(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167002
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】止水方法及び止水構造
(51)【国際特許分類】
E02D 29/12 20060101AFI20241122BHJP
E03F 5/02 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
E02D29/12 E
E03F5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083505
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(71)【出願人】
【識別番号】000149206
【氏名又は名称】株式会社大阪防水建設社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 晃介
(72)【発明者】
【氏名】山ノ内 智之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 丈覚
【テーマコード(参考)】
2D063
2D147
【Fターム(参考)】
2D063DA27
2D063DA28
2D147BA27
(57)【要約】
【課題】施工性を向上させることが可能な止水方法を提供する。
【解決手段】端部がマンホール1に接続される既設管2と、当該既設管2の内側に設けられる更生管3との間を止水するための止水方法であって、端部の内周面に、既設管2の端面2aに沿うように既設管2の延設方向に変位する溝部12を形成する溝部形成工程と、溝部12に水膨潤ゴム13を取り付ける取付工程と、端部の内周面の上部を面取りして面取り部11を形成する面取り工程と、を具備し、溝部形成工程において、面取り部11の下側に、当該面取り部11と接続するように溝部12を形成し、取付工程において、溝部12及び面取り部11に亘って水膨潤ゴム13を取り付ける。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部がマンホールに接続される既設管と、当該既設管の内側に設けられる更生管との間を止水するための止水方法であって、
前記端部の内周面に、前記既設管の端面に沿うように前記既設管の延設方向に変位する溝部を形成する溝部形成工程と、
前記溝部に止水材を取り付ける取付工程と、
を具備する、
止水方法。
【請求項2】
前記端部の内周面の上部を面取りして面取り部を形成する面取り工程をさらに具備し、
前記溝部形成工程において、
前記面取り部の下側に、当該面取り部と接続するように前記溝部を形成し、
前記取付工程において、
前記溝部及び前記面取り部に亘って前記止水材を取り付ける、
請求項1に記載の止水方法。
【請求項3】
前記取付工程は、
前記既設管に前記更生管が設けられた後で行われる、
請求項2に記載の止水方法。
【請求項4】
前記溝部形成工程において、
前記マンホールに形成されたインバートに対応する部分に、前記溝部を形成する、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の止水方法。
【請求項5】
端部がマンホールに接続される既設管と、当該既設管の内側に設けられる更生管との間を止水するための止水構造であって、
前記端部の内周面に、前記既設管の端面に沿って前記既設管の延設方向に変位するように形成された溝部と、
前記溝部に取り付けられた止水材と、
を具備する、
止水構造。
【請求項6】
前記既設管の内周面の上部が面取りされることで形成された面取り部をさらに具備し、
前記溝部は、
前記面取り部の下側に、当該面取り部と接続するように形成され、
前記止水材は、
前記溝部及び前記面取り部に亘って取り付けられている、
請求項5に記載の止水構造。
【請求項7】
前記止水材は、
複数取り付けられる、
請求項6に記載の止水構造。
【請求項8】
前記止水材は、
水を吸収することで膨潤する水膨潤材によって構成される、
請求項6又は請求項7に記載の止水構造。
【請求項9】
前記面取り部を補修する補修材と、
前記既設管又は前記マンホールの少なくとも一方に固定され、前記補修材に覆われる補強部材と、
をさらに具備する、
請求項8に記載の止水構造。
【請求項10】
前記溝部は、
前記マンホールに形成されたインバートに対応する部分に形成される、
請求項5から請求項7までのいずれか一項に記載の止水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホールに接続される既設管と、当該既設管の内側に設けられる更生管との間を止水するための止水方法及び止水構造の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マンホールに接続される既設管と、当該既設管の内側に設けられる更生管との間を止水するための技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の止水構造において、更生管は、既設管の内側からマンホール内に突き出すように設けられる。前記止水構造は、当該更生管と既設管との間を止水する止水継手を具備する。止水継手は、筒状部及びフランジ部を具備する。筒状部は、更生管の外周面のうち、マンホール内に突き出す部分に固定される。フランジ部は、マンホール側壁の内周面に接着される。これによって止水継手は、更生管の内周面と既設管の外周面との間を止水することができる。
【0004】
しかし特許文献1に記載の止水構造では、止水継手を設置するスペースを確保するために、マンホールの底部に形成されたインバートを大きくはつる必要があり、施工性が悪かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の一態様は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、施工性を向上させることが可能な止水方法及び止水構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
本開示の一態様においては、端部がマンホールに接続される既設管と、当該既設管の内側に設けられる更生管との間を止水するための止水方法であって、前記端部の内周面に、前記既設管の端面に沿うように前記既設管の延設方向に変位する溝部を形成する溝部形成工程と、前記溝部に止水材を取り付ける取付工程と、を具備するものである。
本開示の一態様によれば、施工性を向上させることができる。
【0009】
本開示の一態様においては、前記端部の内周面の上部を面取りして面取り部を形成する面取り工程をさらに具備し、前記溝部形成工程において、前記面取り部の下側に、当該面取り部と接続するように前記溝部を形成し、前記取付工程において、前記溝部及び前記面取り部に亘って前記止水材を取り付けるものである。
本開示の一態様によれば、溝部だけでなく、比較的施工が容易な面取り部を形成することで、施工性を向上させることができる
【0010】
本開示の一態様においては、前記取付工程は、前記既設管に前記更生管が設けられた後で行われるものである。
本開示の一態様によれば、更生管を既設管の内側に搬送する際に、更生管に止水材が巻き込まれることがないため、不具合の発生を防止することができる。
【0011】
本開示の一態様においては、前記溝部形成工程において、前記マンホールに形成されたインバートに対応する部分に、前記溝部を形成するものである。
本開示の一態様によれば、インバートを大きくはつることなく止水材を取り付けることができるため、施工性を向上させることができる。
【0012】
本開示の一態様においては、端部がマンホールに接続される既設管と、当該既設管の内側に設けられる更生管との間を止水するための止水構造であって、前記端部の内周面に、前記既設管の端面に沿って前記既設管の延設方向に変位するように形成された溝部と、前記溝部に取り付けられた止水材と、を具備するものである。
本開示の一態様によれば、施工性を向上させることができる。
【0013】
本開示の一態様においては、前記既設管の内周面の上部が面取りされることで形成された面取り部をさらに具備し、前記溝部は、前記面取り部の下側に、当該面取り部と接続するように形成され、前記止水材は、前記溝部及び前記面取り部に亘って取り付けられているものである。
本開示の一態様によれば、溝部だけでなく、比較的施工が容易な面取り部を形成することで、施工性を向上させることができる。
【0014】
本開示の一態様においては、前記止水材は、複数取り付けられるものである。
本開示の一態様によれば、複数の止水材によって、既設管と更生管との間を効果的に止水することができる。
【0015】
本開示の一態様においては、前記止水材は、水を吸収することで膨潤する水膨潤材によって構成されるものである。
本開示の一態様によれば、既設管と更生管との間に水が流入した場合に水膨潤材が膨潤するため、既設管と更生管との間を効果的に止水することができる。
【0016】
本開示の一態様においては、前記面取り部を補修する補修材と、前記既設管又は前記マンホールの少なくとも一方に固定され、前記補修材に覆われる補強部材と、をさらに具備するものである。
本開示の一態様によれば、補修材を強固に固定することができ、ひいては止水構造を強固に形成することができる。
【0017】
本開示の一態様においては、前記溝部は、前記マンホールに形成されたインバートに対応する部分に形成されるものである。
本開示の一態様によれば、インバートを大きくはつることなく止水材を取り付けることができるため、施工性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示の一態様によれば、施工性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】(a)A1-A1断面図。(b)A2-A2断面図。
【
図3】本発明の一実施形態に係る止水構造を示す側面断面図。
【
図4】止水構造を施工する方法を示すフローチャート。
【
図6】(a)ガイド部材を示す正面図。(b)同じく、側面図。
【
図7】(a)ガイド部材が既設管に設置された状態を示す正面図。(b)A3-A3断面図。
【
図8】(a)溝部を形成するためのサンダー及び治具を示す側面図。(b)同じく背面図。
【
図12】(a)水膨潤ゴム及び針金が取り付けられた状態を示す側面断面図。(b)A4-A4断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明を行う。
【0021】
以下では、本発明の一実施形態に係る止水構造10について説明する。
【0022】
止水構造10は、マンホール1に接続される既設管2と、当該既設管2の内側に設けられる更生管3との間を止水するためのものである。以下ではまず
図1から
図3を参照し、マンホール1及び既設管2について説明する。
【0023】
マンホール1は、地面Gに開けられた縦孔である。本実施形態のマンホール1は、平面視略円状に形成される内壁部1aを具備する。内壁部1aの下部は、上部よりも内径が大きくなるように形成される。マンホール1の底部には、インバート1bが形成される。インバート1bは、上方が開口するように形成された半円状の溝である。インバート1bは、マンホール1の前端部から後端部までに亘って形成される。
【0024】
既設管2は、地下において水路(下水道)を形成するためのものである。既設管2は、
図1に示すマンホール1と、他のマンホールとを連通するように構成される。本実施形態の既設管2は、長手方向を前後方向に向けた略円筒状に形成され、マンホール1の下部に接続される。なお
図1には、一例としてマンホール1の前下端部及び後下端部にそれぞれ接続される既設管2が記載されている。以下では、マンホール1の後下端部に接続される既設管2を例に挙げ、既設管2の構成を説明する。
【0025】
図2(a)に示すように、既設管2の前端部は、マンホール1に接続される。既設管2の端面(前端面)2aは、マンホール1の内壁部1aに対して面一となるように形成される。本実施形態の既設管2の端面2aは、内壁部1aに沿った平面視略円弧状(曲面状)に形成される。また既設管2の端面2aの下部(例えば下半分)は、インバート1bに突き合わされる。これによってインバート1bと既設管2との間に段差が生じないように既設管2とマンホール1とが接続され、マンホール1内において下水を円滑に流すことができる。
【0026】
ここで、
図1及び
図2に示す既設管2が老朽化した場合等に、既設管2の強度が低下したり、亀裂が生じて既設管2内に水(侵入水)や土砂等が流入する可能性がある。こうした不具合の対応や予防のために、既設管2の内側に更生管3が設けられる場合がある。以下、
図3を参照して更生管3の施工手順の一例を説明する。
【0027】
図3に示す更生管3は、樹脂によって構成される。更生管3は、搬送可能な状態(例えば、芯材に巻回された状態、つづら折り状に積層された状態)でマンホール1の開口部近傍まで移動され、当該マンホール1から既設管2内に搬送される。この際更生管3は、既設管2内を通れるように断面が適宜変形されている。既設管2内を通過するように搬送された更生管3は、先端部(前端部)が切断され、既設管2の内周面に密着するように変形される。
【0028】
こうして既設管2内に更生管3が設けられることにより、管路の機能が回復するとともに、既設管2に生じた亀裂から既設管2内に侵入水等が流入するのを抑制することができる。
【0029】
しかしながら、前記亀裂に侵入水が流入した場合、当該侵入水の一部が既設管2の内周面と更生管3の外周面との間を伝ってマンホール1内へ漏れ出ることが懸念される。本実施形態の止水構造10は、既設管2と更生管3との間を止水することで、侵入水がマンホール1内へ漏れ出るのを抑制するものである。以下、具体的に説明する。
【0030】
図3に示すように、止水構造10は、面取り部11、溝部12、水膨潤ゴム13、補修材14及び針金15を具備する。
【0031】
面取り部11は、既設管2の内周面における面取り部分である。面取り部11は、既設管2の端面2aの上部が面取りされることで形成される。ここで上述の如く、本実施形態の端面2aの下部(下半分)は、インバート1bと突き合わされる。本実施形態の面取り部11は、端面2aのうち、インバート1bと突き合わされていない部分(上半分)に形成される。
【0032】
溝部12は、既設管2の内周面に形成される細長い窪みである。本実施形態の溝部12は、断面形状が略U字状に形成される。溝部12は、既設管2の内周面の下部(面取り部11の下側)に形成される。具体的には溝部12は、インバート1bと同じ高さの範囲、すなわち既設管2の内周面の下半分に形成される。こうして本実施形態の溝部12は、既設管2の内周面のうち、インバート1bに対応する部分に形成される。当該溝部12の上端部は、面取り部11の下端部と接続される(
図11参照)。
【0033】
水膨潤ゴム13は、既設管2と更生管3との間を止水するためのものである。水膨潤ゴム13は、環状に形成される。また水膨潤ゴム13の断面は、略円状に形成される。水膨潤ゴム13は、水を吸収することで膨潤し、断面を拡径することができる。水膨潤ゴム13は、既設管2の面取り部11及び溝部12に亘って取り付けられる。本実施形態では、複数(2つ)の水膨潤ゴム13が1つの面取り部11及び溝部12に取り付けられる。なお水膨潤ゴム13の設置個数は、本実施形態(2つ)に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0034】
補修材14は、面取り部11を補修する(埋める)ためのものである。補修材14は、モルタルや樹脂系のパテ等によって構成され、面取り部11に充填される。また補修材14は、マンホール1の内壁部1a(既設管2の周辺)にも塗布される。
【0035】
図12(a)に示す針金15は、補修材14を強固に固定するためのものである。針金15は、マンホール1の内壁部1a(面取り部11及び水膨潤ゴム13の周辺)に打ち込まれた釘15aに巻き付けられることで、内壁部1aに固定される。当該針金15は、
図3に示す補修材14により覆われる。なお針金15は、既設管2又はマンホール1の内壁部1aの少なくとも一方に固定されていればよく、必ずしも本実施形態のように内壁部1aに固定される必要はない。
【0036】
止水構造10によると、既設管2の内周面と更生管3の外周面との間をマンホール1に向けて浸入水が伝った場合に、水膨潤ゴム13が当該侵入水を吸収する。これによって水膨潤ゴム13が膨潤して既設管2と更生管3との間を効果的に止水することができる。このため、浸入水がマンホール1へ漏れ出るのを抑制し、下水処理施設での汚水処理量を減少させることができる。
【0037】
また止水構造10では、補修材14に外力が作用した場合に補修材14が針金15に引っ掛かるため、補修材14を強固に固定することができる。これによって止水構造10を強固に形成することができる。また水膨潤ゴム13に対してある程度近い位置に針金15を配置して、水膨潤ゴム13の膨潤時に水膨潤ゴム13を針金15に引っ掛けてもよい。これによって針金15で水膨潤ゴム13を保持して水膨潤ゴム13によるシール力を向上させることができ、既設管2と更生管3との間を効果的に止水することができる。
【0038】
以下では、上述した止水構造10を施工する方法(止水方法)の一例について説明する。なお本実施形態において止水構造10の施工は、既設管2に更生管3が設けられる前に開始される。
【0039】
図4に示すように、止水構造10の施工においては、まず既設管2を面取りする面取り工程S10が行われる。
図5に領域Rで示すように、面取り工程S10では、端面2aの内周面の上部が面取りされる。こうして既設管2に一定の幅の面取り部11が形成される。例えば、25mm程度の幅の面取り部11が形成される。なお、面取り部11の幅は、特に限定されるものではない。
【0040】
図4に示すように、面取り工程S10の後で、ガイド部材20を設置する設置工程S20が行われる。
図6に示すガイド部材20は、後述するサンダー40を案内するための部材である。ガイド部材20は、側面視略L字状に形成される。ガイド部材20は、載置部21、係合部22及び貫通孔23を具備する。
【0041】
載置部21は、後述するジャッキ30が載置される部分である。載置部21は、板面を上下方向に向けた板状に形成される。
【0042】
係合部22は、後述する治具50と係合される部分である。係合部22は、板面を略前後方向に向けた板状に形成される。
図6(a)に示すように、係合部22は、開口部を上方へ向けた正面視略C字状(略円弧状)に形成される。
図6(b)に示すように、係合部22は、平面部22a及び曲面部22bを具備する。
【0043】
平面部22aは、平面状に形成される部分である。平面部22aは、係合部22の内周面よりも低い位置(
図6(a)に示す直線Lよりも下の範囲)に形成される。
【0044】
曲面部22bは、曲面状に形成される部分である。曲面部22bは、平面部22aの上端部から延出するように形成される。曲面部22bは、上方(周方向端部)へ向かうにつれて前方へ変位(屈曲)するように形成される。
【0045】
図6(a)に示す貫通孔23は、係合部22を前後に貫通する孔である。本実施形態の貫通孔23は、正面視略円状に形成されると共に、平面部22aに形成される。また貫通孔23は、係合部22の左右中央部よりもやや右側に形成される。
【0046】
図7に示すように、設置工程S20では、上述の如く構成されるガイド部材20が、既設管2の前端部から当該既設管2内に配置される。この際ガイド部材20は、後述する溝部形成工程S30で面取り部11と接続する溝を掘ることができるように、前後位置が適宜調整される。本実施形態では、少なくとも載置部21が面取り部11よりも後方(既設管2の奥側)に位置するように、ガイド部材20の前後位置が調整される。
【0047】
また設置工程S20では、ガイド部材20の載置部21にジャッキ30が載置される。なお
図7(a)に示すように、本実施形態ではジャッキ30のラム31を縮める際に操作される操作部33が貫通孔23の後方に位置するように、載置部21にジャッキ30が載置される。またラム31を伸ばす際に操作される操作部32は、正面視において係合部22の内周面の内側に配置される。
【0048】
設置工程S20では、当該ジャッキ30の操作部32が操作され、ラム31が伸ばされる。これによって既設管2内でジャッキ30が突っ張って、ガイド部材20が固定される。
【0049】
図4に示すように、本実施形態では、設置工程S20の後で、面取り部11の下側に溝を掘る溝部形成工程S30が行われる。溝部形成工程S30では、
図8に示すサンダー40及び治具50が用いられ、面取り部11の下側に溝部12が形成される。
【0050】
図8(a)に示すサンダー40は、既設管2の内周面を削るためのものである。サンダー40は、本体部41及びカッター42を具備する。本体部41にはモータが内蔵される。カッター42は、板面を前後方向に向けた略円板状に形成され、本体部41の先端部に設けられる。カッター42は、前記モータからの動力によって、前後方向を回転軸方向として回転可能に構成される。
【0051】
図8に示す治具50は、ガイド部材20に対するサンダー40の位置を決めるためのものである。治具50は、固定部材51、当たり板52及び爪部53を具備する。
【0052】
固定部材51は、本体部41の先端部に固定される部材である。固定部材51の後部は、カッター42の上部を覆うように形成される。固定部材51の前部は、バンド(不図示)を介して本体部41に固定される。
【0053】
当たり板52は、既設管2の内周面に当接可能な板状の部材である。
図8(b)に示すように、当たり板52は、上部が開口する正面視略U字状に形成される。当たり板52は、カッター42を挟んで前後一対設けられる。当たり板52には、前後に貫通すると共に、長手方向を上下方向に向けた長孔52aが形成される。当たり板52は、固定部材51に形成された孔部及び長孔52aにボルトが挿通されることで(不図示)、固定部材51に固定される。
【0054】
当該当たり板52は、前記ボルトを緩めることで、固定部材51に対する上下位置を調整することができる。なお、当たり板52の上下位置を調整するための構成は、本実施形態に限定されるものではない。
【0055】
爪部53は、ガイド部材20の係合部22(
図6参照)に引っ掛けるためのものである。爪部53は、板面を前後方向に向けて配置されると共に、上端部が前方へ向けて折り曲げられたように形成される。当該爪部53の上端部は、前側の当たり板52に固定される。こうして爪部53は、前側の当たり板52に対して、ガイド部材20の係合部22の厚みと同程度の幅だけ前方に配置される。
【0056】
図9及び
図10に示すように、溝部形成工程S30では、治具50の爪部53がガイド部材20の係合部22に引っ掛けられる。また前側の当たり板52は、ガイド部材20の係合部22に当接する。
【0057】
こうして治具50がガイド部材20に係合した状態でサンダー40のモータが駆動され、カッター42の回転によって既設管2の内周面が削られる。また溝部形成工程S30では、係合部22に沿ってサンダー40が移動される。
【0058】
上述の如く、本実施形態では、既設管2の端面2aがマンホール1の内壁部1aに沿って曲面状に形成されている(
図2(a)参照)。当該端面2aは、底部から上下中途部に向けて前方へ膨出するように形成される。本実施形態では、係合部22(曲面部22b)に沿ってサンダー40が移動されることで、既設管2の内周面の底部から上下中途部に向かって前方に傾斜するように溝部12が形成される。すなわち、ガイド部材20を用いることで、既設管2の端面2aと同様に前後に変位する溝部12を形成することができる。
【0059】
このようにして、既設管2の端面2aに沿うように底部から上下中途部に向けて前方へ変位する溝部12を形成することで、溝部12の周方向位置に関わらず、既設管2の端面2aから溝部12までの距離を概ね一定(本実施形態では約30mm)に保つことができる。
【0060】
また溝部形成工程S30では、
図9に示す当たり板52が既設管2の内周面に当接する深さまで当該内周面が削られる。こうして溝部形成工程S30では、一定の深さの溝部12が形成される。本実施形態では当たり板52の上下位置が長孔52a(
図8(b)参照)によって調整可能であるため、当該上下位置の調整により溝部12の深さを容易に変更することができる。
【0061】
溝部形成工程S30では、溝部12の形成が完了した後で、
図7(a)に示すジャッキ30の操作部33が操作されてラム31が縮められ、ガイド部材20の固定が解除される。上述の如く、設置工程S20では貫通孔23の後方に操作部33が配置されるように、ジャッキ30が設置されている。溝部形成工程S30では、当該貫通孔23を利用して操作部33が操作される。例えば、貫通孔23に棒状部材(不図示)を挿通して操作部33に係合させ、当該棒状部材を介して操作部33が操作される。これによって作業者が既設管2内に手を伸ばすことなく、操作部33を簡単に操作することができる。
【0062】
溝部形成工程S30では、ガイド部材20の固定が解除された後で、ガイド部材20及びジャッキ30が既設管2内から外部へと取り出される。こうして溝部形成工程S30が終了する。
【0063】
本実施形態では、溝部形成工程S30の後で更生管3が既設管2の内側に設けられる。この際インバート1bは、更生管3の内周面に沿うように適宜補修される。その後本実施形態では、
図4に示すように、水膨潤ゴム13を取り付ける取付工程S40が行われる。
【0064】
取付工程S40では、
図12に示す面取り部11を介して紐状の水膨潤ゴム13が溝部12の周方向端部の一方に挿入される。また当該水膨潤ゴム13は、溝部12の他方の周方向端部から引き出される。この状態で水膨潤ゴム13の両端部が接着されることで、面取り部11及び溝部12に水膨潤ゴム13が巻回される。また水膨潤ゴム13は、複数(2つ)巻回される。このように、本実施形態では既設管2の内周面の上部に面取り部11を形成することで、更生管3が設けられた後でも、水膨潤ゴム13を容易に取り付けることが可能となっている。
【0065】
また取付工程S40が更生管3の設置後に行われることで、水膨潤ゴム13に関する不具合の発生を防止することができる。例えば、更生管3が既設管2内に搬送される際に水膨潤ゴム13に更生管3が噛み込んで止水不良が発生するのを防止できる。
【0066】
図4に示すように、本実施形態では、取付工程S40の後で、針金15を巻き付ける巻付工程S50が行われる。
図12(a)に示すように、巻付工程S50では、マンホール1の内壁部1aのうち、既設管2の面取り部11の周辺に、ハンマー等によって釘15aが打ち付けられる。また釘15aは、既設管2の周方向に沿って複数打ち付けられる。巻付工程S50では、当該釘15aに針金15が巻き付けられる。
【0067】
図4に示すように、本実施形態では、巻付工程S50の後で、面取り部11を補修する補修工程S60が行われる。
図3に示すように、補修工程S60では、面取り部11に補修材14が充填される。また補修工程S60では、マンホール1の内壁部1a(面取り部11の周辺)に補修材14が塗布される。これにより、針金15(
図12(a)参照)は補修材14で覆われる。こうして補修工程S60が終了すると、止水構造10の施工が完了する。
【0068】
本実施形態では、溝部12を形成することで、インバート1bを大きくはつることなく水膨潤ゴム13を設置することができる。これに加えて本実施形態では、溝部12の形状が、既設管2の端面2aに沿って前後方向に変位するように形成されている。すなわち、端面2aが底部から上下中途部へ向かうにつれて前方に変位するのに伴って、溝部12も、既設管2の内周面の底部から上下中途部へ向かうにつれて端面2aと同一方向(前方)に変位するように形成されている。これによって、既設管2の端面2aから概ね一定の位置(作業し易い位置)に水膨潤ゴム13を取り付けることができる。こうしてインバート1bをはつる手間を減らすと共に、水膨潤ゴム13の取付性の低下を抑制することで、施工性を向上させることができる。
【0069】
また既設管2の端面2aに沿って溝部12が形成されることで、端面2aを大きく面取りしなくても、面取り部11と溝部12とを接続することができる。より詳細には、本実施形態とは異なり、既設管2の端面2aに沿わない溝部、例えば
図11に1点鎖線で示すような単に既設管2の周方向に沿った(前後方向に変位しない)溝部12を形成してしまうと、溝部12の周方向端部から端面2aまでの距離が比較的長くなってしまう。
【0070】
これに対して本実施形態では端面2aの形状に沿って溝部12を形成するため、溝部12の周方向端部から端面2aまでの距離が長くなるのを抑制することができる。溝部12の周方向端部は、面取り部11と接続される部分であるため、前記端面2aまでの距離が長くなるのを抑制することで、端面2aを大きく面取りしなくても、面取り部11と溝部12とを接続することができる。
【0071】
また本実施形態では、既設管2の内周面のうち、インバート1bに対応する部分に溝部12を形成し、それ以外の部分に比較的施工が容易な面取り部11を形成している。これにより、面取りし易い部分(インバート1bをはつることなく面取り可能な部分)は面取り部11を形成し、面取りし難い部分(インバート1bをはつらなければ面取り不能な部分)は溝部12を形成することで、施工性を向上させながらも適切に止水を行うことができる。また止水構造10の施工に要するコストを低減することもできる。
【0072】
また、既設管2の内周面の全周ではなく、一部(面取りし難い部分)だけに溝部12を形成することで、溝部12の寸法がばらつくのを抑制し、溝部12の寸法管理を容易に行うことができる。
【0073】
また本実施形態では、インバート1bを大きくはつる必要がないため、止水構造10の施工時に生じる振動を抑制し、既設管2にひび割れが生じるのを抑制することができる。
【0074】
以上の如く、本実施形態に係る止水方法は、端部がマンホール1に接続される既設管2と、当該既設管2の内側に設けられる更生管3との間を止水するための止水方法であって、前記端部の内周面に、前記既設管2の端面2aに沿うように前記既設管2の延設方向(前後方向)に変位する溝部12を形成する溝部形成工程S30と、前記溝部12に水膨潤ゴム13(止水材)を取り付ける取付工程S40と、を具備するものである。
【0075】
このように構成することにより、既設管2の端面2aに沿うように水膨潤ゴム13を取り付けることができ、施工性を向上させることができる。
【0076】
また、前記端部の内周面の上部を面取りして面取り部11を形成する面取り工程S10をさらに具備し、前記溝部形成工程S30において、前記面取り部11の下側に、当該面取り部11と接続するように前記溝部12を形成し、前記取付工程S40において、前記溝部12及び前記面取り部11に亘って前記水膨潤ゴム13を取り付けるものである。
【0077】
このように構成することにより、溝部12だけでなく、比較的施工が容易な面取り部11を形成することで、施工性を向上させることができる。
【0078】
また、前記取付工程S40は、前記更生管3が設けられた後で行われるものである(
図12参照)。
【0079】
このように構成することにより、更生管3を既設管2の内側に搬送する際に、更生管3に水膨潤ゴム13が巻き込まれることがないため、不具合(止水不良等)の発生を防止することができる。
【0080】
また、前記溝部形成工程S30において、前記マンホール1に形成されたインバート1bに対応する部分に、前記溝部12を形成するものである(
図11参照)。
【0081】
このように構成することにより、インバート1bを大きくはつることなく水膨潤ゴム13を取り付けることができるため、施工性を向上させることができる。
【0082】
また、以上の如く、本実施形態に係る止水構造10は、端部がマンホール1に接続される既設管2と、当該既設管2の内側に設けられる更生管3との間を止水するための止水構造10であって、前記端部の内周面に、前記既設管2の端面2aに沿うように前記既設管2の延設方向(前後方向)に変位するように形成された溝部12と、前記溝部12に取り付けられた水膨潤ゴム13(止水材)と、を具備するものである。
【0083】
このように構成することにより、既設管2の端面2aに沿うように水膨潤ゴム13を取り付けることができ、施工性を向上させることができる。
【0084】
また、前記既設管2の内周面の上部が面取りされることで形成された面取り部11をさらに具備し、前記溝部12は、前記面取り部11の下側に、当該面取り部11と接続するように形成され、前記水膨潤ゴム13は、前記溝部12及び前記面取り部11に亘って取り付けられているものである。
【0085】
このように構成することにより、溝部12だけでなく、比較的施工が容易な面取り部11を形成することで、施工性を向上させることができる。
【0086】
また、前記水膨潤ゴム13は、複数取り付けられるものである。
【0087】
このように構成することにより、複数の水膨潤ゴム13によって、既設管2と更生管3との間を効果的に止水することができる。
【0088】
また、前記水膨潤ゴム13は、水を吸収することで膨潤する水膨潤材によって構成されるものである。
【0089】
このように構成することにより、既設管2と更生管3との間に水が流入した場合に水膨潤材が膨潤するため、既設管2と更生管3との間を効果的に止水することができる。
【0090】
また、前記面取り部11を補修する補修材14と、前記既設管2又は前記マンホール1の少なくとも一方に固定され、前記補修材14に覆われる針金15(補強部材)と、をさらに具備するものである。
【0091】
このように構成することにより、補修材14を強固に固定することができ、ひいては止水構造10を強固に形成することができる。
【0092】
また、前記溝部12は、前記マンホール1に形成されたインバート1bに対応する部分に形成されるものである。
【0093】
このように構成することにより、インバート1bを大きくはつることなく止水材を取り付けることができるため、施工性を向上させることができる。
【0094】
なお、本実施形態に係る水膨潤ゴム13は、本発明に係る止水材の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る針金15は、本発明に係る補強部材の実施の一形態であり、地盤の緩い地域や地震多発地帯など、あらかじめ補強をしておくことで、より災害等に強固な構造を要することができる。
なお、針金15やワイヤーと金属以外にも、樹脂や繊維状のものであってもよい。
【0095】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0096】
例えば本実施形態の止水構造10は、下水道を構成する既設管2と更生管3との間を止水するものとしたが、止水構造10で止水の対象となる水路は下水道に限定されるものではなく、その他の水路(例えば上水道等)であってもよい。
【0097】
また本実施形態では、端面2aが平面視略円状の既設管2に溝部12が形成されるものとしたが、本実施形態とは異なる形状の端面を有する既設管に溝部12を形成することも可能である。
【0098】
また本実施形態では、面取り部11を形成した後で溝部12を形成するものとしたが、面取り部11及び溝部12を形成する順番は特に限定されるものではない。すなわち止水構造10を施工する際には、溝部12を形成した後で面取り部11を形成することも可能である。
【0099】
また本実施形態では、インバート1bに対応する部分(インバート1bと同じ高さの範囲)に溝部12が形成されるものとしたが、これは一例であり、インバート1bと溝部12との関係は適宜変更可能である。例えばインバート1bに対応する部分よりも高い位置まで溝部12が形成されるものでもよい。このように、少なくともインバート1bに対応する部分に溝部12が形成されることで、インバート1bを大きくはつることなく止水構造10を施工することができ、施工性を向上させることができる。
【0100】
また本実施形態では、溝部12を形成する際に用いられるガイド部材20の下部に貫通孔23が形成されるものとしたが(
図6(a)参照)、これは一例であり、貫通孔23の位置は、ジャッキ30の操作部32・33の位置に応じて適宜変更可能である。またジャッキ30の種類によっては、貫通孔23が形成されていないガイド部材20を用いることも可能である。
【0101】
また本実施形態では更生管3が設けられた後で水膨潤ゴム13が取り付けられるものとしたが、水膨潤ゴム13が取り付けられるタイミングは、更生管3が設けられる前であってもよい。こうして更生管3の設置前に水膨潤ゴム13が取り付けられる場合、更生管3が邪魔になることがないため、既設管2の上部に面取り部11ではなく、溝部を形成することも可能である。
【0102】
また本実施形態では、既設管2と更生管3との間を水膨潤ゴム13で止水するものとしたが、既設管2と更生管3との間を止水する部材(止水材)は、水膨潤ゴム13に限定されるものではない。例えば止水部材としては、水を吸収することで膨潤するその他の(ゴム以外の)水膨潤材を用いることも可能である。また前記止水材としては、水膨潤材とは異なる材料で構成された環状部材等を用いることも可能である。
【0103】
また本実施形態では、補修材14を針金15で補強するものとしたが、針金15とは異なる部材により、補修材14を強固に補強することも可能である。
【符号の説明】
【0104】
1 マンホール
2 既設管
3 更生管
10 止水構造
11 面取り部
12 溝部
13 水膨潤ゴム