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特開2024-167185植物細胞におけるニトロゲナーゼポリペプチドの発現
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167185
(43)【公開日】2024-12-03
(54)【発明の名称】植物細胞におけるニトロゲナーゼポリペプチドの発現
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20241126BHJP
   C12N 9/06 20060101ALN20241126BHJP
   C12N 15/53 20060101ALN20241126BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20241126BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20241126BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N5/10
C12N9/06 Z
C12N15/53
C07K19/00
C12N15/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024117844
(22)【出願日】2024-07-23
(62)【分割の表示】P 2023001313の分割
【原出願日】2018-02-06
(31)【優先権主張番号】2017900359
(32)【優先日】2017-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】317002869
【氏名又は名称】コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガナイゼーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ クリストファー ウッド
(72)【発明者】
【氏名】ロバート サイラス アレン
(72)【発明者】
【氏名】岡田 尚子
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー チャールズ ワーデン
(72)【発明者】
【氏名】キンバリー セルマ ティルブルック
(72)【発明者】
【氏名】マシュー クレイグ テイラー
(57)【要約】
【課題】本発明は、植物細胞のミトコンドリアにおいてニトロゲナーゼポリペプチドを産生させる方法および手段に関する。
【解決手段】本開示は、1もしくは複数のMTP-Nif融合体、および/または翻訳的なNifD-NifKおよびNifE-NifN融合体を発現する植物細胞を提供する。本開示はまた、これらの融合体をコードする核酸構築物、ならびにその融合体の発現および植物細胞のミトコンドリアへの標的化のための発現構築物を提供する。本開示はまた、本発明の植物細胞、およびそこから得られた生成物を含むトランスジェニック植物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミトコンドリアと、以下の:
(i)C末端を有するミトコンドリア標的化ペプチド(MTP)、
(ii)N末端およびC末端を有するNifDポリペプチド(ND)、
(iii)オリゴペプチドリンカー、および
(iv)N末端を有するNifKポリペプチド(NK)、
を含み、
ここで、該MTPのC末端が、該NDのN末端に翻訳的に融合され、および
ここで、該リンカーが、該NDのC末端と該NKのN末端に翻訳的に融合される、
融合ポリペプチドとを含む植物細胞。
【請求項2】
前記融合ポリペプチドのC末端が、NKのC末端である、任意選択で、NKのC末端が、野生型NifKC末端である、請求項1に記載の植物細胞。
【請求項3】
前記オリゴペプチドリンカーが、8~50アミノ酸の長さである、請求項2または請求項3に記載の植物細胞。
【請求項4】
前記融合ポリペプチド中のNifDポリペプチドおよびNifKポリペプチドが、2つの別個のポリペプチドとして存在したときのNifDポリペプチドおよびNifKポリペプチドと同じ機能を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の植物細胞。
【請求項5】
ミトコンドリアと、以下の:
(i)C末端を有するミトコンドリア標的化ペプチド(MTP)、
(ii)N末端およびC末端を有するNifEポリペプチド(NE)、
(iii)オリゴペプチドリンカー、および
(iv)N末端を有するNifNポリペプチド(NN)
を含み、
ここで、該MTPのC末端が、翻訳的に該NEのN末端に融合され、および
ここで、該リンカーが、該NEのC末端と該NNのN末端に翻訳的に融合される、
融合ポリペプチドとを含む植物細胞。
【請求項6】
前記オリゴペプチドリンカーが、少なくとも約20アミノ酸、少なくとも約30アミノ酸、少なくとも約40アミノ酸、または約20アミノ酸~約70アミノ酸、約30アミノ酸~約70アミノ酸、約30アミノ酸~約60アミノ酸、約30アミノ酸~約50アミノ酸、または約25アミノ酸、約30アミノ酸、約35アミノ酸、約40アミノ酸、約45アミノ酸、約46アミノ酸、約50アミノ酸、または約55アミノ酸の長さである、請求項5に記載の植物細胞。
【請求項7】
前記融合ポリペプチド中のNifEポリペプチドおよびNifNポリペプチドが、2つの別個のポリペプチドとして存在したときのNifEポリペプチドおよびNifNポリペプチドと同じ機能を有し、好ましくは、それぞれ、野生型NifEポリペプチドおよび野生型NifNポリペプチドと同じ機能を有する、請求項5または請求項6に記載の植物細胞。
【請求項8】
前記MTPが、該融合ポリペプチドがMPPによって切断されて、N末端切断ペプチドおよび(ii)~(iv)を含んでいるプロセシングされた融合ポリペプチド(CF)を作製することができるような、マトリックスプロセシングプロテアーゼ(MPP)のためのプロテアーゼ切断部位を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の植物細胞。
【請求項9】
前記CFが、MTPのC末端アミノ酸の、すべてではなく、いくつか、好ましくはMTPのC末端アミノ酸のうちの5~45アミノ酸を含む、請求項8に記載の植物細胞。
【請求項10】
前記MTPが、F1-ATPアーゼγ-サブユニットMTPの約51アミノ酸を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の植物細胞。
【請求項11】
前記植物細胞が、1もしくは複数のNF融合ポリペプチド(NF)をさらに含み、そして、各NFが、(i)C末端を有するミトコンドリア標的化ペプチド(MTP)および(ii)N末端を有するNifポリペプチド(NP)を含み、ここで、該MTPのC末端が、該NPのN末端に翻訳的に融合され、およびここで、それぞれのMTPが、独立に同じであるかまたは異なっており、かつ、それぞれのNPが、独立に同じであるかまたは異なっており、およびここで、ミトコンドリアが、1もしくは複数のNF、および/またはそのプロセシングされた生成物(CF)を含み、ここで、各CFが、存在する場合、そのMTP内の対応するNFの切断によって作製される、請求項1~10に記載の植物細胞。
【請求項12】
前記NFポリペプチドのうち少なくとも1つが、NifHである、請求項11に記載の植物細胞。
【請求項13】
前記ミトコンドリアが、(i)NifD、NifH、NifK、NifB、NifEおよびNifN、または(ii)NifD、NifH、NifKまたはNifSから成る群から選択されるNifポリペプチドのうちの1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、またはそのすべてを含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の植物細胞。
【請求項14】
前記MTPが、少なくとも10アミノ酸、好ましくは10~80アミノ酸を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の植物細胞。
【請求項15】
少なくとも1つ、複数、すべてのMTPが、ミトコンドリアタンパク質前駆体のMTP、またはその変異体、好ましくは、植物MTPを含んでいる、請求項1~14のいずれか1項に記載の植物細胞。
【請求項16】
融合ポリペプチドをコードする外来ポリヌクレオチドが、細胞の核ゲノム内に組み込まれる、請求項1~15のいずれか1項に記載の植物細胞。
【請求項17】
前記細胞が、アラビドプシス・サリアナのプロトプラスト以外の細胞である、請求項1~16のいずれか一項に記載の細胞植物。
【請求項18】
前記トランスジェニック植物が、融合ポリペプチドをコードする1もしくは複数の外来ポリヌクレオチドのトランスジェニックである、請求項1~17のいずれか1項に記載の細胞を含むトランスジェニック植物。
【請求項19】
1つ、複数、またはすべての外来ポリヌクレオチドが、植物の根で発現されており、好ましくは、植物の葉よりも植物の根で優れたレベルで発現されている、請求項18に記載のトランスジェニック植物。
【請求項20】
前記トランスジェニック植物が、例えばコムギ、コメ、トウモロコシ、トリティカーレ、オートムギ、またはオオムギ、好ましくはコムギなどの穀物用植物である、請求項18または請求項19に記載のトランスジェニック植物。
【請求項21】
前記トランスジェニック植物が、外来ポリヌクレオチドのホモ接合体またはヘテロ接合体である、請求項18~20のいずれか1項に記載のトランスジェニック植物。
【請求項22】
前記トランスジェニック植物が、田畑に生えている、請求項18~21のいずれか1項に記載のトランスジェニック植物。
【請求項23】
田畑に生えている、請求項18~22のいずれか1項に記載の植物の少なくとも100本の集団。
【請求項24】
以下の:
(i)C末端を有するミトコンドリア標的化ペプチド(MTP)、
(ii)N末端およびC末端を有するNifDポリペプチド(ND)、
(iii)オリゴペプチドリンカー、および
(iv)N末端を有するNifKポリペプチド(NK)、
を含み、
ここで、該MTPのC末端が、該NDのN末端に翻訳的に融合され、および
ここで、該リンカーが、該NDのC末端と該NKのN末端に翻訳的に融合される、
融合ポリペプチド。
【請求項25】
前記融合ポリペプチドのC末端が、NKのC末端であり、任意選択で、NKのC末端が、野生型NifKのC末端である、請求項24に記載の融合ポリペプチド。
【請求項26】
以下の:
(i)C末端を有するミトコンドリア標的化ペプチド(MTP)、
(ii)N末端およびC末端を有するNifEポリペプチド(NE)、
(iii)オリゴペプチドリンカー、および
(iv)N末端を有するNifNポリペプチド(NN)、
を含み、
ここで、該MTPのC末端が、翻訳的に該NEのN末端に融合され、および
ここで、該リンカーが、該NEのC末端と該NNのN末端に翻訳的に融合される、
融合ポリペプチド。
【請求項27】
前記オリゴペプチドリンカーが、約46アミノ酸の長さである、請求項26に記載の融合ポリペプチド。
【請求項28】
前記融合ポリペプチドが、マトリックスプロセシングプロテアーゼ(MPP)によって切断されて、(ii)~(iv)を含んだ、1もしくは複数のプロセシングされたNifポリペプチド生成物を作製することができる、請求項24~27のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項29】
前記融合ポリペプチドが、植物細胞または細菌細胞の中、好ましくは植物細胞のミトコンドリアの中に存在する、請求項24~28のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項30】
請求項24~29のいずれか1項に記載の融合ポリペプチドから、該融合ポリペプチドのMTP内の切断によって作製された、プロセシングされたNifポリペプチド。
【請求項31】
植物細胞のミトコンドリアマトリックス中のMPPによる融合ポリペプチドの切断によって作製された、請求項30に記載のプロセシングされたNifポリペプチド。
【請求項32】
植物細胞または細菌細胞の中、好ましくは植物ミトコンドリアの中、より好ましくは植物細胞ミトコンドリアのミトコンドリアマトリックス(MM)の中に存在する、請求項30または請求項31に記載のプロセシングされたNifポリペプチド。
【請求項33】
好ましくは、NPCがニトロゲナーゼ活性を有するように、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、または少なくとも7つの他のNifポリペプチドと結合して、Nifタンパク質複合体(NPC)を形成することができる、請求項24~29のいずれか1項に記載の融合ポリペプチドまたは請求項30~32のいずれか1項に記載のプロセシングされたNifポリペプチド。
【請求項34】
請求項24~29のいずれか1項に記載の融合ポリペプチドのうちの1もしくは複数をコードするポリヌクレオチド。
【請求項35】
前記ポリヌクレオチドが、細菌の対応するNifタンパク質をコードする天然のポリヌクレオチドに対して、植物細胞における発現のためにコドン修飾された、請求項34に記載のポリヌクレオチド。
【請求項36】
前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターをさらに含む、請求項34または請求項35に記載のポリヌクレオチド。
【請求項37】
植物細胞内または細菌細胞内に存在する、好ましくは、該植物細胞の核ゲノム内に組み込まれた、請求項34~36のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項38】
請求項34~37のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含むか、またはコードするキメラベクター。
【請求項39】
請求項18~22のいずれか1項に記載のトランスジェニック植物を作製する方法であって、以下のステップ:
i)請求項34~37のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、および/または請求項38に記載のベクター植物細胞内に導入し、
ii)該細胞からトランスジェニック植物を再生し、および
iii)任意選択で、該植物から種子を採取し、および/または
iv)任意選択で、該トランスジェニック植物から1もしくは複数の子孫植物を作製し、それによって、トランスジェニック植物を作製すること、
を含む方法。
【請求項40】
請求項18~22のいずれか1項に記載の植物の植物部分。
【請求項41】
請求項34~37のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含む種子である、請求項40の植物部分。
【請求項42】
フラワー、全粒粉、デンプン、油脂、シードミールまたは種子から得られる他の製品を製造する方法であって、以下のステップ:
a)請求項41に記載の種子を得、および
b)フラワー、全粒粉、デンプン、油脂もしくは他の製品を抽出するか、またはシードミールを製造すること、
を含む方法。
【請求項43】
請求項18~22のいずれか1項に記載の植物、および/また請求項40または請求項41に記載の植物部分から製造される製品。
【請求項44】
食品を調製する方法であって、請求項41に記載の種子、または種子からのフラワー、全粒粉もしくはデンプンを、別の食品成分と混合することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、植物細胞のミトコンドリアにおいてニトロゲナーゼポリペプチドを産生するための方法および手段に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
窒素固定細菌は、酵素複合体、ニトロゲナーゼによって触媒された、生物窒素固定(BNF)を介してN2ガスからアンモニアを産生する。それにもかかわらず、近代農業の需要はこの固定窒素供給源を大きく上回り、その結果、農業において、工業的に製造された窒素肥料が大々的に使用されている(Smil, 2002)。しかしながら、肥料製造および適用の両方が、汚染の原因となり(Good and Beatty, 2011)、そして持続可能ではないと見なされている(Rockstrom et al., 2009)。世界中で適用された肥料の大部分が、作物によって吸収されることなく(Cui et al., 2013; de Bruijn, 2015)、肥料流出、雑草の助長そして水路の富栄養化につながっている(Good and Beatty, 2011)。結果として生じる藻類ブルームが酸素レベルを低下させ、そして、局所的および珊瑚礁全体にわたる沖合の環境破壊の原因となっている(De'ath et al., 2012; Glibert et al., 2014; Sutton et al., 2008)。さらに、過剰施肥は多くの先進国において問題であるが、特定の地域では、その利用可能度が、作物収量を制限している(Mueller et al., 2012)。肥料自体の製造には、相当なエネルギー入力を必要とするので、概算で100USDビロン/年を要する。
【0003】
明らかに、工業的に製造された窒素への依存性を低減するストラテジーが必要とされている。このために、生物窒素固定が可能な遺伝子操作植物の概念は、長い間、相当な注目を集めており(Merrick and Dixon, 1984)、かつ、最近のレビューの中心になっていた(e Bruijn, 2015; Oldroyd and Dixon, 2014)。期待されるアプローチとしては、i)マメ類から穀類へのジアゾ栄養生物の共生関係の拡大(Santi et al., 2013)、ii)窒素固定を可能にするような内部共生微生物のリエンジニアリング(Geddes et al., 2015)、およびiii)植物細胞内のニトロゲナーゼの遺伝子操作(Curatti and Rubio, 2014)が挙げられる。これらのアプローチのすべてが、技術的困難のため野心的かつ投機的である。
【0004】
ニトロゲナーゼ(ジアゾ栄養細菌において生物窒素固定を可能にする酵素複合体)は、その生合成および機能のために多重遺伝子集合経路を必要とし、広く概説されている(Hu and Ribbe, 2013; Rubio and Ludden, 2008; Seefeldt et al., 2009)。標準的な鉄-モリブデンニトロゲナーゼの成分としては、NifDやNifKと示される触媒タンパク質および電子供与体NifHが挙げられる。約12種類の他のタンパク質、具体的には、NifM、NifS、NifU、NifE、NifN、NifX、NifV、NifJ、NifY、NifF、NifZおよびNifQが、錯体の成熟、足場および補因子挿入を含めたジアゾ栄養細菌におけるニトロゲナーゼ集合に関与している。遺伝子損傷、非ジアゾ栄養原核生物に対するジアゾ栄養生物の間の補完性アッセイ、および発生分析(Dos Santos et al., 2012; Temme et al., 2012; Wang et al., 2013)では、Nifタンパク質のサブセット(NifD、NifK、NifB、NifEおよびNifN)が中核的な構成要素であるとみなされるに至り、一方、他の構成要素は、最適化された活性に必要であると考えられるので、補助的であると見なされる。特定の生化学的条件もまた、ニトロゲナーゼ集合および機能に必要である。その中でも第一に、ニトロゲナーゼは、酸素に非常に感受性である(Robson and Postgate, 1980)。さらに、大量のATP、還元体、容易に利用可能なFe、Mo、S-アデノシルメチオニンおよびホモクエン酸が、メタロプロテイン触媒中心の生合成および機能に必要である(Hu and Ribbe, 2013; Rubio and Ludden, 2008)。これらの因子のすべてが、植物細胞内の機能的なニトロゲナーゼ複合体を製造することの技術的困難に寄与する。
【発明の概要】
【0005】
本発明者らは、植物細胞内でNifDを産生する際に観察された困難を考慮して、植物細胞内に等量のNifDおよびNifKを有する重要さを究明した。ポリペプチドの詳細分析は、それらが融合タンパク質として発現され、機能を維持し得ること、ならびに野生型C末端を有するNifK成分の重要さを示した。よって一態様において、本発明は、ミトコンドリアと、以下の:
(i)C末端を有するミトコンドリア標的化ペプチド(MTP)、
(ii)N末端およびC末端を有するNifDポリペプチド(ND)、
(iii)オリゴペプチドリンカー、および
(iv)N末端を有するNifKポリペプチド(NK)、
を含み、
ここで、該MTPのC末端は、該NDのN末端に翻訳的に融合され、および
ここで、該リンカーは、該NDのC末端と該NKのN末端に翻訳的に融合される、
融合ポリペプチドとを含む植物細胞を提供する。
【0006】
ある実施形態において、融合ポリペプチドのC末端は、NKのC末端である。好ましい実施形態において、NKのC末端は野生型NifKポリペプチドのC末端と同じである、すなわち、NKは、どんな人工的に付加されたC末端伸長も有していない。野生型C末端を有することは、NifK活性を維持するのに重要である。
【0007】
別の実施形態において、リンカーは、植物細胞または細菌細胞内で機能的な形状で、NDとNKとが結合することを可能にするのに十分な長さのものである。ある実施形態において、リンカーは、長さが8~50アミノ酸である。好ましくは、リンカーは、長さが少なくとも約20アミノ酸、少なくとも約25アミノ酸、または少なくとも約30アミノ酸である。より好ましくは、リンカーは、長さが25~35アミノ酸である。最も好ましくは、リンカーは、長さが約30アミノ酸である。これに関連して、「約30」とは、27、28、29、30、31、32または33アミノ酸を意味する。
【0008】
ある実施形態において、融合ポリペプチド中のNifDポリペプチドおよびNifKポリペプチドは、2つの別個のポリペプチドとして存在したときのNifDポリペプチドおよびNifKポリペプチドと同じ機能を有する。好ましくは、融合ポリペプチドの生化学的活性は、野生型NifDポリペプチドおよび野生型NifKポリペプチドと同じである。
【0009】
本発明者らはまた、等量のNifEおよびNifNを植物細胞内に有する重要さを究明した。ポリペプチドの詳細分析は、それらが融合タンパク質として発現され、機能を維持し得ること、ならびにNifポリペプチドが機能的であるには、リンカーが存在することが必要であることを示した。よって、さらなる態様において、本発明は、ミトコンドリアと、以下の:
(i)C末端を有するミトコンドリア標的化ペプチド(MTP)、
(ii)N末端およびC末端を有するNifEポリペプチド(NE)、
(iii)オリゴペプチドリンカー、および
(iv)N末端を有するNifNポリペプチド(NN)
を含み、
ここで、該MTPのC末端は、翻訳的に該NEのN末端に融合され、および
ここで、該リンカーは、該NEのC末端と該NNのN末端に翻訳的に融合される、
融合ポリペプチドとを含む植物細胞を提供する。
【0010】
上記の態様のある実施形態において、リンカーは、植物細胞または細菌細胞内で機能的な形状で、NEとNNとが結合することを可能にするのに十分な長さのものである。例えば、ある実施形態において、リンカーは、少なくとも約70Å、少なくとも約100Å、約70Å~約150Å、または約100Å~約120Å、または約100Å、または約104Åの長さである。ある実施形態において、オリゴペプチドリンカーは、少なくとも約20アミノ酸、少なくとも約30アミノ酸、少なくとも約40アミノ酸、または約20アミノ酸~約70アミノ酸、約30アミノ酸~約70アミノ酸、約30アミノ酸~約60アミノ酸、約30アミノ酸~約50アミノ酸、または約25アミノ酸、約30アミノ酸、約35アミノ酸、約40アミノ酸、約45アミノ酸、約46アミノ酸、約50アミノ酸、または約55アミノ酸の長さである。
【0011】
ある実施形態において、融合ポリペプチド中のNifEポリペプチドおよびNifNポリペプチドは、2つの別個のポリペプチドとして存在したときのNifEポリペプチドおよびNifNポリペプチドと同じ機能を有する。好ましくは、融合ポリペプチドの生化学的活性は、野生型NifEポリペプチドおよび野生型NifNポリペプチドと同じである。
【0012】
ある実施形態において、MTPは、該融合ポリペプチドがMPPによって切断されて、N末端切断ペプチドおよび(ii)~(iv)を含んでいるプロセシングされた融合ポリペプチド(CF)を作製することができるような、マトリックスプロセシングプロテアーゼ(MPP)のためのプロテアーゼ切断部位を含む。ある実施形態において、CFは、MTPのC末端アミノ酸の、すべてではなく、いくつか、好ましくはMTPのC末端アミノ酸のうちの5~45アミノ酸を含む。ある実施形態において、MPPによる切断は、融合ポリペプチドから5~50アミノ酸を取り除いて、CFを作製する。好ましい実施形態において、CFは、MTPのC末端から約5~約11アミノ酸残基、例えば、MTPのC末端から6または7アミノ酸、7または8アミノ酸、8または9アミノ酸、9または10アミノ酸、あるいは、11または12アミノ酸ほどを含む。
【0013】
上記の2つの態様のある実施形態において、植物細胞は、1もしくは複数のNF融合ポリペプチド(NF)をさらに含み、そして、各NFは、(i)C末端を有するミトコンドリア標的化ペプチド(MTP)および(ii)N末端を有するNifポリペプチド(NP)を含み、ここで、該MTPのC末端は、該NPのN末端に翻訳的に融合され、およびここで、それぞれのMTPは、独立に同じであるかまたは異なっており、かつ、それぞれのNPは、独立に同じであるかまたは異なっており、およびここで、ミトコンドリアは、1もしくは複数のNF、および/またはそのプロセシングされた生成物(CF)を含み、ここで、各CFは、存在する場合、そのMTP内の対応するNFの切断によって作製される。好ましくは、NFポリペプチドのうちの少なくとも1つが、NifHである。好ましい実施形態において、各CFは、独立に、MTPのC末端から約5~約11アミノ酸残基、例えば、MTPのC末端から6または7アミノ酸、7または8アミノ酸、8または9アミノ酸、9または10アミノ酸、あるいは、11または12アミノ酸ほどを含む。
【0014】
ある実施形態において、(単数もしくは複数の)融合ポリペプチドをコードする(単数もしくは複数の)外来ポリヌクレオチドが、細胞のゲノムの中に組み込まれる。
【0015】
本発明者らはまた、16種類のクレブシエラ・ニューモニア(Klebsiella pneumoniae)の生合成、かつ、機能的なニトロゲナーゼ(Nif)タンパク質のすべてが、例えばニコチアナ・ベンサミアナ(Nicotiana benthamiana)の葉などの、植物細胞内にミトコンドリア標的化ペプチド(MTP)-Nif融合物として個別に発現され得ることを示した。本発明者らは、これらの融合物が、ニトロゲナーゼ機能の生化学的および遺伝子特徴を潜在的に支持する細胞内位置である、ミトコンドリアマトリックス(MM)が正確に標的化されることを実証した。NifJ、NifH、NifD、NifK、NifY、NifE、NifN、NifX、NifU、NifS、NifV、NifM、NifF、NifBおよびNifQポリペプチドは、ウエスタンブロット分析で検出可能であった。しかしながら、NifD(触媒作用にかかわる中核的な構成要素)は、最も少なかった。ニトロゲナーゼNifD-NifKヘテロ二量体の結晶構造は、発現レベルが改善されたNifD-NifKの翻訳的な融合タンパク質を設計するのに使用された。最終的に、4種類のNif融合ポリペプチド(NifB、NifS、NifH、NifY)が首尾よく同時発現され、そして、ニトロゲナーゼの複数の成分がミトコンドリアに標的化され得ることを実証した。これらの結果は、アンモニアへの窒素ガスの還元を補助するために細胞内環境内においてニトロゲナーゼ構成要素を再構成することの実現可能性を確立する。
【0016】
すべてのNifタンパク質のうち、ニトロゲナーゼ触媒錯体の必須成分(NifD)は発現させるのが最も難しかった。低レベルのNifDタンパク質は、高レベルのNIFD RNAとは対照的であり、翻訳速度またはタンパク質安定性が、NifDタンパク質量を制限していたことを示唆した。触媒作用におけるNifDの決定的な重要性を考えて、その要件は、細菌内で高度に発現されること、そして好ましくはNifKと等モル比で、発現されることであり(Poza-Carrion et al., 2014)、本発明者らは、一緒にこれらの2つの極めて重要な成分を融合し、そして、NifDの豊富さがこのストラテジーを通して高められ得ることを見出した。このNifD-NifK融合はまた、単一カセットによる発現で連結され、そして、天然ヘテロ四量体の化学量論性をまねた、理想的な1:1比での両サブユニットの翻訳を可能にする利点があった。さらに、リンカー自体は、2つのサブユニットが、触媒作用に必要とされる正確なα2β2ヘテロ四量体構造を形成するのに十分な柔軟性を可能にするように設計された。本発明者らは、NifD-NifK融合ポリペプチドが、以前に実証されたより優れた有効性をもって、少なくとも個別のNifDおよびNifK発現を機能上置換すると予測した。
【0017】
よって、一態様において、本発明は、ミトコンドリアと、NifD融合ポリペプチド(NDF)をコードする外来ポリヌクレオチドとを含む植物細胞であって、該NDFが、(i)C末端を有するミトコンドリア標的化ペプチド(MTP)および(ii)N末端を有するNifDポリペプチド(ND)を含み、ここで、該MTPのC末端は、該NDのN末端に翻訳的に融合され、ここで、該ミトコンドリアは、NDFおよび/またはそのプロセシングされたNifD生成物(CDF)を含み、およびここで、該CDFは、存在する場合、MTP内のNDFの切断によって作製される、植物細胞を提供する。
【0018】
一実施形態において、MTPは、NDFがMPPによって切断されて、N末端切断ペプチドとCDFを作製することができるような、マトリックスプロセシングプロテアーゼ(MPP)のためにプロテアーゼ切断部位を含む。ある実施形態において、CDFは、MTPのC末端から約5~約11アミノ酸残基、例えば、MTPのC末端から6または7アミノ酸、7または8アミノ酸、8または9アミノ酸、9または10アミノ酸、あるいは、11または12アミノ酸ほどを含む。
【0019】
一態様において、本発明は、1もしくは複数のNF融合ポリペプチド(NF)を含む植物細胞であって、各NFが、(i)C末端を有するミトコンドリア標的化ペプチド(MTP)および(ii)N末端を有するNifポリペプチド(NP)を含み、該NPが、NifE、NifF、NifJ、NifM、NifN、NifQ、NifS、NifU、NifV、NifW、NifX、NifYおよびNifZから成る群から選択され、ここで、該MTPのC末端は、該NPのN末端に翻訳的に融合され、ここで、それぞれのMTPは、独立に同じであるかまたは異なっており、それぞれのNPは、独立に同じであるかまたは異なっており、およびここで、該ミトコンドリアは、1もしくは複数のNFおよび/またはそのプロセシングされた生成物(CF)を含み、そしてここで、各CFは、存在する場合、MTP内の対応するNFの切断によって作製される、植物細胞を提供する。ある実施形態において、NFポリペプチドは、NifD、NifHおよびNifKから成る群から選択されるNifポリペプチドの1もしくは複数、または好ましくはそのすべてをさらに含む。好ましい実施形態において、NifKおよび/またはNifNのC末端は、それぞれ、野生型NifKポリペプチドまたは野生型NifNポリペプチドのC末端と同じである、すなわち、NifKおよび/またはNifNは、好ましくは両方とも、どんな人工的に付加されたC末端伸長も有していない。
【0020】
好ましい実施形態において、各CFは、独立にMTPのC末端から約5~約11アミノ酸残基、例えば、MTPのC末端から6または7アミノ酸、7または8アミノ酸、8または9アミノ酸、9または10アミノ酸、あるいは、11または12アミノ酸ほどを含む。
【0021】
別の態様において、本発明は、ミトコンドリアと、第一のNif融合ポリペプチド(NF)をコードする第一の外来ポリヌクレオチド、および第二のNFをコードする第二の外来ポリヌクレオチドとを含む植物細胞であって、各NFが、(i)C末端を有するミトコンドリア標的化ペプチド(MTP)および(ii)N末端を有するNifポリペプチド(NP)を含み、ここで、該MTPのC末端は、該NPのN末端に翻訳的に融合され、ここで、それぞれのMTPは、独立に同じであるかまたは異なっており、かつ、それぞれのNPは独立に同じであるかまたは異なっており、およびここで、ミトコンドリアは、(a)第一のNFおよび/またはそのプロセシングされた生成物(第一のCF)および(b)第二のNFおよび/またはそのプロセシングされた生成物(第二のCF)を含み、そしてここで、各CFが、存在する場合、MTP内の対応するNFの切断によって作製される、植物細胞を提供する。好ましい実施形態において、第一および第二のNFは、NifE、NifF、NifJ、NifM、NifN、NifQ、NifS、NifU、NifV、NifW、NifX、NifYおよびNifZから成る群から選択される。好ましい実施形態において、NifK(存在する場合)および/またはNifNのC末端は、それぞれ、野生型NifKポリペプチドまたは野生型NifNポリペプチドのC末端と同じである、すなわちNifKおよび/またはNifNは、好ましくは両方とも、どんな人工的に付加されたC末端伸長も有していない。
【0022】
好ましい実施形態において、各CFは、独立にMTPのC末端から約5~約11アミノ酸残基、例えば、MTPのC末端から6または7アミノ酸、7または8アミノ酸、8または9アミノ酸、9または10アミノ酸、あるいは、11または12アミノ酸ほどを含む。
【0023】
一実施形態において、植物細胞は、1もしくは複数のNFをコードする1もしくは複数の外来ポリヌクレオチドをさらに含み、各NFは、(i)C末端を有するミトコンドリア標的化ペプチド(MTP)および(ii)N末端を有するNifポリペプチド(NP)を含み、ここで、該MTPのC末端は、該NPのN末端に翻訳的に融合され、ここで、それぞれのMTPは、独立に同じであるかまたは異なっており、かつ、それぞれのNPは、独立に同じであるかまたは異なっており、およびここで、ミトコンドリアは、1もしくは複数のNFおよび/またはそのプロセシングされた生成物(CF)を含み、そしてここで、各CFは、存在する場合、MTP内の対応するNFの切断によって作製される。好ましい実施形態において、1もしくは複数のNFが、NifE、NifF、NifJ、NifM、NifN、NifQ、NifS、NifU、NifV、NifW、NifX、NifYおよびNifZから成る群から選択される。好ましい実施形態において、NifK(存在する場合)および/またはNifNのC末端は、それぞれ、野生型NifKポリペプチドまたは野生型NifNポリペプチドのC末端と同じである、すなわち、NifKおよび/またはNifNは、好ましくは両方とも、どんな人工的に付加されたC末端伸長も有していない。
【0024】
一またはさらなる実施形態において、少なくとも1つのMTP、2以上のMTP、またはそれぞれのMTPが、MPPのためにプロテアーゼ切断部位を含むそれぞれのNFがMPPによって切断されて、N末端切断ペプチドおよび対応するCFを作製することができるように、マトリックスプロセシングプロテアーゼ(MPP)のためにプロテアーゼ切断部位を含む。好ましい実施形態において、各CFは、独立にMTPのC末端から約5~約11アミノ酸残基、例えば、MTPのC末端から6または7アミノ酸、7または8アミノ酸、8または9アミノ酸、9または10アミノ酸、あるいは、11または12アミノ酸ほどを含む。
【0025】
さらなる態様において、本発明は、ミトコンドリアと、以下の:
(a)NifD融合ポリペプチド(NDF)をコードする第一の外来ポリヌクレオチド、該NDFは、(i)C末端有する第一のミトコンドリア標的化ペプチド(MTP1)および(ii)N末端を有するNifDポリペプチド(ND)を含み、ここで、該MTP1のC末端は、該NDのN末端に翻訳的に融合され、
(b)NifH融合ポリペプチド(NHF)をコードする第二の外来ポリヌクレオチド、該NHFは、(i)C末端を有する第二のミトコンドリア標的化ペプチド(MTP2)および(ii)N末端を有するNifHポリペプチド(NH)を含み、ここで、該MTP2のC末端は、該NHのN末端に翻訳的に融合され、ならびに
(c)NifK融合ポリペプチド(NKF)をコードする第三の外来ポリヌクレオチド、該NKFは、(i)C末端を有する第三のミトコンドリア標的化ペプチド(MTP3)および(ii)がN末端を有するNifKポリペプチド(NK)を含み、ここで、第三のMTPのC末端は、該NKのN末端に翻訳的に融合される、
とを含み、
ここで、MTP1、MTP2およびMTP3のそれぞれは、独立に同じであるかまたは異なっており、そして、
ここで、該植物細胞は、第一の外来ポリヌクレオチドを含んでおり、かつ、第二および第三の外来ポリヌクレオチドを有していない対応する植物細胞におけるNDFおよび/またはCDFのレベルより優れたレベルのNDFおよび/またはそのプロセシングされた生成物(CDF)を含み、およびここで、該CDFが、存在する場合、MTP1内のNDFの切断によって作製される、植物細胞を提供する。好ましい実施形態において、植物細胞は、NifE、NifF、NifJ、NifM、NifN、NifQ、NifS、NifU、NifV、NifW、NifX、NifY、およびNifZから成る群から選択される1もしくは複数のNFをコードする1もしくは複数の外来ポリヌクレオチドをさらに含む。好ましい実施形態において、NifKおよび/またはNifN(存在する場合)のC末端は、それぞれ、野生型NifKポリペプチドまたは野生型NifNポリペプチドのC末端と同じである、すなわち、NifKおよび/またはNifNは、好ましくは両方とも、どんな人工的に付加されたC末端伸長も有していない。
【0026】
一実施形態において、CDFは、ミトコンドリア内に存在する。
さらなる実施形態において、ミトコンドリアは、NHF(CHF)およびNKF(CKF)の一方または両方のプロセシングされた生成物をさらに含み、ここで、該CHFおよびCKFは、存在する場合、それぞれMTP2およびMTP3内のNHFおよびNKFの切断によって作製される。好ましい実施形態において、CHFおよび/またはCKFは、独立にMTPのC末端から約5~約11アミノ酸残基、例えば、MTPのC末端から6または7アミノ酸、7または8アミノ酸、8または9アミノ酸、9または10アミノ酸、あるいは、11または12アミノ酸ほどを含む。
【0027】
さらなる実施形態において、植物細胞は、以下の:(i)MTP1は、NDFがMPPによって切断されて、N末端切断ペプチドおよびCDFを作製することができるような、MPPのためにプロテアーゼ切断部位を含み、(ii)MTP2は、NHFがMPPによって切断されて、N末端切断ペプチドおよびプロセシングされたNifH生成物(CHF)を作製することができるような、MPPのためにプロテアーゼ切断部位を含み、ならびに(iii)MTP3は、NKFがMPPによって切断されて、N末端切断ペプチドおよびプロセシングされたNifK生成物(CKF)を作製することができるような、MPPのためにプロテアーゼ切断部位を含む、のうちの1つ、複数またはすべてを特徴とし、ここで、ミトコンドリアは、CDF、CHFおよびCKFの1つ、複数またはすべてを含む。好ましい実施形態において、CDF、CHFおよび/またはCKFのそれぞれは、独立にMTPのC末端から約5~約11アミノ酸残基、例えば、MTPのC末端から6または7アミノ酸、7または8アミノ酸、8または9アミノ酸、9または10アミノ酸、あるいは、11または12アミノ酸ほどを含む。
【0028】
さらなる態様において、本発明は、ミトコンドリアと、NifDポリペプチド(ND)をコードする第一の外来ポリヌクレオチドおよびNifKポリペプチド(NK)をコードする第二の外来ポリヌクレオチドとを含む植物細胞であって、ここで、NDとNKのいずれか一方または両方が、そのN末端でC末端を有するミトコンドリア標的化ペプチド(MTP)に翻訳的に融合され、ここで、NDとNKの両方が、該MTPに翻訳的に融合される場合、それぞれのMTPは、独立に同じであるかまたは異なっており、およびここで、第二の外来ポリヌクレオチドは、第一の外来ポリヌクレオチドに共有結合で結合されるかまた共有結合で結合されず、そしてここで、該植物細胞が、ほぼ同じくらいであるNDのレベルとNKのレベルを含む、植物細胞を提供する。
【0029】
好ましい実施形態において、NifKのC末端は、野生型NifKポリペプチドのC末端と同じである、すなわち、NifKは、どんな人工的に付加されたC末端伸長も有していない。好ましい実施形態において、NDおよび/またはNKの切断は、MTPのC末端から約5~約11アミノ酸残基、例えば、MTPのC末端から6または7アミノ酸、7または8アミノ酸、8または9アミノ酸、9または10アミノ酸、あるいは、11または12アミノ酸ほどを有する切断生成物であるポリペプチドをもたらす。
【0030】
一実施形態において、NDのレベルとNKのレベルは、MTP-Nif融合物とそのプロセシングされた生成物とを含む。
【0031】
さらなる態様において、本発明は、ミトコンドリアと、NifH融合ポリペプチド(NHF)をコードする外来ポリヌクレオチドとを含む植物細胞であって、該NHFは、(i)C末端を有するミトコンドリア標的化ペプチド(MTP)および(ii)N末端を有するNifHポリペプチド(NH)を含み、ここで、該MTPのC末端は、該NHのN末端に翻訳的に融合され、ここで、該ミトコンドリアは、NHFおよび/またはそのプロセシングされたNifH生成物(CHF)を含み、そしてここで、該CHFが、存在する場合、MTP内のNHFの切断によって作製される、植物細胞を提供する。
【0032】
一実施形態において、MTPは、NHFがMPPによって切断されて、N末端切断ペプチドおよびCHFを作製することができるような、マトリックスプロセシングプロテアーゼ(MPP)のためにプロテアーゼ切断部位を含む。ある実施形態において、CHFは、MTPのC末端から約5~約11アミノ酸残基、例えば、MTPのC末端から6または7アミノ酸、7または8アミノ酸、8または9アミノ酸、9または10アミノ酸、あるいは、11または12アミノ酸ほどを含む。
【0033】
さらなる態様において、本発明は、ミトコンドリアと、Nif融合ポリペプチド(NF)をコードする外来ポリヌクレオチドを含む植物細胞であって、該NFが、(i)C末端を有するミトコンドリア標的化ペプチド(MTP)および(ii)N末端を有するNifポリペプチド(NP)を含み、ここで、該MTPのC末端は、該NPのN末端に翻訳的に融合され、ここで、該ミトコンドリアは、NFおよび/またはそのプロセシングされたNP生成物(CF)を含み、およびここで、該CFは、存在する場合、MTP内のNFの切断によって作製され、そしてここで、NFおよび/またはCFは、好ましくはその両方のNFおよびCFは、対応する野性型Nifポリペプチドに関連した天然のC末端を有する、植物細胞を提供する。
【0034】
好ましい実施形態において、NPは、NifDポリペプチド、NifKポリペプチド、およびNifNポリペプチドから成る群から選択される。好ましくは、NifKおよびNifNの両方である。
【0035】
さらなる態様において、本発明は、ミトコンドリアと、NifD融合ポリペプチド(NDF)をコードする第一の外来ポリヌクレオチド(該NDFは、(i)C末端を有する第一のミトコンドリア標的化ペプチド(MTP1)および(ii)N末端を有するNifDポリペプチド(ND)を含み、ここで、該MTP1のC末端は、該NDのN末端に翻訳的に融合される)と、以下の:
【0036】
(a)NifH融合ポリペプチド(NHF)をコードする第二の外来ポリヌクレオチド、該NHFは、(i)C末端を有する第二のミトコンドリア標的化ペプチド(MTP2)および(ii)N末端を有するNifHポリペプチド(NH)を含み、ここで、該MTP2のC末端は、該NHのN末端に翻訳的に融合され、ならびに
(b)NifK融合ポリペプチド(NKF)をコードする第三の外来ポリヌクレオチド、該NKFは、(i)C末端を有する第三のミトコンドリア標的化ペプチド(MTP3)および(ii)がN末端を有するNifKポリペプチド(NK)を含み、ここで、MTP3のC末端は、該NKのN末端に翻訳的に融合され、好ましくは、ここで、該NKFは、野生型NifKポリペプチドに関連した天然のC末端を有し、ならびに
(c)NDF、NHFおよびNKFを除くNif融合ポリペプチド(NF)をコードする第四のポ外来リヌクレオチド、該NFは、(i)C末端を有する第四のミトコンドリア標的化ペプチド(MTP4)および(ii)N末端を有するNifポリペプチド(NP)を含み、ここで、該MTP4のC末端は、該NPのN末端に翻訳的に融合される、
のうちの1つ、複数、またはそのすべてを含む植物細胞であって、
【0037】
ここで、MTP1、MTP2、MTP3およびMTP4のそれぞれが、独立に同じであるかまたは異なっている、植物細胞を提供する。ある実施形態において、第四の外来ポリヌクレオチドは、NifE、NifF、NifJ、NifM、NifN、NifQ、NifS、NifU、NifV、NifW、NifX、NifYおよびNifZから成る群から選択される1もしくは複数のNPをコードする。好ましい実施形態において、NifKおよび/またはNifN(存在する場合)のC末端は、それぞれ、野生型NifKポリペプチドまたは野生型NifNポリペプチドのC末端と同じである、すなわち、NifKおよび/またはNifNは、好ましくは両方とも、どんな人工的に付加されたC末端伸長も有していない。
【0038】
一実施形態において、各NFは、ミトコンドリア内に移行されることが可能である。
上記の態様のいずれかの一実施形態において、ミトコンドリアは、(i)NifD、NifH、NifK、NifB、NifEおよびNifN、または(ii)NifD、NifH、NifKまたはNifSから成る群から選択されるNifポリペプチドのうちの1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、またはそのすべてを含む。
【0039】
さらなる実施形態において、1つ、複数、またはすべてのNif融合ポリペプチドが、植物細胞内のマトリックスプロセシングプロテアーゼ(MPP)によってMTP内で切断され、好ましくは、ここで、少なくともNifD融合ポリペプチドまたはNifH融合ポリペプチドが、MPPによって切断される。
【0040】
一またはさらなる実施形態において、ND、NDF、CDF、NH、NHF、CHF、NK、NKF、CKF、NF、CFNB、NE、NNおよびNSから成る群から選択される1もしくは複数のポリペプチドが、好ましくは、NPCがニトロゲナーゼ活性を有するように、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、または少なくとも7つの他のNifポリペプチドと結合して、Nifがタンパク質複合体(NPC)を形成することができる。
【0041】
一またはさらなる実施形態において、CDF、CKF、CHFまたはCFは、それぞれ、ND、NK、NH、またはNPよりサイズが大きく、好ましくは、5~50アミノ酸残基大きく、および/またはここで、CDF、CKF、CHF、またはCFは、それぞれ、NDF、NKF、NHF、またはNFよりサイズが小さく、好ましくは、5~45アミノ酸残基小さい。好ましい実施形態において、それぞれCDF、CKF、CHF、またはCFは、独立にMTPのC末端から約5~約11アミノ酸残基、例えば、MTPのC末端から6または7アミノ酸、7または8アミノ酸、8または9アミノ酸、9または10アミノ酸、あるいは、11または12アミノ酸ほどを含む。
【0042】
一またはさらなる実施形態において、MTPは、少なくとも10アミノ酸、好ましくは10~80アミノ酸を含む。
一またはさらなる実施形態において、少なくとも1つ、複数、すべてのMTPが、ミトコンドリアタンパク質前駆体のMTP、またはその変異体、好ましくは、植物MTPを含んでいる。
一またはさらなる実施形態において、(単数もしくは複数の)外来ポリヌクレオチドが、細胞のゲノム内に組み込まれる。
【0043】
一またはさらなる実施形態において、細胞は、プロトプラストではない。
一またはさらなる実施形態において、細胞は、アラビドプシス・サリアナ(Arabidopsis thaliana)のプロトプラスト以外の細胞である。
さらなる態様において、本発明は、本発明による細胞を含むトランスジェニック植物を提供し、ここで、該トランスジェニック植物は、(単数もしくは複数の)外来ポリヌクレオチドのトランスジェニックであり、および/または該トランスジェニック植物は、(単数もしくは複数の)融合ポリペプチドをコードする(単数もしくは複数の)外来ポリヌクレオチドのトランスジェニックである。
【0044】
一実施形態において、1つ、複数、またはすべての外来ポリヌクレオチドが、植物の根で発現されており、好ましくは、植物の葉よりも植物の根で優れたレベルで発現されている。
一またはさらなる実施形態において、トランスジェニック植物は、対応する野生型植物に対する増収、バイオマス、成長速度、生命力、生物窒素固定から得られる窒素獲得、窒素利用効率、非生物的ストレス寛容性、および/または栄養素欠乏に対する寛容性である、対応する野生型植物に対して変更された表現型を有する。
【0045】
代替の実施形態において、トランスジェニック植物は、対応する野生型植物に対して同じ成長速度および/または表現型を有する。
一またはさらなる実施形態において、トランスジェニック植物は、例えばコムギ、コメ、トウモロコシ、トリティカーレ、オートムギ、またはオオムギ、好ましくはコムギなどの穀物用植物である。
【0046】
一実施形態において、トランスジェニック植物は、(単数もしくは複数の)外来ポリヌクレオチドのホモ接合体またはヘテロ接合体である。
一またはさらなる実施形態において、トランスジェニック植物は、田畑に生えている。
さらなる態様において、本発明は、田畑に生えている本発明による少なくとも100本の植物集団を提供する。
【0047】
さらなる態様において、本発明は、NifD融合ポリペプチド(NDF)を提供し、該NDFは、(i)C末端を有するミトコンドリア標的化ペプチド(MTP)および(ii)N末端を有するNifDポリペプチド(ND)を含み、ここで、該MTPのC末端は、該NDのN末端に翻訳的に融合される。
【0048】
さらなる態様において、本発明は、NifH融合ポリペプチド(NHF)を提供し、該NHFは、(i)C末端を有するミトコンドリア標的化ペプチド(MTP)および(ii)N末端を有するNifHポリペプチド(NH)を含み、ここで、該MTPのC末端は、該NHのN末端に翻訳的に融合される。
【0049】
さらなる態様において、本発明は、Nif融合ポリペプチド(NF)を提供し、該NFは、(i)C末端を有するミトコンドリア標的化ペプチド(MTP)および(ii)N末端を有するNifポリペプチド(NP)を含み、ここで、該MTPのC末端は、該NPのN末端に翻訳的に融合され、およびここで、該NFは、対応する野生型Nifポリペプチドに関連した天然のC末端を有する。
【0050】
好ましい実施形態において、NPは、NifDポリペプチド、NifKポリペプチド、およびNifNポリペプチドから成る群から選択される。
【0051】
さらなる態様において、本発明は、NifK融合ポリペプチド(NKF)およびNifN融合ポリペプチド(NNF)を含むNif融合ポリペプチド(NF)の組み合わせを提供し、各NFは、(i)C末端を有するミトコンドリア標的化ペプチド(MTP)および(ii)N末端を有するNifポリペプチド(NP)を含み、ここで、該MTPのC末端は、該NPのN末端に翻訳的に融合され、ここで、それぞれのNFのMTPは、独立に同じであるかまたは異なっており、およびここで、NKFおよびNNFのそれぞれが、対応する野生型Nifポリペプチドに関連した天然のC末端を有する。
【0052】
さらなる態様において、本発明は、以下の:
(i)C末端を有するミトコンドリア標的化ペプチド(MTP)、
(ii)N末端およびC末端を有するNifDポリペプチド(ND)、
(iii)オリゴペプチドリンカー、および
(iv)N末端を有するNifKポリペプチド(NK)、
を含み、
ここで、該MTPのC末端は、該NDのN末端に翻訳的に融合され、および
ここで、該リンカーは、該NDのC末端と該NKのN末端に翻訳的に融合される、
融合ポリペプチドを提供する。
【0053】
一実施形態において、リンカーは、植物細胞または細菌細胞内で機能的な形状で、NDとNKとが結合することを可能にするのに十分な長さのものである。ある実施形態において、リンカーは、長さが8~50アミノ酸である。好ましくは、リンカーは、長さが少なくとも約20アミノ酸、少なくとも約25アミノ酸、または少なくとも約30アミノ酸である。
【0054】
ある実施形態において、融合ポリペプチドのC末端は、NKのC末端である。
別の態様において、本発明は、以下の:
(i)C末端を有するミトコンドリア標的化ペプチド(MTP)、
(ii)N末端およびC末端を有するNifEポリペプチド(NE)、
(iii)オリゴペプチドリンカー、および
(iv)N末端を有するNifNポリペプチド(NN)
を含み、
ここで、該MTPのC末端は、翻訳的に該NEのN末端に融合され、および
ここで、該リンカーは、該NEのC末端と該NNのN末端に翻訳的に融合される、
融合ポリペプチドを提供する。
【0055】
一実施形態において、リンカーは、植物細胞または細菌細胞内で機能的な形状で、NEとNNとが結合することを可能にするのに十分な長さのものである。例えば、ある実施形態において、リンカーは、少なくとも約70Å、少なくとも約100Å、約70Å~約150Å、または約100Å~約120Å、または約100Å、または約104Åの長さである。上記の態様のさらなる実施形態において、オリゴペプチドリンカーは、少なくとも約20アミノ酸、少なくとも約30アミノ酸、少なくとも約40アミノ酸、または約20アミノ酸~約70アミノ酸、約30アミノ酸~約70アミノ酸、約30アミノ酸~約60アミノ酸、約30アミノ酸~約50アミノ酸、または約25アミノ酸、約30アミノ酸、約35アミノ酸、約40アミノ酸、約45アミノ酸、約46アミノ酸、約50アミノ酸、または約55アミノ酸の長さである。
【0056】
一実施形態において、上記の態様のいずれかの(単数もしくは複数の)融合ポリペプチドは、マトリックスプロセシングプロテアーゼ(MPP)によって切断されて、1もしくは複数のプロセシングされたNifポリペプチド生成物を作製することができる。
【0057】
さらなる実施形態のうちの1つにおいて、(単数もしくは複数の)融合ポリペプチドは、植物細胞または細菌細胞の中、好ましくは植物細胞のミトコンドリアの中に存在する。
【0058】
さらなる態様において、本発明は、本発明による(単数もしくは複数の)融合ポリペプチドから、該(単数もしくは複数の)融合ポリペプチドのMTP内の切断によって、作製されたプロセシングされたNifポリペプチドを提供する。
【0059】
一実施形態において、プロセシングされたNifポリペプチドは、植物細胞のミトコンドリアマトリックス中のMPPによる融合ポリペプチドの切断によって作製された。
【0060】
一またはさらなる実施形態において、プロセシングされたNifポリペプチドは、植物細胞または細菌細胞の中、好ましくは植物ミトコンドリアの中、より好ましくは植物細胞ミトコンドリアのミトコンドリアマトリックス(MM)の中に存在する。
【0061】
一またはさらなる実施形態において、融合ポリペプチドまたはプロセシングされたNifポリペプチドには、任意選択で細菌細胞の中で測定されるように、好ましくは対応する野生型Nifポリペプチドとしての生化学的活性のほぼ同じくらいのレベルを有して、対応する野生型Nifポリペプチドと同じ生化学的活性がある。
【0062】
一またはさらなる実施形態において、(単数もしくは複数の)融合ポリペプチドまたはプロセシングされたNifポリペプチドは、好ましくは、NPCがニトロゲナーゼ活性を有するように、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、または少なくとも7つの他のNifポリペプチドと結合して、Nifタンパク質複合体(NPC)を形成することができる。
【0063】
さらなる態様において、本発明は、本発明による融合ポリペプチドまたはプロセシングされたNifポリペプチドのうちの1つ、複数、またはそのすべてをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0064】
一実施形態において、NFはNifD融合ポリペプチド(NDF)であって、そして、該ポリヌクレオチドは、以下の:
(i)NifH融合ポリペプチド(NHF)、該NHFは、C末端有する第二のミトコンドリア標的化ペプチド(MTP2)およびN末端を有するNifHポリペプチド(NH)を、該MTP2のC末端が、該NHのN末端に翻訳的に融合されるように含み、
(ii)NifK融合ポリペプチド(NKF)、該NKFは、C末端を有する第三のミトコンドリア標的化ペプチド(MTP3)およびN末端を有するNifKポリペプチド(NK)を、該MTP3のC末端が、該NKのN末端に翻訳的に融合されるように含み、ならびに
【0065】
(iii)NDF、NHFおよびNKF以外のNif融合ポリペプチド(NF)、該NFは、C末端を有する第四のミトコンドリア標的化ペプチド(MTP4)およびN末端を有するNifポリペプチド(NP)を、該MTP4のC末端が、該NPのN末端に翻訳的に融合されるようにを含む、
のうちの1つ、複数、またはそのすべてをコードする1もしくは複数のヌクレオチド配列をさらにを含み、
ここで、MTP1、MTP2、MTP3およびMTP4のそれぞれが、独立に同じであるかまたは異なっている。
【0066】
一またはさらなる実施形態において、ポリヌクレオチドは、植物細胞内での発現のためにコドン修飾された。
一またはさらなる実施形態において、ポリヌクレオチドは、該ポリヌクレオチドまたは融合ポリペプチドをコードするその中の各配列に作動可能に連結されたプロモーター、および/または該ポリヌクレオチドに作動可能に連結された翻訳的な調節エレメントを含む。
【0067】
一実施形態において、プロモーターは、植物の根、葉および/または茎におけるポリヌクレオチドの発現をもたらし、好ましくは、プロモーターは、植物の種子に関連した植物の根、葉または茎のうちの1つ、複数、またはそのすべてにおける該ポリヌクレオチドの発現をもたらす。
【0068】
一またはさらなる実施形態において、ポリヌクレオチドは、植物細胞または細菌細胞の中に存在し、好ましくは植物細胞のゲノム内に組み込まれる。
さらなる態様において、本発明は、第一のNifが融合ポリペプチド(NF)をコードする第一のポリヌクレオチドおよび第二のNFをコードする第二のポリヌクレオチドを含む核酸構築物であって、各NFが、(i)C末端を有するミトコンドリア標的化ペプチド(MTP)および(ii)N末端を有するNifポリペプチド(NP)を含み、ここで、該MTPのC末端は、該NPのN末端に翻訳的に融合され、およびここで、それぞれのMTPが、独立に同じであるかまたは異なっている、核酸構築物を提供する。
【0069】
一実施形態において、核酸構築物は、1もしくは複数のNFをコードする1もしくは複数の外来ポリヌクレオチドをさらに含み、各NFは、(i)C末端を有するミトコンドリア標的化ペプチド(MTP)および(ii)N末端を有するNifポリペプチド(NP)を含み、ここで、該MTPのC末端は、該NPのN末端に翻訳的に融合され、ここで、それぞれのMTPは、独立に同じであるかまたは異なっており、かつ、それぞれのNPは、独立に同じであるかまたは異なっている。
【0070】
さらなる態様において、本発明は、NifD融合ポリペプチド(NDF)をコードする第一のポリヌクレオチド(該NDFは、(i)C末端を有する第一のミトコンドリア標的化ペプチド(MTP1)および(ii)N末端を有するNifDポリペプチド(ND)を含み、ここで、該MTP1のC末端は、該NDのN末端に翻訳的に融合される)と、以下の:
【0071】
(a)NifH融合ポリペプチド(NHF)をコードする第二のポリヌクレオチド、該NHFは、(i)C末端を有する第二のミトコンドリア標的化ペプチド(MTP2)および(ii)N末端を有するNifHポリペプチド(NH)を含み、ここで、該MTP2のC末端は、該NHのN末端に翻訳的に融合され、ならびに
(b)NifK融合ポリペプチド(NKF)をコードする第三のポリヌクレオチド、該NKFは、(i)C末端を有する第三のミトコンドリア標的化ペプチド(MTP3)および(ii)がN末端を有するNifKポリペプチド(NK)を含み、ここで、MTP3のC末端は、該NKのN末端に翻訳的に融合され、好ましくは、ここで、該NKFは、野生型NifKポリペプチドに関連した天然のC末端を有し、ならびに
【0072】
(c)NDF、NHFおよびNKFを除くNif融合ポリペプチド(NF)をコードする第四のポ外来リヌクレオチド、該NFは、(i)C末端を有する第四のミトコンドリア標的化ペプチド(MTP4)および(ii)N末端を有するNifポリペプチド(NP)を含み、ここで、該MTP4のC末端は、該NPのN末端に翻訳的に融合される、
のうちの1つ、複数、またはそのすべてを含む核酸構築物であって、
【0073】
ここで、MTP1、MTP2、MTP3およびMTP4のそれぞれが、独立に同じであるかまたは異なっている、核酸構築物を提供する。
【0074】
一実施形態において、各NFは、植物細胞のミトコンドリア内に移行されることができる。
さらなる態様において、本発明は、本発明によるポリヌクレオチドまたは本発明による核酸構築物を含むか、またはコードするキメラベクターを提供する。
一実施形態において、ポリヌクレオチド、または融合ポリペプチドをコードするその中のそれぞれの配列は、プロモーターおよび任意選択で、転写終止配列に作動可能に連結される。
【0075】
一実施形態において、プロモーターは、植物の根、葉および/または茎における1つ、複数、またはすべてのポリヌクレオチドの発現をもたらし、好ましくは、該ポリヌクレオチドは、植物の種子に関連する植物の根、葉または茎のうちの1つ、複数、またはそのすべてにおいて優先的に発現される。
【0076】
さらなる態様において、本発明は、本発明による融合ポリペプチドまたはプロセシングされたNifポリペプチドのうちの1つ、複数、またはそのすべて、本発明によるポリヌクレオチド、本発明による核酸構築物、および/または本発明によるベクターのうちの1つ、複数、またはそのすべてを含む細胞を提供する。
【0077】
一実施形態において、細胞は、植物細胞または細菌細胞である。
さらなる実施形態において、植物細胞は、例えばコムギ細胞、イネ細胞、トウモロコシ細胞、トリティカーレ細胞、オートムギ細胞、またはオオムギ細胞、好ましくはコムギ細胞などの穀物植物細胞である。
さらなる態様において、本発明は、本発明による(単数もしくは複数の)融合ポリペプチドまたは(単数もしくは複数の)プロセシングされたNifポリペプチドを作製する方法を提供し、該方法は、細胞内で本発明によるポリヌクレオチドを発現することを含む。
さらなる態様において、本発明は、方法による細胞を作製する方法を提供し、該方法は、本発明によるポリヌクレオチド、本発明による核酸構築物、および/または本発明によるベクターを細胞内に導入するステップを含む。
【0078】
さらなる態様において、本発明は、本発明によるトランスジェニック植物を作製する方法を提供し、該方法は、以下のステップ:
i)本発明によるポリヌクレオチド、本発明による核酸構築物、および/または本発明によるベクター植物細胞内に導入し、
ii)該細胞からトランスジェニック植物を再生し、および
iii)任意選択で、該植物から種子を採取し、および/または
iv)任意選択で、該トランスジェニック植物から1もしくは複数の子孫植物を作製し、それによって、トランスジェニック植物を作製すること、
を含む。
【0079】
さらなる態様において、本発明は、そのゲノム内に本発明によるポリヌクレオチド、または本発明による核酸構築物のいずれか一つで規定したポリヌクレオチドを組み込んだ植物を作製する方法を提供し、該方法は、以下のステップ:
i)2つの親植物を交配し、ここで、少なくとも一方の植物が(単数もしくは複数の)該ポリヌクレオチドを含み、
ii)(単数もしくは複数の)該ポリヌクレオチドの有無に関して交配からの1もしくは複数の子孫植物をスクリーニングし、
iii)(単数もしくは複数の)該ポリヌクレオチドを含む子孫植物を選択して、それによって、その植物を作製すること、
を含む。
【0080】
一実施形態において、(単数もしくは複数の)ポリヌクレオチドは、植物にニトロゲナーゼ活性をもたらす(単数もしくは複数の)ポリペプチドをコードする。
一またはさらなる実施形態において、少なくとも一方の親植物が、四倍体または六倍体コムギ植物である。
一またはさらなる実施形態において、ステップii)は、(単数もしくは複数の)該ポリヌクレオチドに関して、1もしくは複数の子孫植物からのDNAを含むサンプルを分析することを含む。
【0081】
一またはさらなる実施形態において、ステップiii)は、以下の:
i)(単数もしくは複数の)該ポリヌクレオチドに関してホモ接合である子孫植物を選択し、および/または
ii)(単数もしくは複数の)該ポリヌクレオチドの存在および/または発現に関して、あるいは、先に規定したような変更された表現型に関して、1もしくは複数の子孫植物を分析すること、
を含む。
【0082】
一またはさらなる実施形態において、前記方法は、以下の:
iv)最初の親の遺伝子型の大部分を有するが、該ポリヌクレオチドを含む植物を作製するのに十分な回数にわたり、(単数もしくは複数の)該ポリヌクレオチドを有していない第一の親株として同じ遺伝子型の植物を用いて、ステップi)の交配の子孫を戻し交配し、および
iv)該ポリヌクレオチドを含む、および/または先に規定した変更された表現型を有する子孫植物を選択すること、
をさらに含む。
【0083】
一またはさらなる実施形態において、前記方法は、他の少なくとも1つの遺伝子マーカーについて植物または子孫植物を分析するステップをさらに含む。
さらなる態様において、本発明は、本発明による方法を使用して作製された植物を提供する。
【0084】
さらなる態様において、本発明は、組み換え細胞および/またはトランスジェニック植物を作製するための、本発明によるポリヌクレオチド、本発明による核酸構築物、および/または本発明によるベクターの使用を提供する。
一実施形態において、トランスジェニック植物は、外来ポリヌクレオチド、核酸構築物、および/またはベクターを有していない対応植物と比較したときに、先に規定した変更された表現型を有する。
【0085】
さらなる態様において、本発明は、本発明によるポリヌクレオチドを含むか、または本発明による核酸構築物のいずれか一つにおいて規定されるポリヌクレオチドを含む植物を同定するための方法を提供し、該方法は、以下のステップ:
i)植物から核酸のサンプルを入手し、および
ii)(単数もしくは複数の)該ポリヌクレオチドの有無に関して該サンプルをスクリーニングすること、
を含む。
【0086】
一実施形態において、(単数もしくは複数の)該ポリヌクレオチドの存在は、(単数もしくは複数の)外来ポリヌクレオチドを有していない対応植物と比較したときに、その植物が、先に規定した変更された表現型を有することを示唆している。
一またはさらなる実施形態において、本発明による、前記方法は、植物を同定する。
一またはさらなる実施形態において、前記方法は、ステップi)の前に種子から植物を作製することをさらに含む。
【0087】
さらなる態様において、本発明は、本発明による植物の植物部分を提供する。
一実施形態において、前記植物部分は、本発明によるポリヌクレオチドを含むか、または本発明による核酸構築物のいずれか一つにおいて規定されるポリヌクレオチドを含む種子である。
【0088】
さらなる態様において、本発明は、植物部分を製造する方法を提供し、該方法は、以下のステップ:
a)本発明による植物を栽培し、および
b)該植物部分を採取すること、
を含む。
【0089】
さらなる態様において、本発明は、フラワー、全粒粉、デンプン、油脂、シードミールまたは種子から得られる他の製品を製造する方法を提供し、該方法は、以下のステップ:
a)本発明による種子を得、および
b)フラワー、全粒粉、デンプン、油脂もしくは他の製品を抽出するか、またはシードミールを製造すること、
を含む。
【0090】
さらなる態様において、本発明は、本発明による植物および/または植物部分から製造される製品を提供する。
一実施形態において、前記部分とは、種子である。
一またはさらなる実施形態において、前記製品は、食品または飲料製品である。
【0091】
好ましくは、i)食品は:フラワー、デンプン、油脂、発酵もしくは無発酵パン、パスタ、ヌードル、家畜飼料、朝食用シリアル、スナック食品、ケーキ、モルト、ペストリー、およびフラワーベースのソースを含む食品から成る群から選択され、またはii)飲料製品は、ジュース、ビールまたはモルトである。斯かる製品を製造する方法は、当業者にとって周知である。
【0092】
代替の実施形態において、前記製品は、非食品である。非食品の例としては、これだけに限定されるものではないが、フィルム、被覆材、接着剤、建築材料および包装材が挙げられる。斯かる製品を製造する方法は、当業者にとって周知である。
【0093】
さらなる態様において、本発明は、本発明による食品を調製する方法を提供し、該方法は、種子、または種子からのフラワー、全粒粉もしくはデンプンを、別の食品成分と混合することを含む。
【0094】
さらなる態様において、本発明は、本発明による種子を発芽させるステップを含めた、モルトを調製する方法を提供する。
【0095】
さらなる態様において、本発明は、動物の飼料としての、または動物の飼料用もしくはヒトの食用の食料を製造するための、本発明による植物またはその部分の使用を提供する。
【0096】
さらなる態様において、本発明は、(単数もしくは複数の)融合ポリペプチドまたは(単数もしくは複数の)プロセシングされたNifポリペプチド、本発明によるポリヌクレオチド、本発明による核酸構築物、本発明によるベクター、または本発明による細胞、および1もしくは複数の許容される担体を含む組成物を提供する。
【0097】
さらなる態様において、本発明は、植物細胞内でのニトロゲナーゼタンパク質複合体の再構成のための方法を提供し、該方法は、細胞内に、本発明による2以上のポリヌクレオチド、本発明による2以上の核酸構築物、および/または本発明によるベクターを導入し、そして、該ポリヌクレオチドまたはベクターが発現されるのに十分な時間にわたり該植物細胞を培養することを含む。
【0098】
さらなる態様において、本発明は、植物または植物細胞内に、本発明による2以上のポリヌクレオチド、本発明による2以上の核酸構築物、および/または本発明によるベクターを導入することを含めた、増収、バイオマス、成長速度、生命力、生物窒素固定から得られる窒素獲得、窒素利用効率、非生物的ストレス寛容性、および/または植物の栄養素欠乏に対する寛容性を増強する方法を提供する。
【0099】
本発明は、本明細書中に記載した特定の実施形態によって範囲を制限されるものではなく、それらは、例示だけを目的とすることが意図されている。機能的に同等な産物、組成物、および方法は、本明細書中に記載したように、明らかに、本発明の範囲内にある。
【0100】
本願明細書を通じて、特定の別段の記載または文脈上の別段の必要性が無い限り、単独のステップ、物質の組成物、ステップ群または物質の組成物群に対する言及は、それらのステップ、物質の組成物、ステップ群または物質の組成物群の1および複数(すなわち、1もしくは複数)を包含すると解釈されるべきである。
本発明は、以下の非限定的な実施例により、および添付の図面に対する参照により以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0101】
図1】pCW440のT-DNAの遺伝子マップ。標識:35SP、完全長CaMV35Sプロモーター、転写の方向を示す;T7プロモーター、T7RNAポリメラーゼのプロモーター;dCoxIV MTP、dCoxIVミトコンドリア標的化ペプチド;AscI、MTPとのインフレーム融合を挿入するためのAscIの制限酵素部位;T7ターミネータ、T7RNAポリメラーゼの転写終止部位;修飾nosポリA、nos3’ポリアデニル化シグナル。
図2】細菌およびN.ベンサミアナの葉において産生されたNifH、NifD、NifKおよびNifY融合ポリペプチドのウエスタンブロット分析の写真、各ポリペプチドは、dCoxIV MTPに融合され、そして、C末端伸長はHAまたはFLAGエピトープを含む。レーンの内容:1、対照葉抽出物(p19浸潤物のみ)およびポリペプチド分子量マーカー;黒塗り矢印=72kDa、次の矢印(白抜き)は、55、40、33、25および17kDaである;レーン2~5、細菌BL21-Gold(レーン2)または2つの別個の葉浸潤物(レーン3、4)で発現されたpCW446 dCoxIV-NifH-HA;レーン5-7、細菌(レーン5)または2つの別個の葉浸潤物(レーン6、7)で発現されたpCW447-dCoxIV-NifD-FLAG。レーン8~10、細菌(レーン8)または2つの別個の葉浸潤物(レーン9、10)で発現されたpCW448-dCoxIV-NifK-HA;レーン11~13、細菌(レーン11)または2つの別個の葉浸潤物(レーン12、13)で発現されたpCW449-dCoxIV-NifY-HA;レーン14~15、葉浸潤物で発現された4つのベクターpCW446、pCW447、pCW448、およびpCW449がの組み合わせ。レーン15はまた、細胞質に局在するLbhを発現する、ベクターpCW444の浸潤物も含む。ブロットAは、2つの一次抗体、抗HAおよび抗FLAGで探査された;ブロットBは、抗HAだけで探査された。ブロットAのより長い曝露(レーン14)は、NifDではなく、NifH、NifKおよびNifYポリペプチドのシグナルを明らかにした。
図3】N.ベンサミアナの葉におけるpFAγ::GFP融合ポリペプチドの一過性発現に使用される構築物の概略図。野生型pFAγアミノ酸配列が上に示されており、および変異アミノ酸配列(mFAγ)は下に示されている。矢印は、MPPによる予測切断点を示す。35S Pr、CaMV35Sプロモーター;T7P、T7RNAポリメラーゼプロモーター;MTP、pFAγまたはmFAγ領域;GFP、GFPポリペプチド;T7T、T7RNAポリメラーゼ転写ターミネータ;NOS、nos遺伝子の3’転写ターミネータ/ポリアデニル化領域。
図4】pFAγ::NifF::HAまたはpFAγ::NifZ::FLAG融合ポリペプチドをコードする構築物を発現するN.ベンサミアナまたはE.コリ(E.coli)細胞からのタンパク質抽出物のSDS-PAGE後の、HA(左のパネル)またはFLAG(右のパネル)に対する抗体を用いて探査されたウエスタンブロットの写真。レーン上の+および-記号は、それぞれ、レーンに適用されたN.ベンサミアナまたはE.コリのタンパク質抽出物の存在または不存在を示す;細菌抽出物に使用される抽出物の希釈係数を大かっこ内に示す。
図5】N.ベンサミアナの葉細胞においてpFAγ::NifH::HAを発現するのに使用した遺伝子構築物の図解。ヌクレオチド配列で下線が引かれた残基は、トリプシンによるタンパク質分解的切断(カルボキシル側)の部位を示す。矢印は、ミトコンドリアプロセシングペプチダーゼ(MPP)による切断点を示す。ペプチドISTQVVR(配列番号44)およびAVQGAPTMR(配列番号45)が質量分析法によって検出された。
図6】pFAγ::Nif::HAまたはpFAγ::Nif::FLAG融合ポリペプチドをコードする構築物を発現するN.ベンサミアナ細胞からのタンパク質抽出物のSDS-PAGE後の、HA(左上のパネル)またはFLAG(右上のパネル)に対する抗体を用いて探査されたウエスタンブロットの写真。レーン上の文字(K、B、S、Eなど)は、遺伝子構築物によってコードされた融合ポリペプチドの中に含まれるNifポリペプチドを示す。pFAγ::NifJ::FLAGのブロット上部近くの微かなバンドをアスタリスク(*)で示す。分子量マーカー(kDa)のサイズを左に示す。下のパネルは、クーマシー染色後の対応するゲルを示す。
図7】pFAγ::NifD::FLAGをコードする同じ構築物を含むN.ベンサミアナの葉またはE.コリから抽出したタンパク質のウエスタンブロットの写真。ブロットは、FLAGエピトープに対する抗体で探査された。第一のレーンのマーカーの分子量を示す。E.コリ抽出物の希釈係数が、大かっこ内に示されている。
図8】それぞれ、レーン2および3の陽性および陰性対照としてpFAγ::NifD::HA、mFAγ::NifD::HAまたはpFAγ::NifK::HAおよびpFAγ::GFPをコードする構築物を含有する(図の上部に示した)E.コリまたはN.ベンサミアナの葉からのタンパク質抽出物のウエスタンブロットの写真。使用した構築物およびコードされたNifポリペプチド(DまたはK)を各レーンの上に示す。ブロットは、HAエピトープに対する抗体で探査された。第一のレーンのマーカーの分子量を示す。下のパネルは、クーマシー染色したゲルを示す。クーマシー染色ゲルの主要なバンドは、N.ベンサミアナの葉のサンプルからのルビスコである。
図9】NifKおよびNifHポリペプチドの同時発現は、植物体のNifD融合ポリペプチド濃度を高める。NifD、NifKおよびNifH融合ポリペプチドの同時発現のための構築物の葉細胞内への導入後に産生されたポリペプチドのウエスタンブロットの写真。レーン1、pRA24+pRA10+pRA25;レーン2、pRA22+pRA10+pRA25;レーン3、pRA19+pRA10+pRA25;レーン4、pRA19+pRA25;レーン5、pRA10+pRA25;レーン6、pRA10;レーン7、pRA11;レーン8、pRA25;レーン9、pRA22;レーン10、pRA24;レーン11、pRA19;レーン12、分子量マーカー、右側の数字は、kDaを示す。構築物およびコードされたポリペプチドの一覧に関しては、表4を参照、そしてそれはまた、ブロットの上にも示した。レーン1のアスタリスクは、NifDの特有のバンドの位置を示す。
図10】NifD::FLAG、NifK(C末端伸長なし)、NifS::HAおよびNifH::HA融合ポリペプチドの発現のための葉細胞内への構築物の組み合わせの導入後に産生されたポリペプチドのウエスタンブロットの写真。上のパネルは抗FLAG抗体で探査され、下のパネルは抗HA抗体で探査された。レーン1および12は、表示サイズ(kDa)を伴った分子量マーカーを示す。レーン2のシングルアスタリスクは、NifD特有のバンド位置を示し、ダブルアスタリスクは、より小さい分解NifD::FLAGポリペプチドまたは内部翻訳開始ポリペプチドの位置を示す。大かっこ内の数字は、バックグラウンドFLAGバンドに対するNifD特有のバンドの数量を表す。NifK::HA、NifS::HAおよびNif::H融合ポリペプチドの位置は、下のパネルに示されている。構築物の組み合わせとコードされたポリペプチドを、それぞれのレーンの上に示す。略語:D-FLAG(pRA07;pFAγ::NifD::FLAG)、H-HA(pRA10;pFAγ::NifH::HA)、K(pRA25;pFAγ::NifK)、K-HA(pRA11、pFAγ::NifK::HA)、S-HA(pRA16;pFAγ::NifS::HA)、D-HA(pRA19、pFAγ::NifD::HA)。
図11】NifD::FLAG、NifK(C末端伸長なし)またはNifK::HAおよびNifH::HA融合ポリペプチドの発現のための葉細胞内への単独または組み合わせでの構築物の導入後に産生されたポリペプチドのウエスタンブロットの写真。導入された構築物は、各レーンの上に示されており、およびコードされた融合ポリペプチドは、各レーンの下に示されている。ブロットは、切断され、そして、抗HA抗体(レーン1~7)または抗FLAG抗体(レーン9~12)のいずれかで探査された。アスタリスクは、レーン11および12のNifD::FLAGの特有のバンドを示す。ウエスタンブロットのより長い曝露が、pRA19およびpRA07(レーン2および3)の微かなNifDバンドを観察するのに必要であった。
図12】それぞれ、緑色および青色としてNifDおよびNifKサブユニットを示す、NifD::リンカー::NifKヘテロ二量体のモデル。空間充填モデルは、NifKのN末端にNifDのC末端を連結する、リンカーペプチドを赤色で示す。
図13】含有されたNifHサブユニット(紫色)のA.ビネランジイ(A.vinlandii)アミノ酸配列を伴ったNifD(緑色)およびNifK(青色)のK.ニューモニエ(K. pneumoniae)アミノ酸配列を使用した、2つのNifHポリペプチドと複合体化した二量体としてのNifD::リンカー::NifK融合ポリペプチドの相同モデル。設計されたリンカーは、赤色のファンデルワ-ルス原子表示で示される。左右の画像は、互いに対して縦軸の周りを90度回転する。
図14】上のパネル:pRA01(レーン2、GFP)、pRA11(レーン3、pFAγ::NifK::HA)、pRA19(レーン4、pFAγ::NifD::HA)およびpRA20(レーン5、pFAγ::NifD-リンカー(FLAG)-NifK::HA)から製造されるポリペプチドに関する、HAエピトープを検出する抗体を使用したウエスタンブロットの写真。分子量マーカー(レーン1、kDa)のサイズは、左に示されている。下のパネルは、クーマシー染色ゲルを示す。
図15】マルチカセットベクターpKT100およびpKT-HCの構造の図解。LB:T-DNAの左縁;RB:右縁;P1-5/T1-5:発現カセット1~5のプロモーター/ターミネータ;PS/TS:選択遺伝子を含有する発現カセットのプロモーター/ターミネータ;MAR:マトリックス結合領域。制限酵素部位の位置に矢印を付した。
図16】上のパネル:遺伝子構築物を受容したN.ベンサミアナの葉サンプルからのタンパク質抽出物のゲル電気泳動後に、抗HAおよび抗GFP抗体の組み合わせで探査したウエスタンブロットの写真。レーン1、ポリペプチド分子量マーカー(kDa)。導入ベクター:レーン2、pRA01(pFAγ::GFP);レーン3~7、pRA01に加えて、カセット1~5からpFAγ::NifH::HAを発現するためのベクター。下のパネル:同じ膜のPonceau染色。pFAγ::NifH::HAバンドおよびpFAγ::GFPのバンドの二重線を示す。
図17】A.上のパネル:遺伝子構築物を受容したN.ベンサミアナの葉サンプルからのタンパク質抽出物のゲル電気泳動後に、抗HA抗体で探査されたウエスタンブロットの写真。レーン1および3、ポリペプチド分子量マーカー(kDa)。導入ベクター:レーン2、pRA01(pFAγ::GFP);レーン4、HC13。下のパネル:同じ膜のPonceau染色。バンドの同一性を示す。B.抗MYC抗体で探査された同一のウエスタンブロット。
図18】上のパネル:pRA01(pFAγ::GFP、Gで印を付したレーン)、pRA16(pFAγ::NifS::HA、Sで印を付したレーン)およびpRA19(ヒトコドンで最適化されたpFAγ::NifD::HA、Dで印を付したレーン)の組み合わせを用いた浸潤の4日後の、N.ベンサミアナの葉からのタンパク質抽出物のウエスタンブロットの写真。ウエスタンブロットは、抗HAおよび抗GFP抗体で探査された。過飽和なしにNifSおよびGFPを解像するように、曝露を制限した。NifD::HA検出は、ブロットのより長い曝露を必要とした。分子量マーカー(kDa)のサイズはレーン1に示した。下のパネル:pRA01(pFAγ::GFP、Gで印を付したレーン)、pRA22(ヒトコドンで最適化されたmFAγ::NifD::HA、D-mMTPで印を付したレーン)、pRA19(ヒトコドンで最適化されたpFAγ::NifD::HA、D-HAで印を付したレーン)、pRA26(ヒトコドンで最適化されたΔFAγ::NifD::HA、D-stopで印を付したレーン)およびpRA24(アラビドプシス(Arabidopsis)コドンで最適化されたpFAγ::NifD::HA、D-altで印を付したレーン)の組み合わせでの浸潤の4日後の、N.ベンサミアナの葉からのタンパク質抽出物のウエスタンブロットの写真。ブロットは、抗HAおよび抗GFP抗体で探査された。NifD-HA検出は、ブロットのより長い曝露を必要とした。
図19】pRA25と共にまたはそれなしに、NifD::HAを発現するP19およびSN6、SN7またはSN8構築物(実施例20)を同時発現する構築物での浸潤後の、N.ベンサミアナの葉細胞からのタンパク質抽出物のSDA-PAGE後の、抗HA抗体を使用したウエスタンブロットの写真。Unpro/pro:FAγ51::NifDのプロセシングされたまたは未プロセシング形態。degr prod:サイズが約48kDaのNifD-特異的分解産物。
【0102】
配列表のポイント
配列番号1-シトクロムcオキシダーゼサブユニットIVの天然MTPのアミノ酸配列(CoxIV MTP)。
配列番号2-シトクロムcオキシダーゼサブユニットIVの誘導体MTPアミノ酸配列(dCoxIV)。
配列番号3-MTPの移入および処理に関与するdCoxIVのモチーフxRxxxSSx内の保存されたアルギニンおよびセリン残基。
【0103】
配列番号4-成分T-DNA右縁(ヌクレオチド1~164)、HindIII部位およびXhoI部位が両側に配置された35Sプロモーター(ヌクレオチド219~1564)、CTCGAG(XhoI)、T7プロモーター(ヌクレオチド1571~1587)、ATGから始まるdCoxIVコード配列(ヌクレオチド1650~1742)、AscI部位(ヌクレオチド1743~1750)、T7ターミネータ(ヌクレオチド1810~1856)、nos3’ターミネータ(ヌクレオチド1861~2084)およびT-DNA左縁(ヌクレオチド2186~2346)を有するpCW440のT-DNA領域のヌクレオチド配列。
【0104】
配列番号5-野生型K.ニューモニエNifHのアミノ酸配列。
配列番号6-野生型K.ニューモニエNifDのアミノ酸配列。
配列番号7-野生型K.ニューモニエNifKのアミノ酸配列。
配列番号8-野生型K.ニューモニエNifYのアミノ酸配列。
配列番号9-野生型K.ニューモニエNifBのアミノ酸配列。
配列番号10-野生型K.ニューモニエNifEのアミノ酸配列。
配列番号11-野生型K.ニューモニエNifNのアミノ酸配列。
配列番号12-野生型K.ニューモニエNifQのアミノ酸配列。
配列番号13-野生型K.ニューモニエNifSのアミノ酸配列。
配列番号14-野生型K.ニューモニエNifUのアミノ酸配列。
配列番号15-野生型K.ニューモニエNifXのアミノ酸配列。
配列番号16-野生型K.ニューモニエNifFのアミノ酸配列。
配列番号17-野生型K.ニューモニエNifZのアミノ酸配列。
配列番号18-野生型K.ニューモニエNifJのアミノ酸配列。
配列番号19-野生型K.ニューモニエNifMのアミノ酸配列。
配列番号20-野生型K.ニューモニエNifVのアミノ酸配列。
【0105】
配列番号21-HAエピトープ(アミノ酸7~15)を含むC末端伸長(17aa)のアミノ酸配列。
配列番号22-FLAGエピトープを含むC末端伸長(12aa)のアミノ酸配列。
配列番号23-pCW446によってコードされたdCoxIV::NifH::HA融合ポリペプチドのアミノ酸配列。アミノ酸1~31はdCoxIV MTPに相当し、アミノ酸32~34は、AscI部位のクローニングの成果物であり、アミノ酸35~326は、K.ニューモニエNifHアミノ酸(開始コドンMetを取り除いた)であり、およびアミノ酸327~343は、HAエピトープを含む。
配列番号24-pCW447によってコードされたdCoxIV::NifD::FLAG融合ポリペプチドのアミノ酸配列。アミノ酸1~31は、dCoxIV MTPに相当し、アミノ酸32~34は、AscI部位のクローニングの成果物であり、アミノ酸35~515は、K.ニューモニエNifDアミノ酸(2つのN末端Met残基を取り除いた)であり、およびアミノ酸516~527は、FLAGエピトープを含む。
【0106】
配列番号25-pCW448によってコードされたdCoxIV::NifK::HA融合ポリペプチドのアミノ酸配列。アミノ酸1~31は、dCoxIV MTPに相当し、アミノ酸32~34は、AscI部位のクローニングの成果物であり、アミノ酸35~553は、K.ニューモニエNifKアミノ酸であり、およびアミノ酸554~570は、HAエピトープを含む。
配列番号26-pCW449によってコードされたdCoxIV::NifY::HA融合ポリペプチドのアミノ酸配列。アミノ酸1~31は、dCoxIV MTPに相当し、アミノ酸32~34は、AscI部位のクローニングの成果物であり、アミノ酸35~253は、K.ニューモニエNifYアミノ酸(開始コドンMetなし)であり、およびアミノ酸254~270はHAエピトープを含む。
配列番号27-NifH::HAをコードするAscI断片のヌクレオチド配列、AscI-NifH-HA-AscI。
【0107】
配列番号28-NifD::FLAGをコードするAscI断片のヌクレオチド配列、AscI-NifD-FLAG-AscI。
配列番号29-NifK::HAをコードするAscI断片のヌクレオチド配列、AscI-NifK-HA-AscI。
配列番号30-NifY::HAをコードするAscI断片のヌクレオチド配列、AscI-NifY-HA-AscI。
【0108】
配列番号31-pCW452によってコードされたdCoxIV::NifB::HA融合ポリペプチドのアミノ酸配列。アミノ酸1~31は、dCoxIV MTPに相当し、アミノ酸32~34は、AscI部位のクローニングの成果物であり、アミノ酸35~501は、K.ニューモニエNifBアミノ酸(開始コドンMetなし)であり、およびアミノ酸502~518は、HAエピトープを含む。
【0109】
配列番号32-pCW454によってコードされたdCoxIV::nifE::HA融合ポリペプチドのアミノ酸配列。アミノ酸1~31は、dCoxIV MTPに相当し、アミノ酸32~34は、AscI部位のクローニングの成果物であり、アミノ酸35~490は、K.ニューモニエNifEアミノ酸(開始コドンMetなし)であり、およびアミノ酸491~507は、HAエピトープを含む。
【0110】
配列番号33-pCW455によってコードされたdCoxIV::NifN::FLAG融合ポリペプチドのアミノ酸配列。アミノ酸1~31は、dCoxIV MTPに相当し、アミノ酸32~34は、AscI部位のクローニングの成果物であり、アミノ酸35~493は、K.ニューモニエNifNアミノ酸(開始コドンMetなし)であり、およびアミノ酸494~505はFLAGエピトープを含む。
【0111】
配列番号34-pCW456によってコードされたdCoxIV::NifQ::HA融合ポリペプチドのアミノ酸配列。アミノ酸1~31は、dCoxIV MTPに相当し、アミノ酸32~34は、AscI部位のクローニングの成果物であり、アミノ酸35~200は、クレブシエラ属(Klebsiella sp.)NifQアミノ酸(開始コドンMetなし)であり、およびアミノ酸201~217は、HAエピトープを含む。
【0112】
配列番号35-pCW450によってコードされたdCoxIV::NifS::HA融合ポリペプチドのアミノ酸配列。アミノ酸1~31は、dCoxIV MTPに相当し、アミノ酸32~34は、AscI部位のクローニングの成果物であり、アミノ酸35~433は、K.ニューモニエNifSアミノ酸(開始コドンMetなし)であり、およびアミノ酸434~450は、HAエピトープを含む。
【0113】
配列番号36-pCW451によってコードされたdCoxIV::NifU::FLAG融合ポリペプチドのアミノ酸配列。アミノ酸1~31は、dCoxIV MTPに相当し、アミノ酸32~34は、AscI部位のクローニングの成果物であり、アミノ酸35~493は、K.ニューモニエNifUアミノ酸(開始コドンMetなし)であり、およびアミノ酸494~505は、FLAGエピトープを含む。
【0114】
配列番号37-pCW453によってコードされたdCoxIV::NifX::FLAG融合ポリペプチドのアミノ酸配列。アミノ酸1~31は、dCoxIV MTPに相当し、アミノ酸32~34は、AscI部位のクローニングの成果物であり、アミノ酸35~189は、K.ニューモニエNifXアミノ酸(開始コドンMetなし)であり、およびアミノ酸190~201は、FLAGエピトープを含む。
【0115】
配列番号38-クローニングストラテジーの結果としてpRA00に付加されたpFAγ MTP(アミノ酸1~77)およびアミノ酸トリプレットGAP(78~80)を含むN末端伸長のアミノ酸配列。MPPによる切断は、アミノ酸残基42と43の間に起こる。
【0116】
配列番号39-クローニングストラテジーの結果としてpRA21に付加されたmFAγ配列(アミノ酸1~77)およびアミノ酸トリプレットGAP(78~80)を含む、ベクターpRA21でコードされた、修飾N末端伸長のアミノ酸配列。配列番号38に対してアミノ酸12~18、24~33および39~45におけるアラニンアミノ酸置換が、MPPによる切断を無効にするように設計された。
【0117】
配列番号40-pRA05によってコードされたpFAγ::NifF::HA融合ポリペプチドのアミノ酸配列。アミノ酸1~77は、pFAγ MTPに相当し、アミノ酸78~80(GAP)は、AscI部位でのK.ニューモニエNifXのクローニングの成果物であり、アミノ酸81~256は、K.ニューモニエNifFアミノ酸(配列番号16)であり、およびアミノ酸257~267は、HAエピトープを含む。
【0118】
配列番号41-pRA04によってコードされたpFAγ::NifZ::FLAG融合ポリペプチドのアミノ酸配列。アミノ酸1~77は、pFAγ MTPに相当し、アミノ酸78~80(GAP)は、AscI部位のクローニングの成果物であり、アミノ酸81~228は、K.ニューモニエNifZアミノ酸(配列番号17)であり、およびアミノ酸229~238は、FLAGエピトープを含む。
【0119】
配列番号42-pRA10によってコードされたpFAγ::ifH::HA融合ポリペプチドのアミノ酸配列。アミノ酸1~77は、pFAγ MTPに相当し、アミノ酸78~80(GAP)は、AscI部位のクローニングの成果物であり、アミノ酸81~372は、K.ニューモニエNifHアミノ酸(イニシエーターMetなしの配列番号5)であり、およびアミノ酸373~389は、HAエピトープを含む。
【0120】
配列番号43-未プロセシングpFAγからのトリプシンペプチドのアミノ酸配列。
配列番号44-MPPによって処理後のpFAγからのトリプシンペプチドのアミノ酸配列。
配列番号45-MPPによって処理後のpFAγからのトリプシンペプチドのアミノ酸配列。
【0121】
配列番号46-pRA03によってコードされたpFAγ::NifB::HA融合ポリペプチドのアミノ酸配列。アミノ酸1~77は、pFAγ MTPに相当し、アミノ酸78~80(GAP)は、AscI部位のクローニングの成果物であり、アミノ酸81~547は、K.ニューモニエNifBアミノ酸(イニシエーターMetなしの配列番号9)であり、アミノ酸548~564はHAエピトープを含む。
【0122】
配列番号47-pRA07によってコードされたpFAγ::NifD::FLAG融合ポリペプチドのアミノ酸配列。アミノ酸1~77は、pFAγ MTPに相当し、アミノ酸78~80(GAP)は、AscI部位のクローニングの成果物であり、アミノ酸81~561は、K.ニューモニエNifDアミノ酸(イニシエーターMetおよび次のMetなしの配列番号6)であり、およびアミノ酸562~573はFLAGエピトープを含む。
【0123】
配列番号48-pRA09によってコードされたpFAγ::nifE::HA融合ポリペプチドのアミノ酸配列。アミノ酸1~77は、pFAγ MTPに相当し、アミノ酸78~80(GAP)は、AscI部位のクローニングの成果物であり、アミノ酸81~536は、K.ニューモニエNifEアミノ酸(イニシエーターMetなしの配列番号10)であり、およびアミノ酸537~553は、HAエピトープを含む。
【0124】
配列番号49-pRA06によってコードされたpFAγ::NifJ::FLAG融合ポリペプチドのアミノ酸配列。アミノ酸1~77は、pFAγ MTPに相当し、アミノ酸78~80(GAP)は、AscI部位のクローニングの成果物であり、アミノ酸81~1251は、K.ニューモニエNifJアミノ酸(配列番号18)であり、およびアミノ酸1252~1261は、FLAGエピトープを含む。
【0125】
配列番号50-pRA11によってコードされたpFAγ::NifK::HA融合ポリペプチドのアミノ酸配列。アミノ酸1~77は、pFAγ MTPに相当し、アミノ酸78~80(GAP)は、AscI部位のクローニングの成果物であり、アミノ酸81~599は、K.ニューモニエNifKアミノ酸(イニシエーターMetなしの配列番号7)であり、およびアミノ酸600~616は、HAエピトープを含む。
【0126】
配列番号51-pRA18によってコードされたpFAγ::NifM::HA融合ポリペプチドのアミノ酸配列。アミノ酸1~77は、pFAγ MTPに相当し、アミノ酸78~80(GAP)は、AscI部位のクローニングの成果物であり、アミノ酸81~346は、K.ニューモニエNifMアミノ酸(配列番号19)であり、およびアミノ酸347~357は、HAエピトープを含む。
【0127】
配列番号52-pRA13によってコードされたpFAγ::NifN::FLAG融合ポリペプチドのアミノ酸配列。アミノ酸1~77は、pFAγ MTPに相当し、アミノ酸78~80(GAP)は、AscI部位のクローニングの成果物であり、アミノ酸81~539は、K.ニューモニエNifNアミノ酸(イニシエーターMetなしの配列番号11)であり、およびアミノ酸540~551は、FLAGエピトープを含む。
【0128】
配列番号53-pRA08によってコードされたpFAγ::NifQ::HA融合ポリペプチドのアミノ酸配列。アミノ酸1~77は、pFAγ MTPに相当し、アミノ酸78~80(GAP)は、AscI部位のクローニングの成果物であり、アミノ酸81~246は、K.ニューモニエNifQアミノ酸(イニシエーターMetなしの配列番号12)であり、およびアミノ酸247~263は、HAエピトープを含む。
【0129】
配列番号54-pRA16によってコードされたpFAγ::NifS::HA融合ポリペプチドのアミノ酸配列。アミノ酸1~77は、pFAγ MTPに相当し、アミノ酸78~80(GAP)は、AscI部位のクローニングの成果物であり、アミノ酸81~478は、K.ニューモニエNifSアミノ酸(イニシエーターMetなしの配列番号13)であり、およびアミノ酸479~496は、HAエピトープを含む。
【0130】
配列番号55-pRA15によってコードされたpFAγ::NifU::FLAG融合ポリペプチドのアミノ酸配列。アミノ酸1~77は、pFAγ MTPに相当し、アミノ酸78~80(GAP)は、AscI部位のクローニングの成果物であり、アミノ酸81~353は、K.ニューモニエNifUアミノ酸(イニシエーターMetなしの配列番号14)であり、およびアミノ酸354~365は、FLAGエピトープを含む。
【0131】
配列番号56-pRA17によってコードされたpFAγ::NifV::FLAG融合ポリペプチドのアミノ酸配列。アミノ酸1~77は、pFAγ MTPに相当し、アミノ酸78~80(GAP)は、AscI部位のクローニングの成果物であり、アミノ酸81~461は、K.ニューモニエNifVアミノ酸(配列番号20)であり、およびアミノ酸462~471は、FLAGエピトープを含む。
【0132】
配列番号57-pRA14によってコードされたpFAγ::NifX::FLAG融合ポリペプチドのアミノ酸配列。アミノ酸1~77は、pFAγ MTPに相当し、アミノ酸78~80(GAP)は、AscI部位のクローニングの成果物であり、アミノ酸81~235は、K.ニューモニエNifXアミノ酸(イニシエーターMetなしの配列番号15)であり、およびアミノ酸236~247は、FLAGエピトープを含む。
【0133】
配列番号58-pRA12によってコードされたpFAγ::NifY::HA融合ポリペプチドのアミノ酸配列。アミノ酸1~77は、pFAγ MTPに相当し、アミノ酸78~80(GAP)は、AscI部位のクローニングの成果物であり、アミノ酸81~299は、K.ニューモニエNifYアミノ酸(イニシエーターMetなしの配列番号8)であり、およびアミノ酸300~316は、HAエピトープを含む。
【0134】
配列番号59-pRA19によってコードされたpFAγ::NifD::HA融合ポリペプチドのアミノ酸配列。アミノ酸1~77は、pFAγ MTPに相当し、アミノ酸78~80(GAP)は、AscI部位のクローニングの成果物であり、アミノ酸81~561は、K.ニューモニエNifDアミノ酸(イニシエーターMetおよび次のMetなしの配列番号6)であり、およびアミノ酸562~574は、HAエピトープを含む。
【0135】
配列番号60-いずれのC末端伸長も有していない、pFAγ::NifK融合ポリペプチドのアミノ酸配列(pRA25)。アミノ酸1~77は、pFAγ MTPに相当し、アミノ酸78~80(GAP)は、AscI部位のクローニングの成果物であり、およびアミノ酸81~599は、K.ニューモニエNifKアミノ酸(イニシエーターMetなしの配列番号7)であった。
【0136】
配列番号61-ハイポクレア・ジェコリーナ(Hypocrea jecorina)セロビオヒドロラーゼII(受入番号AAG39980.1)からの既知の非構造リンカー領域からの11残基部分のアミノ酸配列。
【0137】
配列番号62-8残基のFLAGエピトープのアミノ酸配列。
配列番号63-リンカーのアミノ酸配列。前記リンカーは、長さが30残基であり、そして、アラニンによって置換される最終的なアルギニンを有するハイポクレア・ジェコリーナのセロビオヒドロラーゼII(受入番号AAG39980.1、ATPPPGSTTTR、配列番号61)からの既知の非構造リンカー領域からの11残基部分、次に、8残基のFLAGエピトープ(DYKDDDDK;配列番号62)と、最後にそれに続く、アラニンによって置換されるアルギニンを有する該11残基の非構造リンカー配列の別のコピーから成る。
【0138】
配列番号64-NifKのいずれのC末端伸長も有していない、pFAγ::NifD-リンカー-NifK融合ポリペプチド(pRA02)のアミノ酸配列。アミノ酸1~77は、pFAγ MTPに相当し、アミノ酸78~80(GAP)は、AscI部位のクローニングの成果物であり、アミノ酸81~561は、K.ニューモニエNifDアミノ酸(イニシエーターMetおよび次のMetなしの配列番号6)であり、アミノ酸562~592は、30アミノ酸のリンカーであり、およびアミノ酸593~1110は、K.ニューモニエNifKアミノ酸(イニシエーターMetなしの配列番号7)であった。
【0139】
配列番号65-NifKのいずれのC末端伸長も有していない、pFAγ::NifD-リンカー-NifK::HA融合ポリペプチド(pRA20)のアミノ酸配列。アミノ酸1~77は、pFAγ MTPに相当し、アミノ酸78~80(GAP)は、AscI部位のクローニングの成果物であり、アミノ酸81~561は、K.ニューモニエNifDアミノ酸(イニシエーターMetおよび次のMetなしの配列番号6)であり、アミノ酸562~592は、30アミノ酸のリンカーであり、アミノ酸593~1110は、K.ニューモニエNifKアミノ酸(イニシエーターMetなしの配列番号7)であり、およびアミノ酸1111~1119は、HAエピトープを含む。
【0140】
配列番号66-配列番号67のアミノ酸347~356に相当する、MYCエピトープを含むC末端伸長のアミノ酸配列。
配列番号67-pFAγ::NifM::MYC融合ポリペプチドのアミノ酸配列。
配列番号68-翻訳開始コドンで始まる、pRA19のpFAγ::NifD::HA融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列。
配列番号69-K.ニューモニエからのNifKポリペプチドのC末端における最後の4つアミノ酸残基のアミノ酸配列。
【0141】
配列番号70-pFAγ-CポリペプチドをコードするDNA断片のヌクレオチド配列。
配列番号71-pFAγ-Cポリペプチドのアミノ酸配列。
配列番号72-オリゴヌクレオチドプライマーNifD-F。
配列番号73-オリゴヌクレオチドプライマーNifD-R。
配列番号74-野生型K.ニューモニエNifWのアミノ酸配列。
配列番号75-MTP-FAγ51ポリペプチドのアミノ酸配列。
配列番号76-FAγ-scar9ポリペプチドのアミノ酸配列。
配列番号77-CPN60 MTPのアミノ酸配列。
配列番号78-CPN60/No GGリンカーMTPのアミノ酸配列。
【0142】
配列番号79-スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)MTP(At3G10920)のアミノ酸配列。
配列番号80-スーパーオキシドジスムターゼ二倍(2SOD)MTP(At3G10920)のアミノ酸配列。
配列番号81-スーパーオキシドジスムターゼ修飾型(SODmod)MTP(At3g10920)のアミノ酸配列。
配列番号82-スーパーオキシドジスムターゼ修飾型二倍(2SODmod)MTP(At3g10920)のアミノ酸配列。
【0143】
配列番号83-L29 MTP(At1G07830)のアミノ酸配列。
配列番号84-ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)F0 ATPアーゼサブユニット9(SU9)MTPのアミノ酸配列。
配列番号85-gATPアーゼガンマサブユニット(FAγ51)MTPのアミノ酸配列。
配列番号86-CoxIVツインstrep(ABM97483)MTPのアミノ酸配列。
【0144】
配列番号87-CoxIV 10xHis(ABM97483)MTPのアミノ酸配列。
配列番号88-スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)MTP(配列番号80)の予測される痕跡のアミノ酸配列。
【0145】
配列番号89-スーパーオキシドジスムターゼ二倍(2SOD)MTP(配列番号81)の予測される痕跡のアミノ酸配列。
配列番号90-L29 MTP(配列番号84)の予測される痕跡のアミノ酸配列。
配列番号91-ニューロスポラ・クラッサのF0 ATPアーゼサブユニット9(SU9)MTP(配列番号85)の予測される痕跡のアミノ酸配列。
【0146】
配列番号92-gATPアーゼガンマサブユニット(FAγ51)MTP(配列番号86)の予測される痕跡のアミノ酸配列。
配列番号93-CoxIVツインstrep MTP(配列番号87)の予測される痕跡のアミノ酸配列。
配列番号94-CoxIV 10xHis MTP(配列番号88)の予測される痕跡のアミノ酸配列。
【0147】
配列番号95-変異型NifDのアミノ酸配列。
配列番号96-変異型NifSのアミノ酸配列。
配列番号97-NifK9アミノ酸C末端伸長。
配列番号98-オリゴヌクレオチドプライマー。
配列番号99-オリゴヌクレオチドプライマー。
配列番号100-オリゴヌクレオチドプライマー。
配列番号101-オリゴヌクレオチドプライマー。
配列番号102-オリゴヌクレオチドプライマーBO1。
配列番号103-オリゴヌクレオチドプライマーBO2。
配列番号104-リンカーのアミノ酸配列。
【0148】
配列番号105-オリゴヌクレオチドプライマーpRA31DK-FW。
配列番号106-オリゴヌクレオチドプライマーpRA31DK-RV。
配列番号107-オリゴヌクレオチドプライマーD_start_RV。
配列番号108-オリゴヌクレオチドプライマーK_end_FW。
配列番号109-オリゴヌクレオチドプライマー。
配列番号110-オリゴヌクレオチドプライマー。
配列番号111-NifD-リンカー-NifKポリペプチドの9アミノ酸配列のN末端伸長。
【0149】
配列番号112-HAエピトープのアミノ酸配列。
配列番号113-NifE-NifN HAポリペプチドリンカーのアミノ酸配列。
配列番号114-オリゴヌクレオチドプライマーpRAEN-FW。
配列番号115-オリゴヌクレオチドプライマーpRAEN-RV。
配列番号116-オリゴヌクレオチドプライマーE_start_RV。
配列番号117-オリゴヌクレオチドプライマーN_end_FW。
配列番号118-オリゴヌクレオチドプライマー。
配列番号119-オリゴヌクレオチドプライマー。
【0150】
配列番号120-SCSV-S4バージョン1プロモーターのヌクレオチド配列。
配列番号121-SCSV-S4バージョン2プロモーターのヌクレオチド配列。
配列番号122-SCSV-S7プロモーターのヌクレオチド配列。
配列番号123-CaMV-35Sの長バージョンプロモーターのヌクレオチド配列。
配列番号124-CaMV-2x25Sプロモーターのヌクレオチド配列。
配列番号125-P19ウイルス性サプレッサタンパク質のアミノ酸配列。
配列番号126-P19ペプチドのアミノ酸配列。
配列番号127-P19ペプチドのアミノ酸配列。
【0151】
配列番号128~143-NifKペプチドのアミノ酸配列。
配列番号144~154-NifHペプチドのアミノ酸配列。
配列番号155~160-NifBペプチドのアミノ酸配列。
配列番号161~165-NifJペプチドのアミノ酸配列。
配列番号166~174-NifSペプチドのアミノ酸配列。
配列番号175~182-NifXペプチドのアミノ酸配列。
配列番号183~186-NifFペプチドのアミノ酸配列。
【発明を実施するための形態】
【0152】
本発明の詳細な説明
一般的手法および定義
別段具体的に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術および科学用語は、当業者(例えば、細胞培養、分子遺伝子学、植物分子生物学、タンパク質化学、および生化学における)によって一般的に理解されているのと同じ意味を有すると解釈されるものとする。
【0153】
別段指示されない限り、本発明において用いられる組み換えタンパク質、細胞培養、および免疫学的手法は、当業者に周知の標準的な手順である。斯かる手法は、例えば、J. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning, John Wiley and Sons (1984), J. Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour Laboratory Press (1989), T.A. Brown (編者), Essential Molecular Biology: A Practical Approach, Volumes 1 and 2, IRL Press (1991), D.M. Glover and B.D. Hames (編者), DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes 1-4, IRL Press (1995および1996), およびF.M. Ausubel et al. (編者), Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience (1988, 現在までのすべての最新版を含む), Ed Harlow and David Lane (編者) Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour Laboratory, (1988), and J.E. Coligan et al. (編者) Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons (現在までのすべての最新版を含む)などの出典文献全体を通じて記述され、説明されている。
【0154】
「および/または」、例えば、「Xおよび/またはY」という用語は、「XおよびY」または「XまたはY」のいずれかを意味すると解釈され、両方の意味またはいずれかの意味への明示的な支持を提供すると解釈されるものとする。
【0155】
本明細書全体を通じて、「含む(comprise)」という用語、または「含む(comprises)」もしくは「含むこと(comprising)」などの変形は、記述される要素、整数、もしくはステップ、または要素、整数、もしくはステップの群の包含を示唆するが、任意の他の要素、整数、もしくはステップ、または要素、整数、もしくはステップの群の排除を示唆しないことが理解されるであろう。
【0156】
ニトロゲナーゼは、アンモニア(NH3)を産生するように窒素(N2)の強い、三重結合の還元を触媒する真正細菌および古細菌の酵素である。ニトロゲナーゼは通常、細菌だけに見られる。それは、別々に精製され得る2種類の酵素、すなわち、ジニトロゲナーゼとジニトロゲナーゼレダクターゼの複合体である。成分Iまたはモリブデン-鉄(MoFe)タンパク質とも呼ばれるジニトロゲナーゼは、2つの「P-クラスタ」および2つの「FeMo補因子」(FeMo-Co)も含有する2つのNifDおよび2つのNifKポリペプチド(α2β2)の四量体である。NifD-NifKサブユニットのそれぞれの組は、1つのP-クラスタおよび1つのFeMo-Coを含有する。FeMo-Coは、ホモクエン酸分子と複合体化したMoFe3-S3クラスタから構成されたメタロクラスタであり、そしてそれは、モリブデン原子に配位結合されて、そして、3つの硫黄リガンドによってFe4-S3クラスタに架橋される。FeMo-Coは、細胞内で別々に組み立てられ、その後、アポ-MoFeタンパク質内に組み込まれる。P-クラスタもまたメタロクラスタであり、FeMo-Coに類似しているが、それとは異なる構造を有する8つのFe原子と7つの硫黄原子を含んでいる。そのP-クラスタは、ジニトロゲナーゼのαβサブユニット境界面に位置していて、両方のサブユニットからのシステイニル残基によって配位結合されている。
【0157】
成分IIまたは「Feタンパク質」とも呼ばれるジニトロゲナーゼレダクターゼは、サブユニット境界面の単独のFe4-S4クラスタ、および各サブユニットに1つずつ、2つのMg-ATP結合部位も含有するNifHポリペプチドの二量体である。この酵素は、ジニトロゲナーゼへの電子供与体であり、そしてそこでは、電子が、Fe4-S4クラスタからP-クラスタに、そして、順番にN2還元の部位であるFeMo-Coまで輸送される。
【0158】
Mo含有ニトロゲナーゼは、細菌で最も一般的に見られるニトロゲナーゼであるが、遺伝的に異なるが、類似の補因子およびサブユニット組成を有する2つの相同ニトロゲナーゼ、すなわち、それぞれ、Vnf(バナジウム窒素固定)およびAnf(代替窒素固定)遺伝子によってコードされるバナジウム含有ニトロゲナーゼおよびFeのみのニトロゲナーゼ、が存在する。自然の一部の細菌が、3タイプのニトロゲナーゼをすべて所有していて、他の細菌、例えば、クレブシエラ・ニューモニエは、MoおよびV含有酵素だけまたはMo含有酵素だけを含有している。
【0159】
さまざまな窒素固定(Nif)遺伝子が、FeMo-Coの生合成と、ニトロゲナーゼ成分のそれらの触媒的に活性形態への成熟を必要としている。FeMo-Co合成におけるNifB、NifE、NifH、NifN、NifQ、NifVおよびNifXポリペプチドの役割が記載されている(Rubio and Ludden, 2005)。
【0160】
原核生物酵素であるニトロゲナーゼによって触媒された生物学的なN2固定は、合成N2肥料の使用に対する代替手段である。酸素に対するニトロゲナーゼの感受性が、植物内への、例えば直接的なNif遺伝子移入による穀類作物への、生物窒素固定の遺伝子操作に対する主要な障壁である。
【0161】
本発明者らは、植物細胞のミトコンドリアマトリックス(MM)に対するNifポリペプチドの標的化が、酸素感受性の問題を克服するだろうと考えた。MMは、酸素感応性Fe-Sクラスタを含有する他の酵素が機能できるようにする酵素を消費する酸素を所有している。ミトコンドリアのFe-Sクラスタ集合機構は、ジアゾ栄養同等物に類似している(Balk and Pilon, 2011; Lill and Muhlenhoff, 2008)。そのため、ニトロゲナーゼ生合成のための必要物のいくつかが、MM内の適所に既に存在するので、そして再構成に必要とされるNif遺伝子の数を低減される可能性がある。補因子ホモクエン酸は、TCAサイクルの一部として産生される。ニトロゲナーゼ酵素触媒作用の両方の前提条件であるATPの潜在力および濃度もまた、大きく軽減される(Geigenberger and Fernie, 2014; Mackenzie and McIntosh, 1999)。さらに、ミトコンドリア内のグルタミン酸シンターゼの存在は、ニトロゲナーゼによって固定されたすべてのアンモニウムが植物代謝に参加するためのエントリーポイントも提供する。これらの特徴、およびミトコンドリア自体がα-プロテオバクテリア起源のものであるという事実を考慮すると、本発明者らは、このオルガネラがニトロゲナーゼの機能的再構成を試みるための場所として非常に適していると考えた。
【0162】
植物細胞ミトコンドリア内でのニトロゲナーゼの再構成に向けた第1ステップとして、個々のNifタンパク質がMMに対して正確に標的化されるという証拠が必要であった。このために、本発明者らは、単独で、または、より重要なことには、組み合わせでの導入遺伝子の発現を提供するための発現プラットフォーム(Wood et al., 2009)としてモデル植物ニコチアナ・ベンサミアナを選んだ。MMに位置するタンパク質の大部分は核にコードされているので、本発明者らは、細胞内シグナル伝達および輸送プロセスを理解する際には、最近の進歩を頼りにして(Huang et al., 2009; Murcha et al., 2014)、以前に特徴づけされたN末端ペプチド標的化シグナルを使用した(Lee et al., 2012)。
【0163】
モデル細菌であるジアゾ栄養生物クレブシエラ・ニューモニアは、ニトロゲナーゼの生合成および触媒機能のために16個の特有のタンパク質を使用する。本発明者らは、植物MMに対して標的化するために、およびN.ベンサミアナの葉におけるそれらの発現およびプロセシングを評価するために、K.ニューモニエからの16個のNifタンパク質のすべてをリエンジニアリングした。16個のNifポリペプチドのすべてを、一時的に発現させ、そして、配列特異的MMプロセシングについて試験した。本発明者らは、16個のNifポリペプチドのすべてが、植物葉細胞内でMTP:Nif融合ポリペプチドとして個別に発現されることを確認した。さらに、本発明者らは、これらのタンパク質が、ニトロゲナーゼ機能のための潜在的に適合する細胞内位置であるミトコンドリアマトリックス(MM)に対して標的化されることができ、かつ、ミトコンドリアのプロセシングプロテアーゼ(MPP)によって切断され得る証拠を提供する。これは、斯かるアプローチの実現可能性に関する最初の実用的な実証であり、植物における内因性窒素固定化の遺伝子操作の目的に向けた重要な経過を表す。
【0164】
ミトコンドリア標的化ペプチド(MTP)-Nif融合ポリペプチド
本発明は、ミトコンドリア標的化ペプチド(MTP)-Nif融合ポリペプチドおよびそれらの切断ポリペプチド産物に関する。本発明のMTP-Nif融合ポリペプチドが植物細胞内で発現されるとき、MTP-Nif融合ポリペプチドおよび/または切断ポリペプチド産物が、ミトコンドリアマトリックス(MM)に対して標的化される。好ましくは、融合ポリペプチドは、植物細胞にニトロゲナーゼレダクターゼおよび/またはニトロゲナーゼ活性をもたらすか、または細菌の対応する野生型Nifポリペプチドによって与えられるそれと同じ活性をもたらす。
【0165】
本明細書中に使用される場合、用語「融合ポリペプチド」は、ペプチド結合によって共有結合で結合される2以上の機能性ポリペプチドドメインを含むポリペプチドを意味する。典型的には、融合ポリペプチドは、本発明のキメラポリヌクレオチドによって単一ポリペプチド鎖としてコードされる。ある実施形態において、本発明の融合ポリペプチドは、ミトコンドリア標的化ペプチド(MTP)およびNifポリペプチド(NP)を含む。この実施形態において、MTPのC末端は、NPのN末端に翻訳的に融合される。代替の実施形態において、本発明の融合ポリペプチドは、MTPおよびNPのC末端部分を含み、ここで、該C末端部分は、MPPによるMTPの切断からもたらされる。この実施形態において、MTPのC末端部分のC末端は、NPのN末端に翻訳的に融合される。
【0166】
本明細書中に使用される場合、用語「N末端に翻訳的に融合される」とは、MTPポリペプチドのC末端が、NPのN末端アミノ酸にペプチド結合によって共有結合で結合され、それによって、融合ポリペプチドになることを意味する。ある実施形態において、NPは、対応する野生型NPに関連するその天然翻訳開始メチオニン(Met)残基またはその2つのN末端Met残基を含まない。代替の実施形態において、NPは、例えばNifDなどに関して、野生型NPポリペプチドの翻訳開始Met、または2つのN末端Met残基のうちの一方もしくは両方を含む。
【0167】
斯かるポリペプチドは、MTPをコードするヌクレオチドの翻訳的な読み枠が、NPをコードするヌクレオチドの読み枠と枠内に結合されている、キメラタンパク質コード領域の発現によって典型的には産生される。当業者は、MTPのC末端が、リンカーなしで、または1もしくは複数アミノ酸残基、例えば1~5アミノ酸残基のリンカーを介して、NPのN末端アミノ酸に翻訳的に融合されることを理解する。斯かるリンカーはまた、MTPの一部であると見なすこともできる。タンパク質コード領域の発現は、植物細胞のMM内でのMTPの切断がその後に続いてもよく、斯かる切断は(起こる場合には)、本発明の融合ポリペプチド製造の概念に含まれる。
【0168】
融合ポリペプチドまたはプロセシングされたNifポリペプチドは、好ましくは、対応する野生型Nifポリペプチドのものに匹敵する機能的なNif活性を有する。融合ポリペプチドまたはプロセシングされたNifポリペプチドの機能的活性は、細菌および生化学的補完性アッセイによって測定されてもよい。好ましい実施形態において、融合ポリペプチドまたはプロセシングされたNifポリペプチドは、野性型Nif活性の約70~100%をの活性を有する。
【0169】
融合ポリペプチドは、2つ以上のMTPおよび/または2以上のNPを含んでもよい、例えば、融合ポリペプチドは、MTP、NifDポリペプチドおよびNifKポリペプチドを含んでもよい。融合ポリペプチドはまた、例えば、2つのNPを連結する、オリゴペプチドリンカーを含んでもよい。好ましくは、そのリンカーは、2以上の機能ドメイン、2つのNP、例えばNifDやNifKなどが、植物細胞内で機能的な形状で結合できるために十分な長さのものである。斯かるリンカーは、8~50アミノ酸残基の長さ、好ましくは25~35アミノ酸の長さ、より好ましくは約30アミノ酸残基の長さであってもよい。融合ポリペプチドを、従来の手段、例えば、好適な細胞における前記融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の遺伝子発現によって得てもよい。
【0170】
本明細書中に使用される場合、「実質的に精製されたポリペプチド」とは、例えば細胞内において、通常、該ポリペプチドに結合している成分(例えば、脂質、核酸、炭水化物)を実質的に含まないポリペプチドを意味する。好ましくは、実質的に精製されたポリペプチドは、前記成分を少なくとも90%含まない。
【0171】
本発明の植物細胞、トランスジェニック植物およびその構成要素は、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。本発明のポリペプチドは、植物細胞内に天然に生じない、特に植物細胞のミトコンドリア内に存在しないので、そのため、該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、それが植物細胞内で天然に生じることはないが、植物細胞または前駆細胞内に導入されたので、本明細書中では外来ポリヌクレオチドとも呼ばれる。そのため、本発明のポリペプチドを産生する本発明の細胞、植物および植物部分は、組み換えポリペプチドを産生すると言われることもある。ポリペプチドとの関連において、「遺伝子組み換え」という用語は、細胞によって産生されるとき、外来ポリヌクレオチドによってコードされたポリペプチドを指し、そしてそのポリヌクレオチドは、例えば、形質転換などの組み換えDNAまたはRNA技術によって該細胞または前駆細胞内に導入される。典型的には、植物細胞、植物または植物部分は、植物細胞または植物の生活環の中で少なくともいつか産生されるかなりの量のポリペプチドの原因となる非内因性遺伝子を含む。
【0172】
ある実施形態において、本発明のポリペプチドは、天然に存在するポリペプチドでない。代替の実施形態において、本発明のポリペプチドは、天然に存在するが、植物細胞内、好ましくは植物細胞のミトコンドリア内には存在せず、そしてそこでは、天然に生じない。
【0173】
Nifポリペプチド
本明細書中に使用される場合、用語「Nifポリペプチド」および「Nifタンパク質」は、互換的に使用され、そして、アミノ酸配列でニトロゲナーゼ活性にかかわる天然のポリペプチドに関連するポリペプチドを意味し、ここで、本発明のポリペプチドは、NifDポリペプチド、NifHポリペプチド、NifKポリペプチド、NifBポリペプチド、NifEポリペプチド、NifNポリペプチド、NifFポリペプチド、NifJポリペプチド、NifMポリペプチド、NifQポリペプチド、NifSポリペプチド、NifUポリペプチド、NifVポリペプチド、NifWポリペプチド、NifXポリペプチド、NifYポリペプチドおよびNifZポリペプチドから成る群から選択され、そしてそのそれぞれが本明細書中に規定されるとおりである。本発明のNifポリペプチドとしては、本明細書中に使用される場合、対応する天然のNifポリペプチドに対してN末端もしくはC末端、またはその両方に結合された追加アミノ酸残基を有する天然のNifポリペプチドのポリペプチド相同体を意味する「Nif融合ポリペプチド」が挙げられる。先に触れたように、Nif融合ポリペプチドは、対応する野生型Nifポリペプチドに関連する翻訳開始Metまたは2つのN末端Met残基を欠いてもよい。天然のNifポリペプチドに対応する、すなわち、N末端もしくはC末端、またはその両方に結合された追加アミノ酸残基を有していない、Nif融合ポリペプチドのアミノ酸残基もまた、この場合「NP」またはNifDポリペプチド(「ND」)などと略呼ばれる、Nifポリペプチドと、本明細書中で呼ばれる。好ましい実施形態において、「N末端もしくはC末端、またはその両方に結合された追加アミノ酸残基」は、NPのN末端に結合されたミトコンドリア標的化ペプチド(MTP)またはプロセシングされたMTPを含むか、またはNPに対してN末端もしくはC末端、またはその両方であるエピトープ配列(「タグ」)、あるいは、MTPまたはプロセシングMTP、およびエピトープ配列の両方を含む。
【0174】
天然のNifポリペプチドは、自由生活性窒素固定細菌、半共生的(associative)窒素固定細菌および共生的窒素固定細菌を含めた窒素固定細菌を含めた一部の細菌だけに生じる。自由生活性窒素固定細菌は、他の生物体との直接的な相互作用なしで有意水準の窒素を固定できる。これだけに限定されるものではないが、前記自由生活性窒素固定細菌としては、アゾトバクター(Azotobacter)属、ベイエリンキア(Beijerinckia)属、クレブシエラ(Klebsiella)属、シアノバクテリア(Cyanobacteria)属(好気性生物として分類される)のメンバー、およびクロストリジウム(Clostridium)属、デスルホビブリオ(Desulfovibrio)属のメンバー、ならびに紅色硫黄細菌、紅色非硫黄細菌および緑色硫黄細菌と命名されたものが挙げられる。半共生的窒素固定細菌は、イネ科(草本)のいくつかのメンバーと密接な関係を形成することができる原核生物である。これらの細菌は、宿主植物の根圏の中にかなりの量の窒素を固定する。アゾスピリラム(Azospirillum)属のメンバーは、半共生的窒素固定細菌の代表である。共生的窒素固定細菌は、宿主植物とパートナーを組むことによって共生的に窒素を固定する細菌である。その植物は、それが窒素固定のために必要とされるエネルギーのために窒素固定細菌によって利用される光合成からの糖を提供する。リゾビア(Rhizobia)属のメンバーは、半共生的窒素固定細菌の代表である。
【0175】
本発明のNifポリペプチドまたはNif融合ポリペプチドは、NifH、NifD、NifK、NifB、NifE、NifN、NifF、NifJ、NifM、NifQ、NifS、NifU、NifV、NifW、NifX、NifYおよびNifZポリペプチドから成る群から選択される。
【0176】
ポリペプチドまたはポリペプチドのクラスは、基準のアミノ酸配列に対してそのアミノ酸配列の同一性の程度(%同一性)により、または1つの基準のアミノ酸配列に対して、別に対するよりもより高い%同一性を有することにより、定義され得る。ポリペプチドまたはポリペプチドの種類もまた、配列の同一性の程度に加えて、天然のNifポリペプチドと同じ生物学的活性を有することによって、規定され得る。
【0177】
ポリペプチドの%同一性は、ギャップクリエーションペナルティ=5およびギャップエクステンションペナルティ=0.3を用いたGAP(Needleman and Wunsch, 1970)分析(GCGプログラム)、またはBlastpバージョン2.5またはその更新バージョン(Altschul et al, 1997)によって測定され、その都度、分析は、参照配列の全長にわたる参照配列を含めた2つの配列をアラインする。本明細書中に使用される場合、参照配列としては、K.ニューモニエ、配列番号1~20からの天然のNifポリペプチドのために提供されたものが挙げられる。
【0178】
以下の定義において、配列番号として提供された参照配列に対するアミノ酸配列の同一性の程度は、10,000に設定された標的配列の最大数以外、初期設定パラメーターを使用した、Blastp、バージョン2.5またはその更新バージョン(Altschul et al, 1997)によって測定され、そして、参照アミノ酸配列の完全長に沿って測定される。
【0179】
天然の細菌のNifHポリペプチドは、ニトロゲナーゼ複合体の構造成分であり、鉄(Fe)タンパク質と呼ばれることも多い。それは、サブユニットと2つのATP結合ドメインの間のFe44クラスタ結合を有するホモ二量体を形成する。NifHは、MoFeタンパク質に対する偏性電子供与体(NifD/NifKヘテロ四量体)であり、そのため、ニトロゲナーゼレダクターゼ(EC1.18.6.1)としての機能である。NifHはまた、FeMo-Co生合成およびアポ-MoFeタンパク質成熟にも関与する。本明細書中に使用される場合、「NifHポリペプチド」は、その配列が配列番号5として提供されたアミノ酸配列に対して少なくとも41%同一であり、かつ、ドメインTIGR01287、PRK13236、PRK13233およびcd02040の1もしくは複数を含む、アミノ酸を含むポリペプチドを意味する。TIGR01287ドメインは、モリブデン-鉄ニトロゲナーゼレダクターゼ(NifH)、バナジウム-鉄ニトロゲナーゼレダクターゼ(VnfH)、および鉄-鉄ニトロゲナーゼレダクターゼ(AnfH)のそれぞれに存在するが、光非依存型プロトクロロフィリドレダクターゼからの相同タンパク質を除く。本明細書中に使用される場合、そのため、NifHポリペプチドとしては、その配列が配列番号5に対して少なくとも41%同一であるアミノ酸を含む鉄結合性ポリペプチド、VnfH鉄結合性ポリペプチドおよびAnfH鉄結合性ポリペプチドのサブクラスが挙げられる。天然のNifHポリペプチドには、260~300アミノ酸の長さが典型的にあり、そして天然のモノマーは、約30kDaの分子量を有する。数多くのNifHポリペプチドが同定され、そして、多数の配列が、公的に利用可能なデータベースで入手可能である。例えば、NifHポリペプチドは、クレブシエラ・ミシガネンシス(Klebsiella michiganensis)(受入番号WP_049123239.配列番号5に対して1、99%同一)、ブレンネリア・ゴオドウィニイ(Brenneria goodwinii)(WP_048638817.1、93%同一)、シデロキシダンス・リトトロフィクス(Sideroxydans lithotrophicus)(WP_013029017.1、84%同一)、デニトロビブリオ・アセチフィルス(Denitrovibrio acetiphilus)(WP_013010353.1、80%同一)、デスルホビブリオ・アフリカヌス(Desulfovibrio africanus)(WP_014258951.1、72%同一)、クロロビウム・ファエオバクテロイデス(Chlorobium phaeobacteroides)(WP_011744626.1、69%同一)、メタノサエタ・コンシリイ(Methanosaeta concilii)(WP_013718497.1、64%同一)、ロドバクター(Rhodobacter)(WP_009565928.1、61%同一)、メタノカルドコックス・インフェルヌス(Methanocaldococcus infernus)(WP_013099472.1、42%同一)およびデスルホスポロシヌス・ヨウンギア(Desulfosporosinus youngiae)(WP_007781874.1、41%同一)で報告された。NifHポリペプチドは、Thiel et al., (1997), Pratte et al., (2006), Boison et al., (2006)およびStaples et al., (2007)で記載および概説された。
【0180】
本明細書中に使用される場合、機能的なNifHポリペプチドは、他の必要なサブユニット、例えば、NifDおよびNifK、ならびにFeMoまたは他の補因子と一緒に、機能的なニトロゲナーゼタンパク質複合体を形成することができるNifHポリペプチドである。
【0181】
本明細書中に使用される場合、「NifDポリペプチド」は、その配列が配列番号6として提供されたアミノ酸配列に対して少なくとも33%同一であるアミノ酸を含むポリペプチドを意味し、そして、(i)ドメインTIGR01282およびCOG2710の一方または両方、そしてその両方が、配列番号6に示されたアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む鉄-モリブデン結合ポリペプチド内に見られ、または(ii)その場合には、NifDポリペプチドがVnfDポリペプチドのサブクラス内にある、鉄-バナジウム結合ドメインTIGR01860、または(iii)その場合には、NifDポリペプチドがAnfDポリペプチドのサブクラス内にある、鉄-鉄結合ドメインTIGR1861、を含む。
【0182】
本明細書中に使用される場合、NifDポリペプチドとしては、その配列が配列番号6に対して少なくとも33%同一である、アミノ酸を含む鉄-モリブデン(FeMo-Co)結合ポリペプチドのサブクラス、該VnfD鉄-バナジウムポリペプチドおよびAnfDポリペプチド、が挙げられる。天然のNifDポリペプチドには、典型的に470~540アミノ酸の長さがある。数多くのNifDポリペプチドが同定され、そして、多数の配列が、公的に利用可能なデータベースで入手可能である。例えば、NifDポリペプチドは、ラオウルテラ・オルニチノリチカ(Raoultella ornithinolytica)(受入番号WP_044347161.1、配列番号6に対して96%同一)、クルイベラ(Kluyvera)中間体(WP_047370273.1、93%同一)、ジッケヤ・ダダンチイ(Dickeya dadantii)(WP_038902190.1、89%同一)、トルモナス属(Tolumonas sp.)BRL6-1(WP_024872642.1、81%同一)、マグネトスピリルム・グリフィスワルデンス(Magnetospirillum gryphiswaldense)(WP_024078601.1、68%同一)、テルモアナエロバクテリウム・テルモサッカロリチクム(Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum)(WP_013298320.1、42%同一)、メタノテルモバクテル・テルマウトトロフィクス(Methanothermobacter thermautotrophicus)(WP_010877172.1、38%同一)、デスルホビブリオ・アフリカヌス(Desulfovibrio africanus)(WP_014258953.1、37%同一)、デスルホトマクルム属(Desulfotomaculum sp.)LMa1(WP_066665786.1、37%同一)、デスルホミクロビウム・バクラツム(Desulfomicrobium baculatum)(WP_015773055.1、36%同一)、フィスケレラ・ムシコラ(Fischerella muscicola)のVnfDポリペプチド(WP_016867598.1、34%同一)およびオピツタセア(Opitutaceae)細菌TAV5からのAnfDポリペプチド(WP_009512873.1、33%同一)で報告された。
【0183】
NifDポリペプチドは、Lawson and Smith (2002), Kim and Rees (1994), Eady (1996), Robson et al., (1989), Dilworth et al., (1988), Dilworth et al., (1993), Miller and Eady (1988), Chiu et al., (2001), Mayer et al., (1999),およびTezcan et al., (2005)で記載および概説された。
【0184】
鉄-モリブデンサブクラスのNifDポリペプチドは、ニトロゲナーゼ複合体の重要なサブユニットであり、そして、ニトロゲナーゼのコアにおけるα2β2MoFeタンパク質複合体のαサブユニットであり、かつ、FeMo補因子による基質還元の部位である。
【0185】
本明細書中に使用される場合、機能的なNifDポリペプチドは、他の必要なサブユニット、例えば、NifHおよびNifK、ならびにFeMoまたは他の補因子と一緒に、機能的なニトロゲナーゼタンパク質複合体を形成することができるNifDポリペプチドである。
【0186】
本明細書中に使用される場合、「NifKポリペプチド」は、その配列が配列番号7として提供されたアミノ酸配列に対して少なくとも31%同一であり、かつ、その場合には、NifKポリペプチドが、VnfKポリペプチドのサブクラス内にある、保存ドメインcd01974、TIGR01286、またはcd01973の1もしくは複数を含むアミノ酸を含むポリペプチドを意味する。本明細書中に使用される場合、NifKポリペプチドとしては、鉄-バナジウムニトロゲナーゼからのVnfKがポリペプチドが挙げられる。天然のNifKポリペプチドには、典型的に430~530アミノ酸の長さがある。数多くのNifKポリペプチドが同定された、そして、多数の配列が、公的に利用可能なデータベースで入手可能である。例えば、NifKポリペプチドは、クレブシエラ・ミシガネンシス(Klebsiella michiganensis)(受入番号WP_049080161.1、配列番号7に対して99%同一)、ラオウルテラ・オルニチノリチカ(Raoultella ornithinolytica)(WP_044347163.1、96%同一)、クレブシエラ・バリイコラ(Klebsiella variicola)(SBM87811.1、94%同一)、クルイベラ(Kluyvera)中間体(WP_047370272.1、89%同一)、ラーネラ・アクアチリス(Rahnella aquatilis)(WP_014333919.1、82%同一)、トルモナス・アウエンシス(Tolumonas auensis)(WP_012728880.1、75%同一)、シュードモナス・スツトゼリ(Pseudomonas stutzeri)(WP_011912506.1、68%同一)、ビブリオ・ナトリエゲンス(Vibrio natriegens)(WP_065303473.1、65%同一)、アゾアルクス・トルクラスチクス(Azoarcus toluclasticus)(WP_018989051.1、54%同一)、フランキア属(Frankia sp.)(prf||2106319A、50%同一)およびメタノサルシナ・アセチボランス(Methanosarcina acetivorans)(WP_011021239.1、31%同一)で報告された。配列番号7に対して31%未満の同一性を有するが、先に列挙したドメインのいずれも含んでいなくて、そのため、本明細書中ではNifKポリペプチドに含まれない、「NifK」と注釈されたデータベースには、ポリペプチドに関するいくつかの例が存在する。NifKポリペプチドは、Kim and Rees (1994), Eady (1996), Robson et al., (1989), Dilworth et al., (1988), Dilworth et al., (1993), Miller and Eady (1988), Igarashi and Seefeldt (2003), Fani et al., (2000)およびRubio and Ludden (2005)で記載および概説された。
【0187】
鉄-モリブデンサブクラスのNifKポリペプチドは、ニトロゲナーゼ複合体の重要なサブユニットであり、そして、ニトロゲナーゼのコアにおけるα2β2MoFeタンパク質複合体のβサブユニットである。本明細書中に使用される場合、機能的なNifKポリペプチドは、他の必要なサブユニット、例えば、NifDおよびNifH、ならびにFeMoまたは他の補因子と一緒に、機能的なニトロゲナーゼタンパク質複合体を形成することができるNifKポリペプチドである。好ましい実施形態において、アミノ酸配列番号7とアラインされるとき、本発明のNifKポリペプチドのアミノ酸配列は、そのC末端にアミノ酸DLVR(配列番号7の残基517~520)を有し、そして、該アルギニンがC末端アミノ酸である、すなわち、本発明のNifKポリペプチドおよびNifK融合ポリペプチドには、好ましくは、天然のNifKポリペプチドと同じC末端を有する、すなわち、それにはC末端への人工的な付加がない。斯かる好ましいNifKポリペプチドは、実施例に示されているように、NifDおよびNifHポリペプチドとの機能的なニトロゲナーゼ複合体をよりよく形成することができる。
【0188】
天然の細菌のNifBポリペプチドは、FeMo-Co合成に関与するタンパク質であり、そして、[4Fe-4S]クラスタを、FeMo-Coの前駆体としての役割を果たす中心C原子を伴ったより高い核性のFe-Sクラスタ、NifB-coに変換する(Guo et al., 2016)。そのため、NifBは、FeMo-Co合成経路の第一の関与ステップを触媒する。NifBのNifB-co産物は、NifE-NifN複合体に結合でき、そして、メタロクラスタ担体タンパク質NifXによって、NifBからNifE-NifNまで往復輸送され得る。
【0189】
本明細書中に使用される場合、「NifBポリペプチド」は、そのアミノ酸配列が(その配列が配列番号9として提供されたアミノ酸配列に対して少なくとも27%同一である)アミノ酸を含むポリペプチドを意味する。大部分のNifBポリペプチドが、1もしくは複数の保存ドメインTIGR01290、NifB保存ドメインcd00852、NifX-NifBスーパーファミリ保存ドメインcl00252およびRadical_SAM保存ドメインcd01335を含む。本明細書中に使用される場合、NifBポリペプチドとしては、NifB機能を有していると注釈されたが、これらのドメインの1つを含んでいない天然のポリペプチドが挙げられる。天然のNifBポリペプチドには、典型的に440~500アミノ酸の長さがあり、そして、天然のモノマーは、約50kDaの分子量を有する。数多くのNifBポリペプチドが同定され、そして、多数の配列が、公的に利用可能なデータベースで入手可能である。例えば、NifBポリペプチドは、ラオウルテラ・オルニチノリチカ(Raoultella ornithinolytica)(受入番号WP_041145602.1、配列番号9に対して91%同一)、コサコニア・ラジシンシタンス(Kosakonia radicincitans)(WP_043953592.1、80%同一)、ディケヤ・クリサンテミ(Dickeya chrysanthemi)(WP_040003311.1、76%同一)、ペクトバクテリウム・アトロセプチクム(Pectobacterium atrosepticum)(WP_011094468.1、70%同一)、ブレンネリア・ゴオドウィニイ(Brenneria goodwinii)(WP_048638849.1、63%同一)、ハロロドスピラ・ハロフィラ(Halorhodospira halophila)(WP_011813098.1、59%同一)、メタノサルシナ・バーケリ(Methanosarcina barkeri)(WP_048108879.1、50%同一)、クロストリジウム・プリニリチクム(Clostridium purinilyticum)(WP_050355163.1、40%同一)、ゲオフィルム・ルビクンズム(Geofilum rubicundum)(GAO28552.1、35%同一)およびデスルホビブリオ・サレキシゲンス(Desulfovibrio salexigens)(WP_015850328.1、27%同一)で報告された。本明細書中に使用される場合、「機能的なNifBポリペプチド」は、[4Fe-4S]クラスタからNifB-coを形成することができるNifBポリペプチドである。NifBポリペプチドは、Curatti et al., (2006)およびAllen et al., (1995)で記載および概説された。
【0190】
NifEN複合体は、ジニトロゲナーゼの正確な集合に必要とされる骨格複合体であり、そして、それはまた、ジニトロゲナーゼに構造的に類似している(Fay et al., 2016)。NifEN複合体は、それぞれ、NifEおよびNifNのそれぞれの2個のサブユニットから成り、そして、本明細書中でENα2β2と呼ばれる、ヘテロ四量体を形成する。天然の細菌のNifEポリペプチドは、NifNポリペプチドを伴ったENα2β2四量体のαサブユニットであるポリペプチドであり、そして、このENα2β2四量体は、FeMo-Co合成に必要とされ、かつ、そこでFeMo-Coが合成される足場として機能することが提案される。
【0191】
本明細書中に使用される場合、「NifEポリペプチド」は、その配列が配列番号10として提供されたアミノ酸配列に対して少なくとも32%同一であり、そして、それが、ドメインTIGR01283およびPRK14478の一方または両方を含むアミノ酸を含むポリペプチドを意味する。TIGR01283ドメインタンパク質ファミリーのメンバーはまた、スーパーファミリーcl02775のメンバーでもある。天然のNifEポリペプチドには、典型的に440~490アミノ酸の長さがあり、そして、天然のモノマーは、約50kDaの分子量を有する。数多くのNifEポリペプチドが同定され、そして、多数の配列が、公的に利用可能なデータベースで入手可能である。例えば、NifEポリペプチドは、クレブシエラ・ミシガネンシス(Klebsiella michiganensis)(受入番号WP_049114606.1、配列番号10に対して99%同一)、クレブシエラ・バリイコラ(Klebsiella variicola)(SBM87755.1、92%同一)、ディケア・パラディシアカ(Dickeya paradisiaca)(WP_012764127.1、89%同一)、トルモナス・アウエンシス(Tolumonas auensis)(WP_012728883.1、75%同一)、シュードモナス・スツトゼリ(Pseudomonas stutzeri)(WP_003297989.1、69%同一)、アゾトバクター・ビネランジー(Azotobacter vinelandii)(WP_012698965.1、62%同一)、トリコルムス・アゾラ(Trichormus azollae)(WP_013190624.1、55%同一)、パエニバシルス・ズルス(Paenibacillus durus)(WP_025698318.1、50%同一)、スルフリクルブム・クジエンス(Sulfuricurvum kujiense)(WP_013460149.1、44%同一)、メタノバクテリウム・フォルミシカム(Methanobacterium formicicum)(AIS31022.1、39%同一)、アナエロムサ・アシダミノフィラ(Anaeromusa acidaminophila)(WP_018701501.1、35%同一)およびメガスフェラ・セレビシエ(Megasphaera cerevisiae)(WP_048514099.1、32%同一)で報告された。本明細書中に使用される場合、「機能的なNifEポリペプチド」は、その複合体がFeMo-Coを合成できるように、NifNと一緒に、機能的な四量体を形成することができるNifEポリペプチドである。NifEポリペプチドは、Fay et al., (2016), Hu et al., (2005), Hu et al., (2006)およびHu et al., (2008)で記載および概説された。
【0192】
天然の細菌のNifFポリペプチドは、NifHへの電子供与体であるフラボドキシンである。本明細書中に使用される場合、「NifFポリペプチド」は、その配列が配列番号16として提供されるアミノ酸配列に対して少なくとも34%同一であるアミノ酸を含むポリペプチドを意味し、そして、フラボドキシン長ドメインであるドメインTIGR01752、ならびにアゾバクター(Azobacter)および他の細菌PRK09267属からのNifタンパク質に見られるフラボドキシンFLDAドメインの一方またはその両方を含む。NifFポリペプチドは、ピルビン酸ギ酸リアーゼ活性化に関連するフラボドキシンおよび非窒素固定細菌のコバラミン依存性メチオニンシンターゼ活性を含むが、より広い機能に関与する他のフラボドキシンを除く。天然のNifFポリペプチドには、典型的に160~200アミノ酸の長さがあり、そして、天然のモノマーは、約19kDaの分子量を有する。数多くのNifFポリペプチドが同定され、そして、多数の配列が、公的に利用可能なデータベースで入手可能である。例えば、NifFポリペプチドは、クレブシエラ・ミシガネンシス(Klebsiella michiganensis)(受入番号WP_004122417.1、配列番号16に対して99%同一)、クレブシエラ・バリイコラ(Klebsiella variicola)(WP_040968713.1、85%同一)、コサコニア・ラジシンシタンス(Kosakonia radicincitans)(WP_035885760.1、76%同一)、ディケヤ・クリサンテミ(Dickeya chrysanthemi)(WP_039999438.1、72%同一)、ブレンネリア・ゴオドウィニイ(Brenneria goodwinii)(WP_048638838.1、62%同一)、メチロモナス・メタニカ(Methylomonas methanica)(WP_064006977.1、56%同一)、アゾトバクター・ビネランジー(Azotobacter vinelandii)(WP_012698862.1、50%同一)、クロロバクルム・テピズム(Chlorobaculum tepidum)(WP_010933399.1、39%同一)、カンピロバクター・ショワエ(Campylobacter showae)(WP_002949173.1、37%同一)、およびアゾトバクター・クロモコッカム(Azotobacter chromococcum)(WP_039801725.1、34%同一)で報告された。本明細書中に使用される場合、「機能的なNifFポリペプチド」は、NifHポリペプチドへの電子供与体であるNifFポリペプチドである。NifFポリペプチドは、Drummond (1985)で記載および概説された。
【0193】
天然の細菌のNifJポリペプチドは、NifHへの電子供与体であるピルバート:フラボドキシン(フェレドキシン)オキシドレダクターゼである。本明細書中に使用される場合、「NifJポリペプチド」は、その配列が配列番号18として提供されたアミノ酸配列に対して少なくとも40%同一であり、そして、保存ドメインTIGR02176を含むアミノ酸を含むポリペプチドを意味する。天然のNifJポリペプチドには、典型的に1100~1200アミノ酸の長さがあり、そして、天然のモノマーは、約128kDaの分子量を有する。数多くのNifJポリペプチドが同定され、そして、多数の配列が、公的に利用可能なデータベースで入手可能である。例えば、NifJポリペプチドは、クレブシエラ・ミシガネンシス(Klebsiella michiganensis)(受入番号WP_024360006.1、配列番号18に対して99%同一である)、ラオウルテラ・オルニチノリチカ(Raoultella ornithinolytica)(WP_044347157.1、95%同一)、クレブシエラ・クアシプノイモニア(Klebsiella quasipneumoniae)(WP_050533844.1、92%同一)、コサコニア・オリゼ(Kosakonia oryzae)(WP_064566543.1、82%同一)、ディケア・ソラニ(Dickeya solani)(WP_057084649.1、78%同一)、ラーネラ・アクアチリス(Rahnella aquatilis)(WP_014683040.1、72%同一)、サーモアナエロバクター・マトラニイ(Thermoanaerobacter mathranii)(WP_013149847.1、64%同一)、クロストリジウム・ボツリナム(Clostridium botulinum)(WP_053341220.1、60%同一)、スピロヘータ・アフリカーナ(Spirochaeta africana)(WP_014454638.1、52%同一)およびビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae)(CSA83023.1、40%同一)で報告された。本明細書中に使用される場合、「機能的なNifJポリペプチド」は、NifHポリペプチドに対する電子供与体であることができるNifJポリペプチドである。NifJポリペプチドは、Schmitz et al., (2001)で記載および概説された。
【0194】
天然の細菌のNifMポリペプチドは、NifHの成熟に必要とされるポリペプチドである。NifMの不存在下、NifHが、異種発現され、そして、NifD-NifKに電子を供与できなかったとき、E.コリおよび酵母において低レベルでのみ存在した。本明細書中に使用される場合、「NifMポリペプチド」は、その配列が配列番号19として提供されたアミノ酸配列に対して少なくとも26%同一であり、そして、ドメインTIGR02933を含む、アミノ酸を含むポリペプチドを意味する。NifMポリペプチドは、ペプチジル-プロリルシス-トランスイソメラーゼに相同であり、NifHのアクセサリータンパク質であると思われる。天然のNifMポリペプチドには、典型的に240~300アミノ酸の長さがあり、そして、天然のモノマーは、約30kDaの分子量を有する。数多くのNifMポリペプチドが同定され、そして、多数の配列が、公的に利用可能なデータベースで入手可能である。例えば、NifMポリペプチドは、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)(受入番号WP_064342940.1、配列番号19に対して99%同一)、クレブシエラ・ミシガネンシス(Klebsiella michiganensis)(WP_004122413.1、97%同一)、ラオウルテラ・オルニチノリチカ(Raoultella ornithinolytica)(WP_044347181.1、85%同一)、クレブシエラ・バリイコラ(Klebsiella variicola)(WP_063105800.1、75%同一)、コサコニア・ラジシンシタンス(Kosakonia radicincitans)(WP_035885759.1、59%同一)、ペクトバクテリウム・アトロセプチクム(Pectobacterium atrosepticum)(WP_011094472.1、42%同一)、ブレンネリア・ゴオドウィニイ(Brenneria goodwinii)(WP_048638837.1、33%同一)、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)PAO1(CAA75544.1、28%同一)、マリノバクテリウム属(Marinobacterium sp.)AK27(WP_051692859.1、27%同一)およびテレジニバクテル・ツルネラ(Teredinibacter turnerae)(WP_018415157.1、26%同一)で報告された。本明細書中に使用される場合、「機能的なNifMポリペプチド」は、NifHポリペプチドの成熟のためのNifHポリペプチドと複合体形成できるNifMポリペプチドである。NifMポリペプチドは、Petrova et al., (2000)で記載および概説された。
【0195】
天然の細菌のNifNポリペプチドは、NifEポリペプチドを伴ったENα2β2四量体のβサブユニットであり、そして、該ENα2β2四量体は、FeMo-Co合成に必要であり、かつ、そこでFeMo-Coが合成される足場として機能することが提案される。本明細書中に使用される場合、「NifNポリペプチド」は、(i)その配列が配列番号11として提供された配列に対して少なくとも76%同一であるアミノ酸を含むポリペプチド、および/または(ii)その配列が配列番号11として提供された配列に対して少なくとも34%同一であるアミノ酸を含み、そして、保存ドメインTIGR01285、cd01966およびPRK14476の1もしくは複数を含むポリペプチド、を意味する。NifNは、構造がモリブデン-鉄タンパクβ鎖NifKに関連する。保存されたTIGR01285を含むポリペプチドは、NifNポリペプチドの大部分の例を網羅するが、例えばクロロビウム・テピズムの推定上のNifNなどの、一部のNifNポリペプチドが除かれる、そのため、NifNの定義は、保存されたTIGR01285ドメインを含むポリペプチドに制限されない。PRK14476ドメインタンパク質ファミリーのメンバーはまた、スーパーファミリーcl02775のメンバーでもある。天然のNifNポリペプチドには、典型的に410~470アミノ酸の長さがあるが、自然にNifBに融合されたとき、それは、約900アミノ酸残基を有する可能性があり、天然のモノマーは、約50kDaの分子量を有する。数多くのNifNポリペプチドが同定され、そして、多数の配列が、公的に利用可能なデータベースで入手可能である。例えば、NifNポリペプチドは、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)(受入番号WP_064391778.1、配列番号11に対して97%同一)、クルイベラ(Kluyvera)中間体(WP_047370268.1、80%同一)、ラーネラ・アクアチリス(Rahnella aquatilis)(WP_014683026.1、70%同一)、ブレンネリア・ゴオドウィニイ(Brenneria goodwinii)(WP_048638830.1、65%同一)、メチロバクター・ツンドリパルズム(Methylobacter tundripaludum)(WP_027147663.1、46%同一)、カロトリキス・パリエチナ(Calothrix parietina)(WP_015195966.1、41%同一)、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)(WP_023593609.1、37%同一)、パエニバシルス・マッシリエンシス(Paenibacillus massiliensis)(WP_025677480.1、35%同一)およびデスルフィトバクテリウム・ハフニエンス(Desulfitobacterium hafniense)(WP_018306265.1、34%同一)で報告された。本明細書中に使用される場合、「機能的なNifNポリペプチド」は、その複合体がFeMo-Coを合成できるように、NifEと一緒に機能的な四量体を形成することができるNifNポリペプチドである。NifNポリペプチドは、Fay et al., (2016), Brigle et al., (1987), Fani et al., (2000),およびHu et al., (2005)で記載および概説された。
【0196】
天然の細菌のNifQポリペプチドは、FeMo-Co合成と、恐らく初期のMoO4 2-プロセシングに関与するポリペプチドである。保存されたC末端システイン残基が、金属結合に関与し得る。本明細書中に使用される場合、「NifQポリペプチド」は、その配列が配列番号12として提供されたアミノ酸配列に対して少なくとも34%同一であるアミノ酸を含み、そして、CL04826ドメインタンパク質ファミリーのメンバーであり、かつ、pfam04891ドメインタンパク質ファミリーのメンバーであるポリペプチドを意味する。天然のNifQポリペプチドには、典型的に160~250アミノ酸の長さがあり、あるいは、それらは、350アミノ酸残基と同じくらい長くてもよく、そして、天然のモノマーは、約20kDaの分子量を有する。数多くのNifQポリペプチドが同定され、そして、多数の配列が、公的に利用可能なデータベースで入手可能である。例えば、NifQポリペプチドは、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)(受入番号WP_064391765.1、配列番号12に対して95%同一)、クレブシエラ・バリイコラ(Klebsiella variicola)(CTQ06350.1、75%同一)、クルイベラ(Kluyvera)中間体(WP_047370257.1、63%同一)、ペクトバクテリウム・アトロセプチクム(Pectobacterium atrosepticum)(WP_043878077.1、59%同一)、メソリゾビウム・メタルリデュランス(Mesorhizobium metallidurans)(WP_008878174.1、46%同一)、ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)(WP_011501504.1、42%同一)、パラブルコルデリア・スプレンチア(Paraburkholderia sprentiae)(WP_027196569.1、41%同一)、バークホルデリア・スタビリス(Burkholderia stabilis)(GAU06296.1、39%同一)およびクプリアビズス・オキサラチクス(Cupriavidus oxalaticus)(WP_063239464.1、34%同一)で報告された。本明細書中に使用される場合、「機能的なNifQポリペプチド」は、MoO4 2-のプロセシングを可能にするNifQポリペプチドである。NifQポリペプチドは、Allen et al., (1995)およびSiddavattam et al., (1993)で記載および概説された。
【0197】
天然の細菌のNifSポリペプチドは、鉄-硫黄(FeS)クラスタ生合成に関与するシステインデスルフラーゼであり、例えば、Fe-Sクラスタ合成および修復のための硫黄の動員に関与する。本明細書中に使用される場合、「NifSポリペプチド」は、(i)その配列が配列番号13として提供されたアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸を含むポリペプチド、および/または(ii)その配列が配列番号13として提供された配列に対して少なくとも36%同一であるアミノ酸を含み、かつ、保存ドメインTIGR03402とCOG1104の一方または両方を含む、ポリペプチドを意味する。TIGR03402ドメインタンパク質ファミリーは、伸長された窒素固定系でほとんど常に見られる分岐に加えて、IscSよりも第一のものとより密接に関係し、かつ、NifS様/NifU様システムの一部でもある第二の分岐を含む。TIGR03402ドメインタンパク質ファミリーは、TIGR03403においてに代わりに構築されている、文献でNifSとも呼ばれる、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)などのイプシロンプロテオバクテリアで見られるより遠方の分岐まで伸長されない。COG1104ドメインタンパク質ファミリーは、システインスルフィン酸デスルフィナーゼ/システインデスルフラーゼまたは関連酵素を含む。一部のNifSポリペプチドは、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼドメインcl18945を含む。天然のNifSポリペプチドには、典型的に370~440アミノ酸の長さがあり、そして、天然のモノマーは、約43kDaの分子量を有する。数多くのNifSポリペプチドが同定され、そして、多数の配列が、公的に利用可能なデータベースで入手可能である。例えば、NifSポリペプチドは、クレブシエラ・ミシガネンシス(Klebsiella michiganensis)(受入番号WP_004138780.1、配列番号13に対して99%同一)、ラオウルテラ・テルリゲナ(Raoultella terrigena)(WP_045858151.1、89%同一)、クルイベラ(Kluyvera)中間体(WP_047370265.1、80%同一)、ラーネラ・アクアチリス(Rahnella aquatilis)(WP_014333911.1、73%同一)、アガリボランス・ギルブス(Agarivorans gilvus)(WP_055731597.1、64%同一)、アゾスピリラム・ブラジレンス(Azospirillum brasilense)(WP_014239770.1、60%同一)、デスルホサルシナ・セトニカ(Desulfosarcina cetonica)(WP_054691765.1、55%同一)、クロストリジウム・インテスティナレ(Clostridium intestinale)(WP_021802294.1、47%同一)、クロストリジイサリバクテル・パウシボランス(Clostridiisalibacter paucivorans)(WP_026894054.1、36%同一)およびバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)(WP_061575621.1、42%同一、かつ、COG1104内に存在)で報告された。本明細書中に使用される場合、「機能的なNifSポリペプチド」は、鉄-硫黄(FeS)クラスタ生合成および/または修復において機能できるNifSポリペプチドである。NifSポリペプチドは、Clausen et al., (2000), Johnson et al., (2005), Olson et al., (2000)およびYuvaniyama et al., (2000)で記載および概説された。
【0198】
天然の細菌のNifUポリペプチドは、ニトロゲナーゼ成分のための鉄-硫黄(FeS)クラスタ生合成に関与する分子足場ポリペプチドである。本明細書中に使用される場合、「NifUポリペプチド」は、その配列が配列番号14として提供された配列に対して少なくとも31%同一であるアミノ酸を含み、かつ、ドメインTIGR02000を含む、ポリペプチドを意味する。そのTIGR02000ドメインタンパク質ファミリーのメンバーは、ニトロゲナーゼ成熟に特異的に関与する。NifUは、N末端ドメイン(pfam01592)とC末端ドメイン(pfam01106)を含む。3つの異なるが、部分的に相同のFe-Sクラスタアセンブリ系が説明された:Isc、Suf、およびNif。Nif系(NifUがその一部である)は、多くの窒素固定種におけるニトロゲナーゼへのFe-Sクラスタの供与に関連する。ヘリコバクター(Helicobacter)およびカンピロバクター(Campylobacter)と同等なドメイン構造を有するIscおよびSuf相同体は、本明細書中のNifUの定義から除かれる。そのため、NifUは、ニトロゲナーゼ成熟に関与するNifUポリペプチドに特異的である。NifUのN末端領域の相同体を含む(例えば、エシェリキア・コリ、サッカロミセス・セレビシエおよびホモ・サピエンスからの)IscUタンパク質である、関連TIGR01999ドメインタンパク質ファミリーのメンバーもまた、本明細書中のNifUの定義から除かれる。天然のNifUポリペプチドには、典型的に260~310アミノ酸の長さがあり、そして、天然のモノマーは、約29kDaの分子量を有する。数多くのNifUポリペプチドが同定され、そして、多数の配列が、公的に利用可能なデータベースで入手可能である。例えば、NifUポリペプチドは、クレブシエラ・ミシガネンシス(Klebsiella michiganensis)(受入番号WP_049136164.1、配列番号14に対して97%同一)、クレブシエラ・バリイコラ(Klebsiella variicola)(WP_050887862.1、90%同一)、ディケア・ソラニ(Dickeya solani)(WP_057084657.1、80%同一)、ブレンネリア・ゴオドウィニイ(Brenneria goodwinii)(WP_048638833.1、73%同一)、トルモナス・アウエンシス(Tolumonas auensis)(WP_012728889.1、66%同一)、アガリボランス・ギルブス(Agarivorans gilvus)(WP_055731596.1、58%同一)、デスルホクルブス・ベキシネンシス(Desulfocurvus vexinensis)(WP_028587630.1、54%同一)、ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)(WP_044417303.1、49%同一)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)(WP_001051984.1、31%同一)およびスルフロブム属(Sulfurovum sp.)PC08-66(KIM05011.1、31%同一)で報告された。本明細書中に使用される場合、「機能的なNifUポリペプチド」は、鉄-硫黄(FeS)クラスタ生合成に関与する分子足場ポリペプチドとして機能できるNifUポリペプチドである。NifUポリペプチドは、Hwang et al., (1996), Muhlenhoff et al., (2003)およびOuzounis et al., (1994)で記載および概説された。
【0199】
天然の細菌のNifVポリペプチドは、ホモクエン酸シンターゼ(EC2.3.3.14)であり、そして、アセチル補酵素A(アセチル-CoA)から2-オキソグルタル酸へのアセチル基の移動によってホモクエン酸を産生する。次に、ホモクエン酸は、FeMo-Coの合成に使用される。本明細書中に使用される場合、「NifVポリペプチド」は、その配列が配列番号20として提供されたアミノ酸配列に対して少なくとも39%同一であるアミノ酸を含み、かつ、ドメインTIGR02660およびDRE_TIMの一方または両方を含む、ポリペプチドを意味する。TIGR02660ドメインタンパク質ファミリーのメンバーは、窒素固定以外のプロセスに関連する2-イソプロピルリンゴ酸シンターゼ、(R)-シトラマル酸シンターゼ、およびホモクエン酸シンターゼを含む酵素に対して相同である。cd07939ドメインタンパク質ファミリーはまた、ヘリオバクテリウム・クロラム(Heliobacterium chlorum)およびグルコンアセトバクター・ジアゾトロフィクス(Gluconacetobacter diazotrophicus)のNifVタンパク質を含み、そしてそれは、FrbCに対してオルソロガスであると思われる。このファミリーは、DRE-TIMメタロリアーゼスーパーファミリーに属する。DRE-TIMメタロリアーゼとしては、2-イソプロピルリンゴ酸シンターゼ(IPMS)、α-イソプロピルリンゴ酸シンターゼ(LeuA)、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoAリアーゼ、ホモクエン酸シンターゼ、シトラマル酸シンターゼ、4-ヒドロキシ-2-オキソ吉草酸アルドラーゼ、re-クエン酸シンターゼ、トランスカルボキシラーゼ5S、ピルビン酸カルボキシラーゼ、AksA、およびFrbCが挙げられる。これらのメンバーはすべて、8つのαへリックスによって囲まれた閉鎖バレルを形成する8つの平行ベータ鎖を有するコアβ(8)-α(8)モチーフから成る保存トリオース-リン酸イソメラーゼ(TIM)バレルドメインを共有する。そのドメインには、バレルのコアを覆うクラスタの不変残基によって形成された二価の陽イオン結合部位を含有する触媒中心を有する。加えて、触媒部位は、ドメイン名「DRE-TIM」の根拠である3つの不変残基-アスパルタート(D)、アルギニン(R)およびグルタミン酸(E)-を含む。天然のNifVポリペプチドには、典型的に360~390アミノ酸の長さがあるが、一部のメンバーには、約490アミノ酸残基の長さがあり、そして、天然のモノマーは、約41kDaの分子量を有する。数多くのNifVポリペプチドが同定され、そして、多数の配列が、公的に利用可能なデータベースで入手可能である。例えば、NifVポリペプチドは、クレブシエラ・ミシガネンシス(Klebsiella michiganensis)(受入番号WP_049083341.1、配列番号20に対して95%同一)、ラオウルテラ・オルニチノリチカ(Raoultella ornithinolytica)(WP_045858154.1、86%同一)、クルイベラ(Kluyvera)中間体(WP_047370264.1、81%同一)、ディケヤ・ダダンチイ(Dickeya dadantii)(WP_038912041.1、70%同一)、ブレンネリア・ゴオドウィニイ(Brenneria goodwinii)(WP_048638835.1、59%同一)、マグネトコックス・マリヌス(Magnetococcus marinus)(WP_011712856.1、46%同一)、スフィンゴモナス・ウィッチキイ(Sphingomonas wittichii)(WP_037528703.1、43%同一)、フランキア属(Frankia sp.)EI5c(OAA29062.1、41%同一)およびクロストリジウム属(Clostridium sp.)Maddingley MBC34-26(EKQ56006.1、39%同一)で報告された。本明細書中に使用される場合、「機能的なNifVポリペプチド」は、ホモクエン酸シンターゼとして機能できるNifVポリペプチドである。NifVポリペプチドは、Hu et al., (2008), Lee et al., (2000), Masukawa et al., (2007)およびZheng et al., (1997)で記載および概説された。
【0200】
天然の細菌のNifXポリペプチドは、NifBからNifE-NifNにFeMo-Co前駆体が移行する際に少なくとも助けとなる、FeMo-Co合成に関与するポリペプチドである。本明細書中に使用される場合、「NifXポリペプチド」は、その配列が配列番号15として提供されたアミノ酸配列に対して少なくとも29%同一であるアミノ酸を含み、かつ、保存ドメインTIGR02663およびcd00853の一方または両方を含む、ポリペプチドを意味する。NifXは、NifBおよびNifYを含めた鉄-モリブデンクラスタ結合タンパク質のより大きなファミリー内に含まれる、すなわち、NifXおよびNafY、そしてNifBのC末端ドメインはすべて、pfam02579ドメインを含み、かつ、それぞれFeMo-Coの合成に関与する。そのため、一部のNifXポリペプチドは、NifYとしてデータベース内に注釈され、そして、逆もまた同様である。天然のNifXポリペプチドには、典型的に110~160アミノ酸の長さがあり、そして、天然のモノマーは、約15kDaの分子量を有する。数多くのNifXポリペプチドが同定され、そして、多数の配列が、公的に利用可能なデータベースで入手可能である。例えば、NifXポリペプチドは、クレブシエラ・ミシガネンシス(Klebsiella michiganensis)(受入番号WP_049070199.1、配列番号15に対して97%同一)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)(WP_064342937.1、97%同一)、ラオウルテラ・オルニチノリチカ(Raoultella ornithinolytica)(WP_044347173.1、91%同一)、クレブシエラ・バリイコラ(Klebsiella variicola)(WP_044612922.1、83%同一)、コサコニア・ラジシンシタンス(Kosakonia radicincitans)(WP_043953583.1、75%同一)、ディケヤ・クリサンテミ(Dickeya chrysanthemi)(WP_039999416.1、68%同一)、ラーネラ・アクアチリス(Rahnella aquatilis)(WP_047608097.1、58%同一)、アゾトバクター・クロオコッカム(Azotobacter chroococcum)(WP_039800848.1、34%同一)、ベギアトア・レプトミチホルミス(Beggiatoa leptomitiformis)(WP_062149047.1、33%同一)およびメチルオベルサチリス・ジシプロルム(Methyloversatilis discipulorum)(WP_020165972.1、29%同一)で報告された。本明細書中に使用される場合、「機能的なNifXポリペプチド」は、NifBからNifE-NifNにFeMo-Co前駆体を移行できるNifXポリペプチドである。NifXポリペプチドは、Allen et al., (1994)およびShah et al., (1999)で記載および概説された。
【0201】
天然の細菌のNifYポリペプチドは、FeMo-Co合成に関与するポリペプチドであり、NifBからNifE-NifNにFeMo-Co前駆体を移行する際に少なくとも助けとなる。本明細書中に使用される場合、「NifYポリペプチド」は、その配列が配列番号8として提供されたアミノ酸配列に対して少なくとも34%同一であるアミノ酸を含み、かつ、保存ドメインTIGR02663およびcd00853の一方または両方を含む、ポリペプチドを意味する。NifYは、NifBおよびNifXを含めた鉄-モリブデンクラスタ結合タンパク質のより大きいファミリーに含まれる、すなわち、NifXおよびNafY、ならびにNifBのC末端ドメインのすべてがpfam02579ドメインを含み、そして、それぞれがFeMo-Coの合成に関与する。数多くのNifYポリペプチドが同定され、そして、多数の配列が、公的に利用可能なデータベースで入手可能である。例えば、NifYポリペプチドは、クレブシエラ・ミシガネンシス(Klebsiella michiganensis)(受入番号WP_049089500.1、配列番号8に対して99%同一)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)(WP_064342935.1、98%同一)、クレブシエラ・クアシプノイモニア(Klebsiella quasipneumoniae)(WP_044524054.1、90%同一)、クレブシエラ・バリイコラ(Klebsiella variicola)(WP_049010739.1、81%同一)、クルイベラ(Kluyvera)中間体(WP_047370270.1、69%同一)、ディケヤ・クリサンテミ(Dickeya chrysanthemi)(WP_039999411.1、62%同一)、セラチア属(Serratia sp.)ATCC39006(WP_037382461.1、57%同一)、ラーネラ・アクアチリス(Rahnella aquatilis)(WP_014683024.1、47%同一)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)(AEX25784.1、37%同一)およびアゾトバクター・ビネランジー(Azotobacter vinelandii)(WP_012698835.1、34%同一)で報告された。本明細書中に使用される場合、「機能的なNifYポリペプチド」は、NifBからNifE-NifNにFeMo-Co前駆体を移行することができるNifYポリペプチドである。
【0202】
天然の細菌のNifZポリペプチドは、第二のFe44ペアのカップリングのために特異的に必要とされる、Fe-Sクラスタ合成に関与するポリペプチドである。本明細書中に使用される場合、「NifZポリペプチド」は、その配列が配列番号17として提供された配列に対して少なくとも28%同一であるアミノ酸を含み、かつ、保存ドメインpfam04319を含む、ポリペプチドを意味する。約75アミノ酸残基のこのドメインは、一部のメンバーの単離、およびより長いNifZタンパク質の半分のアミノ末端で見られる。天然のNifZポリペプチドには、典型的に70~150アミノ酸の長さがあり、そして、天然のモノマーは、約9~約16kDaの分子量を有する。数多くのNifZポリペプチドが同定され、そして、多数の配列が、公的に利用可能なデータベースで入手可能である。例えば、NifZポリペプチドは、クレブシエラ・ミシガネンシス(Klebsiella michiganensis)(受入番号WP_057173223.1、配列番号17に対して93%同一)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)(WP_064342939.1、95%同一)、クレブシエラ・バリイコラ(Klebsiella variicola)(WP_043875005.1、77%同一)、コサコニア・ラジシンシタンス(Kosakonia radicincitans)(WP_043953588.1、67%同一)、コサコニア・サッカリ(Kosakonia sacchari)(WP_065368553.1、58%同一)、フェリファセルス・アムニコラ(Ferriphaselus amnicola)(WP_062627625.1、47%同一)、パラブルコルデリア・キセノボランス(Paraburkholderia xenovorans)(WP_011491838.1、41%同一)、アシジチオバシルス・フェリボランス(Acidithiobacillus ferrivorans)(WP_014029050.1、35%同一)およびブラジリゾビウム・オリゴトロフィクム(Bradyrhizobium oligotrophicum)(WP_015665422.1、28%同一)で報告された。本明細書中に使用される場合、「機能的なNifZポリペプチド」は、Fe-Sクラスタ合成においてFe44クラスタを連結することができるNifZポリペプチドである。NifZポリペプチドは、Cotton (2009)およびHu et al., (2004)で記載および概説された。
【0203】
天然の細菌のNifWポリペプチドは、NifZポリペプチドと結合して、高次複合体を形成し(Lee et al., 1998)、かつ、MoFeタンパク質(NifD-NifK)合成または活性に関与する、ポリペプチドである。NifWおよびNifZは、MoFeタンパク質の形成または蓄積に関与すると思われる(Paul and Merrick, 1989)。本明細書中に使用される場合、「NifWポリペプチド」は、そのアミノ酸配列がアミノ酸(その配列が配列番号74として提供されたアミノ酸配列に対して少なくとも28%同一である)を含み、かつ、保存されたNifWスーパーファミリタンパク質ドメイン、アーキテクチャID番号10505077を含み、Pfamily PF03206内に存在する、ポリペプチドを意味する。数多くのNifWポリペプチドが同定され、そして、多数の配列が、公的に利用可能なデータベースで入手可能である。例えば、NifWポリペプチドは、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)(受入番号WP_064342938.1、配列番号74に対して98%同一)、クレブシエラ・ミシガネンシス(Klebsiella michiganensis)(WP_049080155.1、94%同一)、エンテロバクター属(Enterobacter sp.)10-1(WP_095103586.1、90%同一)、クレブシエラ・クアシプノイモニア(Klebsiella quasipneumoniae)(WP_065877373.1、81%同一)、ペクトバクテリウム・ポラリス(Pectobacterium polaris)(WP_095699971.1、69%同一)、ディケア・パラディシアカ(Dickeya paradisiaca)(WP_012764136.1、58%同一)、ブレンネリア・ゴオドウィニイ(Brenneria goodwinii)(WP_053085547.1、36%同一)、アクワスピリルム属(Aquaspirillum sp.)LM1(WP_077299824.1、44%同一)、カンジダツス・ムプロテオバクテリア(Candidatus Muproteobacteria)RBG_16_64_10(OGI40729、34%同一)、アゾトバクター・ビネランジー(Azotobacter vinelandii)(ACO76430.1、32%同一)およびメチルオカルズム・マリヌム(Methylocaldum marinum)(BBA37427.1、28%同一)で報告された。本明細書中に使用される場合、「機能的なNifWポリペプチド」は、MoFeタンパク質の形成、蓄積または活性のうちの1もしくは複数を推進または促進するNifWポリペプチドである。機能的なNifWは、NifZと相互作用し得る、および/またはMoFeタンパク質の酸素保護の役割を果たし得る(Gavini et al., (1998))。
【0204】
規定したポリペプチドまたは酵素に関し、先に提供したものよりもより高い%同一性の形態が、好ましい実施形態を包含することが理解されるであろう。よって、適用できる場合、最小の%同一性の形態に照らして、ポリペプチドは、関連して挙げられる配列番号と、少なくとも30%、より好ましくは少なくとも35%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも45%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも99.1%、より好ましくは少なくとも99.2%、より好ましくは少なくとも99.3%、より好ましくは少なくとも99.4%、より好ましくは少なくとも99.5%、より好ましくは少なくとも99.6%、より好ましくは少なくとも99.7%、より好ましくは少なくとも99.8%、およびさらにより好ましくは少なくとも99.9%同一であるアミノ酸配列を含むことが好ましい。
【0205】
本明細書中に規定したポリペプチドのアミノ酸配列突然変異体は、本明細書に規定される核酸に適切なヌクレオチドの変更を導入することにより、または所望のポリペプチドのインビトロ合成により調製され得る。斯かる突然変異体は、例えば、1もしくは複数アミノ酸の欠失、挿入、または置換を含む。欠失、挿入および置換突然変異の組み合わせは、最終的な構築物に達するように作製され得るが、ただし、最終的なペプチド産生物が所望の酵素活性を有することを条件とする。
【0206】
突然変異(変更された)ポリペプチドは、例えば、指向進化または合理的設計ストラテジーを使用して、当該技術分野で既知の任意の技術を使用して調製され得る(以下を参照)。突然変異/変更DNAから得られる産物は、植物内でのそれらの発現が対応する野生型植物に対してその表現型を変更する場合、例えば、それらの発現が、対応する野生型植物に対して、増収、バイオマス、成長速度、生命力、生物窒素固定から得られる窒素獲得、窒素利用効率、非生物的ストレス寛容性、および/または栄養素欠乏に対する寛容性をもたらす場合、測定するための本明細書中に記載した技術を使用して容易にスクリーニングされ得る。
【0207】
アミノ酸配列の突然変異体を設計する際、突然変異点の場所および突然変異の性質が、変更される特徴(複数を含む)に依存するであろう。突然変異の場所は、例えば、(1)まず保存的なアミノ酸の選択により、その後の達成された結果による革新的な選択により置換し、(2)標的残基を欠失させ、または(3)位置される場所に隣り合う他の残基を挿入することにより、個々にまたは連続して変更され得る。
【0208】
アミノ酸配列は、概して約1から15の残基の範囲、より好ましくは約1から10残基および典型的には約1から5の連続する残基を欠失する。
【0209】
置換突然変異体は、除去されるポリペプチド分子における少なくとも1つのアミノ酸残基およびその場所に挿入される異なる残基を有する。特定の活性を維持することが望ましい場合、保存的置換がないか、または、関連タンパク質ファミリーに高度に保存されるアミノ酸位置においてだけであることが好ましい。保存的置換の例は、「代表的な置換」の見出しの下に、表1に示されている。
【0210】
好ましい実施形態において、突然変異体/変異体ポリペプチドは、天然に生じるポリペプチドと比較される場合に、唯一、または、1もしくは2もしくは3もしくは4以下の保存的なアミノ酸変更を有する。保存的なアミノ酸の変更の詳細は、表1に提供される。好ましい実施形態において、その変更は、本発明の異なるポリペプチドの間で高度に保存される1もしくは複数のモチーフまたはドメインに存在しない。当業者が認識しているように、このような微小な変更は、遺伝子組み換え細胞で発現される場合に、ポリペプチドの活性を変更しないことが合理的に予測され得る。
【0211】
本発明のポリペプチドの一次アミノ酸配列は、密接に関連するポリペプチドとの比較に基づく変異体/突然変異体を設計するのに使用できる。当業者が理解するように、密接に関連するタンパク質の間で高度に保存された残基は、より低度に保存された残基に比べ維持された活性を、特に非保存的置換で、変更できる可能性が低い(上記を参照)。保存されたアミノ酸残基を同定するためのより高いストリンジェント試験は、同じ機能の関連ポリペプチドをより遠くにアラインするためのものである。高度に保存された残基は、機能を保有するために維持されなければならず、その一方で、非保存残基は、機能を維持しながら、置換または欠失に適している。
【0212】
例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化またはタンパク質分解的切断によって、細胞内での合成中または合成後に示差的に修飾される本発明のポリペプチドもまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0213】
表1.代表的な置換
【表1】
【0214】
合理的な設計
タンパク質は、タンパク質構造および折り畳みに関する既知の情報に基づいて合理的に設計され得る。これは、一からの設計(デノボ設計)によって達成されても、または天然足場に基づく再設計によって達成されてもよい(例えば、Hellinga, 1997; and Lu and Berry, Protein Structure Design and Engineering, Handbook of Proteins 2, 1153-1157 (2007)を参照)。例えば、本明細書中の実施例10を参照。タンパク質設計は、典型的に所定のまたは標的構造に折り畳まれた配列を同定することを伴い、そして、コンピュータモデルを使用して実現される。コンピュータによるタンパク質設計アルゴリズムは、標的構造に折り畳まれているとエネルギーが低くなる配列に関して配列配座空間を検索する。コンピュータによるタンパク質設計アルゴリズムは、突然変異がどうタンパク質の構造および機能に影響するかを評価するためにタンパク質エネルギー論のモデルを使用する。これらのエネルギー関数は、典型的に分子機構、統計(すなわち、知識ベース)およびその他の経験項の組み合わせを含む。好適な利用可能なソフトウェアとしては、IPRO(Interative Protein Redesign and Optimization)、EGAD(A Genetic Algorithm for Protein Design)、Rosetta Design、Sharpen、およびAbaloneが挙げられる。
【0215】
植物におけるミトコンドリアタンパク質の取り込み
ほとんどすべてのミトコンドリアタンパク質が、核にコードされ、そして、サイトゾルに移行され、そのためミトコンドリア内へのそれらの転移を必要とする。ポリペプチド中のシグナル配列は、4つの異なるミトコンドリア内位置:外膜(OM)、膜間腔(IS)、内膜(IM)、またはマトリックス(MM)、へのそれらの取り込みに向ける。これらのシグナル配列は、それらの生化学的性質によって識別され、そして、4つの位置の1もしくは複数にポリペプチドを向ける少なくとも4つの異なる取り込み経路を介した輸送をガイドする(Chacinska et al., 2009)。これらの4つの経路は以下のとおりである:
(1)ポリペプチドをMM、ISまたはIMに向ける、「古典的な」プレ配列経路とも呼ばれる、一般的な取り込み経路;(2)IMへの取り込みのために使用される、担体取り込み経路;(3)ミトコンドリアの膜間腔(MIA)集合経路、および(4)OMへのポリペプチドの取り込みのために使用されるソーティングおよび集合機構(SAM)経路、である。一般的な取り込み経路はまた、シグナル配列としても知られている切断可能なプレ配列を有するポリペプチドも取り込む。これらのポリペプチドはまた、疎水性ソーティングシグナル(HSS)を有してもよい。担体取り込み経路は、シグナルや疎水領域のような内部プレ配列を有するポリペプチドを取り込む。MIA経路は、ツインシステイン残基を有するポリペプチドを取り込む。SAM経路は、βシグナルおよび推定上のTOM20シグナルを含有するポリペプチドを取り込む。これらの経路はすべて、外膜(TOM)のトランスロカーゼを使用し、そして、第一および第二の経路はまた、膜間複合体のTIM23トランスロカーゼも使用する。第一の経路だけが、マトリックスプロセシングペプチダーゼ(マトリックスプロセシングプロテアーゼ、MPP)を使用する。
【0216】
すべてのミトコンドリア標的化ポリペプチドに共通する特徴は、正確な位置への移動を導くポリペプチド中の少なくとも1つのドメインの存在である。これらについて最もよく研究されているのは、マトリックス内でMPPによって切断される「古典的な」N末端プレ配列ドメインである(Murcha et al., 2004)。約70%の植物および動物ミトコンドリアタンパク質が切断可能なプレ配列を有するにもかかわらず、内部およびC末端シグナル配列の両方もまた見出された(Pfanner and Geissler (2001), Schleiff and Soll (2000)に概説された)。アラビドプシスでは、これらのプレ配列は、50アミノ酸残基の平均長を有する11~109アミノ酸残基の長さの範囲に及ぶ。第一の経路に関してプレ配列を完全に規定するコンセンサス配列はないが、それらは、高い割合の疎水性、かつ、陽性荷電アミノ酸を含む傾向がある。通常、最初の10アミノ酸残基以内に始まる両親媒性αヘリックスを形成するそれらの能力が、さらなる特徴である(Roise et al., 1986)。これらのドメインは、疎水性(Ala、Leu、Phe、Val)、ヒドロキシル化(Ser、Thr)および陽性荷電(Arg、Lys)アミノ酸残基が豊富であり、かつ、酸性アミノ酸を欠いている。数多くのミトコンドリアタンパク質に関して、セリン(16~17%)およびアラニン(12~13%)が、ミトコンドリアのシグナル・ペプチドの中で多く表されすぎており、およびアルギニンが豊富である(12%)。MPP切断ポイントは、通常、位置P2(一様に切断される結合から-2aa)、または他の大部分の場合、P3における、保存されたアルギニン残基の存在によって、大部分のプレ配列に関して規定される(Huang et al., 2009)。
【0217】
ミトコンドリアのプレ配列は、疎水性残基を通してTom20受容体と相互作用する。研究は、αヘリックスの疎水性表面が、TOM取り込み複合体のTOM20成分によるペプチドの認識を容易にする一方で、TOM22サブユニットによって陽電荷が認識されることを示した(Abe et al., 2000)。最後に、大部分のプレ配列が、Hsp70と結合するポリペプチドの移動を導くので、したがって、ほとんどすべての植物のプレ配列が、Hsp70分子シャペロンの少なくとも1つの結合モチーフを含んでいる(Zhang and Glaser, 2002)。シャペロンHsp70は、タンパク質の折り畳み、タンパク質凝集の予防、および分子モータとしての機能に関与し、そして、ミトコンドリア膜を越えて前駆体を引く。内膜を横切る膜電位(ΔΨ)(~100mV、陰性内部)はまた、電気泳動効果を介して陽性荷電プレ配列の転移を駆動する。
【0218】
切断可能なプレ配列を有するタンパク質の大部分が、一般的な取り込み経路を介してミトコンドリアマトリックスに向けられており、そしてそれは、外膜(TOM)複合体のトランスポーターおよび内膜23複合体(TIM23)のトランスポーターを利用する。しかしながら、切断可能なプレ配列を有するタンパク質の一部は、それらがまた疎水性ソーティングシグナル(HSS)も含んでいる場合、内膜(Murcha et al., 2005)または膜間腔で集合し得る(Glick et al., 1992)。切断されたそれらのプレ配列を有していないマトリックス局在タンパク質に関してほんのわずかな例が存在する。アラビドプシスでは、グルタミン酸デヒドロゲナーゼだけが、プロセシングされていない完全長プレ配列で、マトリックス内で見られた(Huang et al., 2009)。
【0219】
マトリックス標的化されていないタンパク質に関して、さまざまな内在性の非切断可能局所化シグナルが採用される。これらは、典型的に特定の輸送経路に関連し、そして、特定の種類のタンパク質にさらに適合される。植物では、これまでのところ、いずれの試験も、膜間腔タンパク質の内部シグナル配列の正確な構成について測定していない。しかしながら、ツインシステイン残基を有するモチーフが、ミトコンドリアの膜間腔集合経路(MIA)を介した移動に関連しているらしい(Carrie et al., 2010; Darshi et al., 2012)。最後に、非切断可能内部配列はまた、担体経路を介して内膜に向けられるタンパク質によって利用され、そしてそれは、複数の膜貫通領域を有するタンパク質を挿入するためにTOMおよびTIM22装置を利用する(Kerscher et al., 1997; Sirrenberg et al., 1996)。これらの配列は、典型的に疎水性領域と、それに続く内部配列のようなプレ配列を含み、これにより、N末端プレ配列に類似しているが、それらの同族タンパク質内のそれらの内部位置によって区別される。
【0220】
光合成生物では、ミトコンドリアタンパク質をコードする核は、これらの2つのオルガネラとそれらのプロテオムの間の多くの類似性にもかかわらず、葉緑体とミトコンドリア輸送の間の区別を必要とした。ミトコンドリアプレ配列でほぼ現れるαヘリックスは、通常、葉緑体プレ配列を欠いており(Zhang and Glaser, 2002)、そしてそれは、より非構造化されているので、高度なβシート領域構造を示す傾向がある(Bruce, 2001)。
【0221】
植物では、MPPは内膜結合Cytbc1複合体に据えつけられているが、活性MPP部位は、マトリックスに面して配置されているので、2つのタンパク質の機能は独立している(Glaser and Dessi, 1999)。
【0222】
ミトコンドリア標的化ペプチド
本明細書中に使用される場合、用語「ミトコンドリア標的化ペプチド」または「MTP」は、標的タンパク質をミトコンドリアに向け、かつ、Nifポリペプチド、Gus、GFPなどの選択された標的タンパク質をミトコンドリアに向けるためにMTP-標的タンパク質の翻訳的融合の際に非相同的に使用できる、長さが少なくとも10アミノ酸、そして好ましくは、10~約80アミノ酸残基のアミノ酸配列を意味する。
【0223】
MTPは、典型的にそれが誘導されるポリペプチドの翻訳イニシエーターであるメチオニンをそのN末端に含む。MTPは、標的タンパク質のイニシエーターMetに相当するMet残基へのペプチド結合によってNifポリペプチドまたは「標的タンパク質」に翻訳的に融合されるか、あるいは、そのMet残基が除かれてもよく、かつ、そのペプチド結合が、野生型の、標的タンパク質の第二アミノ酸であるアミノ酸残基に直接融合される。MTPは、典型的に塩基性およびヒドロキシル化アミノ酸が豊富であり、通例は、酸性アミノ酸または伸長された疎水性伸長部を欠く。MTPは、両親媒性ヘリックスを形成してもよい。
【0224】
理論によって制限されることを望むものではないが、MTPは、典型的にミトコンドリアの外膜に対する受容体に結合する取り込み標的化配列を含む。外膜に結合すると、融合ポリペプチドは、チャンネルタンパク質を輸送する膜転移を受け、そして、ミトコンドリアマトリックス(MM)までミトコンドリアの二重膜を通過することが好ましい。次に、取り込みを標的化配列は、典型的に切断され、そして成熟融合タンパク質は折り畳まれた。
【0225】
MTPは、それに続いて、タンパク質を、例えばミトコンドリアマトリックス(MM)などのミトコンドリアの異なる領域に標的化する追加のシグナルを含んでもよい。ある実施形態において、取り込み標的化配列は、マトリックス標的化配列である。
【0226】
MTPは、Nifポリペプチドに翻訳的に融合されるとき、切断可能であっても、または非切断可能であってもよい。ある実施形態において、細胞で産生されるMTP-Nif融合ポリペプチドの少なくとも50%が、細胞内で切断される。代替の実施形態において、MTP-Nif融合ポリペプチドの50%未満が、細胞内で切断される、例えば、MTPは切断されない。ある実施形態において、MTPは、MPPのための切断部位を含まない。MTPは、(MTP配列内の)切断部位を含んでもよい。切断により、結果として得られたプロセシングされた産物(すなわち、成熟NP)のN-末端部分は、MTPの1もしくは複数のC末端アミノ酸を含んでもよい。あるいは、切断部位は、MTP配列全体が切断されるように融合ポリペプチド内に位置されてもよく、例えば、そのリンカーは、切断配列を含んでもよい。
【0227】
固有のミトコンドリア標的化ペプチドは、前駆タンパク質のN末端に局在化されており、そして、N-末端部分は、典型的にミトコンドリア内への取り込み中または取り込み後に切り落とされる。切断は、典型的に一般的なマトリックスプロセシングプロテアーゼ(MPP)によって触媒され、そしてそれは、植物では、呼吸鎖のbc1複合体内に組み込まれている。このプロテアーゼは、わずかな保護を示す幅広いアミノ酸配列を有する約1000個の前駆タンパク質の切断部位を認識する。ある実施形態において、MTPは、MPPのためのプロテアーゼ切断部位を含む。さらなる実施形態において、MPPによるMTP内の融合タンパク質の切断によって、プロセシングされた産物を生じる。
【0228】
ある実施形態において、MTPは切断されない。本発明者らは、MTPの取り込みが、常にNifタンパク質の完全なプロセシングにつながるわけではなかったことを実証した。場合によっては(NifX-FLAG、NifD-HAopt1およびNifDK-HA)、プロセシングされたNifタンパク質およびプロセシングされていないNifタンパク質の両方が観察された。MTPに関して一般的なコンセンサス配列が存在しないこと、および内部タンパク質配列がミトコンドリア標的化に影響を及ぼすことができること(Becker et al., 2012)を考慮すると、本発明者らがNifタンパク質の間のプロセシング効率の差を見つけたこと、驚くべきことではないかもしれない。
【0229】
本発明との関連において使用される好適なMTPとしては、これだけに限定されるものではないが、von Heijne (1986)またはRoise and Schatz (1988)によって規定される一般構造を有するペプチドが挙げられる。限定されることのないMTPの例は、von Heijne (1986)の表Iで規定したミトコンドリア標的化ペプチドである。
【0230】
ある実施形態において、MTPは、F1ATPアーゼγ-サブユニット(pFAγ)である。好適なpFAγMTPの例は、A.サリアナ(A.thaliana)由来のそれである(Lee et al., 2012)。ある実施形態において、pFAγMTPは、長さが77アミノ酸であり、MMPによるその切断は、融合ポリペプチドのN末端にて38MTP残基をあとに残す。好ましい実施形態において、pFAγMTPは、長さが77未満アミノ酸である。例えば、pFAγMTPは、長さが約51アミノ酸であってもよく、MMPによるその切断は、融合ポリペプチドのN末端にて9MTP残基をあとに残す。
【0231】
当業者は、ソフトウェアがミトコンドリアタンパク質およびそれらの標的化配列、例えば、MitoProtII、PSORT、TargetP、NNPSL、を予測するために存在することを理解する。
【0232】
MitoProtIIは、いくつかの生理化学的パラメーター(例えば、N-末端部分のアミノ酸組成、または17残基ウィンドウに関する最高の総疎水度)に基づいて配列のミトコンドリア局在を予測するプログラムである。PSORTは、例えば、配列モチーフの存在やアミノ酸組成などの様々な配列由来の特徴に基づいて細胞内位置を予測するプログラムである。TargetPは、任意のN末端プレ配列:葉緑体輸送ペプチド、ミトコンドリア標的化ペプチドまたは分泌経路シグナルペプチド、の予測される存在に基づいて、真核細胞タンパク質の細胞内位置を予測する。TargetPは、二層の人工神経回路網(ANN)内への入力としてN末端配列を必要とし、そして、初期のバイナリの予測因子、SignalPおよびChloroPを利用する。N末端プレ配列を含むと予測される配列に関して、潜在的切断部位もまた、予測できる。NNPSLは、クエリー配列に対して4つの細胞内局在性(サイトゾル、細胞外、核およびミトコンドリア)のうちの1つを割り当てるためにアミノ酸組成を使用する別のANNベースの方法である。
【0233】
当業者は、ルーチン法および本明細書中に開示した方法に基づいて、選ばれたMTPが融合ポリペプチドをミトコンドリアマトリックスに標的化するかどうか、容易に測定することができる。本発明者らは、アラビドプシスプロトプラストにおいてGFPを輸送できることが以前に実証され(Lee et al., 2012)、かつ、プロセシングされたタンパク質の検出を補助するために、比較的長い標的化ペプチドを選んだ。本明細書中の実施例に示したように、選ばれたMTPは、選択されたニトロゲナーゼタンパク質のすべてを、MMに対して標的化した。この結論は、証拠の数行に基づいている。まず第一に、N.ベンサミアナが発現したNifポリペプチドについて観察されたサイズは、MMペプチダーゼプロセシングから得られる予想されたサイズと一致していた。これはまた、細菌(完全長の未プロセシング)と、植物ミトコンドリアで発現された小型のNifs(NifFおよびNifZ)との間で観察されたサイズ差によっても反映された。さらに、NifDおよびGFPの両方の融合に関してより大きいバンドを生じる、ミトコンドリア取り込み機構によってプロセシングされることができない状態にするMTPの突然変異は、プロセシングされたタンパク質と未プロセシングタンパク質との間のサイズ差と一致した。最後に、代表的な融合ポリペプチドの質量分析法では、MTP-NifHが、マトリックス内での特定のプロセシングに関して予測されたように、MTPの残基42~43の間で切断されたことを決定した。
【0234】
本願発明のいくつかの実施形態において、選ばれたMTPの複数のタンデムコピーを使用することが有用であり得る。二重または多重標的化ペプチドのコード配列は、既存のMTPから遺伝子工学によって得てもよい。MTPの量は、細胞分留によって計測でき、その後に、例えば、定量的なイムノブロット分析が続いた。よって、本発明では、用語「ミトコンドリア標的化ペプチド」または「MTP」は、標的Nifタンパク質をミトコンドリアに向けるあるアミノ酸ペプチドの1もしくは複数のコピーを包含する。好ましい実施形態において、MTPは、選ばれたMTPの2コピーを含む。別の実施形態において、MTPは、選ばれたMTPの3コピーを含む。別の実施形態において、MTPは、選ばれたMTPの4コピー以上を含む。
【0235】
当業者は、MTP配列は、天然MTP配列に限定されないが、天然のMTPに対するアミノ酸の置換、欠失および/または挿入を含んでもよいが、ただし、その配列変異体がミトコンドリア標的化のために依然として機能することを条件とすることを認識する。
【0236】
当業者は、MTPが、クローニングストラテジーの結果としてそのNまたはC末端にてアミノ酸が両側に配置されてもよく、かつ、リンカーとして機能し得ることを理解する。これらの追加アミノ酸は、MTPの一部を形成すると見なされ得る。
【0237】
当業者はまた、MTPが、オリゴペプチドリンカーおよび/または、例えば、エピトープタグなどのタグにNまたはC末端で融合されてもよいことを理解する。好ましい実施形態において、植物細胞において産生される、本発明のNif融合ポリペプチドの1もしくは複数、またはすべてが、対応する野生型Nifポリペプチドに対して追加のエピトープタグを欠いている。
【0238】
リンカー
ポリペプチドとの関連において本明細書中に使用される場合、用語「リンカー」または「オリゴペプチドリンカー」は、2以上の機能ドメイン、例えば、MTPとNP、2つのNP、NPとタグを共有結合で結合する1もしくは複数アミノ酸を意味する。アミノ酸は、リンカー内およびリンカーと機能ドメインの間の両方で、ペプチド結合を通して共有結合で結合される。リンカーは、2以上のドメインの機能に対して実質的な有害効果を引き起こすことなく、もう片方に関して一方の機能ドメインの運動の自由度のために提供され得る。リンカーは、機能ドメインの一方または両方の適切な折り畳みおよび機能の促進を助け得る。当業者は、リンカーのサイズが、経験的に決定できるか、またはタンパク質折り畳み情報に基づいてモデル化できることを理解する。
【0239】
リンカーは、例えばMPPなどのプロテアーゼの切断部位を含んでもよい。斯かるリンカーはまた、MTPの一部であると見なされることもできる。
【0240】
当業者は、MTPのC末端が、リンカーなしで、または、1もしくは複数アミノ酸残基、例えば1~5アミノ酸残基のリンカーを介してNPのN末端アミノ酸に翻訳的に融合されることを認識する。斯かるリンカーはまた、MTPの一部であると見なされることもできる。
【0241】
実施形態において、リンカーは、少なくとも1アミノ酸、少なくとも2アミノ酸、少なくとも3アミノ酸、少なくとも4アミノ酸、少なくとも5アミノ酸、少なくとも6アミノ酸、少なくとも7アミノ酸、少なくとも8アミノ酸、少なくとも9アミノ酸、少なくとも10アミノ酸、少なくとも12アミノ酸、少なくとも14アミノ酸、少なくとも16アミノ酸、少なくとも18アミノ酸、少なくとも20アミノ酸、少なくとも25アミノ酸、少なくとも30アミノ酸、少なくとも35アミノ酸、少なくとも40アミノ酸、最少の45アミノ酸、少なくとも50アミノ酸、少なくとも60アミノ酸、少なくとも70アミノ酸、少なくとも80アミノ酸、少なくとも90アミノ酸、または約100アミノ酸を含む。実施形態において、リンカーの最大サイズは、100アミノ酸、好ましくは60アミノ酸、より好ましくは40アミノ酸である。
【0242】
いくつかの実施形態において、リンカーは、融合ポリペプチドの安定性を増強するために、もう片方に対して一方の機能ドメインの動きを可能にする。所望される場合、リンカーは:ポリグリシンの反復またはグリシン、プロリンおよびアラニン残基の組み合わせ、を包含する。2つのNifポリペプチドを結合するためのリンカー、例えば、NifD-リンカー-NifKおよびNifE-リンカー-NifNは、いくつかの基準に基づいて、リンカー内のアミノ酸の数および配列に関して選択されるのが好ましい。これらは、以下の:望ましくないジスルフィド連結の形成を避けるためのシステイン残基の欠如、望ましくない表面塩架橋相互作用の可能性の低減のためのわずかな荷電残基(Glu、Asp、Arg、Lys)、好ましくは荷電残基の不存在、斯かる残基がポリペプチドの表面に浸潤する傾向を促進し得る場合、わずかな疎水性残基(Phe、Trp、Tyr、Met、Val、Ile、Leu)、または疎水性残基の不存在、ならびに翻訳後修飾され得るアミノ酸の欠如である。
【0243】
これに関連して、「わずかな荷電残基」とは、リンカー内のアミノ酸残基の10%未満を意味し、および「わずかな疎水性残基」とは、リンカー内のアミノ酸残基の15%未満を意味する。
ある実施形態において、リンカーは、システイン残基を含まない。
ある実施形態において、リンカーは、4、3、2、もしくは1つの荷電残基を含むか、または荷電残基を含まない。好ましくは、リンカーは、グルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン、およびリジン残基を合計で、4、3、2、もしくは1つ含むか、またはそれらを含まない。
【0244】
ある実施形態において、リンカーは、4、3、2、もしくは1つの疎水性残基を含むか、または疎水性残基を含まない。好ましくは、リンカーは、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、メチオニン、バリン、イソロイシン、およびロイシン残基を合計で、4、3、2、もしくは1つ含むか、またはそれらを含まない。
ある実施形態において、リンカーの少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%が、トレオニン、セリン、グリシンおよびアラニンから選択される残基を含む。ポリペプチドを修飾する際のオリゴペプチドリンカーの使用は、Chen et al., (2013)およびZhang et al., (2009)で概説されている。
【0245】
タグ
特定の実施形態において、融合ポリペプチドは、融合ポリペプチドまたはそのプロセシングされた産物の検出または精製に適当な少なくとも1つのタグを含む。タグは、典型的に融合ポリペプチドのC末端またはN末端ドメインに結合される。好ましい実施形態において、タグは、NifポリペプチドのC末端に結合される。タグは、一般的に、高親和性を有する、1もしくは複数のリガンド、例えば、クロマトグラフィー支持体もしくはビーズ、または抗体などのアフィニティーマトリックスの1もしくは複数のリガンドに結合することができるペプチドまたはアミノ酸配列である。当業者は、タグが、ミトコンドリア内に取り込まれた後に、MTPが切り落とされた時点で、NPからのタグの除去をもたらさない位置の融合タンパク質内に好ましくは配置されることを理解する。さらに、タグは、ミトコンドリア取り込み機構を妨げてはならない。好ましい実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、N末端からC末端の順に、N末端MTP、Nifポリペプチドおよび検出/精製タグを含む融合ポリペプチドをコードする。代替の実施形態において、融合ポリペプチドは、N末端からC末端の順に、N末端MTP、検出/精製タグおよびNifポリペプチドを含む。
【0246】
融合ポリペプチドまたはそのプロセシングされた産物を検出、単離または精製するために有用なタグの追加的な説明に役立つ、制限されることのない例としては、ヒトインフルエンザ血球凝集素(HA)タグ、例えば6または8個のヒスチジン残基を含むヒスチジンタグ、蛍光タグ、例えばフルオレセイン、レゾルフィン(resourfin)およびその誘導体など、Argタグ、FLAGタグ、Strepタグ、抗体によって認識可能なエピトープ、例えばc-mycタグ(抗c-myc抗体によって認識される)など、SBPタグ、Sタグ、カルモジュリン結合ペプチド、セルロース結合ドメイン、キチン結合ドメイン、グルタチオンS-トランスフェラーゼタグ、マルトース結合タンパク質、NusA、TrxA、DsbA、Aviタグなど、が挙げられる。
【0247】
Nifポリペプチドに関与する翻訳融合
翻訳融合を、科学文献で報告されているように、いくつかのNifポリペプチドに対しておこなった。これらは、表2およびBuren and Rubio, (2018)による総説にまとめられている。それらの大部分は、検出と精製目的のために、タンパク質へのエピトープまたは結合ドメイン、例えばヒスチジンタグまたはStrepタグなど、の人工的な付加を伴い、そして、ほんのいくつかが植物細胞内に発現された。細菌における、Nifポリペプチド間の天然の融合に関していくつかの報告が存在する。細菌宿主におけるアッセイのために、異なる長さ(7~10ヒスチジン)のHisタグが、NifD(クリスチャンソンら、1998)、NifE(グッドウィンら、1998)、NifM(Gaviniら、2006)、ならびに完全長および切断型バージョンの両方のNifB(妖精ら、2015)に追加された。各ケースにおいて、Nif機能は、細菌またはインビトロにおけるニトロゲナーゼ再構成アッセイで実証されたように、修飾Nifポリペプチドに保持されていた。
【0248】
Thiel et al., (1995)は、ラン藻アナベナ・バリアビリス(Anabaena variabilis)のNifEおよびNifN遺伝子の間の遺伝子間領域における、29ヌクレオチドの天然の欠失とそれによる、9アミノ酸およびNifE終止コドンの欠失を同定した。欠失は、NifEおよびNifNポリペプチドのニトロゲナーゼ機能の少なくともいくつかを保有したNifE-NifNポリペプチド融合をもたらした。NifE-NifN融合ポリペプチドはまた、融合接合部の領域に他の19アミノ酸の置換を有し、そしてそれは、未知の形であるが、Nif機能に影響を及ぼすであろう。融合遺伝子は発現されるが、絶対嫌気性条件下だけであった。非融合遺伝子に対して活性の低減があるかどうかは、報告されなかった。
【0249】
Suh et al., (1996)は、pBG1404と表されるベクターを形成する、NifDの終止コドンおよびNifKの翻訳開始コドン(ATG)を含む欠失によって、A.ビネランジーの染色体のNifDおよびNifK遺伝子との間で人工的な接合部を作製した。欠失は、NifKポリペプチドのアミノ酸2~10において、正味3つのアミノ酸の欠失および7つのアミノ酸置換をもたらした。pBG1404を含有するA.ビネランジー宿主細胞は、対応する野生型細菌に対して、低窒素培地中でのそれらの増殖が弱められた。
【0250】
Wiig at al (2011)は、クロストリジウム・パスツリアヌム(Clostridium pastuerianum)で見られるNifNおよびNifB遺伝子との間の天然の翻訳融合を使用し、そして、それは、細菌および生化学的補完性アッセイにおいて、NifNおよびNifB活性に関して機能的であることを測定した。この融合は、いずれのペプチドリンカーなしに直接的であった、すなわち、NifNのC末端が、NifBのN末端に直接共有結合で連結された。
【0251】
酵母および植物細胞内では、翻訳融合は、核にコードされたタンパク質をミトコンドリアマトリックスに移動させるために使用された。酵母発現アッセイでは、ミトコンドリア標的化ペプチドといくつかのNifポリペプチド(NifH、NifM、NifSおよびNifU)との翻訳融合(MTP)が、好気性条件下で増殖するときに機能的になることが示された(Lopez-Torrejon et al., 2016)。これらの融合は、酵母細胞質内への局所化が意図され、かつ、該酵母が嫌気条件下で育ったときにだけ機能的であったが、エピトープ融合(FLAGとHIS)はまた、NifH、NifM、NifSおよびNifUに融合されたときに、機能的になることも示された。Buren et al., (2017)は、NifBの可溶性変異体のミトコンドリアマトリックス標的化バージョンが、酵母のミトコンドリアから再単離されたときに、インビトロ補完性アッセイにおいて、機能的であることを示した。このバージョンのNifBは、N末端MTP、NifBの切断変異体(NifX様ドメインなし)およびC末端10×Hisエピトープタグを包含する。多数のMTP-Nif融合もまた、酵母発現アッセイにおいて作り出された。しかしながら、同時発現タンパク質のこの大規模な集団は、酵母において活性を示さなかった(Buren et al., 2017)。
【0252】
CPN-60遺伝子からのMTPは、NifH、NifM、NifSおよびNifUのN末端に融合され、そして、FeProteinが10%酸素での低酸素分圧下で栽培された植物から再単離されたときに、インビトロ補完性アッセイによって機能的であることが示された(US2016/0304842)。
【0253】
表2.文献で報告されたNifポリペプチドの遺伝子融合の概要
【表2】
【0254】
ポリヌクレオチド
「ポリヌクレオチド」および「核酸」という用語は、本明細書中で互換的に使用される。それらは、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはその類似体のいずれかの、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を意味する。本明細書中に規定したポリヌクレオチドは、その起源または操作によって:(1)天然に関連しているポリヌクレオチドのすべてもしくは一部分に関連していないか、(例えば、天然プロモーターコード配列を含まないNifポリヌクレオチド)、(2)天然に連結するもの以外のポリヌクレオチドに連結するか(例えば、MTPコードヌクレオチド配列および/または非天然のプロモーターコード配列に連結されたNifポリヌクレオチド)、または(3)天然に生じない(例えば、本発明のMTP-Nif融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド)、ゲノム、cDNA、半合成、または合成起源の、一本鎖、好ましくは二本鎖のものであり得る。以下は、ポリヌクレオチドの非限定例である:遺伝子もしくは遺伝子断片のコードもしくは非コード領域、連鎖解析から規定された遺伝子座(複数を含む)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、リボソームRNA(rRNA)、リボザイム、cDNA、組み換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、任意の配列のキメラDNA、核酸プローブ、およびプライマー。ポリヌクレオチドは、例えばメチル化ヌクレオチドやヌクレオチド似体などの修飾ヌクレオチドを含んでもよい。存在する場合には、ヌクレオチド構造に対する修飾は、高分子の集合前または後に付与されてもよい。ヌクレオチド配列は、非ヌクレオチド成分によって中断されてもよい。ポリヌクレオチドは、例えば標識成分との複合体形成などの重合後にさらに修飾されてもよい。
【0255】
「単離されたポリヌクレオチド」は通常、ポリヌクレオチドと連結または結合している成分(例えば、調節配列)を実質的に含まない。よって、単離されたポリヌクレオチドは、遺伝子組み換え技術によって製造されたときには、他の細胞物質、または培地を実質的に含まず、あるいは、化学的に合成されたときには、化学前駆体または他の化学物質を実質的に含まない。好ましくは、単離されたポリヌクレオチドは、前記の成分を少なくとも60%含まず、より好ましくは少なくとも75%含まず、およびより好ましくは少なくとも90%含まない。
【0256】
本明細書で使用される「遺伝子」という用語は、その最も広い文脈で解釈されるものとし、構造遺伝子の転写領域および、翻訳される場合、タンパク質コード領域を含み、いずれの末端においても少なくとも約2kbの距離にわたる5’および3’両末端上のコード領域に隣接して位置し、遺伝子の発現に関与する配列を含むデオキシリボヌクレオチド配列を含む。この点に関して、遺伝子は、所定の遺伝子と天然に関連するプロモーター、エンハンサー、翻訳および転写終止、および/またはポリアデニル化シグナル等の制御シグナルを含むか、または異種制御シグナルを含み、その場合、遺伝子は、「キメラ遺伝子」と呼ばれる。タンパク質コード領域の5’に位置し、mRNA上に存在する配列は、5’非翻訳配列と呼ばれる。タンパク質コード領域の3’または下流に位置し、mRNA上に存在する配列は、3’非翻訳配列と呼ばれる。「遺伝子」という用語は、cDNA形態およびゲノム形態の両方の遺伝子を包含する。遺伝子のゲノム形態またはクローンは、「イントロン」、「介在領域」、または「介在配列」と呼ばれる非コード配列で中断され得るコード領域を含む。イントロンは、核RNA(nRNA)中に転写される遺伝子のセグメントである。イントロンは、エンハンサー等の調節要素を含むことができる。イントロンは、核内または一次転写生成物から除去または「スプライス」され、したがって、イントロンは、mRNA転写生成物中に存在しない。mRNAは、翻訳中、新生ポリペプチド中におけるアミノ酸の配列または順序を特定するように機能する。「遺伝子」という用語は、本明細書に記載される本発明のタンパク質のすべてまたは一部をコードする合成または融合分子および上記のいずれか1つに対して補完的なヌクレオチド配列を含む。
【0257】
本明細書中に使用される場合、「キメラDNA」はまた、本明細書中では「DNA構築物」とも呼ばれ、天然には自然に見られないが、2つのDNA部分を単一分子に人工的に結合し、そしてその各部分は天然に見られるが、その全体は天然に見られない、任意のDNA分子を意味する。例えば、DNA構築物は、本発明のMTP-Nif融合ポリペプチドをコードする。典型的には、キメラDNAは、実際には天然には一緒に見出されることのない調節および転写またはタンパク質コード配列を含む(例えば、非天然のプロモーターコード配列に連結したNifポリヌクレオチド)。したがって、キメラDNAは、異なる源に由来する調節配列およびコード配列、または同じ源に由来するが、実際に見出されるものとは異なる方法で配置される調節配列およびコード配列を含むことができる。オープンリーディングフレームは、その天然の上流および下流調節要素に連結されても、連結されなくてもよい。オープンリーディングフレームは、例えば、それが天然には見出されない植物ゲノム中に、または細菌プラスミドまたはウイルスベクター等のそれが天然には見出されないレプリコンまたはベクター中に取り込まれ得る。「キメラDNA」という用語は、宿主中で複製可能であるDNA分子に限定されないが、例えば、特定のアダプター配列により、レプリコン中に連結することができるDNAを含む。
【0258】
「導入遺伝子」は、形質転換の手法によってゲノムに導入された遺伝子である。その用語は、その前駆細胞のゲノム内に導入していた子孫細胞、植物、種子、非ヒト生物体またはその部分の遺伝子を含む。斯かる子孫細胞などは、初代形質転換細胞であった前駆細胞からの少なくとも第3または第4世代の子孫であってもよい。子孫は、有性生殖または、例えば、ジャガイモの塊茎またはサトウキビの苗条からなどの栄養生殖によって産生されてもよい。「遺伝的に修飾された」という用語およびその変形は、形質転換または形質導入によって遺伝子を細胞に導入することと、細胞中の遺伝子を突然変異させることと、細胞中の遺伝子または上記のように修飾された任意の細胞の子孫の遺伝子の調節を遺伝的に改変または調整することとを含む上位概念である。
【0259】
本明細書で使用される「ゲノム領域」は、導入遺伝子または導入遺伝子の群(本明細書では、クラスターとも呼ばれる)が、細胞またはその祖先に挿入される。斯かる領域は、例えば、本明細書中に記載した方法のように、ヒトの介入によって取り込まれたヌクレオチドを含むだけである。
【0260】
本発明の「組み換えポリヌクレオチド」は、人工的な組み換え方法によって構築または修飾された核酸分子を指す。組み換えポリヌクレオチドは、その天然状態と比較して、改変された量で細胞中に存在し得るか、または改変された速度で発現され得る(例えば、mRNAの場合)。一実施形態において、ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドを天然に含まない細胞に導入される。典型的には、外因性DNAは、mRNAの転写のための鋳型として使用され、形質転換された細胞内で本発明のポリペプチドをコードするアミノ酸残基の連続する配列に翻訳される。別の実施形態において、ポリヌクレオチドは、細菌細胞に対して内因性であり、その発現は、組み換え手段によって改変され、例えば、外因性制御配列が、着目の内因性遺伝子の上流に導入されて、形質転換された細胞が遺伝子によってコードされたポリペプチドを発現することを可能にする。
【0261】
本発明の組み換えポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドが存在する細胞ベースのまたは無細胞発現系の他の成分から分離されていないポリヌクレオチドと、この細胞ベースのまたは無細胞発現系において生成され、その後、少なくとも他のいくつかの成分から精製されるポリヌクレオチドとを含む。ポリヌクレオチドは、天然に存在する隣接する一続きのヌクレオチド(例えば、Nifポリヌクレオチド)であり得るか、または単一のポリヌクレオチドを形成するように接合した異なる起源(天然および/または合成)に由来する2つ以上の隣接する一続きのヌクレオチド(例えば、MTPをコードするヌクレオチド配列および/または非天然のプロモーターをコードする配列に連結されたNifポリヌクレオチド)を含むことができる。典型的には、そのようなキメラポリヌクレオチドは、対象となる細胞中のオープンリーディングフレームの転写を活発にするのに適しているプロモーターに作動可能に連結される本発明のポリペプチドをコードする少なくとも1つのオープンリーディングフレームを含む。
【0262】
規定されたポリヌクレオチドに関して、上に提供されたものよりも高い同一性%の数値が好ましい実施形態を包含することを理解されるであろう。したがって、適用できる場合、最小の同一性%の数値を考慮すると、ポリヌクレオチドは、関連する指定された配列番号と少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも99.1%、より好ましくは少なくとも99.2%、より好ましくは少なくとも99.3%、より好ましくは少なくとも99.4%、より好ましくは少なくとも99.5%、より好ましくは少なくとも99.6%、より好ましくは少なくとも99.7%、より好ましくは少なくとも99.8%、およびさらにより好ましくは少なくとも99.9%同一であるポリヌクレオチド配列を含むことが好ましい。
【0263】
本発明の、または本発明に有用なポリヌクレオチドは、ストリンジェントな条件下で、本明細書に規定されるポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズされ得る。本明細書で使用されるストリンジェントな条件とは、(1)ハイブリダイゼーション中に、ホルムアミド等の変性剤、例えば、42℃で、0.1%(w/v)のウシ血清アルブミン、0.1%のFicoll、0.1%のポリビニルピロリドン、750mMのNaClを含むpH6.5の50mMのリン酸ナトリウムバッファー、75mMのクエン酸ナトリウムを含む50%(v/v)のホルムアミドを用いること、または(2)0.2×SSCおよび0.1%のSDS中、42℃で、50%のホルムアミド、5×SSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5×デンハルト溶液、超音波処理したサケ精子DNA(50g/ml)、0.1%のSDS、および10%の硫酸デキストランを用いること、および/または(3)洗浄のために低イオン強度および高温、例えば、50℃で、0.015MのNaCl/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のSDSを用いること、である。
【0264】
本発明のポリヌクレオチドは、天然の分子と比較する場合、ヌクレオチド残基の欠失、挿入、または置換である1つ以上の突然変異を有し得る。参照配列と比較して突然変異を有するポリヌクレオチドは、天然に存在し得る(つまり、天然源から単離され得る)か、または(例えば、上述のように、核酸上の部位特異的変異誘発もしくはDNAシャフリングを行うことによって)合成であり得る。
【0265】
本発明のポリヌクレオチドは、植物細胞内での発現のためにコドン修飾されてもよい。当業者は、タンパク質コード領域が、例えば、窒素固定細菌の天然のポリヌクレオチドのコード領域に対して最適化されたコドンであってもよいことを理解する。
【0266】
核酸構築物
本発明は、1もしくは複数の本発明のポリヌクレオチドを含む核酸構築物、ならびにこれらを含むベクターおよび宿主細胞、それらの製造および使用の方法、そしてその使用を含む。本発明は、作動可能に接続または連結される要素を指す。「作動可能に接続された」または「作動可能に連結された」などは、機能的な関係性でのポリヌクレオチド要素の連結を指す。典型的には、作動可能に接続された核酸配列は、隣接して連結され、2つのタンパク質コード領域を結合する必要がある場合には、隣接し、そして、読み枠内にある。RNAポリメラーゼが2つのコード配列を単一のRNAに転写するとき、コード配列は、別のコード配列に「作動可能に接続され」、そしてそれは、転写される場合、その後、両方のコード配列に由来するアミノ酸を有する単一ペプチドに転写される。発現配列が所望のタンパク質を産生するように最終的にプロセシングされる限り、コード配列は互いに隣接している必要はない。
【0267】
本明細書中に使用される場合、「cis作用配列」、「cis作用エレメント」、または「cis調節領域」もしくは「調節領域」という用語、あるいは類似用語は、ヌクレオチドの任意の配列を意味するものであり、そしてそれは、発現可能な遺伝子配列に対して適切に配置および接続されるとき、少なくとも部分的に、遺伝子配列の発現を調整できる。当業者は、cis調節領域が、転写もしくは転写後レベルで遺伝子配列の発現レベル、および/または細胞型特異性および/または成長特異性を活性化、サイレンシング、促進、抑制または他のやり方で変更することを認識している。本発明の好ましい実施形態において、cis作用配列は、発現できる遺伝子配列の発現を促進または刺激するアクチベーター配列である。
【0268】
転写可能ポリヌクレオチドにプロモーターまたはエンハンサ要素を「作動可能に接続する」とは、プロモーターの制御調節下に転写可能ポリヌクレオチド(例えば、タンパク質コードポリヌクレオチドまたは他の転写産物)を配置することを意味し、そしてそれは、その後、そのポリヌクレオチドの転写を制御する。異種プロモーター/構造遺伝子組み合わせの構造では、プロモーターまたはその変異体を、プロモーターとタンパク質コード領域との間の距離とほとんど同じである、転写可能ポリヌクレオチドの転写開始部位から離れて配置することが一般的に好ましく、それは、その天然の状況:すなわち、プロモーターがそれに由来する遺伝子、において制御する。当該技術分野で知られているように、この距離でのいくつかのバリエーションが、機能の喪失なしに対応できる。同様に、その制御下で配置されるべき転写可能ポリヌクレオチドに関する調節配列要素(例えば、オペレーター、エンハンサーなど)の好ましい位置は、その天然の状況における、すなわち、それが誘導される遺伝子における、該要素の配置によって規定される。
【0269】
本明細書中に使用される場合、「プロモーター」または「プロモーター配列」は、遺伝子の領域、一般的に、RNAコード領域の上流(5’)を指し、そしてそれは、着目の細胞において転写の開始およびレベルを制御する。「プロモーター」としては、例えばTATAボックスやCCAATボックス配列などの、古典的なゲノム遺伝子の転写制御配列、ならびに発生および/または環境刺激に対応した、あるいは、組織特異的または細胞型特異的様式で遺伝子発現を変更する追加調節エレメント(すなわち、上流活性化配列、エンハンサーおよびサイレンサー)が挙げられる。プロモーターは通常、必須ではないが(例えば、一部のPolIIIプロモーター)、構造遺伝子の上流に配置され、その発現をそれが調整している。さらに、プロモーターを含む調節エレメントは、通常、遺伝子の転写開始部位の2kb以内にに配置される。プロモーターは、細胞内での発現をさらに促進するために、および/またはそれが作動可能に接続される構造遺伝子の発現のタイミングまたは誘導能を変更するために、開始部位からより遠位に配置された、追加の特異的調節要素を含んでもよい。
【0270】
「構成的プロモーター」は、例えば、植物など、の生物体の多くまたはすべての組織で作動可能に連結された転写配列の発現を指示するプロモーターを指す。本明細書中に使用される場合、「構成的な」という用語は、必須ではないが、遺伝子がすべての細胞型において同じレベルで発現され、しかし、該遺伝子が幅広い細胞型において発現されるが、レベルのいくつかのバリエーションが検出可能であることも多いことを示す。「選択的発現」は、本明細書中に使用される場合、専ら、例えば、植物、の特定の器官、例えば、胚乳、胚、葉、果物、塊茎または根、における発現を指す。好ましい実施形態において、プロモーターは、植物、好ましくは穀物用植物、の根、葉および/または茎で選択的または優先的に発現される。そのため、選択的発現は、構成的発現とは対照的であり得、そしてそれは、植物によって経験される大部分またはすべての条件下での、該植物の多くのまたはすべての組織における発現を指す。
【0271】
選択的発現はまた、特定の植物組織、器官または生育段階の遺伝子発現産物の区画化をもたらし得る。例えば、色素体、サイトゾル、液胞、またはアポプラストスペースなどの特定の細胞内位置における区画化は、必要な細胞区画への移動のための、適切なシグナルの遺伝子産物、例えば、シグナルペプチド、の構造内への組み込みによって、または半自律性オルガネラ(色素体およびミトコンドリア)の場合には、直接的なオルガネラゲノム内への適切な調節配列を伴った導入遺伝子の封入によって、達成されてもよい。
【0272】
「組織特異的プロモーター」または「器官特異的プロモーター」は、例えば、植物において、他の多くの組織または器官、好ましくは、すべてでない場合には、大部分の他の組織または器官、に対して、ある組織または器官で優先的に発現されるプロモーターである。典型的には、プロモーターは、他の組織または器官より特定の組織または器官において、10倍高いレベルにて発現される。
【0273】
ある実施形態において、プロモーターは、茎特異的プロモーター、葉特異的プロモーターまたは植物の気中部分(少なくとも茎と葉)における遺伝子発現を指示するプロモーター(緑色組織特異的プロモーター)、例えば、リブロース-1,5-二リン酸カルボキシラーゼのオキシゲナーゼ(RUBISCO)プロモーターなどである。
【0274】
茎特異的プロモーターの例としては、これだけに限定されるものではないが、US5,625,136およびBam et al. (2008)に記載のものが挙げられる。
ある実施形態において、プロモーターは根特異的プロモーターであり、根特異的プロモーターの例としては、これだけに限定されるものではないが、キチナーゼ遺伝子の酸性プロモーターおよびCaMV35Sプロモーターの特定のサブドメインが挙げられる。
【0275】
本発明によって企図されるプロモーターは、形質転換される宿主植物にとって天然のものであってもよく、またはその領域が宿主植物において機能的である場合には、代替の起源に由来してもよい。他の起源としては、アグロバクテリウム(Agrobacterium)T-DNA遺伝子、例えば、ノパリン、オクタピン、マンノピンもしくは他のオピンプロモーターの生合成のための遺伝子のプロモーターなど、組織特異的プロモーター(例えば、US5,459,252およびWO91/13992を参照);ウイルスからのプロモーター(宿主特異的ウイルスを含む)、または部分的または完全な合成プロモーター、が挙げられる。例えば、カリフラワーモザイクウイルスプロモーター(CaMV35S、19S)などの植物およびウイルスから単離された様々なプロモーターを含めた、単子葉および双子葉植物において機能的である多数のプロモーターが、当該技術分野で周知である(例えば、Greve, 1983; Salomon et al., 1984; Garfinkel et al., 1983; Barker et al., 1983を参照)。プロモーター活性を評価するための限定されない方法は、Medberry et al. (1992, 1993), Sambrook et al. (1989, supra)およびUS 5,164,316によって開示されている。
【0276】
これに代えてまたはこれに加えて、プロモーターは、例えば、植物において、適切な生育段階で、導入ポリヌクレオチドの発現を駆動できる、誘導プロモーターまたは生育に応じた制御プロモーターであってもよい。利用され得る他のcis作用配列としては、転写および/または翻訳エンハンサが挙げられる。エンハンサー領域は、当業者にとって周知であり、ATG翻訳開始コドンと隣接配列を含み得る。含まれているときには、開始コドンは、それが翻訳される場合には、全配列の翻訳を確実にするための外来または外因性ポリヌクレオチドに関連するコード配列の読み枠と同調していなければならない。翻訳開始領域は、転写開始領域の起源からか、または外来または外因性ポリヌクレオチドから提供されてもよい。その配列はまた、転写を駆動するために選択されたプロモーターの起源から得られてもよく、mRNAの翻訳を増強するために、特異的に修飾され得る。
【0277】
本発明の核酸構築物は、転写終止配列を含み得る約50~1,000ヌクレオチド塩基対の3’非翻訳配列を含んでもよい。3’非翻訳配列は、ポリアデニル化シグナルを含んでもよい転写終止シグナルとmRNAプロセシングに作用できるいかなる他の調節シグナルも含んでもよい。ポリアデニル化シグナルは、mRNA前駆体の3’末端へのポリアデニル酸経路の付加のために機能する。ポリアデニル化シグナルは、バリエーションは珍しくないが、標準形態5’AATAAA-3’に対する相同性の存在によって一般的に認識される。ポリアデニル化シグナルを含まない転写終止配列としては、一連の4つ以上のチミジンを含むPolIまたはPolIII RNAポリメラーゼのターミネータが挙げられる。好適な3’非翻訳配列の例は、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のオクトピンシンターゼ(ocs)遺伝子またはノパリンシンターゼ(nos)遺伝子からのポリアデニル化シグナルを含む3’転写非翻訳領域である(Bevan et al., 1983)。好適な3’非翻訳配列はまた、当業者に既知の他の3’要素を用いることもできるが、例えばリブロース-1,5-二リン酸カルボキシラーゼ(ssRUBISCO)遺伝子などの植物遺伝子から誘導されてもよい。
【0278】
DNA配列が転写開始部位とコード配列の始まりとの間に挿入される場合、すなわち、非翻訳5’リーダー配列(5’UTR)は、それが翻訳ならびに転写される場合、遺伝子発現に影響を与える可能性があり、当業者はまた、特定のリーダー配列を利用することもできる。好適なリーダー配列としては、外来または内因性DNA配列の最適な発現を指示するように選択された配列のものが挙げられる。例えば、斯かるリーダー配列としては、例えば、Joshi (1987)によって記載された、mRNA安定性を増強または維持し、かつ、翻訳の不適当な開始を予防し得る、好ましいコンセンサスが配列が挙げられる。
【0279】
ベクター
本発明は、遺伝子構築物の操作または移動のためのベクターの使用を含む。ベクターは、外来性遺伝子材料を;それが複製または発現され得る別の細胞内に人工的に輸送するために使用できる、核酸分子、好ましくはDNA分子である。外来DNAを含有するベクターは「遺伝子組み換えベクター」とも呼ばれる。ベクターの例としては、これだけに限定されるものではないが、プラスミド、ウイルスベクター、コスミド、染色体外因子、ミニクロモソーム、人工染色体が挙げられる。ベクターは、転置エレメントを含んでもよい。
【0280】
ベクターは、好ましくは二本鎖DNAであり、かつ、1もしくは複数の特有の制限部位を含み、そして、標的細胞もしくは組織またはその前駆細胞または組織を含んでいる規定の宿主細胞において自律複製が可能であっても、あるいは、クローン配列が再現できるように、規定の宿主のゲノム、好ましくは核ゲノム内への組み込みが可能であってもよい。したがって、ベクターは、自律増殖ベクター、すなわち、その複製が染色体の複製から独立している、染色体外存在物として存在するベクター、例えば、直鎖もしくは閉環状プラスミド、染色体外因子、ミニクロモソームまたは人工染色体、であってもよい。ベクターは、自己複製を確実にする任意の手段を含んでもよい。あるいは、ベクターは、細胞内に導入されたときに、受容細胞のゲノム、好ましくは核ゲノム内に組み込まれ、そして、それが組み込まれた(単数もしくは複数の)染色体と一緒に複製されるものであってもよい。ベクターシステムは、単一のベクターもしくはプラスミド、2以上のベクターもしくはプラスミドを含んでもよく、そしてそれは、宿主細胞内に導入される全DNA、またはトランスポゾンを一緒に含む。ベクターの選択は、典型的にそのベクターが導入される細胞とベクターとの適合性に依存する。ベクターはまた、例えば、抗生物質耐性遺伝子、除草剤耐性遺伝子または好適な形質転換体の選択に使用される他の遺伝子などの選択マーカーを含んでもよい。斯かる遺伝子の例は、当業者にとって周知である。
【0281】
本発明の核酸構築物は、例えばプラスミドなどのベクターに導入されてもよい。プラスミドベクターには典型的に、1つ以上のT-DNA領域を含む、例えばpUC由来ベクター、pSK由来ベクター、pGEM由来ベクター、pSP由来ベクター、pBS由来ベクターまたはバイナリーベクターといった、原核細胞および真核細胞における発現カセットの容易な選択、増幅および形質転換を提供する追加の核酸配列を含む。追加の核酸配列には、ベクターの自律複製を提供する複製開始点、好ましくは抗生物質または除草剤耐性をコードする選択マーカー遺伝子、核酸構築物にコードされる核酸配列または遺伝子を挿入するための複数の部位を提供する特有のマルチプルクローニング部位、および、原核および真核(特に植物)細胞の形質転換を強化する配列が含まれる。
【0282】
「マーカー遺伝子」は、マーカー遺伝子を発現する細胞に特有の表現型を分け与え、したがってそのような形質転換細胞がマーカーを有さない細胞から区別されることを可能にする遺伝子を意味する。選択マーカー遺伝子は、選択剤(例えば、除草剤、抗生物質、放射、熱または非形質転換細胞を傷つける他の処理)に対する耐性に基づいて「選択」できる特色を提供する。スクリーンマーカー遺伝子(またはレポーター遺伝子)は、観察または試験を通して、すなわち、「スクリーニング」する(例えば、非形質転換細胞には存在しないβ-グルクロニダーゼ、ルシフェラーゼ、GFPまたは他の酵素活性)ことで、同定できる特色を提供する。マーカー遺伝子および対象のヌクレオチド配列は結合していなくてもよい。
【0283】
形質転換体の識別を容易にするために、核酸構築物は、外来もしくは外因性ポリヌクレオチドとして、またはそれらに加えて、選択またはスクリーニングマーカー遺伝子を好ましくは含む。宿主細胞、好ましくは植物宿主細胞と組み合わせて機能的である(すなわち、選択的である)限り、マーカーの実際の選択は重要ではない。例えばUS4,399,216に記載の非連鎖遺伝子の同時形質転換もまた、植物の形質転換において効率的な工程であるので、着目のマーカー遺伝子と外来または外因性ポリヌクレオチドは連結されている必要はない。
【0284】
細菌選択マーカーの例には、アンピシリン、エリスロマイシン、クロラムフェニコールまたはテトラサイクリン耐性、好ましくはカナマイシン耐性といった抗生物質耐性を与えるマーカーが挙げられる。植物形質転換体の選択のための例示的選択マーカーには、ハイグロマイシンB耐性をコードするhyg遺伝子;カナマイシン、パロモマイシン、G418への耐性を与えるネオマイシンホスフォトランスフェラーゼ(nptII)遺伝子;例えばEP256223に記載されるような除草剤由来のグルタチオンへの耐性を与えるラット肝臓のグルタチオン-S-トランスフェラーゼ遺伝子;例えばWO87/05327に記載されるようなホスフィノトリシンといったグルタミンシンテターゼインヒビターへの耐性を過剰発現の際に与えるグルタミンシンテターゼ遺伝子;例えばEP275957に記載されるような選択剤ホスフィノトリシンへの耐性を与えるストレプトマイセス・ビリドクロモゲネス(Streptomyces viridochromogenes)由来のアセチルトランスフェラーゼ遺伝子;例えばHinchee et al. (1988)が説明するようなN-ホスホノメチルグリシンへの耐性を与える5-エノールシキメート-3-リン酸シンターゼ(EPSPS)をコードする遺伝子;例えばWO91/02071に記載されるビアラホスに対する耐性を与えるbar遺伝子;ブロモキシニルへの耐性を与える臭鼻菌由来のbxnといったニトリラーゼ遺伝子(Stalker et al., 1988);メトトレキセーへの耐性を与えるジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(Thillet et al., 1988);イミダゾリノン、スルホニルウレアもしくは他のALS阻害化学物質への耐性を与える突然変異体アセト乳酸シンターゼ遺伝子(ALS)(EP154,204);5-メチルトリプトファンへの耐性を与える突然変異したアントラニル酸シンターゼ遺伝子;または除草剤への耐性を与えるダラポンデハロゲナーゼ遺伝子が含まれるが、これらに限定されない。
【0285】
好ましいスクリーンマーカーには、様々な色素生産性基質が知られるβ-グルクロニダーゼ(GUS)酵素をコードするuidA遺伝子;発色基質が知られる酵素をコードするβ-ガラクトシダーゼ遺伝子;カルシウム感受性生物発光検出に利用され得るエクオリン遺伝子(Prasher et al., 1985);緑色蛍光タンパク質遺伝子(Niedz et al.、1995)またはその誘導体;生物発光検知を可能にするルシフェラーゼ(luc)遺伝子(Ow et al.、1986)、および、当該技術分野で知られる他のものが含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用される「レポーター分子」は、タンパク質産物への参照によってプロモーターの決定を助長する分析的に同定可能なシグナルをその化学的性質で提供る分子を意味する。
【0286】
好ましくは、核酸構築物は、例えば植物、のゲノム内に安定に取り込まれる。したがって、核酸は、分子がゲノムに取り込まれることを可能にする適切な成分を含み、または、構築物は、植物細胞の染色体に組み込まれ得る適切なベクター内に配置される。
【0287】
本発明の一実施形態は、遺伝子組み換えベクターを含み、そしてそれは、本明細書中に規定した少なくとも1つのポリヌクレオチドを含み、かつ、宿主細胞内にポリヌクレオチドを送達することが可能である。斯かるベクターは、異種核酸配列、すなわち、天然では本発明の核酸分子に隣接して見られることはなく、そこから(単数もしくは複数の)核酸分子が誘導された種以外の種から好ましくは誘導される核酸配列、を含んでいる。ベクターは、RNAまたはDNAのいずれかであり、原核生物または真核生物いずれかの、そして典型的に、ウイルスまたはプラスミドである。
【0288】
本発明の遺伝子組み換えベクターは、融合タンパク質として核酸分子の発現につながる融合配列を含む。
遺伝子組み換えベクターはまた、本明細書中に規定したポリヌクレオチドの核酸配列の周囲および/またはその中の介在および/または非翻訳配列を含んでもよい。
好ましくは、遺伝子組み換えベクターは、例えば植物細胞などの宿主細胞のゲノム内に安定して組み込まれる。したがって、遺伝子組み換えベクターは、ゲノム内にまたは細胞の染色体内にベクターを組み込むことを可能にする適切な要素を含んでもよい。
【0289】
組み換え細胞
本発明の別の実施形態は、組み換え細胞、例えば、組み換え植物細胞を含み、そしてそれは、1もしくは複数の本発明のポリヌクレオチド、構築物、またはベクターので形質転換された宿主細胞、またはその子孫細胞である。「組み換え細胞」という用語は、本明細書中では、「トランスジェニック細胞」という用語と互換的に使用される。
【0290】
細胞内への核酸分子の形質転換は、核酸分子が細胞内に挿入される任意の方法でも達成できる。形質転換技術としては、これだけに限定されるものではないが、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、吸着、およびプロトプラスト融合、が挙げられる。組み換え細胞は、単細胞性を維持していても、または組織、器官または多細胞生物中で増殖してもよい。本発明の形質転換核酸分子は、染色体外性を維持しても、または発現されるためのそれらの能力が保持される様式で、形質転換細胞の染色体中の1もしくは複数の部位に組み込まれてもよい。
【0291】
好ましい宿主細胞は、植物細胞であり、より好ましくは穀物用植物の細胞であり、より好ましくはオオムギもしくはコムギ細胞であり、またはより一層好ましくはコムギ細胞である。
【0292】
組み換え細胞は、培養細胞、インビトロもしくは、例えば、植物などの生物体中、または、例えば、根、葉もしくは茎などの器官中の細胞でそうであってもよい。好ましくは、細胞は、植物中、より好ましくは植物の根、葉、および/または茎中に存在する。
【0293】
ある実施形態において、植物細胞における活性NifDKの発現は、NifD、NifK、NifH、NifB、NifE、NifN、そして任意選択で、NifU、NifS、NifO、NifV、NifY、NifW、および/またはNifZの発現を必要とする。
【0294】
他の実施形態またはさらなる実施形態において、植物細胞における活性NifHの発現は、NifHおよびNifM、そして任意選択で、NifUおよび/またはNifNの発現を必要とする。
【0295】
ある実施形態において、植物細胞におけるニトロゲナーゼ活性の再構成は、少なくともNifD、NifK、NifH、NifB、NifE、NifN、およびNifMの発現を必要とする。
【0296】
当業者は、Nifタンパク質の小サブセットが、植物細胞内での機能的なニトロゲナーゼ再構成をもたらし得ることを理解する。本発明者らの知っている限り、いずれかの光合成生物へのニトロゲナーゼ遺伝子の移動に関する唯一の報告は、クラミドモナスの葉緑体ゲノムにおけるNifHの導入を説明した(Cheng et al., 2005)。NifHは、NifH生合成前駆タンパク質であるNifM、NifSおよびNifUが同時発現されないという事実にもかかわらず、クロロフィル生合成変異体を補完することができた。これは、内因性真核同等物が、特定のNifタンパク質を機能的に置換し得ることを実証した。実際に最近の報告での、E.コリが、8つのNifタンパク質(ワングら、2013)だけを使用してニトロゲナーゼ機能を再構成できることを実証することは、植物における機能の達成が、Nifタンパク質の完全な複合体を発現するほど複雑でない可能性があることを含意している。本発明者らはまだ、植物体におけるNifタンパク質の機能性を確立していないが、生合成および機能的Nifタンパク質のレパートリーがニトロゲナーゼ機能を潜在的に支持する環境において発現できることは有望である。
【0297】
トランスジェニック植物
「植物」という用語は、本明細書中に名詞として使用される場合、植物全体を指し、かつ、あらゆる植物界のメンバーを指すが、形容詞として使用される場合、例えば、植物器官(例えば、葉、茎、根、花)、単細胞(例えば、花粉)、種子、植物細胞などの、植物中に存在する、植物に由来する、または植物に関係するあらゆる物質を指す。それから根および苗条が出現した小植物および発芽種子もまた、「植物」の意味に含まれる。「植物部位」という用語は、本明細書の用法では、植物から得られる、および植物のゲノムDNAを含む、1つまたは複数の植物組織または器官を指す。植物部位としては、栄養構造体(例えば葉、茎)、根、花器官/構造体、種子(胚、子葉、および種皮をはじめとする)、植物組織(例えば維管束組織、粉砕組織など)、細胞およびその子孫が挙げられる。「植物細胞」という用語は、本明細書の用法では、植物から得られる、または植物中の細胞を指し、プロトプラストまたは植物に由来するその他の細胞、配偶子生成細胞、および植物全体に再生する細胞が挙げられる。植物細胞は、培養中の細胞であってもよい。「植物組織」とは、植物中のまたは植物(「外植片」)から得られる分化組織、または未熟または成熟胚、種子、根、苗条、果実、塊茎、花粉、例えばクラウンゴールなどの腫瘍組織、およびカルスなどの培養中の植物細胞の様々な集合形態に由来する、未分化組織を意味する。種子中のまたは種子からの代表的な植物組織は、子葉、胚および胚軸である。したがって、本発明には、植物、植物部分、およびこれらを含む産物が含まれる。
【0298】
本明細書中に使用される場合、「種子」という用語は植物の「成熟種子」を指し、そしてそれは、収穫の準備ができているか、または、例えば、典型的に田畑で商業的に収穫されるなど、植物から収穫されたかのいずれかであるか、あるいは、受精後、ならびに種子の休眠に達する前かつ収穫前に植物で生じる「生育中の種子」として存在する。
【0299】
「遺伝子組み換え植物」という用語は、本明細書中に使用される場合、同一の種、変種または栽培品種の野生型植物中には見られない核酸構築物を含有する植物を指す。すなわち、遺伝子組み換え植物(形質転換植物)は、形質転換前には含有しなかった遺伝物質(導入遺伝子)を含有する。導入遺伝子は、植物細胞、または別の植物細胞、または非植物原料、または合成配列から得られ、またはそれに由来する、遺伝子配列を含んでもよい。典型的に、導入遺伝子は、例えば形質転換などによって、人為的操作によって植物に導入されるが、当業者は認識するようにあらゆる方法を使用し得る。遺伝物質は、好ましくは安定して植物のゲノム、好ましくは核ゲノムに組み込まれる。導入遺伝物質は、同種の天然配列を含んでなってもよいが、それは例えばアンチセンス配列などの再配置された順序、または異なる配置である。このような配列を含有する植物は、本明細書において「遺伝子組み換え植物」に含まれる。
【0300】
好ましい実施形態において、トランスジェニック植物は、それらの子孫が所望の表現型について分離しないように導入されたそれぞれおよびすべての遺伝子(導入遺伝子)についてホモ接合性である。トランスジェニック植物はまた、(単数もしくは複数の)導入された導入遺伝子についてヘテロ接合性、好ましくは、例えば、雑種種子から生育したF1子孫の場合などであってよい。斯かる植物は、当技術分野でよく知られている雑種強勢などの利点を提供することができる。
【0301】
本発明との関連において規定されるトランスジェニック植物は、遺伝子組み換え技術を使用して遺伝子を組み換えられたその植物の子孫を含み、ここで、該子孫は、着目の導入遺伝子を含む。斯かる子孫は、初代トランスジェニック植物の自家受精によって、または同じ種の別の植物と斯かる植物を交配することによって得てもよい。これは、一般的に、所望の植物または植物器官における、本明細書中に規定した少なくとも1つのタンパク質の産生を調節するためのものであろう。トランスジェニック植物部分としては、導入遺伝子を含む前記植物のすべての部分および細胞、例えば、培養組織、カルスおよびプロトプラストなどが挙げられる。
【0302】
トランスジェニック植物は、概ね、A. Slater et al., Plant Biotechnology - The Genetic Manipulation of Plants, Oxford University Press (2003), およびP. Christou and H. Klee, Handbook of Plant Biotechnology, John Wiley and Sons (2004)に記載されているものなどの当技術分野で知られている技術を用いて作製することができる。
【0303】
「非遺伝子組み換え植物」とは、組み換えDNA技術による遺伝物質導入によって遺伝子操作されていないものである。本明細書の用法では、「同質遺伝子植物と比較」という用語、または類似の語句は、ほとんどの特性において同一または同様であって、好ましくは遺伝子組み換え植物に対して同質遺伝子型または準同質遺伝子型であるが、対象導入遺伝子がない植物を指す。好ましくは、対応する非遺伝子組み換え植物は、対象遺伝子組み換え植物の祖先と同一栽培品種または変種であり、または構築物を欠いて「分離個体」と呼ばれることが多い同胞植物系統であり、または「空ベクター」構築物で形質転換された非遺伝子組み換え植物であってもよい、同一栽培品種または変種の植物である。「野生型」は、本明細書の用法では、本発明にしたがって改質されていない細胞、組織または植物を指す。野生型細胞、組織または植物を対照として使用して、本明細書に記載されるように改質された細胞、組織または植物について、外来性核酸の発現レベルまたは形質修飾の程度と性質を比較してもよい。
【0304】
本発明との関連において規定されるトランスジェニック植物は、遺伝子組み換え技術を使用して遺伝子を組み換えられたその植物の子孫を含み、ここで、該子孫は、着目の導入遺伝子を含む。斯かる子孫は、初代トランスジェニック植物の自家受精によって、または同じ種の別の植物と斯かる植物を交配することによって得てもよい。トランスジェニック植物部分としては、導入遺伝子を含む前記植物のすべての部分および細胞、例えば、培養組織、カルスおよびプロトプラストなどが挙げられる。
【0305】
本発明の実践において使用するために企図された植物には、単子葉植物および双子葉植物の両方が含まれる。標的植物には以下が含まれるが、これらに限定されない:穀物(例えば、コムギ、オオムギ、ライムギ、オートムギ、コメ、トウモロコシ、モロコシ、および関連作物);ブドウ;ビート(テンサイ、飼料ビート);梨果、核果、小果実(soft fruit)(リンゴ、ナシ、プラム、モモ、アーモンド、サクランボ、イチゴ、ラズベリー、ブラックベリー);マメ科植物(マメ、レンズマメ、エンドウマメ、ダイズ);油脂植物(セイヨウアブラナもしくは他のアブラナ属(Brassicas)、カラシナ、ケシ、オリーブ、ヒマワリ、ベニバナ、麻、ココナッツ、トウゴマ、カカオマメ、アメリカホドイモ);キュウリ植物(cucumber plant)(ペポカボチャ、キュウリ、メロン);繊維植物(綿、アマ、アサ、ジュート);柑橘類(オレンジ、レモン、グレープフルーツ、マンダリン);野菜(ホウレンソウ、レタス、アスパラガス、キャベツ、ニンジン、タマネギ、トマト、ジャガイモ、パプリカ);クスノキ科(アボカド、シナモン、カンフル);またはトウモロコシ、タバコ、ナッツ、コーヒー、サトウキビ、茶、ブドウ、ホップ、芝生、バナナおよび天然ゴム植物などの植物、ならびに観賞植物(花、灌木、広葉樹およびコニファーなどの常緑樹)。好ましくは、植物は、穀物用植物、より好ましくはコムギ、コメ、トウモロコシ、トリティカーレ、オートムギまたはオオムギ、より一層好ましくはコムギである。
【0306】
本明細書の用法では、「コムギ」という用語は、その祖先、ならびにその他の種との交雑によって生じるその子孫をはじめとする、コムギ属(Triticum)のあらゆる種を指す。コムギには、42本の染色体からなるAABBDDのゲノム構成を有する「六倍体コムギ」、および28本の染色体からなるAABBのゲノム構成を有する「四倍体コムギ」が含まれる。六倍体コムギとしては、コムギ(T.aestivum)、スペルトコムギ(T.spelta)、マカコムギ(T.macha)、密穂コムギ(T.compactum)、インド矮性コムギ(T.sphaerococcum)、バビロビコムギ(T.vavilovii)、およびそれらの種間交雑が挙げられる。六倍体コムギの好ましい種は、T.アエスティバム亜種アエスティバム(T. aestivum ssp. aestivum)(「ブレッドウィート」とも呼ばれる)である。四倍体コムギとしては、デュラムコムギ(T.durum)(本明細書中ではデュラムコムギ(durum wheat)またはリベットコムギ・デュラム亜種(Triticum turgidum ssp. durum)とも呼ばれる)、T.ジコッコイデス(T.dicoccoides)、エンマーコムギ(T.dicoccum)、ポーランドコムギ(T.polonicum)、およびそれらの種間交雑が挙げられる。これに加えて、「コムギ」という用語は、Aゲノムではウラルツコムギ(T.urartu)(T.uartu)、ヒトツブコムギ(T.monococcum)または野生型ヒトツブコムギ(T.boeoticum)、Bゲノムではクサビコムギ(Aegilops speltoides)、Dゲノムではタルホコムギ(T.tauschii)(Aegilops squarrosaまたはAegilops tauschiiとしてもまた知られている)などの六倍体または四倍体コムギ種の予測される祖先を含む。特に好ましい前駆細胞は、Aゲノムのものであり、より一層好ましくは、Aゲノム前駆細胞がヒトツブコムギ(T.monococcum)である。本発明で使用するためのコムギ栽培品種は、上に列挙した種のいずれかに属してもよいが、これに限定されるものではない。ライムギ(Secale cereale)などのライコムギ(Triticale)をはじめとするが、これに限定されるものではない非コムギ種との有性交雑中で、親としてコムギ種を使用して、従来技術によって生成される植物もまた包含される。
【0307】
本明細書の用法では、「オオムギ」という用語は、その祖先、ならびにその他の種との交雑によって生じるその子孫をはじめとする、オオムギ属(Hordeum)のあらゆる種を指す。植物は、例えばオオムギ(Hordeum vulgare)の株または栽培品種または変種などの商業的に栽培されるオオムギ種であり、または穀物の商業生産に適することが好ましい。
【0308】
細胞へ遺伝子を直接送達する4つの一般的な方法は、既に記載されている:(1)化学的方法(Graham et al., 1973);(2)物理的方法、例えばマイクロインジェクション(Capecchi, 1980)、エレクトロポレーション(例えば、WO87/06614、US5,472,869、同第5,384,253、WO92/09696およびWO93/21335参照)、および遺伝子銃(例えば、US4,945,050およびUS5,141,131参照)など;(3)ウイルスベクター(Clapp, 1993; Lu et al., 1993; Eglitis et al., 1988);および(4)受容体媒介メカニズム(Curiel et al., 1992; Wagner et al., 1992)。
【0309】
使用することのできる加速方法には、例えば、微粒子銃(microprojectile bombardment)などが含まれる。植物細胞に形質転換核酸分子を送達する方法の1つの例は、微粒子銃である。この方法は、Yang et al., Particle Bombardment Technology for Gene Transfer, Oxford Press, Oxford, England (1994)により概説されている。非生物学的粒子(microprojectile)は核酸で被覆し、推進力により細胞に送達され得る。例示的な粒子には、タングステン、金、白金などからなるものが含まれる。単子葉植物を再現可能に形質転換する有効な手段であることに加え、微粒子銃の特定の利点は、プロトプラストの単離も、アグロバクテリウム感染の感受性も必要ない点である。本発明による使用に適切な粒子送達系は、Bio-Rad Laboratoriesから入手可能なヘリウム加速PDS-1000/He銃である。照射(bombardment)のため、未熟胚または誘導標的細胞、例えば未熟胚からの胚盤またはカルスなど、を固体培養培地に配置してもよい。
【0310】
他の代わりの実施形態で、プラスミドを安定に形質転換することができる。高等植物におけるプラスミド形質転換について開示された方法には、選択マーカーを含有するDNAの粒子銃送達、および相同な組み換えを介したプラスミドゲノムに対する該DNAの標的化が含まれる(US5,451,513、US5,545,818、US5,877,402、US5,932479、およびWO99/05265)。
【0311】
アグロバクテリウム媒介導入(Agrobacterium-mediated transfer)は、植物細胞への遺伝子導入に幅広く適用可能な系である。なぜなら、DNAを植物組織全体に導入でき、これによりプロトプラストからインタクトな植物を再生する必要を回避できるためである。DNAを植物細胞に導入するためのベクターを組込んでいるアグロバクテリウムに媒介された植物の使用は、当技術分野でよく知られている(例えば、US5,177,010、US5,104,310、US5,004,863、US5,159,135参照)。さらに、T-DNAの組み込みは、結果的に再配列(rearrangement)がほとんどない比較的正確な工程である。導入するDNA領域は境界配列により確定され、介在DNAは通常、植物ゲノムに挿入される。
【0312】
アグロバクテリウム形質転換ベクターは、大腸菌およびアグロバクテリウムで複製することができ、記載されたように簡便な操作を可能にする(Klee et al., Plant DNA Infectious Agents, Hohn and Schell, (editors), Springer-Verlag, New York, (1985): 179-203)。さらに、アグロバクテリウム媒介遺伝子導入用ベクターにおける技術的進歩は、ベクターでの遺伝子および制限部位の配列を改善して遺伝子をコードする様々なポリペプチドを発現できるベクターの構築を容易にした。記載されたベクターは、遺伝子をコードする挿入ポリペプチドの直接発現のためのプロモーターおよびポリアデニル化部位に隣接された簡便なマルチリンカー領域を有し、本目的に適切である。さらに、病原性を有する(armed)および病原性の無い(disarmed)Ti遺伝子の両方を含有するアグロバクテリウムを、形質転換に使用することができる。アグロバクテリウム媒介形質転換が効果的であるような植物種では、これは、遺伝子導入の容易および明確な性質のため最適な方法である。
【0313】
アグロバクテリウム形質転換方法を用いて形成されたトランスジェニック植物は、典型的には1つ染色体に単一の遺伝子座を含有する。このようなトランスジェニック植物は、付加された遺伝子に対して半接合性であると言うことができる。付加された構造遺伝子に対してホモ接合性であるトランスジェニック植物、すなわち、2つの付加された遺伝子を含有し、1つの遺伝子が染色体対の各染色体において同じ座にあるトランスジェニック植物がより好ましい。ホモ接合性トランスジェニック植物は、単一の付加された遺伝子を含有する、独立した分離固体のトランスジェニック植物を有性交配(自殖)させ、産生されたいくつかの種子を発芽させ、得られた植物を目的遺伝子について分析することにより得ることができる。
【0314】
2つの異なるトランスジェニック植物は、2つの独立に分離する外因性遺伝子を含有する子孫を産生するために交配することもできることも理解されるべきである。適切な子孫の自殖は、両方の外因性遺伝子に対してホモ接合性である植物を産生するこができる。親植物の戻し交配および非トランスジェニック植物との異系交配も、栄養繁殖のように企図される。異なる特質および作物に一般に使用される他の繁殖方法の記載は、Fehr, Breeding Methods for Cultivar Development, J. Wilcox (editor) American Society of Agronomy, Madison Wis. (1987)に見出すことができる。
【0315】
植物プロトプラストの形質転換は、リン酸カルシウム沈降、ポリエチレングリコール処理、エレクトロポレーション、およびこれらの処理の組合せに基づく方法を用いて達成することができる。異なる植物種に対するこれらの系の適用は、プロトプラストからこの特定の植物株を再生する能力に依存する。プロトプラストから穀類を再生するための例示的な方法が記載されている(Fujimura et al., 1985; Toriyama et al., 1986; Abdullah et al., 1986)。
【0316】
細胞形質転換の他の方法も使用することができ、および花粉への直接DNA導入、植物の生殖器官へのDNAの直接導入、または未熟胚の細胞へのDNA直接注入とこれに続く乾燥胚の再水和による植物への直接DNA導入が含まれるが、これらに限定されない。
【0317】
単一の植物プロトプラスト形質転換体からまたは様々な形質転換外植片からの再生、発生、および栽培は、当技術分野でよく知られている(Weissbach et al., Methods for Plant Molecular Biology, Academic Press, San Diego, (1988))。この再生および成長過程は、典型的には形質転換された細胞の選択ステップ、すなわち胚発達の通常の段階から根の付いた小植物段階を通じてこれらの個別化された細胞を培養することが含まれる。トランスジェニック胚および種子は、同様に再生される。得られた根の付いたトランスジェニック芽は、この後、土壌などの適切な植物成長培地に植えられる。
【0318】
外来外因性遺伝子を含有する植物の発生または再生は、当技術分野でよく知られている。好ましくは、再生植物は、ホモ接合性トランスジェニック植物を提供するため自家授粉される。さもなければ、再生植物から得られた花粉は、農学的に重要な系の種子増殖された植物に交配される。反対に、これらの重要な系の植物からの花粉は、再生植物を授粉するのに使用される。所望の外因性核酸を含有する本発明のトランスジェニック植物は、当業者によく知られた方法を用いて栽培される。
【0319】
主にアグロバクテリウム・ツメファシエンスの使用による双子葉植物を形質転換し、トランスジェニック植物を得る方法は、綿(US5,004,863、US5,159,135、US5,518,908);ダイズ(US5,569,834、US5,416,011);アブラナ属(US5,463,174);ピーナッツ(Cheng et al., 1996);およびエンドウマメ(Grant et al., 1995)に関して公表されている。
【0320】
外因性核酸の導入により植物に遺伝的多様性を導入するための、コムギおよびオオムギなどの穀物植物の形質転換方法、ならびにプロトプラストまたは未熟植物胚からの植物の再生方法は、当技術分野でよく知られている。例えば、CA2,092,588、AU61781/94、オーストラリア特許第667939、US6,100,447、WOPCT/US97/10621、US5,589,617、US6,541,257参照、および他の方法は、特許明細書WO99/14314に記載されている。好ましくは、トランスジェニックコムギまたはオオムギ植物は、アグロバクテリウム・ツメファシエンス媒介形質転換手順により産生される。所望の核酸構築物を保有するベクターは、組織培養植物または外植片、またはプロトプラストなどの適切な植物系の再生可能なコムギ細胞に導入することができる。再生可能なコムギ細胞は、好ましくは未熟胚の胚盤、成熟胚、これら由来のカルス、または分裂組織由来である。
【0321】
トランスジェニック細胞および植物中のトランス遺伝子の存在を確認するため、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅またはサザンブロット分析を、当業者に知られた方法を用いて実施することができる。トランス遺伝子発現産物は、産物の性質に応じて任意の種々の方法で検出することができ、およびウエスタンブロットおよび酵素アッセイを含む。タンパク質発現を定量し、異なる植物組織における複製を検出するのに、1つの特に有用な方法は、GUSなどのレポーター遺伝子を使用することである。ひとたびトランスジェニック植物が得られると、所望の表現型を有する植物組織または部分を産生するために育成することができる。植物組織または植物部分は収穫することができ、および/または種子は採取することができる。種子は、所望の特性を有する組織または部分を有する別の植物を育成するための供給源として役立ち得る。
【0322】
「ポリメラーゼ連鎖反応」(「PCR」)は、「上流」および「下流」プライマーから成る「プライマーの対」または「プライマーのセット」、および重合の触媒、例えば、DNAポリメラーゼ、典型的には、熱的に安定なポリメラーゼ酵素を使用して、標的ポリヌクレオチドで複製コピーを作製する反応である。PCRのための方法は、当技術分野で知られており、例えば、「PCR」(M.J. McPherson and S.G Moller (editors), BIOS Scientific Publishers Ltd, Oxford, (2000))において教示される。PCRは、本発明のポリヌクレオチドを発現する植物細胞から単離されたmRNAを逆転写することから得られるcDNA上で行われ得る。しかしながら、PCRが植物細胞から単離されたゲノムDNA上で行われる場合、それは、概ね、より容易であろう。
【0323】
プライマーは、標的配列に配列特異的な様式でハイブリダイズし、PCRの間に伸長することが可能であるオリゴヌクレオチド配列である。単位複製配列またはPCR生成物またはPCR断片または増幅生成物は、プライマーおよび標的配列の新しく合成されたコピーを含む伸長生成物である。多重PCR系は、1つを超える単位複製配列の同時生成をもたらす複数セットのプライマーを含む。プライマーは、標的配列と完全に一致するものであってもよいし、特定の標的配列内に制限酵素または触媒核酸認識/切断部位の導入をもたらし得る内部のミスマッチ塩基を含むものであってもよい。また、プライマーは、単位複製配列の捕捉または検出を容易にするために、さらなる配列を含む、および/または修飾もしくは標識されたヌクレオチドを含むものであってもよい。DNAの熱変性、相補配列へのプライマーのアニーリング、ポリメラーゼによるアニーリングされたプライマーの伸長の反復サイクルは、標的配列の指数関数的に増幅をもたらす。標的または標的配列または鋳型という用語は、増幅される核酸配列を指す。
【0324】
ヌクレオチド配列の直接配列決定のための方法は、当業者によく知られており、例えば、Ausubel et al.,(上記参照)およびSambrook et al.,(上記参照)に見出され得る。配列決定は、任意の適切な方法、例えば、ジデオキシ配列決定、化学的配列決定、またはその変形によって実施され得る。直接配列決定は、特定配列のいかなる塩基対の変異も判定するという利点を有する。
【0325】
植物/穀物のプロセシング
本発明の穀粒/種子、好ましくは穀物粒、又は本発明の他の植物の部分は、当該分野で公知の何れかの技術を使用して食品成分、食品又は非食品を産生するためにプロセスされ得る。
【0326】
一実施形態において、製品は、例えば、超微細粉砕された全穀粒粉末、又は穀粒の約100%から作られた粉末などの全穀粒粉末である。全穀粒粉末は、精製された粉末構成成分(精製された粉末又は精製された粉末)及び粗画分(超微粉砕された粗画分)を含む。
【0327】
精製された粉末は、例えば、洗浄された穀粒、例えば、コムギまたはオオムギ粒など、を粉砕及びボルティング(bolting)することによって、調製される粉末であり得る。精製された粉末の粒のサイズは、「212マイクロメートル(U.S.A.ワイヤー70)」と指定された織りワイヤークロスの開口よりも大きくない開口部を有する布を98%以上通過する粉末として記載される。粗い画分は、糠及び胚芽の少なくとも1つを含む。例えば、胚芽は穀粒のカーネル内にある植物の胚である。胚芽は、脂質、繊維、ビタミン、タンパク質、ミネラル及び植物栄養素(フラボノイドなど)を含む。糠はいくつかの細胞層を含み、脂質、繊維、ビタミン、タンパク質、ミネラル及びフラボノイドなどの植物栄養素の有意な量を有する。さらに、粗画分は、脂質、繊維、ビタミン、タンパク質、ミネラル及びフラボノイドなどの植物栄養素も含む糊粉層を含み得る。糊粉層は、技術的に胚乳の一部と考えられているが、糠と同じ特徴の多くを示すため、典型的には、粉砕プロセス中に糠及び胚芽とともに除去される。糊粉層は、タンパク質、ビタミン及びフェルラ酸などの植物栄養素を含む。
【0328】
さらに、粗画分は、精製した粉末と混合され得る。粗画分は、精製された粉末と混合され得、全穀粒粉末を形成することができ、故に精製された粉末と比較して、栄養価、繊維含量及び抗酸化能力が向上した全穀粒粉末を提供する。例えば、粗画分又は全穀粒粉末は、焼成製品、スナック製品、及び食品製品において精製された又は全穀粒粉末を置き換えることで、様々な量で使用され得る。本発明の全穀粒粉末(すなわち、超微粉砕全穀粒粉末)は、それら自家製の焼成製品に使用するために消費者に直接販売されてもよい。例示的な実施形態において、全穀粒粉末の造粒プロファイルは、全穀粒粉末の重量で98%の粒子が、212マイクロメートル未満であるようなものである。
【0329】
さらなる実施形態において、全穀粒粉末及び/又は粗画分の糠及び胚芽中に見出される酵素は、全穀粒粉末及び/又は粗画分を安定化させるために不活性化される。安定化は、水蒸気、熱、放射線、又は他の処理を用いて糠及び胚芽層に見出される酵素を不活性化するプロセスである。安定化された粉末は、その調理特性を保持し、及び長い貯蔵寿命を有する。
【0330】
さらなる実施形態において、全穀粒粉末、粗画分、又は精製された粉末は、食品の構成要素(成分)であってもよく、食品を産生するために使用されてもよい。例えば、食品製品は、ベーグル、ビスケット、ブレッド、バン、クロワッサン、餃子、イングリッシュマフィン、マフィン、ピタブレッド、クイックブレッド、冷凍/冷凍生地製品、生地、焼いた豆、ブリトー、チリ、タコ、タマレ、トルティーヤ、ポットパイ、インスタントシリアル(ready to eat cereal)、インスタント食品、詰め物、電子レンジ食品、ブラウニー、ケーキ、チーズケーキ、コーヒーケーキ、クッキー、デザート、ペストリー、スイートロール、キャンディーバー、パイクラスト、パイフィリングベビーフード、ベーキングミックス、バター、パン粉、グレービーミックス、肉増量剤、肉代用品、シーズニングミックス、スープミックス、グレービー、ルー、サラダドレッシング、スープ、サワークリーム、ヌードル、パスタ、ラーメン、チョウメイヌードル、ローメインヌードル、アイスクリーム含有物、アイスクリームバー、アイスクリームコーン、アイスクリームサンドイッチ、クラッカー、クルトン、ドーナツ、エッグロール、押出スナック、果物及び穀粒バー、電子レンジ用スナック製品、栄養バー、パンケーキ、パーベイクベーカリー製品、プレッツェル、プリン、グラノーラベースの製品、スナックチップ、スナック食品、スナックミックス、ワッフル、ピザクラスト、動物用食品又はペットフードであり得る。
【0331】
別の実施形態において、全穀粒粉末、精製された粉末、又は粗画分は、栄養補助食品の構成成分であり得る。例えば、栄養補助食品は、1つ又は複数の追加成分を含む食物に添加される製品であってもよく、典型的に、ビタミン、ミネラル、ハーブ、アミノ酸、酵素、抗酸化物質、ハーブ、スパイス、プロバイオティクス、抽出物、プレバイオティックス及び繊維を含む。本発明の全穀粒粉末、精製された粉末、又は粗画分は、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、酵素、及び繊維を含む。例えば、粗画分は、健康に良い食事に不可欠なB-ビタミン類、セレン、クロム、マンガン、マグネシウム、酸化防止剤などの必須栄養素のみならず高濃度の食物繊維を含む。例えば、22gの本発明の粗画分は、個人の一日当たりの繊維推奨消費量の33%を供給する。栄養補助食品は、個人の全体的な健康を助ける既知の栄養成分が含まれていてもよく、例は、限定されないが、ビタミン、ミネラル、他の繊維成分、脂肪酸、抗酸化物質、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、ルテイン、リボース、オメガ-3脂肪酸、及び/又は他の栄養成分を含む。栄養補助剤は、限定されないが、以下の形態で供給され得る:インスタント飲料ミックス、飲める状態になっている飲料(ready-to-drink beverages)、栄養バー、ウエハース、クッキー、クラッカー、ジェルショット、カプセル、チューズ、チュアブルタブレット、及び丸剤。一実施形態は、風味の付いたシェイク又はモルトタイプ飲料の形態で繊維栄養補助剤を供給し、この実施形態は、子供のための繊維補助剤として特に魅力的であり得る。
【0332】
さらなる実施形態において、粉砕プロセスを使用して、複数の穀粒の粉末又は複数の穀粒の粗画分を作製することが出来る。例えば、穀粒の1つのタイプ由来の糠及び胚芽は、粉砕されてもよく、及び他のタイプの穀物の粉砕された胚乳又は全穀粒穀物粉末とブレンドされてもよい。あるいは、穀粒の1つの種類の糠及び胚芽を粉砕してもよく、及び他のタイプの穀粒の粉砕された胚乳又は全穀粒粉末とブレンドされてもよい。本発明は、1つ又は複数の糠、胚芽、胚乳、及び1つ又は複数の穀粒の全穀粒粉末の何れかの組合せを混合することを包含することが意図される。この複数の穀粒アプローチは、特別注文の粉末を作製し、複数のタイプの穀物粒の品質及び栄養成分を利用することで、1つの粉末を作製することが出来る。
【0333】
本発明の全穀粒粉末、粗画分及び/又は穀粒製品は、当該技術分野で知られている何れかの粉砕方法によって製造され得ると考えられる。例示的な実施形態は、穀粒の胚乳、糠及び胚芽を別々の流れに分離することなく、単一の流れで穀粒を粉砕することを含む。洗浄及びテンパー(temper)された穀粒は、ハンマーミル、ローラーミル、ピンミル、インパクトミル、ディスクミル、エアアトリションミル、ギャップミル、及び同様のものなどの第1の通過グラインダーに運ばれる。粉砕後、穀粒は排出され、シフターに運ばれる。さらに、本発明の全穀粒粉末、粗画分及び/又は穀粒製品は、発酵、インスタント化、押出し、カプセル化、トースト、焙煎、又は同様のものなどの多数の他のプロセスによって、改変又は増強され得ることが意図される。
【0334】
麦芽製造
本発明によって提供された麦芽ベースの飲料には、開始物質の一部または全体として麦芽を使用することによって製造されるアルコール飲料(蒸留飲料を含む)および非アルコール飲料が含まれる。例としては、ビール、発泡酒(低麦芽ビール飲料)、ウィスキー、低アルコールの麦芽ベースの飲料(例えば、1%未満のアルコールを含む麦芽ベースの飲料)および非アルコール飲料が含まれる。
【0335】
麦芽製造は、制御された浸漬および発芽に続き、穀粒、例えばオオムギおよびコムギ穀粒など、を乾燥させる工程である。この連続した事象は、穀粒の改変をもたらす多くの酵素の合成にとって重要であり、主に死滅した内胚乳細胞壁をばらばらにし、穀粒の栄養素を移動させる工程である。後に行う乾燥工程において、香りおよび色を、化学的褐変反応によって産生させる。麦芽の第一の使用は飲料製造のためであるが、他の工業的工程においても利用され、例えば、パン・菓子製造業において酵素源として、食品製造業において芳香剤および着色剤として、例えば、麦芽もしくは麦芽粉として、または間接的に麦芽シロップなどとして利用される。
【0336】
一実施態様において、本発明は、麦芽組成物を製造する方法に関する。方法は、好ましくは、以下のステップ:
(i)本発明の穀粒、例えばオオムギまたはコムギ穀粒を準備し、
(ii)前記穀粒を浸漬し、
(iii)浸漬した穀粒を予め決めた条件下で発芽させ、および
(iv)前記発芽した穀粒を乾燥させること、
を含む。
【0337】
例えば、麦芽は、Hoseney(Principles of Cereal Science and Technology, Second Edition, 1994: American Association of Cereal Chemists, St. Paul, Minn.)において記載された任意の方法によって製造することができる。しかしながら、麦芽を製造するための任意の他の適した方法(例えば、これらに限定されないが、麦芽を焙煎する方法を含む、特殊麦芽の製造方法)も、本発明とともに使用することができる。
【0338】
麦芽は、ビール製造のために主に使用されるが、蒸留酒の製造にも使用される。ビール製造は、麦芽汁製造、主発酵および二次発酵、ならびに後処理を含む。最初に、麦芽を粉砕し、水へと攪拌し、加熱する。この「マッシング」の間に、麦芽製造によって活性化した酵素が、穀粒のスターチを、発酵可能な糖へと分解する。産生した麦芽汁を浄化し、酵母を加え、混合物を発酵させ、後処理を実施する。
【0339】
ニトロゲナーゼ複合体の検出
ニトロゲナーゼ複合体の検出は、NifDKタンパク質複合体とNifHタンパク質との間の相互作用の検出を可能にする任意の方法によって実施される。NifDKタンパク質複合体とNifHタンパク質との間の相互作用を検出するために好適な方法としては、免疫共沈降、アフィニティーブロッティング、プルダウン、FRETなどを含めた、タンパク質-タンパク質相互作用を検出するための、当該技術分野で知られている任意の方法が挙げられる。
あるいは、ニトロゲナーゼ複合体の検出は、得られたニトロゲナーゼ複合体の活性を計測することによって実施できる。
ニトロゲナーゼ活性を計測するのに好適な方法としては、電子がNifHタンパク質からNifDKタンパク質複合体まで移動する、アンモニアへの二窒素の酵素的還元を検出するために、当該技術分野で知られている任意の方法が挙げられる。例えば、窒素固定活性は、アセチレン還元アッセイによって推定されることができる。簡単に言えば、この技術は、ニトロゲナーゼ複合体が三重結合基質を還元する能力を使用する間接法である。ニトロゲナーゼ酵素は、アセチレン(C22)をエチレン(C24)に還元する。両方のガスは、ガスクロマトグラフィーを使用して定量化できる。窒素固定はまた、水素放出アッセイで計測されてもよい。H2は、N2固定の必須の副産物である。そのため、ニトロゲナーゼ活性の間接的測定は、フロースルー型H2センサーまたはクロマトグラフを使用したガス流中のH2濃度を定量化することによって得られる。
【0340】
2固定の検出
窒素固定は、1)植物-土壌系の合計Nの純増加を測定し(N出納法)、2)土壌から吸収した画分とN2固定から誘導された画分に植物Nを分離し(N差し引き、15N天然存在比、15Nアイソタイプ希釈およびウレイド法)、および3)ニトロゲナーゼの活性を計測すること(アセチレン還元および水素放出アッセイ)、によって推定できる。
【実施例0341】
実施例1
材料と方法
一過性発現系による植物細胞における遺伝子発現
遺伝子は、Wood et al., (2009)によって本質的に記載されたように、一過性発現系を使用して植物細胞内で発現された。強力な、構成的35Sプロモーターによって植物細胞内で発現されるコード領域を含有するバイナリーベクターを、アグロバクテリウム・ツメファシエンス株AGL1またはGV3101に導入した。p19ウイルス性サイレンシング抑制因子の発現のための、キメラバイナリーベクター、35S:p19を、WO2010/057246に記載のように、AGL1内に別々に導入した。組み換えA.ツメファシエンス(A. tumefaciens)細胞を、50mg/Lのカナマイシンおよび50mg/Lのリファンピシンを補足したLBブロス中、28℃にて定常期まで培養した。次に、細菌を、5000g、室温にて5分間遠心分離することによってペレット化し、その後、10mMのMES pH5.7、10mMのMgCl2および100μMのアセトシリンゴンを含有する浸潤バッファー中にOD600=1.0に再懸濁した。次に、細胞を、振盪しながら28℃にて3時間インキュベートし、その後、OD600を計測し、そして、OD600=0.125の終濃度に達するように求められる、ウイルス性抑制因子構築物35S:p19を含有しているそれぞれの培養物の一定量を新しいチューブに加えた。終量を、浸潤バッファーで調整した。次に、葉に、培養混合物を浸潤させ、そして、浸潤後に、植物を、典型的にさらに3~5日間培養し、その後、リーフディスクを分析のために採収した。
組み合わせで、着目の2つ以上の遺伝子の過剰発現のために、各付加遺伝子を、A.ツメファシエンス株に別々に導入し、そして、先と同じように培養した。各細菌株がOD600=0.125の終濃度になるように、細菌懸濁液を混合した。ウイルス性サイレンシング抑制因子35S:p19をコードする遺伝子を含含有する細菌株を、同じ濃度にてすべての混合物中に含んだ。例えば、一過性リーフアッセイで4つの遺伝子を発現するため、およびウイルス性抑制因子構築物を含む、浸潤混合物の最終的なOD600は5×0.125=0.625ユニットであった。一過性のアッセイ形式での植物細胞内における別々のT-DNAベクターからのそれぞれ少なくとも5つの遺伝子の同時過剰発現は、以前に実証された(Wood et al., 2009)。
【0342】
葉組織からのタンパク質抽出
T-DNA導入後に植物細胞内で産生されたポリペプチドを分析するために、ニコチアナ・ベンサミアナの葉サンプルを、(別段明記しない限り)浸潤5日後に浸潤領域から約2×2cmの葉ピースを摘出することによって採取した。これらを、液体窒素中ですぐに冷凍し、2mLのエッペンドルフチューブ内で粉末に粉砕した。300μLのバッファーを各粉末サンプルに追加した。該バッファーは、125mMのTris HCl pH6.8、4%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、20%のグリセロール、60mMのジチオスレイトール(DTT)を含んだ。サンプルを、95℃にて3分間加熱し、その後、12000gにて2分間遠心分離した。抽出したポリペプチドを含む上清を取り出し、そして、検出すべきポリペプチドの予想レベルに依存して、10μL~100μLをウエスタンブロッティングに使用した。
【0343】
ウエスタンブロット分析
抽出したサンプル中のポリペプチドを、200Vにて約1時間にわたりNuPAGE Bis Trisの4~12%ゲル(ThermoFisher)によるSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって分離した。分離したポリペプチドを、供給業者の取扱説明書(Thermofisher)にしたがって半乾燥装置を使用して各ゲルからPVDF膜に移した。ブロッティング後に、ゲルを、クーマシー染色で1時間染色し、次に、保持されているタンパク質の視覚化のために水ですすいで、ポリペプチドの移動があったことを示した。結合したポリペプチドを有する膜を、4℃にて一晩、5%の脱脂乳を含有するTBSTバッファー中でブロッキングした。TBSTバッファーはそうである。抗HAおよび抗FLAG抗体をSigmaから購入した。抗GFP抗体は、Leila Blackman(Australian National University, Canberra, Australia)から贈られた。抗体を、5%の脱脂乳の入ったTBST中に1:5000希釈にて加え、そして、膜を、溶液中で2時間インキュベートした。次に、膜をTBSTで3×20分間洗浄した。二次抗体、Immun-Star Goat Anti-Mouse(GAM)-HRPコンジュゲート(Biorad)を、5%の脱脂乳の入ったTBST中で1:5000にて加え、そして、その膜を1時間インキュベートし、続いてその膜をTBSTで3×15分間洗浄した。二次抗体検出のために、Amersham ECL試薬を使用し、そして、膜を、X線現像装置またはAmersham画像表示装置(Amersham)のいずれかにより現像した。
【0344】
プロトプラストの調製
葉組織からプロトプラストを単離するために、次のように、プロトコールを、Breuers et al., (2012)から適合させた。浸潤(3dpi)の3日後に、浸潤葉の2cm四方の領域を摘出し、細かく切って、5mlのシリンジに移した。1.5%(w/v)のセルラーゼR-10、0.4%(w/v)のマクロザイムR-10、0.4Mのマンニトール、20mMのKCl、20mMのMES pH5.6、10mMのCaCl2および0.1%(w/v)のBSAを含有する2mlの消化溶液を添加し、そして、軽度の真空を手動で加えて、葉組織の細胞間隙内への該溶液の侵入を容易にした。溶液と葉ピースを2mlのエッペンドルフチューブに移し、そして、その混合物を室温にて1時間インキュベートした。手動でチューブを転倒することによって、得られたプロトプラストを緩やかに抽出した。葉破片は、鉗子を使用して取り除き、そして、プロトプラストを沈殿させ、その後、その溶液を、画像化溶液(0.4Mのマンニトール、20mMのKCl、20mMのMES pH5.6、10mMのCaCl2、0.1%のBSA)で置換した。
【0345】
共焦レーザー走査顕微鏡とミトコンドリア染色
プロトプラストを、40×水液対物レンズを備えた正立Leica共焦レーザ走査顕微鏡を使用して画像化した。GFPを、488nmにて励起させ、そして、発光を499~535nmにて記録した。ミトコンドリアを、MitoTrackerR Red CMXRos(ThermoFisher Scientific)の100nM溶液を使用して10~20分間染色した。MitoTrackerR Red CMXRosを、561nmにて励起させ、そして、発光を570~624nmにて記録した。
【0346】
RNA抽出、cDNA合成、および分析
アグロバクテリウムを浸潤させたN.ベンサミアナの葉細胞からRNAを抽出するために、そして、約2×2cmの面積の葉ピースを、液体窒素で冷凍し、粉末にすりつぶし、そして、サンプルごとに500μlのTrizolバッファー(Thermo Fisher Scientific)を添加した。これに続いて、これらの変更点:クロロホルム抽出を反復した、およびRNAを37℃にて溶解した、を除いて、Trizol供給業者の取扱説明書にしたがった。抽出したRNAを、RQ1 DNAse(Promega)で処理して、すべての抽出DNAを取り除いた。次に、RNA調製物を、Plant RNAeasyカラム(Qiagen)を使用してさらに精製した。実施するときには、cDNA合成を、オリゴdTプライマーを用いて、供給業者のプロトコールにしたがって、Superscript III逆転写酵素(Thermo Fisher Scientific)を使用して実施した。それぞれのRNAサンプルのRT-PCR分析において、3回の別々のcDNA合成反応を実施した。20μlのcDNA反応物を、ヌクレアーゼ不含水中で20倍希釈した。qRT-PCRを、Qiagen rotor gene Q real-time PCR装置により実施した。9.6μlのそれぞれのcDNAを、20μlの最終反応容量の、10μlの2×sensifast no ROX SYBR Taq(Bioline)、ならびに0.4μlの、それぞれ10μmolでの順方向および逆方向プライマーに添加した。(基準および特定の遺伝子の両方に関する)すべてのqPCR反応を、以下のサイクル条件:95℃/5分で1サイクル、95℃/15秒、60℃/15秒および72℃/20秒で45サイクル、のもとで三連で実施した。蛍光を72℃ステップで計測した。次に、55℃~99℃の融解サイクルを実施した。構成的に発現されているN.ベンサミアナGADPH mRNAの対照増幅を、rotor遺伝子ソフトウェアパッケージの比較定量化プログラムを使用して遺伝子発現を正規化するために使用した。三連アッセイの平均を表す、3つのcDNAの各セットの値を平均し、標準誤差(SEM)の計算を可能にした。
【0347】
タンデム質量分光分析
浸潤N.ベンサミアナ組織を、液体N2下で粉砕し、次に、2mLのエッペンドルフチューブ内の50mMのTris HCL pH7.5、1mMのEDTA、150mMのNaCl、0.2%のSDS、10%のグリセロール、5mMのDTT、0.5mMのPMSFおよび1%の植物用プロテアーゼインヒビターカクテル(Sigma、カタログ番号P9599)中でRetsch tissue-lyserを使用して処理した。タンパク質抽出物を、遠心分離によって澄んだ状態にし、そして、その上清を、アガロースビーズ(Sigma、カタログ番号A2095)と複合化したモノクローナル抗HA抗体との一晩インキュベーションのための入力物としてそのまま使用した。非結合タンパク質を、150mMのTris HCL pH7.5、5mMのEDTA、150mMのNaCl、0.1%のTriton X-100、5%のグリセロール、5mMのDTT、0.5mMのPMSFおよび1%のプロテアーゼインヒビターカクテルを用いた一連の洗浄で取り除いた。結合タンパク質を、95℃にて10分間、Laemmliバッファー(50mMのTris HCl、pH6.8、2%(w/v)SDS、0.1%(w/v)のブロモフェノールブルー、10%(v/v)のグリセロール、100mMのDTT)中でビーズをインキュベートすることによって溶出した。入力物および免疫沈降タンパク質サンプルを、SDS-PAGEによって分離し、そして、融合ポリペプチド(MTP::NifH::HA)を含有するゲル領域を、複製ゲルからの同時ウエスタン分析によって決定した。融合ポリペプチドを含有する領域を、摘出し、ゲル内トリプシン分解で処理し、そして、トリプシン分解物を、Agilent Q-TOF 6550質量分析計に連結されたAgilent Chip Cubeシステムを使用したタンデム質量スペクトル解析によって分析した(Campbell et al., 2014)。例えば、添加したトリプシンや角質素などの一般的な混入物からのトリプシンペプチドから得られる質量スペクトルを決定し、その後、残りの質量スペクトルデータを、15ppmの前駆体質量寛容性、50ppmの産物質量寛容性、デフォルトQ-TOFスコアリングおよびストリンジェントデフォルト「オートバリデーション」設定を用いたSpectrumMillソフトウェア(Agilent Rev B.04.01.141SP1)を使用した、HA配列に加え、NCBI(データベース番号10/3/2015)のニコチアナ種からのすべてのタンパク質配列を含有するデータベースに対して検索するために使用した。アクリルアミドによるシステイン残基の修飾は、必要な修飾であり、そして、メチオニンの酸化を多様な修飾にした。最初に、トリプシン切断を必要とし、そして、最大2つの誤った切断を許容した。ペプチドマッチのバリデーション後に、非トリプシン切断を許容する残りの未合致スペクトルを用いて、検索を繰り返した。
【0348】
分子モデリングに使用したソフトウェア
すべての相同モデルを、Accelrys Discovery Studio3.5に実装されたMODELLERプログラム(Sali and Blundell, 2013)を使用して構築した。相同モデルを築き上げるのに好適な鋳型を、Brookhaven Protein Databankに対してBLAST検索を使用して同定した。すべての配列アラインメントを、Discovery Studio3.5に実装されたClustalWアルゴリズム(Sali and Blundell, 2013)を使用して実施した。すべての分子動力学シミュレーションを、Amber12を用いて実施した。
【0349】
アゾトバクター・ビネランジーの形質転換
プラスミドを、Dos Santos (2011)の方法にしたがってアゾトバクター・ビネランジーに形質転換した。簡単に言えば、A.ビネランジーDJ1271を、DMSOストックからモリブデートを欠く固形Burk培地にぶつけ、そして、さらなる時間をかけて継代培養して、DMSO夾雑物から細胞を取り出した。白金耳量の細胞を、モリブデートを欠いている50mLの変法Burk培地に接種するのに使用し、そして、125mLの三角フラスコ内に鉄を加えた。培養物を、160rpmにて振盪しながら28℃にて20~24時間インキュベートした。1ngの所望のプラスミドDNAを、コンピテント細胞の50μLのアリコートに添加し、そして、室温にて20分間インキュベートした。次に、細胞-DNA混合物を、3.8mLの変法Burk培地に添加し、そして、160rpmで振盪しながら28℃にて24時間回復した。回復細胞のアリコートを、6μg/mLのカナマイシンおよび20μg/mLのアンピシリンを含有した固形変法Burk培地上で平板培養して、pMMB66EHおよびその誘導体の保持体を選択した。プレートを、28℃にて3~5日間インキュベートした。単一コロニーを、固形の変法Burk培地上で再継代して、単一コロニー単離株を得た。アンピシリン耐性を保有した再継代単離株を、DMSOストックの調製および追加試験のための固形の変法Burk培地の接種に使用した。
【0350】
実施例2.植物ミトコンドリアに対してNifにポリペプチドを標的化するための、酵母CoxIV遺伝子由来のMTPの使用
本発明者らが知る限り、例えば、植物ミトコンドリアを含め、高等植物における細菌ニトロゲナーゼ(Nif)ポリペプチドの産生に関して公表された報告は存在しない。ミトコンドリアにおける斯かる産生を試験するために、本発明者らは、Nifポリペプチドが植物細胞内で産生され、かつ、検出できるか決定するため、および細菌Nifポリペプチドに基づく融合ポリペプチドが、ミトコンドリア標的化ペプチド(MTP)を使用することによって、植物細胞内でミトコンドリアに対して標的化され得る場合があるか否かに試験するために、ニコチアナ・ベンサミアナの葉において、植物ベースの、一過性の発現系を開発した。ミトコンドリアへの局所化を試験するために、酵母シトクロムcオキシダーゼサブユニットIV(CoxIV)タンパク質のN末端領域から得られるMTPを選択した。CoxIV MTPは、ミトコンドリアの局所化と、植物細胞においてGFPとの融合ポリペプチドのプロセシングを提供することを示した(Kohler et al., 1997)。CoxIV MTP(配列番号1)は、切断前には、たった29アミノ酸の長さであり、そして、他の多くのMTPより短かった(Huang et al., 2009)。このMTPを酵母細胞内でプロセシングしたとき、17または25アミノ酸が取り除かれ(Hurt et al., 1985)、そして、ポリペプチドのN末端に結合したMTPからの最小4アミノ酸残基が潜在的に残った。しかしながら、植物細胞におけるより最近の試験(Huang et al, 2009)では、ミトコンドリアマトリックスプロテアーゼ(MMP)によるミトコンドリアマトリックス(MM)におけるプロセシングが、アミノ酸20~21におけるセリン-セリンのすぐ上流のペプチドを切断し、そして、融合ポリペプチドのN末端にMTPからの追加の10アミノ酸残基を伴った、プロセシングされた融合ポリペプチドを作り出すと予測された。特に切断後融合が10アミノ酸だけを付加する場合、より短いMTP配列が利点であろうと、本発明者らは考えた。
【0351】
本明細書中でdCoxIV(配列番号2)とも呼ばれる、CoxIV MTPの誘導体を設計した。dCoxIVは、(ミトコンドリア標的化およびプロセシング部位に対するゲノム全般の試験から、植物ミトコンドリアマトリックス(MM)における取り込みとプロセシングに関して最も重要な残基が、切断部位の3または4残基上流の位置のアルギニン(-3Rまたは-4R)および切断部位直後の2つのセリン残基(+1S、+2S)であることを見出した)Huang et al., (2009)にしたがってミトコンドリアにおけるポリペプチドの取り込みおよびプロセシングに関与するモチーフxRxxxSSx(配列番号3)の保存されたアルギニンおよびセリン残基を含む。dCoxIVは、N末端に向かって挿入された2つの追加アミノ酸を有し、また、天然のCoxIV MTPの対応するグルタミンよりむしろ、配列番号2の28位のグルタミン酸も有した。これらの変化は、dCoxIVペプチドの局在性または切断に影響を及ぼすことは期待されなかった。
【0352】
ベクターpCW440およびpCW441の構築
植物細胞への遺伝子の導入のために、汎用植物/細菌発現ベクターを設計し、作製した、pCW440。これは、エシェリキア・コリおよびアグロバクテリウム・ツメファシエンス細菌の両方における複製および選択を可能にするためにバイナリーベクターに基づき、ならびにA.ツメファシエンスから植物細胞内への遺伝子移動のためのT-DNA領域を含有する。pCW440を作製するために、植物選択マーカー遺伝子を取り除くために、pORE1(Coutu et al., 2007)を処理して、pORE1-nullを作製した。このベクターは、35Sプロモーターおよびnos3’転写ターミネータ領域を含んだ。DNA断片を、順番に、T7RNAポリメラーゼのプロモーター、5’UTR配列、ATGの開始コドンによって開始されるdCoxIV MTPをコードするヌクレオチド配列、制限酵素AscIのクローニング部位、およびT7RNAポリメラーゼの転写終止部位、を含むように合成した。この断片の配列は、pET14bベクター(Novogene)に一部基づいた。断片には、両脇に制限部位を配置し、35Sプロモーターとnos3’領域との間のpORE-ヌルに連結させ、これによりpCW440を作製した。pCW440のT-DNA領域のヌクレオチド配列を、配列番号4として提供する。
ベクターのT-DNA中の発現カセットの成分は、転写の向きに順に、融合ポリペプチドを産生するための植物細胞内で下流タンパク質コード領域の発現を駆動するための、クローニング目的のためのHindIII部位およびXhoI部位を両側に配置した、CaMV35Sプロモーター(配列番号4のヌクレオチド219~1564)、次に、同じポリペプチドを産生するためのコード領域の、好適なE.コリ細胞における発現を可能にするT7プロモーター(ヌクレオチド1571~1587)、次に、ATG開始コドンによって開始されるdCoxIV MTPをコードするがヌクレオチド(ヌクレオチド1650~1742)、続いて、タンパク質コード領域の挿入のためのクローニング部位としてのAscIの制限酵素部位(ヌクレオチド1743~1750)、次に、T7RNAポリメラーゼ転写終止配列(ヌクレオチド1810~1856)および最後に、nos3’ 植物転写終止配列(ヌクレオチド1861~2084)、である。pCW440の遺伝子マップを、図1に図式的に示す。
【0353】
MTPをコードするヌクレオチド配列を、翻訳されたポリペプチド中のdCoxIVアミノ酸のC末端へのコード化タンパク質のインフレーム融合を提供するために、AscI部位内のいずれかの所望のタンパク質コード領域の挿入を可能にする様式でpCW440内に挿入した。ベクターおよびその誘導体は、E.コリで安定しているので、T7ポリメラーゼプロモーター系によってタンパク質を産生するために使用する(Studier and Moffatt, 1986)。そのため、汎用pCW440を、T7プロモーターおよびターミネータが融合タンパク質の発現を制御するBL21 goldなどの商業的に利用可能なT7リボ核酸ポリメラーゼ細胞株を使用して、細菌で融合ポリペプチドを発現するためのベースベクターとして設計した。細菌はミトコンドリアを有していないので、MTPを含む完全長の融合ポリペプチドのプロセシングは、E.コリにおいて起こらない。同じベクターを、植物細胞において内因性の転写機構を使用して遺伝子発現を制御する、35Sプロモーターおよびnos3’ターミネータ制御下で同じ融合ポリペプチドを発現するために植物細胞内で使用できる。
【0354】
pCW441を作製するために、その最初のメチオニン残基を含まないGFP(Brosnan et al., 2007)のオープンリーディングフレームをコードするDNA断片を、PCRによって増幅し、AscI部位を両側に配置して、pCW440のAscI部位内に挿入させ、そして、dCoxIVとGFPとの間で翻訳融合を許可した。AscI部位における挿入は、融合ポリペプチドの接合部において3つの追加アミノ酸を導入した。DNA断片を、pCW440内に挿入して、pCW441を作製した。
【0355】
dCoxIV領域が、GUS融合ポリペプチドを植物ミトコンドリアに向かわせることができたか試験するために、pCW441(dCoxIV::GFP)を含むA.ツメファシエンス細胞を、実施例1に記載の方法を使用して、N.ベンサミアナの葉の中に浸潤させた。一般的に、GFPへのN末端融合がその蛍光活性に影響しないのが知られているので(Kohler et al., 1997)、そのため、dCoxIV::GFPポリペプチドを、それが発現した場合に、蛍光活性を保持すると予想した。対照浸潤を、細胞質に位置するGFPを発現するための構築物、pUQ214(Brosnan et al., 2007)を含有するA.ツメファシエンスで同時におこなった。すべての浸潤が、単独で対照浸潤物として使用した、サイレンシングのウイルス性抑制因子、p19、をコードする構築物を含むA.ツメファシエンス細胞を含んだ。浸潤の4日後に、浸潤させた葉の区域を、488nmでの青色光励起および任意のGFPポリペプチドを検出するためのGFPフィルターを備えた光学顕微鏡検査によって、蛍光発光について調べた。蛍光発光を、pCW441を浸潤させた葉の細胞で観察した。顕微鏡下では、多数の小さい細胞内構造が蛍光を発するのが観察され、結果は、以前の報告と一致した(Kohler et al., 1997)。それらの構造は、高度に流動性であり、細胞の縁部に集まる傾向があり、ミトコンドリアにあるそれらと一致した。対照的に、導入された細胞質GFPをコードする遺伝子は、より均等に蛍光を発した。植物細胞内の小さいミトコンドリア様粒子の動きによって明白なとおり、dCoxIVは、植物ミトコンドリア内にdCoxIV::GFPポリペプチドを向けるのに十分であると結論づけられた。
【0356】
ベクターpCW446、pCW447、pCW448およびpCW449の設計と構築
dCoxIV::GFP融合ポリペプチドが、一過性発現後に植物細胞内で産生され、ミトコンドリアに局限するという観察に基づいてdCoxIV::Nif融合ポリペプチドの発現を提供するために、一連のベクターを設計し、構築した。最初に、遺伝子構築物を設計し、クレブシエラ・ニューモニエNifH、NifD、NifKおよびNifYへの融合物を発現させた。野生型K.ニューモニエNifH、NifD、NifKおよびNifYのアミノ酸配列を、それぞれは配列番号5、6、7および8として提供する。翻訳効率を改善する試みでは、これらのポリペプチドのタンパク質コード領域を、ヒトコドンバイアスを使用してコドン修飾し、そして、潜在スプライス部位、潜在ポリアデニル化シグナル、および内部反復配列を、市販の供給業者(Geneart)によるヌクレオチド配列から取り除いた。それぞれの融合ポリペプチドに関しては、Nifイニシエーターメチオニンを除いた。さらに、オープンリーディングフレームは、各ポリペプチドに対するC末端伸長をコードするヌクレオチド配列をそれぞれ含み、商業的供給源からのエピトープに対する抗体を使用したポリペプチドのより簡単な検出を提供するために、該伸長は、HAまたはFLAGエピトープのいずれかを含む(例えば、Wood et al., 2006)。移したポリペプチドが類似したサイズを有したとき、(市販されている)様々なエピトープを、様々な抗体の使用によってタンパク質が識別されるのを可能にするために添加した。例えば、NifDおよびNifK融合ポリペプチドは、類似のサイズを有しており、そのため、NifDをFLAGエピトープに融合し、およびNifKをHAエピトープに融合した。各C末端に添加したアミノ酸配列を、HAエピトープについては配列番号21として、およびFLAGエピトープについては配列番号22として提供する。dCoxIV MTPおよびエピトープを含む融合ポリペプチドのアミノ酸配列を、配列番号23、24、25および26としてそれぞれ提供する。
【0357】
NifH::HA、NifD::FLAG、NifK::HAおよびNifY::HAにポリペプチドをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を、それぞれ配列番号27、28、29および30として提供する。隣接AscI制限部位をそれぞれ含み、これらのヌクレオチド配列を有するDNA断片を、市販の供給業者によって合成し、そして、それぞれを、pCW440のAscI部位に挿入して、ベクターpCW446(pCoxIV::NifH::HA)、pCW447(pCoxIV::NifD::FLAG)、pCW448(pCoxIV::NifK::HA)、およびpCW449(pCoxIV::NifY::HA)を作製した。
【0358】
細菌における融合ポリペプチドの発現
これらのベクターの汎用性質は、好適な細菌細胞における遺伝子の発現および融合ポリペプチドの産生を可能にして、ゲル電気泳動および免疫検出実験における対照として使用できるポリペプチドの起源を提供する。そのため、これらのベクターは、37℃にてOvernight Express培地(EMD-Millipore)中での培養によって、誘導後に遺伝子構築物のT7プロモーターからの発現を可能にするE.コリ株BL21.1-Gold(Stratagene)に導入した。pCW446、pCW447、pCW448またはpCW449を担持する細菌培養物を、遠心分離して、細胞を回収した。細胞を、半倍量のBugBuster試薬(EMD-Millipore)中で室温にて溶解した。溶解物をさらに遠心分離して、封入体を回収し、そしてそれを、半倍量のBugBuster試薬でさらに2回洗浄した。封入体を、SDSを含有した標準的なLaemmliバッファーで溶解し、ウエスタンブロットにおいて明確なシグナルを生じるのに必要なくらいさらに希釈した。ウエスタンブロットを、最終的な検出溶液としてChemStar化学発光試薬(Amersham)を用いて、1:5000希釈で、HAまたはFLAGエピトープを認識する市販の抗体およびウサギ抗マウスHRP二次抗体で探査した。
【0359】
植物細胞における融合ポリペプチドの発現
dCoxIV::Nif::HAまたはFLAGタグ付与融合ポリペプチドの発現のためのそれぞれ遺伝子構築物を、実施例1に記載の方法を使用して、別々にN.ベンサミアナの葉に導入した。前述のように、すべての浸潤物が、遺伝子サイレンシング応答を低減するための、サイレンシングのウイルス性抑制因子をコードする構築物、p19を含むA.ツメファシエンス細胞を含んだ。5日後に、浸潤させた区域を採取し、そして、HAまたはFLAGエピトープを結合する抗体を使用したウエスタンブロッティングによって、細菌により産生された抽出物を、実施例1に記載のとおりおよび上述のとおり処理した。これは、ポリペプチドを検出し、かつ、それらのサイズおよび相対発現レベルをアッセイした。ゲル電気泳動ステップでは、細菌および植物抽出物のアリコートを、隣接しているレーンに適用して、ポリペプチドのサイズにおける見込まれる小さな変化を検出できるようにし、そしてそれでdCoxIV MTPが切断されかを予測する。例えば、完全長のdCoxIV::NifY::HAポリペプチドのサイズが約30kDaであるのに対して、プロセシングdCoxIV::NifY::HAポリペプチドのサイズは、28kDaであると予測した。
【0360】
ウエスタンブロット(図2)を調べたとき、dCoxIV::NifH::HAポリペプチドに相当するバンドの存在は、pCW446のT-DNAが導入されたサンプルに関して容易に観察された。バンドの強度に基づいて、このNifH融合ポリペプチドが、葉細胞においてNifKおよびNifY融合ポリペプチドより強く発現されたことを観察した。植物細胞内で産生されたNifH融合ポリペプチドのサイズは、ゲル電気泳動において約40kDaにて、細菌で発現されたポリペプチドのサイズと同一であるように見えた。このサイズは、完全長のdCoxIV::NifH::HA融合タンパク質に関して予想されたとおりであった。同じような様式で、dCoxIV::NifK::HAポリペプチドに相当するバンドを、葉細胞内にpCW448のT-DNAを導入したサンプルに関して観察し、およびdCoxIV::NifY::HAに相当するバンドを、pCW449のT-DNAを導入したサンプルに関して観察した。その都度、植物で発現されたポリペプチドは、NifKポリペプチドに関しては約60kDaであり、かつ、NifYポリペプチドに関しては約30kDaである、対応する細菌で発現されたポリペプチドと同じサイズに見えた。細菌で発現されたポリペプチドと植物で発現されたポリペプチドの移動に顕著な差がないことに基づいて、本発明者らは、それぞれの場合のdCoxIV MTPが、植物細胞内で任意の有意な程度まで切断されていなかったと結論づけた。
【0361】
dCoxIV::NifD::FLAG融合ポリペプチドに関して、細菌細胞と比較した植物細胞に関して、まったく異なる結果を観察した。融合ポリペプチドを、細菌においてpCW447から発現させ、そして、そのサンプルを、FLAGタグ付与ポリペプチドを検出するための抗体を使用してウエスタンブロットによってアッセイしたとき、強いバンドを、完全長の融合ポリペプチドに関して予想される、55kDaにて観察した(図2)。しかしながら、pCW447からのT-DNAを植物細胞内に導入したとき、映像技術によるウエスタンブロットの延長された曝露後でさえ、dCoxIV::NifD::FLAGポリペプチドに関して検出可能なバンドは存在しなかった。これは、NifD配列を含む融合ポリペプチドの産生の欠如またはその非常に急速な代謝回転を示唆した。
【0362】
NifD構築物を用いた実験を、結果をチェックするために数回繰り返した。この場合も同様に、dCoxIV::NifD::FLAGポリペプチドは、ウエスタンブロットの延長された曝露後でさえ、植物細胞からの抽出物質中で検出されなかった。遺伝子構築物を、NifD特異的および35S特異的プライマーを用いたシークエンシングによってチェックして、pCW440骨格内のプロモーターおよびNifD断片の正しい配列を確認した。同じ構築物がE.コリ株においてうまく発現されたので、オープンリーディングフレームが完全であることは明確になった。
【0363】
植物細胞における他のNif融合ポリペプチドの発現
いずれの場合にも、K.ニューモニエ配列を使用し、かつ、ベースベクターとしてpCW440を使用して、より大きいセットのNif融合ポリペプチドをコードする類似の遺伝子構築物を作製した。これには、タンパク質コード領域のコドン最適化、天然のNifイニシエーターメチオニンの省略、およびそれぞれの融合ポリペプチドにHAまたはFLAGエピトープタグを含むC末端伸長の付加が含まれた。これらの構築物は、pCW452(dCoxIV::NifB::HA;アミノ酸配列番号31);pCW454(dCoxIV::NifE::HA;配列番号32);pCW455(dCoxIV::NifN::FLAG;配列番号33);pCW456(dCoxIV::NifQ::HA;配列番号34);pCW450(dCoxIV::NifS::HA;配列番号35);pCW451(dCoxIV::NifU::FLAG;配列番号36)およびpCW453(dCoxIV: NifX::FLAG;配列番号37)であった。
【0364】
これらのそれぞれについて、N.ベンサミアナ細胞における完全長の融合ポリペプチドの産生を、アグロバクテリウムからの関連するT-DNAの導入後に容易に検出した。いずれの場合にも、検出された完全長のポリペプチドのサイズは、対応する細菌で産生されたポリペプチドのサイズと同じであり、そして、植物細胞におけるMMPによるMTPの切断の欠如を示唆した。場合によっては、複数のバンドを、ウエスタンブロットで観察した。特に、NifH::HA、NifS::HAおよびNifN::FLAGへのdCoxIV翻訳融合ポリペプチドの発現は、もしかすると、潜在の、オープンリーディングフレーム内の内部開始コドンにて開始された翻訳のため、またはC末端のエピトープが検出バンドの中にまだ存在しているような、植物細胞におけるもしくは抽出中のポリペプチドの切断のためかもしれない、ウエスタンブロットにおけるいくつかのより小さいバンドを生じさせた。この分析から、NifK、NifY、NifE、NifN、NifBおよびNifQ融合ポリペプチドは、他のものよりより高いレベルにあるように思われ、それに対して、NifH、NifS、NifU、およびNifX融合ポリペプチドの産生は、中~低レベルにて検出された。今度の場合も、植物細胞におけるNifD融合ポリペプチドの産生は検出されなかった。本発明者らは、NifDポリペプチド以外のNif融合ポリペプチドのすべてが、このアプローチを使用して、植物細胞において発現され得るか、あるいは、類似のコドン利用パラメータ、ならびに同一のプロモーターおよびポリアデニル化調節配列にもかかわらず、異なるレベルで発現されたか、または異なる存在量で蓄積している、と結論づけた。重要なことには、本発明者らは、それが明らかに際立っていたので、NifDの構築物または融合ポリペプチドに関して何か特別なことがあったと結論づけた。
【0365】
実施例3.植物細胞におけるNifD融合ポリペプチドの産生を検出するためのさらなる試み
実施例2に記載のdCoxIV::NifD::FLAG融合ポリペプチドの検出の欠如を前提として、本発明者らは、このNif融合ポリペプチドが、恐らく酸素濃度、葉細胞における光合成、または潜在的ミスフォールディング、ひいては、恐らく、推定上のシャペロンタンパク質の欠損によるポリペプチドの不安定性に関連して、分解に対して感受性であろうと仮定した(Ribbe and Burgess, 2001)。これらの仮説を試験するために、そのT-DNAがpCoxIV::NifD::FLAGポリペプチドをコードしたベクターpCW447を含むA.ツメファシエンスを、N.ベンサミアナの葉に浸潤させた。浸潤させた植物組織を、摘出し、そして、様々な条件下、液体培地上で24時間維持した。これらのバリエーションのそれぞれの組み合わせもまた、試験した。そのバリエーションのは、暗所中または明所中、21%(雰囲気酸素濃度)、5%または1%の酸素濃度で植物組織を維持することが含まれた。GroELポリペプチド(Ribbe and Burgess, 2001)またはレグヘモグロビン(Ott et al., 2005)を発現する遺伝子構築物の同時導入もまた、一部の浸潤物で実施した(Lhb;図6および3)。これを、pORE1-35S発現ベクターへのGroEL-およびLbh-コード配列の挿入(Wood et al., 2009)、そして、それぞれ、pCW-GroELおよびpCW444構築物の作製によって達成した。両方の構築物を、以前に記載したように、アグロバクテリアに形質転換し、そして、一過性の葉発現に使用した。
【0366】
対照浸潤物が、例えばdCoxIV::NifN::FLAGポリペプチドなどの他のNif融合ポリペプチドの強い産生をもたらしたにもかかわらず、条件または遺伝子におけるこれらのバリエーションのいずれも、N.ベンサミアナ細胞におけるdCoxIV::NifD::FLAG融合ポリペプチドの検出をもたらさなかった。
【0367】
本発明者らは、これらの実験から、植物細胞におけるNifD融合ポリペプチドの発現が解決する必要がある問題を提起したと結論づけた。
【0368】
実施例4.植物細胞におけるNifポリペプチドの組み合わせを発現する多重ベクターの発現
本発明者らはまた、4つのNif融合ポリペプチドがN.ベンサミアナ葉系で同時発現され得るか、およびこれがdCoxIV::NifDポリペプチドの産生レベルを改善するか、試験した。これを、それぞれ発現のための異なる遺伝子を含有する、4つのA.ツメファシエンス細胞懸濁液、すなわち、NifY::HA、NifD::FLAG、NifK::HAおよびNifH::HAへのdCoxIVの融合、p19構築物を含有するA.ツメファシエンス単独、を混合することによって試験した。浸潤させた葉組織からの抽出物を、先と同じようにウエスタンブロッティングによってアッセイしたとき、この4つのNif遺伝子の同時浸潤実験では、dCoxIV::NifK、dCoxIV::NifYおよびdCoxIV::NifHの結合を生じるが、単独で発現されたときに比べて、それぞれを非常に低いレベルで検出し、しかし、dCoxIVNifDに関して検出可能なバンドは存在しなかった。そのため、今回もまた、NifD融合ポリペプチドは、他のNifポリペプチドと異なるように見えた。dCoxIV::NifK::HA、dCoxIV::NifH::HAおよびdCoxIV::NifY::HAの組み合わせは、同時発現されたdCoxIV::NifD::FLAGの産生を検出可能なレベルまで高めなかった。
【0369】
考察
先に記載した実験では、10個の異なるNifポリペプチドに別々に融合した、それぞれ、酵母ミトコンドリア標的化ペプチドの誘導体(MTP)、dCoxIVをコードする、遺伝子構築物を、合成し、そして、使用した。これらもまた、細菌または植物細胞において産生されたときに、そのポリペプチドを検出するために、各C末端にてHAまたはFLAGエピトープタグのいずれかに融合され、そして、A.ツメファシエンスによるT-DNAの導入後の葉組織で発現されることを示した。ミトコンドリア中のMTPのプロセシングを、細菌およびN.ベンサミアナ細胞から抽出したポリペプチドのサイズを慎重に比較することによって試験した。10個のdCoxIV-Nif融合ポリペプチドのすべてが、E.コリ細菌において産生された後にウエスタンブロットアッセイで容易に検出されたが、しかし、9つのポリペプチドしか、N.ベンサミアナ細胞への導入後に検出されなかったことを観察した。例外は、一貫して検出されなかったdCoxIV::NifD::FLAGポリペプチドであった。植物組織が維持された環境条件の変化は、ポリペプチド-低下した酸素濃度、暗所対明所における植物組織の維持、または同時発現されたレグヘモグロビンもしくはGroEL分子シャペロンタンパク質の存在、の検出をもたらさなかった。
【0370】
NifDは、ニトロゲナーゼ酵素複合体の欠くことのできない構成要素である。そのため、以下の実施例における実験を、NifD融合ポリペプチドの欠損を緩和する試みで実施した。
【0371】
実施例5.タンパク質を植物ミトコンドリアに向かわせるためのpFAγ MTPのバリデーション
実施例2~4に記載のとおり、11個の試験したNif融合ポリペプチドのうち10個の産生を、dCoxIV MTPを使用してN.ベンサミアナ葉細胞において実証し、そして、唯一の例外がNifD融合ポリペプチドであった。いずれの場合にも、標的化ペプチドのプロセシングは観察されなかった。そのため、本発明者らは、NifDおよび他のNifポリペプチドと融合した様々なMTP配列が、植物細胞において検出可能な発現および融合ポリペプチドの切断を提供するか試験した。その目的のために、本発明者らは、A.サリアナF1-ATPアーゼγ-サブユニット(pFAγ)からのMTPを選択した。長さ77アミノ酸残基のMTPを、GFPレポーターポリペプチドとの融合によって、アラビドプシスプロトプラスト(Lee et al., 2012)において機能的にバリデーションした。マトリックスプロセシングプロテアーゼ(MPP)によるpFAγ MTP配列の切断は、アミノ酸42の後において起こり、そして、ポリペプチドのN末端に融合した35アミノ酸のC末端部分を切り離した。ミトコンドリアの局所化およびN.ベンサミアナ葉細胞におけるプロセシングのために35アミノ酸がいくつ必要なのか知られていないので、そのため、本発明者らは、全77アミノ酸配列を使用することを決定した。そのため、融合Nifポリペプチドを手つかずの植物葉細胞のMMに輸送するpFAγ MTPの能力を、N.ベンサミアナの一過性リーフアッセイシステムを使用して試験した。
【0372】
3つのアミノ酸gly-ala-pro(GAP)によって切り離され、そしてまた、隣接NcoIおよびAscI制限部位も含む、GFP(GFP 65T、GenBank受入番号U43284;Haas et al., 1996)に融合したpFAγ MTP(配列番号38アミノ酸1~77)の77アミノ酸から成る319アミノ酸ポリペプチドをコードする、970bpのDNA断片を化学的に合成した。NcoIおよびAscI(部分的)消化後に、その断片を、pCW441のNcoI~AscI部位に挿入して、ベクターpRA01を作製した。AscIを用いたpRA01の消化は、GFPコード領域を摘出したが、pFAγ MTP配列およびGAPアミノ酸を残し、そして、Nif融合ポリペプチドのクローニングにおけるベースベクターとして使用されるベクターpRA00を作製した。Nifまたは他のポリペプチドを、AscI部位におけるDNA配列の挿入によってpFAγMTPおよびGAPアミノ酸の下流に融合したとき、得られた遺伝子構築物は、融合の接合部にpFAγ MTPおよびGAPアミノ酸をコードし、それによって、Nifまたは他のポリペプチドに80アミノ酸のN末端伸長を付加する(配列番号38)。ミトコンドリアのpFAγMTPのプロセシングは、イニシエーターメチオニンを含む、N末端から42アミノ酸を切り落とし、そして、発現ポリペプチドのサイズを約4.6kDaに削減すると予想された。そのため、MTPの切断は、Nifまたは他のポリペプチドのN末端に融合されたC末端伸長から38アミノ酸を残すと予想された。
【0373】
同じ長さがN末端伸長をコードするが、MPPによるミトコンドリアのプロセシングを提供しないであろう対照ベクターとして、pFAγMTPの無効化バージョンをコードする第二のベクターを作製した。このベクターでは、24アミノ酸の置換を、そのミトコンドリア認識およびプロセシングに必要とされるMTPの領域内に導入し(Lee et al., 2012)、そして、pFAγの切断部位にアミノ酸を含んだ。各置換では、pRA1のpFAγ MTP中の野生型アミノ酸を、アラニン残基で置換した(図3)。そのため、本明細書中でmFAγとも呼ばれる、pFAγ MTPのこの修飾バージョンは、正確にプロセシングされないで、代わりに、対応する未プロセシングpFAγ融合ポリペプチドと同じ数のアミノ酸残基を有する完全長融合ポリペプチドをもたらすであろう。そのため、この修飾ベクターを、ウエスタンブロット分析において未プロセシング分子量対照を提供するための融合ポリペプチドを発現するためのベースベクターとして使用した。ベクターpRA00およびそのmFAγ誘導体は両方とも、バイナリーベクターであり、そして、A.ツメファシエンスから植物細胞へのそれらのT-DNAの移動を提供した。そのC末端にGAPトリプレットを含む、修飾mFAγのN末端伸長のアミノ酸配列を、配列番号39として提供する。
【0374】
植物細胞のミトコンドリアに融合ポリペプチドを局限するpFAγ MTPの能力を試験するために、pRA01を、一過性のN.ベンサミアナリーフアッセイで利用した。植物細胞におけるpFAγ::GFP融合ポリペプチドのマトリックスプロセシングを検出するための対照として、mFAγ::GFP融合ポリペプチドをコードする対応するベクターもまた作製し、pRA21と呼んだ(表3)。pRA01またはpRA21のいずれかを含有するA.ツメファシエンスを用いた葉の浸潤5日後に、浸潤区域からの葉サンプルを採取し、そして、タンパク質抽出物を、実施例1に記載のとおり調製した。SDS-PAGEゲル電気泳動およびウエスタンブロッティングを、GFP抗体を使用して、タンパク質抽出物において実施した。pRA01(pFAγ::GFP)の導入から、予測された部位にて切断されたGFPポリペプチドに関して、ポリペプチドバンドが、予測されたサイズ(~30kDa)を有することをウエスタンブロットで観察した一方で、pRA21(mFAγ::GFP)に関して、未プロセシング融合ポリペプチドの予測されたサイズに関して、より大きいバンド(~35kDa)を観察した(図4)。GFPポリペプチドをコードするいずれの遺伝子も有していない陰性対照で観察されなかった、~28kDaにてより微かなバンドを、pRA01およびpRA21の両方について観察した。これは、多分、GFPポリペプチドまたは代替転写もしくは翻訳から生じたものの分解産物を表していた。切断型のバンドが、非切断型のバンドよりはるかに強かったので(図4)、pFAγ::GFP融合ポリペプチドのプロセシングが、効果的であると思われた。本発明者らは、pFAγ::GFP融合ポリペプチドが、手つかずのN.ベンサミアナ葉細胞のMMにおいてプロセシングされており、そしてそれは、融合ポリペプチドの少なくともMTP部分が、MM中に輸送され、そして、MPPにアクセス可能であることを含意していると結論づけた。
【0375】
GFPポリペプチドの局所化を可視化するために、プロトプラストを、pRA01(pFAγ::GFP)を含有する葉組織から、実施例1に記載のとおり調製し、そして、共焦点顕微鏡によって調べた。プロトプラストを、40×水液対物レンズを備えた正立Leica共焦レーザ走査顕微鏡を使用して画像化した。GFPを、488nmにて励起させ、そして、発光を499~535nmにて記録した。ミトコンドリアを同定するための対比染色として、プロトプラストも同様に、MitoTrackerR Red CMXRos(ThermoFisher Scientific, Cat No.M7512)の100nM溶液を使用して10~20分間染色した。MitoTrackerR Red CMXRosを、561nmにて励起させ、そして、発光を570~624nmにて記録した。このように、両フルオロフォアの蛍光画像を重ねることもある。これらの手段により、GFP蛍光が、MitoTrackerRと同時局在し、そのため、ミトコンドリアに局在したことを観察した。そのため、本発明者らは、少なくともpFAγ::GFPに関して、MTPが、N.ベンサミアナ葉細胞のMMに融合ポリペプチドを移動させ、かつ、MPPによるその切断も提供したと結論づけた(図4)。この結論は、MPPによるMTPのプロセシングが、MMにおいてだけ起こるという知識に基づいた。
【0376】
表3.Nif融合ポリペプチドをコードする遺伝子構築物
【表3】
【0377】
実施例6
植物ミトコンドリアへのNif融合ポリペプチドの転移
本発明者らは、次に、pFAγ MTPが、Nif融合ポリペプチドをMMに転移することができるか、およびそれが、MPPによるMTPの切断を提供し得るか、試験することを望んだ。これを最初に試験するために、それらの比較的小さい分子量であり、そしてそれが、ウエスタンブロッティングによる切断および非切断ポリペプチドの識別を明確にできるので、2つのNifタンパク質(NifFおよびNifZ)を、融合ポリペプチドの構築のために選択した。C末端融合としてHAまたはFLAGエピトープのいずれかに融合したクレブシエラ・ニューモニエNifFおよびNifZポリペプチドのタンパク質コード領域を、ヒトコドン最適化し、そして、商業的の供給業者によって合成した。DNA断片を、NifオープンリーディングフレームがN末端pFAγ MTPに翻訳的に融合されて、ベクターpRA05およびpRA04(表3)を作製するように、pRA00のAscI部位に挿入した。HAおよびFLAGエピトープを、それぞれ、NifFおよびNifZポリペプチドのC末端に組み込んで、対応する抗体による検出を可能にした。対照としてのこれらのpFAγ::Nif融合ポリペプチドの未プロセシングバージョンを作製するために、同じ構築物を、T7RNAポリメラーゼによってE.コリで発現させた。MTPが、MPPをもたない細菌でプロセシングされないことを前提として、植物で発現されたポリペプチドと細菌で発現されたポリペプチドとの間のサイズ差は、ゲル電気泳動およびウエスタンブロッティングで検出されるプロセシングを可能にした。それぞれプロセシング前のpFAγ::NifF::HAおよびpFAγ::NifZ::FLAG融合ポリペプチドのアミノ酸配列を、配列番号40および41として提供する。
【0378】
ウエスタンブロット(図4)は、N.ベンサミアナの葉から検出されるポリペプチドのサイズが、E.コリで産生される対応するポリペプチドより、各場合においてより小さいことを明らかにした。pRA05(pFAγ::NifF::HA)およびpRA04(pFAγ::NifZ::FLAG)のそれぞれについて、植物細胞から検出されるポリペプチドが、それらのMTPの融合ポリペプチドの切断に関して予測されるサイズに対応したのに対して、E.コリ抽出物から検出したポリペプチドは、未プロセシングpFAγ::Nif融合ポリペプチドに関して予測されたサイズのものであった。本発明者らは、これらのデータから、pFAγ MTPは、少なくともNif融合ポリペプチドのMTP部分をMMに輸送し、そして、植物細胞におけるMPPによるMTPの切断を提供することができると結論づけた。
【0379】
実施例7.質量分析法によるMTP切断の証明
融合ポリペプチドのpFAγ部分の中の予測されるMTPプロセシング部位が、MPPによってミトコンドリア内で切断されたことを立証するために、ペプチド産物を質量分析法によって分析した。これをおこなうために、本発明者らは、pRA10と呼ばれる、融合ポリペプチドpFAγ::NifH::HAをコードする、pRA00に基づく遺伝子構築物を設計し、作製した(表3)。プロセシング前のこの融合ポリペプチドのアミノ酸配列を、配列番号42として提供する。NifH融合ポリペプチドは、ニトロゲナーゼ酵素複合体の中核的な構成要素としてのNifHの重要さ、および植物細胞において以前に観察されたdCoxIV::NifH::HAポリペプチドの高度な発現(実施例2)のため選択した。pRA10構築物を、N.ベンサミアナの葉細胞に導入し、そして、浸潤組織を4日後に採取した。その組織を、液体窒素下で粉砕し、次に、50mMのTris HCl、pH7.5、1mMのEDTA、150mMのNaCl、10%のグリセロール、5mMのDTT、0.5mMのPMSFおよび植物向けの1%のプロテアーゼインヒビターカクテル(Sigma、カタログ番号P9599)を含有する、タンパク質抽出バッファー(PEB)の存在下、2mLのエッペンドルフチューブ内でRetsch tissuelyserを使用して処理した。ミトコンドリアに対して標的化したNifH融合ポリペプチドの溶解性を改善するために、0.2%(w/v)のSDSをPEBに添加した。未精製のタンパク質抽出物を、遠心分離で澄んだ状態にし、次に、HA含有ポリペプチドを免疫沈降させるために、アガロースビーズ(Sigma、カタログ番号A2095)に結合したモノクローナル抗HA抗体の存在下でインキュベートした。非結合タンパク質を、150mMのTris HCl、pH7.5、5mMのEDTA、150mMのNaCl、0.1%のTriton X-100、5%のグリセロール、5mMのDTT、0.5mMのPMSFおよび植物向けの1%のプロテアーゼインヒビターカクテルを用いた一連の洗浄によって取り除いた。そのビーズをLaemmliバッファー中で95℃にて10分間インキュベートし、次に、変性SDS-PAGEによる電気泳動によってさらに精製することによって、結合タンパク質を溶出した。同時ウエスタンブロット分析によるpFAγ::NifH::HA融合ポリペプチドを含有することを測定したゲルの領域を摘出し、そして、トリプシンを用いたゲル内消化に供し、それに続いて、Agilent Q-TOF 6550質量分析計(Campbell et al., 2014)に合わせたAgilent Chip Cubeシステムを使用して、実施例1に記載の得られたペプチドのタンデム質量スペクトル解析に供した。この分析では、NifH中の領域と同一である5つの完全に消化されたトリプシンペプチド、および残基42と43との間のMTPの正確な切断と一致した6つの準トリプシンペプチドを見出した(図5)。未プロセシングMTPから入手されたであろうトリプシンペプチドSISTQVVR(配列番号43)は、観察されなかった。代わりに、検出された最も多くのN末端ペプチドが、準トリプシンISTQVVR(配列番号44)であり、そのMS/MSスペクトルにおけるy-イオンの全系列によって確認した。
【0380】
これらのデータは、pFAγ::NifH::HAポリペプチドの少なくともMTP部分が、MMに移動し、そして、MPPによってN末端伸長内のMTPのあらかじめ選択された部位にて切断されたことを最終的に実証した。そのデータは、pFAγ MTPが、転移およびMMにおけるプロセシングに必要であるシグナルのすべてを含んでいることを含意した。
【0381】
実施例8.植物のミトコンドリアマトリックスにおける複数のニトロゲナーゼタンパク質の発現
N.ベンサミアナ葉細胞におけるGFP、pFAγ MTPに融合したNifF、NifZおよびNifHポリペプチドのミトコンドリアでの発現およびプロセシングの成功を前提として、本発明者らは、pFAγ MTPへの融合ポリペプチドとして残りの13個のNifポリペプチドを発現することを試みた。モデルジアゾ栄養生物、クレブシエラ・ニューモニエにおいて、16個のNifタンパク質は、ニトロゲナーゼ生合成または機能に関与し、その一方で、4つの他のものが、未知の機能のものであるか、または転写制御に関与する(Oldroyd and Dixon, 2014)。本発明者らは、実施例2~4で提示したデータを考慮すると、pFAγ MTPがNifD融合ポリペプチドの産生および切断を提供するかに特に興味があった。
【0382】
K.ニューモニエの16個のNifポリペプチドをコードするDNA断片のコドン最適化バージョンを得、そして、それぞれを、pRA00のAscI部位に別々に挿入して、一連の遺伝子構築物を作製した(表3)。それぞれの遺伝子構築物は、N末端pFAγ MTPを有する融合ポリペプチド、次に、Nif配列(そのイニシエーターメチオニンありまたはなし)、および次に、適切な抗体による検出のためのHAまたはFLAGエピトープのいずれかを含むC末端伸長をコードした。植物発現のために、各構築物は、タンパク質コード領域の両側に配置された、35Sプロモーターおよびnos3’転写ターミネータ領域を含む。16個の融合ポリペプチドのアミノ酸配列を、配列番号40~42および46~58で提示する。
【0383】
16個の遺伝子構築物を含有するA.ツメファシエンス細胞を、別々にN.ベンサミアナの葉に浸潤させ、そして、4日後に、先と同じように、タンパク質抽出物を調製し、そして、ゲル電気泳動およびウエスタンブロッティングによって分析した。HAタグ付与pFAγ-Nifポリペプチドをコードする構築物のそれぞれに関して、MPPに関して予測されるおおまかなサイズであるバンドを、ウエスタンブロットにより検出した(表3、図6)。タンパク質量は、NifB、NifH、NifK、NifSおよびNifY融合ポリペプチドであることを検出するために最も簡単である、HAタグ付与ポリペプチドの中で変更した。NifF、NifEおよびNifMポリペプチドは、低レベルで存在したが、その一方で、NifQポリペプチドの検出は、可視化されるべきブロットのより長い曝露を必要とした。興味深いことに、追加の、より高い分子量バンドは、個々のNif::HA構築物のそれぞれに対してサイズ特異的であるNifB、NifS、NifHおよびNifY構築物での浸潤のために検出した(図6)。これらの追加バンドは、最初のバンドと比較して、分子量がほぼ2倍であり、そして、ゲル電気泳動中の変性条件にもかかわらず、これらのポリペプチドが二量体化していたことを本発明者らに示唆した。細菌におけるホモダイマーとしてのNifB、NifSおよびNifHタンパク質の機能が報告された(Rubio and Ludden, 2008; Yuvaniyama et al., 2000)。
【0384】
FLAGタグ付与pFAγ::Nif::FLAG融合ポリペプチドを、NifJ、NifN、NifV、NifU、NifXおよびNifZ配列を含む構築物それぞれについて、ウエスタンブロットで観察した(図6、右上のパネル)。FLAG抗体は、HA抗体に比べ、N.ベンサミアナ抽出からより高いバックグラウンドバンドをもたらした。それにもかかわらず、その結果は、HAタグ付与タンパク質のそれに類似していた。かなりのバリエーションが、さまざまなNif::FLAG融合ポリペプチドのシグナル強度で見られた。NifU構築物に特異的である、追加の、より高分子量バンドが観察された(図6)。pFAγ::NifX::FLAG構築物ではまた、追加の、予測された、プロセシングされた分子量に比べて、より高い強度のより小さいバンドももたらした。
【0385】
意外なことに、16個の遺伝子構築物のうち15個が検出可能なポリペプチド産生をもたらしたことを考えれば、さらに、浸潤物の頻繁な複製にもかかわらず、本発明者らは、予測された分子量の可視バンドを容易にもたらしたE.コリにおける同じ遺伝子構築物の発現であったとしても、これらの植物アッセイにおいて、pFAγ::NifD::FLAG構築物(pRA07)のいずれの特有のバンドも検出できなかった(図7)。実際には、細菌で産生された抽出物の1:100希釈でさえ、ウエスタンブロットにおいて容易に観察されるバンドをもたらした。細菌抽出物からの結果は、遺伝子構築物pRA07が、少なくともタンパク質コード領域に関しては、機能的であることを裏づけた。そのため、pFAγ::NifD::FLAGポリペプチドの注目に値する例外で、ニトロゲナーゼ生合成および機能に必要とされる、不可欠なNifポリペプチドの完全なセットのうちのすべてが、pFAγ MTPへの融合を使用して植物葉細胞において首尾よく発現された。さらに、観察したバンドの分子量は、MMにおける融合ポリペプチドのプロセシングと一致していた(表3)。
【0386】
ニトロゲナーゼ活性には多くのNifタンパク質の協調作用を必要とするので、植物における機能的なニトロゲナーゼの再構成は、生合成および機能のためにジアゾ栄養細菌によって利用される多くのNifタンパク質を必要とすると予期した。そのため、本発明者らは、複数のNifタンパク質が、pFAγ MTPを使用してN.ベンサミアナMMで発現されるか決定することを望んだ。この概念を試験するために、得られたポリペプチドがウエスタンブロット分析によって同定できる、異なるサイズの4つのNif融合ポリペプチドをコードする遺伝子構築物、すなわち、pFAγ::NifB::HA(pRA03)、pFAγ::NifS::HA(pRA16)、pFAγ::NifH::HA(pRA10)およびpFAγ::NifY::HA(pRA12)をコードする構築物、を選択した。これらの構築物で形質転換される4つのA.ツメファシエンス培養物を、等量で混合し、そして次に、その混合物を、N.ベンサミアナの葉に浸潤させた。各培養物を別々に浸潤させたときに、蓄積したポリペプチド濃度を比較した。4つの遺伝子の組み合わせに比べて、単一の構築物から発現されたときに、それぞれのポリペプチドがより豊富であったことが観察された。それにもかかわらず、4つのNif融合ポリペプチドはすべて、遺伝子組み合わせからのタンパク質抽出物で容易に検出され、そして、各ポリペプチドについて観察した分子量は、個別の浸潤物や組み合わせた浸潤物と同一であった。これは、Nif融合ポリペプチドの組み合わせが、ミトコンドリアへの所望の標的化およびそれぞれのNif融合ポリペプチドのプロセシングを伴って、植物細胞における産生され得ることを示した。
【0387】
実施例9.N.ベンサミアナにおける改善されたNifD融合ポリペプチド産生の試み
ニトロゲナーゼの触媒能におけるNifDの重要な役割を前提として、本発明者らは、NifD融合ポリペプチド産生の不足の理由を確認しようと試み、そして、植物アッセイにおけるその存在量を改善するためにいくつかのアプローチを試験した。まず、彼らは、NifD融合ポリペプチド産生/蓄積の不足が、低い導入遺伝子転写またはmRNA不安定性に寄与する可能性があるか、mRNA発現レベルを計測することによって試験した。これをおこなうために、まず、pRA07からの浸潤N.ベンサミアナ細胞におけるmRNAレベルを、実施例1に記載のqRT-PCRによって計測し、pFAγ::NifU::FLAG(pRA15)をコードする構築物から転写したmRNAのレベルと比較した。この第二の構築物は、先に記載したように、植物細胞において高レベルのポリペプチド産生を提供するので、対照として使用した。増幅効率におけるあらゆる偏りを取り除くために、両方のNif融合遺伝子によって共有されるpFAγ MTP領域内にアニールするオリゴヌクレオチドプライマーを使用した。RT-PCRアッセイからの結果は、pFAγ::NifU::FLAG mRNAが、pFAγ::NifD::FLAG mRNAのレベルに比べて、3倍超多いことを示した。第二に、cDNAを、pRA07から転写した植物で産生されたmRNAから合成し、クローニングし、そして、配列決定すると、そのヌクレオチド配列が塩基完全性を立証した。そのため、pFAγ::NifD::FLAG融合ポリペプチドの蓄積の不足は、低いmRNA発現または不安定性のためでなかった。これらの実験はまた、pFAγ::NifD::FLAGをコードするpRA07のT-DNAが、完全に機能的であり、かつ、その構築物の35Sプロモーターも同様に機能的であることを示した。そのため、N.ベンサミアナ細胞においてNifD融合ポリペプチドを検出できなのは、mRNAの発現におけるいずれかの障害によるものではなかった。
【0388】
pFAγ::NifD::FLAGをコードする遺伝子の転写およびmRNA蓄積が、NifD融合ポリペプチド産生を明らかに制限していなかったので、NifD融合ポリペプチドの蓄積の不足を克服する試みで、いくつかの修飾を遺伝子構築物におこなった。まず、C末端伸長中のFLAGエピトープの存在が、NifD融合ポリペプチドの産生の不足または不安定性のいずれかを引き起こしている可能性を考慮し、試験した。この可能性を試験するために、FLAGエピトープをHAエピトープによって置換し、pRA19(pFAγ::NifD::HA)と称する構築物を設計し、作製した。HAエピトープは、そのエピトープによって試験したタグ付与Nif融合ポリペプチドのそれぞれの蓄積および検出を可能にした(表3)。この融合ポリペプチドのアミノ酸配列を、配列番号59として提供する。第二に、NifD::HAオープンリーディングフレームのコドン利用を、異なるmRNA配列が翻訳効率を改善するか決定するための試みにおいて、ヒト細胞における翻訳のために最適化したよりむしろ、A.サリアナにおけるコドン利用により密接に類似するように修飾した。その構築物はpRA24と呼ばれ;それは、pRA19と同じpFAγ::NifD::HAポリペプチド(配列番号59)をコードした。さらに、実施例5(mFAγ::NifD::HA)に記載のpFAγよりむしろ突然変異mFAγN末端伸長を有するNifD融合ポリペプチドのバージョンをコードする遺伝子構築物を作製した。ミトコンドリア標的化および/またはプロセシングは、それが生じる場合には、NifD融合ポリペプチド産生の不足に少なくとも部分的に関与するか試験するために、この構築物(pRA22)を作製した。これらの質問に対処するように設計した3つの構築物を、表3で列挙する。
【0389】
Nベンサミアナの葉に、これらの構築物を含有するA.ツメファシエンスを浸潤させ、そして、その浸潤組織からタンパク質抽出物を調製し、そして、分析した。意外なことに、ウエスタンブロットは、pRA19またはpRA24(pFAγ::NifD::HA)構築物のいずれかを導入したとき、マトリックスプロセシングおよびと未プロセシングNifD融合ポリペプチドの両方について予測された分子量のHA含有バンドを示した(図8)。pRA22の導入は、より大きい(未プロセシング)融合ポリペプチドだけをもたらした。この実験では、植物細胞内へのpRA19の導入は、ウエスタンブロットにおいてpRA24より強いNifD::HA融合ポリペプチドバンドをもたらしたが、続く反復実験では、強度の差は有意でなかった。マトリックスプロセシングは、pRA22(mFAγ::NifD::HA)から産生されたものおよび細菌で産生されたポリペプチドとバンドの位置を比較することによって確認した(図8)。サイズがプロセシング済および未プロセシング形態のpFAγ::NifD::HAに対応する2つのバンドの観察は、このNifD融合ポリペプチドのプロセシングが、先に記載した他のNif融合ポリペプチドのそれほど効果的でないことを示した。pFAγ::NifD::HAポリペプチドの観察されたレベルは、同じ発現構築物設計および発現条件にもかかわらず、正の対照として使用されるpFAγ::NifK::HA融合ポリペプチド(レーン2)のレベルよりはるかに低かった。さらに、3つの修飾NifD::HA構築物のそれぞれに関して、対分子量の追加バンドが、ウエスタンブロットで観察され、そしてそのいくつかは、特定のpFAγ::NifD::HAバージョンに特異的であった。例えば、約50kDaの強いバンドは、修飾NifD::HA構築物のすべてに存在するにもかかわらず、異なっており、約40kDaの強いバンドは、pRA22が導入されたとき、サンプルに独特であるように見えた。これらのバンドがpFAγ::NifK::HAまたはGFP対照のいずれかに存在しないので、それらが、NifD::HA分解産物またはもしかすると代替の転写産物または翻訳開始シグナルを表す可能性がある。
【0390】
本発明者らは、HAエピトープを用いたFLAGエピトープの置換が、NifD融合ポリペプチドの蓄積を改善するために少なくとも部分的に関与していると結論づけた。
【0391】
考察
先に記載した実験では、本発明者らは、クレブシエラにおけるニトロゲナーゼ機能のために必要とされる16個のNifポリペプチドすべてが、MTP::Nif融合ポリペプチドとして植物葉細胞において遺伝子構築物から発現されることができ、かつ、そのポリペプチドがプロセシング形態でミトコンドリアに蓄積されることを実証した。さらに、その実験は、これらのタンパク質が、ニトロゲナーゼ機能のために潜在的に対応する細胞内位置であるMMに標的化され得ることを示した。本発明者らは、これらの実験が、斯かるアプローチに関する実現可能性の最初の実際的照明であると考える。
【0392】
MMへのNif融合ポリペプチドの標的化に対する結論は、証拠のうちの数行に基づいた。まず、植物で発現されたNifポリペプチドのそれぞれのサイズは、MPPによるプロセシングからもたらされるであろう予測されたサイズと一致していた。細菌で産生されたポリペプチド(完全長、未プロセシング)と比較して、植物で発現されたNif融合ポリペプチドについて観察されたより小さい分子量は、MPPによるNif融合ポリペプチドのプロセシングを示した。さらに、MTP配列を突然変異させたとき、MTPがミトコンドリア取り込み機構によってプロセシングされることができない状態にあることで、より大きいポリペプチドが、NifDおよびGFP融合ポリペプチドの両方について観察され、プロセシング済ポリペプチドと未プロセシングポリペプチドとの間のサイズ差と一致していた。最後におよび最終的に、質量分析法では、pFAγ::NifHが、マトリックスにおける特異的プロセシングについて予測されるように、MTPの残基42-43の間で切断されることを測定し、そして、そのMTP配列がNifポリペプチドと融合したときに切断され得ることを示した。
【0393】
MTPの存在は、常にNifタンパク質の完全なプロセシングにつながるわけではなかった。例えば、NifX::FLAG構築物および2つのNifD::HA構築物は、プロセシング済融合ポリペプチドおよび未プロセシング融合ポリペプチドの両方の融合ポリペプチドの蓄積をもたらした。そのうえ、強力な、構成的35Sプロモーターの使用にもかかわらず、ポリペプチド蓄積レベルの非常に大きな変動度が、様々なNif融合ポリペプチドで観察された。追加的な、予測されたより短いポリペプチドが、該ポリペプチドのC末端におけるエピトープの存在によって検出された、一部のNif融合ポリペプチドについて観察された。
【0394】
すべてのNif融合ポリペプチドについて、検出可能なレベルでNifDポリペプチドを産生させることが最も難しかった。これは、NifD遺伝子発現の不足またはmRNAの不安定性のためではなく、少ない翻訳およびタンパク質の不安定性が、NifD融合ポリペプチドの存在量を制限した可能性がある。細菌で高度に発現されるためのその要件を含めた(Poza-Carrion et al., 2014)、ニトロゲナーゼ機能におけるNifDの決定的な重要性を前提として、この問題を克服する必要がある。
【0395】
実施例10.インシリコモデリングを使用したニトロゲナーゼポリペプチド構造および機能の調査
細菌のニトロゲナーゼは、活性酵素を形成するために結合する必要がある複数の、異なるNifポリペプチドから成るメタロプロテイン複合体である。本発明者らは、それぞれの対応する野生型ポリペプチドに対するそれぞれのNifポリペプチドのN末端またはC末端のいずれかにおけるアミノ酸伸長が、それぞれの個々のポリペプチドの生化学的機能および集合、ならびに植物細胞内での酵素複合体の機能を妨げるかどうか考えた。先に記載した例では、植物細胞に導入した導入遺伝子によってコードされるNif融合ポリペプチドは、ミトコンドリア標的化ペプチド(MTP)を使用してミトコンドリアマトリックスに向けられた。しかしながら、それはプロセスは、MPPによる切断前のより長い配列、または切断後のより短い配列のいずれかにより、それぞれのニトロゲナーゼポリペプチドのN末端を伸長した。伸長が、触媒中心または機能に必要なタンパク質-タンパク質接触面を妨げることによって、ニトロゲナーゼ複合体の機能に影響するか試験するために、本発明者らは、最初に、ニトロゲナーゼポリペプチドNifH、NifD、NifK、NifE、NifN、NifSおよびNifUに対するNおよびC末端伸長の影響を予測するために、細菌ニトロゲナーゼサブユニットの相同モデルを使用した。同様に、細胞抽出物からの検出または精製を可能にするために、例えばFLAG、HAおよびMYCエピトープなどのエピトープタグを、ポリペプチドのC末端に普通に追加する。野生型細菌ニトロゲナーゼを形成する個々の成分およびタンパク質複合体の多くを結晶化し、そして、単一ペプチドまたは多タンパク質複合体としてのそれらの構造を調査した。そのため、本発明者らは、K.ニューモニエアミノ酸配列に基づいて、例えば、伸長およびそれぞれのNifポリペプチドへの翻訳融合などの様々な変化の影響をモデル化するために、これらの高分解能構造を使用した。
【0396】
方法:分子モデリングに使用したソフトウェア
それぞれのNifポリペプチドおよびこれらのポリペプチドを含む複合体の相同モデルを、Accelrys Discovery Studio3.5に実装されたMODELLERプログラム(Sali and Blundell, 2013)を使用して構築した。相同モデルを築き上げるのに好適な鋳型を、Brookhaven Protein Databankに対してBLAST検索を使用して同定した。鋳型ポリペプチドを表4に列挙したが、それらの大部分がA.ビネランジー由来である。配列アラインメントを、Discovery Studio3.5に実装されたClustalWアルゴリズム(Sali and Blundell, 2013)を使用して実施した。すべての分子動力学シミュレーションを、Amber12を用いて実施した。
【0397】
表4.分子モデリングに使用した鋳型ポリペプチド
【表4】
【0398】
結果:NifH構造
NifD-NifK-NifH複合体からのA.ビネランジーNifH構造は、K.ニューモニエNifH配列と比較して、C末端が17アミノ酸残基短かったが、その他の点では、2つのNifHポリペプチドは、試験した他のNifポリペプチドに比べて、高度に相同であった(表4)。そのため、K.ニューモニエNifHポリペプチド配列を使用して、以下に記載したように構築した相同モデルは、その配列からこれらの17残基を除いた後に構築した。
【0399】
NifD-NifKおよびNifD-NifK-NifH複合体
K.ニューモニエからのNifDおよびNifKポリペプチドを使用したNifD-NifKα2β2ヘテロ四量体の構造のモデルを、分子動力学シミュレーションで構築し、試験した。モデルを、鋳型としてA.ビネランジー(PDB ID:1FP4、NifDおよびNifKのみ)からのNifD-NifK複合体の結晶構造を使用して、Accelrys Discovery Studio3.5で実装されたMODELLERアルゴリズムを使用して構築した。K.ニューモニエとA.ビネランジーとの間のNifDの同一性は73.2%であり、そして、NifKに関しては65%であった。次に、第二のモデルを、K.ニューモニエNifD、NifKおよびNifHポリペプチド(NifD-NifK-NifHα2β2γ4ヘテロ八量体)の3つすべてを含む複合体についてPDB ID:1N2Cを使用して構築した。第二のモデルが、CまたはN末端伸長によって悪影響を受けるNifHサブユニットとNifD-NifKの相互作用を明らかにしたか試験するために、これをおこなった。本発明者らは、NifKサブユニットのC末端が、複合体のコアに埋もれ、そして、NifKの5つのC末端残基と隣接するサブユニットとの間の水素結合および塩架橋を含めた、隣接するNifKおよびNifDサブユニットの両方のいくつかの残基と接触することを第二のモデルから観察した。これは、NifD-NifKモデルで観察したことと一致していた。本発明者らは、野生型K.ニューモニエ配列に対するNifKポリペプチドへのいずれかのC末端伸長が、複合体の破壊をもたらし、そして、安定形態の喪失またはニトロゲナーゼ活性に関して完全な無機能性複合体のいずれかにつながると結論づけた。対照的に、NifDおよびNifHサブユニットのC末端は、複合体の表面にあるので、そのため、伸長が、酵素複合体の形成および機能を破壊することなく、NifDおよびNifHポリペプチドのC末端になされ得ると予測される。A.ビネランジーNifH構造のモデルは、K.ニューモニエのC末端から除かれた17アミノ酸残基もまた、17残基伸長の範囲内にあったNifD-NifK-NifH複合体の「くぼみ」がなかった場合、表面で終止するであろうと予測した。同様に、NifD、NifKおよびNifHサブユニットのN末端もまた、複合体の表面にあるので、これらのN末端が伸長の付加に適しているはずであると結論づけられた。
【0400】
NifEN複合体
K.ニューモニエNifE-NifN配列に対して妥当な相同性を有する、NifE-NifNα2β2ヘテロ四量体構造は、Brookhaven Protein Databankで入手可能であったが、入手可能であった同等なNifD-NifKα2β2ヘテロ四量体構造に見られるように、複合体のコア内に埋め込まれるであろうNifN構造のC末端から23残基が欠けている。さらに、そのモデルに不要な不確実性を加えるであろうNifE構造のN末端から22残基が欠けている。NifE-NifNα2β2ヘテロ四量体は、A.ビネランジー(PDB ID:NifH-NifD-NifK-NifH複合体を含む1N2C、NifE-NifNおよびNifD-NifK複合体の4Åの重ね合わせRMSD)からのNifD-NifKα2β2ヘテロ四量体と同じ折り畳みを共有した場合、NifD-NifK構造を、代わりにNifE-NifN相同モデルを築き上げる鋳型として使用した。この追加利点は、NifEおよびNifN配列の末端のほとんど完全なカバー率であった。これはまた、それらが存在すべきとき、NifE-NifN末端とNifHとの見込まれる相互作用の調査を可能にし、そして、任意のサブユニットの末端領域の改変が、複合体形成または活性部位アクセス可能性を潜在的に妨げるであろう。
【0401】
そのため、K.ニューモニエNifE-NifNα2β2ヘテロ四量体モデルを、A.ビネランジーNifD-NifK構造を介して構築した。NifD-NifKモデルと類似して、構造のコアで終止したNifNのC末端以外、NifEおよびNifNサブユニットのCおよびN末端は、複合体の表面にて終止した。隣接するNifKサブユニット(相同モデルにおけるNifN)に接触させた適当な19残基の十分に保存された伸長により、K.ニューモニエNifE配列のN末端はNifDのN末端より18アミノ酸残基だけ短かった。モデルから、NifEのCまたはN末端の伸長が、複合体の構造または機能に関する有害な影響を有しないと予測されたが、NifNのC末端は、伸長を許容しそうにないと結論づけられた。51アミノ酸残基の比較的長い配列が、A.ビネランジーNifK構造N末端に存在するが、対応配列が、K.ニューモニエNifN配列には存在しなかった。モデルでは、追加のアミノ酸残基が、NifDおよびNifKユニットとの間の接触面沿いに置かれた。触媒コアはこの配列から隠された。これらの観察から、MPPによる切断後に、生理的pHにて陽性荷電(+8)した35残基のN末端伸長を残すpFAγ MTP配列は、恐らく非構造態様を維持し、かつ、晒された溶媒のままであろうと結論づけられた。さらに、K.ニューモニエNifNのN末端における追加的なアミノ酸残基が許容され得るという結論が支持されたという、NifD-NifK鋳型構造からの前例があった。NifNの斯かるN末端伸長が、任意のユニットの触媒機能または集合を妨げるであろうことを示唆するものはなかった。その一方、NifNのC末端が、酵素のコアの中に埋め込まれると予測された。とりわけ、それが、高度に保存されたNifKのC末端より6残基長く、それで、これらの残基が関与するであろう相互作用の正確な性質が不明なままである。A.ビネランジーNifD-NifKα2β2ヘテロ四量体とK.ニューモニエNifE-NifNα2β2ヘテロ四量体との間の折り畳みの類似性に基づいて、NifNのC末端、特に伸長、への改変が、複合体の二次構造および四次構造に対する有害効果を有すると予測される。野生型NifNポリペプチドと同じC末端が使用されるべきであると結論づけた。
【0402】
NifSモデル
K.ニューモニエNifSの相同モデルを、その構造機能単位がホモ二量体であるE.コリからのシステインデスルフラーゼを介して構築した。K.ニューモニエNifSのC末端における最後の11アミノ酸残基は、モデリングにおいて含まれなかった。K.ニューモニエNifSの相同モデルを、ホモ二量体として構築し、そして、NおよびC末端が構造表面にあるか観察した。分析したNifポリペプチドの大部分に関する場合、MPPによるプロセシング後に残留するpFAγ MTPアミノ酸残基が、ホモ二量体に対して有害影響を有しないであろうことが予測される。NifUおよびNifSポリペプチドが相互作用し得るがことは示された(Yuvaniyama et al., 2000)、しかしながら、その相互作用の正確な物理的性質が不明なままである。NまたはC末端のいずれかの伸長が、一方が存在している場合に、NifUとNifSと間の物理的相互作用を妨害し得る可性がある。
【0403】
NifUモデル
K.ニューモニエNifUに対してBrookhaven Protein Databankにおける最も緊密な合致は、ホモ三量体として結晶化されたアキフェクス・エオリクス(Aquifex aeolicus)からのPDB ID:2Z7E、鉄-硫黄クラスタタンパク質(IscU)であった。アラインメントでは、2Z7Eのモノマー(120残基)に関して良好な相同性を示したが、NifU配列はかなり長く(271残基)、そして、C末端の約150残基をモデル化しないままにした。そのため、C末端の151残基を除いた、K.ニューモニエNifUの相同モデルを、鋳型としてアキフェクス・エオリクスからの鉄-硫黄クラスタタンパク質(IscU)を使用して構築した。N末端は、十分にカバーされており、かつ、サブユニットの「上部」においてクラスタリングされた。NifUポリペプチドのN末端がMTP配列に融合された場合、その構造が、NifSポリペプチドとの相互作用を許容するかどうかは、確信をもって予測できない。
【0404】
概要では、Nifポリペプチドの大部分のN末端におけるアミノ酸伸長が、機能喪失の必要なしに許容されると予測されると結論づけた。NifKおよびNifNのC末端への伸長は、複合体形成および機能の破壊に対して最も感受性であると予測される。次に、これらの結果は、核ゲノムにおける導入遺伝子からの発現および植物ミトコンドリアのマトリックス内への転移のための機能的なニトロゲナーゼポリペプチドの設計を導く助けとなるように、本発明者らによって使用された。
【0405】
実施例11.NifDおよび他のNif融合ポリペプチドの同時発現
本発明者らは、NifD融合ポリペプチドの産生および蓄積を改善するためにさらなるアプローチを試みた。窒素固定細菌では、NifD、NifK、およびNifHは、ニトロゲナーゼ複合体の触媒コアを形成するために、水素結合形成、静電的相互作用および疎水性相互作用によって強く相互作用する。実施例10に記載のタンパク質構造モデリングは、NifKと他の2つのポリペプチド、NifDおよびNifH、との間の有効な複合体形成が、NifKの野生型C末端アミノ酸、すなわち、C末端における最後の4残基(例えば、配列番号7の残基517~520)としてのアミノ酸残基DLVR(配列番号69)、の存在に依存していることを明らかにした。先に記載した実験では、本発明者らは、9アミノ酸のHAエピトープを含めた17アミノ酸の追加C末端配列を有するNifK融合ポリペプチドを使用した。実施例10に記載のモデリングは、NifK配列が、C末端伸長のため、NifDとの相互作用に最適でないであろうと予測した。そのため、本発明者らは、野生型C末端を有するNifKポリペプチドと、NifD構築物との同時発現が、NifD融合ポリペプチドの同時蓄積を改善するか試験することを決めた。
【0406】
ベースベクターとしてpRA00を使用して、C末端伸長なしでpFAγ::NifK融合をコードする遺伝子構築物を、作製した。この構築物をpRA25と呼んだ(表3)。そのポリペプチドのアミノ酸配列を、配列番号60として提供する。pRA25(pFAγ::NifK)とpRA24(pFAγ::NifD::HA)の組み合わせを用いて、N.ベンサミアナの葉の浸潤を実施し、そして、先に使用したpRA11(pFAγ::NifK::HA)をpRA24と比較した。NifDポリペプチドのレベルを、HA抗体を使用して、ゲル電気泳動およびウエスタンブロッティングで比較した。驚いたことに、pRA25(C末端伸長またはエピトープを伴わないpFAγ::NifK)との同時浸潤は、pRA11(C末端伸長を有するpFAγ::NifK)との同時浸潤と比較して、NifD融合ポリペプチドの蓄積を実質的に増強した。この実験では、ミックス中へのpRA11の包含は、NifD融合ポリペプチドの蓄積を高めるように見えなかったが、反復実験では、pRA11を使用して増加したものがいくつか存在した。単独またはNifKおよびNifH構築物と組み合わせたNifD構築物の浸潤が続く、ウエスタンブロットの写真を図9に示した。図9に示したブロットについて、pRA19をそれ自身に浸潤させたとき(レーン11)、NifD融合ポリペプチドのバンドを見るには、より長い曝露が必要であった。
【0407】
他の浸潤物に関して、pFAγ::NifH::HA構築物、pRA10を、NifDとNifKの組み合わせに付加した(図9のレーン1~3)。これは、NifD融合ポリペプチドの蓄積のレベルをさらに高めた。これは、野生型C末端を有するNifKポリペプチドの存在が、pRA19からNifD翻訳産物を安定化させること、および、NifHの追加が、恐らくプロテアーゼ活性からそれを保護することによって、NifD融合ポリペプチドの蓄積をさらに高めたこと、を示した。
【0408】
NifD融合ポリペプチドの改善された蓄積が、ミトコンドリアマトリックスで起こったか試験するために、pFAγ::NifH::HA(pRA10)およびpFAγ::NifK(pRA25)構築物を、無機能性MTP(pRA22、mFAγ::NifD::HA)を有するNifDのバージョンと共に同時発現させた。その融合ポリペプチドは、N末端ドメインのアミノ酸だけがpFAγ::NifD::HAと異なっていた。
非マトリックス標的化mFAγ::NifD::HA融合ポリペプチドが、マトリックス標的化pFAγ::NifD::HAポリペプチドと同じレベルまで蓄積しなかったこと(レーン2と3を比較、図9)を観察した。これは、NifDポリペプチドの改善された蓄積が、恐らくMMで起きていることが確認され、かつ、それらが、タンパク質複合体を形成するために相互作用していたことが示唆された。この結論は、NifD::HAに融合したMTP配列のプロセシングの程度が、NifKおよびNifHポリペプチドの存在下で増強されたという観察によって強化された。
【0409】
コドンで最適化構築物pRA24を、NifK(C末端伸長なし)およびNifH構築物と共に使用したとき、NifD融合ポリペプチドは、より高いレベルに蓄積した(レーン1、図9)。別の浸潤物では、NifKおよびNifH構築物からの同時発現が、切断:非切断pFA::NifD::HA融合γポリペプチドの比を増強することが観察された。
【0410】
C末端伸長を伴うかまたは伴わない、NifKをコードする構築物の同時発現が、pFAγ::NifD::FLAG蓄積もまた高め得るかどうか決定するために、pRA25とpRA07の組み合わせを、葉細胞内に導入した。pRA10とのさらなる組み合わせもまた、一部の浸潤において実施した。FLAGエピトープを検出する抗体を使用して、NifD::FLAGポリペプチドを、ウエスタンブロットで検出し(上のパネル、図10)、そして、NifD::FLAG融合ポリペプチドの蓄積が、NifK::HA融合ポリペプチドとの同時発現によって高められたことを示した。本発明者らがNifD::FLAG融合ポリペプチドを検出したのは、これが初めてであった;それまでの検出の欠如については、実施例2~5に報告した結果を参照。NifD::FLAGポリペプチド蓄積のレベルは、C末端伸長を欠くNifKをコードする構築物の同時発現によってより高い程度まで高められた。NifD::FLAG融合ポリペプチドの最大レベルは、NifHおよびNifK(C末端伸長なし)構築物を同時浸潤させたときに観察された(レーン1、図10)。すなわち、NifH融合ポリペプチドの組み合わせへの追加が、NifD融合ポリペプチド濃度をより一層高めた。この結果は、エピトープタグ(HAまたはFLAG)にかかわらず、NifD蓄積が、NifH:HAおよびC末端伸張を伴わないNifKによって高められたことを実証した。
【0411】
さらなる浸潤からのウエスタンブロットを、図11に示す。この実験はまた、pRA07からのpFAγ::NifD::FLAG蓄積のレベルが、pRA10(pFAγ::NifH::HA)とpRA25(pFAγ::NifK)の同時導入によって増強されたことも示した。pRA25との組み合わせを、pRA11(NifK、C末端伸長を有する)との組み合わせと再び比較した、図11のレーン10および11を参照。NifDバンドの強度を定量し、そして、バックグラウンドのうちの1つの強度に対して正規化したとき、NifD::FLAG蓄積のレベルが、pRA11と比較して、pRA25との同時発現によって約50%増強されたことを決定した。そのため、NifK(C末端伸長なし)とNifHの組み合わせは、HAタグ付与NifDポリペプチド以外のNifD融合ポリペプチドの蓄積を補助し、そして、C末端伸長を有するNifKポリペプチドよりNifD融合ポリペプチドの蓄積を増強した。
【0412】
総合すれば、これらの結果は、NifH、NifKおよびNifDポリペプチドの組み合わせが、植物のミトコンドリアにおけるNifD融合ポリペプチドの蓄積を改善したことを示した。本発明者らが知っている限り、これは、NifHおよびNifKとの同時発現によって、植物細胞において、特に、ミトコンドリアに対して標的化されたときの、NifD蓄積の増強に関する最初の報告である。NifKの野生型C末端が、NifDの蓄積に有益であり、およびNifHがNifD融合ポリペプチドの存在量をさらに増強したとも結論づけた。NifD蓄積に対するNifHおよびNifKポリペプチドの正の効果は、NifDコード領域のコドン最適化によってさらに高められた。図9のレーン1のNifD融合ポリペプチドの存在量が、pFAγ::NifK::HAポリペプチドの存在量に近づいていることにも留意した。本発明者らは、これらの2つの主要成分の等モル存在量が、植物細胞におけるニトロゲナーゼ機能に有益であると考えた。
【0413】
NifD融合ポリペプチドレベルに対するNifKおよびNifHの有益な効果に基づいて、本発明者らは次に、NifS融合ポリペプチドの同時発現が、NifD蓄積を高めるかどうか試験した。NifSは、ニトロゲナーゼ集合の初期段階に関与するシステインデスルフラーゼであり、それによって、それが、Fe-Sクラスタ形成のために硫黄(S)を動員する。これらのFe-Sクラスタは、ニトロゲナーゼ複合体に不可欠である。これをおこなうために、それぞれが構築物のうちの1つを含むA.ツメファシエンスの組み合わせを、N.ベンサミアナの葉内に同時浸潤させた。pFAγ::NifD::FLAG(pRA07)融合ポリペプチドをコードする構築物を、この実験に使用した。驚いたことに、NifD::FLAG構築物と、pFAγ::NifS::HA構築物(pRA16)の組み合わせもまた、後者のポリペプチドの蓄積を増強した(図10のレーン6と11を比較)。NifS融合ポリペプチドの同時産生が、NifD融合ポリペプチドの蓄積を増強したと結論づけた。
【0414】
本発明者らは、この実験における別の驚くべき、かつ、予想外の現象について観察した。図10で見られるように、それらの対応する構築物から検出されるNifH::HA、NifK::HAおよびNifS::HA融合ポリペプチドのそれぞれのレベルは、構築物を単独で導入したときと比較して、NifD::FLAG構築物もまた同時導入したとき、実質的に低下した。レーン5と7、6と9および3と8を比較して、パーセンテージ減少は、NifH::HAでは42%、NifS::HAでは37%およびNifK::HAでは36%であった。pFAγ::NifD::FLAG構築物(pRA07)の同時導入は、同時導入した第二のNif融合構築物の発現に対してマイナスの影響があったように見えた。この現象をさらに調査した。
【0415】
植物細胞においてこれらのポリペプチドが関連することを示すために、pRA07を含む遺伝子組み合わせの導入後のタンパク質抽出物を、NifD::FLAGポリペプチドおよびそれに結合するあらゆる他のポリペプチドを免疫沈降させるために、FLAGエピトープを結合した抗体と共にインキュベートする。沈殿した(単数もしくは複数の)ポリペプチドを、電気泳動し、そして、そのブロットを、HAエピトープに対する抗体を用いて探査した。免疫沈降された、およびHAエピトープを含むポリペプチド、例えばpFA::NifH::HAなど、を検出する。非変性条件下でのサイズ排除クロマトグラフィーもまた、マルチポリペプチドタンパク質複合体の形成、特にNifD、NifHおよびNifK融合ポリペプチドの関連性を実証するために使用できる。
【0416】
実施例12.NifDK融合ポリペプチドの構築
NifHおよびNifK融合ポリペプチドの同時発現が、植物細胞におけるNifDレベルを安定させることに効果があったという知見は、本発明者らが、ニトロゲナーゼにおけるNifDのヘテロ四量体パートナーであるNifKをNifKポリペプチドに融合する方法を設計するように導いた。このストラテジーはまた、見込まれるプロテアーゼ活性からNifDポリペプチドを保護することもあると考えられ、そしてそれが低レベルのNifD蓄積に関与するであろうと本発明者らは考えた。さらに、細菌では、NifDおよびNifKポリペプチドがほとんど等量で存在し(Poza-Carrion et al., 2014)、かつ、ニトロゲナーゼの結晶構造において、サブユニットが1:1の比で見られる(Schmid et al., 2002)。本発明者らは、2つのポリペプチドの直接的な融合が、そのポリペプチドの等しい比を確実にすると考えた。
【0417】
しかしながら、このストラテジーは、次のように、単一ペプチド鎖の適切なタンパク質折り畳みを提供するために、NifDおよびNifKユニットを結合するためのアミノ酸リンカーの挿入を必要とすることがわかった。K.ニューモニエからのNifD-Kα2β2ヘテロ四量体の相同モデルを、鋳型としてアゾトバクター・ビネランジーからのNifD-K複合体の結晶構造を使用して構築した(PDB ID:1FP4(Schmid et al., 2002))。K.ニューモニエと対応するA.ビネランジーのポリペプチドをアラインすると、アミノ酸配列同一性は、NifDポリペプチドでは72.2%およびNifKポリペプチドでは67.3%であった。K.ニューモニエD22ヘテロ四量体の構造モデルでは、それぞれのNifDサブユニットのC末端は、NifKパートナーのN末端から約47Åであった。そのため、その長さのリンカーを、2個のユニットを接続するために設計した。そのリンカーは、長さが30残基であり、そして、アラニンによって置換される最終的なアルギニンを有するハイポクレア・ジェコリーナのセロビオヒドロラーゼII(受入番号AAG39980.1、ATPPPGSTTTR;配列番号61)からの既知の非構造リンカー領域からの11残基の部分、次に、8残基のFLAGエピトープ(DYKDDDDK;配列番号62)と最後に続く、アラニンによって置換されるアルギニンを有する、11残基の非構造リンカー配列の別のコピー(完全なリンカー配列:ATPPPGSTTTADYKDDDDKATPPPGSTTTA;配列番号63)から成った。アルギニンの置換を、リンカーの中央のFLAGエピトープにおける陰性荷電残基との見込まれる静電相互作用を低減するように設計した。それらの本来の向きで結合するDおよびKユニットの能力に対して有害である、明白な相互作用または立体構造の傾向が、いずれのNifD-NifKユニットと融合ポリペプチドのリンカーとの間に、またはリンカー自体の中に存在しないことを確実にするために、形状の最適化および平衡化を、
10.0Åの溶液からの最小境界距離を有する八面体TIP3Pウォーターボックス中で定圧にて複合融合ポリペプチド(あらゆる金属中心の包含なし)の二量体により実施した。計算を、2fsの時間ステップとSHAKE制約条件を使用した、合計5nsにわたり298Kにてff99SB力場を用いるAmber12を使用して実施した。
【0418】
その30アミノ酸リンカーを含めた、NifD-リンカー-NifK複合ポリペプチドの予測される構造(図12)を試験し、そして、リンカーの追加は、完全な融合ポリペプチドが天然NifD-NifK複合体を模倣した構造に折り畳まれることを可能にすることを示した。NifD-リンカー-NifKポリペプチドの二量体に結合した2つのNifHサブユニットをさらに含む第二のモデルを結集し(図13)、そしてそれは、リンカーの追加がNifHサブユニットの結合を妨げるように見えなかったことを示した。そのため、融合ポリペプチドをコードする構築物を、pFAγMTPを含むN末端伸長を有したpRA00に基づいて設計し、作製した(pRA02)。pFAγ::NifD-リンカー-NifK融合ポリペプチドのアミノ酸配列を、配列番号64として提供する。
【0419】
第二の構築物では、HAエピトープを含むC末端伸長を、HA抗体を用いた融合タンパク質の検出を可能にするように、コードされたポリペプチドのNifKユニットのC末端に追加したが、それ以外の点では、コードされたポリペプチドの残りの部分は、pRA02と同じであった。第二の構築物を、pRA20と呼んだ。pFAγ::NifD-リンカー-NifK::HA融合ポリペプチドのアミノ酸配列を、配列番号65として提供する。最初にコードされた融合ポリペプチドは、構造成分pFAγ::NifD-リンカー(FLAG)-NifKを有したが、それに対して、第二のものは、pFAγ::NifD-リンカー(FLAG)-NifK::HAであった。
【0420】
pRA20をN.ベンサミアナ細胞内に導入し、そして、タンパク質抽出物をウエスタンブロッティングによって試験したとき(図14)、2つの特有のバンドを、約120kDaにて、ポリペプチドについて予測されるサイズ範囲内で検出した。2つのバンドの近さが、MTPプレ配列の未プロセシングおよびプロセシング済形態の両方が存在していることを示唆した。上のバンドは下のバンドより高い強度のものであり、プロセシングが一部にだけ起こったことを示唆した。pFAγ::NifD-リンカー(FLAG)-NifK::HAポリペプチドの蓄積のレベルは、並行浸潤におけるpFAγ::NifD::HAのレベルより実質的に高かったが、pFAγ::NifK::HAのレベルよりずっと少なかった(図14)。
【0421】
実施例13.植物体におけるニトロゲナーゼポリペプチドの同時発現のための多重遺伝子構築物の作出
植物細胞において機能的なニトロゲナーゼを作製するために、3つのコア構造タンパク質NifD、NifHおよびNifKをコードする遺伝子、ならびにNifB、NifEおよびNifNを含めた多くのアクセサリーNifタンパク質が、細胞において協調的に導入され、そして、発現されることが必要である。複数の導入遺伝子のゲノム組み込みは、異なるNifポリペプチドの発現をそれぞれ指示する、1つのT-DNAの中に複数の発現カセットを含有する形質転換構築物を使用して達成してもよい。所望であれば、斯かる設計を、一カ所の遺伝子位置へのT-DNAの組み込みのために提供されるであろう。そのため、本発明者らは、一回の形質転換事象で組み合わせられる場合、植物ゲノムにおける15個の導入遺伝子を含む3つのT-DNAの組み込みを可能にする3つの独立した多重遺伝子構築物を設計し、作製した。その3つのT-DNAは、以下のように、それらが独立して選択され得るように、異なる選択マーカー遺伝子をそれぞれ含んだ。
【0422】
Dr Thomas Vanhercke(CSIRO Agriculture and Food, Canberra, Australia)から入手したバイナリーベクターpDCOTを、出発ベクターとして使用した。それには、バイナリーベクターpORE_O4(Coutu et al., 2007;GenBank受入番号AY562542.1)と同じ骨格配列、ならびに左縁および右縁T-DNA配列がある。選択マーカー遺伝子カセットに加えて、pDCOTのT-DNA領域は、4つの発現カセットを含有し、そして、各カセットは、強力な、構成的プロモーター、およびクローニング目的の特有の制限部位を両側に配置した、転写ターミネータ/ポリアデニル化領域を含んだ。各プロモーターに続いて、各発現カセットはまた、植物細胞において産生されるであろうmRNAからの最適化翻訳のための特有のクローニング部位直前のタバコモザイクウイルスΩリーダー配列(TMVΩ)を含んだ。異なるカセットのプロモーターおよびターミネータ配列を、ベクター内での配列の反復を制限するように変更し、そして、これが形質転換に続く植物内での発現のサイレンシングを低減すると考えた。さらに、カセット1および2、ならびにカセット4、そして、選択マーカーカセットは、ある発現カセットから別のものへの転写干渉を低減するために、それぞれマトリックス関連領域(MAR)配列によって区切られた。pDCOTの選択マーカー遺伝子カセットは、抗生物質カナマイシンに対する耐性をもたらすNPTII遺伝子であった。pDCOTベクターは、発現カセットの配置においてモジュールであり、順に、プロモーター、TMVΩ、クローニング部位およびターミネータ/ポリアデニル化配列を含む各発現カセットは、特有の制限部位が両側に配置され、そして、カセットの直接的な交換を可能にした。
【0423】
形質転換ベクター内の個々の遺伝子発現カセットの数を増やすために、以下のように、本来のpDCOTベクターに存在する特有のKpnI/AatII部位の間のpDCOT内に、第五の発現カセットを挿入した。第五の発現カセットのDNA断片を、増強されたCaMV35Sプロモーター、それに続いてTMVΩリーダー配列、次に、導入遺伝子の挿入のための特有のクローニング部位(Bstz171/SbfI)、最後にnos3’ターミネータ領域、を含むように設計し、合成した。5’KpnI部位と3’AatII部位が両側に配置された選択カセット全体を、pDCOTへの方向性クローニングのための制限部位を使用して、pDCOT内に挿入した。これは、MAR配列と選択マーカー遺伝子カセットとの間に第五の発現カセットを挿入した。pKT100の構造を、図15に図式的に示す。
【0424】
pDCOTおよびその誘導体pKT100の一部のプロモーターは、
明所における緑色組織での導入遺伝子発現のために提供されたA.サリアナのルビスコ小型サブユニット遺伝子(Arath-Rubisco/SSU)由来のであったが、それに対し、ベクターの他のカセットは、構成的発現のためのCaMV35Sプロモーター配列を使用した。Nifポリペプチドの発現のための最初の構築物に関して、Arath-ルビスコ/SUUプロモーターが、他の植物ウイルスベースの構成的プロモーターに置換され、一方、最終的なベクター内の配列の反復を削減するように、すべてが構成的に発現されるよう所望した。選択される代替の構成的プロモーターは、ケストルム・イエロー・リーフ・カーリングウイルス(Cestrum Yellow Leaf Curling Virus)(CmYLCV)プロモーターCm4(Sahoo et al., 2014)、ならびにサブタレニアン・クローバー・スタント・ウイルス(Subterranean Clover Stunt Virus)(SCSV)プロモーターS7およびS4(Schunmann et al., 2003)の誘導体であった。使用したCm4プロモーター配列は、5末端のMluI部位およびいずれかの不必要な3’UTR配列の存在を避けるために、CmYLCV転写開始部位(Sahoo et al., 2014)に対して-271~+5のヌクレオチドを含んだ。各プロモーター配列は、5’UTRのTMVリーダー配列を含み、かつ、それらが置換するプロモーターに使用されるものに合致した特有の制限部位、具体的には、CmYLCV Cm4向けのMluI/BamHI、SCSV S7向けのNruI/ApaIおよびSCSV S4向けのXmaI/NotI、が両側に配置された。各プロモーター配列は、商業的な供給業者によって合成された。標準的な制限消化および方向性クローニングを、pKT-HCを作製するための連続した様式で各プロモーター配列を交換するために使用した。
【0425】
3つのベクターを使用して、植物細胞において最大15個の導入遺伝子を協調的に発現するために、各ベクターが異なる選択マーカー遺伝子を有することが所望された。pDCOT選択カセットの選択マーカー遺伝子は、カナマイシン耐性をもたらすNptII酵素をコードした(Bevan et al., 1983)。それぞれ、ハイグロマイシンBおよびグルホシネート・アンモニウム/フォスフィノスリシン(BASTA)への耐性をもたらす、Hpt(Waldron et al., 1985)およびBar(Block et al., 1987)をコードする代替の遺伝子を、これらが選択した植物に使用するのに好適であったので選択した。pDCOTの選択カセットのコード領域のNptII制限部位を両側に配置した制限部位に合致するFseI/AscI制限部位が両側に配置された、これらのポリペプチドをコードするDNA断片は、商業的な供給業者によって作製された。標準的な制限消化および方向性クローニングを、pKT-HCのNptIIコード領域をHptコード領域またはBarコード領域のいずれかで置き換えるのに使用し、そして、pKT-HC、pKT-ICおよびpKT-JCとも呼ばれる一連の3つの多重遺伝子ベクター作出した。それぞれ、図15に示す遺伝構造、および表5に概略した成分を有した。
【0426】
表5.T-DNAベクター内のマルチ発現カセットの成分
【表5】
【0427】
実施例14.植物細胞における多重遺伝子ベクターからのNifポリペプチドの発現
多重遺伝子ベクター内のそれぞれの発現カセットの導入遺伝子発現能力を実証および比較するために、タンパク質コード領域が発現カセットのそれぞれに別々に挿入されたpFAγ::NifH::HA融合ポリペプチドをコードする、一連の5つの構築物を作製した。MTP-NifH-HAの正確な挿入を伴った構築物を、それらのHindIII制限酵素消化産物パターンによって同定し、そして、アグロバクテリウム・ツメファシエンス株GV3101を形質転換するのに使用した。次に、それぞれ35Sプロモーターによって駆動される、3つのGV3101株、すなわち、pFAγ::NifH::HA構築物を含有するもの、第二のpRA01、およびp19サイレンシングサプレッサタンパク質の発現のためのベクターを含有する第三の株、の混合物で浸潤した葉を用いた、N.ベンサミアナの葉の一過性発現系(実施例1)を、タンパク質発現を評価するのに使用した。この実験では、pRA01は、GFP蛍光によるタンパク質合成の正の対照としての役割を果たした。4日後に葉組織を採取し、そして、先に記載したように、タンパク質抽出物を、ゲル電気泳動およびウエスタンブロッティングによって分析した。ウエスタンブロットを、抗HAおよび抗GFP一次抗体と、西洋ワサビペルオキシダーゼ(BioRad)に連結したヤギ抗マウス二次抗体を用いて探査した。化学発光シグナルを、Amersham ECL Western Blotting Detection Reagent(GE Healthcare Life Sciences)を適用することによって発生させ、そして、CCD撮像装置を使用して記録した。pFAγ::NifH::HAの発現は、それぞれの個々の発現カセットから観察され(図16)、それによって、T-DNAの一過性の導入後の葉細胞において強力な、構成的様式でNif融合ポリペプチドを発現する、多重遺伝子ベクターのそれぞれのプロモーターの能力の妥当性を確認する。
【0428】
次に、pKT-HCベクターに基づいて、5つの個々のNifが融合ポリペプチドを1つのT-DNAにコードする多重遺伝子ベクターを構造した。それぞれのNifコード領域を、各発現カセットの特有のクローニング部位によって連続様式で挿入した。pFAγ::NifH::HAのコード領域をカセット1に挿入し、pFAγ::NifS::HAのコード領域をカセット2に挿入し、pFAγ::NifM::MYCのコード領域をカセット3に挿入し、pFAγ::NifU::HAのコード領域をカセット4に挿入し、およびpFAγ::NifZ::MYCのコード領域をカセット5に挿入した(図4)。pFAγ::NifM::MYC融合ポリペプチドのアミノ酸配列を、配列番号67として提供する。HC13とも呼ばれる、最終的な構築物を、A.ツメファシエンス株GV3101を形質転換するために使用し、そして、形質転換細胞を、先に記載した方法を使用して、N.ベンサミアナの葉を浸潤するために使用した。ウエスタンブロット分析は、HC13から発現されたポリペプチドが、pFAγ::NifH::HA、pFAγ::NifM::MYC、pFAγ::NifS::HAおよびpFAγ::NifU::HAについて予測されたサイズにて明確に検出され得ることを示した(図17)。NifMおよびNifU融合ポリペプチドは、NifHおよびNifS融合ポリペプチドより低レベルにて蓄積したが、しかし、まだはっきりと検出できた。対照pFAγ::GFP(レーン2)のレーンでもまた観察された、バックグラウンドシグナルは、pFAγ::NifZ::MYCについて予測されたバンドと同じ位置にあったが(図17B)、レーン4のシグナル強度は、レーン2よりはるかに強かった。本発明者らは、5つのNif融合ポリペプチドすべてが、単独の、隣接した遺伝子構築物から発現されたと結論づけた。
【0429】
植物の安定した形質転換
遺伝子構築物を含むアグロバクテリウム・ツメファシエンス株を、浸漬法(Bechtold et al., 1993)、具体的には、HC13によってA.サリアナを形質転換するために使用した。種子を、処理した植物から採取した。種子を、安定に形質転換された植物を選択するための適切な選択剤を含む組織培養培地に播種し、そしてそれを、成熟するまで栽培するために土壌に移す。トランスジェニックであることが示されている植物からの種子を、採集し、そして、子孫植物を作製するために播種する。導入遺伝子のホモ融合体である子孫植物を同定し、選択する。導入遺伝子の発現レベルを、標準的なqRT-PCR法で分析し、そして、エピトープを含有する融合ポリペプチドの蓄積レベルを、先に記載した一過性発現実験のようにウエスタンブロッティングで測定する。
【0430】
実施例15.同時発現された導入遺伝子に対するNifD構築物の効果
実施例11に記載のように、特定のNifDが融合ポリペプチド(pRA07、pRA19)をコードする構築物を、他のNif発現構築物と同時浸潤させたとき、すべてのNif発現構築物のすべての発現が、有意に低減されたことを予想外に観察した(図10)。特定の構築物pRA19は、ヒトコドン利用にしたがって最適化したヌクレオチド配列を有した。そのため、本発明者らは、それを回避する試みにおいて、低減された発現の範囲と原因を理解しようと考えた。
【0431】
まず、この効果がpRA19とpRA01の組み合わせに特異的であったか調べるために、pRA01からのT-DNA(pFAγ::GFP)を、単独またはpRA19(pFAγ::NifD::HA、最適化したヒトコドン)もしくはpRA16(pFAγ::NifS::HA)と組み合わせて、N.ベンサミアナ葉細胞に導入したか、あるいは、3つのpRA01、pRA19およびpRA16すべてを組み合わせた。先にあるとおり、サイレンシング抑制因子p19を発現する構築物を含むA.ツメファシエンスを、対照を含めたすべての浸潤物に含んだ。浸潤の4日後に、浸潤させたN.ベンサミアナの葉の背軸面を、紫外線(UV)光に晒し、そして、GFP発現の強度を測定するために写真撮影した。pRA01を用いて浸潤した領域に見られた蛍光と比較して、ほとんど見ることができない蛍光を有する、pRA19+pRA01のGFP蛍光の有意な低減があった。対照的に、pRA16+pRA01に関して、蛍光は明確に見えたが、2つのT-DNAを使用したときに希釈から予想できるように、pRA01単独と比較して、蛍光のいくらかの低減が観察された。次に、GFPおよびNifS融合ポリペプチド蓄積のレベルを、抗HAおよび抗GFP抗体を使用した、ゲル電気泳動およびウエスタンブロッティングによって比較した。観察したGFP蛍光レベルと一致して、pRA19がpRA01と共に同時浸潤させたとき、pFAγ::GFP蓄積のレベルは低下したが、その一方で、pRA16とpRA01を同時導入したとき、pFAγ::GFPのレベルはわずかだけ下がった(図18)。3つの構築物すべてを同時導入したとき、pRA19が含まれなかったときと比較して、pFAγ::NifS::HA蓄積のレベルもまたかなり下がった。そのため、pRA19からのT-DNAの導入によって引き起こされる低減は、pRA01からのpFAγ::GFPの低減に限定されなかった。
【0432】
この下方調節の範囲および様式をさらに調べるために、追加の構築物を、単独で、もしくはpRA19と組み合わせて、またはNifD融合ポリペプチドをコードする他の構築物と共に導入し、そして、タンパク質とmRNA導入遺伝子発現レベルの両方を分析し、ならびにUV光下での蛍光強度も分析した。先と同じように、pRA19からのT-DNAの導入は、GFP蛍光、ならびにGFPと、同時導入したpRA16からのpFAγ::NifS::HA融合ポリペプチドの両方のタンパク質レベルの低減につながった。しかしながら、これは、pRA24(pFAγ::NifD::HA、アラビドプシスコドン利用によるコドン最適化)またはpRA20が同時導入されたときに、NifD-NifK融合ポリペプチド(pFAγ::NifD-リンカー-NifK::HA)をコードする場面ではなかった。とりわけ、pRA24およびpRA20は、pRA19に対して同一のNifDアミノ酸配列をコードしたが、それらがアラビドプシスコドン利用に基づいてコドン最適化されたので、異なるヌクレオチド配列を使用した。これらの観察に基づいて、本発明者らは、pRA19の下方調節効果が、pRA19のT-DNAから転写される特定のNifDコードRNA配列によって引き起こされる可能性があると考えた。
【0433】
下方調節効果がタンパク質および/またはRNAレベルで起こるか特定するために、RNAを、同じ浸潤領域から抽出し、そして、qRT-PCRによって分析した。GFP特異的プライマーを使用して、pRA19+pRA01組み合わせのGFP mRNAのレベルが、pRA01単独のレベルに対して約25%以下まで低減したことがわかった。pRA16とpRA01を組み合わせたとき、低減は、2つの構築物を組み合わせたときに予測されるとおり、pRA01単独と比較して50%未満であった。次に、pFAγペプチドをコードするRNAの一部にアニールするプライマーを使用することで、該プライマーが同時に発現された両方の導入遺伝子からmRNA領域を増幅する場合、qRT-PCRアッセイは、導入遺伝子低減のレベルが、pRA16+pRA01と比較して、pRA19+pRA01組み合わせに関して約50%超であったことを測定した。総合すれば、これらの結果は、N.ベンサミアナ葉細胞へのpRA19の導入が、同時発現された導入遺伝子のmRNAおよびタンパク質レベルの両方を低減する効果を有したことを示した。対照遺伝子(GADPH)の発現レベルがすべての浸潤実験を通じて一定であり、かつ、総タンパク質合成のレベルは、ゲルのクーマシー染色によって証明されたとおり、すべての浸潤物について類似しているように見えたので、これが、一般的なmRNA/タンパク質の下方調節効果でないと思われた。総合すれば、これらの結果は、pRA19のT-DNAから産生されるNifDポリペプチドをコードするmRNAの固有特性が、mRNAおよびタンパク質レベルにて同時導入された導入遺伝子の下方調節につながったことを示唆した。
【0434】
RNA介在性遺伝子サイレンシングの十分に確立された様式の一つは、相補配列またはほぼ相補的配列を有するポリヌクレオチドの発現を低減するアルゴノート(Argonaute)タンパク質を誘導する21~24ヌクレオチドの長さのsiRNAによって影響を受けること、RNA干渉(RNAi)と呼ばれるプロセス、が知られている。しかしながら、pRA01(GFP)またはpRA16(NifS)によってコードされるRNA配列と、pRA19からのヒトコドン最適化コード領域のRNA配列のアラインメントが、アルゴノート媒介性サイレンシングに必要とされる配列相補性を提供するのに十分な相同性の範囲にないことがわかった。この知見に基づいて、特定のNifD RNA配列が、同時導入した導入遺伝子のサイレンシングを始動したが、サイレンシングエフェクターが、pRA19構築物内-GFPおよび他の導入遺伝子と配列相補性を共有する領域内のほかの場所に常駐していると仮定した。この仮説を試験するために、pRA19と同一であるが、mMTPを含有し、そのため、MTP領域の部分で異なるRNA配列と評価されるpRA22(mFAγ::NifD::HA)を、pRA01と同時導入した。比較のために、pRA19+pRA01とpRA24+pRA01組み合わせもまた導入した。蛍光強度から、pRA22+pRA01組み合わせは、pRA24+pRA01組み合わせとほぼ同じレベルにてGFPを発現したように見えた。ウエスタンブロッティングから、pRA24+pRA01およびpRA22+pRA01組み合わせの両方が、GFPタンパク質の蓄積の低減をほとんど示さなかったが、その一方で、pRA19+pRA01は、GFPタンパク質の有意な減少を示した。これらの結果は、MTP配列を、他の導入遺伝子に対して低い相補性を有する配列に修飾することが、ヒトコドン最適化NifD配列による下方調節を緩和することを実証した。これは、pFAγ配列と組み合わせた、pRA19のヒトコドン最適化NifD RNAが導入遺伝子の下方調節を始動したことを示唆した。あるいは、しかし、相互排他的ではなく、NifDヌクレオチド配列自体は、下方調節の開始を始動するのに十分であるが、NifD RNAの領域上流が、それらの下方調節を引き起こすために、導入遺伝子に対して相補的であることが必要であった。
【0435】
他の導入遺伝子に対するヒトコドン最適化NifDの下方調節効果が、NifDタンパク質ではなく、NifD RNAの特性であることを確認するために、
pRA19とほとんど同一のRNA配列であるが、未成熟終止コドンおよびMTP内のフレームシフトを作り出す2つのヌクレオチド変更を有した構築物を設計した。これは、pRA26(ΔFAγ::NifD::HA)と呼ばれた。下方調節の機構がタンパク質媒介性ではなく、RNA媒介性である場合、pRA26が、GFPおよびpRA19に類似した他のNif構築物を下方制御すると予測される。追加試験として、ヒトコドン最適化NifD構築物pRA07(pFAγ::nifD::FLAG)もまた同時導入した。pRA07は、HAエピトープはFLAGによって置換されるので、エピトープ領域ではなく、NifD領域のpRA19に対して同一のRNA配列を発現する。5日後に、蛍光のレベルを、浸潤区域で観察した。先の実験と一致して、GFP蛍光は、pRA19+pRA01組み合わせに関して低減した。蛍光はまた、pRA26+pRA01およびpRA7+pRA01組み合わせの両方に関して有意に減少した。ウエスタンブロッティングは、pRA26が、pRA19と比較したGFP発現を低減する際に類似効果を有したことを示した。ヒトコドン最適化NifD mRNAは、NifDタンパク質が産生されないときであっても、またはエピトープが変更された場合であっても、他の導入遺伝子の発現を低減できると結論づけた。ヒトコドン最適化NifD RNA配列の変更が導入遺伝子の下方調節を妨げたことを示す以前の結果と組み合わせて、pRA19のNifD配列による導入遺伝子発現の低減は、特定のNifDヒトコドン最適化RNA配列の結果として起こったことを、最終的に実証した。pRA19のpFAγ::NifD::HA融合ポリペプチドコード領域のヌクレオチド配列を、配列番号68として提供する。
【0436】
実施例16.Nifポリペプチド機能を試験するための細菌発現実験
先の実施例に記載したとおり、遺伝構築物を作製し、植物細胞におけるNif融合ポリペプチドの産生について試験し、そして、A.ツメファシエンスによる合成遺伝子の導入を用いたN.ベンサミアナ葉細胞系を使用して例示した。融合ポリペプチドを、NifポリペプチドのN末端に付加されたミトコンドリア標的化ペプチド(MTP)、およびC末端伸長に付加されたエピトープタグのインフレーム融合を有するように設計した。タンパク質の折り畳みおよび関連のモデリング(実施例10)では、N末端およびC末端伸長の大部分が、複合体形成および機能を妨げるはずであると予測したが、本発明者らは、これらの伸長が天然Nifポリペプチドに関連した融合ポリペプチドの機能に影響するかどうか、インビトロ生物系で試験したかった。
【0437】
植物細胞における発現およびミトコンドリアへの転移、ならびにそれらのプロセシングポリペプチド産物のために設計したNif融合ポリペプチドを、細菌ニトロゲナーゼ発現系におけるそれらの機能に関して試験した。本発明者らは、ニトロゲナーゼ系への添加によって個別に、または繰り返してもしくは他の修飾Nifポリペプチドと組み合わせであっても、それぞれの修飾ポリペプチドをアッセイすることを可能にするシステムを設定した。この系は、E.コリにおいて、野生型Nifポリペプチドをコードする対応遺伝子に代わって、試験するNif融合ポリペプチドをコードする単一のNifの遺伝子を交換することによって修飾した野生型ニトロゲナーゼ遺伝子クラスタを使用した。この後には、Nif融合ポリペプチドが、対応する野生型Nifポリペプチドに代わって機能するかどうか特定するために、それぞれエチレンおよび水素産生アッセイを使用したニトロゲナーゼまたはニトロゲナーゼレダクターゼ活性のアッセイが続いた。Smanski et al. (2014)の系に基づく細菌ニトロゲナーゼベクター系が、このベースであった。この系では、ニトロゲナーゼ活性に必要とされる野生型遺伝子のすべてを、単一の、幅広い宿主範囲の発現ベクター、pMIT2.1の中に含有し、ここで、遺伝子の発現は、第二のプラスミド、pN249からの誘導プロモーター/T7-RNAポリメラーゼ系を用いて制御した。E.コリで発現されるとき、野生型細菌Nifポリペプチドの完全なセットが産生され、標準的なアセチレン還元アッセイにおけるアセチレンからのエチレンの産生によって、またはニトロゲナーゼレダクターゼ活性に代わる水素産生によって(ARA、ニトロゲナーゼ活性の事実上の計測)、その活性がアッセイされ得るニトロゲナーゼ酵素複合体を一緒に提供した。
【0438】
pMIT2.1およびその誘導体と一緒に使用する方法は、以下のとおりであった。E.コリ株DH5αの細胞を、それぞれ抗生物質クロラムフェニコールおよびスペクチノマイシンへの耐性を与える2つのプラスミドpMIT2.1およびpN249で形質転換した。形質転換細胞を、クロラムフェニコール(34mg/L)およびスペクチノマイシン(80mg/L)を含有するLB培地(10g/Lのトリプトン、5g/Lの酵母抽出物、10g/LのNaCl)上で培養することによって選択した。形質転換細胞を、抗生物質の入ったLB培地中、37℃にて一晩、1.0の吸光度まで好気的に培養した。培養物を10,000gにて1分間遠心分離し、そして、上清を取り除いた。その細胞を、1.5のmL/Lの10%セリンを補った、N源不含の、25g/LのNa2HPO4、3g/LのKH2PO4、0.25g/LのMgSO4.7H2O、1g/LのNaCl、0.1g/LのCaCl2.2H2O、2.9mg/LのFeCl3、0.25mg/LのNa2MoO4.2H2Oおよび20g/Lのスクロース(最少培地)を含有する誘導培地1倍量中に再懸濁した。原液を、濾過滅菌した。Nif遺伝子発現の誘導のために、培地には、0.1mM、0.5mMまたは1.0mM、特に明記しない限り、概して1.0mMの終濃度にて、イソプロピル-β-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG;Gold Bio#I2481C25 259)を補った。細胞懸濁液を、13ccの培養フラスコに移し、そして、クリンプ-ロックシステムを備えた気密ゴムシールを用いて蓋をし、ヘッドスペースを20分間、純N2ガスでスパージした。次に、懸濁液を、200rpmで振盪しながら、30℃にて5時間インキュベートした。この後、アセチレン還元アッセイ(ARA)を、1.5ccの純C22(BOCガス、装置グレード)の注入と3時間からその後18時間までのさらなるインキュベーションによって開始した。両時点のエチレン産生を、Agilent 6890N GC装置を使用した炎イオン化検出(GC-FID)を用いたガスクロマトグラフィーで計測した。ヘッドスペースサンプル(0.5cc)を、10:1分割モードによりスプリット/スプリットレス注入口に手動で注入した。装置を、以下のパラメーターで操作した:200℃の注入口およびFID温度、35cm/秒の担体Heの平均速度、120℃の等温オーブン温度。RTアルミナBond/MAPDカラム(30m×0.32mm×5μm)を、検出装置の末端に連結した5mの粒子トラップカラムと共に使用した。装置の分析性能を、好適なブランクおよび標準を実施することによって評価した。これらの条件下では、エチレンは、約2.3分でカラムから放出され、およびアセチレンは約3.1分でカラムから放出された。このGCシステムは、この様式で唯一の他の検出可能ピークとしてアセチレンからの明確な分解能で0.00001%atmまで低いレベルにてエチレンを検出可能であり、それほど高感度であった。エチレン産生に関して、0.5ccのヘッドスペースサンプルをIPTG添加後に様々な時点、通常、3時間および18時間で採取した。
【0439】
正の対照としてE.コリ株DH5αの野生型pMIT2.1およびpN249を使用したアッセイシステムは、成長培地にIPTGが添加されなかったときには、痕跡レベルのエチレンしか産生せず、それに対して、成長培地への0.1mM、0.5mMまたは1.0mMのIPTGの添加が、エチレン産生量を大きく増強した。エチレン産生速度は、3時間のサンプリングから18時間まで大いに増加し、またIPTG濃度が増加するにつれても増加し、そして、増加したNif遺伝子発現に伴う増加したニトロゲナーゼ活性を示した。これらの結果は、IPTGが、この発現系においてNif遺伝子発現およびニトロゲナーゼ形成を急速に誘発したことを示し、Smanski et al., (2014)の報告と一致した。
【0440】
先の実施例に記載のとおり、pFAγ MTPアミノ酸配列は、植物ミトコンドリア内で切断されて、プロセシングNif融合ポリペプチドのNifポリペプチドのN末端に融合した38アミノ酸残基を残した。斯かるN末端伸長が融合ポリペプチドの機能を変更するか試験するために、および微生物アッセイシステムが動作するか実証するために、117bpのDNA断片(配列番号70)を、鋳型としてpRA10 DNAを使用したPCRによって合成した。このDNA断片は、翻訳開始のためのMetによるN末端のIle残基の置換、およびC末端におけるThr残基の追加を除いて、pFAγ MTPのC末端部分と同じ配列の38個のアミノ酸をコードした。それを、Nifポリペプチドのいずれか1つをコードする遺伝子の開始コドンの上流に直接インフレーム融合されたときに、キメラ遺伝子が、選択されたNifポリペプチドへの翻訳融合をコードするように設計した。以降、pFAγ-Cと呼ばれる、39アミノ酸ポリペプチドのアミノ酸配列を、配列番号71として提供する。
【0441】
pFAγ-CのDNA断片を、平滑末端連結反応、スプライスオーバラップPCRおよび誘導リガーゼサイクル技術(de Kok et al., 2014)を含めた様々な技術によって、pMIT2.1内のNifH、NifM、NifD、NifK、NifE、NifNまたはNifBをコードする遺伝子の翻訳開始コドンのすぐ上流に挿入した。例として、117bpのDNA断片を、次のようにして、pMIT2.1上のNifD遺伝子のタンパク質コード領域とインフレーム融合した。pMIT2.1のDNAを、NifD遺伝子の開始コドン(ATG)が5’末端に存在し、かつ、翻訳開始コドンの5’のすぐ近くのNifD遺伝子のヌクレオチド配列が、その産物の3’末端を形成するような、直鎖DNA産物を作製するためのプライマーを使用して増幅した。これを達成するために、PCRを、プライマーNifD-F 5’ATGATGACTAATGCTACTGGCGAACGTAACCTG-3’(配列番号72)およびNifD-R 5’CCGGCTCCTCCGCTAGATAAAAATGTGA-3’(配列番号73)を使用して実施した。増幅を、pMIT2.1 DNA鋳型と共に、Phusion-HF Proofreadingポリメラーゼ(NEB、カタログM05081L)を使用し、96℃にて30秒間、次に、92℃にて20秒間、55℃にて20秒間、そして72℃にて6分間を30サイクル、次に、72℃にて10分間、のPCRプロトコールを用いて実施した。反応産物を、DpnIと共に処理して、ベクター鋳型DNAを取り除いた。PCR産物は、実質的に、NifD翻訳開始コドンのすぐ上流で開環された、pMIT2.1の線状形態であった。117bpの断片を、T4 DNAリガーゼを使用して線状化pMIT2.1に連結して、pCW1001を作製した。117bpの断片の連結はまた、Illumina Ampligase(Illumina, A8101)およびKok et al. (2014)に概説された条件を使用した連結サイクル反応条件(LCR)を使用して実現した。
【0442】
pMIT2.1 DNAに対する増幅反応の信頼性と精度を測定し、そして、野生型Nif遺伝子におけるヌクレオチド置換が起こっていないことを実証するために、線状化pMIT2.1 DNAのサンプルを、環状分子を作り直すように連結し、そして、E.コリがDH5αを形質転換するのに使用した。再連結pMIT2.1を含有する約10個の別々のコロニーを、先に記載したように、アセチレンからのエチレン産生についてアッセイして、不活性化突然変異が、PCR増幅によってDNA内に組み込まれないことを実証する。構築物の精度と信頼性を確実にするために、ベクターはまた配列決定されてもよい。
【0443】
ベクターpCW1001およびpN249を、DH5αに導入し、クロラムフェニコールおよびスペクチノマイシンによって形質転換細胞を選択した。誘導培地中でこれらの細胞から培養した培養物を、基質としてのアセチレンガスの添加を伴った、遺伝子発現を誘発するための1mMのIPTGおよびヘッドスペースとしてのN2ガスを使用したARAアッセイにおいてエチレン産生について試験する。エチレンの産生は、他の野生型NifDポリペプチドへの39アミノ酸N末端伸長が、ニトロゲナーゼ活性を許容することを示す。
【0444】
翻訳開始コドンのすぐ上流の位置に、いずれの場合にもpMIT2.1 DNAを線状化し、そして、その位置に117bpの断片を挿入する適切なプライマー対を使用した類似のアプローチを、pMIT2.1の、例えばNifH、NifK、NifB、NifE、NifMおよびNifNを含めた、他のNif遺伝子を修飾するために使用する。修飾Nif融合ポリペプチドの組み合わせが、他の野生型ニトロゲナーゼ複合体において機能を保持するか試験するために、Nif遺伝子修飾の連続したラウンドもまた、単一のベクターへの2以上のNif遺伝子修飾の組み合わせを産生するために実施する。
【0445】
Nif融合ポリペプチドの生物学的機能を試験するための代替のアッセイシステムは、特定のNif遺伝子の突然変異体であるA.ビネランジーの変異体を使用した細菌補完性アッセイである。これを達成するために、Nif融合ポリペプチドをコードする遺伝子配列を、例えば、細菌A.ビネランジーの菌株において伝播されるpMMB66EH(Furste et al. 1986)などの広域宿主プラスミド内に個別に挿入する。NifH融合ポリペプチドの機能を試験するために、それぞれの得られた遺伝子構築物を、A.ビネランジーの突然変異株、例えば、内因性nifH遺伝子の5’末端から200bpを欠いた菌株DJ1271、に導入する。個々のNif活性を欠く他の突然変異株を、表6で列挙する。これらの突然変異は、適切な生育条件下で空中窒素を固定できない変異体をもたらす。DJ1271における機能的なNifH遺伝子の発現は、例えば、ニトロゲナーゼ活性を復元する。そのため、これは、他のNifポリペプチドに結合したときに、機能について修飾NifH融合ポリペプチドを評価するのに有用な試験系である。
【0446】
これらのポリペプチドの機能を評価するために、形質転換体の成長を、無窒素培地において評価する。成長培地における追加の窒素源がない状態で、A.ビネランジーは、成長のために空中窒素を固定しなければならない。修飾NifH融合ポリペプチドが機能的である場合、そのとき、DJ1271におけるこれらのポリペプチドの過剰発現が、追加の窒素を欠いている固形培地上で成長する能力を復元するはずである。あるいは、ニトロゲナーゼ機能は、先に概説した方法の中の、アセチレン還元アッセイ(ARA)によってアッセイできる。ARA測定は、窒素不含培地上での培養に比べて、より高い感度でニトロゲナーゼ活性を計測する。
【0447】
ニトロゲナーゼ機能に必要とされる他のNif成分のすべてが細菌にコードされているこれらの発現系では、細菌におけるNif融合ポリペプチドの機能を試験する。
【0448】
表6.ニトロゲナーゼ機能(細菌の補完性)に関してNif融合ポリペプチドを試験するのに使用できるA.ビネランジーの突然変異株
【表6】
【0449】
実施例17.MTP配列の修飾とNifポリペプチドを伴ったその利用
実施例5~9に記載し、かつ、使用した長さ77アミノ酸残基のpFAγ MTP配列(配列番号38のアミノ酸1~77)は、アラビドプシス・サリアナF1ATPアーゼ-γ-サブユニット(Lee et al, 2012)由来であり、その断片を本明細書中ではMTP-FAγ77と呼んだ。MTP-FAγ77と遠位Nifポリペプチドとの間の翻訳融合をコードする遺伝子配列を作製するために実施例5で使用したクローニングプロトコールは、AscIクローニング部位および読み枠を維持するための追加的な塩基から成る融合接合部にて介在9ヌクレオチドリンカーを使用した。このリンカーの使用は、MTP-FAγ77のC末端と着目のポリペプチド(例えば、GFPまたはNif)のN末端の間で、さらなる3つのアミノ酸、すなわち、Gly-Ala-Pro(GAP)をもたらした。そのため、コードされたポリペプチドには、ミトコンドリアにおける切断前に、融合ポリペプチドのミトコンドリアへの移動、およびミトコンドリアマトリックスペプチダーゼ(MMP)による予測された部位での切断に影響することが示された80アミノ酸のN末端伸長が含まれた。実施例5~9に記載のとおり、MTP-FAγ77が、16個の異なるNif融合ポリペプチドを植物ミトコンドリアマトリックスに向かわせることができ、かつ、MTP-FAγ77配列が、ミトコンドリア内でMMPによってプロセシングされたと結論づけた。切断は、42アミノ酸の後ろで起き、そして、GFPまたは着目のNifポリペプチドに融合した38アミノ酸残基のN末端伸長、MTP-FAγ77由来の35残基およびGAPを残した。このN末端伸長は、本明細書中でFAγ-scar38と呼ばれる。
【0450】
本発明者らは、植物細胞におけるNifポリペプチドとの使用のためにMTP-FAγ77の77アミノ酸からのMTP配列を短くしようと考えたが、それでも、MTP機能を保持したままであった。本発明者らは、MTP-FAγ51(配列番号75)と呼ばれるMTPを作製するために、26アミノ酸がMTP-FAγ77のC末端から切り取られ得るか調べた。本発明者らは、MTP-FAγ51が、アミノ酸42の後ろでMPPによって切断され、そして、プロセシング融合ポリペプチドのN末端にてMTP-FAγ51から9つのアミノ酸(ISTQVVRNR;配列番号76)を残すと予測した。この9アミノ酸配列を、FAγ-scar9と呼んだ。
【0451】
MTP-FAγ51の機能を試験するために、NifHまたはGFPに融合したこのMTPをコードする遺伝子構築物を作製した。これらの構築物は、MTP-FAγ51を、MTP-FAγ77およびGAPよりむしろ、それぞれのポリペプチドのN末端に融合したことを除いて、pRA10(配列番号42)のNifHの遺伝子またはpRA01(配列番号38)のGFP遺伝子と同一である修飾NifHまたはGFP遺伝子を含んだ。得られた構築物を、pRA34(MTP-FAγ51::NifH)およびpRA35(MTP-FAγ51::GFP)と呼んだ。切断を、例としてpRA01を使用した、連結サイクル反応(de Kok et al 2014)によって実施した。MTP-FAγ77のC末端の29アミノ酸をコードするヌクレオチドおよびGAPのアミノ酸をコードする追加の9ヌクレオチドを含まないpRA01を、プライマー5’-ATGGTGAGCAAGGGCGAGGAG-3’(配列番号xxx)および5’-GCGGTTACGCACCACTTGAGTTG-3’(配列番号xxx)ならびに鋳型としてのpRA01を使用したPCRによって増幅した。得られたPCR産物を、de Kok et al. (2014)で概説された条件で、架橋オリゴ5’-CTCCTCGCCCTTGCTCACCATGCGGTTACGCACCACTTGAGTTG-3’およびIllumina Ampligase(Illumina, A8101)を用いて連結した。これらの構築物を、N.ベンサミアナ葉システムで試験し、そして、MTP-FAγ77およびGAPを有する対応する構築物と比較した。pRA34およびpRA10に関しては、タンパク質抽出物を、浸潤葉組織から産生した。抽出物を、HA抗体を使用したSDS PAGEおよびウエスタンブロット分析に供し、比較のためにタンパク質発現レベルおよびMPPプロセシング効率を評価した。
【0452】
未プロセシング融合ポリペプチドの対照として使用されるMTP-FAγ51::NifH::HA(pRA34)およびMTP-FAγ77+GAP::NifH::HA(pRA10)をコードする構築物を発現するE.コリからのタンパク質抽出物は、未プロセシングMTP::NifHについて予測されたサイズのポリペプチドバンドをもたらした。これらの構築物を浸潤させたN.ベンサミアナ葉組織からのタンパク質抽出物は、対応する細菌抽出物より小さいサイズのポリペプチドバンドをもたらし、そしてそれは、プロセシングポリペプチドについて予測されたサイズに相当した。例えば、MTP-FAγ51::NifH::HAポリペプチドの発現は、これらの2つのポリペプチドの間の予測されたサイズの差にしたがって、MTP-FAγ77+GAP::NifH::HAより小さいMWにおいてバンドをもたらした。そのため、MTP-FAγ51アミノ酸配列は、Nifポリペプチドを植物細胞のミトコンドリアマトリックスに対して標的化することができ、かつ、MPPによるプロセシングを提供すると結論づけた。そのポリペプチド発現レベルとプロセシング効率は、より長いMTPのように良好であった。さらに、分解産物を示すと考えられる、より小さいサイズのより少数のポリペプチドバンドが、pRA34のブロットでHA抗体を用いて検出された。本発明者らは、より短いMTP配列は、予想外に破壊されたN末端 MTP::Nif分解物であると結論づけた。
【0453】
実験はまた、融合GFPポリペプチドをコードするpRA35を用いて、それをpRA01と比較するためにも実施された。蛍光によってポリペプチドの局所化を可視化するために、pRA01(pFAγ77+GAP::GFP)またはpRA35(FAγ51::GFP)をコードする構築物を用いて浸潤した葉組織を、共焦点顕微鏡によって試験した。葉サンプルを、40×浸水対物レンズを備えた正立Leica顕微鏡を使用して画像化した。GFPを488nmにて励起させ、そして蛍光放出を記録した。両方の構築物に関して、GFP蛍光は、同一の局所化パターンで、小さい非細胞体内に局限することが観察された。実施例1に記載のミトコンドリア局所化について試験したpRA01との比較に基づいて、かつ、pRA34のプロセシングデータから、本発明者らは、短縮MTP-FAγ51が、合成融合ポリペプチドを植物細胞のミトコンドリアに向かわせることができ、かつ、ミトコンドリアにおけるMPPによるそれらのプロセシングを提供できると結論づけた。
【0454】
さまざまな異なるMTP配列を、Nifポリペプチドを植物細胞のミトコンドリアマトリックスに転移させるそれらの性能を評価するために試験した。GoldenGateクローニングシステム(Weber et al., 2011)を、プロモーター、5’-UTR、3’-UTR、NおよびC末端伸長、ならびにターミネータを含めたさまざまな遺伝子要素を組み立てるために使用した。各要素は、モジュールの集合および要素の簡単な交換を可能にする境界を規定した。そのため、Engler et al., (2014)によって説明された成分を用いたこのクローニングシステムを、MTP::Nif融合ポリペプチドの産生のためのさまざまな異なる遺伝子構築物を試験するために使用した。GoldenGateクローニングシステムは、それらの認識配列の外側で切断するIIS型制限酵素を利用したので、接合部配列内の制限酵素クローニング部位の使用を避けることができた。これは、pRA00内に存在するGly-Ala-Pro配列なしにMTP::Nif融合をコードする遺伝子の構築を可能にし、かつ、実施例5~9に記載のAscI制限部位の使用を回避した。MTP::ポリペプチド融合の接合部におけるGly-Gly架橋を、GoldenGateシステムを適合させるために、代わりに使用した。MTP配列の-1位におけるその共通した発生のため、グリシンを、この連結の標準的なアミノ酸として選択した。
【0455】
異なる長さ(30~70アミノ酸残基)のさまざまな異なるMTPを選択し、MPPによる切断後にNifポリペプチドのN末端に融合した様々な残留アミノ酸残基(「痕跡」)が残ると予測した(表7)。痕跡配列は、長さが0~36アミノ酸残基の範囲に及んだ。GoldenGateクローニングシステムを使用することで、植物細胞における発現のための数個のNifsとこれらのMTPの組み合わせを使用して、17個の異なる遺伝子構築物を組み立てた(表8)。これらの融合物に使用されるNifDおよびNifSポリペプチド配列は、Temme et al., (2012)による配列を使用する代わりに、実施例5~9で使用した配列の変異体であった。変異型アミノ酸配列を、それぞれ配列番号95および配列番号96で提供する。483アミノ酸の配列と異なる変異型NifDアミノ酸配列(配列番号95)を、39、41、87、96、355および483位における6つのアミノ酸置換によって、配列番号6として提供した。これらのすべてのベクターに関して、プロモーター、5’および3’UTR、ならびにターミネータは同一であった。それぞれP19サイレンシングサプレッサタンパク質を産生する構築物と混合された、これらの構築物を含有するアグロバクテリウム培養物を、N.ベンサミアナ葉内に個別に導入し、そして、タンパク質抽出物を、浸潤の5日後に製造した。SDS-PAGEおよびウエスタンブロット分析を、そのタンパク質抽出物に対して実施した。MTP::NifD構築物を用いた浸潤のために、C末端伸長のないNifKの同時発現がNifD存在量を高めることを示したので(実施例11)、pRA25(pFAγ::NifK)を同時浸潤させた。表8は、それぞれのMTP::Nif融合ポリペプチドに関する、植物細胞において産生されたポリペプチドの検出およびMPPによる切断(プロセシング)の結果について概略する。
【0456】
表7.GoldenGateシステムを使用した植物での試験に用いたMTPの詳細、接合部のGly-Gly残基(CPN60/リンカーなし以外)を太字で強調した。kDA F/P:プロセシング済、未プロセシングMTPのサイズ。
【表7】
【0457】
表8.NifH、NifD、NifM、NifSおよびNifUの発現のための葉細胞内への構築物(SN番号によって示される)の導入後に産生されるポリペプチドのウエスタンブロット分析。Pro:プロセシング済。(p)=部分的-ウエスタンブロットによって検出された50%未満のプロセシング形態。UD:バンドサイズに基づいてプロセシングを見分けられない。
【表8】
【0458】
MTP::Nif融合のように翻訳的に融合されたとき、MTP-FAγ51は、試験したNifポリペプチドのすべてに関して、切断MTP::Nifポリペプチドをもたらした(表7)。NifM融合ポリペプチドは、FAγ51に融合したときには、部分的にしかプロセシングされなかったが、それに対して、他のNif融合ポリペプチドは、より効率的にプロセシングされ、そして、様々なNifsのプロセシング効率が、同じMTPによっても変化し得ることを実証した。MTPのC末端でHAエピトープを融合し、次に、NifHに融合した(SN29)、FAγ51のバージョンを試験した。この構築物から発現されたポリペプチドを、ウエスタンブロット分析で検出した(表8)。
【0459】
NifDに融合したCPN60 MTPの2つのバージョンを試験した。一方のバージョンでは、MTPを、Gly-GlyリンカーがCPN60 MTP(配列番号77)とNifD(SN11)の間に配置されるように融合した。もう片方のバージョン(SN4)では、CPN60 MTP(配列番号78)をNifDポリペプチドの第一のメチオニンに直接融合した。CPN60が、そのアミノ酸配列のC末端チロシンの直後で切断される予測された場合、この構築物は、理論上、野生型N末端を有するNifDポリペプチド、すなわち、「痕跡」なし、を生じるが、それに対して、SN11構築物は、MTP(GlyGly)::NifD融合の切断後にGly-Gly伸長を残すと予測された。驚いたことに、これらの非常に類似した構築物は、ウエスタンブロット分析によって証明した場合に、異なる結果を生じさせた:SN11は、未プロセシングCPN60(GlyGly)::NifDについて予測されたサイズでポリペプチドバンドをもたらしたが、それに対して、SN4は、プロセシング済ポリペプチドに比べて、より多くの未プロセシングポリペプチドが存在する、プロセシング済ポリペプチドと未プロセシングポリペプチドの両方に相当するバンドをもたらした。さらに、SN4を用いた浸潤からのタンパク質を、ウエスタンブロットによって、並行pRA24+pRA25(FAγ77+GAP::NifD::HA+FAγ77+GAP::NifK)浸潤(実施例11も参照)から抽出したタンパク質と比較したとき、SN4構築物が、pRA24構築物よりかなり少ない正確にプロセシングされたポリペプチドを生じたことは、明らかであった。そのため、CPN60 MTPは、融合ポリペプチドを標的化することができ、かつ、野生型NifDポリペプチドを作製するマトリックスプロセシングを許容したが、発現レベルとプロセシング効率が低かった(US2016/0304842)。SN11に関しては、CPN60とNifDの間のGly-Gly連結が、MTPのプロセシングを妨げた可能性があった。
【0460】
単独またはタンデムMTPとして、およびGly-Gly連結前にC末端のIleおよびGlnの包含を伴うかまたは伴わない、スーパーオキサイドジスムターゼポリペプチドからのさまざまなMTPもまた試験した。ポリペプチドは、IleおよびGln残基を含有しなかったSOD MTP(SN15、配列番号81およびSN16、配列番号82)を含むバージョンについてのウエスタンブロット解析によって検出されなかったが、それに対して、IleおよびGln残基(SN12、配列番号79およびSN13、配列番号80)を保持したバージョンは、検出可能なポリペプチドを産生したが、しかし、それらはMPPによってプロセシングされなかったように見えた。対照的に、試験した別のMTP、L29(SN17、配列番号83)は、NifDに融合すると、強力なポリペプチドシグナルをもたらした。このMTPでのプロセシング済形態と未プロセシング形態の間のサイズのわずかな差のため、プロセシング効率を決定するために、追加実験が必要とされる。L29 MTPが、効果的な様式で切断Nifポリペプチドをもたらしたと予測される。最後に、本発明者らは、C末端であるが、Gly-Gly連結の上流(SN19、配列番号86)にて融合したツインstrepタグ(Buren et al. 2017)を用いてCoxIV MTPを試験した。NifDに融合したとき、このMTPは、ミトコンドリアマトリックスプロセシングと一致したサイズの、ウエスタンブロット分析による強いシグナルをもたらした。
【0461】
細菌系におけるNifポリペプチドに融合した様々な痕跡配列の機能試験
Nifポリペプチド機能に対する、様々なMTPの取り込みと切断後にNif融合ポリペプチドのN末端に残った配列との因果関係を、MIT2.1系で評価した。例えば、Ileの代わりに第一アミノ酸としてMetを有する、pFAγ-scar9をコードするDNA断片を、誘導リガーゼサイクル技術(de Kok et al., 2014)によりpMIT2.1のNif遺伝子の翻訳開始コドンのすぐ上流に挿入した。構築物を作製するのに使用した方法は、実施例16のNifBについて記載したとおりであった。pFAγ-scar9をコードする27bpのDNA断片を、pMIT2.1の様々なNif遺伝子の5’末端に融合した。E.コリの形質転換とアセチレン還元アッセイを使用したニトロゲナーゼ機能の試験を、実施例16にしたがって実施した。これらのアッセイは、NifBのN末端への9アミノ酸伸長の付加が、未修飾pMIT2.1を用いて見られたエチレン産生のレベルと比較したときに、ニトロゲナーゼ機能を変更しなかったことを示した。類似の様式では、NifHでは完全活性を有するが、他の場合では、活性のいくらかの低減を伴ったて、NifH、NifD、NifK、NifEおよびNifNもまた、それらのそれぞれのN末端での9アミノ酸伸長を許容した。NifD、NifK、NifEおよびNifNのN末端への9アミノ酸伸長は、それぞれ未修飾pMIT2.1のものと比較して、50%、70%、30%、および50%であるアセチレン還元活性のレベルをもたらした。他のNifポリペプチド、すなわち、NifJ、NifY、NifQ、NifF、NifU、NifS、NifV、NifW、NifZおよびNifMを、同じ様式で試験する。斯かるアッセイを使用して、最適なMTP配列を、それぞれのNifポリペプチドについて選択する。
【0462】
実施例18.NifKのC末端への付加は、その活性を破壊する
実施例10に記載のとおり、本発明者らは、K.ニューモニエからのNifKポリペプチドの構造のモデリングから、NifKサブユニットのC末端が、NifD-NifK-NifHタンパク質複合体のコアの中に埋め込まれる、および野生型配列に対するNifKポリペプチドへの任意のC末端伸長が、その複合体の破壊を恐らくもたらす、と結論づけた。これは、pMIT2.1プラスミドの修飾によって実施例16に記載の細菌ニトロゲナーゼ系を機能的に使用するか試験した。そのプラスミドを、以下のように、アミノ酸配列YPYDVPDYA(配列番号97)の付加によって、野生型配列に対して9アミノ酸C末端伸長を有する修飾NifKポリペプチドを発現するために修飾した。
【0463】
NifK修飾を導入するために、E.コリにおける発現のために最適化したコドンであるアミノ酸YPYDVPDYA(配列番号97)をコードするヌクレオチド配列を、NifKの3’末端にて逆方向プライマーの5’に付加した。そのプライマー、5’-TCATCAAGCGTAATCAGGAACATCGTAGGGGTAACGAACCAGATCGAAAGAATAGTCGG-3’(配列番号98)、および順方向プライマー5’-AAGGGCGAATTCCAGCACACTGG-3’(配列番号99)を、pMIT2.1の前半を含有する、鋳型としてのpTopoH-J(実施例16)DNAと共にPCRに使用し、7909bpの産物を得た。残った7222bpもまた、プライマー5’-CCTGATTGTATCCGCATCTGATGCTAC-3’(配列番号100)および5’-AACCTGCAGGGCTAACTAACTAACCACGGACAAAAAACC-3’(配列番号101)を使用したPCRによって増幅した。実施例16に記載と類似の様式では、次に、2つのPCR断片を、de Kok et al., (2014) の方法を使用して、プライマーBO1、5’-GGTAGCATCAGATGCGGATACAATCAGGTCATCAAGCGTAATCAGGAACATCGAGG-3’(配列番号102)およびBO2、5’-CCAGTGTGCTGGAATTCGCCCTTAACCTGCAGGGCTAACTAACTAACCACG-3’ (配列番号103)を用いた連結サイクル反応(LCR)を使用して一つに連結した。連結したDNA断片を、SbfIで消化し、未修飾NifBQFUSVWZM遺伝子を含有するpB-oriからのSbfI断片に連結し、そして、NifKに付加されたC末端伸長を有する融合ポリペプチドをコードする修飾MIT2.1ベクターをもたらした。
【0464】
得られた遺伝子構築物を、pN249を含有するE.コリ株DH5αに導入し、そして、両方のベクターで形質転換した細胞の培養物を、実施例16に記載ように培養した。その培養物を、アセチレン還元アッセイにおいてエチレン産生について試験した。その結果は、NifKに添加した9アミノ酸C末端伸長が、エチレン産生を完全に無効にしたことを示した。対照である、無変性pMIT2.1は、陽性エチレン産生をもたらした。本発明者らは、アセチレンの還元よって計測した場合に、実施例10に記載のモデル化試験と一致して、野生型C末端に対するNifKのC末端に翻訳融合された伸長が、ニトロゲナーゼ活性を無効にしたと結論づけた。
【0465】
NifKのC末端への伸長がニトロゲナーゼ機能を無効にすることを実証した先の生化学的試験、および、先の植物体内実験が、野生型C末端を伴ったNifDおよびNifKの同時発現が、NifD存在量を高めることを示した(実施例11)ことを前提に、本発明者らは、NifKポリペプチド中の野生型C末端が、NifD-NifKヘテロ四量体の安定性および機能の両方、したがって、ニトロゲナーゼ活性に重要であると結論づけた。
【0466】
これは、野生型C末端(pRA25)を有するNifKと一緒にNifDを発現する遺伝子の様々なバリエーションを発現させ、そして、NifD存在量を評価することによって、さらに調査した。実施例20は、N.ベンサミアナにおけるNifD存在量を評価するために作製されたNifD遺伝子をそれぞれ含む一連の遺伝子構築物を記載している。
この実験におけるNifDには、C末端HAエピトープが含まれた。

すべてのN.ベンサミアナ浸潤のために使用される場合、同時浸潤させたpRA25(NifK)を伴うかまたは伴わずに、サイレンシング抑制因子P19を発現するための遺伝子構築物の存在下、これらの構築物(表8)の同時浸潤後に、NifD::HAのタンパク質存在量およびMPPプロセシングを、抗HA抗体を使用したSDS PAGEおよびウエスタンブロット分析で評価した。分析(図19)は、いずれの場合にも、pRA25の追加が、特にSN7とpRA25の組み合わせに関して、NifD存在量を大いに高めたことを示した。最も重要なことには、プロセシング済NifD対未プロセシングNifDの比が、pRA25の追加によって高められた。これらの結果は、NifKによるNifDの安定化がミトコンドリアマトリックスにおいて起こり、そして、決定的には、これを達成するために、野生型C末端を有するNifKポリペプチドに依存するという結論をさらに支持した。
【0467】
さらに注目すべきは、約48kDaおよびNifDの分解産物と考えられるポリペプチドバンドが、試験した構築物のすべてで観察された。このポリペプチドは、抗HA抗体で検出され、そして、ゲル上ではっきりと規定されるポリペプチドバンドとして観察されたので、それは、NifDのC末端を含む特異的切断産物を表すはずであった。予想外なことに、この産物の量もまた、pRA25(NifK)の同時発現で高められた。これは、NifDポリペプチドとNifKポリペプチドとの相互作用を示した。これらの観察に基づいて、本発明者らは、NifD分解が、ミトコンドリアマトリックス特異的であり、かつ、MMにおけるNifDとNifKの相互作用への支持を提供したと考えた。
【0468】
NifD::HAをコードする構築物を、植物細胞に導入したときに産生される約48kDaのポリペプチドに関して試験した一つの可能性は、その48kDaのポリペプチドが、第二の、下流の翻訳開始から産生されたということであった。NifD遺伝子は、48kDa翻訳産物に通じる領域のMet残基に対応する多くのATGコドンを有した。この可能性を試験するために、NifD開始コドンの第二~第五のMetコドン下流をAlaコドンで置換したことを除いて、pRA24と同一であった遺伝子構築物を作製した(pRA30)。N.ベンサミアナの葉へのpRA30およびpRA24の別々の浸潤、そして、SDS-PAGEおよびウエスタンブロッティングによる分析後に、pRA24およびpRA30のバンド化パターンは、約48kDaポリペプチド産物がまだ存在していて、同じであった。この観察は、NifD::HA遺伝子が発現されたときに、48kDaのサイズのバンドが見られるのは、選択的翻訳開始のためであるという仮説を否定した。このポリペプチドが、MMにおける未知の分解過程によって作製されたと結論づけた。
【0469】
実施例19.NifD-NifKおよびNifE-NifN融合ポリペプチドの評価
実施例12は、NifDのC末端とNifKのN末端の間の30個のアミノ酸残基から成るリンカーを使用した、NifD-NifK融合ポリペプチドをコードする遺伝子の設計および構造を説明する。そのリンカーは、ポリペプチドの検出のためのFLAGエピトープを含んだ。FLAGエピトープがHAエピトープに置換されたこと除いて、NifD-(FLAG)リンカー-NifKの同じ配置を有する、第二の遺伝子を、ここで設計し、そして、組み立てた。同様に30アミノ酸残基の、この第二の遺伝子のリンカーによってコードされる、アミノ酸配列は、そのリンカーのアミノ酸12~20としてHAエピトープを伴う、ATPPPGSTTTAYPYDVPDYATPPPGSTTTA(配列番号104)であった。これらの融合ポリペプチドの両方を、機能性について、以下のように、実施例16に記載のpMIT2.1ベクターベースの細菌系におけるアセチレン還元アッセイで試験した。
【0470】
最初に、pRA31からのNifD::HAリンカー::NifKの遺伝子を、プライマーpRA31DK-FW 5’-ATGATGACTAACGCTACAGGAGAA-3’(配列番号105)およびpRA31DK-RV 5’-TCATCATCTAACCAAATCAAAACTGTAATCTG-3’(配列番号106)を使用してPCR増幅した。その遺伝子中のヌクレオチド配列を、アラビドプシス・サリアナにおける発現のためにコドンで最適化をおこなった。nifDおよびnifK遺伝子を伴わないpMIT2.1の前半もまた、プライマーD_start_RV 5’-CCGGCTCCTCCGCTAGATAAAAATGTGAATTTTTGCATGCAGCC-3’(配列番号107)およびK_end_FW 5’-CCTGATTGTATCCGCATCTGATGCTACCGTGGTTGA-3’(配列番号108)を使用してPCRによって作製した。増幅したPCR産物を、架橋オリゴ 5’-TTCTCCTGTAGCGTTAGTCATCATCCGGCTCCTCCGCTA-3’(配列番号109)および5’-CAGATGCGGATACAATCAGGTCATCATCTAACCAAATCAAAACTG-3’(配列番号110)を使用した連結サイクル反応によって連結し、そして、SbfIで消化した。消化したDNA断片を、同様にSbfIで消化したpB-ori DNAに連結し、NifD::HAリンカー::NifK融合遺伝子を含むpMIT2.1の修飾形態を作製した。
【0471】
E.コリ(DH5α)細胞における機能試験は、NifD::HAリンカー::NifK遺伝子を含む修飾pMIT2.1ベクターが、未修飾pMIT2.1のレベルの約10%にて、アセチレンをエチレンに還元し得ることを示した。すなわち、他の野生型NifDおよびNifKポリペプチドの間の30アミノ酸リンカーを伴った融合ポリペプチドは、細菌系において10倍低い活性ではあるが、明らかに機能的であった。
【0472】
融合ポリペプチドのニトロゲナーゼ活性を増強する試みでは、2つの変更をおこない、そして、その実験を、事実上反復した。その変更は、第一に、NifD(Temme et al., 2012)、実施例17を参照、の変異型アミノ酸配列を使用するためであり、および第二に、A.サリアナよりむしろK.ニューモニエのためのヌクレオチド配列のコドン最適化を使用するためであった。その構築物を、先に記載したのと同じ様式で作製した。すなわち、別々のNifDおよびNifKポリペプチドをコードする、未修飾pMIT2.1のnifDおよびnifKの間のオペロン構造を、NifD-リンカー-NifKの翻訳融合をコードするヌクレオチド配列で置換し、これにより、FLAGおよびHA含有リンカーのそれぞれについて修飾pMIT2.1のNifD::リンカー::NifK遺伝子を形成する。E.コリ(DH5α)細胞における機能試験は、pMIT2.1の修飾NifD::FLAGリンカー::NifKおよびNifD::HAリンカー::NifK遺伝子が、未修飾pMIT2.1の量に対して、それぞれ約100%および80%の量、エチレンを作製するためのアセチレンを低減することを示した。第一のNifD-リンカー-NifK融合体に関する活性低下は、まり理想的ではないNifDアミノ酸配列、もしくは植物最適化コドンの利用、またはその両方のためであったと結論づけた。これは、適切なポリペプチド配列の使用と宿主細胞に応じたコドン最適化の重要性を実証した。
【0473】
植物細胞における発現およびミトコンドリアマトリックスへの取り込みのために、MTP配列が必要であり、およびN末端伸長は、切断後にMTPの中に残留すると予測される。例えば、MPPによる切断があとに続く、MTP-FAγ51(実施例17)の使用は、Nifポリペプチドに融合した9アミノ酸N末端伸長を残す。そのため、NifD-リンカー-NifKポリペプチドへの斯かる9アミノ酸伸長を追加する効果を、9(Ile)の最初の残基をMet残基に置換して、効果的な翻訳が提供されることを除いて、試験した。9アミノ酸配列を、先に記載したように、クローニングアプローチを使用して、NifD::リンカー::NifK融合ポリペプチドのNifD部分のN末端に追加した。これらの2つの修飾の組み合わせに関するアセチレン還元能力を、pMIT2.1系で試験した。
【0474】
構築物を作製するために、9アミノ酸伸長(MSTQVVRNR、配列番号111)をコードする27ヌクレオチドのDNA配列を、リンカーのFLAGおよびHAエピトープのそれぞれについて、NifD::リンカー::NifK融合遺伝子の5’末端に付加した。その構築物を含むE.コリにおけるアセチレン還元アッセイは、NifD::HAリンカー::NifKポリペプチドへの9アミノ酸N末端伸長の追加が、N末端に9アミノ酸伸長を有していないNifD::HAリンカー::NifKとほとんど同じレベルのエチレン産生をもたらした、すなわち、N末端伸長が、十分に許容され、ニトロゲナーゼ活性を低減しなかった、ことを示した。これは、9アミノ酸伸長が、その活性を低減せずに野生型NifDに付加され得るという先の知見と一致していた。
【0475】
本発明者らはまた、nifD遺伝子の終止コドン、未修飾MIT2.1からのnifKコード領域のスペーサ配列およびリボソーム結合部位を除去することによって、MIT2.1系においてあらゆるリンカー配列なしにNifDおよびNifKの間の翻訳融合の機能も試験した。NifD-NifKポリペプチド(本明細書中でNifD-リンカーなし-NifKと呼ばれる)をコードするためのリーディングフレームのこの直接的な融合は、正の対照と比較して、アセチレン還元活性を5%低減した。NifD-リンカーなし-NifKの機能におけるこの低減は、融合ポリペプチドのNifDおよびNifK部分の間の適切な立体結合が、機能的なジニトロゲナーゼ構造を形成することを可能にした、約30アミノ酸残基のフレキシブルリンカーを含むことの利益を示した。
【0476】
nifE-NifN融合
NifDおよびNifKと同様に、NifEおよびNifNは、ヘテロ四量体を形成することが知られている。ニトロゲナーゼ活性に関するこの複合体の機能は、FeMo補因子コア成熟のために、NifBからのFeMo補因子コア、NifQからのモリブデン、およびNifVからのホモクエン酸を受け入れることである(Hu and Ribbe, 2011)。本発明者らは、NifEおよびNifNが、最適なニトロゲナーゼ機能のために等モルレベルで発現されなければならないこと、および2つのポリペプチドを融合すると、ニトロゲナーゼの組み換え発現に必要とされるプロモーター、MTPおよびターミネータの数が減少することがわかった。そのため、NifEおよびNifNの間の融合ポリペプチドをコードする遺伝子を、NifD-リンカー-NifK融合ポリペプチドの30アミノ酸残基の代わりに46アミノ酸残基のリンカーを使用したことを除いて、NifDおよびNifK融合の理論的根拠(上記)にしたがって、設計し、作製した。これを、以下のように設計し、構築し、そして、試験した。
【0477】
K.ニューモニエからのNifE-NifNα2β2ヘテロ四量体の相同モデルを、鋳型としてアゾトバクター・ビネランジーからのNifE-NifN複合体の結晶構造を使用して構築した(PDB ID:3PDI(Kaiser et al., 2011))。K.ニューモニエと対応するA.ビネランジーのポリペプチドをアラインすると、アミノ酸配列同一性は、NifEポリペプチドでは68.1%およびNifNポリペプチドでは44.2%であった。本発明者らは、K.ニューモニエα2β2ヘテロ四量体の構造モデルでは、それぞれのNifEサブユニットのC末端は、NifNパートナーのN末端から約70Åであることがわかった。そのため、好適な長さのリンカーを、2個のユニットを接続するために設計し、そして、46アミノ酸残基を有していた。本発明者らは、リンカーは、ヘテロ四量体の表面を囲むように曲がり、かつ、約104Åの長さを有していなければないと考え、そのため、多くの46アミノ酸残基が選択された。本発明者らはまた、リンカーは、柔軟性を含めた他のいくつかの特徴を最適に有していなければならないと考えた。
【0478】
選択された46残基リンカーのアミノ酸配列は、タラロマイセス・フニクロスス(Talaromyces funiculosus)(UniProtKB:Q8WZJ4)からのセロビオヒドラーゼの炭水化物結合ドメインと触媒ドメインの間の天然のリンカーに基づいた。それは、望ましくないジスルフィド結合の形成を避けるためのシステイン残基の欠如、望ましくない表面塩架橋相互作用の傾向を低減するための低荷電または無荷電残基(Glu、Asp、Arg、Lys)、斯かる残基はポリペプチドの表面を貫通する傾向を促進するので、低疎水性または非疎水性残基(Phe、Trp、Tyr、Met、Val、Ile、Leu)および翻訳後修飾アミノ酸を欠いたリンカー配列を含めたいくつかの基準に基づいて選択された-Uniprotエントリーwww.uniprot.org/uniprot/Q8WZJ4(そこのリンカーは残基457~493である)を参照。セロビオヒドラーゼ配列の2位のPhe残基を、疎水度を低減するためにSerに置換した。HAエピトープ配列YPYDVPDYA(配列番号112)を、リンカーのアミノ酸16と17の間に挿入し、単に、融合ポリペプチドの検出および定量化を補助した-リンカーは、機能のために斯かるエピトープを必要としない。HAエピトープは、保持された単一の、陽性荷電リジン残基からそれを遠ざけるためにリンカーの中心よりN末端の近くに配置された。得られたリンカー配列は、アミノ酸17~25としてHAエピトープを含有し、かつ、位置32にリジンを保持した、TSSGGTSTGGSTTTTAYPYDVPDYASGTTSTKASTTSTSSTSTGTG(配列番号113)であった。
【0479】
遺伝子構築物を作製し、かつ、NifE-リンカー-NifN融合ポリペプチドの機能を試験するために、pMIT2.1のNifEおよびNifNシストロンの間の領域を、修飾pMIT2.1における先の構築物のためのものと同じクローニングアプローチを使用して、46残基リンカーを含む翻訳融合をコードするヌクレオチド配列で置換した。融合遺伝子をE.コリで試験したが、ヌクレオチド配列は、アラビドプシス・サリアナ向けにコドン最適化した。nifE::HAリンカー::nifN遺伝子を、プライマーpRAEN-FW 5’-ATGAAGGGAAATGAGATTCTTGCTCTT-3’(配列番号114)およびpRAEN-RV 5’-TCATCAATCAGCAGCATAAGCACC-3’(配列番号115)を使用して、pRA01-ENからPCR増幅した。nifEおよびnifNを伴わない、pMIT2.1の前半を、プライマーE_start_RV 5’-TTGTAATAACCTCCAGTGATGAATTGAATA-3’(配列番号116)およびN_end_FW 5’-CTAGAGATTAATATGGAGAAATTAAGCATG-3’(配列番号117)を使用したPCRによって作製した。増幅したPCR産物を、架橋オリゴ 5’-AAGAGCAAGAATCTCATTTCCCTTCATTTGTAATAACCTCCAGTGATGAATTGATAGTG-3’(配列番号118)および5’-TAGTTTTCATGCTTAATTTCTCCATATTAATCTCTAGTCATCAATCAGCAGCATAAGCACC-3’(配列番号119)を使用した連結サイクル反応を使用して連結し、その後、両方のDNAをSbfIで消化した後に、未修飾であるpMIT2.1(pB-ori)の後半を、修飾した前半と連結した。得られた構築物は、AtNifE::リンカー::NifN/MIT2.1と呼ばれた。
【0480】
アセチレン還元アッセイによる、E.コリ細胞における、AtNifE::リンカー::NifN遺伝子を含む修飾MIT2.1ベクターの機能試験は、未修飾MIT2.1に対して約40%のレベルのエチレン産生を示した。
【0481】
植物細胞における発現およびミトコンドリアマトリックスへの取り込みのために、MTP配列が必要であり、かつ、N末端伸長は、MPPによるMTP配列内での切断後に、恐らく維持された。例えば、MPPによる切断を有するMTP-FAγ77の使用は、融合ポリペプチドに38アミノ酸N末端伸長を残す。そのため、効果的な翻訳のために提供されるMet残基による第一のIle残基の置換を伴った、斯かる38アミノ酸伸長を追加する効果を、それをコードするヌクレオチド配列をAtnifE::リンカー::nifN遺伝子に追加することによって試験した。それによって、遺伝子の翻訳は、NifE::リンカー::NifN融合ポリペプチドのNifEのN末端に38アミノ酸伸長を追加する。ニトロゲナーゼ活性に対するこれらの2つの修飾の組み合わせの効果を、先と同じクローニングアプローチを使用して、pMIT2.1系で試験した。
【0482】
E.コリにおいて、38aa::AtNifE::リンカー::NifN遺伝子を含む修飾pMIT2.1ベクターは、未修飾pMIT2.1に対して、約25%のレベルにてエチレン産生をもたらした。すなわち、N末端における38アミノ酸伸長の使用は、未修飾pMIT2.1に対して、プラスの、あるいは、低減したニトロゲナーゼ活性をもたらした。本発明者らは、低減は、E.コリにおける効果的な翻訳のために、準最適であるA.サリアナコドン利用に少なくとも一部は起因したはずであり、そしてそれは、細菌コドン最適化と、天然クレブシエラNifEおよびNifNの翻訳融合を作製することによって容易に試験できると考えた。本発明者らは、以下のような、NifE-リンカー-NifN融合ポリペプチド機能を最適化できる他のやり方を考えた。ヘテロ四量体のNifEサブユニットのN末端は、FeMo補因子がある腔に極めて近いので(Kaiser et al., 2011)、NifEのN末端における38アミノ酸伸長が、NifE2NifN2ヘテロ四量体からの効果的なFeMo補因子の放出を妨げるであろう。NifE2NifN2ヘテロ四量体活性は、MPPプロセシングにより完全に取り除かれるMTPの使用によるか、または完全に取り除かれなかったMTP配列を使用したときに、追加的な伸長を収容するようにNifEのN末端コード領域を切断することによって、増強され得る。46アミノ酸リンカーが、FeMo補因子腔の入り口を部分的に塞ぐようにループアウトする可能性があり、これにより、NifBからのFeMo補因子コアの受け入れまたは成熟FeMo補因子の放出に干渉する可能性があると考えた。この場合、リンカー領域が腔を妨げるのを回避するために、リンカーを短縮しても、またはNifEのC末端を切断しても、あるいは、その両方であってもよい。これらのストラテジーによる変異体は、pMIT2.1系を使用して容易に試験および最適化できる。
【0483】
概要
NifD-リンカー-NifKおよびNifE-リンカー-NifN融合ポリペプチドの両方は、pMIT2.1細菌におけるアセチレンの還元を補助できる、すなわち、ニトロゲナーゼ活性を提供のに機能的であった。NifD-リンカー-NifKへの9アミノ酸N末端伸長の追加は、完全なニトロゲナーゼ活性を提供した。NifE-リンカー-NifN融合ポリペプチドへのより長い、38アミノ酸N末端伸長の追加もまた、N末端伸長のないポリペプチドに対して活性を低減したが、機能的であることを示した。本発明者らは、他の必要なNifポリペプチドと組み合わせて、植物細胞においてN末端MTP配列を使用してこれらの融合ポリペプチドを発現するストラテジーが、ニトロゲナーゼ活性の発現を可能にするであろうと結論づけた。ここで例示したNifD-NifKおよびNifE-NifN融合ストラテジーの追加の利点は、最適なニトロゲナーゼ機能のための等モルレベルでのサブユニットの産生、および2つのポリペプチド、または2組のポリペプチドの融合が、植物細胞におけるニトロゲナーゼの組み換え発現に必要とされるプロモーター、MTPおよびターミネータの数を削減することを含んだ。
【0484】
実施例20.植物細胞におけるNif融合ポリペプチド発現のための様々なプロモーターの試験
幅広い様々なプロモーターを、N.ベンサミアナ葉細胞で例示した、植物細胞におけるNifポリペプチドを産生するためにNif遺伝子を発現する際のそれらの有効性を評価した。5つの異なるプロモーター、すなわち、サブタレニアン・クローバー・スタント・ウイルスからのS4プロモーター(SCSV-S4)の2つのバージョン(Schunmann et al., 2003a; Schunmann et al., 2003b)、SCSV-S7プロモーター(Schunmann et al., 2003a)、およびCaMV35Sプロモーターの2つのバージョン、すなわち、遺伝子発現を最大化するための35Sプロモーターのより長い形態、および重複エンハンサーを含む強化形態(2×35S)をこの目的のために選択した(表9)。SCSVプロモーターは、ほとんどの植物組織で強力に発現されるので、構成的プロモーターであると見なされる。Nifポリペプチドの例としてこれらの試験に使用されるNifDポリペプチドは、実施例17で使用したバージョン(配列番号95)であった。試験したすべてのNifポリペプチド(実施例5~9)のうちで、それを発現させるのが最も難しかったので、NifDを、この実験におけるNifポリペプチドの例として選択した。それぞれ異なるプロモーターを使用した5つのベクターを作製したが、しかしながら、転移および植物ミトコンドリアにおけるプロセシングのためのFAγ51 MTPをコードする配列(表9)を含めて、他のものは同一である。モジュール式遺伝子集合アプローチを可能にするGoldenGateクローニング法(Weber et al., 2011, Engler et al., 2014)を使用して5つの構築物を作製した。
【0485】
それぞれP19サイレンシングサプレッサタンパク質を産生する構築物を含有するアグロバクテリウム細胞と混合された、これらのベクターを含有するアグロバクテリウム細胞を、N.ベンサミアナ葉内に個別に導入し、そして、タンパク質抽出物を、浸潤の5日後に製造した。C末端伸長のないNifKの同時発現がNifD存在量を高めることを示したので(実施例11)、対応する、対をなす浸潤を、pRA25(pFAγ77+GAP::NifK)の追加を伴うかまたは伴わない上記の構築物を用いて実施した。SDS-PAGEおよび抗HA抗体を使用したウエスタンブロット分析を、そのタンパク質抽出物に対して実施した(図19-実施例18を参照)。表9は、それぞれのFAγ51::NifD融合ポリペプチドに関する、植物細胞において産生されたポリペプチドの検出およびMPPによる切断(プロセシング)の結果について概略する。
【0486】
植物細胞に導入したとき、5つの構築物すべてが、抗体で検出されるポリペプチドを産生した(図19)。いずれの場合にも、ポリペプチドバンドを、FAγ51::NifDのプロセシング済および未プロセシング形態の両方と一致したサイズについて観察したが、両方のポリペプチド存在量、およびプロセシング済:未プロセシングの比、すなわち、プロセシング効率においてかなりのバリエーションが存在した(表9)。最も顕著なことには、それぞれ構築物SN6、SN7およびSN8に関して、pRA25からのpFAγ77+GAP::NifKの包含が、NifDの絶対レベル、および予想外なことに、NifDタンパク質のプロセシング済対未プロセシング形態の比の両方を高めた。これは、構築物SN7に関して最も明白であり、ここで、未プロセシングNifDのレベルは、pFAγ77+GAP::NifKを伴うかまたは伴わなくても同じであったが、プロセシングNifDのレベルは、NifKポリペプチドの存在によって大いに増強された。
【0487】
これらの結果は、驚いたことに、それぞれの構築物での同じMTPの使用にもかかわらず、様々なプロモーターが、タンパク質発現レベルだけではなく、ミトコンドリアマトリックス標的化Nifタンパク質のプロセシング効率にも実質的に影響を及ぼし得ることを実証した。これらの結果ではまた、C末端伸長を伴わないNifKの発現のNifD存在量に対する増強の役割も確認した。
【0488】
表9.N.ベンサミアナにおけるMTP::NifD::HAの発現、および融合ポリペプチドのプロセシング効率を評価するために試験した様々なプロモーター
【表9】
【0489】
実施例21.ニトロゲナーゼ機能に関するNifSおよびNifUの冗長性の試験
ニトロゲナーゼの機能のために、それらのそれぞれの鉄硫黄(Fe-S)クラスタ生合成のための様々なニトロゲナーゼ成分に対して鉄-硫黄断片を提供する2つのNifタンパク質が存在する。NifSは、スルフィドを供給するために硫黄を活性化するピリドキサールP依存性システインデスルフラーゼであり(Zheng et al., 1993)、そして、NifUは、NifSから硫化物を受け入れて、Fe-Sクラスタを構築する分子足場である(Agar et al., 2000)。それらは一緒に、NifZ(Lee et al., 2009)の補助による[4Fe-4の]および連続P-クラスタ([Fe8-S7])形成のためのペプチジルプロリルcis/transイソメラーゼNifM(Gavini et al., 2006)の支援を伴って、FeMo補因子コアのためのNifB(L-クラスタ)集合(Hu and Ribbe 2011)、ならびにFeタンパク質(NifH)にFe-Sクラスタを供給する。真核生物では、Fe-Sクラスタを含む様々な酵素にFe-S断片を提供するNifSおよびNifUのオルソログが存在する(Couturier et al., 2013)。特に、植物ミトコンドリアは、NifSおよびNifUのオルソログとして、それぞれNfsI(At5g65720)およびIsuI(At4g22220)ポリペプチドを有し、一方、色素体Nfs2(At1g08490)およびSufB(At4g04770)は、それぞれNifSおよびNifUの機能的な同等物である。ミトコンドリアおよび色素体系の両方が、それらの天然オルガネラ環境において、Fe-Sクラスタ集合およびそれらの標的酵素への移動を実現するために、追加のアクセサリータンパク質によって支援されている。NifSおよびNifUは組み換えFeタンパク質活性に必要でないことが、酵母ミトコンドリアおよびタバコ色素体において、最近実証された(Lopez-Torrejon et al., 2016; Ivleva et al., 2016)。
【0490】
E.コリのpMIT2.1系においてNifSおよびNifUの植物オルソログの機能性を試験するために、クレブシエラNifSおよびNifU遺伝子を、単独でまたは組み合わせた2つの置換で、植物NfsIおよびIsuI遺伝子で置換する。修飾pMIT2.1のニトロゲナーゼ機能を、アセチレン還元アッセイで評価する。また、細菌Nif酵素がこれらの植物突然変異を補完できるか確認するために、A.サリアナnfsI変異体(SALK_083681)およびisuI変異体(SALK_006332)を、ミトコンドリアマトリックスに対して標的化された、それぞれ、クレブシエラNifSおよびNifUの遺伝子を含む遺伝子構築物を用いて形質転換する。この実験は、細菌Nifタンパク質が植物同等物を機能的に置換できるか実証することを意図する(Frazzon et al., 2007)。良好な補完性は、選択されたMTPが、機能状態においてミトコンドリアにニトロゲナーゼタンパク質を標的化する能力を実証する。この実験は、植物におけるNifポリペプチド、この場合NifSおよびNifUについて、ニトロゲナーゼ関連機能に関する最初の実証を提供する。
実施例22.質量分析法を使用したNifポリペプチド発現の計測
ウエスタンブロットおよび抗体検出法を使用しないので、そのため、Nifポリペプチドに追加されるエピトープの使用を回避した、Nifポリペプチド検出および定量化技術を開発するために、本発明者らは、質量分光分析法を使用して、具体的には、タンパク分解性消化ボトムアップMS/MSプロトコールを使用して、直接的に様々なNifタンパク質を検出および定量化しようと考えた。これは、完全スキャンの際に親イオンのOrbitrap質量分析装置を用いた高質量分解能および質量精度を提供するために並行して動作する3つの質量分析装置を有するOritrap Fusion Tribrid質量分析計(ThermoFisher)を利用した。この装置の方法論および感度は、現在利用可能な他の装置より複雑で、精製されていないタンパク質混合物からより多くのタンパク質およびペプチドの同定を達成できると考えられた。この装置を、細菌で発現されたNifタンパク質、具体的には、16個の異なるNifポリペプチドをコードするpMIT2.1で形質転換し、そして、発現するE.コリ細胞の、ペプチドいタンパク質の比標的検出を可能にするように、データ依存様式でサンプルを分析することによって最初に試験した。未精製タンパク質混合物を、トリプシンで処理して、検出のための分子量範囲内のペプチドを準備した。Nifポリペプチドのトリプシン分解によって製造された特異的ペプチドをいったん同定すると、それらの予測される保持時間における着目のペプチドの元の質量を具体的に単離した標的化リストを作製できる。この標的化アプローチは、低い存在量のためNifタンパク質からのペプチドを逃す可能性、または多数の内因性細菌もしくは植物トリプシンペプチドのためデータ依存方法によって選択されなかった可能性、を排除する助けとなった。
【0491】
この質量分析ベースのプロトコールは、pMIT2.1プラスミドで形質転換したE.コリで発現された16個の異なるNifタンパク質の完全な集団を検出することに成功した。少なくとも1つの特異的ペプチドを、16個のNifポリペプチドの一つ一つについて検出した。複数の特異的トリプシンペプチドを、全Nifポリペプチド配列の4~55%を網羅する、ほとんどNifポリペプチド、Nifポリペプチドに関しては最大19個のペプチドまで検出した(表10)。多くのNifポリペプチドのSum PEPスコアは非常に高く(表10)、Nifにポリペプチドのレベルを特異的に検出および計測するこの方法の能力における全幅の信頼を示している。このような関係においては、合計事後誤差確率(PEP)スコアは、ペプチドスペクトルマッチに関するPEP値の負の対数の合計である。Sum PEP値が大きいほど、検出の偽陽性の可能性が低い。
【0492】
次に、その方法を、着目のベクターを含有するアグロバクテリウムを浸潤させた植物葉サンプルを処理するのに以下に記載した方法を使用して、様々なMTP::Nif遺伝子構築物を発現するN.ベンサミアナ細胞からの未精製抽出物質に対して試験した。すべての浸潤物が、P19サイレンシングサプレッサタンパク質(配列番号125)の同時発現のための遺伝子構築物を含有したアグロバクテリウムとの混合物を含んでいた。P19ウイルスサプレッサタンパク質からの2つの特異的トリプシンペプチド(配列番号126;配列番号127)の検出を、一過性発現系の成功に関する正の対照として使用した。
【0493】
その方法は、植物細胞において一過性に発現されたときに、NifK、NifB、NifH、NifF、NifJ、NifSおよびNifXポリペプチドのそれぞれからの3~16個の特異的トリプシンペプチドを特異的に検出することに成功した。例えば、これらのNif融合ポリペプチドから植物細胞において検出される特異的ペプチドを、以下に列挙する。それらの一過性発現実験のそれぞれに関して、P19からの2つの特異的ペプチドもまた検出した。特異的Nifペプチドが検出されなかった、他のNifポリペプチドを発現するための遺伝子を使用したいくつかの実験では、P19からの2つの特異的ペプチドもまた検出されなかった。恐らく準最適な植物の健康状態のため、それらの実験において低い形質転換効率を示した。その実験を、より良好な植物を用いて繰り返した。
【0494】
表10.pMIT2.1を含有するE.コリにおいて発現されたNifポリペプチドの検出
【表10】
【0495】
植物細胞において検出されるNifK由来の代表的な、特異的ペプチド:
INSCYPLFEQDEYQELFR(配列番号128)
QLEEAHDAQR(配列番号129)
EALTVDPAK(配列番号130)
TFTADYQGQPGK(配列番号131)
LPKLNLVTGFETYLGNFR(配列番号132)
MMEQMAVPCSLLSDPSEVLDTPADGHYR(配列番号133)
MYSGGTTQQEMK(配列番号134)
EAPDAIDTLLLQPWQLLK(配列番号135)
FGLYGDPDFVMGLTR(配列番号136)
DSEVFINCDLWHFR(配列番号137)
QPDFMIGNSYGK(配列番号138)
AFEVPLIR(配列番号139)
LGFPLFDR(配列番号140)
QTTWGYEGAMNIVTTLVNAVLEK(配列番号141)
LDSDTSQLGK(配列番号142)
TDYSFDLVR(配列番号143)
【0496】
植物細胞において検出されるNifH由来の特異的ペプチド:
LGTQMIHFVPR(配列番号144)
MTVIEYDPACK(配列番号145)
VMIVGCDPK(配列番号146)
CAESGGPEPGVGCAGR(配列番号147)
STTTQNLVAALAEMGK(配列番号148)
STTTQNLVAALAEMGKK(配列番号149)
QTDREDELIIALAEK(配列番号150)
AQEIYIVCSGEMMAMYAANNISK(配列番号151)
AVQGAPTMR(配列番号152)
LGGLICNSR(配列番号153)
AQNTIMEMAAEVGSVEDLELEDVLQIGYGDVR(配列番号154)
【0497】
植物細胞において検出されるNifB由来の特異的ペプチド:
LCLSTNGLVLPDAVDR(配列番号155)
FAAILELLADVK (配列番号156)
GESEADDACLVAVASSR(配列番号157)
AVQGAPTSCSSFSGGK(配列番号158)
INSVLIPGINDSGMAGVSR(配列番号159)
QVAQAIPQLSVVGIAGPGDPLANIAR(配列番号160)
【0498】
植物細胞において検出されるNifJ由来の特異的ペプチド:
IAGELLPGVFHVSAR(配列番号161)
GTAQNPDIYFQER(配列番号162)
IPFVNFFDGFR(配列番号163)
IEVLEYEQLATLLDRPALDSFR(配列番号164)
SGGITVSHLR(配列番号165)
【0499】
植物細胞において検出されるNifS由来の特異的ペプチド:
EKEIDYVVATLPPIIDR(配列番号166)
EIDYVVATLPPIIDR(配列番号167)
IAVDGEGALDMAQFR(配列番号168)
EIITSVVEHPATLAACEHMER(配列番号169)
IDMLSCSAHK(配列番号170)
AMNIPYTAAHGTIR(配列番号171)
QVYLDNNATTR(配列番号172)
IPIAVGQTR(配列番号173)
GVGCLYLR(配列番号174)
【0500】
植物細胞において検出されるNifX由来の特異的ペプチド:
VPADTTIVGLLQEIQLYWYDK(配列番号175)
QFDMVHSDEWSMK(配列番号176)
VVDFSVENGHQTEK(配列番号177)
RAGDYKDDDDKPG(配列番号178)
ARGDYKDDDDKPG(配列番号179)
HVDQHFGATPR(配列番号180)
VAFASSDYR(配列番号181)
LLQEQEWHGDPDPR(配列番号182)
【0501】
植物細胞において検出されるNifF由来の特異的ペプチド:
LASWLEEIKR(配列番号183)
VLGSWTGDSVNYAASR(配列番号184)
QLGELADAPVNINR(配列番号185)
FVGLVLDQDNQFDQTEAR(配列番号186)
【0502】
方法
植物葉サンプルを、液体窒素を用いて冷凍し、そして、液体窒素下で乳鉢と乳棒ですりつぶした。2倍量(v/v)の尿素/SDSバッファー(6Mの尿素、2%のSDS、62.5mMのTris HCl pH6.8、65mMのDTT)を、粉末リーフディスクに加え、そして、細胞溶解とDTTによるタンパク質の還元のために室温にて静置した(30分間)。サンプルを、16,000gにて5分間遠心分離した。10~20μlの可溶性画分を、100μlの尿素バッファーと共にmicrocon-30 MWCOフィルターに適用し、そして、10,000gにて10分間遠心分離した。100μlの尿素バッファーおよび3.5μlの40%アクリルアミドを添加することによって、アクリルアミドでシステイン残基を不活性化し、室温にて30分間インキュベートし、続いて、10,000gにて10分間遠心分離した。100μlの重炭酸アンモニウム(水中に25mM)の2回の洗浄ステップおよび先のような遠心分離が、60μlのABC中の0.5μgのトリプシン(Promega)を用いたトリプシン分解に先行し、続いて、37℃にて一晩インキュベートした。トリプシン分解からのペプチドを、10,000gにて10分間の遠心分離によって溶出した。280nmにおける吸光度を使用して、ペプチド濃度を決定し(Nanodrop)、そして、サンプルを、50ng/μlまでLCMSローディングバッファーで希釈した。
【0503】
各サンプルからの250ngのトリプシン消化産物を、Orbitrap Fusion Tribrid Mass Spectrometerに直接連結されたDionex Nanomate 3000(ThermoFisher)ナノLCシステムに注入した。ペプチドを、ローディングバッファーを用いて10μL/分の流量にてAcclaim PepMap C18(300Å、5mm×300μm)トラップカラムにより5分間脱塩し、そして、35℃、0.3μL/分の流量にて、Acclaim PepMap C18(100Å、150mm×0.075mm)カラムにより分離した。60分間かけて5%から40%への溶媒Bのリニアグラジエントを利用し、続いて、洗浄および5分間かけて40から99%へのB、99%のBにて5分間の保持、6分間かけて5%のBに戻し、そして、7分間保して再平衡化した。使用した溶媒は:(A)0.1%のギ酸、99.9%の水;(B)0.08%のギ酸、80%のアセトニトリル、19.92%の水、であった。ナノLCは、Orbitrap Fusion MSのNanospray Flex Ion供給源に直接連結されていた。イオン噴霧電圧を2400Vに設定し、スイープガスを1Arbに設定し、およびイオン輸送チューブ温度を300℃に設定した。データを、Orbitap-MS調査スキャンとそれに続く、120,000分解度での高分解性Orbitrapスキャンの並行捕捉および3秒間にわたるリニアイオントラップにおける複数のMS/MS事象から成るデータ依存収集モードにより獲得した。第一段階のMS分析を、4×105のAGC標的および50msの最大射出時間を用いた、m/z 400~1500の質量範囲にわたる正イオンモードで実施した。タンデム質量スペクトルを、荷電状態2~7で1000カウントの強度閾値を超えた前駆イオンによりイオントラップで取得した。スペクトルを、最適なペプチド断片化のための前駆イオンのサイズおよび荷電に基づいて、1.6m/zの分離ウィンドウおよび28%にセットした(高いエネルギー衝突解離)HCDを用いた四重極分離を使用して獲得した。イオントラップ走査速度を、4×103のAGC標的および300msの最大射出時間による急速に設定し、装置を、orbitrapが高分解性MSスペクトルを回収している間、3秒のウィンドウ中のトラップへのイオン注入を最大並行化可能時間利用するように設定した。動的排除を、15秒間間隔および10ppmの質量寛容性で1回出現後に前駆イオンを排除するように設定した。
【0504】
タンパク質分析を、Proteome Discoverer v2.1(ThermoFisher)のSequestアルゴリズムを使用して実施した。カルバミドメチルをアルキル化剤として選択し、トリプシンを消化酵素として選択し、H、M、W、ならびに脱アミド化NおよびQに対する酸化のために、最大3つの修飾を有する動的修飾を選択した。タンデム質量分析データを、Nif構築物に関する自家データベース、UniProtから注釈された、一般的な混入物および生物体に固有なデータベースに対して検索した。データベース検索結果を、手動でキュレートして、Proteome Discovererソフトウェア内の構築中のFDRツールによって決定された1%の包括的偽発見率(FDR)を使用したタンパク質同定をもたらした。
【0505】
本開示の広く一般的な範囲から逸脱することなく、先に記載の本発明への種々の変更および/または改変がなされ得ることは、当業者に明らかであろう。したがって、本発明の実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。
【0506】
本明細書において論じられるおよび/または言及されたすべての刊行物は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0507】
本明細書に含まれた文書、法令、材料、装置、物品などのいかなる考察も、単に本発明についての文脈を提供する目的のためのものである。これらの事柄のいずれか、もしくはすべてが先行技術ベースの一部を形成するか、または本出願のそれぞれの特許請求の範囲の優先日以前に存在したため、本発明に関する分野における共通の一般的知識であったことの承認と解釈されるべきではない。
【0508】
参考文献
【化1-1】
【0509】
【化1-2】
【0510】
【化1-3】
【0511】
【化1-4】
【0512】
【化1-5】
図1
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【配列表】
2024167185000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-08-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミトコンドリアと、以下の:
(i)C末端を有するミトコンドリア標的化ペプチド(MTP)、
(ii)N末端およびC末端を有するNifDポリペプチド(ND)、
(iii)オリゴペプチドリンカー、および
(iv)N末端を有するNifKポリペプチド(NK)、
を含み、
ここで、該MTPのC末端が、該NDのN末端に翻訳的に融合され、および
ここで、該リンカーが、該NDのC末端と該NKのN末端に翻訳的に融合される、
融合ポリペプチドとを含む植物細胞。
【外国語明細書】