(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167095
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】立位姿勢支持具
(51)【国際特許分類】
A61H 3/00 20060101AFI20241122BHJP
A45B 7/00 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
A61H3/00 A
A45B7/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024081371
(22)【出願日】2024-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2023082642
(32)【優先日】2023-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】523186586
【氏名又は名称】相川 孝之
(74)【代理人】
【識別番号】100096873
【弁理士】
【氏名又は名称】金井 廣泰
(72)【発明者】
【氏名】相川 孝之
【テーマコード(参考)】
4C046
【Fターム(参考)】
4C046AA23
4C046AA24
4C046AA29
4C046CC01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】立ち止まった立位姿勢の状態で安定して体を支えることができる形態の立位姿勢支持具を提供する。
【解決手段】支持具本体2と、支持具本体2の一端に設けられるグリップ部3と、を備えた立位姿勢支持具において、前記グリップ部3は、中央部33を隔てて互いに反対側に、一方の手で把持可能な第1の握り部31と、他方の手で把持可能な第2の握り部32とを備え、グリップ部3の第1の握り部31と第2の握り部32を把持した状態で体に接触させ、支持具本体2の下端を体の前方に接地することで、支持具本体2に寄りかかることが可能となっていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持具本体と、該支持具本体の一端に設けられるグリップ部と、を備えた立位姿勢支持具において、 前記グリップ部は、中央部を隔てて互いに反対側に、一方の手で把持可能な第1の握り部と、他方の手で把持可能な第2の握り部とを備え、 前記グリップ部の第1の握り部と第2の握り部を把持した状態で体に接触させ、前記支持具本体の下端を体の前方に接地することで、支持具本体に寄りかかることが可能となっていることを特徴とする立位姿勢支持具。
【請求項2】
前記支持具本体は、2点で接地する2つの脚部を有する構成となっている請求項1に記載の立位姿勢支持具。
【請求項3】
グリップ部の第1の握り部と第2の握り部は、中央部側から端部に向けて下向きに傾斜する構成となっている請求項1または2に記載の立位姿勢支持具。
【請求項4】
前記第1の握り部と第2の握り部の中央部と反対側の端部には、握った手の小指側の側面が当接するストッパ部が設けられている請求項3に記載の立位姿勢支持具。
【請求項5】
前記第1の握り部と第2の握り部の互いに反対側の端部間の長さを肩幅よりも狭い構成となっている請求項1ないし4のいずれかの項に記載の立位姿勢支持具。
【請求項6】
前記支持具本体には、グリップ部とは別に、前記支持部本体の下端を地面から浮かした状態で運搬可能の位置に、持ち手部を備えている請求項1ないし5のいずれかの項に記載の立位姿勢支持具。
【請求項7】
歩行用の杖として利用される請求項1ないし6のいずれかの項に記載の立位姿勢支持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立ち止まった状態でより掛かることができる立位姿勢支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、足腰に痛みや不安がある人が使用する杖として、グリップ部と支柱を備えた軽量のT字杖が知られている。
【0003】
しかし、疲れた時や足腰に急に痛みが出てくる場合がある。ところが、T字杖は、歩行を補助するもので、立ち止まった状態で、使用者を支えるようにはできていない。立ち止まって、杖をたよりに体を支えようとすると、体の側方に位置する杖に寄りかかることになり、体の左右のバランスがくずれ転倒しかねない。
【0004】
また、4点杖等の多脚構造の杖も知られているが、T字杖と同様に、立ち止まった状態で使用者を支えるようにはできていない。 一方、立ち止まった状態で休める杖としては、折り畳み式の椅子がついた杖が知られているが、重量が増大するとともに、いすの部分が嵩張るために、持ち運びが不便である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記した従来技術の問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、立ち止まった立位姿勢の状態で安定して体を支えることができる形態の立位姿勢支持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、支持具本体と、該支持具本体の一端に設けられるグリップ部と、を備えた立位姿勢支持具において、前記グリップ部は、中央部を隔てて互いに反対側に、一方の手で把持可能な第1の握り部と、他方の手で把持可能な第2の握り部とを備え、 前記グリップ部の第1の握り部と第2の握り部を把持した状態で体に接触させ、前記支持具本体の下端を体の前方に接地することで、支持具本体に寄りかかることが可能となっていることを特徴とする。
【0008】
本発明の立位姿勢支持具は、立ち止まった状態で休む場合には、支持具本体を体の前に位置させ、支持具本体の下端を体の少し前方に接地させる。そして、グリップ部の第1の傾斜部を片方の手で握り、第2の傾斜部を他方の手で握った状態で、グリップ部を体の一部、たとえば下腹部にあてがい、グリップ部を介して支持具本体に寄りかかるように前方に体重をかける。 そうすると、両足と支持具本体が三脚構成となり、両足、腰に作用する荷重が支持具本体に分散されて軽減される。
【0009】
また、グリップ部に体重をかけると、手からグリップ部に作用する荷重と、前方に位置する支持具本体の下端に作用する接地面からの反力とが偶力となって、グリップ部を体に密着させる方向のモーメントが作用し、グリップ部が体から離れにくい。一方、グリップ部を握った手に作用する反力は、手だけでなく、腕、肩、体幹に伝達され体全体で支持することができ、手や腕等に大きな負担がかからない。また、筋力が弱い人の場合、あまり強い力を支えることができないので、寄りかかる程度が自然と制限され、安全に使用することができる。
【0010】
さらに、体の重心が前方に移動しても、両足の接地部と支持具本体の接地部を結んだ三角形状で囲まれる範囲に位置することになり、体を安定して支えることができる。
【0011】
また、支持具本体は、2点で接地する2つの脚部を有する構成とすることができる。 脚部を2つとすることにより、杖の回転方向を、2つの脚部の接地部を結ぶ線を回転軸線とする1軸方向、すなわち、体の前後方向に制限することができるので、左右への倒れが規制され、左右のブレが防止される。また、支持具本体の中心軸回りの回転方向の動きも規制され、安定して体を支えることができる。
【0012】
グリップ部の第1の握り部と第2の握り部は、中央部側から端部に向けて下向きに傾斜する構成とすることができる。 このように、第1の握り部と第2の握り部を傾斜させると、手の構造上握りやすい形となり、力が入りやすい。
【0013】
また、第1の握り部と第2の握り部の中央部と反対側の端部には、握った手の小指側の側面が当接するストッパ部を設けることができる。 このようにすれば、寄り掛かった際に、手のずれを防止することができる。
【0014】
また、前記第1の握り部と第2の握り部の互いに反対側の端部間の長さを肩幅よりも狭い構成とすることができる。 このようにすれば、腕を伸ばしてグリップ部の第1の握り部及び第2の握り部を握った際に、肩、肘、手首の関節を結ぶ直線が、第1の握り部及び第2の握り部に対して直角方向となり、手を介して体重を第1の握り部および第2の握り部に効率的に作用させることができる。
【0015】
前記支持具本体には、グリップ部とは別に、前記支持部本体の下端を地面から浮かした状態で運搬可能の位置に、持ち手部を備えている。 このようにすれば、立位姿勢支持具を容易に持ち運び可能となる。
【0016】
また、この立位姿勢支持具は、歩行用の杖として利用することもできる。杖として利用する場合には、片手でグリップ部を握り、体の側方に位置させ、杖を反対側の体側の脚の動きに合わせて、接地して使用する。第1の傾斜部あるいは第2の傾斜部を握ってもよいし、他の部分を握ってもよい。 杖として利用することにより歩行を補助することができ、疲れた時には、立ち止まって、立位姿勢のままで、寄り掛かることにより、休憩することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の立位姿勢支持具によれば、グリップ部を介して支持具本体に寄りかかることで、立位姿勢の状態で体を支えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は本発明の実施形態1にかかる立位姿勢支持具を示すもので、
図1(A)は正面図、
図1(B)は側面図、(C)は上面図である。
【
図2】
図2は、
図1の立位姿勢支持具の使用状態を示すもので、
図2(A)は正面図、
図2(B)は側面図、
図2(C)は上面図である。
【
図3】
図3は、
図2(A)の状態をより具体的に示す図である。
【
図4】
図4は、
図1の立位姿勢支持具の杖としての使用状態を示す図である。
【
図5】
図5は、
図4の杖として使用する場合の第1および第2の握り部の傾斜面の機能についての説明図であって、
図5(A)は傾斜面の場合、
図5(B)は水平面の場合を示す図である。
【
図6】
図6(A)~(E)は、グリップ部の変形例について示す図である。
【
図7】
図7(A)および(B)は、支持具本体の変形例について示す図である。
【
図8】
図8(A)及び(B)は、グリップ部及び支持具本体のさらに他の形態例を示す図である。
【
図9】
図9は立位姿勢支持具の他の実施形態を示すもので、
図9(A)は正面図、(B)は側面図、(C)~(E)は部材の断面形状の例、(F)は結合部のアンカー構成を示す模式図、(G),(H)は石突の構成例を示す断面図である。
【
図10】
図10は立位姿勢支持具のさらに他の実施形態を示すもので、(A)は正面図、(B)は設置状態の説明図である。
【
図11】
図11は立位姿勢支持具のさらに他の実施形態を示す正面図である。
【
図12】
図12は杖としての利用のための持ち手部を備えた立位姿勢支持具の実施形態を示すもので、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は上面図、(D)は杖としての利用時の持ち手部の上面側から見た斜視図、(E)は下面側から見た斜視図である。
【
図13】
図13は持ち手部を備えた立位姿勢支持具の他の実施形態を示すもので、(A)は正面図、(B)は右側面図、(C)は上面図である。
【
図15】
図15は持ち手部を備えた立位姿勢支持具のさらに他の実施形態を示すもので、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は上面図である。
【
図16】
図16は持ち手部を備えた立位姿勢支持具のさらに他の実施形態を示すもので、(A)は吊り下げ具を外して示す正面図、(B)は吊り下げ具のリールの説明図、(C)は使用状態を示す説明図である。
【
図17】
図17は他の発明に係る歩行器の実施形態を示すもので、(A)は正面図、(B)は左側面図、(C)は右側面図、(D)は上面図、(E)は底面図である。
【
図19】
図17のスキッドの他の変形例を示すもので、(A)は変形例1の正面断面図、(B)は(A)の底面図、(C)は変形例2の正面断面図、(D)は(C)の底面図である。
【
図21】
図21は持ち手部を備えた立位姿勢支持具のさらに他の実施形態を示すもので、(A)は吊り下げ具を外して示す正面図、(B)は吊り下げ具のリールの説明図、(C)は使用状態を示す説明図である。
【
図23】
図23は歩行器のさらに他の実施形態を示す正面図である。
【
図24】
図24は歩行器のさらに他の実施形態を示すもので、(A)は正面図、(B)は左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。実施形態1
図1は本発明の実施形態1にかかる杖を示すもので、
図1(A)は正面図、(B)は側面図である。
【0020】
図において、1は立位姿勢支持具全体を示しており、この立位姿勢支持具1は、支持具本体2と、支持具本体2の一端に設けられるグリップ部3と、を備えている。 支持具本体2は、第1の支柱21と、第2の支柱22とを有し、第1の支柱21と第2の支柱22の上端がグリップ部3の両端に結合されている。第1の支柱21と第2の支柱22は、所定間隔を隔てて平行で、その下端(グリップ部3と反対側の端部)が2点で接地する。この第1の支柱21と第2の支柱が2つの脚部を構成する。
【0021】
第1の支柱21と第2の支柱22の上端から下方に所定距離れた位置にて、連結バー23によって連結されている。連結バー23は、グリップ部3とは別に設けた持ち手部として機能し、支持具本体2の下端を地面から浮かした状態で運搬可能の位置に設けられている。 また、第の1支柱21と第2の支柱22の下端には、キャップ24が取り付けられている。 この立位姿勢支持具1の材料としては、木材によって製作しており、その断面形状は四角形となっているが、角を面取りしてもよいし、全体として丸い断面形状としてもよい。また、アルミ合金等の金属パイプで構成することもでき、寄り掛かった荷重に対して十分な強度があり、剛性を有する材料であれば、材質については限定されない。
【0022】
グリップ部3は、中央部33を隔てて互いに反対側に、一方の手で把持可能な第1の握り部である第1の傾斜部31と、他方の手で把持可能な第2の握り部である第2の傾斜部32とを備えている。このグリップ部3の長さ、すなわち第1傾斜部31と第2傾斜部32の中央部33と反対側の端部間の長さは、肩幅よりも小さくなっている。 中央部33は、第1の支柱21および第2の支柱22に対して直交する方向に延び、第1の傾斜部31は、その上側面が中央部33との接続部から一方の端部に向けて下向きに直線状に傾斜している。第2の傾斜部32も、その上側面は中央部31の接続部から他方の第2端に向けて下向きに直線状に傾斜している。第1の傾斜部31,第2の傾斜部32および中央部33は、第1の支柱21及び第2の支柱22と同一平面上に形成される。この実施形態では、第1の傾斜部31と第2の傾斜部32の下側面も上側面とほぼ平行に傾斜しているが、下側面は上側面と平行ではなく、湾曲構成となっていてもよい、 なお、第1の傾斜部31と第2の傾斜部32の上側面は、直線状には限定されず、上方に凸、あるいは下方に凸の湾曲した形状や凹凸形状となっていてもよいし、中央部33の上側面と同一高さとなっていてもよい。
【0023】
また、第1の傾斜部31と第2の傾斜部32の中央部33と反対側の端部には、握った手の小指側の側面が当接するストッパ部25が設けられている。このストッパ部25は、第1
の支柱21と第2の支柱22の上端部の内側面によって構成されるもので、水平の中央部33に対して直交する面である。
【0024】
次に、本実施形態に係る立位姿勢支持具の作用について、
図2および
図3を参照して説明する。
図2は、
図1の立位姿勢支持具の使用状態を示すもので、
図2(A)は正面図、
図2(B)は側面図、
図2(C)は上面図である。 立ち止まった状態で休む場合には、
図2に示すように、支持具本体2を体の前に位置させ、支持具本体2の下端、すなわち第1の支柱21と第2の支柱22の下端を体の少し前方に接地させる。そして、
図3に詳細に示すように、グリップ部3の第1の傾斜部31を片方の手で握り、第2の傾斜部32を他方の手で握った状態で、グリップ部3を体の一部、たとえば下腹部にあてがい、グリップ部3を介して支持具本体2に寄りかかるように前方に体重をかける。
【0025】
そうすると、
図2に示すように、両足と支持具本体2が三脚構成となり、両足、腰に作用する荷重が支持具本体2に分散されて軽減される。第1の支柱21と第2の支柱22の下端については、ゴム等の摩擦力の高い材料のキャップ24によって、滑り止めが図られている。
【0026】
グリップ部3について、第1の傾斜部31と第2の傾斜部32のように傾斜していると、手の構造上握りやすい形となり、力が入りやすい。また、第1の傾斜部31と第2の傾斜部32を握った手は、その小指側の側面がストッパ部34に当接し、手のずれが防止される。
【0027】
一方、グリップ部3を握った手に作用する反力は、手だけでなく、腕、肩、体幹に伝達され体全体で支持することができ、手や腕等に大きな負担がかからない。また、筋力が弱い人の場合、あまり強い力を支えることができないので、寄りかかる程度が自然と制限され、安全に使用することができる。 さらに、体の重心が前方に移動しても、両足の接地部と支持具本体の接地部を結んだ三角形状で囲まれる範囲に位置することになり、体を安定して支えることができる。
【0028】
また、支持具本体2が、2点で接地する第1の支柱21と第2の支柱22とを有しているので、支持具本体2の回転方向は、第1の支柱21と第2の支柱22の接地部を結ぶ線を回転軸線Xとする1軸方向、すなわち、
図2(B)に示す体の前後方向Tに制限することができるので、
図2(A)を正面から見て左右への倒れが規制され、体の左右のブレが防止される。また、支持具本体2の中心軸線Z(図示例では、平行の第1の支柱21と第2の支柱22で構成される平面上で、第1の支柱21と第2の支柱22の間隔を2等分する中心線)回りの回転も規制され、安定して体を支えることができる。
【0029】
また、第1の傾斜部31と第2の傾斜部32の互いに反対側の端部間の長さが肩幅よりも狭くなっているので、腕を伸ばしてグリップ部の第1の傾斜部及び第2の傾斜部を握った際に、肩、肘、手首の関節を結ぶ直線が、第1の傾斜部及び第2の傾斜部に対して直角方向となり、手を介して体重を第1の傾斜部31および第2の傾斜部に効率的に作用させることができる。
【0030】
なお、第1の支柱21と第2の支柱22の長さは、公知の伸縮機構等の長さ調節機構によって調節可能となっていてもよいし、長さが段階的に異なる複数種類のものを用意してもよい。
【0031】
また、本実施形態1の立位姿勢支持具1は、歩行用の杖としても利用することもできる。
図4は、
図1の立位姿勢支持具の杖としての使用状態を示す図である。
図4に示すように、杖として利用する場合には、片手でグリップ部3を握り、体の側方に位置させ、杖と同様に、立位姿勢支持具1を反対側の体側の脚の動きに合わせて、接地して使用する。第1の傾斜部31あるいは第2の傾斜部32を握ってもよいし、他の部分を握ってもよい。 杖として利用することにより歩行を補助することができ、疲れた時には、立ち止まって、立位姿勢のままで、寄り掛かることにより、休憩することができる。
【0032】
図5は、杖として使用する場合の第1および第2の握り部の傾斜面の機能についての説明図であって、
図5(A)は傾斜面の場合、
図5(B)は水平面の場合を示す図である。 本実施形態1のように、第1の傾斜部31および第2の傾斜部32に傾斜を設けている場合には、
図5(A)に示すように、親指が所定角度屈曲した状態で第1の傾斜部31あるいは第2の傾斜部32に当接させることができ、握る際に強く握ることができる。 これに対して、傾斜がない場合には、親指の関節が伸びた状態となり、力が入らず、強く握ることができない。 なお、本発明の立位姿勢支持具は、杖なしでも歩行はできるが足腰に痛みや不安がある人に適したものであって、杖として使用しない場合は、持ち手である連結バー23を持つことによって、立位姿勢支持具を持って歩行することができる。また、痛みや疲れた時だけでなく、電車で立っているときの揺れに対しても効果がある。
【0033】
次に、本実施形態についての各種変形例について説明する。以下の説明では、主として上記実施の形態1と異なる部分について説明し、同一の構成部分については、同一の符号を付し、その説明は省略するものとする。
【0034】
図6(A)~(E)には、グリップ部の各種変形例が示されている。
図6(A)~(C)は、中央部を上方に凸の形状としたものである。
図6(A)は、中央部33Aが、直線状の第1の傾斜部と第2の傾斜部の中央部側の端部から、傾斜角度が中央に向けて徐々に小さくなるなだらかな湾曲形状となっている。
図6(B)は、中央部33Bが、凸状に湾曲した形状であるが、直線状の第1の傾斜部と第2の傾斜部の中央部側の端部から、傾斜角度が急に大きくなって、接続部に屈曲して中央部が盛り上がった形状となっている。
図6(C)は、中央部33Cが、四角形状に突出した構成となっている。
図6(D)は、中央部33Dが、凹状にくぼんだ湾曲形状となっている。
図6(E)は、中央部33Eが、凹部33Eと、凹部33Eと第1の傾斜部31および第2の傾斜部32との接続部に突部33E1,33E1が設けられた例である。 上記グリップ部の変形例は例示であって、その他種々の形状を採用することができる。
【0035】
次に、支持具本体の変形例について説明する。
図7(A)および(B)は、支持具本体の第1の支柱および第2の支柱の変形例について示す図である。
図7(A)は、支持具本体202の第1の支柱221と第2の支柱222が垂直ではなく、垂直線に対して下方に向かって外開き状に広がった構成である。
図7(B)は、支持具本体302の第1の支柱321と第2の支柱322が、支柱上部321A,322Aが垂直中心線Z3に向かって凸状に湾曲し、支柱下部321B、322Bが、垂直中心線Z3に向かって凹状に湾曲するような構成である。 これら支持具本体の変形例についての例示であって、その他種々の形状を採用することができることはもちろんである。
【0036】
図8(A)及び(B)は、グリップ部及び支持具本体のさらに他の変形例を示す図である。
図8(A)に示す立位姿勢支持具401は、一本の支柱420と、支柱423の下端から二股に分かれた第1の脚部421および第2の脚部422と、支柱423の上端にT字形状に接続されるグリップ部3とから構成される。支柱423、第1の脚部421および第2の脚部422によって支持具本体420が構成される。 グリップ部3は、中央部33を隔てて互いに反対側に、一方の手で把持可能な第1の傾斜部31と、他方の手で把持可能な第2の傾斜部32とを備えている点は実施形態1と同じである。異なる点は、第1の傾斜部31と第2の傾斜部32の中央部33と反対側の端部に、水平の中央部33に対して直角、支柱と平行に垂下するストッパ部35が設けられている点である。 作用効果については、実施形態1と同様であるので説明は省略する。
【0037】
図8(B)に示す立位姿勢支持具501は、デザインを施した例で、支持具本体520は、胴部523、胴部523の下端から二股に分かれた第1の脚部521および第2の脚部522と、胴体523の上端部から二股に分かれて上方に延びる第1の腕部524および第2の腕部525と、胴部523の上部であって第1の腕部524と第2の腕部525の間に設けられた頭部526とを備えた構成となっている。頭部526、あるいは胴部523に、特に図示しないが、持ち手となる穴等を設けてもよい。
【0038】
この第1の腕部524と第2の腕部525の上端にグリップ部3の両端に結合されている。第1の腕部524と第2の腕部525は、上方に向かって外開き状に傾斜しており、その上端部の内側面がストッパ部25,25となっている。ストッパ部25,25は、若干開き方向に傾斜しているが、外側面と同様に水平の中央部に対して直角としてもよい。グリップ部3の下側面は上方に向かって凸の円弧状の湾曲形状となっている。
【0039】
次に本発明の他の実施形態について説明する。基本的な構成は
図1に記載の実施形態と同一であり、以下の説明では、同一の構成部分については同一の符号を付し、その説明は省略するものとし、主として異なる点について説明するものとする。
図9は立位姿勢支持具の他の実施形態を示すもので、
図9(A)は正面図、(B)は側面図、(C)~(E)は部材の断面形状の例、(F)は結合部のアンカー構成を示す模式図、(G),(H)は石突の構成例を示す断面図である。この実施形態は、立位姿勢支持具1を、軽量木質材料、この例ではバルサ材によって、第1の支柱21、第2の支柱22、グリップ部3、連結バー23を構成したものである。
図9の例では、連結バー23は一か所であったが、この例では、下端に近い側にキャリングバー232を設けられ、計2か所に設けられている。もっとも、2か所に限らず、3か所以上に設けてもよいし、
図1の例と同様、1か所でもよい。この例では下側の連結バーはキャリングバーであって、断面形状は、四角形状(
図9(B)参照)、丸形状(
図9(C)参照)、八角形状(
図9(D)参照)など、種々の形状とすることができる。第1の支柱21、第2の支柱22、グリップ部3、連結バー23およびキャリングバー232の接合部は接着剤によって接着固定されている。接着面には、
図9(F)に示すように、接着剤が浸透しやすい微細な溝や穴を設けておけば、浸透した接着剤が硬化するとアンカーとして部材に食い込み、せん断方向に対しても強い接合強度が得られる。バルサ材は維管束がマイクロハニカム構造のような構成となっており、繊維方向を軸方向に合わせることにより、軽量でしかも軸方向の圧縮荷重に対して強い。この実施形態では、バルサ材の無垢材で構成しているが、被覆材でコーティングすることにより、表面層に固いコーティング層が形成されることにより、構造部材の強度を、より一層高めることができる。このようにバルサ材によって立位姿勢支持具1を構成すれば、軽量でありながら、寄り掛かった荷重に対して十分な強度を備えた立位姿勢支持具を得ることができる。 また、第の1支柱21と第2の支柱22の下端部102aは上部よりも小径になっており、円筒状の硬質弾性体262が取り付けられている。硬質弾性体の上端は下端部の上の段差部102bに突き当てられ、下端は軟質弾性体261の下面とほぼ面一(
図9(G)参照)、あるいは、軟質弾性体261の下面が硬質弾性体の下面より下方に若干突出するような構成(
図9(H)参照)となっている。 硬質弾性体262によって、強い衝撃を緩和することができ、軟質弾性体261に作用するダメージを低減することができる、耐久性向上を図ることができる。
【0040】
図10は立位姿勢支持具のさらに他の実施形態を示すもので、(A)は正面図、(B)は設置状態の説明図である。この実施形態において、
図9と異なる点は、第1支柱と第2支柱が下方に向かって左右に徐々に広がる方向に外開き形状に反っている点にある。図示例では、
図10(A)に示すように、キャリングバー232の下方部分が外側に反っている。石突の下端面は石突の中心線に対して直角となっているので、立位姿勢保
持具を持って路面に垂直に立てた際に、第1支柱と第2支柱の各石突の下端面の内側端b、cの2点で路面に接触し、各石突の下端面の外側端a、dが路面とは非接触となっている。
図10(B)には、立位支持具を第1支柱と第2支柱を通る平面において、石突を支点にして石突が滑らないように回転させた場合の支点の遷移状態を示している。実線で示す旋回位置Aでは、第1支柱の外側端aのみの1点で接触しており、反時計回りに移行すると、旋回位置Bで第1支柱の下端面が面接触、さらに反時計回り方向に遷移すると、旋回位置B-C間はb点のみの1点で接触、旋回位置Cに達すると第2支柱の内側端dが接触し、第1支柱の内側端bと第2支柱の内側端cの2点で接触する。さらに反時計回りに移動すると、旋回位置C-D間ではc点のみの1点で接触、旋回位置Dに達すると、第2支柱の下端面が面接触、さらに反時計回りに遷移すると第2支柱の外側端のd点のみの1点で接触するというように、所定角度ごとに段階的にクリック感が生じ、2脚での旋回移動でも、比較的スムースに転回移動させることができる。また、反りが生じたバルサ材の有効利用を図ることもできる。
【0041】
図11(A)は立位姿勢支持具のさらに他の実施形態を示す正面図である。この実施形態は、連結バーとキャリングバーとの間の空間を情報掲示部としたものである。情報掲示部には、たとえば、液晶パネルを設けて画像や文字データを表示するようにしてもよいし、掲示板を設けて紙等の媒体を添付してもよいし、広告媒体として使用することもできる。
図11(B)は立位姿勢支持具のさらに他の実施形態を示す側面図であり、支持具本体の下端に斜め上方に延びる保持部を設けたものである。この保持部は各支柱の下端部に棒材を斜めに固定して構成される。
【0042】
図12は杖としての利用のための持ち手部を備えた立位姿勢支持具の実施形態を示すもので、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は上面図、(D)は杖としての利用時の持ち手部の上面側から見た斜視図、(E)は下面側から見た斜視図である。この実施形態において、
図9と異なる点は、グリップ部3の上面に持ち手部を設けた点にある。持ち手部は、この例では円盤型のUFOに模した形状としたものである。 台は、円盤形状で、上面が手の平を載せる手掌載置面704を構成し、下面が指掛け面805となっている。手掌載置面704には、半球状に突出する凸部703aが設けられ、台703の下面の指掛け部705には、平行溝708が設けられている。 そして、外周面は、環状の稜線707cで上下に別れ、上側が断面円弧状で上方アール部703a、下側が直線的にカットされた下方直線傾斜面703bとなっている。
【0043】
図14(A)は持ち手を持った状態を示す図である。 手掌載置面704の中央の凸部703aを球冠状とすることによって、手掌に対する当たりが柔らかくなる。また、指位置が位置決めされる利点がある。また、この例では、指掛け部に波形等の平行の微細凹凸部が設けられている。方向性は、平行の微細凹凸部に対して直交方向が最も指が滑りにくいが、微細凹凸部と平行方向であっても凹凸があるために、指の腹が凹凸形状に倣って食い込み、接触面積が増大するので、単なる平面構成に対して滑りにくく、一定のすべり防止効果を有する。直交しなしなくても、斜めになっていてもよく、微細凹凸部の方向性は問わない。また、凹凸の凸に着目すると凸部と見ることもできるし、凹部に着目すると平行の微細溝と見ることもできる。
【0044】
図13は持ち手部を備えた立位姿勢支持具の他の実施形態を示すもので、(A)は正面図、(B)は右側面図、(C)は上面図である。この実施形態では、
図12の円盤状の台の周縁部の一部に棒を垂直に立てた構成である。この棒の位置は、第1支柱の中心と第2支柱の中心が通る平面に対して直交する位置に配置されている。このようにすれば、左右の手に対して兼用可能となる。棒の高さは
図14(B)は
図13の持ち手部の持ち方の説明図である。 図示するように、親指と人差し指の付け根の水かき部を棒にあてがい親指と人差し指の間で棒を挟むようにして、手の平を台の上面に載せる。このようにすれば、台の上に置いた手を安定して保持することができる。
【0045】
図15は持ち手部を備えた立位姿勢支持具のさらに他の実施形態を示すもので、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は上面図である。 この例は、
図13の持ち手部を備えた立位姿勢支持具の持ち手部に、台に置いた手の上面を保持する可撓性の保持ベルトを設けたものである。保持ベルトは、図示例では、一端を棒の上端に固定し、他端を、棒と反対側の台の縁部から下面側に回し、台を保持する首部に巻き付けた締め付けベルトによって締め付け固定している。特に、保持ベルトの長さ調整機能は有していないが、締め付けバンドを緩めることによって、保持ベルトの長さを調整可能とすることができる。
【0046】
図16は持ち手部を備えた立位姿勢支持具のさらに他の実施形態を示すもので、(A)は吊り下げ具を外して示す正面図、(B)は吊り下げ具のリールの説明図、(C)は使用状態を示す説明図である。この例は、立位姿勢支持具に吊り下げひもをつけて、首や肩に吊り下げ可能としたものである。特に、この例では、持ち手部を備えた
図15に示す立位姿勢支持具の保持ベルトに、巻き取りリールを介して、吊り下げひもを固定している。巻き取りリールは公知の一般的な自動巻き取りリールで、ゼンマイばねなどのスプリングの弾性力が、常時線材を巻き取り方向に作用するように構成され、所定力を加えて引き出した線材が、手を離すと自動的に巻き取られてリール内に収納されるようになっている。吊り下げひもの長さは、あらかじめ、首にかけた状態で立位姿勢支持具が接地せずに地面から浮いている状態で保持できるように調整しておく。このとき、立位姿勢支持具の重量は巻き取りリールに作用するが、立位姿勢支持具の重量では巻き取りリールの線材は引き出されない力に設定している。この状態で、立位姿勢支持具を引っ張ると巻き取りリールの線材が引き出され、立位姿勢支持具を接地させることができる。立位姿勢支持具を使用しないときは、吊り下げひもによって体に吊り下げられているので、どこかに置き場所を探す必要はなく、両手を自由に使うことができる。そして、立位姿勢支持具を使用するとき、たとえば、杖として利用する場合、また、立位姿勢支持具として利用する場合には、手で下に下げて使用に供することができる。また、巻き取りリールは、公知のワンタッチで着脱自在の締結具を介して保持ベルトに取り付けられており、締結具を外すことで、簡単に、巻き取りリールと吊り下げひもを外して使用することもができるようになっている。
【0047】
図25は本発明のさらに他の実施形態を示している。 この例は、立位姿勢支持具を利用して、松葉杖に類似の2本脚の杖を構成したものである。すなわち、キャリングバーから下端までの長さを長くして、キャリングバーを握った状態で、下端が接地するように構成している。たとえば、2つの杖を利用し、キャリングバーを握り、上端を脇の下のあばら骨の辺りにあてがう。杖自体は下端が体から遠ざかるように斜めに設定する。このようにすれば、従来の松葉杖に比して、安定性が格段に向上する。移動する際には、杖を立てた状態で腕で杖に対して体を移動させ、前に移動したら、次いで杖を移動させる。
【0048】
なお、本発明の立位姿勢支持具は、上記した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることはもちろんである。
【0049】
次に立位姿勢支持具とは別の発明である歩行器(ウォーカー)について説明する。この発明は、たとえば高齢者やリハビリ患者等の歩行補助用に使用可能な歩行器に関するものである。背景技術従来からこの種の歩行器としては、車輪がついたタイプが一般的である。すなわち、グリップ部を有するハンドル部を備えた歩行器本体と、歩行器本体の重量を支え歩行面に転がり接触する車輪と、を備えた構成となっている。発明が解決しようとする課題しかし、このような車輪を備えた歩行器は軽快に動く利点があるが、接触面積が小さいために単位面積当たりの荷重が大きく、接触痕として床面の接触部位が凹むという問題がある。また、転がり接触のために少しの力で動いてしまい、静止位置が安定しない。安定させるためには、ブレーキ等が必要となり、構造的に複雑なものとなる。この発明の目的は、歩行面への接触痕が生じにくく、しかも安定性の高い歩行器を提供することにある。課題を解決するための手段上記目的を達成するために、本発明は、
グリップ部を有するハンドル部を備えた歩行器本体と、
歩行器本体の重量を支え歩行面に滑り接触するスキッドと、
を備えたことを特徴とする。滑り接触とすれば、接触面積を大きくすることで、単位接触面積当たりの荷重を小さくすることが可能となり、接触痕のような変形が生じにくい。また、材料や表面性状の選択、接触面積の大きさを選択することによって、移動する際の摩擦抵抗の大きさを調整することができ、静止状態の安定性を確保しつつ移動時の滑り接触の抵抗を適切な大きさに調整することができる。前記スキッドは摺動部材を前記歩行面との摩擦力を調整する摩擦力調整部材を備えている。摩擦力調整部材を設けることで、摩擦力を大きく変化させることができる。グリップ部を上記立位姿勢支持具のグリップ部を構成と同じ構成のものを使用することが好適である。前記グリップ部は、中央部を隔てて互いに反対側に、一方の手で把持可能な第1の握り部と、他方の手で把持可能な第2の握り部とを備えている。 グリップ部の第1の握り部と第2の握り部は、中央部側から端部に向けて下向きに傾斜する構成とすることができる。 このように、第1の握り部と第2の握り部を傾斜させると、手の構造上握りやすい形となり、力が入りやすい。
【0050】
また、第1の握り部と第2の握り部の中央部と反対側の端部には、握った手の小指側の側面が当接するストッパ部を設けることができる。 このようにすれば、手のずれを防止することができる。
【0051】
また、前記第1の握り部と第2の握り部の互いに反対側の端部間の長さを肩幅よりも狭い構成とすることができる。 このようにすれば、腕を伸ばしてグリップ部の第1の握り部及び第2の握り部を握った際に、肩、肘、手首の関節を結ぶ直線が、第1の握り部及び第2の握り部に対して直角方向となり、手を介して体重を第1の握り部および第2の握り部に効率的に作用させることができる。前記グリップ部の第1の握り部と第2の握り部の歩行面への垂直投影位置は、前記スキッドの支持基底面の歩行方向に対して直交方向の一端位置と他端位置の間に位置し、前記スキッドの支持基底面の歩行方向に対して直交方向の幅は、前記一対のグリップ部の前記歩行方向と直交方向の幅はよりも狭いことを特徴とする。 このようにすれば、歩行器の安定性を高めることができる。発明の効果 本発明によれば、歩行面に滑り接触するスキッドを備える簡単な構造で、安全で安定性の高い歩行器を実現できる。
【0052】
以下にこの他の発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図17は他の発明に係る歩行器の実施形態1を示すもので、(A)は正面図、(B)は左側面図、(C)は右側面図、(D)は上面図、(E)は底面図である。図において、1は歩行器全体を示すもので、この歩行器は、歩行器本体と、歩行器本体の重量を支え歩行面に滑り接触するスキッドと、を備える。歩行器本体は、所定間隔を隔てて上下方向に延びる左右一対の支柱と、支柱の中途部を2か所で連結する水平に延びる連結部材と、上端にかけ渡されるグリップ部と、を備えている。支柱は垂直の中心軸線に対して線対称に配置され、上端側の間隔よりも下端側の間隔が広くなっている。上部連結部材と下連結部材、左右の支柱で囲まれる台形状の枠部分には、枠の対角に位置する隅角部を連結する筋交いが設けられている。スキッドは左右一対設けられ、各支柱の下端に固定されている。各スキッドは、前後方向に延びる直線状部材で、支柱に対して前方に長く、後方に短い。各スキッドの上面には横棒が2か所に架け渡されて、スキッドを平行状態に保持している。スキッドと支柱の間には、サポート部材が斜めに架け渡されて、スキッドを支柱の角度を保持している。なお、一方のサポート材の上端の連結部材との結合部と、他方のサポート部材の下端とスキッドとの結合部との間に、筋交い部材が設けられ、剛性が高められている。スキッドの前端部下面は、前方に向かって上方に傾斜するような傾斜面としておくことが望ましい。傾斜面は直線的な傾斜でも、曲線的な傾斜でもよい。曲線的な傾斜は前方に向かって徐々に傾斜角度が大きくなるようなそりを持たせた形状でもよい。このようにすれば、前端が床面に引っ掛かる、突っかかりを防止することができる。突っかかり防止の観点では、スキッドの前方に、通常は床面に接触しないが、突っかかって場合に、床面に接触するローラを設けてもよい。 スキッドの下面には摩擦力を調整するための摺動材が取り付けられている。摺動材としては、PTFE等の樹脂材等を用いることができる。摺動材は前面に張り付けてもよいし、部分的に取り付けてもよい。床面は、フローリング、カーペット、畳等様々な性状を有し、それに合わせて適切な摺動材を用意し、交換することによって、床面に応じた適切な摩擦特性を得ることができる。グリップ部はグリップ部を上記立位姿勢支持具のグリップ部を構成と機能的に同じ構成のものを使用することが好適である。グリップ部は、中央部を隔てて互いに反対側に、一方の手で把持可能な第1の握り部と、他方の手で把持可能な第2の握り部とを備えている。第1の握り部と第2の握り部は、中央部側から端部に向けて下向きに傾斜する構成となっている。グリップ部の第1の握り部と第2の握り部の歩行面への垂直投影位置は、前記スキッドの支持基底面の歩行方向に対して直交方向の一端位置と他端位置の間に位置し、前記スキッドの支持基底面の歩行方向に対して直交方向の幅は、前記一対のグリップ部の前記歩行方向と直交方向の幅はよりも狭くなっており、歩行器の安定性を高めている。
【0053】
また、第1の握り部と第2の握り部の中央部と反対側の端部には、握った手の小指側の側面が当接するストッパ部を設けることができる。このようにすれば、手のずれを防止することができる。ただし、グリップ部については、このような形状に限定されるものではなく、公知の歩行器に使用されている種々のグリップ部を適用可能である。歩行器本体はスキッドを介して滑らせて移動させるので、軽量で高強度、高剛性のものであることが重量である。この実施形態では、歩行器本体とスキッドを構成する部材は、軽量木材で構成される。軽量木材としては、バルサや桐材等が好適である。具体的には、30mm角の角材で構成し、高さを800mmとし、支柱の上端の幅を140mm、下端の幅を460mmとし、スキッドの長さを450mm程度として軽量化が実現できた。このように軽量化することにより、摩擦力を格段に低下させることができ、車輪等をつけなくても軽快に移動できる歩行器を実現できる。
【0054】
図18は
図17の歩行器の使用状態を示す説明図である。使用する際には、グリップ部の第1の握り部と第2の握り部を握って体を支え、歩行動作をすることによって歩行器本体を前に押し出して使用する。押し出す際にグリップ部を前に押す力に対してスキッドと路面との間に作用する静止摩擦力が偶力となり、スキッドの前端部を支点にしてグリップ部を前方に回転させる方向のモーメントが作用し、路面に前端部分が引っかかる、いわゆる突っかかりが生じやすい。突っかかりを防止するためには、前端が引っかからないように前端部分の裏面を前方に向かって徐々に上方に持ち上がる方向に傾斜をつけること、さらにスキッドの裏面に、後述するように摩擦力調整部材である摺動材を張り付けることが効果的である。特に、この実施形態では、歩行器本体が軽量のバルサ材を使用して軽量化を図り、スキッドの歩行器本体から前方に伸びる長さを歩行器本体の高さに対して30%程度以上に設定してモーメントが作用した際の端部に作用する荷重を軽減している。また、スキッドの前端部の突っかかりが生じる部分にローラを設けることも有効である。滑りだすと動摩擦力となり、適度な摩擦力を保持しつつ、安定してスムースに移動させることができる。特に、この実施形態では歩行器本体が軽量のバルサ材を使用しているので、全重量が非常に軽いので歩行面からの抗力が小さく、抗力×摩擦係数で計算される摩擦力は非常に小さく、滑り接触でありながらスムースに移動させることができる。
【0055】
図19は
図17のスキッドの実施態様を示すもので、(A)は実施態様1の正面断面図、(B)は(A)の底面図、(C)は実施態様2の正面断面図、(D)は(C)の底面図、
図20は
図19の各スキッドの段差を超える際の挙動を示す説明図である。実施態様1この実施態様1は、スキッドの全長にわたって延びる摺動材を張り付けたもので、歩行器は軽快に移動する。前端部及び後端部は円弧状の傾斜面となっており、摺動材は傾斜面の上端まで伸びており、突っかかりを防止して軽快に移動する。ただ、敷居などの段差がある場合、
図20(A),(B)に示すように、床面とはことなり滑りやすくなる場合があり、摺動材が不意に滑りだすおそれがある。実施態様2この点、実施態様2では、摺動材は、スキッドの前端部と後端部に部分的に設け、中間部はスキッドの地肌が露出している。このようにすれば、地肌部分は摺動材に比較して摩擦係数は高く、段差部に乗り上げたとしても、摩擦係数の大きい中間部分に接触するので不意の滑り出しを防止することができる(
図20(C),(D)参照))。
【0056】
次に、他の発明の他の実施形態について説明する。以下の説明では、主として、
図19の歩行器と異なる部分について説明し、同一の構成部分については同一の符号を付して説明を省略するものとする。
図21は持ち手部を備えた歩行器の実施形態2を示すもので、(A)は吊り下げ具を外して示す正面図、(B)は吊り下げ具のリールの説明図、(C)は使用状態を示す説明図である。この実施形態2は、歩行器本体に前面側に所定高さの腰掛け部を設けたものである。腰掛け部は、四角形状の座面部と座面部を支持する4つの脚部とによって構成される。4つの脚部のうち、後ろ側の脚部は左右の支柱によって構成され、前側の脚部が左右の支柱の前方に配置されている。前脚部は、下端がスキッドに固定され、上方に延びている。座面部は、四角形状の支持枠の上辺部に固定されている。支持枠は、左右両端が左右の支柱の中途部に固定される後側板と、左右両端が左右の脚部に固定される前側板と、左右の脚部と支柱の間に配置される左側板と右側板とによって構成される。座面板は、複数の座面板を、隙間を開けて平行に架け渡して構成されており、図示例では、るもので、前板と後板に対して所定角度傾斜させて配置されている。座面板は、支柱と同じ角材が用いられている。グリップ部は、歩行器本体の前面に位置する前グリップ部と、後方に延びる後ろグリップ部が設けられている。前グリップ部は
図19のグリップ部と同一である。後ろグリップ部は、中央部を隔てて互いに反対側に、一方の手で把持可能な後ろ第1握り部と、他方の手で把持可能な後ろ第2握り部とを備えている。後ろ第1握り部と後ろ第2握り部は、前後方向にほぼ平行に延び、中央部側から後端部に向けて下向きに傾斜する構成となっている。後ろグリップ部の後ろ第1握り部と後ろ第2握り部の後端はそれぞれサポート部材によってスキッドの後端と連結されている。このサポート部材は下方に向かって後方に傾斜がつけられている。なお、スキッドの後端部間には補強バーが固定されている。この補強バーは足の邪魔にならないように前方に湾曲するように構成されている。
【0057】
図22は
図21の歩行器の使用状態を示す説明図である。
図22(A)は後ろグリップ部の後ろ第1握り部と後ろ第2握り部を握って使用する状態を示している。
図22(B)は前グリップ部を使用する状態を示している。使用する際には、グリップ部の第1の握り部と第2の握り部を握って体を支え、歩行動作をすることによって歩行器本体を前に押し出して使用する。腰掛部を使用する場合には、特に図示しないが、歩行器を伝いながら前に回って腰掛部に腰を掛ける。
【0058】
図23は歩行器の実施形態3を示す正面図である。この例は、
図21の歩行器の腰掛部にひじ掛けを設けた例である。
【0059】
図24は歩行器の実施形態3を示すもので、(A)は正面図、(B)は左側面図である。 この例は、
図17に示す歩行器の第1の支柱と第2の支柱を、後方に傾斜するように斜めにし、この第1の支柱と第2の支柱をサポート部材で支持した構成である。
【0060】
なお、歩行器の構成は
、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0061】
1 立位姿勢支持具 2 支持具本体 3 グリップ部 31 第1の握り部 32 第2の握り部 33 中央部