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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167141
(43)【公開日】2024-12-02
(54)【発明の名称】立体海藻
(51)【国際特許分類】
   A01K 61/75 20170101AFI20241125BHJP
【FI】
A01K61/75
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083546
(22)【出願日】2023-05-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年6月29日土木学会論文集B3(海洋開発),78(2):I_715-I_720に掲載の論文「基質を構成する合成繊維の形状がイセエビの幼生の着生に与える影響」に、イセエビ幼生(ガラスエビ)の生息環境を創出する人工海藻について記載されている。令和4年12月3日開催の「令和4年度日本水産増殖学会第20回大会」において、イセエビ幼生(ガラスエビ)の生息環境を創出する人工海藻について口頭で発表されると共に、同日配布の令和4年度日本水産増殖学会第20回大会予稿集に記載されている。2022年8月24日から26日まで東京ビックサイト東館(東京都江東区有明3丁目11-1)で開催された第24回「ジャパン・インターナショナル・シーフードショー」において、株式会社東京久栄の展示ブースで、イセエビ幼生(ガラスエビ)の生息環境を創出する「ガラスエビコレクター」のパンフレットを配布した。
(71)【出願人】
【識別番号】000151449
【氏名又は名称】株式会社東京久栄
(71)【出願人】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100166073
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 秀治
(72)【発明者】
【氏名】江幡 恵吾
(72)【発明者】
【氏名】豊福 真也
(72)【発明者】
【氏名】矢代 幸太郎
【テーマコード(参考)】
2B003
【Fターム(参考)】
2B003AA03
2B003BB09
2B003DD02
2B003DD03
2B003EE02
(57)【要約】
【課題】 ガラスエビの生育環境に適した隙間等を、所定ピッチの調節で対応することが可能となり、仮に流速がはやい海域で長期間使用しても芯材が切れ難く、ストレート状のものに比べて芯材から脱落することがなく、脱落が海洋環境に及ぼす影響を低減できる、立体海藻を提供する。
【解決手段】 可撓性を有する3本の組紐(11a、11b、11c)を撚り合わせたものであり、複数本のループ状の紐状体(12)を、該組紐(11a、11b、11c)の長さ方向へ所定ピッチで、それぞれ組み込むことで連結されており、該紐状体(12)が、該組紐(11a、11b、11c)に対して、組紐の周方向へ回転しながら、その長さ方向へ順次螺旋を描くように配されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する線紐帯体に、
複数本のループ状の紐状体を、該線紐帯体の長さ方向へ、それぞれ連結させたことを特徴とする、立体海藻。
【請求項2】
前記線紐帯体が、組紐構造によるものであることを特徴とする、請求項1に記載の立体海藻。
【請求項3】
前記紐状体の長さ方向の中間部が、前記線紐帯体にそれぞれ連結されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の立体海藻。
【請求項4】
可撓性を有する線紐帯体に、
複数本の紐状体を、該線紐帯体の長さ方向へ、それぞれ連結されており、
該紐状体が、該線紐帯体に対して、その長さ方向へ順次螺旋を描くように配されていることを特徴とする、立体海藻。
【請求項5】
可撓性を有する線紐帯体に、
複数本の紐状体を、該線紐帯体の長さ方向へ、それぞれ連結されており、
該紐状体が、該線紐帯体に対して、その長さ方向へ順次螺旋を描くように配されているものを複数本用い、
各線紐帯体を、螺旋状に組み合わせたことを特徴とする、立体海藻。
【請求項6】
前記紐状体が、ループ状のものであり、かつ、該各紐状体の長さ方向の中間部が前記線紐帯体にそれぞれ連結されていることを特徴とする、請求項4または5に記載の立体海藻。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体海藻に関し、例えば、イセエビ幼生(ガラスエビ)の生息環境を創出する立体海藻に関する。
【背景技術】
【0002】
イセエビは有用な水産資源で、その卵から孵化したフィロソーマ幼生が、沖合いに移動して約1年間の浮遊生活を過ごした後、沿岸域に回帰し、プエルルス幼生(ガラスエビ)に変態して海藻類に着生する。
現在、日本沿岸では磯焼けなどにより海藻類が減少し、これに伴い、プエルルス幼生の生息場も不足している。
このことから、沿岸に回帰したプエルルス幼生が成長できず、死滅している可能性がある。
【0003】
そこで、例えば特許文献1のように、ガラスエビ等の微生物や小動物、さらに海藻の胞子などの海中浮遊物を効果的に捕捉して、好ましい生育環境を実現する浮き魚礁が存在する。
該特許文献1に記載の浮き魚礁は、所定の長さと幅を有する漁網を束ねて、漁網を構成している線材の間に無数の空隙がある線状としてなる漁網ラインと、この漁網ラインの上端に連結されて漁網ラインを海中に垂直姿勢とするフロートと、上端にフロートを連結している複数の漁網ラインの下部を所定の間隔で海底に固定するアンカーとを備え、アンカーとフロートでもって、複数の漁網ラインを海中に垂直姿勢で配設し、海水に含まれる浮遊物質を漁網ラインで捕捉するようにしたものである。
すなわち、特許文献1に記載の浮き魚礁は、廃棄漁網を利用して、網を構成している線材の間に無数の空隙がある線状としてなる漁網ラインによって、ガラスエビの生育環境を実現するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-43212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の浮き魚礁では、漁網を利用した漁網ラインによってガラスエビの生育環境を実現するものなので、ガラスエビの生育環境に適した隙間等を形成するには限界があった。
【0006】
従って、より適した生育環境を提供することができる、立体海藻が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1に、
可撓性を有する線紐帯体に、
複数本のループ状の紐状体を、該線紐帯体の長さ方向へ所定ピッチで、それぞれ連結させたことを特徴とする、立体海藻。
【0008】
第2に、
前記線紐帯体が、組紐構造によるものであることを特徴とする、前記第1に記載の立体海藻。
【0009】
第3に、
前記紐状体の長さ方向の中間部が、前記線紐帯体にそれぞれ連結されていることを特徴とする、前記第1または第2に記載の立体海藻。
【0010】
第4に、
可撓性を有する組紐構造による線紐帯体に、
複数本の紐状体を、該線紐帯体の長さ方向へ所定ピッチで、それぞれ連結されており、
該紐状体が、該線紐帯体に対して、線紐帯体の周方向へ回転しながら、その長さ方向へ順次螺旋を描くように配されていることを特徴とする、立体海藻。
【0011】
第5に、
可撓性を有する組紐構造による線紐帯体に、
複数本の紐状体を、該線紐帯体の長さ方向へ、それぞれ連結されており、
該紐状体が、該線紐帯体に対して、線紐帯体の周方向へ回転しながら、その長さ方向へ順次螺旋を描くように配されているものを複数本用い、
各線紐帯体を、螺旋状に組み合わせたことを特徴とする、立体海藻。
【0012】
第6に、
前記紐状体が、ループ状のものであり、かつ、該各紐状体の長さ方向の中間部が前記線紐帯体にそれぞれ連結されていることを特徴とする、前記第4または第5に記載の立体海藻。
【0013】
ここで、立体海藻とは、例えば、イセエビ幼生(ガラスエビ)の生息環境に適した生育適正環境を提供とする、立体的な形状のものをいう。
【0014】
線紐帯体は、茎や芯となる部分を示している。
紐状体は、天然の藻場の密集環境を形成する役割を果たすものであり、線紐帯体の周囲に伸びる部分を示している。
【0015】
ここでいう線紐帯体とは、線体、紐体、帯体の何れかを意味する。
線体としては、例えば各種のワイヤ等が挙げられる。
また、紐体としては、強度確保と形状維持の役割を果たす中心部材の周囲に紐状部材を編み込んで構成する組紐構造のものや、各種のロープ、チェーン等が挙げられる。
さらに、帯体としては、例えば各種のテープ、各種のリボン等が挙げられる。
【0016】
組紐構造の種類は、限定されない。
例えば、各種の角組構造、各種の平組構造、各種の丸組構造等を採用できる。
【0017】
紐状体の素材は、任意であり、例えば、ビニロン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリプロピレン・ポリエチレン混合等が挙げられる。
【0018】
イセエビの種類は、限定されない。
例えば、イセエビ、アマミイセエビ、カノコイセエビ、ケブカイセエビ、ニシキエビなどが挙げられる。
イセエビ幼生とは、イセエビのフィロソーマ幼生が変態したプエルルス幼生(ガラスエビ)等をいう。
なお、立体海藻では、イセエビの幼生だけでなく、稚エビの生育にも利用できる。
【0019】
可撓性を有する線紐帯体の使用本数は、任意であり、1本のみ、または2本、3本以上を用いて螺旋状に絡めて組み合わせたものでもよい。
【0020】
前記紐状体により形成される隙間は、イセエビのプエルルス幼生から稚エビまでの生息空間としてだけでなく、この立体海藻内で餌料を生息させることで、イセエビ幼生等への餌料の提供もできる。
餌料としては、例えば、クモガニ類、ヨコエビ類、ワレカラ類、巻貝類、二枚貝類などが挙げられる。
【0021】
可撓性を有する線紐帯体に、複数本の紐状体を、該線紐帯体の長さ方向へ所定ピッチで、それぞれ連結させる構造は、特に限定されることなく任意である。
例えば、茎となる芯材である線紐帯体に、複数本の紐状体が、この線紐帯体の長さ方向へ所定ピッチで連結したもの等を採用できる。
線紐帯体の長さ(高さ)は、50cm~100cmとすることが好ましい。
【0022】
可撓性を有する線紐帯体及び紐状体の素材は、海水に対して耐久性を有するものであれば任意である。
紐状体の形状は、ストレート状とすることで、例えば、芯材である線紐帯体に対して貫通状態で連結することができる。
また、ループ状とすることで、例えば、線紐帯体を構成する組紐構造に編み込んだ状態で連結することもできる。
【0023】
紐状体の長さは、10cm~30cmとすることが好ましい。
【0024】
紐状体の幅(太さ)は、2.4mm~7.2mmとすることが好ましく、線紐帯体を構成する組紐構造に組み込むことも考慮すると、3.0mm~5.0mmとすることがより好ましい。
2.4mm未満では、紐状体が密着した状態となり、イセエビ幼生が入り込む隙間がほとんどなくなるので、好ましくない。
7.2mmより大きいと、隙間が大きくなりすぎて、イセエビ幼生が習性として入り込まなくなる。
【0025】
紐状体の比重は、0.8~1.4とすることが好ましい。
比重が0.8未満では、浮力が高く紐状体が上方に向けて集まるという不都合が生じる。
比重が1.4を超えれば、浮力が低く紐状体が下方に向けて集まるという不都合が生じる。
【0026】
線紐帯体に対する、各紐状体の連結位置も限定されない。
例えば、紐状体の長さ方向の中間部でも、一端部でもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、可撓性を有する線紐帯体に、複数本の紐状体を、該線紐帯体の長さ方向へ所定ピッチで、それぞれ連結させた構造なので、ガラスエビの生育環境に適した隙間等を、所定ピッチの調節で対応することが可能となる。
【0028】
芯材の役割を果たす線紐帯体として組紐構造を採用したものは、単体の紐の場合に比べて芯材の切断張力が大きく、仮に流速がはやい海域で長期間使用しても芯材が切れにくい。
【0029】
紐状体をループ状として、長さ方向の中間部を組紐構造に組み込んだものは、仮に流速がはやい海域で長期間使用しても、ストレート状のものに比べて芯材から脱落することがなく、脱落が海洋環境に及ぼす影響を低減できる。
【0030】
紐状体が線紐帯体に対して螺旋を描くように配置したものは、線紐帯体を中心としたどの方向から、ガラスエビが接近しても、隙間に進入しやすくなる。
【0031】
また、3本の線紐帯体を撚り合わせて螺旋状に組み合わせたものは、全体としての強度が高まると共に、天然の密集状態の海藻構造により近くなるので、ガラスエビや餌料生物の定着個体数の増加が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施例に係る立体海藻の説明図である。
図2図1の立体海藻の模式的な使用状態を示す説明図である。
図3図1の立体海藻の一部の説明図である。
図4図3に示すループ状の紐状体の拡大平面図である。
図5図1の立体海藻の海底投げ込みによる設置状態を示す説明図である。
図6図1の立体海藻のイセエビ礁への連結による設置状態を示す説明図である。
図7図1の立体海藻により育成されたイセエビ成体を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施例として、3本の線紐帯体を撚り合わせて螺旋状に組み合わせた立体海藻について説明するが、本発明は当該形態に限定されるものではない。
【0034】
図1図7において、符号1は、本発明の実施例に係る立体海藻である。
【0035】
図1及び図2に示すように、立体海藻1の上端側には、ブイ連結ロープ2が取り付けられている。
該ブイ連結ロープ2の反対側は、ブイ3に取り付けられている。
該ブイ3は、イセエビ幼生コレクターとしての立体海藻1を海中で自立浮遊させるものである。
【0036】
図1及び図2に示すように、立体海藻1の下端側には、固定用ロープ4が取り付けられている。
図2に示すように、該固定用ロープ4の反対側は、設置ブロック5に固定されている。
【0037】
図1に示すように、本実施例では、芯材となる長さ1m程度の3本の組紐11a、11b、11cを撚り合わせて螺旋状に組み合わせることで立体海藻1を構成したものであり、重量は約1kgである。
【0038】
図4に示すように、強度確保と形状維持の役割を果たすポリプロピレンとポリエチレンの混合物による中心部材111の周囲に紐状部材を編み込んで構成する組紐11には、プエルルス幼生(イセエビ幼生)6(図2参照)の捕獲及び保護育成を行う、ループ状の紐状体12の中間部が、編み込んだ状態で連結されている。
各紐状体12は、可撓性を有するポリプロピレン製の組紐11に、組紐11の長さ方向へ約2mmピッチで、編み込むことで連結させたものである(図3図4参照)。
【0039】
組紐11の長さ方向の両端部(上下端部)には、もやい結びにより図示しない一対の小リングが配設されている。
3本の紐状体12は、各上下端部において、図示しない上下一対の締結バンドに、各組紐11の対応する端部の小リングをそれぞれ掛止することで連結されている。
【0040】
各紐状体12は、長さ200mm、幅4.8mmのポリプロピレン製のものであり、各紐状体12の長さ方向の中間部が、組紐11に、それぞれ編み込まれた状態で連絡されている。
ここで、各紐状体12は、組紐11に対して、この組紐11の周方向へ回転しながらその長さ方向へ順次螺旋を描くように配置されている。
図示は省略するが、線紐帯体としての組紐11に、各紐状体12を配置したものは、単独であっても、立体海藻を構成する。
【0041】
紐状体12の比重は、1.1である。
【0042】
ブイ3は、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA樹脂)製で、直径195mm、重量675g、浮力39.2Nの略楕円体状の発泡浮子である。
ブイ3には、ビニロン製の長さ40cmのブイ連結用ロープ2が連結されている。
このブイ連結用ロープ2の下端部を、3本の組紐11a、11b、11cの各上端部に配された小リング(図示は省略)に挿通状態で締結することで、3本の組紐11a、11b、11cを螺旋状に組み合わせた立体海藻1の上方にブイ3が連結される。
【0043】
固定用ロープ4は、長さ40cmのビニロン製のものである。
固定用ロープ4の上端部が、3本の組紐11a、11b、11cの各下端部に配された小リング(図示は省略)に挿通状態で締結することで、立体海藻1の下方に設置ブロック5が取り付けられる。
【0044】
次に、図1図7を参照して、本発明の実施例に係る立体海藻1の使用方法を説明する。
図2中で、概念的なものとして図示したイセエビ幼生6が、沿岸域に回帰する5月~8月頃に、海岸から約180m沖の水深約3mの砂地の海域に、図5に示すように、船舶7から設置ブロック5による重り付きの立体海藻1を投げ込む。
設置ブロック5が海底に到達すると、ブイ3の浮力によって、立体海藻1が、海中で自立浮遊する。
【0045】
図6に示すように、立体海藻1は、潜水員が潜水して、海底に既設されたイセエビ礁8や蛇篭等に直接設置してもよい。
【0046】
その後、海水温が低下する10月頃まで立体海藻1を海底に放置する。
これにより、イセエビ幼生6が、海中で自立浮遊する立体海藻1の各紐状体12の隙間に入り込み、紐状体12にしがみつくことで、底生生活に移行する。
これと同時期に、イセエビ幼生6の餌料生物である図示しない小型貝類(二枚貝類等)や甲殻類(クモガニ科等)なども、これらの紐状体12に付着する。
【0047】
その結果、構造が簡易で廉価でありながら、紐状体12間内にイセエビ幼生11の生息空間を創出できるとともに、保護育成中のイセエビ幼生11や稚エビに対して、人手を介さず継続的に餌料を供給できる。
【0048】
さらに、立体海藻1が、ブイ3の浮力によって海中を自立浮遊するため、波浪耐性が高く、立体海藻1の設置場所を選ばない。
また、立体海藻1は、総重量が約2kgの軽量物であるため、取り扱いも容易である。
【0049】
芯材となる線紐帯体として組紐11を採用したため、単体の紐に比べて芯材の切断張力が大きく、仮に流速がはやい海域で長期間使用しても組紐11が切れにくい。
そして、紐状体12の芯材となる組紐11に、各ループ状の紐状体12を、その長さ方向の中間部で、それぞれ編み込んでいるため、仮に流速がはやい海域で長期間使用しても、ストレート状のものに比べて、芯材から紐状体12が抜けにくい。
これにより、紐状体12の流出が、海洋環境に及ぼす影響を低減できる。
さらには、ストレート状の場合に比べて、速い水流時でもイセエビ幼生6や餌料生物が紐状体12から離散しにくい。
【0050】
また、複数本の紐状体12を、組紐11の周方向へ回転しながらその長さ方向へ順次螺旋を描くようにそれぞれ連結している。
そのため、組紐11を中心としたどの方向からイセエビ幼生6が紐状体12に接近しても、何れかの紐状体12がこれを捕獲できる可能性が高い。
立体海藻1として、3本の組紐11を撚り合わせたものを採用することで、立体海藻1の強度が高まるとともに、幅の広い立体構造となって、イセエビ幼生6や餌料生物の定着個体数の増加が可能となる。
加えて波浪耐性が高いとともに、着生したイセエビ幼生(稚エビを含む)6は外敵から襲われにくい。
【0051】
その後、イセエビ幼生6の来遊期が終わり、紐状体12に生息しているイセエビ幼生6が稚エビに成長して岩場に移動し、その後、イセエビ成体9となる(図7を参照)。
【0052】
なお、立体海藻1は、稚エビが岩場に移動した段階で回収し、翌年以降に再利用できる。
【符号の説明】
【0053】
1 立体海藻
11 組紐
111 中心部材
11a 組紐
11b 組紐
11c 組紐
12 紐状体
2 ブイ連結用ロープ
3 ブイ
4 固定用ロープ
5 設置ブロック
6 イセエビ幼生
7 船舶
8 イセエビ礁
9 イセエビ成体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7