(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167042
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】糸送り装置
(51)【国際特許分類】
D02G 1/04 20060101AFI20241122BHJP
D01H 1/42 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
D02G1/04 Z
D01H1/42 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024014349
(22)【出願日】2024-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2023082930
(32)【優先日】2023-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】加藤 将
(72)【発明者】
【氏名】北川 重樹
(72)【発明者】
【氏名】近田 秀和
【テーマコード(参考)】
4L036
4L056
【Fターム(参考)】
4L036AA01
4L036MA33
4L036PA05
4L036PA42
4L036UA21
4L056BA05
4L056BA17
(57)【要約】
【課題】カバーの取付時及び取外時の作業性を向上する。
【解決手段】糸送り装置30では、固定側カバー部材62(着脱側カバー部材64)が、締結ボルトBL2によって固定側ハウジング部材52(着脱側ハウジング部材54)に締結固定される固定部62A(固定部64A)と、固定側ハウジング部材52(着脱側ハウジング部材54)に相対移動不能に係合される係合部62C(係合部64C)と、を含んで構成されている。すなわち、固定側カバー部材62及び着脱側カバー部材64のハウジング50に対する締結箇所を1箇所にして、固定側カバー部材62及び着脱側カバー部材64をハウジング50に固定することができる。よって、固定側カバー部材62及び着脱側カバー部材64のハウジング50への締結箇所を2箇所にする場合と比べて、カバー60の取付時及び取外時における作業工数を削減することができる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維機械の糸道に配置される糸送り装置であって、
回転軸と、
前記回転軸を回転可能に支持する軸受と、
前記回転軸に一体回転可能に設けられると共に、前記軸受に対して前記回転軸の軸方向外側に配置され、前記糸道に沿って走行する糸を送るローラと、
前記軸受を支持すると共に、前記回転軸の径方向に分割された一対の半割支持部材によって構成された支持部材と、
前記支持部材と前記ローラとの間に配置され、前記回転軸を径方向外側から覆う筒状に形成されると共に、前記回転軸の径方向に分割された一対の半割カバー部材によって構成されたカバーと、
を備え、
前記半割カバー部材の一方が前記半割支持部材の一方に連結され、前記半割カバー部材の他方が前記半割支持部材の他方に連結されており、
一対の前記半割カバー部材の少なくとも一方は、
締結部材によって前記半割支持部材に締結固定された固定部と、
前記半割支持部材に前記回転軸の軸方向及び前記軸方向に対して直交する方向に係合された係合部と、
を含んで構成されている糸送り装置。
【請求項2】
前記半割カバー部材は、前記回転軸を径方向外側から覆う半筒状のカバー部と、前記カバー部における前記支持部材側の端部に設けられた第1フランジ部と、を含んで構成されており、
前記固定部が、前記第1フランジ部の周方向一方側端部に設けられ、前記係合部が、前記第1フランジ部の周方向他方側端部に設けられ、
前記半割支持部材の外周部には、前記軸方向から見て、前記回転軸側へ開放され且つ前記支持部材の分割面に対して交差する方向に延在された係合溝が形成されており、
前記係合部が、前記係合溝に挿入されて前記半割支持部材に相対移動不能に係合される請求項1に記載の糸送り装置。
【請求項3】
前記係合溝における前記カバー側の側面が溝側傾斜面として構成され、前記溝側傾斜面は、前記係合溝の長手方向から見て、前記係合溝の底部側へ向かうに従い前記支持部材側へ傾斜しており、
前記係合部は、前記溝側傾斜面に当接する係合面を有している請求項2に記載の糸送り装置。
【請求項4】
前記カバーの分割面が前記支持部材の分割面と面一に配置されており、前記軸方向から見て、前記支持部材の分割面と前記係合溝との間の角度が鋭角に設定されている請求項2又は請求項3に記載の糸送り装置。
【請求項5】
前記半割カバー部材は、前記カバー部における前記ローラ側の端部に設けられた第2フランジ部を有しており、
前記ローラにおける前記支持部材側の端部には、前記支持部材側へ開放された凹部が形成されており、
前記第2フランジ部が前記凹部の内部に配置されている請求項2~請求項4の何れか1項に記載の糸送り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸送り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の仮撚複合糸の製造装置では、各錘に供給された原糸が、各錘において上流側のローラ群と下流側のローラ郡との間でオーバフィードされるか、又は延伸されながら、仮撚りツイスタ群とヒータ群とによって、加撚、熱セットされて仮撚り糸になる。また、各錘で仮撚加工が施された仮撚り糸が、合糸されて仮撚複合糸が形成される。
【0003】
上記のローラ郡は、糸を送る糸送り装置として構成されている。具体的には、錘毎のローラが、ラインシャフトに着脱可能に装着されており、当該ローラとトップローラとによって、糸を把持して糸を下流側へ送る。なお、通常、ラインシャフトは、軸受に回転可能に支持されており、軸受は、支持部材よって支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、仮撚複合糸の製造装置に用いられる糸送り装置では、糸のラインシャフトへの巻付けを防止するためのカバーを備えたものがある。具体的には、筒状のカバーが、軸受を支持する支持部材に取付けられると共に、支持部材とローラとの間に配置され、ラインシャフトを径方向外側から覆う。また、糸送り装置では、複数のカバーによって、ラインシャフトを軸方向の全体に亘って覆う。これにより、糸のラインシャフトへの巻付けを防止することができる。
【0006】
しかしながら、糸巻付防止用のカバーを糸送り装置に設けた場合には、例えば、軸受の交換作業時毎に、カバーを支持部材から取外す必要がある。また、上述のように、複数のカバーによって、ラインシャフトを軸方向の全体に亘って覆うため、カバーの個数が比較的多くなる。よって、糸送り装置では、カバーの取付時及び取外時の作業性を向上できる構造にすることが望ましい。
【0007】
本発明は、上記事実を考慮して、カバーの取付時及び取外時の作業性を向上できる糸送り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、繊維機械の糸道に配置される糸送り装置であって、回転軸と、前記回転軸を回転可能に支持する軸受と、前記回転軸に一体回転可能に設けられると共に、前記軸受に対して前記回転軸の軸方向外側に配置され、前記糸道に沿って走行する糸を送るローラと、前記軸受を支持すると共に、前記回転軸の径方向に分割された一対の半割支持部材によって構成された支持部材と、前記支持部材と前記ローラとの間に配置され、前記回転軸を径方向外側から覆う筒状に形成されると共に、前記回転軸の径方向に分割された一対の半割カバー部材によって構成されたカバーと、を備え、前記半割カバー部材の一方が前記半割支持部材の一方に連結され、前記半割カバー部材の他方が前記半割支持部材の他方に連結されており、一対の前記半割カバー部材の少なくとも一方は、締結部材によって前記半割支持部材に締結固定される固定部と、前記半割支持部材に前記回転軸の軸方向及び前記軸方向に対して直交する方向に係合する係合部と、を含んで構成されている糸送り装置である。
【0009】
上記構成の糸送り装置では、支持部材によって支持された軸受に回転軸が回転可能に支持されている。回転軸には、ローラが一体回転可能に設けられており、ローラは、軸受に対して回転軸の軸方向外側に配置されている。また、筒状のカバーが、支持部材とローラとの間に配置され、回転軸を径方向外側から覆っている。支持部材は、回転軸の径方向に分割された一対の半割支持部材によって構成されている。また、カバーは、回転軸の径方向に分割された一対の半割カバー部材によって構成されており、半割カバー部材の一方が半割支持部材の一方に連結され、半割カバー部材の他方が半割支持部材の他方に連結されている。
【0010】
ここで、一対の半割カバー部材の少なくとも一方は、締結部材によって半割支持部材に締結固定された固定部と、半割支持部材に回転軸の軸方向及び軸方向に対して直交する方向に係合された係合部と、を含んで構成されている。すなわち、一対の半割カバー部材の少なくとも一方では、半割カバー部材の支持部材への締結箇所を1箇所にして、半割カバー部材を支持部材に固定することができる。よって、例えば、半割カバー部材の支持部材への締結箇所を2箇所にする場合と比べて、取付時及び取外時における作業工数を削減することができる。したがって、カバーの取付時及び取外時の作業性を向上できる。
【0011】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記半割カバー部材は、前記回転軸を径方向外側から覆う半筒状のカバー部と、前記カバー部における前記支持部材側の端部に設けられた第1フランジ部と、を含んで構成されており、前記固定部が、前記第1フランジ部の周方向一方側端部に設けられ、前記係合部が、前記第1フランジ部の周方向他方側端部に設けられ、前記半割支持部材の外周部には、前記軸方向から見て、前記回転軸側へ開放され且つ前記支持部材の分割面に対して交差する方向に延在された係合溝が形成されており、前記係合部が、前記係合溝に挿入されて前記半割支持部材に相対移動不能に係合される糸送り装置である。
【0012】
上記構成の糸送り装置では、固定部が、半割カバー部材における第1フランジ部の周方向一方側端部に設けられ、係合部が、第1フランジ部の周方向他方側端部に設けられている。そして、係合部が、半割支持部材の外周部に形成された係合溝に挿入されて、半割支持部材に相対移動不能に係合される。このため、簡易な構成で、半割カバー部材を半割支持部材に係合することができる。
【0013】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記係合溝における前記カバー側の側面が溝側傾斜面として構成され、前記溝側傾斜面は、前記係合溝の長手方向から見て、前記係合溝の底部側へ向かうに従い前記支持部材側へ傾斜しており、前記係合部は、前記溝側傾斜面に当接する係合面を有している糸送り装置である。
【0014】
上記構成の糸送り装置では、係合部の係合溝への挿入時に、溝側傾斜面によって、係合部を支持部材側へ寄せ付けることができる。その結果、カバーの端面を支持部材の側面に密着させて、カバーを支持部材に取付けることができる。したがって、カバーの支持部材への取付状態を良好にすることができる。
【0015】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記カバーの分割面が前記支持部材の分割面と面一に配置されており、前記軸方向から見て、前記支持部材の分割面と前記係合溝との間の角度が鋭角に設定されている糸送り装置である。
【0016】
上記構成の糸送り装置では、例えば、一方の半割カバー部材を係合溝側へ押し付けることで、係合部が係合溝に沿って他方の半割カバー部材側へ移動する。よって、この状態で、一方の半割カバー部材を締結固定することで、半割カバー部材の分割面同士を密着させることができる。したがって、半割カバー部材同士の密着性を向上することができる。
【0017】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記半割カバー部材は、前記カバー部における前記ローラ側の端部に設けられた第2フランジ部を有しており、前記ローラにおける前記支持部材側の端部には、前記支持部材側へ開放された凹部が形成されており、前記第2フランジ部が前記凹部の内部に配置されている糸送り装置である。
【0018】
上記構成の糸送り装置では、半割カバー部材の第2フランジ部が、ローラの凹部内に収容されるため、カバーとローラとの間に所謂ラビリンス構造が形成される。これにより、糸がカバーとローラとの間からカバーの内側へ侵入することを抑制できる。したがって、糸の回転軸への巻付けを効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の1又はそれ以上の実施形態によれば、カバーの取付時及び取外時の作業性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係る糸送り装置が適用された仮撚機を模式的に示す側面図である。
【
図2】
図1に示される第1糸送り装置の一部を示す前側から見た正面図である。
【
図3】
図2に示される第1糸送り装置の右側から見た断面図(
図2の3-3線断面図)である。
【
図4】
図3に示される第1糸送り装置の基台よりも前側部分を拡大して示す断面図である。
【
図5】
図3に示される第1糸送り装置の上側から見た断面図(
図3の5-5線断面図)である。
【
図6】
図2に示される第1糸送り装置におけるハウジング及びカバーの分解斜視図である。
【
図7】(A)は、
図4に示される着脱側カバー部材の係合部と着脱側ハウジング部材の係合溝部との係合状態を示す断面図(
図4の7A-7A線断面図)であり、(B)は、
図4に示される固定側カバー部材の係合部と固定側ハウジング部材の係合溝部との係合状態を示す断面図(
図4の7B-7B線断面図)である。
【
図8】第1糸送り装置のベアリングを交換する手順を説明するための前側から見た説明である。
【
図9】固定側カバー部材の係合部と固定側ハウジング部材の係合溝部の変形例を説明するための
図7(B)に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を用いて、本実施形態に係る糸送り装置30について説明する。糸送り装置30は、繊維機械としての仮撚機10に適用されており、仮撚機10は、半延伸糸(POY:Partially Oriented Yarn)を仮撚加工して仮撚加工糸(DTY:Draw Textured Yarn)を生産する機器である。また、仮撚機10では、4つの糸送り装置30が用いられており、4つの糸送り装置30を区別するために、以下の説明では、4つの糸送り装置30を、第1糸送り装置30-1、第2糸送り装置30-2、第3糸送り装置30-3、及び第4糸送り装置30-4と区別して記載する。
【0022】
(仮撚機10の全体構成について)
図1に示されるように、仮撚機10は、主機台12と、巻取装置14と、給糸クリール16と、を備えている。主機台12、巻取装置14、及び給糸クリール16は、仮撚機10の幅方向(
図1の矢印A方向及び矢印B方向)に所定の空間を空けて並んで配置されている。巻取装置14の上側には、第1糸送り装置30-1が設けられ、主機台12の上部には、第2糸送り装置30-2及び第3糸送り装置30-3が設けられ、主機台12の下端部には、第4糸送り装置30-4が設けられている。第1糸送り装置30-1~第4糸送り装置30-4によって、給糸クリール16から供給された糸Yを糸道18に沿って巻取装置14へ送るようになっている。本実施の形態では、複数の糸Yが給糸クリール16から供給されて、給糸クリール16から供給された糸Yを、第1糸送り装置30-1によって下流側へ送る。
【0023】
第2糸送り装置30-2の糸送り速度は第1糸送り装置30-1の糸送り速度よりも速くなるように設定されている。これにより、第1糸送り装置30-1と第2糸送り装置30-2との間で糸Yが延伸される。また、第1糸送り装置30-1と第2糸送り装置30-2との間には、第1ヒータ20、冷却装置22、及び仮撚装置24が上流側からこの順に設けられている。これにより、糸Yが仮撚装置24を通過することで、糸Yに仮撚加工が施される。
【0024】
また、第3糸送り装置30-3と第4糸送り装置30-4との間には、第2ヒータ26が設けられており、第2糸送り装置30-2と第3糸送り装置30-3との間で合糸された糸Yが、第3糸送り装置30-3によって第2ヒータ26に送られる。そして、糸Yが第4糸送り装置30-4によって巻取装置14に送られて、巻取装置14に設けられた巻取装置14によって巻取られてパッケージPが形成される。
【0025】
(糸送り装置30について)
第1糸送り装置30-1~第4糸送り装置30-4は、同様に構成されているため、第1糸送り装置30-1を用いて、糸送り装置30の構成を説明する。
【0026】
以下、
図2~
図7を用いて、第1糸送り装置30-1の構成について説明する。なお、図面に適宜示される矢印UP、矢印FP、矢印RHは、それぞれ第1糸送り装置30-1の上側、前側、右側を示している。以下の説明において、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り第1糸送り装置30-1の上下方向、前後方向、左右方向を示すものとする。なお、第1糸送り装置30-1の左右方向は、仮撚機10の左右方向(
図1の紙面直交方向)に一致しており、この左右方向は、仮撚機10の上下方向及び幅方向に直交している。
【0027】
図2~
図5に示されるように、第1糸送り装置30-1は、基台32と、回転軸としてのシャフト34と、シャフト34を支持する複数の軸受としてのベアリング36と、ベアリング36を支持する支持部材としてのハウジング50と、ローラとしての複数の駆動ローラ38と、複数の従動ローラ40と、複数のカバー60と、を含んで構成されている。
【0028】
基台32は、左右方向に延在された略矩形筒状に形成されている。基台32は、第1糸送り装置30-1を仮撚機10の骨格部材(フレーム)に固定するための部材として機能している。シャフト34は、左右方向を軸方向とする略円柱状に形成されており、基台32の前側に配置されている。シャフト34は、ベアリング36によって回転可能に支持されている。ベアリング36は、ボールベアリングとして構成されており、後述するハウジング50に支持されると共に、ハウジング50によって基台32に連結されている。複数のベアリング36は、左右方向に所定の間隔を空けて配置されている(
図3~
図5では、1箇所のベアリング36のみを図示している)。なお、シャフト34の長手方向一端部には、図示しないモータが連結されており、モータが駆動することでシャフト34が自身の軸回りに回転する。
【0029】
駆動ローラ38は、金属ローラとして構成されると共に、左右方向を軸方向とする略円筒状に形成されている。駆動ローラ38の左右方向両端部には、左右方向外側へ開放された凹部38A(
図5参照)が形成されており、凹部38Aは、左右方向から見て、円形状に形成されている。駆動ローラ38は、ベアリング36に対してシャフト34の軸方向外側に配置されると共に、シャフト34に一体回転可能に固定されている(
図3~
図5に示される例では、駆動ローラ38がベアリング36に対してシャフト34の軸方向両側に配置されている)。駆動ローラ38は、図示しない位置において、六角穴付き止ネジによってシャフト34に固定されている。
【0030】
従動ローラ40は、ゴムローラとして構成されると共に、駆動ローラ38と対を成している。すなわち、駆動ローラ38及び従動ローラ40によって、フィードローラ対42を構成している。従動ローラ40は、駆動ローラ38の上側に配置されると共に、支持機構部44によって、左右方向を軸方向として回転可能に支持されると共に、基台32に連結されている。また、従動ローラ40は、支持機構部44によって駆動ローラ38に対して接離可能に構成されている。すなわち、従動ローラ40が駆動ローラ38に接近した位置では、駆動ローラ38と従動ローラ40とによって糸Yを挟み込んで、糸Yを下流側へ送るようになっている。一方、ベアリング36の交換作業時等では、従動ローラ40を上側へ移動させて駆動ローラ38から離間させるようになっている。
【0031】
図2~
図6に示されるように、ハウジング50は、全体として左右方向を軸方向とする略筒状に形成されている。すなわち、ハウジング50は、左右方向に貫通された円形状の支持孔50A(
図6参照)を有している。ハウジング50は、基台32の前側に配置されて、ベアリング36を径方向外側から支持する支持部材として構成されている。すなわち、ハウジング50は、ベアリング36と対を成しており、ベアリング36を介してシャフト34を支持している。
【0032】
ハウジング50は、シャフト34の径方向に2分割にされた半割支持部材としての固定側ハウジング部材52及び着脱側ハウジング部材54を含んで構成されている。具体的には、ハウジング50の分割面50Bが、左右方向から見て、前側へ向かうに従い下側へ傾斜する方向に沿って延在されている。以下、左右方向から見て、ハウジング50が分割された方向を分割方向(
図4及び
図6の矢印C及び矢印Dを参照)という。
【0033】
固定側ハウジング部材52は、ハウジング50における分割方向一方側(
図4及び
図6の矢印C方向側)部分を構成している。固定側ハウジング部材52は、基台32の前側に配置されて、図示しない位置において、基台32に締結固定されている。
【0034】
固定側ハウジング部材52における分割面50Bには、着脱側ハウジング部材54を固定するための固定ネジ部52B(
図6参照)がそれぞれ形成されている。固定ネジ部52Bは、分割方向他方側へ開放された凹状に形成されており、固定ネジ部52Bの内周面には、雌ネジが形成されている。固定側ハウジング部材52の前端部の左右方向両側面には、後述するカバー60(固定側カバー部材62)を固定するためのカバー用固定ネジ部52C(
図6参照)が形成されている(
図6では、固定側ハウジング部材52の右側面に形成されたカバー用固定ネジ部52Cのみが図示されている)。カバー用固定ネジ部52Cは、左右方向外側へ開放された凹状に形成されており、カバー用固定ネジ部52Cの内周面には、雌ネジが形成されている。
【0035】
さらに、固定側ハウジング部材52の後端部の左右方向両側面には、左右方向外側へ一段上がった段差部52Dがそれぞれ形成されている。段差部52Dの前端部は、左右方向から見て、上下方向(分割面50Bに対して交差する方向)に沿って延在されている。段差部52Dの前端部には、係合溝52Eが形成されており、係合溝52Eは、段差部52Dの前端部に沿って延在すると共に、延在方向に貫通している。左右方向から見た、係合溝52Eと分割面50Bとの間の角度AG1(
図4参照)が鋭角に設定されている。係合溝52Eは、長手方向から見て、シャフト34側へ開放された略楔形状に形成されている。具体的には、
図7(B)に示されるように、係合溝52Eの幅方向一方側の側面(左右方向内側の側面)が受け面52E1として構成され、受け面52E1は、係合溝52Eの長手方向から見て、左右方向に直交する方向に沿って配置されている。また、係合溝52Eの幅方向他方側の側面(左右方向外側の側面)が溝側傾斜面52E2として構成され、溝側傾斜面52E2は、係合溝52Eの長手方向から見て、左右方向外側へ向かうに従いシャフト34側へ傾斜している。すなわち、溝側傾斜面52E2が、係合溝52Eの左右方向外側(後述するカバー60側)の側面を構成しており、係合溝52Eの底部へ向かうに従い左右方向内側(ハウジング50側)に傾斜している。なお、受け面52E1は、固定側ハウジング部材52の左右の両側面と面一に配置されている。
【0036】
図2~
図6に示されるように、着脱側ハウジング部材54は、ハウジング50における分割方向他方側部分を構成している。着脱側ハウジング部材54の前端部及び後端部には、固定孔54A(
図6参照)が分割方向に貫通形成されており、固定孔54A内に挿入された固定ボルトBL1が、固定側ハウジング部材52の固定ネジ部52Bに螺合されて、着脱側ハウジング部材54が固定側ハウジング部材52に固定されている。すなわち、着脱側ハウジング部材54が固定側ハウジング部材52に着脱可能に固定されて、ベアリング36を分割方向他方側から支持している。そして、ベアリング36の交換作業時には、着脱側ハウジング部材54を固定側ハウジング部材52から取外すようになっている。
【0037】
着脱側ハウジング部材54の前端部の左右方向両側面には、後述するカバー60を固定するためのカバー用固定ネジ部54C(
図6参照)が形成されており、カバー用固定ネジ部54Cは、左右方向から見て、ハウジング50の分割面50Bに対して対称となる位置に配置されている(
図6では、着脱側ハウジング部材54の右側面に形成されたカバー用固定ネジ部54Cのみを図示している)。カバー用固定ネジ部54Cは、左右方向外側へ開放された凹状に形成されており、カバー用固定ネジ部54Cの内周面には、雌ネジが形成されている。
【0038】
また、着脱側ハウジング部材54の後端部の左右方向両側面には、左右方向外側へ一段上がった段差部54Dがそれぞれ形成されている。段差部54Dの前端部は、左右方向から見て、ハウジング50の分割面50Bに対して固定側ハウジング部材52の段差部52Dと対称となるように延在されている。詳しくは、段差部54Dの前端部が、左右方向から見て、上側へ向かうに従い前側へ傾斜する方向(分割面50Bに対して交差する方向)に沿って延在されている。段差部54Dの前端部には、係合溝54Eが形成されており、係合溝54Eは、段差部54Dの前端部に沿って延在すると共に、延在方向に貫通している。左右方向から見た、係合溝54Eと分割面50Bとの間の角度AG2(
図4参照)は、角度AG1と同じに設定されている。係合溝54Eは、長手方向から見て、シャフト34側へ開放された略楔形状に形成されている。具体的には、
図7(A)に示されるように、係合溝54Eの幅方向一方側の側面(左右方向内側の側面)が受け面54E1として構成され、受け面54E1は、係合溝54Eの長手方向から見て、左右方向に直交する方向に沿って配置されている。また、係合溝54Eの幅方向他方側の側面(左右方向外側の側面)が溝側傾斜面54E2として構成され、溝側傾斜面54E2は、係合溝54Eの長手方向から見て、左右方向外側へ向かうに従いシャフト34側へ傾斜している。すなわち、溝側傾斜面54E2が、係合溝54Eの左右方向外側(後述するカバー60側)の側面を構成しており、係合溝54Eの底部へ向かうに従い左右方向内側(ハウジング50側)に傾斜している。なお、受け面54E1は、着脱側ハウジング部材54の左右の両側面と面一に配置されている。
【0039】
図2~
図6に示されるように、カバー60は、ハウジング50と駆動ローラ38との間に配置され、シャフト34を径方向外側から覆う部材として構成されている。このため、カバー60は、駆動ローラ38と対を成して、シャフト34の径方向外側に設けられている。
【0040】
カバー60は、全体として、左右方向を軸方向とする略円筒状に形成されている。具体的には、カバー60は、円筒状のカバー部60Aと、カバー部60Aのハウジング50側の端部から径方向外側へ延出された略円環板状の第1フランジ部60Bと、カバー部60Aの駆動ローラ38側の端部から径方向外側へ延出された略円環板状の第2フランジ部60Cと、を含んで構成されている。そして、カバー60の第1フランジ部60Bが、ハウジング50の側面に固定され、カバー60が、ハウジング50からシャフト34の軸方向外側へ延出されて、シャフト34におけるベアリング36と駆動ローラ38との間の部位を径方向外側から覆っている。カバー60のハウジング50への固定状態では、第2フランジ部60Cが駆動ローラ38の凹部38A内に収容されている。これにより、糸Yのカバー60の内側への侵入が抑制されて、シャフト34におけるベアリング36と駆動ローラ38との間の部位に糸Yが巻付くことを、カバー60によって抑制する構成になっている。
【0041】
カバー60は、シャフト34の径方向に2分割された半割カバー部材としての固定側カバー部材62及び着脱側カバー部材64によって構成されている。固定側カバー部材62及び着脱側カバー部材64は、分割方向に2分割されており、分割方向におけるカバー60の分割面60Dとハウジング50の分割面50Bとの位置が一致するように、カバー60の分割位置が設定されている。そして、固定側カバー部材62がハウジング50における固定側ハウジング部材52に着脱可能に固定されており、着脱側カバー部材64が着脱側ハウジング部材54に着脱可能に固定されている。
【0042】
固定側カバー部材62の第1フランジ部60Bの周方向一端部(前端部)は、固定部62Aとして構成されており、固定部62Aには、固定側ハウジング部材52のカバー用固定ネジ部52Cに対応する位置において、固定孔62B(
図6参照)が貫通形成されている。そして、固定孔62B内に挿入された締結部材としての締結ボルトBL2が、固定側ハウジング部材52のカバー用固定ネジ部52Cに螺合されて、固定側カバー部材62が固定側ハウジング部材52に締結固定されている。すなわち、シャフト34と平行に配置された締結ボルトBL2によって、固定部62Aが固定側ハウジング部材52に固定されている。
【0043】
第1フランジ部60Bの周方向他端部(後端部)には、第1フランジ部60Bの外周部において、係合部62Cが形成されている。係合部62Cは、固定側ハウジング部材52の係合溝52Eに対応して、左右方向から見て係合溝52Eの延在方向に沿って延在されている。係合部62Cは、その長手方向から見て、係合溝52Eに対応する楔形状に形成されている。すなわち、
図7(B)に示されるように、係合部62Cは、その長手方向から見て、左右方向に直交する方向に沿って配置された第1係合面62C1と、第1係合面62C1の後端部から左右方向外側へ向かうに従いシャフト34側へ傾斜した係合面としての第2係合面62C2と、を含んで構成されている。そして、係合部62Cが係合溝52E内に挿入されて、係合部62Cと係合溝52Eとが係合している。具体的には、第1係合面62C1が受け面52E1に当接し、第2係合面62C2が溝側傾斜面52E2に当接している。これにより、係合部62Cが、係合溝52Eにシャフト34の軸方向及び軸方向に直交する方向に係合して、固定側ハウジング部材52に相対移動不能に連結されている。なお、第1係合面62C1は、固定側カバー部材62の端面と面一に配置されている。
【0044】
図2~
図6に示されるように、着脱側カバー部材64は、カバー60の分割面60Dに対して、固定側カバー部材62と対称となるように構成されている。すなわち、着脱側カバー部材64の第1フランジ部60Bの周方向一端部(前端部)は、固定部64Aとして構成されており、固定部64Aには、着脱側ハウジング部材54のカバー用固定ネジ部54Cに対応する位置において、固定孔64B(
図6参照)が貫通形成されている。そして、固定孔64B内に挿入された締結ボルトBL2が、着脱側ハウジング部材54のカバー用固定ネジ部54Cに螺合されて、着脱側カバー部材64が着脱側ハウジング部材54に締結固定されている。すなわち、シャフト34と平行に配置された締結ボルトBL2によって、固定部64Aが着脱側ハウジング部材54に固定されている。
【0045】
着脱側カバー部材64の第1フランジ部60Bの周方向他端部(後端部)には、第1フランジ部60Bの外周部において、係合部64Cが形成されている。係合部64Cは、着脱側ハウジング部材54の係合溝54Eに対応して、左右方向から見て係合溝54Eの延在方向に沿って延在されている。係合部64Cは、その長手方向から見て、係合溝54Eに対応する楔形状に形成されている。すなわち、
図7(A)に示されるように、係合部64Cは、その長手方向から見て、左右方向に直交する方向に沿った第1係合面64C1と、第1係合面64C1の後端部から左右方向外側へ向かうに従いシャフト34側へ傾斜した第2係合面64C2と、を含んで構成されている。そして、係合部64Cが係合溝54E内に挿入されて、係合部64Cと係合溝54Eとが係合している。具体的には、第1係合面64C1が受け面54E1に当接し、第2係合面64C2が溝側傾斜面54E2に当接している。これにより、係合部64Cが、係合溝54Eにシャフト34の軸方向及び軸方向に直交する方向に係合して、着脱側ハウジング部材54に相対移動不能に連結されている。なお、第1係合面64C1は、着脱側カバー部材64の端面と面一に配置されている。
【0046】
(作用効果)
次に、第1糸送り装置30-1においてベアリング36を交換する手順を、
図8を用いて説明しつつ、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0047】
第1糸送り装置30-1によって糸Yを送るときには、従動ローラ40が、駆動ローラ38に接近した位置に配置されると共に、駆動ローラ38に対して分割方向他方側に位置している(
図8の(1)の状態を参照)。このため、ベアリング36を交換するときには、従動ローラ40を駆動ローラ38から離間させて、従動ローラ40をハウジング50に対して分割方向他方側に位置しないように配置させる(
図8の(2)の状態を参照)。
【0048】
次に、ハウジング50において固定ボルトBL1の締結状態を解除し、着脱側ハウジング部材54及び着脱側カバー部材64を分割方向他方側へ移動して固定側ハウジング部材52から取外す。これにより、ベアリング36が露出される(
図8の(3)の状態を参照)。なお、カバー60の第2フランジ部60Cは、駆動ローラ38の凹部38A内に収容されている。このため、着脱側ハウジング部材54及び着脱側カバー部材64を分割方向他方側へ移動するときには、第2フランジ部60Cが駆動ローラ38に干渉する。よって、着脱側ハウジング部材54の左右方向両側における一方の着脱側カバー部材64を着脱側ハウジング部材54から取外す。すなわち、締結ボルトBL2の締結状態を解除する。この状態で、着脱側カバー部材64の姿勢を駆動ローラ38に対して傾けながら第2フランジ部60Cを駆動ローラ38の凹部38Aから脱落させる。これにより、一方の着脱側カバー部材64が着脱側ハウジング部材54から外れる。そして、他方の着脱側カバー部材64及び着脱側ハウジング部材54を、取外した一方の着脱側ハウジング部材54側へ移動させることで、他方の着脱側カバー部材64の第2フランジ部60Cが駆動ローラ38の凹部38Aから脱落する。よって、他方の着脱側ハウジング部材54及び着脱側カバー部材64を固定側ハウジング部材52から取外すことができる。
【0049】
次に、固定側ハウジング部材52の左右方向両側における一方の固定側カバー部材62を固定側ハウジング部材52から取外す(
図8の(4)の状態を参照)。すなわち、締結ボルトBL2の締結状態を解除し、固定側カバー部材62の姿勢を駆動ローラ38に対して傾けながら第2フランジ部60Cを駆動ローラ38の凹部38Aから脱落させる。これにより、固定側カバー部材62が固定側ハウジング部材52から外れる。
図8の(4)に示される状態では、右側の固定側カバー部材62を固定側ハウジング部材52から取外している。
【0050】
次に、シャフト34を左側へスライドさせることで、駆動ローラ38がシャフト34と共に左側へスライドする。これにより、左側の着脱側カバー部材64の第2フランジ部60Cにおける駆動ローラ38の凹部38Aへの収容状態が解除される。この状態で、シャフト34を、分割方向他方側へ移動させて、固定側ハウジング部材52から取外す。これにより、ベアリング36を交換することができる。
【0051】
なお、ベアリング36の交換後は、上記とは逆の手順によってシャフト34をハウジング50に取付ける。
【0052】
このように、ベアリング36の交換作業時等では、固定側カバー部材62(着脱側カバー部材64)を固定側ハウジング部材52(着脱側ハウジング部材54)から取外す作業、及び固定側カバー部材62(着脱側カバー部材64)を固定側ハウジング部材52(着脱側ハウジング部材54)に取付ける作業が必要になる。
【0053】
ここで、固定側カバー部材62(着脱側カバー部材64)は、締結ボルトBL2によって固定側ハウジング部材52(着脱側ハウジング部材54)に締結固定された固定部62A(固定部64A)と、固定側ハウジング部材52(着脱側ハウジング部材54)にシャフト34の軸方向及び軸方向と直交する方向に係合された係合部62C(係合部64C)と、を含んで構成されている。すなわち、固定側カバー部材62及び着脱側カバー部材64のハウジング50に対する締結箇所を1箇所にして、固定側カバー部材62及び着脱側カバー部材64をハウジング50に固定することができる。よって、例えば、固定側カバー部材62及び着脱側カバー部材64のハウジング50への締結箇所を2箇所にする場合と比べて、取付時及び取外時における作業工数を削減することができる。したがって、カバー60の取付時及び取外時の作業性を向上できる。また、固定側カバー部材62及び着脱側カバー部材64のハウジング50に対する締結箇所を1箇所にすることで、部品点数の削減に寄与することができる。
【0054】
また、上述のように、固定側カバー部材62の係合部62Cは、固定側ハウジング部材52の係合溝52Eにシャフト34の軸方向及び軸方向と直交する方向に係合しており、着脱側カバー部材64の係合部64Cは、着脱側ハウジング部材54の係合溝54Eにシャフト34の軸方向及び軸方向と直交する方向に係合している。これにより、係合部62C(係合部64C)を、固定側カバー部材62(着脱側カバー部材64)のハウジング50への締結固定時における回り止めとして機能させつつ、ハウジング50への固定部としても機能させることができる。
【0055】
また、固定側カバー部材62(着脱側カバー部材64)は、シャフト34を径方向外側から覆うカバー部60Aと、カバー部60Aにおけるハウジング50側端部に設けられた第1フランジ部60Bと、を含んで構成されている。さらに、固定側カバー部材62(着脱側カバー部材64)の固定部62A(固定部64A)が、第1フランジ部60Bの前端部(周方向一方側端部)に設けられ、係合部62C(係合部64C)が、第1フランジ部60Bの後端部(周方向他方側端部)に設けられている。そして、係合部62C(係合部64C)が、固定側ハウジング部材52(着脱側ハウジング部材54)の外周部に形成された係合溝52E(係合溝54E)に挿入されて、相対移動不能に係合される。これにより、簡易な構成で、固定側カバー部材62(着脱側カバー部材64)を固定側ハウジング部材52(着脱側ハウジング部材54)に係合することができる。
【0056】
また、ハウジング50の係合溝52E(係合溝54E)におけるカバー60側の側面が溝側傾斜面52E2(溝側傾斜面54E2)として構成され、溝側傾斜面52E2(溝側傾斜面54E2)は、係合溝52Eの長手方向から見て、係合溝52E(係合溝54E)の底部側へ向かうに従いハウジング50側へ傾斜している。さらに、カバー60の係合部62C(係合部64C)は、溝側傾斜面52E2(溝側傾斜面54E2)に当接する第2係合面62C2(第2係合面64C2)を有している。これにより、係合部62C(係合部64C)の係合溝52E(係合溝54E)への挿入時には、溝側傾斜面52E2(溝側傾斜面54E2)によって、係合部62C(係合部64C)をハウジング50側へ寄せ付けることができる。その結果、カバー60におけるハウジング50側の端面をハウジング50の左右方向の側面に密着させて、カバー60をハウジング50に取付けることができる。したがって、カバー60のハウジング50への取付状態を良好にすることができる。
【0057】
また、カバー60の分割面60Dがハウジング50の分割面50Bと面一に配置されており、シャフト34の軸方向から見て、ハウジング50の分割面50Bと係合溝52E(係合溝54E)との間の角度AG1(角度AG2)が鋭角に設定されている。これにより、固定側カバー部材62及び着脱側カバー部材64の分割面60D同士を密着させた状態で、着脱側カバー部材64を着脱側ハウジング部材54に固定することができる。すなわち、例えば、締結ボルトBL2によって着脱側カバー部材64を着脱側ハウジング部材54に仮固定し、この状態で、着脱側ハウジング部材54を固定側ハウジング部材52に固定ボルトBL1によって固定する。この後に、締結ボルトBL2を本締めする。このとき、着脱側カバー部材64に生じる回転モーメントによって係合部64Cを係合溝54Eに沿って固定側カバー部材62側へ移動させることができる。これにより、固定側カバー部材62及び着脱側カバー部材64の分割面60D同士を密着させて、着脱側カバー部材64を着脱側ハウジング部材54に固定することができる。また、例えば、締結ボルトBL2の本締め時に、作業者によって着脱側カバー部材64を後側(係合溝54E側)へ押付けることで、係合部64Cが係合溝54Eに沿って固定側カバー部材62側へ移動する。よって、この場合でも、固定側カバー部材62及び着脱側カバー部材64の分割面60D同士を密着させて、着脱側カバー部材64を着脱側ハウジング部材54に固定することができる。したがって、固定側カバー部材62及び着脱側カバー部材64の密着性を向上することができる。
【0058】
また、固定側カバー部材62及び着脱側カバー部材64は、カバー部60Aにおける駆動ローラ38側の端部に設けられた第2フランジ部60Cを有しており、駆動ローラ38のハウジング50側の端部には、ハウジング50側へ開放された凹部38Aが形成されている。そして、第2フランジ部60Cが凹部38Aの内部に収容されている。これにより、カバー60と駆動ローラ38との間に、所謂ラビリンス構造が形成される。したがって、糸Yがカバー60と駆動ローラ38との間からカバー60の内側へ侵入することを抑制できる。したがって、糸Yがシャフト34に巻付くことを効果的に抑制できる。
【0059】
なお、本実施形態では、固定側カバー部材62に係合部62Cが設けられると共に、着脱側カバー部材64に係合部64Cが設けられて、固定側カバー部材62及び着脱側カバー部材64の締結箇所が1箇所に構成されているが、固定側カバー部材62又は着脱側カバー部材64の締結箇所を2箇所にしてもよい。すなわち、固定側カバー部材62及び着脱側カバー部材64の一方において係合部の代わりに、締結部を設けてもよい。この場合でも、固定側カバー部材62及び着脱側カバー部材64の他方では、締結箇所が依然として1箇所となるため、固定側カバー部材62及び着脱側カバー部材64の他方における取付時及び取外時の作業性を向上することができる。
【0060】
特に、着脱側カバー部材64のみに係合部64Cを設けた場合には、例えば、固定側カバー部材62を固定側ハウジング部材52に一体に形成するように構成してもよい。この場合には、着脱側ハウジング部材54及び着脱側カバー部材64を固定側ハウジング部材52から取外した状態(
図8の(3)の状態)において、駆動ローラ38のシャフト34への締結状態を解除して駆動ローラ38をシャフト34に対してスライドさせることで、駆動ローラ38と固定側カバー部材62の第2フランジ部60Cとの干渉を抑制しつつ、シャフト34をハウジング50から取外すことができる。
【0061】
また、本実施形態では、ハウジング50の係合溝52E及び固定側カバー部材62の係合部62Cが、その長手方向から見て、略楔状に形成されて、係合溝52E及び係合部62Cがシャフト34の軸方向及び軸方向と直交する方向(以下、直交方向と称する)に係合する。すなわち、係合溝52Eの溝側傾斜面52E2及び係合部62Cの第2係合面62C2が、係合溝52E及び係合部62Cを、シャフト34の軸方向に係合させる部分と直交方向に係合させる部分として機能している。同様に、ハウジング50の係合溝54Eにおける溝側傾斜面54E2及び着脱側カバー部材64の係合部64Cにおける第2係合面64C2が、係合溝54E及び係合部64Cを、シャフト34の軸方向に係合させる部分と直交方向に係合させる部分として機能している。これに代えて、係合溝52E(係合溝54E)及び係合部62C(係合部64C)の係合において、シャフト34の軸方向に係合する部分と、直交方向に係合する部分と、に分かれるように、係合溝52E(係合溝54E)及び係合部62C(係合部64C)の形状を変更してもよい。以下、係合溝52E及び係合部62Cを用いて、係合溝52E(係合溝54E)及び係合部62C(係合部64C)の形状変更について説明する。
【0062】
すなわち、
図9に示されるように、変形例の係合溝52Eは、段差部52Dの前端部における左右方向内側部分に形成されると共に、その長手方向から見て、シャフト34側へ開放された凹状に形成されている。具体的には、係合溝52Eが、内側溝面52E3と、内側溝面52E3の後端部から左右方向外側へ延出された底面52E4と、底面52E4の左右方向外側端部から前方側へ延出された外側溝面52E5と、を含んで構成される。内側溝面52E3は、本実施形態の受け面52E1と同様に、固定側ハウジング部材52の左右の両側面と面一に配置されている。また、内側溝面52E3及び外側溝面52E5が、左右方向に対して直交する面に沿って形成されている。
【0063】
変形例の係合部62Cは、その長手方向から見て、係合溝52Eに対応して、略矩形状に形成される。具体的には、係合部62Cが、内側係合面62C3と、内側係合面62C3の後端部から左右方向外側へ延出された先端面62C4と、先端面62C4から前側へ延出された外側係合面62C5と、を含んで構成される。内側係合面62C3は、本実施形態の第1係合面62C1と同様に、固定側カバー部材62の端面と面一に配置されている。また、内側係合面62C3及び外側係合面62C5が、左右方向に対して直交する面に沿って形成されている。そして、係合部62Cが係合溝52E内に嵌まり込むことで、係合溝52E及び係合部62Cが、シャフト34の軸方向及び直交方向に係合する。すなわち、係合溝52Eの内側溝面52E3及び外側溝面52E5と係合部62Cの内側係合面62C3及び外側係合面62C5とが、シャフト34の軸方向に係合する部分に対応する。また、係合溝52Eの底面52E4と係合部62Cの先端面62C4とが、直交方向に係合する部分に対応する。これにより、本実施の形態と同様に、固定側カバー部材(着脱側カバー部材64)の係合部62C(係合部64C)をハウジング50に固定することができる。
【0064】
また、本実施の形態では、糸送り装置30が、仮撚機10に適用されているが、糸送り装置30を、POYを生成するための繊維機械に適用してもよいし、完全延伸糸(FDY:Fully Draw Yarn)を生成するための繊維機械に適用してもよい。
【符号の説明】
【0065】
10 仮撚機(繊維機械)
18 糸道
30 糸送り装置
30-1 第1糸送り装置
30-2 第2糸送り装置
30-3 第3糸送り装置
30-4 第4糸送り装置
34 シャフト(回転軸)
36 ベアリング(軸受)
38 駆動ローラ(ローラ)
38A 凹部
50 ハウジング(支持部材)
52 固定側ハウジング部材(半割支持部材)
52E 係合溝
52E2 溝側傾斜面
54 着脱側ハウジング部材(半割支持部材)
54E 係合溝
54E2 溝側傾斜面
60 カバー
60A カバー部
60B 第1フランジ部
60C 第2フランジ部
62 固定側カバー部材(半割カバー部材)
62A 固定部
62C 係合部
62C2 第2係合面(係合面)
64 着脱側カバー部材(半割カバー部材)
64A 固定部
64C 係合部
64C2 第2係合面(係合面)
AG1 角度
AG2 角度
BL2 締結ボルト(締結部材)