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2024-167007MALDI質量分析装置およびMALDI質量分析方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167007
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】MALDI質量分析装置およびMALDI質量分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20241122BHJP
   H01J 49/16 20060101ALI20241122BHJP
   H01J 49/00 20060101ALI20241122BHJP
   H01J 49/04 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
G01N27/62 F
G01N27/62 G
H01J49/16 400
H01J49/00 310
H01J49/00 360
H01J49/04 180
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083513
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】花井 俊哉
【テーマコード(参考)】
2G041
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041DA04
2G041GA08
(57)【要約】
【課題】試料の位置を正確に特定することが可能なMALDI質量分析装置およびMALDI質量分析方法を提供する。
【解決手段】MALDI質量分析装置300は、サンプルプレート、画像取得部4、エッジ処理部7および合成部8を含み、MALDI法を用いて試料の質量分析を行う。サンプルプレートは、試料を保持する。画像取得部4は、複数の異なる撮影条件下で撮影されたサンプルプレートの画像を示す複数の画像データを取得する。エッジ処理部7は、画像のエッジ部分を抽出するエッジ処理を画像取得部4により取得された各画像データに実行する。合成部8は、エッジ処理が実行された複数の画像データを合成することにより、合成されたエッジ部分の画像を示す合成画像データを生成する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MALDI法を用いて試料の質量分析を行うMALDI質量分析装置であって、
試料を保持するサンプルプレートと、
複数の異なる撮影条件下で撮影された前記サンプルプレートの画像を示す複数の画像データを取得する画像取得部と、
画像のエッジ部分を抽出するエッジ処理を前記画像取得部により取得された各画像データに実行するエッジ処理部と、
前記エッジ処理が実行された複数の画像データを合成することにより、合成されたエッジ部分の画像を示す合成画像データを生成する合成部とを備える、MALDI質量分析装置。
【請求項2】
隣り合う画素値の変化を滑らかにする平滑処理を前記画像取得部により取得された各画像データに実行する平滑処理部をさらに備え、
前記エッジ処理部は、前記平滑処理が実行された各画像データに前記エッジ処理を実行する、請求項1記載のMALDI質量分析装置。
【請求項3】
前記サンプルプレートには、試料の保持領域を区画するウェルが形成され、
前記MALDI質量分析装置は、画像の前記ウェルの縁に対応する部分を検出し、検出された部分の内側を抽出するマスク処理を、前記エッジ処理が実行される前の各画像データまたは前記エッジ処理が実行された後の各画像データに実行するマスク処理部をさらに備え、
前記合成部は、前記エッジ処理および前記マスク処理が実行された複数の画像データを合成することにより合成画像データを生成する、請求項1または2記載のMALDI質量分析装置。
【請求項4】
前記合成部により生成された合成画像データに基づいて試料のイオン化用光の照射位置を決定する照射位置決定部をさらに備える、請求項1または2記載のMALDI質量分析装置。
【請求項5】
前記照射位置決定部は、前記合成部により生成された合成画像データにより示されるエッジ部分の画像の内側に対応する前記サンプルプレートの領域を前記照射位置として決定する、請求項4記載のMALDI質量分析装置。
【請求項6】
前記サンプルプレートに照明光を照射する照明部と、
照明光が照射された前記サンプルプレートを撮影することにより画像データを生成し、生成された画像データを前記画像取得部に与えるカメラとをさらに備え、
前記複数の異なる撮影条件は、前記カメラによる撮影時に前記照明部と前記サンプルプレートとの相対位置が異なることを含む、請求項1または2記載のMALDI質量分析装置。
【請求項7】
前記サンプルプレートが載置され、移動可能に構成された可動ステージと、
前記カメラによる撮影時の前記サンプルプレートの位置を記憶する位置記憶部とをさらに備え、
前記合成部は、前記位置記憶部により記憶された前記サンプルプレートの位置にさらに基づいて合成画像データを生成する、請求項6記載のMALDI質量分析装置。
【請求項8】
互いに異なる複数の位置から選択的に前記サンプルプレートに照明光をそれぞれ照射する複数の照明部と、
前記複数の照明部のいずれかにより照明光が照射された前記サンプルプレートを撮影することにより画像データを生成し、生成された画像データを前記画像取得部に与えるカメラとをさらに備え、
前記複数の異なる撮影条件は、前記サンプルプレートに照明光を照射する照明部が異なることを含む、請求項1または2記載のMALDI質量分析装置。
【請求項9】
前記サンプルプレートに照明光を照射する照明部と、
照明光が照射された前記サンプルプレートを撮影することにより画像データを生成し、生成された画像データを前記画像取得部に与えるカメラとをさらに備え、
前記複数の異なる撮影条件は、前記サンプルプレートに照射される照明光の光量が異なることを含む、請求項1または2記載のMALDI質量分析装置。
【請求項10】
MALDI法を用いて試料の質量分析を行うMALDI質量分析方法であって、
複数の異なる撮影条件下で撮影された、試料を保持するサンプルプレートの画像を示す複数の画像データを取得することと、
画像のエッジ部分を抽出するエッジ処理を取得された各画像データに実行することと、
前記エッジ処理が実行された複数の画像データを合成することにより、合成されたエッジ部分の画像を示す合成画像データを生成することとを含み、
コンピュータにより実行される、MALDI質量分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MALDI質量分析装置およびMALDI質量分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MALDI(マトリックス支援レーザ脱離イオン化)質量分析装置においては、サンプルプレート上の試料にマトリックスが混合される。マトリックスと混合された試料にレーザ光が照射されることによりイオンが生成され、イオン検出器によりイオンが検出される。イオン検出器による検出信号に基づいてマススペクトルが生成される。
【0003】
レーザ光をサンプルプレート上の試料に正確に位置合わせする技術が提案されている。例えば、特許文献1に記載されたMALDI質量分析装置においては、カメラにより撮影されたサンプルプレートの画像が解析されることにより試料に対応する座標が特定される。特定された座標に基づいて、サンプルプレートの位置決め機構が制御されることにより、試料がレーザ光の照射領域に移動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0262514号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サンプルプレートの画像において、光の反射量が大きい部分には白飛びが発生することがある。この場合、特定されるサンプルプレートと試料との境界が不正確になるため、試料にレーザ光を正確に照射することができない。
【0006】
本発明の目的は、試料の位置を正確に特定することが可能なMALDI質量分析装置およびMALDI質量分析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、MALDI法を用いて試料の質量分析を行うMALDI質量分析装置であって、試料を保持するサンプルプレートと、複数の異なる撮影条件下で撮影された前記サンプルプレートの画像を示す複数の画像データを取得する画像取得部と、画像のエッジ部分を抽出するエッジ処理を前記画像取得部により取得された各画像データに実行するエッジ処理部と、前記エッジ処理が実行された複数の画像データを合成することにより、合成されたエッジ部分の画像を示す合成画像データを生成する合成部とを備える、MALDI質量分析装置に関する。
【0008】
本発明の他の態様は、MALDI法を用いて試料の質量分析を行うMALDI質量分析方法であって、複数の異なる撮影条件下で撮影された、試料を保持するサンプルプレートの画像を示す複数の画像データを取得することと、画像のエッジ部分を抽出するエッジ処理を取得された各画像データに実行することと、前記エッジ処理が実行された複数の画像データを合成することにより、合成されたエッジ部分の画像を示す合成画像データを生成することとを含み、コンピュータにより実行される、MALDI質量分析方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、試料の位置を正確に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るMALDI質量分析装置の構成を示す図である。
図2】分析部において使用されるサンプルプレートの模式的斜視図である。
図3図1の分析部の構成を示す図である。
図4図1の処理装置の機能部を説明するためのMALDI質量分析装置を示す図である。
図5図4の処理装置により実行される質量分析処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
図6】本発明の第2の実施の形態における分析部の構成を示す図である。
図7】本発明の第2の実施の形態における質量分析処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
図8】本発明の第2の実施の形態における質量分析処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
図9】マスク処理がエッジ処理後に実行されるときの合成画像データの生成過程を示す図である。
図10】マスク処理がエッジ処理後に実行されるときの合成画像データの生成過程を示す図である。
図11】マスク処理がエッジ処理後に実行されるときの合成画像データの生成過程を示す図である。
図12】マスク処理がエッジ処理後に実行されるときの合成画像データの生成過程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.第1の実施の形態
(1)MALDI質量分析装置
以下、MALDI質量分析装置およびMALDI質量分析方法について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係るMALDI質量分析装置の構成を示す図である。図1に示すように、MALDI質量分析装置300は、処理装置100および分析部200を含み、MALDI法を用いて試料の質量分析を行う。図1においては、主として処理装置100のハードウエア構成が示される。
【0012】
処理装置100は、CPU(中央演算処理装置)110、RAM(ランダムアクセスメモリ)120、ROM(リードオンリメモリ)130、記憶部140、操作部150、表示部160および入出力I/F(インターフェイス)170により構成される。処理装置100は、コンピュータにより実現されてもよい。CPU110、RAM120、ROM130、記憶部140、操作部150、表示部160および入出力I/F170はバス180に接続される。
【0013】
RAM120は、例えば揮発性メモリからなり、CPU110の作業領域として用いられるとともに、各種データを一時的に記憶する。ROM130は、例えば不揮発性メモリからなり、システムプログラムを記憶する。記憶部140は、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記憶媒体を含み、質量分析プログラム等を記憶する。CPU110が記憶部140に記憶された質量分析プログラムをRAM120上で実行することにより、後述する質量分析処理が行われる。
【0014】
質量分析プログラムは、ROM130に記憶されてもよい。あるいは、質量分析プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(CD-ROM等の外部記憶装置を含む。)に格納された形態で提供され、ROM130または記憶部140にインストールされてもよい。また、入出力I/F170が通信網に接続されている場合、通信網に接続されたサーバから配信された質量分析プログラムがROM130または記憶部140にインストールされてもよい。
【0015】
操作部150は、キーボード、マウスまたはタッチパネル等の入力デバイスである。使用者は、操作部150を用いて処理装置100に各種指示を行うことができる。表示部160は、液晶表示装置等の表示デバイスであり、後述するカメラにより撮影された試料の画像または試料の質量分析により得られたマススペクトル等を表示可能である。入出力I/F170は、分析部200に接続される。
【0016】
図2は、分析部200において使用されるサンプルプレート310の模式的斜視図である。図2に示すように、サンプルプレート310は、複数のウェル311が形成されたウェルプレートである。図2の例では、12個のウェル311が2行6列に配列される。各ウェル311は、リング形状を有する。各ウェル311により取り囲まれる円形の領域には、分析対象の試料312が保持される。また、試料312には、CHCA(α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸)またはDHB(2,5-ジヒドロキシ安息香酸)等のマトリックスが混合される。
【0017】
図3は、図1の分析部200の構成を示す図である。図3に示すように、分析部200は、イオン化部210、イオントラップ220、質量分析器230および検出器240を含む。イオン化部210は、可動ステージ211、照明部212、カメラ213、投光部214および引出電極215を含む。可動ステージ211は、アクチュエータを含み、互いに直交する三方向に移動可能である。可動ステージ211上にサンプルプレート310が載置される。
【0018】
照明部212は、例えばLED(発光ダイオード)を含み、サンプルプレート310に照明用の可視光(以下、照明光と呼ぶ。)を照射する。カメラ213は、照明部212により照明光が照射されたサンプルプレート310を撮影する。投光部214は、例えばレーザ光源を含み、サンプルプレート310上の試料312に紫外領域のパルス状の光(以下、イオン化光と呼ぶ。)を照射することにより、試料312に含まれる各種成分をイオン化する。引出電極215は、所定の電場を形成することにより、生成されたイオンをイオントラップ220に向けて引き出す。
【0019】
イオントラップ220は、四重極電場を形成することによりイオン化部210から引き出されたイオンを捕捉するとともに、捕捉されたイオンに冷却ガスを出射することによりイオンを冷却する。冷却ガスは、例えばヘリウムガスまたはアルゴンガスである。また、イオントラップ220は、冷却後のイオンに所定の電場を加えることによりイオンを放出する。イオントラップ220から放出されたイオンは、質量分析器230に導入される。
【0020】
質量分析器230は、例えば飛行時間型の質量分析器である。質量分析器230に導入されたイオンは、質量電荷比に応じた飛行速度で質量分析器230内の飛行空間を飛行し、質量電荷比が小さいイオンから順に検出器240に到達する。検出器240は、例えば二次電子増倍管であり、質量分析器230を飛行したイオンを検出する。また、検出器240は、検出量に対応する信号(以下、検出信号と呼ぶ。)を生成し、生成された検出信号を図1の処理装置100に与える。これにより、処理装置100においてマススペクトルが生成される。
【0021】
(2)処理装置
図4は、図1の処理装置100の機能部を説明するためのMALDI質量分析装置300を示す図である。図4に示すように、処理装置100は、機能部としてステージ制御部1、位置記憶部2、撮影制御部3、画像取得部4、マスク処理部5、平滑処理部6、エッジ処理部7、合成部8、照射位置決定部9および分析制御部10を含む。図1のCPU110が質量分析プログラムを実行することにより、処理装置100の機能部が実現される。処理装置100の機能部の一部または全部が電子回路等のハードウエアにより実現されてもよい。
【0022】
ステージ制御部1は、可動ステージ211の動作を制御することにより、可動ステージ211に載置されたサンプルプレート310(図3)を複数の位置に移動させる。位置記憶部2は、可動ステージ211の位置を記憶する。可動ステージ211の位置は、MALDI質量分析装置300に予め定義された座標系における、可動ステージ211の代表点の座標値であってもよい。
【0023】
撮影制御部3は、照明部212およびカメラ213の動作を制御することにより、複数の位置にあるサンプルプレート310を順次撮影する。画像取得部4は、カメラ213により撮影された画像を示す画像データをカメラ213から順次取得する。
【0024】
マスク処理部5は、画像取得部4により取得された画像データにおいて、各円形部分を検出し、検出された各円形部分の内側を抽出するマスク処理を画像データに実行する。検出される各円形部分は、サンプルプレート310のウェル311の縁に対応する。そのため、マスク処理が実行された画像データにおいては、ウェル311の画像が示されず、ウェル311内の試料の画像が示される。
【0025】
平滑処理部6は、マスク処理部5によりマスク処理が実行された画像データにおいて、隣り合う画素値の変化を滑らかにする平滑処理を実行する。エッジ処理部7は、平滑処理部6により平滑処理が実行された画像データにおいて、画素値が不連続に変化する部分を撮影対象物のエッジ部分として抽出するエッジ処理を実行する。
【0026】
合成部8は、エッジ処理部7によりエッジ処理が実行された複数の画像データを合成することにより合成画像データを生成する。合成画像データの生成においては、上記の画像処理が行われた複数の画像データと、複数の画像データがそれぞれ生成されたときのサンプルプレート310の位置とに基づいて、各画素の代表画素値が決定される。決定された各画素の代表画素値が合成されることにより合成画像データが生成される。
【0027】
各画素の代表画素値は、複数の画像データにおける当該画素の画素値の平均値であってもよいし、最大値であってもよい。あるいは、各画像データが二値化処理されている場合には、各画素の代表画素値は、複数の画像データにおける当該画素の画素値の論理和であってもよい。このようにして生成された合成画像データは、試料における欠損がほとんどないエッジ部分の画像を示す。
【0028】
照射位置決定部9は、合成部8により生成された合成画像データに基づいて、イオン化光の照射位置を決定する。サンプルプレート310に複数のウェル311が形成されている場合、イオン化光の照射位置は、複数のウェル311にそれぞれ対応して複数決定される。
【0029】
光の照射位置は、合成画像データが示すエッジ部分の内側に対応するサンプルプレート310の領域に決定されてもよい。この場合、試料にイオン化光を容易に照射することができる。特に、試料に混合されるマトリックスがCHCAである場合、試料は略円形状に広がって乾燥する。そのため、合成画像データが示すエッジ部分の内部においてイオン化光をラスタスキャンすることにより、試料にイオン化光を適切に照射することができる。
【0030】
分析制御部10は、照射位置決定部9により決定された照射位置にイオン化光が照射されるように投光部214の動作を制御する。また、分析制御部10は、引出電極215、イオントラップ220、質量分析器230および検出器240の動作を適宜制御することにより、試料の質量分析を実行する。さらに、分析制御部10は、検出器240により与えられる検出信号に基づいて、試料の質量電荷比と検出強度との関係を示すマススペクトルを生成する。
【0031】
(3)質量分析処理
図5は、図4の処理装置100により実行される質量分析処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。以下、図4の処理装置100を用いて、図5の質量分析処理を説明する。まず、撮影制御部3は、照明部212およびカメラ213の動作を制御することにより、サンプルプレート310を撮影する(ステップS1)。また、位置記憶部2は、このときのサンプルプレート310の位置を記憶する(ステップS2)。
【0032】
次に、画像取得部4は、ステップS1の撮影により生成された画像データを取得する(ステップS3)。マスク処理部5は、ステップS3で取得された画像データにマスク処理を実行する(ステップS4)。平滑処理部6は、ステップS4でマスク処理が実行された画像データに平滑処理を実行する(ステップS5)。エッジ処理部7は、ステップS5で平滑処理が実行された画像データにエッジ処理を実行する(ステップS6)。
【0033】
続いて、撮影制御部3は、撮影を終了するか否かを判定する(ステップS7)。所定回数撮影が実行されていない場合、撮影を終了しないと判定される。所定回数は、2以上の任意の整数であり、本例では2である。撮影を終了しない場合、ステージ制御部1は、可動ステージ211の動作を制御することにより、他の位置にサンプルプレート310を移動させる(ステップS8)。その後、処理はステップS1に戻る。
【0034】
撮影を終了すると判定されるまでステップS1~S7が繰り返される。所定回数撮影が実行された場合、撮影を終了すると判定され、処理はステップS9に進む。したがって、ステップS4~S6において、2以上の画像データの各々に各種処理が実行される。なお、サンプルプレート310が移動される前のステップS2~S6の処理と、サンプルプレート310が移動された後のステップS1~S6の処理とは、並列的に実行されてもよい。
【0035】
ステップS9において、合成部8は、ステップS2で取得されたサンプルプレート310の位置に基づいて、ステップS6でエッジ処理が実行された2以上の画像データを合成することにより合成画像データを生成する(ステップS9)。照射位置決定部9は、ステップS9で生成された合成画像データに基づいて、投光部214によるイオン化用光の照射位置を決定する(ステップS10)。
【0036】
その後、分析制御部10による分析制御が実行される(ステップS11)。分析制御は、投光部214の動作を制御することにより、ステップS10で決定された照射位置にイオン化用光を照射することを含む。また、分析制御は、引出電極215、イオントラップ220、質量分析器230および検出器240の動作を適宜制御すること、および検出器240により生成される検出信号に基づいてマススペクトルを生成することを含む。分析制御部10は、マススペクトルを生成した後、質量分析処理を終了する。
【0037】
(4)効果
本実施の形態に係るMALDI質量分析装置300においては複数の異なる撮影条件下で生成された画像データに基づいて合成画像データが生成される。各画像データには、画像のエッジ部分を抽出するエッジ処理が実行される。そのため、サンプルプレート310からの光の反射等により、いずれかの画像に白飛びが発生し、試料312のエッジ部分が不鮮明になっている場合でも、合成画像データは試料312における欠損がほとんどないエッジ部分の画像を示す。これにより、合成画像データが示すエッジ部分の画像に基づいて、試料312の位置を正確に特定することができる。
【0038】
各画像データには、隣り合う画素値の変化を滑らかにする平滑処理が平滑処理部6により実行され、平滑処理が実行された各画像データには、画像のエッジ部分を抽出するエッジ処理がエッジ処理部7により実行される。この場合、エッジ処理により画像のエッジ部分をより適切に抽出することができる。
【0039】
また、各画像データには、画像のウェルの縁に対応する部分を検出し、検出された部分の内側を抽出するマスク処理がマスク処理部5により実行される。さらに、エッジ処理およびマスク処理が実行された複数の画像データが合成されることにより合成画像データが生成される。この構成によれば、サンプルプレート310に試料312の保持領域を区画するウェル311が形成されている場合でも、ウェル311の画像が示されず、ウェル311内の試料312の画像を示す画像データを取得することができる。
【0040】
また、本実施の形態では、サンプルプレート310が可動ステージ211上に載置される。可動ステージ211によりサンプルプレート310の位置が移動されることにより、複数の異なる撮影条件下で撮影されたサンプルプレート310の画像を示す複数の画像データが取得される。ここで、撮影時のサンプルプレート310の位置が位置記憶部2により記憶されるので、サンプルプレート310が移動する場合でも、複数の画像データを適切に合成することができる。
【0041】
2.第2の実施の形態
(1)MALDI質量分析装置
第2の実施の形態に係るMALDI質量分析装置300について、第1の実施の形態に係るMALDI質量分析装置300と異なる点を説明する。図6は、本発明の第2の実施の形態における分析部200の構成を示す図である。図6に示すように、本実施の形態においては、イオン化部210は照明部216をさらに含む。
【0042】
照明部216は、照明部212とは異なる位置からサンプルプレート310に照明光を照射する。照明部216は、照明部212と同一の構成を有してもよい。この場合、照明部216は、照明部212と同一波長の可視光を照明光としてサンプルプレート310に照射する。
【0043】
また、本実施の形態では、可動ステージ211に代えて固定ステージが設けられ、固定ステージにサンプルプレート310が載置されてもよい。この場合、処理装置100は、図4のステージ制御部1および位置記憶部2を含まなくてもよい。
【0044】
(2)質量分析処理
図7は、本発明の第2の実施の形態における質量分析処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。図7に示すように、本実施の形態における質量分析処理は、ステップS2を含まず、ステップS8に代えてステップS8aを含む。そのため、第1の実施の形態における質量分析処理と同様のステップS1,S3~S7が順次実行される。
【0045】
ステップS7において、撮影を終了しない場合、撮影制御部3は、サンプルプレート310の撮影に用いる照明部を照明部212から照明部216に切り替える(ステップS8a)。この場合、次のステップS1においては、撮影制御部3は、照明部216およびカメラ213の動作を制御することにより、サンプルプレート310を撮影する。したがって、ステップS3において、異なる位置からサンプルプレート310に照明光が照射されたときの2つの画像データが取得される。
【0046】
ステップS4~S6において、これらの2つの画像データの各々に各種処理が実行される。また、ステップS9において各種処理が実行された2つの画像データに基づいて合成画像データが生成され、ステップS10において合成画像データに基づいてイオン化用光の照射位置が決定される。ステップS10において、決定された照射位置に基づいて、分析制御が行われる。
【0047】
(3)効果
本実施の形態に係るMALDI質量分析装置300においては、照明部212,216により互いに異なる位置から選択的にサンプルプレート310に照明光が照射される。照明部212,216のいずれかにより照明光が照射されたサンプルプレート310がカメラ213により撮影される。撮影により生成された画像データは、画像取得部4に与えられる。
【0048】
この場合、サンプルプレート310に照明光を照射する照明部212,216を切り替えることにより、複数の異なる撮影条件下で撮影されたサンプルプレート310の画像を示す複数の画像データを容易に取得することができる。また、サンプルプレート310の位置を変化させる必要がないので、複数の画像データを容易に合成することができる。
【0049】
3.第3の実施の形態
(1)MALDI質量分析装置
第3の実施の形態に係るMALDI質量分析装置300について、第1の実施の形態に係るMALDI質量分析装置300と異なる点を説明する。本実施の形態における分析部200の構成は第1の実施の形態における分析部200の構成と同様であるが、本実施の形態では、可動ステージ211に代えて固定ステージが設けられ、固定ステージにサンプルプレート310が載置されてもよい。この場合、第2の実施の形態と同様に、処理装置100は、図4のステージ制御部1および位置記憶部2を含まなくてもよい。
【0050】
(2)質量分析処理
図8は、本発明の第2の実施の形態における質量分析処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。図8に示すように、本実施の形態における質量分析処理は、ステップS2を含まず、ステップS8に代えてステップS8bを含む。そのため、第1の実施の形態における質量分析処理と同様のステップS1,S3~S7が順次実行される。
【0051】
ステップS7において、撮影を終了しない場合、撮影制御部3は、照明部212から出射される照明光の光量(強度)を変更する(ステップS8b)。照明光の光量は、実行済みのステップS1における光量よりも大きくされてもよいし、小さくされてもよい。この場合、次のステップS1においては、撮影制御部3は、光量が変更された照明光を用いてサンプルプレート310を撮影する。したがって、ステップS3において、サンプルプレート310に異なる光量の照明光が照射されたときの2つの画像データが取得される。
【0052】
ステップS4~S6において、これらの2つの画像データの各々に各種処理が実行される。また、ステップS9において各種処理が実行された2つの画像データに基づいて合成画像データが生成され、ステップS10において合成画像データに基づいてイオン化用光の照射位置が決定される。ステップS10において、決定された照射位置に基づいて、分析制御が行われる。
【0053】
(3)効果
本実施の形態に係るMALDI質量分析装置300においては、光量が変化されつつ照明部212によりサンプルプレート310に照明光が照射される。照明光が照射されたサンプルプレート310がカメラ213により撮影される。撮影により生成された画像データは、画像取得部4に与えられる。
【0054】
この場合、サンプルプレート310に照射される照明光の光量を変化させることにより、複数の異なる撮影条件下で撮影されたサンプルプレート310の画像を示す複数の画像データを容易に取得することができる。また、サンプルプレート310の位置を変化させる必要がないので、複数の画像データを容易に合成することができる。
【0055】
さらに、適切に光量を調整することにより、各画像データにおいて白飛びおよび黒潰れが発生する部分を異ならせることが可能である。これにより、試料312における欠損がほとんどないエッジ部分の画像を示す合成画像データをより確実に生成することができる。
【0056】
4.他の実施の形態
(1)第1の実施の形態において、移動可能な可動ステージ211上にサンプルプレート310が載置され、異なる位置にあるときのサンプルプレート310の画像データが合成されるが、実施の形態はこれに限定されない。照明部212が移動可能に構成され、照明部212により異なる位置から照明光が照射されたときのサンプルプレート310の画像データが合成されてもよい。
【0057】
この構成においては、可動ステージ211に代えて固定ステージが設けられ、固定ステージにサンプルプレート310が載置されてもよい。この場合、処理装置100は、図4のステージ制御部1および位置記憶部2を含まなくてもよい。図5の質量分析処理においては、ステップS8で、サンプルプレート310に代えて照明部212が移動される。また、サンプルプレート310の位置を記憶する必要がないので、ステップS2が実行されない。
【0058】
(2)上記実施の形態において、異なる撮影条件下で生成された2つの画像データが合成されることにより合成画像データが生成されるが、実施の形態はこれに限定されない。異なる撮影条件下で生成された3つ以上の画像データが合成されることにより合成画像データが生成されてもよい。
【0059】
(3)上記実施の形態において、各画像データにマスク処理が平滑処理およびエッジ処理の前に実行されるが、実施の形態はこれに限定されない。マスク処理は、平滑処理とエッジ処理との間に実行されてもよいし、エッジ処理の後に実行されてもよい。また、撮影対象物のエッジ部分を適切に抽出可能である場合には、各画像データにマスク処理および平滑処理の一方または両方が実行されなくてもよい。
【0060】
図9図12は、マスク処理がエッジ処理後に実行されるときの合成画像データの生成過程を示す図である。図9図11においては、サンプルプレート310の位置が変更される前のウェル311近傍の画像データに基づく画像が左に示される。また、サンプルプレート310の位置が変更された後のウェル311近傍の画像データに基づく画像が右に示される。
【0061】
図9に示すように、画像処理が行われる前の画像データには、部分的に白飛びが発生する。白飛びが発生する部分は、サンプルプレート310の位置が変更される前と変更された後とでわずかに異なる。図9の各画像データに平滑化処理およびエッジ検出処理が順次実行されることにより、図10の各画像が得られる。図10に示すように、各画像データにおいて撮影対象物のエッジ部分が抽出されることにより、画像中の撮影対象物のエッジ部分が強調される。
【0062】
図10の各画像データにマスク処理が実行されることにより、図11の各画像が得られる。図11に示すように、各画像データにおいて各円形部分の内側が抽出されることにより、画像中の試料のエッジ部分が強調される。図11の2つの画像データが合成されることにより、合成画像データが生成される。合成画像データにより、試料におけるエッジ部分の欠損がほとんどない図12の画像を示すことができる。
【0063】
(4)上記実施の形態において、処理装置100は照射位置決定部9を含むが、実施の形態はこれに限定されない。合成画像が示す画像に基づいて使用者がイオン化用光の照射位置を調整する場合には、処理装置100は照射位置決定部9を含まなくてもよい。
【0064】
5.態様
上記の複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0065】
(第1項)一態様に係るMALDI質量分析装置は、
MALDI法を用いて試料の質量分析を行うMALDI質量分析装置であって、
試料を保持するサンプルプレートと、
複数の異なる撮影条件下で撮影された前記サンプルプレートの画像を示す複数の画像データを取得する画像取得部と、
画像のエッジ部分を抽出するエッジ処理を前記画像取得部により取得された各画像データに実行するエッジ処理部と、
前記エッジ処理が実行された複数の画像データを合成することにより、合成されたエッジ部分の画像を示す合成画像データを生成する合成部とを備えてもよい。
【0066】
このMALDI質量分析装置においては、複数の異なる撮影条件下で生成された画像データに基づいて合成画像データが生成される。各画像データには、画像のエッジ部分を抽出するエッジ処理が実行される。そのため、サンプルプレートからの光の反射等により、いずれかの画像に白飛びが発生し、試料のエッジ部分が不鮮明になっている場合でも、合成画像データは試料における欠損がほとんどないエッジ部分の画像を示す。これにより、合成画像データが示すエッジ部分の画像に基づいて、試料の位置を正確に特定することができる。
【0067】
(第2項)第1項に記載のMALDI質量分析装置は、
隣り合う画素値の変化を滑らかにする平滑処理を前記画像取得部により取得された各画像データに実行する平滑処理部をさらに備え、
前記エッジ処理部は、前記平滑処理が実行された各画像データに前記エッジ処理を実行してもよい。
【0068】
この場合、エッジ処理により画像のエッジ部分をより適切に抽出することができる。
【0069】
(第3項)第1項または第2項に記載のMALDI質量分析装置において、
前記サンプルプレートには、試料の保持領域を区画するウェルが形成され、
前記MALDI質量分析装置は、画像の前記ウェルの縁に対応する部分を検出し、検出された部分の内側を抽出するマスク処理を、前記エッジ処理が実行される前の各画像データまたは前記エッジ処理が実行された後の各画像データに実行するマスク処理部をさらに備え、
前記合成部は、前記エッジ処理および前記マスク処理が実行された複数の画像データを合成することにより合成画像データを生成してもよい。
【0070】
この構成によれば、サンプルプレートにウェルが形成されている場合でも、ウェルの画像が示されず、ウェル内の試料の画像を示す画像データを取得することができる。これにより、試料の位置をより正確に特定することが可能になる。
【0071】
(第4項)第1項~第3項のいずれか一項に記載のMALDI質量分析装置は、
前記合成部により生成された合成画像データに基づいて試料のイオン化用光の照射位置を決定する照射位置決定部をさらに備えてもよい。
【0072】
この場合、イオン化用光を試料に容易に照射することができる。
【0073】
(第5項)第4項に記載のMALDI質量分析装置において、
前記照射位置決定部は、前記合成部により生成された合成画像データにより示されるエッジ部分の画像の内側に対応する前記サンプルプレートの領域を前記照射位置として決定してもよい。
【0074】
この場合、イオン化用光を試料に適切に照射することができる。
【0075】
(第6項)第1項~第5項のいずれか一項に記載のMALDI質量分析装置は、
前記サンプルプレートに照明光を照射する照明部と、
照明光が照射された前記サンプルプレートを撮影することにより画像データを生成し、生成された画像データを前記画像取得部に与えるカメラとをさらに備え、
前記複数の異なる撮影条件は、前記カメラによる撮影時に前記照明部と前記サンプルプレートとの相対位置が異なることを含んでもよい。
【0076】
この場合、照明部とサンプルプレートとの相対位置を変化させることにより、複数の異なる撮影条件下で撮影されたサンプルプレートの画像を示す複数の画像データを容易に取得することができる。
【0077】
(第7項)第6項に記載のMALDI質量分析装置は、
前記サンプルプレートが載置され、移動可能に構成された可動ステージと、
前記カメラによる撮影時の前記サンプルプレートの位置を記憶する位置記憶部とをさらに備え、
前記合成部は、前記位置記憶部により記憶された前記サンプルプレートの位置にさらに基づいて合成画像データを生成してもよい。
【0078】
この場合、サンプルプレートの位置を変化させることにより、複数の異なる撮影条件下で撮影されたサンプルプレートの画像を示す複数の画像データをより容易に取得することができる。また、撮影時のサンプルプレートの位置が位置記憶部により記憶されるので、複数の画像データを適切に合成することができる。
【0079】
(第8項)第1項~第5項のいずれか一項に記載のMALDI質量分析装置は、
互いに異なる複数の位置から選択的に前記サンプルプレートに照明光をそれぞれ照射する複数の照明部と、
前記複数の照明部のいずれかにより照明光が照射された前記サンプルプレートを撮影することにより画像データを生成し、生成された画像データを前記画像取得部に与えるカメラとをさらに備え、
前記複数の異なる撮影条件は、前記サンプルプレートに照明光を照射する照明部が異なることを含んでもよい。
【0080】
この場合、サンプルプレートに照明光を照射する照明部を切り替えることにより、複数の異なる撮影条件下で撮影されたサンプルプレートの画像を示す複数の画像データを容易に取得することができる。また、サンプルプレートの位置を変化させる必要がないので、複数の画像データを容易に合成することができる。
【0081】
(第9項)第1項~第5項のいずれか一項に記載のMALDI質量分析装置は、
前記サンプルプレートに照明光を照射する照明部と、
照明光が照射された前記サンプルプレートを撮影することにより画像データを生成し、生成された画像データを前記画像取得部に与えるカメラとをさらに備え、
前記複数の異なる撮影条件は、前記サンプルプレートに照射される照明光の光量が異なることを含んでもよい。
【0082】
この場合、サンプルプレートに照射される照明光の光量を変化させることにより、複数の異なる撮影条件下で撮影されたサンプルプレートの画像を示す複数の画像データを容易に取得することができる。また、サンプルプレートの位置を変化させる必要がないので、複数の画像データを容易に合成することができる。さらに、適切に光量を調整することにより、各画像データにおいて白飛びおよび黒潰れが発生する部分を異ならせることが可能である。これにより、試料における欠損がほとんどないエッジ部分の画像を示す合成画像データをより確実に生成することができる。
【0083】
(第10項)他の態様に係るMALDI質量分析方法は、
MALDI法を用いて試料の質量分析を行うMALDI質量分析方法であって、
複数の異なる撮影条件下で撮影された、試料を保持するサンプルプレートの画像を示す複数の画像データを取得することと、
画像のエッジ部分を抽出するエッジ処理を取得された各画像データに実行することと、
前記エッジ処理が実行された複数の画像データを合成することにより、合成されたエッジ部分の画像を示す合成画像データを生成することとを含み、
コンピュータにより実行されてもよい。
【0084】
このMALDI質量分析方法によれば、試料における欠損がほとんどないエッジ部分の画像を示す合成画像データが生成される。これにより、合成画像データが示すエッジ部分の画像に基づいて、試料の位置を正確に特定することができる。
【符号の説明】
【0085】
1…ステージ制御部,2…位置記憶部,3…撮影制御部,4…画像取得部,5…マスク処理部,6…平滑処理部,7…エッジ処理部,8…合成部,9…照射位置決定部,10…分析制御部,100…処理装置,110…CPU,120…RAM,130…ROM,140…記憶部,150…操作部,160…表示部,170…入出力I/F,180…バス,200…分析部,210…イオン化部,211…可動ステージ,212,216…照明部,213…カメラ,214…投光部,215…引出電極,220…イオントラップ,230…質量分析器,240…検出器,300…MALDI質量分析装置,310…サンプルプレート,311…ウェル,312…試料
図1
図2
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