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特開2024-167100股関節の寛骨臼半関節形成のための、表面再建カップ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167100
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】股関節の寛骨臼半関節形成のための、表面再建カップ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/34 20060101AFI20241122BHJP
   A61F 2/36 20060101ALI20241122BHJP
   A61B 17/56 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
A61F2/34
A61F2/36
A61B17/56
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024145267
(22)【出願日】2024-08-27
(62)【分割の表示】P 2021553344の分割
【原出願日】2020-03-31
(31)【優先権主張番号】19167201.3
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】521402354
【氏名又は名称】サイオン オーソピディクス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【弁理士】
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【弁理士】
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【弁理士】
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】テピック スロボダン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】骨を温存する股関節表面再建の外科的処置ののための寛骨臼コンポーネントを提供する。
【解決手段】寛骨臼の表面再建カップ10の中に、球面形状にシェービングだけされ、寛骨臼に突き当たることにより可動域を制限し得る骨棘が除去された、大腿骨骨頭201を関節接合する。表面再建カップ10の内面は形状が非球面であり、大腿骨骨頭201との環状の接触をもたらす。内側の、関節接合するカップ10の表面は、非晶質-ダイアモンド-ライク-カーボンまたは熱分解炭素でコーティングされ、大腿骨骨頭の摩擦および摩耗を減少させる。大腿骨200の表面再建コンポーネントの使用を避けることによって外科的処置時間が著しく減少されて、外科的手法は非常に進歩する。カップは好ましくは、セメントレス固定のための二重シェル型であるが、セメントレスまたはセメント固定のための一重シェルとして作ることもできる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
股関節の半関節形成のための、
寛骨臼の表面再建(resurfacing)カップ10。
【請求項2】
請求項1の寛骨臼の表面再建カップ10であって、
大腿骨骨頭201に面する内面の形状が非球面形状である、
寛骨臼の表面再建カップ10。
【請求項3】
請求項2の寛骨臼の表面再建カップ10であって、
内面に、球面形状である環状部分17が存在する、
寛骨臼の表面再建カップ10。
【請求項4】
請求項3の寛骨臼の表面再建カップ10であって、
環状の球面部分17によって覆われる角度18が、10~20度の範囲内である、
寛骨臼の表面再建カップ10。
【請求項5】
請求項3または4の寛骨臼の表面再建カップ10であって、
対称軸20から環状の球面部分17までの角度19は、30~45度の範囲内である、
寛骨臼の表面再建カップ10。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか一項の寛骨臼の表面再建カップ10であって、
前記カップの内側形状の対称軸23は、前記カップの主対称軸20から、15~25度の範囲内の角度24だけオフセット(offset)されている、
寛骨臼の表面再建カップ10。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項の寛骨臼の表面再建カップ10であって、
大腿骨骨頭に面する前記カップの内面は、ADLCおよび/または熱分解炭素のような炭素系材料によってコーティングされている、
寛骨臼の表面再建カップ10。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項の寛骨臼の表面再建カップ10であって、
セメントレス固定に適合した、
寛骨臼の表面再建カップ10。
【請求項9】
請求項8の寛骨臼の表面再建カップ10であって、
二重シェル構造物11/12であるセメントレス固定に適合した、
寛骨臼の表面再建カップ10。
【請求項10】
請求項8の寛骨臼の表面再建カップ10であって、
一重シェル構造物25であるセメントレス固定に適合した、
寛骨臼の表面再建カップ10。
【請求項11】
請求項1から7のいずれか一項の寛骨臼の表面再建カップ10であって、
セメント固定に適合した、
寛骨臼の表面再建カップ10。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の寛骨臼の表面再建カップからなる、
股関節プロテーゼ(hip prosthesis)。
【請求項13】
関節接合(articulation)のために、特に請求項1から11のいずれか一項の寛骨臼の表面再建カップ10内の関節接合のために、大腿骨骨頭を準備するための、大腿骨骨頭シェーバー27。
【請求項14】
請求項1から11のいずれか一項の寛骨臼の表面再建カップ10と、デュアルモビリティ修正股関節全置換に適合した大腿骨骨頭などの人工大腿骨コンポーネント30/31/33との組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト医学および獣医学での使用のための、股関節の半関節形成のための寛骨臼カップに関する。さらに本発明は、寛骨臼の表面再建(resurfacing)カップのデュアルモビリティ修正股関節全置換および上記寛骨臼の表面再建カップ内の関節接合(articulation)のために大腿骨骨頭を準備するための大腿骨骨頭シェーバーに関する。
【背景技術】
【0002】
人工股関節置換術は、過去の世紀で最も成功的な、生活の質を改善する外科的手順の1つと考えられる。より広範な用途における股関節の外科的処置の歴史は、Austin-Mooreの、大腿骨骨頭および大腿骨頚部のための半プロテーゼ(hemi-prosthesis)を用いて、40年代後半に始まった。大腿骨ステムは、骨の内部成長(bone ingrowth)のための開窓術を有する、セメントレスであった。
【0003】
最初の股関節完全プロテーゼ(total hip prostheses)は、McKeeによって改変されたThompson半プロテーゼのような金属対金属(metal-on-metal)のタイプのものであり、50年代に導入された。臨床結果は様々であり(were mixed)、受容性(acceptance)は制限された。
【0004】
臨床的受容性の改革および現代の股関節全置換の始まりは、60年代中頃にセメントステムおよびセメントポリマーカップを導入したCharnleyに起因する。その基本的な概念は、大腿骨コンポーネントおよび寛骨臼コンポーネントの両方のセメントレス固定におけるあらゆる進歩にもかかわらず、未だに広範な臨床用途にある。
【0005】
過去20年において、完全股関節形成(total hip arthroplasty)の開発のほとんどは、コンポーネント(ほとんどがポリマーカップである)の摩耗を減少させるための関節接合に焦点が当てられていた。今日の技術水準は、大腿骨側のセラミックヘッドと、架橋された、ビタミンEが補充された超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)寛骨臼カップとの組み合わせである。寛骨臼カップは、骨の一体化のための金属裏打ち(metalbacking)とともに提供されるか、またはセメント固定される(cemented)。
【0006】
股関節形成のための別の手法は、いわゆる表面再建術(resurfacing procedure)によるものであり、2つの波(two waves)で臨床用途に現れたが、両方とも概念の失敗で終わった。70年代中頃のWagnerとAmstutzによる最初の試みは成功が続かなかった。最近の表面再建手法は、金属対金属の関節接合に基づく表面再建の股関節全置換のMcMinnと彼のBirminghamモデルに起因する。しかしながら、金属コンポーネントの過剰な摩耗は、大きな臨床合併症を生じさせ、骨を温存する(sparing)股関節置換のこの第2の波に終わりを招いた。
【0007】
半関節形成は未だに一般に用いられているが、様々な理由のため、今日においてより一般的なものは、従来の大腿骨コンポーネントが、損なわれていない寛骨臼と関節接合する(articulate)大きな直径のヘッドと組み合わされる、いわゆる二極性モデルである。このモデルは、明らかな理由で、寛骨臼の軟骨の許容できるレベルの変性を有する患者での使用に制限される(通常は、老年患者における大腿骨頚部の骨折のため)。
【0008】
要約すると、上記の以前の股関節プロテーゼは全て、損なわれていない寛骨臼または寛骨臼カップに対して組にされる(paired to)何らかの大腿骨コンポーネントで構成された。
【0009】
人工股関節置換術の最後の数十年において、若い活動的な患者におけるその使用の必要性が増大した。ポリマー寛骨臼カップの摩耗は、プロテーゼの耐久性における制限因子となった。典型的に外科的処置の7~9年後に、関節内および関節周辺の摩耗粒子の蓄積によって、骨損失およびコンポーネントの無菌性緩み(aseptic loosening)が生じる。一次置換の時点での70才の平均的な患者では、術後15年における修正率は5%未満であるが、若い活動的な患者では20~25%である。この違いに関する最も直接的な理由は活動レベルであり、全ての室内実験におけるポリマーの摩耗は、サイクル数に比例する。
【0010】
臨床転帰は、架橋UHMWPEカップのインレー(inlay)上のセラミックヘッドのような、より新しい摩耗耐性の関節接合によって改善されたが、若い活動的な患者における無菌性緩みの問題は、高い修正負荷に対する重大な要因(leading)を維持していて、一部の国では5人に1人もの高さである。二次手順はさらにより短くしか持続しない。
【0011】
表面再建の股関節全置換の使用は、ステム大腿骨コンポーネントによる最終的な修正がより簡単に行われるように、大腿骨質量を温存することが主に動機となっていた。表面再建プロテーゼの金属対金属デザインは、金属摩耗がいわゆる「腫瘍のような」組織応答を引き起こすことに起因して失敗したので、この選択肢は基本的になくなっており、主に需要が高いスポーツに関与する非常に若い患者のために、世界中でほんのわずかな外科医によって行なわれる。
【0012】
半プロテーゼは現在のところ、寛骨臼の軟骨がまだ良好な状態である場合にのみ用いられる。本発明者による特許出願(US2013/0060345A1)は、半プロテーゼの非球面ペアリングを提案することによって、現在の慣例に対して潜在的な改善を開示し、ここで、プロテーゼヘッドは、非晶質-ダイアモンド-ライク-カーボン(ADLC)コーティングまたは熱分解炭素によって覆われている。これらの炭素コーティングは、金属またはセラミックと比較した場合、対面する骨の摩耗を劇的に減少させることが示されている。米国特許第8,323,346号(Tepic)に記載されるような非球面の関節接合は、室内実験において摩耗をおよそ3倍減少させた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明によって提案される股関節置換は、唯一のプロテーゼコンポーネントが寛骨臼カップであるという新規のタイプである。寛骨臼カップ半プロテーゼは、自然のままの大腿骨骨頭と組み合わせられる。大腿骨骨頭は、ほとんど損なわれないままであり、実質的に球面形状にシェービングだけされてよく、衝突リスクを減少するために骨頭周辺の骨棘のような凹凸が取り除かれる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、骨を温存する股関節表面再建の外科的処置の主な問題を、寛骨臼コンポーネントのみを使用することによって解決し、その中に、球面形状にシェービングだけされ、寛骨臼に突き当たることにより可動域を制限し得る骨棘が除去された、自然のままの大腿骨骨頭を関節接合する。好ましくは、表面再建カップの内面は形状が非球面であり、大腿骨骨頭との環状の接触をもたらす。内側の、関節接合するカップ表面は、好ましくは、ADLCおよび/または熱分解炭素のような炭素系材料でコーティングされ、大腿骨骨頭の摩擦および摩耗を減少させる。大腿骨の表面再建コンポーネントの使用を避けることによって外科的処置時間が著しく減少されて、外科的手法は非常に進歩する。カップは好ましくは、セメントレス固定のための二重シェル型であるが、セメントレスまたはセメント固定のための一重シェルとして作ることもできる。大腿骨骨頭の摩耗に起因して修正の外科的処置の必要が生じたとしても、カップは維持され得て、デュアルモビリティ大腿骨コンポーネントと組み合わせられる。
【0015】
したがって、本発明の第1の態様は、股関節の半関節形成のための寛骨臼の表面再建カップである。寛骨臼の表面再建カップは、自然のままの大腿骨骨頭、すなわち自然のままの骨表面を有する大腿骨骨頭に適合される。本発明の寛骨臼カップは特にヒト医学に適合されるが、例えばイヌのために獣医学で使用されてもよい。
【0016】
寛骨臼の表面再建カップの内面は、大腿骨骨頭に面している。この内面の形状は非球面であってよく、球面形状である環状部分を含んでよい。環状の球面部分によって覆われる角度は、好ましくは5~30度の範囲内、より好ましくは10~20度の範囲内である。寛骨臼の表面再建カップの対称軸から環状の球面部分までの角度は、好ましくは25~50度、より好ましくは30~45度の範囲内である。カップの内側形状の対称軸は、カップの主対称軸から好ましくは5~30度の範囲内、より好ましくは15~25度の範囲内の角度だけオフセット(offset)されてよい。
【0017】
カップの内面は、任意の適切な材料、例えば、ADLCおよび/または熱分解炭素のような炭素系材料によってコーティングされてよい。
【0018】
本発明のカップは、例えば二重シェル構造物によって、または一重シェルとして、セメントレス固定に適合され得る。また、カップはセメント固定にも適合され得る。
【0019】
本発明のさらなる態様は、上述の寛骨臼の表面再建カップからなる股関節プロテーゼに関する。
【0020】
さらに、本発明のさらなる態様は、関節接合、特に上述の寛骨臼の表面再建カップ内の関節接合のために、患者の大腿骨骨頭を準備するための、大腿骨骨頭シェーバーに関する。大腿骨骨頭シェーバーは、約180度を含む角度を超える内面を有する、ほぼ半球体を覆うシェービングカップを備えてよく、ここで、内面は、骨をリーミングするための切断突出部、例えば切断溝(cutting flutes)、および、骨の小片を除去するための開口部を備える。シェービングカップは、例えばロッドまたは同様のエレメントに連結されることによって、回転および旋回操作に適合している。
【0021】
さらに、本発明のさらなる態様は、上述の大腿骨骨頭シェーバーおよび寛骨臼の表面再建カップの組み合わせに関する。
【0022】
さらに、本発明のさらなる態様は、上述の寛骨臼の表面再建カップを埋め込むステップを含む、股関節の半関節形成のための方法に関する。
【0023】
さらに、本発明のさらなる態様は、上述の寛骨臼の表面再建カップと、人工大腿骨コンポーネント、例えばデュアルモビリティ修正股関節全置換のための大腿骨骨頭の組み合わせに関する。
【0024】
さらに、本発明のさらなる態様は、上述の寛骨臼の表面再建カップのデュアルモビリティ修正股関節全置換のための方法に関する。
【0025】
本発明の好ましい実施態様では、関節接合部(articulation)は非球面であり、特徴の新規の組み合わせを提供する炭素系コーティングを有し、ここで、寛骨臼および寛骨臼のみがプロテーゼコンポーネントによって表面再建されて、大腿骨骨頭はその基本的に自然のままの状態で維持される。
【0026】
この組み合わせにはいくつかの重要な利点がある。初めに、除去される必要がある骨は非常に少量である。修正が必要となったならば、一次プロテーゼのヘッドがポリマーカップによって覆われているデュアルモビリティ型の大腿骨置換を用いた大腿骨側の修正のみであり、それを、表面再建された寛骨臼に対して関節接合する。また、カップの厚さがほんの約1~約4mm、好ましくは約1.5~約3mmであり得るので、寛骨臼のリーミングも最小限である。寛骨臼のリーミングは一般に、肺塞栓症のようないくつかの非常に重大な合併症をもたらすことが知られている大腿骨空洞のリーミングよりもリスクがずっと低い。圧入ステムでは、骨の亀裂の高いリスクもある。Birmingham型の表面再建の完全プロテーゼでは、大腿骨骨頭は特定の形状にリーミングされて、それから、センタリングピンを有するセメントカップによって覆われる。骨損失は従来のステム大腿骨コンポーネントよりも小さいが、残っている大腿骨骨頭の骨の血液供給は損なわれ、大きな骨壊死をもたらし得る。対照的に、本発明では、表面再建された寛骨臼内にはめ込まれるように、骨頭は、主な凹凸が除去されて球面形状にシェービングされるだけである。好ましくは、寛骨臼カップの空洞は非球面であり、炭素系材料コーティング、例えばADLCコーティングによって、または熱分解炭素によって覆われている。外科的処置の時間は著しく減少し、プロテーゼの費用も減少する。外科的手法はよく知られていて、Birmingham型の表面再建のために多くの外科医によって用いられている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】技術水準による股関節置換の完全プロテーゼを示す。
図2】技術水準による股関節置換の半プロテーゼを示す。
図3】技術水準による表面再建の股関節置換プロテーゼを示す。
図4】本発明による股関節の半置換プロテーゼを示す。
図5】本発明による二重シェルの寛骨臼の股関節半置換プロテーゼを示す。
図6】本発明による一重シェルの寛骨臼の半置換プロテーゼを示す。
図7】本発明による大腿骨骨頭シェービング機器を示す。
図8】デュアルモビリティ大腿骨骨頭コンポーネントを用いた修正外科的処置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
技術水準の股関節全置換プロテーゼ(図1)は、骨盤100に固定された寛骨臼カップ1、大腿骨200に固定された大腿骨ステム2(大腿骨骨頭3がステム2に取り付けられている)を備える。今日の典型的な構造は、最も一般には、骨に面する多孔質性コーティングを有する金属シェルによって裏打ちされた(backed)架橋UHMWPE由来の、ポリマーカップのインレーを有する。セメントレス固定のためのステムも、多孔質性の層でコーティングされてよく、あるいは、例えばヒドロキシアパタイトの薄いコーティングで粗ブラスト処理(rough-blasted)されてよい。ヘッドは金属またはセラミックであってよい。セメントレス固定の代わりに、カップおよびステムの両方とも、いわゆる骨セメント(2成分ポリ-メチル-メタクリレート)を用いてそれぞれの骨内にセメント固定することができる。
【0029】
技術水準の股関節置換の半プロテーゼ(hemi hip replacement prosthesis)(図2)は、大腿骨コンポーネントのみを備える。大腿骨ステム4が大腿骨200に固定される。大きな直径の大腿骨骨頭5が、ステム4に直接、または二極性半プロテーゼを形成するためにより小さな骨頭を介してはめ込まれる。
【0030】
Birmingham型の表面再建の股関節完全プロテーゼ(図3)は、大きな直径のヘッドを有する大腿骨コンポーネント6(通常、大腿骨骨頭に蓋をする(cap)ためにセメント固定され、プロテーゼのヘッドを収容するために穴があけられている(reamed down))、および、骨セメント8を充填することができるようにいくらか空間をあけたセンタリングピン7を備える。寛骨臼コンポーネント9は通常、セメントレス型であり、リーミングされた寛骨臼100内に打ち込まれる(hammered)。
【0031】
本発明による股関節置換の半プロテーゼ(図4に示す)は、大腿骨200のほとんどを温存し、骨盤100内に固定された寛骨臼の表面再建カップ10にのみ依拠している。カップ10のサイズは、自然のままの大腿骨骨頭201(球面形状を作るためにできるだけ少ない軟骨および骨を除去して、大腿骨の頚部において形成する傾向のある骨棘の形態の変形全体を除去することにより、球面形状にリーミングされる)に合うように選択される。カップは好ましくはセメントレス型であるが、穴があけられた(reamed-out)寛骨臼内にセメント固定することもできる。
【0032】
本発明による二重シェル寛骨臼カップ(図5aに示す)は、外側シェル11および内側シェル12を備える。股関節全置換のための二重シェルの寛骨臼カップは、米国特許第7,776,097号(TepicおよびMalchau)に開示されている。カップは、骨による迅速な浸潤を可能にするために、外側シェル内に穿孔13を備えてよい。外側の、シェル11の骨に面する表面は、チタンおよびヒドロキシアパタイトのような多孔質性材料14によってコーティングされてよく、それにより、さらなる微小な固定を提供する。穴があけられた(reamed-out)寛骨臼におけるカップの圧入安定性は、カップの開口部に近い外側シェル内のリブ15のような小さな伸長部分によって高められ得る。内側シェル12は、カップの開口部において外側シェル11内にはめ込まれてよく(例えばスナッププレス(snap-press)ではめ込まれてよく)、2つのシェル間には小さなギャップ16が残っている。ギャップのサイズは通常、約0.5~約1.5mmである。
【0033】
この組み合わせは、従来の完全股関節カップ(total hip cup)のために分厚くて硬い金属裏打ちが用いられる場合に観察される圧力遮蔽(stress shielding)を伴わずに、骨盤の骨内への一体化のために非常に適した(compliant)金属構造物をもたらす。好ましくは、カップの内側シェルは、外側シェルよりも硬い、および/または強い材料由来である。特定の実施態様では、外側シェルを形成している金属の抗張力は、約300~約600MPa、好ましくは約350MPa~約550MPaであり、および/または、外側シェルを形成している金属のVickersスケールでの硬度(Hv)は、約100~約250Hv、好ましくは約120~約200Hvである。特定の実施態様では、内側シェルを形成している金属の抗張力は、約700~約1,000MPa、好ましくは約800~約950MPa、より好ましくは約900MPaであり、および/または、内側シェルを形成している金属のVickersスケールでの硬度(Hv)は、約280~約450Hv、好ましくは約300~約400Hv、より好ましくは約350Hvである。
【0034】
シェルのための好ましい金属は、チタンおよびチタン合金である。例えば、外側シェルは、工業用純(c.p.)チタンのグレード2、または好ましくはグレード4から生産することができる。あるいは、強度がより高いが生物的適合性も優れていることからチタン-アルミニウム-ニオビウム合金を用いることができる。内側シェルは、c.p.グレードのチタンで可能なものよりも強くて硬い必要があるので、チタン-アルミニウム-ニオビウム(Ti6Al7Nb)および/または場合によりチタン-アルミニウム-バナジウム(Ti6Al4V)のような合金が好ましい選択である。チタンc.p.グレードの抗張力は350~550MPaの範囲内であり;硬度はVickersスケール(Hv)で120~200の範囲内である。Ti6Al7NbおよびTi6Al4V合金に関する対応する値は、900MPaおよび350Hvである。
【0035】
内側シェルは非球面形状であり、米国特許第8,323,346号(Tepic)において示される利点全般を提供する。5~30度、より好ましくは10~20度の角度18を覆っている環状バンドにわたる内面17は、球面の形状をしている。それは、25~50度、より好ましくは30~45度の角度19だけ軸20からオフセットされている。バンド17と極との間のカップの部分は、環17の球面形状に対してギャップ21を生じるような形状をしている。部分17からカップの開口部の外へ向かう内側シェルの形状もまた、球面から逸脱しており、ギャップ22を生じさせる。カップの内面の非球面形状は潤滑を助け、関節接合部の摩擦および摩耗を少なくさせる。
【0036】
置換カップ内で関節接合する大腿骨骨頭の摩擦および摩耗をさらに減少させるために、内側シェルの内面は、ADLCまたは熱分解炭素のような適切な材料によってコーティングされる。
【0037】
非球面の関節接合部の最適な機能のために、内面形状の対称軸23は、図5bに示されるように、カップ全体の対称軸20に対してオフセットされているべきである。5~30度、より好ましくは15~25度である角度24は、歩行における関節の力(joint force)の範囲の中央に軸23をもってくる。骨盤内に埋め込まれた場合に、オフセット24は骨盤の上方向(superior direction)に置かれるべきである。
【0038】
股関節半置換のための寛骨臼カップの代替の構造を図6に示す。図5のカップに関して開示した内側形状を有する一重シェル25は、セメントレスの骨の内部成長(bony ingrowth)のために多孔質性の層26によって外側がコーティングされ、または、穴があけられた(reamed-out)寛骨臼内へのセメント固定に適合され、その場合は、外側表面は通常、単にテクスチャー加工(textured)され、または骨セメントに対する改善された界面のための他のそのような手段によって提供される。このタイプのカップは、従来の機械加工または付加製造によって生産され得る。セメントレス固定のために好ましい金属はチタン合金である。セメント型カップについては、コバルト-クロム合金を用いることもでき、ここでの選択は、ADLCコーティングに適切な一部のステンレススチールまで拡張することもできる。
【0039】
大腿骨骨頭を球面形状にシェービングするための機器27を図7に示す。それは、慎重に好ましくは手でのみ用いるべきである。リーマー27はほぼ半球体を覆い、すなわち約180度を含む角度を超えるリーマーの内面は切断溝28によって覆われている。リーマー内の開口部29は、大腿骨骨頭のリーミング中およびリーミング後に骨の小片を除去するのを可能にする。
【0040】
修正外科的処置が必要になった場合は、上述の本発明のカップ10を維持することができ、大腿骨コンポーネントのみを挿入することができる(図8)。ステム30の大腿骨頚部32の上に置かれた一次ヘッド31は、UHMWPEまたはポリ-エーテル-エーテル-ケトン(PEEK)のようなポリマーで作られた二次ヘッド33とスナップ止め(snap-fitted)される。次に、この二次ヘッドをカップ10内に関節接合することができる。
【0041】
特許出願US2013/0060345A(Tepic)に開示されるカップのない部分的股関節は、何百ものイヌで、骨盤内を突き通るヘッドのいかなる適応症もなく8年以上用いられている。場合によっては、イヌは、股関節全置換を用いるよりも幾分ゆっくりではあるが、数週間のうちに股関節の完全機能が復活する。他の場合では、回復はより遅く、定常状態に到達するまで数ヶ月かかる。現時点では、何が回復を遅らせるのか明らかでないが、関節周辺の骨の再構築のプロセスに関係していると言っても間違いではない。寛骨臼のリーミングは常に、寛骨臼の内壁を貫通せずに最大の深さまで行われるので、関節接合部に曝される骨は、高密度の軟骨下骨から、軟らかい海綿骨、場合により軟骨で覆われた領域の一部の残りまで、非常に異なっている。
【0042】
本発明に開示される手順において、大腿骨骨頭のリーミングは侵襲性がより低く、多くの場合において、関節接合する表面のちょうど下の骨は高密度かつ硬化性(sclerotic)であり、場合により、いかなる痛覚受容体もない。このことは、外科的処置の時間の短縮に加えて回復時間を短縮させるはずであり、したがって、最も重要な利益対コスト比の増大に寄与する。
図1
図2
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図5
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図8
【手続補正書】
【提出日】2024-09-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
股関節の半関節形成のための、
寛骨臼の表面再建(resurfacing)カップ10。
【外国語明細書】