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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167040
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】圧縮空気エネルギ貯蔵装置
(51)【国際特許分類】
   F02C 6/16 20060101AFI20241122BHJP
   F02C 9/00 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
F02C6/16
F02C9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023220797
(22)【出願日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2023083034
(32)【優先日】2023-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】永田 修平
(72)【発明者】
【氏名】小山 昌喜
(72)【発明者】
【氏名】千葉 紘太郎
(57)【要約】
【課題】工場の電力需給調整により合理的に電力平準化を図る。
【解決手段】電動機により駆動される圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された圧縮空気を貯蔵する蓄圧タンクと、前記蓄圧タンクに貯蔵された前記圧縮空気により駆動される膨張機と、前記膨張機により駆動される発電機と、空気圧で駆動される空圧機器に前記圧縮空気を供給する空圧供給配管とを備え、前記圧縮機により、前記空圧機器を駆動する空圧使用圧力より高く設定した所定圧力を超える圧力まで空気を圧縮し、前記所定圧力を超える圧縮空気を前記膨張機に供給して発電し、前記所定圧力以下の圧縮空気を、前記空圧供給配管を介して前記空圧機器に供給する圧縮空気エネルギ貯蔵装置を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機により駆動される圧縮機と、
前記圧縮機で圧縮された圧縮空気を貯蔵する蓄圧タンクと、
前記蓄圧タンクに貯蔵された前記圧縮空気により駆動される膨張機と、
前記膨張機により駆動される発電機と、
空気圧で駆動される空圧機器に前記圧縮空気を供給する空圧供給配管と、
を備え、
前記圧縮機により、前記空圧機器を駆動する空圧使用圧力より高く設定した所定圧力を超える圧力まで空気を圧縮し、
前記所定圧力を超える圧縮空気を前記膨張機に供給して発電し、
前記所定圧力以下の圧縮空気を、前記空圧供給配管を介して前記空圧機器に供給する
圧縮空気エネルギ貯蔵装置。
【請求項2】
請求項1の圧縮空気エネルギ貯蔵装置において、
前記空圧供給配管の圧力を検出する圧力センサと、
前記空圧供給配管に設けられた開閉弁と、
前記圧力センサで検出される前記空圧供給配管の圧力を基に前記開閉弁を制御する制御装置とを備え、
前記電動機は、再生エネルギ発電装置が接続された送配電系統からの電力で駆動され、
前記制御装置は、
前記再生エネルギ発電装置の発電量、前記空圧機器を使用する施設の電力使用量、及び前記圧力センサで検出される前記空圧供給配管の圧力を入力し、
前記発電量が前記電力使用量より少なく、前記空圧供給配管の圧力が前記空圧使用圧力以上で前記所定圧力以下である場合、前記開閉弁を開放し前記空圧供給配管から前記空圧機器に前記圧縮空気を供給する
圧縮空気エネルギ貯蔵装置。
【請求項3】
請求項1の圧縮空気エネルギ貯蔵装置において、
前記空圧供給配管は、前記蓄圧タンクと前記空圧機器とを接続する配管を含んで構成される圧縮空気エネルギ貯蔵装置。
【請求項4】
請求項1の圧縮空気エネルギ貯蔵装置において、
前記膨張機は、前記蓄圧タンクからの圧縮空気で駆動される高圧膨張機と、前記高圧膨張機から吐出された圧縮空気で駆動される低圧膨張機とを含んで構成されており、
前記空圧供給配管は、前記高圧膨張機及び前記低圧膨張機を接続する配管と前記空圧機器とを接続する配管を含んで構成される
圧縮空気エネルギ貯蔵装置。
【請求項5】
請求項1の圧縮空気エネルギ貯蔵装置において、
前記圧縮機は、低圧圧縮機と、前記低圧圧縮機で圧縮された圧縮空気を圧縮する高圧圧縮機とを含んで構成されており、
前記空圧供給配管は、前記低圧圧縮機及び前記高圧圧縮機を接続する配管と前記空圧機器とを接続する配管を含んで構成される
圧縮空気エネルギ貯蔵装置。
【請求項6】
請求項1の圧縮空気エネルギ貯蔵装置において、
前記圧縮機とは異なる空圧供給圧縮機と、
前記空圧供給圧縮機と前記空圧供給配管とを接続する配管と
を含む圧縮空気エネルギ貯蔵装置。
【請求項7】
請求項1の圧縮空気エネルギ貯蔵装置において、
前記蓄圧タンクに接続し、前記蓄圧タンクのタンク圧を上昇させる給水ポンプを備えた圧縮空気エネルギ貯蔵装置。
【請求項8】
請求項1の圧縮空気エネルギ貯蔵装置において、
前記圧縮機は、大気を前記所定圧力以下の圧力まで圧縮する低圧圧縮機と、前記低圧圧縮機で圧縮された圧縮空気を前記所定圧力を超える圧力まで圧縮する高圧圧縮機とを含み、
前記蓄圧タンクは、前記低圧圧縮機で圧縮された前記所定圧力以下の圧縮空気を貯蔵する低圧蓄圧タンクと、前記高圧圧縮機で圧縮された前記所定圧力を超える圧縮空気を貯蔵する高圧蓄圧タンクとを含み、
前記膨張機には、前記高圧蓄圧タンクの圧縮空気が供給され、
前記空圧機器には、前記空圧供給配管を介して前記低圧蓄圧タンクの圧縮空気が供給される
圧縮空気エネルギ貯蔵装置。
【請求項9】
請求項8の圧縮空気エネルギ貯蔵装置において、
前記低圧蓄圧タンクは、前記高圧蓄圧タンクと減圧装置を介して接続されている圧縮空気エネルギ貯蔵装置。
【請求項10】
請求項1の圧縮空気エネルギ貯蔵装置において、
前記蓄圧タンクは、高圧蓄圧タンクと、低圧蓄圧タンクとを含み、
前記低圧蓄圧タンクは、減圧装置を介して前記高圧蓄圧タンクと接続されると共に、前記空圧供給配管を介して前記空圧機器に接続され、
前記高圧蓄圧タンクには、前記圧縮機で前記所定圧力を超える圧力まで圧縮された圧縮空気が貯蔵され、
前記低圧蓄圧タンクには、前記減圧装置で前記所定圧力以下に減圧された圧縮空気が貯蔵され、
前記膨張機には、前記高圧蓄圧タンクの圧縮空気が供給され、
前記空圧機器には、前記減圧装置で減圧された圧縮空気が前記空圧供給配管を介して供給される
圧縮空気エネルギ貯蔵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気エネルギ貯蔵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電や太陽光発電等の再生可能エネルギを利用した発電は、気象条件に依存するため、発電量が変動し安定しないことがある。このような変動に対し、発電出力を平準化するシステムとして圧縮空気エネルギ貯蔵(Compressed Air Energy Storage:CAES)システムが知られている。
【0003】
このCAESシステムを利用した圧縮空気エネルギ貯蔵装置(CAES装置)は、電気エネルギを圧縮空気として蓄圧タンクに蓄え、電力が必要な時に圧縮空気により膨張機を駆動して発電機を動作させ、電気エネルギを生成して出力を平準化する。
【0004】
こうしたCAES装置において、例えば特許文献1には、電力変動の周期に応じて大きさの異なるタンクに圧縮空気を貯蔵する圧縮空気エネルギ貯蔵装置が開示されている。特許文献2には、圧縮空気エネルギ貯蔵装置において、所定の圧力より低圧の圧縮空気は膨張機を通さずに排気することで、膨張機の運転効率を向上させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6368577号公報
【特許文献2】特開2017-8867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
工場や事業所での炭素中立の実現を目的として再生可能エネルギ発電が導入される際、再生可能エネルギの主電源化のために電力平準化技術、及びエネルギ需給調整技術が求められる。例えば、太陽光発電装置で発電する場合、日中の余剰電力が発生する時間帯にCAES装置では圧縮機を運転して圧縮空気を蓄圧しておくことで、エネルギを貯蔵する。但し、日中は工場内の生産機器の稼働が多く、発電量は多いものの電力使用量も多い。そのため、日中の工場の電力需要を満たしつつ効率的にエネルギを貯蔵し、発電量の少ない時間帯への電力シフト(電力平準化)を効果的に行うために改善の余地がある。
【0007】
本発明の目的は、工場の電力需給調整により合理的に電力平準化を図ることができる圧縮空気エネルギ貯蔵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、電動機により駆動される圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された圧縮空気を貯蔵する蓄圧タンクと、前記蓄圧タンクに貯蔵された前記圧縮空気により駆動される膨張機と、前記膨張機により駆動される発電機と、空気圧で駆動される空圧機器に前記圧縮空気を供給する空圧供給配管とを備え、前記圧縮機により、前記空圧機器を駆動する空圧使用圧力より高く設定した所定圧力を超える圧力まで空気を圧縮し、前記所定圧力を超える圧縮空気を前記膨張機に供給して発電し、前記所定圧力以下の圧縮空気を、前記空圧供給配管を介して前記空圧機器に供給する圧縮空気エネルギ貯蔵装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、工場の電力需給調整により合理的に電力平準化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係るCAES装置の模式図
図2】本発明の第2実施形態に係るCAES装置の模式図
図3】本発明の第3実施形態に係るCAES装置の模式図
図4】本発明の第4実施形態に係るCAES装置の模式図
図5】本発明の第5実施形態に係るCAES装置の模式図
図6】本発明の第6実施形態に係るCAES装置の模式図
図7】本発明の第7実施形態に係るCAES装置の模式図
図8】本発明の第8実施形態に係るCAES装置の模式図
図9】本発明の第9実施形態に係るCAES装置の模式図
図10】本発明の第10実施形態に係るCAES装置の模式図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
(第1実施形態)
(1-1)CAES装置
図1は本発明の第1実施形態に係るCAES装置の模式図である。CAES装置1は、太陽光発電装置2や風力発電装置3等の再生エネルギ発電装置が接続された送配電系統5の電力(グリッド電力)を平準化する装置である。再生エネルギ発電装置は、例えば工場Mに電力を供給可能である。工場Mの電力使用量に対して再生可能エネルギ発電装置の発電量が不足する場合、工場Mは不足分をグリッド電力で補う。再生エネルギ発電装置はまた、パワーコンディショナ4を介して送配電系統5に接続する。CAES装置1は、再生エネルギ発電装置の発電量が工場Mの電力使用量に対して多いときに、一部のグリッド電力を圧縮空気のエネルギとして貯蔵する(充電する)。また、CAES装置1は、再生エネルギ発電装置の発電量が工場Mの電力使用量に対して少ないときに、貯蔵した圧縮空気で発電して送配電系統5に電力を戻す(放電する)。また、CAES装置1は、工場Mにおいて空気圧で駆動される空圧機器M1に対して圧縮空気を供給可能である。
【0013】
本実施形態のCAES装置1は、圧縮機-膨張機ユニット10、蓄熱ユニット20、及び空圧供給配管30を含んで構成される。圧縮機-膨張機ユニット10は、モータ(電動機)11、圧縮機12、蓄圧タンク13、膨張機14、発電機15を備える。蓄熱ユニット20は、水等の蓄熱媒体を含む蓄熱タンク21,22、熱交換器24,25を備える。
【0014】
CAES装置1は、圧縮機12により空圧機器M1を駆動する空圧使用圧力P1(例えば0.5MPa程度)より高く設定した所定圧力P2(例えば0.6MPa程度,P1<P2)を超える圧力まで空気を圧縮し、所定圧力P2を超える圧縮空気は膨張機14に供給して発電し、所定圧力P2以下の圧縮空気は空圧供給配管30を介して空圧機器M1に供給する。所定圧力P2には、範囲を設けても良い。但し、所定圧力P2の下限値は空圧使用圧力P1より高く、所定圧力P2の上限値は貯蔵圧力P3よりも低く設定される。貯蔵圧力P3は、蓄圧タンク13のタンク内圧力の仕様上の上限値である。
【0015】
(1-1a)圧縮機-膨張機ユニット
モータ11は、圧縮機12を駆動する原動機である。モータ11は、本実施形態のCAES装置1には複数備わっており、図1では2つのモータ11a,11bを図示してある。モータ11a,11bは、送配電系統5にパワーコンディショナ16を介して接続する。
【0016】
圧縮機12は、モータ11により駆動されて空気を圧縮する回転機械である。圧縮機12は、本実施形態のCAES装置1には複数備わっており、図1では低圧圧縮機である圧縮機12a、及び高圧圧縮機である圧縮機12bの2つの圧縮機を図示してある。圧縮機12aの吸入口は大気中で開口し、圧縮機12aの吐出口は配管Lc1を介して圧縮機12bの吸入口に接続する。圧縮機12bの吐出口は、配管Lc2を介して熱交換器24に接続し、熱交換器24を経由して更に配管系統Lを介して蓄圧タンク13に接続する。圧縮機12aの回転軸はモータ11aの出力軸に機械的に連結されており、大気を吸い込んで圧縮する低段側圧縮行程を担う。圧縮機12bの回転軸はモータ11aの出力軸に機械的に連結されており、圧縮機12aで圧縮された圧縮空気を更に圧縮する高段側圧縮行程を担う。
【0017】
圧縮機-膨張機ユニット10では、これら圧縮機12a,12bにより多段圧縮が行われ、圧縮機12a,12bで圧縮された圧縮空気は、熱交換器24を介して蓄圧タンク13に貯蔵される。蓄圧タンク13は、本実施形態のCAES装置1には複数備わっており、図1では3つの蓄圧タンク13a-13cを図示してある。前述した配管系統Lは、複数の配管L1-L6を含む。配管L4は熱交換器24の圧縮空気の出口に接続され、配管L5は熱交換器25の圧縮空気の入口に接続され、配管L6は配管L4,L5を接続している。配管L1は蓄圧タンク13aを、配管L2は蓄圧タンク13bを、配管L3は蓄圧タンク13cを、それぞれ配管L6に接続している。この配管系統Lにより、蓄圧タンク13a-13cが、熱交換器24,25に並列に接続される。
【0018】
膨張機14は、蓄圧タンク13に貯蔵された圧縮空気により駆動される回転機械である。膨張機14は、本実施形態のCAES装置1には複数備わっており、図1では蓄圧タンク13からの圧縮空気で駆動される高圧膨張機である膨張機14a、高圧膨張機14aから吐出された圧縮空気で駆動される低圧膨張機である膨張機14bの2つの膨張機を図示してある。膨張機14aの吸入口には熱交換器25及び配管Le1を介して蓄圧タンク13が接続し、膨張機14aの吐出口は配管Le2を介して膨張機14bの吸入口に接続する。膨張機14bの吐出口は大気中で開口する。膨張機14aは高段側膨張行程を担い、膨張機14bは低段側膨張行程を担う。圧縮機-膨張機ユニット10では、これら膨張機14a,14bにより多段膨張が行われ、膨張機14bから吐出された空気は大気に放出される。
【0019】
発電機15は、膨張機14により駆動されて発電する。発電機15は、本実施形態のCAES装置1には複数備わっており、図1では膨張機14aで駆動される発電機15a、膨張機14bで駆動される発電機15bの2つの発電機を図示してある。発電機15aの回転軸は膨張機14aの出力軸に機械的に連結されており、発電機15bの回転軸は膨張機14bの出力軸に機械的に連結されている。また、発電機15a,15bは、パワーコンディショナ17を介して、送配電系統5に接続される。発電機15a,15bは、膨張機14a,14bにより駆動されて発電(電力再生)し、再生した電力を送配電系統5に戻す。
【0020】
(1-1b)蓄熱ユニット
蓄熱ユニット20では、圧縮機12で圧縮された圧縮空気の熱が、熱交換器24で蓄熱タンク22からの蓄熱媒体に回収される。熱交換器24で昇温した高温の蓄熱媒体は、蓄熱タンク21に貯蔵される。蓄熱タンク21に貯蔵される高温の蓄熱媒体は熱交換器25で圧縮空気に放熱し、熱交換器25で降温した低温の蓄熱媒体が蓄熱タンク22に戻る。蓄熱ユニット20にはポンプ28,29が備わっており、ポンプ28,29により蓄熱媒体が移送されて蓄熱ユニット20を循環する。
【0021】
(1-1c)空圧供給配管
空圧供給配管30は、空気圧で駆動される空圧機器M1にCAES装置1から圧縮空気を供給する配管である。空圧機器M1は、例えば工場Mで使用されるエア駆動式の機器であり、工場に設置された空圧源としての圧縮機X(不図示)で生成されて工場内のエア配管から供給される圧縮空気で駆動される。本実施形態において、空気供給配管30は、例えば工場内のエア配管に圧縮機Xと並列に接続され、圧縮機Xと共に又は圧縮機Xに代わって空圧機器M1に圧縮空気を供給することができる。
【0022】
本実施形態において、空圧供給配管30は、蓄圧タンク13と空圧機器M1(工場Mのエア配管)とを接続する配管31-34を含んで構成される。配管31は蓄圧タンク13aに接続する配管L1に、配管32は蓄圧タンク13bに接続する配管L2に、配管33は蓄圧タンク13cに接続する配管L3に接続する。配管31-33は合流し、配管34を介して空圧機器M1に接続する。
【0023】
なお、配管31にはバルブV31が、配管32にはバルブV32が、配管33にはバルブV33が、それぞれ備えられている。また、前述した配管L4にはバルブVL4が、配管L5にはバルブVL5が、それぞれ備えられている。また、前述した配管L1(配管31の分岐部よりも蓄圧タンク13aから遠い部位)にはバルブVL1が設けられている。同様に、配管L2(配管32の分岐部よりも蓄圧タンク13bから遠い部位)にはバルブVL2が、配管L3(配管33の分岐部よりも蓄圧タンク13cから遠い部位)にはバルブVL3が、それぞれ設けられている。これらバルブV31-V33,VL1-VL5は、それぞれ対応する配管を開閉する開閉弁であり、例えば電磁駆動式とすることにより制御装置(不図示)により開閉制御可能であり、手動開閉弁を採用することもできる。
【0024】
また、配管31には圧力センサS31が、配管32には圧力センサS32が、配管33には圧力センサS33が、配管34には圧力センサS34が、それぞれ備えられている。また、前述した配管Lc1には圧力センサScが、配管Le2には圧力センサSeが、それぞれ備えられている。これら圧力センサS31-S34,Sc,Seは、それぞれ対応する配管の圧力を検出する圧力センサであり、これら圧力センサで検出される圧力によりCAES装置1の系統の各部の圧力をモニタリングすることができ、またこれら圧力センサで検出される圧力を基に制御装置(不図示)によりバルブV31-V33,VL1-VL5を自動開閉制御できるようにすることもできる。
【0025】
(1-2)基本動作
CAES装置1の基本動作、具体的には充電動作、放電動作、空圧供給動作について順次説明する。
【0026】
(1-2a)充電動作
圧縮空気を生成して貯蔵する充電動作の際、CAES装置1は以下のように動作する。充電動作時は、典型的には、空圧供給配管30のバルブV31-V33、及び熱交換器25の配管L5のバルブVL5は閉じておく。また、熱交換器24の配管L4のバルブVL4は開けておく。
【0027】
まず、モータ11a,11bが送配電系統5からの入力電力により駆動される。モータ11a,11bにより圧縮機12a,12bが駆動され、圧縮機12a,圧縮機12bにより2段圧縮が行われる。圧縮機12aでは、吸入口から大気が吸入されて1段目の断熱圧縮が行われる。圧縮機12bでは、圧縮機12aの吐出口から吐出される圧縮空気が吸入されて2段目の断熱圧縮が行われ、高圧で高温の圧縮空気が吐出される。この高温高圧の圧縮空気は熱交換器24に流入し、蓄熱タンク22から熱交換器24に供給される低温の蓄熱媒体と熱交換する。この熱交換により低温の蓄熱媒体は高温となり、高温側の蓄熱タンク21に貯蔵される。一方、圧縮空気は温度を低下させ、蓄圧タンク13に流入し貯蔵される。
【0028】
その際、圧縮空気は、例えば蓄圧タンク13a,13b,13cの順に貯蔵される。すなわち、蓄圧タンク13a,13b,13cがいずれも所定の貯蔵圧力P3(例えば1.2MPa程度,P1<P2<P3)未満である場合、蓄圧タンク13b,13cのバルブVL2,VL3を閉じ、蓄圧タンク13aのバルブVL1を開き、蓄圧タンク13aに圧縮空気を送り込む。その後、圧力センサS31で検出される蓄圧タンク13aの圧力が貯蔵圧力P3に達したら、蓄圧タンク13a,13cのバルブVL1,VL3を閉じ、蓄圧タンク13bのバルブVL2を開き、圧縮空気の貯蔵先を蓄圧タンク13bに切り替える。圧力センサS32で検出される蓄圧タンク13bの圧力が貯蔵圧力P3に達したら、蓄圧タンク13a,13bのバルブVL1,VL2を閉じ、蓄圧タンク13cのバルブVL3を開き、圧縮空気の貯蔵先を蓄圧タンク13cに切り替える。圧力センサS33で検出される蓄圧タンク13cの圧力が貯蔵圧力P3に達したら、バルブVL3を閉じ、蓄圧タンク13cへの圧縮空気の貯蔵を停止する。
【0029】
以上の動作により、グリッド電力の一部が圧縮空気や蓄熱媒体のエネルギに変換されてCAES装置1に貯蔵される(充電される)。
【0030】
(1-2b)放電動作
圧縮空気で発電機を駆動し発電する放電動作の際、CAES装置1は以下のように動作する。放電動作時は、典型的には、空圧供給配管30のバルブV31-V33、及び熱交換器24の配管L4のバルブVL4は閉じておく。また、熱交換器25の配管L5のバルブVL5は開けておく。
【0031】
まず、蓄圧タンク13に貯蔵された圧縮空気が熱交換器25に供給される。その際、高圧の蓄圧タンクの圧縮空気が優先される。いずれの蓄圧タンクも貯蔵圧力P3である場合、所定の順序(例えば蓄圧タンク13a,13b,13cの順)で圧縮空気が供給される。例えば、蓄圧タンク13a,13b,13cがいずれも貯蔵圧力P3である場合、蓄圧タンク13b,13cのバルブVL2,VL3を閉じ、蓄圧タンク13aのバルブVL1を開き、蓄圧タンク13aの圧縮空気を熱交換器25に送り込む。その後、圧力センサS31で検出される蓄圧タンク13aの圧力が所定圧力P2まで低下したら、蓄圧タンク13a,13cのバルブVL1,VL3を閉じ、蓄圧タンク13bのバルブVL2を開き、熱交換器25への圧縮空気の供給源を蓄圧タンク13bに切り替える。圧力センサS32で検出される蓄圧タンク13bの圧力が所定圧力P2まで低下したら、蓄圧タンク13a,13bのバルブVL1,VL2を閉じ、蓄圧タンク13cのバルブVL3を開き、熱交換器25への圧縮空気の供給源を蓄圧タンク13cに切り替える。圧力センサS33で検出される蓄圧タンク13cの圧力が所定圧力P2まで低下したら、バルブVL3を閉じ、蓄圧タンク13cから熱交換器25への圧縮空気の供給を停止する。
【0032】
蓄圧タンク13から供給される圧縮空気は熱交換器25に流入し、蓄熱タンク21から熱交換器25に供給される高温の蓄熱媒体と熱交換する。この熱交換により高温の蓄熱媒体は低温となり、低温側の蓄熱タンク22に貯蔵される。一方、圧縮空気は温度を上昇させ、膨張機14aに吸入されて1段目の断熱膨張をし、膨張機14aを駆動する。膨張機14aで断熱膨張した圧縮空気は、膨張機14bに吸入されて2段目の断熱膨張をし、膨張機14bを駆動する。膨張機14bで断熱膨張した低温低圧の空気は、膨張機14bの吐出口から大気中に放出される。圧縮空気の2段膨張により膨張機14a,14bが駆動されると、膨張機14a,14bによりそれぞれ発電機15a,15bが駆動され、発電機15a,15bの発電出力がパワーコンディショナ17を介して送配電系統5に供給される。
【0033】
以上の動作により、CAES装置1に貯蔵された圧縮空気エネルギが再生され、グリッド電力に戻される(放電される)。
【0034】
(1-2c)空圧供給動作
所定圧力P2程度の圧縮空気を空圧機器M1に供給する空圧供給動作の際、CAES装置1は以下のように動作する。
【0035】
空圧供給動作の際、例えば、蓄圧タンク13a-13cのうち所定圧力P2(原則的には空圧使用圧力P1以上)まで圧力が低下した蓄圧タンクから順番に空圧機器M1に圧縮空気を供給する。または所定圧力P2程度の蓄圧タンクが複数ある場合、圧力の低い蓄圧タンクから優先して空圧機器M1に圧縮空気を供給する。
【0036】
例えば蓄圧タンク13a,13bの圧力が貯蔵圧力P3に近い高圧で、蓄圧タンク13cが所定圧力P2に近い圧力である場合、まず蓄圧タンク13cに対応する空圧供給配管30の配管33のバルブV33を開け、蓄圧タンク13cの配管L3のバルブVL3を閉じ、蓄圧タンク13cに貯蔵された圧縮空気を空圧機器M1へ供給する。その際は、空圧供給配管30の蓄圧タンク13a,13bに対応するバルブV31,V32は閉じておく。このように、バルブV31-V33,VL1-VL3の開閉の切り替えにより、所定圧力P2程度の圧縮空気を蓄圧タンク13a-13cから適宜空圧機器M1に供給する。
【0037】
なお、本実施形態のCAES装置1のように複数の蓄圧タンクを備える場合、典型的には任意の1つの蓄圧タンクから空圧機器M1に圧縮空気を供給する。例えば蓄圧タンク13cから空圧機器M1に圧縮空気を供給し、蓄圧タンク13cの圧力が空圧使用圧力P1を下回った場合、蓄圧タンク13a,13bのいずれかの圧力が所定圧力P2程度であれば、バルブ操作により空圧機器M1に対する圧縮空気の供給元を蓄圧タンク13a又は蓄圧タンク13bに切り替える。
【0038】
(1-3)運転モード
CAES装置1の運転モードについて説明する。
【0039】
(1-3a)充電のみを行う運転モード
充電のみを行う運転モードでは、CAES装置1は圧縮空気を生成して貯蔵する上記充電動作のみを行う。
【0040】
(1-3b)放電のみを行う運転モード
放電のみを行う運転モードでは、CAES装置1は圧縮空気で発電機を駆動し発電する上記放電動作のみを行う。
【0041】
(1-3c)空圧供給のみを行う運転モード
空圧供給のみを行う運転モードでは、CAES装置1は空圧供給動作のみを行う。
【0042】
(1-3d)充電と空圧供給を同時に行う運転モード
充電と空圧供給を同時に行う運転モードでは、CAES装置1は上記充電動作と空圧供給動作を同時に行う。その際、充電動作と空圧供給動作には異なる蓄圧タンクを使用する。
【0043】
例えば、蓄圧タンク13aが貯蔵圧力P3付近の高圧、蓄圧タンク13b,13cが所定圧力P2程度である場合、圧縮機12a,12bで圧縮される圧縮空気は、例えばタンク内圧力が所定圧力P2まで低下している蓄圧タンク13bに貯蔵する。また、空圧供給には、タンク内圧力が所定圧力P2まで低下しており、かつ充電動作で使用する蓄圧タンク13bとは別の蓄圧タンク13cを用いる。蓄圧タンク13cの圧力は空圧供給により徐々に低下していく。蓄圧タンク13cの圧力が空圧使用圧力P1まで低下すると、蓄圧タンク13cによる空圧供給はそれ以上継続できないため、圧縮空気の供給源を切り替えて蓄圧タンク13bから空圧機器M1に圧縮空気を供給する。同時に、圧縮機12a,12bで圧縮される圧縮空気の貯蔵先を、蓄圧タンク13bから蓄圧タンク13cに切り替える。
【0044】
(1-3e)放電と空圧供給を同時に行う運転モード
放電と空圧供給を同時に行う運転モードでは、CAES装置1は上記放電動作と空圧供給動作を同時に行う。その際、放電動作と空圧供給動作には異なる蓄圧タンクを使用する。
【0045】
例えば、蓄圧タンク13aが貯蔵圧力P3付近の高圧、蓄圧タンク13b,13cが所定圧力P2程度である場合、膨張機14a,14bにはタンク内圧力が高い蓄圧タンク13aから圧縮空気を供給する。また、空圧供給には、例えばタンク内圧力が所定圧力P2まで低下している蓄圧タンク13cを用いる。蓄圧タンク13cの圧力は空圧供給により徐々に低下していく。蓄圧タンク13cの圧力が空圧使用圧力P1まで低下すると、蓄圧タンク13cによる空圧供給はそれ以上継続できないため、圧縮空気の供給源を切り替えて蓄圧タンク13bから空圧機器M1に圧縮空気を供給する。
【0046】
(1-4)電力需給調整
CAES装置1の運転モード切替と電力需給調整について説明する。
【0047】
(1-4a)発電量が電力需要を上回っている場合
送配電系統5に接続する太陽光発電装置2や風力発電装置3等の再生エネルギ発電装置の発電量が工場Mの電力使用量を上回り、余剰電力が発生している場合、CAES装置1は充電を行う運転モードで運転され、余剰電力が圧縮空気として貯蔵される。この際、空圧機器M1の運転要求が大きく、空圧使用量が多い場合には、CAES装置1は充電と空圧供給を同時に行う運転モードで運転される。空圧機器M1の運転要求は、工場Mから受信した監視データに基づいて操作者又は制御装置が判断し、手動又は自動で運転モードが切り替えられる。空圧機器M1で使用される圧縮空気を蓄圧タンク13から供給することで、工場Mにおいて圧縮空気を作るための電力需要が減少し、CAES装置1において工場Mの使用電力の10-20%に相当する充電量が増加する。
【0048】
例えば、工場Mの生産設備の休止中等、空圧機器M1の運転要求がない場合には、充電のみを行う運転モードでCAES装置1を運転する。CAES装置1で貯蔵する圧縮空気は、放電のみでなく空圧機器M1で空圧としても使用され得るため、電力需要の小さい期間に圧縮空気が十分に貯蔵されるようにすることが望ましい。例えば、太陽光発電装置2の発電量が大きく、余剰電力が日中に発生する場合等は、夜間にCAES装置1を放電モードで運転することで、昼夜の電力使用量を平準化でき、日中の送配電系統5の電力の使用量低減により電力コストも削減される。
【0049】
(1-4b)発電量が電力需要を下回っている場合
送配電系統5に接続する太陽光発電装置2及び風力発電装置3等の再生エネルギ発電装置の発電量が工場Mの電力使用量より少ない場合、CAES装置1は放電を行う運転モードで運転され、圧縮空気から電力を作り出して送配電系統5に供給する。この際、空圧機器M1の運転要求が大きく、空圧使用量が多い場合には、CAES装置1は放電と空圧供給を同時に行う運転モードで運転される。空圧機器M1で使用される圧縮空気を蓄圧タンク13から供給することで、工場Mにおいて圧縮空気を作るための電力需要を減少させることができ、CAES装置1において工場Mの使用電力の10-20%に相当する充電量を増加させることができる。
【0050】
空圧機器M1の運転要求がない場合には、CAES装置1は放電のみを行う運転モードで運転される。
【0051】
(1-4c)電力需給が釣り合っている場合
送配電系統5に接続する太陽光発電装置2及び風力発電装置3等の再生エネルギ発電装置の発電量と工場Mの電力使用量が同じ又はほぼ同じ場合、CAES装置1は空圧供給のみを行う運転モードで運転され、空圧機器M1に圧縮空気を供給する。工場Mにおいて圧縮空気を作るための電力需要がなくなるため、再生エネルギ発電装置の発電量と工場Mの電力使用量は、工場Mにおいて圧縮空気を作る場合に比べて10-20%程度低い値でバランスし、再生可能エネルギ発電装置の発電規模を小さくできる。
【0052】
(1-5)効果
例えば、炭素中立の実現を目的として工場Mといった施設で再生可能エネルギ発電を導入する際、再生可能エネルギの主電源化のために電力平準化技術、及びエネルギ需給調整技術が求められる。例えば、太陽光発電装置2を用いる場合、余剰電力が発生し得る日中にCAES装置1では圧縮機12を駆動して圧縮空気を貯蔵しておくことで、余剰エネルギを貯蔵する。但し、日中は工場Mの生産機器等の稼働率が高く、発電量は多いものの工場Mの電力使用量も多い。発電量の少ない時間帯への電力シフト(電力平準化)を効果的に行うべく日中のエネルギ貯蔵量を増加させるためには、再生エネルギ発電装置による発電量の向上を図るのみでなく、需要側である工場Mの電力使用量を抑制することが合理的である。
【0053】
それに対し、本実施形態においては、上記の通り工場Mで使用する空圧機器M1にCAES装置1から圧縮空気を供給することで、工場Mにおいて空圧供給用の圧縮機(不図示)の駆動電力の分だけ工場Mの電力需要を減少させることができる。一般に工場で動力源として使用される圧縮空気を供給するための空圧システムの電力使用量は工場の電力使用量の10-20%程度と言われている。従って、本実施形態のようにCAES装置1に貯蔵する圧縮空気を工場Mの空圧システムに活用することにより、工場Mにおいて空圧供給用の電力需要を削減しつつも必要な空圧供給量を確保でき、工場Mの電力使用量を大きく低減することができる。
【0054】
このように、CAES装置1は、充放電しつつも空圧供給により工場Mの電力需要を調整し、余剰電力の貯蔵、調整発電、及びデマンドリスポンスによる需給調整を行うことができる。CAES装置1によれば、例えば日中の工場Mの電力需要を抑制する等、工場Mの電力需給調整により合理的に電力平準化を図ることができ、再生可能エネルギの主電源化、グリッド電力の使用量の削減への貢献が期待される。
【0055】
(第2実施形態)
図2は本発明の第2実施形態に係るCAES装置の模式図である。図2において説明済みの実施形態と同一の又は対応する要素には既出図面と同一符号を付して説明を適宜省略する。
【0056】
(2-1)CAES装置
本実施形態のCAES装置1が第1実施形態と相違する点は、空圧供給配管30が、低圧段の膨張機14a及び高圧段の膨張機14bを接続する配管Le2と空圧機器M1とを接続する配管35を含んで構成される点である。本実施形態において、配管35は配管Le2,34を接続している。また、配管35にはバルブV35が、配管Le2(配管35の分岐部に対し低圧段の膨張機14b側の部位)にはバルブVeが、それぞれ設けられている。バルブV35,Veは、バルブV31等と同様の開閉弁である。圧力センサSeは、配管Le2における配管35の分岐部に対し高圧段の膨張機14a側の部位に設けられている。その他の第2実施形態のCAES装置1のハードウェア構成は、第1実施形態と同様である。
【0057】
(2-2)基本動作
第2実施形態のCAES装置1の動作について説明する。本実施形態においても充電動作と放電動作は第1実施形態と同様であるため、ここでは空圧供給動作について説明する。
【0058】
本実施形態においても、第1実施形態と同様、所定圧力P2まで圧力が低下した蓄圧タンクから順次空圧機器M1に空圧供給をすることができ、また所定圧力P2程度の蓄圧タンクが複数ある場合、圧力の低い蓄圧タンクから優先して空圧機器M1に圧縮空気を供給することができる。
【0059】
加えて、本実施形態においては、空圧供給配管30に配管35が含まれることにより、同一の蓄圧タンクから供給される圧縮空気で、放電動作と空圧供給動作を同時に行うことができる。例えば蓄圧タンク13a-13cがいずれも貯蔵圧力P3に近い高圧であって所定圧力P2程度まで降圧した蓄圧タンクがない場合、バルブV31-V33,Ve,VL4を閉じ、バルブVL5,V35を開けた状態で、バルブVL1-VL3のいずれかを開放する。これにより、蓄圧タンク13a-13cのいずれかから高圧の圧縮空気が1段目の膨張機14aに供給され、発電機15aにより発電が行われ放電できる。膨張機14aを駆動した圧縮空気は断熱膨張により所定圧力P2程度に降圧し、膨張機14aから吐出されてバルブV35を経由して配管35を通り空圧機器M1に供給される。本実施形態では、膨張機14a,14bのうち膨張機14aのみで1段膨張による放電動作が行われ、併せて1段膨張により降圧した圧縮空気が空圧機器M1に供給される。
【0060】
(2-3)運転モード
本実施形態においては、充電、放電、空圧供給のいずれかのみを行う運転モード、及び充電と空圧供給を同時に行う運転モードについては、第1実施形態と同様である。従って、ここでは放電と空圧供給を同時に行う運転モードについて説明する。
【0061】
蓄圧タンク13a-13cいずれかが貯蔵圧力P3付近の高圧で、その他の蓄圧タンクのいずれかが所定圧力P2程度に降圧している場合、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、貯蔵圧力P3付近の圧縮空気で膨張機14a,14bを駆動しつつ、所定圧力P2程度の圧縮空気を蓄圧タンク13から空圧機器M1に供給することができる。
【0062】
加えて、本実施形態の場合、前述した通り、バルブVeを閉めてバルブV35を開け、同一の蓄圧タンクからの圧縮空気を用いて1段目の膨張機14aで膨張し降圧した圧縮空気を配管35を介して空圧機器M1に供給することができる。その際、圧力センサSeで検出される1段膨張後の圧力が所定圧力P2程度まで降圧しない場合には、バルブVeは全閉にせずに開度を調整して開くことで、膨張機14bを駆動して発電機15bの回転数を調整しながら発電しつつ、空圧供給用の圧縮空気の圧力調整をすることもできる。
【0063】
(2-4)電力需給調整
本実施形態のCAES装置1の運転モード切替と電力需給調整について説明する。
【0064】
(2-4a)発電量が電力需要を上回っている場合
送配電系統5に接続する再生エネルギ発電装置の発電量が工場Mの電力使用量を上回り、余剰電力が発生している場合、CAES装置1は充電を行う運転モードで運転される。この際、空圧機器M1の運転要求が大きく空圧使用量が多い場合には、CAES装置1は充電と空圧供給を同時に行う運転モードで運転され、空圧機器M1で使用される空圧は蓄圧タンク13から膨張機14aを通さずに供給する。
【0065】
(2-4b)発電量が電力需要を下回っている場合
送配電系統5に接続する再生エネルギ発電装置の発電量が工場Mの電力使用量より少ない場合、CAES装置1は放電を行う運転モードで運転され、圧縮空気から電力を作り出して送配電系統5に供給する。この際、空圧機器M1の運転要求が大きく空圧使用量が多い場合には、CAES装置1は放電と空圧供給を同時に行う運転モードで運転される。
【0066】
ここで、所定圧力P2程度まで降圧した蓄圧タンクがある場合、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、所定圧力P2程度の蓄圧タンクから膨張機14aを通さずに空圧機器M1に空圧供給を行い、別の貯蔵圧力P3に近い蓄圧タンクから膨張機14a,14bに圧縮空気を供給し発電機15a,15bを駆動する。
【0067】
本実施形態においては、所定圧力P2程度まで降圧した蓄圧タンクがない場合、蓄圧タンク13a-13cのうちの1つから貯蔵圧力P3に近い高圧の圧縮空気を膨張機14aに供給し、1段目の膨張機14aを駆動して発電しつつ、膨張機14aで降圧した圧縮空気を配管35により空圧機器M1に供給する。例えば蓄圧タンク13aから圧縮空気を供給する場合、圧力センサS31で蓄圧タンク13aの圧力を監視しながら、蓄圧タンク13aの圧力が所定圧力P2まで降圧したところで、バルブVL1を閉じてバルブV31を開け、所定圧力P2まで降圧した圧縮空気を配管31を介して蓄圧タンク13aから空圧機器M1に膨張機14aを通さずに供給するモードに切り替える。同時に、別の蓄圧タンク13b又は13cから膨張機14a,14bに圧縮空気を供給し、発電機15a,15bを駆動する。
【0068】
(2-5)効果
本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。加えて、本実施形態においては、膨張機14aを駆動して膨張及び発電を行いながら、配管35により空圧供給する運転モードを行うことができる。この運転モードでは、発電量は低下するが、高圧の蓄圧タンク13から空圧機器M1の空圧使用圧力P1まで減圧する際に、貯蔵した圧縮空気のエネルギを損失することなく膨張機14aで回収することができる。そのため、空圧供給によるエネルギ損失を抑え、第1実施形態と比較してもシステム効率(電力回収効率)を向上させることができる。より多くの発電量が必要な場合は、高圧の蓄圧タンクで膨張機14a,14bを駆動し、所定圧力P2程度に降圧した別の蓄圧タンクから空圧供給する運転モードに切り替えるが、その際は、必票発電量、空圧需要、充電運転予測(再生可能エネルギ発電装置の発電量の予測)等を組み込んだ運転制御により運転モードを切り替えることで、空圧供給を含めてCAES装置1のシステム効率(空圧/電力回収効率)を向上させ得る。
【0069】
以上のように、本実施形態によれば、蓄圧タンク13に貯蔵した圧縮空気を必要以上に減圧することなく発電と空圧供給のどちらにも使用でき、空圧供給を含めたシステム効率が高く、電力需給調整が可能なCAES装置を提供することができる。
【0070】
(第3実施形態)
図3は本発明の第3実施形態に係るCAES装置の模式図である。図3において説明済みの実施形態と同一の又は対応する要素には既出図面と同一符号を付して説明を適宜省略する。
【0071】
(3-1)CAES装置
本実施形態のCAES装置1が第1実施形態と相違する点は、空圧供給配管30が低圧段の圧縮機12a及び高圧段の圧縮機12bを接続する配管Lc1と空圧機器M1とを接続する配管36を含んで構成される点である。本実施形態において、配管36は配管Lc1,34を接続している。また、配管36にはバルブV36が、配管Lc1(配管36の分岐部に対し高圧段の圧縮機12b側の部位)にはバルブVcが、それぞれ設けられている。バルブV36,Vcは、バルブV31等と同様の開閉弁である。圧力センサScは、配管Lc1における配管36の分岐部に対し低圧段の圧縮機12a側の部位に設けられている。その他の第3実施形態のCAES装置1のハードウェア構成は、第1実施形態と同様である。
【0072】
(3-2)基本動作
第3実施形態のCAES装置1の動作について説明する。本実施形態においても充電動作と放電動作は第1実施形態と同様であるため、ここでは空圧供給動作について説明する。
【0073】
本実施形態においても、第1実施形態と同様、所定圧力P2まで圧力が低下した蓄圧タンクから順次空圧機器M1に空圧供給をすることができ、また所定圧力P2程度の蓄圧タンクが複数ある場合、圧力の低い蓄圧タンクから優先して空圧機器M1に圧縮空気を供給することができる。
【0074】
加えて、本実施形態においては、空圧供給配管30に配管36が含まれることにより、例えばバルブVcを閉じてバルブV36を開け、圧縮機12a,12bのうちの圧縮機12aのみを運転することにより、圧縮機12aで圧縮される圧縮空気を配管36に流し、蓄圧タンク13をバイパスして空圧機器M1に供給することができる。
【0075】
(3-3)運転モード
第1実施形態で実行可能な運転モードについては、本実施形態においても、バルブV36を閉じバルブVcを開けた状態で、第1実施形態と同様に行うことができる。その他、本実施形態においては、配管36を介して空圧供給のみを行う運転モード、充電動作を行いながら配管36を介して空圧供給を行う運転モード等を実施することができる。
【0076】
配管36を介して空圧供給のみを行う運転モードでは、前述したようにバルブVcを閉じバルブV36を開け、圧縮機12a,12bのうち1段目の圧縮機12aのみを駆動する。これにより、圧縮機12aで所定圧力P2程度に圧縮される圧縮空気を、圧力センサScで圧力を適宜監視しつつ、蓄圧タンク13に貯蔵することなく配管36を介して空圧機器M1に供給することができる。
【0077】
また、充電動作を行いながら配管36を介して空圧供給を行う運転モードでは、バルブVc,V36の双方を開け、圧縮機12a,12bを駆動する。これにより、圧縮機12aで所定圧力P2程度に圧縮された圧縮空気の一部を配管36に流して空圧機器M1に供給すると同時に、圧縮機12aから吐出される残りの圧縮空気を圧縮機12bで更に圧縮して蓄圧タンク13に貯蔵することができる。
【0078】
(3-4)電力需給調整
本実施形態のCAES装置1の運転モード切替と電力需給調整について説明する。
【0079】
(3-4a)発電量が電力需要を上回っている場合
送配電系統5に接続する再生エネルギ発電装置の発電量が工場Mの電力使用量を上回り、余剰電力が発生している場合、CAES装置1は充電を行う運転モードで運転される。この際、空圧機器M1の運転要求が大きく空圧使用量が多い場合には、CAES装置1は充電と空圧供給を同時に行う運転モードで運転される。充電と空圧供給を同時に行う運転モードにおいて、余剰電力の発生量が大きい場合は、圧縮機12a,12bは主に充電のために駆動する必要があるため、空圧機器M1への空圧供給は蓄圧タンク13により行う。余剰電力の発生量が小さい場合には、圧縮機12a,12bの双方を駆動する必要がないため、圧縮機12bを停止させると共に蓄圧タンク13から空圧機器M1への空圧供給を停止し、バルブV36を開け、圧縮機12aから吐出される所定圧力P2程度の圧縮空気を空圧機器M1に供給する。
【0080】
(3-4b)発電量が電力需要を下回っている場合
送配電系統5に接続する再生エネルギ発電装置の発電量が工場Mの電力使用量より少ない場合、CAES装置1は放電を行う運転モードで運転され、圧縮空気から電力を作り出して送配電系統5に供給する。この際、空圧機器M1の運転要求が大きく空圧使用量が多い場合には、CAES装置1は放電と空圧供給を同時に行う運転モードで運転される。
【0081】
ここで、所定圧力P2程度まで降圧した蓄圧タンクがある場合、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、所定圧力P2程度の蓄圧タンクから膨張機14aを通さずに空圧機器M1に空圧供給を行い、別の貯蔵圧力P3に近い蓄圧タンクから膨張機14a,14bに圧縮空気を供給し発電機15a,15bを駆動する。
【0082】
本実施形態においては、所定圧力P2程度まで降圧した蓄圧タンクがない場合、蓄圧タンク13a-13cのうちの1つ(例えば蓄圧タンク13a)から貯蔵圧力P3に近い高圧の圧縮空気を膨張機14a,14bに供給し、発電機15a,15bを駆動して発電する。同時に、圧縮機12aを起動してバルブV36を開け、圧縮機12aで圧縮した圧縮空気を配管36に流して空圧機器M1に供給する。膨張機14a,14bに圧縮空気を供給している蓄圧タンク13aの圧力を対応する圧力センサS31で監視しながら、蓄圧タンク13aが所定圧力P2まで降圧した時点でバルブV31を開け、蓄圧タンク13aから空圧機器M1に圧縮空気を供給する運転モードに切り替え、配管36のバルブV36を閉じて圧縮機12aを停止する。
【0083】
(3-5)効果
本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。加えて、本実施形態においては、圧縮機12aからの圧縮空気を配管36から空圧機器M1に供給する運転モードを行うことができる。圧縮機12aからの圧縮空気を配管36から空圧機器M1に供給する運転モードでは充電量は低下するが、圧縮機12aで大気を所定圧力P2程度まで圧縮すれば足りるため、空圧供給のためのエネルギ使用量を抑えることができ、高効率運転が可能となる。空圧供給によるエネルギ損失を抑えることができるので、CAES装置1のシステム効率(電力回収効率)が向上する。より多くの充電量が必要な場合は、蓄圧タンクから空圧供給するモードに切り替えるが、その際は必票充電量、空圧需要、充電運転予測等を組み込んだ運転制御により運転モードを切り替えることで、空圧供給を含めたシステム効率(空圧/電力回収効率)を向上させ得る。
【0084】
(第4実施形態)
図4は本発明の第4実施形態に係るCAES装置の模式図である。図4において説明済みの実施形態と同一の又は対応する要素には既出図面と同一符号を付して説明を適宜省略する。
【0085】
(4-1)CAES装置
本実施形態のCAES装置1が第1実施形態と相違する点は、圧縮空気を空圧機器M1に供給するための空圧供給ユニット40を備えている点である。本実施形態において、空圧供給ユニット40は、圧縮機12とは異なる空圧供給専用の空圧供給圧縮機41と、空圧供給圧縮機41と空圧供給配管30とを接続する配管42,43とを含んでいる。配管42は、空圧供給圧縮機41と空圧タンク44とを接続し、配管43は空圧タンク44と空圧供給配管30の配管34とを接続している。配管43にはバルブ45が設けられている。空圧供給圧縮機41は、圧縮機12a,12bと同じくグリッド電力で駆動されるモータ(電動機)46により駆動される。空圧供給ユニット40では、空圧供給圧縮機41で大気を吸入し、空圧機器M1の空圧使用圧力P1又は所定圧力P2まで大気を圧縮し、配管42を介して圧縮空気を空圧タンク44に送り、バルブ45の開閉により配管43を介して空圧機器M1に圧縮空気を供給する。その他の第4実施形態のCAES装置1のハードウェア構成は、第1実施形態と同様である。
【0086】
(4-2)基本動作
第4実施形態のCAES装置1の動作について説明する。本実施形態においても充電動作と放電動作は第1実施形態と同様であるため、ここでは空圧供給動作について説明する。
【0087】
本実施形態においても、第1実施形態と同様、所定圧力P2まで圧力が低下した蓄圧タンクから順次空圧機器M1に空圧供給をすることができ、また所定圧力P2程度の蓄圧タンクが複数ある場合、圧力の低い蓄圧タンクから優先して空圧機器M1に圧縮空気を供給することができる。
【0088】
加えて、本実施形態においては、蓄圧タンク13からの空圧供給の他に、空圧供給ユニット40からの空圧供給が可能である。空圧供給ユニット40から圧縮空気を空圧機器M1に供給する場合、バルブV31-V33を閉じて蓄圧タンク13からの空圧供給を遮断し、空圧供給ユニット40のバルブ45を開けて空圧供給圧縮機41を運転する。
【0089】
(4-3)運転モード
第1実施形態で実行可能な運転モードについては、本実施形態においても、バルブ45を閉じ空圧供給圧縮機41を停止した状態で、第1実施形態と同様に行うことができる。その他、本実施形態においては、空圧供給圧縮機41による空圧供給のみを行う運転モード、充電動作を行いながら空圧供給圧縮機41による空圧供給を行う運転モード等を実施することができる。
【0090】
まず、空圧供給圧縮機41による空圧供給のみを行う運転モードでは、圧縮機12a,12b及び膨張機14a,14bを停止させてバルブV31-V33を閉じた状態で、上記のように空圧供給ユニット40のバルブ45を開けて空圧供給圧縮機41を運転する。
【0091】
次に、充電動作を行いながら空圧供給圧縮機41による空圧供給を行う運転モードでは、バルブV31-V33を閉じた状態で、圧縮機12a,12bや空圧供給圧縮機41を駆動することで、圧縮機12a,12bによる圧縮空気を貯蔵する充電動作と、空圧供給ユニット40による空圧供給動作を同時に行うことができる。
【0092】
(4-4)電力需給調整
本実施形態のCAES装置1の運転モード切替と電力需給調整について説明する。
【0093】
(4-4a)発電量が電力需要を上回っている場合
送配電系統5に接続する再生エネルギ発電装置の発電量が工場Mの電力使用量を上回り、余剰電力が発生している場合、CAES装置1は充電を行う運転モードで運転される。この際、空圧機器M1の運転要求が大きく空圧使用量が多い場合には、CAES装置1は充電と空圧供給を同時に行う運転モードで運転される。充電と空圧供給を同時に行う運転モードにおいて、余剰電力の発生量が大きい場合は、圧縮機12a,12bは主に充電のために駆動する必要があるため、空圧機器M1への空圧供給は空圧供給ユニット40により行う。余剰電力の発生量が小さい場合には、圧縮機12a,12bの双方を駆動する必要がないため、空圧供給ユニット40による空圧供給を停止し、蓄圧タンク13による空圧供給に切り替える。蓄圧タンク13による空圧供給方法は、既に述べた通りである。蓄圧タンク13による空圧供給で足りる場合には空圧供給ユニット40を停止することで、空圧供給ユニット40の使用電力需要を抑えることができる。
【0094】
(4-4b)発電量が電力需要を下回っている場合
送配電系統5に接続する再生エネルギ発電装置の発電量が工場Mの電力使用量より少ない場合、CAES装置1は放電を行う運転モードで運転され、圧縮空気から電力を作り出して送配電系統5に供給する。この際、空圧機器M1の運転要求が大きく空圧使用量が多い場合には、CAES装置1は放電と空圧供給を同時に行う運転モードで運転される。
【0095】
ここで、所定圧力P2程度まで降圧した蓄圧タンクがある場合、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、所定圧力P2程度の蓄圧タンクから膨張機14aを通さずに空圧機器M1に空圧供給を行い、別の貯蔵圧力P3に近い蓄圧タンクから膨張機14a,14bに圧縮空気を供給し発電機15a,15bを駆動する。
【0096】
本実施形態においては、所定圧力P2程度まで降圧した蓄圧タンクがない場合、蓄圧タンク13a-13cのうちの1つ(例えば蓄圧タンク13a)から貯蔵圧力P3に近い高圧の圧縮空気を膨張機14a,14bに供給し、発電機15a,15bを駆動して発電する。同時に、空圧供給ユニット40を用い、空圧供給圧縮機41を起動してバルブ45を開け、空圧供給圧縮機41で圧縮した圧縮空気を配管43に流して空圧機器M1に供給する。膨張機14a,14bに圧縮空気を供給している蓄圧タンク13aの圧力を対応する圧力センサS31で監視しながら、蓄圧タンク13aが所定圧力P2まで降圧した時点でバルブV31を開け、蓄圧タンク13aから空圧機器M1に圧縮空気を供給する運転モードに切り替え、空圧供給ユニット40を停止する。
【0097】
(4-5)効果
本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。加えて、本実施形態においては、空圧供給ユニット40により空圧供給する運転モードを行うことができる。空圧供給ユニット40により空圧供給する運転モードではCAES1の電力需要が増加するが、空圧供給ユニット40は空圧機器M1への空圧供給専用機器であるため空圧供給に仕様を最適化でき、システム効率(電力回収効率)の低下を抑制することができる。
【0098】
(第5実施形態)
図5は本発明の第5実施形態に係るCAES装置の模式図である。図5において説明済みの実施形態と同一の又は対応する要素には既出図面と同一符号を付して説明を適宜省略する。
【0099】
本実施形態のCAES装置1が第1実施形態と相違する点は、蓄圧タンク13に接続し、蓄圧タンク13のタンク圧を上昇させる給水ポンプ50を備えた点である。図5では、給水ポンプ50により蓄圧タンク13cに注水する構成を例示しているが、蓄圧タンク13a-31cの少なくとも1つに給水ポンプ50から注水できる構成とすることができる。本実施形態においては、例えば空圧供給に用いたい蓄圧タンク13の圧力が所定圧力P2又は空圧仕様圧力P1に満たず、空圧機器M1に空圧供給できない場合に、給水ポンプ50により蓄圧タンク13に注水して蓄圧タンク13の内圧を上げ、所定圧力P2に満たない圧縮空気を昇圧して空圧機器M1に供給することができる。また、例えば空圧供給に伴って下がる蓄圧タンク13の圧力を圧力センサS31-S33で監視しながら、蓄圧タンク13の圧力が所定圧力P2又は空圧仕様圧力P1(又はこれら値にマージンを設けて設定した設定値)まで降下したら、給水ポンプ50を駆動して蓄圧タンク13の圧力を空圧供給可能な圧力に維持し、空圧供給を継続する構成とすることもできる。この場合、所定圧力P2又は空圧仕様圧力P1(又はこれら値にマージンを設けて設定した設定値)を閾値として、給水ポンプ50の駆動及び停止をフィードバック制御する構成とすることもできる。
【0100】
こうした給水ポンプ50を用いる蓄圧タンク13による空圧供給は、充電動作や放電動作と同時に行うこともできる。例えば、蓄圧タンク13a,13bが貯蔵圧力P3程度に高圧である一方で蓄圧タンク13cが所定圧力P2に満たない場合、蓄圧タンク13aを用いて放電しつつ、給水ポンプ50で昇圧しながら蓄圧タンク13cから空圧供給することができる。また、例えば、蓄圧タンク13b,13cが共に所定圧力P2に満たない場合、蓄圧タンク13bに圧縮空気を貯蔵しつつ、給水ポンプ50で昇圧しながら蓄圧タンク13cから空圧供給するといったこともできる。
【0101】
また、蓄圧タンク13の圧力が放電動作に使用可能な圧力に満たない場合に、蓄圧タンク13の圧力を放電動作に使用可能な圧力まで昇圧させるために給水ポンプ50を用いることも可能である。
【0102】
給水ポンプ50から蓄圧タンク13に注入した水は、蓄圧タンク13に圧縮空気を貯蔵する際には排水管(不図示)から適宜排水する。
【0103】
その他の第5実施形態のCAES装置1のハードウェア構成は、第1実施形態と同様である。給水ポンプ50を用いた上記の空圧供給動作や放電動作、またこれらに対応する運転モードに加え、第1実施形態で実施可能な基本動作や運転モード、電力需給調整等は本実施形態においても実施可能である。
【0104】
本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。加えて、本実施形態においては、上記の通り蓄圧タンク13の圧力が空圧供給可能な圧力に満たない場合でも、給水ポンプ50により蓄圧タンク13を昇圧して空圧供給を実施することができる。給水ポンプ50を駆動する運転モードではCAES1の電力需要が増加するが、給水ポンプ50は空圧機器M1への空圧供給専用機器であるため空圧供給に仕様を最適化でき、システム効率(電力回収効率)の低下を抑制することができる。
【0105】
(第6実施形態)
図6は本発明の第6実施形態に係るCAES装置の模式図である。図6において説明済みの実施形態と同一の又は対応する要素には既出図面と同一符号を付して説明を適宜省略する。
【0106】
(6-1)CAES装置
本実施形態のCAES装置1が第1実施形態と相違する点は、蓄圧タンク13が、低圧蓄圧タンク13Lと高圧蓄圧タンク13Hとを含んでいる点等である。低圧蓄圧タンク13Lは、配管LL,L30を介して低圧圧縮機である圧縮機12aの出口に接続されている。配管LLは低圧蓄圧タンク13Lと空圧供給配管30とを接続しており、配管L30は空圧供給配管30と圧縮機12aの出口とを接続している。高圧蓄圧タンク13Hは、配管LHを介して配管L6に接続されている。配管LHには、バルブVHが設けられている。高圧蓄圧タンク13Hが1つのみである場合、バルブVHは必ずしも必要ない。低圧蓄圧タンク13Lには圧縮機12aで圧縮された空圧使用圧力P1以上で所定圧力P2以下の圧縮空気が貯蔵され、高圧蓄圧タンク13Hには高圧圧縮機である圧縮機12bで圧縮された所定圧力P2を超える圧縮空気が貯蔵される。図6では低圧蓄圧タンク13L及び高圧蓄圧タンク13Hを各1つのみ図示しているが、それぞれ複数設けられ得る。高圧蓄圧タンク13Hは、第1実施形態の蓄圧タンク13(蓄圧タンク13a-13c)に相当する。そして、膨張機14には高圧蓄圧タンク13Hの所定圧力P2を超える圧縮空気が供給され、空圧機器M1には空圧供給配管30を介して低圧蓄圧タンク13Lの所定圧力P2以下の圧縮空気が供給される。空圧供給配管30には、バルブV30が設けられている。
【0107】
本実施形態において、配管LL,LHは接続されておらず、低圧蓄圧タンク13L及び高圧蓄圧タンク13Hは、互いに独立している。互いに独立しているとは、低圧蓄圧タンク13Lと高圧蓄圧タンク13Hとの間で、互いが貯蔵する圧縮空気の行き来がないことを意味する。本実施形態において、圧縮機12をバイパスして低圧蓄圧タンク13L及び高圧蓄圧タンク13H(配管LL,LH)を接続する配管はなく、低圧蓄圧タンク13L及び高圧蓄圧タンク13Hは圧縮機12を介して繋がってはいるが、低圧蓄圧タンク13L及び高圧蓄圧タンク13Hの間で圧縮空気が行き来することはない。つまり、低圧蓄圧タンク13Lは空圧供給動作専用であり、高圧蓄圧タンク13Hは充放電動作専用である。低圧蓄圧タンク13Lの貯蔵圧力(タンク内圧力の仕様上の上限値)は、高圧蓄圧タンク13Hの貯蔵圧力P3と同程度であっても良いが、所定圧力P2程度あれば足りる。その他の第6実施形態のCAES装置1のハードウェア構成は、第1実施形態と同様である。
【0108】
例えば、低圧圧縮機である圧縮機12aで圧縮した圧縮空気を低圧蓄圧タンク13Lに貯蔵し、低圧蓄圧タンク13Lから空圧機器M1に圧縮空気を供給する空圧供給設備E1が、工場Mに既存する場合がある。この場合には、既存の空圧供給設備E1を活用し、高圧圧縮機である圧縮機12bから後段の高圧設備E2(圧縮機12b、蓄熱ユニット20、高圧蓄圧タンク13H、膨張機14、発電機15等)を空圧供給設備E1に追加設置することで、本実施形態のCAES装置1を構築することができる。
【0109】
(6-2)基本動作
本実施形態のCAES装置1の基本動作、具体的には充電動作、放電動作、空圧供給動作について順次説明する。
【0110】
(6-2a)充電動作
圧縮空気を生成して貯蔵する充電動作の際、CAES装置1は以下のように動作する。充電動作時は、典型的には、熱交換器25の配管L5のバルブVL5は閉じておく。また、配管L4,LHのバルブVL4,VHは開けておく。高圧蓄圧タンク13Hの圧力は貯蔵圧力P3未満であるとする。この状態で送配電系統5からの入力電力によりモータ11a,11bを駆動し、圧縮機12a,12bを駆動することで、第1実施形態と同様に高圧蓄圧タンク13Hに圧縮空気が送り込まれる。その後、圧力センサ(図示省略)で検出される高圧蓄圧タンク13Hの圧力が貯蔵圧力P3に達したら、高圧蓄圧タンク13HのバルブVHを閉じ、モータ11bを停止させて高圧蓄圧タンク13Hへの圧縮空気の貯蔵を停止する。モータ11aについては、空圧供給用に継続して駆動することができる。
【0111】
以上の動作により、第1実施形態と同様に、グリッド電力の一部が圧縮空気や蓄熱媒体のエネルギに変換されてCAES装置1に貯蔵される(充電される)。
【0112】
なお、本実施形態において、低圧圧縮機である圧縮機12aで圧縮される圧縮空気の一部は、低圧蓄圧タンク13Lに送り込まれ、低圧蓄圧タンク13Lに貯蔵される。
【0113】
(6-2b)放電動作
圧縮空気で発電機を駆動し発電する放電動作の際、CAES装置1は以下のように動作する。放電動作時は、典型的には、熱交換器24の配管L4のバルブVL4は閉じておく。高圧蓄圧タンク13Hの圧力は、所定圧力P2を超えているものとする。この状態で配管LH,L5のバルブVH,VL5を開けることで、高圧蓄圧タンク13Hの圧縮空気が膨張機14a,14bに吸入されて断熱膨張し、膨張機14a,14bを駆動して大気中に放出される。圧縮空気の2段膨張により膨張機14a,14bが駆動されると、膨張機14a,14bによりそれぞれ発電機15a,15bが駆動され、発電機15a,15bの発電出力がパワーコンディショナ17を介して送配電系統5に供給される。
【0114】
以上の動作により、第1実施形態と同様に、CAES装置1に貯蔵された圧縮空気エネルギが再生され、グリッド電力に戻される(放電される)。
【0115】
(6-2c)空圧供給動作
本実施形態のCAES装置1において、圧縮機12bから後段の高圧設備E2は、空圧供給動作には用いられない。バルブV30を開くことにより、圧縮機12aで圧縮されて低圧蓄圧タンク13Lに貯蔵された所定圧力P2以下の圧縮空気が、空圧供給配管30を介して空圧機器M1に供給される。
【0116】
(6-3)運転モード
本実施形態のCAES装置1の運転モードについて説明する。
【0117】
(6-3a)充電のみを行う運転モード
充電のみを行う運転モードでは、CAES装置1は圧縮空気を生成して貯蔵する上記充電動作のみを行う。
【0118】
(6-3b)放電のみを行う運転モード
放電のみを行う運転モードでは、CAES装置1は圧縮空気で発電機を駆動し発電する上記放電動作のみを行う。
【0119】
(6-3c)空圧供給のみを行う運転モード
空圧供給のみを行う運転モードでは、CAES装置1は空圧供給動作のみを行う。
【0120】
(6-3d)充電と空圧供給を同時に行う運転モード
充電と空圧供給を同時に行う運転モードでは、CAES装置1は上記充電動作と空圧供給動作を同時に行う。本実施形態において、互いに独立した高圧蓄圧タンク13H及び低圧蓄圧タンク13Lを用い、充電動作及び空圧供給動作が並行して行われる。
【0121】
(6-3e)放電と空圧供給を同時に行う運転モード
放電と空圧供給を同時に行う運転モードでは、CAES装置1は上記放電動作と空圧供給動作を同時に行う。本実施形態において、互いに独立した高圧蓄圧タンク13H及び低圧蓄圧タンク13Lを用い、放電動作及び空圧供給動作が並行して行われる。
【0122】
(6-4)電力需給調整
本実施形態のCAES装置1においても、太陽光発電装置2等の再生エネルギ発電装置の発電量が工場Mの電力使用量を上回り余剰電力が発生している場合には充電を行う運転モードで運転され、再生エネルギ発電装置の発電量が電力使用量し下回っている場合には放電モードで運転される。その際、空圧機器M1への空圧供給が不足している場合には、CAES装置1は充電又は放電と同時に空圧供給を行う運転モードで運転される。また、再生エネルギ発電装置の発電量と工場Mの電力使用量が同じ又はほぼ同じ場合、CAES装置1は空圧供給のみを行う運転モードで運転される。
【0123】
(6-5)効果
工場Mで使用する圧縮空気をCAES装置1から供給することにより、第1実施形態と同様に、工場の電力需給を調整し合理的に電力平準化を図ることができる。また、本実施形態においては、第3実施形態と同様、圧縮機12aからの圧縮空気を空圧機器M1に供給することができる。圧縮機12aからの圧縮空気を空圧機器M1に供給することで、充電のみを行う場合に比べてCAES装置1の充電量は低下するが、圧縮機12aで大気を所定圧力P2程度まで圧縮すれば足りるため、空圧供給のためのエネルギ使用量を抑えることができ、高効率運転が可能となる。空圧供給によるエネルギ損失を抑えることができるので、CAES装置1のシステム効率(電力回収効率)が向上する。本実施形態は、高圧圧縮機である圧縮機12bをバイパスして圧縮機12aで圧縮した圧縮空気を空圧機器M1に空圧供給する点で第3実施形態と共通するが、低圧圧縮機である圧縮機12aで圧縮した圧縮空気を低圧蓄圧タンク13Lに貯蔵できる点で第3実施形態と相違する。また、空圧供給動作を行う部分(空圧供給設備E1)と充電動作及び放電動作を行う部分(高圧設備E2)とが前段及び後段に分かれており、それぞれ実質的に独立して運転することも可能である。
【0124】
また、第3実施形態では、工場Mに既存の空圧供給設備E1が備わっている場合、既存の空圧供給設備E1に高圧設備E2を加えてCAESの機能を確保することができ、既存設備を無駄なく活用することができるメリットも大きい。
【0125】
(第7実施形態)
図7は本発明の第7実施形態に係るCAES装置の模式図である。図7において説明済みの実施形態と同一の又は対応する要素には既出図面と同一符号を付して説明を適宜省略する。
【0126】
本実施形態のCAES装置1が第6実施形態と相違する点は、低圧蓄圧タンク13Lが、減圧装置80を有する配管L80を介して高圧蓄圧タンク13Hと接続されており、低圧蓄圧タンク13Lと高圧蓄圧タンク13Hとが減圧装置80を介して接続されている点である。減圧装置80は、高圧蓄圧タンク13H側(高圧設備E2側)から低圧蓄圧タンク13L側(空圧供給設備E1側)に流れる所定圧力P2を超える圧縮空気を所定圧力P2以下に減圧する要素であり、代表的には圧力調整弁(減圧弁)を用いることができる。圧力調整弁は、閉止可能なタイプを用いることもできる。この他、減圧装置80には、オリフィスや絞り(配管L80の途中に流路面積の減少部を設ける)等の代替手段も適用可能である。その他の第7実施形態のCAES装置1のハードウェア構成は、第6実施形態と同様である。
【0127】
本実施形態においても、第6実施形態と同様の効果を得ることができる。加えて、本実施形態においては、空圧供給設備E1による空圧供給量に対して空圧機器M1の空圧需要が大きい一方で、膨張機14を駆動する必要がないような場合に、高圧設備E2の高圧蓄圧タンク13Hの圧縮空気を減圧装置80で降圧させて空圧機器M1に供給、又は低圧蓄圧タンク13Lに貯蔵することができ、第6実施形態に比べてCAES装置1を柔軟に運用することができる。
【0128】
(第8実施形態)
図8は本発明の第8実施形態に係るCAES装置の模式図である。図8において説明済みの実施形態と同一の又は対応する要素には既出図面と同一符号を付して説明を適宜省略する。
【0129】
本実施形態のCAES装置1が第7実施形態と相違する点は、低圧圧縮機である圧縮機12aと空圧供給配管30とを接続する配管L30が省略されている点である。つまり、圧縮機12aと低圧蓄圧タンク13Lは直接接続されていない。その他の第8実施形態のCAES装置1のハードウェア構成は、第7実施形態と同様である。蓄圧タンクとして高圧蓄圧タンク13Hと低圧蓄圧タンク13Lとを含む点、低圧蓄圧タンク13Lが減圧装置80を介して高圧蓄圧タンク13Hと接続されると共に空圧供給配管30を介して空圧機器M1に接続されている点について、本実施形態は第7実施形態と共通する。
【0130】
本実施形態において、高圧蓄圧タンク13Hには、圧縮機12(圧縮機12a,12b)で所定圧力P2を超える圧力まで圧縮された圧縮空気が貯蔵される。低圧蓄圧タンク13Lには、高圧蓄圧タンク13Hに貯蔵された又は圧縮機12bから吐出された所定圧力P2を超える圧縮空気が、減圧装置80で所定圧力P2以下に減圧されて貯蔵される。膨張機14には、高圧蓄圧タンク13Hの圧縮空気が供給される。そして、空圧機器M1には、減圧装置80で減圧された圧縮空気、つまり低圧蓄圧タンク13Lに貯蔵された圧縮空気、又は高圧蓄圧タンク13H若しくは圧縮機12bから減圧装置80を介して供給される圧縮空気が、空圧供給配管30を介して供給される。
【0131】
本実施形態の場合、第7実施形態と比較して、圧縮機12(圧縮機12a,12b)で圧縮された圧縮空気が全て熱交換器24を通るので、空圧供給目的の圧縮空気の熱エネルギも回収することができ、熱効率が向上し得る。
【0132】
(第9実施形態)
図9は本発明の第9実施形態に係るCAES装置の模式図である。図9において説明済みの実施形態と同一の又は対応する要素には既出図面と同一符号を付して説明を適宜省略する。
【0133】
本実施形態は、第2実施形態及び第3実施形態を組み合わせた例である。第2実施形態又は第3実施形態で実施可能な動作及び運転モードは本実施形態でも実施可能である。各運転モードの切り替えは、必票充電量、必要発電量、空圧需要、充電/放電運転予測等を組み込んだ運転制御により行うことができる。運転モードを切り替えることで、空圧を含めたシステム効率(空圧/電力回収効率)を向上させ得る。
【0134】
この例のように、前述した第1-第8各実施形態は、任意の2つ以上の実施形態を組み合わせることができる。
【0135】
(第10実施形態)
図10は本発明の第10実施形態に係るCAES装置の模式図である。図10において説明済みの実施形態と同一の又は対応する要素には既出図面と同一符号を付して説明を適宜省略する。
【0136】
本実施形態は、各実施形態で触れたバルブの切り替え等の制御を実施するための具体的ハードウェア構成を示した例である。図10において、CAES装置1には、圧力センサS31-S34で検出される空圧供給配管30の圧力を基にバルブV31-V33,VL1-VL5を制御する機能等を有する制御装置70が備わっている。本実施形態においては第1実施形態に制御装置70を付加した例を説明するが、第2-第9実施形態においても同様の要領で制御装置70を追加してバルブの切り替え等の制御を実施することができる。
【0137】
制御装置70には、圧力センサS31-S34,Sc,Seやパワーコンディショナ4、また工場Mの電力計71(工場Mの管理室のコンピュータ等でも良い)が接続し、圧力センサS31-S34,Sc,Seの検出圧力、再生可能エネルギ発電装置の発電量、工場Mの電力需要(工場M全体の電力需要、空圧システムの電力需要)等のデータが入力される。制御装置70は、CAES装置1の制御プログラム等を実行するコンピュータである。本実施形態において、バルブV31-V33,VL1-VL5は電磁駆動式である。図示していないが、制御装置70は、バルブV31-V33,VL1-VL5やモータ11a,11b、発電機15a,15b、ポンプ28,29等の電動機器と電気的に接続しており、これら電動機器に動作指令を出力する。例えば、制御装置70は、バルブV31-V33,VL1-VL5に対する開閉指令、モータ11a,11bやポンプ28,29に対する起動指令/停止指令/回転数指令、発電機15a,15bに対する回転数指令等を出力可能である。
【0138】
制御装置70は、パワーコンディショナ4から入力される再生エネルギ発電装置の発電量、電力計71から入力される工場Mの電力使用量、及び圧力センサS31-S34で検出される空圧供給配管30の圧力を入力し、例えば、再生エネルギ発電装置の発電量が工場Mの電力使用量より少なく、空圧供給配管30の圧力が空圧使用圧力P1以上で所定圧力P2以下である場合、バルブV31-V33を適宜開放し空圧供給配管30から空圧機器M1に圧縮空気を供給する。例えば、蓄圧タンク13a-13c(配管31-33)のうち蓄圧タンク13c(配管33)のみが上記圧力範囲にある場合、バルブV33を開放して蓄圧タンク13cを用いて空圧供給する。
【0139】
このようなバルブV31-V33,VL1-VL5を含む電動機器を自動制御するためには、制御装置70により選択すべき運転モードが判定される必要がある。運転モードの判定には、まず、第1実施形態等の「電力需給調整」の説明に記載したように、再生エネルギ発電装置の発電量と工場Mの電力使用量の大小関係を判定する必要がある。これについては、パワーコンディショナ4から入力される再生エネルギ発電装置の発電量と、電力計71から入力される工場Mの電力使用量とで、制御装置70により判定可能である。従って、制御装置70は、発電量が電力使用量を上回る場合には充電動作を行う運転モードを選択し、発電量が電力使用量を下回る場合には放電動作を行う運転モードを選択し、発電量が電力使用量とつり合っている場合には空圧供給動作のみを行う運転モードを選択し、選択した運転モードに応じてそれぞれ電動機器を制御する。その際、充電動作を行う運転モード、及び放電動作を行う運転モードを選択した場合、併せて空圧供給動作を行うかどうかは、例えば工場Mの空圧機器M1の運転要求が予め設定した閾値を超えているかどうかで判定される。空圧機器M1の運転要求は、例えば空圧システムの使用電力量(又は空圧システムの配管圧力等)により推定することができる。
【0140】
本実施形態のように、CAES装置1を自動運転することで、CAES装置1を適時に適正な運転モードで運転することができ、エネルギ効率をより向上させることができる。
【0141】
(変形例)
以上の各実施形態において、再生可能エネルギ発電装置には、例えば、風力、太陽光、太陽熱、波力又は潮力、流水又は潮汐、及び地熱等、自然の力で定常的(もしくは反復的)に補充され、かつ不規則に変動するエネルギを利用したもの全てを対象とすることが可能である。また、工場M内の大電力を消費する機器の駆動状態によって工場Mの電力需要が大きく変動する場合にも、各実施形態のCAES装置1を適用可能である。また、送配電系統5は、電力会社の一般送配電系統に限らず、地域、あるいは工場M内のマイクログリッド電力の系統であってもよい。
【0142】
また、各実施形態の圧縮機12a,12b及び膨張機14a,14bには、例えばスクリュ式を用いることができるが、これら回転機械の形式は限定されない。圧縮機12a,12b及び膨張機14a,14bには、例えばスクロール式、ターボ式、又はレシプロ式等であってもよい。
【0143】
また、各実施形態においては、圧縮機12及び膨張機14をそれぞれ圧縮機12a,12b及び膨張機14a,14bの2段圧縮/2段膨張型としているが、圧縮機12及び膨張機14は、単段圧縮/単段膨張型、または3段以上の圧縮/膨張型、更には圧縮と膨張で段数が異なっていても良い。更に、各図では圧縮機12及び膨張機14を1つずつ図示しているが、台数は特に限定されず、CAES装置1には圧縮機12及び膨張機14が複数備わっていても良い。また、モータと圧縮機の台数が異なる構成(例えば1台のモータで複数の圧縮機を駆動する場合)、発電機と膨張機の台数が異なる構成(例えば複数の膨張機で1台の発電機を駆動する場合)とする場合もある。
【0144】
また、例えば図2の例では、多段膨張型の膨張機14の高圧段の膨張機14aと低圧段の膨張機14bを繋ぐ配管Le2から圧縮空気を抽気する構成を例示したが、例えば単段膨張機の途中段から圧縮空気を抽気する構成とすることもできる。図3図6及び図7の例に関しても同様であり、単段圧縮機の途中段から圧縮空気を抽気する構成とすることができる。
【符号の説明】
【0145】
1…CAES装置(圧縮空気エネルギ貯蔵装置)、2…太陽光発電装置(再生エネルギ発電装置)、3…風力発電装置(再生エネルギ発電装置)、11…電動機、12…圧縮機、12a…圧縮機(低圧圧縮機)、12b…圧縮機(高圧圧縮機)、13…蓄圧タンク、13L…低圧蓄圧タンク、13H…高圧蓄圧タンク、14…膨張機、14a…膨張機(高圧膨張機)、14b…膨張機(低圧膨張機)、15…発電機、30…空圧供給配管、31-36…配管、41…空圧供給圧縮機、42,43…配管、50…給水ポンプ、70…制御装置、80…減圧装置、Lc1,Le2…配管、M…工場(空圧機器を使用する施設)、M1…空圧機器、P1…空圧使用圧力、P2…所定圧力、S33-S34…圧力センサ、V31-V33…バルブ(開閉弁)
図1
図2
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図10