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特開2024-167093大動脈内バルーンからのガス漏出を防止するためのシステム及び方法
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  • 特開-大動脈内バルーンからのガス漏出を防止するためのシステム及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167093
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】大動脈内バルーンからのガス漏出を防止するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 60/427 20210101AFI20241122BHJP
   A61M 60/497 20210101ALI20241122BHJP
   A61M 60/569 20210101ALI20241122BHJP
   A61M 60/841 20210101ALI20241122BHJP
   A61M 60/139 20210101ALN20241122BHJP
   A61M 60/274 20210101ALN20241122BHJP
【FI】
A61M60/427
A61M60/497
A61M60/569
A61M60/841
A61M60/139
A61M60/274
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024081210
(22)【出願日】2024-05-17
(31)【優先権主張番号】18/199,671
(32)【優先日】2023-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516064091
【氏名又は名称】ニューパルスシーブイ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】アイヴァース ダグラス エドワード
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA04
4C077DD09
4C077EE05
4C077HH08
4C077HH13
4C077HH15
4C077JJ07
4C077JJ13
4C077JJ16
4C077KK17
4C077KK27
(57)【要約】      (修正有)
【課題】血管内循環補助システムにおける漏出を防止するように構成された駆動ユニットを提供する。
【解決手段】患者の血管内循環補助システム内の拡張可能部材(例えば、バルーン)の膨張を制限するためのシステムは、駆動ユニットと、エアムーバリミッタとを備えてもよい。駆動ユニットは、エアムーバ及びモータを含んでもよい。エアムーバは、第一の端部及び第二の端部を有してもよい。第一の端部は、固定され、拡張可能部材と流体接続する空気圧出力部を有してもよい。第二の端部は、移動可能で、空気圧的に閉鎖されてもよい。エアムーバリミッタは、患者の血圧に基づいて拡張可能部材を不十分に膨張させるために第二の端部の変位を制限するように構成されてもよい。第二の端部の変位は、空気の容積を拡張可能部材の内外に移動させる。その空気の容積は、エアムーバリミッタ構成に対応する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血管内循環補助システムにおける拡張可能部材の膨張を制限するためのシステムであって、前記システムは、
エアムーバとモータとを含む駆動ユニットであって、前記エアムーバは、前記拡張可能部材と流体接続する空気圧出力部と、第一の端部と、第二の端部とを有し、前記第一の端部は固定され、前記第二の端部は変位可能である、駆動ユニットと、
前記患者の血圧に基づいて前記拡張可能部材を不十分に膨張させるために前記第二の端部の変位を制限するように構成されたエアムーバリミッタと、
を備え、
前記第二の端部の変位は、空気の容積を前記拡張可能部材の内外に移動させることであって、前記空気の容積は、前記エアムーバリミッタの構成に対応する、システム。
【請求項2】
前記拡張可能部材の内部容積は、前記空気の容積よりも大きい、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記患者の血圧は、前記患者の最低治療拡張期血圧を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第一の圧力は、前記患者の前記最低治療拡張期血圧に基づく有効カウンターパルセーション容積に対応する、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記モータは、ロータ及びステータを含み、
ボールねじを担持するボールナットであって、前記ボールナットは、前記ロータに固定され、前記ボールねじは、螺旋軌道を含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第二の端部は、前記ボールねじを受容するように構成された動的フランジによって画定され、
前記ボールナットは、前記螺旋軌道内に乗る複数のボールを含み、その結果、前記ロータの回転は、前記複数のボールに、そのような回転を前記ボールナット内の前記ボールねじの直線運動に変換し、前記第二の端部は、前記ボールねじに固定される、
請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記エアムーバリミッタは、前記エアムーバの出力を制限するためのプロセッサ実行可能命令及び前記エアムーバの前記出力を制限するための機械的制限のうちの1つ以上を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記機械的制限は、前記ボールねじの周りの第一の方向への前記ボールナットの回転中に停止ピンを受容し、前記ボールねじの周りの第二の方向への前記ボールナットの回転中に停止ピンの下を摺動するように成形されたクラッチ状カラーを含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記エアムーバの前記出力を制限するための前記1つ以上のプロセッサ実行可能命令は、前記モータに結合されたエンコーダディスクのホーム位置にアクセスすることを含み、前記ホーム位置は、プロセッサアクセス可能メモリに記憶される、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記駆動ユニットは、エンコーダディスクと、前記ロータの角度位置、速度、及び方向のうちの1つ以上を決定し、前記ロータの前記角度位置、速度、及び方向のうちの決定された前記1つ以上に基づいて、1つ以上の位置フィードバック信号を生成するように構成されたエンコーダセンサとを含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項11】
前記エアムーバリミッタは、前記1つ以上の位置フィードバック信号にさらに基づいて、前記第二の端部の変位を制限するように構成されたプロセッサを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記プロセッサは、EKG信号のうちの1つ以上に基づいて、前記モータを制御するようにさらに構成され、前記1つ以上のEKG信号は、治療を受けている患者のものであり、1つ以上の圧力信号は、前記患者の動脈内の圧力と関連付けられる、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記プロセッサは、1つ以上のEKG信号に基づいて、前記モータを制御するようにさらに構成され、前記1つ以上のEKG信号は、治療を受けている患者のものである、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記ベローズは、外径を有し、
前記ベローズの前記外径は、前記駆動ユニットが、1つ以上のEKG信号において検出されたQRS群内のR波の受信から約100~120ms以内に前記膨張可能部材を50%収縮させることができるように選択され、前記1つ以上のEKG信号は、治療を受けている患者のものである、請求項4に記載のシステム。
【請求項15】
前記ベローズの前記外径は、約111mm~125mmの範囲内である、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記ベローズの移動距離は、前記ベローズの選択された前記外径及び有効カウンターパルセーション容積に基づく、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記有効カウンターパルセーション容積は、特定の患者の最低治療拡張期血圧、又は患者集団の平均最低治療拡張期血圧に基づく、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記螺旋軌道のピッチは、前記モータのインピーダンスが前記駆動ユニット上の空気圧負荷のインピーダンスと同じ又は実質的に同じであるように選択される、請求項5に記載のシステムユニット。
【請求項19】
前記ベローズの直径は、前記モータのインピーダンスが前記駆動ユニット上の空気圧負荷のインピーダンスと同じ又は実質的に同じであるように選択される、請求項1に記載のシステムユニット。
【請求項20】
前記螺旋軌道のピッチは、約3.5mm~5.5mmの範囲内である、請求項5に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、心不全を治療するためのシステム及びデバイスに関し、特に、血管内循環補助システムにおける漏出を防止するように構成された駆動ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
心不全の罹患率は、世界的に増加しており、医療提供者にとって高価な負担となっている。医療の進歩にもかかわらず、心不全患者、特に進行期心不全患者の予後は、依然として不良である。これは、部分的には、そのような患者に対する治療選択肢が限定されていることによるものである。血管内円形支持システムを使用するカウンターパルセーションは、心不全に対する治療選択肢である。このようなシステムは、カテーテルと呼ばれる薄い可撓性チューブと、このカテーテル先端に取り付けられた長い薄いバルーンを伴って含むことがある。バルーンは、患者の大動脈内に配置される。カテーテルの他端は、心拍中の適切な時間にバルーンを膨張及び収縮させるための機構を有するコンピュータコンソール又は「駆動ユニット」に取り付けることができる。バルーンは、バルーンポンプ(すなわち、大動脈内バルーンポンプ(IABP)である)として作用する。駆動ユニットは、心臓が弛緩するとバルーンを膨張させて、血液を終末器官及び冠状動脈に向かって押して心臓を灌流させることができる。また、左心室が収縮する前に、駆動ユニットは、バルーンを収縮させ、心臓が圧送しなければならない圧力を低下させ得る。これによって、エネルギーの使用を減らしながら、心臓がより多くの血液を身体の中へポンピングすることが可能になる。駆動ユニットは、心拍と同期してバルーンを膨張及び収縮させ続けることができる。カウンターパルセーションを用いるシステムの一つは、特許文献1(“Heart Pump Augmentation System and Apparatus”、1963年6月4日にWatkinsらによる出願)に記載されている。この特許文献1は、一般的に、高圧空気と低圧空気のリザーバを使用してバルーンを膨張及び収縮させる大動脈内バルーンポンプ(IABP)を開示している。
【0003】
駆動ユニットは、ヘリウム、空気、又は他の気体、あるいは流体を用いてバルーンを膨張及び収縮させることができる。IABPの使用に関連して、技術的コスト、患者の有用性及び携帯性の問題、並びに安全性のリスクを伴う。例えば、バルーンの漏出又は破裂が生じた場合、ヘリウムは、血液中に容易に吸収されないので、患者に重大な血栓形成及び脳卒中リスクをもたらす。程度は低いが、空気又は他の流体を使用するシステムでも、バルーン漏出又は破裂が生じた場合に、同様のリスクを呈する。
【0004】
過去のIABPカウンターパルセーションシステムは、概して、バルーンの完全な膨張を説明し、部分的なバルーン膨張を検出することができていない。
・特許文献2(“Safety Connector for Balloon Pump”、1971年5月14日にRishtonらによる出願)は、IABPが過剰に膨張されるべきである場合に、ガスを排出することを記載している。測定されたIABP圧力が限界を超える場合、患者の外部にある弁が開き、ガスを大気に放出する。特許文献2は、また、IABPの不十分な膨張によって血栓症を生じ得ることも記載している。
・特許文献3(“Method and Apparatus for Driving an Intra-Aortic Balloon Pump”、1997年5月27日にLeschinskyらによる出願)は、二段階のバルーン膨張ステップについて説明している。第一に、外部ドライバがバルーンに短時間の増加したガス圧をかけて初期膨張を促進するが、次いで、バルーンの過剰な加圧を防ぐために正のガス圧を「通常の」膨張圧まで下げる第二の「停止」段階について説明している。
・特許文献4(“Cardiovascular Support Control System”、2002年11月18日にFreedらによる出願)は、概して、患者の動脈圧を測定するために、数心周期にわたってバルーン膨張を制限する「部分周期」を表す。次いで、外部ドライバ内の圧力センサは、患者の心周期中のダイクロティックノッチのタイミングを測定し得る。外部ドライバは、バルーン膨張を患者のダイクロティックノッチタイミングと同期させる。「部分周期」測定が完了した後、システムは、バルーンの完全な膨張と完全な収縮とを交互に繰り返す。
・特許文献5は、概して、バルーン膨張の程度を制御することによって、異なるバルーンサイズに適応することを説明している。カウンターパルセーション膨張ステップの間に、バルーンは、完全に膨張する。
【0005】
過去のシステムは、また、IABPの漏出を検出できると説明してきたが、ガスがバルーンから逃げた後にのみ検出されるため、患者に危害が及ぶリスクが著しく増加していた。
・特許文献5(“Circulatory Assisted Device with Motor Driven Gas Pump”、1994年1月14日にLewisらによる出願)は、概して、ガス管理サブシステムにおける漏出チェックのための方法を説明しているが、これは、カウンターパルセーションシステムが患者の外側にあるときだけである。
・特許文献6(“Balloon Catheter Leak Detection Method and Apparatus」、2001年7月11日にWilliamsによる出願)及び特許文献4(「Cardiovascular Support Control System」、2002年11月18日にFreedらによる出願)は、概して、サイクルの同じ点で複数のカウンターパルセーションサイクルにわたる圧力を監視することによる漏れ検出を記載している。圧力が事前設定された閾値を超えて低下すると、空気が逃げ、システムは警報を発する。閾値は、誤警報を最小限に抑えるのに充分な大きさでなければならない。圧力降下は、漏出を示し得るが、漏出自体は、失われた空気が患者の血管系に流入したか、体内であるが血管系の外側に流入したか、又は患者の外部にある構成要素から漏出したかを示さない。さらに、システム圧力は、典型的には、カウンターパルセーションサイクル中に定常状態にないので、この方法は、重大な誤警報を発生する可能性がある。
・特許文献7(“Leak Detector for an Intra-Aortic Balloon Pump”、1992年3月27日にIsoyamaらによる出願)は、システム内の隔離ダイヤフラムの位置を監視することによる漏れ検出を記載している。
・特許文献8(“Method and an Apparatus for Intra-Aortic Balloon Monitoring and Leak Detection”、1983年6月10日にNormannによる出願)は、カウンターパルセーションデバイスの電気インピーダンスを監視することによる漏れ検出を記載している。
【0006】
したがって、過去のカウンターパルセーションシステムは、バルーンがその膨張段階中に完全に膨張されるか、又はわずかに過剰に膨張されるべきであることを概して記載している。過去のシステムは、カウンターパルセーション支援を最大にするのに、この膨張方法が望ましいと考えられてきた。また、過去のカウンターパルセーションシステムは、空気がバルーンから逃げた後にのみ、バルーン漏出を特定していた。
【0007】
バルーンを部分的にのみ膨張させて、バルーンの応力を低減し、バルーンの膜内にリフトが生じた場合に空気が逃げるのを阻止しながら効果的であるカウンターパルセーションIABPデバイスが著しく必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3,266,487号
【特許文献2】米国特許第3,720,199号
【特許文献3】米国特許第5,817,001号
【特許文献4】米国特許第6,735,532号
【特許文献5】米国特許第5,513,956号
【特許文献6】米国特許第6,536,260号
【特許文献7】米国特許第5,242,374号
【特許文献8】米国特許第4,522,194号
【発明の概要】
【0009】
カウンターパルセーションIABPデバイスは、バルーンが完全に膨張することを回避して、損傷した又は欠陥のあるバルーンが大動脈内にガスを放出しないようにし、それでもなお効果的な心血管循環補助を提供することができる。デバイスは、患者にとって有効なカウンターパルセーション容積よりも大きい完全に膨張した容積を有するバルーンを含む。例えば、完全に膨張した50ccバルーン(すなわち、50ccの有効カウンターパルセーション容積)によって提供される支持を必要とする患者用のデバイスは、50ccより大きい(例えば、55cc以上)完全膨張容積を有するバルーンで構成されてもよい。デバイスのための駆動ユニットは、有効カウンターパルセーション容積(例えば、50cc)をオーバーサイズバルーンの中に送達するために、エアムーバを採用してもよい。いくつかの実施形態では、駆動ユニットは、ベローズ、圧縮ガスシリンダ、コンプレッサ、空気圧ピストン、ダイヤフラム、又は他の機構等のエアムーバを採用し、有効カウンターパルセーション容積を過大サイズバルーンの中へ送達してもよい。全ての実施形態において、オーバーサイズのバルーンは、不十分な膨張である。バルーンの不十分な膨張は、バルーンへの応力を回避し、高サイクル疲労がバルーン壁を損傷する場合のガス漏出を防止しながら、効果的な心血管循環支持を提供する。
【0010】
患者の血管内循環補助システム内の拡張可能部材(expandable member)(例えば、バルーン)の膨張を制限するためのシステムは、駆動ユニットと、エアムーバリミッタとを備えてもよい。駆動ユニットは、エアムーバ及びモータを含んでもよい。エアムーバは、第一の端部及び第二の端部を有してもよい。第一の端部は、固定され、拡張可能部材と流体接続する空気圧出力部を有してもよい。第二の端部は、移動可能で、空気圧的に閉鎖されてもよい。エアムーバリミッタは、患者の血圧に基づいて拡張可能部材を不十分に膨張させるために第二の端部の変位を制限するように構成されてもよい。第二の端部の変位は、空気の容積を拡張可能部材の内外に移動させる。その空気の容積は、エアムーバリミッタ構成に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本技術の多くの態様は、以下の図面を参照して、より良く理解することができる。図面中の構成要素は、必ずしも縮尺通りではなく、代わりに本開示の原理を明確に示すことに重点が置かれている。
【0012】
図1】患者の血管系内に埋め込まれた血管内循環補助システムの一例を示す。
図2A】血管内循環補助システムのための駆動ユニットの例示的な第一の実施形態の上面外観斜視図を示す。
図2B図2Aの駆動ユニットの上面外観図を示す。
図2C】エアムーバリミッタの例示的な機械的制限を示す。
図2D】エアムーバリミッタの例示的な機械的制限を示す。
図3】血管内循環補助システムのための駆動ユニットの例示的な第二の実施形態の上面外観斜視図を示す。
図4図2A及び図3の駆動ユニットに適用可能ないくつかの制御構成要素のブロック図を示す。
図5】エアムーバリミッタの例示的な方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本技術のいくつかの実施形態の具体的な詳細について、図面を参照して以下に説明する。実施形態の多くは、IABP/バルーンを大動脈内に位置付けて、バルーン故障による漏出を防止しながら身体を通して血液を移動させるのに役立つカウンターパルセーションを提供する、血管内循環補助システム/血管内心室補助デバイス(「iVAD」)の使用に関して、以下で説明されるが、本明細書で説明されるものに加えて、他の用途及び他の実施形態も、本技術の範囲内である。例えば、本技術のいくつかの他の実施形態は、本明細書で説明されるものとは異なる構成、構成要素、又は手順を有することができ、図示される実施形態の特徴は、互いに組み合わせることができる。したがって、当業者であれば、本技術が追加の要素を有する他の実施形態を有し得ること、又は本技術が、以下で図示及び説明される特徴のうちのいくつかを伴わない他の実施形態を有し得ることを理解するであろう。
【0014】
以下で提示される説明で使用される用語は、本技術のある特定の実施形態の詳細な説明と併せて使用されている場合であっても、その最も広い合理的な様式で解釈されることが意図される。特定の用語は、以下でさらに強調され得る。しかしながら、任意の限定された方法で解釈されることが意図される任意の用語は、この詳細な説明の節において、そのように明白かつ具体的に定義される。さらに、本技術は、実施例の範囲内であるが、図面に関して詳細に説明されていない他の実施形態を含むことができる。
【0015】
本明細書を通して、「一実施形態」又は「実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が、本技術の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる様々な場所における「一実施形態では」又は「実施形態では」という語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すわけではない。さらに、特定の特徴又は特性は、1つ以上の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0016】
(心不全及び循環補助システム)
心不全は、心臓が身体の必要量を満たす血流を維持できなくなった場合に起こる。これは、心臓が収縮中及び弛緩中にそれぞれ十分に血液を送り出せなかったり、血液を十分に満たせなかったりした場合に起こり得る。心不全は、一般的で、費用がかかり、潜在的に致命的になる状態である。例えば、心不全は現在、米国において約650万人の患者に影響を及ぼし、2030年までに46%増加すると予想されている。心不全の段階/重症度は、ニューヨーク心臓協会(NYHA)クラスを用いて定義することができ、NYHAクラスIは初期段階の疾患を表し、NYHAクラスIVは後期段階の疾患を表す。心不全の現在の治療選択肢は、心不全の段階に依存し、他の選択肢の中でも、薬理学的療法、心臓再同期療法(CRT)、長期機械的循環補助(例えば、左心室補助装置、すなわち「LVAD」)、及び心臓移植を含む。薬理学的療法及びCRTは、典型的には、比較的初期段階の症例において(例えば、NYHAクラスII又は初期NYHAクラスIII心不全を有する患者における)使用される。しかしながら、これらの療法は、典型的には心不全の進行を遅らせるだけであり、これは、薬理学的療法又はCRTに最初に応答する患者でさえも、典型的には疾患進行を経験し、より進行した治療介入を必要とすることを意味する。
【0017】
心不全患者の予後は依然として不良であり、1年死亡率は、NYHAクラスIII患者では約15.0%であり、NYHAクラスIV患者では約28.0%である。これは、少なくとも一部には、後期NYHAクラスIII/早期NYHAクラスIV心不全を有する患者に利用可能な治療選択肢の数が限られているためである。例えば、心臓移植は、後期NYHAクラスIV患者において長期生存のための最良の機会を提供するが、この選択肢は、ドナー臓器の不足のために制限されている(例えば、米国では毎年約2000件、カナダでは毎年200件、日本では毎年100件未満である)。したがって、多くのNYHAクラスIII及びクラスIV患者は、他の治療に頼らなければならない。例えば、一部の患者は、心臓移植への橋渡しとして、又は独立型療法としてLVAD療法を受ける。しかしながら、LVAD療法には、それらの広範な使用を制限するいくつかの固有の欠点がある。現在のLVAD療法は、高価であり(例えば、10万ドルを超える)、典型的には、移植するための大規模な外科手術(典型的には、胸骨切開術又は開胸術)を必要とし、典型的には、移植手技中に心肺バイパスの使用を必要とし、典型的には、血液製剤(例えば、約11.6単位の血液製剤)を必要とする。低侵襲的手段によって(例えば、経皮的に)移植されるLVAD療法は、短期循環補助のためにのみ使用される。さらに、LVADを受ける患者の術後ケアは、困難で費用がかかり、数分を超えるデバイスの停止又は電力遮断ができないため、患者の不安は、高くなる可能性がある。LVAD療法は、またデバイスの故障、血栓症、血栓塞栓症、脳卒中、感染及び出血等のいくつかの重篤な有害事象を伴う。少なくともこれらの理由から、LVAD療法は、典型的には、選択肢が限られている末期心不全を有する患者(例えば、後期NYHAクラスIV)のみに適用されている。これは、CRTには進行しすぎているが、有効な治療選択肢なしにLVAD療法/心臓移植を正当化するほどまだ重篤ではない心不全患者の大部分(例えば、後期NYHAクラスIII/早期NYHAクラスIV患者)は、効果的な治療選択肢がないままになっている。現在、後期クラスIII/初期クラスIVの心不全の患者は、米国では約160万人、ヨーロッパでは約390万人おり、治療選択肢が限られている大きな患者集団を形成している。
【0018】
心不全の別の治療選択肢は、大動脈内バルーンポンプ(IABP)を使用するカウンターパルセーション療法である。カウンターパルセーション療法は、大動脈弁閉鎖(ダイクロティックノッチ)の直後に患者の大動脈内に配置されたバルーンを急速に膨張させ、収縮期の開始直前にバルーンを急速に収縮させることによって達成される。バルーンの急速な膨張によって、拡張期大動脈圧が25~70%上昇し、末端器官及び冠動脈灌流が増強される。バルーンの急速な収縮により、天然心室の駆出圧力が低下し、後負荷及び左心室外部仕事が軽減される。
【0019】
カウンターパルセーション療法は、IABPを使用することで、LVADを埋め込んで、使用することより、はるかに簡便になり、有害事象がより少なくなるので、魅力的な療法の選択肢である。例えば、医師は、心臓に直接カニューレを挿入することなく、IABPを埋め込むことができる。しかしながら、低侵襲処置によって埋め込まれた従来のカウンターパルセーションシステムは、短期間しか使用できない。これは、この場合、いくつかの理由がある。例えば、動脈アクセス(例えば、大腿動脈)、IABP、概して、特に、バルーンの耐久性、及び生体適合性に問題があるので、IABPの使用が約14日未満の短い持続時間に制限され得る。IABP支援の持続時間(>14日)がより長くなると、血管合併症、感染症、バルーン破裂、及び出血の頻度が高まることにつながり得る。さらに、その現在の形態では、大腿動脈から下行大動脈の中へ逆行して前進させられるカテーテル搭載IABPでは、治療の持続時間の間、患者が仰臥位のままで留まることが要求される。その結果、患者は、歩行できず、病院から退院できない。これらの制限によって、IABPを心不全の長期治療には使用されず、代わりに、移植を待っている患者及び冠動脈バイパス手術を受けている患者等の短期間の設定で使用される。
【0020】
譲受人/出願人(NuPulseCV,Inc.)は、上述の従来のシステムと比較して、心不全に罹患している患者に長期の支援を提供するように設計された様々なカウンターパルセーション支援システムを開発した。そのような改良されたカウンターパルセーション支援システムは、米国特許第7,892,162号(“ARTERIAL INTERFACE”、2009年10月22日出願)、米国特許第8,066,628号(“INTRA-AORTIC BALLOON PUMP AND DRIVER”、2010年10月22日)、米国特許出願第15/685,553号(“BLOOD PUMP ASSEMBLY AND METHOD OF USE THEREOF”、2017年8月24日出願)、米国特許出願第16/876,110号(“INTRAVASCULARLY DELIVERED BLOOD PUMPS AND ASSOCIATED DEVICES, SYSTEMS, AND METHODS”、2020年5月17日出願)、米国特許出願第17/944,130号(“INTRA-AORTIC BALLOON PUMP ASSEMBLY WITH PRESSURE SENSOR”、2022年9月13日出願)、米国特許出願第17/944,125号(“BLOOD PUMP SUPPORT APPARATUS AND METHOD FOR A BLOOD PUMP ASSEMBLY”、2022年9月13日出願)、米国特許出願第17/944,127号(“INTRA-AORTIC BALLOON PUMP ASSEMBLY”、2022年9月13日出願)、及び米国特許出願第17/878,632号(“DRIVE UNIT FOR INTRAVASCULAR CIRCULATORY SUPPORT SYSTEMS”、2022年8月1日出願)に記載されており、前述のそれぞれの開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
組み込まれた開示に記載されるIABPは、少なくとも特定の例において、最小侵襲性経皮的処置を使用して移植され得る構成要素を有する心不全患者のための長期又は慢性のカウンターパルセーション療法を提供する。例えば、IABPは、胸部に入ることなく最小侵襲的に移植することができ、概して心肺バイパス又は血液製剤の投与を必要としない。
【0022】
本技術は、流体(気体又は液体、例えば、空気)を、患者の血管系に埋め込まれたバルーン又は拡張可能部材(例えば、上記で組み込まれた開示に説明されるIABP)の内部容積の中へと導き、バルーンへの応力を回避し、バルーン破裂時のガス漏出を防止しながら、効果的な心血管循環支持を提供することができる駆動ユニットを提供する。駆動ユニットハードウェア及び/又はソフトウェアは、完全な膨張を防止するように、拡張可能部材の膨張/収縮サイクルを制御する。この不十分な膨張により、高い膨張/収縮サイクル疲労に起因する拡張可能部材におけるリフト(rifts)の形成を回避する。さらに、拡張可能部材の膜にリフトが形成されても、この不十分な膨張により、ガスが患者の血管系内に逃げることはできなくなる。
【0023】
(慢性血管内循環補助システムの実施形態の選択)
図1は、本技術の選択された実施形態に従って構成された循環補助及び/又は血管内心室補助システム100を示す。システム100は、心不全に罹患している患者の大動脈に移植可能な拡張可能部材110を含むことができる。拡張可能部材110は、IABP又はバルーンと称されてもよい。システム100は、さらに、第一の空気圧駆動ライン120(「内部駆動ライン」とも称される)と、動脈インターフェースデバイス又はストッパ130と、第二の空気圧駆動ライン140と、皮膚インターフェースデバイス190と、駆動ユニット150と、センサ160とを含むことができる。システム100は、埋め込まれると、心不全に罹患している患者にカウンターパルセーション療法を提供することができる。
【0024】
拡張可能部材110は、ガス又は液体で充填されることに応答して、サイズ及び/又は形状を変化させることができる、バルーン又は他の要素であることができる。例えば、いくつかの実施形態では、拡張可能部材110は、生体適合性の非血栓形成性エラストマー材料(例えば、Biospan(登録商標)-S)から構成されるバルーンである。拡張可能部材110は、また、他の好適な材料から作製することもできる。拡張可能部材110は、少なくとも、それが概ね収縮される第一の状態と、それが概ね有効カウンターパルセーション容積まで膨張される第二の状態との間で遷移可能である。
【0025】
有効カウンターパルセーション容積は、大動脈弁(ダイクロティックノッチ)の閉鎖直後に患者の大動脈内に配置された拡張可能部材110を急速に膨張させた後に拡張可能部材110を占有する流体の容積であってもよい。拡張可能部材110内の有効カウンターパルセーション容積は、拡張期大動脈圧を25~70%上昇させ、末端器官及び冠動脈灌流を増強させる。有効カウンターパルセーション容積は、特定の患者の最低治療拡張期血圧、又は患者集団の平均最低治療拡張期血圧に基づいてもよい。駆動ユニット200、300(図2及び図3)の拡張可能部材110及び/又はエアムーバ220、320のサイズは、有効カウンターパルセーション容積が拡張可能部材110の完全膨張容積よりも小さくなるように選択される。例えば、患者の有効カウンターパルセーション容積は、患者の最低治療拡張期血圧、又は患者集団の平均最低治療拡張期血圧を達成するために50ccであってもよい。拡張可能部材110に対する過度の膨張応力を防止し、ガスが患者の血管系内の破裂した拡張可能部材から漏出することを防止するために、拡張可能部材110は、50ccより大きい(例えば、55cc)完全に膨張した容積を含んでもよく、一方、エアムーバ220、320は、拡張可能部材110の完全に膨張した容積(すなわち、患者の最低治療拡張期血圧、又は患者集団の平均最低治療拡張期血圧)より小さい容積の空気を排出するように構成されてもよい。「エアムーバ」220、320は、ベローズ、圧縮ガスシリンダ、空気圧ピストン、ダイヤフラム、コンプレッサ、又は特大バルーンに有効なカウンターパルセーション容積を供給するための他の機構を含んでもよい。ベローズは、拡張可能部材110、第一の端部(例えば、図2A図2B、及び図3の静的フランジ229、329である)及び第二の端部(例えば、図2A図2B、及び図3の動的フランジ228、328である)と流体接続する空気圧出力部を含む。第一の端部は固定され、第二の端部は変位可能である。図2A図2B及び図3の実施形態は、「エアムーバ」をベローズ220、320として説明するが、この「エアムーバ」は、ベローズ構成に限定されず、適切なガス容積を拡張可能部材110内に送達するための任意の機構を含んでもよい。
【0026】
拡張可能部材110の完全な膨張は、システム100の様々なパラメータに依存する。例えば、「完全に膨張される」拡張可能部材110は、空気圧システム容積、拡張可能部材110のサイズ又は容量、膨張及び収縮サイクルに対応するベローズ220、320の容積の変化、並びに患者の血圧に依存してもよい。患者の血圧を除いて、これらのパラメータは、図1に関連して説明したように、システム100及びその構成要素から測定又はコンパイルされてもよい。したがって、漏出が生じ得る血圧閾値は、患者にとって最低の治療的拡張期血圧である。空気圧システム、拡張可能部材の容積、及び血圧の下限閾値を考慮すると、ベローズ220、320の移動は、拡張可能部材110の完全な膨張を防止するように制限される。本明細書で説明されるように、ベローズ運動に対する制限は、機械的に、又はソフトウェア命令によって実装されてもよい。
【0027】
したがって、拡張可能部材110は、有効なカウンターパルセーション容積を超えることなく、第一の状態(収縮)と第二の状態(膨張)との間で繰り返し遷移することによって、拡張可能部材110が破裂したり、患者の血管系に流体が漏れたりする危険性なしにカウンターパルセーション療法を提供することができる。第一の状態と第二の状態との間で拡張可能部材110を遷移させるために、駆動ユニット150は、以下でより詳細に説明されるように、第一の空気圧駆動ライン120及び第二の空気圧駆動ライン140を介して、流体(気体又は液体、例えば、空気)の有効カウンターパルセーション容積を拡張可能部材110の内部容積に導くことができる。拡張可能部材110は、また、拡張可能部材110が腎動脈等の大動脈から分岐する動脈を塞ぐのを軽減及び/又は防止し、完全に膨張したときの内部容積が有効カウンターパルセーション容積未満であるように、サイズ決定及び/又は成形することもできる。いくつかの実施形態では、拡張可能部材110は、また、参照することによって本明細書に組み込まれる開示に説明される特徴に、概ね類似する特定の特徴を有してもよい。いくつかの実施形態では、拡張可能部材110は、バルーン以外に、又はそれに加えて、拡張可能エンドエフェクタを含む。
【0028】
駆動ユニット150は、収束して駆動ユニット150から延在する外部空気圧駆動ライン172を形成する、第一の空気圧駆動ライン120及び第二の空気圧駆動ライン140を介して、拡張可能部材110に出入りするガス流を生成することができる。例えば、駆動ユニット150は、正圧を生成し、第一の空気圧駆動ライン120及び第二の空気圧駆動ライン140を介して、ガスを拡張可能部材110の中へ加速させ、それによって、拡張可能部材110を膨張させることができる。駆動ユニット150は、また、負圧を誘発し、第一の空気圧駆動ライン120及び第二の空気圧駆動ライン140を介して、拡張可能部材110からガスを引き出し、それによって、拡張可能部材110を収縮させることができる。駆動ユニット150は、ベローズ(図1には図示せず)を通して、拡張可能部材110に出入りするガス流を誘導することができる。いくつかの実施形態では、駆動ユニット150は、拡張可能部材110に押し込まれる空気の容積を制御して、拡張可能部材110が完全に膨張又は過剰に膨張することを回避することができる。例えば、空気流を生成するためにベローズを利用する実施形態では、ベローズによって生成される空気流の容積(例えば、ベローズの容積)は、拡張可能部材110の内部容積未満である患者の最低治療拡張期血圧、又は患者集団の平均最低治療拡張期血圧に対応することができる。他の実施形態では、ベローズによって放出される流体の容積は、エアムーバリミッタ(図1に図示せず)によって制限されて、ベローズの容量を、やはり拡張可能部材110の内部容積よりも小さい有効カウンターパルセーション容積に対応するように低減することができる。エアムーバリミッタは、機械的なもの、機械的構成要素を制御するソフトウェア命令、又は機械的構成要素とソフトウェア構成要素との組み合わせであってもよい。当業者は、相対圧力の変化に起因して、エアムーバの容積がバルーンの内部容積と異なり得ることを認識するであろう。いくつかの実施形態では、駆動ユニット150は、駆動ユニット150を取り囲む環境からの周囲空気(例えば、「室内空気」)を使用して、システム100の動作を駆動する。周囲空気を使用することで、内部ガス又は流体供給(例えば、ヘリウムタンク)に依存する駆動ユニットと比較して、駆動ユニット150のサイズ、重量、及び/又はコストを低減することが期待される。例えば、いくつかの実施形態では、駆動ユニット150は、約3kg以下の重量であり得る。駆動ラインは、システム100が能動的に使用されていないとき、皮膚インターフェースデバイス190の近くで切断することができる。
【0029】
システム100は、患者が歩行可能な状態を維持しながら、心臓機能及び血流の継続的な支援を可能にし得る。典型的な心室補助デバイスは、駆動ラインのための大腿骨アクセス及び/又は大型の静止外部制御ユニットへの接続を必要とし、したがって、治療期間中、患者を仰臥位の病院ベッドに拘束する。対照的に、システム100によって、患者は比較的妨げられずに動き回ることが可能になる。さらに、システム100によって提供される治療レベルは、患者の必要性に適合するように調整することができる。例えば、拡張可能部材110によって提供される有効カウンターパルセーション容積及び支持比(例えば、1:1、1:2、1:3支持)は、過度の応力及び/又はガス漏出を防止するために、拡張可能部材110が不十分な膨張を維持しながら、提供される支持を変化させるように、各患者に対して調節することができる。当業者は、支持比がバルーンの膨張に対する拍動の比を測定することを認識するであろう。例えば、1:1の支持比は、各拍動についてバルーンの対応する膨張があることを示し、1:2の支持比は、各膨張の前に2つの拍動があることを示し、1:3の支持比は、各膨張の前に3つの拍動があることを示す。
【0030】
駆動ユニット150は、臨床医が有効カウンターパルセーション容積又は支持比を制御することができるユーザインターフェース(図示せず)を有することができる。あるいは、駆動ユニット150は、他の外部入力を介して(例えば、駆動ユニット150と電気通信する対応するタブレット又は他のデバイスを使用して)制御することができる。(例えば、全移動のパーセントとして内部ベローズ機構の所望の移動を変更することによって)経時的に有効カウンターパルセーション容積を徐々に減少させることで、心臓の負荷を制御されたすることができ、このことは、場合によっては、心臓回復に有益なことがある。同様に、内部ベローズ機構の移動は、拡張可能部材110の膨張容積を完全膨張容積未満に制限するように、機械的に、及び/又はユーザインターフェースを介したコンピュータ命令によって制限されてもよい。さらに、従来の循環補助システムとは異なり、システム100は、例えば、システム100を取り外す前に、又は別の適切な理由で、支援なしに心臓の要求に対処する患者の能力を評価するためにオフにすることができる。いくつかの実施形態では、例えば、拡張可能部材110は、比較的長期間にわたって(例えば、1日に23時間にわたって)収縮状態で大動脈内に留まるように設計される。これは、従来のデバイスとは非常に対照的である。その理由は、従来のデバイスでは、約15分以上にわたってオフにした場合、再活性化により、非活性状態にあるときに形成された血栓が大量に噴出する可能性があるので、しばしば、取り外す必要があったからである。
【0031】
(駆動ユニット)
本開示は、駆動ユニット150の少なくとも2つの実施形態を企図する。第一の実施形態は、図2A~Bに示されており、参照番号200によって駆動ユニットを指す。第二の実施形態は、図3に示されており、参照番号300によって駆動ユニットを指す。
【0032】
図2Aは、駆動ユニット200の第一の実施形態を示す。駆動ユニット200は、ベローズ220及びモータ222(例えば、ブラシレスDCモータ等の電気モータ)を含んでもよい。図2Aのベローズ220の左側の空間は、モータ222を制御するために使用される電気構成要素(図示せず)によって少なくとも部分的に占有されてもよい。そのような構成要素は、1つ以上のコンピュータプロセッサと、コンピュータプロセッサによって実行されることが可能なコンピュータプロセッサ可読命令を含むメモリとを含んでもよい。同じ空間は、(例えば、ベローズ出力部/空気圧出力部223を適用可能なポート204に結合するための)バリューマニホールド等の機械的構成要素によって少なくとも部分的に占有されてもよい。
【0033】
ベローズ220は、軸方向拡張ベローズであってもよく、異なる方向へのモータ222の回転に応答して、図2Aに描写されるA-A軸に沿って拡張及び収縮することができる。図2A及び2Bによって描写される実施形態では、ベローズ220は、拡張可能部材110(図1)が収縮されるように拡張される。ベローズ220がモータ222によって圧縮されると、拡張可能部材110(図1)が膨張する。ベローズ220は、ベローズ220内の容積がベローズの長さに従って変化するように、その長さに沿って一定の断面形状を有してもよい。
【0034】
モータ222は、ロータ222a及びステータ222bを含んでもよい。ロータ222aは、回転-直線変換器に接合されてもよい。例えば、ロータ222aは、動的フランジ228に添着されるボールねじ226を担持するボールナット224に接合されてもよい。ベローズ220は、ボールねじ226の近位にあるベローズの第二の端部にある動的フランジ228によって、及びボールねじ226の遠位にあるベローズの第一の端部にある静的フランジ229(図2A)によって封止され得る。ベローズ出口233(図2A)は、ベローズの第二の端部(すなわち、動的フランジ228)の移動又は変位に応答して、外部駆動ライン172内の流体の拡張可能部材110への連通を可能にしてもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、ベローズ出口233は、静的フランジ229内に形成されてもよい。ボールねじ226は、ボールナット224と組み合わせて、ほとんど摩擦なしにモータ222の回転運動を直線運動に変換する機械的回転-直線変換器を形成してもよい。静止ステータ222b内のロータ222aによってボールナット224が回転すると、ボールねじ226が軸A-Aに沿って直線的に移動し、それに対応して、ベローズ220の直線移動を引き起こすことができる。
【0036】
ボールねじ226は、ボールナット224のボール226b(図2C)のための螺旋軌道226aを提供するようにねじ切りされてもよく、精密ねじとして作用してもよい。いくつかの寸法は、ボールねじ226及び軌道226aを画定してもよい。例えば、ボールねじ226は、螺旋軌道226aの溝間の距離を測定するピッチを含んでもよい。
【0037】
ロータ222a及びボールナット224アセンブリは、ラジアル軸受232を介してモータ222の筐体230に搭載されてもよい。ラジアル軸受232の内輪は、ロータ222a及びボールナット224アセンブリに添着されてもよく、ラジアル軸受232の外輪及びステータ222bは、モータ筐体230に添着されてもよい。モータ222が作動すると、ロータ222a及びボールナット224が回転運動し、これによって、ボールナット224のボール226c(図2C)がボールねじ226の螺旋軌道226a内に乗って、ロータ222aの回転運動を軸A-A(図2A)に沿ったボールねじ226の直線運動に変換してもよい。
【0038】
ボールねじ226の移動は、動的フランジ228を介してベローズ220に伝達され、ベローズ220を拡張又は収縮させて、ベローズ出口233(図2A)を介して拡張可能部材110と流体接続している外部駆動ライン172内でそれぞれ負又は正の流体流を生成する。いくつかの実施形態では、ボールねじ226は、(図2Bに描写されるように)ネジ山付きインターフェースを介して、動的フランジ228に固定して嵌合されてもよい。いくつかの実施形態では、動的フランジ228及びボールねじ228は、1つの連続片である。ボールねじ226が動的フランジ228に固定して嵌合されるとき、又はボールねじ226及び動的フランジ228が1つの連続片であるとき、ボールねじ228は、その運動をベローズに直接的かつ効率的に変換することができる(例えば、ボールねじ226を静的フランジ229から引き離すと、動的フランジ228を引っ張ってベローズ220を拡張することができる)。
【0039】
図2C~2Dを参照すると、いくつかの実施形態では、ボールナット224は、拡張可能部材110が有効カウンターパルセーション容積まで膨張させられるが、不十分な膨張で留まるように、ベローズの収縮及び外部駆動ライン172内の正の流体流動を機械的に制限する、エアムーバリミッタとして構成されてもよい。いくつかの実施形態では、エアムーバリミッタは、停止ピン224aを含むボールナット224であってもよい。エアムーバリミッタは、軸A-Aに沿ったエアムーバリミッタ224のさらなる直線移動を停止することによって、動的フランジ228を介してボールねじ226に沿ったベローズ220の移動を制限しながら、ボールナット224が回転することを可能にし得る。エアムーバリミッタ224の内側のクラッチ状カラー240は、エアムーバリミッタ224が停止ピン224aを越えて移動するのを防止する。停止ピン224aは、(例えば、穴を開け、停止ピンを押し込むことによって)軌道226aの谷部又は根元に配置されてもよい。停止ピン224aは、ボールナット224がボールねじ226に沿って回転して拡張可能部材110を不十分に膨張させることを制限するように配置される。カラー240が停止ピン224aと接触すると、エアムーバリミッタ224は、軌道から係合解除され、アイドリングし始める。エアムーバリミッタ224が再び移動し始めるために、ロータ222a及びエアムーバリミッタ224アセンブリを反対方向に回転させる。エアムーバリミッタは、ベローズ220の移動を制限するか、又は別様に拡張可能部材の膨張を完全膨張容積未満に制限するための他の機械的手段を含んでもよい。
【0040】
図2A~B及び図4を参照すると、駆動ユニット200は、プロセッサ402と、メモリ404と、駆動ユニット402とを含んでもよい。プロセッサ402は、データ又は情報を処理することができる1つ以上の専用又は非専用マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、シーケンサ、マイクロシーケンサ、デジタル信号プロセッサ、処理エンジン、ハードウェアアクセラレータ、特定用途向け回路(ASIC)、状態機械、プログラマブル論理アレイ、任意の集積回路、ディスクリート回路等、あるいはその任意の好適な組み合わせを含んでもよい。メモリ404は、能力のある任意の好適な不揮発性メモリデバイス、チップ、又はストレージデバイス、例えば、システムメモリ、フレームバッファメモリ、フラッシュメモリ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、レジスタ、及びラッチのうちの1つ以上を含んでもよい。プロセッサ402は、(例えば、メモリ404に記憶された)実行可能命令を実行することができる。プロセッサ402は、モータ222、ひいてはベローズ220を制御するように構成されてもよい。
【0041】
例えば、エンコーダディスク234及びエンコーダセンサ236は、ロータの角度位置、速度、及び/又は方向を決定し、そのような情報を位置フィードバック信号としてプロセッサ402及び/又はメモリ404に提供してもよい。エンコーダディスク234は、エンコーダセンサ236を含むエンコーダの構成要素である。エンコーダセンサ236と組み合わせて、エンコーダディスク234は、機械的運動を電気信号に変換する。エンコーダディスクは、典型的には、金属、プラスチック、ガラス、又は紙から作製され、一連のセグメントを有する。エンコーダセンサ236は、ディスク回転を決定するためにセグメントを区別することができる。いくつかの実施形態では、セグメントは、透明及び不透明、磁性及び非磁性、白色及び黒色、あるいは任意の他の一連の交互の材料又は外観である。センサ236を通したディスク234が回転すると、一連の電気パルスが生成され、この電気パルスを使用して、エンコーダディスクの回転、したがって、モータ222の回転の速度、位置、又は方向を測定することができる。
【0042】
エンコーダディスク234は、また「ホーム」位置を含んでもよい。エンコーダディスクのホーム位置は、エンコーダがオン又はリセットされたときに、エンコーダがエンコーダの「ゼロ値」又はデフォルト位置を指す位置である。インクリメンタルエンコーダディスクは、ディスク上のパターンの開始を検出することによってホーム位置を決定する。例えば、ディスク234は、黒線と白線が交互に並ぶパターンを有してもよい。エンコーダは、第一の黒線を検出すると、カウントを開始する。アブソリュートエンコーダディスクは、ディスク上のコード値を読み取ることによってホーム位置を決定してもよい。例えば、ディスクは、番号0を表すコードを有し得る。プロセッサ402及び/又はメモリ404(図4)は、センサ236、336(図2及び図3)からコードを受信し、コードをメモリ404に記憶するための命令を実行してもよい。エンコーダセンサ236は、コードを読み取り、次いで、エンコーダディスク234の位置を0に設定してもよい。ホーム位置は、ボールねじ228の回転を測定し、その動きをベローズ220内のガス又はそれによって放出されるガスの容積に変換すること、又はエンコーダと別のデバイスとの位置合わせ等の様々な理由で重要になり得る。ホーム位置が設定されると、プロセッサ402は、エンコーダディスク234がオフにされるか又はリセットされるときに、その位置に戻す命令を実行してもよい。これによって、エンコーダが常に正しい位置にあることが保証される。
【0043】
あるいは、直線位置センサ(図示せず)を使用して、ボールねじ226又はベローズ220の位置を決定し、そのような位置フィードバック信号を提供してもよい。プロセッサ402及び/又はメモリ404は、また駆動ユニットUI406から制御情報を受信し、表示情報(例えば、ステータス情報)を駆動ユニットUI406に提供してもよい。関連して、プロセッサ402及び/又はメモリ404は、同様に、皮膚インターフェースデバイス190及び1つ以上のセンサ160(図1)からのEKG信号、1つ以上の外部制御信号(例えば、タブレット又は他のコンピューティングデバイス(図示せず)からのもの)、及び1つ以上のセンサ信号を受信してもよい。例えば、プロセッサ402及び/又はメモリ404は、治療(例えば、カウンターパルセーション治療)を受けている患者の動脈(例えば、図1に描写されるような下行大動脈)内に配置されたときに、バルーン110に近接して配置された圧力センサ(図示せず)によって観察されるような圧力信号を受信してもよい。1つ以上の圧力信号は、そのような動脈内でバルーン110に及ぼされる圧力及び/又はそのような動脈内の圧力を示してもよい。
【0044】
プロセッサ402は、モータ222を制御するために、位置フィードバック信号、駆動ユニットUI406制御信号、EKG信号、外部制御信号、及びセンサ信号のうちの1つ以上を使用してもよい。例えば、EKG信号を使用してバルーン110の膨張及び/又は収縮の適切なタイミングを確実にしてもよい(例えば、カウンターパルセーションを追求するために)。そして、駆動ユニットUI406の制御信号及び外部制御信号を使用して、上述のように、有効カウンターパルセーション容積、支持比、及び最大膨張容積を変更してもよい。
【0045】
上述の種々の信号は、患者の血圧を監視して、患者の最低治療拡張期血圧、又は患者集団の平均最低治療拡張期血圧を下回るときを決定することができる。この決定は、拡張可能部材110が完全に膨張しているか、過剰に膨張しているかを信号伝達するものであり、拡張可能部材を不十分な膨張に保つためにベローズの移動量を以前に決定された容積未満にさらに調整するために使用される。膨張滞留中のベローズ圧力の輪郭又は部分サイクル中の患者の血圧、あるいはこれらの測定値のいくつかの組み合わせを使用して、完全に膨張しているか、過剰に膨張しているかを信号伝達してもよい。
【0046】
さらに、拡張可能部材110の不十分な膨張は、拡張可能部材110の破裂を検出するのに有用なことがある。例えば、不十分な膨張からの圧力は、最低拡張期圧力より決して高くないので、血液は、高サイクル疲労に起因して発達し、継続使用に伴って経時的に着実にサイズが成長し得る拡張可能部材110内の亀裂又はリフトを通して、空気圧システムに進入することがある。亀裂又はリフトを通って漏出する血液は、空気圧駆動ラインにおいて目に見えるようになる。不十分な膨張によって、血液が進入することが可能になるが、リフトが小さい場合、空気は、出ることができない。駆動ライン中に血液が観察されると、支援を中止する必要性が示される。
【0047】
他の実施形態では、リニアブラシレスDCモータ、ソレノイド、及び/又は圧電アクチュエータを用いて、ベローズ220を圧縮及び拡張してもよい。
【0048】
駆動ユニット200を使用して、心不全を有する患者にカウンターパルセーション療法を提供するために、周囲空気を使用して膨張可能部材(inflatable member)110を効果的に膨張及び収縮させてもよい。以下の表に記載される以下の構成要素の値は、駆動ユニット200及び膨張可能部材110として約20~60ccのバルーンを使用するカウンターパルセーションのためのそのような目的のための例示である。
【表1】
【0049】
概してカウンターパルセーションに効果的であるが、上記で構成された駆動ユニット200は、ロータ222aの回転慣性に打ち勝つためだけに、かなりの量の電力を使用し、心不整脈、不規則な心拍、又はa-fibを有する患者を治療するには「速く」ないことがある。ボールねじピッチは、駆動ユニットの効率を改善するように選択又は調整されてもよい。特に、ボールねじピッチを調整すること(及び/又はベローズ220の直径を調整すること)によって、モータ222のインピーダンスと、駆動ユニット200上の空気圧負荷(例えば、バルーン110、第一の空気圧駆動ライン120、第二の空気圧駆動ライン140、及び外部駆動ライン172の集合的な空気圧負荷)のインピーダンスとをより良く整合してもよい。効率のそのような改善は、モータ222を駆動するために使用される任意のバッテリのバッテリ寿命を改善し得る。
【0050】
図3を参照すると、駆動ユニット300の第二の実施形態は、ベローズ320及びモータ322(例えば、ブラシレスDCモータ等の電気モータ)を含んでもよい。ベローズ320は、軸方向拡張ベローズであってもよく、異なる方向へのモータ322の回転に応答して、図3に描写されるB-B軸に沿って拡張及び収縮することができる。図3に示すように、ベローズ320は、動的フランジ328を含んでもよい。動的フランジ328は、モータ322の少なくとも一部分がベローズ空洞320a内に入れ子にされるように、モータ322の少なくとも一部分を受容又は収容するようにサイズ決定及び成形されてもよい。例えば、凹部328aの方向は、ベローズ空洞320に向かってもよく、外部駆動ライン172内に効果的な空気流を提供するために充分なストローク長を維持しながら、ベローズ空洞321a内でモータ322の少なくとも一部を受容又は収容及び入れ子にするのに好適な三次元形状(例えば、シリンダ)をとってもよい。凹部328aによって、外側ケース302のサイズ及び重量を低減することが可能になり、システムの移動性を(例えば、外側ケース202のサイズと比較して)改善することもできる。図3に描写される実施形態では、ベローズ320は、拡張可能部材110(図1)が収縮されるように、拡張又は非圧縮状態で描写されている。
【0051】
モータ322は、ロータ322a及びステータ322bを含む。第一の実施形態200と同様に、ロータ322aは、回転-直線変換器、例えば、ねじ式インターフェースを介して動的フランジ328に添着されるボールねじ326を担持するボールナット324に接合するように成形されてもよい。他の実施形態では、ロータ323及びボールナット324は、単一片として形成されてもよい。いくつかの実施形態では、ボールねじ326は、重量を軽くするために中空である。ロータ323及びボールナット324アセンブリは、ラジアル軸受330を介してモータ332の筐体に搭載されてもよい。ラジアル軸受330の内輪は、ロータ323及びボールナット324アセンブリに添着されてもよく、ラジアル軸受330の外輪及びステータ323bは、モータ筐体332に添着されてもよい。第一の実施形態と同様に、モータ322が作動すると、ロータ323及びボールナット324が回転運動して、これによって、軸B-Bに沿ったボールねじ326の直線運動に変換してもよい。ボールねじ326の移動は、動的フランジ328を介してベローズ320に伝達され、ベローズ320を拡張又は収縮させて、静的フランジ329と関連付けられたベローズ出力部/空気圧出力部333を介して拡張可能部材110と流体接続している外部駆動ライン172内でそれぞれ負又は正の流体流を生成する。他の実施形態では、リニアブラシレスDCモータ、ソレノイド、及び/又は圧電アクチュエータを用いて、ベローズ320を圧縮及び拡張してもよい。
【0052】
ボールねじ326は、動的フランジ328に嵌合されてもよい(あるいは2つの構成要素は、1つの連続片であってもよい)ので、ロータ322a及びボールナット324が軸B-Bの周囲でステータ322b内で回転している間に、ボールねじ328は、その運動をベローズ320に直接的かつ効率的に変換することが可能になる。ロータ322aの回転は、ボールナット324のボールをボールねじ226の螺旋軌道226a内で運ぶことができ、したがって、軸B-Bに沿ったボールねじ226の移動を引き起こす。いくつかの実施形態では、ボールナット324は、拡張可能部材110が有効カウンターパルセーション容積まで膨張させられるが、不十分な膨張で留まるように、動的フランジ328の移動又は変位及び外部駆動ライン172内の正の流体流を制限するように、図2C-2Dに関連して説明されるように、エアムーバリミッタ224として構成されてもよい。
【0053】
図3及び図4を参照すると、エンコーダディスク334及びエンコーダセンサ336は、ロータの角度位置、速度、及び/又は方向を決定し、そのような情報を、電気的フィードバック信号(図示せず)を介してプロセッサに提供してもよい。エンコーダディスク334は、エンコーダセンサ336を含むエンコーダの構成要素であり、エンコーダディスク234及びエンコーダセンサ236に関して上述したのと同じ利点を含む。他の実施形態では、直線位置センサ(図示せず)を使用して、ボールねじ326又はベローズ320の位置を決定し、その情報をそのようなプロセッサに提供してもよい。そのようなプロセッサは、また、皮膚インターフェースデバイス190及び1つ以上のセンサ160(図1)からのEKG信号、(例えば、モータ322及びベローズ220の移動を制御するように構成されたタブレット(図示せず)、ケース302に動作可能に結合されたユーザインターフェース(図示せず)等からの)好適な外部制御信号、及び他のセンサ(例えば、下行大動脈内の圧力を感知することができる圧力センサ(図示せず))からのものを受信してもよい。
【0054】
駆動ユニット300を使用して、心不全を有する患者(心不整脈、不規則な心拍、又はa-fibを有する患者を含む)にカウンターパルセーション療法を提供するために、周囲空気を使用して膨張可能部材110を効果的に膨張及び収縮させてもよい。以下の構成要素の値の範囲は、駆動ユニット300及び膨張可能部材110として約20~60ccのバルーンを使用するカウンターパルセーションに対して効率的及び/又は経済的であり得る。
【表2】
【0055】
図4を参照すると、駆動ユニット200、300は、プロセッサ402と、メモリ404と、駆動ユニット402とを含んでもよい。エンコーダディスク234、334及びエンコーダセンサ236、336は、ロータの角度位置、速度、及び/又は方向を決定し、そのような情報を位置フィードバック信号としてプロセッサ402及び/又はメモリ404に提供してもよい。他の実施形態では、直線位置センサ(図示せず)を使用して、ボールねじ226、326又はベローズ220、320の位置を決定し、そのような位置フィードバック信号を提供してもよい。プロセッサ402及び/又はメモリ404は、また駆動ユニットUI406から制御情報を受信し、表示情報(例えば、ステータス情報)を駆動ユニットUI406に提供してもよい。関連して、プロセッサ402及び/又はメモリ404は、同様に、皮膚インターフェースデバイス190及び1つ以上のセンサ160(図1)からのEKG信号、1つ以上の外部制御信号(例えば、タブレット又は他のコンピューティングデバイス(図示せず)からのもの)、及び1つ以上のセンサ信号を受信してもよい。例えば、プロセッサ402及び/又はメモリ404は、治療(例えば、カウンターパルセーション治療)を受けている患者の動脈(例えば、図1に描写されるような下行大動脈)内に配置されたときに、バルーン110に近接して配置された圧力センサ(図示せず)によって観察されるような圧力信号を受信してもよい。1つ以上の圧力信号は、そのような動脈内でバルーン110に及ぼされる圧力及び/又はそのような動脈内の圧力を示してもよい。
【0056】
プロセッサ402は、モータを制御するために、位置フィードバック信号、駆動ユニットUI406制御信号、EKG信号、外部制御信号、及びセンサ信号のうちの1つ以上を使用してもよい。例えば、EKG信号を使用してバルーン110の膨張及び/又は収縮の適切なタイミングを確実にしてもよい(例えば、カウンターパルセーションを追求するために)。そして、駆動ユニットUI406の制御信号及び外部制御信号を使用して、上述のように、有効カウンターパルセーション容積、支持比、及び最大膨張容積を変更してもよい。
【0057】
図5は、患者の最低治療拡張期血圧、又は患者集団の平均最低治療拡張期血圧を達成する目的でカウンターパルセーション支援のために駆動ユニット200、300を初期化するための方法500のためのプロセッサ実行可能命令を含むソフトウェア制限のフローチャートである。方法500の各ステップは、方法の異なる態様を実行するように物理的に構成され得るマイクロプロセッサ又は他のコンピューティングデバイス(例えば、プロセッサ402及びメモリ404を含む駆動ユニット200、300)上で実行される1つ以上のプロセッサ実行可能命令である。各ステップは、駆動ユニット200、300に関連して説明した命令のいずれかの実行を含んでもよい。以下のブロックは、順序付きセットとして提示されるが、記載される様々なステップは、本明細書に記載されるエアムーバリミッタ方法を完了するために任意の特定の順序で実行されてもよい。
【0058】
ブロック502において、プロセッサ402は、「電源オン」又は「起動」コマンドを実行することができる。例えば、メモリ404に記憶されたプロセッサ実行可能命令は、プロセッサ402に、駆動ユニット200、300の初期化シーケンスを開始させてもよい。ブロック503において、プロセッサは、方法500の実行中にベローズ220、320内にガスが押し込まれないように「ガスブロック」コマンドを実行してもよい。例えば、ブロック503は、ガスがベローズ220、320内に押し込まれないように、システム100内の1つ以上の弁を構成(すなわち、開放又は閉鎖)するためのコマンドをプロセッサが実行することを含んでもよい。ブロック504において、プロセッサ402は、「ベローズ移動」コマンドを実行してもよい。メモリ404に記憶されたプロセッサ実行可能命令によって、プロセッサ402がモータ222、322に電力を供給し、ベローズ220、320を移動させてもよい。例えば、動的フランジ228、328は、静的フランジ229、329に向かって移動を開始してもよい。ブロック506において、プロセッサ402は、「モータ電流チェック」コマンドを実行してもよい。例えば、メモリ404に記憶されたプロセッサ実行可能命令は、プロセッサ402にモータ222、322の電流を決定させてもよい。電流が定常状態(すなわち、時間とともに閾値速度を超えて上昇しない)である場合、又は閾値量を超えて増加しない場合、方法500は、ブロック504に戻り、ベローズ移動を継続してもよい。電流レートが増加する場合、又は電流自体が閾値を超える場合、方法500は、ブロック508に進んでもよい。ブロック508において、プロセッサ402は、「ベローズ戻り」コマンドを実行してもよい。この戻り移動の距離は、メモリに記憶された定数であってもよい。例えば、メモリ404に記憶されたプロセッサ実行可能命令は、プロセッサ402に、エンコーダディスク234、334からの読み取りパルスに基づいてモータ222、322を「ホーム」位置まで逆転させてもよい。完全圧縮と「ホーム」との間の距離も、本明細書で説明されるように、有効カウンターパルセーション容積に対応する。最後に、ブロック510において、患者を支援するためのカウンターパルセーションポンピングに備えて空気弁を閉じる。
【0059】
駆動ユニット200及び駆動ユニット300が、対応するベローズ220、320が拡張位置から収縮位置へ、又はその逆に直線運動を受けるときに同じ量の空気を移動させるように構成される(すなわち、同じサイズのバルーンを有効カウンターパルセーション容積まで収縮又は膨張させる)と仮定すると、駆動ユニット300は、駆動ユニット200に勝るいくつかの利点を有し得る。例えば、駆動ユニット300は、駆動ユニット200よりも小型かつ軽量である(すなわち、より小さい容積のエンクロージャを有する)ように構成することができ、これは、より歩行行動で移動/係合するために駆動ユニット150を携行しなければならない人の能力に重大な影響を及ぼし得る。特に、ベローズ320は、駆動ユニット220よりベローズ移動距離を小さくすること(及びボールねじを短くすること)ができる。駆動ユニット200内のベローズ直径に対して駆動ユニット300内のベローズ直径を増加させることによって、(1)駆動ユニット上の空気圧負荷のインピーダンス(例えば、バルーン110、第一の空気圧駆動ライン120、第二の空気圧駆動ライン140、及び外部駆動ライン172の集合的な空気圧負荷)は、モータ(すなわち、駆動ユニットの機械的サブシステム)のインピーダンスにより良好に整合され、(2)膨張及び収縮に必要な電力消費が低減され、これにより、駆動ユニット200と比較して駆動ユニット300の効率が向上する。
【0060】
このような構成では、直線運動の軸(すなわち、軸B-B)に沿った駆動ユニット300の全体寸法は、直線運動の軸(すなわち、軸B-B)に沿った駆動ユニット200の全体寸法よりも小さくすることができる。駆動ユニット200の最長寸法は、その直線運動軸(すなわち、軸B-B)に沿ったものであってもよいが、駆動ユニット300の最長寸法は、その直線運動軸に直交しても(すなわち、軸B-Bに直交しても)よい。これは、外側ケース202及び302の両方が直方体であり(又は実質的に直方体の形状であり)、静的フランジ229、329の面が外側ケース202、302の面と平行であるように構成される場合に特に当てはまり得る。図3Eに示すように、駆動ユニット300の最長寸法は、ベローズ320の直径に平行な軸に対応してもよい。
【0061】
さらに、駆動ユニット300の設計は、QRS群におけるR波の約100ms以内に、対応するバルーン又は膨張可能部材110を50%収縮させるのに充分に速く動作するように構成することができ、その結果、不規則な心拍を有する患者(例えば、心房細動又は「a-fib」を有する患者)を治療することができる。上述のように、a-fibは、心臓の2つの上室が無秩序な電気信号を経験するときに生じる不規則な及び/又は急速な心拍数である。その結果、迅速かつ不規則な心臓リズムが生じ、この心臓リズムは、拡張可能部材110の効果的な膨張及び収縮について予測することが困難である。a-fib患者を効果的に治療するために、拡張可能部材110は、R波の約100~120ms以内に、少なくとも50%収縮されるべきである。急速な収縮がなければ、拡張可能部材110は、大動脈内の血流を妨害し、心臓の作業負荷を増加させることがある。心室収縮の指標としてQRS群におけるR波を使用すると、R波を位置特定するためのEKG信号の処理が必要となり、これによって、従来のアルゴリズム及びプロセッサを使用して採用されるアルゴリズムに応じて、約20~50msを消費し得る。駆動ユニット300内のボールねじピッチを3.5~5.5mmに設定し、外径が125~111mmで、有効ベロー移動距離が8.0~11.5mmのベローズ320を使用することによって、駆動ユニット300は、不規則な心拍及びa-fibを有する患者を効果的に治療することができる。
【0062】
さらに、駆動ユニット300は、電力消費に関して駆動ユニット200よりもはるかに効率的であり得、それによって、同じそのようなバッテリが同じであると仮定すると、モータ222に電力供給するバッテリ(図示せず)と比較して、モータ322に電力供給するバッテリ(図示せず)のバッテリ寿命を延ばすことができる。特に、モータ222は、ロータ322aの回転慣性を克服するために駆動ユニット300内で利用される電力の量と比較して、駆動ユニット200内のロータ222aの回転慣性を克服するために不均衡な量の電力を非効率的に使用し得る。駆動ユニット300がこの利点を実現するのは、(a)モータ322のインピーダンスが駆動ユニット300上の空気圧負荷のインピーダンスと同じ又は実質的に同じ(すなわち、整合又は実質的に整合)であるように駆動ユニット300内のボールねじピッチを設定すること、及び/又は(b)低減されたベローズ移動を伴う設計を可能にする(及びさらに、モータ322のインピーダンスを駆動ユニット300上の空気圧負荷に整合又は実質的に整合させるのに役立ち得る)拡大ベローズ320を使用することによってである。
【0063】
駆動ユニット200及び駆動ユニット300で上述した表は、単なる例示に過ぎない。異なる構成要素の値を有する駆動ユニットも、本開示の範囲内にあるものとして企図される。
【0064】
(結び)
本技術の実施形態の上記詳細な説明は、網羅的であることも、あるいは本技術を上記で開示した厳密な形態に限定することを意図するものではない。本技術の特定の実施形態及びその例は、例示目的で上述されてきたが、当業者が認識するように、本技術の範囲内で様々な同等の修正が可能である。本明細書に記載の様々な実施形態を組み合わせて、さらなる実施形態を提供することもできる。
【0065】
文脈上他に明確に要求されない限り、説明及び実施例を通して、「備える(comprise)」、「備えている(comprising)」等の語は、排他的又は網羅的な意味とは対照的に、包括的な意味で解釈されるべきであり、すなわち、「含むが、これらに限定されない」という意味である。本明細書で使用される場合、用語「接続される」、「結合される」、又はその任意の変化形は、2つ以上の要素間の直接的又は間接的のいずれかの任意の接続又は結合を意味し、それらの要素間の接続の結合は、物理的、論理的、又はそれらの組み合わせであり得る。加えて、本出願において使用される場合、用語「本明細書中」、「上記」、「以下」、及び同様の意味の用語は、本出願全体を指し、本出願の任意の特定の部分を指さないものとする。文脈が許す場合、単数又は複数を使用する上記の「発明を実施するための形態」における用語も、それぞれ複数又は単数を含み得る。本明細書で使用される場合、「A及び/又はB」におけるような語句「及び/又は」は、A単独、B単独、及びAとBの組み合わせを指す。また、特定の実施形態が例示の目的で本明細書に記載されてきたが、本技術から逸脱することなく様々な修正が行われ得ることも理解されるであろう。さらに、本技術のいくつかの実施形態に関連する利点をそれらの実施形態の文脈で説明してきたが、他の実施形態もそのような利点を示すことができ、必ずしも全ての実施形態が本技術の範囲内に入るようにそのような利点を示す必要はない。したがって、本開示及び関連技術は、本明細書に明示的に描写又は説明されていない他の実施形態を包含することができる。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
【外国語明細書】