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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167094
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】筆記具用インキ組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/16 20140101AFI20241122BHJP
【FI】
C09D11/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024081220
(22)【出願日】2024-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2023083279
(32)【優先日】2023-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000103895
【氏名又は名称】オリヱント化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002251
【氏名又は名称】弁理士法人眞久特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 昌和
(72)【発明者】
【氏名】神原 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 勇人
(72)【発明者】
【氏名】谷角 優也
(72)【発明者】
【氏名】中橋 諒太
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AE02
4J039BC08
4J039BC13
4J039BC41
4J039BE02
4J039BE12
4J039CA04
4J039EA38
4J039EA39
4J039GA26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】溶剤に対し充分に溶解し且つ良好な黒色を呈する着色剤を含有し、重金属を含まず、経時安定性を有する筆記具用インキ組成物を提供する。
【解決手段】着色剤が式(1)で表されるアゾ鉄錯体を含む、筆記具用インキ組成物。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤、アルコール系溶剤及び/又はグリコール系溶剤、並びに樹脂を含む筆記具用インキ組成物であって、前記着色剤が下記化学式(1)
【化1】
(式(1)中、R及びRは同一又は異なっていてもよく、炭素数3~10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、Rはシアノ基、ニトロ基、アセチル基又はスルホアマイド基であり、Rは水素原子、炭素数1~5の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又は炭素数1~5の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基であり、Rはニトロ基、ハロゲン原子又はスルホアマイド基であり、Rは水素原子、炭素数1~8の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はハロゲン原子であり、Rは水素原子又は炭素数1~12の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であって、Aは炭素数3~37の直鎖及び/又は分岐鎖のアルキル基を有する一価のアンモニウムイオン並びにグアニジン誘導体のアンモニウムイオンから選ばれる少なくとも何れかのカチオンである。)で表されるジスアゾ-モノアゾ鉄錯体を含むことを特徴とする筆記具用インキ組成物。
【請求項2】
前記化学式(1)中、Aが下記化学式(2)
【化2】
(式(2)中、Rは炭素数1~18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であって、R及びR10は同一又は異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1~8の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基である。)、下記化学式(3)
【化3】
(式(3)中、R11及びR12は同一又は異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1~4の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、R13は炭素数1~18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。)、下記化学式(4)
【化4】
(式(4)中、R14は炭素数1~12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。)、及び/又は下記化学式(5)
【化5】
(式(5)中、R15は炭素数1~18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。)で表される炭素数3~37の直鎖及び/又は分岐鎖のアルキル基を有する一価のアンモニウムイオン、並びに下記化学式(6)
【化6】
(式(6)中、R16及びR17は同一又は異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1~8の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基である。)で表されるグアニジン誘導体のアンモニウムイオンから選ばれる少なくとも何れかのカチオンであることを特徴とする請求項1に記載の筆記具用インキ組成物。
【請求項3】
前記着色剤が、下記化学式(7)
【化7】
(式(7)中、R~R及びAは式(1)と同一である。)で表されるモノアゾ-モノアゾ鉄錯体、及び/又は下記化学式(8)
【化8】
(式(8)中、R~R及びAは式(1)と同一である。)で表されるジスアゾ-ジスアゾ鉄錯体を含むことを特徴とする請求項1に記載の筆記具用インキ組成物。
【請求項4】
油性マーキングペン用であることを特徴とする請求項1に記載の筆記具用インキ組成物。
【請求項5】
1回又は2回洗濯堅牢性試験を行ったポリエステル製試験片の図形部分のOD値を、前記洗濯試験前のOD値で除した残存率が78~96%である請求項1記載の筆記具用インキ組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色剤としてアゾ鉄錯体、アルコール系溶剤及び/又はグリコール系溶剤並びに樹脂を含有し、ボールペン、マーキングペンなどに用いられる筆記具用インキ組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、油性インキの着色剤として、顔料又は染料が用いられている。
【0003】
顔料系油性インキは、筆跡の堅牢性に優れるものの、インキ中で顔料が凝集したり沈降したりするため、筆跡が薄くなったり、筆跡が形成されなくなったりするなど顔料特有の不具合を生じ易い。
【0004】
一方、染料系油性インキは、染料が溶剤中に溶解して安定的に保存されるため、顔料系油性インキの不具合を生じない反面、筆跡の耐水性や耐候性に乏しいという染料特有の傾向を示し易い。特許文献1にカチオン性界面活性剤及び尿素とアルデヒドとの縮合樹脂を含むアルコール性マーキングインキが開示され、また特許文献2にキサンテン系赤色油溶性染料及びシリコーン系高分子界面活性剤を含む油性マーキングペン用赤色インキが開示されており、何れも筆跡の耐水性や定着性を幾分か向上させている。しかし、未だ耐水性の向上という効果が十分と言えず、さらなる耐水性の向上が望まれていた。
【0005】
また、油性インキに用いられる溶剤として、キシレンやケトンなどが汎用されていた。しかし、人体に対する毒性や臭気などの問題を有するので、これら溶剤よりもアルコール系溶剤やグリコール系溶剤が用いられるようになっている。アルコール系溶剤やグリコール系溶剤への溶解性に優れた黒色染料として、例えば金属錯体染料の一つであるアゾクロム錯体があり、C.I.SOLVENT BLACK 23、27、28、29、35及び45のようなアゾクロム錯体のアミン塩が挙げられる。
【0006】
ところが、このようなアゾクロム錯体は、有害な重金属であるクロムを含むため、環境保全及び人体への安全性確保の観点からその採用が忌避されつつある。そこで、金属錯体染料の良好な特性を持ちながら、クロムのような有害な重金属を含有しない着色剤が検討されるようになっている。
【0007】
有害金属を含有しない安全な着色剤として、高い着色力を有する塩基性染料と酸性染料とを組み合わせたり、塩基性染料と無色又は淡色の有機酸とを組み合わせたりした油溶性造塩染料が用いられている。特にトリフェニルメタン系塩基性染料は、色相と着色力が良好であり、これに各種のアニオンを組み合わせて、筆記具インキ用着色剤として用いられるようになってきた。例えば、このような着色剤として、特許文献3にトリアリールメタン系塩基性染料とアゾ系黄色酸性染料の造塩染料を含む着色剤が開示されている。しかし、この造塩染料は、経時によって造塩染料の一部が崩れ、析出物の生成や書き味の劣化を生じていた。また、特許文献4に塩基性染料を母体とした造塩染料が開示されており、良好なインキ経時安定性を有するものの、書き味向上のために界面活性剤を含めたところ、塩基性染料と反応し析出物を生成してしまった。
【0008】
また、油性マーキングペンの用途として、布に対する筆記がある。児童の衣服や工場での作業服へ筆記しても、複数回洗濯することにより色落ちし、視認できなくなるという問題がある。
【0009】
特許文献5には、アゾクロム錯体のアミン塩を含有し、綿布に対する洗濯堅牢性に優れた筆記具用インキが開示されている。しかし、このインキは、着色剤中に重金属であるクロムを用いているため、肌に直接触れる衣類に使用するのに問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平4-239071号公報
【特許文献2】特開平11-172185号公報
【特許文献3】特開平9-165542号公報
【特許文献4】特開平8-134393号公報
【特許文献5】特公昭60-2340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、アルコール系溶剤及び/又はグリコール系溶剤に対し実用に充分に溶解して沈降し難く且つ良好な黒色を呈する着色剤を含有しており、有害な重金属を含まず且つ経時安定性を有し、洗濯堅牢性を有する筆記具用インキ組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するためになされた本発明の筆記具用インキ組成物は、着色剤、アルコール系溶剤及び/又はグリコール系溶剤並びに樹脂を含む筆記具用インキ組成物であって、前記着色剤が下記式(1)
【化1】
(式(1)中、R及びRは同一又は異なっていてもよく、炭素数3~10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、Rはシアノ基、ニトロ基、アセチル基又はスルホアマイド基であり、Rは水素原子、炭素数1~5の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又は炭素数1~5の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基であり、Rはニトロ基、ハロゲン原子又はスルホアマイド基であり、Rは水素原子、炭素数1~8の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はハロゲン原子であり、Rは水素原子又は炭素数1~12の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であって、Aは炭素数3~37の直鎖及び/又は分岐鎖のアルキル基を有する一価のアンモニウムイオン並びにグアニジン誘導体のアンモニウムイオンから選ばれる少なくとも何れかのカチオンである。)で表されるジスアゾ-モノアゾ鉄錯体を含むものであるというものである。
【0013】
この筆記具用インキ組成物は、前記化学式(1)中、Aが下記化学式(2)
【化2】
(式(2)中、Rは炭素数1~18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であって、R及びR10は同一又は異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1~8の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基である。)、下記化学式(3)
【化3】
(式(3)中、R11及びR12は同一又は異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1~4の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、R13は炭素数1~18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。)、下記化学式(4)
【化4】
(式(4)中、R14は炭素数1~12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。)、及び/又は下記化学式(5)
【化5】
(式(5)中、R15は炭素数1~18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。)で表される炭素数3~37の直鎖及び/又は分岐鎖のアルキル基を有する一価のアンモニウムイオン、並びに下記化学式(6)
【化6】
(式(6)中、R16及びR17は同一又は異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1~8の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基である。)で表されるグアニジン誘導体のアンモニウムイオンから選ばれる少なくとも何れかのカチオンであってもよい。
【0014】
この筆記具用インキ組成物は、前記着色剤が、下記化学式(7)
【化7】
(式(7)中、R~R及びAは式(1)と同一である。)で表されるモノアゾ-モノアゾ鉄錯体、及び/又は下記化学式(8)
【化8】
(式(8)中、R~R及びAは式(1)と同一である。)で表されるジスアゾ-ジスアゾ鉄錯体を含んでいてもよい。
【0015】
この筆記具用インキ組成物は、油性マーキングペン用であってもよい。
【0016】
この筆記具用インキ組成物は、1回又は2回洗濯堅牢性試験を行ったポリエステル製試験片の図形部分のOD値を、洗濯試験前のOD値で除した残存率が78~96%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の筆記具用インキ組成物は、着色剤として有害なアゾクロム錯体に代えて安全性の高いアゾ鉄錯体を使用しているため、環境及び人体への安全性が高く、しかもアゾクロム錯体を用いたインキ組成物と同程度の良好な黒色を呈する。
【0018】
この筆記具用インキ組成物によれば、アゾ鉄錯体がアルコール系溶剤及びグリコール系溶剤に充分に溶解され、時間が経過して沈降せず析出しないため、経時安定性を有する。
【0019】
この筆記具用インキ組成物を筆記具に用いた場合、紙のようにインキを吸収し易い筆記媒体やフィルムのようにインキを吸収し難い筆記媒体に対して強固に密着して剥離され難く且つ耐水性、洗濯堅牢性に優れた筆跡を形成するため、特に油性マーキングペンに好適に用いることができる。そのため、この筆記具用インキ組成物を油性マーキングペンに適用して、例えば、何度も繰り返し洗濯して使用する児童の衣服や工場での作業服などの布に筆記し、その布を複数回洗濯した後でも、筆跡が色落ちしたり、視認できなくなったりするのを回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0021】
本発明の筆記具用インキ組成物は、下記化学式(1)
【化9】
(式(1)中、R及びRは同一又は異なっていてもよく、炭素数3~10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、Rはシアノ基、ニトロ基、アセチル基又はスルホアマイド基であり、Rは水素原子、炭素数1~5の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又は炭素数1~5の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基であり、Rはニトロ基、ハロゲン原子又はスルホアマイド基であり、Rは水素原子、炭素数1~8の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はハロゲン原子であり、Rは水素原子又は炭素数1~12の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であって、Aは炭素数3~37の直鎖及び/又は分岐鎖のアルキル基を有する一価のアンモニウムイオン並びにグアニジン誘導体のアンモニウムイオンから選ばれる少なくとも何れかのカチオンである。)で表されるジスアゾ-モノアゾ鉄錯体並びに下記化学式(7)
【化10】
(式(7)中、R~R及びAは式(1)と同一である。)で表されるモノアゾ-モノアゾ鉄錯体、及び/又は下記化学式(8)
【化11】
(式(8)中、R~R及びAは式(1)と同一である。)で表されるジスアゾ-ジスアゾ鉄錯体が含まれる着色剤、アルコール系溶剤及び/又はグリコール系溶剤、並びに樹脂を含む。
【0022】
ジスアゾ-モノアゾ鉄錯体は、化学式(1)に示す通り、3価の鉄に下記化学式(9)
【化12】
(式(9)中、R~Rは化学式(1)と同一である。)で表されるジスアゾ色素、及び下記化学式(10)
【化13】
(式(10)中、R~Rは化学式(1)と同一である。)で表されるモノアゾ色素がFe(III)に結合して配位することにより形成されたアゾ鉄金属錯体アニオンと、炭素数3~37の直鎖及び/又は分岐鎖のアルキル基を有する一価のアンモニウムイオン並びにグアニジン誘導体のアンモニウムイオンから選ばれる少なくとも何れかのカチオンとからなる。
【0023】
化学式(1)中、R及びRは炭素数3~10で直鎖又は分枝鎖のアルキル基である。具体的に、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、n-オクチル基、2-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、2,2-ジメチルヘキシル基、2,3-ジメチルヘキシル基、2,4-ジメチルヘキシル基、2,5-ジメチルヘキシル基、3,3-ジメチルヘキシル基、3,4-ジメチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、2,2,3-トリメチルペンチル基、2,2,4-トリメチルペンチル基、2,3,3-トリメチルペンチル基、2,3,4-トリメチルペンチル基、2-メチル-3-エチルペンチル基、3-メチル-3-エチルペンチル基、及び2,2,3,3-テトラメチルブチル基、n-ノニル基、n-デシル基、及びラウリル基を挙げることができる。中でもn-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、及び2-エチルヘキシル基が好ましい。
【0024】
化学式(1)中、Rはシアノ基、ニトロ基、アセチル基又はスルホアマイド基である。
【0025】
化学式(1)中、Rは水素原子、炭素数1~5で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、又は炭素数1~5で直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基である。このアルキル基として具体的に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、及びネオペンチル基が挙げられ、このアルコキシ基としてメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、及びネオペンチルオキシ基が挙げられる。
【0026】
化学式(1)中、Rはニトロ基、ハロゲン原子、又はスルホアマイド基である。このハロゲン原子として、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素が挙げられる。
【0027】
化学式(1)中、Rは水素原子、炭素数1~8で直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基又はハロゲン原子である。このアルキル基として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、n-オクチル基、2-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、2,2-ジメチルヘキシル基、2,3-ジメチルヘキシル基、2,4-ジメチルヘキシル基、2,5-ジメチルヘキシル基、3,3-ジメチルヘキシル基、3,4-ジメチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、2,2,3-トリメチルペンチル基、2,2,4-トリメチルペンチル基、2,3,3-トリメチルペンチル基、2,3,4-トリメチルペンチル基、2-メチル-3-エチルペンチル基、3-メチル-3-エチルペンチル基、及び2,2,3,3-テトラメチルブチル基が挙げられる。ハロゲン原子として、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素が挙げられる。
【0028】
化学式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1~12の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基である。このアルキル基として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、2-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、2,2-ジメチルヘキシル基、2,3-ジメチルヘキシル基、2,4-ジメチルヘキシル基、2,5-ジメチルヘキシル基、3,3-ジメチルヘキシル基、3,4-ジメチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、2,2,3-トリメチルペンチル基、2,2,4-トリメチルペンチル基、2,3,3-トリメチルペンチル基、2,3,4-トリメチルペンチル基、2-メチル-3-エチルペンチル基、3-メチル-3-エチルペンチル基、及び2,2,3,3-テトラメチルブチル基、n-ノニル基、n-デシル基、ラウリル基、及びドデシル基等が挙げられる。中でもtert-ブチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基及びドデシル基が好ましい。
【0029】
化学式(1)中、Aが炭素数3~37の直鎖及び/又は分岐鎖のアルキル基を有する一価のアンモニウムイオンである場合、下記化学式(2)~(5)の何れかで表される構造を有することが好ましい。
【0030】
【化14】
【0031】
化学式(2)中、Rは炭素数1~18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であって、R及びR10は同一又は異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1~8の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基である。
【0032】
化学式(2)中、Rのアルキル基として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、n-オクチル基、2-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、2,2-ジメチルヘキシル基、2,3-ジメチルヘキシル基、2,4-ジメチルヘキシル基、2,5-ジメチルヘキシル基、3,3-ジメチルヘキシル基、3,4-ジメチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、2,2,3-トリメチルペンチル基、2,2,4-トリメチルペンチル基、2,3,3-トリメチルペンチル基、2,3,4-トリメチルペンチル基、2-メチル-3-エチルペンチル基、3-メチル-3-エチルペンチル基、及び2,2,3,3-テトラメチルブチル基、n-ノニル基、n-デシル基、ウンデシル基、ラウリル基、及びステアリル基が挙げられる。中でも炭素数7~18で直鎖又は分枝鎖のアルキル基であることが好ましく、炭素数8~15で分枝鎖のアルキル基であることがより好ましく、炭素数11~14で分岐鎖のアルキル基であることがより一層好ましい。
【0033】
化学式(2)中、R及びR10のアルキル基として具体的に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、及びn-オクチル基が挙げられる。中でもメチル基が好ましい。
【0034】
【化15】
【0035】
化学式(3)中、R11及びR12は同一又は異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1~4の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、R13は炭素数1~18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。
【0036】
化学式(3)中、R11及びR12は具体的に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。
【0037】
化学式(3)中、R13のアルキル基として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、n-オクチル基、2-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、2,2-ジメチルヘキシル基、2,3-ジメチルヘキシル基、2,4-ジメチルヘキシル基、2,5-ジメチルヘキシル基、3,3-ジメチルヘキシル基、3,4-ジメチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、2,2,3-トリメチルペンチル基、2,2,4-トリメチルペンチル基、2,3,3-トリメチルペンチル基、2,3,4-トリメチルペンチル基、2-メチル-3-エチルペンチル基、3-メチル-3-エチルペンチル基、及び2,2,3,3-テトラメチルブチル基、n-ノニル基、n-デシル基、ウンデシル基、ラウリル基、及びステアリル基が挙げられる。
【0038】
【化16】
【0039】
化学式(4)中、R14は炭素数1~12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、n-オクチル基、2-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、2,2-ジメチルヘキシル基、2,3-ジメチルヘキシル基、2,4-ジメチルヘキシル基、2,5-ジメチルヘキシル基、3,3-ジメチルヘキシル基、3,4-ジメチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、2,2,3-トリメチルペンチル基、2,2,4-トリメチルペンチル基、2,3,3-トリメチルペンチル基、2,3,4-トリメチルペンチル基、2-メチル-3-エチルペンチル基、3-メチル-3-エチルペンチル基、及び2,2,3,3-テトラメチルブチル基、n-ノニル基、n-デシル基、ウンデシル基が挙げられる。
【0040】
【化17】
【0041】
化学式(5)中、R15は炭素数1~18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、n-オクチル基、2-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、2,2-ジメチルヘキシル基、2,3-ジメチルヘキシル基、2,4-ジメチルヘキシル基、2,5-ジメチルヘキシル基、3,3-ジメチルヘキシル基、3,4-ジメチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、2,2,3-トリメチルペンチル基、2,2,4-トリメチルペンチル基、2,3,3-トリメチルペンチル基、2,3,4-トリメチルペンチル基、2-メチル-3-エチルペンチル基、3-メチル-3-エチルペンチル基、及び2,2,3,3-テトラメチルブチル基、n-ノニル基、n-デシル基、ウンデシル基、ラウリル基、及びステアリル基が挙げられる。
【0042】
化学式(1)中、Aがグアニジン誘導体のアンモニウムイオンである場合、下記化学式(6)で表される構造を有することが好ましい。
【0043】
【化18】
【0044】
化学式(6)中、R16及びR17は同一又は異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1~8の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基である。
【0045】
化学式(6)中、R16及びR17のアルキル基として具体的に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、及びn-オクチル基が挙げられる。
【0046】
は、化学式(2)~(6)で表されるカチオンの何れかでもよいし、複数種が混合されていてもよい。
【0047】
ジスアゾ-モノアゾ鉄錯体は、所定数の炭素数を有するジアルキルアミノ基(化学式(1)中の-NR)及び電子吸引性基(同-R)を有するジスアゾ色素と、同じく電子吸引性基(同-R及び/又は-R)を有するモノアゾ色素とを含む非対称型の構造を有していることにより、深色化して可視光域の波長を吸収する。そのため、このアゾ鉄錯体を着色剤として含む筆記具用インキ組成物は実用に充分な深い黒色を呈する。
【0048】
さらに、着色剤がジスアゾ-モノアゾ鉄錯体の他に、化学式(7)で表されるモノアゾ-モノアゾ鉄錯体、及び/又は化学式(8)で表されるジスアゾ-ジスアゾ鉄錯体を含む場合、着色剤中のジスアゾ-モノアゾ鉄錯体、モノアゾ-モノアゾ鉄錯体、及びジスアゾ-ジスアゾ鉄錯体のモル比を適切な範囲とすることにより、着色剤の黒色度、溶解性、及び溶解安定性を適宜にかつ任意に調節することができる。
【0049】
これらのモル比は、特定波長、例えば波長254nmで高速液体クロマトグラフィーにより測定したときに得られたクロマトグラム中のピーク面積比として表すことができる。具体的に、ジスアゾ-モノアゾ鉄錯体:モノアゾ-モノアゾ鉄錯体:ジスアゾ-ジスアゾ鉄錯体=20~70:5~80:0~50であることが好ましく、20~65:5~80:0~50であることがより好ましく、20~55:20~80:0~15であることがさらに好ましい。
【0050】
これらアゾ鉄錯体は、カチオンとして炭素数3~37の直鎖及び/又は分岐鎖のアルキル基を有する一価のアンモニウムイオン並びにグアニジン誘導体のアンモニウムイオンから選ばれる少なくとも何れかを有することにより、アゾ鉄錯体アニオンのアルコール系溶剤やグリコール系溶剤に対して優れた溶解性を有しており、時間が経過しても溶剤中で析出したり、沈降したりしないため、筆記具用インキ組成物、特に油性マーキングペン用インキ組成物に含ませるのに好適である。さらにこれらアゾ鉄錯体は環境や人体に有害なクロムのような重金属を含んでいないので、筆記具用インキ組成物は環境保全に資することができ、かつ人体への安全性を確保できる。
【0051】
ジスアゾ-モノアゾ鉄錯体、モノアゾ-モノアゾ鉄錯体、及び/又はジスアゾ-ジスアゾ鉄錯体の含有量は、筆記具用インキ組成物全量に対して0.1~30質量%であることが好ましく、0.5~25質量%であることがより好ましく、1~20質量%であることがさらに好ましい。含有量が0.1質量%未満であると筆記具用インキ組成物の着色力、発色性が不十分となる。30質量%を超えると筆跡にカスレが生じてしまう。
【0052】
着色剤を得るのに、次の第1工程~第5工程を有する製造方法を採用することができる。
第1工程:ジアゾカップリング反応を用いて化学式(9)で表されるジスアゾ色素を得る工程。
第2工程:ジアゾカップリング反応を用いて化学式(10)で表されるモノアゾ色素を得る工程。
第3工程:前記ジスアゾ色素と前記モノアゾ色素との混合物を鉄錯体化しアゾ鉄錯体を得る工程。
第4工程:アゾ鉄錯体のカチオンを交換・調製する工程。
第5工程:アゾ鉄錯体を濾過・洗浄・乾燥・粉砕する工程。
この製造方法によれば、高純度の着色剤を得ることができる。以下、各工程を詳しく説明する。
【0053】
第1工程はアゾ鉄錯体においてジスアゾ配位子となり得る前記ジスアゾ色素を得る工程である。
【0054】
(1-1:モノアゾ化合物の合成)
まず下記化学反応式(11)に示すように、アニリン誘導体を公知の方法でジアゾ化し、常法により3-アミノフェノール誘導体とジアゾカップリング反応を行ってジスアゾ色素の中間体であるモノアゾ化合物を得る。
【化19】
(式(11)中、R及びRは化学式(1)と同一である。)
【0055】
化学反応式(11)の反応において、具体的に、電子吸引性基を有するアニリン誘導体を塩酸で希釈調製した水溶液と、亜硝酸ナトリウム(例えば40質量%調製水溶液)とをイオン交換水又はイオン交換水-低級アルコール混合溶媒に加え、0~5℃の温度にて1~3時間攪拌することにより前記アニリン誘導体をジアゾ化し、ジアゾ化溶液を得る。過剰な亜硝酸を、スルファミン酸等で分解する。
【0056】
次いで無置換又はアルキル基又はアルコキシ基を有する3-アミノフェノール誘導体を、塩酸で希釈調製された水溶液に溶解又は細かく分散させ、その溶液にジアゾ化溶液を滴下し、親水性溶媒中又は水-低級アルコール系溶媒中にて、室温又は低温で数時間攪拌しながら、ジアゾカップリング反応を行ってモノアゾ化合物を含む溶液を得る。モノアゾ化合物を濾過して水洗し、モノアゾ化合物のウェットケーキを得る。次工程であるジスアゾ色素の合成工程に、このウェットケーキを乾燥してから用いてもよく、ウェットケーキのまま用いてもよく、またモノアゾ化合物含有溶液のまま用いてもよい。
【0057】
(1-2:ジスアゾ色素の合成)
上記の合成にて得られたモノアゾ化合物を、下記化学反応式(12)に示すように公知の方法でジアゾ化し、特定のジアルキルアミノ基を有するフェノール誘導体と、常法によりジアゾカップリング反応を行い、ジスアゾ色素を含む溶液を得る。
【化20】
(式(12)中、中、R~Rは化学式(1)と同一である。)
【0058】
化学反応式(12)の反応において、具体的に、前記1-1の合成で得られたモノアゾ化合物を塩酸で希釈調製した水溶液と、亜硝酸ナトリウム(例えば40質量%調製水溶液)とをイオン交換水又はイオン交換水-低級アルコール混合溶媒に加え、0~5℃の温度にて1~3時間攪拌することによりモノアゾ化合物をジアゾ化し、ジアゾ化溶液を得る。過剰な亜硝酸を、スルファミン酸等で分解する。
【0059】
次いで前記ジアルキルアミノ基を有するフェノール誘導体を、アルカリ水溶液に溶解又は細かく分散させ、その溶液にジアゾ化溶液を滴下し、親水性溶媒中又は水-低級アルコール系溶媒中にて、室温又は低温で数時間攪拌しながら、ジアゾカップリング反応を行ってジスアゾ色素を含む溶液を得る。ジスアゾ色素を濾過して水洗し、ジスアゾ色素のウェットケーキを得る。後の工程である鉄錯体化工程に、このウェットケーキを乾燥してから用いてもよく、ウェットケーキのまま用いてもよく、またジスアゾ色素含有溶液のまま用いてもよい。
【0060】
第2工程はアゾ鉄錯体においてモノアゾ配位子となり得る前記モノアゾ色素を得る工程である。
【0061】
先ず、2-アミノフェノール誘導体を公知の方法でジアゾ化してジアゾ化溶液を得る。具体的に、電子吸引性置換基及び水素原子又はアルキル基を有する2-アミノフェノール誘を塩酸で希釈調製した水溶液と、亜硝酸ナトリウム(例えば40質量%調製水溶液)とをイオン交換水又はイオン交換水-低級アルコール混合溶媒に加え、0~5℃の温度にて1~3時間攪拌することにより2-アミノフェノール誘導体をジアゾ化し、ジアゾ化溶液を得る。過剰な亜硝酸を、スルファミン酸等で分解する。
【0062】
次いで下記化学反応式(13)に示すように、前記のようにして得られたジアゾ化溶液中のジアゾ化合物と水素原子又はアルキル基を有する2-ナフトール誘導体とを常法によりジアゾカップリング反応させてモノアゾ色素を得る。
【化21】
(式(13)中、R~Rは化学式(1)と同一である。)
【0063】
化学反応式(13)の反応は、具体的に次のようにして行われる。2-ナフトールを、アルカリ水溶液に溶解又は細かく分散させ、その溶液にジアゾ化溶液を滴下し、親水性溶媒中又は水-低級アルコール系溶媒中にて、室温又は低温で数時間攪拌しながら、ジアゾ化カップリング反応を行ってモノアゾ色素を含む溶液を得る。モノアゾ色素を濾過して水洗し、モノアゾ色素のウェットケーキを得る。次工程である鉄錯体化工程に、このウェットケーキを乾燥してから用いてもよく、ウェットケーキのまま用いてもよく、またモノアゾ色素含有溶液のまま用いてもよい。
【0064】
第3工程は、前記工程で得られたジスアゾ色素及びモノアゾ色素と鉄化剤とを鉄錯体化反応させることにより、アゾ鉄錯体のXアニオン体を得るという鉄錯体化工程である。
【0065】
第1工程で得られたジスアゾ色素と、第2工程で得られたモノアゾ色素とを、所定のモル比で仕込み、混合して混合色素を得る。この混合色素を溶媒に分散又は溶解させ、更に混合色素に対して所定の当量数の鉄化剤を加えて80~140℃で1~5時間加熱・攪拌する。それにより下記化学反応式(14)に示すように、ジスアゾ-モノアゾ鉄錯体、モノアゾ-モノアゾ鉄錯体、ジスアゾ-ジスアゾ鉄錯体のXアニオン体の混合物を得る。
【化22】
(式(14)中、R~Rは化学式(1)と同一であり、Xは酸又はアルカリ由来の水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属などの任意のカチオンである。)
【0066】
ジスアゾ色素とモノアゾ色素との仕込混合比はモル比で2:8~8:2であることが好ましく、具体的に2:8、3:7、4:6、5:5、6:4、7:3、及び8:2の仕込混合比が例示される。中でもジスアゾ色素:モノアゾ色素=2:8~5:5とすると、高い黒色度を有し、かつ筆記具用インキ組成物に含まれる溶剤に対して高い溶解性を示すので好ましい。
【0067】
鉄錯体化工程に用いられる鉄化剤として、硫酸第二鉄、硫酸第一鉄、塩化第二鉄、塩化第一鉄、硝酸第二鉄、酢酸鉄、及び乳酸鉄が挙げられる。鉄化剤の量は、ジスアゾ色素とモノアゾ色素との合計当量数に対して、鉄化剤の当量数が1/2~2であることが好ましく、1/2~2/3であることがより好ましい。
【0068】
鉄錯体化工程に用いられる溶媒として、水、水-有機溶剤混合溶液、及び有機溶剤が挙げられ、中でも水-有機溶剤の混合溶媒であることが好ましい。有機溶剤として、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、スルホキシド系溶剤、及び芳香族炭化水素系溶剤が挙げられ、中でもアルコール系溶剤、グリコール系溶剤、アミド系溶剤、及びスルホキシド系溶剤などが好ましい。
【0069】
好ましい有機溶剤として具体的に、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、アミルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、及びジアセトンアルコールのようなアルコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノエチルエーテルのようなグリコールのアルキルエーテル類;エチレングリコールモノアセテート、及びプロピレングリコールモノアセテートのようなグリコールのアセテート類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びブタンジオールのようなグリコール類等のグリコール系溶剤;N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-エチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤が挙げられる。スルホキシド系溶剤としては、スルホラン、3-メチルスルホラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。中でもアミド系溶剤が好ましい。
【0070】
この第3工程において、第1工程で得られたジスアゾ色素と第2工程で得られたモノアゾ色素とを混合した後に鉄化反応を行う例を示したが、第3工程はこれに限らず、溶媒にジスアゾ色素又はモノアゾ色素を加えてからモノアゾ色素又はジスアゾ色素を順次加え、さらに鉄化剤を加えて3価の鉄との鉄化反応を行ってもよく、また溶媒にジスアゾ色素又はモノアゾ色素を加えてから鉄化剤を加えて鉄化反応を行った後にモノアゾ色素又はジスアゾ色素を加え、必要に応じて鉄化剤を更に加えて3価の鉄との鉄化反応を行ってもよい。この場合、先に鉄化反応を経たアゾ色素の余剰分と後に加えた別なアゾ色素とが鉄化反応によってアゾ鉄錯体を生成する。
【0071】
また、ジスアゾ色素及びモノアゾ色素は夫々一種のみを用いてもよく、互いに異なる置換基を有していたり、置換基の結合位置が異なっていたりする複数種を混合して用いてもよい。例えば一種のジスアゾ色素に対して二種のモノアゾ色素を混合して、又は二種のジスアゾ色素に対して一種のモノアゾ配位子を混合して用いることが挙げられる。
【0072】
鉄錯体化工程において、使用する溶媒の種類に適した温度で、加熱(還流撹拌を含む)しながら行うことが好ましい。また、反応促進剤やpH調整剤のような添加剤を用いてもよい。
【0073】
第4工程は、アゾ鉄錯体のカチオンを変更・調整する工程は、アンモニウム化剤を用いて、第3工程で得られたアゾ鉄錯体の任意のカチオンを、アルキル基を有する一価のアンモニウムイオン及び/又はグアニジン誘導体のアンモニウムイオンに交換するというイオン交換工程である。
【0074】
このカチオン交換反応により、下記化学反応式(15)に示すように、例えば化学式(2)で表される一価のアンモニウムイオンが導入されたアゾ鉄錯体を得る。
【化23】
(式(15)中、R~Rは化学式(1)と同一であり、R~R10は化学式(2)と同一であり、Xは任意のカチオンである。)
【0075】
アンモニウム化剤として、例えば、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ステアリルアミン及びN,N-ジメチルステアリルアミンなどの炭素数3~37の直鎖若しくは8,8-ジメチルノナン-1-アミン及び9,9-ジメチルデカン-1-アミンなどの分岐鎖のアルキル基を有するアミン化合物又は1,3-ジフェニルグアニジン及び1,3-ジ-O-トリルアニジンなどのグアニジン化合物が挙げられる。アンモニウム化剤は一種のみを用いても複数種を混合して用いてもよい。
【0076】
この第4工程におけるカチオン交換反応は、第3工程における鉄錯体化反応と同一の反応系で同時に又は順次に行うことができる。また第4工程は、インク組成物を調製する際、有機溶剤とともにアンモニウム化剤を添加することによって行ってもよい。
【0077】
第5工程は、第4工程の後必要に応じて行われ、濾過工程、洗浄工程、乾燥工程、及び粉砕工程を任意に有する。
【0078】
濾過工程を行ってもよい。濾過工程は、第4工程で得られたアゾ鉄錯体を含む反応液を、濾過によってアゾ鉄錯体の固形物と溶媒とに分離して、アゾ鉄錯体のウェットケーキを得る工程である。濾過方法として、濾紙濾過、袋濾過、及び遠心分離のような重圧濾過法;ヌッチェ、ムーアフィルター、ディスクフィルター、ドラムフィルター、及びオリバーフィルターのようなフィルターを用いた真空濾過法;フィルタープレス、密閉式リーフフィルター、密閉式多段フィルターのような加圧濾過法が挙げられる。
【0079】
必要に応じて、濾過工程の後、洗浄工程を行ってもよい。洗浄液によってアゾ鉄錯体のウェットケーキを充分に洗浄する。洗浄液として、水及び有機溶媒が挙げられ、水が好ましい。このウェットケーキを、そのまま次の工程の中間体として、用いてもよい。
【0080】
必要に応じて、洗浄工程の後、アゾ鉄錯体のウェットケーキを乾燥させる乾燥工程を行ってもよい。乾燥した塊状のアゾ鉄錯体を、所望の粒径となるように公知の粉砕機を用い、解砕または粉砕する。
【0081】
筆記具用インキ組成物に含まれるアルコール系溶剤及び/又はグリコール系溶剤の含有量は、筆記具の種類や、染料・顔料の種類及び含有量に応じて適宜設定されるが、筆記具用インキ組成物全量に対して、20~97質量%であることが好ましく、30~95質量%であることがより好ましい。
【0082】
アルコール系溶剤として、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、1-ペンタノール、イソアミルアルコール、sec-アミルアルコール、3-ペンタノール、tert-アミルアルコール、n-ヘキサノール、メチルアミルアルコール、2-エチルブタノール、n-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、n-オクタノール、2-オクタノール、2-エチルヘキサノール、3,5,5-トリメチルヘキサノール、ノナノール、n-デカノール、ウンデカノール、n-デカノール、トリメチルノニルアルコール、テトラデカノール、ヘプタデカノール、シクロヘキサノール、2-メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、2-フェノキシエタノールなどが挙げられる。
【0083】
グリコール系溶剤として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコールのような分子内に2個以上の炭素、2個以上のヒドロキシ基を有する多価アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、フェニルグリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコール類のモノアルキルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート等のグリコール類のモノアセテートなどが挙げられる。
【0084】
特に好ましい溶剤として、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられ、これらの溶剤は単独あるいは混合して使用することができる。
【0085】
また、前記アルコール系溶剤及び/又はグリコール系溶剤に加えて、例えば、ジエチルエーテル及びターシャリブチルメチルエーテル等のエーテル系溶剤、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、乳酸エチル、酢酸プロピル及び酢酸ブチル等のエステル系溶剤、N,N―ジメチルホルムアミド及び、N,N―ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤、トルエン、キシレン及びエチルベンゼン等の芳香族炭化水素系有機溶剤を適宜添加することができる。これらは単独あるいは混合して用いてもよい。特にエタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ベンジルアルコールなどの低毒性のアルコール系溶剤及び/又はフェニルグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどの低毒性のグリコール系溶剤に、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトンなどの低毒性の溶剤を適宜添加・混合して、安全性および環境負荷を考慮したインキ組成物とすることが好ましい。
【0086】
筆記具用インキ組成物に含まれる樹脂によって、インキの定着性向上、筆跡の裏写り防止、染料・顔料の溶解性及び分散性向上、並びに粘度調整される。この樹脂は、インキ組成物に含まれるエタノール系溶剤及び/又はグリコール系溶剤に溶解するものである。樹脂の含有量は、粘度調整及び書き味の調整の観点から、筆記具用インキ組成物全量に対して、0.50~35質量%であることが好ましく、1.0~20質量%であることがより好ましい。含有量が0.50質量%未満であると筆記具用インキ組成物の粘度が不足して筆跡が滲み易くなったり、ボールペンのペン先が著しく摩耗したりする。一方、35質量%を超えると筆記具用インキ組成物に含まれるべき溶剤や染料・顔料が不足したり、筆跡にカスレを生じ書き味に悪影響を及ぼしたりする。
【0087】
このような樹脂として、ロジン系樹脂、テルペンフェノール樹脂、ケトン樹脂、アルキルフェノール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂を単独で用いてもよいし、適宜他の樹脂と混合して使用することも可能である。例えば、ロジン系樹脂としてガムロジンWW(荒川化学工業社製)、またテルペンフェノール樹脂として、マイティエースK-125、マイティエースG-125(ヤスハラケミカル社製)、YSポリスター90-L、YSポリスターN-125が挙げられる。ケトン樹脂としては、ハイラック110H、テゴバリプラスSK(エボニック社製)、アルキルフェノール樹脂として、タマノル510(荒川化学工業社製)、ヒタノール1501(日立化成)、YSポリスターT-115(ヤスハラケミカル社製)、ポリビニルブチラール樹脂としてエスレックBL-1、エスレックBL-2(積水化学工業社製)が使用できる。
【0088】
本発明の筆記具用インキ組成物は、黄色、橙色、赤色、青色、紫色、緑色、黒色などの色相を示すその他の染料及び/又は顔料などの着色剤を含んでいてもよい。
【0089】
その他の染料として、公知の染料インキ組成物に用いられる直接染料、酸性染料、塩基性染料、媒染染料、酸性媒染染料、造塩染料、酒精溶性染料、アゾイック染料、硫化染料、硫化建染染料、建染染料、分散染料、油溶性染料、食用染料、及び金属錯塩染料が挙げられる。これらの染料として、アゾ系染料、アントラキノン系染料、オキサジン系染料、フタロシアニン系染料、キナクリドン系染料、キノフタロン系染料、トリフェニルメタン系染料、ペリノン系染料、及びペリレン系染料などが挙げられる。
【0090】
このような染料は、市場において入手可能な造塩染料が好ましく、例えば、
VALIFAST(登録商標) YELLOW 1101、1103、1109、3108、3120、3150、3170、3180、4120、4121;
VALIFAST ORANGE 1201、2210、3208、3209、3210;
VALIFAST RED 1308、1320、1364、1388、2303、2320、3304、3306、3311、3312、3320;
VALIFAST PINK 2310N、2312;
VALIFAST BROWN 2402、3402、3405;
VALIFAST GREEN 1501;
VALIFAST BLUE 1605、1613、1621、1631、2620、2670、2680;
VALIFAST VIOLET 1701、1702、1704、1705;
VALIFAST BLACK 1807、1821、3804、3806、3808、3810、3820、3830、3840、3870、3877;
OIL BLUE 613;
OIL PINK 312(以上、オリヱント化学工業社製)
C.I.Basic Red 1とアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸との造塩染料;
C.I.Basic Red 1:1とアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸との造塩染料;
C.I.Basic Red 2と有機酸との造塩染料;
C.I.Basic Yellow 1と有機酸との造塩染料;
C.I.Basic Yellow 2と有機酸との造塩染料;
C.I.Basic Yellow 51と有機酸との造塩染料;
C.I.Basic Yellow 52と有機酸との造塩染料;
C.I.Acid Black 51と有機アミンとの造塩染料;
C.I.Acid Black 52と有機アミンとの造塩染料が挙げられる。
【0091】
その他の染料の含有量は、筆記具用インキ組成物全量に対して0.01~30質量%であることが好ましい。
【0092】
顔料は、二酸化チタン顔料のような無機顔科;
タルク、シリカ、アルミナ、マイカ、アルミナシリケートなどの体質顔科;
アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン顔料、キナクドリン顔料、イソインドリノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、各種レーキ顔料などの有機顔料;
蛍光顔料、パール顔料、金色、銀色等のメタリック顔料;
黒鉛のような黒色顔科などが挙げられる。
【0093】
黒鉛以外の黒色顔料として、プリンテックス3、25、30、35、40、45、55、60、75、80、85、90、95、300、スペシャルブラック4、5、100、250、550(以上、エボニックデグサジャパン社製);
三菱カーボンブラック#2700、#2650、#2600、#2400、#2350、#2300、#2200、#1000、#990、#980、#970、#960、#950、#900、#850、#750、#650、#260、#95#52、#50、#47、#45、#45L、#44、#40、#33、#32、#30、#25、#20、#10、#5、CF9、MCF88、MA600、MA77、MA7、MA11、MA100、MA100R、MA100S、MA220、MA230(以上、三菱化学社製);
トーカブラック#8500/F、#8300/F、#7550SB/F、#7400、#7360SB/F、#7350/F、#7270SB、#7100/F、#7050(以上、東海カーボン社製)などのカーボンブラックや、
ダイヤモンドブラックN(玉億色材社製)などのアニリンブラック、ボーンブラック(三重カラーテクノ社製)、及び鉄化ブラックKN-320(日本鉄化社製)などの鉄黒が挙げられる。
【0094】
顔料の中でも、潤滑性を有する黒色顔料として、黒鉛が好ましく、人造黒鉛及び/又は天然黒鉛を使用でき、必要に応じて鱗片上黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛などの性状と大きさのものを使用できる。
【0095】
青色顔料として、例えば、C.I.Pigment Blue 2、9、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、28、29、36、60、68、76、80が挙げられる。
【0096】
緑色顔料として、例えば、C.I.Pigment Green 7、36、37が挙げられる。
【0097】
紫色顔料として、例えば、C.I.Pigment Violet 19、23が挙げられる。
黄色顔料の具体的な例として、例えばC.I.Pigment Yellow 1、3、12、13、14、16、17、34、42、55、73、74、79、81、83、93、94、95、97、104,109、110、111、120、128、133、136、138、139、147、151、154、155、167、173、174、175、176、180、185、191、194、213等が挙げられる。
赤味の黄色(オレンジ色)顔料の具体的な例として、C.I.Pigment Orange 5、13、16、34、36、38、43、62、68、72、74等が挙げられる。
赤色顔料の具体的な例として、C.I.Pigment Red 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、25、30、31、32、37、38、39、40、41、42、48、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、49:3、50、50:1、50:2、50、52、52:1、52:2、52:3、53:1、53:2、54、55、56、57、57:1、57:2、58、58:1、58:2、58:3、58:4、59、60、60:1、101、104、112、122、144、146、149、166、170、175、176、177、179、184、185、187、188、202、207、208、209、210、211、213、214、242、253、254、255、256、257、264、266、268、270、272等が挙げられる。
【0098】
これら顔料を単独で用いてもよく、また混合したものを用いてもよい。
【0099】
顔料は、溶剤に溶解され難く、溶剤中で分散したときに30nm~700nmの平均粒径を有するものであることが好ましい。顔料の含有量は、筆記具用インキ組成物全量に対して0.5~25質量%であることが好ましく、0.5~20質量%であることがより好ましい。
【0100】
必要に応じて無機顔料の粉末や、スチレン、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタアクリル酸、メタアクリル酸エステル、アクリルニトリル、オレフィンのようなモノマーを重合して得られる樹脂エマルション、筆記具用インキ組成物中で膨潤して不定形となる中空樹脂エマルション、又はこれらのエマルションが着色剤で染着された染着樹脂粒子である有機多色顔料を用いてもよい。
【0101】
顔料を分散させるために用いられる分散剤は、前記顔料の種類に応じて適宜選択される。具体的に、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリビニルエーテル、スチレン-マレイン酸共重合体、前記のようなケトン樹脂、ヒドロキシエチルセルロース及びその誘導体、スチレン-アクリル酸共重合体のような合成樹脂、並びにこれらのEO(エチレンオキサイド)付加物及びPO(プロピレンオキサイド)付加物、ポリエステルのアミン系オリゴマーなどが挙げられる。
【0102】
顔料は、ディゾルバーのような攪拌機により攪拌されることによって、また、ボールミルやロールミル、ビーズミル、サンドミル、ピンミルのような粉砕機により混合粉砕された後、遠心分離や濾過されることで粗大粒子、未溶解物、及び混入固形物が取り除かれていることが好ましい。
【0103】
本発明の筆記具用インキ組成物に含まれる着色剤は、アゾ鉄錯体に加えてさらにその他の染料や顔料などの着色剤を配合して配合着色剤としてもよい。配合着色剤の含有量は、筆記具用インキ組成物全量に対して、0.10~30質量%であることが好ましく、0.50~25質量%であることがより好ましい。含有量が0.10質量%未満であると、筆記具用インキ組成物の着色力、発色性が不十分となってしまう。一方、30質量%を超えると筆跡にカスレが生じてしまう。
【0104】
この配合着色剤を含む筆記具用インキ組成物は、筆記具に充填して使用された場合、筆記媒体に密着性の優れた筆跡を形成することができる。
【0105】
筆記具用インキ組成物は、必要に応じて潤滑剤、せん断減粘性付与剤、粘度調整剤、レベリング剤、防錆剤、防腐剤、表面張力調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、湿潤剤、分散助剤、ハジキ防止剤及びpH調整剤を含んでいてもよい。
【0106】
潤滑剤として、オレイン酸のような高級脂肪酸;長鎖アルキル基を有するノニオン系界面活性剤;ポリエーテル変性シリコーンオイル;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、N-アシルアミノ酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸トリエステル、アルキルリン酸エステル、アルキルエーテルリン酸エステル又はこれらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、アルカノールアミン塩のリン酸エステル系界面活性剤等が挙げられる。これらの潤滑剤は、単独又は複数が混合されたものであってもよい。潤滑剤を含む筆記具用インキ組成物は、ボールペンのボールチップのボール受け座の摩耗防止効果を発現する。
【0107】
前記潤滑剤に加えて、潤滑性をさらに向上させる助剤として微粒子が筆記具用インキ組成物に含まれていてもよい。この微粒子として、アクリル系、シリコーン系、ポリエチレン系の樹脂微粒子やアルミナ微粒子、シリカ微粒子が挙げられる。なかでも、球状のシリカ微粒子が好ましい。微粒子がボールチップのボール受け座とボールとの間隙に入り込むことにより、ボール受け座とボールとの金属接触が抑制されるので、潤滑性が向上する。
【0108】
せん断減粘性付与剤として、架橋型アクリル樹脂、架橋型アクリル樹脂のエマルションタイプ、架橋型N-ビニルカルボン酸アミド重合体又は共重合体、非架橋型N-ビニルカルボン酸アミド重合体又は共重合体非架橋型N-ビニルカルボン酸アミド重合体又は共重合体の水溶液、水添ヒマシ油、脂肪酸アマイドワックス、酸化ポリエチレンワックス等のワックス類、ステアリン酸アルミニウム、パルミチン酸アルミニウム、オクチル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム等の脂肪酸金属塩、ジベンジリデンソルビトール、デキストリン脂肪酸エステル、N-アシルアミノ酸系化合物、スメクタイト系無機化合物、モンモリロナイト系無機化合物、ベントナイト系無機化合物、ヘクトライト系無機化合物、シリカが挙げられる。せん断減粘性付与剤を含んでいることにより、ボールペンのボールとボールチップとの間隙から筆記具用インキ組成物が遺漏せず、またボールチップを上向き(正立状態)でボールペンが放置された場合に筆記具用インキ組成物が逆流しない。
【0109】
粘度調整剤として、前記のようなケトン樹脂、テルペン樹脂、アルキッド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドンのような合成高分子物質;グァーガム、ローカストビーンガムのような種子多糖類及びその誘導体;ザンサンガム、ウェランガム、ラムザンガム、のような微生物系多糖類及びその誘導体;カラーギナン、アルギン酸のような海藻多糖類及びその誘導体;タラガントガムのような樹脂多糖類;セルロース系樹脂;ピロリドン系樹脂が挙げられる。
【0110】
レベリング剤として、アセチレングリコール、アセチレンアルコール、及びシリコーン系界面活性剤が挙げられる。
【0111】
防錆剤として、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、サポニン、エチレンジアミン四酢酸、金属塩系化合物、及びリン酸エステル系化合物が挙げられる。
【0112】
防腐剤として、ベンゾイソチアザリン-3-オン、デヒドロ酢酸ナトリウム、イソチアゾロン、オキサゾリジン系化合物が挙げられる。
【0113】
表面張力調整剤として、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤が挙げられる。
【0114】
酸化防止剤として、ジブチルヒドロキシトルエン、ノルジヒドロキシトルエン、フラボノイド、ブチルヒドロキシアニソール、アスコルビン酸誘導体、α-トコフェロール、カテキン類が挙げられる。
【0115】
紫外線吸収剤として、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル5’-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、及びp-安息香酸-2-ヒドロキシベンゾフェノンが挙げられる。
【0116】
消泡剤として、ジメチルポリシロキサンのようなシリコーン系化合物、鉱物油、及びフッ素系化合物が挙げられる。
【0117】
湿潤剤として、グリセリン、ソルビタン脂肪酸エステル、多糖類、尿素、エチレン尿素又はこれらの誘導体が挙げられる。
【0118】
分散助剤として、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
【0119】
ハジキ防止剤として、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(ポリエーテル変性シリコーン)が挙げられ、例えば、BYK-302(ビックケミー・ジャパン株式会社製)、KF-6020(信越化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0120】
pH調整剤として水酸化ナトリウム、アルカノールアミン、アミン、アンモニウムのようなアルカリ化剤が挙げられる。
【0121】
筆記具用インキ組成物は、例えば、着色剤、溶剤、樹脂、及び必要に応じて潤滑剤等の添加剤を所定量配合し、ホモミキサーやディスパーのような攪拌機に投入して攪拌混合する製造方法により得られる。さらに必要に応じて、濾過や遠心分離によって粗大粒子を除去してもよい。このように製造された筆記具用インキ組成物は、ボールペンやマーキングペンに充填される。
【0122】
ボールペンの構造や形状は特に限定されないが、例えばボールを先端のボール受け座に装着したボールチップを先端部に接続させているインキ収容管が軸筒の内空に収容され、このチップが軸筒の先端から突き出ている構造を有しているボールペンを挙げることができる。インキ収容管の開口した基端から筆記具用インキ組成物が充填された後、基端の開口は逆流防止の液栓又は逆流防止体で塞がれる。ボールが筆記媒体上を転がることにより、ボールチップとボールとの間隙からボール表面に筆記具用インキ組成物が供給され、筆記媒体に染み込んで筆跡が形成される。なお軸筒やインキ収容管は、樹脂成形物や金属加工体である。
【0123】
マーキングペンの構造や形状は特に限定されないが、例えば軸筒の内空に、繊維束で形成されたインキ吸蔵体と、これに一体化したペン芯が軸筒の先端から突き出ている構造や、これに加えて軸筒の先端部に、繊維束で形成された櫛溝状のインキ流量調節部材を有しているマーキングペンを挙げることができる。筆記具用インキ組成物が、軸筒に充填されることにより、インキ吸蔵体に含浸される。ペン芯に筆記具用インキ組成物が供給され、繊維チップが紙のような筆記媒体にこすり付けられることにより、筆記具用インキ組成物が筆記媒体に染み込んで筆跡が形成される。なおペン芯は、繊維束製、フェルト製、又はプラスチック製を用いることができる。
【0124】
筆記具用インキ組成物は、ホーロー製、ガラス製、金属製、熱可塑性樹脂製、又は熱硬化性樹脂製のホワイトボードに用いられるマーキングペンに用いてもよい。この場合、筆記具用インキ組成物に剥離剤を含ませることが好ましい。この剥離剤として、カルボン酸エステル類、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤が挙げられる。好適に用いられる剥離剤として具体的に、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルの硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル及びこれらの塩、脂肪族二塩基酸エステル、脂肪族一塩基酸エステル、ポリアルキレングリコールエステルが挙げられる。これらの剥離剤は、単独でも、複数を混合しても用いることができる。
【0125】
また、本発明の筆記具用インキ組成物は布に筆記すると高い洗濯堅牢性を示すことができる。この洗濯堅牢性は、例えば、以下のような試験で評価することができる。
1.ポリエステル生地を約5cm×7cmに裁断する。
2.裁断したポリエステル生地の中心部分に作成したインクを充填したペンで約1cm×1cmの図形を描き、室温で1晩乾燥する。
3.図形部分のOD値を測定する。
4.500mlビーカーにお湯約500ml入れ、洗剤2.5gを攪拌しながら投入し、約60℃となったら試験片を入れ、30分攪拌を続ける。
5.攪拌を止めて試験片を取り出し、流水ですすぎ、水分を取って、50℃の乾燥機で約15分乾燥する。
6.図形部分のOD値を測定する。
7.4~6の操作をもう1度繰り返す。
【0126】
本発明の筆記具用インキ組成物は、上記の工程1~6を含む1回洗濯堅牢性試験、又は上記工程1~7を含む2回洗濯堅牢性試験を行ったポリエステル製試験片の図形部分のOD値を、洗濯試験前のOD値で除した残存率が78~96%である。このため一般家庭での常温の水で複数回洗濯してもインキの色落ちが少なく、筆記線を鮮明に視認し続けることができる。
【0127】
即ち、本発明の筆記具用インキ組成物は、筆記具用のインキとして用いた場合、インキを吸収し易い紙などの筆記媒体やインキを吸収し難いプラスチックフィルムなどの筆記媒体に対して強固に密着して耐水性の筆跡を形成できるだけでなく、更に、天然繊維や合成繊維の1種又は2種以上から形成された織布、不織布などの布からなる繊維質の筆記媒体に対して、洗濯堅牢性に優れた筆跡を形成することができる。そのため、この筆記具用インキ組成物を油性マーキングペンに適用して、何度も繰り返し洗濯して使用する頻度が高い、例えば、児童の衣服、ハンカチや肌着類、工場での作業服など、日常の衣服の布に筆記し、その布を複数回洗濯した後でも、筆跡が色落ちしたり、視認できなくなるのを回避することができる。このような特性を示す詳細なメカニズムは必ずしも明らかではないが、以下の様に推察される。即ち、布帛は、洗剤含有洗浄液(界面活性剤含有洗浄液)中で汚れが落とされる。この様な布帛は、例えば、綿であると、漂白によって生じたカルボキシル基によって負に帯電し、レーヨン、ビニロン、ポリエステル、ポリアクリロニトリルであると、カルボキシル基の解離によって負に帯電する。また、羊毛、絹、ナイロンは両性繊維であるが、等電点がpH3~5付近となっており、pH7の中性では負に帯電している。一方、化学式(1)で示されるジスアゾ-モノアゾ鉄錯体は、重金属の鉄を含み分子量の大きいジスアゾ-モノアゾ鉄錯アニオンと、その対イオンのカチオンとからなる。このカチオンは、有機系のアンモニウムイオンであり、布帛の負電荷に引き寄せられつつ、インキ層中で共存する樹脂と有機基同士が馴染んで安定化しているため、インキ層から離脱し難くなっている。対応する対イオンである前記ジスアゾ-モノアゾ鉄錯アニオンは、この離脱し難くなっているカチオンと静電作用により互いに引きつけ合いつつ、鉄に配位しているジスアゾ配位子・モノアゾ配位子が、共存する樹脂に溶解し易いことから、インキ層から脱離し難くなっており、その結果、洗濯によっても色落ちしないものと推察される。なお、化学式(7)で示されるモノアゾ-モノアゾ鉄錯体、及び化学式(8)で示されるジスアゾ-ジスアゾ鉄錯体についても同様である。
【実施例0128】
以下、本発明を適用する実施例と、本発明を適用外の比較例とについて詳細に説明する。
【0129】
(合成例1-1:ジスアゾ色素D-1の合成)
p-アミノベンゾニトリル118.0g(1.0mol)と35%塩酸339gをイオン交換水592.0gに加え、氷浴下で-3℃まで冷却し、これに40%亜硝酸ナトリウム水溶液178gを徐々に加え、ジアゾ化反応を行い、ジアゾニウム塩溶液を得た。
【0130】
別のビーカーに2-アミノ-p-クレゾール123.0g(1.0mol)と35%塩酸104.0gをイオン交換水412gに加え、溶解させた。これに1-ブタノール4gと氷140gを加えて2℃まで冷却し、ここへ先に調製したジアゾニウム塩溶液を徐々に滴下した。20%水酸化ナトリウム水溶液でpHを4.9に調整し、析出物を減圧濾過した。イオン交換水で洗浄し、下記化学式(16)で表されるモノアゾ化合物のウェットケーキ664gを得た。
【0131】
【化24】
【0132】
先に得たモノアゾ化合物のウェットケーキ304g(0.42mol)をイオン交換水402gに加え撹拌分散させた。そこに48%水酸化カリウム水溶液49gを徐々に加えた。30分間撹拌した後にイオン交換水126gと氷84gを加え、さらに30分撹拌した。撹拌終了後、40%亜硝酸ナトリウム水溶液75gを加えて5分間撹拌した。次に35%塩酸153gを、滴下ロートを用いて滴下した。滴下後、約1時間撹拌してジアゾニウム塩溶液を得た。
【0133】
別のビーカーにN,N-ジブチルアミノフェノール88g(0.40mol)と48%水酸化カリウム水溶液133gをメタノール1332gに加え、氷冷下で撹拌して溶解させた。ここへ先に得たジアゾニウム塩溶液を滴下して、12時間撹拌した。析出物を減圧濾過し、イオン交換水で洗浄を行い、409gのウェットケーキを得た。これを80℃で乾燥して下記化学式(17)で表されるジスアゾ色素D-1の163.6gを得た。
【0134】
【化25】
【0135】
(合成例1-2:モノアゾ色素M-1の合成)
5-ニトロ-2-アミノフェノール7.5g(0.05mol)と、35%塩酸13.6gとを、50.0gのイソプロパノールに加え溶解させ、氷浴下、40%亜硝酸ナトリウム水溶液8.0gを徐々に加え、ジアゾ化してジアゾニウム塩溶液を得た。
【0136】
別のビーカーに水200gを入れ、そこへ20%水酸化ナトリウム水溶液26.1gを加え、さらに2-ナフトール6.6gを加えて分散させた。この分散液に先に調製したジアゾニウム塩を滴下し、3時間反応させた。その後、pH2.8に調整して析出したモノアゾ化合物を濾過して水洗し、下記化学式(18)で表されるモノアゾ色素M-1のウェットケーキ82.5gを得た。
【0137】
【化26】
【0138】
(合成例1-3:アゾ系錯塩染料1の合成)
合成例1-1で得られたジスアゾ色素D-1のウェットケーキ乾燥物5.3g(0.011mol)と、合成例1-2で得られたモノアゾ色素M-1のウェットケーキ22.1g(含水率40%、0.043mol)とをN,N-ジメチルホルムアミド溶液120gに加え、55℃で1時間撹拌した(ジスアゾ色素:モノアゾ色素=2:8mol)。そこへ41%硫酸第二鉄水溶液12.4g(0.013mol)を滴下し、滴下終了後120℃まで昇温し3時間撹拌した。反応終了後、室温まで放冷し、そこへ20%水酸化ナトリウム水溶液9.0gを加えてpHを10.0に調整し、その反応液に5%tert-アルキル(C12~C14)一級アミン(ダウケミカル社製;商品名PRIMENE 81-R)水溶液103.6gを徐々に加え、40℃で1時間加熱撹拌した。その後、析出物を濾過、水洗、及び乾燥し、下記化学式(19)で表されるジスアゾ-モノアゾ鉄錯体、下記化学式(20)で表されるモノアゾ-モノアゾ鉄錯体、及び下記化学式(21)で表されるジスアゾ-ジスアゾ鉄錯体を含むアゾ系錯塩染料1を23.1g得た。
【0139】
【化27】
【0140】
【化28】
【0141】
【化29】
【0142】
(アゾ系錯塩染料の組成確認)
合成例1-3で得られたアゾ系錯塩染料1について、ジメチルホルムアミド10mlにアゾ系錯塩染料1を1mg溶解した溶液を測定試料として、下記に示す測定条件にて高速液体クロマトグラフィー分析を行い、得られたクロマトグラムにおけるピークの面積比より、アゾ系錯塩染料1中に含まれる上記化学式(19)で表されるジスアゾ-モノアゾ鉄錯体、上記化学式(20)で表されるモノアゾ-モノアゾ鉄錯体、及び上記化学式(21)で表されるジスアゾ-ジスアゾアゾ鉄錯体の相対的な存在比(モル比)を求めた。その結果、上記化学式(19)で表されるジスアゾ-モノアゾ鉄錯体:上記化学式(20)で表されるモノアゾ-モノアゾ鉄錯体:上記化学式(21)で表されるジスアゾ-ジスアゾアゾ鉄錯体のモル比は40:59:1であった。
[測定条件]
高速液体クロマトグラフィー分析器:Prominence((株)島津製作所製)
カラム:L-Column2 ODS(長さ250mm×内径4.6mm、粒径5μm;(一財)化学物質評価研究機構製)
カラム温度:40℃
移動相:
A液:テトラヒドロフラン(富士フイルム和光純薬社製HPLCグレード)/アセトニトリル(同社製)=3/2(体積/体積)
B液:超純水/10mMテトラエチルアンモニウム水溶液(waters社製)=500/7.5(体積/体積)
グラジエント:A液/B液 50:50 → 70:30(体積/体積)
検出器:PDA(Photo Diode Array)
測定波長:254nm(紫外線)
【0143】
(合成例2-1:ジスアゾ色素D-2の合成)
p-アミノベンゼンスルホンアミド172g(1.00mol)と35%塩酸271gとをイオン交換水600.0gに加え、氷浴下-3℃まで冷却した。これに40%亜硝酸ナトリウム水溶液179.3gを徐々に加えた。さらに尿素2.4g加えてジアゾ化反応を行い、ジアゾニウム塩溶液を得た。
【0144】
別のビーカーに2-アミノ-p-クレゾール123.4g(1.00mol)と35%塩酸125.0gをイオン交換水440gに加え、溶解させた。1-ブタノール4gと氷140gを加えて氷浴下2℃まで冷却し、ここへ先に調製したジアゾニウム溶液を徐々に滴下した。20%水酸化ナトリウム水溶液でpHを4.8に調整し、析出物を減圧濾過した。イオン交換水で洗浄し、下記化学式(22)で表されるモノアゾ化合物のウェットケーキ719.5gを得た。
【0145】
【化30】
【0146】
先に得たモノアゾ化合物のウェットケーキ700g(0.90mol)をイオン交換水700gに分散した後、48%水酸化ナトリウム水溶液82.7gを徐々に加え、1時間撹拌を行った。氷浴下で氷700gを加え、1℃まで冷却した後、40%亜硝酸ナトリウム水溶液162.0gを徐々に加えた。しばらく撹拌した後、氷を300g加え、そこに35%塩酸287.0gを徐々に加えて、室温で2時間撹拌してジアゾニウム塩溶液を得た。
【0147】
別のビーカーにN,N-ジブチルアミノフェノール193.2g(0.88mol)と48%水酸化ナトリウム水溶液217.5gをメタノール690gに加え、氷冷下で撹拌して溶解させた。ここへ先に得たジアゾニウム塩溶液を滴下して、12時間撹拌した。35%塩酸を用いて、pH4.0に調整した後35℃まで昇温し、1時間撹拌した。析出物を減圧濾過し、イオン交換水で洗浄を行い、441.1gのウェットケーキを得た。これを80℃で乾燥して、下記化学式(23)で表されるジスアゾ色素D-2の175.2gを得た。
【0148】
【化31】
【0149】
(合成例2-2:モノアゾ色素M-2の合成)
p-アミノフェノール-4-スルホンアミド 188.2g(1.00mol)と、35%塩酸312.5gとを、1000gのイオン交換水に加え溶解させ、氷浴下、40%亜硝酸ナトリウム水溶液175.9gを徐々に加え、ジアゾ化してジアゾニウム塩溶液を得た。
【0150】
別のビーカーに水1000gを入れ、そこへ20%水酸化ナトリウム水溶液600gを加え、さらに2-ナフトール144.2gを加えて分散させた。この分散液に先に調製したジアゾニウム塩を滴下し、3時間反応させた。その後、pH4~5に調整して析出したモノアゾ化合物を濾過して水洗し、ウェットケーキを得た。これを80℃で乾燥して下記化学式(24)で表されるモノアゾ色素M-2 308gを得た。
【0151】
【化32】
【0152】
(合成例2-3:アゾ系錯塩染料2の合成)
合成例2-1で得られたジスアゾ色素D-2の5.3g(0.011mol)と、合成例1-2で得られたモノアゾ色素M-1のウェットケーキ22.1g(含水率40%、0.043mol)とをN,N-ジメチルホルムアミド溶液120gに加え、55℃で1時間撹拌した(ジスアゾ色素:モノアゾ色素=2:8mol)。そこへ41%硫酸第二鉄水溶液12.4g(0.013mol)を滴下し、滴下終了後120℃まで昇温し3時間撹拌した。反応終了後、室温まで放冷し、そこへ20%水酸化ナトリウム水溶液9.0gを加えてpHを10.0に調整し、その反応液に5%tert-アルキル(C12~C14)一級アミン(ダウケミカル社製;商品名PRIMENE 81-R)水溶液103.6gを徐々に加え、40℃で1時間加熱撹拌した。その後、析出物を濾過、水洗、及び乾燥し、下記化学式(25)で表されるジスアゾ-モノアゾ鉄錯体、下記化学式(26)で表されるモノアゾ-モノアゾ鉄錯体、及び下記化学式(27)で表されるジスアゾ-ジスアゾ鉄錯体を含むアゾ系錯塩染料2を23.1g得た。
【0153】
【化33】
【0154】
【化34】
【0155】
【化35】
【0156】
合成例2-3で得られたアゾ系錯塩染料2について、合成例1-3と同様にして、アゾ系錯塩染料2中に含まれる上記化学式(25)で表されるジスアゾ-モノアゾ鉄錯体、上記化学式(26)で表されるモノアゾ-モノアゾ鉄錯体、及び上記化学式(27)で表されるジスアゾ-ジスアゾ鉄錯体の相対的な存在比(モル比)を求めた。その結果、上記化学式(25)で表されるジスアゾ-モノアゾ鉄錯体:上記化学式(26)で表されるモノアゾ-モノアゾ鉄錯体:上記化学式(27)で表されるジスアゾ-ジスアゾ鉄錯体のモル比は54:39:7であった。
【0157】
(合成例3-1:アゾ系錯塩染料3の合成)
合成例1-1で得られたジスアゾ色素D-1の8.2g(0.015mol)と、合成例2-2で得られたモノアゾ色素M-2の11.8g(0.035mol)と、尿素 3.6g(0.060)とをN,N-ジメチルホルムアミド溶液50gに加え、55℃で1時間撹拌した(ジスアゾ色素:モノアゾ色素=3:7mol)。そこへ41%硫酸第二鉄水溶液11.8g(0.013mol)を滴下し、滴下終了後120℃まで昇温し3時間撹拌した。反応終了後、90℃まで放冷した反応液を水200gが入ったビーカーへ投入した。そこへ5%tert-アルキル(C12~C14)一級アミン(ダウケミカル社製;商品名PRIMENE 81-R)水溶液100.0gを徐々に加え、35℃で1時間加熱撹拌した。その後、析出物を濾過、水洗、及び乾燥し、下記化学式(28)で表されるジスアゾ-モノアゾ鉄錯体、下記化学式(26)で表されるモノアゾ-モノアゾ鉄錯体、及び下記化学式(21)で表されるジスアゾ-ジスアゾ鉄錯体を含むアゾ系錯塩染料3を23.3g得た。
【0158】
【化36】
【0159】
【化37】
【0160】
【化38】
【0161】
合成例3-1で得られたアゾ系錯塩染料3について、合成例1-3と同様にして、アゾ系錯塩染料3中に含まれる上記化学式(28)で表されるジスアゾ-モノアゾ鉄錯体、上記化学式(26)で表されるモノアゾ-モノアゾ鉄錯体、及び上記化学式(21)で表されるジスアゾ-ジスアゾ鉄錯体の相対的な存在比(モル比)を求めた。その結果、上記化学式(28)で表されるジスアゾ-モノアゾ鉄錯体:上記化学式(26)で表されるモノアゾ-モノアゾ鉄錯体:上記化学式(21)で表されるジスアゾ-ジスアゾ鉄錯体のモル比は31:67:2であった。
【0162】
以上の合成例1-3で得られたアゾ系錯塩染料1、合成例2-3で得られたアゾ系錯塩染料2及び合成例3-1で得られたアゾ系錯塩染料3を着色剤として用いて、以下の実施例に従ってインキを調製した。
【0163】
(実施例1~6及び比較例1~3)
以下の表1に示す組成で以下の方法によって各インキを調製した。
【0164】
【表1】
【0165】
各インキ成分を密閉容器内で70℃~80℃に保ちながら3時間撹拌して溶解し、5μmメンブランフィルターで濾過してマーキングペン用インキを調製した。その後、以下の試験を行った。
【0166】
(筆記試験)
実施例1~6及び比較例1~3で得られたインキをフェルト製のペン芯を有するマーキングペンに適量充填し、評価用マーキングペンを作成した。作成した評価用マーキングペンで普通紙に筆記し、筆跡を観察して以下の3段階で筆記性を評価した。
評価基準
〇:カスレ無く筆記可能
△:筆記途中でカスレあり
×:筆記不可
また、筆記性を評価した後の筆跡を、綿棒で約200gの荷重で擦過し、筆跡の状態を観察して以下の3段階で密着性を評価した。
評価基準
〇:30回以上擦過しても筆跡に変化なし
△:筆跡が残るが、綿棒に着色がある
×:筆跡が部分的に剥離する
【0167】
(経時安定性)
実施例1~6及び比較例1~3のインキをそれぞれガラス瓶に入れ、密栓した後、50℃の恒温槽に4週間放置した。その後、ガラス瓶中のインキを目視にて析出物の有無について確認し、以下の3段階で評価した。
評価基準
〇:50℃経時4週間で析出物なし
△:50℃経時4週間で微量析出
×:50℃経時4週間で多量析出
【0168】
(安全性/環境適性)
実施例1~6及び比較例1~3のインキ中、クロムなどの規制対象となる重金属が含まれているのかについて以下のように評価した。
評価基準
〇:インキ中に規制対象となる重金属が含まれていない
×:インキ中に規制対象となる重金属が含まれている
【0169】
以上の試験の評価を表2に示す。
【0170】
【表2】
【0171】
表2に示す通り、実施例1~6で調製されたインキをそれぞれ充填した評価用マーキングペンは何れも優れた筆記性を有し、また普通紙に形成された筆跡は密着性を有していた。このことから、アゾ鉄錯体を含むインキ組成物を充填したマーキングペンは、実用的に充分な筆記性能を有することが明らかとなった。
【0172】
実施例1~6で調製されたインキをそれぞれ50℃の恒温槽に4週間放置しても何れも着色剤であるアゾ系錯塩染料と樹脂とはそれぞれ析出しなかったことから、これらインキに含まれるアゾ系錯塩染料及び樹脂はアルコール系溶剤及びグリコール系溶剤によく溶解され、経時安定性を有していることが分かった。
【0173】
実施例1~6で調製されたインキは、着色剤として比較的安全性の高いアゾ系錯塩染料を含んでおり、比較例1及び2で調製されたインキに含まれるクロムのような有害な金属を含んでいないため、安全性及び環境適性に優れている。
【0174】
以上のことから、本発明の筆記具用インキ組成物は、アルコール系溶剤及び/又はグリコール系溶剤に対し実用に充分に溶解し且つ良好な黒色を呈する染料を含有しており、有害な重金属を含まず且つ経時安定性を有する。
【0175】
(洗濯堅牢性試験)
洗濯堅牢性試験は、上記実施例4~6で調製したインキを充填したペンと、参考例としてVALIFAST BLACK 3830(オリヱント化学工業社製)を色材として使用したこと以外は、実施例4~6と同様にして調製したインキを充填したペンを用いた。また、比較例として市販の油性ペン(なまえ専科、トンボ鉛筆社製)を用いた。布帛としてはポリエステルであるサテン布とマルチファイバーテストクロス(中尾フィルター工業社製)を用いた。なお、マルチファイバーテストクロスとは、表5に記載のような17種類の繊維が交えられて織り込まれた布である。
【0176】
(サテン布を用いた洗濯堅牢性試験)
サテン布を約5cm×7cmに裁断した。裁断したサテン布の中心部分に、調製したインクを充填したペンで約1cm×1cmの図形を描き、室温で1晩乾燥し、図形部分のOD値(光学濃度)及び色彩評価基準としてのL*a*b*値について、それぞれ洗濯堅牢性試験前の初期値を測定した。
【0177】
次いで、500mlビーカーに熱湯を約500ml入れ、市販の洗濯洗剤(レークC)2.5gを攪拌しながら投入し、温度が約60℃となった時点でサテン布を入れ、30分間攪拌した。その後、攪拌を止めてサテン布を取り出し、流水ですすぎ、紙タオルで水分を取った後、50℃の乾燥機で約15分間乾燥し、1回目洗濯後の堅牢性試験として図形部分のOD値とL*a*b*値を測定した。更に、2回目洗濯後の堅牢性試験として、この操作をもう1度繰り返した。結果を表3に示す。
【0178】
【表3】
【0179】
また、1回目及び2回目洗濯後の堅牢性試験の残存率として、1回目及び2回目試験後のOD値を試験前のOD値で除した値(%)をそれぞれ表4に示す。
【0180】
【表4】
【0181】
表3及び表4に示す通り、本発明のアゾ染料錯体を含有するインキは市販のマーキングペンよりも洗濯堅牢性が高く、従来から洗濯堅牢性が高いとされているクロム錯体を着色剤とする参考例と同等の結果を示した。さらに、実施例4と実施例6のインキはクロム錯体を着色剤とする参考例よりも高い洗濯堅牢性を示した。
【0182】
(マルチファイバーテストクロスを用いた洗濯堅牢性試験)
マルチファイバーテストクロス(中尾フィルター工業社製)を長さ約3cmに裁断した。裁断したマルチファイバーテストクロスの中心部分の長さ約1cmの領域を、調製したインキを充填したペンで塗りつぶし、室温で1晩乾燥した。
【0183】
500mlビーカーに熱湯を約500ml入れ、市販の洗濯洗剤(レークC)2.5gを攪拌しながら投入し、温度が約60℃となった時点でマルチファイバーテストクロスを入れ、30分間攪拌した。その後、攪拌を止めて前記マルチファイバーテストクロスを取り出し、流水ですすぎ、紙タオルで水分を取り、50℃の乾燥機で約15分間乾燥した。塗りつぶした部分の色濃度を目視で確認し、ほとんど変化のないものを〇、少し色落ちがあるものを△、色落ちがあるものを×と判定した。結果を表5に示す。
【0184】
【表5】
(表中、トレロン、テトロン、テビロン、サラン、カネカロン、ボンネル、カシミロン、ベスロン、エクスランは登録商標)
【0185】
表5に示す通り、実施例4~6のインキは比較例である市販のインキよりも多くの種類の繊維に対して高い洗濯堅牢性を示した。また、参考例である洗濯堅牢性の高いクロム錯体を含むインキよりも多くの繊維に対して高い洗濯堅牢性を示した。特に実施例4及び実施例6のインキは多くの繊維に対して非常高い洗濯堅牢性を示した。
【0186】
以上より、本発明のアゾ鉄錯体染料を含有するインキはポリエステル生地に対して高い洗濯堅牢性を示し、また、多くの種類の繊維に対して既存のインキよりも高い洗濯堅牢性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0187】
本発明の筆記具用インキ組成物は、ボールペン用インキやマーキングペン用インキに好適に用いることができる。