ本体部7に組付けた際、隔膜4及び従動膜5を確実且つ容易に密着させて重ねた状態とすることができ、ピストンPの動作時に隔膜4を従動膜5に精度よく追従させることができる。またさらに、隔膜4及び従動膜5の間の圧力を検出する圧力センサJ(圧力検出部)を具備したので、隔膜4または従動膜5が破損した場合、隔膜4及び従動膜5の間に圧力上昇が生じるので、その隔膜4または従動膜5の破損を圧力センサJで検知することができる。加えて、従動膜5とピストンP(駆動部)との間に非圧縮性の液体を導入及び排出する充填ポートP6を具備したので、非圧縮性の液体の交換を容易に行うことができる。
【0038】
またさらに、駆動部は、ポンプ本体部7内で往復動するピストンPから成り、ピストンPの両端部に対応する位置に供給チャンバ2及び排出チャンバ3がそれぞれ取り付けられたので、ピストンPの往復動作を効率よく隔膜4に伝達させて変位させることができ、透析液の吸い込み及び吐出と排液の吸い込み及び吐出を円滑に行わせることができる。
【0039】
次に、本発明の他の実施形態に係るポンプ装置について説明する。
本実施形態に係るポンプ装置9は、図9、10に示すように、ポンプ本体部7内に取り付けられた複数(本実施形態においては2つ)のピストンPa、Pbを具備するとともに、それぞれのピストンPa、Pbの両端部に対応する位置に供給チャンバ2及び排出チャンバ3がそれぞれ取り付けられている。なお、上記実施形態と同様の部品には、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0040】
また、本実施形態に係るポンプ装置9は、駆動源としてのモータMを具備するとともに、モータMの出力軸Maには、複数のピストンPa、Pbに跨ってクランクシャフトLが取り付けられている。そして、モータMを駆動させると、クランクシャフトLを介してピストンPa、Pbが互いに逆位相(ピストンPa、Pbの動作方向が互いに逆方向)で往復動し、血液浄化器Hに対する透析液の導入及び排液の排出が行われることとなる。
【0041】
すなわち、本実施形態に係るポンプ装置9は、ピストンPaを駆動部として構成される第1ポンプ部9aと、ピストンPbを駆動部として構成される第2ポンプ部9bとを有して構成されており、単一の駆動源(モータM)を駆動させることにより、クランクシャフトLを介して第1ポンプ部9a及び第2ポンプ部9bにおけるそれぞれのピストンPa、Pbが互いに逆位相で往復動するよう構成されている。
【0042】
そして、ポンプ装置9のモータMが駆動してピストンPa、Pbがポンプ本体部7内にて逆位相で往復動する過程において、第1ポンプ部9aにおいて、ピストンPaが供給チャンバ2に向かって動作すると、隔膜4及び従動膜5の変位により供給側収容部S1の容量が減少しつつ排出側収容部S2の容量が増加するとともに、第2ポンプ部9bにおいては、ピストンPbが排出チャンバ3に向かって動作して、隔膜4及び従動膜5の変位により供給側収容部S1の容量が増加しつつ排出側収容部S2の容量が減少する。
【0043】
また、ポンプ装置9のモータMが駆動してピストンPa、Pbがポンプ本体部7内にて逆位相で往復動する過程において、第1ポンプ部9aにおいて、ピストンPaが排出チャンバ3に向かって動作すると、隔膜4及び従動膜5の変位により供給側収容部S1の容量が増加しつつ排出側収容部S2の容量が減少するとともに、第2ポンプ部9bにおいては、ピストンPbが供給チャンバ2に向かって動作して、隔膜4及び従動膜5の変位により供給側収容部S1の容量が減少しつつ排出側収容部S2の増加が減少する。
【0044】
これにより、第1ポンプ部9aにおいて透析液の吸い込みを行う過程において第2ポンプ部9bにおいて透析液の吐出を行わせ、且つ、第1ポンプ部9aにおいて透析液の吐出を行う過程において第2ポンプ部9bにおいて透析液の吸い込みを行わせるので、血液浄化器Hに対する透析液の導入を継続して行わせることができるとともに、第1ポンプ部9aにおいて排液の吸い込みを行う過程において第2ポンプ部9bにおいて排液の吐出を行わせ、且つ、第1ポンプ部9aにおいて排液の吐出を行う過程において第2ポンプ部9bにおいて排液の吸い込みを行わせるので、血液浄化器Hからの排液の排出を継続して行わせることができる。
【0045】
本実施形態によれば、ピストンPa、Pbは、ポンプ本体部7内に複数取り付けられるとともに、それぞれのピストンPa、Pbの両端部に対応する位置に供給チャンバ2及び排出チャンバ3がそれぞれ取り付けられ、且つ、モータM(駆動源)の駆動により複数のピストンPa、Pbを逆位相にて往復動させるので、血液浄化器Hに対する透析液の導入及び排液の排出を連続的に行わせることができ、脈動を抑制することができる。
【0046】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図11に示すように、供給チャンバ2及び排出チャンバ3に隔膜4が取り付けられるとともに、ポンプ本体部7の固定部7aには従動膜5が取り付けられないポンプ装置であってもよい。また、隔膜4及び従動膜5を有するものであっても、負圧ポートP5を具備しない(隔膜4及び従動膜5を密着させない)ものであってもよい。さらに、隔膜4及び従動膜5の間を負圧として密着させるものの他、隔膜4及び従動膜5を粘着性材料で接着するもの、或いは磁力で密着させるもの等であってもよい。
【0047】
本発明の第1の実施の態様は、給液側接続ポート(P1、P2)が接続されるとともに、所定容量の透析液を収容する供給側収容部S1が形成された供給チャンバ2と、排液側接続ポート(P3,P4)が接続されるとともに、所定容量の排液を収容する排出側収容部S2が形成された排出チャンバ3と、供給チャンバ2及び排出チャンバ3にそれぞれ取り付けられて供給側収容部S1及び排出側収容部S2を閉止した可撓性部材から成り、供給側収容部S1及び排出側収容部S2に対して変位することにより、給液側接続ポート(P1、P2)を介して供給側収容部S1に対する透析液の吸込み及び吐出と、排液側接続ポート(P3、P4)を介して排出側収容部S2に対する排液の吸込み及び吐出とを行わせる隔膜4と、隔膜4で供給側収容部S1または排出側収容部S2がそれぞれ閉止された供給チャンバ2または排出チャンバ3を脱着可能とされ、モータM(駆動源)の駆動によって動作して隔膜4を変位させるピストンP(駆動部)を有したポンプ本体部7と、を備えたポンプ装置1である。これにより、チャンバ(供給チャンバ2又は排出チャンバ3)をポンプ本体部7から取り外す際に、残余した透析液や排液が外部に飛散するのを防止することができる。
【0048】
本発明の第2の実施の態様は、第1の実施の態様において、ポンプ本体部7は、隔膜4と重なる従動膜5が取り付けられるとともに、従動膜5とピストンP(駆動部)との間に非圧縮性の液体が充填されたポンプ装置1である。これにより、非圧縮性の液体を介してピストンPの動作を隔膜4及び従動膜5に伝達して変位させることができるとともに、チャンバ(供給チャンバ2又は排出チャンバ3)をポンプ本体部7から取り外す際に、従動膜5による閉止によって非圧縮性の液体が外部に飛散してしまうのを防止することができる。
【0049】
本発明の第3の実施の態様は、第2の実施の態様において、隔膜4及び従動膜5との間を負圧としてこれら隔膜4及び従動膜5を密着させる負圧ポートP5を具備したポンプ装置1である。これにより、チャンバ(供給チャンバ2又は排出チャンバ3)をポンプ本体部7に組付けた際、隔膜4及び従動膜5を確実且つ容易に密着させて重ねた状態とすることができ、ピストンPの動作時に隔膜4を従動膜5に精度よく追従させることができる。
【0050】
本発明の第4の実施の態様は、第2の実施の態様において、隔膜及び従動膜の間の圧力を検出する圧力センサJを具備したので、隔膜または従動膜が破損した場合、隔膜及び従動膜の間に圧力上昇が生じるので、その隔膜及び従動膜の破損を圧力センサJで検知することができる。
【0051】
本発明の第5の実施の態様は、第2の実施の態様において、従動膜5とピストンP(駆動部)との間に非圧縮性の液体を導入及び排出する充填ポートP6を具備したポンプ装置1である。これにより、非圧縮性の液体の交換を容易に行うことができる。
【0052】
本発明の第6の実施の態様は、第2の実施の態様において、駆動部は、ポンプ本体部7内で往復動するピストンP(Pa、Pb)から成り、ピストンP(Pa、Pb)の両端部に対応する位置に供給チャンバ2及び排出チャンバ3がそれぞれ取り付けられたポンプ装置1である。これにより、ピストンPの往復動作を効率よく隔膜4に伝達させて変位させることができ、透析液の吸い込み及び吐出と排液の吸い込み及び吐出を円滑に行わせることができる。
【0053】
本発明の第7の実施の態様は、第6の実施の態様において、ピストンPa、Pbは、ポンプ本体部7内に複数取り付けられるとともに、それぞれのピストンPa、Pbの両端部に対応する位置に供給チャンバ2及び排出チャンバ3がそれぞれ取り付けられ、且つ、モータM(駆動源)の駆動により複数のピストンPa、Pbを逆位相にて往復動させるポンプ装置1である。これにより、血液浄化器Hに対する透析液の導入及び排液の排出を連続的に行わせることができ、脈動を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明と同様の趣旨であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1、9 ポンプ装置
2 供給チャンバ
3 排出チャンバ
4 隔膜
5 従動膜
6 介在部材
7 ポンプ本体部
7a 固定部
7b カバー部
8 カム部
9 ポンプ装置
9a 第1ポンプ部
9b 第2ポンプ部
M モータ(駆動源)
Ma 出力軸
P ピストン(駆動部)
P1、P2 給液側接続ポート
P3、P4 排液側接続ポート
P5 負圧ポート
P6 充填ポート
S1 供給側収容部
S2 排出側収容部
S3、S4 充填部
J 圧力センサ(圧力検出部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11