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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167020
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】プラズマ化ガス噴射装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/26 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
H05H1/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023092759
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】523116055
【氏名又は名称】カーボントレードネオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】建石 俊之
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084AA07
2G084AA18
2G084AA24
2G084AA25
2G084AA26
2G084BB23
2G084CC03
2G084CC19
2G084CC34
2G084DD01
2G084DD12
2G084DD13
2G084DD18
2G084DD22
2G084FF02
2G084FF14
2G084GG02
2G084GG07
(57)【要約】
【課題】ガスを連続的にプラズマ処理することが可能であり、製造時の作業性に優れ、コンパクトな装置とすることが可能なプラズマ化ガス噴射装置を提供する。
【解決手段】プラズマ生成部と電源部とガス流動部とを有するプラズマ化ガス噴射装置であって、前記プラズマ生成部は、断面が同軸の複数の層から構成される円筒形構造を有し、中心部に棒状の第1電極、前記第1電極の外側に同軸でチューブ状の第1誘電体層、前記第1誘電体の外側に同軸でチューブ状の空間、前記空間の外側に同軸でチューブ状の領域内に第2電極、前記第2電極の外側に同軸でチューブ状の第2誘電体層を有し、前記電源部は前記第1電極と前記第2電極との間に交流電圧を印加し、前記ガス流動部は前記空間にガスを流し、前記空間内にプラズマを発生させて、前記空間を流れるガスをプラズマ処理し、前記円筒形構造の他方の端から噴射させることを特徴とするプラズマ化ガス噴射装置ある。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ生成部と電源部とガス流動部とを有するプラズマ化ガス噴射装置であって、
前記プラズマ生成部は、断面が同軸の複数の層から構成される円筒形構造を有し、
前記円筒形構造は、長さ方向に沿って中心部に、棒状の第1電極を有し、
前記第1電極の外側に、同軸でチューブ状の第1誘電体層を有し、
前記第1誘電体の外側に、同軸でチューブ状の空間を有し、
前記空間の外側に、同軸でチューブ状の領域内に第2電極を有し、
前記第2電極の外側に、同軸でチューブ状の第2誘電体層を有し、
前記電源部は、前記第1電極と前記第2電極との間に交流電圧を印加することができ、 前記ガス流動部は、前記円筒形構造の長さ方向の一方の端から他方の端に向かって、前記空間にガスを流し、前記他方の端からガスを噴射させることができ、
前記円筒形構造の長さ方向の一方の端から他方の端に向かって、前記空間にガスを流し、前記第1電極と前記第2電極との間に交流電圧を印加して、前記空間内にプラズマを発生させて、前記空間を流れるガスをプラズマ処理し、プラズマ処理されたガスを前記円筒形構造の前記他方の端から噴射させることを特徴とするプラズマ化ガス噴射装置。
【請求項2】
前記空間の外側で、前記第2電極の内側に、同軸でチューブ状の第3誘電体層を有することを特徴とする請求項1に記載のプラズマ化ガス噴射装置。
【請求項3】
前記円筒形構造の長さ方向のガスを流入させる側であって、前記第1誘電体層と前記第2電極とで挟まれた領域に、円周方向に沿って、長さ方向にガスが通過できる複数の貫通孔を有する、同軸でチューブ状の支持体を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプラズマ化ガス噴射装置。
【請求項4】
前記空間に、円周方向に沿って、内部をガスが通過できるチューブであって、誘電体で構成された複数のチューブが設置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプラズマ化ガス噴射装置。
【請求項5】
前記第1電極、前記第2電極および前記誘電体を可撓性材料で構成して、前記円筒形構造の長さ方向のプラズマ処理されたガスを噴射させる側の形状を外力で変形させて、当該ガスを噴射させる方向を変えることができることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプラズマ化ガス噴射装置。
【請求項6】
前記第2電極が、同軸でチューブ状の領域内であって、前記円筒形構造の長さ方向に沿って線状の導電性材料をらせん状に巻いた形状を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプラズマ化ガス噴射装置。
【請求項7】
微生物を殺菌または不活化する装置である請求項1または請求項2に記載のプラズマ化ガス噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ化ガス噴射装置に関する。特に、コンパクトな装置として製造することが可能なプラズマ化ガス噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新型コロナウィルスのパンデミック感染という事態が発生したため、世界的にウィルスや細菌に対する防御手段についての関心が非常に高まっている。そのような背景の中にあって、ウィルスや細菌に対する新たな防御手段の一つとしてプラズマ処理という方法が開発されつつある。プラズマ処理技術に関しては、誘電体バリア放電(Dielectric Barrier Discharge、DBD)という手法が近年開発されて、大気圧下で低温度のプラズマを発生させることが可能となった。
【0003】
空気等の酸素や水分を含有するガスは、プラズマ処理されることによって、一重項酸素、過酸化水素、OHラジカル、ペルオキシドラジカル、オゾン等の活性酸素種(Reactive Oxygen Species、ROS)を生成させる。これらの活性酸素種は、酸化反応等によって、微生物を分解したり、死滅させたり、不活化させたりすることができる。微生物としては、各種の細菌、ウィルス、カビなどが挙げられる。
そのため、ガスをプラズマ処理したり、プラズマ処理されたガスを噴射することによって、ガス中や物体表面の微生物を殺菌したり、不活化したりする用途に展開することが可能となっている。
【0004】
ガスを連続的にプラズマ処理するプラズマ処理装置については、既に、複数の先行文献に装置が開示されている。特許文献1には、平板状の導電材料を筒状に形成してなる第1電極と、平板状の導電材料を筒状に形成してなり、前記第1電極の外周を所定の間隙をおいて取り囲むように配置されている第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在するように配置された筒状の誘電体層とが設けられてなるプラズマ生成部を備えたプラズマ発生装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、ガス媒体を処理するための反応器であって、入口ポートと出口ポートと2つの同軸の円筒形の電極とを有するチャンバから構成される上記反応器において、前記電極の少なくともひとつの対面する表面はこれと密接する誘電体材料の層を有し、電極の少なくともひとつには打抜き孔ないし開口が備えられて、これを通してガス媒体が通ると共に、電極及び関連する構造はガス媒体が電極の間の領域を強制的に通過するように構成され、反応器に入ってから出る間のガス媒体の流れが軸線方向と半径方向と円周方向との成分を有するように組み合わせたことを特徴とする反応器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2022/265007号
【特許文献2】特表2003-500195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のプラズマ発生装置では、プラズマ生成部を製造するためには、複数の平板状の導電材料と誘電体を中間に空間が形成されるように筒状に巻く作業が必要となる。剛性の異なる複数の平板状の部材を均一に巻き取る作業は一般に困難である。また、複数の平板状の部材を巻き取る際に、均一な隙間の空間を形成することも一般に困難である。したがって、特許文献1に記載のプラズマ発生装置は、製造時の作業性に劣り、コンパクトな装置とすることが困難なものであった。
【0008】
特許文献2に記載の反応器は、主として内燃機関の排ガスの処理に用いられるものであり、高温に耐え得るように、ステンレス鋼やセラミックス材料から構成され、内部に触媒物質を詰め込んで排ガス成分の分解処理に使用するものであり、電極の少なくともひとつには打抜き孔ないし開口が備えられており、複雑な構造の金属加工によって製造されるものである。したがって、特許文献2に記載の反応器は、製造時の作業性に劣り、コンパクトな装置とすることが困難なものであった。
【0009】
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の課題は、ガスを連続的にプラズマ処理することが可能であり、製造時の作業性に優れ、コンパクトな装置とすることが可能なプラズマ化ガス噴射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
プラズマ生成部の断面が同軸の複数の層から構成される円筒形構造を製造するためには、電極と誘電体層で挟まれたチューブ状の空間を均一に形成することが必要である。本発明者は、既存の技術である同軸ケーブルや押出チューブ等の技術を利用することによって、断面が同軸の複数の層からなる円筒形構造を比較的簡便に製造することが可能であり、コンパクトな装置とすることが可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下のような構成を有するものである。
【0011】
(1)プラズマ生成部と電源部とガス流動部とを有するプラズマ化ガス噴射装置であって、前記プラズマ生成部は、断面が同軸の複数の層から構成される円筒形構造を有し、前記円筒形構造は、長さ方向に沿って中心部に、棒状の第1電極を有し、前記第1電極の外側に、同軸でチューブ状の第1誘電体層を有し、前記第1誘電体の外側に、同軸でチューブ状の空間を有し、前記空間の外側に、同軸でチューブ状の領域内に第2電極を有し、前記第2電極の外側に、同軸でチューブ状の第2誘電体層を有し、前記電源部は、前記第1電極と前記第2電極との間に交流電圧を印加することができ、前記ガス流動部は、前記円筒形構造の長さ方向の一方の端から他方の端に向かって、前記空間にガスを流し、前記他方の端からガスを噴射させることができ、前記円筒形構造の長さ方向の一方の端から他方の端に向かって、前記空間にガスを流し、前記第1電極と前記第2電極との間に交流電圧を印加して、前記空間内にプラズマを発生させて、前記空間を流れるガスをプラズマ処理し、プラズマ処理されたガスを前記円筒形構造の前記他方の端から噴射させることを特徴とするプラズマ化ガス噴射装置。
(2)前記空間の外側で、前記第2電極の内側に、同軸でチューブ状の第3誘電体層を有することを特徴とする前記(1)に記載のプラズマ化ガス噴射装置。
(3)前記円筒形構造の長さ方向のガスを流入させる側であって、前記第1誘電体層と前記第2電極とで挟まれた領域に、円周方向に沿って、長さ方向にガスが通過できる複数の貫通孔を有する、同軸でチューブ状の支持体を有することを特徴とする前記(1)または前記(2)に記載のプラズマ化ガス噴射装置。
(4)前記空間に、円周方向に沿って、内部をガスが通過できるチューブであって、誘電体で構成された複数のチューブが設置されていることを特徴とする前記(1)または前記(2)に記載のプラズマ化ガス噴射装置。
(5)前記第1電極、前記第2電極および前記誘電体を可撓性材料で構成して、前記円筒形構造の長さ方向のプラズマ処理されたガスを噴射させる側の形状を外力で変形させて、当該ガスを噴射させる方向を変えることができることを特徴とする前記(1)または前記(2)に記載のプラズマ化ガス噴射装置。
(6)前記第2電極が、同軸でチューブ状の領域内であって、前記円筒形構造の長さ方向に沿って線状の導電性材料をらせん状に巻いた形状を有することを特徴とする前記(1)または前記(2)に記載のプラズマ化ガス噴射装置。
(7)微生物を殺菌または不活化する装置である前記(1)または前記(2)に記載のプラズマ化ガス噴射装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明のプラズマ化ガス噴射装置は、ガスを連続的にプラズマ処理することが可能であり、製造時の作業性に優れ、コンパクトな装置とすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態のプラズマ化ガス噴射装置のプラズマ生成部の模式的見取図である。
図2図2(a)は、図1(a)のプラズマ生成部のA-A断面の模式的断面図である。図2(b)は、図1(a)のプラズマ生成部のB-B断面の模式的断面図である。
図3】第2実施形態のプラズマ化ガス噴射装置のプラズマ生成部の図2(a)、図2(b)に相当する模式的断面図である。
図4】第1実施形態および第2実施形態のプラズマ化ガス噴射装置のプラズマ生成部の内層部の模式的見取図である。
図5図5(a)は、図4(a)の内層部のC-C断面の模式的断面図である。図5(b)は、図4(a)の内層部のD-D断面の模式的断面図である。
図6】第3実施形態のプラズマ化ガス噴射装置のプラズマ生成部の模式的見取図である。
図7図7(a)は、図6(a)のプラズマ生成部のE-E断面の模式的断面図である。図7(b)は、図6(a)のプラズマ生成部のF-F断面の模式的断面図である。
図8】第3実施形態の変形例のプラズマ生成部の図7(b)に相当する模式的断面図である。
図9】第1実施形態のプラズマ化ガス噴射装置のプラズマ生成部の変形時の模式的見取図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明の実施形態は、以下に記載された具体的な実施形態に限られる訳ではない。
【0015】
本実施形態のプラズマ化ガス噴射装置は、ガスを連続してプラズマ処理するために、プラズマ生成部と電源部とガス流動部とを有している。本実施形態のプラズマ化ガス噴射装置は、これらのうち、プラズマ生成部の構成に特に特徴を有するものである。
【0016】
誘電体バリア放電では、2つの電極層の間に空間と誘電体層を設けて、両電極層間に交流電圧を印加することによって、大気圧下で室温等の低温度下で、両電極層で挟まれた空間や誘電体層内にプラズマを発生させることができる。この誘電体バリア放電を利用することによって、活性酸素種を生成させて、微生物を殺菌したり、不活化したりすることが可能なプラズマ生成装置を製作することができる。
【0017】
本発明者は、誘電体バリア放電を利用して、プラズマ処理されたガスを細い噴射口から噴射させることが可能なプラズマ化ガス噴射装置について開発を進めてきた。プラズマ化ガス噴射装置は、プラズマ生成部を通過するガスをプラズマ処理して、生成した活性酸素種によって、当該ガス中に存在する微生物の殺菌や不活化を行って、当該ガスを清浄化することができる。さらに、プラズマ化ガス噴射装置は、当該ガスを噴射口から噴射させて、対象物に吹き付けて、当該対象物の表面等に存在する微生物の殺菌や不活化を行うことができる。
【0018】
本発明者は、特に、プラズマ化ガス噴射装置を種々の用途で使用できるように、当該装置を簡便に製造することができ、コンパクトな装置とすることができるように、装置の構成や構造について検討を加えてきた。プラズマ化ガス噴射装置を軽量でコンパクトな装置とすることができれば、細菌やウィルス等の微生物による感染が懸念される種々の空間において、汚染された空気の浄化を行って、感染の広がりを極力抑制することが可能となる。本発明者は、検討の結果、プラズマ化ガス噴射装置を構成する各部品を既存の製造技術である同軸ケーブル、押出チューブ、射出成形等の技術を利用することで、上記課題の解決を図ることに成功した。
【0019】
図1は、第1実施形態のプラズマ化ガス噴射装置のプラズマ生成部20の模式的見取図である。プラズマ生成部20は、断面が同軸の複数の層から構成される円筒形構造を有している。図1(a)は、プラズマ生成部20のガスの噴射口7の方向から見た時のプラズマ生成部20の模式的斜視図であり、図1(b)は、プラズマ生成部20のガスの吸入口8の方向から見た時のプラズマ生成部20の模式的斜視図である。また、図1(c)は、プラズマ生成部20のガスの噴射口7の方向から見た時のプラズマ生成部20の模式的側面図であり、図1(d)は、プラズマ生成部20のガスの吸入口8の方向から見た時のプラズマ生成部20の模式的側面図である。また、図2(a)は、図1(a)のプラズマ生成部20のA-A断面の模式的断面図である。図2(b)は、図1(a)のプラズマ生成部20のB-B断面の模式的断面図である。
【0020】
図1および図2において、ガスは図の右側から供給されて、吸入口8からプラズマ生成部20の内部に供給され、プラズマ生成部20の内部でプラズマ処理されて、図の左側の噴射口7からプラズマ生成部20の外部に噴射される。プラズマ生成部20の内部に吸入されたガスは、図1および図2に記載のプラズマ生成部20の右側の部分を通過する。プラズマ生成部20の右側の部分を構成する層として、外側から内側にかけて、外筒部2、支持体5、第1誘電体層3、第1電極4が存在する。ガスは、図1および図2に記載のプラズマ生成部20の左側の主要部を構成する層部分でプラズマ処理される。プラズマ生成部20の左側の主要部を構成する層として、外側から内側にかけて、第2誘電体層1、第2電極11、空間12、第1誘電体層3、第1電極4が存在する。
【0021】
図3は、第2実施形態のプラズマ化ガス噴射装置のプラズマ生成部20の模式的断面図である。図3(a)、図3(b)は、第1実施形態の図2(a)、図2(b)に対応するものであり、第2実施形態のプラズマ化ガス噴射装置のプラズマ生成部20の模式的断面図である。第2実施形態のプラズマ化ガス噴射装置のプラズマ生成部20は、図2図3を対比してみると分かるように、第1実施形態のプラズマ化ガス噴射装置のプラズマ生成部20に対して、空間12の外側で、第2電極11の内側に、同軸でチューブ状の第3誘電体層13を有しているところが異なっている。すなわち、第2実施形態のプラズマ生成部20は、第1実施形態のプラズマ生成部20に対して、第2電極11の内側に第3誘電体層13をさらに追加設置した構造であり、それ以外の構造は第1実施形態のプラズマ生成部20と同様である。したがって、図1図4図5は、第1実施形態と第2実施形態において共通の図である。
第2実施形態のプラズマ生成部20は、第2電極11の内側に第3誘電体層13を有していることにより、第2電極11の表面が空間12に直接露出することが防止されるため、空間12内で発生するプラズマによって物性が劣化することを抑制することができる。
【0022】
図4は、第1実施形態および第2実施形態のプラズマ化ガス噴射装置のプラズマ生成部20の内部に存在する内層部30の模式的見取図である。内層部30は、プラズマ生成部20の内部に設置される部品であり、支持体5と第1誘電体層3と第1電極4とから構成されている。
図4(a)は、プラズマ生成部20のガスの噴射口7の方向から見た時の内層部30の模式的斜視図であり、図4(b)は、プラズマ生成部20のガスの吸入口8の方向から見た時の内層部30の模式的斜視図である。また、図4(c)は、プラズマ生成部20のガスの噴射口7の方向から見た時の内層部30の模式的側面図であり、図4(d)は、プラズマ生成部20のガスの吸入口8の方向から見た時の内層部30の模式的側面図である。また、図5(a)は、図4(a)の内層部30のC-C断面の模式的断面図である。図5(b)は、図4(a)の内層部30のD-D断面の模式的断面図である。
【0023】
内層部30を構成する支持体5は、プラズマ生成部20の右側の部分を構成する層である。支持体5は、第1誘電体層3と第2電極11で挟まれた領域に設置され、同軸でチューブ状の形状であって、円周方向に沿って、長さ方向にガスが通過できる複数の貫通孔6を有している。図1(c)、図1(d)、図4(c)、図4(d)、図5(b)から明らかなように、図1図4図5に記載の第1実施形態および第2実施形態のプラズマ化ガス噴射装置のプラズマ生成部20では、支持体5は、円周方向に沿って、長さ方向にガスが通過できる貫通孔6を8個有している。
【0024】
支持体5は、内層部30と、外層部を構成する第2誘電体層1、第2電極11、第3誘電体層13とをつなぐ役割を持った部品である。また、支持体5は、プラズマ生成部20の右側の部分にあって、その外側には外筒部2があって、ガスの吸入口8を形成している。このように、支持体5は、プラズマ生成部20の各層をつないで形態を安定化させ、空間12を一定の隙間間隔で保持して、プラズマ処理の性能を安定的に発揮させる役割を担っている。
【0025】
第1実施形態および第2実施形態のプラズマ化ガス噴射装置は、ガス流動部(不図示)を有している。ガス流動部は、プラズマ生成部20の円筒形構造の長さ方向の一方の端から他方の端に向かって、空間12にガスを流すことができる。ガス流動部はまず、プラズマ生成部20の円筒形構造の長さ方向の右側の端から吸入口8に対してガスを供給する。プラズマ生成部20の内部において、吸入口8から吸入されたガスは、プラズマ生成部20の右側の部分に存在する支持体5の貫通孔6を通過して、プラズマ生成部20の左側の主要部の空間12に投入される。
【0026】
ガス流動部は、ガスを流動させることができる装置であり、ガスを流動させる方法としては、公知の方法を適宜選択して用いることができる。ガスを流動させる駆動装置としては、遠心式送風機(シロッコファン、ラジアルファン、ターボファンなど)、軸流式送風機(プロペラファンなど)、斜流式送風機(ラインファンなど)、横流式送風機、ブロアなどの公知の装置が適宜使用される。
【0027】
第1実施形態および第2実施形態のプラズマ化ガス噴射装置は、電源部(不図示)を有している。電源部は、第1電極4と第2電極11との間に交流電圧を印加することができる。電源部が第1電極4と第2電極11との間に交流電圧を印加することにより、空間12内にプラズマを発生させて、空間12を流れるガスをプラズマ処理することができる。プラズマ処理されたガスは、その後、プラズマ生成部20の円筒形構造の他方の端の噴射口7から外部へ噴射される。図1(a)、図1(b)には、第2電極11および第1電極4と電源部とをつないで交流電圧を印加するための電線コード9、10がそれぞれ示されている。
【0028】
電源部の具体的な内容については、第1電極4と第2電極11との間に所定の周波数で所定の電圧の交流電圧を印加することができれば、特に制約はなく、公知の電源装置を用いることができる。
交流電圧の周波数としては、50Hz~30MHzが好ましく、50Hz~100kHzがより好ましい。また、交流電圧としては、0.1~50kVが好ましく、0.2~10kVがより好ましい。
【0029】
図2(a)、図3(a)、図5(a)に記載があるように、プラズマ生成部20の第2誘電体層1、第2電極11、第3誘電体層13、第1誘電体層3および第1電極4の左側の端部には、絶縁体14が設置されている。第1電極4と第2電極11との間には交流電圧が印加されるため、空間12を経由して左側の端部で両電極間で放電が発生する懸念がある。また、空間12に生成するプラズマによって、第1電極4、第2電極11、各誘電体層の端部が劣化する懸念がある。そのため、端部に絶縁体14を設置することによって、放電の発生を防止し、プラズマによる物性の劣化を抑制している。
【0030】
図6は、第3実施形態のプラズマ化ガス噴射装置のプラズマ生成部40の模式的見取図である。プラズマ生成部40は、断面が同軸の複数の層から構成される円筒形構造を有している。図6(a)は、プラズマ生成部40のガスの噴射口7の方向から見た時のプラズマ生成部40の模式的斜視図であり、図6(b)は、プラズマ生成部40のガスの吸入口8の方向から見た時のプラズマ生成部40の模式的斜視図である。また、図6(c)は、プラズマ生成部40のガスの噴射口7の方向から見た時のプラズマ生成部40の模式的側面図であり、図6(d)は、プラズマ生成部40のガスの吸入口8の方向から見た時のプラズマ生成部40の模式的側面図である。また、図7(a)は、図6(a)のプラズマ生成部40のE-E断面の模式的断面図である。図7(b)は、図6(a)のプラズマ生成部40のF-F断面の模式的断面図である。
【0031】
第3実施形態のプラズマ生成部40では、図2(a)、図3(a)に記載された空間12および支持体5に相当する部分に、円周方向に沿って、内部をガスが通過できるチューブ15であって、誘電体で構成された複数のチューブ15が設置されている。ガスは、チューブ15の貫通孔16を通過する。チューブ15の本数は、特に限定はない。図6図7(b)にはチューブ15の本数が8本の場合が示されている。
図8は、第3実施形態の変形例のプラズマ生成部の模式的断面図であり、第3実施形態の図7(b)に相当するものである。図8(a)にはチューブ15の本数が6本の場合、図8(b)にはチューブ15の本数が12本の場合の変形例が示されている。隣り合うチューブ15とチューブ15の間にある隙間の空間は、空気などで満たされていてもよいし、誘電体からなる接着剤等で満たされていてもよい。
【0032】
第3実施形態のプラズマ生成部40では、吸入口8から供給されたガスは、複数のチューブ15の貫通孔16内に分割して流される。第1電極4と第2電極11との間に交流電圧が印加されることにより、チューブ15内の貫通孔16内に存在するガスはプラズマ処理される。その後、プラズマ処理されたガスは、貫通孔16から出て、外部へ噴射される。
第3実施形態のプラズマ生成部40では、第1実施形態および第2実施形態の内層部30や支持体5に相当する部品がなく、よりシンプルな構造であり、よりコンパクトな装置とすることができる。また、ガスの流路もシンプルであり、より均一で高速のプラズマ処理を行うことができる。
第3実施形態のプラズマ化ガス噴射装置のその他の説明については、第1実施形態と第2実施形態の場合と同様であるので、その説明を省略する。
【0033】
第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態を含む本実施形態では、第2電極11は通常、金属等の導電性の平板状の材料が使用される。しかし、平板状の材料に代えて、第2電極11を同軸でチューブ状の領域内であって、円筒形構造の長さ方向に沿って線状の導電性材料をらせん状に巻いた形状とすることができる。線状の導電性材料をらせん状に巻いた形状であっても、らせん状に巻く回数を変化させることにより、プラズマの生成レベルの制御が可能である。このように線状の導電性材料をらせん状に巻いた形状とすることによって、第2電極11に可撓性を付与することが可能となる。
【0034】
本実施形態では、第1電極4、第2電極11および各誘電体層を可撓性材料で構成することが可能である。各構成部品を可撓性材料を用いて製造し、円筒形構造の長さ方向のプラズマ処理されたガスを噴射させる側の形状を外力で変形させることにより、プラズマ処理されたガスを噴射させる方向を任意の方向へ変えることができる。図9は、第1実施形態のプラズマ化ガス噴射装置のプラズマ生成部20の変形時の模式的見取図である。本実施形態のプラズマ生成部20、40の円筒形構造は、比較的多くの隙間を有しているため、変形し易いものである。ガスを噴射させる方向を必要に応じて遠隔で制御することができれば、医療用内視鏡等の種々の産業分野での応用が期待できる。外力で変形させる方法としては、例えば、先端部分にワイヤーなどを取り付けて、ワイヤーを引いたり弛めたりする方法がある。
【0035】
本実施形態において、使用するガスに特に制限がある訳ではない。ガスをプラズマ処理することによって、活性酸素種を生成させてプラズマ化して、殺菌、消臭、表面改質、化学物質の分解などの機能を発揮させることができる。これらの目的や用途に応じて、プラズマ処理の程度を変えることができる。プラズマ処理の程度は、プラズマ処理の時間(ガスの流速等)やプラズマ処理の強さ(印加する交流電圧の強さ等)を調整することによって、適宜制御することができる。
【0036】
第1電極4、第2電極11等の電極は、導電性材料で構成されており、金属(金属板、金属箔、金属線を含む)、導電性塗料、導電性高分子、導電性の膜などを使用することができるが、金属であることが好ましい。金属としては、導電性に優れた銅、アルミニウム、ステンレス鋼、鉄、銀、金などが好ましい。これらの中では、導電性、コストの点から銅がより好ましい。
電極の厚さは、特に限定されないが、軽量でコンパクトな処理装置とするために、5μm~1mmが好ましく、5μm~0.2mmがより好ましく、5μm~0.1mmがさらに好ましい。
【0037】
第1誘電体層3、第2誘電体層1、第3誘電体層13等の誘電体層およびチューブ15を構成する材料は、2つの電極間で容易に放電することがないように、絶縁性材料を使用することが必要である。また、誘電体層およびチューブ15を構成する材料は、発生するプラズマにさらされることになるため、プラズマ中で発生する活性物質に対して耐久性を有した材料であることが好ましい。誘電体層およびチューブ15を構成する材料としては、主としてガラス、セラミックスおよび合成樹脂から選ばれる材料が好ましい。ここで、「主として」とは、成分組成が50質量%以上であることを意味している(以下、同様である。)。
【0038】
ガラスとしては、ソーダ石灰ガラス(ソーダガラス)、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、酸化物ガラスなどが挙げられる。
セラミックスとしては、アルミナ、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛などが挙げられる。
合成樹脂には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂がある。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリ乳酸、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの汎用樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、環状ポリオレフィンなどのエンジニアリングプラスチック、ポリフェニレンスルファイド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂などのスーパーエンジニアリングプラスチックが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂などが挙げられる。これらの合成樹脂の中では、耐久性に優れたシリコーン系樹脂が特に好ましい。
合成樹脂を補強するために、合成樹脂中にフィラーを添加することが好ましい。フィラーとしては、ガラス繊維、セルロース繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ウィスカーなどの繊維、炭酸カルシウム、シリカ、タルク、マイカ、クレイ、アルミナ、カオリンなどの無機粒子などが挙げられる。これらの中では、ガラス繊維、セルロース繊維が好ましい。
【0039】
誘電体層の厚さは、特に限定されないが、軽量でコンパクトな処理装置とするために、0.1~5mmが好ましく、0.1~1mmがより好ましい。
【0040】
絶縁体14を構成する材料は、ガラス、セラミックスおよび合成樹脂から選ばれるが、合成樹脂が好ましい。ガラス、セラミックス、合成樹脂の具体例については、誘電体層を構成する材料と同様である。
【0041】
第1実施形態および第2実施形態のプラズマ化ガス噴射装置は、第2誘電体層1、第2電極11、第3誘電体層13から構成される外層部と、支持体5、第1誘電体層3、第1電極4から構成される内層部30と、外筒部2をそれぞれ別々に製造し、その後、外層部と内層部30と外筒部2をつなぎ合わせることにより、比較的簡便に製造することができる。また、第3実施形態のプラズマ化ガス噴射装置は、第2誘電体層1、第2電極11、第3誘電体層13から構成される外層部と、所定の本数のチューブ15と、第1誘電体層3、第1電極4から構成される内層部分と、外筒部2をそれぞれ別々に製造し、その後、外層部とチューブ15と内層部分と外筒部2をつなぎ合わせることにより、比較的簡便に製造することができる。つなぎ合わせる方法は、接着剤による接着、差し込み、加熱圧着、融着、ネジ構造、圧入、カシメなど、特に限定されない。
【0042】
第1実施形態および第2実施形態のプラズマ化ガス噴射装置における外層部、内層部30、外筒部2、および第3実施形態のプラズマ化ガス噴射装置における外層部、チューブ15、内層部分、外筒部2はいずれも、既存の製造技術である同軸ケーブル、押出成形、射出成形、接着、圧着、コーティング等の技術を利用することで比較的容易に製造することが可能である。
本実施形態の各部品は、外形や貫通孔の断面形状が円形のものとして各図面に記載されているが、機能を発揮できるのであれば、円形に限定されるものではない。
【0043】
本実施形態のプラズマ化ガス噴射装置は、医療、住宅、土木、建設、農業、水産業、畜産業、食品加工業、輸送業、保管業、小売業などの多くの産業分野において、消臭、悪臭除去、殺菌消毒、空気の清浄化等の目的で利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 第2誘電体層
2 外筒部
3 第1誘電体層
4 第1電極
5 支持体
6 貫通孔
7 噴射口
8 吸入口
9 電線コード
10 電線コード
11 第2電極
12 空間
13 第3誘電体層
14 絶縁体
15 チューブ
16 貫通孔
20 プラズマ生成部
30 内層部
40 プラズマ生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9