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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167038
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20241122BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20241122BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20241122BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/63
A61Q17/04
A61K8/73
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023210783
(22)【出願日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2023083496
(32)【優先日】2023-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健志
(72)【発明者】
【氏名】森山 昌明
(72)【発明者】
【氏名】小林 伸次
(72)【発明者】
【氏名】桑畑 明穂
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AB172
4C083AB212
4C083AB242
4C083AC102
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC392
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC472
4C083AC642
4C083AC852
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD212
4C083AD242
4C083AD311
4C083AD312
4C083AD352
4C083AD531
4C083AD532
4C083AD631
4C083AD632
4C083BB46
4C083CC19
4C083DD33
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ナイアシンアミド、紫外線防御剤を配合しながらも、使用感に優れた皮膚外用剤を提供すること。
【解決手段】(A)ナイアシンアミド、(B)グリチルリチン酸ジカリウム、(C)ヘパリン類似物質、及び、(D)紫外線防御剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ナイアシンアミド、(B)グリチルリチン酸ジカリウム、(C)ヘパリン類似物質、及び、(D)紫外線防御剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項2】
(A)の含有量が3質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
粘度が3,000mPa・s以上であることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
水中油型であることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
日焼け止めであることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナイアシンアミド、グリチルリチン酸ジカリウム、ヘパリン類似物質及び紫外線防御剤を含有する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線は皮膚の炎症や老化など、様々な現象を引き起こすことが知られている。皮膚の炎症を緩和するため、日焼け止め化粧料が使用される。また、皮膚外用剤には様々な有効成分を配合することができ、例えば、ナイアシンアミドは安全性が高く、皮膚老化防止効果を有することが知られている(特許文献1)。しかし、ナイアシンアミドは皮膚への塗布後にべたつきが発生しやすく、使用感が悪いといった課題がある。また、日焼け止め化粧料には紫外線散乱剤や紫外線吸収剤といった、紫外線防御効果のある成分を配合するが、例えば紫外線散乱剤には塗布時に伸びが悪く、また、塗布後にきしみが発生しやすいといった課題がある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-130135号公報
【特許文献2】特開2017-197434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明者らは、ナイアシンアミドと紫外線防御剤を含有しながらも、使用感に優れた皮膚外用剤の提供を課題として、種々の検討を行った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
その結果、本発明者らは、ナイアシンアミド、紫外線防御剤と共にグリチルリチン酸ジカリウム及びヘパリン類似物質を含有する皮膚外用剤とすることで、使用感に優れた皮膚外用剤の開発に成功し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
<1>ナイアシンアミド、(B)グリチルリチン酸ジカリウム、(C)ヘパリン類似物質、及び、(D)紫外線防御剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
<2>(A)の含有量が3質量%以上であることを特徴とする<1>に記載の皮膚外用剤。
<3>(B)の含有量が0.05質量%以上であることを特徴とする<1>に記載の皮膚外用剤。
<4>(C)の含有量が0.05質量%以上であることを特徴とする<1>に記載の皮膚外用剤。
<5>(D)紫外線防御剤が、紫外線散乱剤であることを特徴とする<1>に記載の皮膚外用剤。
<6>ナイアシンアミド 3質量%以上、(B)グリチルリチン酸ジカリウム 0.05質量%以上、(C)ヘパリン類似物質 0.05質量%以上、及び、(D)紫外線防御剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
<7>さらに、油剤、増粘剤、アルコール類から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする<1>~<6>のいずれかに記載の皮膚外用剤。
<8>粘度が3,000mPa・s以上であることを特徴とする<1>~<6>のいずれかに記載の皮膚外用剤。
<9>水中油型であることを特徴とする<1>~<6>のいずれかに記載の皮膚外用剤。
<10>日焼け止めであることを特徴とする<1>~<6>のいずれかに記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ナイアシンアミド、紫外線防御剤と共にグリチルリチン酸ジカリウム及びヘパリン類似物質を含有することにより、使用感に優れた皮膚外用剤を提供することができる。さらに、本発明によれば、使用感に優れると共に耐摩擦性に優れた皮膚外用剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の皮膚外用剤について詳細を説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0009】
<(A)ナイアシンアミド>
本発明の皮膚外用剤は、ナイアシンアミドを含有することを特徴とする。ナイアシンアミドはナイアシン(ニコチン酸/ビタミンB)のアミドであり、ビタミンB群の1種で水溶性ビタミンである。本発明において、ナイアシンアミドは、通常化粧品や医薬部外品等で使用されているものを用いることができ、例えば、天然物から抽出したもの、それを精製したもの、公知の方法によって合成したものなど、市販品を使用することもできる。
【0010】
本発明の皮膚外用剤において、ナイアシンアミドの含有量は特に制限はなく、例えば、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、使用感に優れ、かつ、ナイアシンアミドの効果を享受できる観点から、5質量%以上が特に好ましい。その上限は特に制限はないが30質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以下であり、特に好ましくは10質量%以下である。本発明の皮膚外用剤におけるナイアシンアミドの含有量は、例えば高速液体クロマトグラフィーにより分析することができる。
【0011】
<(B)グリチルリチン酸ジカリウム>
本発明の皮膚外用剤は、グリチルリチン酸ジカリウムを含有することを特徴とする。グリチルリチン酸ジカリウムは、グリチルリチン酸とカリウムの塩であり、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸2K、グリチルリチン酸K2、グリチノンK2とも呼ばれ、カンゾウ(甘草)に含まれることが知られる抗炎症作用を有する成分である。本発明において、グリチルリチン酸ジカリウムは、通常化粧品や医薬部外品等で使用されているものを用いることができ、例えば、天然物から抽出したもの、それを精製したもの、公知の方法によって合成したものなど、市販品を使用することもできる。
【0012】
本発明の皮膚外用剤におけるグリチルリチン酸ジカリウムの含有量は特に制限はなく、例えば0.001質量%以上が好ましく、より好ましくは0.01質量%以上であり、使用感に優れた皮膚外用剤が得られる観点から、特に好ましくは0.05質量%以上である。また、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下であり、特に好ましくは1質量%以下である。本発明の皮膚外用剤におけるグリチルリチン酸ジカリウムの含有量は、例えば高速液体クロマトグラフィーにより分析することができる。
【0013】
<(C)ヘパリン類似物質>
本発明の皮膚外用剤は、ヘパリン類似物質を含有することを特徴とする。ヘパリン類似物質は、D-グルクロン酸とN-アセチル-D-ガラクトサミンからなる二糖を反復単位とする多糖体を多硫酸化させた、コンドロイチン多硫酸等の多硫酸化ムコ多糖であり、保湿作用、抗炎症作用、血行促進作用等を有することが知られている。本発明において、ヘパリン類似物質は、通常化粧品や医薬部外品等で使用されているものを用いることができ、例えば、天然物から抽出したもの、それを精製したもの、公知の方法によって合成したものなど、市販品を使用することもできる。
【0014】
本発明の皮膚外用剤におけるヘパリン類似物質の含有量は特に制限はなく、例えば0.001質量%以上が好ましく、より好ましくは0.01質量%以上であり、使用感に優れた皮膚外用剤が得られる観点から、特に好ましくは0.05質量%以上である。また、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下であり、特に好ましくは1質量%以下である。本発明の皮膚外用剤におけるヘパリン類似物質の含有量は、例えば高速液体クロマトグラフィーや、日本薬局方外医薬品成分規格2002ヘパリン類似物質の定量法(3)記載の有機硫酸基測定法により分析することができる。
【0015】
<(D)紫外線防御剤>
本発明の皮膚外用剤は、紫外線防御剤を含有することを特徴とする。本発明において使用できる紫外線防御剤としては、通常皮膚外用剤に使用されるものであれば特に限定されず、例えば、紫外線散乱剤、紫外線吸収剤を使用することができる。
【0016】
紫外線散乱剤としては、紫外線を散乱する効果が高い点から、無機化合物が好ましく、金属酸化物がより好ましい。具体的には、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化セリウムから選択される1種または2種以上が挙げられる。これらの中でも、酸化チタン、酸化亜鉛から選ばれる1種以上を使用することが好ましい。
【0017】
また、本発明で使用する紫外線散乱剤は疎水化処理を行っているものが好ましい。表面を疎水化することにより、油中への分散性や耐水性を向上させることができる。紫外線散乱剤の疎水化処理は、疎水化される公知の表面処理剤を用いて行えばよいが、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルポリシロキサン等のシリコーン処理;アルキルシラン処理;パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルコール等によるフッ素処理;N-アシルグルタミン酸等によるアミノ酸処理;その他、レシチン処理;金属石鹸処理;脂肪酸処理;アルキルリン酸エステル処理等が挙げられる。
【0018】
本発明で使用する紫外線散乱剤は、その平均粒子径が1~1000nmのものが好ましく、5~500nmがより好ましく、使用感及び耐摩擦性に優れた皮膚外用剤が得られる観点から、10~300nmが特に好ましい。本発明で使用する紫外線散乱剤の平均粒子径は動的光散乱法により測定したものである。
【0019】
また、紫外線吸収剤としては、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、オクトクリレン、ジメチコジエチルベンザルマロネート、ポリシリコン-15、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エチルヘキシルトリアゾン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、オキシベンゾン-3、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、ホモサレート、サリチル酸エチルへキシル等が挙げられる。これらの中でも、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる1種以上を使用することが好ましい。
【0020】
本発明の皮膚外用剤における紫外線防御剤の含有量は特に制限はなく、1質量以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上であり、使用感及び耐摩擦性に優れた皮膚外用剤が得られる観点から、特に好ましくは5質量%以上である。また、50質量以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、特に好ましくは30質量%以下である。なお、紫外線防御剤を2種以上使用する場合は、その合計量である。
【0021】
また、本発明の皮膚外用剤における紫外線散乱剤の含有量は特に制限はなく、1質量以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上であり、使用感及び耐摩擦性に優れた皮膚外用剤が得られる観点から、特に好ましくは5質量%以上である。また、40質量以下が好ましく、より好ましくは30質量%以下であり、特に好ましくは25質量%以下である。なお、紫外線散乱剤を2種以上使用する場合は、その合計量である。
【0022】
また、本発明の皮膚外用剤における紫外線吸収剤の含有量は特に制限はなく、1質量以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上であり、使用感及び耐摩擦性に優れた皮膚外用剤が得られる観点から、特に好ましくは5質量%以上である。また、40質量以下が好ましく、より好ましくは30質量%以下であり、特に好ましくは25質量%以下である。なお、紫外線吸収剤を2種以上使用する場合は、その合計量である。
【0023】
<その他成分>
本発明の皮膚外用剤には、上記成分以外に、必要に応じてその他の成分を配合することができる。その他の成分としては、油剤、増粘剤、ゲル化剤、アルコール類、保湿剤、分散剤、可塑剤、展着剤、防腐剤、香料、界面活性剤、皮膜形成剤、pH調整剤、消臭剤、キレート剤、酸化防止剤、抗菌剤、防菌防かび剤、抗炎症剤、美白剤等の有効成分、動物エキス、植物エキス、ナイアシンアミド以外のビタミン類などの美容成分や薬効成分等、通常皮膚外用剤に使用される成分の一種以上が挙げられる。
【0024】
その他成分の中でも、本発明の皮膚外用剤は、油剤を含有することが好ましい。本発明において使用できる油剤は、通常皮膚外用剤に使用されるものであれば特に限定されないが、25℃で液状の油剤が好ましく、不揮発性であることが特に好ましい。具体的には、例えば、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン等の炭化水素油類;イソステアリン酸、オレイン酸、ポリヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸類;オクチルドデカノール、テトラデシルデカノール等の高級アルコール類;パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸イソブチル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸ブチル、イソステアリン酸デシル、イソステアリン酸ラウリル、イソデカン酸イソデシル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸イソノニル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコ-ル、ジカプリン酸プロピレングリコ-ル、ジカプリル酸プロピレングリコ-ル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、モノイソステアリン酸ポリグリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、テトライソステアリン酸ジグリセリル、セバシン酸ジエチル、2-エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オレイル、オレイン酸エチル、N-ラウロイル-グルタミン酸ジ(フィトステリル/2-オクチルドデシル)、N-ラウロイル-グルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/2-オクチルドデシル)、N-ラウロイル-グルタミン酸ジ(コレステリル/2-オクチルドデシル)、N-ラウロイル-サルコシン-イソプロピル等のエステル油類;ジメチルポリシロキサン、シクロペンタシロキサン、アルコキシ変性ポリシロキサン等のシリコーン油類;等が挙げられ、これらの中から1種又は2種以上を使用することができる。
【0025】
本発明の皮膚外用剤において油剤を配合する場合、その含有量は特に制限はなく、例えば1質量%以上が好ましく、より好ましくは5質量%以上であり、使用感及び耐摩擦性に優れた皮膚外用剤が得られる観点から、特に好ましくは10質量%以上である。また、50質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、特に好ましくは30質量%以下である。なお、油剤を2種以上配合する場合は、その合計量である。
【0026】
また、本発明の本発明の皮膚外用剤は、増粘剤を含有することが好ましい。本発明の皮膚外用剤で使用できる増粘剤としては、化粧品、外用医薬品、医薬部外品等で使用できる水溶性成分であれば特に限定されるものでなく、合成高分子、半合成高分子、天然高分子、粘度鉱物等が使用できる。
【0027】
合成高分子としては、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリレーツ/アクリル酸アルキルクロスポリマー、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアルキルアクリルアミド/ポリアクリルアミドコポリマー、カルボキシメチルセルロース、カチオン化セルロースをはじめとする親水性合成高分子が挙げられる。
【0028】
半合成高分子としては、セルロース誘導体としては例えば、カルボキシメチルセルロース又はその塩類、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、スルホン化セルロース誘導体などが挙げられる。その他の半合成高分子として、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸エチレングリコールエステル、デキストリン脂肪酸エステル、ゼラチン脂肪酸エステル、ゼラチン脂肪酸アミドなどが挙げられる。
【0029】
天然高分子としては、多糖類及びその誘導体、例えば、キサンタンガム、サクシノグリカン、カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、セルロース類、ガラクタン、アラビアガム、トラガントガム、タマリンドガム、寒天、アガロース、マンナン、カードラン、アルギン酸又はその塩類、アラビアゴム、ペクチン、クインシード、デンプン、アルゲコロイド、カゼイン、コラーゲン、ゼラチン、アルブミン、フィブロイン、エラスチン、ケラチン、セリシン等の水溶性タンパク質が挙げられる。
【0030】
粘土鉱物としては、ラポナイト、ベントナイト、スメクタイトカオリナイト、モンモリロナイト等が挙げられる。
【0031】
本発明の皮膚外用剤において増粘剤を配合する場合、その含有量は特に制限はなく、例えば0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上であり、使用感及び耐摩擦性に優れた皮膚外用剤が得られる観点から、特に好ましくは0.1質量%以上である。また、20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下であり、特に好ましくは10質量%以下である。なお、増粘剤を2種以上配合する場合は、その合計量である。
【0032】
また、本発明の本発明の皮膚外用剤は、アルコール類を含有することが好ましい。本発明で使用できるアルコール類としては、エタノール、イソプロパノール等、炭素数5以下の低級アルコール;セタノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、フィトステロール、及びコレステロール等、炭素数6~30の高級アルコール;プロピレングリコール(PG)、1,3-ブチレングリコール(BG)、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール(ペンチレングリコール)、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジール、グリセリン、ポリエチレングリコール等、2~3価の多価アルコール;ソルビトール、キシリトール等の糖アルコールが挙げられる。これらの中でも、本発明においては炭素数6~30の高級アルコール及び2~3価の多価アルコールから選ばれる1種以上を使用することが好ましく、2~3価の多価アルコールを使用することが特に好ましい。
【0033】
本発明の皮膚外用剤においてアルコール類を配合する場合、その含有量は特に制限はなく、例えば0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上であり、使用感及び耐摩擦性に優れた皮膚外用剤が得られる観点から、特に好ましくは1質量%以上である。また、50質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、特に好ましくは30質量%以下である。なお、アルコール類を2種以上配合する場合は、その合計量である。
【0034】
<皮膚外用剤>
本発明の皮膚外用剤は、皮膚に塗布し、使用する組成物である。本発明の皮膚外用剤は粘度が高いものが好ましく、好ましくは500mPa・s以上であり、より好ましくは、1,000mPa・s以上であり、使用感及び耐摩擦性に優れる観点から、特に好ましくは3,000mPa・s以上である。本発明の皮膚外用剤の粘度は、例えばB型粘度計(Brookfield回転粘度計、温度:25℃、回転数:5rpm)で測定することができる。
【0035】
また、本発明の皮膚外用剤はpHが3~9以上が好ましく、使用感及び耐摩擦性に優れる観点から3.5~8がより好ましい。本発明の皮膚外用剤のpHは、例えばpH計を用いてガラス電極法にて測定することができる。
【0036】
本発明の皮膚外用剤は、医薬品、医薬部外品、化粧品に用いることができ、例えば化粧下地、日焼け止め、ファンデーションに用いることができる。これらの中でも、化粧下地、日焼け止めが好ましく、日焼け止めが特に好ましい。また、乳液、クリーム、ジェルといった肌に塗布しやすい形態が好ましく、配合成分の効果を発揮しやすい観点から、水中油型の乳液、クリーム、ジェルが特に好ましい。
【0037】
本発明の皮膚外用剤は、通常の方法に従って製造することができる。例えば、水中油型組成物を得る場合、水に(A)ナイアシンアミド、(B)グリチルリチン酸ジカリウム、(C)ヘパリン類似物質、及び任意に保湿剤、増粘剤、乳化剤を均一に溶解させた水相に、(D)紫外線防御剤を油剤に均一分散した油相を加え、ホモミキサーなどで均一に乳化し、必要に応じてpHを調整する事で本発明の皮膚外用剤を得ることができる。
【実施例0038】
以下、本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、種々の態様をとることができる。なお、実施例で使用する各成分の量は特に断りが無い限り、質量%である。
【0039】
<皮膚外用剤の調製>
表1に従い、実施例1~10の水中油型の日焼け止め用皮膚外用剤を下記の方法で調製した。具体的には、水に(A)、(B)、(C)と、1,3-ブチレングリコール、フェノキシエタノール、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、ポリソルベート80、ステアロイルメチルタウリンNaを均一に溶解させた水相に、(D)をパルミチン酸エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニルに均一分散した油相を加え、ホモミキサーなどで均一に乳化し、クエン酸又は水酸化ナトリウムを用いてpHを調整して調製した。
【0040】
【表1】
【0041】
<皮膚外用剤の安定性測定>
(1)粘度測定
得られた皮膚外用剤について、製造時(0日目)、製造後40℃90日保存後の粘度を、B型粘度計(ブルックフィールド社製 RVT型、温度:25℃、回転数:5rpm)を用いて測定した。また、製造時から90日保存後の変化率の絶対値を下記式により算出した。絶対値が小さいほど粘度変化が小さく、安定性が高いことを示す。結果を表2に示す。
【0042】
【数1】
【0043】
(2)pH測定
得られた皮膚外用剤について、製造時(0日目)、製造後40℃90日保存後のpHを、pH計(堀場製作所社製 pHメーターF71型)を用いて測定した。また、製造時から90日保存後の変化率の絶対値を下記式により算出した。絶対値が小さいほどpH変化が小さく、安定性が高いことを示す。結果を表2に示す。
【0044】
【数2】
【0045】
(3)析出の有無
得られた皮膚外用剤について、保存後の状態を観察した。具体的には、5℃で90日間保存し、析出の有無を目視で確認した。結果を表2に示す。
【0046】
<皮膚外用剤の評価>
(1)使用感の評価
得られた皮膚外用剤の使用感を評価した。サンプルは製造時(0日目)のものを使用した。被験者として、年齢が20代~30代の日焼け止め使用経験がある5名を無作為に選出した。被験者の顔に上記皮膚外用剤を使用し、使用感(塗布時の伸びのよさ、塗布後のきしみのなさ)を評価項目として総合的に判断し、5段階の評価基準に基づいてアンケートを行った。アンケートの各項目の平均値を算出し、評価した。結果を表2に示す。
(塗布時の伸びのよさ)
・5:とても良い(なめらかに伸びる)
・4:良い(伸びがよい)
・3:どちらでもない(使用の際には気にならない程度の伸びである)
・2:悪い(伸びが悪く、使用の際に気になる)
・1:とても悪い(伸びが悪く、使用に不向き)
(塗布後のきしみのなさ)
・5:とても良い(塗布後にきしみを感じずとてもしっとりしている)
・4:良い(塗布後にきしみをほぼ感じずしっとりしている)
・3:どちらでもない(塗布後にきしみを少し感じるが、使用の際には気にならない)
・2:悪い (塗布後にきしみを感じる)
・1:とても悪い(塗布後にきしみを強く感じ、使用に不向き)
【0047】
(2)耐摩擦性の評価
得られた皮膚外用剤の耐摩擦性を評価した。耐摩擦性とは、タオル等での拭き取りや、肌とマスクの擦れによる化粧落ちなど、摩擦への耐性を示す評価である。具体的には、PMMAプレートに2mg/cmのサンプルを均一に塗布し、SPF MASTER(株式会社資生堂製)を用いてSPFを測定した。測定後、300gの荷重で10秒間プレート表面をコットンで擦り拭き取った後、再度SPFを測定した。拭き取り前のSPF値と拭き取り後のSPF値の差を算出し、拭き取りによるSPFの変化を算出した。変化値が小さいほうが、耐摩擦性に優れることを示す。サンプルは製造時(0日目)、製造後40℃90日保存後の各サンプルを使用した。結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
本発明の皮膚外用剤である実施例1~10は、いずれもpHが3.9~8、粘度が3000~35000であった。また、40℃90日間保存後の粘度の変化率が10%未満と小さく、pHは変化がなく、5℃90日間保存後も析出は発生せず、安定性に優れるものであった。一方、比較例1~3は40℃90日保存後の粘度変化が20%以上と大きく、pHの変化も大きいものであった。さらに、比較例1は5℃で析出が発生しており、比較例1~3の皮膚外用剤は安定性が悪いものであった。
【0050】
また、本発明の皮膚外用剤である実施例1~10は、いずれも使用感、耐摩擦性に優れるものであった。実施例1~10の皮膚外用剤は、比較例1~3の皮膚外用剤に比べていずれも塗布時の伸びが良く、塗布後のきしみがなくしっとりしており、使用感に優れたものであった。なお、実施例1~10の皮膚外用剤の塗布時の伸びの良さは40℃90日保管後も維持されていた。さらに、本発明の皮膚外用剤は、製造時の耐摩擦性が90%以上、40℃90日保存後も88%以上を維持しており、高い耐摩擦性であった。一方、比較例1~3の皮膚外用剤は耐摩擦性が75%以下と低く、40℃90日保存後は65%以下とさらに低下するものであった。
【0051】
以上のことから、本発明の皮膚外用剤は塗布時の伸びの良さ、塗布後のきしみのなさといった使用感に優れた皮膚外用剤であることがわかる。さらに、本発明の皮膚外用剤は使用感に優れるのみでなく、保存安定性や耐摩擦性にも優れるものであることがわかる。
【0052】
<皮膚外用剤の調製>
表3及び4に記載された水中油型の日焼け止め用皮膚外用剤を実施例1と同様の方法で調製した。得られた皮膚外用剤は、いずれも粘度が5,000mPa・s以上、pHが5~8以下であり、塗布時に伸びが良く、塗布後のきしみがなくしっとりしたものであり、使用感に優れるとともに、耐摩擦性にも優れるものである。
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の皮膚外用剤は、ナイアシンアミド、グリチルリチン酸ジカリウム、ヘパリン類似物質、及び紫外線防御剤を含有することにより、使用感に優れるのみでなく、耐摩擦性にも優れた皮膚外用剤を提供することができ、産業上の利用の可能性が高いものである。