(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167019
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/24 20060101AFI20241122BHJP
B01J 19/08 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
H05H1/24
B01J19/08 E
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023092758
(22)【出願日】2023-05-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】523116055
【氏名又は名称】カーボントレードネオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100178397
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 健輔
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】建石 俊之
【テーマコード(参考)】
2G084
4G075
【Fターム(参考)】
2G084AA07
2G084AA18
2G084AA25
2G084AA26
2G084BB11
2G084CC03
2G084CC19
2G084CC34
2G084DD01
2G084DD14
2G084DD22
2G084DD25
2G084FF39
4G075AA03
4G075BA01
4G075BA08
4G075CA47
4G075DA02
4G075EB41
4G075EC21
4G075FA01
4G075FA12
4G075FA16
4G075FB02
4G075FB04
4G075FB06
4G075FB12
4G075FC15
(57)【要約】
【課題】気体を連続して効率よくプラズマ処理することが可能であって、製造時の取扱性と作業性に優れたプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】平板状の誘電体層の両側に電極層を有し、さらに当該2つの電極層の外側にそれぞれ絶縁体層を有する多層構造を有し、前記電極層と前記絶縁体層は、両者を貫通する複数の貫通孔を有し、前記誘電体層は前記貫通孔が形成されている部分が外部に露出し、前記電極層と前記絶縁体層は、前記貫通孔内の断面部が外部に露出していることを特徴とするプラズマ生成部と、前記2つの電極層の間に交流電圧を印加することができる電源部と、気体をプラズマで処理するために、前記プラズマ生成部の外側の空間に気体を流すことができる気体流動部を有することを特徴とする誘電体バリア放電方式のプラズマ処理装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の誘電体層の両側に電極層を有し、さらに当該2つの電極層の外側にそれぞれ絶縁体層を有する多層構造を有し、
前記電極層と前記絶縁体層は、両者を貫通する複数の貫通孔を有し、
前記誘電体層は前記貫通孔が形成されている部分が外部に露出し、
前記電極層と前記絶縁体層は、前記貫通孔内の断面部が外部に露出していることを特徴とするプラズマ生成部と、
前記2つの電極層の間に交流電圧を印加することができる電源部と、
気体をプラズマで処理するために、前記プラズマ生成部の外側の空間に気体を流すことができる気体流動部を有することを特徴とする誘電体バリア放電方式のプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記プラズマ生成部を空間を隔てて複数設置して、前記複数のプラズマ生成部の外側の空間と中間の空間に気体を流すことができる気体流動部を有することを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記プラズマ生成部が平面状または曲面状であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記誘電体層が主としてガラス、セラミックスおよびシリコーン系樹脂から選ばれる材料から構成され、前記絶縁体層が主としてガラス繊維、セルロース繊維、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびポリイミド樹脂から選ばれる材料から構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置に関する。特に、気体を連続的にプラズマ処理することができるプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマ処理技術に関しては、誘電体バリア放電(Dielectric Barrier Discharge、DBD)という手法が開発されて、大気圧下で低温度のプラズマを発生させることが可能となった。その結果、プラズマ処理の適用分野が広がり、多様な用途で利用が進みつつある。プラズマ処理の目的としては、殺菌、消臭、表面改質、化学物質の分解などが挙げられる。また、プラズマ処理の対象となる物質は、固体、液体、気体のいずれであってもよい。
【0003】
空気を流動させつつ連続的にプラズマ処理するために、種々のプラズマ処理装置が開発されている。例えば、特許文献1には、平板状の第1電極と第2電極とが間隙を隔てて対向するように設けられたプラズマ生成部が2以上積層配置されたプラズマ発生装置が開示されている。また、特許文献2には、放電電極の少なくとも一部が誘電体で覆われた電極部材を厚さ方向に並べて配置した構造を有し、隣接する前記電極部材間の隙間にプラズマを発生させる構造を有するプラズマ発生器と、電圧を印加する電源と、前記隙間に空気を流すとともに発生したオゾンを空気とともに放出する送風手段とを備えた空気清浄器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-190472号公報
【特許文献2】特開2018-130208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のプラズマ発生装置も、特許文献2に記載の空気清浄器も、複数の金属層と誘電体層とで挟まれたスリット状の空間にプラズマを発生させて、空間を流れる空気をプラズマ処理するものである。また、いずれの装置も、金属層、誘電体層、隙間の空間を多数積層した構造を有しており、製造時には、厚さが薄い各層を順番に積層していく作業を多数回繰り返すことが必要であり、製造時の取扱性や作業性に劣るものであった。
【0006】
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の課題は、気体を連続して効率よくプラズマ処理することが可能であって、製造時の取扱性と作業性に優れたプラズマ処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、まず、平板状の誘電体層の両側に電極層を有し、さらに当該2つの電極層の外側にそれぞれ絶縁体層を有する多層構造体を試作した。本発明者は、次に、積層された前記電極層と前記絶縁体層とを貫通する複数の貫通孔を形成することによって、前記貫通孔が形成されている部分において前記誘電体層が外部に露出している多層構造体を試作した。本発明者は、得られた多層構造体の2つの電極層の間に交流電圧を印加して、プラズマの生成状況を観察した。その結果、2つの電極層で挟まれた誘電体層内においてプラズマが生成するだけでなく、貫通孔内の電極層の断面部が外部に露出している部分付近においても、プラズマが生成することを見出した。そして、貫通孔内の電極層の断面部付近において生成したプラズマが、多層構造体の外側を流れる気体のプラズマ処理に有効に働くことを見出した。上記の複数の貫通孔を有する多層構造体は、スリット状の空間の形成を必ずしも必要とせず、プラズマ処理装置の製造時における上記課題の解消を可能とするものである。
本発明は、上記のような検討を経て完成するに至ったものである。すなわち、本発明は、以下のような構成を有するものである。
【0008】
(1)平板状の誘電体層の両側に電極層を有し、さらに当該2つの電極層の外側にそれぞれ絶縁体層を有する多層構造を有し、前記電極層と前記絶縁体層は、両者を貫通する複数の貫通孔を有し、前記誘電体層は前記貫通孔が形成されている部分が外部に露出し、前記電極層と前記絶縁体層は、前記貫通孔内の断面部が外部に露出していることを特徴とするプラズマ生成部と、前記2つの電極層の間に交流電圧を印加することができる電源部と、気体をプラズマで処理するために、前記プラズマ生成部の外側の空間に気体を流すことができる気体流動部を有することを特徴とする誘電体バリア放電方式のプラズマ処理装置。
(2)前記プラズマ生成部を空間を隔てて複数設置して、前記複数のプラズマ生成部の外側の空間と中間の空間に気体を流すことができる気体流動部を有することを特徴とする前記(1)に記載のプラズマ処理装置。
(3)前記プラズマ生成部が平面状または曲面状であることを特徴とする前記(1)または前記(2)に記載のプラズマ処理装置。
(4)前記誘電体層が主としてガラス、セラミックスおよびシリコーン系樹脂から選ばれる材料から構成され、前記絶縁体層が主としてガラス繊維、セルロース繊維、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびポリイミド樹脂から選ばれる材料から構成されていることを特徴とする前記(1)または前記(2)に記載のプラズマ処理装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明のプラズマ処理装置は、気体を連続して効率よくプラズマ処理することが可能であって、製造時の取扱性と作業性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態のプラズマ処理装置のプラズマ生成部の模式的見取図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1のプラズマ生成部のA-A断面の模式的断面図である。
図2(b)は、
図1のプラズマ生成部のB-B断面の模式的断面図である。
【
図3】本実施形態のプラズマ処理装置のプラズマ生成部を気体の流れ方向の風上方向から見た模式的見取図である。
【
図4】本実施形態のプラズマ処理装置のプラズマ生成部を気体の流れ方向の直角方向から見た模式的見取図である。
【
図5】本実施形態のプラズマ処理装置のプラズマ生成部と気体流動部の模式的見取図である。
【
図6】
図5のプラズマ処理装置のプラズマ生成部と気体流動部のC-C断面の模式的断面図である。
【
図7】本実施形態のプラズマ処理装置のプラズマ生成部と気体流動部の模式的見取図である。
【
図8】
図7のプラズマ処理装置のプラズマ生成部と気体流動部のD-D断面の模式的断面図である。
【
図9】本実施形態のプラズマ処理装置のプラズマ生成部の模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明の実施形態は、以下に記載された具体的な実施形態に限られる訳ではない。
【0012】
本実施形態のプラズマ処理装置は、気体を連続してプラズマ処理するために、誘電体層、電極層および絶縁体層を有する多層構造を有したプラズマ生成部と、対をなす2つの電極層の間に交流電圧を印加することができる電源部と、プラズマ生成部の外側の空間に気体を流すことができる気体流動部とを有している。本実施形態のプラズマ処理装置は、これらのうち、プラズマ生成部の構成に特に特徴を有するものである。
【0013】
誘電体バリア放電では、2つの電極層の間に誘電体層を設けて、両電極層間に交流電圧を印加することによって、両電極層で挟まれた誘電体層内にプラズマを発生させることができる。
ところで、本発明者は、平板状の誘電体層の両側に電極層を設け、さらに当該2つの電極層の外側にそれぞれ絶縁体層を設けた多層構造体であって、誘電体層と接する電極層と絶縁体層に対して、両層を貫通する複数の貫通孔を形成した多層構造体を作成した。当該多層構造体の両電極層間に交流電圧を印加したところ、貫通孔内の電極層の断面部が外部に露出している部分付近においてプラズマが生成することを見出した。そして、貫通孔内の電極層の断面部付近において生成したプラズマによって、多層構造体の外側を流れる気体をプラズマ処理することができることを見出した。
【0014】
図1は、本実施形態のプラズマ処理装置のプラズマ生成部10の模式的見取図である。本実施形態のプラズマ処理装置のプラズマ生成部10は、平板状の誘電体層3の両側に電極層と絶縁体層1を有している。
図1では、誘電体層3の両側に存在する電極層は、外縁部が絶縁体4で封止されているため、外観からは確認できない。電極層と絶縁体層1には複数の貫通孔5が形成されている。貫通孔5が形成されている箇所において、誘電体層3の表面は外部に露出している。
【0015】
図2(a)は、
図1のプラズマ生成部のA-A断面の模式的断面図である。平板状の誘電体層3の両側に電極層2を有し、さらに2つの電極層2の外側にそれぞれ絶縁体層1を有する多層構造を有している。電極層2は、その外縁部が外界に曝されて経時劣化しないように、また貫通孔5以外の外縁部を経由して放電することがないように、外縁部が絶縁体4で封止されている。
【0016】
図2(b)は、
図1のプラズマ生成部のB-B断面の模式的断面図である。電極層2と絶縁体層1は、両者を貫通する複数の貫通孔5を有している。誘電体層3は、貫通孔5が形成されている複数の箇所において、その表面が外部に露出している。また、貫通孔5の内側の内壁面において、電極層2と絶縁体層1は、それぞれの断面部が外部に露出している。貫通孔5の内側の内壁面において、電極層2は絶縁体4で封止されていない。
【0017】
図3は、プラズマ処理装置のプラズマ生成部を気体の流れ方向の風上方向から見た模式的見取図である。プラズマ生成部10の表面には、電極層2と絶縁体層1を貫通する複数の貫通孔5が存在している。貫通孔5の内側の内壁面において、電極層2の断面部6が外部に露出している。ここで、誘電体層3を挟む2つの電極層2の間に交流電圧を印加したとき、2つの電極層2で挟まれた誘電体層3内にプラズマが発生する。さらに、貫通孔5内の電極層2の断面部6付近においてもプラズマが生成する。2つの電極層2間に交流電圧を印加したとき、一般に、電極層2の平面部よりも、電極層2の突き出たエッジ部からプラズマが発生し易い。そのため、
図3のプラズマ生成部10において、2つの電極層2間の誘電体層3内部よりも、貫通孔5内の電極層2の断面部6付近において、より多くのプラズマが発生し易い。
【0018】
図4は、プラズマ処理装置のプラズマ生成部10を気体の流れ方向の直角方向から見た模式的見取図である。誘電体層3を挟む2つの電極層2の間に交流電圧を印加しながら、矢印で示されているように、気体流動部(不図示)によって、プラズマ生成部10の両側の外側表面に沿って、プラズマ処理の対象である気体を流す。気体は、プラズマ生成部10の表面に沿って、貫通孔5内において外部に露出した誘電体層3の表面付近と貫通孔5内の電極層2の断面部6付近を通過する。その結果、気体は、誘電体層3内に発生しているプラズマと貫通孔5内の電極層2の断面部6付近に発生しているプラズマによって処理される。特に、貫通孔5内の電極層2の断面部6付近に発生しているプラズマによってより強く処理される。
【0019】
図5は、プラズマ処理装置のプラズマ生成部10と気体流動部20の模式的見取図である。気体流動部20は、気体をプラズマで連続的に処理するために、プラズマ生成部10の外側の空間に気体を流すことができる装置である。気体流動部20は、プラズマ生成部10に気体を供給し、プラズマ生成部10の外側の空間に気体を通過させた後に、プラズマ処理された気体を排出させることができる装置であれば、特に制約はない。
図5には、1枚のプラズマ生成部10と、プラズマ生成部10の上下の空間に気体を流すことができるように、気体流動部20の一部である円筒形の気体配管7が示されている。
【0020】
図6は、
図5のプラズマ生成部10と気体流動部20のC-C断面の模式的断面図である。円筒形の気体配管7の内側の直径方向であって、長さ方向に沿って1枚のプラズマ生成部10が設置されている。プラズマ生成部10の上下の外側の空間に気体を流すことによって、気体をプラズマ処理することが可能となる。
【0021】
図5が1枚のプラズマ生成部10であるのに対して、
図7は、3枚のプラズマ生成部10を用いた場合のプラズマ処理装置のプラズマ生成部10と気体流動部20の模式的見取図である。また、
図8は、
図7のプラズマ生成部10と気体流動部20のD-D断面の模式的断面図である。
図7および
図8では、円筒形の気体配管7の内側であって、長さ方向に沿って3枚のプラズマ生成部10が平行に設置されている。3枚のプラズマ生成部10の上下の外側の空間に気体を流すことによって、1枚のプラズマ生成部10の場合よりも気体のプラズマ処理の効率を上げることができる。
このように、プラズマ生成部10を空間を隔てて複数設置して、複数のプラズマ生成部10の外側の空間と中間の空間に気体を流すことによって、プラズマ生成部10と気体との接触面積を増大させることができ、プラズマ処理の効率を上げることができる。
【0022】
気体配管7の内側に設置するプラズマ生成部10の枚数は、制約がある訳ではなく、必要に応じて、1枚または2枚以上の適切な枚数を選択して設置することができる。また、複数枚数のプラズマ生成部10の並べ方、および気体配管7の形状(円筒形、直方体、円錐形、角錐系、等)についても、特に制約がある訳ではないので、必要に応じて適宜選択して設置することができる。
【0023】
プラズマ生成部10の外観形状については、平面状であってもよいし、曲面状であってもよい。プラズマ生成部10の多層構造を可撓性のある材料で構成することができれば、プラズマ生成部10を円筒形や半円筒形等の形状に曲げて、コンパクトな形状とすることが可能となる。
【0024】
気体流動部20は、気体を流動させることができる装置であり、プラズマ生成部10に気体を供給し、プラズマ生成部10の外側の空間に気体を通過させ、プラズマ処理された気体を排出させることができる装置である。気体を流動させる方法としては、公知の方法を適宜選択して用いることができる。
気体を流動させる駆動装置としては、遠心式送風機(シロッコファン、ラジアルファン、ターボファンなど)、軸流式送風機(プロペラファンなど)、斜流式送風機(ラインファンなど)、横流式送風機、ブロアなどの公知の装置が適宜使用される。
【0025】
図9は、プラズマ生成部10の模式的平面図であり、貫通孔5の平面形状について、いくつかの代表的な具体例が示されている。貫通孔5の平面形状は、プラズマ生成部10上に形成された誘電体層3の外部に露出している部分の形状を示すものであり、また貫通孔5内の電極層2の露出している断面部の形状を示すものである。貫通孔5の平面形状には種々のパターンの具体例を挙げることができる。
【0026】
図9(a)は、気体の流れ方向の長さが、気体の流れ方向と直角方向の長さよりも長い長楕円形が平行に多数並んだパターンのものである。
図9(b)は、円形が縦横に規則正しく多数並んだパターンのものである。
図9(c)は、気体の流れ方向の長さが、気体の流れ方向と直角方向の長さよりも短い長方形が平行に多数並んだパターンのものである。
【0027】
図9(a)のように、気体の流れ方向の長さが、気体の流れ方向と直角方向の長さよりも長い形状が平行に多数並んだパターンのときは、形状の長辺が気体の流れ方向に沿っているため、気体の流れの抵抗が少なくなり、気体の流れがスムーズになる。一方、
図9(c)のように、気体の流れ方向の長さが、気体の流れ方向と直角方向の長さよりも短い形状が平行に多数並んだパターンのときは、形状の長辺が気体の流れ方向と直角であるため、気体の流れが乱されて、気体が撹拌されることになる。
図9(b)のように、気体の流れと同じ方向と直角方向の長さが変わらないときは、
図9(a)と
図9(c)の中間の傾向になる。
【0028】
貫通孔5の平面形状のパターンについては特に制約がある訳ではないので、どのような形状にするかは、プラズマ処理の目的、プラズマ処理の効果等に応じて適宜選択して実施することができる。また、プラズマ生成部10の表側と裏側とで貫通孔5の平面形状のパターンを異なったものにすることもできる。また、プラズマ生成部10において、貫通孔5を形成する面を表側と裏側の両方の面にすることも、片方の面のみにすることもできる。
【0029】
本実施形態において、プラズマ処理の対象となる気体に特に制限がある訳ではない。プラズマ処理を行う目的には、殺菌、消臭、表面改質、化学物質の分解などがある。これらの目的や用途に応じて、プラズマ処理の程度を変えることができる。プラズマ処理の程度は、プラズマ処理の時間(気体の流速等)やプラズマ処理の強さ(印加する交流電圧の強さ等)を調整することによって、適宜制御することができる。
【0030】
電極層2は、導電性材料で構成されており、金属板(金属箔を含む)、導電性塗料、導電性高分子、導電性の膜などを使用することができるが、金属板であることが好ましい。金属材料としては、導電性に優れた銅、アルミニウム、ステンレス鋼、鉄、銀、金などが好ましい。これらの中では、導電性、コストの点から銅がより好ましい。
電極層2の厚さは、特に限定されないが、軽量でコンパクトな処理装置とするために、5μm~1mmが好ましく、5μm~0.2mmがより好ましく、5μm~0.1mmがさらに好ましい。
【0031】
誘電体層3を構成する材料は、2つの電極層2の間で容易に放電することがないように、絶縁性材料を使用することが必要である。また、誘電体層3を構成する材料は、発生するプラズマにさらされることになるため、プラズマ中で発生する活性物質に対して耐久性を有した材料であることが好ましい。誘電体層3を構成する材料としては、主としてガラス、セラミックスおよび合成樹脂から選ばれる材料が好ましい。ここで、「主として」とは、成分組成が50質量%以上であることを意味している(以下、同様である。)。
【0032】
ガラスとしては、ソーダ石灰ガラス(ソーダガラス)、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、酸化物ガラスなどが挙げられる。
セラミックスとしては、アルミナ、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛などが挙げられる。
合成樹脂には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂がある。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリ乳酸、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの汎用樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、環状ポリオレフィンなどのエンジニアリングプラスチック、ポリフェニレンスルファイド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂などのスーパーエンジニアリングプラスチックが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂などが挙げられる。これらの合成樹脂の中では、耐久性に優れたシリコーン系樹脂が特に好ましい。
誘電体層3の厚さは、特に限定されないが、軽量でコンパクトな処理装置とするために、0.1~5mmが好ましく、0.1~1mmがより好ましい。
【0033】
絶縁体4を構成する材料としては、ガラス、セラミックスおよび合成樹脂から選ばれる材料が好ましい。ガラス、セラミックス、合成樹脂の具体例については、誘電体層3を構成する材料と同様である。
【0034】
絶縁体層1を構成する材料としては、絶縁性材料が使用される。絶縁性材料としては、特に限定されないが、取扱性を向上させ、適度の柔軟性を付与するために、ガラス、セラミックス、合成樹脂などを挙げることができる。合成樹脂としては、誘電体層3を構成する材料としての合成樹脂と同様に、汎用樹脂、エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチックなどの熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが挙げられる。これらの中では、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびポリイミド樹脂から選ばれる材料が好ましい。
また、合成樹脂を補強するために、合成樹脂中にフィラーを添加することが好ましい。フィラーとしては、ガラス繊維、セルロース繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ウィスカーなどの繊維、炭酸カルシウム、シリカ、タルク、マイカ、クレイ、アルミナ、カオリンなどの無機粒子などが挙げられる。これらの中では、ガラス繊維、セルロース繊維が好ましい。
【0035】
以上のことから、絶縁体層1を構成する材料としては、主としてガラス繊維、セルロース繊維、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびポリイミド樹脂から選ばれる材料がより好ましい。
具体的には、ガラス繊維と熱硬化性エポキシ樹脂からなるガラスエポキシ基板、紙とフェノール樹脂からなる紙フェノール基板、ポリイミド樹脂基板などの、いわゆるプリント配線基板が挙げられる。これらの基板と銅箔とを貼り合わせた銅張積層板は、銅箔がそのまま本実施形態の電極層2として利用することができるので、特に好ましい。
絶縁体層1の厚さは、特に限定されないが、軽量でコンパクトな処理装置とするために、0.1~5mmが好ましく、0.1~2mmがより好ましい。
【0036】
本実施形態では、上記のように汎用的な銅張積層板等の製品を利用して、プラズマ生成部10を製造することが可能であり、製造時の取扱性や作業性を向上させて、プラズマ処理装置を効率よく高い歩留まりで製造することが可能である。
【0037】
誘電体層3と電極層2は、接着剤を使用せずに積層してもよいし、接着剤で接着してもよい。接着剤としては、プラズマ中で発生する活性物質に対して耐久性を有した材料であることが好ましい。接着剤としては、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系、フェノール系、ユリア系、メラミン系、シリコーン系、シアノアクリレート系、ゴム系、酢酸ビニル系などの種類がある。これらの中では、耐久性の点から、シリコーン系接着剤、UV硬化型エポキシ系接着剤が好ましく、シリコーン系接着剤がより好ましい。
接着剤層の厚さは、0.01~0.2mmが好ましく、0.01~0.1mmがより好ましい。
【0038】
プラズマ処理装置は、使用時に温度の変化があるため、複層構造を構成する素材間で熱膨張係数に大きな差異があると、経時的に剥離等の問題が生じる懸念がある。そのため、電極層2と積層する誘電体層3や絶縁体層1を構成する材料および接着剤は、電極層2の寸法変化に追随し得るような柔軟性に優れた材料であることが好ましい。そのような材料としては、合成樹脂系の材料が好ましく、合成樹脂系の材料の中からさらに適切な材料を選択して用いることが好ましい。
【0039】
本実施形態のプラズマ処理装置のプラズマ生成部10を製造するためには、絶縁体層1、電極層2、誘電体層3、絶縁体4などの材料を積層して製造される。各層を積層する方法には、圧着、加熱圧着、接着剤の塗布などの公知の方法があり、適宜選択して使用することができる。電極層2と絶縁体層1に貫通孔5を形成する方法には、打ち抜き法、エッチング法などの公知の方法があり、適宜選択して使用することができる。
【0040】
本実施形態の電源部(不図示)は、誘電体層3を挟んで互いに対向する2つの電極層2の間に交流電圧を印加するものである。電源部の具体的な内容については、プラズマ生成部10の2つの電極層2に所定の周波数で所定の電圧の交流電圧を印加することができれば、特に制約はなく、公知の電源装置を用いることができる。
交流電圧の周波数としては、50Hz~30MHzが好ましく、50Hz~100kHzがより好ましい。また、交流電圧としては、0.1~50kVが好ましく、0.2~10kVがより好ましい。
【0041】
本実施形態のプラズマ処理装置を用いて気体をプラズマ処理することによって発揮される機能としては、殺菌、ウィルスの不活化、消臭、表面改質、化学物質の分解などが挙げられる。これらの機能が発揮されるメカニズムとしては、プラズマ処理によって、気体中に一重項酸素、過酸化水素、OHラジカル、ペルオキシドラジカル、オゾン等の活性酸素種(Reactive Oxygen Species)が生成し、それらが酸化反応等によって、対象となる微生物を死滅させたり、化学物質を分解・改質させたりするためと考えられている。微生物としては、各種の細菌、ウィルス、カビなどが挙げられる。
【0042】
本実施形態のプラズマ処理装置では、プラズマ処理された気体は、プラズマによって発生した活性酸素種によって、当該気体中に存在する微生物が死滅したり、化学物質が分解したりして、当該気体の殺菌・消臭等が行われる。
さらに、本実施形態のプラズマ処理装置では、プラズマ処理された気体中に、活性酸素種が存在(残存)している。そのため、本実施形態のプラズマ処理装置によって生成したプラズマ処理された気体を対象物に吹き付けることによって、当該対象物中に存在する微生物が死滅したり、化学物質が分解したりして、当該対象物の殺菌・消臭等が行われる。
【0043】
本実施形態のプラズマ処理装置は、これらの機能を利用して、医療、住宅、土木、建設、農業、水産業、畜産業、食品加工業、輸送業、保管業、小売業などの多くの産業分野において、消臭、悪臭除去、殺菌消毒、空気の清浄化等の目的で利用することができる。
【0044】
以上、説明してきたことからわかるように、本実施形態のプラズマ処理装置は、以下のような特徴を有している。
(1)本発明のプラズマ処理装置は、気体を連続して効率よくプラズマ処理することができる。
(2)本発明のプラズマ処理装置は、製造時における取扱性や作業性を向上させて、高い歩留まりで製造することができる。
(3)本発明のプラズマ処理装置は、誘電体層を薄くすることができるため、プラズマ処理に要するエネルギーを低減させることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 絶縁体層
2 電極層
3 誘電体層
4 絶縁体
5 貫通孔
6 電極層の断面部
7 気体配管
10 プラズマ生成部
20 気体流動部