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特開2024-167039低反射層形成用インキ、積層体及び低反射層形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167039
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】低反射層形成用インキ、積層体及び低反射層形成方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/037 20140101AFI20241122BHJP
【FI】
C09D11/037
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023212037
(22)【出願日】2023-12-15
(62)【分割の表示】P 2023082715の分割
【原出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今野 徹
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AD09
4J039AE04
4J039AE06
4J039BA04
4J039BC13
4J039BC16
4J039BC20
4J039BE01
4J039BE02
4J039BE12
4J039BE25
4J039EA23
4J039EA36
4J039EA37
4J039EA38
4J039EA43
4J039FA02
4J039FA04
4J039GA10
(57)【要約】
【課題】
本発明の課題は、遮光性、低反射性、基材密着性、耐傷性及び耐湿熱性に優れた低反射層を形成するためのインキ、及びそれを用いた低反射性積層体を提供することである。
【解決手段】
バインダー樹脂、着色剤、微粒子及び有機溶剤を含有する低反射層形成用インキであって、
前記バインダー樹脂が、前記インキ固形分全質量中30質量%超55質量%以下であり、前記着色剤の平均粒子径が、50~250nmであり、前記微粒子が、体質顔料及び/又は樹脂微粒子を含む、低反射層形成用インキ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂、着色剤、微粒子(前記着色剤である場合を除く)及び有機溶剤を含有する低反射層形成用インキであって、
前記バインダー樹脂の含有量が、前記インキ固形分全質量中30質量%超55質量%以下であり、
前記着色剤の平均粒子径が、50~250nmであり、
前記微粒子が、体質顔料及び/又は樹脂微粒子を含む、低反射層形成用インキ。
【請求項2】
バインダー樹脂が、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、及び、ウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1に記載の低反射層形成用インキ。
【請求項3】
着色剤が、少なくともカーボンブラックを含む、請求項1又は2に記載の低反射層形成用インキ。
【請求項4】
バインダー樹脂の水酸基価が、10~50mgKOH/gである、請求項1又は2に記載の低反射層形成用インキ。
【請求項5】
着色剤と微粒子との合計質量が、インキ固形分全質量中40~55質量%である、請求項1又は2に記載の低反射層形成用インキ。
【請求項6】
微粒子の平均粒子径が、0.5~15μmである、請求項1又は2に記載の低反射層形成用インキ。
【請求項7】
微粒子が、樹脂微粒子であり、前記樹脂微粒子がポリエステル樹脂微粒子及びアクリル樹脂微粒子からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1又は2に記載の低反射層形成用インキ。
【請求項8】
着色剤と微粒子との質量比率(微粒子/着色剤)が、3~5の範囲である、請求項1又は2に記載の低反射層形成用インキ。
【請求項9】
有機溶剤が、ケトン系有機溶剤からなる有機溶剤(A)、並びに、グリコールエーテル系有機溶剤、エステル系有機溶剤、脂肪族系有機溶剤及び芳香族系有機溶剤から選ばれる少なくとも一種の有機溶剤(B)を含む、請求項1又は2に記載の低反射層形成用インキ。
【請求項10】
有機溶剤(A)と有機溶剤(B)との沸点の差が、35~80℃である、請求項9に記載の低反射層形成用低反射インキ。
【請求項11】
基材上に、請求項1又は2に記載の低反射層形成用インキからなる低反射層を有する、低反射性積層体。
【請求項12】
基材上に、低反射層形成用インキを印刷して低反射層を形成する低反射層形成方法であって、
前記低反射層形成用インキが、1又は2に記載の低反射層形成用インキであり、
前記有機溶剤の揮発させる乾燥工程を含む、低反射層の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低反射層形成用インキ、及び低反射性積層体に関する。
【0002】
より具体的には、低反射層形成用インキ、及び、基材上に低反射層を有し、前記低反射層表面の低反射性、及び遮光性に優れた低反射性積層体に関する。
【背景技術】
【0003】
イメージングの分野では、一眼レフカメラ、スマートフォン等のカメラモジュールで、不要な入射光や反射光を除去し、画質低下の要因となるフレアやゴースト等の発生を抑制する等の観点から、レンズの側面やレンズの縁に低反射性を有する黒色インキが塗布されている。一方でセンシングの分野では、物体認識や3次元計測を目的として、レーザー光を用いて距離を計測してセンシングするToF(Time of Flight)方式センサーの需要が増している。このToFセンサーについても、光源レーザーの内部反射を抑制する目的で、光源周囲に低反射性塗料が塗布されている。
【0004】
イメージング及びセンシングの分野以外では、消費財向け包装パッケージ分野において、低反射性を有する着色インキによる意匠性付与が期待されている。

また、コロナ禍におけるWEB動画撮影の需要増に伴い、被写体の背景に用いるグリーンバックなどにも画質向上のため低反射性が求められている。
【0005】
上記のイメージングやセンシングという光学用途では、バインダー樹脂、カーボンブラック、疎水化処理された乾式シリカ、粗し粒子、染料および溶剤を含有する霧化塗布用表面反射防止塗料を使用する表面反射防止塗膜の例がある(特許文献1)。しかし、この方法は、カーボンブラックと染料との併用により黒色性を付与しているが、染料は耐光性が低いため、経時により低反射性が劣化する懸念がある。また、この組成物は霧化塗布用であり、印刷インキではなく、例えば、スクリーン印刷インキに適用しても、凹凸を形成する効果小さくが低反射性が得られにくいと考えられる。また艶消し剤としてのシリカの量が過剰であり耐擦傷性、逆艶において劣る可能性がある。
【0006】
特許文献2及び3には、カーボンブラックを用いた低反射フィルム、及びこれを用いた光学センシングキット、並びに低反射成形体について記載されている。しかし、着色剤であるカーボンブラックの平均粒子径(D50)が25nmと小さく、可視光領域での透過性が高いため、遮光性が不十分となる懸念がある。また、バインダー樹脂であるアクリル樹脂の含有量が少ないため基材密着性等に問題がある。従って低反射性積層体の特性を満足する技術は未だ得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-97730号公報
【特許文献2】WO2020/195693号公報
【特許文献3】特開2021-140072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、遮光性及び低反射性、更には、基材密着性、耐傷性及び耐湿熱性に優れた低反射層を形成するためのインキ、低反射性積層体、及び低反射層形成方法を提供すること
を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究した結果、以下の発明によって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、バインダー樹脂、着色剤、微粒子(前記着色剤である場合を除く)及び有機溶剤を含有する低反射層形成用インキであって、
前記バインダー樹脂の含有量が、前記インキ固形分全質量中30質量%超55質量%以下であり、
前記着色剤の平均粒子径が、50~250nmであり、
前記微粒子が、体質顔料及び/又は樹脂微粒子を含む、低反射層形成用インキに関する。
【0011】
また、本発明は、バインダー樹脂が、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、及び、ウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、上記低反射層形成用インキに関する。
【0012】
また、本発明は、着色剤が、少なくともカーボンブラックを含む、上記低反射層形成用インキに関する。
【0013】
また、本発明は、バインダー樹脂の水酸基価が、10~50mgKOH/gである、上記低反射層形成用インキに関する。
【0014】
また、本発明は、着色剤と微粒子との合計質量が、インキ固形分全質量中40~55質量%である、上記低反射層形成用インキに関する。
【0015】
また、本発明は、微粒子の平均粒子径が、0.5~15μmである、上記低反射層形成用インキに関する。
【0016】
また、本発明は、微粒子が、樹脂微粒子であり、前記樹脂微粒子がポリエステル樹脂微粒子及びアクリル樹脂微粒子からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、上記低反射層形成用インキに関する。
【0017】
また、本発明は、着色剤と微粒子との質量比率(微粒子/着色剤)が、3~5の範囲である、上記低反射層形成用インキに関する。
【0018】
また、本発明は、有機溶剤が、ケトン系有機溶剤からなる有機溶剤(A)、並びに、グリコールエーテル系有機溶剤、エステル系有機溶剤、脂肪族系有機溶剤及び芳香族系有機溶剤から選ばれる少なくとも一種の有機溶剤(B)を含む、上記低反射層形成用インキに関する。
【0019】
また、本発明は、有機溶剤(A)と有機溶剤(B)との沸点の差が、35~80℃である、上記低反射層形成用低反射インキに関する。
【0020】
また、本発明は、基材上に、上記低反射層形成用インキからなる低反射層を有する、低反射性積層体に関する。
【0021】
また、本発明は、基材上に、低反射層形成用インキを印刷して低反射層を形成する低反射層形成方法であって、
前記低反射層形成用インキが、上記低反射層形成用インキであり、
前記有機溶剤の揮発させる乾燥工程を含む、低反射層の形成方法に関する。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、遮光性及び低反射性、更には、基材密着性、耐傷性及び耐湿熱性に優れた低反射層を形成するためのインキ、低反射性積層体、及び低反射層形成方法を提供することが可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0024】
本発明において、「低反射」とは、従来技術に記載した「反射防止」と同義であり、改善前の層より反射率が低いことをいう。
なお、以下において、「低反射性積層体」のことを単に「積層体」、「低反射層形成用インキ」のことを「印刷インキ」又は「インキ」とすることがあるが、同義である。
【0025】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、バインダー樹脂、着色剤、微粒子及び有機溶剤を含有する低反射層形成用インキであって、前記バインダー樹脂の含有量が、前記インキ固形分全質量中30質量%超55質量%以下であり、前記着色剤の平均粒子径が、50~250nmであり、前記微粒子が、体質顔料及び/又は樹脂微粒子を含む低反射層形成用インキに関する。
インキ中のバインダー樹脂含有量を上記範囲とすることで乾燥後に形成されるインキ層の基材密着性、耐傷性及び耐湿熱性が良好になるという効果を奏し更に、着色剤の平均粒子径を上記範囲とすることでインキの流動性を良好に保ちつつ、遮光性、及び低反射性が良好となるという効果を奏するので、形成されるインキ層が低反射となり、更に、遮光性、基材密着性、耐傷性及び耐湿熱性を満足させることが可能になる。本発明の低反射層形成用インキからなる低反射層を含む低反射性積層体をスマートフォンや車載センサー向けカメラモジュールの鏡筒内部やイメージセンサー周辺に使用することで、ゴーストやフレアといった現象の抑制に寄与できる。ただし、この作用機能は考察によるものであり、本願発明を特段限定するものではない。
【0026】
<低反射形成用インキ>
本発明の低反射形成用インキはバインダー樹脂、着色剤、微粒子及び有機溶剤を含有する。当該低反射形成用インキを基材に印刷、乾燥することで低反射層を形成することができ、得られた印刷物が低反射性積層体となる。
【0027】
(バインダー樹脂)
本発明において、バインダー樹脂とはインキ中で結着剤として機能し得る樹脂を指し、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
熱可塑性樹脂として、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、エポキシ樹脂、スチレン系樹脂、ロジン系樹脂、スチレン-マレイン酸樹脂、ダンマル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジンエステル樹脂、テルペン樹脂等が挙げられ、これらの樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で併用してもよい。
基材密着性や耐湿熱性の観点から、熱可塑性樹脂の中でも、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、及びウレタン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種以上を含むことが好ましく、アクリル樹脂を含むことがより好ましい。
【0028】
バインダー樹脂の含有量は、インキ固形分全質量中、30質量%超55質量%以下の範
囲であり、32~55質量%の範囲であることがより好ましい。35~50質量%の範囲であることが更に好ましい。30質量%超とすることで基材密着性、耐傷性及び耐湿熱性が良好となり、55質量%以下とすることで遮光性及び低反射性が良好となる。
【0029】
バインダー樹脂の水酸基価は、10~50mgKOH/gの範囲であることが好ましく、20~40mgKOH/gの範囲であることがより好ましい。10mgKOH/g以上とすることで基材密着性が良好となり、50mgKOH/g以下とすることで耐湿熱性が良好となる。
【0030】
バインダー樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5,000~120,000の範囲であることが好ましく、20,000~100,000範囲であることがより好ましい。重量平均分子量が5,000以上とすることで、印刷適性が良好となり、120,000以下とすることで、耐傷性が良好となる。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミッションクロマトグラフィー)で測定したポリスチレン換算の数値である。
【0031】
(着色剤)
本発明に用いる着色剤としては、種々の有機顔料、無機顔料、染料等をあげることができ本発明の効果を損なわない範囲で併用することができるが、遮光性、及び低反射性発現の観点からカーボンブラックを用いることが好ましい。
本発明で用いる着色剤の平均粒子径は、50~250nmの範囲であり、100~200nmの範囲であることがより好ましい。50nm以上とすることでインキの流動性が良好となり、250nm以下とすることで遮光性、及び低反射性が良好となる。
【0032】
なお、本発明における平均粒子径とは、動的光散乱法での測定におけるD50粒子径をいい、例えば、マイクロトラック(マイクロトラック・ベル株式会社製、商品名「MT3300EXII」)により測定することができる。
【0033】
(カーボンブラック)
本発明で用いるカーボンブラックとしては、公知なものを使用でき、カラーインデックス(Colour Index International、略称C.I.)のC.I.ナンバーで示すと、C.I.ピグメントブラック7が挙げられる。
【0034】
上記カーボンブラックの吸油量は、10~150cm/100gの範囲であることが好ましく、20~100cm/100gの範囲であることがより好ましい。吸油量をこの範囲とすることで、印刷物の濃度が十分に得られ、遮光性が良好となる。当該吸油量は、JIS K6221に準拠し、カーボンブラック100gが吸収する DBP(ジブチルフタレート)量を測定したものである。
【0035】
カーボンブラックの比表面積(窒素吸着法)は、5~200m/gの範囲であることが好ましく、10~150m/gの範囲であることがより好ましい。比表面積をこの範囲とすることで、印刷適性が良好となる。
【0036】
上記を満たすカーボンブラックの具体例としては、ミツビシカーボン#10、ミツビシカーボン#20、ミツビシカーボンMA220(三菱化学株式会社製)、シーストS、シーストSP、シーストTA、(東海カーボン株式会社製)、SUNBLACK235、旭#8、旭#15(旭カーボン株式会社製)等が挙げられる。
【0037】
以下に、上記カーボンブラック以外で着色剤として好ましく使用可能な有機顔料の具体例を、カラーインデックス番号で示す。
【0038】
黄顔料としては、C.I.ピグメント イエロー 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、86、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、125、126、127、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、198、199、213、214、218、219、220、221、231等を好適に用いることができる。
【0039】
紅顔料としては、C.I.ピグメント レッド 7、9、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、57:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、97、122、123、146、149、150、168、169、176、177、178、180、184、185、187、192、200、202、208、209、210、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、242、246、254、255、264、268、270、272、273、274、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287等を好適に用いることができる。
【0040】
藍顔料としては、C.I.ピグメント ブルー 1、1:2、1:3、2、2:1、2:2、3、8、9、10、10:1、11、12、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、18、19、22、24、24:1、53、56、56:1、57、58、59、60、61、62、64等を好適に用いることができる。
【0041】
橙顔料としては、C.I.ピグメント オレンジ 36、38、43、51、55、59、61、71、73等を好適に用いることができる。
【0042】
緑顔料としては、C.I.ピグメント グリーン 7、10、36、37、58、62、63等を好適に用いることができる。
【0043】
紫顔料としては、C.I.ピグメント バイオレット 1、19、27、29、30、32、37、40、42、50等を好適に用いることができる。
【0044】
無機顔料としては、酸化チタン、アルミニウムペースト、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒等が挙げられる。無機顔料は、彩度と明度のバランスを取りつつ良好な塗布性、感度、現像性等を確保するために、有機顔料と組合せて用いることも好ましい。
【0045】
着色剤の含有量は、インキ固形分全質量中、5~15質量%の範囲であることが好ましく、7~12質量%の範囲であることがより好ましい。5質量%以上含むことで、遮光性が良好となり、15質量%以下にすることで、基材密着性や耐傷性が良好となる。
【0046】
(微粒子)
本発明の低反射形成用インキは微粒子として体質顔料及び/又は樹脂微粒子を含む。低反射性や印刷適性の観点から、微粒子として樹脂微粒子を用いることが好ましい。なお、微粒子は、着色剤であるいわゆる着色顔料や着色樹脂微粒子は含まれない。しかし、体質顔料及び/又は樹脂微粒子が、僅かに着色した場合をも排除するものではない。
【0047】
微粒子の平均粒子径は、0.5~15μmの範囲であることが好ましく、2~10μmの範囲であることがより好ましい。平均粒子径が0.5μm以上とすることで、低反射層表面に微細な凹凸を形成できるため低反射性が良好となり、15μm以下とすることで低反射層表面の耐傷性が良好となる。
【0048】
本発明で用いる微粒子の屈折率は、1.4~1.6の範囲であることが好ましく、1.45~1.5の範囲であることがより好ましい。屈折率が上記範囲とすることで、低反射性が良好となる。
【0049】
微粒子の含有量は、インキ固形分全質量中25~50質量%の範囲であることが好ましく、35~45質量%の範囲であることがより好ましい。含有比率を25質量%以上とすることで低反射性が良好となり、含有比率を50質量%以下とすることで耐傷性が良好となる。
【0050】
体質顔料としては、例えば、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、タルク微粒子、炭酸カルシウム微粒子、カオリン微粒子、沈降性硫酸バリウム微粒子等を1種または2種以上用いることができ、これらに限定されない。
【0051】
樹脂微粒子としては、例えば、ポリエステル樹脂微粒子、アクリル樹脂微粒子、メラミン樹脂微粒子、メラミン・ベンゾグアナミン樹脂微粒子、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合樹脂微粒子、フッ素樹脂微粒子、ウレタン樹脂微粒子及びセルロース樹脂微粒子等が挙げられ、中でもポリエステル樹脂微粒子及び/又はアクリル微粒子が好ましく、ポリエステル樹脂微粒子が更に好ましい。ただし、1種または2種以上用いてもよく、本発明に適用できる樹脂微粒子はこれらに限定されない。
【0052】
ポリエステル樹脂微粒子としては、ポリヒドロキシアルカン酸からなるポリエステル樹脂微粒子、二塩基酸とジオールの縮合物からなるポリエステル樹脂微粒子及びポリ乳酸樹脂微粒子等が挙げられる。なかでもポリヒドロキシアルカン酸からなるポリエステル樹脂微粒子、二塩基酸とジオールの縮合物からなるポリエステル樹脂微粒子であるポリエステル樹脂微粒子が好ましく、ポリヒドロキシアルカン酸からなるポリエステル樹脂微粒子であることがより好ましい。また、ポリエステル樹脂微粒子としては、生分解性樹脂で形成されたポリエステル樹脂微粒子を用いることも好ましい。
【0053】
ポリエステル樹脂微粒子の具体例としては、テクポリマーTP-MGシリーズ(積水化成品工業株式会社製)が挙げられる。また、ポリエステル微粒子の製造方法としては、特開2007-191617号や特開平5-194141号に記載の手法が挙げられる。
【0054】
アクリル樹脂微粒子の具体例としては、エポスターMA1002、エポスターMA1004、エポスターMA1006、エポスターMA1010(株式会社日本触媒製)、タフチックFH-S005、タフチックFH-S008、タフチックFH-S010、タフチックFH-S015、タフチックFH-S020(東洋紡株式会社製)、ケミスノーMX-80H3wT、MX-150、MX-180TA、MX-300、MX-500、MX-1000、MX-1500H、MX-2000、MX-3000(綜研化学株式会社製)等が挙げられる。
【0055】
メラミン樹脂微粒子の具体例としては、エポスターSS、エポスターS、エポスターFS、エポスターS6、エポスターS12(株式会社日本触媒製)等が挙げられる。
メラミン・ベンゾグアナミン樹脂微粒子の具体例としては、エポスターM30(株式会社日本触媒製)が挙げられる。
【0056】
ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合樹脂微粒子の具体例としては、エポスターMS、エポスターL15(株式会社日本触媒製)等が挙げられる。
【0057】
メラミン樹脂微粒子の具体例としては、エポスターSS、エポスターS、エポスターFS、エポスターS6、エポスターS12(株式会社日本触媒製)等が挙げられる。
メラミン・ベンゾグアナミン樹脂微粒子の具体例としては、エポスターM30(株式会社日本触媒製)が挙げられる。
【0058】
ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合樹脂微粒子の具体例としては、エポスターMS、エポスターL15(株式会社日本触媒製)等が挙げられる。
【0059】
フッ素樹脂微粒子の具体例としては、KTL-1N、KTL-2N、KTL-8N(株式会社喜多村製)、Shamrock SST-3D、Shamrock SST-4MG(Shamrock Technologies社製)等が挙げられる。
【0060】
ウレタン微粒子の具体例としては、アートパールC-1000透明、アートパールC-600透明、アートパールC-400透明、アートパールC-800、アートパールMM-120T、アートパールJB-800T、アートパールJB-600T、アートパールP-800T、アートパールP-400T(根上工業株式会社製)などの架橋ウレタンビーズ等が挙げられる。
【0061】
本発明においては、着色剤と微粒子の総量がインキ固形分全質量中40~55質量%の範囲であることが好ましく、45~50質量%の範囲であることがより好ましい。40質量%以上とすることで遮光性及び低反射性が良好となり、55質量%以下とすることで基材密着性、耐傷性、耐湿熱性が良好となる。
【0062】
本発明においては、低反射層中の着色剤と微粒子の比率(微粒子/着色剤)が3~5の範囲であることが好ましく、3.5~5の範囲であることがより好ましく、4~4.8の範囲であることが更に好ましい。上記比率を3以上とすることで低反射性が良好となり、5以下とすることで遮光性が良好となる。
【0063】
(有機溶剤)
上記印刷インキは有機溶剤を含むことが好ましい。有機溶剤としては、グリコールエーテル系有機溶剤、エステル系有機溶剤、脂肪族系有機溶剤、芳香族系有機溶剤、アルコール系有機溶剤、ケトン系有機溶剤等を挙げることができ、中でも、ケトン系有機溶剤からなる有機溶剤(A)と、グリコールエーテル系有機溶剤、エステル系有機溶剤、脂肪族系有機溶剤及び芳香族系有機溶剤から選ばれる少なくとも一種の有機溶剤(B)とを含むことが好ましい。より好ましくは、バインダー樹脂の溶解性が良好なケトン系有機溶剤、及び、印刷適性が良好なグリコールエーテル系有機溶剤またはエステル系有機溶剤を用いることが好ましい。
【0064】
(有機溶剤(A))
上記有機溶剤(A)とは、ケトン系有機溶剤である。ケトン系有機溶剤は、環状骨格を有する環状ケトン系有機溶剤と、環状骨格を有さないケトン系有機溶剤に分類できる。中でも、印刷適性の観点から、環状ケトン系有機溶剤を用いることが好ましい。
【0065】
環状ケトン系有機溶剤としては、分子内に、5~7員環の環状ケトン構造を含む有機溶剤が好ましい。5員環の環状ケトン系有機溶剤としては、シクロペンタノン、2-メチル-2-シクロペンテン-1-オン、2-メチルシクロペンタノン、3-メチルシクロペン
タノン、2-エチルシクロペンタノン、3-エチルシクロペンタノン、2,2-ジメチルシクロペンタノン、2,4,4-トリメチルシクロペンタノン等が挙げられる。
6員環の環状ケトン系有機溶剤としては、シクロヘキサノン、イソホロン、2-シクロヘキセン-1-オン、2-メチルシクロヘキサノン、3-メチルシクロヘキサノン、4-メチルシクロヘキサノン、4-エチルシクロヘキサノン、2,6-ジメチルシクロヘキサノン、2,2-ジメチルシクロヘキサノン等が挙げられる。
7員環の環状ケトン系有機溶剤としては、シクロペプタノン、2-シクロペプタン-1-オン等が挙げられる。
【0066】
環状骨格を有さないケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等が挙げられる。
【0067】
(有機溶剤(B))
本発明において、有機溶剤(B)は、グリコールエーテル系有機溶剤、エステル系有機溶剤、脂肪族系有機溶剤、及び芳香族系有機溶剤から選ばれる少なくとも一種を含む。中でも、印刷適性の観点から、グリコールエーテル系有機溶剤またはエステル系有機溶剤を含むことが好ましい。ただし、有機溶剤(B)は上記有機溶剤(A)を含む場合を除く。
【0068】
グリコールエーテル系有機溶剤としては、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノメトキシメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0069】
エステル系有機溶剤としては、ガンマーブチロラクトン、セロソルブアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、エチレングリコールジアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、プロピレンカルボナート等が挙げられる。
【0070】
脂肪族系有機溶剤としては、ノルマルパラフィン系溶剤、イソパラフィン系溶剤、シクロパラフィン系溶剤等が挙げられる。
【0071】
芳香族系有機溶剤としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ナフタレン、テトラリン、ソルベントナフサの他、芳香族系に富む溶媒としてスワゾール(コスモ石油社製、丸善石油化学社製)ソルベッソ(エクソンモービル社製)、カクタスファイン(ジャパンエナジー社製)等が挙げられる。
【0072】
本発明においては、上記有機溶剤(A)と有機溶剤(B)との沸点の差が、35~80℃であることが好ましく、40~70℃の範囲であることがより好ましい。沸点の差が上記範囲である複数の有機溶剤を用いることで、乾燥工程における段階的な有機溶剤の揮発により微粒子が低反射層表面へ偏析しやすくなる。その結果、より効果的に低反射層表面に凹凸形状を形成することができ、低反射性が向上する。更に、上記低反射層形成用インキを印刷する際には、80℃以上の温度で乾燥させることが好ましい。乾燥時間が短いこ
とで効率的に上記凹凸形状を形成することが可能となる。
【0073】
有機溶剤の含有量は、低反射インキの総質量に対して35~80質量%の範囲であることが好ましく、40~70質量%の範囲であることがより好ましい。樹脂の溶解性が向上するためである。
有機溶剤(A)と有機溶剤(B)は任意の比率で配合することが可能だが、質量比として有機溶剤(A)/有機溶剤(B)=90/10~50/50の範囲であることが好ましく、80/20~55/45の範囲であることがより好ましい。
【0074】
(硬化剤)
上記低反射層形成用インキには、必要に応じて、ポリイソシアネート型硬化剤を本発明の目的を阻害しない範囲で適宜配合することができる。
【0075】
硬化剤の含有量は、硬化剤中の有効イソシアネート量とインキ固形分中のバインダー樹脂中の水酸基との比率NCO/OHが、0.5~1.5の範囲であることが好ましく、0.75~1.25の範囲であることがより好ましい。NCO/OHを0.5以上とすることで、基材密着性及び耐傷性が良好となり、1.5以下とすることで、耐湿熱性が良好となる。
【0076】
(添加剤)
上記低反射層形成用インキには、必要に応じて、分散剤、消泡剤、レベリング剤、濡れ浸透剤、皮張り防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、架橋剤、防腐剤、防カビ剤、粘度調整剤、pH調整剤等の添加剤を、本発明の目的を阻害しない範囲で適宜配合することができる。
【0077】
<低反射層形成用インキの製造>
本発明で用いられる低反射層形成用インキは、バインダー樹脂、着色剤、微粒子、有機溶剤、及び、必要に応じて、硬化剤、及び/又は、添加剤を必要量混合し、攪拌機等で良く撹拌する方法、又は、着色剤、分散剤、有機溶剤を含む分散体を先に調製しておき、さらにバインダー樹脂、有機溶剤、硬化剤、及び/又は、添加剤を必要量混合し、攪拌機等で良く撹拌して製造する方法がある。
【0078】
<低反射層の形成>
本発明において、基材に低反射層を形成するための印刷方法としては、スクリーン印刷、ロールコーター、ディスペンサー塗工、ディップコート、刷毛塗り等が挙げられ、中でも、スクリーン印刷が好ましい。印刷機としては、シリンダープレス印刷機や半自動印刷機を使用し、刷版としては、ナイロンやポリエステル等の樹脂素材、ステンレス等の樹脂素材を使用することが好ましい。
【0079】
<スクリーン印刷>
スクリーン印刷とは、版にポリエステル、ナイロン等の化学繊維やステンレス製のスクリーンを利用し、版上に感光性乳剤を用いてインキが透過する箇所と透過しない箇所をパターニングした後、インキをスキージと呼ばれるヘラ状のゴム板でスクリーンの内面を加圧・移動させることで、インキを基材に転写させる技法である。また、スクリーンの版枠に対してのメッシュの織方向の角度をバイアス角と呼ぶ。基材面側に塗布された上記感光性乳剤の膜厚により、印刷されるインキの膜厚を調整することができる。
また、印刷時、基材とスキージからなる角度の内、印刷方向の角度をアタック角と呼ぶ。
印刷後は、熱風オーブンを用いて、インキ中の溶剤を揮発させることで、インキを基材に定着させることができる。
【0080】
<低反射層形成方法>
本発明は、基材上に、低反射層形成用インキを印刷して低反射層を形成する低反射層形成方法であって、前記インキが、バインダー樹脂、着色剤、微粒子及び有機溶剤を含有し、前記バインダー樹脂の含有量が、インキ固形分全質量中30~55質量%であり、前記着色剤の平均粒子径が、50~250nmであり、前記有機溶剤の揮発させる乾燥工程を含む、低反射層の形成方法に関する。インキ中のバインダー樹脂含有量及び着色剤の平均粒子径を上記の範囲とすることで着色剤の分散安定性が良好となるため、乾燥工程において微粒子のみを効果的に偏析させることが可能となる。その結果、低反射層表面に偏析した微粒子により凹凸形状が形成され、低反射層を形成することができる。更に、上述した有機溶剤の乾燥メカニズムにより、より効果的に微粒子を偏析させることが可能となる。
【0081】
本発明の低反射性積層体は、基材上に、低反射層形成用インキを、スクリーン印刷方式で印刷して低反射層を形成することが好ましい。当該印刷速度は50~300mm/secの範囲であることが好ましく、100~250mm/secの範囲であることがより好ましい。印刷後の乾燥温度は40~120℃であると好ましく、60~120℃であるとより好ましく、80~100℃であると更に好ましい。これにより低反射性が向上する。
更に印刷時のインキの粘度は、700~12000cpsの範囲であること好ましく、1000~8000cpsの範囲であることがより好ましい。
【0082】
本発明においては、低反射層の膜厚は5μm以上であることが好ましく、7μm以上であるとより好ましく、10μm以上であると特に好ましい。膜厚が5μm以上であると、透過濃度が3以上となり、遮光性が良好になる。ここでいう透過濃度とは、光学濃度計を用いて測定した値であり、垂直透過光束を積層体に照射し、積層体が無い状態との比を対数で表したものである。
【0083】
<基材>
本発明において、積層体を形成するために用いられる基材は特に限定されるものではなく、ソーダガラス、無アルカリガラス、硼珪酸ガラス、白板ガラス、ARコートガラス、UVIRコートガラス等の各種ガラス、石英等の無機材料基材、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル基材、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニルその他のポリオレフィン基材、ポリアミド等のナイロン基材、アクリル基材、ポリ塩化ビニル基材、ポリカーボネート基材、ウレタン基材、エポキシ基材等の樹脂基材が挙げられる。また、当該基材を用いた積層体であってもよい。シリカ、アルミナ、アルミニウム等の無機化合物を当該基材に蒸着した蒸着基材も用いることができ、更に蒸着処理面がポリビニルアルコール等によるコート処理を施されていてもよい。また、コロナ処理やフレーム処理、延伸処理が施されていてもよい。以上のうち、ガラス等の無機材料基材であることが好ましい。
【実施例0084】
以下、実施例として本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。本発明において、特に断らない限り、「部」は「質量部」、「%」は、「質量%」をそれぞれ表す。
【0085】
<ドライ膜厚>
接触式膜厚計DigiMicro(株式会社ニコン製)を用いて乾燥後の低反射層のドライ膜厚を測定した。
【0086】
<OD値>
透過濃度計Gretag Macbeth TD-931を用いて透過濃度(OD値)を
測定した。
【0087】
<反射率>
紫外可視分光光度計V-760(日本分光株式会社製)を用いて、硫酸バリウム白色板を基準とし積分球モードにて反射率を測定し、波長430nm~620nmの範囲の平均値にて評価した。
【0088】
<実施例1:低反射層形成用インキの調整>
撹拌機、温度計を備えた0.3Lのガラス製フラスコに、下記アクリル樹脂1を22.4部、イソホロン(沸点215.2℃)30.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート(沸点146.0℃)16.0部を仕込み、80℃で2時間攪拌し、固形分32.7質量%のアクリル樹脂ワニスを得た。次に、得られたアクリル樹脂ワニス68.4部、下記カーボンブラック1を4.7部、下記分散剤1.9部を金属製密閉容器に入れ、ガラス製ビーズを用いて、ビーズミル分散を行った。得られたカーボンブラック分散液75.0部に対し、下記ポリエステル樹脂微粒子1を22.0部、下記消泡剤0.5部、ポリイソシアネート硬化剤2.5部を仕込み、ディスパー攪拌を行い、実施例1の低反射層形成用インキを得た。
【0089】
<実施例1:積層体の作成>
上記手順で得られた低反射層形成用インキを用いて、下記スクリーン印刷条件にて、厚み1.1mmのソーダガラス基材上に、スクリーン印刷で5cm×5cmの印刷部を作成した。スクリーン印刷後、80℃のオーブンに1時間投入し、インキを乾燥させることで基材上に低反射層を形成し、積層体を作成した。
【0090】
(スクリーン印刷条件)
メッシュカウント250メッシュ/インチのポリエステルメッシュ上に、感光性乳剤からなる膜厚20μmの乳剤層を形成し、バイアス角22.5°となるよう製版した。スキージはデュロメーターA硬度で80となるウレタン材質のものを使用した。アタック角度75°、スキージ速度100mm/secにて、スクリーン印刷を行った。
【0091】
<実施例2~29、比較例1~5:低反射層形成用インキの調整>
表1、表2に記載の原料、配合にて、実施例1と同様の所作を行い、実施例2~29及び比較例1~5の低反射層形成用インキを得た。表中、単位の標記のない数値は、部を表し、空欄は配合していないことを表す。
【0092】
<実施例2~29、比較例1~5:積層体の作成>
上記手順で得られた低反射層形成用インキを用いて、実施例1と同様にして実施例2~29及び比較例1~5の低反射層形成用インキを用いた積層体を作成した。
【0093】
【表1】
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
・アクリル樹脂1:水酸基価30mgKOH/g、重量平均分子量Mw42000
・ポリエステル樹脂1:水酸基価30mgKOH/g、重量平均分子量Mw12000
・アクリル樹脂2:水酸基価48mgKOH/g、重量平均分子量Mw43000
・塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂1:水酸基価30mgKOH/g、重量平均分子量Mw24000
・ウレタン樹脂1:水酸基価30mgKOH/g、重量平均分子量Mw80000
・アクリル樹脂3:水酸基価5mgKOH/g、重量平均分子量Mw40000
・アクリル樹脂4:水酸基価70mgKOH/g、重量平均分子量Mw48000
・カーボンブラック1:平均粒子径150nm 吸油量40cm/100g、比表面積15m/g
・カーボンブラック2:平均粒子径75nm 吸油量78cm/100g、比表面積25m/g
・カーボンブラック3:平均粒子径220nm 吸油量32cm/100g、比表面積15m/g
・カーボンブラック4:平均粒子径30nm 吸油量113cm/100g、比表面積76m/g
・カーボンブラック5:平均粒子径350nm 吸油量21cm/100g、比表面積8m/g
・C.I.ピグメント グリーン 7:平均粒子径220nm
・ポリエステル樹脂微粒子1:平均粒子径5μm、屈折率1.48
・ポリエステル樹脂微粒子2:平均粒子径1μm、屈折率1.48
・ポリエステル樹脂微粒子3:平均粒子径12μm、屈折率1.48
・アクリル樹脂微粒子1:平均粒子径6μm、屈折率1.49
・ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合樹脂微粒子1:平均粒子径5μm、屈折率1.66
・ポリエステル樹脂微粒子4:平均粒子径0.3μm、屈折率1.48
・ポリエステル樹脂微粒子5:平均粒子径18μm、屈折率1.48
・球状シリカ1:平均粒子径4μm、屈折率1.46
・イソホロン:沸点215.2℃
・シクロヘキサノン:沸点155.6℃
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート:沸点146.0℃
・トルエン:沸点110.6℃
・分散剤:SOLSPERSE 24000 GR、Lubrizol社製、固形分100%
・消泡剤:DOWIL SH5500 Antifoam Compound、ダウ・ケミカル日本社製、固形分100%
・ポリイソシアネート硬化剤:コロネート HX、東ソー株式会社製、NCO比率20.5%、固形分100%
【0097】
<評価>
上記実施例及び比較例で得られた積層体について以下の評価を行った。評価結果は表1、表2に示した。
【0098】
<遮光性>
上記の方法で測定した透過濃度(OD値)をもとに評価した。評価基準は次の通りである。
5(優):OD値 4.5以上
4(良):OD値 3.8以上、4.5未満
3(可):OD値 3.0以上、3.8未満
2(不可):OD値 2.2以上、3.0未満
1(劣):OD値 2.2未満
実用上使用可能な評価は3、4および5である。
【0099】
<低反射性>
上記の方法で測定した反射率をもとに評価した。評価基準は次の通りである。
5(優):2.4%未満
4(良):2.4%以上、2.8%未満
3(可):2.8%以上、3.2%未満
2(不可):3.2%以上、3.6%未満
1(劣):3.6%以上
実用上使用可能な評価は3、4および5である。
【0100】
<基材密着性>
低反射層上に碁盤目剥離試験治具を用い1mm2のクロスカットを100個作製した。
その後、クロスカット上に粘着テープ(LP24、ニチバン(株)製)を貼り付け、90度方向に剥離し、硬化皮膜の残留碁盤目の数を計測した。評価基準は次の通りである。
5(優):96~100個
4(良):91~95個
3(可):86~90個
2(不可):81~85個
1(劣):80個以下
実用上使用可能な評価は3、4および5である。
【0101】
<耐傷性>
25℃湿度50%環境下、学振型摩擦堅牢度試験機を用いて評価。摩擦子(20mm×20mm、 R45mm)先端に白色綿布を取り付け、荷重200gf条件で、低反射層の上に摩擦子を置き30往復/分のスピードで10往復させた。10往復後、低反射インキの擦れ落ち度合いを、白色綿布への着色として評価した。なお、白色綿布の着色度合いは汚染用グレースケールを用いてJIS L 0805に基づき評価した。評価基準は次の通りである。
5(優):グレースケール5級
4(良):グレースケール4級と5級との間
3(可):グレースケール4級
2(不可):グレースケール3級と4級との間
1(劣):グレースケール3級以下
実用上使用可能な評価は3、4および5である。
【0102】
<耐湿熱性>
積層体を沸騰水中で60分煮沸後に熱水から取り出し、室温で10分放置した後に上記の方法で基材密着性を評価した。
評価基準は次の通りである。
5(優):96~100個
4(良):91~95個
3(可):86~90個
2(不可):81~85個
1(劣):80個以下
実用上使用可能な評価は3、4および5である。
【0103】
体質顔料及び/又は樹脂微粒子を含まない比較例1、バインダー樹脂がインキ固形分全質量中30~55質量%の範囲にない比較例2及び3、平均粒子径が50~250nmの範囲にない着色剤を用いた比較例4及び5では、遮光性、低反射性、基材密着性、耐傷性及び耐湿熱性のいずれかが劣る結果となった。
【0104】
本発明により、遮光性、低反射性、基材密着性、耐傷性及び耐湿熱性に優れる低反射性積層体を提供することが可能となった。