(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167073
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】フーリエタイコグラフィーのための光学系
(51)【国際特許分類】
G02B 21/08 20060101AFI20241122BHJP
G02B 19/00 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
G02B21/08
G02B19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024080570
(22)【出願日】2024-05-17
(31)【優先権主張番号】23174321.2
(32)【優先日】2023-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン-ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンツェル ザルツマン
【テーマコード(参考)】
2H052
【Fターム(参考)】
2H052AC18
2H052AC27
2H052AC33
2H052AC34
2H052AF14
2H052AF25
2H052BA02
2H052BA03
2H052BA07
2H052BA11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】フーリエタイコグラフィーのために構成された光学系を開示する。
【解決手段】少なくとも1つの発光体(112)のアレイであって、各発光体が、試料平面(114)に向かって少なくとも1つの照射光線を放射するように構成される、少なくとも1つの発光体のアレイと、複数のレンズを含む少なくとも1つの小型レンズアレイ(116)であって、レンズの各々が、発光体のアレイの発光体のうちの少なくとも1つの専用であり、それぞれのレンズの配向および形状が、専用の発光体に適合され、小型レンズアレイが、試料平面上で照射光線を集束させるように構成される、少なくとも1つの小型レンズアレイと、を備える、光学系が開示される。発光体のアレイおよび小型レンズアレイは、試料平面が様々な照射角度の照射光線によって照射されるように配置される。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フーリエタイコグラフィーのために構成された光学系(110)であって、
少なくとも1つの発光体(112)のアレイであって、各発光体(112)が、試料平面(114)に向かって少なくとも1つの照射光線を放射するように構成される、少なくとも1つの発光体(112)のアレイと、
複数のレンズを含む少なくとも1つの小型レンズアレイ(116)であって、レンズの各々が、前記発光体(112)のアレイの前記発光体(112)のうちの少なくとも1つの専用であり、それぞれのレンズの配向および形状が、専用の前記発光体(112)に適合され、前記小型レンズアレイ(116)が、前記試料平面(114)内に前記照射光線を集束させるように構成される、少なくとも1つの小型レンズアレイ(116)と、
を備え、
前記発光体(112)のアレイおよび前記小型レンズアレイ(116)は、前記試料平面(114)が様々な照射角度で前記照射光線によって照射されるように配置される、光学系(110)。
【請求項2】
前記光学系(110)が、少なくとも1つの放物面反射器(120)を備え、前記放物面反射器(120)は、前記小型レンズアレイ(116)を通過した前記照射光線が、前記試料平面(114)に衝突する前に前記放物面反射器(120)に衝突するように配置される、請求項1に記載の光学系(110)。
【請求項3】
前記放物面反射器(120)が、セグメント化された放物面反射器(122)を含む、請求項2に記載の光学系(110)。
【請求項4】
前記光学系(110)が、少なくとも1つの屈折光学素子(124)を備え、前記屈折光学素子(124)は、前記小型レンズアレイ(116)を通過した前記照射光線が、前記試料平面(114)に衝突する前に前記屈折光学素子(124)に衝突するように配置される、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学系(110)。
【請求項5】
前記屈折光学素子(124)が、少なくとも1つのフレネルレンズを含み、前記フレネルレンズは直径≧200mmである、請求項4に記載の光学系(110)。
【請求項6】
前記小型レンズアレイ(116)の前記レンズが、前記発光体(112)から前記試料平面(114)への光線の伝播方向に配置される、請求項1~5のいずれか一項に記載の光学系(110)。
【請求項7】
前記小型レンズアレイ(116)の前記レンズが、開口数が大きいレンズである、請求項1~6のいずれか一項に記載の光学系(110)。
【請求項8】
前記発光体(112)が、少なくとも1つの発光ダイオードを含み、前記発光ダイオードは、発光範囲が340~800nmのスペクトル範囲内に少なくとも部分的に位置する、請求項1~7のいずれか一項に記載の光学系(110)。
【請求項9】
デジタル顕微鏡システムであって、
請求項1~8のいずれか一項に記載の少なくとも1つの光学系(110)と、
少なくとも1つの顕微鏡スライド(118)を受け入れるように構成された少なくとも1つの試料界面と、
少なくとも1つの画像検出器であって、前記光学系(110)によって提供される前記照射光線によって様々な照射角度で照射された前記顕微鏡スライド(118)上の試料の複数の画像を撮像するように構成された少なくとも1つの画像検出器と、
前記画像検出器によって撮像された前記複数の画像を使用することによって、前記試料の少なくとも1つの合成画像を再構成するように構成された少なくとも1つの処理装置と、
を備える、デジタル顕微鏡システム。
【請求項10】
前記処理装置が、反復位相回復アルゴリズムを使用することによって、前記光学系(110)によって提供される前記照射光線によって様々な照射角度で照射された前記顕微鏡スライド上の前記試料の前記複数の画像を合成するように構成される、請求項9に記載のデジタル顕微鏡システム。
【請求項11】
前記デジタル顕微鏡システムが、少なくとも1つの血液分析装置または少なくとも1つのデジタルパソロジースキャナを含む、請求項9または10に記載のデジタル顕微鏡システム。
【請求項12】
請求項9~11のいずれか一項に記載の少なくとも1つのデジタル顕微鏡システムを使用するフーリエタイコグラフィーのための方法であって、前記方法が以下のステップ:
a)試料を含む少なくとも1つの顕微鏡スライド(118)を前記試料界面に提供するステップと、
b)前記発光体(112)のアレイを使用することによって、様々な発光角度で前記試料平面(114)に向かって複数の照射光線を放射し、複数のレンズを含む前記小型レンズアレイ(116)を使用することによって、様々な照射角度で前記試料平面(114)を照射するステップと、
c)前記画像検出器を使用することによって、前記光学系(110)によって提供される前記照射光線によって様々な照射角度で照射された前記試料の複数の画像を撮像するステップと、
d)前記処理装置を使用して、前記画像検出器によって撮像された前記複数の画像を使用することによって前記試料の少なくとも1つの合成画像を再構成するステップと、
を含む、方法。
【請求項13】
命令を含むコンピュータプログラムであって、前記プログラムが請求項9~11のいずれか一項に記載のデジタル顕微鏡システムによって実行されると、前記デジタル顕微鏡システムに、請求項12に記載の方法を実行させる、コンピュータプログラム。
【請求項14】
命令を含むコンピュータ可読記憶媒体であって、前記命令が、請求項9~11のいずれか一項に記載のデジタル顕微鏡システムによって実行されると、前記デジタル顕微鏡システムに、請求項12に記載の方法を実行させる、コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項15】
命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記命令が、1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、前記1つまたは複数のプロセッサに、請求項12に記載の方法を実行させる、非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、フーリエタイコグラフィーのために構成された光学系、デジタル顕微鏡システム、およびフーリエタイコグラフィーのための方法に関する。本発明は、さらに、本発明にかかる方法を実行するためのプログラム手段を備えたコンピュータプログラムに関する。本発明による装置、方法、およびコンピュータプログラムは、血液学または臨床化学分析に使用され得る。しかしながら、本発明について、他の適用分野も実現可能である。
【背景技術】
【0002】
フーリエタイコグラフィー(FPM)は、最近、非常に高い解像度および画質が、比較的単純な光学設定を使用することによって実現可能であることを示した。例えば、FPMの概念は、Guoan Zheng et al.,「Concept,implementations and applications of Fourier ptychography,」Nature Reviews Physics,3,207-223(2021)、「Fourier ptychographic microscopy for filtration-based circulating tumor cell enumeration and analysis,「Long-working-distance synthetic aperture Fresnel off-axis digital holography」、Pan Feng et al.,Optics Express Vol.17,Issue7,pp.5473-5480(2009)、国際公開第2021/053374号A1、米国特許第10,684,458号B2、米国特許出願公開第2020/0351454号A1、国際公開第2016/090331号A1、米国特許出願公開第2022/0043251号A1、米国特許第10、394、011号B2、米国特許出願公開第2019/0331902号A1、米国特許第10,652,444号B2、米国特許出願公開第2017/0146788号A1、米国特許出願公開第2016/0341945号A1および大韓民国特許第2315016号B1から知られている。
【0003】
しかしながら、低コストのデジタル顕微鏡システムでFPMを使用することは、問題となり得る。FPMは、各々が単一の発光ダイオード(LED)のみで撮影された多数の画像の画像取得に依存する。典型的な配置は、特に関連性の高い大きな入射角では、LEDごとの入射電力が低いことを示唆する。その結果、強度が低いと、カメラの統合時間が長くなり、したがってそのようなシステムのスループットが制限される。
【発明の概要】
【0004】
したがって、上述した技術的課題に対処する方法および装置を提供することが望ましい。具体的には、FPMシステムのスループットを高めることを可能にする方法、コンピュータプログラム、および装置が提案されるものとする。
【0005】
この問題は、フーリエタイコグラフィーのために構成された光学系、デジタル顕微鏡システム、および独立請求項の特徴を有するフーリエタイコグラフィーのための方法によって対処される。単独で実現されても、任意の組合せで実現されてもよい有利な実施形態が、従属請求項ならびに明細書全体に記載される。
【0006】
以下で使用される場合、「有する(have)」、「備える(comprise)」もしくは「含む(include)」という用語、またはそれらの任意の文法的変形は、非排他的な方法で使用される。したがって、これらの用語は、これらの用語によって導入された特徴に加えて、この文脈で説明されたエンティティにさらなる特徴が存在しない状況、および1つまたは複数のさらなる特徴が存在する状況の両方を指し得る。一例として、「AはBを有する」、「AはBを備える」、および「AはBを含む」という表現は、Bの他に他の要素がAに存在しない状況(すなわち、AがBのみからなる状況)、およびBの他に、要素C、要素CおよびD、またはさらなる要素などの1つまたは複数のさらなる要素がエンティティAに存在する状況の両方を指し得る。
【0007】
さらに、特徴または要素が1回または複数回存在し得ることを示す「少なくとも1つ」、「1つまたは複数」という用語または同様の表現は、典型的には、それぞれの特徴または要素を導入するときに1回のみ使用されることに留意されたい。以下では、ほとんどの場合、それぞれの特徴または要素を参照するとき、それぞれの特徴または要素が1回または複数回存在し得るという事実にかかわらず、「少なくとも1つ」または「1つまたは複数」という表現は繰り返されない。
【0008】
さらに、以下で使用される場合、「好ましくは」、「より好ましくは」、「特に」、「より詳細には」、「具体的には」、「より具体的には」という用語または同様の用語は、代替の可能性を制限することなく、任意の特徴と共に使用される。したがって、これらの用語によって導入される特徴は任意の特徴であり、決して特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。本発明は、当業者が認識するように、代替的な特徴を使用することによって実行され得る。同様に、「本発明の一実施形態では、」または同様の表現によって導入される特徴は、本発明の代替の実施形態に関する制限なしに、本発明の範囲に関する制限なしに、およびそのように導入された特徴を本発明の他の任意のまたは任意でない特徴と組み合わせる可能性に関する制限なしに、任意の特徴であることが意図される。
【0009】
第1の態様では、フーリエタイコグラフィーのために構成された光学系が開示される。光学系は、
-少なくとも1つの発光体のアレイであって、各発光体が、試料平面に向けて少なくとも1つの照射光線を放射するように構成される、少なくとも1つの発光体のアレイと、
-複数のレンズを含む少なくとも1つの小型レンズアレイであって、レンズの各々が、発光体のアレイの発光体のうちの少なくとも1つの専用であり、それぞれのレンズの配向および形状が、専用の発光体に適合され、小型レンズアレイが、試料平面上で照射光線を集束させるように構成される、少なくとも1つの小型レンズアレイと、を備える。
【0010】
発光体のアレイおよび小型レンズアレイは、試料平面が様々な照射角度の照射光線によって照射されるように配置される。
【0011】
光学系は、いくつかの追加の光学素子の組合せを使用することによって、発光体ごと、例えばLEDごとに試料平面に送達することができる光強度を大幅に増加させることができる。より高い光強度は、有利であり、より短いカメラ積分時間、したがってより高いスループット時間を可能にする。提案された光学系はまた、例えば、典型的には平面LED配置をもたらす印刷回路基板アセンブリ(PCBA)製造手順により良くフィットする発光体、例えばLEDの最適化された配置を可能にすることができる。
【0012】
本明細書で使用される「システム」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、全体を形成する相互作用または相互依存する構成要素部分の任意の組を指し得る。具体的には、構成要素は、少なくとも1つの共通の機能を果たすために互いに相互作用し得る。少なくとも2つの構成要素が、独立して取り扱われてもよく、あるいは結合し、もしくは接続可能であってもよい。本明細書で使用される「光学系」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、複数の光学部品を備え、少なくとも1つの光学機能を果たすように構成されたシステムを指し得る。
【0013】
本明細書で使用される「フーリエタイコグラフィー」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、様々な照射角度で取得された試料の複数の画像に基づく計算撮像技術を指し得る。取得された画像は、少なくとも1つの反復位相検索アルゴリズムを使用して合成され得る。
【0014】
本明細書で使用される場合、「光」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、赤外スペクトル範囲、可視スペクトル範囲、および紫外スペクトル範囲のうちの1つまたは複数における電磁放射を指し得る。本明細書では、「紫外スペクトル範囲」という用語は、一般に、1nm~400nmの波長を有する電磁放射線を指し得、300~400nmの範囲は、通常、「近紫外スペクトル範囲」(NUV)と称される。「赤外スペクトル範囲(IR)」という用語は、一般に、760nm~1000μmの電磁放射線を指し、760nm~1.5μmの範囲が、通常は「近赤外スペクトル範囲(NIR)」と称される一方で、1.5μm~15μmの範囲は「中赤外スペクトル範囲(MidIR)」と称され、15μm~1000μmの範囲は「遠赤外スペクトル範囲(FIR)」と呼ばれる。例えば、本発明の典型的な目的のために使用される光は、近紫外から近赤外スペクトル範囲、例えば340~800nmの波長範囲の光である。しかしながら、他のスペクトル範囲も実現可能であることに留意されたい。
【0015】
本明細書で使用される、エミッターとも呼ばれる「発光体」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも1つの光線を生成するように構成された少なくとも1つの任意の装置を指し得る。発光体の各々は、少なくとも1つの発光ダイオード、少なくとも1つの面発光ダイオードレーザ、少なくとも1つの端面発光ダイオードレーザからなる群から選択される少なくとも1つのコヒーレント光源を備え得る。
【0016】
例えば、発光体の各々は、少なくとも1つの発光ダイオード(LED)を備える。本明細書で使用される「発光ダイオード」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、装置に電流が流れると発光することができる光電子半導体装置を指し得る。光電子半導体装置は、自然放出、誘導放出、準安定励起状態の減衰などのうちの1つまたは複数を含む様々な物理的プロセスに起因して光を生成するように構成され得る。したがって、一例として、発光ダイオードは、光の自然放出に基づく発光ダイオード、特に有機発光ダイオード、スーパールミネセンス(sLED)に基づく発光ダイオード、またはレーザダイオード(LD)のうちの1つまたは複数を含み得る。以下では、発光ダイオードの可能な実施形態を前述の物理的原理または設定のいずれかに狭めることなく、略語「LED」を任意のタイプの発光ダイオードに使用する。
【0017】
例えば、発光体は、340~800nmのスペクトル範囲内に少なくとも部分的に位置する中心波長を有し得る。例えば、LEDは、340~800nmのスペクトル範囲内に少なくとも部分的に位置する発光範囲を有し得る。
【0018】
本明細書で使用される「アレイ」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、オブジェクトの順序付けられた配置を指し得る。配置内のオブジェクトの位置および/または配向は、配置内の他のオブジェクトに対して固定されてもよい。
【0019】
発光体のアレイは、発光体の規則的な配置を含んでもよく、発光体の互いに対する位置および/または配向は、固定されてもよい。発光体のアレイは、マトリクス状に配置された複数の発光体を備え得る。本明細書で使用される「マトリクス」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、所定の幾何学的順序での複数の要素の配置を指し得る。マトリクスは、具体的には、1つまたは複数の行および1つまたは複数の列を有する矩形マトリクスであってもよく、またはそれを含んでもよい。行および列は、具体的には、矩形状に配置されてもよい。しかしながら、非矩形配置などの他の配置が実現可能である。一例として、円形配置も実現可能であり、要素は中心点の周りに同心円または楕円で配置される。例えば、発光体のアレイは、発光体の一次元、二次元、または三次元アレイを備えてもよい。
【0020】
発光体は、試料平面に向けて同じ発光角度の照射光線を放射するように配置されてもよい。例えば、発光体は、試料平面に平行な平面内に配置されてもよい。光学系は、試料平面が様々な照射角度の照射光線によって照射されるように、照射光線を調整するように構成された小型レンズアレイを備えてもよい。しかしながら、他の実施形態も可能である。発光体のアレイの発光体は、発光体が試料平面に向けて様々な発光角度の照射光線を放射するように配置されてもよい。例えば、各発光体は、試料平面に対して個別に傾斜していてもよい。例えば、発光体は、試料平面に対して傾斜していてもよい平面内に配置されてもよい。例えば、発光体は、曲面上に配置されてもよい。小型レンズアレイは、照射光線を試料平面に導くように構成され得る。
【0021】
発光体のアレイは、印刷回路基板アセンブリ(PCBA)上に配置、例えば直線的に配置されてもよい。例えば、発光体のアレイは、「チップオンボード」技術および/または「チップオンフレックス」技術を使用して搭載されてもよい。例えば、発光体を曲面上に配置するために、チップオンボード技術を使用してフレックスプリントアセンブリに搭載されるLEDが使用され得る。発光体のアレイは、フレキシブル基板上に搭載されてもよい。例えば、フレキシブルプリント基板(FPC)が使用され得る。FPCは、D.Shavit et al.,「The developments of LEDs and SMD Electronics on transparent conductive Polyester film」、Vacuum International,1/2007,S.35 ffに記載されているように設計されてもよい。
【0022】
アレイの発光体は、同じタイプのものであってもよく、あるいは異なるタイプのものであってもよい。アレイの発光体は、発光体の各々に独立して電流を提供することなどによって、互いに独立して制御可能であってもよい。発光体は、同じまたは異なる波長の光線を放射するように構成されてもよい。例えば、発光体は、同じ波長の光線を放射するように構成される。
【0023】
発光体のアレイの発光体は、照射光線を順次放射するように構成されてもよい。本明細書において使用される「順次放射する」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、異なる時間および/またはシフトされた時間に少なくとも部分的に光線を放射することを指し得る。
【0024】
本明細書において使用されるとき、「光線」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、発光体のアレイから試料平面に伝播する光を指し得る。本明細書で使用される「照射する」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも1つの要素を光に曝露するプロセスを指し得る。
【0025】
本明細書で使用される「試料平面」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、光学系内の試料の所定の場所を指し得る。例えば、試料平面は、顕微鏡スライドを保持するように構成されたレセプタクルによって画定されてもよい。
【0026】
本明細書で使用される「試料」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、化学的または生物学的化合物などの物質の分取を指し得る。試料は、血液、血清、血漿、尿、唾液のうちの1つまたは複数などの少なくとも1つの生物学的標本であってもよく、またはそのような生物試料を含んでもよい。試料は、組織または塗抹標本などの生物学的材料であってもよく、または生物学的材料を含んでもよい。試料は、例えば、発色または濁度指示薬を伴ういくつかのアッセイ特異的試薬と混合され得る。追加的に、あるいは代わりに、試料は、化学物質または化合物ならびに/あるいは試薬であってもよく、または化学物質もしくは化合物ならびに/あるいは試薬を含んでもよい。試料は、具体的には、化学的または生物学的化合物の流体物質のアリコートなどの液体試料であってもよい。例えば、液体試料は、少なくとも1つの化学物質および/または生物学的物質を含む、液体物質および/または1つもしくは複数の液体物質を含有する溶液などの、少なくとも1つの純粋な液体であり得るか、またはそれを含み得る。別の例として、液体試料は、懸濁液、エマルジョン、および/または1つもしくは複数の化学的および/または生物学的物質の分散体などの液体混合物であり得るか、またはそれらを含み得る。しかしながら、他の、特に非液体試料も可能である。他の試料タイプは、例えば、組織、または均質化された材料であってもよい。
【0027】
試料は、少なくとも1つの顕微鏡スライドを使用して提供され得る。本明細書で使用される「顕微鏡スライド」またはスライドという用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されるものではないが、スライドの表面に搭載される試料のために指定された基材を指し得る。基板は、例えば、処理中にいかなる変化もなく試料を顕微鏡スライドに搬送する目的で、機械的に安定であり得る。基板は、十分な機械的安定性を提供する任意の材料を含んでもよい。基板は、例えば生物学的標本を搬送する目的で、生物学的材料と適合性があるように構成された表面を呈し得る。例として、ガラスは、一方では十分な機械的安定性を提供し、他方では生物学的材料との高い適合性を有することが知られているため、顕微鏡スライドは、ガラススライドである。しかしながら、顕微鏡スライドのためのさらなる種類の材料も実現可能であり得る。顕微鏡スライドは、2D延長部および厚さを有するプレートであってもよい。プレートの2D延長部は、長方形または円形の形態を呈し得る。プレートの厚さは、延長部のサイズと比較して小さくてもよく、好ましくは20%、より好ましくは10%、最も好ましくは5%、またはプレートの2D延長部の直線的な範囲の尺度未満であってもよい。
【0028】
本明細書で使用される「小型レンズアレイ」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも2つのレンズを備えるアレイを指し得る。レンズは、収束レンズであってもよい。レンズの各々は、専用発光体によって生成され、試料平面内のレンズに衝突する照射光線を集束させるように構成されてもよい。小型レンズアレイのレンズは、小径、例えば数ミリメートルの直径を有してもよい。小型レンズアレイのレンズは、異なる特性、例えば、形状および/または配向が異なっていてもよい。小型レンズアレイのレンズは、発光体から試料平面への光線の伝播方向に配置されてもよい。小型レンズアレイのレンズは、開口数が大きいレンズであってもよい。例えば、レンズは、NA~0.5までの開口数を有してもよい。そのような小型レンズアレイを使用すると、走査時間を大幅に短縮することができる。
【0029】
レンズの各々は、発光体のアレイの発光体のうちの少なくとも1つの専用である。本明細書で使用される「発光体のうちの少なくとも1つの専用」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定するものではないが、各レンズが発光体の少なくとも1つに割り当てられる配置を指し得る。それぞれのレンズの配向および形状は、専用の発光体に適合される。形状および/または配向の個々の各レンズは、専用の発光体に最適化されてもよい。アレイのレンズの数は、発光体のアレイの発光体の数に対応し得る。しかしながら、他の実施形態も実現可能である。例えば、複数の発光体は、複合レンズを共有してもよい。
【0030】
発光体のアレイおよび小型レンズアレイは、試料平面が様々な照射角度の照射光線によって照射されるように配置される。本明細書において使用されるとき、「照射角度」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、試料平面の表面に入射する光線と入射点における表面の法線との間の入射角を指し得る。照射角度は、法線に対して0°~最大30°で異なっていてもよい。発光体のアレイおよび小型レンズアレイの配置は、発光体のアレイおよび小型レンズアレイの相対的な配置を指し得る。光学系は、発光体から試料平面への照射光のビーム経路において、さらにいかなる光学部品もなしで、発光体のアレイおよび小型レンズアレイのみを備えてもよい。そのような配置は、例えば0°~30°の低入射角から中入射角に特に好適であり得る。
【0031】
光学系は、少なくとも1つの放物面反射器、例えば放物面鏡をさらに備えてもよい。本明細書において使用される「放物面反射器」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、放物面の三次元形状を有する反射器を指し得る。放物面反射器は、反射面を有してもよい。放物面反射器は、小型レンズアレイを通過した照射光線が試料平面に衝突する前に放物面反射器に衝突するように配置されてもよい。発光体および/または小型レンズアレイは、発光体が同じ配向で整列した状態で、試料平面に平行な平面内に配置されてもよい。これにより、小型レンズアレイを通過した照射光線が、平行光線として放物面反射器に到達することを可能にし得る。放物面反射器は、平行光線を試料平面上の焦点に集束させるように構成されてもよい。放物面反射器、例えば放物面鏡と組み合わせて小型レンズアレイを使用することは、垂直に対して例えば20°~60°の中入射角から高入射角に有利であり得る。
【0032】
放物面反射器は、≧200mmの直径を有してもよい。そのような大口径の放物面反射器は、依然として高い強度を確保しながら、発光体の最適な位置決めを可能にし得る。放物面反射器は、低コストで入手可能であり、高精度に製造することができる。
【0033】
例えば、放物面反射器は、少なくとも1つの小型レンズアレイと組み合わせて使用され得る。さらなるLEDを放物面反射器の底部に置いてもよい。それぞれの小型レンズアレイを有するLEDまたはLEDのアレイを放物面反射器の凹部に設置してもよい。これにより、(放物面反射器を介さずに)光線を試料平面の真上に向けることを可能にし得る。小型レンズアレイは、低入射角をカバーし得、放物面反射器は、中入射角から高入射角をカバーし得る。
【0034】
放物面反射器は、連続面を備えてもよい。あるいは、放物面反射器は、セグメント化された放物面反射器を備えてもよい。本明細書において使用される「セグメント化された放物面反射器」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、モノリシック放物面反射器のセグメントとして光学的に機能するように構成された副反射器のアレイを指し得る。小型レンズアレイをセグメント化された放物面反射器、例えば放物面鏡と組み合わせて使用することは、垂直に対して例えば30°~80°の中入射角から非常に高い入射角にとって有利であり得る。
【0035】
例えば、セグメント化された放物面反射器は、少なくとも1つの小型レンズアレイと組み合わせて使用され得る。さらなるLEDをセグメント化された放物面反射器の底部に置いてもよい。それぞれの小型レンズアレイを有するLEDまたはLEDのアレイをセグメント化された放物面反射器の凹部に設置してもよい。これにより、(セグメント化された放物面反射器を介さずに)光線を試料平面の真上に向けることを可能にし得る。小型レンズアレイは、低入射角をカバーし得、セグメント化された放物面反射器は、中入射角から非常に高い入射角をカバーし得る。
【0036】
光学系は、少なくとも1つの屈折光学素子を備えてもよい。屈折光学素子は、小型レンズアレイを通過した照射光線が試料平面に衝突する前に屈折光学素子に衝突するように配置されてもよい。屈折光学素子は、少なくとも1つのフレネルレンズを含んでもよい。フレネルレンズの直径は、≧200mmであってもよい。小型レンズアレイを少なくとも1つのフレネルレンズと組み合わせて使用することにより、順方向の強度を改善させることを可能にし得る。
【0037】
追加の光学素子と組み合わせた発光体、例えばLEDの提案された配置は、例えば血液分析装置の試料平面に送達される各LED(特に大きな入射角を有するLED)の光強度を増加させることを可能にし得る。より高い光強度の利点は、より短いカメラ積分時間、したがってより高いスループット時間を可能にし得る。加えて、典型的には、平面LED配置をもたらすLED PCBA製造手順により良くフィットする発光体の最適化された配置が可能であり得る。
【0038】
さらなる態様では、デジタル顕微鏡システムが開示される。デジタル顕微鏡システムは、
-本発明による少なくとも1つの光学系と、
-少なくとも1つの顕微鏡スライドを受け入れるように構成された少なくとも1つの試料界面と、
-少なくとも1つの画像検出器であって、光学系によって提供される照射光線によって様々な照射角度で照射された顕微鏡スライド上の試料の複数の画像を撮像するように構成された少なくとも1つの画像検出器と、
-画像検出器によって撮像された複数の画像を使用することによって、試料の少なくとも1つの合成画像を再構成するように構成された少なくとも1つの処理装置と、
を備える。
【0039】
定義および実施形態に関して、本発明の第1の態様に記載の光学系の説明を参照する。
【0040】
本明細書で使用される「システム」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、全体を形成する相互作用または相互依存する構成要素部分の任意の組を指し得る。具体的には、構成要素は、少なくとも1つの共通の機能を果たすために互いに相互作用し得る。少なくとも2つの構成要素が、独立して取り扱われてもよく、あるいは結合し、もしくは接続可能であってもよい。本明細書で使用される「デジタル顕微鏡システム」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも1つの顕微鏡機能を実行するように構成されたシステムを指し得る。デジタル顕微鏡システムは、少なくとも1つの血液分析装置または少なくとも1つのデジタルパソロジースキャナを備えてもよい。
【0041】
デジタル顕微鏡システムは、少なくとも1つの顕微鏡対物レンズを備えてもよい。本明細書で使用される「顕微鏡対物レンズ」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、照射光線による照射に応答して試料によって生成された光を受け取り、衝突する光線を集束させて画像を生成するように構成された少なくとも1つの光学素子を指し得る。顕微鏡対物レンズは、少なくとも1つのレンズを備えてもよい。顕微鏡対物レンズは、レンズ系などの複数のレンズを備えてもよい。顕微鏡対物レンズは、それぞれの結像レンズと組み合わせて、画像検出器上に試料の画像を生成するように構成されてもよい。顕微鏡対物レンズは、規定の倍率を有してもよい。顕微鏡対物レンズは、座標系を構成し得、「z」は、z軸またはz方向とも呼ばれる顕微鏡対物レンズの光軸に沿った座標である。z軸に沿った座標は、長手方向座標zと考え得る。z軸を横切る方向は、x方向およびy方向と考え得る。デジタル顕微鏡システムは、顕微鏡対物レンズに結合された電動集束ステージを備えてもよい。集束ステージは、顕微鏡対物レンズの光軸に沿った顕微鏡対物レンズの軸方向移動を制御するように構成されてもよい。追加的に、あるいは代わりに、デジタル顕微鏡システムは、顕微鏡スライドに結合された電動z移動ステージを備えてもよい。z移動ステージは、顕微鏡対物レンズの光軸に沿った、例えばz方向に沿った顕微鏡スライドの軸方向移動を制御するように構成されてもよい。
【0042】
本明細書において使用される「試料界面」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、顕微鏡スライドを保持および/または位置決めするように構成された少なくとも1つのレセプタクルを指し得る。試料界面は、顕微鏡スライドをX、Y平面内で移動させるように構成されたXY移動ステージ、例えば電動XYステージの一部であってもよい。XY移動ステージは、顕微鏡スライドに結合されてもよい。XY移動ステージは、顕微鏡対物レンズの光軸を横切る顕微鏡スライドの移動を制御するように構成されてもよい。
【0043】
本明細書で使用される「画像検出器」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、空間分解された一次元、二次元、またはさらには三次元の光学データまたは情報を記録または取り込むように構成された少なくとも1つの撮像素子を有する少なくとも1つのセンサー装置を指し得る。画像検出器は、少なくとも1つのカメラを備えてもよい。カメラは、CCDチップまたはCMOSチップを備えてもよい。
【0044】
本明細書で使用される「撮像する」という用語は、広義の用語であり、当業者にその通常の慣用的な意味を与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。これらの用語は、具体的には、限定されないが、「画像」という用語でも呼ばれる、試料の少なくとも1つの特性の二次元表現を生成および/または提供することを指し得る。画像は、例えば、ユーザによって見られるための画面上で処理および/または表示され得る。撮像は、デジタル画像を生成および/または提供することを含んでもよい。本明細書で使用される「デジタル画像」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、画像の離散的で不連続な表現を指すことができる。したがって、「デジタル画像」という用語は、二次元関数f(x,y)を指すことができ、強度および/または色値は、デジタル画像内の任意のx、y位置に対して与えられ、位置は、デジタル画像の記録画素に対応して離散化されていてもよい。撮像は、顕微鏡スライドを走査することを含んでもよい。本明細書で使用される「走査する」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。これらの用語は、具体的には、限定されないが、複数の異なるx、y位の位置での顕微鏡スライドの撮像を指し得る。走査は、タイルベースの走査および/またはラインベースの走査を含んでもよい。x、y位置は、顕微鏡スライドを移動させるために、少なくとも1つのXY移動ステージ、例えば電動XYステージを使用して設定してもよい。また、本明細書に記載のシステムは、画像の再構成に関連する特徴を含む、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2008/0240613号A1および米国特許出願公開第10061107号B2に記載されている画像取り込み、スティッチング、ならびに拡大のための顕微鏡スライド走査機器アーキテクチャおよび技術に関連して使用され得ることにも留意されたい。
【0045】
本明細書において使用されるとき、「処理装置」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、コンピュータまたはシステムの基本的な動作を実行するように構成された任意の論理回路を指し得、さらには/あるいは、一般的には、計算または論理演算を実行するように構成された装置を指し得る。処理装置は、コンピュータまたはシステムを駆動する基本的な命令を処理するように構成されてもよい。例として、処理装置は、少なくとも1つの算術論理演算装置(ALU)、数値演算コプロセッサまたは数値コプロセッサなどの少なくとも1つの浮動小数点ユニット(FPU)、複数のレジスタ、具体的にはALUにオペランドを供給し、演算結果を格納するように構成されたレジスタ、ならびにL1およびL2キャッシュメモリなどのメモリを含み得る。処理装置は、マルチコアプロセッサであってもよい。処理装置は、中央処理装置(CPU)であってもよく、またはそれを備えてもよい。追加的に、あるいは代わりに、処理装置は、マイクロプロセッサであってもよく、またはそれを備えてもよい。処理装置の要素は、単一の集積回路(IC)チップに含有されてもよい。追加的に、あるいは代わりに、処理装置は、1つまたは複数の特定用途向け集積回路(ASIC)および/または1つもしくは複数のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などであってもよく、またはこれらを備えてもよい。処理装置は、指定された動作のうちの1つまたは複数を実行するための1つまたは複数のハードウェア要素を提供してもよく、および/または指定された動作のうちの1つまたは複数を実行するために実行されるソフトウェアを1つまたは複数のプロセッサに提供してもよい。処理装置は、指定された動作を実行するように構成された1つまたは複数のコンピュータ、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などの1つまたは複数のプログラマブルデバイスを備えてもよい。しかしながら、追加的に、あるいは代わりに、処理装置はまた、完全にまたは部分的にハードウェアによって具現化されてもよい。
【0046】
処理装置は、反復位相回復アルゴリズムを使用することによって光学系によって提供される照射光線によって様々な照射角度で照射された顕微鏡スライド上の試料の複数の画像を合成するように構成されてもよい。
【0047】
本発明のさらなる態様では、本発明による少なくとも1つのデジタル顕微鏡システムを使用するフーリエタイコグラフィーのための方法が開示される。定義および実施形態に関して、上記の光学系およびデジタル顕微鏡システムの説明を参照するか、または以下でより詳細に説明する。
【0048】
方法ステップは、所与の順序で実行されてもよく、または異なる順序で実行されてもよい。さらに、列挙されていない1つまたは複数の追加の方法ステップが存在してもよい。さらに、1つ、複数、さらにはすべての方法ステップが繰り返し実行されてもよい。
【0049】
本方法は、以下のステップ:
a)試料を含む少なくとも1つの顕微鏡スライドを試料界面に提供するステップと、
b)発光体のアレイを使用することによって、様々な発光角度で複数の照射光線を試料平面に向けて放射し、複数のレンズを含む小型レンズアレイを使用することによって様々な照射角度で試料平面を照射し、任意に、少なくとも1つの放物面反射器および/または少なくとも1つの屈折光学素子を通過させるステップと、
c)画像検出器を使用することによって、光学系によって提供される照射光線によって様々な照射角度で照射された試料の複数の画像を撮像するステップと、
d)処理装置を使用して、画像検出器によって撮像された複数の画像を使用することによって試料の少なくとも1つの合成画像を再構成するステップと、
を含む。
【0050】
本方法は、コンピュータ実装されてもよい。本明細書で使用される「コンピュータ実装」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも1つのコンピュータならびに/または少なくとも1つのコンピュータネットワークまたはクラウドが関与する方法を指し得る。コンピュータおよび/またはコンピュータネットワークおよび/またはクラウドは、本発明による方法の方法ステップのうちの少なくとも1つを実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを備えてよい。好ましくは、方法ステップの各々が、コンピュータおよび/またはコンピュータネットワークおよび/またはクラウドによって実行される。本方法は、完全に自動的に、具体的にはユーザとの対話なしに実行されてよい。本明細書において使用されるとき、「自動的に」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも1つのコンピュータおよび/またはコンピュータネットワークおよび/またはクラウドおよび/または機械によって、とくには手動の動作および/またはユーザとの相互作用を必要とせずに完全に実施されるプロセスを指し得る。
【0051】
本明細書においてさらに開示および提案されるものは、コンピュータで実行可能な命令を含むコンピュータプログラムであって、命令がコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されると、本明細書に含まれる実施形態のうちの1つまたは複数における本発明にかかる方法を実行するためのコンピュータプログラムである。具体的には、コンピュータプログラムは、コンピュータ可読データキャリアおよび/またはコンピュータ可読記憶媒体に格納されてもよい。
【0052】
本明細書で使用される場合、「コンピュータ可読データキャリア」および「コンピュータ可読記憶媒体」という用語は、具体的には、コンピュータ実行可能命令を格納したハードウェア記憶媒体などの非一時的データ記憶手段を指してもよい。コンピュータ可読データキャリアまたは記憶媒体は、具体的には、ランダムアクセスメモリ(RAM)および/または読み出し専用メモリ(ROM)などの記憶媒体であってもよく、またはそれを含んでもよい。
【0053】
したがって、具体的には、上述したような方法ステップa)からd)の1つ、1つよりも多い、またはすべては、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用して、好ましくはコンピュータプログラムを使用して実行されてもよい。
【0054】
プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されたときに本明細書に含まれる実施形態のうちの1または複数における本発明による方法を実行するためのプログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品が、本明細書においてさらに開示および提案される。具体的には、プログラムコード手段は、コンピュータ可読データキャリアおよび/またはコンピュータ可読記憶媒体に格納されてもよい。
【0055】
本明細書においてさらに開示および提案されるのは、コンピュータまたはコンピュータネットワークのワーキングメモリまたはメインメモリなどのコンピュータまたはコンピュータネットワークにロードした後、本明細書に開示される実施形態のうちの1つまたは複数による方法を実行し得るデータ構造が格納されたデータキャリアである。
【0056】
本明細書においてさらに開示および提案されるものは、命令が、1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、1つまたは複数のプロセッサに本明細書に開示される実施形態のうちの1つまたは複数による方法を実行させる、非一時的コンピュータ可読媒体である。
【0057】
プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されるときに本明細書に開示の実施形態のうちの1つまたは複数による方法を実行するためにプログラムコード手段を機械可読担体に格納して有するコンピュータプログラム製品が、本明細書においてさらに開示および提案される。本明細書で使用される場合、コンピュータプログラム製品は、取引可能な製品としてのプログラムを指す。製品は、一般に、紙のフォーマットなどの任意のフォーマットで、またはコンピュータ可読データキャリア上および/もしくはコンピュータ可読記憶媒体上に存在してもよい。具体的には、コンピュータプログラム製品は、データネットワークを介して配信されてもよい。
【0058】
最後に、本明細書において開示および提案されるのは、本明細書に開示される実施形態のうちの1つまたは複数による方法を実行するための、コンピュータシステムまたはコンピュータネットワークによって読み取り可能な命令を含む変調データ信号である。
【0059】
本発明のコンピュータ実施態様を参照すると、本明細書に開示される実施形態のうちの1つまたは複数による方法のうちの1つまたは複数の方法ステップあるいはすべての方法ステップは、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用することによって実行されてもよい。したがって、一般に、データの提供および/または操作を含む方法ステップのいずれかは、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用することによって実行されてもよい。一般に、これらの方法ステップは、試料の提供および/または実際の測定を実行する特定の態様などの手動作業を必要とする方法ステップを通常除いて、任意の方法ステップを含んでもよい。
【0060】
具体的には、本明細書では、
-少なくとも1つのプロセッサを備えるコンピュータまたはコンピュータネットワークであって、プロセッサが、本明細書に記載の実施形態のうちの1つによる方法を実行するように適合された、コンピュータまたはコンピュータネットワーク、
-コンピュータ上で実行されているときに本明細書に記載の実施形態のうちの1つによる方法を実行するように適合されたコンピュータロード可能データ構造、
-コンピュータプログラムであって、プログラムがコンピュータ上で実行されている間に、本明細書に記載された実施形態のうちの1つによる方法を実行するように適合された、コンピュータプログラム、
-コンピュータプログラムがコンピュータ上またはコンピュータネットワーク上で実行されているときに本明細書に記載の実施形態のうちの1つによる方法を実行するためのプログラム手段を備えるコンピュータプログラム、
-先行する実施形態に記載のプログラム手段をコンピュータにとって読み取り可能な記憶媒体に格納して備えるコンピュータプログラム、
-データ構造が記憶媒体に格納され、データ構造がコンピュータまたはコンピュータネットワークのメインおよび/またはワーキング記憶部にロードされた後、本明細書に記載された実施形態のうちの1つによる方法を実行するように適合された、記憶媒体、
-コンピュータまたはコンピュータネットワーク上でプログラムコード手段が実行された場合に、本明細書に記載された実施形態のうちの1つによる方法を実行するために、プログラムコード手段が記憶媒体に格納され得る、または格納される、プログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品、
がさらに開示される。
【0061】
要約すると、さらなる実施形態の可能性を排除することなく、以下の実施形態が想定されてもよい。
【0062】
実施形態1.フーリエタイコグラフィーのために構成された光学系であって、
-少なくとも1つの発光体のアレイであって、各発光体が、試料平面に向けて少なくとも1つの照射光線を放射するように構成される、発光体のアレイと、
-複数のレンズを含む少なくとも1つの小型レンズアレイであって、レンズの各々が、発光体のアレイの発光体のうちの少なくとも1つの専用であり、それぞれのレンズの配向および形状が、専用の発光体に適合され、小型レンズアレイが、試料平面内に照射光線を集束させるように構成される、小型レンズアレイと、
を備え、
発光体のアレイおよび小型レンズアレイが、試料平面が様々な照射角度で照射光線によって照射されるように配置される、光学系。
【0063】
実施形態2.光学系が、少なくとも1つの放物面反射器を備え、放物面反射器は、小型レンズアレイを通過した照射光線が、試料平面に衝突する前に放物面反射器に衝突するように配置される、先行する実施形態に記載の光学系。
【0064】
実施形態3.放物面反射器が、≧200mmの直径を有する、先行する実施形態に記載の光学系。
【0065】
実施形態4.放物面反射器が、セグメント化された放物面反射器を含む、2つの先行する実施形態のいずれか1つに記載の光学系。
【0066】
実施形態5.光学系が、少なくとも1つの屈折光学素子を備え、屈折光学素子は、小型レンズアレイを通過した照射光線が、試料平面に衝突する前に屈折光学素子に衝突するように配置される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の光学系。
【0067】
実施形態6.屈折光学素子が、少なくとも1つのフレネルレンズを含み、フレネルレンズは直径≧200mmである、先行する実施形態に記載の光学系。
【0068】
実施形態7.小型レンズアレイのレンズが、発光体から試料平面への光線の伝播方向に配置される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の光学系。
【0069】
実施形態8.小型レンズアレイのレンズが、開口数が大きいレンズである、先行する実施形態のいずれか1つに記載の光学系。
【0070】
実施形態9.発光体のアレイの発光体が、照射光線を順次放射するように構成される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の光学系。
【0071】
実施形態10.発光体の各々が、少なくとも1つの発光ダイオード、少なくとも1つの面発光ダイオードレーザ、少なくとも1つの端面発光ダイオードレーザからなる群から選択される少なくとも1つのコヒーレント光源を備える、先行する実施形態のいずれか1つに記載の光学系。
【0072】
実施形態11.発光体が、少なくとも1つの発光ダイオードを含み、発光ダイオードは、発光範囲が340~800nmのスペクトル範囲内に少なくとも部分的に位置する、先行する実施形態に記載の光学系。
【0073】
実施形態12.デジタル顕微鏡システムであって、
-先行する実施形態のいずれか1つに記載の少なくとも1つの光学系と、
-少なくとも1つの顕微鏡スライドを受け入れるように構成された少なくとも1つの試料界面と、
-少なくとも1つの画像検出器であって、光学系によって提供される照射光線によって様々な照射角度で照射された顕微鏡スライド上の試料の複数の画像を撮像するように構成された少なくとも1つの画像検出器と、
-画像検出器によって撮像された複数の画像を使用することによって、試料の少なくとも1つの合成画像を再構成するように構成された少なくとも1つの処理装置と、
を備える、デジタル顕微鏡システム。
【0074】
実施形態13.画像検出器が、少なくとも1つのカメラを備え、カメラが、CCDチップまたはCMOSチップを備える、先行する実施形態に記載のデジタル顕微鏡システム。
【0075】
実施形態14.処理装置が、反復位相回復アルゴリズムを使用することによって、光学系によって提供される照射光線によって様々な照射角度で照射された顕微鏡スライド上の試料の複数の画像を合成するように構成された、先行する実施形態のいずれか1つに記載のデジタル顕微鏡システム。
【0076】
実施形態15.デジタル顕微鏡システムが、少なくとも1つの血液分析装置または少なくとも1つのデジタルパソロジースキャナを含む、デジタル顕微鏡システムに言及する先行する実施形態のいずれか1つに記載のデジタル顕微鏡システム。
【0077】
実施形態16.デジタル顕微鏡システムに言及する先行する実施形態のいずれか1つに記載の少なくとも1つのデジタル顕微鏡システムを使用するフーリエタイコグラフィーのための方法であって、前記方法が以下のステップ:
a)試料を含む少なくとも1つの顕微鏡スライドを試料界面に提供するステップと、
b)発光体のアレイを使用することによって、様々な発光角度で試料平面に向けて複数の照射光線を放射し、複数のレンズを含む小型レンズアレイを使用することによって、様々な照射角度で試料平面を照射するステップと、
c)画像検出器を使用することによって、光学系によって提供される照射光線によって様々な照射角度で照射された試料の複数の画像を撮像するステップと、
d)処理装置を使用して、画像検出器によって撮像された複数の画像を使用することによって試料の少なくとも1つの合成画像を再構成するステップと、を含む、方法。
【0078】
実施形態17.方法がコンピュータ実装される、先行する実施形態に記載の方法。
【0079】
実施形態18.命令を含むコンピュータプログラムであって、プログラムがデジタル顕微鏡システムに言及する先行する実施形態のいずれか1つに記載のデジタル顕微鏡システムによって実行されると、デジタル顕微鏡システムに、方法に言及する先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法を実行させる、コンピュータプログラム。
【0080】
実施形態19.命令を含むコンピュータ可読記憶媒体であって、命令が、デジタル顕微鏡システムに言及する先行する実施形態のいずれか1つに記載のデジタル顕微鏡システムによって実行されると、デジタル顕微鏡システムに、方法に言及する先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法を実行させる、コンピュータ可読記憶媒体。
【0081】
実施形態20.命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体であって、命令が、1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、1つまたは複数のプロセッサに、方法に言及する先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法を実行させる、非一時的コンピュータ可読媒体。
【0082】
さらなる任意の特徴および実施形態は、好ましくは従属請求項と併せて、後続の実施形態の説明においてより詳細に開示される。その中で、それぞれの任意の特徴は、当業者が理解するように、分離された形で、および任意の実行可能な組合せで実現され得る。本発明の範囲は、好ましい実施形態によって限定されない。実施形態は、図に概略的に示されている。その中で、これらの図における同一の参照番号は、同一または機能的に同等の要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【
図1A】本発明による光学系の実施形態を示す図である。
【
図1B】本発明による光学系の実施形態を示す図である。
【
図2A】本発明による光学系の実施形態を示す図である。
【
図2B】本発明による光学系の実施形態を示す図である。
【
図3A】本発明による光学系の実施形態を示す図である。
【
図3B】本発明による光学系の実施形態を示す図である。
【
図4】本発明による光学系の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0084】
図1Aおよび
図1Bは、本発明による光学系110の例示的かつ概略的な実施形態を斜視図(
図1A)および断面図(
図1B)で示している。光学系110は、フーリエタイコグラフィーのために構成される。
【0085】
図1Aおよび
図1Bに示すように、光学系110は、少なくとも1つの発光体112のアレイを備える。発光体112の各々は、少なくとも1つの発光ダイオード、少なくとも1つの面発光ダイオードレーザ、少なくとも1つの端面発光ダイオードレーザからなる群から選択される少なくとも1つのコヒーレント光源を備え得る。例えば、発光体112は、340~800nmのスペクトル範囲内に少なくとも部分的に位置する中心波長を有し得る。例えば、LEDは、340~800nmのスペクトル範囲内に少なくとも部分的に位置する発光範囲を有し得る。各発光体112は、試料平面114に向けて少なくとも1つの照射光線を放射するように構成される。
【0086】
光学系110は、複数のレンズを含む少なくとも1つの小型レンズアレイ116を備える。レンズの各々は、発光体112のアレイの発光体112のうちの少なくとも1つの専用である。それぞれのレンズの配向および形状は、専用の発光体112に適合される。小型レンズアレイ116は、試料平面114上で照射光線を集束させるように構成される。発光体112のアレイおよび小型レンズアレイ116は、試料平面114が様々な照射角度の照射光線によって照射されるように配置される。例えば、試料平面114は、顕微鏡スライド118を保持するように構成されたレセプタクルによって画定されてもよい。
【0087】
図1Aおよび
図1Bにさらに示すように、発光体112のアレイの発光体112は、発光体112が、試料平面114に向けて、例えば小型レンズアレイ116に向けて様々な発光角度の照射光線を放射するように配置されてもよい。例えば、発光体112の各々は、試料平面114に対して個別に傾斜していてもよい。例えば、発光体112は、試料平面114に対して傾斜していてもよい平面内に配置されてもよい。
【0088】
小型レンズアレイ116は、照射光線を試料平面に導くように構成されてもよい。試料は、血液、血清、血漿、尿、唾液のうちの1つまたは複数など、少なくとも1つの生物学的標本であってもよく、またはそのような生物試料を含んでもよい。試料は、組織または塗抹標本などの生物学的材料であってもよく、または生物学的材料を含んでもよい。試料は、例えば、発色または濁度指示薬を伴ういくつかのアッセイ特異的試薬と混合され得る。追加的に、あるいは代わりに、試料は、化学物質または化合物ならびに/あるいは試薬であってもよく、または化学物質もしくは化合物ならびに/あるいは試薬を含んでもよい。試料は、具体的には、化学的または生物学的化合物の流体物質のアリコートなどの液体試料であり得る。例えば、液体試料は、少なくとも1つの化学物質および/または生物学的物質を含む、液体物質および/または1つもしくは複数の液体物質を含む溶液などの、少なくとも1つの純粋な液体であってもよく、またはそれを含んでもよい。別の例として、液体試料は、懸濁液、エマルジョン、および/または1つもしくは複数の化学的および/または生物学的物質の分散体などの液体混合物であってもよく、またはそれらを含んでもよい。しかしながら、他の、例えば液体上の試料も可能である。他の試料タイプは、例えば、組織、または均質化された材料などであってもよい。試料は、少なくとも1つの顕微鏡スライド118を使用して提供されてもよい。
【0089】
発光体112のアレイは、印刷回路基板アセンブリ(PCBA)上に配置、例えば直線的に配置されてもよい。例えば、発光体112のアレイは、「チップオンボード」技術および/または「チップオンフレックス」技術を使用して搭載され得る。例えば、発光体112を曲面上に配置するために、チップオンボード技術を使用してフレックスプリントアセンブリに搭載されるLEDが使用され得る。
【0090】
アレイの発光体112は、同じタイプであってもよく、あるいは異なるタイプであってもよい。アレイの発光体112は、発光体112の各々に独立して電流を提供することなどによって、互いに独立して制御可能であってもよい。発光体112は、同じまたは異なる波長の光線を放射するように構成されてもよい。例えば、発光体112は、同じ波長の光線を放射するように構成される。発光体のアレイの発光体112は、照射光線を順次放射するように構成されてもよい。
【0091】
小型レンズアレイ116は、少なくとも2つのレンズを備えてもよい。レンズは、収束レンズであってもよい。レンズの各々は、専用発光体によって生成され、試料平面114内のレンズに衝突する照射光線を集束させるように構成されてもよい。小型レンズアレイ116のレンズは、小径、例えば数ミリメートルの直径を有してもよい。小型レンズアレイ116のレンズは、異なる特性、例えば、形状および/または配向が異なっていてもよい。小型レンズアレイ116のレンズは、発光体112から試料平面への光線の伝播方向に配置されてもよい。小型レンズアレイ116のレンズは、開口数が大きいレンズであってもよい。例えば、レンズは、NA~0.5までの開口数を有してもよい。そのような小型レンズアレイ116を使用すると、走査時間を大幅に短縮することができる。
【0092】
レンズの各々は、発光体112のアレイの発光体112のうちの少なくとも1つの専用である。例えば、各レンズは、発光体112のうちの少なくとも1つに割り当てられる。それぞれのレンズの配向および形状は、専用の発光体112に適合される。形状および/または配向の個々の各レンズは、1つまたは複数の専用の発光体に最適化されてもよい。アレイのレンズの数は、発光体112のアレイの発光体112の数に対応し得る。しかしながら、他の実施形態も実現可能である。例えば、複数の発光体112は、複合レンズを共有してもよい。
【0093】
発光体112のアレイおよび小型レンズアレイ116は、試料平面114が様々な照射角度の照射光線によって照射されるように配置される。照射角度は、試料平面114の表面に入射する光線と、入射点における表面の法線との間の入射角であってもよい。照射角度は、法線に対して0°~最大30°で異なっていてもよい。発光体112のアレイおよび小型レンズアレイ116の配置は、発光体112のアレイおよび小型レンズアレイ116の相対的な配置を指し得る。
図1Aおよび
図1Bに示す実施形態では、光学系110は、発光体112から試料平面114への照射光のビーム経路において、さらにいかなる光学部品もなしで、発光体112のアレイおよび小型レンズアレイ116のみを備える。そのような配置は、例えば0°~30°の低入射角から中入射角に特に好適であり得る。
【0094】
光学系110は、少なくとも1つの放物面反射器120、例えば放物面鏡をさらに備えてもよい。光学系110のそのような実施形態が、
図2Aおよび
図2Bに示されている。放物面反射器120は、放物面状の三次元形状を有する反射器であってもよい。放物面反射器120は、反射面を有してもよい。放物面反射器120は、小型レンズアレイ116を通過した照射光線が試料平面114に衝突する前に放物面反射器120に衝突するように配置されてもよい。発光体112および/または小型レンズアレイ116は、小型レンズアレイ116を通過した照射光線が平行光線として放物面反射器120に到達するように、発光体112が同じ配向で整列した状態で試料平面に平行な平面内に配置されてもよい。放物面反射器120は、平行光線を試料平面114上の焦点に集束させるように構成されてもよい。放物面反射器120、例えば放物面鏡と組み合わせて小型レンズアレイ116を使用することは、垂直に対して例えば20°~60°の中入射角から高入射角に有利であり得る。
【0095】
放物面反射器120は、≧200mmの直径を有してもよい。そのような大口径の放物面反射器120は、依然として高い強度を確保しながら、発光体の最適な位置決めを可能にし得る。放物面反射器120は、低コストで入手可能であり、高精度に製造し得る。
【0096】
例えば、放物面反射器120は、少なくとも1つの小型レンズアレイ、例えば小型レンズアレイ116と組み合わせて使用され得る。さらなるLEDを、例えば
図2の放物面反射器120の底部に置いてもよい。それぞれの小型レンズアレイを有するLEDまたはLEDのアレイを放物面反射器120の凹部に設置して、(放物面鏡を介さずに)光線を試料平面に直接上方に導いてもよい。小型レンズアレイは、低入射角をカバーし得、放物面反射器120は、中入射角から高入射角をカバーし得る。
【0097】
図2Aおよび
図2Bの実施形態では、放物面反射器120は、連続面を備えてもよい。
【0098】
図3Aおよび
図3Bに示す光学系110の実施形態では、放物面反射器120は、セグメント化された放物面反射器122を備えてもよい。セグメント化された放物面反射器122は、モノリシック放物面反射器のセグメントとして光学的に機能するように構成された副反射器のアレイを備えてもよい。小型レンズアレイ116をセグメント化された放物面反射器122、例えば放物面鏡と組み合わせて使用することは、垂直に対して例えば30°~80°の中入射角から非常に高い入射角にとって有利であり得る。
【0099】
図4は、少なくとも1つの屈折光学素子124を有する光学系110の実施形態を示す。屈折光学素子124は、小型レンズアレイ116を通過した照射光線が試料平面114に衝突する前に屈折光学素子124に衝突するように配置されてもよい。屈折光学素子124は、少なくとも1つのフレネルレンズを含んでもよい。フレネルレンズの直径は、≧200mmであってもよい。小型レンズアレイ116を少なくとも1つのフレネルレンズと組み合わせて使用することにより、順方向の強度を改善させることを可能にし得る。
【0100】
追加の光学素子、例えば116、120、122、124のうちの1つまたは複数と組み合わせた発光体112、例えばLEDの提案された配置は、例えば血液分析装置の試料平面に送達される各LED(特に大きな入射角を有するLED)の光強度を増加させることを可能にし得る。発光体112ごとに試料平面114に送達され得る光強度は、大幅に増加され得る。より高い光強度の利点は、より短いカメラ積分時間、したがってより高いスループット時間を可能にし得る。加えて、典型的には、平面LED配置をもたらすLED PCBA製造手順により良くフィットする発光体112の最適化された配置が可能であり得る。
【符号の説明】
【0101】
110 光学系
112 発光体
114 試料平面
116 小型レンズアレイ
118 顕微鏡スライド
120 放物面反射器
122 セグメント化された放物面反射器
124 屈折光学素子
【外国語明細書】