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特開2024-167158ポストレトルト流体流の処理を含むフッ化物イオン洗浄システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167158
(43)【公開日】2024-12-03
(54)【発明の名称】ポストレトルト流体流の処理を含むフッ化物イオン洗浄システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   C23G 3/00 20060101AFI20241126BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20241126BHJP
   B08B 3/08 20060101ALI20241126BHJP
   C23G 1/10 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
C23G3/00 Z
F27D17/00 104G
B08B3/08 A
C23G1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024060620
(22)【出願日】2024-04-04
(31)【優先権主張番号】18/307,120
(32)【優先日】2023-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 8, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダルトン、ジェイムス シー.
(72)【発明者】
【氏名】ロマス、ジョナサン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ポストレトルト機器の汚損を低減する、フッ化物イオン洗浄(FIC)システムを提供する。
【解決手段】FICシステム(100)は、1以上の部品(106)を作用流体によって洗浄するレトルト(102)と、第1の温度でレトルトを出るポストレトルト流体流を処理するポストレトルトサブシステム(140)と、ポストレトルトサブシステムの下流側のスクラバ(134)とを含む。ポストレトルトサブシステムは、レトルトと流体連通するセパレータ(142)を含む。セパレータは、ポストレトルト流体流を受け入れる入口(146)及びポストレトルト流体流をセパレータから出す出口(148)を有する。ポストレトルトサブシステムは、ポストレトルト流体流を第2の温度まで選択的に冷却する冷却装置(144)も含んでおり、第2の温度は第1の温度よりも低い。第2の温度で、セパレータ内のポストレトルト流体流からの微粒子の分離が可能となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化物イオン洗浄システム(100)であって、当該フッ化物イオン洗浄システム(100)が、
レトルト(102)に供給される作用流体を介して1以上の部品(106)を洗浄するレトルト(102)と、
第1の温度で前記レトルト(102)を出るポストレトルト流体流を処理するためのポストレトルトサブシステム(140)であって、前記ポストレトルトサブシステム(140)が、
前記レトルト(102)と流体連通したセパレータ(142)であって、前記レトルトから前記ポストレトルト流体流を受け入れるための入口(146)及び前記ポストレトルト流体流を該セパレータから出すための出口(148)を備える、セパレータ(142)、並びに
前記ポストレトルト流体流を第2の温度に選択的に冷却するための冷却装置(144)であって、第2の温度が第1の温度よりも低く、第2の温度で、前記セパレータ(142)内の前記ポストレトルト流体流から微粒子を分離できるようになる、冷却装置(144)
を備える、ポストレトルトサブシステム(140)と、
前記セパレータ(142)から排出された前記ポストレトルト流体流を受け入れるため、前記ポストレトルトサブシステム(140)の下流側のスクラバ(134)と
を備える、フッ化物イオン洗浄システム(100)。
【請求項2】
前記ポストレトルトサブシステム(140)の冷却装置(144)が、前記ポストレトルト流体流の第2の温度への冷却を促進するための、前記セパレータ(142)を囲繞する冷却コイル及び冷却ジャケットの少なくとも1つを備えているか、或いは
前記ポストレトルトサブシステム(140)の冷却装置(144)が、前記ポストレトルト流体流の第2の温度への冷却を促進するために冷却流体を注入するための冷却流体注入装置を備えており、前記冷却流体が、適宜、フッ化水素(HF)、アルゴン(Ar)、水素(H)又は窒素(N)を含む、請求項1に記載のフッ化物イオン洗浄システム(100)。
【請求項3】
前記セパレータ(142)が、第2の温度での前記ポストレトルト流体流からの微粒子の分離を速度駆動分離によって促進するサイクロンセパレータを含んでいるか、或いは
前記セパレータ(142)が、第2の温度での前記ポストレトルト流体流からの微粒子の分離を重力駆動分離によって促進する重力セパレータを含んでいる、請求項1に記載のフッ化物イオン洗浄システム(100)。
【請求項4】
前記セパレータに入る前記ポストレトルト流体流と前記セパレータから出る前記ポストレトルト流体流の間の熱伝達を促進するため、前記セパレータ(142)の入口(146)と出口(148)とが熱結合している、請求項1に記載のフッ化物イオン洗浄システム(100)。
【請求項5】
前記ポストレトルトサブシステム(140)が、前記セパレータ(142)を出る前記ポストレトルト流体流を第2の温度よりも高い第3の温度に選択的に加熱する加熱装置(150)をさらに備える、請求項1記載のフッ化物イオン洗浄システム(100)。
【請求項6】
前記ポストレトルトサブシステム(140)が、前記ポストレトルト流体流の第1の部分を処理するために前記レトルト(102)の下流側にあり、当該フッ化物イオン洗浄システム(100)が、前記ポストレトルト流体流の第2の部分を前記ポストレトルトサブシステムを迂回して選択的に導くためのバイパスチャネル(168)をさらに備える、請求項1に記載のフッ化物イオン洗浄システム(100)。
【請求項7】
レトルト(102)に供給される作用流体を介して1以上の部品(106)を洗浄するためのレトルト(102)と、第1の温度で前記レトルト(102)を出るポストレトルト流体流を処理するためのポストレトルトサブシステム(140)とを備えるフッ化物イオン洗浄システム(100)であって、前記ポストレトルトサブシステム(140)が、
前記レトルト(102)と流体連通したセパレータ(142)であって、前記レトルトから前記ポストレトルト流体流を受け入れるための入口(146)及び前記ポストレトルト流体流を該セパレータから出すための出口(148)を備える、セパレータ(142)と、
前記ポストレトルト流体流を第2の温度に選択的に冷却するための冷却装置(144)であって、第2の温度が第1の温度よりも低く、第2の温度で、前記セパレータ(142)内の前記ポストレトルト流体流から微粒子を分離できるようになる、冷却装置(144)と
を備えており、当該フッ化物イオン洗浄システム(100)が、前記冷却装置(144)と通信結合したコントローラ(118)をさらに備えており、前記コントローラ(118)が、第2の温度に対応する第1の設定点及び当該フッ化物イオン洗浄システムの1以上の操作パラメータに基づいて前記冷却装置を制御するように構成される、フッ化物イオン洗浄システム(100)。
【請求項8】
前記1以上の操作パラメータが、前記ポストレトルトサブシステムの上流側の前記ポストレトルト流体流の状態を含む、請求項7に記載のフッ化物イオン洗浄システム(100)。
【請求項9】
前記1以上の操作パラメータが、当該フッ化物イオン洗浄システムの制御スキームを含む、請求項7に記載のフッ化物イオン洗浄システム(100)。
【請求項10】
前記ポストレトルトサブシステム(140)が、前記セパレータ(142)から出る前記ポストレトルト流体流を第2の温度よりも高い第3の温度に選択的に加熱する加熱装置(150)をさらに備えており、コントローラ(118)が、加熱装置と通信結合していて、かつ第3の温度に対応する第2の設定点に基づいて加熱装置を制御するように構成されている、請求項7に記載のフッ化物イオン洗浄システム(100)。
【請求項11】
前記コントローラ(118)が、前記ポストレトルトサブシステム(140)の上流側の前記ポストレトルト流体流の測定温度又は当該フッ化物イオン洗浄システム(100)の1以上の操作パラメータに基づいて加熱装置(150)を制御するようにさらに構成されている、請求項7に記載のフッ化物イオン洗浄システム(100)。
【請求項12】
フッ化物イオン洗浄システム(100)の操作方法であって、当該方法が、
1以上の部品(106)を洗浄するためにレトルト(102)に作用流体を供給するステップと、
前記レトルト(102)からポストレトルト流体流をセパレータ(142)に導くステップであって、前記ポストレトルト流体流が第1の温度で前記レトルトを出る、ステップと、
前記ポストレトルト流体流を第1の温度よりも低い第2の温度に冷却するステップと、
前記セパレータ(142)内で第2の温度で前記ポストレトルト流体流から微粒子を分離するステップと、
前記ポストレトルト流体流を前記セパレータ(142)からスクラバ(134)に導くステップと
を含む、方法。
【請求項13】
前記フッ化物イオン洗浄システム(100)の1以上の操作パラメータに基づいて、第2の温度への前記ポストレトルト流体流の冷却を制御するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記セパレータ(142)から導かれる前記ポストレトルト流体流を第2の温度よりも高い第3の温度に加熱するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記フッ化物イオン洗浄システム(100)の1以上の操作パラメータに基づいて、第3の温度への前記ポストレトルト流体流の加熱を制御するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広義には、ガスタービン部品の補修作業に関し、具体的には、フッ化物イオン洗浄プロセスにおけるポストレトルト流体流の処理のためのサブシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブレード、シュラウド及びベーンのような航空用及び発電用タービン部品は、限定されるものではないが、ニッケル基、コバルト基及び鉄ニッケル基超合金材料を始めとする超合金材料から製造されることが多い。稼働中、タービン部品は高圧及び高温環境に暴露されるので、複雑で化学的に安定な熱酸化物が部品上に形成されることがある。かかる酸化物として、限定されるものではないが、アルミニウム、チタン及びクロムの酸化物並びにそれらの組合せが挙げられる。タービンは、耐用年数の延長又はタービンの性能の向上のため、定期的にオーバーホールされる。こうしたオーバーホールの際、タービン部品は、溶接又はろう付けを始めとする様々な補修作業に付されることがある。部品上の化学的に安定な熱酸化物の存在は、超合金の溶接又はろう付け性能を低下させる。そのため、補修前にタービン部品の洗浄によってこれらの酸化物を除去しておくことが、オーバーホールを成功裡に完了する上で欠かせないことが多い。
【0003】
タービン部品から化学的に安定な酸化物を除去するために、高温反応性雰囲気バッチ洗浄プロセスを用いることが知られている。一般に、フッ化物イオンの高い反応性に依存して洗浄するプロセスは、総称して「フッ化物イオン洗浄」(FIC)プロセスとして知られている。FICプロセスの公知の実施形態には、単一容積チャンバー(「洗浄レトルト」又は「レトルト」とも呼ばれる)、或いは均一な加熱及び作用流体の分配及び交換をもたらすように設計された分配マニホールドを備えるレトルトがある。動的FIC洗浄プロセスのような少なくとも幾つかの公知のFICプロセスは、操作中にフッ化水素のような作用流体を流すことができる。パルスFICプロセスのような他の公知のFICプロセスは、洗浄サイクルの有効性の向上を促すため圧力及び流量条件を交互に行う。さらに、少なくとも幾つかの公知のFICプロセスは、さらに頑固な酸化物の洗浄を容易にするため、増加した流量のフッ化水素で操作する。FICプロセスに際して、フッ化水素はレトルト内の部品に作用し、金属酸化物と反応して金属フッ化物を形成する。金属フッ化物は、次いで、過剰のフッ化水素、キャリアガス(例えばH)及び/又は反応副生成物(例えばHO)を含む流体流に溶解又は同伴され、洗浄レトルトを出る流体流中の金属フッ化物を除去することができる。酸化物の除去に加えて、フッ化水素は表面金属と反応して金属フッ化物を形成し得るので、潜在的な酸化物改質剤の除去が可能となる。FICプロセスの後には、部品の清浄な表面が残り、ろう付け及び/又は他の補修プロセスに付すことができる。
【0004】
典型的には、FICプロセスでは過剰のフッ化水素が使用され、洗浄レトルトから導かれる流体流(本明細書では「ポストレトルト流体流」ともいう)は、部品から除去される金属フッ化物だけでなく、フッ化水素も含んでいる。ポストレトルト流体流中のフッ化水素その他の反応副生成物は、レトルトからの排気をシステムから安全に放出できるように除去しなければならない。この目的のために、公知のFICプロセスでは、ポストレトルト流体流を浄化するとともにポストレトルト流体流からフッ化水素その他の反応副生成物を捕捉すべく、レトルトからのポストレトルト流体流をスクラバ及びその補助機器(例えば制御弁、センサ、ポンプその他の機器)を通して導く。この機器は比較的高価で複雑であり、レトルト作業温度をはるかに下回る温度で操作する必要がある。しかし、洗浄サイクル後のポストレトルト流体流は、スクラバサブシステム機器の操作温度よりも格段に高温であるので、ポストレトルト流体流は、スクラバサブシステムに導入する前に冷却を必要とすることがある。
【0005】
冷却中、高温でポストレトルト流体流に溶解した金属フッ化物は、温度低下に伴って溶液から析出する。ポストレトルト流体流の温度は溶液の飽和点よりも高いが、ポストレトルト流体流が冷却されてスクラバサブシステム装置に向かって導かれるにつれて、溶液が飽和又は過飽和になってしまうおそれがある。溶液から析出した金属フッ化物は、ポストレトルト配管及びスクラバサブシステム機器内で堆積する。堆積物は、わずか1回の操作サイクルであっても、ポストレトルト配管及びスクラバサブシステム機器(ポンプ、弁、シール面、計装など)に実質的な汚損を生じ、それらの性能に悪影響を与えるおそれがある。
【0006】
そこで、FICシステムにおいてポストレトルト機器の汚損を低減又は解消することが必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
一態様は、レトルトに供給される作用流体を介して1以上の部品を洗浄するレトルトと、第1の温度でレトルトを出るポストレトルト流体流を処理するためのポストレトルトサブシステムと、スクラバとを含むフッ化物イオン洗浄システムである。ポストレトルトサブシステムは、レトルトと流体連通したセパレータと、冷却装置とを含む。セパレータは、レトルトからポストレトルト流体流を受け入れるための入口と、ポストレトルト流体流をセパレータから出すための出口とを含む。ポストレトルトサブシステムは、ポストレトルト流体流を第2の温度まで選択的に冷却するための冷却装置も含んでおり、第2の温度は第1の温度よりも低く、第2の温度で、セパレータ内のポストレトルト流体流から微粒子を分離できるようになる。スクラバは、セパレータから排出されたポストレトルト流体流を受け入れるため、ポストレトルトサブシステムの下流側にある。
【0008】
別の態様は、レトルトに供給される作用流体を介して1以上の部品を洗浄するためのレトルトと、第1の温度でレトルトを出るポストレトルト流体流を処理するためのポストレトルトサブシステムとを含むフッ化物イオン洗浄システムである。ポストレトルトサブシステムは、レトルトと流体連通したセパレータを含む。セパレータは、レトルトからポストレトルト流体流を受け入れるための入口と、ポストレトルト流体流をセパレータから出すための出口とを含む。ポストレトルトサブシステムは、ポストレトルト流体流を第2の温度まで選択的に冷却するための冷却装置も含んでおり、第2の温度は第1の温度よりも低く、第2の温度で、セパレータ内のポストレトルト流体流から微粒子を分離できるようになる。フッ化物イオン洗浄システムは、冷却装置と通信結合したコントローラをさらに含む。コントローラは、第2の温度に対応する第1の設定点及びフッ化物イオン洗浄システムの1以上の操作パラメータに基づいて冷却装置を制御するように構成される。
【0009】
さらに別の態様は、フッ化物イオン洗浄システムの操作方法である。本方法は、1以上の部品を洗浄するために作用流体をレトルトに供給するステップと、レトルトからポストレトルト流体流をセパレータに導くステップであって、ポストレトルト流体流が第1の温度でレトルトを出る、ステップと、ポストレトルト流体流を第1の温度よりも低い第2の温度に冷却するステップと、セパレータ内で第2の温度でポストレトルト流体流から微粒子を分離するステップと、ポストレトルト流体流をセパレータからスクラバに導くステップとを含む。
【0010】
本開示技術の上記その他の特徴、態様及び利点については、添付図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって理解を深めることができよう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】例示的なフッ化物イオン洗浄システムの概略図。
図2】フッ化物イオン洗浄システムにおけるレトルト内のプロセスガス及びレトルト排気ライン内のポストレトルト流体流の公知の温度及び溶解度状態の概念図。
図3】ポストレトルトサブシステムを含む例示的なフッ化物イオン洗浄システムにおけるレトルト内のプロセスガス及びレトルト排気ライン内のポストレトルト流体流の温度及び溶解度状態の概念図。
図4図1に示すフッ化物イオン洗浄システムに含めることのできる第1の例示的なポストレトルトサブシステムの概略図。
図5図1に示すフッ化物イオン洗浄システムに含めることのできる第2の例示的なポストレトルトサブシステムの概略図。
図6図1に示すフッ化物イオン洗浄システムに含めることのできる第3の例示的なポストレトルトサブシステムの概略図。
図7図1に示すフッ化物イオン洗浄システムに含めることのできる第4の例示的なポストレトルトサブシステムの概略図。
【0012】
別途記載されていない限り、本願に添付した図面は、本開示技術の実施形態の特徴を例示するものである。これらの特徴は、本開示技術の1以上の実施形態を包含する多種多様なシステムに適用できると思料される。そのため、図面は、本明細書で開示する実施形態の実施に必要とされる当業者に公知の慣用的特徴をすべて含んでいるわけではない。複数の図面間で同様の特徴は、同様の符号を用いて示してある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書に記載の例示的な実施形態は、洗浄レトルトから導かれる流体流(本明細書では「ポストレトルト流体流」ともいう)の処理を含む例示的なフッ化物イオン洗浄システム及び方法に関するものであり、下流の処理機器(配管、センサ、ポンプ、弁、スクラバなど)の汚損を軽減又は解消するためにポストレトルト流体から微粒子を分離するポストレトルトサブシステムを用いる。微粒子は、ポストレトルト流体流に溶解した微粒子の適切な画分が溶液から析出する温度までポストレトルト流体流を冷却するポストレトルトサブシステムによってポストレトルト流体流から分離される。微粒子(金属フッ化物など)は、セパレータ内で冷却ポストレトルト流体流から分離される。セパレータは、例えば、速度駆動分離(例えばサイクロンセパレータ)又は重力駆動分離(例えば低速コールドトラップ)によって、ポストレトルト流体流から微粒子を分離し得る。ポストレトルトサブシステムは、レトルトとセパレータの間のポストレトルト流体流を冷却する冷却装置(例えばインライン熱交換器)及び/又はセパレータ内のポストレトルト流体流を冷却する冷却装置(例えばセパレータを囲繞する冷却管又は冷却ジャケットを介して)を含む。例示的なフッ化物イオン洗浄プロセスで用いられる作用流体(例えばフッ化水素)は、濾過媒体を簡単に劣化させてしまう粘ついた環境を生じるので、ポストレトルトサブシステムは好適には濾過媒体なしで操作する。
【0014】
例示的な実施形態では、処理したポストレトルト流体流は、ポストレトルトサブシステムからスクラバに向かって導かれる。スクラバは、ポストレトルト流体流を浄化し、過剰の作用流体(フッ化水素など)その他のガス状副生成物をポストレトルト流体流から除去するために操作する。この点に関して、ポストレトルトサブシステム段階でのポストレトルト流体流の処理がポストレトルト流体流からの固体微粒子の除去に実質的に制限されるように、セパレータ及び冷却装置を独立に制御してもよい。様々な補助機器(例えば制御弁、ポンプ、配管)をポストレトルトサブシステムとスクラバの間に結合してもよい。ポストレトルトサブシステムは、下流の補助機器で起こりかねない汚損の低減及び/又は解消に資するように操作して、この機器の耐用年数を延ばし、汚損機器の洗浄及び/又は交換に付随するメンテナンス及びダウンタイムのコストを削減し、使用し得る機器に融通性(例えば機器のための材料の低コスト化によって)をもたらす。
【0015】
幾つかの実施形態では、ポストレトルトサブシステムは、沈殿物がポストレトルト流体流から分離される温度よりも高い適切な温度にポストレトルト流体流を再加熱する加熱装置を含む。ポストレトルト流体流は、補助機器(真空ポンプなど)及び/又はスクラバの要件によって規定される操作温度範囲内の温度に再加熱することができる。付加的及び/又は代替的に、ポストレトルトサブシステム後にポストレトルト流体流に溶解したまま残る微粒子が下流の補助機器上に堆積する傾向を低減又は解消するのに資するため、ポストレトルト流体流は、ポストレトルト流体流の飽和点よりも高い温度に再加熱してもよい。加熱装置は、例えば、セパレータの出口を囲む加熱ジャケット及び/又は加熱コイル並びに/或いはセパレータの出口の周囲又は近傍に結合したインライン熱交換器であってもよい。
【0016】
幾つかの実施形態では、冷却装置及び/又は加熱装置はコントローラと通信結合し得る。コントローラは、ポストレトルト流体流をセパレータ内での析出物の分離に適した温度に冷却装置で冷却及び/又はセパレータから出るポストレトルト流体流を適切な温度に加熱装置で加熱するように選択的に制御する。コントローラは、冷却装置及び/又は加熱装置をそれぞれの温度設定点に基づいて制御してもよい。加えて、コントローラは、フッ化物イオン洗浄プロセス及び/又はシステムに関連する1以上の操作パラメータに基づいて、冷却装置及び/又は加熱装置を制御してもよい。例えば、コントローラは、冷却装置の上流のポストレトルト流体流の状態(例えば流量、温度及び/又は圧力)に関連する操作パラメータ及び/又はフッ化物イオン洗浄プロセス及び/又はシステムの制御スキームに関連する操作パラメータを利用して、動的プロセス及びシステム状態に応じてセパレータ内での析出物の分離に適した温度に冷却装置を制御することができる。コントローラは、フッ化物イオン洗浄プロセス及び/又はシステムに関連する操作パラメータを利用して、動的プロセス及びシステム状態に応じて、ポストレトルトサブシステム段階後にポストレトルト流体流を適切な再加熱温度に再加熱するように加熱装置を制御することもできる。付加的及び/又は代替的に、コントローラは、フィードバック(例えば加熱装置を適切な再加熱温度設定点に制御するためセパレータの下流側の温度センサからの)を使用してもよい。好適には、コントローラで制御される再加熱温度は、最低温度超及び最大臨界温度未満(すなわち、操作温度範囲内)に維持してもよく、最低温度及び最大臨界温度は各々補助機器及び/又はスクラバの要件によって規定される。
【0017】
本明細書に開示する例示的な実施形態は、下流の配管及び機器でのの低減又は解消に資するために、ポストレトルト流体流からの微粒子の分離を促進する。こうして、下流の配管及び機器の耐用年数の増大が促進され、汚損した配管及び機器の分解及び清掃に付随するメンテナンス及びダウンタイムコストが大幅に削減又は解消される。さらに、ポストレトルト流体流からの微粒子の分離によって、スクラバへと導かれるポストレトルト流体流を取り扱う下流装置の汚損及び劣化のリスクが大幅に低減するので、装置に低コストの材料を用いることができる。さらに、ポストレトルト流体流の操作条件は、ポストレトルトサブシステムに含まれる冷却及び/又は加熱装置と、冷却及び/又は加熱装置を制御し得るコントローラとを用いて制御し得る。コントローラは、フッ化物イオン洗浄プロセス及び/又はシステム内の動的条件(例えば洗浄レトルトに供給される作用流体の量及び/又はレトルト内の温度状態の変化)を監視し、ポストレトルト流体流の適切な冷却及び/又は加熱がもたらされるように、動的プロセス及び/又はシステム状態に応じて冷却及び/又は加熱装置を制御することができる。こうして、本明細書に開示する例示的な実施形態は、公知のフッ化物イオン洗浄プロセスに付随する幾つかの短所を解消する。
【0018】
本明細書で開示するフッ化物イオン洗浄(FIC)プロセスは、水素増強混合ガスFICプロセス(以下、「H-FIC」という)を含んでいてもよく、物品の表面及び亀裂から酸化物を除去する。H-FICプロセスは、熱安定酸化物が表面に形成された金属物品に作用させるため、水素(H)キャリアガス中のフッ化水素(HF)を洗浄レトルトに供給することを含む。H-FICプロセスは、金属物品、例えば、限定されるものではないが、超合金製航空用及び発電用タービンベーン、シュラウド、ブレードなどの部品(以下「タービン部品」)の洗浄に使用できる。
【0019】
別途記載されていない限り、本明細書において、「略」、「実質的に」及び「約」などの近似表現は、それらで修飾された用語が、絶対的又は厳密なものではなく、当業者に自明の近似的なものにすぎないことを示す。したがって、「約」、「略」及び「実質的に」のような用語で修飾された値はその厳密な数値に限定されない。少なくとも幾つかの事例では、近似表現は、その値を測定する機器の精度に対応する。さらに、別途記載されていない限り、「第1」、「第2」などの用語は、本願では単なる付票にすぎず、それらが付されたものに、数的、位置的又は階層的要件を課すものではない。さらに、例えば「第2」という場合、例えば「第1」以下又は「第3」以上のものの存在を必要とするものでも、排除するものでもない。
【0020】
本明細書において、単数形で記載したものであっても、前後関係から別途明らかでない限り、複数の場合も含めて意味する。「任意」又は「適宜」という用語は、その用語に続いて記載された事象又は状況が起きても起きなくてもよいことを意味しており、かかる記載はその事象が起こる場合と起こらない場合を包含する。さらに、「一実施形態」という場合、記載された特徴を備える追加の実施形態の存在を除外するものとして解釈すべきではない。別途明示されていない限り、特定の性質を有する1以上の構成要素を「備える」、「含む」又は「有する」実施形態は、その性質をもたない追加の構成要素を含んでいてもよい。
【0021】
図1は、H-FICシステムのような例示的なFICシステム100の概略図である。ただし、その他のH-FICシステム構成も開示範囲内である。FICシステム100は、1以上の部品106を収容できるサイズの内部104を有するレトルト102(「反応チャンバ」としても知られる)を含む。レトルト102は、FIC洗浄雰囲気に適合する材料から形成される。例えば、レトルト102は、限定されるものではないが、ニッケル基、鉄基及びコバルト基合金から形成し得る。
【0022】
好適には、部品106は、限定されるものではないが、ニッケル基、コバルト基及び鉄-ニッケル基超合金材料を始めとする超合金材料から形成されたタービン部品106である。タービン部品106は、その表面の少なくとも一部及び/又は部品106に形成された亀裂内に形成された、複雑で化学的に安定な熱酸化物を含んでいることがある。熱酸化物としては、限定されるものではないが、アルミニウム(例えばAl)、チタン(例えばTiO)、クロム(例えばCr)及びそれらの組合せの酸化物が挙げられる。熱酸化物は、タービン部品106の稼働中に、例えば、部品106の高圧及び高温環境への曝露に起因して形成される。
【0023】
FICシステム100は、レトルト102に隣接するヒータ108、及びレトルト102にプロセスガスを供給するガス分配システム110も備える。ヒータ108としては、例えば、電気ヒータが挙げられる。ヒータ108は、レトルト102の内部104に反応性雰囲気を生じるのに適した温度に内部104を加熱するように操作し得る。反応性高温雰囲気によって、ガス分配システム110によって供給されるプロセスガスに含まれる作用流体がタービン部品106に作用できるようになる(例えば約1050℃超の温度)。ガス分配システム110は、不活性ガス(例えばアルゴンAr)の供給源112、キャリアガス(例えば水素H及び/又は窒素N)の供給源114、及び作用流体の供給源116を含む。作用流体は、好適には、液体又は気体フッ化水素又はフッ化水素の前駆体である。例えば、作用流体は、レトルト102内の十分な温度でHとその場で反応してフッ化水素を形成する気体又は液体のフッ素含有前駆体(例えばテトラフルオロエタン)であってもよい。
【0024】
FICシステム100は、レトルト102、ヒータ108及びガス分配システム110と通信結合したコントローラ118も含む。コントローラ118は、FICプロセス中にレトルト102の内部104の状態を制御する。例えば、コントローラ118は、FICプロセス中に内部104を適切な温度に加熱するようにヒータ108を制御し得る。コントローラ118は、供給源112からの不活性ガス、供給源114からのキャリアガス及び供給源116からの作用流体の供給を、例えばFICプロセスの段階及びレトルト102の内部104の温度に応じて適切な流量に調量するため、ガス分配システム110を制御してもよい。コントローラ118は、レトルト102の内部104及び/又はレトルト102の上流側(例えばプロセスガス供給ライン128に沿って)の操作パラメータを監視する1以上のセンサ126と通信結合していてもよい。例えば、1以上のセンサ126は、温度センサ、圧力センサ、流量センサ、その他FICプロセス及び/又はFICシステム100の操作パラメータを測定する任意のセンサを含むことができる。コントローラ118は、1以上のセンサ126から測定値を受信し、監視したFICプロセスの操作パラメータに基づいて決定及び/又は制御動作を実行し得る。
【0025】
コントローラ118は、任意の適切なコンピューティングデバイス又はコンピュータシステムであってもよく、1以上のプロセッサ120及びメモリ領域122を含む。プロセッサ120は、メモリ領域122に記憶された命令を実行する。本明細書で用いる「プロセッサ」という用語は、中央処理装置、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、縮小命令セット回路(RISC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、論理回路並びに本明細書に記載の機能を実行することができる任意の他の回路又はプロセッサをいう。以上は例示であり、「プロセッサ」という用語の定義及び/又は意味を限定するものではない。さらに、1以上のプロセッサ120は、1つのコンピューティングデバイス内にあってもよいし、並行して動作する複数のコンピューティングデバイス内にあってもよい。
【0026】
メモリ領域122に格納されるのは、例えば、入力を受信して処理し、処理された入力に基づいてFICシステム100のFIC操作パラメータを制御するためのプロセッサ実行可能命令である。メモリ領域122は、限定されるものではないが、プロセッサ実行可能命令及び/又はデータを格納及び/又は検索するのに適した任意のコンピュータ操作ハードウェアを含む。メモリ領域122は、ダイナミックRAM(DRAM)又はスタティックRAM(SRAM)などのランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、消去可能なプログラマブル読取り専用メモリ(EPROM)、電気的に消去可能なプログラマブル読取り専用メモリ(EEPROM)及び不揮発性RAM(NVRAM)を含むことができる。さらに、メモリ領域122は、RAID(Redundant Array of Inexpensive Disks)構成において、ハードディスク又はソリッドステートディスクなどの複数の記憶ユニットを含んでいてもよい。メモリ領域122は、ストレージエリアネットワーク(SAN)及び/又はネットワーク接続ストレージ(NAS)システムを含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、メモリ領域122は、コントローラ118に統合されたメモリを含む。例えば、コントローラ118は、メモリ領域122として1以上のハードディスクドライブを含んでいてもよい。メモリ領域122は、コントローラ118の外部にあるメモリも含んでいてもよく、複数のコンピューティングデバイスによってアクセスし得る。以上のメモリタイプは例示にすぎず、プロセッサ実行可能な命令及び/又はデータの格納に使用し得るメモリのタイプについて限定するものではない。
【0027】
コントローラ118は、オペレータからの入力を受け付けるためのユーザ入力装置124又はユーザインターフェース124も含む。情報は、FICプロセスについて選択される1以上の操作パラメータであってもよい。入力デバイス124は、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、マウス、スタイラス、タッチセンシティブパネル(例えばタッチパッド又はタッチスクリーン)又はオーディオ入力デバイスを含むことができる。タッチスクリーンのような部品は、コントローラ118の出力装置(例えばメディア出力部品)と入力装置124の両方として機能し得る。コントローラ118は、例えば、マウス及びキーボードなどのユーザインターフェース124に付属するコンピュータ周辺機器のように、追加の入力チャネルを含んでいてもよい。或いは、他のコンピュータ周辺機器、例えば、限定されるものではないが、スキャナ又はタッチスクリーンも使用し得る。さらに、本明細書に記載の実施形態では、出力チャネルは、限定されるものではないが、オペレータインターフェースモニタを含む。
【0028】
コントローラ118は、1以上の通信インターフェース(図示せず)を介してFICシステム100の様々な部品と通信結合し得る。通信インターフェースは、プロセッサ120と通信結合してもよく、1以上の他のデバイス(例えば1以上のセンサ126、ヒータ108及び/又はガス分配システム110など)と通信結合してもよく、入力チャネルとして機能しながら、これらのデバイスに関する入力及び出力作業を実行する。例えば、例示的な通信インターフェースとしては、限定されるものではないが、有線ネットワークアダプタ、無線ネットワークアダプタ、移動体通信アダプタ、シリアル通信アダプタ又はパラレル通信アダプタが挙げられる。通信インターフェースは、1以上のリモートデバイスからデータ信号を受信し、データ信号を1以上のリモートデバイスに送信し得る。例えば、幾つかの実施形態では、コントローラ118の通信インターフェースは、1以上のセンサ126、ヒータ108及び/又はガス分配システム110の間でデータ信号を送受信し得る。
【0029】
運転中、1以上のタービン部品106は、レトルト102の内部104に配置される。レトルト102の内部104は、ヒータ108によって、FICプロセスに適した温度に加熱される。例えば、内部104は、約950℃超の温度、約1000℃超の温度又は約1050℃超の温度に加熱される。これらの温度で、供給源116からレトルト102に供給されるフッ化水素は、部品106上に形成された金属酸化物(例えばAl、TiO及びCr)と反応して、以下の例示的な式に従って金属酸化物を金属フッ化物に変換する。
6HF+Al=2AlF+3H
4HF+TiO=TiF+2H
6HF+Cr=3HO+2CrF+F
【0030】
内部104が適当な温度に加熱されると、プロセスガスがガス分配システム110を介してレトルト102に供給される。プロセスガスの供給は、少なくとも部分的には、内部104の温度に依存して制御される。例えば、内部104が加熱されると、内部104が供給源114から供給されるキャリアガスに適切な温度に達するまで、供給源112から不活性ガスが供給される。例えば、水素(H)をキャリアガスとして供給する場合、供給源114からHを供給する前に、内部104がHの引火点を優に上回る温度(例えば約700℃超、例えば約750℃超)に達している必要があることがある。最終的に、内部104が適切な温度に達したときに、作用流体(例えばフッ化水素又はフッ素含有前駆体)が供給源116から供給され、部品106上に形成された金属酸化物にフッ化水素を作用させるための反応性雰囲気を生じる。内部104の圧力レベルは、レトルト102に追加のプロセスガスを選択的に供給すること及び/又は内部104からプロセスガスを選択的に吸引すること(例えばレトルト102とレトルト排気ライン132を介して流体連結した真空ポンプ130を作動させること)によって制御し得る。例えば、FICプロセスをレトルト102内で大気圧で実施してもよいし、或いはFICプロセス中に内部104の圧力レベルを大気圧未満に(例えばコントローラ118を介して)制御してもよい。
【0031】
レトルト102に供給された作用流体(例えばフッ化水素)は、タービン部品106に作用し、金属フッ化物はレトルト102内のプロセスガス及び反応副生成物(例えばHO)に取り込まれ、それらに溶解する。FICプロセスの途中及び/又は後で、ポストレトルト流体流は、真空ポンプ130によってレトルト102から排気ライン132を通して抜き取られる。ポストレトルト流体流は、過剰の作用流体(例えばフッ化水素)及びキャリアガス(H)だけでなく、タービン部品106に作用する作用流体によって形成される金属フッ化物及び他の反応副生成物(例えばHO)を含む。
【0032】
幾つかの実施形態では、FICプロセスの操作サイクルは、レトルト102の操作条件(例えば、様々な操作条件の中でも、特にレトルト102に供給されるプロセスガスの流量、内部104の温度、内部104の圧力)の変更を含むことある。変更は、特定のFICプロセスの制御スキーム又は「レシピ」によって決定及び/又は規定される。制御スキームは、例えば、レトルト102内の温度及び/又は圧力及びプロセスガスの流量(例えばフッ化水素及び/又はHの流量)のような操作条件の設定点を含むことができる。制御スキームは、コントローラ118によって、所望のガス濃度で所与の期間でこれらの設定点まで上昇及び安定化させるために、用いることができる。さらに、FICプロセスの操作サイクルは、例えば、動的制御及び動的パルス制御モードの間のような異なる制御モード間での操作を含んでいてもよく、例えば、異なる操作パラメータ設定点を有する異なるサブコントロールレジメンが確立される、さらに一般的に述べると、FICプロセスの1回の操作サイクルの間に、レトルト102内で温度、圧力及び/又は流量の数多くの変更を経てもよい。
【0033】
依然として図1を参照すると、FICシステム100は、FIC洗浄プロセスの操作サイクル中及び/又は操作サイクル後にレトルト102からポストレトルト流体流を抜き出すレトルト排出ライン132を含む。ポストレトルト流体流は、レトルト102から排気ライン132を通ってスクラバ134へと導かれる。ポストレトルト流体流は、スクラバ134で、ポストレトルト流体流中のフッ化水素その他の反応副生成物を除去するために処理される。例えば、スクラバ134は、ポストレトルト流体流中の過剰の作用流体(例えばフッ化水素)と反応して、安定な高融点フッ素化合物及び無毒性副生成物を形成する高融点犠牲材料の充填床を含むことができる。幾つかの実施形態では、犠牲材料は、酸化カルシウム(CaO)、炭酸カルシウム(CaCO)、NaCl及びそれらの組合せのような塩を含むことができる。例えば、CaO及び/又はCaCOのようなカルシウム塩は、ポストレトルト流体流中のフッ化水素作用流体と高温で反応して、室温で容易に廃棄し得る無害なCaF廃棄物と、ガス状のHO及びCO副産物を形成するが、ガス状HO及びCO副産物は残りのポストレトルト流体流と共にスクラバ排気出口136から放出し得る。適宜、ポストレトルト流体流をスクラバ134で処理して、ポストレトルト流体流中に残存する金属フッ化物を除去してもよい。例えば、ポストレトルト流体流中にフッ化物として存在する金属元素は、金属フッ化物を鉄のような犠牲純金属と反応させることによって、金属合金に還元してもよい。幾つかの実施形態では、FICシステム100は、並列に動作する2以上のスクラバ134及び/又は直列に動作する一次スクラバ134及び二次スクラバ134を含んでいてもよい。
【0034】
真空ポンプ130は、スクラバ134の上流側にあって、レトルト102内の圧力レベルをパルス又は調整するために選択的に操作し得る。真空ポンプ130の操作は、タービン部品106の表面からの半揮発性金属フッ化物の蒸発を促進して、新鮮な作用流体(例えばフッ化水素)が部品106に作用できるようになり、金属フッ化物へと変換される金属酸化物の量が増える。好適には、真空ポンプ130は、コントローラ118と通信結合する。コントローラ118は、真空ポンプ130の操作を制御して、レトルト102内の圧力を維持するための制御動作を実行し得る。真空ポンプ130は、ポストレトルト流体流をスクラバ134へと導き、スクラバ134に入るポストレトルト流体流を制御するように操作し得る。さらに詳しく説明する通り、ポストレトルト流体流は、排気ライン132内で温度の実質的な低下を経験する。そこで、ポストレトルト流体流は、真空ポンプ130に入るときに水分を含んでいてもよい。好適には、真空ポンプ130は、排気ライン132に沿って真空をもたらしつつ、ポストレトルト流体流中の水分を取り扱うように動作し得る液封式真空ポンプである。
【0035】
レトルト102とスクラバ134の間の排気ライン132を通るポストレトルト流体流は、制御弁138を介して付加的及び/又は代替的に制御し得る。制御弁138は、コントローラ118で排気ライン132を通るポストレトルト流体流を制御できるように、コントローラ118と通信結合してもよい。例示的な実施形態では、制御弁138は、真空ポンプ130の上流側にある。制御弁138は、代替的に、真空ポンプ130の下流側にあってもよく、或いは真空ポンプ130の下流側に追加の制御弁138が含まれていてもよい。
【0036】
図2は、公知のFICシステムにおける、レトルト102内のプロセスガス及びレトルト102とスクラバ134の間の排気ライン132を通るポストレトルト流体流の温度及び溶解度状態の概念図を示す。図2に示す通り、供給ライン128を介してレトルト102に入るプロセスガスの温度は比較的低い。この段階では、プロセスガスはレトルト102内の部品106とは未だ接触していないので、プロセスガス中に溶解した固形物は存在しない。レトルト102では、内部104がFICプロセスに適した温度に維持されているので、プロセスガスの温度は急激に上昇する。例えば、プロセスガスは、レトルト102で約950℃~約1100℃の温度となることがある。また、図2に示す通り、レトルト102内の温度は、FICプロセスの制御スキームに応じてFICプロセスで変化する。
【0037】
この段階で、作用流体(例えばフッ化水素)が部品106に作用し、部品上の金属酸化物を金属フッ化物へと変換し、金属フッ化物からプロセスガス中に溶解するので、プロセスガスの溶解度が増加する。プロセスガスの温度は非常に高いので、溶液の溶解度状態は不飽和状態のままである。レトルト102を出た後、ポストレトルト流体流の温度は、流れがスクラバ134に向かって流れるにつれて、排気ライン132内で徐々に低下する。例えば、ポストレトルト流体流は、レトルト102を出る際に約700℃~約950℃の温度であり、ポストレトルト流体流がポンプ130に近づくにつれて、約200℃~約300℃の温度或いはこの範囲よりも低い温度に下がる。ポストレトルト流体流の温度が下がると、溶液は飽和状態、さらには超飽和状態になることさえある。その結果、金属フッ化物がポストレトルト流体流から沈殿して、例えば排気ライン132、制御弁138及び/又は真空ポンプ130に堆積してしまうおそれがある。堆積した金属フッ化物によって機器が著しく劣化してしまいかねず、FICプロセスのわずか1回の操作サイクル後であっても洗浄が必要となることがある。
【0038】
再び図1を参照すると、FICシステム100は、レトルト102を出るポストレトルト流体流の処理に用いるためのポストレトルトサブシステム140を含む。ポストレトルトサブシステム140は、レトルト102の出口に隣接していてもよいし、或いはレトルト102の下流側にあって、排気ライン132を画成する配管を介してレトルト102の出口に流体連結されていてもよい。好適には、ポストレトルトサブシステム140は、スクラバ134及び補助機器(例えば制御弁138及びポンプ130)の上流側にある。ポストレトルトサブシステム140は、下流側ポストレトルト取扱装置(例えばポストレトルトサブシステム140の下流側の排気ライン132、制御弁138及び/又はポンプ130)における汚損の低減又は解消に資するために、ポストレトルト流体流から微粒子(例えば金属フッ化物)を分離するように動作する。ポストレトルト流体流中の作用流体(例えばフッ化水素)は、濾過媒体を簡単に劣化させてしまう粘ついた環境を生じるので、ポストレトルトサブシステム140は好適には濾過媒体なしで操作する。
【0039】
ポストレトルトサブシステム140は、セパレータ142と冷却装置144とを含む。セパレータ142は、入口146と出口148を含む。レトルト102を出たポストレトルト流体流は、入口146を通ってセパレータに導かれる。レトルト102を出るポストレトルト流体流は比較的高温であり、本明細書ではポストレトルト流体流の第1の温度ともいう。例えば、ポストレトルト流体流の第1の温度は、約700℃~約950℃、約700℃~約800℃、約750℃~約850℃、約800℃~約900℃の範囲内とすることができ、例えば約700℃、約750℃、約800℃、約850℃、約900℃又は約950℃などであってもよい。冷却装置144は、ポストレトルト流体流が入口146及び/又はセパレータ142内に入る前に、ポストレトルト流体流を選択的に冷却するように動作する。好適には、冷却装置144は、ポストレトルト流体流を第1の温度よりも低い第2の温度まで選択的に冷却する。第2の温度は、セパレータ142内のポストレトルト流体流から粒子(例えば金属フッ化物)の実質的な画分を分離する(すなわち溶液から析出させる)ことができる溶解度状態(例えば飽和又は過飽和)にポストレトルト流体流を導くのに十分低い。例えば、第2の温度でのポストレトルト流体流の溶解度状態は、幾つかの実施形態では、セパレータ142内のポストレトルト流体流から粒子の約25%超、幾つかの実施形態では、粒子の約30%超、約35%超、約40%超、約45%超、約50%超、約55%超、約60%超、約65%超、約70%超、約75%超、約80%超、約85%超又は約90%超を析出させる。幾つかの実施形態では、第2の温度でのポストレトルト流体流の溶解度状態は、セパレータ142内のポストレトルト流体流から粒子の約20%~約99%を析出させる。第2の温度は、例えば、400℃未満、350℃未満、300℃未満、250℃未満、200℃未満又は150℃未満であってもよい。例えば、第2の温度は、約50℃~約450℃、約50℃~約300℃、約50℃~約200℃、約50℃~約100℃、約100℃~約400℃、約100℃~約300℃、約100℃~約200℃、約200℃~約450℃、約200℃~約300℃又は約300℃~約400℃とすることができる。
【0040】
セパレータ142内のポストレトルト流体流からの沈殿物の分離は、受動的(すなわち、実質的にすべての促進がポストレトルト流体流を第2の温度に冷却することによる)であってもよいし、或いは第2の温度でのポストレトルト流体流からの沈殿物の分離をセパレータ142で能動的に促進してもよい。例えば、幾つかの実施形態では、セパレータ142は、操作サイクル中に沈殿した微粒子(例えば金属フッ化物)を意図的に堆積させる犠牲部品(例えばパイプ、弁その他のインライン機器)を含んでいてもよく、セパレータ142の取外し及び/又は洗浄及び/又は別の犠牲部品との交換が可能となる。幾つかの実施形態では、セパレータ142は、重力及び/又は慣性力などによって、分離を能動的に促進してもよい。例えば、セパレータ142は、第2の温度でのポストレトルト流体流からの微粒子の分離を重力駆動分離によって促進する重力セパレータ(例えば低速コールドトラップ)を含んでいてもよい。セパレータ142は、第2の温度でのポストレトルト流体流からの微粒子の分離を速度駆動分離によって促進するサイクロンセパレータを付加的及び/又は代替的に含んでいてもよい。ポストレトルトサブシステム140は、1以上のセパレータ142を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、セパレータ142は、並列に動作する2以上のセパレータ142及び/又は直列で動作する一次セパレータ142及び二次セパレータ142を含んでいてもよい。
【0041】
冷却装置144は、ポストレトルト流体流を直接又は間接冷却によって第2の温度まで冷却し得る。例えば、冷却装置144は、セパレータ142に入るポストレトルト流体流を間接的に冷却するために、入口146に隣接して又は入口146の上流側で、排気ライン132上に結合したインライン熱交換器を含んでいてもよい。冷却装置144は、セパレータ142に入るポストレトルト流体流を間接的に冷却するために、入口146の周りに配置された冷却コイルを付加的及び/又は代替的に含んでいてもよい。冷却装置144は、セパレータ142内のポストレトルト流体流を第2の温度まで間接的に冷却するために、セパレータ142を囲む冷却ジャケット又は冷却コイルを付加的及び/又は代替的に含んでいてもよい。間接冷却装置144の場合、冷却流体(例えば冷水)を冷却流体源(図示せず)を介して冷却装置144に供給し、冷却装置144を介してポストレトルト流体流と冷却流体の間で熱を伝達することができる。
【0042】
幾つかの実施形態では、冷却装置144は、セパレータ142に入る及び/又はセパレータ142内のポストレトルト流体流を第2の温度に直接冷却し得る。例えば、冷却装置144は、冷却流体がセパレータ142内のポストレトルト流体流に接触してポストレトルト流体流を第2の温度まで冷却するように、冷却流体をセパレータ142に注入してもよい。直接冷却装置144の場合、冷却流体は、好適には、ポストレトルト流体流に含まれるプロセスガス及び/又は反応副生成物、例えば作用流体(例えばHF)、不活性ガス(例えばAr)、キャリアガス(H及び/又はN)及び/又は水蒸気など含むことができる。例えば、キャリアガス(例えばH及び/又はN)の流れを、供給源114から直接冷却装置144に導いてセパレータ142に注入してもよい。好適には、直接冷却装置144に導かれる冷却流体は、レトルト102を迂回する。直接冷却操作では、冷却流体は、ポストレトルトサブシステム140での分離プロセス後にポストレトルト流体流中に溶解したまま残る微粒子をさらに希釈するという追加の利点をもたらすことができる。
【0043】
ポストレトルトサブシステム140は、出口148からセパレータ142を出るポストレトルト流体流を、第2の温度よりも高い第3の温度に適切に再加熱してもよい。第3の温度は、ポストレトルトサブシステム140の下流側の機器(例えばポンプ130及び/又はスクラバ134)の要件によって規定される操作温度範囲に基づいて選択し得る。付加的及び/又は代替的に、第3の温度は、ポストレトルトサブシステム140後のポストレトルト流体流中に溶解した微粒子が下流側機器(例えばポストレトルトサブシステム140の下流側の排気ライン132、制御弁138及び/又はポンプ130)上に堆積する傾向を低減又は解消するのに資するため、ポストレトルト流体流の飽和点を超える温度となるように選択し得る。第3の温度は、第1の温度と第2の温度の間の任意の適切な温度とすることができる。例えば、第3の温度は、約50℃~約950℃の範囲内であってもよいが、第3の温度は、その範囲内で第2の温度よりも高く、かつ第1の温度よりも低い温度である。幾つかの例では、第3の温度は、第2の温度に近く、第2の温度よりも若干高い。例えば、第2の温度及び第3の温度は各々約50℃~約450℃の範囲内とすることができ、第3の温度は上記範囲内で第2の温度よりも高い温度である。幾つかの例では、第3の温度は、約450℃よりも高く、かつ第1の温度よりも低い(例えば約950℃未満、約900℃未満、約850℃未満、約800℃未満、約750℃未満又は約700℃未満)範囲内とすることができる。
【0044】
ポストレトルト流体流を再加熱するために、セパレータ142の入口146と出口148を画成する配管は、第1の温度(すなわち、冷却装置144の前)でセパレータ142に入るポストレトルト流体流と第2の温度(すなわち、冷却装置144の後)でセパレータ142を出るポストレトルト流体流の間の熱伝達を促進するために熱連通していてもよい。この構成によって、高い第1の温度のポストレトルト流体流の部分から、低い第2の温度のポストレトルト流体流の部分に熱を伝達することができる。これは、ポストレトルト流体流を第2の温度まで冷却するのに必要とされる冷却装置144の冷却容量を低下させるという追加の利点をもたらすことができる。
【0045】
付加的及び/又は代替的に、ポストレトルトサブシステム140は、出口148からセパレータ142を出るポストレトルト流体流を第3の温度に選択的に再加熱するように動作する加熱装置150を含んでいてもよい。加熱装置150は、出口148に隣接していてもよいし、及び/又は出口148の下流側及び制御弁138及び/又はポンプ130の上流側にあってもよい。例えば、加熱装置150は、セパレータ142を出るポストレトルト流体流を第3の温度に選択的に加熱するために、出口148に隣接して又は出口148の下流側で、排気ライン132上に結合したインライン熱交換器を含んでいてもよい。加熱装置150は、セパレータ142を出るポストレトルト流体流を第3の温度に選択的に加熱するために、出口148の周囲に配置された加熱ジャケット及び/又は加熱コイルを付加的及び/又は代替的に含んでいてもよい。加熱流体(例えば温水)を加熱流体源(図示せず)を介して加熱装置150に供給し、加熱装置150を介してポストレトルト流体流と加熱流体の間で熱を伝達することができる。
【0046】
幾つかの実施形態では、ポストレトルトサブシステム140は、レトルト102を出るポストレトルト流体流の一部しか処理しないように、レトルト102の下流側に存在し得る。例えば、ポストレトルト流体流の第1の部分を処理してもよく、ポストレトルト流体流の第2の部分は、ポストレトルトサブシステム140を迂回して選択的に導いてもよい。排気ライン132は、ポストレトルトサブシステム140を迂回してポストレトルト流体流の第2の部分を選択的に導くためのバイパスライン168を含んでいてもよい。
【0047】
依然として図1を参照すると、例示的な実施形態では、コントローラ118は、ポストレトルト流体流の冷却及び再加熱をそれぞれ制御するため、冷却装置144及び加熱装置150と通信結合している。コントローラ118は、ポストレトルト流体流の第2の温度及び第3の温度にそれぞれ対応する設定点に基づいて、冷却装置144及び加熱装置150を選択的に制御し得る。例えば、コントローラ118は、ポストレトルト流体流を第2の温度に冷却するために、冷却装置144に供給される冷却流体(例えば間接冷却における冷水或いは直接冷却におけるプロセスガス又は水蒸気)の量を制御し得る。コントローラ118は、ポストレトルト流体流を第3の温度に再加熱するために、加熱装置150に供給される加熱流体(例えば温水)の量も制御し得る。
【0048】
幾つかの実施形態では、コントローラ118は、受動制御を用いて、冷却装置144及び/又は加熱装置150の加熱容量を選択的に制御し得る。例えば、コントローラ118は、制御調整を行うためのインプロセスフィードバックを利用せずに、不変の確立されたルーチンに基づいて、FICプロセス中に冷却装置144に供給される冷却流体の量及び/又は加熱装置150に供給される加熱流体の量を制御する制御動作を実行してもよい。冷却装置144に供給される冷却流体の量及び/又は加熱装置150に供給される加熱流体の量を制御するためにコントローラ118によって実行される制御動作は、FICプロセスの操作サイクルについて確立された温度設定点及びFICプロセス中のFICシステム100の計画操作パラメータ(例えばレトルト102内の計画温度、レトルト102に供給されるプロセスガスの計画流量、ポストレトルトサブシステム140の上流側のポストレトルト流体流の計画温度、及び/又はポストレトルトサブシステム140の上流側のポストレトルト流体流の計画流量)に実質的に完全に基づくものであってもよい。コントローラ118で実行される受動制御は、FICシステム100の操作パラメータの計画された変更に基づいて(例えばFICシステム100によって実行すべきFICプロセスの計画制御スキームに基づいて)制御動作を実行することを含んでいてもよい。例えば、FICプロセスの計画制御スキームは、レトルト102内の温度の変更、ポストレトルトサブシステム140の上流側のポストレトルト流体流の温度及び/又はポストレトルトサブシステム140の上流側のポストレトルト流体流の流量の変更を含むことができる。これらの変更は、ポストレトルト流体流を第2の温度まで冷却するのに必要とされる冷却装置144の冷却容量及び/又はポストレトルト流体流を第3の温度に再加熱するのに必要とされる加熱装置150の加熱容量に影響を与える。コントローラ118は、例えば、冷却及び/又は加熱がもっと必要とされる場合には、冷却装置144に供給される冷却流体の量及び/又は加熱装置150に供給される加熱流体の量の増加、並びに/或いは冷却及び/又は加熱が少なくて済む場合には、冷却装置144に供給される冷却流体の量及び/又は加熱装置150に供給される加熱流体の量の減少によって、これらの変更に対処するための制御動作を実行し得る。
【0049】
幾つかの実施形態では、コントローラ118は、FICプロセス及び/又はFICシステム100の操作パラメータを連続的又は定期的に監視し、動的プロセス及びシステム状態に応じて冷却装置144及び/又は加熱装置150を制御するために、監視された操作パラメータに基づいて制御動作を実行し得る。例えば、上述の通り、コントローラ118は、レトルト102の内部104及び/又はレトルト102の上流側(例えばプロセスガス供給ライン128に沿って)の操作パラメータ(例えば温度、圧力及び/又は流量)を監視する1以上のセンサ126と通信結合していてもよい。付加的及び/又は代替的に、コントローラ118は、ポストレトルトサブシステム140に近接して排気ライン132上に結合されたセンサ152及び154と通信結合してもよい。センサ152及び154は、温度センサ、圧力センサ、流量センサ又はFICプロセス及び/又はFICシステム100の操作パラメータを測定する任意の他のセンサを独立に含んでいてもよい。センサ152は、ポストレトルトサブシステム140の上流側の排気ライン132におけるポストレトルト流体流の操作パラメータを監視してもよく、センサ154は、ポストレトルトサブシステム140の下流側の排気ラインにおけるポストレトルト流体流の操作パラメータを監視してもよい。
【0050】
コントローラ118は、センサ126、152及び/又は154から測定値を受信し、FICプロセス及び/又はFICシステム100の監視された操作パラメータに基づいて決定及び/又は制御動作を実行し得る。例えば、コントローラ118は、ポストレトルトサブシステム140の上流側の操作パラメータの指標となる測定値(例えばレトルト102内の温度、レトルト102に供給されるプロセスガスの流量、ポストレトルトサブシステム140の上流側のポストレトルト流体流の温度及び/又はポストレトルトサブシステム140の上流側のポストレトルト流体流の流量)を受信し、ポストレトルトサブシステム140の上流側の監視操作パラメータの1以上に応答して冷却装置144及び/又は加熱装置150を制御する。例えば、コントローラ118は、冷却及び/又は加熱がもっと必要とされる場合には、冷却装置144に供給される冷却流体の量及び/又は加熱装置150に供給される加熱流体の量を増加させ、並びに/或いは冷却及び/又は加熱が少なくて済む場合には、冷却装置144に供給される冷却流体の量及び/又は加熱装置150に供給される加熱流体の量を減少させることができる。付加的及び/又は代替的に、コントローラ118は、ポストレトルトサブシステム140の下流側の操作パラメータ(例えばセパレータ142から出るポストレトルト流体流の温度)を示す測定値を受信し、ポストレトルトサブシステム140の下流側の監視操作パラメータの1以上に応答して冷却装置144及び/又は加熱装置150を制御してもよい。例えば、コントローラ118は、セパレータ142から出るポストレトルト流体流の温度について、確立された設定点と比較して又はインプロセス決定に基づいて高すぎる又は低すぎると判断し、その決定に基づいて再加熱を増減するように加熱装置150を制御してもよい。
【0051】
コントローラ118は、コントローラ118を本願明細書に記載の通り機能させることができる任意の適切な制御方法を実行し得る。例えば、コントローラ118は、冷却装置144及び/又は加熱装置150を制御するために、制御ループ又は制御ループの組合せを実行し得る。コントローラ118で実行し得る例示的な制御ループには、開ループ制御、閉ループ制御、並びにそれらの組合せが含まれる。「開ループ制御」という用語は、一般に、FICシステム100の測定操作パラメータからのフィードバックを受け取らない制御ループ又は制御コマンドをいう。例えば、コントローラ118は、ポストレトルトサブシステム140の下流側の(例えばセンサ154で測定される)監視操作パラメータに基づくフィードバックを用いることなく、(例えばセンサ126及び152によって測定された)ポストレトルトサブシステム140の上流の監視操作パラメータに基づいて制御動作を実行することによって、開ループ制御を実行し得る。「閉ループ制御」という用語は、一般に、FICシステム100の測定された操作パラメータを入力として利用する或いはかかる操作パラメータからのフィードバックに依存する制御ループ又は制御コマンドをいう。かかる測定された操作パラメータは、かかる制御ループ又は制御コマンドによる入力に依存するシステム変数を測定するように構成されたセンサ(例えばセンサ154)からの測定を含んでいてもよい。閉ループ制御を利用するコントローラ118は、測定された操作パラメータ(例えばセパレータ142から出るポストレトルト流体ストリームの温度)を設定点(例えばポストレトルト流体ストリームの第3の温度に対応する設定点)と比較して、誤差値を決定し得るが、これは、例えば、PID制御モデル又は任意の他の所望の制御モデルで使用し得る。幾つかの実施形態では、コントローラ118は、FICシステム100の観測された履歴プロセスデータを使用して設定点(例えば第2及び/又は第3の温度に対応する設定点)を調整し、FICプロセス中に冷却装置144及び加熱装置150の制御を最適化するための適切な設定点を学習するための学習フィードバックループを実行してもよい。
【0052】
図3は、ポストレトルトサブシステム140を含む例示的なFICシステム200におけるレトルト102内プロセスガス及びレトルト102とスクラバ134の間の排気ライン132を通るポストレトルト流体流の温度及び溶解度状態の概念図を示す。図3に示す通り、図2の状態図と同様に、供給ライン128を介してレトルト102に入るプロセスガスの温度は比較的低い。この段階では、プロセスガスはレトルト102内の部品106とは未だ接触していないので、プロセスガス中に溶解した固形物は存在しない。レトルト102では、内部104がFICプロセスに適した温度(例えば約950℃~約1100℃の温度)に維持されているので、プロセスガスの温度は急激に上昇する。また、図3に示す通り、レトルト102内の温度は、FICプロセスの制御スキームに応じてFICプロセスで変化する。
【0053】
この段階で、作用流体(例えばフッ化水素)が部品106に作用し、部品上の金属酸化物を金属フッ化物へと変換し、金属フッ化物からプロセスガス中に溶解するので、プロセスガスの溶解度が増加する。プロセスガスの温度は非常に高いので、溶液の溶解度状態は不飽和状態のままである。レトルト102を出る際のポストレトルト流体流は、約700℃~約950℃の第1の温度である。レトルト102を出た後、ポストレトルト流体流はポストレトルトサブシステム140に入り、ポストレトルト流体流は、冷却装置144を介して第2の温度(例えば約50℃~約450℃の温度)まで急速に冷却される。ポストレトルトサブシステム140におけるポストレトルト流体流の急激な温度低下によって、溶液は飽和状態、さらには超飽和状態になることさえあり、金属フッ化物がセパレータ142内のポストレトルト流体流から析出する。セパレータ142から出ると、ポストレトルト流体流は、加熱装置150を介して第3の温度(例えば第2の温度よりも高く、第1の温度よりも低い約50℃~約950℃の範囲の温度)に再加熱される。この段階で、排気ライン132を流れるポストレトルト流体流は、金属フッ化物のかなりの画分が既に析出しているので、比較的不飽和である。また、ポストレトルト流体流は、飽和点を上回る適切な温度に再加熱してもよい。その結果、図2に記載のFICプロセスと比較して、下流側機器(例えば排気ライン132、制御弁138及び/又は真空ポンプ130)の汚損が格段に低減又は解消される。このように、図3に記載の例示的なFICプロセスは、ポストレトルトサブシステム140でのポストレトルト流体流の処理を含んでおり、下流側機器の耐用年数が増加し、汚損機器の洗浄及び/又は交換に付随するメンテナンス及びダウンタイムコストが低減し、機器に安価な材料を使用できるようになる。
【0054】
図4図7を参照すると、ポストレトルトサブシステム140の様々な例示的実施形態が示してある。ポストレトルトサブシステム140の実施形態は、図示及び明細書に記載された例示的な実施形態に限定されない。ポストレトルトサブシステム140は、ポストレトルトサブシステム140の例示的な実施形態に含まれる特徴の任意の組合せを含むことができる。ポストレトルトサブシステム140の例示的な実施形態は、上述の特徴のいずれか及び/又はすべてを含むことができる。ポストレトルトサブシステム140の特定の例示的な実施形態について具体的に記載されていない特徴であっても、そうした特徴が存在しないことを意味するものではない。さらに、ポストレトルトサブシステム140の例示的な実施形態は、上述のコントローラ118によって促進及び/又は実現し得るすべての制御特徴を含む。
【0055】
図4は、セパレータ142A、冷却装置144A及び加熱装置150Aを含む第1の例示的なポストレトルトサブシステム140Aを示す。セパレータ142Aは、入口146A及び出口148Aを画成するハウジング又は容器156Aを含む。入口146Aは、排気ライン132を介して容器156Aの内部158Aとレトルト102(図1に示す)とを流体連結し、出口148Aは内部158Aを真空ポンプ130(図1に示す)と流体連結する。矢印160Aで示すレトルト102を出るポストレトルト流体流は、ポストレトルトサブシステム140Aに向かって流れる。レトルト102を出るポストレトルト流体流160Aは、比較的高い第1の温度(例えば約700℃~約950℃の温度)にある。
【0056】
冷却装置144Aは、入口146Aに隣接して排気ライン132の周囲に連結され、ポストレトルト流体流160Aを選択的に冷却する。冷却装置144Aは、ポストレトルト流体流160Aを冷却するための入口146Aの周囲に、付加的及び/又は代替的に結合してもよい。冷却装置144aは、ポストレトルト流体流160Aと冷却流体162A(例えば冷水)から熱を伝達するインライン熱交換器を備えている。矢印160Bで示す、冷却装置144Aを出て容器156Aに入るポストレトルト流体流は、第2の温度(例えば約50℃~約450℃の温度)に冷却されている。
【0057】
第2の温度で、矢印160Cで示す内部158Aを流れるポストレトルト流体流は、微粒子164A(例えば金属フッ化物)がポストレトルト流体流160Cから析出し、内部158Aで堆積及び/又は蓄積するような飽和又は過飽和溶解度状態にある。こうして、微粒子164Aは、第2の温度でポストレトルト流体流路160Cから分離され、矢印160Dで示す容器156Aから出るポストレトルト流体流の飽和レベルは、容器156Aに入るポストレトルト流体流160Bの飽和レベルよりも低くなる。ポストレトルト流体流160Cからの微粒子164Aの分離は、内部158Aでの重力駆動分離によってさらに促進し得る。幾つかの実施形態では、容器156Aは、内部158aで速度駆動分離を促進し得る。例えば、容器156Aは、サイクロンセパレータであってもよい。
【0058】
第2の温度で容器156Aを出るポストレトルト流体流160Dは、ポストレトルト流体流160Dを加熱する加熱装置150Aに入る。加熱装置150Aは、排出口148Aに隣接して排気ライン132の周囲に結合されている。加熱装置150Aは、ポストレトルト流体流160Dを加熱するための出口148Aの周囲に、付加的及び/又は代替的に結合してもよい。加熱装置150Aは、加熱流体166A(例えば温水)からポストレトルト流体流160Dに熱を伝達するインライン熱交換器を含む。矢印160Eで示す加熱装置150Aから出るポストレトルト流体流は、第3の温度(例えば第2の温度よりも高く、第1の温度よりも低い、約50℃~約950℃の範囲内の温度)に再加熱されている。ポストレトルト流体流160Eは、ポストレトルト流体流160Eから過剰の作用流体(例えばフッ化水素)その他の反応副生成物を除去するために、下流側機器(例えば図1に示す真空ポンプ130及びスクラバ134)に導かれる。
【0059】
図5は、セパレータ142B、冷却装置144B及び加熱装置150Bを含む第2の例示的なポストレトルトサブシステム140Bを示す。セパレータ142Bは、入口146B及び出口148Bを画成するハウジング又は容器156Bを含む。入口146Bは、排気ライン132を介して容器156Bの内部158Bをレトルト102(図1に示す)と流体連結し、出口148Bは内部158Bを真空ポンプ130(図1に示す)と流体連結する。矢印160Aで示す、レトルト102を出るポストレトルト流体流は、ポストレトルトサブシステム140Bに向かって流れ、比較的高い第1の温度(例えば約700℃~約950℃の温度)で内部158Bに入る。
【0060】
冷却装置144Bは、容器156Bを囲繞し、内部158Bを冷却して、矢印160Bで示す内部158Bのポストレトルト流体流を冷却する。冷却装置144Bは、容器156Bを囲む冷却ジャケット及び/又は冷却コイルを含むことができる。冷却装置144Bには冷却流体162B(例えば冷水)が循環し、内部158Bの冷却を促進する。ポストレトルト流体流160Bは、内部158Bで第2の温度(例えば約50℃~約450℃の温度)に冷却される。
【0061】
第2の温度で、内部158Bを流れるポストレトルト流体流160Bは、微粒子164B(例えば金属フッ化物)がポストレトルト流体流160Bから析出し、内部158Bで堆積及び/又は蓄積するような飽和又は過飽和溶解度状態にある。こうして、微粒子164Bは、第2の温度でポストレトルト流体流160Bから分離され、矢印160Cで示す容器156Bから出るポストレトルト流体流の飽和レベルは、容器156Bに入るポストレトルト流体流160Aの飽和レベルよりも低くなる。ポストレトルト流体流160Bからの微粒子164Bの分離は、内部158Bの重力駆動分離によってさらに促進し得る。幾つかの実施形態では、容器156Bは、内部158Bで速度駆動分離を促進し得る。例えば、容器156Bは、サイクロンセパレータであってもよい。
【0062】
第2の温度で容器156Bを出るポストレトルト流体流160Cは、ポストレトルト流体流160Cを加熱する加熱装置150Bに入る。加熱装置150Bは、排出口148Bに隣接して排気ライン132の周囲に結合されている。加熱装置150Bは、ポストレトルト流体流160Cを加熱するための出口148Bの周囲に、付加的及び/又は代替的に結合してもよい。加熱装置150Bは、出口148Bに隣接して排気ライン132を囲む及び/又は出口148Bを囲む加熱ジャケット又は加熱コイルを含む。加熱装置150Bには加熱流体166B(例えば温水)が循環し、加熱流体166Bからポストレトルト流体流160Cに熱が伝達される。矢印160Dで示す加熱装置150Bから出るポストレトルト流体流は、第3の温度(例えば第2の温度よりも高く、第1の温度よりも低い、約50℃~約950℃の範囲の温度)に再加熱されている。ポストレトルト流体流160Dは、ポストレトルト流体流160Dから過剰の作用流体(例えばフッ化水素)その他の反応副生成物を除去するために、下流側機器(例えば図1に示す真空ポンプ130及びスクラバ134)に導かれる。
【0063】
図6は、セパレータ142C及び冷却装置144Cを含む第3の例示的なポストレトルトサブシステム140Cを示す。セパレータ142cは、入口146C及び出口148Cを画成するハウジング又は容器156Cを含む。入口146Cは、排気ライン132を介して容器156Cの内部158Cをレトルト102(図1に示す)と流体連結し、出口148Cは内部158Cを真空ポンプ130(図1に示す)と流体連結する。矢印160Aで示すレトルト102を出るポストレトルト流体流は、ポストレトルトサブシステム140cに向かって流れ、比較的高い第1の温度(例えば約700℃~約950℃の温度)で内部158cに入る。
【0064】
冷却装置144Cは、容器156Cを囲い、内部158Cを冷却して、矢印160Bで示す内部158Cのポストレトルト流体流を冷却する。冷却装置144Cは、容器156Cを囲む冷却ジャケット及び/又は冷却コイルを含むことができる。冷却装置144Cには冷却流体162C(例えば冷水)が循環し、内部158Cの冷却を促進する。ポストレトルト流体流160Bは、内部158Cで第2の温度(例えば約50℃~約450℃の温度)に冷却される。
【0065】
第2の温度で、内部158Cを流れるポストレトルト流体流160Bは、微粒子164C(例えば金属フッ化物)がポストレトルト流体流160Bから析出し、内部158Cで堆積及び/又は蓄積するような飽和又は過飽和溶解度状態にある。こうして、粒子164Cは、第2の温度でポストレトルト流体流160Cから分離され、矢印160Cで示す容器156Cから出るポストレトルト流体流の飽和レベルは、容器156Cに入るポストレトルト流体流160Aの飽和レベルよりも低くなる。ポストレトルト流体流160Bからの微粒子164Cの分離は、内部158Cの重力駆動分離によってさらに促進し得る。幾つかの実施形態では、容器156Cは、内部158Cで速度駆動分離を促進し得る。例えば、容器156Cは、サイクロンセパレータであってもよい。
【0066】
ポストレトルト流体流160Cは、出口148Cを通って第2の温度で容器156Cから出る。図6に示す通り、出口148Cを画成する配管は、入口146Cを画成する配管と熱結合される。この構成によって、第1の温度で容器156Cに入るポストレトルト流体流160Aと、第2の温度で容器156Cから出るポストレトルト流体流160Cの間の熱伝達が容易になる。特に、ポストレトルト流体流160Aが冷却され、ポストレトルト流体流160Cが加熱されるように、ポストレトルト流体流160Aからポストレトルト流体流160Cに熱が伝わるようにしてもよい。ポストレトルト流体流160Aとポストレトルト流体流160Cの間の熱伝達は、第3の温度(例えば第2の温度よりも高く、第1の温度よりも低い、約50℃~約950℃の範囲の温度)で下流の排気ライン132に入る再加熱されたポストレトルト流体流160Dを生成するのに十分であり得る。図示の実施形態では、ポストレトルト流体流160Aとポストレトルト流体流160Cの間の熱伝達は、ポストレトルトサブシステム140Cにおける加熱装置の必要性を打ち消す。他の実施形態では、ポストレトルトサブシステムは、出口148Cから出るポストレトルト流体流160Cを加熱する加熱装置も含むことができる。加熱装置は、入口146Cと出口148Cの間の熱結合の上流及び/又は下流にあってもよい。加熱装置は、例えば、インライン熱交換器及び/又は出口148cに隣接して排気ライン132を囲繞する及び/又は出口148Cを囲繞する加熱ジャケット又は加熱コイルを含んでいてもよい。加熱流体(例えば熱水)が加熱装置内を循環してもよく、ポストレトルト流体流160Cとポストレトルト流体流160Aの間の熱伝達の前、後及び/又は途中に、加熱流体からポストレトルト流体流路160Cに熱伝達し得る。出口148C及び適宜、矢印160Dで示す加熱装置から出るポストレトルト流体流は、第3の温度(例えば第2の温度よりも高く、第1の温度よりも低い、約50℃~約950℃の範囲内の温度)に再加熱されている。ポストレトルト流体流160Dは、ポストレトルト流体流160Dから過剰の作用流体(例えばフッ化水素)その他の反応副生成物を除去するために、下流側機器(例えば図1に示す真空ポンプ130及びスクラバ134)に導かれる。
【0067】
図7は、セパレータ142D、冷却装置144D及び加熱装置150Dを含む第4の例示的なポストレトルトサブシステム140Dを示す。セパレータ142Dは、入口146D及び出口148Dを画成するハウジング又は容器156Dを含む。入口146Dは、排気ライン132を介して容器156Dの内部158Dをレトルト102(図1に示す)と流体連結し、出口148Dは内部158Dを真空ポンプ130(図1に示す)と流体連結する。矢印160Aで示すレトルト102を出るポストレトルト流体流は、ポストレトルトサブシステム140Dに向かって流れ、比較的高い第1の温度(例えば約700℃~約950℃の温度)で内部158Dに入る。
【0068】
冷却装置144Dは、容器156Dに冷却流体162Dを噴射して、ポストレトルト流体流160Aの冷却を促進する冷却流体噴射装置である。冷却流体162Dは、例えば、作用流体(例えばフッ化水素)、キャリアガス(例えばH)及び/又は水蒸気など、ポストレトルト流体流106Aに含まれるプロセスガス及び/又は反応副生成物を好適に含むことができる。例えば、キャリアガス(例えばH)の流れは、冷却流体162Dとして容器156Dに注入するために、供給源114から冷却装置144Dに導かれ得る。好適には、冷却流体162Dがプロセスガスである場合、冷却装置144Dに導かれる冷却流体162Dは、レトルト102を迂回する。冷却流体162Dは、容器156Dに噴射され、ポストレトルト流体流106Aに接触して、矢印160Bで示す内部158Dを流れるポストレトルト流体流を第2の温度(例えば約50℃~約450℃の温度)に冷却する。
【0069】
第2の温度で、内部158Bを流れるポストレトルト流体流160Bは、微粒子164D(例えば金属フッ化物)がポストレトルト流体流160Bから沈殿し、内部158Dで堆積及び/又は蓄積するような飽和又は過飽和溶解度状態にある。こうして、微粒子164Dは、第2の温度でポストレトルト流体流160Bから分離され、矢印160Cで示す容器156Dから出るポストレトルト流体流の飽和レベルは容器156Dに入るポストレトルト流体流160Aの飽和レベルよりも低くなる。ポストレトルト流体流160Bからの微粒子164Dの分離は、内部158Dの重力駆動分離によってさらに促進し得る。幾つかの実施形態では、容器156Dは、内部158Dで速度駆動分離を促進し得る。例えば、容器156Dは、サイクロンセパレータであってもよい。
【0070】
第2の温度で容器156Dを出るポストレトルト流体流160Cは、ポストレトルト流体流160Cを加熱する加熱装置150Dに入る。加熱装置150Dは、出口148Dに隣接して排気ライン132の周囲に結合されている。加熱装置150Dは、ポストレトルト流体流160Cを加熱するための出口148Dの周囲に、付加的及び/又は代替的に結合してもよい。加熱装置150Dは、出口148Dに隣接して排気ライン132を囲む及び/又は出口148Dを囲む加熱ジャケット又は加熱コイルを含む。加熱装置150Dには加熱流体166D(例えば温水)が循環し、加熱流体166Dからポストレトルト流体流160Cに熱が伝達される。矢印160Dで示す加熱装置150Dから出るポストレトルト流体流は、第3の温度(例えば第2の温度よりも高く、第1の温度よりも低い、約50℃~約950℃の範囲の温度)に再加熱されている。ポストレトルト流体流160Dは、ポストレトルト流体流160Dから過剰の作用流体(例えばフッ化水素)その他の反応副生成物を除去するために、下流側機器(例えば図1に示す真空ポンプ130及びスクラバ134)に導かれる。冷却装置144Dを介して注入される冷却流体162Dは、ポストレトルトサブシステム140Dでの分離プロセス後にポストレトルト流体流160D中に溶解した微粒子をさらに希釈するという追加の利点をもたらすことができる。
【0071】
本明細書に記載の実施形態は、ポストレトルト流体流からの微粒子の分離によるポストレトルト流体流の処理を含むフッ化物イオン洗浄システム及び方法に関する。上述の実施形態は、下流側の取扱機器(例えば配管、センサ、ポンプ、弁、スクラバ)における汚損の低減又は解消を促進し、機器の耐用年数を延ばし、汚損された機器の洗浄及び/又は交換に付随するメンテナンス及びダウンタイムコストを削減し、フッ化物イオン洗浄プロセスにおけるポストレトルト流体流の取扱いに使用される機器を製造する際に使用し得る材料の融通性を高める。上述の実施形態は、ポストレトルト流体流中に溶解した微粒子の適切な画分が溶液から析出する温度までポストレトルト流体流を冷却し、分離後のポストレトルト流体流を下流の真空ポンプ及び/又はスクラバに入る前に適切な温度まで適切に再加熱し得るポストレトルト流体流を含んでおり、下流の真空ポンプ及び/又はスクラバに入る前のポストレトルト流体流を適切な温度まで適切に再加熱し得る。ポストレトルトサブシステムは、分離後にポストレトルト流体流に溶解した微粒子が下流側機器に堆積する傾向の低減又は解消を促進するために、分離後にポストレトルト流体流を付加的及び/又は代替的に再加熱してもよい。さらに、例示的な実施形態は、ポストレトルトサブシステムを使用して、ポストレトルト流体流の冷却及び/又は再加熱の制御において融通性を高めることのできるコントローラを含むことができる。例えば、コントローラは、フッ化物イオン洗浄プロセス及び/又はシステムの1以上の計画された又は動的な操作パラメータに応答するために、ポストレトルトサブシステムによるポストレトルト流体流の冷却及び/又は加熱を制御することによって、ポストレトルト流体流の冷却及び/又は加熱を制御し得る。こうして、ポストレトルトサブシステムの冷却及び/又は加熱は、フッ化物イオン洗浄プロセス及び/又はシステムの現在の条件に基づいて、ポストレトルト流体流の操作要件に合わせて微調整し得る。
【0072】
以上の説明は、例示にすぎず、開示した本発明の技術的範囲から逸脱せずに、記載した実施形態に様々な変更をなすことができることは当業者には明らかであろう。本発明の技術的範囲に属する変更は、本開示に接した当業者には自明であり、かかる変更は特許請求の範囲の技術的範囲に属する。
【0073】
本開示技術の追加の態様を、以下の実施態様項に示す。
[実施態様項1]
フッ化物イオン洗浄システムであって、レトルトに供給される作用流体を介して1以上の部品を洗浄するレトルトと、第1の温度でレトルトを出るポストレトルト流体流を処理するためのポストレトルトサブシステムであって、ポストレトルトサブシステムが、レトルトと流体連通したセパレータであって、レトルトからポストレトルト流体流を受け入れるための入口及びポストレトルト流体流をセパレータから出すための出口を備える、セパレータ、並びにポストレトルト流体流を第2の温度に選択的に冷却するための冷却装置であって、第2の温度が第1の温度よりも低く、第2の温度で、セパレータ内のポストレトルト流体流から微粒子を分離できるようになる、冷却装置を備える、ポストレトルトサブシステムと、セパレータから排出されたポストレトルト流体流を受け入れるため、ポストレトルトサブシステムの下流側のスクラバとを備える、フッ化物イオン洗浄システム。
[実施態様項2]
ポストレトルトサブシステムの冷却装置が、ポストレトルト流体流の第2の温度への冷却を促進するための、セパレータを囲繞する冷却コイル及び冷却ジャケットの少なくとも1つを備える、実施態様項1に記載のフッ化物イオン洗浄システム。
[実施態様項3]
ポストレトルトサブシステムの冷却装置が、ポストレトルト流体流の第2の温度への冷却を促進するために冷却流体を注入するための冷却流体注入装置を備える、実施態様項1又は実施態様項2に記載のフッ化物イオン洗浄システム。
[実施態様項4]
冷却流体が、フッ化水素(HF)、アルゴン(Ar)、水素(H)又は窒素(N)を含む、実施態様項3に記載のフッ化物イオン洗浄システム。
[実施態様項5]
セパレータが、第2の温度でのポストレトルト流体流からの微粒子の分離を速度駆動分離によって促進するサイクロンセパレータを含む、実施態様項1乃至実施態様項4のいずれか1項に記載のフッ化物イオン洗浄システム。
[実施態様項6]
セパレータが、第2の温度でのポストレトルト流体流からの微粒子の分離を重力駆動分離によって促進する重力セパレータを含む、実施態様項1乃至実施態様項4のいずれか1項に記載のフッ化物イオン洗浄システム。
[実施態様項7]
セパレータに入るポストレトルト流体流とセパレータから出るポストレトルト流体流の間の熱伝達を促進するため、セパレータの入口と出口とが熱結合している、実施態様項1乃至実施態様項6のいずれか1項に記載のフッ化物イオン洗浄システム。
[実施態様項8]
ポストレトルトサブシステムが、セパレータを出るポストレトルト流体流を第2の温度よりも高い第3の温度に選択的に加熱する加熱装置をさらに備える、実施態様項1乃至実施態様項7のいずれか1項に記載のフッ化物イオン洗浄システム。
[実施態様項9]
ポストレトルトサブシステムの加熱装置が、セパレータを出るポストレトルト流体流の第3の温度への加熱を促進するため、セパレータの出口の周囲に結合した加熱コイル及び冷却ジャケットの少なくとも1つを備える、実施態様項8に記載のフッ化物イオン洗浄システム。
[実施態様項10]
ポストレトルトサブシステムが、ポストレトルト流体流の第1の部分を処理するためにレトルトの下流側にあり、フッ化物イオン洗浄システムが、ポストレトルト流体流の第2の部分をポストレトルトサブシステムを迂回して選択的に導くためのバイパスチャネルをさらに備える、実施態様項1乃至実施態様項9のいずれか1項に記載のフッ化物イオン洗浄システム。
[実施態様項11]
レトルトに供給される作用流体を介して1以上の部品を洗浄するためのレトルトと、第1の温度でレトルトを出るポストレトルト流体流を処理するためのポストレトルトサブシステムとを備えるフッ化物イオン洗浄システムであって、ポストレトルトサブシステムが、レトルトと流体連通したセパレータであって、レトルトからポストレトルト流体流を受け入れるための入口及びポストレトルト流体流をセパレータから出すための出口を備える、セパレータと、ポストレトルト流体流を第2の温度に選択的に冷却するための冷却装置であって、第2の温度が第1の温度よりも低く、第2の温度で、セパレータ内のポストレトルト流体流から微粒子を分離できるようになる、冷却装置とを備えており、フッ化物イオン洗浄システムが、冷却装置と通信結合したコントローラをさらに備えており、コントローラが、第2の温度に対応する第1の設定点及びフッ化物イオン洗浄システムの1以上の操作パラメータに基づいて冷却装置を制御するように構成される、フッ化物イオン洗浄システム。
[実施態様項12]
1以上の操作パラメータが、ポストレトルトサブシステムの上流側のポストレトルト流体流の状態を含む、実施態様項11に記載のフッ化物イオン洗浄システム。
[実施態様項13]
1以上の操作パラメータが、フッ化物イオン洗浄システムの制御スキームを含む、実施態様項11又は実施態様項12に記載のフッ化物イオン洗浄システム。
[実施態様項14]
ポストレトルトサブシステムが、セパレータから出るポストレトルト流体流を第2の温度よりも高い第3の温度に選択的に加熱する加熱装置をさらに備えており、コントローラが、加熱装置と通信結合していて、かつ第3の温度に対応する第2の設定点に基づいて加熱装置を制御するように構成されている、実施態様項11乃至実施態様項13のいずれか1項に記載のフッ化物イオン洗浄システム。
[実施態様項15]
コントローラが、ポストレトルトサブシステムの上流側のポストレトルト流体流の測定温度に基づいて加熱装置を制御するようにさらに構成されている、実施態様項14に記載のフッ化物イオン洗浄システム。
[実施態様項16]
コントローラが、フッ化物イオン洗浄システムの1以上の操作パラメータに基づいて加熱装置を制御するようにさらに構成されている、実施態様項14又は実施態様項15に記載のフッ化物イオン洗浄システム。
[実施態様項17]
フッ化物イオン洗浄システムの操作方法であって、当該方法が、1以上の部品を洗浄するためにレトルトに作用流体を供給するステップと、レトルトからポストレトルト流体流をセパレータに導くステップであって、ポストレトルト流体流が第1の温度でレトルトを出る、ステップと、ポストレトルト流体流を第1の温度よりも低い第2の温度に冷却するステップと、セパレータ内で第2の温度でポストレトルト流体流から微粒子を分離するステップと、ポストレトルト流体流をセパレータからスクラバに導くステップとを含む、方法。
[実施態様項18]
フッ化物イオン洗浄システムの1以上の操作パラメータに基づいて、第2の温度へのポストレトルト流体流の冷却を制御するステップをさらに含む、実施態様項17に記載の方法。
[実施態様項19]
セパレータから導かれるポストレトルト流体流を第2の温度よりも高い第3の温度に加熱するステップをさらに含む、実施態様項17又は実施態様項18に記載の方法。
[実施態様項20]
フッ化物イオン洗浄システムの1以上の操作パラメータに基づいて、第3の温度へのポストレトルト流体流の加熱を制御するステップをさらに含む、実施態様項19に記載の方法。
【0074】
以上、フッ化物イオン洗浄システムの例示的な実施形態について詳しく説明してきた。本明細書に記載のシステム及び方法は、本明細書に記載の特定の実施形態に限定されるものではなく、方法のステップを、本明細書に記載の他のステップとは独立かつ別個に利用してもよい。例えば、本明細書に記載の方法は、本明細書に記載のガスタービンエンジン部品の洗浄での実施に限定されるものではない。例示的な実施形態は、フッ化物イオン洗浄プロセスで生成するポストレトルト流体流の処理が望まれるあらゆる用途に関連して実施及び利用することができる。
【0075】
本開示技術の様々な実施形態の特定の特徴が、ある図面には記載され、他の図面には記載されていないこともあるが、これは便宜上のものにすぎない。本開示技術の原理に則して、ある図面に記載された特徴は、他の図面に記載されたいかなる特徴との組合せとして参照及び/又は特許請求の範囲に記載することができる。
【0076】
本明細書では、本発明を最良の形態を含めて開示するとともに、装置又はシステムの製造・使用及び方法の実施を始め、本発明を当業者が実施できるようにするため、例を用いて説明してきた。本発明の特許性を有する範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者に自明な他の例も包含する。かかる他の例は、特許請求の範囲と文言上の差のない構成要素を有しているか、或いは特許請求の範囲の文言と非本質的な差しかない均等な構成要素を有していれば、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0077】
100
102
106
118
134
140
142
144
146
146
148
148
150
150
168
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
【外国語明細書】