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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167010
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】柱構造およびその構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/21 20060101AFI20241122BHJP
   E04C 3/34 20060101ALI20241122BHJP
   E04B 1/22 20060101ALI20241122BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
E04B1/21 C
E04C3/34
E04B1/22
E04B1/58 503B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083517
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】辰濃 達
(72)【発明者】
【氏名】河本 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】脇田 拓弥
【テーマコード(参考)】
2E125
2E163
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AB12
2E125AC01
2E125AC02
2E125AG02
2E125AG12
2E125BA41
2E125BD01
2E125BE07
2E125CA01
2E125EA01
2E125EA08
2E125EA33
2E163FA02
2E163FB36
2E163FD02
2E163FD36
2E163FD43
(57)【要約】
【課題】基部の上に柱部材を建て込む際に、柱部材の鉛直性を確保しつつ安全に作業を進めることができる柱構造を提供すること。
【解決手段】建物の柱梁架構1は、床面2の上に第2柱部材10Bを建て込んで構築される。床面2には、上端部にスリーブ40が設けられ、第2柱部材10Bには、上端部に支圧板41が設けられるとともに、支圧板41から第2柱部材10Bの下端部に至る貫通孔43が形成される。第2柱部材10Bの貫通孔43内には、PC鋼材44が挿通されて、PC鋼材44の下端部は、床面2のスリーブ40に固定され、PC鋼材44の上端部は、ナット45で第2柱部材10Bの支圧板41に固定されるとともに、PC鋼材44には、引張力が導入されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート造の基部の上に鉄筋コンクリート造の柱部材を建て込んで構築された柱構造であって、
前記基部には、上端部に第1固定部が設けられ、
前記柱部材には、上端部に第2固定部が設けられるとともに、前記第2固定部から前記柱部材の下端部に至る貫通孔が形成され、
前記柱部材は、前記基部の上に配置されており、
前記柱部材の貫通孔内には、緊張材が挿通されて、前記緊張材の下端部は、前記第1固定部に固定され、前記緊張材の上端部は、前記第2固定部に固定されるとともに、前記緊張材には、引張力が導入されていることを特徴とする柱構造。
【請求項2】
前記柱部材は、上下方向に延びる下側柱部と、前記下側柱部の上に設けられて梁部材が接合される柱梁接合部と、前記柱梁接合部の上に設けられて上下方向に延びる上側柱部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の柱構造。
【請求項3】
鉄筋コンクリート造の基部の上に鉄筋コンクリート造の柱部材を建て込む柱構造の構築方法であって、
前記基部には、上端部に第1固定部が設けられ、
前記柱部材には、上端部に第2固定部が設けられるとともに、前記第2固定部から前記柱部材の下端部に至る貫通孔が形成され、
前記基部の上に前記柱部材を配置する第1工程と、
前記柱部材の貫通孔内に緊張材を挿入し、前記緊張材の下端部を前記第1固定部に固定する工程と、
前記緊張材を上方に引っ張って、前記緊張材の上端部を前記第2固定部に固定する工程と、を備えることを特徴とする柱構造の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基部の上に柱部材を建て込んで構築された柱構造、および、その柱構造の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アンボンドのプレストレストコンクリート柱が知られている(特許文献1、2参照)。
特許文献1には、アンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱は、鉛直方向に配置された複数のプレキャストコンクリート柱体と、アンボンド状態でプレキャストコンクリート柱体に挿通された緊張材と、プレキャストコンクリート柱体に埋設された組立筋と、を含み、組立筋は、プレキャストコンクリート柱体内においてコンクリートと付着しない未付着部を含む。
【0003】
特許文献2には、アンボンドPCaPC構造体は、柱状に成型された第1のコンクリート部材と第1のコンクリート部材にアンボンド状態で挿通され張力が印加された緊張材とを含む第1のアンボンドPCaPC柱体と、柱状に成型された第2のコンクリート部材と第2のコンクリート部材にアンボンド状態で挿通され張力が印加された緊張材とを含む第2のアンボンドPCaPC柱体と、を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-150677号公報
【特許文献2】特開2021-156152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、基部の上に柱部材を建て込む際に、柱部材の鉛直性を確保しつつ安全に作業を進めることができるとともに、優れた耐震性を有する柱構造およびその構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、1層以上の高さを有するプレキャストコンクリート造の柱部材を形成し、その柱部材の中心軸上にPC鋼材を配置して、そのPC鋼材の下端部を基部に設けた第1固定部に固定するとともに、PC鋼材の上端部を柱部材の第2固定部に固定することで、柱部材をアンボント状態でプレストレスが導入されたプレストレストコンクリート柱として自立させることができる点に着眼し、本発明に至った。
第1の発明の柱構造(例えば、後述の建物の柱梁架構1、1A)は、鉄筋コンクリート造の基部(例えば、後述の床面2、第1柱部材10A、第2柱部材10B、第3柱部材10C)の上に鉄筋コンクリート造の柱部材(例えば、後述の第1柱部材10A、第2柱部材10B、第3柱部材10C)を建て込んで構築された柱構造であって、前記基部には、上端部に第1固定部(例えば、後述のスリーブ40)が設けられ、前記柱部材には、上端部に第2固定部(例えば、後述の支圧板41)が設けられるとともに、前記第2固定部から前記柱部材の下端部に至る貫通孔(例えば、後述の貫通孔43)が形成され、前記柱部材は、前記基部の上に配置されており、前記柱部材の貫通孔内には、緊張材(例えば、後述のPC鋼材44)が挿通されて、前記緊張材の下端部は、前記第1固定部に固定され、前記緊張材の上端部は、前記第2固定部に固定されるとともに、前記緊張材には、引張力が導入されていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、基部の上に柱部材を配置し、次に、この柱部材の貫通孔内に緊張材を挿入し、緊張材の下端部を第1固定部に固定して、この状態で、緊張材を上方に引っ張って、緊張材の上端部を第2固定部に固定する。これにより、柱部材は、アンボント状態でプレストレスが導入されたプレストレストコンクリート柱となり、基部上に鉛直性が確保された状態で自立する。また、このプレストレスが導入された柱部材は、プレストレスが導入されていない柱部材と比べて、優れた初期剛性および耐震性を有する。
よって、従来のように、柱部材を建て込んでから柱部材の柱主筋と基部の柱主筋とを接合するまでの期間、控え部材で柱部材の側面を仮支持しなくても、安全に作業を進めることができる。
また、柱部材を建て込んだ後、基部の柱主筋に柱部材の柱主筋を接合しなくても、直ちに、この柱部材に対して作業を行うことができるので、柱構造の工期を短縮できる。
【0008】
第2の発明の柱構造は、前記柱部材(例えば、後述の第2柱部材10B、第3柱部材10C)は、上下方向に延びる下側柱部(例えば、後述の下側柱部11)と、前記下側柱部の上に設けられて梁部材が接合される柱梁接合部(例えば、後述の柱梁接合部12)と、前記柱梁接合部の上に設けられて上下方向に延びる上側柱部(例えば、後述の上側柱部13)と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、柱部材を、柱梁接合部を挟んで下側柱部および上側柱部を含む構成とした。つまり、1層を超える高さを1節とした。よって、1層毎に鉄筋コンクリート造の柱部材を接合する場合と比べて、工期を短縮できるうえに建設費用を低減できる。
【0010】
第3の発明の柱構造の構築方法は、鉄筋コンクリート造の基部(例えば、後述の床面2、第1柱部材10A、第2柱部材10B、第3柱部材10C)の上に鉄筋コンクリート造の柱部材(例えば、後述の第1柱部材10A、第2柱部材10B、第3柱部材10C)を建て込む柱構造の構築方法であって、前記基部には、上端部に第1固定部(例えば、後述のスリーブ40)が設けられ、前記柱部材には、上端部に第2固定部(例えば、後述の支圧板41)が設けられるとともに、前記第2固定部から前記柱部材の下端部に至る貫通孔(例えば、後述の貫通孔43)が形成され、前記基部の上に前記柱部材を配置する第1工程(例えば、後述のステップS1)と、前記柱部材の貫通孔内に緊張材(例えば、後述のPC鋼材44)を挿入し、前記緊張材の下端部を前記第1固定部に固定する工程(例えば、後述のステップS2)と、前記緊張材を上方に引っ張って、前記緊張材の上端部を前記第2固定部に固定する工程(例えば、後述のステップS3)と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、上述の第1の発明と同様の効果がある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基部の上に柱部材を建て込む際に、柱部材の鉛直性を確保しつつ安全に作業を進めることができるとともに、優れた耐震性を有する、柱構造およびその構築方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る建物の柱梁架構の正面図である。
図2】第1実施形態に係る建物の柱梁架構の一部の分解斜視図である。
図3図1の破線Aで囲んだ部分(第2柱部材)および破線Bで囲んだ部分(第1柱部材)の縦断面図である。
図4図3の第2柱部材のC-C断面図である。
図5図3の破線Dおよび破線Eで囲んだ部分の拡大図である。
図6】床面上に第2柱部材を建て込む手順のフローチャートである。
図7】床面上に第2柱部材を建て込む手順の説明図である。
図8】下階の柱部材と上階の柱部材との接合部の縦断面図および破線Fで囲んだ部分の拡大図である。
図9】第1実施形態に係る建物の柱梁架構を構築する手順のフローチャートである。
図10】第1実施形態に係る建物の柱梁架構を構築する手順の説明図(その1、床面上に第2柱部材を建て込んで梁部材を取り付ける状況)である。
図11】第1実施形態に係る建物の柱梁架構を構築する手順の説明図(その2、床面上に第1柱部材を建て込む状況)である。
図12】第1実施形態に係る建物の柱梁架構を構築する手順の説明図(その3、現場コンクリート打設梁部を構築する状況)である。
図13】本発明の第2実施形態に係る建物の柱梁架構の正面図である。
図14図13の破線Gで囲んだ部分(第3柱部材)の縦断面図である。
図15】第2実施形態に係る建物の柱梁架構を構築する手順のフローチャートである。
図16】第2実施形態に係る建物の柱梁架構を構築する手順の説明図(床面上に第3柱部材を建て込む状況)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、鉄筋コンクリート造の基部(床面2、柱部材10A、10B)の上にプレキャストコンクリート造の柱部材(柱部材10A、10B)を建て込んで構築された柱構造、および、その柱構造の構築方法である。具体的には、上階の柱部材10A、10Bに挿通したPC鋼材44の下端部を、下階の床面2、柱部材10B、10Aの上端のスリーブ40に固定し、PC鋼材44の上端部を、上階の柱部材10A、10Bの上端部の支圧板41に固定する。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第一実施形態に係る柱構造としての建物の柱梁架構1の正面図である。図2は、建物の柱梁架構1の一部の分解斜視図である。
建物の柱梁架構1は、鉄筋コンクリート造であり、鉄筋コンクリート造の床面2の上に構築されている。この建物の柱梁架構1は、第1柱部材10A、第2柱部材10B、梁部材20、および、現場コンクリート打設梁部30を含んで構成されている。
【0015】
第1柱部材10Aは、1層分の高さF1を有する1層1節のプレキャストコンクリート造(PCa造)の鉛直部材である。第1柱部材10Aは、基部としての床面2または下階の柱部材(第2柱部材10B)の上に建て込まれている。
第2柱部材10Bは、1.5層分の高さF1.5を有する1.5層1節のプレキャストコンクリート造(PCa造)の鉛直部材である。第2柱部材10Bは、基部としての床面2または下階の柱部材(第1柱部材10A)の上に建て込まれている。
梁部材20は、プレキャストコンクリート造(PCa造)の水平部材である。現場コンクリート打設梁部30は、現場でコンクリートを打設して構築されている。
【0016】
第1柱部材10Aと第2柱部材10Bとは、上下方向に交互に設けられている。また、第1柱部材10Aと第2柱部材10Bとは、水平方向に交互に設けられている。
梁部材20は、第1柱部材10Aと第2柱部材10Bとの間の1スパンに架設される。梁部材20の水平方向の長さは、第1柱部材10Aと第2柱部材10Bとの間の1スパンよりも短くなっており、梁部材20の一端側である第1端部21は、第1柱部材10Aの側面に対して所定間隔空けて配置されており、現場コンクリート打設梁部30を介して第1柱部材10Aの側面に接合されている。梁部材20の他端側である第2端部22は、直接、第2柱部材10Bの側面に接合されている。
【0017】
図3(a)は、図1の破線Aで囲んだ部分(第2柱部材10B)の縦断面図である。図3(b)は、図1の破線Bで囲んだ部分(第1柱部材10A)の縦断面図である。図4は、図3(a)の第2柱部材10BのC-C断面図である。図5(a)は、図3(a)の破線Dで囲んだ部分の拡大図である。図5(b)は、図3(a)の破線Eで囲んだ部分の拡大図である。
第2柱部材10Bは、上下方向に延びる下側柱部11と、下側柱部11の上に設けられて梁部材20が接合される柱梁接合部12と、柱梁接合部12の上に設けられて上下方向に延びる上側柱部13と、を備える柱部材である。
第1柱部材10Aは、上下方向に延びる下側柱部11と、下側柱部11の上に設けられて梁部材20に接合される柱梁接合部12と、を備える柱部材である。
【0018】
以下、基部としての床面2上に建て込まれた第2柱部材10Bについて詳細に説明するが、床面2上に建て込まれた第1柱部材10Aについても、第2柱部材10Bと同様の構成である。
床面2には、第1固定部としての鋼製のスリーブ40および柱主筋15が埋設されており、柱主筋15は、床面2から上方に突出している。このスリーブ40は、内周面に雌ねじが形成されており、下端が塞がれた円筒形状である。
第2柱部材10Bは、上下方向に延びるコンクリート体14と、コンクリート体14に埋設されて上下方向に延びる柱主筋15と、コンクリート体14に埋設されて柱主筋15に所定間隔おきに巻かれた図示しない腹筋と、コンクリート体14の柱梁接合部12に埋設された水平方向に延びる梁主筋16と、を備える。
柱主筋15の上端部は、コンクリート体14の上端面の周縁部から上方に突出している。また、梁主筋16は、コンクリート体14の側面から側方に突出している。
【0019】
コンクリート体14の上端部の中央部には、第2固定部としての鋼製の支圧板41が埋設されている。この支圧板41は、コンクリート体14の上端面に露出して設けられている。また、コンクリート体14の支圧板41の直下には、シース管42が埋設されており、このシース管42により支圧板41からコンクリート体14の下端面に至る貫通孔43が形成されている。つまり、貫通孔43は、コンクリート体14の中心軸上に設けられている。
コンクリート体14の下端部の周縁部には、筒状のスリーブである鉄筋継手部17が埋設されており、柱主筋15の下端部は、鉄筋継手部17の上端部に接合されている。鉄筋継手部17の下端面は、コンクリート体14の下端面に露出している。
【0020】
第2柱部材10Bの貫通孔43内には、緊張材としてのPC鋼材44が挿通されている。このPC鋼材44の少なくとも上下端部には、雄ねじ部が形成されている。PC鋼材44の下端部は、床面2に埋設されたスリーブ40に螺合されており、これにより、PC鋼材44の下端部が床面2に埋設されたスリーブ40に固定されている。また、PC鋼材44の上端部には、ナット45が螺合されており、このナット45は第2柱部材10Bの支圧板41に係止されている。これにより、PC鋼材44の上端部は、第2柱部材10Bの支圧板41に固定されている。このPC鋼材44には、緊張力(引張力)が導入されている。
また、床面2から上方に突出した柱主筋15は、第2柱部材10Bの鉄筋継手部17の下端部に挿入されており、この状態で、鉄筋継手部17の内部には、グラウト材18が充填されている。これにより、床面2と第2柱部材10Bとが接合されている。
【0021】
図2に戻って、梁部材20は、水平方向に延びるコンクリート体23と、コンクリート体23に埋設されて水平方向に延びる梁主筋24と、コンクリート体23に埋設されて梁主筋24に所定間隔おきに巻かれた図示しないあばら筋と、を備える。
コンクリート体23の第1端部21の端面からは、梁主筋24が側方に向かって突出している。この梁部材20のコンクリート体23から突出した梁主筋24と、第1柱部材10Aのコンクリート体14の側面から突出した梁主筋16とは、継手で接合されている。この状態で、梁部材20のコンクリート体23の第1端部21の端面と、第1柱部材10Aのコンクリート体14の側面と、の間に現場でコンクリートを打設することで、現場コンクリート打設梁部30が構築されて、梁部材20の第1端部21と第1柱部材10Aとが接合される。
【0022】
コンクリート体23の第2端部22には、筒状のスリーブである鉄筋継手部25が埋設されており、梁主筋24の第2端部22側は、鉄筋継手部25の第1端部21側に接合されている。鉄筋継手部25の第2端部側は、コンクリート体23の第2端部22側の端面に露出している。第2柱部材10Bの梁主筋16は、梁部材20の鉄筋継手部25の第2端部22側に挿入されており、この状態で、鉄筋継手部25の内部には、グラウト材が充填されている。これにより、梁部材20の第2端部22と第2柱部材10Bとが接合される。
【0023】
床面2上に第2柱部材10Bを建て込む手順について、図6のフローチャートを参照しながら説明する。
ステップS1では、図7(a)に示すように、第2柱部材10Bを揚重機50で吊り上げて、床面2の上に配置する。これにより、床面2の柱主筋15が第2柱部材10Bの鉄筋継手部17の下端部に挿入される。
ステップS2では、図7(b)に示すように、第2柱部材10Bの貫通孔43内にPC鋼材44を挿入し、PC鋼材44の下端部を床面2のスリーブ40に固定する。
ステップS3では、図7(b)に示すように、ジャッキ51によりPC鋼材44を上方に引っ張って、この状態で、PC鋼材44の上端部をナット45で第2柱部材10Bの支圧板41に固定する。これにより、PC鋼材44にアンボンドで緊張力が導入され、第2柱部材10Bは、床面2上に安定した状態で直立する。
【0024】
上述のように、基部としての床面2上に第1柱部材10Aおよび第2柱部材10Bを建て込む場合は、図7(a)に示すように、床面2にスリーブ40および柱主筋15を埋設しておき、床面2に埋設したスリーブ40にPC鋼材44の下端部を固定するとともに、床面2から上方に突出した柱主筋15を、第1柱部材10Aおよび第2柱部材10Bの鉄筋継手部17に接合した。
【0025】
これに対し、基部としての下階の柱部材(第1柱部材10A、第2柱部材10B)の上に上階の柱部材(第1柱部材10A、第2柱部材10B)を建て込む場合は、以下のようにする。
図8(a)は、下階の柱部材(第1柱部材10A、第2柱部材10B)と上階の柱部材(第1柱部材10A、第2柱部材10B)との接合部の縦断面図である。図8(b)は、図8(a)の破線Fで囲んだ部分の拡大図である。
すなわち、下階の柱部材10A、10BのPC鋼材44の上端部に第1固定部としての鋼製のスリーブ40を螺合して取り付けておく。また、この上階の柱部材10A、10Bの貫通孔43の下端部を拡径して、下階の柱部材10A、10BのPC鋼材44に取り付けたスリーブ40が収容可能としておく。そして、下階の柱部材10A、10Bのスリーブ40にPC鋼材44の下端部を螺合して固定するとともに、下階の柱部材10A、10Bから上方に突出した柱主筋15を上階の柱部材10A、10Bの鉄筋継手部17に接合する。
【0026】
次に、建物の柱梁架構1を構築する手順について、図9のフローチャートを参照しながら説明する。
ステップS11では、図10に示すように、床面2上に第2柱部材10Bを建て込む。
床面2上に第2柱部材10Bを建て込む手順は、上述のステップS1~S3の通りである。これにより、第2柱部材10Bは、床面2上に安定した状態で直立する。
【0027】
ステップS12では、図10に示すように、梁部材20を揚重機で吊り上げて、梁部材20の第2端部22と第2柱部材10Bとを接合する。なお、この梁部材20は、図示しないサポートなどで下から支持する。
具体的には、第2柱部材10Bの梁主筋16を梁部材20の鉄筋継手部25に挿入し、この状態で、鉄筋継手部25の内部にグラウト材を充填することで、梁部材20の第2端部22と第2柱部材10Bとを接合する。
【0028】
ステップS13では、図11に示すように、床面2上に第1柱部材10Aを建て込む。
床面2上に第1柱部材10Aを建て込む手順は、上述のステップS1~S3の通りである。これにより、第1柱部材10Aは、床面2上に安定した状態で直立する。
【0029】
ステップS14では、図12に示すように、現場コンクリート打設梁部30を構築して、梁部材20の第1端部21と第1柱部材10Aとを接合する。
具体的には、梁部材20の梁主筋24と第1柱部材10Aの梁主筋16とを継手で接合し、この状態で、梁部材20のコンクリート体23の第1端部21の端面と、第1柱部材10Aのコンクリート体14の側面と、の間に型枠を建て込んで現場でコンクリートを打設することで、現場コンクリート打設梁部30を構築して、梁部材20の第1端部21と第1柱部材10Aとを接合する。
ステップS15では、以上のステップS11~S14を繰り返す。なお、ステップS15以降では、第2柱部材10Bを、床面2上ではなく第1柱部材10Aの上に建て込み、第1柱部材10Aを、床面2上ではなく第2柱部材10Bの上に建て込む。
【0030】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)床面2または下階の柱部材(第1柱部材10A、第2柱部材10B)の上に上階の柱部材(第1柱部材10A、第2柱部材10B)を配置し、次に、この配置した上階の柱部材10A、10Bの貫通孔43内にPC鋼材44を挿入し、PC鋼材44の下端部を床面2または下階の柱部材10A、10Bのスリーブ40に固定して、この状態で、PC鋼材44を上方に引っ張って、PC鋼材44の上端部をナット45で上階の柱部材10A、10Bの支圧板41に固定する。これにより、上階の柱部材10A、10Bは、床面2または下階の柱部材10A、10Bに仮固定されるとともに、アンボント状態でプレストレスが導入されたプレストレストコンクリート柱となり、鉛直性が確保された状態で自立する。また、このプレストレスが導入された上階の柱部材10A、10Bは、プレストレスが導入されていない柱部材と比べて、優れた初期剛性および耐震性を有する。
よって、従来のように、上階の柱部材10A、10Bを建て込んでから、この上階の柱部材10A、10Bの柱主筋15と床面2または下階の柱部材10A、10Bの柱主筋15とを接合するまでの期間、控え部材で上階の柱部材10A、10Bの側面を仮支持しなくても、安全に作業を進めることができる。
また、上階の柱部材10A、10Bを建て込んだ後、床面2または下階の柱部材10A、10Bの柱主筋15に上階の柱部材10A、10Bの柱主筋15を接合しなくても、直ちに、この上階の柱部材10A、10Bに対して作業を行うことができるので、建物の柱梁架構1の工期を短縮できる。
【0031】
(2)第2柱部材10Bを、柱梁接合部12を挟んで下側柱部11および上側柱部13を含む構成とし、1。5層1節とした。よって、1層毎に鉄筋コンクリート造の柱部材を接合する場合と比べて、工期を短縮できるうえに建設費用を低減できる。
【0032】
〔第2実施形態〕
図13は、本発明の第2実施形態に係る建物の柱梁架構1Aの正面図である。
本実施形態では、柱部材として、1層分の高さF1を有する第1柱部材10Aおよび1.5層分の高さF1.5を有する第2柱部材10Bを用いずに、2層分の高さF2を有する第3柱部材10Cを用いた点が、第1実施形態と異なる。
【0033】
図14は、図13の破線Gで囲んだ部分(第3柱部材10C)の縦断面図である。
すなわち、第3柱部材10Cは、上下方向に延びる下側柱部11と、下側柱部11の上に設けられて梁部材20が接合される柱梁接合部12と、柱梁接合部12の上に設けられて上下方向に延びる上側柱部13と、上側柱部13の上に設けられて梁部材20に接合される柱梁接合部12と、を備える柱部材である。
【0034】
次に、建物の柱梁架構1Aを構築する手順について、図15のフローチャートを参照しながら説明する。
ステップS21では、図16に示すように、床面2上に第3柱部材10Cを建て込む。
ステップS22では、図16に示すように、梁部材20を揚重機で吊り上げて、第3柱部材10C同士の間に配置し、梁部材20の第2端部22と一方の第3柱部材10Cとを接合する。なお、この梁部材20は、図示しないサポートなどで下から支持する。
ステップS23では、現場コンクリート打設梁部30を構築して、梁部材20の第1端部21と他方の第3柱部材10Cとを接合する。
ステップS24では、以上のステップS21~S23を繰り返す。なお、ステップS24以降では、第3柱部材10Cを、床面2上ではなく第3柱部材10Cの上に建て込む。
本実施形態によれば、上述の(1)、(2)と同様の効果がある。
【0035】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0036】
1、1A…建物の柱梁架構(柱構造) 2…床面(基部)
10A…第1柱部材 10B…第2柱部材 10C…第3柱部材
11…下側柱部 12…柱梁接合部 13…上側柱部
14…コンクリート体 15…柱主筋 16…梁主筋
17…鉄筋継手部 18…グラウト材
20…梁部材 21…第1端部 22…第2端部 23…コンクリート体
24…梁主筋 25…鉄筋継手部
30…現場コンクリート打設梁部
40…スリーブ(第1固定部) 41…支圧板(第2固定部)
42…シース管 43…貫通孔 44…PC鋼材(緊張材) 45…ナット
50…揚重機 51…ジャッキ
図1
図2
図3
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