(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167001
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】プリント基板用プリプレグ、金属張積層板、およびプリント基板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/03 20060101AFI20241122BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20241122BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20241122BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20241122BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20241122BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20241122BHJP
H05K 3/38 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
H05K1/03 610T
C08L101/00
C08K7/02
C08K3/36
C08J5/04
H05K3/00 D
H05K3/38 D
H05K1/03 610P
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083503
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】大東 範行
【テーマコード(参考)】
4F072
4J002
5E343
【Fターム(参考)】
4F072AA07
4F072AB09
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4J002AA021
4J002BC051
4J002BD122
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4J002FD148
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5E343AA02
5E343AA13
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5E343DD76
5E343ER39
5E343GG13
(57)【要約】
【課題】電子機器のノイズ等に対する優れた耐性を実現する、プリント基板用プリプレグを提供する。
【解決手段】本発明のプリント基板用プリプレグは、繊維基材と、樹脂組成物と、を含むプリント基板用プリプレグであって、当該プリント基板用プリプレグの硬化体における、前記繊維基材の10GHzにおける比誘電率と、前記樹脂組成物の10GHzにおける比誘電率との差が、2.5以下であって、当該プリント基板用プリプレグの硬化体の10GHzにおける誘電正接が0.0005以上0.005以下であって、当該プリント基板用プリプレグにおける、繊維基材を含まない領域の割合が、30%以下であるプリント基板用プリプレグである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維基材と、熱硬化性樹脂組成物と、を含むプリント基板用プリプレグであって、
当該プリント基板用プリプレグの硬化体における、前記繊維基材の10GHzにおける比誘電率と、前記熱硬化性樹脂組成物の10GHzにおける比誘電率との差が、2.5以下であって、
当該プリント基板用プリプレグの硬化体の10GHzにおける誘電正接が0.0005以上0.005以下であって、
当該プリント基板用プリプレグにおける、以下の手順1により測定される、繊維基材を含まない領域の割合が、30%以下であるプリント基板用プリプレグ。
(手順1)
(1)顕微鏡を用いて、当該プリプレグの面外方向からの画像を取得する。
(2)上記(1)で得られた画像を2値化処理する。閾値色を白黒とし、256階調の30を閾値として、それ以下を黒とする。
(3)2値化後の黒色部分の割合を、繊維基材を含まない領域の割合とする。
【請求項2】
以下の手順2で測定される、Z0MD(t)が、以下の条件1を満たす、
請求項1に記載のプリント基板用プリプレグ。
(手順2)
1.厚さ50μm以上100μm以下の当該プリプレグの両面に18μm銅箔を配置し、温度200℃以上250℃以下、荷重3MPaの条件で2時間以上3時間以下の時間加熱して硬化させ銅張積層板を得る。
2.前記銅張積層板上にエッチングで回路を形成する。
3.前記銅張積層板上に、線幅120/140/160/180/200μm、高さ18μm、長さ40mmの各マイクロストリップ線路を任意のMD方向に形成する。
4.前記MD方向に形成した各マイクロストリップ線路について、ネットワークアナライザーにより特性インピーダンスZを測定し、Zの値が50Ω以上60Ω以下の範囲にあるマイクロストリップ線路を選択する。なお、Zの値が50Ω以上60Ω以下の範囲にあるマイクロストリップ線路が複数ある場合には、Zの値が最も小さいマイクロストリップ線路を選択する。そして、選択したマイクロストリップ線路の特性インピーダンスをZ1とする。
5.選択したマイクロストリップ線路に対して、信号源の内部インピーダンスを50Ωとして、電圧振幅125mV、立ち上がり時間20psのパルス信号を印加し、マイクロストリップ線路からの時間毎の反射電圧に対してTDR解析を行い、Z0MD(t)を測定する。
(条件1)
マイクロストリップ線路が形成された領域に対応する時間領域において、Z0MD(t)が、(Z1-5)Ω以上(Z1+5)Ω以下である。
【請求項3】
以下の手順3で測定される、Z0TD(t)が、以下の条件2を満たす、
請求項2に記載のプリント基板用プリプレグ。
(手順3)
1.厚さ50μm以上100μm以下の当該プリプレグの両面に18μm銅箔を配置し、温度200℃以上250℃以下、荷重3MPaの条件で2時間以上3時間以下の時間加熱して硬化させ銅張積層板を得る。
2.前記銅張積層板上にエッチングで回路を形成する。
3.前記銅張積層板上に、線幅120/140/160/180/200μm、高さ18μm、長さ40mmの各マイクロストリップ線路を前記MD方向に直角なTD方向に形成する。
4.前記TD方向に形成した各マイクロストリップ線路について、ネットワークアナライザーにより特性インピーダンスZを測定し、Zの値が50Ω以上60Ω以下の範囲にあるマイクロストリップ線路を選択する。なお、Zの値が50Ω以上60Ω以下の範囲にあるマイクロストリップ線路が複数ある場合には、Zの値が最も小さいマイクロストリップ線路を選択する。そして、選択したマイクロストリップ線路の特性インピーダンスをZ2とする。
5.選択したマイクロストリップ線路に対して、信号源の内部インピーダンスを50Ωとして、電圧振幅125mV、立ち上がり時間20psのパルス信号を印加し、マイクロストリップ線路からの時間毎の反射電圧に対してTDR解析を行い、Z0TD(t)を測定する。
(条件2)
マイクロストリップ線路が形成された領域に対応する時間領域において、Z0TD(t)が、(Z2-5)Ω以上(Z2+5)Ω以下である。
【請求項4】
以下の手順4で測定される、Z045°(t)が、以下の条件3を満たす、
請求項3に記載のプリント基板用プリプレグ。
(手順4)
1.厚さ50μm以上100μm以下の当該プリプレグの両面に18μm銅箔を配置し、温度200℃以上250℃以下、荷重3MPaの条件で2時間以上3時間以下の時間加熱して硬化させ銅張積層板を得る。
2.前記銅張積層板上にエッチングで回路を形成する。
3.前記銅張積層板上に、線幅120/140/160/180/200μm、高さ18μm、長さ40mmの各マイクロストリップ線路を前記MD方向に対して45°の方向に形成する。
4.前記MD方向に対して45°の方向に形成した各マイクロストリップ線路について、ネットワークアナライザーにより特性インピーダンスZを測定し、Zの値が50Ω以上60Ω以下の範囲にあるマイクロストリップ線路を選択する。なお、Zの値が50Ω以上60Ω以下の範囲にあるマイクロストリップ線路が複数ある場合には、Zの値が最も小さいマイクロストリップ線路を選択する。そして、選択したマイクロストリップ線路の特性インピーダンスをZ3とする。
5.選択したマイクロストリップ線路に対して、信号源の内部インピーダンスを50Ωとして、電圧振幅125mV、立ち上がり時間20psのパルス信号を印加し、マイクロストリップ線路からの時間毎の反射電圧に対してTDR解析を行い、Z045°(t)を測定する。
(条件3)
マイクロストリップ線路が形成された領域に対応する時間領域において、Z045°(t)が、(Z3-5)Ω以上(Z3+5)Ω以下である。
【請求項5】
前記熱硬化性樹脂組成物は、シリカ粒子を含む、
請求項1又は2に記載のプリント基板用プリプレグ。
【請求項6】
前記シリカ粒子は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、45質量%以上65質量%以下である、
請求項5に記載のプリント基板用プリプレグ。
【請求項7】
前記熱硬化性樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテルを含む、
請求項1又は2に記載のプリント基板用プリプレグ。
【請求項8】
前記熱硬化性樹脂組成物は、ビスマレイミド樹脂を含む、
請求項1又は2に記載のプリント基板用プリプレグ。
【請求項9】
前記熱硬化性樹脂組成物は、スチレンブタジエンゴムを含む、
請求項1又は2に記載のプリント基板用プリプレグ。
【請求項10】
前記熱硬化性樹脂組成物は、架橋剤を含む、
請求項1又は2に記載のプリント基板用プリプレグ。
【請求項11】
前記架橋剤は、トリアリルイソシアヌレート環を含む、
請求項10に記載のプリント基板用プリプレグ。
【請求項12】
請求項1又は2に記載のプリント基板用プリプレグの硬化体を含む金属張積層板。
【請求項13】
請求項12に記載の金属張積層板を含むプリント基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板用プリプレグ、金属張積層板、およびプリント基板に関する。
【0002】
近年では、半導体技術の進歩により半導体部品の高速化、省電力化等が進み、電子機器の機能は、飛躍的に向上した。
【0003】
しかし、高速化、高集積化、低消費電力化の進んだ半導体のLC、LCIを使用することにより、電子機器のノイズ等に対する耐性は劣化する傾向にある。そのため、近年では、電子機器のノイズ等に対する優れた耐性を実現する、プリント基板用プリプレグが求められている。例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、変性ポリフェニレンエーテル共重合体、架橋型硬化剤、および無機充填材を含む、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ノイズの発生を抑制するプリント基板を実現する、プリント基板用プリプレグを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、繊維基材と、熱硬化性樹脂組成物とを含むプリント基板用プリプレグにおいて、繊維基材の10GHzにおける比誘電率と、熱硬化性樹脂組成物の10GHzにおける比誘電率との差を2.5以下に制御し、当該プリント基板用プリプレグの硬化体の10GHzにおける誘電正接を0.0005以上0.005以下に制御し、特定の方法で測定される当該プリント基板用プリプレグに含まれる繊維基材を含まない領域の割合を30%以下に制御することで、電子機器のノイズ等に対する優れた耐性を実現できることを見出して、本発明を完成させた。
【0007】
本発明によれば、以下のプリント基板用プリプレグ、金属張積層板、およびプリント基板が提供される。
[1]
繊維基材と、熱硬化性樹脂組成物と、を含むプリント基板用プリプレグであって、
当該プリント基板用プリプレグの硬化体における、前記繊維基材の10GHzにおける比誘電率と、前記熱硬化性樹脂組成物の10GHzにおける比誘電率との差が、2.5以下であって、
当該プリント基板用プリプレグの硬化体の10GHzにおける誘電正接が0.0005以上0.005以下であって、
当該プリント基板用プリプレグにおける、以下の手順1により測定される、繊維基材を含まない領域の割合が、30%以下であるプリント基板用プリプレグ。
(手順1)
(1)顕微鏡を用いて、当該プリプレグの面外方向からの画像を取得する。
(2)上記(1)で得られた画像を2値化処理する。閾値色を白黒とし、256階調の30を閾値として、それ以下を黒とする。
(3)2値化後の黒色部分の割合を、繊維基材を含まない領域の割合とする。
[2]
以下の手順2で測定される、Z0MD(t)が、以下の条件1を満たす、
[1]に記載のプリント基板用プリプレグ。
(手順2)
1.厚さ50μm以上100μm以下の当該プリプレグの両面に18μm銅箔を配置し、温度200℃以上250℃以下、荷重3MPaの条件で2時間以上3時間以下の時間加熱して硬化させ銅張積層板を得る。
2.前記銅張積層板上にエッチングで回路を形成する。
3.前記銅張積層板上に、線幅120/140/160/180/200μm、高さ18μm、長さ40mmの各マイクロストリップ線路を任意のMD方向に形成する。
4.前記MD方向に形成した各マイクロストリップ線路について、ネットワークアナライザーにより特性インピーダンスZを測定し、Zの値が50Ω以上60Ω以下の範囲にあるマイクロストリップ線路を選択する。なお、Zの値が50Ω以上60Ω以下の範囲にあるマイクロストリップ線路が複数ある場合には、Zの値が最も小さいマイクロストリップ線路を選択する。そして、選択したマイクロストリップ線路の特性インピーダンスをZ1とする。
5.選択したマイクロストリップ線路に対して、信号源の内部インピーダンスを50Ωとして、電圧振幅125mV、立ち上がり時間20psのパルス信号を印加し、マイクロストリップ線路からの時間毎の反射電圧に対してTDR解析を行い、Z0MD(t)を測定する。
(条件1)
マイクロストリップ線路が形成された領域に対応する時間領域において、Z0MD(t)が、(Z1-5)Ω以上(Z1+5)Ω以下である。
[3]
以下の手順3で測定される、Z0TD(t)が、以下の条件2を満たす、
[2]に記載のプリント基板用プリプレグ。
(手順3)
1.厚さ50μm以上100μm以下の当該プリプレグの両面に18μm銅箔を配置し、温度200℃以上250℃以下、荷重3MPaの条件で2時間以上3時間以下の時間加熱して硬化させ銅張積層板を得る。
2.前記銅張積層板上にエッチングで回路を形成する。
3.前記銅張積層板上に、線幅120/140/160/180/200μm、高さ18μm、長さ40mmの各マイクロストリップ線路を前記MD方向に直角なTD方向に形成する。
4.前記TD方向に形成した各マイクロストリップ線路について、ネットワークアナライザーにより特性インピーダンスZを測定し、Zの値が50Ω以上60Ω以下の範囲にあるマイクロストリップ線路を選択する。なお、Zの値が50Ω以上60Ω以下の範囲にあるマイクロストリップ線路が複数ある場合には、Zの値が最も小さいマイクロストリップ線路を選択する。そして、選択したマイクロストリップ線路の特性インピーダンスをZ2とする。
5.選択したマイクロストリップ線路に対して、信号源の内部インピーダンスを50Ωとして、電圧振幅125mV、立ち上がり時間20psのパルス信号を印加し、マイクロストリップ線路からの時間毎の反射電圧に対してTDR解析を行い、Z0TD(t)を測定する。
(条件2)
マイクロストリップ線路が形成された領域に対応する時間領域において、Z0TD(t)が、(Z2-5)Ω以上(Z2+5)Ω以下である。
[4]
以下の手順4で測定される、Z045°(t)が、以下の条件3を満たす、
[3]に記載のプリント基板用プリプレグ。
(手順4)
1.厚さ50μm以上100μm以下の当該プリプレグの両面に18μm銅箔を配置し、温度200℃以上250℃以下、荷重3MPaの条件で2時間以上3時間以下の時間加熱して硬化させ銅張積層板を得る。
2.前記銅張積層板上にエッチングで回路を形成する。
3.前記銅張積層板上に、線幅120/140/160/180/200μm、高さ18μm、長さ40mmの各マイクロストリップ線路を前記MD方向に対して45°の方向に形成する。
4.前記MD方向に対して45°の方向に形成した各マイクロストリップ線路について、ネットワークアナライザーにより特性インピーダンスZを測定し、Zの値が50Ω以上60Ω以下の範囲にあるマイクロストリップ線路を選択する。なお、Zの値が50Ω以上60Ω以下の範囲にあるマイクロストリップ線路が複数ある場合には、Zの値が最も小さいマイクロストリップ線路を選択する。そして、選択したマイクロストリップ線路の特性インピーダンスをZ3とする。
5.選択したマイクロストリップ線路に対して、信号源の内部インピーダンスを50Ωとして、電圧振幅125mV、立ち上がり時間20psのパルス信号を印加し、マイクロストリップ線路からの時間毎の反射電圧に対してTDR解析を行い、Z045°(t)を測定する。
(条件3)
マイクロストリップ線路が形成された領域に対応する時間領域において、Z045°(t)が、(Z3-5)Ω以上(Z3+5)Ω以下である。
[5]
前記熱硬化性樹脂組成物は、シリカ粒子を含む、
[1]乃至[4]のいずれかに記載のプリント基板用プリプレグ。
[6]
前記シリカ粒子は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、45質量%以上65質量%以下である、
[5]に記載のプリント基板用プリプレグ。
[7]
前記熱硬化性樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテルを含む、
[1]乃至[6]のいずれかに記載のプリント基板用プリプレグ。
[8]
前記熱硬化性樹脂組成物は、ビスマレイミド樹脂を含む、
[1]乃至[7]のいずれかに記載のプリント基板用プリプレグ。
[9]
前記熱硬化性樹脂組成物は、スチレンブタジエンゴムを含む、
[1]乃至[8]のいずれかに記載のプリント基板用プリプレグ。
[10]
前記熱硬化性樹脂組成物は、架橋剤を含む、
[1]乃至[9]のいずれかに記載のプリント基板用プリプレグ。
[11]
前記架橋剤は、トリアリルイソシアヌレート環を含む、
[10]に記載のプリント基板用プリプレグ。
[12]
[1]乃至[11]のいずれかに記載のプリント基板用プリプレグの硬化体を含む金属張積層板。
[13]
[12]に記載の金属張積層板を含むプリント基板。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ノイズの発生を抑制するプリント基板を実現する、プリント基板用プリプレグが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係るプリプレグの面外方向からの画像の一例を示す図である。
【
図2】実施例におけるプリプレグのTDR法による特性インピーダンスの測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
【0011】
[プリプレグの定義・概説]
本実施形態に係るプリプレグは、熱硬化性樹脂組成物中に繊維基材を含むように構成される。プリプレグは、熱硬化性樹脂組成物を繊維基材に含浸してなるものである。例えば、プリプレグは、熱硬化性樹脂組成物を繊維基材に含浸させ、その後、半硬化させて得られる。プリプレグは、誘電特性、高温多湿下での機械的、電気的接続信頼性などの各種特性に優れ、プリント基板の絶縁層の製造に適している。
【0012】
本実施形態に係るプリプレグは、例えば、プリント配線基板におけるコア層中の絶縁層やビルドアップ層を形成するために用いることができる。
【0013】
図1は、顕微鏡(オリンパス社製:DSX-500)を用いて取得した、本実施形態に係るプリプレグの面外方向からの画像の一例を示す。プリプレグに含まれる繊維基材は、縦糸110と横糸120を含む。そして、プリプレグには、繊維基材を含まない領域130が発生する。繊維基材を含まない領域130は、繊維基材を含む他の領域と比べて、熱硬化後の寄生容量が小さくなる傾向がある。
【0014】
本実施形態に係るプリプレグは、以下の手順1により測定される、繊維基材を含まない領域の割合が、30%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、20%以下であることがさらにより好ましい。これにより、当該プリプレグを用いて製造したプリント基板において、ノイズ等に対する優れた耐性を実現できる。
(手順1)
(1)顕微鏡(オリンパス社製:DSX-500)を用いて、当該基板用プリプレグの面外方向からの画像を取得する。
(2)上記(1)で得られた画像を2値化処理する。閾値色を白黒とし、256階調の30を閾値として、それ以下を黒とする。
(3)2値化後の黒色部分の割合を、繊維基材を含まない領域の割合とする。
【0015】
また、本実施形態に係るプリプレグの硬化体において、繊維基材の比誘電率と熱硬化性樹脂組成物の比誘電率の差は、2.5以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましく、1.7以下であることがさらにより好ましい。これにより、当該プリプレグを用いて製造したプリント基板において、ノイズ等に対する優れた耐性をより実現できる。なお、本明細書において、比誘電率は、周波数が10GHzにおける空洞共振器法により測定されるものを示す。
【0016】
また、本実施形態に係るプリプレグの硬化体の誘電正接は、0.005以下であることが好ましく、0.004以下であることがより好ましい。これにより、当該プリプレグを用いて製造したプリント基板において、誘電損失を低減できる。また、プリプレグの硬化体の誘電正接は、0.0005以上であることが好ましく、0.001以上であることがより好ましい。これにより、当該プリプレグを用いてプリント基板を製造する際に、プリプレグと金属との接着性を向上することができる。なお、本明細書において、誘電正接は、周波数が10GHzにおける空洞共振器法により測定されるものを示す。
【0017】
また、プリント基板上の配線において、特性インピーダンスは、寄生インダクタンスと寄生容量からなる分布定数から定まる。特性インピーダンスZ0は、√(L/C)で表される(Lは単位長あたりの寄生インダクタンス、Cは単位長あたりの寄生容量)。すなわち、プリント基板において寄生容量にばらつきがある場合、当該プリント基板上の配線において、特性インピーダンスの不整合部分を発生させてしまう。そして、特性インピーダンスの不整合部分で信号の反射が発生し、これがノイズの原因となる。
【0018】
特性インピーダンスを評価する方法として、TDR法がある。TDR法は、高速パルス信号を試料に入射し、その反射電圧を測定することにより試料の特性インピーダンスを測定する方法である。
【0019】
上述のとおり、入射波は特性インピーダンス不整合部分で反射する。その反射係数ρは、試料の特性インピーダンスをZL、既知の特性インピーダンスをZOとした場合、ρ=(ZL-ZO)/(ZL+ZO)で表される。反射係数ρに基づいて、ZLを求めることがTDR法の原理である。
【0020】
本実施形態に係るプリプレグは、以下の手順2で測定される、Z0MD(t)が、(Z1-5)Ω以上(Z1+5)Ω以下であることが好ましく、(Z1-4)Ω以上(Z1+4)Ω以下であることがより好ましく、(Z1-3)Ω以上(Z1+3)Ω以下であることがさらにより好ましい。なお、以下の手順2におけるMD方向とは、例えばプリプレグの長手方向である。
(手順2)
1.厚さ50μm以上100μm以下の当該プリプレグの両面に18μm銅箔を配置し、温度200℃以上250℃以下、荷重3MPaの条件で2時間以上3時間以下の時間加熱して硬化させ銅張積層板を得る。
2.前記銅張積層板上にエッチングで回路を形成する。
3.前記銅張積層板上に、線幅120/140/160/180/200μm、高さ18μm、長さ40mmの各マイクロストリップ線路を任意のMD方向に形成する。
4.前記MD方向に形成した各マイクロストリップ線路について、ネットワークアナライザーにより特性インピーダンスZを測定し、Zの値が50Ω以上60Ω以下の範囲にあるマイクロストリップ線路を選択する。なお、Zの値が50Ω以上60Ω以下の範囲にあるマイクロストリップ線路が複数ある場合には、Zの値が最も小さいマイクロストリップ線路を選択する。そして、選択したマイクロストリップ線路の特性インピーダンスをZ1とする。
5.選択したマイクロストリップ線路に対して、信号源の内部インピーダンスを50Ωとして、電圧振幅125mV、立ち上がり時間20psのパルス信号を印加し、マイクロストリップ線路からの時間毎の反射電圧に対してTDR解析を行い、Z0MD(t)を測定する。
【0021】
また、本実施形態に係るプリプレグは、以下の手順3で測定される、Z0TD(t)が、(Z2-5)Ω以上(Z2+5)Ω以下であることが好ましく、(Z2-4)Ω以上(Z2+4)Ω以下であることがより好ましく、(Z2-3)Ω以上(Z2+3)Ω以下であることがさらにより好ましい。
(手順3)
1.厚さ50μm以上100μm以下の当該プリプレグの両面に18μm銅箔を配置し、温度200℃以上250℃以下、荷重3MPaの条件で2時間以上3時間以下の時間加熱して硬化させ銅張積層板を得る。
2.前記銅張積層板上にエッチングで回路を形成する。
3.前記銅張積層板上に、線幅120/140/160/180/200μm、高さ18μm、長さ40mmの各マイクロストリップ線路を前記MD方向に直角なTD方向に形成する。
4.前記TD方向に形成した各マイクロストリップ線路について、ネットワークアナライザーにより特性インピーダンスZを測定し、Zの値が50Ω以上60Ω以下の範囲にあるマイクロストリップ線路を選択する。なお、Zの値が50Ω以上60Ω以下の範囲にあるマイクロストリップ線路が複数ある場合には、Zの値が最も小さいマイクロストリップ線路を選択する。そして、選択したマイクロストリップ線路の特性インピーダンスをZ2とする。
5.選択したマイクロストリップ線路に対して、信号源の内部インピーダンスを50Ωとして、電圧振幅125mV、立ち上がり時間20psのパルス信号を印加し、マイクロストリップ線路からの時間毎の反射電圧に対してTDR解析を行い、Z0TD(t)を測定する。
【0022】
また、本実施形態に係るプリプレグは、以下の手順4で測定される、Z045°(t)が、(Z3-5)Ω以上(Z3+5)Ω以下であることが好ましく、(Z3-4)Ω以上(Z3+4)Ω以下であることがより好ましく、(Z3-3)Ω以上(Z3+3)Ω以下であることがさらにより好ましい。
(手順4)
1.厚さ50μm以上100μm以下の当該プリプレグの両面に18μm銅箔を配置し、温度200℃以上250℃以下、荷重3MPaの条件で2時間以上3時間以下の時間加熱して硬化させ銅張積層板を得る。
2.前記銅張積層板上にエッチングで回路を形成する。
3.前記銅張積層板上に、線幅120/140/160/180/200μm、高さ18μm、長さ40mmの各マイクロストリップ線路を前記MD方向に対して45°の方向に形成する。
4.前記MD方向に対して45°の方向に形成した各マイクロストリップ線路について、ネットワークアナライザーにより特性インピーダンスZを測定し、Zの値が50Ω以上60Ω以下の範囲にあるマイクロストリップ線路を選択する。なお、Zの値が50Ω以上60Ω以下の範囲にあるマイクロストリップ線路が複数ある場合には、Zの値が最も小さいマイクロストリップ線路を選択する。そして、選択したマイクロストリップ線路の特性インピーダンスをZ3とする。
5.選択したマイクロストリップ線路に対して、信号源の内部インピーダンスを50Ωとして、電圧振幅125mV、立ち上がり時間20psのパルス信号を印加し、マイクロストリップ線路からの時間毎の反射電圧に対してTDR解析を行い、Z045°(t)を測定する。
【0023】
以下、本実施形態に係るプリプレグを構成する各材料について、詳細に説明する。
【0024】
[繊維基材]
繊維基材としては、例えば、ガラスクロス、あるいはガラス以外の無機化合物を成分とする繊布、芳香族ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂などの有機化合物を成分とする繊布などである。これらの中でもプリプレグの機械的強度の観点から、ガラスクロスを用いることが特に好ましい。
【0025】
ガラスクロスとして、例えば、Eガラス、Sガラス、Dガラス、Tガラス、NEガラス、NE-Rガラス、UTガラス、Lガラス、HPガラスおよび石英ガラスから選ばれる1種以上のガラスにより形成されたガラス繊維基材が好適に用いられる。この中でも、比誘電率、強度のバランスに優れ、かつ比較的安価である、NEガラスおよびNE-Rガラスが好ましい。
【0026】
プリント基板における部分毎の寄生容量値の変動幅を小さくする観点から、繊維基材の材料は、比誘電率が、6.8以下であることが好ましく、5.5以下であることがより好ましく、4.8以下であることがさらにより好ましい。
【0027】
プリント基板における誘電損失を小さくする観点から、繊維基材の材料は、誘電正接が、0.01以下であることが好ましく、0.008以下であることがより好ましく、0.003以下であることがさらにより好ましい。
【0028】
繊維基材の厚みは、特に限定されないが、好ましくは5μm以上150μm以下であり、より好ましくは10μm以上100μm以下であり、さらに好ましくは12μm以上90μm以下である。このような厚みを有する繊維基材を用いることにより、プリプレグ製造時のハンドリング性がさらに向上できる。繊維基材の厚みが上記上限値以下であると、繊維基材中の熱硬化性樹脂組成物の含浸性が向上し、ストランドボイドや絶縁信頼性の低下の発生を抑制することができる。また炭酸ガス、UV、エキシマなどのレーザーによるスルーホールの形成を容易にすることができる。また、繊維基材の厚みが上記下限値以上であると、繊維基材やプリプレグの強度を向上させることができる。その結果、ハンドリング性が向上し、プリプレグの作製が容易となる。
【0029】
繊維基材の含有量は、プリプレグ全体を100体積%としたときに、例えば、5体積%以上45体積%以下が好ましく、10体積%以上40体積%以下がより好ましく、15体積%以上30体積%以下がさらに好ましい。これにより、プリプレグの強度とプリント基板における部分毎の寄生容量値の変動幅を小さくすることの両立が図れる。
【0030】
[熱硬化性樹脂組成物]
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物の比誘電率は、繊維基材の比誘電率との差が2.5以下となることが好ましい。熱硬化性樹脂組成物の比誘電率は、例えば、2.0以上5.0以下が好ましく、2.5以上4.5以下がより好ましく、3.0以上4.0以下が最もより好ましい。
【0031】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物としては、熱により硬化するものであれば特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂、クマロン樹脂、ポリフェニレンエーテル、スチレン-ブタジエン共重合体などから選択される、1種または2種以上の組み合わせを用いることができる。
【0032】
[ビスマレイミド樹脂]
熱硬化性樹脂組成物は、ビスマレイミド樹脂を含むことが好ましい。これにより、プリプレグの硬化体の強度を向上できる。ビスマレイミド樹脂は、マレイミド基を2つ以上有する化合物の(共)重合体である。マレイミド基を2つ以上有する化合物は、例えば、下記一般式(1)に示す化合物を含む。
【0033】
【0034】
上記一般式(1)において、R11は炭素数1以上30以下の2価の有機基であり、酸素原子および窒素原子の少なくとも一方を含んでいてもよい。また、R11が芳香環を含む有機基であることがより好ましい。本実施形態においては、R11として、たとえば下記一般式(2)または(3)の構造が例示でき、プリプレグの硬化体の強度を向上する観点から(3)の構造がより好ましい。
【0035】
【0036】
上記一般式(2)において、R21は、酸素原子および窒素原子の少なくとも一方を含んでいてもよい炭素数1以上18以下の2価の有機基である。また、複数のR22は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1以上4以下の置換もしくは無置換の炭化水素基である。
【0037】
【0038】
上記一般式(3)において、nは平均値であり、1以上5以下の数であり、好ましくは1より大きく5以下の数、より好ましくは1より大きく3以下の数、さらに好ましくは1より大きく2以下の数である。
【0039】
ビスマレイミド樹脂の含有量の下限値は、熱硬化性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、10質量%以上が好ましく、12質量%以上がより好ましく、14質量%以上がさらにより好ましい。これにより、プリプレグの硬化体の強度を向上できる。また、ビスマレイミド樹脂の含有量の上限値は、熱硬化性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらにより好ましい。これにより、プリプレグの硬化体の誘電率を小さくできる。
【0040】
[クマロン樹脂]
熱硬化性樹脂組成物は、クマロン樹脂を含むことが好ましい。これにより、プリプレグの硬化体の誘電率、および誘電正接を小さくできる。クマロン樹脂とは、クマロン系モノマー由来の構造単位を含む平均重合度4~8の(共)重合体である。
【0041】
上記クマロン系モノマー由来の構造単位は、例えば、以下の一般式(4)で表されるものである。
【化4】
【0042】
一般式(4)中、R41は、水素または炭素数1以上3以下の有機基である。R41は互いに同一でもよく、互いに異なっていてもよい。
【0043】
また、クマロン樹脂は、インデン(C9H8)との共重合体である、クマロン-インデン樹脂であることが好ましい。クマロン-インデン樹脂は、クマロン系モノマー由来の構造単位およびインデン系モノマー由来の構造単位を含むものである。また、クマロン-インデン樹脂は、他のモノマー由来の構造単位をさらに有していてもよい。クマロン-インデン樹脂は、例えば、スチレン系モノマー由来の構造単位を有してもよい。
【0044】
上記インデン系モノマーに由来する構造単位は、例えば、以下の一般式(5)で表されるものである。
【化5】
【0045】
一般式(5)中、R51からR57は、それぞれ独立して水素または炭素数1以上3以下の有機基である。
【0046】
上記スチレン系モノマーに由来する構造単位は、例えば、以下の一般式(6)で表されるものである。
【0047】
【0048】
一般式(6)中、R61は、水素または炭素数1以上3以下の有機基である。R61は互いに同一でもよく、互いに異なっていてもよい。
【0049】
上記一般式(4)~(6)において、R41、R51からR57、およびRC61は、例えば、有機基の構造に水素および炭素以外の原子を含んでもよい。具体的には、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、フッ素原子、塩素原子などの1種または2種以上を含んでもよい。
【0050】
上記一般式(4)~(6)において、R41、R51からR57、およびRC61を構成する有機基は、それぞれ独立して、例えば、水素または炭素数1以上3の有機基であり、水素または炭素数1の有機基であることが好ましく、水素であることがさらにより好ましい。
【0051】
上記一般式(4)~(6)において、R41、R51からR57、およびR61を構成する有機基は、メチル基、エチル基、n-プロピル基などのアルキル基;アリル基、ビニル基などのアルケニル基;エチニル基などのアルキニル基;メチリデン基、エチリデン基などのアルキリデン基;シクロプロピル基などのシクロアルキル基;エポキシ基、オキセタニル基などのヘテロ環基などである。
【0052】
また、クマロン-インデン樹脂は、分子内に、エポキシ樹脂のエポキシ基と反応する反応性基を含んでもよい。これにより、さらにプリプレグの硬化体の誘電率を小さくできる。具体的には、OH基、COOH基などを含んでもよい。また、クマロン-インデン樹脂は、内部または末端にフェノール性水酸基を有する芳香族構造を含んでもよい。
【0053】
クマロン-インデン樹脂の重量平均分子量Mwの上限値は、例えば、4000以下であることが好ましく、2000以下であることがより好ましく、1500以下であることがさらに好ましく、1200以下であることがさらにより好ましい。これにより、クマロン-インデン樹脂の相溶性を高め、適切にクマロン-インデン樹脂を分散できる。一方、クマロン-インデン樹脂の重量平均分子量Mwの下限値は、例えば、400以上であることが好ましく、500以上であることがより好ましく、550以上であることがさらにより好ましく、600以上であることが一層より好ましい。これにより、クマロン-インデン樹脂が適切に分散できる。
【0054】
クマロン-インデン樹脂の含有量の下限値は、熱硬化性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらにより好ましい。これにより、プリプレグの硬化体の誘電率および誘電正接を小さくできる。また、クマロン-インデン樹脂の含有量の上限値は、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらにより好ましい。これにより、クマロン-インデン樹脂の含有量の上限値を上記以下とすることで、プリプレグの硬化体の耐熱性を向上できる。
【0055】
[ポリフェニレンエーテル]
熱硬化性樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテルを含むことが好ましい。これにより、プリント基板の耐熱性を向上できる。ポリフェニレンエーテルは、分子中に、架橋剤と架橋反応する官能基を一つ以上含む限り、とくに限定されない。
【0056】
ポリフェニレンエーテルは、例えば、下記一般式(7)で表される構造単位を有するポリマーである。
【0057】
【0058】
上記一般式(7)中、R71、R72、R73、R74は、互いに同じまたは異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、および置換されていてもよいアルコキシ基などである。
【0059】
上記ハロゲン原子は、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等である。好ましくは、塩素原子、臭素原子である。
【0060】
上記置換されていてもよいアルキル基の「アルキル基」は、例えば、炭素数が1以上6以下、好ましくは炭素数が1以上3以下の、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基である。より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等であり、メチル基、エチル基であることがより好ましい。
【0061】
上記置換されていてもよいアルケニル基の「アルケニル基」は、例えば、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、3-ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等であり、エテニル基、1-プロペニル基であることがより好ましい。
【0062】
上記置換されていてもよいアルキニル基の「アルキニル基」は、例えば、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル(プロパルギル)基、3-ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基等であり、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル(プロパルギル)基であることがより好ましい。
【0063】
上記置換されていてもよいアリール基の「アリール基」は、例えば、フェニル基、ナフチル基等であり、フェニル基であることがより好ましい。
【0064】
上記置換されていてもよいアラルキル基の「アラルキル基」は、例えば、ベンジル基、フェネチル基、2-メチルベンジル基、4-メチルベンジル基、α-メチルベンジル基、2-ビニルフェネチル基、4-ビニルフェネチル基等であり、ベンジル基であることがより好ましい。
【0065】
上記置換されていてもよいアルコキシ基の「アルコキシ基」は、例えば、炭素数が1以上6以下、好ましくは炭素数が1以上3以下の、直鎖状または分岐鎖状のアルコキシ基である。例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等であり、メトキシ基、エトキシ基であることがより好ましい。
【0066】
上記のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、およびアルコキシ基が置換されている場合、置換基を1または2以上有していてよい。このような置換基は、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、炭素数1~6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基)、アルケニル基(例えば、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基)、アルキニル基(例えば、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基)等である。
また、ポリフェニレンエーテルは、下記一般式(8)で表される構造単位を有してもよい。
【0067】
【0068】
上記一般式(8)中、R81,R82,R83,R84,R85,R86,R87,R88は、互いに同じまたは異なっていてもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。
【0069】
ポリフェニレンエーテルは、一部または全部を、ビニルベンジル基等のエチレン性不飽和基、エポキシ基、アミノ基、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、およびシリル基等で官能基化された変性ポリフェニレンエーテルを含んでもよい。
【0070】
また、ポリフェニレンエーテルは、両末端が、ヒドロキシ基、エポキシ基、またはエチレン性不飽和基を有することが好ましい。エチレン性不飽和基は、例えば、メタクリレート基、エテニル基、アリル基、メタアクリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基およびオクテニル基等のアルケニル基、シクロペンテニル基およびシクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基、ビニルベンジル基およびビニルナフチル基等のアルケニルアリール基である。また、両末端は、同一の官能基であってもよいし、異なる官能基であってもよい。
【0071】
ポリフェニレンエーテルの重量平均分子量は、500以上5000以下であることが好ましく、1000以上4000以下であることがより好ましい。ポリフェニレンエーテルの重量平均分子量を下限値以上とすることにより、プリプレグの可撓性を良好にできる。一方、ポリフェニレンエーテルの重量平均分子量を上限値以下とすることにより、ポリフェニレンエーテルの溶解性を良好にできる。
【0072】
ポリフェニレンエーテルの含有量の下限値は、熱硬化性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、5質量%以上が好ましく、6質量%以上がより好ましく、7質量%以上がさらにより好ましい。これにより、プリプレグの硬化体の耐熱性を向上できる。また、ポリフェニレンエーテルの含有量の上限値は、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらにより好ましい。これにより、ポリフェニレンエーテルの相溶性を向上できる。
【0073】
[スチレン-ブタジエン共重合体]
熱硬化性樹脂組成物は、スチレン-ブタジエン共重合体を含むことが好ましい。これにより、プリプレグの硬化体の強度を向上できる。スチレン-ブタジエン共重合体とは、スチレン系モノマー由来の構造単位、およびジエン系モノマー由来の構造単位を含む共重合体である。スチレン-ブタジエン共重合体は、スチレンブタジエンゴムのようなエラストマーであることがより好ましい。
【0074】
スチレン系モノマー由来の構造単位は、例えば、以下の一般式(9)で表される構造単位を含むものである。
【0075】
【0076】
一般式(9)において、R91は水素原子またはアルキル基であり、R92はアルキル基であり、nは0~5の整数である。
【0077】
スチレン-ブタジエン共重合体において、スチレン-ブタジエン共重合体中の全構造単位中の、スチレン系モノマー由来の構造単位の含有量は、10モル%以上90モル%以下であることが好ましく、15モル%以上85モル%以下であることがより好ましく、20モル%以上80モル%以下であることがさらにより好ましく、30モル%以上80モル%以下であることが特により好ましく、40モル%以上80モル%以下であることが最もより好ましい。
【0078】
ジエン系モノマー由来の構造単位は、例えば、以下の一般式(10)で表される構造単位を含むものである。
【0079】
【0080】
一般式(10)において、Ra1は、水素原子またはアルキル基である。
【0081】
スチレン-ブタジエン共重合体において、スチレン-ブタジエン共重合体中の全構造単位中の、ジエン系モノマー由来の構造単位の含有量は、10モル%以上90モル%以下であることが好ましく、15モル%以上85モル%以下であることがより好ましく、20モル%以上80モル%以下であることがさらにより好ましく、30モル%以上80モル%以下であることが特により好ましく、40モル%以上80モル%以下であることが最もより好ましい。
【0082】
スチレン-ブタジエン共重合体の含有量の下限値は、熱硬化性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、4質量%以上がさらにより好ましい。これにより、プリプレグの耐熱性を向上できる。また、ポリフェニレンエーテルの含有量の上限値は、本実施形態の熱硬化性樹脂全体を100質量%としたとき、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらにより好ましい。これにより、プリプレグの耐酸化性の低下を抑制できる。
【0083】
[充填材]
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、充填材を含んでもよい。これにより、プリプレグの硬化体について、低線膨張率を得つつ、吸水性を抑制できる。充填材としては、例えば、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラスなどのケイ酸塩;酸化チタン、アルミナ、ベーマイト、シリカ、溶融シリカなどの酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトなどの炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの水酸化物;硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウムなどの硫酸塩または亜硫酸塩;ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウムなどのホウ酸塩;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素などの窒化物;チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムなどのチタン酸塩などから選ばれる1種または2種以上の組み合わせを用いることができる。これらの中でも、シリカが好ましい。
【0084】
上記充填材の平均粒子径の下限値は、特に限定されないが、例えば、0.01μm以上としてもよく、0.05μm以上としてもよいが、低線膨張率を安定的に得る観点から、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、1.0μm以上であることがさらにより好ましい。これにより、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物を用いたワニスの粘度が高くなるのを抑制でき、作業性を向上させることができる。また、充填材の平均粒子径の上限値は、特に限定されないが、例えば、5.0μm以下が好ましく、2.0μm以下がより好ましく、1.5μm以下がさらに好ましい。これにより、上記熱硬化性樹脂のワニス中における充填材の沈降などの現象を抑制できる。
【0085】
本実施形態において、充填材の平均粒子径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA社製、LA-500)により、粒子の粒度分布を体積基準で測定し、そのメディアン径(D50)とすることができる。
【0086】
無機充填材の含有量の下限値は、熱硬化性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、45質量%以上がさらにより好ましい。これにより、プリント基板を低熱膨張化できる。また、無機充填材の含有量の上限値は、熱硬化性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、70質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましく、55質量%以下がさらにより好ましい。これにより、ハンドリング性が向上し、プリプレグを形成するのが容易となる。
【0087】
[架橋剤]
熱硬化性樹脂組成物は、架橋剤を含んでもよい。架橋剤は、付加重合タイプおよびラジカル重合タイプの少なくとも一方を含んでもよい。
【0088】
架橋剤は、例えば、マレイミド化合物、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、および1分子中に炭素-炭素不飽和二重結合を2個以上有する化合物などから選択される1種または2種以上の組み合わせである。
【0089】
1分子中に炭素-炭素不飽和二重結合を2個以上有する化合物としては、化学式(11)に示すトリアリルイソシアヌレート(TAIC)等のトリアルケニルイソシアヌレート化合物が特に好ましい。
【0090】
【0091】
架橋剤の含有量の下限値は、熱硬化性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、10質量%以上が好ましく、12質量%以上がより好ましく、14質量%以上がさらにより好ましい。これにより、プリプレグの硬化性を向上できる。また、架橋剤の含有量の上限値は、熱硬化性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらにより好ましい。これにより、プリント基板の高誘電率化を抑制できる。
【0092】
[カップリング剤]
熱硬化性樹脂組成物は、カップリング剤を含んでもよい。カップリング剤としては、化学式(12)に示すアリルイソシアヌレート系シランカップリング剤が特に好ましい。
【0093】
【0094】
カップリング剤の含有量の下限値は、熱硬化性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、0.8質量%以上がさらにより好ましい。また、カップリング剤の含有量の上限値は、熱硬化性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらにより好ましい。
【0095】
[レベリング剤]
熱硬化性樹脂組成物は、レベリング剤を含んでもよい。レベリング剤は、例えば、ポリアクリレート化合物等のアクリル系共重合体である。
【0096】
レベリング剤の含有量の下限値は、熱硬化性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上がさらに好ましい。これにより、熱硬化性樹脂組成物の塗面均一性を向上できる。また、レベリング剤の含有量の上限値は、熱硬化性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、1質量%以下が好ましく、0.7質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましい。これにより、熱硬化性樹脂組成物の塗面均一性と、他の性能とを両立できる。
【0097】
[ラジカル開始剤]
熱硬化性樹脂組成物は、ラジカル開始剤を含んでもよい。ラジカル開始剤は、熱硬化性樹脂と架橋剤との反応を促進することができるものであれば、特に限定されない。ラジカル開始剤は、ラジカル重合タイプの架橋剤の重合反応を促進できる。
【0098】
ラジカル開始剤は、例えば、α,α'-ジ(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、α,α'-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3-ヘキシン,過酸化ベンゾイル、3,3',5,5'-テトラメチル-1,4-ジフェノキノン、クロラニル、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノキシル、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、アゾビスイソブチロニトリル等の有機過酸化物の1種または2種以上の組み合わせである。これらの中でも、特に、α,α'-ジ(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンを含むことが好ましい。
【0099】
ラジカル開始剤の含有量の下限値は、熱硬化性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、0.5質量%以上が好ましく、0.7質量%以上がより好ましく、0.9質量%以上がさらに好ましい。これにより、プリプレグの硬化性を向上できる。また、ラジカル開始剤の含有量の上限値は、熱硬化性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましい。これにより、プリプレグの硬化体の誘電率を小さくできる。
【0100】
[ワニス樹脂の製造方法]
本実施形態において、ワニス状の熱硬化性樹脂組成物は、溶剤を含むことができる。溶剤は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサン、へプタン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、セルソルブ系、カルビトール系、アニソール、およびN-メチルピロリドンなどから選択される、1種または2種以上の組み合わせである。
【0101】
熱硬化性樹脂組成物がワニス状である場合において、熱硬化性樹脂組成物の固形分含有量は、熱硬化性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、例えば、30質量%以上80質量%以下が好ましく、40質量%以上70質量%以下がより好ましい。これにより、作業性や成膜性に優れた熱硬化性樹脂組成物が得られる。
【0102】
ワニス状の熱硬化性樹脂組成物は、上述の各成分を、例えば、超音波分散方式、高圧衝突式分散方式、高速回転分散方式、ビーズミル方式、高速せん断分散方式、および自転公転式分散方式などの各種混合機を用いて溶剤中に溶解、混合、撹拌することにより調製することができる。
【0103】
[プリプレグの製造方法]
本実施形態に係るプリプレグは、例えば、熱硬化性樹脂組成物を繊維基材に含浸させた後に半硬化させることにより形成できる。熱硬化性樹脂組成物を繊維基材に含浸させる方法としては、特に限定されないが、例えば、熱硬化性樹脂組成物を溶剤に溶かしてワニスを調製し、繊維基材を上記ワニスに浸漬する方法、各種コーターにより上記ワニスを繊維基材に塗布する方法、スプレーにより上記ワニスを繊維基材に吹き付ける方法、熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂膜で繊維基材の両面をラミネートする方法等が挙げられる。
【0104】
プリプレグをプリント配線基板におけるコア層中の絶縁層を形成するために用いる場合は、例えば、2枚以上のプリプレグを重ね、得られた積層体を加熱硬化することによりコア層用の絶縁層とすることもできる。
【0105】
[金属張積層板の製造方法]
本実施形態の金属張積層板は、上記プリプレグの少なくとも一方の面上に金属層が配置された構造を備える。
【0106】
また、金属張積層板製造方法は、例えば以下の通りである。
プリプレグまたはプリプレグを2枚以上重ね合わせた積層体の外側の上下両面または片面に金属箔を重ね、ラミネーター装置やベクレル装置を用いて高真空条件下でこれらを接合する、あるいはそのままプリプレグの外側の上下両面または片面に金属箔を重ねる。また、プリプレグを2枚以上積層するときは、積層したプリプレグの最も外側の上下両面もしくは片面に金属箔を重ねる。次いで、プリプレグと金属箔とを重ねた積層体を、加熱加圧成形することで金属張積層板を得ることができる。ここで、加熱加圧成形時に、冷却終了時まで加圧を継続することが好ましい。
【0107】
上記金属箔を構成する金属としては、例えば、銅、銅系合金、アルミ、アルミ系合金、銀、銀系合金、金、金系合金、亜鉛、亜鉛系合金、ニッケル、ニッケル系合金、錫、錫系合金、鉄、鉄系合金、コバール(商標名)、42アロイ、インバー、スーパーインバー等のFe-Ni系の合金、W、Mo等が挙げられる。これらの中でも、金属箔を構成する金属としては、導電性に優れ、エッチングによる回路形成が容易であり、また安価であることから銅または銅合金が好ましい。すなわち、金属箔としては、銅箔が好ましい。また、金属箔としては、キャリア付金属箔等も使用することができる。金属箔の厚みは、好ましくは0.5μm以上20μm以下であり、より好ましくは1.5μm以上18μm以下である。
【0108】
[プリント基板の製造方法]
本実施形態において、上述のプリプレグまたは金属張積層板を用いて、プリント配線板が作製される。本実施形態のプリント配線板は、上述のプリプレグの硬化体と、硬化体の両面または片面に設けられた配線パターンとを備える。本実施形態のプリント配線板におけるその他の構成は特に限定されず、従来公知の種々の部品を備えていてもよく、種々の加工が施されていてもよい。本実施形態のプリント配線板は、LSI、抵抗素子、キャパシタ、インダクタ等の半導体素子(電子部品)を固定し、該半導体素子(電子部品)間を配線で接続するための部品として用いることができる。本発明のプリント配線板は、上述のプリプレグの硬化体または上述の金属張積層板の片面又は両面に、サブトラクティブ法、アディティブ法、セミアディティブ法等の公知の方法を用いて配線パターンを形成することにより製造することができる。
【実施例0109】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例の記載に限定されるものではない。
【0110】
(ワニスの調製)
表1に、実施例における固形分を100質量%としたときの、熱硬化性樹脂組成物の固形分の各成分の質量%の値を示す。表1に示す各成分を熱硬化性樹脂組成物全体に対して、固形分が70質量%となるように溶剤を調整し、高速撹拌装置を用いてワニスを調整した。
【0111】
【0112】
以下、表1中の原料成分の情報を示す。
(樹脂)
・樹脂1:ビフェニルアラルキル型マレイミド樹脂(日本化薬社製、MIR?3000?70MT)
・樹脂2:両末端にメタクリレート基を有するポリフェニレンエーテル樹脂(SABICジャパン合同会社製、SA9000)
・樹脂3:クマロン-インデン樹脂(日塗化学株式会社製、エスクトロンV120S)
・樹脂4:スチレンブタジエンゴム(グレイバレー社製、Ricon100)
(架橋剤)
・架橋剤1:トリアリルイソシアヌレート(三菱ケミカル株式会社製、TAIC)
(カップリング剤)
・カップリング剤1:アリルイソシアヌレート系シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製、X-12-1290)
(レベリング剤)
・レベリング剤1:ポリアクリレート化合物(BYK-Chemie社製、BYK-361N)
(ラジカル開始剤)
・ラジカル開始剤1:α,α'-ジ(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(日本油脂社製、パーブチルP)
(無機充填材)
・充填材1:シリカ粒子(アドマテックス社製、SC4050-KNT、平均粒径:1μm)
【0113】
(プリプレグの作製)
上述したワニスを、繊維基材に含侵させ、150℃で2分間乾燥させることでプリプレグを得た。各実施例の繊維基材は、表2に示すガラスクロスを用いた。
【0114】
【0115】
(測定)
各実施例におけるプリプレグについて、以下の測定を行った。測定結果を表3に示す。
【0116】
(比誘電率の差・誘電正接)
各実施例によって得られたプリプレグについて、225℃で2時間加熱し硬化させた。その後、得られた硬化体に対して、円筒空洞共振器法により、10GHzにおける樹脂組成物の比誘電率、および10GHzにおける誘電正接を測定した。そして、ガラスクロスの比誘電率と樹脂組成物の比誘電率との差を算出した。
【0117】
(ガラスクロスを含まない領域の割合)
各実施例によって得られたプリプレグについて、以下の手順1により、ガラスクロスを含まない領域の割合を測定した。
(手順1)
(1)顕微鏡(オリンパス社製:DSX-500)を用いて、当該プリプレグの面外方向からの画像を取得する。
(2)上記(1)で得られた画像を2値化処理する。閾値色を白黒とし、256階調の30を閾値として、それ以下を黒とする。
(3)2値化後の黒色部分の割合を、ガラスクロスを含まない領域の割合とする。
【0118】
(Z0MD(t)、Z0TD(t)、Z045°(t))
以下の手順2でZ0MD(t)、Z1を、手順3でZ0TD(t)、Z2を、手順4でZ045°(t)、Z3を測定した。測定したZ0MD(t)、Z0TD(t)、およびZ045°(t)のマイクロストリップ線路が形成された領域に対応する時間領域における最大値と最小値、並びにZ1、Z2、Z3の値を表3に示す。
(手順2)
1.厚さ70μmの当該プリプレグの両面に18μm銅箔を配置し、温度225℃、荷重3MPaの条件で2時間加熱して硬化させ銅張積層板を得る。
2.前記銅張積層板上にエッチングで回路を形成する。
3.前記銅張積層板上に、線幅120/140/160/180/200μm、高さ18μm、長さ40mmの各マイクロストリップ線路を任意のMD方向に形成する。
4.前記MD方向に形成した各マイクロストリップ線路について、ネットワークアナライザーにより特性インピーダンスZを測定し、Zの値が50Ω以上60Ω以下の範囲にあるマイクロストリップ線路を選択する。なお、Zの値が50Ω以上60Ω以下の範囲にあるマイクロストリップ線路が複数ある場合には、Zの値が最も小さいマイクロストリップ線路を選択する。そして、選択したマイクロストリップ線路の特性インピーダンスをZ1とする。
5.選択したマイクロストリップ線路に対して、信号源の内部インピーダンスを50Ωとして、電圧振幅125mV、立ち上がり時間20psのパルス信号を印加し、マイクロストリップ線路からの時間毎の反射電圧に対してTDR解析を行い、Z0MD(t)を測定する。
(手順3)
1.厚さ70μmの当該プリプレグの両面に18μm銅箔を配置し、温度225℃、荷重3MPaの条件で2時間加熱して硬化させ銅張積層板を得る。
2.前記銅張積層板上にエッチングで回路を形成する。
3.前記銅張積層板上に、線幅120/140/160/180/200μm、高さ18μm、長さ40mmの各マイクロストリップ線路を前記MD方向に直角なTD方向に形成する。
4.前記TD方向に形成した各マイクロストリップ線路について、ネットワークアナライザーにより特性インピーダンスZを測定し、Zの値が50Ω以上60Ω以下の範囲にあるマイクロストリップ線路を選択する。なお、Zの値が50Ω以上60Ω以下の範囲にあるマイクロストリップ線路が複数ある場合には、Zの値が最も小さいマイクロストリップ線路を選択する。そして、選択したマイクロストリップ線路の特性インピーダンスをZ2とする。
5.選択したマイクロストリップ線路に対して、信号源の内部インピーダンスを50Ωとして、電圧振幅125mV、立ち上がり時間20psのパルス信号を印加し、マイクロストリップ線路からの時間毎の反射電圧に対してTDR解析を行い、Z0TD(t)を測定する。
(手順4)
1.厚さ70μmの当該プリプレグの両面に18μm銅箔を配置し、温度225℃、荷重3MPaの条件で2時間加熱して硬化させ銅張積層板を得る。
2.前記銅張積層板上にエッチングで回路を形成する。
3.前記銅張積層板上に、線幅120/140/160/180/200μm、高さ18μm、長さ40mmの各マイクロストリップ線路を前記MD方向に対して45°の方向に形成する。
4.前記MD方向に対して45°の方向に形成した各マイクロストリップ線路について、ネットワークアナライザーにより特性インピーダンスZを測定し、Zの値が50Ω以上60Ω以下の範囲にあるマイクロストリップ線路を選択する。なお、Zの値が50Ω以上60Ω以下の範囲にあるマイクロストリップ線路が複数ある場合には、Zの値が最も小さいマイクロストリップ線路を選択する。そして、選択したマイクロストリップ線路の特性インピーダンスをZ3とする。
5.選択したマイクロストリップ線路に対して、信号源の内部インピーダンスを50Ωとして、電圧振幅125mV、立ち上がり時間20psのパルス信号を印加し、マイクロストリップ線路からの時間毎の反射電圧に対してTDR解析を行い、Z045°(t)を測定する。
【0119】
図2を用いて、上記の手順2-4の測定結果について説明する。
図2は、実施例1における、Z
0MD(t)、Z
0TD(t)、およびZ
045°(t)の測定結果を示すグラフである。
図2(a)は、Z
0MD(t)の測定結果を示し、
図2(b)は、Z
0TD(t)の測定結果を示し、
図2(c)は、Z
045°(t)の測定結果を示す。そして、各グラフにおいて、破線で囲んでいる領域が、マイクロストリップ線路が形成された領域に対応する時間領域である。すなわち、この時間領域における特性インピーダンスが、マイクロストリップ線路面内の特性インピーダンスである。この時間領域は、ネットワークアナライザーの測定結果を逆フーリエ変換することで算出できる。表3に示す、Z
0MD(t)、Z
0TD(t)、およびZ
045°(t)の最大値および最小値は、
図2に示す各グラフの破線で囲んでいる領域内の、最大値および最小値である。
【0120】
【0121】
(評価)
各実施例のプリプレグについて、プリント基板として用いた場合の信号ノイズを評価した結果、いずれの実施例においても、信号ノイズが抑制されていることが確認できた。