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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167139
(43)【公開日】2024-12-02
(54)【発明の名称】消臭剤
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/013 20060101AFI20241125BHJP
【FI】
A61L9/013
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083539
(22)【出願日】2023-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】503156448
【氏名又は名称】株式会社アルサ
(74)【代理人】
【識別番号】100126712
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 督生
(72)【発明者】
【氏名】中田 大史
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180BB06
4C180BB07
4C180BB11
4C180BB12
4C180BB14
4C180BB15
4C180CA06
4C180CB01
4C180EA52Y
4C180EB05Y
4C180EB06Y
4C180EC01
4C180GG07
4C180LL20
(57)【要約】
【課題】天然成分を主成分としつつ原料の供給能力への依存度を低くできる消臭剤を提供する。
【解決手段】本発明の消臭剤は、ギンバイカの抽出液と、エタノール製剤と、水とを含む。これにより、高い消臭機能を発揮する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギンバイカの抽出液と、
エタノール製剤と、
水と、を含む消臭剤。
【請求項2】
前記ギンバイカの抽出液は、ギンバイカの花、葉および茎の少なくとも一つを水溶性抽出したものである、請求項1記載の消臭剤。
【請求項3】
前記水溶性抽出は、所定温度条件および所定時間条件に基づいて、ギンバイカの花、葉および茎の少なくとも一つが水に浸されるオートクレーブ抽出による、請求項2記載の消臭剤。
【請求項4】
前記ギンバイカの抽出液は、ギンバイカの花、葉および茎の少なくとも一つをアルコール抽出したものである、請求項1記載の消臭剤。
【請求項5】
前記ギンバイカの抽出液は、ギンバイカの花、葉および茎の少なくとも一つを熱水抽出したものである、請求項1記載の消臭剤。
【請求項6】
更に、ベチバーの根の抽出液を含む、請求項1記載の消臭剤。
【請求項7】
更に、乳酸およびクエン酸ナトリウムの少なくとも一方を含む、請求項1記載の消臭剤。
【請求項8】
前記水は、全体に対して略70体積%~77.5体積%であり、
前記エタノール製剤は、全体に対して、略22.5体積%~30体積%であり、
前記ギンバイカの抽出液は、残部である、請求項1記載の消臭剤。
【請求項9】
前記水は、水道水と精製水とを含む、請求項6記載の消臭剤。
【請求項10】
更に、精油を含む、請求項1記載の消臭剤。
【請求項11】
前記精油は、イランイラン、ミント、オリーブおよびユーカリ由来の少なくとも一つのものを含む、請求項8記載の消臭剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭機能を有する消臭剤であって、ギンバイカの抽出物を主成分とする消臭剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、体臭、ペットの臭い、タバコの臭い、ごみの臭い、飲食物の臭いなどに敏感に反応する人が増えている傾向がある。体臭であれば、自身から発せられる各人特有のにおいであったり、加齢臭であったりする。清潔感や衛生感を重視する傾向が強まるにつれ、自身から発せられる臭いを抑えたいという欲求が高まっている。この欲求は、日本社会の高齢化に伴って、ますます増加すると考えられる。
【0003】
また、都市型生活の進歩や清潔志向の高まりで、室内のペットの臭いやタバコの臭いを抑えたり、消したりしたいという欲求も高まっている。来客時に、即座に臭いを消したい場合はもちろんのこと、日常生活においても、臭いを抑えたくなることも多い。
【0004】
例えば、たばこやペットの臭いを室内で感じた場合に、これを早期に消したいという要望が生じることも多い。住宅、オフィスなどの室内に加えて、車内の臭いを消したいという要望が生じることもある。あるいは、衣服に着いた臭いを消したいという要望が生じることもある。
【0005】
更に、家庭での消臭欲求の延長として、家庭以外でも消臭をしたいとの欲求も高まっている。例えば、旅行先や出張先のホテルや旅館の室内を消臭したいとの欲求は年々高まっている。あるいは、旅行先や出張先で、衣服を消臭したいという要望も高まっている。これらの結果、ホテルや旅館の部屋に、消臭剤や芳香剤が設置されることも多くなっている。いわゆるスプレー方式の消臭ボトルなどが、ホテルや旅館の部屋に設置される。
【0006】
このように家庭はもちろんのことホテルの部屋などに設置される消臭剤は、化学的成分を主成分とするものが多い。化学合成された主成分を含む消臭剤は、不快な臭いと異なる臭いを生じさせて悪臭を気付きにくくしたり、悪臭の原因を分解したりする。化学合成された化学的成分が、これらの機能を生じさせるので、臭いに気付きにくくなったり、臭いが消えたりする点での効果を生じさせる。
【0007】
しかしながら、これらの化学合成された化学的成分を主成分とする消臭剤は、主成分が化学的成分であるために、副作用を生じさせることもある。例えば、化学的成分が、アレルギーを生じさせたり、臭い以外の不快感を生じさせたりすることがある。化学的成分を主成分とする消臭剤では、これらの副作用が全て事前確認されることは難しい。
【0008】
一方、自然志向の高まりに伴って、化学的成分を主成分とする消臭剤よりも、天然成分を主成分とする消臭剤が求められるようになってきている。化学的成分よりも天然成分を主成分とする消臭剤の方が、現代の価値観や嗜好に適するようになってきている。これは、我が国だけでなく、他国においても同様であり、特に先進国や新興国などの文化の成熟度が高い国において同様である。
【0009】
このような状況において、天然成分を主成分とする消臭剤が求められている。しかしながら、消臭に適した天然成分の原料となる動植物などを探すことは難しい問題がある。また、その精製や配合の難しさといった問題がある。加えて、天然由来の素材を主成分とすることでの、製造コストの高さや製造の難しさなども存在する。原料の安定調達の難しさもある。
【0010】
このように、天然成分を主成分とする消臭剤が求められているが、主たる技術が確立されてこなかったのが実情である。このため、家庭はもちろんのこと、ホテルや旅館などに設置される消臭剤は、まだまだこのような化学的成分を主成分とするものが多い。
【0011】
このような中、ハーブなどの天然成分に他の素材を混合した消臭剤をについての技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2022-171089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1は、天然のハーブより抽出された成分を含む水溶液に塩基性カルシウムまたはその水溶液を添加し、ハーブの芳香を消失させることなく、強塩基性を発現させることによって、天然物由来の芳香および/または効能と、除菌消臭機能を有する芳香性除菌消臭剤を開示する。
【0014】
特許文献1は、天然ハーブからの抽出成分を使用している。
【0015】
しかしながら、天然ハーブといっても、多種多様なものがあり、いずれを選択することが消臭機能として優れているかは不明である。また、塩基性カルシウムを添加することでの、人体や物体への負荷が生じうる可能性の問題もある。また、主原料である天然ハーブの栽培や入手に係るコストや手間が大きいという問題がある。
【0016】
主原料の調達の時間的スムーズさ、調達コストの低さなどは、最終製品である消臭剤を製造するうえで重要である。これらが実現できないと、製造コストが高くなり販売可能な小売価格とならない問題につながる。あるいは、必要となる量の製造ができない問題もある。
【0017】
天然ハーズは、国内ですべてが栽培できない問題や、栽培時期の制限なども相まって、調達コストが大きくなったり、調達のスムーズさが低かったりする問題がある。すなわち、特許文献1の消臭剤は、主原料の調達問題に起因して、コストや供給能力に問題がある。また、原料となる植物などが海外で栽培あるいは生産される場合には、調達が難しくなるなどの問題や、地政学的なリスクで調達コストが上がるなどの懸念もある。
【0018】
このように、従来技術の消臭剤においては、天然成分を主成分とすることが難しい問題や、供給能力の不安定さに起因するコスト増などの問題があった。
【0019】
本発明は、これらの課題に鑑み、天然成分を主成分としつつ原料の供給能力への依存度を低くできる消臭剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題に鑑み、本発明の消臭剤は、ギンバイカの抽出液と、エタノール製剤と、水と、を含む。
【発明の効果】
【0021】
本発明の消臭剤は、ギンバイカの抽出液を主成分とすることで、高い消臭能力を実現できる。特に、酢酸やアンモニアに対する消臭能力が高く、生活の中で生じる不快な臭いを低減して、生活の質を向上させることができる。
【0022】
また、本発明の消臭剤は、ギンバイカという天然植物の抽出液を主成分としている。これにより、人体アレルギーなどの副作用を生じさせにくい。また、消臭剤が衣服などに使用される場合には、衣服などへの影響も少なくて済む。
【0023】
また、ギンバイカは、日本国内で多くを栽培しており、また栽培することもできるので、原料調達リスクが低く、また調達コストも小さくすることもできる。
【0024】
結果として、普及させやすくなって、普及に従いさらにコストを低減させていく好循環を生み出すこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施の形態におけるアンモニアに対する消臭機能の実験結果の表である。
図2】本発明の実施の形態におけるアンモニアに対する消臭機能の実験結果のグラフである。
図3】本発明の実施の形態における酢酸に対する消臭機能の実験結果の表である。
図4】本発明の実施の形態における酢酸に対する消臭機能の実験結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の第1の発明に係る消臭剤は、ギンバイカの抽出液と、エタノール製剤と、水と、を含む
【0027】
この構成により、ギンバイカ由来の消臭成分を、高いレベルで消臭機能と下消臭剤を実現できる。
【0028】
本発明の第2の発明に係る消臭剤では、第1の発明に加えて、前記ギンバイカの抽出液は、ギンバイカの花、葉および茎の少なくとも一つを水溶性抽出したものである。
【0029】
この構成により、ギンバイカの有する消臭成分のレベルを高めて、有効な消臭機能を実現できる。
【0030】
本発明の第3の発明に係る消臭剤では、第2の発明に加えて、前記水溶性抽出は、所定温度条件および所定時間条件に基づいて、ギンバイカの花、葉および茎の少なくとも一つが水に浸されるオートクレーブ抽出による。
【0031】
この構成により、適切な消臭成分を、抽出液に含ませることができる。
【0032】
本発明の第4の発明に係る消臭剤では、第1の発明に加えて、前記ギンバイカの抽出液は、ギンバイカの花、葉および茎の少なくとも一つをアルコール抽出したものである。
【0033】
この構成により、ギンバイカの消臭成分を有効に抽出できる。
【0034】
本発明の第5の発明に係る消臭剤では、第1の発明に加えて、前記ギンバイカの抽出液は、ギンバイカの花、葉および茎の少なくとも一つを熱水抽出したものである。
【0035】
この構成により、ギンバイカの消臭成分を適切に含んだ抽出液が得られる。
【0036】
本発明の第6の発明に係る消臭剤では、第1の発明に加えて、更に、ベチバーの根の抽出液を含む。
【0037】
この構成により、消臭機能が高まったり、原料調達リスクを低減したりできる。バリエーションも広げることができる。
【0038】
本発明の第7の発明に係る消臭剤では、第1の発明に加えて、更に、乳酸およびクエン酸ナトリウムの少なくとも一方を含む。
【0039】
この構成により、消臭剤のバリエーションが広がる。
【0040】
本発明の第8の発明に係る消臭剤では、第1の発明に加えて、前記水は、全体に対して略70体積%~77.5体積%であり、
前記エタノール製剤は、全体に対して、略22.5体積%~30体積%であり、
前記ギンバイカの抽出液は、残部である。
【0041】
この構成により、消臭機能の高い消臭剤を実現できる。
【0042】
本発明の第9の発明に係る消臭剤では、第1の発明に加えて、前記水は、水道水と精製水とを含む。
【0043】
この構成により、製造の容易性やコストを適切に調整できる。
【0044】
本発明の第10の発明に係る消臭剤では、第1の発明に加えて、更に、精油を含む。
【0045】
この構成により、香りのバリエーションを増やすことができる。実用においてのメリットを高めることができる。
【0046】
本発明の第11の発明に係る消臭剤では、第10の発明に加えて、前記精油は、イランイラン、ミント、オリーブおよびユーカリ由来の少なくとも一つのものを含む。
【0047】
この構成により、人の好きな香りをもった消臭剤を実現できる。
【0048】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0049】
(実施の形態)
【0050】
(全体概要)
ギンバイカ(学名「Myrtus Communis」(英語ではマートル)は、地中海原産のフトモモ科の植物である。白い五弁の花をつけ、この花は結婚式などの祝いに使われる。わが国でも様々な場所で栽培されていたり、栽培の後で、自然に繁茂していたりする。観賞用などのために栽培されて、販売などでの流通がなされている。
【0051】
このギンバイカの葉、花および茎の少なくとも一つを、水溶性抽出などを行うことで、ギンバイカの抽出液が得られる。本発明の消臭剤は、このギンバイカの抽出液を使用する。ギンバイカの抽出液は、植物由来の効能を発揮するようになり、この効能の一つとして消臭機能を発揮するようになる。
【0052】
本発明の実施の形態の消臭剤は、このギンバイカの抽出液と、エタノール製剤と、水を含む。水とエタノール製剤により、ギンバイカの抽出液が適度に希釈されて、消臭剤としての使用が容易となる。例えば、家庭用の消臭剤としてスプレー式ボトルに収容される場合には、適切な濃度での消臭剤として収容される。また、エタノール製剤を含んでいることで、吹き付けられた消臭剤が蒸散して、消臭効果を高めることができる。
【0053】
あるいは、業務用として使用される場合にも、同様に適切な濃度であり蒸散により消臭効果を周辺まで広げることができる。消臭したい臭いは、空間に気体として広がっている。このため消臭剤もその空間に広がることで、消臭を実現できる。
【0054】
また、当然ながらギンバイカの抽出液は液体である。液体であるので上述のようにスプレーボトルやその他の容器に収容できる。収容したうえで、噴霧したり撒いたりなどの使用態様での使用が可能である。
【0055】
ここで、ギンバイカには、本来的に消臭機能が備わっている。ギンバイカの葉、花および茎の少なくとも一つを抽出した抽出液は、消臭機能を有している。また抽出液になっていることで、この消臭機能が凝集しており、ギンバイカの植物の状態よりも高い消臭機能を発揮する。
【0056】
(消臭機能の確認実験結果)
発明者は、このギンバイカの抽出液を使用した消臭剤の消臭機能の実験を行い、その消臭機能を確認した。実験においては、消臭対象の臭い成分として「アンモニア」と「酢酸」を使用した。アンモニアおよび酢酸の気体が存在する空間に、本発明の消臭剤を噴霧して、時間経過に合わせてこれらの臭いレベルが変化することを確認した。
【0057】
ここで、既存の消臭剤との消臭機能を比較するために、発明者が有する他の消臭剤であってギンバイカとは異なる植物由来の消臭剤についても、一緒に実験した。また、消臭機能を有する抽出液などを含まない液体を比較例の一つとした。これらの検体は次の通りである。
【0058】
1)ベチバーの抽出液を含む消臭剤1
2)ベチバーの抽出液を含む消臭剤2
3)ベチバーの抽出液を含む消臭剤3
4)ベチバーの抽出液を含む消臭剤4
5)本発明のギンバイカの抽出液を含む消臭剤
6)空の液体
【0059】
ここで、ベチバーとは次の通りのものである。
【0060】
ベチバー(学名「Vetiveria Zizaniodes」)は、インド原産のイネ科の多年草であり、乾燥させたその根が実施の形態1の粉末に用いられる。ベチバーは、すすきに似た葉を有し、その葉は、2~3mの永さに達する。加えて、その根は1~2mの地下深くに成長し、強い香を有している。この根が水蒸気蒸留して乾燥されることで、実施の形態で用いられるようになる。ベチバーの根は、乾燥されることで、本来的に有する効能を発揮するようになる。この効能は、消臭機能を含む。
【0061】
ベチバーの根は、種々の成分を含有しているが、主にベチベロールなどを含んでいる。このベチバーの抽出液を含む消臭剤は、十分な消臭機能を有するものとして、発明者がすでに確認をしている。これと同等の消臭機能があれば、消臭剤として十分なものであることが確認できる。
【0062】
1)~4)の検体は、このベチバーの抽出液を含む消臭剤である。
【0063】
(アンモニアに対する消臭機能の確認)
図1は、本発明の実施の形態におけるアンモニアに対する消臭機能の実験結果の表である。図2は、本発明の実施の形態におけるアンモニアに対する消臭機能の実験結果のグラフである。
【0064】
いずれも、アンモニアを充填した空間に検体の消臭剤1)~5)と、空の検体を噴霧して、時間経過とアンモニアの気体濃度(ガス濃度)を測定した結果を示している。アンモニアの気体濃度の大きさは、臭いレベルを表している。すなわち、濃度が低ければ臭いが低減していることを示している。
【0065】
図1図2から明らかな通り、検体5)である本発明の消臭剤は、ベチバーの抽出液を含む検体1)~4)と同等の臭い曲線を描いている。すなわち、同等の消臭機能を発揮していることが分かる。
【0066】
すなわち、アンモニアに対しては、本発明の消臭剤は、実用できる十分な消臭機能を有している。アンモニアは、人間が不快と感じる代表的な臭いの一つである(トイレなどを中心に感じる不快な臭いである)。このアンモニアへの消臭機能が十分であることは、生活臭を改善できることを示している。すなわち、本発明の消臭剤は、実用的であることが分かる。
【0067】
(酢酸に対する消臭機能の確認)
図3は、本発明の実施の形態における酢酸に対する消臭機能の実験結果の表である。図4は、本発明の実施の形態における酢酸に対する消臭機能の実験結果のグラフである。
【0068】
いずれも、酢酸を充填した空間に検体の消臭剤1)~5)と、空の検体を噴霧して、時間経過と酢酸の気体濃度(ガス濃度)を測定した結果を示している。酢酸の気体濃度の大きさは、臭いレベルを表している。すなわち、濃度が低ければ臭いが低減していることを示している。
【0069】
図3図4から明らかな通り、検体5)である本発明の消臭剤は、ベチバーの抽出液を含む検体1)~4)と同等の臭い曲線を描いている。すなわち、同等の消臭機能を発揮していることが分かる。
【0070】
すなわち、酢酸に対しては、本発明の消臭剤は、実用できる十分な消臭機能を有している。酢酸は、人間が不快と感じる代表的な臭いの一つである(人体から発せられる臭いであったり、生活空間での衣服や傷んだ食物などから出る臭いであったりする)。この酢酸への消臭機能が十分であることは、生活臭を改善できることを示している。すなわち、本発明の消臭剤は、実用的であることが分かる。
【0071】
次に各部の詳細やバリエーションについて説明する。
【0072】
(ギンバイカの抽出液の抽出)
ギンバイカの抽出液は、ギンバイカの花、葉および茎の少なくとも一つを水溶性抽出して得られる。花、葉および茎の全てを使用してもよいし、一部を使用してもよい。
【0073】
水溶性抽出は、所定温度条件および所定時間条件に基づいて、ギンバイカの花、葉および茎の少なくとも一つが水に浸されるオートグレープ抽出による。オートクレーブ抽出により、ギンバイカの成分が適切に抽出される。
【0074】
作業時間が短くて済むので、水溶性抽出液を得ることが容易となる。
【0075】
あるいは、熱水抽出されることでもよい。熱水抽出により、ギンバイカの成分が適切に抽出された抽出液が得られる。
【0076】
あるいは、アルコール抽出によりギンバイカの抽出液が得られてもよい。アルコール抽出によってもギンバイカの成分が適切に抽出された抽出液が得られる。
【0077】
このように、種々の方法で得られた抽出液が原料として本発明の消臭剤を製造することができる。この消臭剤は、生活臭やその他の臭いを消したい場合に、好適に使用できる。
【0078】
例えば、消臭剤は、液体であるので、スプレーやミスト状態で噴出できる容器に詰められて、様々な場所で使用可能である。使用者は、容器を把持した上で、内容物である消臭剤を噴出させて、室内を消臭したり、衣服を消臭したりする。衣服を消臭する際には、噴出される消臭剤を、衣服に吹きつけて使用しても良い。
【0079】
消臭剤は、液体であるので、容器に収容しやすい。このように容器に収容された消臭剤は、家庭はもちろんのこと、オフィスやホテルなどに備えておくことも容易である。例えば、ホテルや旅館には、匂いを気にする顧客のために、消臭剤が置かれていることも多い。これらの消臭剤の一つとして、あるいはこれらの消臭剤の置き換えとして、ホテルや旅館の部屋に設置されてもよい。これらの場所に設置されておくことで、匂いを気にする顧客は、不快を感じることが無くなる。
【0080】
あるいは、消臭剤は清掃に用いられてもよい。例えば、ホテルなどの宿泊施設、オフィス、工場、事業所、商業施設、介護施設、病院、診療所、健康施設などの清掃に用いられてもよい。これらに用いられることで、清掃に加えて、消臭効果も得られるからである。
【0081】
(追加的な混合物)
消臭剤は、ベチバーの根の抽出液を更に含むことも好適である。
【0082】
ベチバーの根は、種々の成分を含有しているが、主にベチベロールなどを含んでいる。
【0083】
ベチバー(学名「Vetiveria Zizaniodes」)は、インド原産のイネ科の多年草であり、乾燥させた根の水溶性抽出された抽出液が、消臭剤に更に混合される。ベチバーは、すすきに似た葉を有し、その葉は、2~3mの永さに達する。加えて、その根は1~2mの地下深くに成長し、強い香を有している。この根を乾燥させて、水溶性抽出、熱水抽出やアルコール抽出などで、抽出液が得られる。この抽出液は、ベチバーの根が本来的に有する消臭機能を発揮する。
【0084】
ギンバイカの抽出液の消臭機能に、ベチバーの根の抽出液の消臭機能が加わることで、十分な消臭機能を備える消臭剤を実現できる。
【0085】
このように、ベチバーの根の抽出液を更に含むことで、高い消臭機能を有する消臭剤を実現することができる。また、ベチバーの根の抽出液の原料はベチバーである。このため、ギンバイカとベチバーの両方を原料とすることで、原料調達コストを平準化したり、原料調達のリスクを低減したりすることもできる。
【0086】
また、ギンバイカとベチバーとでは、植物由来の匂いも異なる。これにより、ベチバーの抽出液を含む場合と含まない場合とで、消臭剤の使用時の匂いを変えることができる。使用者や消費者の好みに応じた消臭剤のラインアップを揃えることができ、より実用的になる。
【0087】
(乳酸およびクエン酸ナトリウム)
また、消臭剤は微量の乳酸およびクエン酸ナトリウムを含むこともよい。これらは、エタノール製剤に含まれていることもあるし、別途積極的に混合させてもよい。
【0088】
(精油)
消臭剤は、更に精油を含むこともよい。精油は、香りやこれに基づく効能を発揮できる。精油は、様々な天然素材から抽出された油成分であり、種々の効能に加えて、芳香成分を有する。
【0089】
本発明の消臭剤は、ギンバイカ特有の匂いを有する。この匂いが消臭に加えて香ることで、使用者に快適さをもたらすこともある。あるいは、この特有の匂いが苦手と言う使用者もいる可能性がある。
【0090】
精油は、様々な芳香成分を有しており、消臭剤に加えられることで、ギンバイカ特有の匂いを抑えると共に、他の匂いを生じさせる。結果として、消臭剤は、使用者の快適感を増しつつ、商品ラインアップを増加させることもできる。
【0091】
精油は、消臭剤全体に対して、0.03体積%以上0.1体積%以下の量で混合されれば良い。この混合比率であれば、精油による芳香が強くなりすぎることもない。
【0092】
精油は、製造上の便宜、商品ラインアップとの関係で、選択されればよい。一例として、イランイラン、ミント、オリーブおよびユーカリ由来の少なくとも一つのものを含む精油が用いられることも好適である。これが用いられると、非常によい香りが広がるからである。
【0093】
もちろん、これら以外の精油が用いられてもよい。製造者や使用者の都合によって、様々な精油が選択されればよい。混合比率も、上述の0.03体積%以上0.1体積%以下を外れても良い。
【0094】
(水)
消臭剤を構成する水は、水道水と精製水を含むことも好適である。水道水が使用されることで、製造コストが低減できるメリットがある。エタノール製剤を含むので、水道水が原料の一つとして使用されても大きな問題はない。
【0095】
また、精製水が一部もしくは全部に用いられてもよい。精製水が用いられることで、水道水の成分依存性が軽減されるからである。
【0096】
本発明の消臭剤は、使用の容易性のため液体である。この液体状態とするために、水は必要であり、水道水や精製水が使用されることで、液体状態での保管や使用が実現できる。
【0097】
(組成比率)
消臭剤は、一例として次のような組成比率を有することも好適である。
【0098】
水は、全体に対して略70体積%~77.5体積%であり、
エタノール製剤は、全体に対して、略22.5体積%~30体積%であり、
ギンバイカの抽出液は、残部である。
【0099】
このような組成比率の消臭剤であることで、消臭機能の高さと製造コストのバランスが高まる。また、使用時に適切に揮発するので、消臭対象を消臭しつつ、空間全体の消臭を高めることもできる。
【0100】
組成比率が定義されることで、製造工程に製造レシピを用意できるので、製造精度を向上させたり、大量生産に適用できたりするようになる。結果として、普及を促進させることができる。結果として製造コストも低減することができる。
【0101】
もちろん、これは一例であり、他の組成比率であってもよい。また、上述したベチバーの抽出液を含むこともよい。このとき、ベチバーの抽出液の組成比率を定義することもよい。
【0102】
また、このような組成比率であることで、消臭機能が適切に実現できる。勿論、上記以外の組成比率により製造されてもよい。加えて、ベチバーの抽出液を更に含むことでもよい。
【0103】
消臭剤は、例えば室内に噴出されると、室内のタバコの臭い、ペットの匂い、生ごみの匂い、汗の匂い、尿臭などを低減もしくは消失させることができる。また、消臭剤1は、衣服に吹きつけられると、衣服についたタバコの臭い、ペットの匂い、生ごみの匂い、汗の匂いなどを低減もしくは消失させることができる。特に、生ごみなどの生臭い匂いであるトリメチルアミン臭や、汗の匂いであるアンモニア臭を、低減もしくは消失させることができる。
【0104】
また、被介護者が使用する車いす、ベッド、トイレなどから発生する臭いを軽減することもできる。
【0105】
また、上述のように、精製水に混合されることで、保管や持ち運びも容易となりつつ、エタノール製剤によって、ベチバー抽出液の拡散が図られる。これらの混合が相まって、消臭剤1は、高い消臭効果を発揮できる。
【0106】
なお、実施の形態で説明された消臭剤は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
図1
図2
図3
図4