(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016716
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】熱源システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
F24F 11/46 20180101AFI20240131BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20240131BHJP
F24F 11/83 20180101ALI20240131BHJP
F25B 1/00 20060101ALN20240131BHJP
F24F 140/20 20180101ALN20240131BHJP
F24F 140/60 20180101ALN20240131BHJP
F24F 110/22 20180101ALN20240131BHJP
【FI】
F24F11/46
F24F5/00 101B
F24F11/83
F25B1/00 399Y
F24F140:20
F24F140:60
F24F110:22
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119029
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000191319
【氏名又は名称】新菱冷熱工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】坂本 裕
(72)【発明者】
【氏名】近都 州彦
(72)【発明者】
【氏名】矢島 和樹
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB06
3L260BA42
3L260BA75
3L260CA32
3L260CA33
3L260CB32
3L260CB37
3L260EA08
3L260FA09
3L260FB32
3L260FB33
(57)【要約】
【課題】冷却塔の活用期間を最大限に拡大し、総エネルギー消費量を削減する。
【解決手段】本発明は、負荷側機器2からの還水温度と外気湿球温度とを比較することにより、冷却塔6による運転の有効性を判断するステップと、前記冷却塔運転の有効性の判断に基づき、冷凍機3の消費電力と、冷水ポンプ4,5の消費電力と、冷却塔6の消費電力と、冷却水ポンプ7の消費電力と、を算出するステップと、負荷側機器2の処理熱量と各機器の消費電力の合計値とに基づき、熱源システム1のシステムCOPを算出するステップと、負荷側機器2に対する送水温度の設定値を所定温度ずつ高くしながら、前記消費電力の合計値を算出すると共に熱源システム1のシステムCOPを算出し、熱源システム1のシステムCOPが最高になる送水温度を前記外気湿球温度における最適送水温度に設定するステップと、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍機と、冷水ポンプと、冷却塔と、冷却水ポンプと、該冷却塔の循環水と負荷側機器からの還水とを熱交換する熱交換器と、を備える熱源システムの制御方法であって、
前記負荷側機器からの還水温度と外気湿球温度とを比較することにより、前記冷却塔による運転の有効性を判断するステップと、
前記冷却塔運転の有効性の判断に基づき、前記冷凍機の消費電力と、前記冷水ポンプの消費電力と、前記冷却塔の消費電力と、前記冷却水ポンプの消費電力と、を算出するステップと、
前記負荷側機器の処理熱量と前記算出された各機器の消費電力の合計値とに基づき、前記熱源システムのシステムCOPを算出するステップと、
前記負荷側機器に対する送水温度の設定値を所定温度ずつ高くしながら、前記消費電力の合計値を算出すると共に前記熱源システムのシステムCOPを算出し、該熱源システムのシステムCOPが最高になる送水温度を前記外気湿球温度における最適な目標送水温度に設定するステップと、
を備えることを特徴とする熱源システムの制御方法。
【請求項2】
前記冷却塔による運転が有効でないと判断された場合には、負荷側還水温度から目標送水温度までを前記冷凍機で冷却するのに必要な該冷凍機と前記冷水ポンプの消費電力を計上し、前記冷却塔による運転が有効であると判断され且つ該冷却塔だけで目標送水温度まで冷却可能であると判断された場合には、該冷却塔のファン及び前記冷却水ポンプの消費電力を計上し、前記冷却塔による運転が有効であると判断され且つ該冷却塔をフル運転しても目標送水温度まで冷却できないと判断された場合には、該冷却塔のファン及び前記冷却水ポンプの消費電力に加えて、前記熱交換器の出口温度から目標送水温度まで前記冷凍機で冷却するのに必要な該冷凍機と前記冷水ポンプの消費電力を計上することを特徴とする請求項1に記載の熱源システムの制御方法。
【請求項3】
前記負荷側機器に対する送水温度の設定値を制御するためのプログラムを格納した制御装置を備え、該制御装置は、汎用表計算ソフトを利用して前記プログラムを実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の熱源システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却塔による冷却と冷凍機器による冷却とを併用する熱源システムの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水式放射パネルやドライコイルに代表される顕熱処理用放熱器は、潜熱処理を分離することで除湿を要しないことから、比較的高い冷水温度帯(例えば、15℃)で運用されて熱源の効率化が図られている。そして、このような高い温度帯で循環する冷水の冷却には、冷却塔等の自然エネルギーの活用が期待できるため、従来、中間期及び冬期に冷凍機等の熱源を使用せずに外気と冷却塔を用いて冷水の冷却を行うフリークーリングが数多く提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、冷凍機に送る負荷側熱媒を、冷却塔との間で循環させる冷却水と熱交換させて冷却する予冷用熱交換器を設け、冷凍機の運転に並行して予冷用熱交換器で負荷側熱媒を冷却するフリークーリング利用モードと、予冷用熱交換器での負荷側熱媒の冷却を停止した状態で冷凍機を運転する冷凍機単用モードと、を選択的に実施するフリークーリング利用冷熱源設備に関する技術が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、冷却水を供給する冷却塔と、冷水を供給する冷凍機と、冷水と冷却水とで熱交換を行う熱交換機と、を備える熱源システムにおいて、冷凍機及び熱交換機の運転パターンを生成する熱源運転ナビゲーションシステム及びその方法に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-132651号公報
【特許文献2】特開2014-202410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1や特許文献2に記載の技術では、冷水温度が固定されており、送水温度を可変することで得られる省エネルギー効果について何ら考慮されていない。したがって、これらの技術では、冷却塔を併用する熱源システムを最適な状態で運転することは難しいという問題がある。
【0007】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、常に最適な送水温度に制御することで、冷却塔の活用期間を最大限に拡大し、総エネルギー消費量を削減することができる熱源システムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するため、本発明は、冷凍機と、冷水ポンプと、冷却塔と、冷却水ポンプと、該冷却塔の循環水と負荷側機器からの還水とを熱交換する熱交換器と、を備える熱源システムの制御方法であって、 前記負荷側機器からの還水温度と外気湿球温度とを比較することにより、前記冷却塔による運転の有効性を判断するステップと、前記冷却塔運転の有効性の判断に基づき、前記冷凍機の消費電力と、前記冷水ポンプの消費電力と、前記冷却塔の消費電力と、前記冷却水ポンプの消費電力を算出するステップと、前記負荷側機器の処理熱量と前記算出された各機器の消費電力の合計値とに基づき、前記熱源システムのシステムCOPを算出するステップと、前記負荷側機器に対する送水温度の設定値を所定温度ずつ高くしながら、前記消費電力の合計値を算出すると共に前記熱源システムのシステムCOPを算出し、該熱源システムのシステムCOPが最高になる送水温度を前記外気湿球温度における最適送水温度に設定するステップと、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る熱源システムの制御方法において、前記冷却塔による運転が有効でないと判断された場合には、負荷側還水温度から目標送水温度までを前記冷凍機で冷却するのに必要な該冷凍機と前記冷水ポンプの消費電力を計上し、前記冷却塔による冷却運転が有効であると判断され且つ該冷却塔だけで目標送水温度まで冷却可能であると判断された場合には、該冷却塔のファン及び前記冷却水ポンプの消費電力を計上し、前記冷却塔による運転が有効であると判断され且つ該冷却塔をフル運転しても目標送水温度まで冷却できないと判断された場合には、該冷却塔のファン及び前記冷却水ポンプの消費電力に加えて、前記熱交換器の出口温度から目標送水温度まで前記冷凍機で冷却するのに必要な該冷凍機と前記冷水ポンプの消費電力を計上することを特徴とする。
【0010】
上記した本発明に係る熱源システムの制御方法によれば、冷却塔の活用期間を最大限に拡大し、総エネルギー消費量を削減することができる。
【0011】
さらに、本発明に係る熱源システムの制御方法において、前記負荷側機器に対する送水温度の設定値を制御するためのプログラムを格納した制御装置を備え、該制御装置は、汎用表計算ソフトを利用して前記プログラムを実行することを特徴とする。
【0012】
これにより、制御装置を安価に構築することができ、処理時間の短縮化を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、最適送水温度に制御することによって、冷却塔の活用期間を最大限に拡大し、総エネルギー消費量を削減することができる等、種々の優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態における熱源システムの構成を示す説明図である。
【
図2】本発明の実施の形態における熱源システムの制御装置の構成を示す説明図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る熱源システムの制御方法を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施の形態に係る熱源システムの制御方法において冷凍機の消費電力を算出する際に使用する部分負荷特性を示す図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る熱源システムの制御方法における冷水二次ポンプの消費電力の実測データ及び近似式を示す図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る熱源システムの制御方法における最適な目標送水温度の算出例を示す図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る熱源システムの制御方法における冷却塔の活用率を示す図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係る熱源システムの制御方法における年間エネルギー消費量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
<本発明の実施の形態における熱源システムの構成>
まず、
図1及び
図2を参照しつつ、本発明の実施の形態における熱源システムの構成について説明する。ここで、
図1は本発明の実施の形態における熱源システムの構成を示す説明図、
図2は本発明の実施の形態における熱源システムの制御装置の構成を示す説明図である。
【0017】
図1に示すように、熱源システム1は、負荷側機器2に冷水を流通させて室内空間を冷房するために設けられるものであり、冷凍機3と、冷水一次ポンプ4と、冷水二次ポンプ5と、冷却塔6と、冷却水ポンプ7と、冷却塔6の循環水と負荷側機器2からの還水とを熱交換する熱交換器8と、各機器廻りの制御弁9と、を備えて構成されている。そして、この熱源システム1によれば、熱交換器8を冷凍機3と直列に配置することで、冷却塔6だけでは目的の温度まで冷却しきれない場合に冷凍機3で冷却を行う一方、冷却塔6だけで冷却できる場合には冷凍機3を停止することができる。したがって、可能な限り冷凍機3を停止して冷却塔6の利用期間を極力長くとることで省エネルギー化を図ることができる。なお、上記した冷水一次ポンプ4と冷水二次ポンプ5はまとめて冷水ポンプとしても良い。
【0018】
本実施の形態では、負荷側機器2としては、放射パネルが使用されている。この放射パネルは、矩形薄板形状を有しており、例えば室内空間の天井面に複数台配置され、該放射パネルに冷水を流通させて室内空間を冷房するようになっている。
【0019】
また、
図2に示すように、熱源システム1は、負荷側機器2に対する送水温度の設定値(目標送水温度)を制御するための最適計算プログラムを格納した制御装置10を備えている。制御装置10としては、制御用コントローラを使用しても良いが、制御用コントローラの場合、収束計算などの複雑な計算を伴うためにソフト開発のコストが嵩み、また、計算式や判断条件のチューニングにもプログラムの専門家による操作が必要になる。
【0020】
そのため、本実施の形態では、制御装置10として、対象施設内のパソコン11、又はクラウド型として遠隔地のデータセンターの サーバー12の処理装置を使用しており、いずれの場合にも、汎用表計算ソフトを利用して前記最適計算プログラムを実行するように構成されている。このように構成することにより、制御装置10を安価に構築することができ、処理時間の短縮化を図ることも可能となる。また、後述する熱源システム1の各機器の消費電力の算出時に、制御装置10にかかる計算負荷をできる限り減少させることができると共に、計算による誤差を最小限に抑制することが可能となる。
【0021】
また、制御装置10のネットワークとしては、制御用ネットワークやローカルネットワーク13、又はデータセンター用のインターネットワーク14などを備えており、さらに、ネットワーク間には、不正侵入を防止するファイヤーウォール15が設置され、特定の機器間で特定のデータのみを通信できるようにすることで、制御用ネットワークの安全性が確保されている。
【0022】
一般的に冷凍機で製造した冷水を用いる空調システムでは、往還温度差を大きく設定すればする程、搬送動力が低減され、省エネルギーに寄与する。ところが、冷却塔のみで所定の水温に冷却するフリークーリング運転を行う場合には、往還温度差を大きく設定すると、冷却塔の活用期間が削減されることになる。
【0023】
図3は、一般的な開放型冷却塔の特性を示す図であり、外気湿球温度に対する冷水の往還温度差毎の冷却水(冷却塔)の出口温度を示している。
図3によれば、例えば、負荷側機器をこの冷却塔を用いて17℃まで冷却したい場合に、冷水の往還温度差(ΔT)を5℃差で冷水を循環させると、フリークーリングが可能な外気条件は外気湿球温度が8℃以下となるが、冷水の循環流量を増大して2℃差で循環させると、外気湿球温度が14℃までフリークーリング運転の有効期間が拡大する。反対に同じ外気湿球温度でも、冷水の往還温度差を小さく(すなわち、送水温度を高く)設定した方が冷却塔の出口温度は低下する。勿論、冷水の送水温度を高くして往還温度差を小さくするには、冷水の循環水量を増大させる必要があり、搬送動力の増大を招くことになる。一方、外気湿球温度が相当に低い時は、やはり冷水の循環水量を少なくして往還温度差を大きく設定する方が熱源システム全体では省エネルギーとなる。このように冷却塔の冷却能力は、外気条件や循環水量の条件によって変化するため、エネルギー消費量が最小となる温度帯と循環水量の最適条件は不規則に変化することが分かる。
【0024】
<本発明の実施の形態に係る熱源システムの制御方法>
次に、
図1及び
図2に加えて
図4~
図7を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る熱源システム1の制御方法について説明する。ここで、
図4は本発明の実施の形態に係る熱源システム1の制御方法を示すフローチャート、
図5は本発明の実施の形態に係る熱源システム1の制御方法において冷凍機3の消費電力を算出する際に使用する部分負荷特性を示す図、
図6は本発明の実施の形態に係る熱源システム1の制御方法における冷水二次ポンプ4の消費電力の実測データ及び近似式を示す図、
図7は本発明の実施の形態に係る熱源システム1の制御方法における最適な目標送水温度の算出例を示す図である。
【0025】
まず、
図4のステップ1(S1)に示すように、制御装置10は、負荷側機器2に対する冷凍機3からの冷水の目標送水温度を、初期値(例えば16℃)に設定した上で、計測した負荷側機器2からの冷水の還水温度(以降「負荷側還水温度」と言う。)と流量(以降「負荷側流量」と言う。)に基づき、次式により負荷側熱量を算出する。
負荷側熱量=負荷側流量×(負荷側還水温度-目標送水温度)×係数
【0026】
また、制御装置10は、ステップ2(S2)において、図示しないセンサにより計測された外気乾球温度及び外気相対湿度に基づき、外気湿球温度を演算する。
【0027】
次に、制御装置10は、ステップ3(S3)において、上記ステップ2で演算した外気湿球温度と負荷側還水温度とを比較することで、冷却塔6の活用(冷却塔での冷却)が有効かどうかを判断する。具体的には、制御装置10は、外気湿球温度が負荷側還水温度より所定温度t℃と低い場合には、冷却塔6の活用が有効である(Yes)と判断し、次のステップ4(S4)に進む。一方、制御装置10は、それ以外の場合には、冷却塔6の活用が有効でない(No)と判断し、ステップ6(S6)に進み、冷凍機3と冷水一次ポンプ4及び冷水二次ポンプ5の消費電力を演算した後、ステップ12(S12)に進む。
【0028】
ステップ6(S6)における冷凍機3の消費電力の演算は、
図5に示すように、冷凍機3の製造者から提示された送水温度毎の負荷率と外気乾球温度の部分負荷特性を示す図を用い、各条件間を計算で補間する行列表を作成し、送水温度毎に外気乾球温度と負荷率から冷凍機3のシステムCOPを探索し、負荷側熱量から逆算することにより行われる。
【0029】
また、冷水一次ポンプ4の消費電力は、定格消費電力が流量の三乗に比例する式(設計流量の三乗に定数をかけた式)から算出することができる。さらに、冷水二次ポンプ5の消費電力は、冷水二次ポンプ5の経路にある制御弁9の開度変化により、圧力損失は流量の二乗に比例しないため、冷水一次ポンプ4と同様には算出することができない。そのため、冷水二次ポンプ5の消費電力は、経験則から定格消費電力が流量の二乗に比例すると仮定し算出するか、或いは、例えば
図6に示すように、実際の運転データから消費電力y(kW)と流量x(l/min)の二次の近似式を推定し、この近似式から算出する。
【0030】
一方、制御装置10は、上記したようにステップ3(S3)において冷却塔6の活用が有効である(Yes)と判断すると、次のステップ4(S4)において、熱交換器8の出口温度(以降「熱交出口温度」と言う。)を演算した後、ステップ5(S5)において、目標送水温度と熱交出口温度とを比較する。その結果、制御装置10は、目標送水温度が熱交出口温度より高い(Yes)と判断した場合には、ステップ7(S7)に進み、冷却塔6のファン及び冷却水ポンプ7の消費電力を演算した後、ステップ12(S12)に進む。
【0031】
ステップ7(S7)における冷却塔6のファン及び冷却水ポンプ7の消費電力の演算は、熱交換器8の高温側(負荷側還水温度、熱交換器8の出口温度及び負荷側流量)と熱交換器8の低温側(冷却塔6の冷却水量及び冷却水出入口温度)が外気湿球温度の下で平衡する条件を収束計算で求め、冷却塔6のファンの消費電力、冷却水ポンプ7の消費電力、及び熱交換器8の高温側出口温度を算出することにより行われる。なお、収束計算は、数値計算で用いられている一般的な解法を用いても良いし、或いは一般的な表計算ソフトを用いて行っても良い。
【0032】
また、冷却水(冷却塔6)出口温度Tcdは、冷却塔6の製造者の性能データから、冷却水出口温度を目的変数とし、外気湿球温度、冷却水出入口温度差、冷却水流量比、冷却塔ファン風量比を説明変数として、重回帰分析(最小二乗法)を行い、次式によって求められる。
【0033】
【0034】
ここで、
Tcd:冷却水(冷却塔)出口温度[℃]
Lcd:冷却水流量比[-]
TΔcd:冷却水出入口温度差[K]
Twb:外気湿球温度[℃]
Gcd:冷却塔ファン風量比[-]
である。なお、冷却水流量比は冷却水流量を定格流量で除した値であり、冷却塔ファン風量比は冷却塔6のファン風量を定格冷却塔ファン風量で除した値である。
【0035】
また、熱交換器8(向流型熱交換器)における高温側と低温側の熱平衡式は、次式に示す通りである。
【0036】
【0037】
一方、制御装置10は、上記したステップ5(S5)において、目標送水温度が熱交出口温度より高くない(No)と判断した場合には、次のステップ8(S8)に進む。ステップ8(S8)では、制御装置10は、冷却塔6のファンの回転数比と冷却水ポンプ7の回転数比をそれぞれ例えば1%ずつ上昇させる。この時、冷却塔6のファンの回転数比と冷却水ポンプ7の回転数比を上昇させるタイミングは同時でも良いし、或いは冷却塔6のファンの回転数比を冷却水ポンプ7の回転数比より先に上昇させても良い。また、冷却塔6のファンと冷却水ポンプ7の各回転数比の上昇割合は1%ずつに限定されるものではないが、制御装置10の処理時間を考慮すると、1%程度が好ましい。
【0038】
次に、制御装置10は、ステップ9(S9)において、冷却塔6のファンの回転数比と冷却水ポンプ7の回転数比の少なくともいずれかが100%未満かどうかを判断する。その結果、制御装置10は、冷却塔6のファンの回転数比と冷却水ポンプ7の回転数比の少なくともいずれかが100%未満である(Yes)と判断した場合には、上記ステップ4(S4)に戻り、上記したそれ以降のステップ5(S5)、ステップ8(S8)、及びステップ9(S9)を実行する。
【0039】
一方、上記したステップ9(S9)において、制御装置10は、冷却塔6のファンの回転数比と冷却水ポンプ7の回転数比がいずれも100%未満でない(No)と判断した場合には、ステップ10(S10)に進み、冷却塔6のファン及び冷却水ポンプ7の消費電力を演算すると共に、ステップ11(S11)において冷却塔6の冷却不足分を補うために稼働させる冷凍機3と冷水一次ポンプ4及び冷水二次ポンプ5の消費電力を演算した後、ステップ12(S12)に進む。なお、冷却塔6のファン及び冷却水ポンプ7の消費電力と冷凍機3と冷水一次ポンプ4及び冷水二次ポンプ5の消費電力の各演算方法については、上述した通りである。
【0040】
その後、ステップ12(S12)では、冷水の目標送水温度に冷却するために必要な各機器(冷凍機3、冷水一次ポンプ4、冷水二次ポンプ5、冷却塔6のファン、冷却水ポンプ7)の消費電力を合計し、負荷側熱量を該各機器の消費電力の合計値で除して熱源システム1のシステムCOPを算出する。
【0041】
このように、制御装置10は、ステップ3(S3)において冷却塔6の活用が有効でない(No)と判断した場合には、ステップ6(S6)において負荷側還水温度から目標送水温度までを冷凍機3で冷却するのに必要な冷凍機3と冷水一次ポンプ4及び冷水二次ポンプ5の消費電力を計上する。一方、制御装置10は、ステップ3(S3)において冷却塔6の活用が有効である(Yes)と判断し且つステップ5(S5)において冷却塔6だけで目標送水温度まで冷却可能である(Yes)と判断した場合には、冷水二次ポンプ5と冷却塔6のファン及び冷却水ポンプ7の消費電力を計上し、冷凍機3と冷水一次ポンプ4の消費電力はゼロとする。また、制御装置10は、ステップ3(S3)において冷却塔6の活用が有効である(Yes)と判断し且つステップ5(S5)において冷却塔6をフル運転しても目標送水温度まで冷却できない(No)と判断した場合には、冷却塔6のファン及び冷却水ポンプ7の消費電力に加えて、熱交出口温度から目標送水温度まで冷凍機3で冷却するのに必要な冷凍機3と冷水一次ポンプ4及び冷水二次ポンプ5の消費電力を計上する。
【0042】
次に、制御装置10は、ステップ13(S13)において、冷水の目標送水温度を初期値から、例えば0.2℃ずつ高くし、次のステップ14(S14)において、該設定した目標送水温度が負荷側還水温度から所定温度(α℃)減じた温度より高いかどうかを判断する。なお、ステップ13(S13)における判断では、全体の処理時間を短くするため、負荷側還水温度から所定温度(α℃)を減じているが、負荷側還水温度から所定温度(α℃)を減じることなく、単純に目標送水温度が負荷側還水温度より高いかどうかを判断してもよい。
【0043】
その後、制御装置10は、ステップ14(S14)において、目標送水温度が負荷側還水温度から所定温度(α℃)減じた温度より高くない(No)と判断する間は、ステップ2(S2)に戻り、それ以降のステップ3(S3)~13(S13)を繰り返し実行する。そして、制御装置10は、目標送水温度が負荷側還水温度から所定温度(α℃)減じた温度より高い(Yes)と判断した場合に、ステップ15(S15)に進み、ステップ12(S12)で算出した熱源システム1のシステムCOPの値が最高になる送水温度を、その時の外気湿球温度における最適な目標送水温度として抽出して設定する。以降、制御装置10による最適な目標送水温度の抽出及び設定に係る一連のステップは定期的(例えば、10分毎)に行われ、その都度、熱源システム1の目標送水温度の設定値に反映させる。
【0044】
図7は、負荷側熱量が50MJ/h、負荷側還水温度が23℃、外気乾球温度が20℃の条件下における最適な目標送水温度の抽出例を示しており、例えば、外気湿球温度が15℃の時の最適な目標送水温度は18.2℃、外気湿球温度が17.5℃の時の最適な目標送水温度は20.2℃、外気湿球温度が20℃の時の最適な目標送水温度は21.8℃であった。
【0045】
<本発明の実施の形態に係る熱源システムの制御方法による効果>
上記した本発明の実施の形態に係る熱源システム1の制御方法によれば、常に送水温度を最適な目標送水温度に制御することによって、冷却塔の活用期間を最大限に拡大し、総エネルギー消費量を削減することができる。
【0046】
具体的には、
図8に示すように、年間の冷却塔の活用率を、従来の送水温度固定の熱源システム(
図8の中央のグラフ参照)の約 2.7倍に拡大させることができる。そして、この結果、
図9に示すように、年間の消費エネルギー量を、冷却塔を設置しない冷凍機のみの熱源システム(
図9の右側のグラフ参照)に比べて約15%削減することができ、さらに送水温度固定で冷却塔を活用した従来の熱源システム(
図9の中央のグラフ参照)に比べて約10%削減することができる。したがって、本発明の実施の形態に係る熱源システム1の制御方法のように最適な目標送水温度を可変設定することにより、熱源システム1に対して最も消費電力の少ない運転を行わせることができ、優れた省エネルギー効果を得ることができる。
【0047】
また、上記した本発明の実施の形態に係る熱源システム1の制御方法によれば、各機器(冷凍機3、冷水一次ポンプ4、冷水二次ポンプ5、冷却塔6のファン、冷却水ポンプ7)の消費電力を算出する際、計算負荷や誤差の少ない方法を機器毎に採用しているため、処理時間の短縮化を図ることができると共に、算出精度を高めることができる。
【0048】
なお、上記した本発明の実施の形態では、負荷側機器2として放射パネルを使用した場合について説明したが、これは単なる一例に過ぎず、負荷側機器としては、例えばドライコイルや床冷暖房等に用いられる他の顕熱処理用放熱器が使用可能であることは言う迄もない。
【0049】
また、上記した本発明の実施の形態の説明は、本発明に係る熱源システム1の制御方法における好適な実施の形態を説明しているため、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0050】
1 熱源システム
2 負荷側機器
3 冷凍機
4 冷水一次ポンプ
5 冷水二次ポンプ
6 冷却塔
7 冷却水ポンプ
8 熱交換器
10 制御装置