(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167064
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】対物レンズ配置構造、ニアアイデバイスの測定のための測定デバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20241122BHJP
G02B 13/00 20060101ALI20241122BHJP
G02B 13/22 20060101ALI20241122BHJP
G01M 11/00 20060101ALI20241122BHJP
G01J 3/51 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B13/00
G02B13/22
G01M11/00 T
G01J3/51
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024077660
(22)【出願日】2024-05-13
(31)【優先権主張番号】10 2023 113 210.5
(32)【優先日】2023-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】523016858
【氏名又は名称】テクノティーム ホールディング ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウド クリューガー
(72)【発明者】
【氏名】インゴ ロッチョル
(72)【発明者】
【氏名】トビアス ポルシュ
(72)【発明者】
【氏名】ステファン シュラム
【テーマコード(参考)】
2G020
2G086
2H087
2H199
【Fターム(参考)】
2G020AA08
2G020DA13
2G020DA32
2G086EE12
2H087KA12
2H087LA01
2H087LA27
2H087MA00
2H087NA02
2H087RA00
2H087RA27
2H087RA34
2H087RA43
2H087RA44
2H087UA09
2H199CA04
2H199CA25
2H199CA42
2H199CA45
2H199CA74
2H199CA92
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ニアアイディスプレイ(NED)を測定するための測定デバイスを提供する。
【解決手段】フロントアパーチャ、オブジェクティブおよび液体レンズを有する対物レンズ配置構造に関し、オブジェクティブおよび液体レンズは、フロントアパーチャに対して結像側にある位置に光軸に沿って固定的に配置され、フロントアパーチャの反対側の対物側に提示された結像ビーム路を、少なくとも1つのセンサ平面に結像するように設定されている。液体レンズは、人間の観察者によって鮮明に知覚され得るNED結像ビーム路を、当該液体レンズの調整によって、少なくとも1つのセンサ平面に鮮明に結像できるように、その光学的効果を調整可能である。フロントアパーチャが、対物レンズ配置構造の系入射瞳用の開口絞りとして設計され、2ミリメートル~6ミリメートルの開口を有する。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズ配置構造(101)であって、
フロントアパーチャ(140)、オブジェクティブ(120)および液体レンズ(110)を備え、
前記オブジェクティブ(120)および前記液体レンズ(110)は、前記フロントアパーチャ(140)の結像側(BS)にある位置に光軸(OA、OA’)に沿って固定的に配置され、かつ、NED結像ビーム路を、当該NED結像ビーム路が前記フロントアパーチャ(140)の反対側の対物側(OS)に提示されたときに、少なくとも1つのセンサ平面(S、S’)上に結像するように設計されており、
前記液体レンズ(110)は、当該液体レンズの光学的効果を調整可能であり、人間の観察者によって鮮明に知覚され得るNED結像ビーム路を、当該液体レンズ(110)の調整によって、前記少なくとも1つのセンサ平面(S、S’)に鮮明に結像できるようになっており、
前記フロントアパーチャ(140)は、前記対物レンズ配置構造(101)の系入射瞳(EP)用の開口絞りとして設計され、2ミリメートル~6ミリメートルのアパーチャ開口を有し、
前記オブジェクティブ(120)は、
前記フロントアパーチャ(140)の前方に像距離(s2)で反対側の対物側(OS)に提示された仮想像(V)を、中間像平面(Z)に結像して中間像にするための第1オブジェクティブグループ(122)と、
前記第1オブジェクティブグループ(122)から構造的に離され、前記ビーム路に沿って下流に配置された、前記中間像を前記少なくとも1つのセンサ平面(S、S’)上に結像するための少なくとも1つの第2オブジェクティブグループ(123)と、を備える、
対物レンズ配置構造(101)。
【請求項2】
前記オブジェクティブ(120)および前記液体レンズ(110)は、少なくとも1つのセンサ平面(S,S’)上に前記仮想像(V)を結像するように設計されており、
前記液体レンズ(110)は、焦点範囲(VΔ)内に提示された仮想像(V)を、当該液体レンズ(110)の調整によって、前記少なくとも1つのセンサ平面(S,S’)上に鮮明に結像できるように、当該液体レンズの光学的効果を調整可能である、
請求項1に記載の対物レンズ配置構造(101)。
【請求項3】
前記フロントアパーチャ(140)は、離散的に調整可能な絞り開口を有する交換可能な絞りとして、または、連続的に調整可能な絞り開口を有する虹彩絞りとして設計されている、
請求項1または請求項2に記載の対物レンズ配置(101)。
【請求項4】
前記液体レンズ(110)は、前記フロントアパーチャ(140)と前記オブジェクティブ(120)との間で前記結像側に配置されている、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の対物レンズ配置構造(101)。
【請求項5】
前記液体レンズ(110)および前記オブジェクティブ(120)は、最大で32.5ミリメートルの直径(D)を有する、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の対物レンズ配置構造(101)。
【請求項6】
前記オブジェクティブ(120)は、結像側エントセントリックビーム路または結像側テレセントリックビーム路用に設定されている、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の対物レンズ配置構造(101)。
【請求項7】
フィールドレンズ(124)が前記中間像平面(Z)に配置され、当該フィールドレンズ(124)は、前記第1オブジェクティブグループ(122)の第1射出瞳(AP1)を前記第2オブジェクティブグループ(123)の第2入射瞳(EP2)に適合させるように、及び/又は、収差を補正するように設定されている、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の対物レンズ配置(101)。
【請求項8】
少なくとも1つのビーム偏向器(125)によって、少なくとも1つの光路(P1、P2)の前記ビーム路が、前記フロントアパーチャ(140)を直角に通ってのびる第1光軸(OA)対して、少なくとも部分的に、傾斜及び/又はオフセットの態様で偏向される、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の対物レンズ配置構造(101)。
【請求項9】
少なくとも1つのビームスプリッタ(126)が、前記ビーム路内に、前記結像側で、前記液体レンズ(110)より後方に配置されて、前記ビーム路を分割して、前記仮想像(V)を第1光路(P1)に沿って第1センサ平面(S)上に写像する空間的に対応する像と、前記仮想像(V)を少なくとも1つのさらなる光路(P2)に沿ってさらなるセンサ平面(S’)上に写像する空間的に対応する像とにする、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の対物レンズ配置構造(101)。
【請求項10】
ニアアイデバイス(NED)(20)を測定するための測定デバイス(100)であって、
フロントアパーチャ(140)、オブジェクティブ(120)および液体レンズ(110)を備える対物レンズ配置構造(101)を備え、
前記オブジェクティブ(120)および前記液体レンズ(110)は、前記フロントアパーチャ(140)の結像側(BS)にある位置に光軸(OA、OA’)に沿って固定的に配置され、かつ、NED結像ビーム路を、当該NED結像ビーム路が前記フロントアパーチャ(140)の反対側の対物側(OS)に提示されたときに、少なくとも1つのセンサ平面(S、S’)上に結像するように設計されており、
前記液体レンズ(110)は、当該液体レンズの光学的効果を調整可能であり、人間の観察者によって鮮明に知覚され得るNED結像ビーム路を、当該液体レンズ(110)の調整によって、前記少なくとも1つのセンサ平面(S、S’)に鮮明に結像できるようになっており、
前記フロントアパーチャ(140)は、前記対物レンズ配置構造(101)の系入射瞳(EP)用の開口絞りとして設計され、2ミリメートル~6ミリメートルのアパーチャ開口を有し、
前記測定デバイスは、さらに、
センサ平面(S、S’)に配置され、前記NED(20)の測光測定及び/又は測色測定及び/又は分光測定のために設計された少なくとも1つのセンサ(130、130’)を備え、
測光フィルタまたは測色フィルタ(150)が、前記仮想像(V)から前記少なくとも1つのセンサ(130、130’)に向かう少なくとも1つの光路(P1,P2)内に配置されている、
測定デバイス(100)。
【請求項11】
前記測定デバイス(100)は、
前記フロントアパーチャ(140)を直角に通ってのびる第1光軸(OA)と、前記フロントアパーチャ(140)から前記結像側に距離(s3)のところで交差する旋回軸(SX)の周りに旋回可能に取り付けられ、当該距離(s3)は、人間の眼の瞳孔からの当該眼のピボット点の典型的な距離にほぼ等しい、
請求項10に記載の測定デバイス(100)。
【請求項12】
第1対物レンズ配置構造(101)が、センサ平面(S、S’)に配置されかつ双眼用NED(20)の測光測定及び/又は測色測定及び/又は分光測定のために設定された少なくとも1つのセンサ(130、130’)上に当該双眼用NED(20)の第1結像ビーム路を結像するように配置かつ構成され、
第2対物レンズ配置構造(101)が、センサ平面(S、S’)に配置されかつ前記双
眼用NED(20)の測光測定及び/又は測色測定及び/又は分光測定のために設定された少なくとも1つのセンサ(130、130’)上に当該双眼用NED(20)の第2結像ビーム路を結像するように配置かつ構成されている、
請求項10または請求項11に記載の測定デバイス(100)。
【請求項13】
フロントアパーチャ(140)とオブジェクティブ(120)と液体レンズ(110)とを備える測定デバイス(100)を用いたNED(20)の測光測定の方法であって、
前記オブジェクティブ(120)および前記液体レンズ(110)は、前記フロントアパーチャ(140)に対して結像側(BS)にある位置に光軸(OA、OA’)に沿って固定的に配置され、かつ、NED結像ビーム路を、当該NED結像ビーム路が前記フロントアパーチャ(140)の反対側の対物側(OS)に提示されたときに、少なくとも1つのセンサ平面(S、S’)上に結像するように設計されており、
前記液体レンズ(110)は、当該液体レンズの光学的効果を調整可能であり、人間の観察者によって鮮明に知覚され得るNED結像ビーム路を、当該液体レンズ(110)の調整によって、前記少なくとも1つのセンサ平面(S、S’)に鮮明に結像できるようになっており、
前記フロントアパーチャ(140)は、前記対物レンズ配置構造(101)の系入射瞳(EP)用の開口絞りとして設計され、2ミリメートル~6ミリメートルのアパーチャ開口を有し、
前記測定デバイスは、さらに、センサ平面(S、S’)に配置され、前記NED(20)の測光測定及び/又は測色測定及び/又は分光測定のために設定された少なくとも1つのセンサ(130、130’)を備え、
前記NED(20)と前記対物レンズ配置構造(101)との相互作用において生じる少なくとも1つの光学的外乱が、前記少なくとも1つのセンサ(130、130’)で記録された少なくとも1つの生の測定値から計算により補正される、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントアパーチャ、オブジェクティブおよび液体レンズを有する対物レンズ配置構造に関し、オブジェクティブおよび液体レンズは、フロントアパーチャに対して一方の結像側にある位置で光軸に沿って固定的に配置され、フロントアパーチャの前方に像距離で反対の対物側に提示される仮想像を少なくとも1つのセンサ平面に結像するように設定される。
【0002】
本発明は、さらに、このようなレンズ配置構造とセンサとを備えるニアアイディスプレイ(NED)を測定するための測定デバイスに関する。
【0003】
本発明は、さらに、このような測定デバイスを用いたNEDの測光測定のための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
ニアアイディスプレイ(NED)(ニアアイデバイスとも呼ばれる)は、リーティング距離よりもかなり短い距離、典型的には5センチメートルよりも短い距離で像が提示されるデバイスとして、従来技術から知られている。NEDは、グラス(例えば、仮想現実(VR)グラス、拡張現実(AR)グラス)の形態で知られており、グラステンプル、フレーム及び/又はヘッドバンドで視聴者の頭部に固定することができる。これらは、例えば発光ダイオード(LED)ディスプレイを有する。このディスプレイ素子に表示された像は、内部NED光学系によって、視軸に沿って眼の瞳孔面から仮想距離にある(観察者から遠ざかるNEDの側にある)仮想像として観察者の眼に提示される。
【0005】
内部NED光学系は、さまざまな距離で仮想像を表示できるようにフォーカス(焦合)することができる。NEDのさまざまなフォーカス(焦合)状態は、それに対応する様々な視聴者の眼の調整状態によって補償されるため、表示される像は常に鮮明(シャープ)に現れる。
【0006】
典型的に、仮想像は、視聴者の眼から少なくとも20センチメートルの距離(人間の眼のリーディング距離または近距離範囲に相当する)で表示される。以下では、仮想像とは、幾何学的な光線光学の意味で、このような距離(視聴者の目から見て、NEDの背後)に提示される仮想像であると理解される。
【0007】
さらに、NEDは、コリメートされたレーザービームまたは他の光源からの同様にコリメートされたビーム路の十分に急な偏向によって(例えば偏向可能なマイクロミラーを備えたマイクロメカニカルシステムによって)観察者の眼の網膜上に像が投影されるものとして知られている。網膜ライティングまたは網膜結像として知られるこのような結像方法は、例えば補償光学によって、任意に変化させることができる距離で観察者の眼から見える像を提示するためにも利用することができる。このようなNEDは、提示された像が網膜上に正しく投影されるように、固定焦点距離または可変焦点距離への観察者の眼の調節を必要とする場合がある。
【0008】
以下では、NEDが観察者の眼の網膜上に像を投影するためのビーム路を、概して、NED結像ビーム路と称するが、これは、網膜に仮想像が投影されるかや、(網膜ライティングの場合のように)急に偏向されたコリメートビームを用いて投影されるかに関係はない。いずれの場合も、正確な測光測定には、観察者の眼の調節に類似した測定デバイスの光学系の調整が必要である。
【0009】
文献US2019/0191151A1は、以下を含むマルチ構造ニアアイディスプレイの性能特性評価のためのシステムおよび方法を記載している:ミラー;ランプ;ビームスプリッタ;ビームスプリッタから反射された光をコリメートし、ビューファインダを有する画像センサに向かって反射させるためのコリメート反射レンズ;対物レンズを通じてテスト対象デバイス(DUT)(device under test)上にランプからの光を投影するための視野(FOV)アパーチャ;DUTの仮想像を捉えるためのビデオビューファインダーデジタルカメラ;DUTの性能を特性評価するために、定義された測定領域の捉えた画像に対して分光放射測定を実行するための分光放射計;および、分光放射測定に基づいてDUTの性能を特性評価するためのコントローラー回路。
【0010】
このようなNEDの測光測定は、また、スペクタクルテンプルやフレーム、同様の保持デバイスによって制限された構造スペースや移動スペースに挿入できるような、十分に小型で操作性に優れた測定デバイスも必要とする。さらに、このような測定デバイスを用いて、観察者の眼の調節挙動(眼レンズの屈折力の変化)および順応挙動(眼の入射瞳として機能する眼の瞳孔のアパーチャ直径の変化)をシミュレートできなければならない。さらに、正しい測定のためには、測定デバイスの入射瞳の位置は、眼の入射瞳(すなわち眼の瞳孔)の位置に対応しなければならない。
【0011】
既知の測光デバイスは、これらの要件を満たしていないか、不十分である。したがって、NEDを測定するための改良された測定デバイスおよび改良された測定方法が必要とされている。
【発明の開示】
【0012】
第1の態様によれば、本発明は、NEDの改良された測光測定のための測定デバイスの用途に適したレンズ配置構造を具体化するという課題に基づいている。この課題は、本発明によれば、請求項1の特徴を有する対物レンズ配置構造によって解決される。
【0013】
第2の態様によれば、本発明はまた、NEDの改良された測光測定に適した測定デバイスを提供するという課題にも基づいている。この課題は、本発明によれば、請求項10の特徴を有する測定デバイスによって解決される。
【0014】
第3の態様によれば、本発明はまた、NEDの改良された測光測定のための方法を提供するという課題にも基づいている。この課題は、本発明によれば、請求項13の特徴を有する方法によって解決される。
【0015】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0016】
ニアアイディスプレイ(NED)の測光測定、例えば測光及び/又は測色及び/又は分光の測定のための測定デバイスは、NEDによって提示される結像ビーム路、例えば仮想像を結像するための結像ビーム路または網膜ライティングのために設定された結像ビーム路を、センサのセンサ表面上に結像するためのレンズ配置構造を備える。
【0017】
本発明の第1の態様によれば、対物レンズ配置構造は、フロントアパーチャ、オブジェクティブ(1つまたは複数の対物レンズを備えてよい)、および、光学効果、特にその屈折力が可変である液体レンズを備える。オブジェクティブおよび液体レンズは、光軸に沿って固定された位置に、すなわち光軸に沿って移動不能に配置され、フロントアパーチャに対して結像側に、すなわち対物レンズ配置構造によって測定されるNEDから離れ、少なくとも1つのセンサ平面に向くフロントアパーチャの側に配置される。液体レンズは、オブジェクティブの一部として設計することができ、特にオブジェクティブに構造的に接続することができ、または、オブジェクティブから独立して設けることができる。
【0018】
オブジェクティブおよび液体レンズは、NEDから放出された結像光線を少なくとも1つのセンサ平面上に結像するように設定および配置されており、結像光線はフロントアパーチャの結像側とは反対側にて提示される。この側(NEDの方を向いている)を対物側と称する。このように、フロントアパーチャは、オブジェクティブおよび液体レンズの前方に配置されて、測定されるNED(結像ビーム路を提供する)の方を向くようになっている。
【0019】
液体レンズの光学効果、特にその焦点距離は調整可能である。特に、液体レンズは、約10ディオプトルの人間の眼の調節能力に類似した屈折力の変化を有するように設定されて、観察者の眼の様々な調整状態に対してNEDによって提示される結像ビーム路が、液体レンズを調整することによって少なくとも1つのセンサ平面において鮮明に結像できるようになっている。
【0020】
フロントアパーチャは、対物レンズ配置構造の系入射瞳のためのアパーチャ絞りとして設計され、人間の眼の瞳孔開口のアパーチャ開口(直径)が順応によって変更可能な範囲にあるアパーチャ開口を有する。好ましくは、フロントアパーチャは、2ミリメートルから6ミリメートルの間の直径を有するアパーチャ開口を有する。
【0021】
系入射アパーチャは、レンズ配置構造に入射するすべてのホモセントリックビーム束の共通断面である。
【0022】
対物レンズ配置構造の利点は、フロントアパーチャによって形成される入射瞳に外部からアクセスできることである。これは、例えばNEDに対して、それを、非常に正確に位置決めできることを意味する。さらに、例えば、それを、異なるアパーチャ付きのフロントアパーチャと交換するといったように、特に簡単に操作することができ、また、それが、調整可能な絞りとして設計されている場合は、アパーチャを容易に変更することができる。
【0023】
さらに、対物レンズ配置構造は、調整可能な、好ましくは、観察者の眼の様々な調節状態のためにフォーカス可能(合焦可能)な液体レンズが、レンズ配置構造またはその中に含まれる部品・素子の機械的な移動を必要とすることなく、NEDによって提示される結像ビーム路を少なくとも1つのセンサ平面上に鮮明に結像するために使用されるという利点を有する。これにより、レンズまたはレンズグループの移動範囲を必要とするフォーカス可能なレンズ配置構造のための既知の解決策と比較して、スペースを節約することができる。特に、これにより、フロントアパーチャを垂直に通過する光軸の方向におけるレンズ配置構造の長さを特に短くすることができる。
【0024】
したがって、このようなレンズ配置構造は、例えば測光測定に使用されるセンサ上にNEDの仮想像を結像する場合など、動きの自由度が制限される測定状況において特に有利に使用することができる。
【0025】
直接投影するNEDでは(すなわち、例えばレーザービームによる網膜ライティングの方法で)、内部NED光学系は、通常、観察者の眼に投影される結像ビーム路のビームが観察者の眼の主点を通過する主ビームであることを保証する。これにより、眼球が調節されても、常に同じ大きさの鮮明な像が観察者の眼の網膜上に生成される。観察者の眼の主点の位置は、調節によって移動することが知られている。
【0026】
このような直接投影NEDの測定のために設定される対物レンズ配置構造の一実施形態では、液体レンズは、その屈折力を変化させることによって主点を位置づけることができるように設定かつ配置される。これにより、調節によって引き起こされる他の潜在的な効果を調査することが可能になる。
【0027】
レンズ配置構造の一実施形態では、オブジェクティブおよび液体レンズは、フロントアパーチャの前方に像距離で反対の対物側に提示される仮想像を少なくとも1つのセンサ平面に結像するために設定され、液体レンズの光学効果は、液体レンズを調整することによって、焦点範囲に提示される仮想像を少なくとも1つのセンサ平面上に鮮明に結像することができるように調整可能である。
【0028】
特に、調節によってNEDを捉える観察者の眼(測定デバイスの代わり)の網膜上に鮮明に結像され得る焦点範囲に提示される仮想像が、少なくとも1つのセンサ平面に鮮明に結像され得るように、液体レンズの屈折力を調整することができる。換言すれば、液体レンズは、その像距離が焦点範囲内に入る仮想像を少なくとも1つのセンサ平面上に結像するために、対物レンズと連動して設定される。
【0029】
一実施形態では、フロントアパーチャは、離散的に調整可能な絞り開口を有する交換可能な絞りとして、または、連続的に調整可能な絞り開口を有する虹彩絞りとして設計される。この実施形態は、例えば観察者の眼の異なる順応状態に対応するNEDの測光測定など、様々な入力アパーチャによる測定に適している。
【0030】
一実施形態では、液体レンズは、フロントアパーチャとオブジェクティブとの間で結像側に配置される。これにより、直径が下流の対物レンズの直径に比べて小さい液体レンズを使用することができ、したがって、よりコスト効率よく、及び/又は、より正確に製造することができる。
【0031】
一実施形態では、液体レンズとオブジェクティブの直径は、32.5mm以下である。この実施形態は、低コストで製造可能であり、多くの測定目的、例えばNEDの測光測定には十分であり、特に、NEDによって提示される仮想像が重複する空間角度で捉えられるように、連続した測定でレンズ配置構造をNEDに対して旋回させる場合には十分である。
【0032】
一実施形態では、レンズは、結像側エントセントリックビーム路または結像側テレセントリックビーム路用に設定される。
【0033】
エントセントリックビーム路は、レンズ配置構造の断面に比べて大きなセンサ面積を持つセンサの使用を可能にする。つまり、比較的大型で高精度のセンサを、比較的小型で対応する安価なレンズと組み合わせて使用することができる。
【0034】
テレセントリックビーム路は、像スケールに影響を与えることなく、対物レンズ配置構造までの距離に応じてセンサの配置を変えることができ、特に堅牢である。
【0035】
一実施形態では、オブジェクティブは、入力側で対物レンズ配置構造によって提示された仮想像を中間像平面に結像して中間像にするように設定された第1オブジェクティブグループを有する。さらに、レンズは、少なくとも1つの構造的に分離された、好ましくは独立して取り付けられた第2オブジェクティブグループを有し、この第2オブジェクティブグループは、ビーム路内で、第1オブジェクティブグループの下流に配置され、中間像を少なくとも1つのセンサ平面に結像するように設定されている。
【0036】
オブジェクティブの構造的な分離は、オブジェクティブ全体と比較して相対的に小さい第1オブジェクティブグループだけを、結像される測定対象のすぐ近くに配置することができ、その一方で、少なくとも1つの下流の第2オブジェクティブグループを、そこから距離をおいて配置することができることを意味する。これにより、例えば、限られた構造や移動スペース内であっても、回折限界精度で仮想像をセンサ平面上に結像することにより、高い光学的な質での測定が可能となる。
【0037】
この実施形態のさらなる発展として、フィールドレンズが中間像平面に配置され、このフィールドレンズは、第1オブジェクティブグループの第1射出瞳を第2オブジェクティブグループの第2入射瞳に合わせるように設定される。つまり、第1オブジェクティブグループの直径を第2オブジェクティブグループの直径と同じに選択することができる。これにより、レンズ配置構造の特に省スペースでスリムな設計が可能になる。
【0038】
代替的または追加的に、フィールドレンズは収差を補正するように設定することができ、例えば非点収差や像面湾曲を補正するように設定することができる。これにより、像の光学的質がさらに向上する。
【0039】
一実施形態では、対物レンズ配置構造は、少なくとも1つのビーム偏向器、例えば偏向ミラーまたは偏向プリズムを備え、当該偏向器により、少なくとも1つの光路の光線が、フロントアパーチャを直角に通る第1光軸に対して角度を持って及び/又はオフセットで偏向される。これにより、第1光軸方向の設置スペースが節約される。したがって、この実施形態は、測定対象の放射方向に測定デバイスを配置するためのスペースが制限される測定対象の測光測定、例えば、グラステンプルまたは同様のホルダが視軸周りのスペースに突出するNEDの測光測定に特に適している。
【0040】
一実施形態では、少なくとも1つのビームスプリッタが、対物レンズ配置構造のビーム路内で結像側において液体レンズの後方に配置されて、ビーム路を、第1光路に沿った第1センサ平面への仮想像の空間的に対応する像と、少なくとも1つさらなる光路に沿ったさらなるセンサ平面への仮想像の空間的に対応する像とにそれぞれに分割する。これにより、例えば、第1輝度カメラと、第2輝度カメラ及び/又は測色カメラ及び/又はマシンビジョンカメラ及び/又はライトフィールドカメラ及び/又は分光計との、同時で空間的に対応しかつ空間的に分解された測定が可能になる。
【0041】
第2の態様によれば、NEDを測定するための測定デバイスは、本発明の第1の態様に係る対物レンズ配置構造と、それぞれセンサ平面に配置され、測光測定及び/又は測色測定及び/又は分光測定のために設定された少なくとも1つのセンサとを備える。好ましくは、少なくとも1つのセンサは、空間的分解能のある平面センサとして設計されるが、これは、また、点状センサまたはセンサ表面にわたって積分をして測定するセンサであってもよい。
【0042】
提案された測定デバイスは、(例えば、スペクタクルテンプルや同様のホルダのゆえに)NEDの結像側の限られた設置スペースに特に適している。さらに、外部からアクセス可能なフロントアパーチャにより、それを、観察者の眼の瞳孔位置に対応する位置に、特に簡単かつ正確に移動させることができる。これにより、(観察者の眼の知覚に対応する)NEDの特に正確な測定が可能になる。さらに、測定デバイスは、液体レンズを調整することにより、NEDの様々なフォーカス状態に適合させることができ、系入射瞳の位置(したがって、測定値と観察者の眼の知覚との対応)は変化しない。
【0043】
測定デバイスのさらなる利点は、本発明の第1の態様に係るレンズ配置構造の利点に対応する。
【0044】
一実施形態では、測定デバイスは旋回軸の周りに旋回するように設計されている。旋回軸は、フロントアパーチャを垂直に通る第1光軸に対して直角にのびる。旋回軸は、人間の目の瞳孔からのピボット点の距離にほぼ等しいフロントアパーチャからの距離で、この第1光軸と交差する。
【0045】
測定デバイスを旋回させることで、NEDにより提示される像の異なる部分を捉えることができる。眼球の回転中心と旋回の回転中心(すなわち、旋回軸と第1光軸との交点)は、それぞれの有効入射瞳(フロントアパーチャ又は眼の瞳孔/虹彩)から同じ距離にあるため、人間の観察者の眼による知覚との対応が維持される。
【0046】
旋回機能により、測定デバイスは、各旋回位置において、少なくとも1つのセンサ上の仮想像の部分領域(すなわち、特定の空間角度のみ)を捉えるだけで十分である。それにもかかわらず、重複する部分領域を有する連続測定は、測定されたNEDによって示される仮想像を全体として分析するために用いることができる。これにより、特にスリムで省スペースの測定配置の設計が可能になる。
【0047】
一実施形態では、光学フィルタが、測定デバイスの少なくとも一つの光路内に、すなわちNEDによって放射される仮想像と少なくとも1つのセンサとの間に配置される。光学フィルタは、予め定義された目標関数に従って、測定デバイスのオブジェクティブとセンサを含む系全体の分光感度に適合する透過特性を有する。目標関数は、例えば、明所視、暗所視、または、概日視(circadian vision)の観察者の典型的なスペクトル感度によって、または、光有効スペクトルまたは観察者の目に関連する同様の光効果によって決定することができる。実施形態において、光学フィルタは、測光または測色フィルタとして設定することができる。これにより、特に正確かつ/または特定の測光/放射光または測色測定が可能になる。
【0048】
本発明の第3の態様によれば、本発明の第2の態様に係る測定デバイスを用いたNEDの測光測定方法において、測定されたNEDとレンズ配置構造との相互作用において生じる少なくとも1つの光学的外乱は、少なくとも1つのセンサによって記録された少なくとも1つの生の測定値から計算により補正される。例えば、迷光、偽光及び/又は多重反射として発生する光学的外乱は、計算によって(すなわち、コンピュータに実装されたアルゴリズムによって)補正することができる。
【0049】
これにより、大面積ディスプレイを測定する場合には通常使用されるが空間的および光学的制限のためにNEDには適用できない外部物理的アパーチャによるこのような光学干渉の抑制をなしで済ますことができる。計算による補正は、例えば、コントラスト範囲を拡大し、したがって、測定デバイスの性能を改善することができる。
【0050】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】
図1は、概略図であり、従来技術として知られているニアアイデバイス(NED)を示す。
【
図2A】
図2Aは、様々な旋回位置においてニアアイデバイスを測定するための測定デバイスの概略図である。
【
図2B】
図2Bは、様々な旋回位置においてニアアイデバイスを測定するための測定デバイスの概略図である。
【
図3A】
図3Aは、測定デバイスを通る結像側エントセントリックビームおよびテレセントリックビーム路の概略図である。
【
図3B】
図3Bは、測定デバイスを通る結像側エントセントリックビームおよびテレセントリックビーム路の概略図である。
【
図4】
図4は、中間像平面によって光学的に分離された同一直線上のオブジェクティブグループを有する対物レンズ配置構造の概略図である。
【
図5】
図5は、分離したオブジェクティブグループと、中間像平面に配置されたフィールドレンズとを有する対物レンズ配置構造の概略図である。
【
図6】
図6は、分離したオブジェクティブグループと、中間像平面に配置された偏向ミラーとを有する対物レンズ配置構造の概略図である。
【
図7】
図7は、分離したオブジェクティブグループと、中間像平面に配置されたフィールドレンズと、第2オブジェクティブグループ内に配置された偏向ミラーとを有する対物レンズ配置構造の概略図である。
【
図8】
図8は、それぞれがフルアパーチャを備える2つの下流のオブジェクティブグループに沿った2つのビーム路に分割されたビーム路と、2つのセンサとを有する測定デバイスの概略図である。
【
図9】
図9は、それぞれが部分アパーチャを備える2つの下流のオブジェクティブグループに沿って2つのビームに分割されたビーム路と、2つのセンサとを有する測定デバイスの概略図である。
【
図10】
図10は、下流のオブジェクティブグループ内に液体レンズが配置された測定デバイスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
すべての図において、対応する部分には同じ参照符号を付している。
【0053】
図1は、ビデオまたはVR(仮想現実)グラスの形態で先行技術として知られているニアアイデバイス(NED)20を概略的に示す。NED20は、ニアアイディスプレイまたはヘッドマウントディスプレイとしても知られており、理想的なリーディング距離(読取距離・読書距離)よりも短い距離、典型的には5センチメートルよりもさらに短い距離から人間の眼に投影するためのものである。NED20は、典型的には、人間の頭部に取り付けるために、アイグラステンプル22及び/又はヘッドバンド23または同様の支持フレームを備える。
【0054】
視軸SAに沿って、視認眼は、概略的に描かれたNED20の内部表示要素21によって表示される像を知覚する。このような表示素子21は、例えば、発光ダイオード(LED)のアレイ(行列)として設計することができる。
【0055】
NED20は、視軸SAに対して表示素子21から距離s1の瞳位置PXに視認眼の瞳孔が位置するように、アイグラステンプル22及び/又はヘッドバンド23を備えるスペクタクルフレームによって固定される。典型的には、NED20は、表示素子21上に表示された(実)像を、写像(マッピング)して、仮想的に拡大された像距離s2(すなわち、瞳位置PXからの表示素子21の実際の距離s1よりも大きい)で、像位置VXにおいて、典型的には拡大された仮想像Vにするための
図1には詳細に示されていない内部結像光学系を備える。
【0056】
NED20の内部結像光学系は、フォーカス可能(合焦可能)に設計することができる。これは、仮想像Vの位置(すなわち、瞳位置PXからの像距離s2における像位置VX)を、焦点範囲VΔ内で変更可能ということである。このような変化は、NED20の異なるフォーカス状態においても、常に鮮明な像が眼の網膜上に結像されるように、眼の調節によって(すなわち、眼水晶体の屈折力を変化させることによって)補償され、この像は、それぞれの調節状態において、瞳位置PXからの異なる像距離s2に対応して現れる。
【0057】
NED20の機械的構造、特に表示素子21と瞳位置PXにおける目の瞳孔との間の非常に小さい距離は、NED20の測光測定をより困難にしている。特に、例えばヘッドバンド23及び/又はグラスアイテンプル22によって、視認眼を向く結像側の構造および移動スペースが、測定デバイス100(
図1には図示せず)の配置構造のために制限される。
【0058】
焦点範囲VΔにおける仮想像Vの様々な位置に対して測定デバイス100のフォーカス状態を調整しなければならないため、このような制限は、フォーカス可能なNED20の測定を特に困難にする。従来技術で知られた測定デバイスは、視軸SAに沿ってフォーカス状態を調整するために、調節可能な光学素子を用いる。しかしながら、このために必要な移動範囲は、前述の構造および移動スペースの制限と衝突する。
【0059】
そのため、限られた構造および移動スペースに対応でき、なおかつ高い光学的クオリティと測定精度を有する測定デバイス100が必要とされている。
【0060】
図2Aおよび
図2Bは、ニアアイデバイス(NED)20と、その光学測定のための測定デバイス100を純粋に概略的に示す。測定デバイス100は、(
図1によるところの)人間の視認眼が位置するであろう位置での測定、例えば測光測定または測色測定のために配置される。
図2Aにおいて、光学測定軸OA(すなわち、測定デバイス100の光軸OA)は、
図1に示すように、NED20を見ている眼の視軸SAと一致する。
【0061】
測定デバイス100は、光学測定軸OAに垂直なセンサ平面Sに配置された第1センサ130と、対物レンズ配置構造101とを備え、当該対物レンズ配置構造は、NED20によって提示される仮想像Vをセンサ平面S上に結像するように設定されている。
【0062】
正確な測定のためには、測定デバイス100の系入射瞳EPは、NED20の利用を意図した眼の瞳孔の位置、すなわち、
図1に示される視認眼の瞳孔と同じ瞳位置PXに位置されなければならない。この目的のために、測定デバイス100はフロントアパーチャ140を有し、このフロントアパーチャは視軸SAに沿って瞳位置PXに配置される。
【0063】
NED20から出射するビーム路は、エッジ光線の光線束B1、B2のみを用いて簡略化して描かれている。
【0064】
複数の内部表示素子21の像及び/又は(拡張現実(AR)グラスの場合)周囲の像(が重ね合わされるNED20が知られている。簡単性のため、提案された測定デバイス100の原理は、1つの内部表示素子21のみを用いて説明されている。しかし、この原理は、複数の内部表示素子21を有するNED20の測定に転用することができる。
【0065】
フォーカス可能なNED20の場合、対物レンズ配置構造101も、眼に対応する方法でNED20の様々なフォーカス状態に適応可能でなければならない。瞳位置PXは、フォーカス状態を適応させる際に変化されてはいけない。
【0066】
NED20の設計、例えばアイグラステンプル22及び/又はヘッドバンド23付きVRグラスとして設計されたNED20の設計は、測定デバイス100の設置スペースおよび移動性を制限する。特に、対物レンズ配置構造101は、NED20との衝突を避けるために、それに応じてスリムに設計されなければならない。
【0067】
可能な限りの正確な測定のためには、対物レンズ配置構造101は回折限界であるべきである。色収差などの収差が避けられない場合は、測定結果を(積極的に)誤らせないように、NED20の内部光学系の収差を補償しないように設計すべきである。
【0068】
対物レンズ配置構造101は、液体レンズ110とオブジェクティブ120とを備え、これらは、フロントアパーチャ140の後方において測定デバイス100の光学測定軸OAに沿って直線的に配置され、すなわち:NED20から遠ざかるように向く結像側BSの方向に整列する。光学測定軸OAに沿った結像側BSとは反対側の対物側OSは、NED20の方を向いている。
【0069】
網膜上の像の生成に類似して、オブジェクティブ120は、測定デバイス100に入るNED20からの電界光線(エッジ光線の光線束B1、B2によって概略的に示される)を、様々な角度で、二次元センサ130上に結像し、ここで二次元センサは、光測定軸OAに垂直な第1センサ平面Sに配置されている。
【0070】
センサ130は、NED20の測光パラメータ及び/又は測色パラメータを空間的に分解して測定するように、例えば、輝度を測定したり、NED20によって放射される光のスペクトル組成のパラメータを測定するように、設計されている。
【0071】
入口または対物側(即ち、センサ平面Sとは反対の対物側OS)において、対物レンズ配置構造101は、フロントアパーチャ140を有し、フロントアパーチャ140は、測定デバイス100の全ての光学活性素子の前に配置され、光学測定軸OAと同心の円形の開口を有し、この開口は、測定デバイス100の系入射瞳EPとして機能する。
【0072】
NED20に関して、フロントアパーチャ140は、瞳位置PXに配置される、すなわち、NED20が(例えばアイグラステンプル22及び/又はヘッドバンド23または同様の支持フレームを用いて)人間の頭部に固定されているとした場合に、人間の眼の瞳孔が通常位置するであろう位置に配置される。
【0073】
系入口瞳孔EPの直径は、人間の眼の瞳孔直径に類似した約2ミリメートルから6ミリメートルの範囲から選択され、特に可変とすることもできる。
【0074】
液体レンズ110の光学的効果、特にその屈折力は、以下に詳細に説明する方法で、特にオブジェクティブ120に対する相対位置や測定デバイス100に対する相対位置を機械的に変更することなく、電気的制御によって変化することができる。
【0075】
液体レンズ100(チューナブルレンズとも呼ばれる)の屈折力を変化させることにより、NED20のフォーカス状態の変化を眼の調節と同様に補償することができ、仮想像VがNED20の焦点範囲VΔ内に表示されている限り、仮想像Vの鮮明な像が常にセンサ平面S上に生成される。
【0076】
さらに、オブジェクティブ120の光学的効果は、液体レンズ110を変更することによって補正することができる。
【0077】
液体レンズ110によってセンサ平面S上に仮想像Vの像をフォーカスさせることは(焦点合わせすることは)、光学素子を移動させる必要がないという利点を有する。さらに、光学配置構造の幅(すなわち、オブジェクティブ120とNED20の表示素子21の間及び/又はセンサ130までの距離)を変更する必要がない。
【0078】
液体レンズ110は、センサ130上の仮想像Vの像の迅速なフォーカスを可能にする。さらに、液体レンズ110を使用することにより、特に小型の測定デバイス100を実現することができる、というのも、機械的に移動する光学素子を必要としないため、特にオブジェクティブ120またはオブジェクティブ120の個々のパーツの機械的な移動がないため、すなわち、光学素子を機械的に移動させるための追加の移動スペースが必要ないためである。
【0079】
その結果、NED20の機械的及び/又は光学的な制約(例えば、アイグラステンプル22またはヘッドバンド23によって、および、眼までの非常に短い距離を意図した投影)によって典型的に特に制限される構造および移動スペースに対しても、良好な像を形成することもできる。さらに、測定デバイス100に機械的に動く素子がないため、NED20の特に正確で再現性のある測定が可能となる。
【0080】
観察者は、NED20によって表示される像(画像)の異なる領域を知覚するために眼球を旋回させることができ、その結果、視軸SAを
図1に示す位置とは異なる方向に向けることができる。対応する方法で、NED20の表示素子21によって放射される対物フィールドの異なる点を測定することができるように、測定デバイス100の対物レンズ配置構造101およびそれとともにセンサ130も、NED20に関する旋回軸SAの周りに表示素子21に対して旋回可能でなければならない。これにより、センサ130に対する系入射瞳EPの配置および位置が、観察者の眼が旋回(回動)したときの網膜に対する眼瞳孔の配置および位置と同様に測定デバイス100が旋回したときに維持されることが保証される。
【0081】
旋回軸SXは、フロントアパーチャ140によって形成される系入射瞳EPの後方(すなわち、結像側)の距離s3において、光学測定軸OAに対して直角に、かつ、光学測定軸OAを貫通している。この距離s3は、人間の眼の瞳孔からの回転中心の典型的な距離にほぼ等しく、個々のばらつきの範囲内で約10ミリメートルであると仮定することができる。
【0082】
図2Aの例示では、光学測定軸OAは、
図1に示すように、NED20の表示素子21に対して垂直に整列された視聴者の眼の視軸SAにほぼ対応している。
図2Bは、NED20と測定デバイス100の異なる配置を示しており、測定デバイス100が旋回軸SXの周りに旋回角度αだけ旋回されている点が異なっている。旋回軸SXは、
図1に示すように、視認眼のピボットポイント(旋回点)をほぼ通っている。
【0083】
測定デバイス100をNED20に対して旋回させることにより、視線方向の変化及び/又は眼に対するNED20の位置の変化を追跡することができる。換言すれば、これにより、NED20に対する視軸SAの視角の変化下及び/又はNED20の位置の変化下においても、観察者の眼に結像されるであろう像を同じように測定することが可能となる。
【0084】
さらに、測定デバイス100を旋回させることにより、センサ130によって捉えられる視野を制限することができる。その結果、オブジェクティブ120はコンパクトなテレスコピック配置構造によって実現できる。
【0085】
測定デバイス100の構造と光学動作モードについて、図を用いてさらに詳細に説明される。
【0086】
図3Aおよび
図3Bは、それぞれ、液体レンズ110、オブジェクティブ120、および、センサ130と入口側とを仕切るフロントアパーチャ140を有する対物レンズ配置構造101を有する測定デバイス100を通る概略的なビーム路を示す。表現を簡単にするため、これらの図および以下の図では旋回軸SXは描かれていない。光軸OAに対して異なる角度でフロントアパーチャ140を通って対物レンズ配置構造101に入射する電電界光線のコースは、単なる例として光線束B1~B3によって示されている。
【0087】
図3Aおよび
図3Bに示される実施形態では、液体レンズ110は、オブジェクティブ120とフロントアパーチャ140との間で、オブジェクティブ120の対物側に配置されている。オブジェクティブ120は、光学測定軸OAに沿って直線状に配列された複数のレンズ121を備える。レンズ121は、対物直径Dを有する円形光学系として設計されている。レンズ121の光学有効面は、簡単かつコスト効率のよい製造のために、球面であることが好ましいが、特に高い、特に回折限界の結像の質を達成するために、レンズ121のいくつかまたは全部を非球面として設計することもできる。
【0088】
例えば、オブジェクティブ120は、
図3A、3Bには示されていないが、30ミリメートルのレンズ直径Dにわたって自由な光路を可能にするチューブ内に取り付けることができる。このように(レンズ直径Dが約30ミリメートルのレンズ121またはレンズ群から)形成されたオブジェクティブ120は、従来技術から公知の液体レンズ110を用いて約30度の空間角で視野を捉えて、センサ130上に結像することができる。
【0089】
一方では、これにより、NED20との機械的衝突を避けるための十分に狭い設計が保証される。他方では、表示素子21の十分に広い部分を単一の視野角から(すなわち、NED20に対する測定デバイス100のアライメントを変更せずに)測定することができる。
【0090】
色収差を回避または低減するために、アクロマートとして機能するアセンブリにレンズ121を組み合わせることが有利である。オブジェクティブ120は、任意で液体レンズ110と共に、オブジェクティブ内で、及び/又は表示素子21およびNED20の内部光学系との相互作用で発生するアーティファクトおよび乱れ、例えば迷光、偽光、多重反射をアルゴリズム的に補正できるように、数学的にモデル化することができる。これにより、センサ130によって捉えられた信号を、例えば、測光測定及び/又は測色測定、解像度測定、コントラスト測定または分光測定のために最適化することができる。
【0091】
例えば、測定可能なコントラスト範囲がアルゴリズム的に増加するように迷光を補正することができ、その結果、オブジェクティブ120の性能が改善される。例えば比較的大きなディスプレイを比較的大きな測定距離から測定するような場合に通常可能であるものの、設置スペース/可動性の制限により、外部の物理的アパーチャを用いて迷光を補正することができないため、センサ130上に写像された像のこのようなアルゴリズム的(計算による)改善は、本測定課題及び提案された測定デバイス100との関連において特に有利である。
【0092】
フロントアパーチャ140を、対物側において、測定デバイス100の全ての光学有効素子の前に、したがってレンズ配置構造101の全ての光学有効素子の前にも配置することによって、異なるフロントアパーチャ140を、例えば異なるアパーチャ直径を有するものなど、特に容易に交換することができる。代替的または追加的に、フロントアパーチャ140を交換可能なアパーチャまたは絞り(ダイアフラム)として設計することができ、この場合、異なるアパーチャ(異なるサイズのアパーチャ)を所望に応じて光路内に置くことができる。また、フロントアパーチャ140を、可変の、特に連続的に調整可能な絞り直径を有する虹彩絞りとして設計することも可能である。このような虹彩絞りは、特に有利には電動化することができる。
【0093】
これにより、適応の異なる目(例えば、瞳孔径が5~6mmで瞳孔が大きく開いた暗所視や、瞳孔径が1~2mmで瞳孔が狭い明所視など)の使用状況に対応したNED20についての測定が可能です。
【0094】
図3A及び
図3Bによる実施形態では、液体レンズ110は、フロントアパーチャ140とオブジェクティブ120との間に配置される。その結果、対物直径Dよりも小さい直径を有する特に安価でシンプルな液体レンズ110を使用することができる。しかしながら、オブジェクティブ120内のレンズ配置を適宜適合させる際に、液体レンズ110を光軸OAに沿った異なる位置、例えばオブジェクティブ120内に配置することも可能である。このような配置は、
図10を参照して後で詳細に説明される。
【0095】
液体レンズ110は、印加される電気電圧(電圧制御液体レンズ110)または電流(電流制御液体レンズ110)を介してその屈折力を変化させることができる電気的に制御可能なレンズとして設計することができる。電圧制御液体レンズ110は公知であり、例えば、Corning社がA-58Nとして提供する実施形態で入手可能である。電流制御液体レンズ110は公知であり、例えば、Optotune社がEL-10-30-TCとして提供する実施形態で入手可能である。
【0096】
手動の機械的操作によって屈折力が変化する液体レンズ110も知られており、使用することができる。
【0097】
その実施形態によれば、液体レンズ110の屈折力の変化は、手動で機械的に、手動で電子的に、または、オートフォーカスアルゴリズムによって制御することができる。電子的に調整可能な液体レンズ110の屈折力は、非常に迅速に、典型的には数ミリ秒以内に変化させることができる。
【0098】
一実施形態では、液体レンズ110の光学的効果は、オブジェクティブ120の高次収差を補正することができるように、その焦点距離の変化を超えて修正されてよい。特に有利な態様では、オブジェクティブ120を特にシンプルかつコンパクトに設計することができる。そして、シンプルなオブジェクティブ120の収差を、このような液体レンズ110によって補償することができる。その結果、対物レンズ配置構造101全体の光学性能をさらに向上させることができる。
【0099】
図3Aに示される実施形態では、複数のレンズ121が、結像側エントセントリックビーム路が生成されるように設計されかつ配置される。この実施形態は、光学測定軸OAに沿ってセンサ平面Sをシフトさせることによって像スケールを変更できるという利点を有する。特に、センサ130上の像サイズを、結像側BSの方向へのシフトによって大きくすることができる。このようにして、最適化された画像を、センサ130の異なるサイズ(例えば、異なるサイズの相補型金属酸化膜半導体(CMOS)又は電荷結合素子(CCD)ピクセルマトリックス)に対して生成することができる。
【0100】
特に、像を、オブジェクティブ120のレンズ直径Dを超えるチップ面積を有するセンサ130に対しても生成することができる。その結果、上記で説明した理由により、特に大型で高解像度のセンサ130を、オブジェクティブ120のサイズが制限された測定デバイス100に対して使用することができ、これにより、空間分解能に関して特に正確な測定が可能となる。
【0101】
図3Bに係る実施形態では、複数のレンズ121が、テレセントリックビーム路が結像側に生成されるように設計されかつ配置される。この実施形態は、センサ130上への投影の像スケールが光学測定軸OAに沿ったその位置にかかわらず同じままであるという利点を有する。したがって、このような実施形態は、オブジェクティブ120に対するセンサ130の配置または取り付けにおける公差および偏差に関して特に堅牢である。
【0102】
図4は、対物レンズ配置構造101の一実施形態を概略的に示し、この対物レンズ配置構造では、オブジェクティブ120が、第1オブジェクティブグループ122(対物側に配置)と第2オブジェクティブグループ123(結像側に配置)とに分割されており、これらは、構造的に分離することとができる(例えば、独立したマウントに取りけることができる)。第1オブジェクティブグループ122は、オブジェクティブグループ122、123間の光学測定軸OAに垂直な中間像平面Zに中間像を生成する。第2オブジェクティブグループ123は、この中間像を第1センサ平面S上に写像する。
【0103】
オブジェクティブ120を分離することによって、第1オブジェクティブグループ122、液体レンズ110およびフロントアパーチャ140を備える(レンズ配置構造101のモノリシック設計と比較して)より小さなアセンブリのみをNED20のすぐ近傍に配置する必要がある一方で、第2オブジェクティブグループ123をそこからオフセットして配置することができるように、対物レンズ配置構造101および測定デバイス100を構造的に分離することも可能である。これにより、第2オブジェクティブグループ123は、NED20の設計によって課される機械的及び/又は光学的制限に抵触することなく、モノリシック実施形態(すなわち、オブジェクティブ120全体をチューブなどの単一の機械的ユニットに搭載するモノリシック実施形態)よりも比較的に大きくすることができる。
【0104】
NED20とその保持デバイスによって囲まれたスペースを超えて光路を延長することによって、拡大されたセンサ130を使用することもできる。これにより、空間分解能及び/又は測定感度を向上させることができる。
【0105】
さらに、第2オブジェクティブグループ123は、収差を補正するための追加のレンズ121をさらに備えてよい。例えば、第1オブジェクティブグループ122は、1次屈折誤差はないが、高次屈折誤差(例えば非点収差やコマ収差)があるように設計されてもよく、したがってシンプルで小型である。下流の第2オブジェクティブグループ123は、高次屈折誤差を補正するように、及び/又は、色収差の補正を改善するように設計することができる。その結果、NED20上の制限された直接設置スペースを考慮しながら、センサ130上の像の全体的な質、ひいては測定の精度を向上させることができる。
【0106】
第2オブジェクティブグループ123は、テレセントリック配置として実現することができる。これは、対物側においてもおよび結像側においてもテレセントリックまたはエントセントリックに実現することができる。好ましくは、第2オブジェクティブグループ123は、収差を最小化するために、第1オブジェクティブグループ122および液体レンズ110と整列される。
【0107】
2つのオブジェクティブグループ122、123を有する
図4に示される実施形態は、中間像平面Zにおいて交差する第1オブジェクティブグループ122から出現する電界光線(すなわち、NED20の表示素子21の発光点を中間像平面Z上に結像する電界光線)は、中間像平面Zの後の結像側で発散し、したがって、第1オブジェクティブグループ122の第1射出瞳AP1(
図4に明示せず)が第2オブジェクティブグループ123の第2入射瞳EP2(
図4に明示せず)と同じ大きさである場合にのみ、光線B1~B3の完全な束として第2オブジェクティブグループ123に入射するという制限を有する。
【0108】
測定デバイス100の設置スペースを効率的な利用のためには、第1射出瞳AP1と第2入射瞳EP2のサイズを互いに合致させ、特に同じ大きさにすることが有利である。この目的のために、第1および第2オブジェクティブグループ122、123を互いに適合させることができる。
【0109】
対照的に、
図5に示される実施形態は、中間像平面Z内または中間像平面Zに近接して配置されるフィールドレンズ124をさらに備える。フィールドレンズ124は、第1オブジェクティブグループ122の第1射出瞳AP1を第2オブジェクティブグループ123の第2入射瞳EP2に写像する。
図5では、第1オブジェクティブグループ122の第1射出瞳AP1は、射出瞳位置AXにて概略的に単に例示的に示されており、第2オブジェクティブグループ123の第2入射瞳EP2は、入射瞳位置EXにて概略的に単に例示的に示されている。
【0110】
フィールドレンズ124により、異なるサイズのオブジェクティブグループ122、123の(しかし、特に同じサイズのオブジェクティブグループでも)の瞳AP1、EP2を互いに結像することができる。その結果、例えば、第1および第2オブジェクティブグループ122、123のレンズ直径D1、D2を同じサイズに選択することができる。その結果、設置スペースを節約することができ、結像される対物フィールドに対応する、単一の、完全に有効活用されたレンズ直径D1、D2を有するオブジェクティブ120を実現することができる。
【0111】
追加的にまたは代替的に、オブジェクティブグループ122、123間の(光軸OAに沿った)距離は、
図5において一例として、瞳AP1、EP2間の距離として概略的に示されるように、変化させることができる。これにより、オブジェクティブグループ122、123をよりフレキシブルに設計することができる。特に、第2オブジェクティブグループ123の入射瞳EP2は、NED20による設置スペースの制約を受けないため、光学的な質が改善された第2オブジェクティブグループ123を設計することも可能である。
【0112】
フィールドレンズ124は、瞳AP1、EP2の結像を超える更なる光学的効果を有することができ、例えば、非点収差、像面湾曲及び/又は他の収差、好ましくは高次収差の補正のために設計することができ、一方、第1オブジェクティブグループ122は、低次収差(例えば球面収差)の回避又は最小化のためにのみ簡略化して設計することができる。このようにして、第1オブジェクティブグループ122に必要な設置スペースを小さくしたままにでき、かつ、対物レンズ配置構造101の全体的で光学的な質を向上させることができる。
【0113】
図5に示されるビーム路は、(結像側で)エントセントリックである。しかし、テレセントリックなビーム路も実現できる。
【0114】
図6は、2つのオブジェクティブグループ122、123に分離されたオブジェクティブ120を有する測定デバイス100の対物レンズ配置構造101のさらなる発展を概略的に示しており、この対物レンズ配置構造では、ビーム偏向器125が、偏向ミラー125として設計され、中間像位置ZXに配置されている。好ましくは、偏向ミラー125は、第1オブジェクティブグループ122の光学測定軸OAおよび第2オブジェクティブグループ123の光学測定軸OA’に対して45度の角度で傾斜しており、換言すれば、第1および第2オブジェクティブグループ122、123の光軸OA、OA’は互いに垂直であり、第1オブジェクティブグループ122の光軸OAは、観察者が、測定されたNED20によって投影された像を知覚する眼の視軸SAに実質的に対応している。
【0115】
このさらなる開発の利点は、第1オブジェクティブグループ122を小さく設計できるため、NED20の視軸SAに沿ってわずかな設置スペースしか必要としないことである。これにより、視軸SAに沿って特に狭い制限を有するNED20を、例えば、表示素子21からわずかな距離で視軸SAに投影するそのようなNED20がヘッドバンド23または支持フレームを備える場合、測定することも可能になる。
【0116】
偏向ミラー125の代わりに、偏向プリズム(反射プリズム)をビーム偏向器125として使用することもできる。
【0117】
図6に示されるビーム路は、(結像側にて)エントセントリックなものである。しかし、テレセントリックなビーム路も実現可能である。
【0118】
図7は、偏向ミラー125によって偏向されたビーム路の代替実施形態を示す。ここで、偏向ミラー125は、中間像位置ZX(すなわち、第2オブジェクティブグループ123の前方の対物側)ではなく、第2オブジェクティブグループ123の内部に配置されている。中間像位置ZXにおけるフィールドレンズ124の結果として得られる配置は、
図6を参照して説明した偏向ミラー125で曲げられた(偏向された)ビーム路の利点に加えて、
図5を参照して既に説明したフィールドレンズ124の利点を達成することができる。
【0119】
図8は、測定デバイス100の対物レンズ配置構造101内のビーム路を概略的に示しており、ビーム路はビームスプリッタ126によって互いに垂直な2つの部分ビーム路に分割されている。
【0120】
第2オブジェクティブグループ123は、中間像Zを第1センサ平面S上に結像するものであり、ビームスプリッタ126の結像側で第1光路P1に沿って配置されている。さらに、追加の第2オブジェクティブグループ123’は、中間像Zを第2センサ平面S’上に結像するものであり、ビームスプリッタ126の結像側の第2光路P2に沿って配置されている。第1光路P1は、視軸SAと同一直線上の第1光学測定軸OAに沿っている。第2光路P2は、第1光学測定軸OA/視軸SAに直交する第2光学測定軸OA’に沿っている。
図8に示される実施形態では、第1オブジェクティブグループ122から出るビーム路は、アパーチャ全体にわたって(すなわち、第1オブジェクティブグループ122から出る全ての光線束B1~B3対して)、第1および第2光路P1、P2に分割される。
【0121】
中間像位置ZXに配置されたビームスプリッタ126は、例えば、部分透過偏向ミラー125として、または、部分反射偏向プリズムとして設計することができる。
【0122】
光路を分割することにより、1つのセンサ130、130’を、2つのセンサ平面S、S’のそれぞれに配置することができる。従って、センサ130、130’は互いに独立して測定することができる。例えば、第1光路P1の結像側端に配置された第1センサ130は、輝度測定カメラとして設計することができる。第2光路P2の結像側端に配置された第2センサ130’は、例えば、色測定カメラ、ライトフィールドカメラ、マシンビジョンカメラまたは分光計として設計することができる。
【0123】
したがって、
図8に示される実施形態では、1つのNED20について複数の異なる測定を同期して実施できるという利点がある。
【0124】
中間像位置ZXにおけるビームスプリッタ126の配置は、センサ130、130’によって捉えられた像の互いに対するおよび対象に対する(すなわち、NED20の表示素子21に対する)単純な幾何学的対応を可能にする。その結果、センサ130、130’の一方が分光器として設計されている場合、局所的に決められたスペクトルの測定を、他方のセンサ130、130’によって実施される輝度の測定と並行して実施することができる。
【0125】
しかしながら、ビームスプリッタ126を中間像位置ZXの結像側の異なる位置、例えば第2オブジェクティブグループ123の1つ又は複数のレンズ121の後方に配置することも可能であり、それにより、既に説明した利点を有するフィールドレンズ124の中間像位置ZXでの配置が可能となる。
【0126】
図9は、
図8に類似したスプリットビーム路を有する対物レンズ配置構造101を備える測定デバイス100の実施形態を示す。
図8とは対照的に、ここでのビームスプリッタ126は、第1オブジェクティブグループ122の出口アパーチャAPの一部にのみ作用する。言い換えれば、光線束B1~B3の全てではなく一部だけが、第1光路P1に沿って第1センサ130上へ分割される。
【0127】
光線B1~B3の第1~第3の束は、第2光路P2に沿って第2センサ130’へ偏向されるものであり、単なる例示として、
図9に概略的に示されている。これらから、第1光軸OAと中間像平面Zとの交点にフォーカスされる光線B1の中央の光線B1の束だけが、第2光路P2に加えて、第1光路P1を介して第1センサ130にも部分的に導かれる。
【0128】
このようなビーム路の流れは、例えば、ホールミラー127として、または、部分鏡面偏向ミラー125(すなわち、その面積の一部だけに渡って全反射するミラー)として、設計されたビームスプリッタ126で実現することができる。
【0129】
図10は、
図4および
図5に示される実施形態に類似する、2つのオブジェクティブグループ122、123と、曲げられて(偏向されて)いるが分割されていないビーム路とを有するさらなる実施形態を示す。既に説明したこれらの実施形態とは対照的に、本実施形態の場合、液体レンズ110は、フロントアパーチャ140とオブジェクティブ120との間に配置されておらず、第2オブジェクティブグループ123内のオブジェクティブ120内に配置されている。この配置の利点は、(NED20の近くに位置する)第1オブジェクティブグループ122とフロントアパーチャ140との間の配置に比べて、第2オブジェクティブグループ123の設置スペースに対する要求が緩和されることである。
【0130】
さらに、
図10に係る実施形態は、センサ平面Sの前に対物側にて直接配置される光学フィルタ150も備えるが、これは、他の地点においてビーム路内に挿入することもできる。光学フィルタ150は、例えば、センサ130による測色測定または測光測定を可能にするために、測色フィルタまたは測光フィルタとして設計することができる。
【0131】
スプリットビームパスを有する実施形態(例えば
図8または
図9に係る)では、同じ設計または異なる設計の複数の光学フィルタ150を同様に使用することができ、そのうちの1つが各光路P1、P2に配置される。
【符号の説明】
【0132】
20 ニアアイデバイス(NED)
21 表示素子
22 アイグラステンプル
23 ヘッドバンド
100 測定デバイス
101 対物レンズ配置構造
110 液体レンズ、レンズ
120 オブジェクティブ
121 レンズ
122 第1オブジェクティブグループ
123、123’ 第2オブジェクティブグループ
124 フィールドレンズ、レンズ
125 偏向ミラー、ビーム偏向器
126 ビームスプリッタ
127 ホールミラー
130、130’ 第1、第2センサ
140 フロントアパーチャ
150 フィルタ(測光、測色)
AP1 第1射出瞳、瞳
AX 射出瞳位置
B1、B2、B3 第1から第3の光線束
BS 結像側
D1、D2 第1、第2レンズ直径、直径
EP 系入射瞳
EP2 第2入射瞳、瞳
EX 入射瞳位置
OA、OA’ 第1、第2光学測定軸、光軸
OS 対物側
P1、P2 第1、第2光路(ビーム路)
PX 瞳位置
S、S’ 第1、第2センサ平面
s1、s3 距離
s2 像距離、距離
SA 視軸、光軸
SV 旋回軸
V 仮想像
VX 像位置
VΔ 焦点範囲
Z 中間像平面
ZX 中間像位置
α 旋回角
【手続補正書】
【提出日】2024-05-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズ配置構造(101)であって、
フロントアパーチャ(140)、オブジェクティブ(120)および液体レンズ(110)を備え、
前記オブジェクティブ(120)および前記液体レンズ(110)は、前記フロントアパーチャ(140)の結像側(BS)にある位置に光軸(OA、OA’)に沿って固定的に配置され、かつ、NED結像ビーム路を、当該NED結像ビーム路が前記フロントアパーチャ(140)の反対側の対物側(OS)に提示されたときに、少なくとも1つのセンサ平面(S、S’)上に結像するように設計されており、
前記液体レンズ(110)は、当該液体レンズの光学的効果を調整可能であり、人間の観察者によって鮮明に知覚され得るNED結像ビーム路を、当該液体レンズ(110)の調整によって、前記少なくとも1つのセンサ平面(S、S’)に鮮明に結像できるようになっており、
前記フロントアパーチャ(140)は、前記対物レンズ配置構造(101)の系入射瞳(EP)用の開口絞りとして設計され、2ミリメートル~6ミリメートルのアパーチャ開口を有し、
前記オブジェクティブ(120)は、
前記フロントアパーチャ(140)の前方に像距離(s2)で反対側の対物側(OS)に提示された仮想像(V)を、中間像平面(Z)に結像して中間像にするための第1オブジェクティブグループ(122)と、
前記第1オブジェクティブグループ(122)から構造的に離され、前記ビーム路に沿って下流に配置された、前記中間像を前記少なくとも1つのセンサ平面(S、S’)上に結像するための少なくとも1つの第2オブジェクティブグループ(123)と、を備える、
対物レンズ配置構造(101)。
【請求項2】
前記オブジェクティブ(120)および前記液体レンズ(110)は、少なくとも1つのセンサ平面(S,S’)上に前記仮想像(V)を結像するように設計されており、
前記液体レンズ(110)は、焦点範囲(VΔ)内に提示された仮想像(V)を、当該液体レンズ(110)の調整によって、前記少なくとも1つのセンサ平面(S,S’)上に鮮明に結像できるように、当該液体レンズの光学的効果を調整可能である、
請求項1に記載の対物レンズ配置構造(101)。
【請求項3】
前記フロントアパーチャ(140)は、離散的に調整可能な絞り開口を有する交換可能な絞りとして、または、連続的に調整可能な絞り開口を有する虹彩絞りとして設計されている、
請求項1または請求項2に記載の対物レンズ配置(101)。
【請求項4】
前記液体レンズ(110)は、前記フロントアパーチャ(140)と前記オブジェクティブ(120)との間で前記結像側に配置されている、
請求項1に記載の対物レンズ配置構造(101)。
【請求項5】
前記液体レンズ(110)および前記オブジェクティブ(120)は、最大で32.5ミリメートルの直径(D)を有する、
請求項1に記載の対物レンズ配置構造(101)。
【請求項6】
前記オブジェクティブ(120)は、結像側エントセントリックビーム路または結像側テレセントリックビーム路用に設定されている、
請求項1に記載の対物レンズ配置構造(101)。
【請求項7】
フィールドレンズ(124)が前記中間像平面(Z)に配置され、当該フィールドレンズ(124)は、前記第1オブジェクティブグループ(122)の第1射出瞳(AP1)を前記第2オブジェクティブグループ(123)の第2入射瞳(EP2)に適合させるように、及び/又は、収差を補正するように設定されている、
請求項1に記載の対物レンズ配置構造(101)。
【請求項8】
少なくとも1つのビーム偏向器(125)によって、少なくとも1つの光路(P1、P2)の前記ビーム路が、前記フロントアパーチャ(140)を直角に通ってのびる第1光軸(OA)対して、少なくとも部分的に、傾斜及び/又はオフセットの態様で偏向される、
請求項1に記載の対物レンズ配置構造(101)。
【請求項9】
少なくとも1つのビームスプリッタ(126)が、前記ビーム路内に、前記結像側で、前記液体レンズ(110)より後方に配置されて、前記ビーム路を分割して、前記仮想像(V)を第1光路(P1)に沿って第1センサ平面(S)上に写像する空間的に対応する像と、前記仮想像(V)を少なくとも1つのさらなる光路(P2)に沿ってさらなるセンサ平面(S’)上に写像する空間的に対応する像とにする、
請求項1に記載の対物レンズ配置構造(101)。
【請求項10】
ニアアイデバイス(NED)(20)を測定するための測定デバイス(100)であって、
フロントアパーチャ(140)、オブジェクティブ(120)および液体レンズ(110)を備える対物レンズ配置構造(101)を備え、
前記オブジェクティブ(120)および前記液体レンズ(110)は、前記フロントアパーチャ(140)の結像側(BS)にある位置に光軸(OA、OA’)に沿って固定的に配置され、かつ、NED結像ビーム路を、当該NED結像ビーム路が前記フロントアパーチャ(140)の反対側の対物側(OS)に提示されたときに、少なくとも1つのセンサ平面(S、S’)上に結像するように設計されており、
前記液体レンズ(110)は、当該液体レンズの光学的効果を調整可能であり、人間の観察者によって鮮明に知覚され得るNED結像ビーム路を、当該液体レンズ(110)の調整によって、前記少なくとも1つのセンサ平面(S、S’)に鮮明に結像できるようになっており、
前記フロントアパーチャ(140)は、前記対物レンズ配置構造(101)の系入射瞳(EP)用の開口絞りとして設計され、2ミリメートル~6ミリメートルのアパーチャ開口を有し、
前記測定デバイスは、さらに、
センサ平面(S、S’)に配置され、前記NED(20)の測光測定及び/又は測色測定及び/又は分光測定のために設計された少なくとも1つのセンサ(130、130’)を備え、
測光フィルタまたは測色フィルタ(150)が、前記仮想像(V)から前記少なくとも1つのセンサ(130、130’)に向かう少なくとも1つの光路(P1,P2)内に配置されている、
測定デバイス(100)。
【請求項11】
前記測定デバイス(100)は、
前記フロントアパーチャ(140)を直角に通ってのびる第1光軸(OA)と、前記フロントアパーチャ(140)から前記結像側に距離(s3)のところで交差する旋回軸(SX)の周りに旋回可能に取り付けられ、当該距離(s3)は、人間の眼の瞳孔からの当該眼のピボット点の典型的な距離にほぼ等しい、
請求項10に記載の測定デバイス(100)。
【請求項12】
第1対物レンズ配置構造(101)が、センサ平面(S、S’)に配置されかつ双眼用NED(20)の測光測定及び/又は測色測定及び/又は分光測定のために設定された少なくとも1つのセンサ(130、130’)上に当該双眼用NED(20)の第1結像ビーム路を結像するように配置かつ構成され、
第2対物レンズ配置構造(101)が、センサ平面(S、S’)に配置されかつ前記双
眼用NED(20)の測光測定及び/又は測色測定及び/又は分光測定のために設定された少なくとも1つのセンサ(130、130’)上に当該双眼用NED(20)の第2結像ビーム路を結像するように配置かつ構成されている、
請求項10または請求項11に記載の測定デバイス(100)。
【請求項13】
フロントアパーチャ(140)とオブジェクティブ(120)と液体レンズ(110)とを備える測定デバイス(100)を用いたNED(20)の測光測定の方法であって、
前記オブジェクティブ(120)および前記液体レンズ(110)は、前記フロントアパーチャ(140)に対して結像側(BS)にある位置に光軸(OA、OA’)に沿って固定的に配置され、かつ、NED結像ビーム路を、当該NED結像ビーム路が前記フロントアパーチャ(140)の反対側の対物側(OS)に提示されたときに、少なくとも1つのセンサ平面(S、S’)上に結像するように設計されており、
前記液体レンズ(110)は、当該液体レンズの光学的効果を調整可能であり、人間の観察者によって鮮明に知覚され得るNED結像ビーム路を、当該液体レンズ(110)の調整によって、前記少なくとも1つのセンサ平面(S、S’)に鮮明に結像できるようになっており、
前記フロントアパーチャ(140)は、前記対物レンズ配置構造(101)の系入射瞳(EP)用の開口絞りとして設計され、2ミリメートル~6ミリメートルのアパーチャ開口を有し、
前記測定デバイスは、さらに、センサ平面(S、S’)に配置され、前記NED(20)の測光測定及び/又は測色測定及び/又は分光測定のために設定された少なくとも1つのセンサ(130、130’)を備え、
前記NED(20)と前記対物レンズ配置構造(101)との相互作用において生じる少なくとも1つの光学的外乱が、前記少なくとも1つのセンサ(130、130’)で記録された少なくとも1つの生の測定値から計算により補正される、
方法。
【外国語明細書】