(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167061
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】ロータ及びモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/22 20060101AFI20241122BHJP
H02K 1/276 20220101ALI20241122BHJP
【FI】
H02K1/22 A
H02K1/276
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024076094
(22)【出願日】2024-05-08
(31)【優先権主張番号】202310573808.8
(32)【優先日】2023-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】524174070
【氏名又は名称】尼得科運動控制技術(广東)有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】顔 聖展
(72)【発明者】
【氏名】羅 大殷
(72)【発明者】
【氏名】王 天宝
(72)【発明者】
【氏名】周 志敏
(72)【発明者】
【氏名】谷 増祥
(72)【発明者】
【氏名】呉 若暉
(72)【発明者】
【氏名】魏 生旺
【テーマコード(参考)】
5H601
5H622
【Fターム(参考)】
5H601AA22
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD18
5H601FF02
5H601FF17
5H601GA02
5H601GA24
5H601GA25
5H601GA28
5H601GA34
5H622AA02
5H622CA02
5H622CA10
5H622CB05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】トルクリップルを効果的に低減する。
【解決手段】径方向に沿って分布する複数の貫通孔11をそれぞれが有する軸方向に沿って貫通する複数の貫通孔群10を有する。本開示によるロータ100は、副孔12をさらに有する。副孔は、径方向において隣接する貫通孔の間に位置する。副孔の断面積は貫通孔の断面積よりも小さい。一方向における副孔の長さが、一方向と垂直な他方向における副孔の幅よりも長い。副孔の径方向内側に隣接する貫通孔の端部の中心線とq軸との挟角が第1の角度a2であり、副孔の径方向外側に隣接する貫通孔の端部の中心線とq軸との挟角が第2の角度a3であり、副孔の端部の中心線とq軸との挟角が第3の角度La23である場合、第3角度は第1の角度以上であり、且つ、第3角度は第2角度以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線周りに回動することができ、径方向に沿って分布する複数の貫通孔をそれぞれが有する軸方向に沿って貫通する複数の貫通孔群を有し、
前記中心軸線に垂直な断面において、前記貫通孔の周方向中心と前記中心軸線とを通過する直線がq軸であるロータであって、
副孔をさらに有し、
前記副孔は、径方向において隣接する前記貫通孔の間に位置し、
前記副孔の断面積は前記貫通孔の断面積よりも小さく、
一方向における副孔の長さが、該一方向に垂直な他方向における前記副孔の幅よりも長く、
前記副孔の径方向内側に隣接する前記貫通孔の端部の中心線と前記q軸との挟角が第1の角度であり、前記副孔の径方向外側に隣接する前記貫通孔の端部の中心線と前記q軸との挟角が第2の角度であり、前記副孔の端部の中心線と前記q軸との挟角が第3の角度である場合、前記第3の角度は前記第1の角度以上であり、且つ、前記第3の角度は前記第2の角度以下である、ロータ。
【請求項2】
前記副孔の径方向内側に隣接する前記貫通孔と前記副孔との間隔幅が第1の幅であり、前記副孔の径方向外側に隣接する前記貫通孔と前記副孔との間隔幅が第2の幅である場合、前記第1の幅が前記第2の幅の2倍以上であり、且つ、前記第1の幅が前記第2の幅の3倍以下である、請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記副孔の幅が前記第2の幅の0.9倍以上であり、且つ、前記副孔の幅が前記第2の幅の1.1倍以下である、請求項2に記載のロータ。
【請求項4】
前記副孔の長さが前記副孔の幅の3倍以下である、請求項1に記載のロータ。
【請求項5】
前記副孔中に少なくとも1つの隔壁を有し、前記隔壁は、前記副孔を、前記副孔の長さ方向に分布する互いに連通しない少なくとも2つの子孔に仕切る、請求項1に記載のロータ。
【請求項6】
前記副孔の長手方向に沿った前記隔壁の寸法が前記副孔の幅以上であり、且つ、前記副孔の幅の1.5倍以下である、請求項5に記載のロータ。
【請求項7】
前記貫通孔の数が3つ又は4つ以上であり、
複数の前記貫通孔の径方向において隣接する第1の貫通孔と第2の貫通孔の径方向の間の領域が第1の領域であり、前記第1の貫通孔が前記第2の貫通孔の径方向外側に位置し、且つ、複数の前記貫通孔のうち前記第1の貫通孔が径方向最も外側に位置し、
複数の前記貫通孔の径方向において隣接する第3の貫通孔と第4の貫通孔の径方向の間の領域が第2の領域であるか、又は、前記第2の貫通孔と前記第3の貫通孔の径方向の間の領域が第2の領域であり、
前記貫通孔の数が3つである場合、前記第2の貫通孔は前記第3の貫通孔の径方向外側に位置し、
前記貫通孔の数が4つ以上である場合、前記第3の貫通孔は前記第4の貫通孔の径方向外側に位置し、
前記副孔の数が少なくとも2つであり、少なくとも1つの前記副孔が前記第1の領域に位置し、且つ、少なくとももう1つの前記副孔が前記第2の領域に位置する、請求項1に記載のロータ。
【請求項8】
前記ロータが第1の副孔をさらに有し、
前記ロータの、前記中心軸線に垂直な断面において、前記第1の副孔がd軸上に位置する、請求項1に記載のロータ。
【請求項9】
少なくとも1つの前記貫通孔内に設けられる磁石をさらに有する、請求項1に記載のロータ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のロータを有する、モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロータ及びモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の同期リラクタンスモータ(SynRM)のロータは、ロータを構成する電磁鋼板の中央に多数の貫通孔を有し、これらの貫通孔がフラックスバリアと呼ばれる空隙を形成する。これらの空隙がリラクタンスの差をもたらし、モータのステータに電流が流されたとき、リラクタンスの差が原因でリラクタンストルクが生じることにより、ロータの回転を駆動する。
【0003】
モータの効率をさらに向上させてモータの力率を高めるため、フラックスバリア内に磁石を挿入することにより永久磁石補助型同期リラクタンスモータ(PMa-SynRM)を形成することができる。フラックスバリア内に挿入された磁石は、追加的な磁束を生じてフラックストルクを提供する。これにより、モータの出力はリラクタンストルクとフラックストルクとを含むようになるため、モータの効率を向上することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
永久磁石補助型同期リラクタンスモータのフラックスバリアは、トルクを大きくし、且つ、トルクリップル(torque ripple)を小さくするために、ステータスロット(slot)に適合する必要がある。また、磁石自体に製造上の制約があり、例えば、磁石が薄すぎると取り付けにくく、しかも破断しやすいため、磁石は一定の厚みを有している必要がある。回転軸を差し引いた後に残るロータの径方向寸法は有限であることを考慮すると、フラックスバリアの数とステータスロットの数が一致しない状況が生じるおそれがある。即ち、スロッティング効果(slotting effect)が存在する。このような場合には、ロータのトルクリップルを効果的に低減するのが困難である。
【0005】
上記問題又は少なくとも類似した問題を解決するために、本開示は、ロータのトルクリップルを効果的に低減するロータ及びモータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による中心軸線周りに回動することができ、径方向に沿って分布する複数の貫通孔をそれぞれが有する軸方向に沿って貫通する複数の貫通孔群を有するロータは、該中心軸線に垂直な断面において、該貫通孔の周方向中心と該中心軸線とを通過する直線がq軸であり、副孔をさらに有する。副孔は、径方向において隣接する貫通孔の間に位置する。副孔の断面積は貫通孔の断面積よりも小さい。一方向における副孔の長さが、一方向に垂直な他方向における副孔の幅よりも長い。副孔の径方向内側に隣接する貫通孔の端部の中心線とq軸との挟角が第1の角度(a2)であり、副孔の径方向外側に隣接する貫通孔の端部の中心線とq軸との挟角が第2の角度(a3)であり、副孔の端部の中心線とq軸との挟角が第3の角度(La23)である場合、第3の角度は第1の角度以上であり、且つ、第3の角度は第2の角度以下である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ロータのトルクリップルを効果的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るロータの構成例を示す平面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係るロータの別の構成を示す平面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係るロータの別の構成を示す平面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係るロータの別の構成を示す平面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係るロータの別の構成を示す平面図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係るロータの別の構成を示す平面図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係るロータの別の構成を示す平面図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係るモータの分解概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示によるロータ及びモータを実施するための形態(以下、「実施形態」と記載する)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではない。また、各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。また、以下の各実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略される。
【0010】
本願の実施例では、「第1の」、「第2の」などの用語は、異なる要素を呼称において区別するために用いられるが、これらの要素の空間的配列又は時間的順序等を表しておらず、これらの要素は、これらの用語により制限されてはならない。「及び/又は」という用語は、関連して列挙される用語の1つ又は複数のうちいずれか1つ及びすべての組み合わせを含む。「含む」、「備える」、「有する」等の用語は、述べられた特徴、要素、部品又はアセンブリの存在を指すが、1つ又は複数の他の特徴、要素、部品又はアセンブリが存在するか又はそれらを追加することを排除しない。
【0011】
本願の実施例では、単数形の「一」、「該」等は複数形を含み、「1種の」又は「1タイプの」と広義に理解すべきであり、「1つの」という意味に限定するものではなく、また、「前記」という用語は、前後で別途明確に指摘していない限り、単数形も複数形も含むと理解すべきである。また、前後で別途明確に指摘していない限り、「に基づく」という用語は「~に少なくとも部分的に基づく」と理解すべきであり、「に基づく」という用語は「~に少なくとも部分的に基づく」と理解すべきである。
【0012】
本願の下記の説明では、説明の便宜のため、モータの中心軸線に沿って延在する方向又はそれと平行な方向を「軸方向」と呼び、中心軸線を中心とする半径方向を「径方向」と呼び、中心軸線周りの方向を「周方向」と呼ぶ。ただし、これらは説明の便宜のためであるに過ぎず、ロータの使用及び製造時の向きを限定しない。
【0013】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係るロータ100の構成について
図1を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態に係るロータ100の構成例を示す平面図である。ロータ100は軸方向に積層された複数の鋼板から構成されるため、
図1において示しているのは、1つの鋼板の軸方向における1つの端面である。ロータ100に用いられる鋼板は、例えばケイ素鋼板である。
【0014】
図1に示すように、ロータ100は中心軸線C周りに回動することができる。ロータ100は、径方向に沿って分布する複数の貫通孔11をそれぞれが有する。ロータ100は、軸方向に沿って貫通する複数の貫通孔群10(
図1では4つの貫通孔群10を有し、そのうち1つの貫通孔群10を破線で囲んでいる)を有する。貫通孔11はフラックスバリアと呼ばれ得る。ロータ100上における該複数の貫通孔群10の分布形態、及び各貫通孔11の形状については、関連技術を参照してよい。
【0015】
本願のいくつかの実施形態では、少なくとも1つの貫通孔11の軸方向における両端部が開放されてよい。また、少なくとも1つの貫通孔11の軸方向における一端部又は両端部が、ロータ100の軸方向端面に取り付けられる板部材(非図示)により閉塞されてもよい。また、少なくとも1つの貫通孔11の軸方向における一端部又は両端部が、該貫通孔11に挿入される挿入部材(非図示)により閉塞されてもよい。ここで、該板部材又は挿入部材は、例えばアルミニウムあるいはプラスチック等の非磁性材料であってよい。また、該板部材又は挿入部材は、鋼鉄等の材料であってもよい。
【0016】
ロータ100の、中心軸線Cに垂直な断面において、貫通孔11の周方向中心11aと中心軸線Cとを通過する直線がq軸である。各貫通孔群10はいずれも、それぞれのq軸を有する。
【0017】
図1に示すように、ロータ100は、少なくとも1つの副孔12をさらに有する。副孔12は、径方向において隣接する貫通孔11の間に位置する。例えば、副孔12は、第1の貫通孔111と第2の貫通孔112の径方向の間に位置する。第1の貫通孔111及び第2の貫通孔112は、径方向において互いに隣接する2つの貫通孔である。
【0018】
副孔12は、貫通孔群10のうち断面積が最も小さい貫通孔であり、副孔12の断面積は第1の貫通孔111の断面積よりも小さい。ここで、断面積は、軸方向に垂直な平面における副孔12又は貫通孔11の射影の面積を指す。
【0019】
図1に示すように、軸方向に垂直な平面において、一方向における副孔12の長さLBL23は、他方向における副孔12の幅LBw23より長くてもよい。ここで、該他方向は該一方向に垂直であり、該一方向は副孔12の長手方向であってよく、該他方向は副孔12の幅方向であってよい。例えば、副孔12は細長形状あるいは楕円形状等である。また、異なる位置の副孔12については、長手方向が互いに異なっていてよく、異なる位置の副孔12については、幅方向が互いに異なっていてよい。
【0020】
本願のいくつかの実施形態では、少なくとも1つの副孔12の軸方向における両端部は開放されてよい。また、少なくとも1つの副孔12の軸方向における一端部又は両端部が、ロータ100の軸方向端面に取り付けられる板部材(非図示)により閉塞されてよい。また、少なくとも1つの副孔12の軸方向における一端部又は両端部が、副孔12に挿入される挿入部材(非図示)により閉塞されてよい。ここで、該板部材又は挿入部材は例えばアルミニウムやプラスチック等の非磁性材料であってよい。また、該板部材又は挿入部材は鋼鉄等の材料であってもよい。
【0021】
図1に示すように、副孔12の径方向内側に隣接する貫通孔11(例えば第2の貫通孔112)の端部112aの中心線L2とq軸との挟角が第1の角度a2であり、副孔12の径方向外側に隣接する貫通孔11(例えば第1の貫通孔111)の端部111aの中心線L3とq軸との挟角が第2の角度a3である。副孔12の端部12aの中心線L1とq軸との挟角が第3の角度La23である場合、第3の角度La23は第1の角度a2以上であり、且つ、第3の角度La23は第2の角度a3以下である。即ち、a2≦La23≦a3である。
【0022】
図2は、
図1の鎖線領域1aの拡大概略図である。
図2は、中心線L1、L2、L3の定義を説明するために用いられる。
【0023】
図2に示すように、副孔12の径方向内側に隣接する貫通孔11(例えば第2の貫通孔112)の端部112aの中点が112a1である。また、端部112aの両側の接線がそれぞれ112a2及び112a3であり、中心線L2が中点112a1を通過する。ここの場合、中心線L2および接線112a2の挟角の大きさと、中心線L2および接線112a3の挟角の大きさとは等しい。また、接線112a2、112a3及び中心線L2はいずれも平行である。
【0024】
図2に示すように、副孔12の径方向外側に隣接する貫通孔11(例えば第1の貫通孔111)の端部111aの中点が111a1である。また、端部111aの両側の接線がそれぞれ111a2及び111a3であり、中心線L3が中点111a1を通過する。この場合、中心線L3および接線111a2の挟角の大きさと、中心線L3および接線111a3の挟角の大きさとは等しい。また、接線111a2、111a3及び中心線L3はいずれも平行である。
【0025】
図2に示すように、副孔12の端部12aの中点が12a1である。また、端部12aの両側の接線がそれぞれ12a2及び12a3であり、中心線L1が中点12a1を通過する。この場合、中心線L1および接線12a2の挟角の大きさと中心線L1および接線12a3の挟角の大きさとは等しい。また、或いは、接線12a2、12a3及び中心線L1がいずれも平行である。
【0026】
上述したように、第1実施形態に係るロータ100は、断面積が貫通孔11の断面積よりも小さい副孔12をロータ100内に設けているため、副孔12を介してロータ100内の磁束を調整することによって、ロータ100のトルクリップルを効果的に低減することができる。また、適当な角度になるように副孔12の端部の中心線を設定すれば、径方向において隣接する貫通孔(例えば第1の貫通孔111と第2の貫通孔112)の間の磁束経路の方向に副孔12の長手方向をできる限り沿わせることにより、ロータ100における磁束経路の分布に対する副孔12の影響を減少させることができる。
【0027】
図1に示すように、副孔12の径方向内側に隣接する貫通孔11(例えば第2の貫通孔112)と副孔12との間隔幅が第1の幅LSw231であり、副孔12の径方向外側に隣接する貫通孔11(例えば第1の貫通孔111)と副孔12との間隔幅が第2の幅LSw232である場合、第1の幅LSw231は第2の幅LSw232の2倍以上、3倍以下であってもよい。即ち、2*LSw232≦LSw231≦3*LSw232であってもよい。磁束経路のうちステータに近い側の磁束密度は通常、ステータから遠い側の磁束密度よりも高いため、第1の幅LSw231と第2の幅LSw232の数量関係を限定することによって、スロッティング効果の影響を減少させ、磁束密度の分布を均一化させることにより、トルクリップルをさらに低減することができる。
【0028】
副孔12の幅LBw23は第2の幅LSw232の0.9倍以上、1.1倍以下であってもよい。即ち、0.9*LSw232≦LBw23≦1.1*LSw232であってもよい。
【0029】
副孔12の長さLBL23は副孔12の幅LBw23の3倍以下であってもよい。即ち、LBw23<LBL23≦3*LBw23であってもよい。
【0030】
図1に示すように、副孔12は対になるように設けてよい。例えば、副孔12-1と副孔12-2はq軸に対して対称に設けてよい。即ち、副孔12-1と副孔12-2の位置はq軸に対して対称であってよく、且つ、副孔12-1と副孔12-2の形状はq軸に対して対称であってよい。
【0031】
また、本願の実施例は、これに限定されなくてよく、例えば、副孔12-1と副孔12-2の位置はq軸に対して対称に設けられなくてよく、及び/又は、副孔12-1と副孔12-2の形状はq軸に対して対称に設けられなくてよい。また、副孔12は、対になるように設けられなくてよく、例えば、少なくとも1つの貫通孔群10について、径方向において隣接する貫通孔11の間において、副孔12がq軸の片側に設けられてよい。
【0032】
図3は、第1実施形態に係るロータ100の別の構成を示す平面図である。
図3に示すように、少なくとも1つの貫通孔群10について、径方向において隣接する貫通孔11の間において、副孔12はq軸の片側に設けられてよい。言い換えると、副孔12はq軸に対して対称に設けられていなくてもよい。
【0033】
図4は、第1実施形態に係るロータ100の別の構成を示す平面図である。
図4に示すように、少なくとも2つの副孔12が、径方向において異なる領域に設けられてもよい。
図4の例では、ロータ100の貫通孔群10のうち貫通孔11の数が3つである。該3つの貫通孔11のうち、径方向において隣接する第1の貫通孔111と第2の貫通孔112の径方向の間の領域が第1の領域A1である。ここで、第1の貫通孔111は第2の貫通孔112の径方向外側に位置し、且つ、該貫通孔群10の複数の貫通孔11のうち第1の貫通孔111は径方向の最も外側に位置する。また、該貫通孔群10において、第2の貫通孔112と第3の貫通孔113の径方向の間の領域が第2の領域A2である。ここで、第2の貫通孔112は第3の貫通孔113の径方向外側に位置する。
【0034】
図4に示すように、少なくとも2つの副孔12のうち、少なくとも1つの副孔12(例えば、
図4における副孔12-3)が第1の領域A1に位置し、且つ、少なくとももう1つの副孔12(例えば、
図4における副孔12-4)が第2の領域A2に位置してもよい。これにより、副孔12を用いて、異なる径方向位置における磁束密度を調整することができる。
【0035】
また、貫通孔11の数が4つ以上である場合には、第2の領域A2が第2の貫通孔112と第3の貫通孔113の径方向の間に位置し得るか、又は、第2の領域A2が第3の貫通孔113と第4の貫通孔(図示せず)の径方向の間に位置し得る。ここで、第3の貫通孔113と該第4の貫通孔は径方向において隣接しており、且つ、第3の貫通孔113は、該第4の貫通孔の径方向外側に位置し得る。
【0036】
図5は、第1実施形態に係るロータ100の別の構成を示す平面図である。
図5に示すように、ロータ100は、副孔12の他に、第1の副孔13も有してもよい。ここで、第1の副孔13はd軸上に位置する。即ち、ロータ100の中心軸線Cに垂直な断面において、d軸が第1の副孔13を貫通する。第1の副孔13もトルクリップルを低減することができる。ロータ100の中心軸線Cに垂直な断面においてd軸とq軸とは交差し、例えば、d軸とq軸の挟角が45度又は30度等である。
【0037】
図6は、第1実施形態に係るロータ100の別の構成を示す平面図である。
図6(A)は6極ロータ(6-pole rotor)を示しており、
図6(B)は8極ロータを示している。
図6の説明において、
図1と同様の構成については説明を行わない。本願において、副孔12の設計に関しては、
図1に示す4極ロータに用いてよいだけでなく、
図6に示す6極ロータおよび8極ロータにも用いることができ、本願はロータの極数を限定しない。
【0038】
図7は、第1実施形態に係るロータ100の別の構成を示す平面図である。
図1では、ロータ100の少なくとも1つの貫通孔11に磁石14が設けられた永久磁石補助型同期リラクタンスモータの例を示したが、
図7に示すように、ロータ100の貫通孔11に磁石を設けなくてもよい。本願において、副孔12の設計に関しては、
図1に示す貫通孔11に磁石14が設けられたロータに用いてよいだけでなく、
図7に示す貫通孔11に磁石を有しないロータに用いることもでき、本願は貫通孔11に磁石を設けているか否かについては限定しない。
【0039】
図8は、第1実施形態に係るロータ100の別の構成を示す平面図である。
図1から
図7中のロータ100についての説明は、
図8に示すロータ100にいずれも適用される。
【0040】
図8に示すように、ロータ100は、副孔12a内に少なくとも1つの隔壁121を有していてもよい。隔壁121は、副孔12aを、副孔12aの長手方向に分布する互いに連通しない少なくとも2つの部分(例えば、少なくとも2つの子孔)に仕切る。
【0041】
図8に示すように、副孔12aの長手方向に沿った隔壁121の寸法Rwは副孔12aの幅LBw23以上であり、且つ、副孔12aの幅LBw23の1.5倍以下であってもよい。即ち、1.0*LBw23≦Rw≦1.5*LBw23であってもよい。ロータ100の磁気飽和度が低く、
図8に示す副孔12aの隔壁121が磁束の通路となることにより、磁束密度の分布を調整し、トルクリップルを抑制することができる。例えば、高速低トルクの場面では、隔壁121はロータ100のトルクリップルに対して減衰作用を生じることができる。
【0042】
表1は、第1実施形態に係るロータ100を採用した場合のモータの性能向上状況を示している。
【表1】
【0043】
表1は、異なる動作点における、モータに従来のロータ及び第1実施形態に係るロータ100を採用した場合の、異なる性能を列記している。例えば、トルクが25.5Nmであり回転数が1444rpmである動作点では、トルクリップルが11.9%から7.89%まで低下した。トルクが19.5Nmであり回転数が1660rpmである動作点では、トルクリップルが13.50%から9.53%にまで低下した。トルクが12.2Nmであり回転数が2570rpmである動作点では、トルクリップルが23.65%から14.87%まで低下した。
【0044】
このことから、第1実施形態に係るロータ100を採用した場合には、モータのトルクリップルが顕著に低下しており、また、モータの効率も一定程度向上したことが分かる。
【0045】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態に係るモータ90の分解概略図である。
図9に示すように、モータ90は、中心軸線に沿って延在する回転軸91と、周方向に配置された極スロット(即ちステータスロット)と、隣接する極スロットの間に形成されたティース(図示せず)と、該極スロットに収容されたコイル(図示せず)とを有するステータ92と、回転軸91を中心に回転するロータ100とを有する。第1実施形態において、ロータ100の構造について詳細に説明しているため、無用な記述はここで繰り返さない。
【0046】
モータ90は、一方向回転モータ又は双方向回転モータであってよい。モータ90の他の構成部材は従来技術と同じであり、無用な記述はここで繰り返さない。
【0047】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る駆動手段(図示せず)は、第2実施形態に係るモータを有する。第2実施形態において該モータの主な構造について詳細に説明しているため、無用な記述はここで繰り返さない。
【0048】
該駆動手段は、工業用電動機、圧縮ポンプ、家庭用機器等の動力伝動に応用可能なモータを取り付ける何らかの装置であってよい。
【0049】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0050】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)
中心軸線周りに回動することができ、径方向に沿って分布する複数の貫通孔をそれぞれが有する軸方向に沿って貫通する複数の貫通孔群を有し、
前記中心軸線に垂直な断面において、前記貫通孔の周方向中心と前記中心軸線とを通過する直線がq軸であるロータであって、
副孔をさらに有し、
前記副孔は、径方向において隣接する前記貫通孔の間に位置し、
前記副孔の断面積は前記貫通孔の断面積よりも小さく、
一方向における副孔の長さが、該一方向に垂直な他方向における前記副孔の幅よりも長く、
前記副孔の径方向内側に隣接する前記貫通孔の端部の中心線と前記q軸との挟角が第1の角度であり、前記副孔の径方向外側に隣接する前記貫通孔の端部の中心線と前記q軸との挟角が第2の角度であり、前記副孔の端部の中心線と前記q軸との挟角が第3の角度である場合、前記第3の角度は前記第1の角度以上であり、且つ、前記第3の角度は前記第2の角度以下である、ロータ。
(2)
前記副孔の径方向内側に隣接する前記貫通孔と前記副孔との間隔幅が第1の幅であり、前記副孔の径方向外側に隣接する前記貫通孔と前記副孔との間隔幅が第2の幅である場合、前記第1の幅が前記第2の幅の2倍以上であり、且つ、前記第1の幅が前記第2の幅の3倍以下である、前記(1)に記載のロータ。
(3)
前記副孔の幅が前記第2の幅の0.9倍以上であり、且つ、前記副孔の幅が前記第2の幅の1.1倍以下である、前記(2)に記載のロータ。
(4)
前記副孔の長さが前記副孔の幅の3倍以下である、前記(1)~(3)のいずれか一つに記載のロータ。
(5)
前記副孔中に少なくとも1つの隔壁を有し、前記隔壁は、前記副孔を、前記副孔の長さ方向に分布する互いに連通しない少なくとも2つの子孔に仕切る、前記(1)~(4)のいずれか一つに記載のロータ。
(6)
前記副孔の長手方向に沿った前記隔壁の寸法が前記副孔の幅以上であり、且つ、前記副孔の幅の1.5倍以下である、前記(5)に記載のロータ。
(7)
前記貫通孔の数が3つ又は4つ以上であり、
複数の前記貫通孔の径方向において隣接する第1の貫通孔と第2の貫通孔の径方向の間の領域が第1の領域であり、前記第1の貫通孔が前記第2の貫通孔の径方向外側に位置し、且つ、複数の前記貫通孔のうち前記第1の貫通孔が径方向最も外側に位置し、
複数の前記貫通孔の径方向において隣接する第3の貫通孔と第4の貫通孔の径方向の間の領域が第2の領域であるか、又は、前記第2の貫通孔と前記第3の貫通孔の径方向の間の領域が第2の領域であり、
前記貫通孔の数が3つである場合、前記第2の貫通孔は前記第3の貫通孔の径方向外側に位置し、
前記貫通孔の数が4つ以上である場合、前記第3の貫通孔は前記第4の貫通孔の径方向外側に位置し、
前記副孔の数が少なくとも2つであり、少なくとも1つの前記副孔が前記第1の領域に位置し、且つ、少なくとももう1つの前記副孔が前記第2の領域に位置する、前記(1)~(6)のいずれか一つに記載のロータ。
(8)
前記ロータが第1の副孔をさらに有し、
前記ロータの、前記中心軸線に垂直な断面において、前記第1の副孔がd軸上に位置する、前記(1)~(7)のいずれか一つに記載のロータ。
(9)
少なくとも1つの前記貫通孔内に設けられる磁石をさらに有する、前記(1)~(8)のいずれか一つに記載のロータ。
(10)
前記(1)~(9)のいずれか一つに記載のロータを有する、特徴とするモータ。
【符号の説明】
【0051】
10 貫通孔群
11 貫通孔
12 副孔
14 磁石
91 回転軸
92 ステータ
100 ロータ