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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167070
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20241122BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
B60C11/03 B
B60C11/03 100B
B60C5/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024080198
(22)【出願日】2024-05-16
(31)【優先権主張番号】P 2023082972
(32)【優先日】2023-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】中石 彩紀
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB03
3D131BC12
3D131BC34
3D131CB06
3D131EB03U
3D131EB05U
3D131EB11V
3D131EB11X
3D131EB23V
3D131EB23X
3D131EB28V
3D131EB28X
3D131EB31V
3D131EB31W
3D131EB31X
3D131EB43W
3D131EB44V
3D131EB44W
3D131EB44X
3D131EB46W
3D131EB46X
3D131EB47V
3D131EB47W
3D131EB48V
3D131EB48W
3D131EB48X
3D131EB81V
3D131EB81W
3D131EB81X
3D131EB82V
3D131EB82X
3D131EB86V
3D131EB86W
3D131EB86X
3D131EB87W
3D131EB87X
3D131EB94W
3D131EB94X
3D131EB95V
3D131EB95W
3D131EC01W
3D131EC01X
3D131EC12V
3D131EC12W
3D131EC12X
(57)【要約】
【課題】センター陸によって空車時におけるトラクション性能を確保しながら、ショルダー陸における肩落ち摩耗の抑制とトラクション性能の確保とを両立できる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】空気入りタイヤ1のトレッド11の外側センター周方向溝13及び内側センター周方向溝14は、溝幅W1,W2が外側ショルダー周方向溝15及び内側ショルダー周方向溝16の溝幅W3,W4よりもそれぞれ狭い。空気入りタイヤ1のトレッド11の内側クオーター横溝23には、センター横溝22の延長線上且つ内側ショルダーノッチ31の延長線上に位置する内側幅広クオーター横溝23aと、センターサイプ25の延長線上且つ内側ショルダー横溝24の延長線上に位置する内側幅狭クオーター横溝23bとが含まれている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドに、
車両装着状態でタイヤ赤道に対して車軸方向一方側に位置しており、タイヤ周方向に延びる、一方側センター周方向溝と、
車両装着状態でタイヤ赤道に対して車軸方向他方側に位置しており、タイヤ周方向に延びる、他方側センター周方向溝と、
車両装着状態で前記一方側センター周方向溝よりも車軸方向一方側に位置しており、タイヤ周方向に延びる、一方側ショルダー周方向溝と、
車両装着状態で前記他方側センター周方向溝よりも車軸方向他方側に位置しており、タイヤ周方向に延びる、他方側ショルダー周方向溝と、
タイヤ周方向に間隔を空けて位置しており、それぞれ前記一方側センター周方向溝と前記他方側センター周方向溝との間をタイヤ軸方向に連通する、複数のセンター横溝と、
タイヤ周方向に間隔を空けて位置しており、それぞれ前記一方側センター周方向溝と前記一方側ショルダー周方向溝との間をタイヤ軸方向に連通する、複数の一方側クオーター横溝と、
タイヤ周方向に間隔を空けて位置しており、それぞれ前記一方側ショルダー周方向溝と前記トレッドの車軸方向一方側接地端との間をタイヤ軸方向に連通する、複数の一方側ショルダー横溝と、
前記一方側センター周方向溝と前記他方側センター周方向溝との間に区画されると共に、前記複数のセンター横溝によってタイヤ周方向に区画される、複数のセンターブロックと、
前記一方側センター周方向溝と前記一方側ショルダー周方向溝との間に区画されると共に、前記複数の一方側クオーター横溝によってタイヤ周方向に区画される、複数の一方側クオーターブロックと、
前記一方側ショルダー周方向溝によって車軸方向一方側に区画されると共に、前記複数の一方側ショルダー横溝によってタイヤ周方向に区画される、複数の一方側ショルダーブロックと、
前記複数のセンターブロックそれぞれにおいて、前記一方側センター周方向溝と前記他方側センター周方向溝との間をタイヤ軸方向に連通する、センターサイプと、
前記複数の一方側ショルダーブロックそれぞれにおいて、前記一方側ショルダー周方向溝から車軸方向一方側に延びて当該一方側ショルダーブロック内で終端する、一方側ショルダーノッチと
を有し、
前記一方側センター周方向溝及び前記他方側センター周方向溝は、溝幅が前記一方側ショルダー周方向溝及び前記他方側ショルダー周方向溝の溝幅よりもそれぞれ狭く、
前記複数の一方側クオーター横溝には、
前記センター横溝の延長線上且つ前記一方側ショルダーノッチの延長線上に位置する、第1クオーター横溝と、
前記センターサイプの延長線上且つ前記一方側ショルダー横溝の延長線上に位置する、第2クオーター横溝と
が含まれている、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記一方側ショルダー周方向溝及び前記他方側ショルダー周方向溝は、溝幅が前記一方側センター周方向溝及び前記他方側センター周方向溝の溝幅のそれぞれ1.2倍以上4.0倍以下である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記一方側センター周方向溝及び前記他方側センター周方向溝はそれぞれ、溝幅が3.0mm以上9.0mm以下である、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記センターサイプは、タイヤ軸方向における両端の溝深さがタイヤ軸方向における中央の溝深さよりも浅い、請求項1又は請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記センターサイプは、
前記一方側センター周方向溝と前記他方側センター周方向溝の溝深さの60%以上90%以下の溝深さを有する、深溝部と、
前記一方側センター周方向溝と前記他方側センター周方向溝の溝深さの20%以上40%以下の溝深さを有する、浅溝部とを有している、請求項1又は請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記空気入りタイヤは、
前記トレッドに、
車両装着状態でタイヤ赤道に対して車軸方向内側において、前記一方側センター周方向溝、前記一方側ショルダー周方向溝、前記複数の一方側クオーター横溝、前記複数の一方側ショルダー横溝、前記複数の一方側クオーターブロック、及び前記複数の一方側ショルダーブロックと、
車両装着状態でタイヤ赤道に対して車軸方向外側において、前記他方側センター周方向溝、及び前記他方側ショルダー周方向溝と
を有し、
前記他方側ショルダー周方向溝と前記他方側センター周方向溝との間に区画される、他方側クオーターリブと、
前記他方側ショルダー周方向溝によって車軸方向外側に区画される、他方側ショルダーリブとを有している、請求項1又は請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記他方側ショルダー周方向溝は、溝幅が前記一方側ショルダー周方向溝よりも狭い、請求項6に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記一方側センター周方向溝は、溝幅が前記他方側センター周方向溝よりも狭い、請求項6に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トレッドに、車両装着状態でタイヤ赤道に対して車軸方向両側に位置しており、タイヤ周方向に延びる、一対のセンター周方向溝と、車両装着状態で該一対のセンター周方向溝よりも車軸方向両側に位置しており、タイヤ周方向に延びる、一対のショルダー周方向溝と、を備える空気入りタイヤが開示されている。この空気入りタイヤは、一対のセンター周方向溝の溝幅が一対のショルダー周方向溝の溝幅よりも狭い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-104411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によれば、一対のセンター周方向溝の溝幅が一対のショルダー周方向溝の溝幅よりもそれぞれ狭いので、一対のセンター周方向溝の溝幅が一対のショルダー周方向溝の溝幅と同じか若しくは広い場合に比して、一対のセンター周方向溝との間に区画されるセンター陸をタイヤ軸方向に広く構成できる。車両、特にライトトラックは、荷を積んでいない空車時には、センター陸に接地荷重が集中しやすいことが知られている。したがって、空車時に接地荷重が集中しやすいセンター陸がタイヤ軸方向に広く構成されるので、空車時のトラクション性能を確保できる。
【0005】
一方、特許文献1のタイヤは、一対のショルダー周方向溝の溝幅が、相対的に、一対のセンター周方向溝の溝幅よりもそれぞれ広くなるので、一対のショルダー周方向溝によって車軸方向両側に区画される一対の外側ショルダー陸のタイヤ軸方向の幅が狭くなり、該一対の外側ショルダー陸の剛性が低下しやすい。タイヤは、前輪等の操舵輪に装着した場合、前輪の操舵時には、外側ショルダー陸に作用する車軸方向の横力が増大しやすいことが知られている。したがって、特許文献1のタイヤが操舵輪に装着された場合、外側ショルダー陸が摩耗しやすくなるため、外側ショルダー陸の内側に対して外側が摩耗する肩落ち摩耗が進みやすい。
【0006】
特に、車両がEV(電気自動車)ライトトラックである場合、従来のエンジン駆動の車両に比して、車両質量が大きくなると共に、加速性能が向上する。したがって、EVライトトラックの操舵輪に装着されるタイヤは、従来のエンジン駆動の車両に装着されるタイヤに比して、ショルダー陸の内側に対して外側が摩耗する肩落ち摩耗が進みやすくなると共に、トラクション性能がさらに要求される。
【0007】
そこで、本発明は、センター陸によって空車時におけるトラクション性能を確保しながら、ショルダー陸における肩落ち摩耗の抑制とトラクション性能の確保とを両立できる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
まず、本発明の態様は、トレッドに、
車両装着状態でタイヤ赤道に対して車軸方向一方側に位置しており、タイヤ周方向に延びる、一方側センター周方向溝と、
車両装着状態でタイヤ赤道に対して車軸方向他方側に位置しており、タイヤ周方向に延びる、他方側センター周方向溝と、
車両装着状態で前記一方側センター周方向溝よりも車軸方向一方側に位置しており、タイヤ周方向に延びる、一方側ショルダー周方向溝と、
車両装着状態で前記他方側センター周方向溝よりも車軸方向他方側に位置しており、タイヤ周方向に延びる、他方側ショルダー周方向溝と、
タイヤ周方向に間隔を空けて位置しており、それぞれ前記一方側センター周方向溝と前記他方側センター周方向溝との間をタイヤ軸方向に連通する、複数のセンター横溝と、
タイヤ周方向に間隔を空けて位置しており、それぞれ前記一方側センター周方向溝と前記一方側ショルダー周方向溝との間をタイヤ軸方向に連通する、複数の一方側クオーター横溝と、
タイヤ周方向に間隔を空けて位置しており、それぞれ前記一方側ショルダー周方向溝と前記トレッドの車軸方向一方側接地端との間をタイヤ軸方向に連通する、複数の一方側ショルダー横溝と、
前記一方側センター周方向溝と前記他方側センター周方向溝との間に区画されると共に、前記複数のセンター横溝によってタイヤ周方向に区画される、複数のセンターブロックと、
前記一方側センター周方向溝と前記一方側ショルダー周方向溝との間に区画されると共に、前記複数の一方側クオーター横溝によってタイヤ周方向に区画される、複数の一方側クオーターブロックと、
前記一方側ショルダー周方向溝によって車軸方向一方側に区画されると共に、前記複数の一方側ショルダー横溝によってタイヤ周方向に区画される、複数の一方側ショルダーブロックと、
前記複数のセンターブロックそれぞれにおいて、前記一方側センター周方向溝と前記他方側センター周方向溝との間をタイヤ軸方向に連通する、センターサイプと、
前記複数の一方側ショルダーブロックそれぞれにおいて、前記一方側ショルダー周方向溝から車軸方向一方側に延びて当該一方側ショルダーブロック内で終端する、一方側ショルダーノッチと
を有し、
前記一方側センター周方向溝及び前記他方側センター周方向溝は、溝幅が前記一方側ショルダー周方向溝及び前記他方側ショルダー周方向溝の溝幅よりもそれぞれ狭く、
前記複数の一方側クオーター横溝には、
前記センター横溝の延長線上且つ前記一方側ショルダーノッチの延長線上に位置する、第1クオーター横溝と、
前記センターサイプの延長線上且つ前記一方側ショルダー横溝の延長線上に位置する、第2クオーター横溝と
が含まれている、空気入りタイヤを提供する。
【0009】
本発明によれば、一方側及び他方側センター周方向溝は、溝幅が一方側及び他方側ショルダー周方向溝よりもそれぞれ狭いので、溝幅が一方側及び他方側ショルダー周方向溝と同じか若しくは広い場合に比して、センターブロック、一方側クオーターブロック、および他方側センター周方向溝と他方側ショルダー周方向溝との間に区画される他方側クオーター陸をタイヤ軸方向に広く構成しやすい。ここで、本発明に係る空気入りタイヤをトラック等の車両に装着した場合、該トラックが荷を積んでいない空車時には、センターブロックに接地荷重が集中しやすい。したがって、本発明によれば、空車時に接地荷重が集中しやすいセンターブロックがタイヤ軸方向に広く構成されるので、空車時のトラクション性能を確保しやすい。
また、第1クオーター横溝がセンター横溝の延長線上且つ一方側ショルダーノッチの延長線上に位置すると共に、第2クオーター横溝がセンターサイプの延長線上且つ一方側ショルダー横溝の延長線上に位置している。その結果、センター横溝、第1クオーター横溝、及び一方側ショルダーノッチによって構成される、センターブロックから一方側ショルダーブロックの途中までタイヤ軸方向にわたる第1のトラクション要素と、センターサイプ、第2クオーター横溝、及び一方側ショルダー横溝によって構成される、センターブロックから車軸方向一方側接地端までタイヤ軸方向にわたる第2のトラクション要素とが、タイヤ周方向に交互に構成される。よって、車軸方向一方側の領域において、センターブロックから一方側ショルダーブロックにわたる、第1及び第2のトラクション要素によって、トラクション性能を好適に発揮させやすい。
しかも、第1のトラクション要素のうち車軸方向一方側端部を構成する一方側ショルダーノッチは、一方側ショルダーブロック内で終端しているので、一方側ショルダーノッチによる一方側ショルダーブロックの過度な剛性低下が抑制される。また、第2のトラクション要素のうち車軸方向他方側端部を構成するセンターサイプは、サイプであるので接地時にタイヤ周方向に対向する溝壁が互いに当接して支持するので、センターサイプによるセンターブロックの過度な剛性低下が抑制される。
第1又は第2クオーター横溝がセンター横溝の延長線上且つ一方側ショルダー横溝の延長線上に位置している場合、タイヤが回転し始めて、路面を蹴りだすとき、センターブロック、一方側クオーターブロック、及び一方側ショルダーブロックの動きが大きくなるため、ヒールアンドトウ摩耗が大きくなりやすい。
したがって、本発明に係る空気入りタイヤによれば、センターブロックによって空車時におけるトラクション性能を確保しながら、センターブロックから一方側ショルダーブロックにわたるトラクション要素を形成しつつ、該トラクション要素による剛性低下を抑制して、ショルダー陸の内側に対して外側が摩耗する肩落ち摩耗が抑制される。
【0010】
また、前記一方側ショルダー周方向溝及び前記他方側ショルダー周方向溝は、溝幅が前記一方側センター周方向溝及び前記他方側センター周方向溝の溝幅のそれぞれ1.2倍以上4.0倍以下であってもよい。
【0011】
本構成によれば、一方側及び他方側センター周方向溝による排水性能を確保しつつ、センターブロックの接地幅を確保しやすい。
一方側及び他方側ショルダー周方向溝の溝幅が一方側及び他方側センター周方向溝の溝幅の4.0倍を超える場合、一方側及び他方側センター周方向溝の溝断面積が過度に小さくなりやすく、排水性能を確保しにくい。
一方側及び他方側ショルダー周方向溝の溝幅が一方側及び他方側センター周方向溝の溝幅の1.2倍未満である場合、一方側及び他方側センター周方向溝の溝幅が過度に大きくなり、センターブロックの幅が小さくなりやすいため、センターブロックにおけるトラクション効果が減少して空車時のトラクション性能が不足しやすい。
【0012】
また、前記一方側センター周方向溝及び前記他方側センター周方向溝はそれぞれ、溝幅が3.0mm以上9.0mm以下であってもよい。
【0013】
本構成によれば、一方側及び他方側センター周方向溝による排水性能を確保しつつ、センターブロックの接地幅を確保しやすい。
一方側及び他方側センター周方向溝の溝幅が3.0mm未満である場合、一方側及び他方側センター周方向溝の溝断面積が過度に小さくなりやすく、排水性能を確保しにくい。
一方側及び他方側センター周方向溝の溝幅が9.0mmを超える場合、一方側及び他方側センター周方向溝の溝幅が過度に大きくなり、センターブロックの幅が小さくなりやすいため、センターブロックにおけるトラクション効果が減少して空車時のトラクション性能が不足しやすい。
【0014】
また、前記センターサイプは、タイヤ軸方向における両端の溝深さがタイヤ軸方向における中央の溝深さよりも浅くてもよい。
【0015】
本構成によれば、センターサイプは、タイヤ軸方向における両端の溝深さがタイヤ軸方向における中央の溝深さよりも浅いので、センターブロックの摩耗時に両端が消失したとしても中央が残る。この結果、センターサイプが残るため、センターブロックのトラクション性能が保たれやすい。
【0016】
また、前記センターサイプは、
前記一方側センター周方向溝と前記他方側センター周方向溝の溝深さの60%以上90%以下の溝深さを有する、深溝部と、
前記一方側センター周方向溝と前記他方側センター周方向溝の溝深さの20%以上40%以下の溝深さを有する、浅溝部とを有してもよい。
【0017】
本構成によれば、センターサイプは、深溝部と浅溝部とを有しているので、センターブロックが20%から40%摩耗して浅溝部が消失しても深溝部が残る。したがって、センターブロックの20%から40%摩耗時におけるショルダー陸の内側に対して外側が摩耗する肩落ち摩耗を抑制しつつ、トラクション性能を発揮させやすい。
【0018】
また、前記空気入りタイヤは、
前記トレッドに、
車両装着状態でタイヤ赤道に対して車軸方向内側において、前記一方側センター周方向溝、前記一方側ショルダー周方向溝、前記複数の一方側クオーター横溝、前記複数の一方側ショルダー横溝、前記複数の一方側クオーターブロック、及び前記複数の一方側ショルダーブロックと、
車両装着状態でタイヤ赤道に対して車軸方向外側において、前記他方側センター周方向溝、及び前記他方側ショルダー周方向溝と
を有し、
前記他方側ショルダー周方向溝と前記他方側センター周方向溝との間に区画される、他方側クオーターリブと、
前記他方側ショルダー周方向溝によって車軸方向外側に区画される、他方側ショルダーリブとを有してもよい。
【0019】
本構成によれば、トレッドのタイヤ赤道よりも車軸方向内側には、ブロックパターンが形成されており、トレッドのタイヤ赤道よりも車軸方向外側には、リブパターンが形成されている。したがって、トレッドの車軸方向内側の領域は、タイヤ軸方向に延びるエッジ成分を有するブロックパターンによってトラクション性能が確保される。また、トレッドの車軸方向外側の領域は、ブロックパターンに比して剛性を確保しやすいリブパターンによって車両旋回時に作用する横力に好適に抗する一方で、操舵輪装着時のショルダー陸の内側に対して外側が摩耗する肩落ち摩耗が抑制される。
【0020】
また、前記他方側ショルダー周方向溝は、溝幅が前記一方側ショルダー周方向溝よりも狭くてもよい。
【0021】
本構成によれば、他方側ショルダー周方向溝は、溝幅が一方側ショルダー周方向溝よりも狭いので、他方側ショルダー周方向溝によって車軸方向外側に区画される他方側ショルダーリブがタイヤ軸方向に広く構成されるので、他方側ショルダーリブの内側に対して外側が摩耗する肩落ち摩耗を抑制しやすい。
【0022】
また、前記一方側センター周方向溝は、溝幅が前記他方側センター周方向溝よりも狭くてもよい。
【0023】
本構成によれば、一方側センター周方向溝は、溝幅が他方側センター周方向溝よりも狭いので、センターブロックのうち車軸方向外側の領域のゴムボリュームを車軸方向内側の領域に比して減少させやすい。これによって、トレッドの車軸方向外側においてリブパターンに構成されることによってゴムボリュームが増大しやすい領域と、トレッドの車軸方向内側においてブロックパターンに構成されることによってゴムボリュームが減少しやすい領域との間の、ゴムボリュームのバランスをとりやすい。
【発明の効果】
【0024】
したがって、本発明に係る空気入りタイヤによれば、センター陸によって空車時におけるトラクション性能を確保しながら、ショルダー陸における肩落ち摩耗の抑制とトラクション性能の確保とを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤのトレッドを径方向外側から見た概略図である。
図2図1の線IIから見た断面図である。
図3図1の線IIIから見た断面図である。
図4図1の線IVから見た断面図である。
図5図1の線Vから見た断面図である。
図6図1の線VIから見た断面図である。
図7図1の線VIIから見た断面図である。
図8図1の線VIIIから見た断面図である。
図9図1の線IXから見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」という)のトレッドを径方向外側から見た概略図である。本実施形態のタイヤ1は、EV(電気自動車)ライトトラック用、又はEV(電気自動車)トラックバス用のゴム製のタイヤとして構成されている。ライトトラック用のタイヤとは、JATMA YEAR BOOK(B章:小型トラック用)において定められているタイヤである。本実施形態において、図1の左側を、タイヤ1が車両に装着された状態(以下、単に「車両装着状態」という)における車軸方向外側と呼称して、図1の右側を、タイヤ1が車両に装着された状態における車軸方向内側と呼称する。また、図1の上側を、タイヤ周方向一方側と呼称して、図1の下側を、タイヤ周方向他方側と呼称する。
【0028】
[タイヤの構造]
タイヤ1は、図1における左右方向で示すタイヤ軸方向に延びているトレッド11と、トレッド11の車軸方向内側の端部に位置する車軸方向内側接地端11aと、トレッド11の車軸方向外側の端部に位置する車軸方向外側接地端11bとを備える。
【0029】
トレッド11は、タイヤ1の軸心周りに円筒状に延びるように、図1における上下方向で示すタイヤ周方向に延びている。トレッド11は、タイヤ径方向の外端に配置されており、転動時に接地する接地面である踏面11cを有する。
【0030】
トレッド11は、車両装着状態でタイヤ赤道CLに対して車軸方向外側に位置しており、タイヤ周方向にジグザグ状に延びる、外側センター周方向溝13と、車両装着状態でタイヤ赤道CLに対して車軸方向内側に位置しており、タイヤ周方向にジグザグ状に延びる、内側センター周方向溝14とを有する。外側センター周方向溝13と内側センター周方向溝14はそれぞれ、踏面11cからタイヤ径方向内側に向けて窪んでいる。
【0031】
本実施形態において、外側センター周方向溝13は、タイヤ周方向他方側からタイヤ周方向一方側に向けて延びて、車軸方向内側へ傾斜している。内側センター周方向溝14は、タイヤ周方向他方側からタイヤ周方向一方側に向けて延びて、車軸方向内側へ傾斜している。
【0032】
トレッド11は、車両装着状態で外側センター周方向溝13よりも車軸方向外側に位置しており、タイヤ周方向に直線状に延びる、外側ショルダー周方向溝15と、車両装着状態で内側センター周方向溝14よりも車軸方向内側に位置しており、タイヤ周方向にジグザグ状に延びる、内側ショルダー周方向溝16とを有する。外側ショルダー周方向溝15と内側ショルダー周方向溝16はそれぞれ、踏面11cからタイヤ径方向内側に向けて窪んでいる。
【0033】
本実施形態において、内側ショルダー周方向溝16は、タイヤ周方向他方側からタイヤ周方向一方側に向けて延びて、車軸方向外側へ傾斜している。
【0034】
外側センター周方向溝13、内側センター周方向溝14、外側ショルダー周方向溝15、及び内側ショルダー周方向溝16はそれぞれ、車軸方向に拡がる溝幅W1,W2,W3,W4を有する。
【0035】
外側センター周方向溝13と内側センター周方向溝14はそれぞれ、溝幅W1,W2が外側ショルダー周方向溝15と内側ショルダー周方向溝16の溝幅W3,W4よりも狭い。好ましくは、外側ショルダー周方向溝15と内側ショルダー周方向溝16は、溝幅W3,W4が外側センター周方向溝13と内側センター周方向溝14の溝幅W1,W2のそれぞれ1.2倍以上4.0倍以下である。さらに好ましくは、外側センター周方向溝13と内側センター周方向溝14はそれぞれ、溝幅W1,W2が3.0mm以上9.0mm以下であって、外側ショルダー周方向溝15と内側ショルダー周方向溝16はそれぞれ、溝幅W3,W4が9.0mm以上13.0mm以下である。
【0036】
本実施形態において、外側ショルダー周方向溝15は、溝幅W3が10.8mmの広さである。また、内側ショルダー周方向溝16は、溝幅W4が12.0mmである。したがって、外側ショルダー周方向溝15は、溝幅W3が内側ショルダー周方向溝16の溝幅W4よりも狭い。
【0037】
本実施形態において、内側センター周方向溝14は、溝幅W2が4.7mmの広さである。また、外側センター周方向溝13は、溝幅W1が7.8mmである。したがって、内側センター周方向溝14は、溝幅W2が外側センター周方向溝13の溝幅W1よりも狭い。
【0038】
図2は、図1の線IIから見た断面図であって、トレッド11の断面を示している。
【0039】
本実施形態において、外側センター周方向溝13、内側センター周方向溝14、外側ショルダー周方向溝15、及び内側ショルダー周方向溝16はそれぞれ、同じ溝深さD1を有する。
【0040】
トレッド11は、外側センター周方向溝13と内側センター周方向溝14との間に区画されるセンター陸17を有する。
【0041】
トレッド11は、外側センター周方向溝13と外側ショルダー周方向溝15との間に区画される外側クオーター陸18を有する。
【0042】
トレッド11は、外側ショルダー周方向溝15によって車軸方向外側に区画される外側ショルダー陸19を有する。
【0043】
トレッド11は、内側センター周方向溝14と内側ショルダー周方向溝16との間に区画される内側クオーター陸20を有する。
【0044】
トレッド11は、内側ショルダー周方向溝16によって車軸方向内側に区画される内側ショルダー陸21を有する。
【0045】
外側ショルダー陸19と内側ショルダー陸21はそれぞれ、面取りが施されたスクエアショルダーである。
【0046】
図1に示すように、トレッド11は、タイヤ周方向に間隔を空けて位置しており、それぞれ外側センター周方向溝13と内側センター周方向溝14との間をタイヤ軸方向に連通する複数のセンター横溝22を有する。複数のセンター横溝22は、タイヤ周方向に交互に位置している複数のセンター横深溝22aと複数のセンター横浅溝22bとを含む。複数のセンター横深溝22aは、溝幅が複数のセンター横浅溝22bの溝幅と同じである一方、溝深さが複数のセンター横浅溝22bの溝深さよりも大きい。
【0047】
本実施形態において、複数のセンター横溝22はそれぞれ、車軸方向内側から車軸方向外側に向けてジグザグ状に延びて、タイヤ周方向一方側へ傾斜している。
【0048】
図3は、図1の線IIIから見た断面図であって、センター横深溝22aの断面を示している。複数のセンター横深溝22aはそれぞれ、外側センター周方向溝13及び内側センター周方向溝14の溝深さD1の50%以上100%以下である溝深さD2を有する。
【0049】
図4は、図1の線IVから見た断面図であって、センター横浅溝22bの断面を示している。複数のセンター横浅溝22bはそれぞれ、外側センター周方向溝13及び内側センター周方向溝14の溝深さD1の5%以上20%以下である溝深さD3を有する。
【0050】
図1に示すように、トレッド11は、タイヤ周方向に間隔を空けて位置しており、それぞれ内側センター周方向溝14と内側ショルダー周方向溝16との間をタイヤ軸方向に連通する複数の内側クオーター横溝23を有する。複数の内側クオーター横溝23は、タイヤ周方向に交互に位置している複数の内側幅広クオーター横溝23aと複数の内側幅狭クオーター横溝23bとを含む。複数の内側幅広クオーター横溝23aは、溝幅が内側幅狭クオーター横溝23bの溝幅よりも大きい。
【0051】
本実施形態において、複数の内側クオーター横溝23はそれぞれ、車軸方向内側から車軸方向外側に向けて延びて、タイヤ周方向一方側へ折れ曲がると共に傾斜している。
【0052】
複数の内側幅広クオーター横溝23aは、複数のセンター横溝22の延長線上にそれぞれ位置している。
【0053】
図5は、図1の線Vから見た断面図であって、内側幅広クオーター横溝23aの断面を示している。複数の内側幅広クオーター横溝23aはそれぞれ、内側センター周方向溝14の溝深さD1の50%以上100%以下である溝深さD4を有する。
【0054】
図6は、図1の線VIから見た断面図であって、内側幅狭クオーター横溝23bの断面を示している。複数の内側幅狭クオーター横溝23bはそれぞれ、内側センター周方向溝14の溝深さD1の5%以上20%以下である溝深さD5を有する。
【0055】
図1に示すように、トレッド11は、タイヤ周方向に間隔を空けて位置しており、それぞれ内側ショルダー周方向溝16と車軸方向内側接地端11aとの間をタイヤ軸方向に連通する複数の内側ショルダー横溝24を有する。
【0056】
本実施形態において、複数の内側ショルダー横溝24はそれぞれ、車軸方向内側から車軸方向外側に向けて延びて、タイヤ周方向他方側へ突出するように折れ曲がっている。
【0057】
複数の内側ショルダー横溝24は、複数の内側幅狭クオーター横溝23bの延長線上にそれぞれ位置している。
【0058】
図7は、図1の線VIIから見た断面図であって、内側ショルダー横溝24の断面を示している。複数の内側ショルダー横溝24はそれぞれ、内側ショルダー周方向溝16の溝深さD1の20%以上50%以下である溝深さD6を有する。
【0059】
図1に示すように、トレッド11は、外側センター周方向溝13と内側センター周方向溝14との間に区画されると共に、複数のセンター横溝22によって区画される複数のセンターブロック17aを有する。
【0060】
センターブロック17aはそれぞれ、内側センター周方向溝14の溝幅W2が外側センター周方向溝13の溝幅W1よりも狭いことにより、タイヤ赤道CLに対して車軸方向外側の領域のゴムボリュームが、タイヤ赤道CLに対して車軸方向内側の領域のゴムボリュームより少ない。したがって、センターブロック17aの重心はそれぞれ、タイヤ赤道CLに対して車軸方向内側に位置している。
【0061】
トレッド11は、外側ショルダー周方向溝15と外側センター周方向溝13との間に区画される外側クオーターリブ18aを有する。
【0062】
トレッド11は、外側ショルダー周方向溝15によって車軸方向外側に区画される外側ショルダーリブ19aを有する。
【0063】
トレッド11は、内側ショルダー周方向溝16と内側センター周方向溝14との間に区画されると共に、複数の内側クオーター横溝23によってタイヤ周方向に区画される内側クオーターブロック20aを有する。
【0064】
トレッド11は、内側ショルダー周方向溝16によって車軸方向内側に区画されると共に、複数の内側ショルダー横溝24によってタイヤ周方向に区画される内側ショルダーブロック21aを有する。
【0065】
センターブロック17aはそれぞれ、外側センター周方向溝13と内側センター周方向溝14との間をタイヤ軸方向に連通するセンターサイプ25を有する。
【0066】
本実施形態において、センターサイプ25はそれぞれ、車軸方向内側から車軸方向外側に向けてジグザグ状に延びて、タイヤ周方向一方側へ傾斜している。
【0067】
センターサイプ25は、複数の内側幅狭クオーター横溝23bの延長線上にそれぞれ位置している。
【0068】
好ましくは、センターサイプ25は、タイヤ軸方向における両端の深さがタイヤ軸方向における中央の深さよりも浅い。さらに好ましくは、センターサイプ25は、タイヤ軸方向における中央において、外側センター周方向溝13及び内側センター周方向溝14の溝深さD1の60%以上90%以下の溝深さを有するセンターサイプ深溝部25aと、タイヤ軸方向における両端において、外側センター周方向溝13及び内側センター周方向溝14の溝深さD1の20%以上40%以下の溝深さを有するセンターサイプ浅溝部25bとを有する。
【0069】
本実施形態において、外側ショルダーリブ19aは、外側ショルダー周方向溝15からタイヤ軸方向に延びて、外側ショルダーリブ19a内で終端する、複数の第1外側ショルダースリット26aと、車軸方向外側接地端11bからタイヤ軸方向に延びて、外側ショルダーリブ19a内で終端する複数の第2外側ショルダースリット26bとを有する。
【0070】
本実施形態において、複数の第1外側ショルダースリット26aと複数の第2外側ショルダースリット26bはそれぞれ、車軸方向内側から車軸方向外側に向けて直線状に延びて、タイヤ周方向一方側へ傾斜している。
【0071】
図8は、図1の線VIIIから見た断面図であって、第1外側ショルダースリット26aの断面を示している。複数の第1外側ショルダースリット26aは、外側ショルダー周方向溝15の溝深さD1の50%以上100%以下である溝深さD7を有する。
【0072】
図9は、図1の線IXから見た断面図であって、第2外側ショルダースリット26bの断面を示している。複数の第2外側ショルダースリット26bは、外側ショルダー周方向溝15の溝深さD1の20%以上40%以下である溝深さD8を有する。
【0073】
図1に示すように、複数の第1外側ショルダースリット26aと複数の第2外側ショルダースリット26bのタイヤ軸方向に沿った長さL1,L2はそれぞれ、外側ショルダーリブ19aの幅W5の20%以上60%以下である。
【0074】
本実施形態において、外側ショルダーリブ19aは、複数の第1外側ショルダースリット26aの間において、外側ショルダー周方向溝15からタイヤ軸方向に延びて、外側ショルダーリブ19a内で終端する複数の外側ショルダーリブエッジサイプ27を有する。
【0075】
複数の外側ショルダーリブエッジサイプ27はそれぞれ、車軸方向内側から車軸方向外側に向けて直線状に延びて、タイヤ周方向一方側へ傾斜している。
【0076】
複数の外側ショルダーリブエッジサイプ27のタイヤ軸方向に沿った長さはそれぞれ、複数の第1外側ショルダースリット26aのタイヤ軸方向に沿った長さL1よりも短い。
【0077】
複数の外側ショルダーリブエッジサイプ27は、溝深さが外側ショルダー周方向溝15の溝深さD1よりも浅い。
【0078】
本実施形態において、外側クオーターリブ18aは、タイヤ周方向に間隔を空けて位置しており、タイヤ軸方向に延びて外側ショルダー周方向溝15と外側センター周方向溝13とを連通する複数の外側クオーターサイプ28を有する。
【0079】
複数の外側クオーターサイプ28はそれぞれ、車軸方向内側から車軸方向外側に向けて直線状に延びて、タイヤ周方向一方側へ傾斜している。
【0080】
複数の外側クオーターサイプ28は、複数の第1外側ショルダースリット26aの延長線上にそれぞれ位置している。
【0081】
好ましくは、複数の外側クオーターサイプ28はそれぞれ、タイヤ軸方向における中央の深さがタイヤ軸方向における両端の深さよりも浅い。さらに好ましくは、複数の外側クオーターサイプ28はそれぞれ、タイヤ軸方向における両端において、外側ショルダー周方向溝15及び外側センター周方向溝13の溝深さD1の60%以上90%以下の溝深さを有する外側クオーターサイプ深溝部28aと、タイヤ軸方向における中央において、外側ショルダー周方向溝15及び外側センター周方向溝13の溝深さD1の20%以上40%以下の溝深さを有する外側クオーターサイプ浅溝部28bとを有する。
【0082】
本実施形態において、外側クオーターリブ18aは、複数の外側クオーターサイプ28の間において、外側ショルダー周方向溝15から車軸方向内側に窪む外側クオーターノッチ29を有する。
【0083】
本実施形態において、外側クオーターリブ18aは、複数の外側クオーターサイプ28と外側クオーターノッチ29との間において、外側ショルダー周方向溝15からタイヤ軸方向に延びて、外側クオーターリブ18a内で終端する複数の外側クオーターリブエッジサイプ30を有する。
【0084】
複数の外側クオーターリブエッジサイプ30はそれぞれ、車軸方向外側から車軸方向内側に向けて直線状に延びて、タイヤ周方向他方側へ傾斜している。
【0085】
複数の外側クオーターリブエッジサイプ30のタイヤ軸方向に沿った長さはそれぞれ、複数の外側クオーターサイプ28のタイヤ軸方向に沿った長さよりも短い。
【0086】
複数の外側クオーターリブエッジサイプ30は、溝深さが外側ショルダー周方向溝15の溝深さD1よりも浅い。
【0087】
複数の内側ショルダーブロック21aはそれぞれ、内側ショルダー周方向溝16から車軸方向内側に窪む内側ショルダーノッチ31と、内側ショルダーノッチ31からタイヤ軸方向に延びて、複数の内側ショルダーブロック21a内で終端する内側ショルダーサイプ32とを有する。
【0088】
本実施形態において、内側ショルダーサイプ32はそれぞれ、車軸方向外側から車軸方向内側に向けて延びて、タイヤ周方向他方側へ突出するように折れ曲がっている。
【0089】
内側ショルダーノッチ31は、複数の内側幅広クオーター横溝23aの延長線上にそれぞれ位置している。
【0090】
[作用効果]
このように構成したタイヤ1は、以下の特徴を有する。
【0091】
外側及び内側センター周方向溝13,14は、溝幅W1,W2が外側及び内側ショルダー周方向溝15,16の溝幅W3,W4よりもそれぞれ狭いので、溝幅W1,W2が外側及び内側ショルダー周方向溝15,16の溝幅W3,W4と同じか若しくは広い場合に比して、センターブロック17a、内側クオーターブロック20a、および外側センター周方向溝13と外側ショルダー周方向溝15との間に区画される外側クオーター陸18をタイヤ軸方向に広く構成しやすい。ここで、本発明に係る空気入りタイヤ1をトラック等の車両に装着した場合、該トラックが荷を積んでいない空車時には、センターブロック17aに接地荷重が集中しやすい。したがって、本発明によれば、空車時に接地荷重が集中しやすいセンターブロック17aがタイヤ軸方向に広く構成されるので、空車時のトラクション性能を確保しやすい。
また、内側幅広クオーター横溝23aがセンター横溝22の延長線上且つ内側ショルダーノッチ31の延長線上に位置すると共に、内側幅狭クオーター横溝23bがセンターサイプ25の延長線上且つ内側ショルダー横溝24の延長線上に位置している。その結果、センター横溝22、内側幅広クオーター横溝23a、及び内側ショルダーノッチ31によって構成される、センターブロック17aから内側ショルダーブロック21aの途中までタイヤ軸方向にわたる第1のトラクション要素と、センターサイプ25、内側幅狭クオーター横溝23b、及び内側ショルダー横溝24によって構成される、センターブロック17aから車軸方向内側接地端11aまでタイヤ軸方向にわたる第2のトラクション要素とが、タイヤ周方向に交互に構成される。よって、車軸方向一方側の領域において、センターブロック17aから内側ショルダーブロック21aにわたる、第1及び第2のトラクション要素によって、トラクション性能を好適に発揮させやすい。
しかも、第1のトラクション要素のうち車軸方向内側端部を構成する内側ショルダーノッチ31は、内側ショルダーブロック21a内で終端しているので、内側ショルダーノッチ31による内側ショルダーブロック21aの過度な剛性低下が抑制される。また、第2のトラクション要素のうち車軸方向他方側端部を構成するセンターサイプ25は、サイプであるので接地時にタイヤ周方向に対向する溝壁が互いに当接して支持するので、センターサイプ25によるセンターブロック17aの過度な剛性低下が抑制される。
内側幅広クオーター横溝23a又は内側幅狭クオーター横溝23bがセンター横溝22の延長線上且つ内側ショルダー横溝24の延長線上に位置している場合、タイヤが回転し始めて、路面を蹴りだすとき、センターブロック17a、内側クオーターブロック20a、及び内側ショルダーブロック21aの動きが大きくなるため、ヒールアンドトウ摩耗が大きくなりやすい。
したがって、本発明に係る空気入りタイヤ1によれば、センターブロック17aによって空車時におけるトラクション性能を確保しながら、センターブロック17aから内側ショルダーブロック21aにわたるトラクション要素を形成しつつ、該トラクション要素による剛性低下を抑制して、ショルダー陸の内側に対して外側が摩耗する肩落ち摩耗が抑制される。
【0092】
外側及び内側ショルダー周方向溝15,16は、溝幅W3,W4が外側及び内側センター周方向溝13,14の溝幅W1,W2のそれぞれ1.2倍以上4.0倍以下であるので、外側及び内側センター周方向溝13,14による排水性能を確保しつつ、センターブロック17aの接地幅を確保しやすい。
外側及び内側ショルダー周方向溝15,16の溝幅W3,W4が外側及び内側センター周方向溝13,14の溝幅W1,W2の4.0倍を超える場合、外側及び内側センター周方向溝13,14の溝断面積が過度に小さくなりやすく、排水性能を確保しにくい。
外側及び内側ショルダー周方向溝15,16の溝幅W3,W4が外側及び内側センター周方向溝13,14の溝幅W1,W2の1.2倍未満である場合、外側及び内側センター周方向溝13,14の溝幅W1,W2が過度に大きくなり、センターブロック17aの幅が小さくなりやすいため、センターブロック17aにおけるトラクション効果が減少して空車時のトラクション性能が不足しやすい。
【0093】
外側及び内側センター周方向溝13,14はそれぞれ、溝幅W1,W2が3.0mm以上9.0mm以下であるので、外側及び内側センター周方向溝13,14による排水性能を確保しつつ、センターブロック17aの接地幅を確保しやすい。
外側及び内側センター周方向溝13,14の溝幅W1,W2が3.0mm未満である場合、外側及び内側センター周方向溝13,14の溝断面積が過度に小さくなりやすく、排水性能を確保しにくい。
外側及び内側センター周方向溝13,14の溝幅W1,W2が9.0mmを超える場合、外側及び内側センター周方向溝13,14の溝幅W1,W2が過度に大きくなり、センターブロック17aの幅が小さくなりやすいため、センターブロック17aにおけるトラクション効果が減少して空車時のトラクション性能が不足しやすい。
【0094】
センターサイプ25は、タイヤ軸方向における両端(センターサイプ浅溝部25b)の溝深さがタイヤ軸方向における中央(センターサイプ深溝部25a)の溝深さよりも浅いので、センターブロック17aの摩耗時に両端が消失したとしても中央が残る。この結果、センターサイプ25が残るため、センターブロック17aのトラクション性能が保たれやすい。
【0095】
センターサイプ25は、センターサイプ深溝部25aとセンターサイプ浅溝部25bとを有しているので、センターブロック17aが20%から40%摩耗してセンターサイプ浅溝部25bが消失してもセンターサイプ深溝部25aが残る。したがって、センターブロック17aの20%から40%摩耗時におけるショルダー陸の内側に対して外側が摩耗する肩落ち摩耗を抑制しつつ、トラクション性能を発揮させやすい。
【0096】
トレッド11のタイヤ赤道CLよりも車軸方向内側には、ブロックパターンが形成されており、トレッド11のタイヤ赤道CLよりも車軸方向外側には、リブパターンが形成されている。したがって、トレッド11の車軸方向内側の領域は、タイヤ軸方向に延びるエッジ成分を有するブロックパターンによってトラクション性能が確保される。また、トレッド11の車軸方向外側の領域は、ブロックパターンに比して剛性を確保しやすいリブパターンによって車両旋回時に作用する横力に好適に抗する一方で、操舵輪装着時のショルダー陸の内側に対して外側が摩耗する肩落ち摩耗が抑制される。
【0097】
外側ショルダー周方向溝15は、溝幅W3が内側ショルダー周方向溝16の溝幅W4よりも狭いので、外側ショルダー周方向溝15によって車軸方向外側に区画される外側ショルダーリブ19aがタイヤ軸方向に広く構成されるので、外側ショルダーリブ19aの内側に対して外側が摩耗する肩落ち摩耗を抑制しやすい。
【0098】
内側センター周方向溝14は、溝幅W2が外側センター周方向溝13の溝幅W1よりも狭いので、センターブロック17aのうち車軸方向外側の領域のゴムボリュームを車軸方向内側の領域に比して減少させやすい。これによって、トレッド11の車軸方向外側においてリブパターンに構成されることによってゴムボリュームが増大しやすい領域と、トレッド11の車軸方向内側においてブロックパターンに構成されることによってゴムボリュームが減少しやすい領域との間の、ゴムボリュームのバランスをとりやすい。
【0099】
[他の実施形態]
なお、本発明は、上述の実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0100】
上述の実施形態では、トレッド11は、タイヤ赤道CLよりも車軸方向外側がリブパターンであって、車軸方向内側がブロックパターンであるが、トレッド11の全面がブロックパターンであってもよい。
【0101】
上述の実施形態では、外側センター周方向溝13、内側センター周方向溝14、外側ショルダー周方向溝15、及び内側ショルダー周方向溝16はそれぞれ、同じ溝深さD1を有するが、異なる溝深さを有してもよい。
【0102】
上述の実施形態では、タイヤ1は、EVライトトラック用、又はEVトラックバス用のゴム製のタイヤとして構成されているが、エンジン駆動のライトトラック用、エンジン駆動のトラックバス用、又は重荷重用のゴム製のタイヤとして構成されてもよい。重荷重用のタイヤとは、JATMA YEAR BOOK(C章:トラック及びバス用、D章:建設車両用)において定められているタイヤである。
【0103】
本発明の第1の態様は、トレッドに、
車両装着状態でタイヤ赤道に対して車軸方向一方側に位置しており、タイヤ周方向に延びる、一方側センター周方向溝と、
車両装着状態でタイヤ赤道に対して車軸方向他方側に位置しており、タイヤ周方向に延びる、他方側センター周方向溝と、
車両装着状態で前記一方側センター周方向溝よりも車軸方向一方側に位置しており、タイヤ周方向に延びる、一方側ショルダー周方向溝と、
車両装着状態で前記他方側センター周方向溝よりも車軸方向他方側に位置しており、タイヤ周方向に延びる、他方側ショルダー周方向溝と、
タイヤ周方向に間隔を空けて位置しており、それぞれ前記一方側センター周方向溝と前記他方側センター周方向溝との間をタイヤ軸方向に連通する、複数のセンター横溝と、
タイヤ周方向に間隔を空けて位置しており、それぞれ前記一方側センター周方向溝と前記一方側ショルダー周方向溝との間をタイヤ軸方向に連通する、複数の一方側クオーター横溝と、
タイヤ周方向に間隔を空けて位置しており、それぞれ前記一方側ショルダー周方向溝と前記トレッドの車軸方向一方側接地端との間をタイヤ軸方向に連通する、複数の一方側ショルダー横溝と、
前記一方側センター周方向溝と前記他方側センター周方向溝との間に区画されると共に、前記複数のセンター横溝によってタイヤ周方向に区画される、複数のセンターブロックと、
前記一方側センター周方向溝と前記一方側ショルダー周方向溝との間に区画されると共に、前記複数の一方側クオーター横溝によってタイヤ周方向に区画される、複数の一方側クオーターブロックと、
前記一方側ショルダー周方向溝によって車軸方向一方側に区画されると共に、前記複数の一方側ショルダー横溝によってタイヤ周方向に区画される、複数の一方側ショルダーブロックと、
前記複数のセンターブロックそれぞれにおいて、前記一方側センター周方向溝と前記他方側センター周方向溝との間をタイヤ軸方向に連通する、センターサイプと、
前記複数の一方側ショルダーブロックそれぞれにおいて、前記一方側ショルダー周方向溝から車軸方向一方側に延びて当該一方側ショルダーブロック内で終端する、一方側ショルダーノッチと
を有し、
前記一方側センター周方向溝及び前記他方側センター周方向溝は、溝幅が前記一方側ショルダー周方向溝及び前記他方側ショルダー周方向溝の溝幅よりもそれぞれ狭く、
前記複数の一方側クオーター横溝には、
前記センター横溝の延長線上且つ前記一方側ショルダーノッチの延長線上に位置する、第1クオーター横溝と、
前記センターサイプの延長線上且つ前記一方側ショルダー横溝の延長線上に位置する、第2クオーター横溝と
が含まれている、空気入りタイヤを提供する。
【0104】
本発明の第2の態様は、前記一方側ショルダー周方向溝及び前記他方側ショルダー周方向溝は、溝幅が前記一方側センター周方向溝及び前記他方側センター周方向溝の溝幅のそれぞれ1.2倍以上4.0倍以下である、第1の態様に記載の空気入りタイヤを提供する。
【0105】
本発明の第3の態様は、前記一方側センター周方向溝及び前記他方側センター周方向溝はそれぞれ、溝幅が3.0mm以上9.0mm以下である、第2の態様に記載の空気入りタイヤを提供する。
【0106】
本発明の第4の態様は、前記センターサイプは、タイヤ軸方向における両端の溝深さがタイヤ軸方向における中央の溝深さよりも浅い、第1の態様から第3の態様のいずれかに記載の空気入りタイヤを提供する。
【0107】
本発明の第5の態様は、前記センターサイプは、
前記一方側センター周方向溝と前記他方側センター周方向溝の溝深さの60%以上90%以下の溝深さを有する、深溝部と、
前記一方側センター周方向溝と前記他方側センター周方向溝の溝深さの20%以上40%以下の溝深さを有する、浅溝部とを有している、第1の態様から第4の態様のいずれかに記載の空気入りタイヤを提供する。
【0108】
本発明の第6の態様は、前記空気入りタイヤは、
前記トレッドに、
車両装着状態でタイヤ赤道に対して車軸方向内側において、前記一方側センター周方向溝、前記一方側ショルダー周方向溝、前記複数の一方側クオーター横溝、前記複数の一方側ショルダー横溝、前記複数の一方側クオーターブロック、及び前記複数の一方側ショルダーブロックと、
車両装着状態でタイヤ赤道に対して車軸方向外側において、前記他方側センター周方向溝、及び前記他方側ショルダー周方向溝と
を有し、
前記他方側ショルダー周方向溝と前記他方側センター周方向溝との間に区画される、他方側クオーターリブと、
前記他方側ショルダー周方向溝によって車軸方向外側に区画される、他方側ショルダーリブとを有している、第1の態様から第5の態様のいずれかに記載の空気入りタイヤを提供する。
【0109】
本発明の第7の態様は、前記他方側ショルダー周方向溝は、溝幅が前記一方側ショルダー周方向溝よりも狭い、第6の態様に記載の空気入りタイヤを提供する。
【0110】
本発明の第8の態様は、前記一方側センター周方向溝は、溝幅が前記他方側センター周方向溝よりも狭い、第6の態様又は第7の態様に記載の空気入りタイヤを提供する。
【符号の説明】
【0111】
1 空気入りタイヤ
11 トレッド
11a 車軸方向内側接地端(車軸方向一方側接地端)
11b 車軸方向外側接地端
13 外側センター周方向溝(他方側センター周方向溝)
14 内側センター周方向溝(一方側センター周方向溝)
15 外側ショルダー周方向溝(他方側ショルダー周方向溝)
16 内側ショルダー周方向溝(一方側ショルダー周方向溝)
17 センター陸
17a センターブロック
18 外側クオーター陸
18a 外側クオーターリブ(他方側クオーターリブ)
19 外側ショルダー陸
19a 外側ショルダーリブ(他方側ショルダーリブ)
20 内側クオーター陸
20a 内側クオーターブロック(一方側クオーターブロック)
21 内側ショルダー陸
21a 内側ショルダーブロック(一方側ショルダーブロック)
22 センター横溝
22a センター横深溝
22b センター横浅溝
23 内側クオーター横溝(一方側クオーター横溝)
23a 内側幅広クオーター横溝(第1クオーター横溝)
23b 内側幅狭クオーター横溝(第2クオーター横溝)
24 内側ショルダー横溝(一方側ショルダー横溝)
25 センターサイプ
25a センターサイプ深溝部
25b センターサイプ浅溝部
26a 第1外側ショルダースリット
26b 第2外側ショルダースリット
27 外側ショルダーリブエッジサイプ
28 外側クオーターサイプ
28a 外側クオーターサイプ深溝部
28b 外側クオーターサイプ浅溝部
29 外側クオーターノッチ
30 外側クオーターリブエッジサイプ
31 内側ショルダーノッチ(一方側ショルダーノッチ)
32 内側ショルダーサイプ
CL タイヤ赤道
W1,W2,W3,W4 溝幅
W5 幅
D1,D2,D3,D4,D5,D6,D7,D8 溝深さ
L1,L2 長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9