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特開2024-167197タンジェントフローろ過によるmRNA精製
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167197
(43)【公開日】2024-12-03
(54)【発明の名称】タンジェントフローろ過によるmRNA精製
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20241126BHJP
【FI】
C12N15/10 120Z
C12N15/10 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024124252
(22)【出願日】2024-07-31
(62)【分割の表示】P 2021546787の分割
【原出願日】2020-02-11
(31)【優先権主張番号】19156522.5
(32)【優先日】2019-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】512024886
【氏名又は名称】エスリス ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ethris GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス ガイガー
(72)【発明者】
【氏名】マルティン トレムル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】mRNA分子を大規模に効率的に精製することができ、これにより、GSCN等の下流工程での用途で問題となり得る塩を確実に低いレベルに抑えることと、容易に自動化できるシステムを使用することとを可能にする、mRNA分子の精製方法を提供する。
【解決手段】(Ia)沈殿したmRNA分子を含む懸濁液から沈殿したmRNA分子を精製するステップと、(Ib)精製済みの沈殿したmRNA分子を洗浄し、溶解させるステップと、(IIa)キレート化剤を含む溶液を使用して、mRNA分子を精製するステップと、続いて、(IIb)精製済みのmRNA分子を洗浄するステップとを含む、mRNA分子を精製する方法であって、ステップ(Ia)~(IIb)が、タンジェントフローろ過を用いて実施される、方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(Ia) 第1の溶液を使用して、沈殿したmRNA分子を含む懸濁液から沈殿したm
RNA分子を精製するステップと、
(Ib) 第2の溶液を使用して、ステップ(Ia)において得られた精製済みの沈殿
したmRNA分子を洗浄し、溶解させるステップと、
(IIa) キレート化剤を含む第3の溶液を使用して、ステップ(Ib)において得
られた溶解したmRNA分子からmRNA分子を精製するステップと、続いて、
(IIb) 第4の溶液を使用して、ステップ(IIa)において得られた精製済みの
mRNA分子を洗浄するステップと
を含む、mRNA分子を精製する方法であって、ステップ(Ia)~(IIb)が、タン
ジェントフローろ過を用いて実施される、方法。
【請求項2】
キレート化剤が、EDTAである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第3の溶液が、1~10のpHを有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
第3の溶液が、MOPSバッファーを含む、請求項1から3請求項のいずれか一項に記
載の方法。
【請求項5】
ステップ(Ia)~(IIb)が、0℃~25℃の温度で実施される、請求項1から4
のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(Ia)の前に、前記懸濁液が、mRNA分子を沈殿させるために酢酸アンモ
ニウムを使用して得られ、第1の溶液が、酢酸アンモニウムを含有する、請求項1から5
のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第2の溶液が、水であり、及び/又は、第4の溶液が、水であり、若しくは塩化ナトリ
ウム及び/若しくはクエン酸ナトリウムを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項8】
mRNA分子が、タンジェントフローろ過後の保持液に含まれる、請求項1から7のい
ずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(Ia)において得られた保持液が、ステップ(Ib)において、タンジェン
トフローろ過のためのフィード溶液として使用され、ステップ(Ib)において得られた
保持液が、ステップ(IIa)において、フィード溶液として使用され、ステップ(II
a)において得られた保持液が、ステップ(IIb)において、フィード溶液として使用
される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
懸濁液に含まれるmRNA分子が、インビトロ転写によって得られる、請求項1から9
のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
mRNA分子を脱リン酸化及び/又はポリアデニル化及び/又はポストキャッピングす
ることをさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(Ib)において得られたmRNA分子を脱リン酸化することと、続いて、ス
テップ(Ia)~(IIb)を実施することと、続いて、得られたmRNA分子をポリア
デニル化することと、続いて、ステップ(Ia)~(IIb)を実施することとを含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(Ia)の場合は、300kDa~0.65μmの分子量カットオフを有する
フィルターメンブレンが、タンジェントフローろ過のために使用され、及び/又はステッ
プ(Ib)及び(IIb)の場合は、1kDa~0.65μmの分子量カットオフを有す
るフィルターメンブレンが、使用され、及び/又はステップ(IIa)の場合は、少なく
とも70kDaの分子量カットオフを有するフィルターメンブレンが、使用される、請求
項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
第1、第2、第3及び/又は第4の溶液のいずれかのダイアフィルトレーション量が、
ステップ(Ia)の懸濁液の体積に対して少なくとも1倍である、請求項1から13のい
ずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
(a) 請求項1から14のいずれか一項に記載の方法によってmRNA分子を精製す
ることと、
(b) このようにして得られたmRNA分子を医薬組成物中に配合することと
を含む、医薬組成物を製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(Ia) 沈殿したmRNA分子を含む懸濁液から沈殿したmRNA分子を
精製するステップと、(Ib) 精製済みの沈殿したmRNA分子を洗浄し、溶解させる
ステップと、(IIa) キレート化剤を含む溶液を使用して、mRNA分子を精製する
ステップと、続いて、(IIb) 精製済みのmRNA分子を洗浄するステップとを含む
、mRNA分子を精製する方法であって、ステップ(Ia)~(IIb)が、タンジェン
トフローろ過を用いて実施される、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝情報は、デオキシリボ核酸(DNA)として細胞内に保管されており、必要なとき
には、リボ核酸(RNA)内に転写することができる。DNA分子とRNA分子は両方と
も、窒素塩基、五炭糖及び少なくとも1個のリン酸基からなるヌクレオチドの集合体であ
る。タンパク質合成のための遺伝情報を保有するmRNA分子を含む、様々な種類のRN
A分子が存在する。真核生物では、これらのmRNA分子は、DNAから未成熟のmRN
A分子として転写され、続いて、例えば5’キャップ及び3’ポリアデノシン(ポリ(A
))テールの付加によって修飾される。次いで、成熟mRNA分子が細胞核から細胞質内
に転移され、タンパク質に翻訳される。したがって、DNA配列及び成熟mRNA分子の
量、安定性及び翻訳効率は、主に、細胞内のタンパク質合成を左右する。
【0003】
例えば治療との関連で細胞内における所望のタンパク質の合成を最適化するという目的
では、mRNAベースの手法は、有望なツールの代表である。mRNA分子の使用には、
タンパク質翻訳のためにはmRNA分子を細胞の細胞質内にのみ導入しなければならない
という利点がある(Tavernierら、2011、J Control Relea
se、150(3):238~247; Yamamotoら、2009、Eur J
Pharm Biopharm、71(3):484~489)。さらに、プラスミド等
の適切なキャリアに含まれる各DNA配列の使用に比較すると、mRNA分子の使用は、
難度がより低く、より効率的なものであり、プラスミド又はプラスミドの一部がゲノムに
組み込まれると染色体DNAが改変されてしまうという、かなり高いリスクもなくなって
いる。mRNA分子は、例えば治療用途においては、主にインビトロ転写によって生成さ
れる。このような手法は、プラスミドDNA自体の直線化又はプラスミドDNAからのポ
リメラーゼ連鎖反応(PCR)によって生成される、DNA鋳型をベースとする。これら
の手法は両方とも十分に確立されており、容易にスケールアップすることができる。しか
しながら、いずれの場合においても、mRNA分子は、下流工程での用途に使用できるよ
うにする前に、精製されなければならない。
【0004】
汚染物質は、大部分の下流工程での用途、特定すると、治療に関する大部分の下流工程
での用途に悪影響するため、合成されたmRNA分子の精製は重要である。様々な副生成
物が、mRNA合成等の上流プロセスで使用及び/又は生成される成分等の所望のmRN
A分子を汚染する可能性がある。インビボ手法とインビトロ手法のいずれの場合であって
も、短いmRNA分子フラグメントは例えば、加水分解及びアボーティブ転写(abor
tive transcription)によって生じ得る。mRNA分子の加水分解は
、触媒又は酵素の存在下で起き得るが、自然に起きることもあり、この加水分解の結果と
して、各mRNA分子が分解されることにより、長さが可変のmRNA分子フラグメント
が形成される。アボーティブ転写(例えば、Revyakinら、2006、Scien
ce、314(5802):1139~1143を参照)の場合、RNAポリメラーゼは
、転写のためにDNA分子内にある各プロモーターエレメントに結合し、転写開始部位の
周囲のDNA二本鎖を巻き戻し、mRNA分子の合成を開始させる。しかしながら、場合
によっては、RNAポリメラーゼがDNAのプロモーター領域を脱出せず、DNA分子の
一部を翻訳しながら動かない状態にとどまることもある。巻き戻されたDNAは酵素中に
蓄積していくため、RNAポリメラーゼは、転写のための遺伝情報が保管されたDNAの
部分を排出し、長さ1~15ヌクレオチドの合成RNA分子を放出する(例えば、Gol
dmanら、2009、Science、324(5929):927~928を参照)
。例えば、このような短いmRNA分子フラグメントを含む医薬組成物を投与したときの
望ましくない免疫反応を回避するという目的では、さらなる下流工程での用途、特定する
と、治療に関するさらなる下流工程での用途のための、フラグメント化されていない精製
済みのmRNA分子を得ることは、非常に望ましい。
【0005】
沈殿及びろ過並びにこれらの組合せを含む、mRNA分子を精製するための様々な手法
が存在する。望ましくない塩、ヌクレオチド及びタンパク質を除去するという目的では、
例えば、RNA沈殿ベースの手法は、精製されたRNA分子を、好適なバッファーに再懸
濁可能なペレットとして得るための、費用効果が高い簡便な方法の代表である。沈殿のた
めには、例えばグアニジンチオシアネート(GSCN)、酢酸アンモニウム(NHOA
c)、エタノール、塩化リチウム及び酢酸ナトリウムを含む、多様な溶液を使用すること
ができる(例えば、Walker and Lorsch、2013、Methods
Enzymol、530:337~343によってレビューされている)。一方、ろ過法
は、mRNA分子等のターゲット分子を精製するための機械的コンセプトをベースとする
。ろ過の場合、フィード、すなわち、mRNA分子等のターゲット分子を含む溶液又は懸
濁液は、フィルターメンブレンを通り抜け、又はフィルターメンブレンを端から端まで横
断するが、後者の場合は、タンジェントフローろ過(TFF)と呼ばれる。
【0006】
例えば、WO2014/152966A1及びWO2015/164773A1は、溶
液及び/又は懸濁液の体積を変更しながらTFFを使用して、mRNA分子を精製するた
めの方法を開示している。mRNA分子は、例えば尿素、GSCN及び/又は塩化カリウ
ムを使用してmRNA分子を沈殿させることによって精製され、沈殿物は、複数回洗浄さ
れる。しかしながら、いずれの場合においても、これらの方法が、失敗作のmRNA分子
及び/又は加水分解生成物等の短いmRNAフラグメントを考慮に入れたターゲットmR
NA分子の精製を可能にしているかは示されていない。
【0007】
WO2016/193206A1は、RNAを製造及び精製するための方法であって、
RNA精製が、少なくとも1つのTFFステップを含み、好ましくは、フェノール/クロ
ロホルム抽出並びに/又はDNA及び/若しくはRNA沈殿を含むステップを含まない、
方法を開示している。さらに、RNA分子は好ましくは、例えばカチオン交換及び/若し
くはイオン交換クロマトグラフィー、並びに/又は逆相クロマトグラフィーを用いるさら
なる精製ステップの適用によって精製される。上記のように、上記文献は、失敗作のmR
NA分子及び/又はmRNA分子の加水分解生成物を考慮に入れたターゲットRNA分子
の精製を開示していない。
【0008】
WO2018/157133A1は、mRNA分子の大規模な精製のための方法を開示
している。この発明は特に、清浄で均一なmRNA分子組成物を調製するための、撹拌さ
れた細胞又は撹拌型Nutscheろ過装置に関する。実施例において示されているよう
に、GSCNを使用してmRNA分子を沈殿させ、沈殿物は、GSCN及びエタノールを
含む溶液を使用して洗浄する。興味深いことに、特許請求された方法によって得られたm
RNA分子組成物が、TFFを使用して精製されたmRNA分子を含む組成物と比較され
ており、TFFベースの精製のみでは、ターゲットmRNA分子の他に残留酵素も含む溶
液が生じたことが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2014/152966A1
【特許文献2】WO2015/164773A1
【特許文献3】WO2016/193206A1
【特許文献4】WO2018/157133A1
【0010】
【非特許文献1】Tavernierら、2011、J Control Release、150(3):238~247; Yamamotoら、2009、Eur J Pharm Biopharm、71(3):484~489
【非特許文献2】Revyakinら、2006、Science、314(5802):1139~1143
【非特許文献3】Goldmanら、2009、Science、324(5929):927~928
【非特許文献4】Walker and Lorsch、2013、Methods Enzymol、530:337~343
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、特に失敗作のmRNA分子及びmRNA分子の加水分解生成物を考慮に入
れて、mRNA分子を大規模に効率的に精製することができ、これにより、GSCN等の
下流工程での用途で問題となり得る塩を確実に低いレベルに抑えることと、容易に自動化
できるシステムを使用することとを可能にする、いつでも使える代替ソリューションを入
手することが、依然として必要とされている。
【0012】
本出願は、特許請求の範囲に記載の実施形態を提供することにより、精製済みのmRN
A分子をハイスループットで得るという必要性に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
特に、本発明は、(Ia) 第1の溶液を使用して、沈殿したmRNA分子を含む懸濁
液から沈殿したmRNA分子を精製するステップと、(Ib) 第2の溶液を使用して、
ステップ(Ia)において得られた精製済みの沈殿したmRNA分子を洗浄し、溶解させ
るステップと、(IIa) キレート化剤を含む第3の溶液を使用して、ステップ(Ib
)において得られた溶解したmRNA分子からmRNA分子を精製するステップと、続い
て、(IIb) 第4の溶液を使用して、ステップ(IIa)において得られた精製済み
のmRNA分子を洗浄するステップとを含む、mRNA分子を精製する方法であって、ス
テップ(Ia)~(IIb)が、タンジェントフローろ過を用いて実施される、方法に関
する。
【0014】
驚くべきことに、本発明による方法は、高度のmRNA分子精製をもたらし、この結果
として、精製済みのmRNA分子を含むが、mRNA分子の加水分解生成物及び失敗作の
mRNA分子を全く又はほとんど含まない溶液をもたらすことがわかった。特に、前記方
法の適用により、下流工程での用途で問題となり得るmRNA分子の加水分解生成物、失
敗作のmRNA分子、タンパク質及び塩が効率的に除去されることがわかった。したがっ
て、本発明による方法を適用することにより、医薬用途等の下流工程での用途に適する、
精製済みのmRNA分子を含む溶液を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明との関連において、「精製するための方法」という用語は、精製すべき前記ター
ゲット分子及びターゲット分子以外の成分を含む混合物、例えば溶液又は懸濁液から、タ
ーゲット分子を得るための方法であって、前記方法の実施後に得られた溶液中におけるタ
ーゲット分子の濃度が、前記方法の実施前における混合物中のターゲット分子の濃度との
比較で高められ、又は上昇している、方法を指す。ターゲット分子の精製は、前記ターゲ
ット分子以外の成分を除去又は少なくとも実質的に除去することによる、前記ターゲット
分子の濃縮と言うこともできる。
【0016】
本発明との関連において、ターゲット分子は、mRNA分子である。本明細書において
、「mRNA」及び「mRNA分子」という用語は、相互に置きかえ可能に使用されてい
るが、例えばA、C、G及び/又はUヌクレオチド、すなわち、それぞれの窒素塩基とし
てアデニン、グアニン、シトシン及びウラシルを含むヌクレオチドからなる一本鎖RNA
分子集合体を指す。さらに、mRNA分子は、翻訳中にアミノ酸配列を合成しているとき
に鋳型として使用され得る、1個以上のコード配列を含む。したがって、精製すべきmR
NA分子は好ましくは、コード配列、すなわち、タンパク質等のアミノ酸配列に翻訳する
ことが可能であり、開始コドン及び終始コドンを含む、配列を含む。コード配列は、天然
の配列であってもよいし、使用すべき天然の配列に由来する部分的に若しくは完全にコド
ン最適化された配列であってもよいし、又は人工の配列であってもよい。コドン最適化は
、いくつかの種によって所与のアミノ酸のために優先的に使用されるコドンが存在するこ
ともあるという理由で、タンパク質の発現を、そのタンパク質に対応するmRNA分子の
翻訳効率を高めることによって最大化するために用いられる技法を指す。さらに、前記m
RNA分子は、5’非翻訳領域(UTR)及び/若しくは3’非翻訳領域、1個以上の配
列内リボソーム進入部位(IRES)、翻訳を促進するための1個以上のさらなる配列、
並びに/又は、作用の持続期間を調節及び/若しくは延長するための1個以上の修飾を含
んでもよい。mRNA分子のさらなる特徴は、後でさらに詳細に説明されている。
したがって、「mRNA」という用語は、アミノ酸配列の発現に適し、又は、タンパク質
等のアミノ酸配列に翻訳することができる、任意のRNA分子を意味するように解される
べきである。したがって、「mRNA分子」は、そのmRNA分子を特徴付ける特性及び
/又は活性を示し、したがって、タンパク質等のアミノ酸配列に翻訳することが可能であ
る、mRNA分子と解されるように意図されているが、前記アミノ酸配列は、そのアミノ
酸配列を特徴付ける活性及び/又は特性を示す。
【0017】
本明細書において、「アミノ酸配列」という用語は、任意の種類のアミノ酸配列、すな
わち、各アミノ酸がペプチド結合を介して連結されている、2個以上のアミノ酸からなる
鎖を包含し、着目する任意のアミノ酸配列を指す。好ましくは、コード化アミノ酸配列は
、少なくともアミノ酸5個分の長さであり、より好ましくは、少なくともアミノ酸10個
分の長さであり、さらにより好ましくは、少なくともアミノ酸50個分、100個分、2
00個分又は500個分の長さである。したがって、「アミノ酸配列」という用語は、短
鎖ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、融合タンパク質、タンパク質並びに公知の
タンパク質の部分、好ましくは機能的部分等のこれらのフラグメントを包含する。前述の
ものは例えば、タンパク質の生体活性部分であってもよいし、又は、抗体の産生に効果的
なものであり得るエピトープ等の抗原性部分であってもよい。アミノ酸配列の機能に関し
て限定はなく、可能なアミノ酸配列は、後でさらに詳述されている。
【0018】
対照的に、前記mRNA分子の精製中に除去すべき成分、したがって、ターゲット分子
以外の成分には例えば、加水分解によって部分的に又は完全に分解されるmRNA分子が
挙げられる。加水分解による分解は、ランダム過程であり、得られた分解生成物は、本明
細書において「加水分解生成物」又は「mRNA分子の加水分解生成物」と呼ぶものであ
り、加水分解したmRNA分子より少なくとも1ヌクレオチド短い。したがって、加水分
解したmRNA分子の長さに応じて、得られた加水分解生成物は、例えば10,000ヌ
クレオチド未満、好ましくは5,000ヌクレオチド未満、より好ましくは500ヌクレ
オチド未満、さらにより好ましくは250ヌクレオチド未満、さらにより好ましくは17
0ヌクレオチド未満、最も好ましくは120ヌクレオチド未満の長さを有し得る。除去す
べき成分の別の例は、例えば50ヌクレオチド未満、好ましくは25ヌクレオチド未満、
より好ましくは15ヌクレオチド未満の長さを有し得る失敗作のmRNA分子である。
【0019】
さらに、mRNA分子の精製中に除去すべき成分には例えば、mRNA分子のインビト
ロ転写等のターゲット分子のインビトロ合成中に使用される成分、並びに/又は、ターゲ
ット分子の合成及び/若しくはmRNA分子の転写のための鋳型の増幅を目的として使用
される細胞に含まれる成分が挙げられる。mRNA分子のインビトロ転写の場合、このよ
うな成分は例えば、インビトロ転写のために使用される酵素等のタンパク質;塩;マグネ
シウムイオン等のイオン;三リン酸ヌクレオシド;5’キャップ及び/又は5’キャップ
アナログを含むモノホスフェート、ジホスフェート、及び/若しくはトリホスフェート;
アボーティブ転写産物;加水分解生成物;3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(
MOPS)等のバッファー;並びに/又はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のキレ
ート化剤を含む。
【0020】
本発明による方法は、タンジェントフローろ過(TFF)によって実施される。TFF
は、精製すべきmRNA分子を含む懸濁液又は溶液が、フィルターメンブレンの表面を端
から端まで横断するように接線方向に流れ、このとき、mRNA分子が、好ましくは保持
液中に保持されることを特徴とする。したがって、mRNA分子を精製するためにTFF
を実施することにより、そのときまでには、フィルターメンブレンを閉塞させる可能性が
あるろ過ケーキが存在しなくなり、この結果として、フィルターメンブレンの使用可能時
間を長くすることができる。
したがって、本発明によるターゲット分子を精製するためのシステムは、TFFシステム
である。TFFシステムは一般的に、カプセル、カセット及びホルダー又は中空繊維モジ
ュール等のフィルター装置と、ポンプと、管と、バルブ又はクランプと、流体貯蔵器と、
任意選択により圧力計とを備える(図1を参照)。このようなTFFシステムは、高いm
RNA分子の濃度が高い場合であっても、フィルターメンブレンの細孔を閉塞させること
なく、連続的に使用することができる。TFFシステムの使用は、精製すべきmRNA分
子のハイスループット精製を可能にするため、有利である。
【0021】
注意点として、「溶液」という用語は一般的に、2種以上物質の均一な混合物を指し、
特に、物質の液体状態に適用されるが、気体及び固体の溶液も同様に可能である。本明細
書において、「溶液」という用語は、特に本発明による「第1の溶液」、「第2の溶液」
、「第3の溶液」及び「第4の溶液」に関する場合、水、均一であることが好ましい液体
の混合物及び例えば液体と、好ましくは溶解した塩との混合物等の液体を包含する。
【0022】
本発明によれば、沈殿したmRNA分子を含む懸濁液から前記沈殿したmRNA分子を
精製するステップ(Ia)を含む、mRNA分子を精製する方法が提供される。前記精製
は、第1の溶液を使用して達成される。沈殿したmRNA分子を含む懸濁液は例えば、細
胞溶解又はインビトロ転写によって得ることができる。したがって、沈殿したmRNA分
子は、タンパク質及び酵素を含むアミノ酸配列、ヌクレオシド三リン酸、バッファー成分
、並びに、任意選択により5’キャップ及び5’キャップアナログ等、細胞の構成要素又
はインビトロ転写混合物の成分から精製されなければならない。5’キャップ及び5’キ
ャップアナログは、例えばmRNA分子がインビトロで転写され、同時転写5’キャッピ
ングされた場合においては、ステップ(Ia)を実施するために使用された懸濁液に含ま
れてもよい。したがって、ステップ(Ia)は、沈殿したmRNA分子に由来する細胞の
構成要素又はインビトロ転写混合物の成分を除去するために有利である。
【0023】
本発明の一部の実施形態では、第1の溶液は、酢酸アンモニウム(NHOAc)を含
有する。したがって、沈殿したmRNA分子は、NHOAcを含む第1の溶液を使用し
て、懸濁液から精製される。さらに、第1の溶液は、好ましくは1~12の範囲、より好
ましくは1~10の範囲、さらにより好ましくは3~9の範囲、最も好ましくは6~8の
範囲のpHを有する。したがって、沈殿したmRNA分子は、NHOAcを含む第1の
溶液を使用して、沈殿したmRNA分子を含む懸濁液から精製され、1~12の範囲、好
ましくは1~10の範囲、より好ましくは3~9の範囲、さらにより好ましくは6~8の
範囲のpHを有する。
【0024】
本発明によるmRNA分子を精製する方法は、第2の溶液を使用して、上記ステップ(
Ia)において得られた精製済みの沈殿したmRNA分子を洗浄し、溶解させるステップ
(Ib)をさらに含む。前記第2の溶液は、mRNA分子を再懸濁させることが可能であ
り、mRNA分子が安定な状態に留まり、すなわち、加水分解しない、任意の溶液、例え
ば水であってよい。ステップ(Ib)を実施することは、特に第1の溶液の成分を除去す
るため、及び溶解したmRNA分子を得るために有利である。本発明の一部の実施形態で
は、第2の溶液は、水である。
【0025】
本発明によるmRNA分子を精製する方法は、キレート化剤を含む第3の溶液を使用し
て、ステップ(Ib)において得られた溶解したmRNA分子からmRNA分子を精製す
るステップ(IIa)をさらに含む。これは、溶解したmRNA分子を含む溶液から失敗
作のmRNA分子及び加水分解生成物を除去するために特に有利である。
【0026】
「キレート化剤」という用語は、カチオンをキレート化する分子を指し、特には、pH
及び/若しくは温度、キレート化剤の濃度並びに/又はキレート化すべきカチオンの種類
等のいくつかの因子に応じて、配位化合物内の中心原子に結合することができる供与基を
有する、分子を指す。キレート化剤は例えば、分子1個当たりの座(dentate)の
数、すなわち、供与基の数、及び/又は、キレート化すべきカチオンにある配位座の数に
よって特徴付けることができる。例えば、キレート化剤EDTAは、6つの座を有し、キ
レート化剤と二価カチオンとが1:1の錯体になるように二価カチオンをキレート化する

好ましくは、本発明との関連において、「キレート化剤」という用語は、例えば二価マグ
ネシウムイオン及び二価カルシウムイオン並びに/又は三価鉄イオン等の二価並びに/又
は三価カチオンを錯化することができる、キレート化剤を指す。一般に、カチオンにある
配位座が4つ未満のキレート化剤は、特に二価及び/又は三価カチオンを効率的に錯化す
るという観点においては、カチオンにある配位座が4つ以上のキレート化剤より低いキレ
ート化活性を有する。
【0027】
本発明によるキレート化剤は、キレート化すべきカチオンにある配位座が少なくとも4
つのキレート化剤であり、より好ましくは、キレート化すべきカチオンにある配位座が4
つより多いキレート化剤であり、さらにより好ましくは、「強力キレート化剤」とも呼ば
れる、分子1個当たり少なくとも4つの座を有するキレート化剤であり、より好ましくは
、医薬組成物及び/又は配合物中に使用される、キレート化すべきカチオンにある配位座
が4つより多いキレート化剤であり、さらにより好ましくは、EDTAである。医薬組成
物中に使用される、キレート化すべきカチオンにある配位座が4つより多いキレート化剤
は例えば、Na2EDTA溶液を含むアンチドット(antidot)(例えば、2g/
10ml;例えば、GPUPharma GmbHを参照)及び/若しくはEDTAカル
シウム二ナトリウムを含むアンチドット(例えば、50mg/ml、Amp.10ml;
例えば、Laboratoires SERBを参照)中に使用され、又は例えば、賦形
剤として使用される(例えば、Phenhydan,Desitin Arzneimi
ttel GmbH;又はSoluvit N,Baxter;又はFluimucil
,Zambon GmbHを参照)。
【0028】
したがって、本発明の一部の実施形態では、キレート化剤は、EDTAである。好まし
いキレート化剤の例は、表1に列記されており、EDTAが最も好ましいキレート化剤で
ある。
【表1】
【0029】
EDTA等の強力キレート化剤は特に、マグネシウムカチオン等の二価カチオンを効率
的に除去することができる。マグネシウムカチオンは、例えばmRNA分子の転写に関与
する酵素によって必要とされるため、細胞及びインビトロ転写混合物中に高いレベルで存
在する。本発明者らは、ステップ(IIa)においてEDTA等の強力キレート化剤を使
用することにより、加水分解生成物及び失敗作のmRNA分子の効率的な除去を達成する
ことが可能であり、これにより、高度のmRNA分子精製ができるようになることを発見
した。理論に縛られるわけではないが、上記で言及した前記カチオンは、mRNA分子の
二次構造及び三次構造の形成を促進することが可能であり、特にマグネシウムカチオン等
の二価カチオンの除去は、失敗作のmRNA分子及び加水分解生成物が、前記カチオンの
存在下においては、精製すべきmRNA分子に結合しやすいことがあるため、mRNA分
子の精製との特段の関連性を有し得ると仮定されている。したがって、ステップ(IIa
)においてEDTA等の強力キレート化剤を使用して二価カチオンを除去することにより
、融点が低下し、mRNA分子の二次構造及び/又は三次構造が影響を受けると考えられ
ている。
【0030】
したがって、失敗作のmRNA分子及び加水分解生成物は、透過物として除去すること
ができる。したがって、ステップ(IIa)は、失敗作のmRNA分子及び加水分解生成
物を除去するために特に有利である。
【0031】
本発明によれば、第3の溶液は、キレート化剤、好ましくは、上記に規定の強力キレー
ト化剤、最も好ましくはEDTAを含む。上記のように、所与のキレート化剤の錯体形成
定数(complex building constant)がpHによって影響され
るため、キレート化剤の錯化能力は、pHによって影響され得る。例えばEDTAは、マ
グネシウムイオンのキレート化という観点においては、8~10のpH等のより高いpH
値では特に強力である。しかしながら、所与のキレート化剤の錯化能力と、精製すべきm
RNA分子の安定性との最適なトレードオフを考慮すると、pHを調節することが望まし
い。この点について、EDTA等の強力キレート化剤は、1~10のpH、好ましくは6
~8のpHにおいて、特に二価カチオンを効率的に除去することができることが観察され
ている。したがって、理論に縛られるわけではないが、これにより、特にmRNA分子に
結合した失敗作のmRNA分子及び加水分解生成物の融点を、EDTA等の強力キレート
化剤によって低下させることができ、この結果として、失敗作のmRNA分子及び加水分
解生成物を除去しながら、同時にpHを、精製すべきmRNA分子の安定性を保つ値に調
整することができると仮定されている。
したがって、好ましい一実施形態では、キレート化剤を含有する第3の溶液中におけるp
H値は、各キレート化剤が最適なキレート化能を有するpH値に調節される。
したがって、例えば1~10のpH、好ましくは6~8のpHでEDTA等の強力キレー
ト化剤を使用することは、二価カチオンの効率的な除去のため、したがって、ひいては、
失敗作のmRNA分子及び加水分解生成物の効率的な除去のために有利である。上記代替
的なキレート化剤のうちの1つが使用される場合、pHは、前記代替的なキレート化剤が
イオン、好ましくは、二価マグネシウムカチオンの除去に効果的であるpH値に調節され
ることが必要になることもある。対応するpH範囲は、好ましいキレート化剤に関する上
記表の中で示されている。
【0032】
一部の実施形態第3の溶液は、1~10の範囲、好ましくは3~9の範囲、より好まし
くは6~8の範囲のpHを有する。
【0033】
第3の溶液のpHは、バッファーを使用して得ることができる。好ましいバッファー(
これらのバッファーの各pH範囲は、カッコ内に与えられている。)は、2-[ビス(2
-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール
(Bis-Tris;pH範囲5.8~7.2)、N-(2-アセトアミド)イミノ二酢
酸(ADA;pH範囲6.0~7.2)、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタン
スルホン酸(ACES;pH範囲6.1~7.5)、1,4-ピペラジンジエタンスルホ
ン酸(PIPES;pH範囲6.1~7.5)、2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-
イルプロパン-1-スルホン酸(MOPSO;pH範囲6.2~7.6)、1,3-ビス
(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)プロパン(ビストリスプロパン;pH範囲
6.3~9.5)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン
酸(BES;pH範囲6.4~7.8)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(
MOPS;pH範囲6.5~7.9)、2-[[1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキ
シメチル)プロパン-2-イル]アミノ]エタンスルホン酸(TES;pH範囲6.8~
8.2)、2-[4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル]エタンスルホン
酸(HEPES;pH範囲6.8~8.2)、3-(N,N-ビス[2-ヒドロキシエチ
ル]アミノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO;pH範囲7.0~8.
2)、4-(N-モルホリノ)ブタンスルホン酸(MOBS;pH範囲6.9~8.3)
及び3-[[1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イル]ア
ミノ]-2-ヒドロキシプロパン-1-スルホン酸(TAPSO;pH範囲7.0~8.
2)を含む。特に好ましいバッファーは、6~8の好ましいpH、より好ましくは6.5
~7.5のpHを有するMOPSである。
【0034】
一部の実施形態第3の溶液は、1~10の範囲、好ましくは3~9の範囲、より好まし
くは6~8の範囲のpHを有し、バッファー、好ましくはMOPSを含む。
【0035】
本発明の一部の実施形態では、第3の溶液は、MOPSバッファーを含み、好ましくは
、キレート化剤、好ましくはEDTAの添加前にMOPSバッファーのpHを調節するこ
とによって得られる。
したがって、本発明の一部の実施形態では、特にマグネシウムカチオン等の二価カチオン
を除去するためのキレート化剤として好ましくはEDTAを含む第3の溶液は、MOPS
バッファーをさらに含み、6~8のpHを有する。本発明の一部の実施形態では、MOP
Sバッファーを調製し、前記MOPSバッファーを1~10のpH、好ましくは6~8の
pHに調節した後、好ましいキレート化剤としてEDTAを加えることによって、第3の
溶液を得ることができる。
本発明の一部の実施形態では、第3の溶液は、40mM MOPS及び10mM EDT
Aを含み、6~8のpH、好ましくは6.5~7.5のpHを有する。
【0036】
本発明によるmRNA分子を精製する方法は、第4の溶液を使用して、ステップ(II
a)において得られた精製済みのmRNA分子を洗浄するステップ(IIb)をさらに含
む。第4の溶液は、mRNA分子が安定な状態のままである、すなわち、加水分解しない
、任意の溶液であってよい。ステップ(IIb)は、前記第4の溶液が例えば塩化ナトリ
ウム又はクエン酸ナトリウムを含み、又は水である場合においては、第3の溶液の成分を
除去するために有利である。
【0037】
上記のように、第2及び第4の溶液は、mRNA分子が安定な状態のままである、すな
わち、加水分解しない、任意の溶液であってよい。このような流体は、例えば水、好まし
くは、注射用水(WFI水)等のヌクレアーゼ不含水又はRNアーゼ不含水であってよい
。さらに、第4の溶液の場合は、このような流体は、例えば、HEPES緩衝グルコース
、塩化ナトリウム及び/又はクエン酸ナトリウムであってもよい。
【0038】
したがって、本発明の一部の実施形態では、第4の溶液は、水である。本発明の一部の
実施形態では、第2及び第4の溶液は、水である。
本発明の一部の実施形態では、第4の溶液は、塩化ナトリウム及び/又はクエン酸ナトリ
ウムを含む。
【0039】
本発明の一部の実施形態では、第2の溶液は、水であり、及び/又は第4の溶液は、水
であり、若しくは、塩化ナトリウム及び/若しくはクエン酸ナトリウムを含む。これは、
ステップ(IIb)の後に、さらなる下流工程での処理又は用途の前にさらなるステップ
において除去しなければならない成分を導入するcことなく、精製済みのmRNA分子を
含む溶液を得るために有利である。
【0040】
本発明の好ましい実施形態では、第2の溶液は、水であり、第4の溶液は、好ましくは
4~5のpHの塩化ナトリウム及び/又はクエン酸ナトリウムを含む。これは、塩化ナト
リウム及び/又はクエン酸ナトリウムが好ましくは、精製済みのmRNA分子を含む医薬
組成物に含まれるため、特に治療との関連においては、非常に有利である。したがって、
これは、塩化ナトリウム及び/又はクエン酸ナトリウムが高頻度で使用される医薬組成物
成分であるため、得られたmRNA分子を後で医薬組成物中に配合するという観点におい
ては、有利である。したがって、医薬組成物の好ましい成分である塩化ナトリウム又はク
エン酸ナトリウムを含む第4の溶液を使用することにより、前記mRNA分子を精製する
ために必要なステップと、前記mRNA分子を医薬組成物中に配合するために必要なステ
ップとの、時間効率及び費用対効果が高い統合を可能にする。
【0041】
第4の溶液が塩化ナトリウム及び/又はクエン酸ナトリウムを含む場合、第4の溶液の
pHは、好ましくは3~6、より好ましくは3.5~5.5、さらにより好ましくは4~
5である。
【0042】
本発明による方法の好ましい実施形態では、エタノールは、前記方法において使用され
た第1、第2、第3及び/又は第4の溶液のいずれにも含まれない。
【0043】
上記のように、驚くべきことに、本発明による方法の適用により、高度のmRNA分子
精製を達成することができることがわかった。好ましくは、前記方法の実施によって得ら
れた溶液は、精製済みのmRNA分子を含むが、加水分解生成物及び失敗作のmRNA分
子を含まず、又は非常に低いレベルしか含まない。より好ましくは、mRNA分子の百分
率は、ステップ(IIb)後の得られた溶液中において、すべてのRNA分子(mRNA
分子、加水分解生成物及び失敗作のmRNA分子)のうちの少なくとも80%、さらによ
り好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%である。これは
、例えばゲル電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析等の当業者に周知
の方法によって測定することもできるし、又は、キャピラリーゲル電気泳動若しくはFl
agment Analyzer分析等のキャピラリー電気泳動によって得られた電気泳
動図を調査することによって測定することもできる。後に挙げた手法は、下記の実施例に
おいて、例示としてより詳細に説明されている。
【0044】
本発明の一部の実施形態では、少なくともステップ(IIa)、好ましくはステップ(
Ia)~(IIb)は、0℃~25℃の温度、好ましくは2℃~8℃の温度で実施される
。したがって、本発明による方法は、少なくともステップ(IIa)の場合においては、
すなわち、強力キレート化剤、好ましくはEDTAを含む第3の溶液を使用して、ステッ
プ(Ib)において得られた溶解したmRNA分子からmRNA分子を精製する場合にお
いては、好ましくは0℃~25℃で実施される。この結果、失敗作のmRNA分子及び加
水分解生成物は、0℃~25℃の温度、好ましくは2℃~8℃の温度でステップ(IIa
)を実施することによって除去される。2℃~8℃の温度等の特段により低い温度は、加
水分解によるmRNA分子の分解量が、特に25℃超の温度等のより高い温度でステップ
(IIa)を実施したときに観察される分解の量との比較で減少するため、有利である。
したがって、多量の精製済みのmRNA分子を得るためには、少なくとも本発明による方
法のステップ(IIa)、好ましくは、少なくともステップ(Ia)~(IIb)を、0
℃~25℃の温度、好ましくは2℃~8℃の温度で実施することが有利である。
【0045】
本発明の一部の実施形態では、懸濁液に含まれる沈殿したmRNA分子は、好ましくは
DNA鋳型を用いるインビトロ転写によって得られる。したがって、本発明による精製す
べきmRNA分子は、当技術分野において知られた任意の方法によって製造することがで
きる。好ましくは、mRNA分子は、DNA鋳型を用いてインビトロで転写される。
【0046】
インビトロ転写は、プロモーター、リボヌクレオチド三リン酸、緩衝系及びT7 RN
Aポリメラーゼ等の適切なRNAポリメラーゼを含有する、精製済みの線形の又は直線化
されたDNA鋳型を必要とする。例えば、このような精製された線形DNA鋳型は、イン
ビトロで化学合成することが可能であり、任意選択により続いて、例えばPCRベースの
方法を用いる鋳型増幅を行ってもよい。代替的には、転写のためのDNA鋳型は、一般に
細胞溶解によって得られ、精製され、例えば部位特異的な制限酵素を使用して直線化され
た、DNAプラスミドから得ることも可能である。いずれの場合においても、得られた線
形DNA鋳型配列は、標準的な実験プロトコルを採用した、A、C、G及びUヌクレオチ
ドの存在下におけるmRNA分子のインビトロ転写のために使用することができる。
【0047】
本発明の一部の実施形態では、精製すべきmRNA分子は、無修飾及び/又は修飾ヌク
レオチドの存在下におけるインビトロ転写によって生成される。したがって、精製すべき
mRNA分子は、無修飾及び/又は修飾ヌクレオチドの使用により、線形の又は直線化さ
れたDNA鋳型をベースとするインビトロ転写によって合成することができる。本明細書
において使用されている「無修飾ヌクレオチド」という用語は、上記A、C、G、T及び
Uヌクレオチドを指す。特に、mRNA分子のインビトロ転写の場合においては、前記用
語は、A、C、G及びUヌクレオチドを指す。本明細書において使用されている「修飾ヌ
クレオチド」という用語は、任意の天然の又は化学合成されたA、C、G、T及びUヌク
レオチドの異性体と、任意の天然の又は化学合成されたアナログ、代替的若しくは修飾ヌ
クレオチド、又は、例えば化学修飾又は置換残基を有するこれらの異性体とを指す。修飾
ヌクレオチドは、塩基修飾及び/又は糖修飾を有することができる。修飾ヌクレオチドは
、例えばmRNA分子の5’キャップを対象とする、リン酸基修飾を有することもできる
。修飾ヌクレオチドは、ヌクレオチドの共有結合修飾によって転写後合成されたヌクレオ
チドも含む。さらに、無修飾ヌクレオチドと修飾ヌクレオチドとの任意の適切な混合物も
可能である。非限定的な数の修飾ヌクレオチドの例は、文献(例えば、Cantaraら
、Nucleic Acids Res、2011、39(Issue suppl_1
):D195~D201;Helm及びAlfonzo、Chem Biol、2014
、21(2):174~185;Carellら、Angew Chem Int Ed
Engl、2012、51(29):7110~31)で確認することが可能であり、
いくつかの好ましい修飾ヌクレオチドは、それぞれのヌクレオシド残基をベースにして、
以下に例示として言及されている:
1-メチルアデノシン、2-メチルチオ-N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデ
ノシン、2-メチルアデノシン、2’-O-リボシルリン酸アデノシン、N6-メチル-
N6-トレオニルカルバモイルアデノシン、N6-アセチルアデノシン、N6-グリシニ
ルカルバモイルアデノシン、N6-イソペンテニルアデノシン、N6-メチルアデノシン
、N6-トレオニルカルバモイルアデノシン、N6,N6-ジメチルアデノシン、N6-
(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、N6-ヒドロキシノルバリルカルバ
モイルアデノシン、1,2’-O-ジメチルアデノシン、N6,2’-O-ジメチルアデ
ノシン、2’-O-メチルアデノシン、N6,N6,2’-O-トリメチルアデノシン、
2-メチルチオ-N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、2-メチル
チオ-N6-メチルアデノシン、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデノシン、2
-メチルチオ-N6-トレオニルカルバモイルアデノシン、N6-2-メチルチオ-N6
-トレオニルカルバモイルアデノシン、2-メチルチオ-N6-(cis-ヒドロキシイ
ソペンテニル)アデノシン、7-メチルアデノシン、2-メチルチオアデノシン、2-メ
トキシアデノシン、2’-アミノ-2’-デオキシアデノシン、2’-アジド-2’-デ
オキシアデノシン、2’-フルオロ-2’-デオキシアデノシン、2-アミノプリン、2
,6-ジアミノプリン、7-デアザアデノシン、7-デアザ-8-アザアデノシン、7-
デアザ-2-アミノプリン、7-デアザ-8-アザ-2-アミノプリン、7-デアザ-2
,6-ジアミノプリン、7-デアザ-8-アザ-2,6-ジアミノプリン;2-チオシチ
ジン、3-メチルシチジン、N4-アセチルシチジン、5-ホルミルシチジン、N4-メ
チルシチジン、5-メチルシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、5-ヒドロキシシ
チジン、リシジン、N4-アセチル-2’-O-メチルシチジン、5-ホルミル-2’-
O-メチルシチジン、5,2’-O-ジメチルシチジン、2-O-メチルシチジン、N4
,2’-O-ジメチルシチジン、N4,N4,2’-O-トリメチルシチジン、イソシチ
ジン、プソイドシチジン、プソイドイソシチジン、2-チオシチジン、2’-メチル-2
’-デオキシシチジン、2’-アミノ-2’-デオキシシチジン、2’-フルオロ-2’
-デオキシシチジン、5-ヨードシチジン、5-ブロモシチジン、2’-アジド-2’-
デオキシシチジン、2’-アミノ-2’-デオキシシチジン、2’-フルオロ-2’-デ
オキシシチジン、5-アザシチジン、3-メチルシチジン、1-メチルプソイドイソシチ
ジン、ピロロシチジン、ピロロプソイドイソシチジン、2-チオ-5-メチルシチジン、
4-チオプソイドイソシチジン、4-チオ-1-メチルプソイドイソシチジン、4-チオ
-1-メチル-1-デアザプソイドイソシチジン、1-メチル-1-デアザプソイドイソ
シチジン、2-メトキシシチジン、2-メトキシ-5-メチルシチジン、4-メトキシプ
ソイドイソシチジン、4-メトキシ-1-メチルプソイドイソシチジン、ゼブラリン、5
-アザゼブラリン、5-メチルゼブラリン、5-アザ-2-チオゼブラリン、2-チオゼ
ブラリン;1-メチルグアノシン、N2,7-ジメチルグアノシン、N2-メチルグアノ
シン、2’-O-リボシルリン酸グアノシン、7-メチルグアノシン、ヒドロキシワイブ
トシン、7-アミノメチル-7-デアザグアノシン、7-シアノ-7-デアザグアノシン
、N2,N2-ジメチルグアノシン、N2,7,2’-O-トリメチルグアノシン、N2
,2’-O-ジメチルグアノシン、1,2’-O-ジメチルグアノシン、2’-O-メチ
ルグアノシン、N2,N2,2’-O-トリメチルグアノシン、N2,N2J-トリメチ
ルグアノシン、イソグアノシン、4-デメチルワイオシン、エポキシクエオシン、不完全
修飾型(undermodified)ヒドロキシワイブトシン、メチル化不完全修飾型
ヒドロキシワイブトシン、イソワイオシン、ペルオキシワイブトシン、ガラクトシルクエ
オシン、マンノシルクエオシン、クエオシン、アルカエオシン、ワイブトシン、メチルワ
イオシン、ワイオシン、7-アミノカルボキシプロピルデメチルワイオシン、7-アミノ
カルボキシプロピルワイオシン、7-アミノカルボキシプロピルワイオシンメチルエステ
ル、7-デアザグアノシン、7-デアザ-8-アザグアノシン、6-チオグアノシン、6
-チオ-7-デアザグアノシン、6-チオ-7-デアザ-8-アザグアノシン、7-メチ
ルグアノシン、6-チオ-7-メチルグアノシン、7-メチルイノシン、6-メトキシグ
アノシン、1-メチルグアノシン、8-オキソグアノシン、7-メチル-8-オキソグア
ノシン、1-メチル-6-チオグアノシン、N2-メチル-6-チオグアノシン、N2,
N2-ジメチル-6-チオグアノシン、N1-メチルグアノシン、2’-アミノ-3’-
デオキシグアノシン、2’-アジド-2’-デオキシグアノシン、2’-フルオロ-2’
-デオキシグアノシン、2-チオウリジン、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル
)ウリジン、3-メチルウリジン、4-チオウリジン、5-メチル-2-チオウリジン、
5-メチルアミノメチルウリジン、5-カルボキシメチルウリジン、5-カルボキシメチ
ルアミノメチルウリジン、5-ヒドロキシウリジン、5-メチルウリジン、5-タウリノ
メチルウリジン、5-カルバモイルメチルウリジン、5-(カルボキシヒドロキシメチル
)ウリジンメチルエステル、ジヒドロウリジン、5-メチルジヒドロウリジン、5-メチ
ルアミノメチル-2-チオウリジン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン、5
-(カルボキシヒドロキシメチル)-2’-O-メチルウリジンメチルエステル、5-(
イソペンテニルアミノメチル)ウリジン、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2-チ
オウリジン、3,2’-O-ジメチルウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチル-2
’-O-メチルウリジン、5-カルバモイルヒドロキシメチルウリジン、5-カルバモイ
ルメチル-2’-O-メチルウリジン、5-カルバモイルメチル-2-チオウリジン、5
-メトキシカルボニルメチル-2’-O-メチルウリジン、5-(イソペンテニルアミノ
メチル)-2’-O-メチルウリジン、5,2’-O-ジメチルウリジン、2’-O-メ
チルウリジン、2’-O-メチル-2-チオルジン、2-チオ-2’-O-メチルウリジ
ン、ウリジン5-オキシ酢酸、5-メトキシカルボニルメチルウリジン、ウリジン5-オ
キシ酢酸メチルエステル、5-メトキシウリジン、5-アミノメチル-2-チオウリジン
、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-メチルアミノメチル-2
-セレノウリジン、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウリジン、5-タウリノメ
チル-2-チオウリジン、プソイドウリジン、1-メチル-3-(3-アミノ-3-カル
ボキシプロピル)プソイドウリジン、1-メチルプソイドウリジン、3-メチルプソイド
ウリジン、2’-O-メチルプソイドウリジン、5-ホルミルウリジン、5-アミノメチ
ル-2-ゲラニルウリジン、5-タウリノメチルウリジン、5-ヨードウリジン、5-ブ
ロモウリジン、2’-メチル-2’-デオキシウリジン、2’-アミノ-2’-デオキシ
ウリジン、2’-アジド-2’-デオキシウリジン、2’-フルオロ-2’-デオキシウ
リジン、イノシン、1-メチルイノシン、1,2’-O-ジメチルイノシン、2’-O-
メチルイノシン、5-アザウリジン、2-チオ-5-アザウリジン、4-チオプソイドウ
リジン、2-チオプソイドウリジン、5-カルボキシメチルウリジン、1-カルボキシメ
チルプソイドウリジン、5-プロピニルウリジン、1-プロピニルプソイドウリジン、1
-タウリノメチルプソイドウリジン、5-タウリノメチル-2-チオウリジン、1-タウ
リノメチル-4-チオウリジン、5-メチルウリジン、1-メチルプソイドウリジン、4
-チオ-1-メチルプソイドウリジン、2-チオ-1-メチルプソイドウリジン、1-メ
チル-1-デアザプソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザプソイドウリジ
ン、ジヒドロプソイドウリジン、2-チオジヒドロウリジン、2-チオジヒドロプソイド
ウリジン、2-メトキシウリジン、2-メトキシ-4-チオウリジン、4-メトキシプソ
イドウリジン、4-メトキシ-2-チオプソイドウリジン、1,2’-O-ジメチルアデ
ノシン、1,2’-O-ジメチルグアノシン、1,2’-O-ジメチルイノシン、2,8
-ジメチルアデノシン、2-メチルチオメチレンチオ-N6-イソペンテニルアデノシン
、2-ゲラニルチオウリジン、2-リシジン、2-メチルチオ環状N6-トレオニルカル
バモイルアデノシン、2-メチルチオ-N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)ア
デノシン、2-メチルチオ-N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン、2-
メチルチオ-N6-トレオニルカルバモイルアデノシン、2-セレノウリジン、2-チオ
-2’-O-メチルウリジン、2’-O-メチルアデノシン、2’-O-メチルシチジン
、2’-O-メチルグアノシン、2’-O-メチルイノシン、2’-O-メチルプソイド
ウリジン、2’-O-メチルウリジン、2’-O-メチルウリジン5-オキシ酢酸メチル
エステル、2’-O-リボシルアデノシンホスフェート、2’-O-リボシルグアノシン
ホスフェート、3,2’-O-ジメチルウリジン、3-(3-アミノ-3-カルボキシプ
ロピル)-5,6-ジヒドロウリジン、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)プ
ソイドウリジン、5,2’-O-ジメチルシチジン、5,2’-O-ジメチルウリジン、
5-(カルボキシヒドロキシメチル)-2’-O-メチルウリジンメチルエステル、55
-(イソペンテニルアミノメチル)-2’-O-メチルウリジン、5-アミノメチル-2
-ゲラニルチオウリジン、5-アミノメチル-2-セレノウリジン、5-アミノメチルウ
リジン、5-カルバモイルメチル-2’-O-メチルウリジン、5-カルボキシヒドロキ
シメチルウリジン、5-カルボキシメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルア
ミノメチル-2-ゲラニルチオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-セレ
ノウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチル-2’-O-メチルウリジン、5-シア
ノメチルウリジン、5-ホルミル-2’-O-メチルシチジン、5-メトキシカルボニル
メチル-2’-O-メチルウリジン、5-メチルアミノメチル-2-ゲラニルチオウリジ
ン、7-アミノカルボキシプロピルデメチルワイオシン、7-メチルグアノシン、8-メ
チルアデノシン、N2,2’-O-ジメチルグアノシン、N2,7,2’-O-トリメチ
ルグアノシン、N2,7-ジメチルグアノシン、N2,N2,2’-O-トリメチルグア
ノシン、N2,N2,7-トリメチルグアノシン、N2,N2,7-トリメチルグアノシ
ン、N4,2’-O-ジメチルシチジン、N4,N4,2’-O-トリメチルシチジン、
N4,N4-ジメチルシチジン、N4-アセチル-2’-O-メチルシチジン、N6,2
’-O-ジメチルアデノシン、N6,N6,2’-O-トリメチルアデノシン、N6-ホ
ルミルアデノシン、N6-ヒドロキシメチルアデノシン、アグマチジン、2-メチルチオ
環状N6-トレオニルカルバモイルアデノシン、グルタミルクエオシン、任意のヌクレオ
チドに付加されたグアノシン、グアニリル化された5’末端、ヒドロキシ-N6-トレオ
ニルカルバモイルアデノシン;最も好ましくは、プソイドウリジン、N1-メチルプソイ
ドウリジン、2’-フルオロ-2’-デオキシシチジン、5-ヨードシチジン、5-メチ
ルシチジン、2-チオウリジン、5-ヨードウリジン及び/又は5-メチルウリジン。
【0048】
さらに、「修飾ヌクレオチド」という用語は、重水素等の同位体を含有するヌクレオチ
ドを含む。「同位体」という用語は、同じ数のプロトンを有するが、異なる数の中性子を
有し、この結果として質量数が異なる、元素を指す。したがって、例えば水素の同位体は
重水素に限定されず、トリチウムも含む。さらに、mRNA分子は、例えば炭素、酸素、
窒素及びリンを含む、他の元素の同位体を含有してもよい。修飾ヌクレオチドは重水素化
されていてもよいし、又は、別の水素の同位体若しくは別の酸素、炭素、窒素若しくはリ
ンの同位体を含有してもよい。
【0049】
したがって、精製すべきmRNA分子が、4種のヌクレオチド型、すなわち、A、C、
G及びUヌクレオチドの存在下におけるインビトロ転写によって生成される場合、修飾ヌ
クレオチド型の総数は、0、1、2、3又は4であってよい。したがって、一部の実施形
態では、1種のヌクレオチド型に属する少なくとも1個のヌクレオチド、例えば、少なく
とも1個のUヌクレオチドは、修飾ヌクレオチドであってもよい。一部の実施形態では、
合計2種のヌクレオチド型に属する少なくとも1個のヌクレオチド、例えば、少なくとも
1個のUヌクレオチド及び少なくとも1個のCヌクレオチドは、修飾ヌクレオチドであっ
てもよい。一部の実施形態では、合計3種のヌクレオチド型に属する少なくとも1個のヌ
クレオチド、例えば、少なくとも1個のGヌクレオチド、少なくとも1個のUヌクレオチ
ド及び少なくとも1個のCヌクレオチドは、修飾ヌクレオチドであってもよい。一部の実
施形態では、4種すべてのヌクレオチド型に属する少なくとも1個のヌクレオチドは、修
飾ヌクレオチドであってもよい。これらすべての実施形態では、ヌクレオチド型1種当た
り1個以上のヌクレオチドが修飾されていてもよいが、前記ヌクレオチド型1種当たりの
修飾ヌクレオチドの百分率は、0%、2.5%、5%、7.5%、10%、15%、20
%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70
%、75%、80%、85%、90%又は100%である。
一部の実施形態では、精製すべきmRNA分子に含まれる修飾ヌクレオチドの合計百分
率は、0%、2.5%、5%、7.5%、10%、15%、20%、25%、30%、3
5%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、8
5%、90%又は100%である。
【0050】
精製すべきmRNA分子は例えば、Uヌクレオチドの0.5~50%、好ましくは5~
50%及びCヌクレオチドの5~50%が修飾されていることを特徴としてもよい。前記
修飾Uヌクレオチドは、好ましくは、5-ヨードウリジンであり、前記修飾Cヌクレオチ
ドは、好ましくは、5-ヨードシチジンである。
一部の実施形態では、精製すべきmRNA分子は、Uヌクレオチドの15~25%及びC
ヌクレオチドの5~15%が修飾されており、前記修飾Uヌクレオチドが、好ましくは、
5-メチルウリジンであり、前記修飾Cヌクレオチドが、好ましくは、5-ヨードシチジ
ンであることを特徴としてもよい。
一部の実施形態では、精製すべきmRNA分子は、Uヌクレオチドの30~50%及び
Cヌクレオチドの10~20%が修飾されており、前記修飾Uヌクレオチドが、好ましく
は、5-ヨードウリジンであり、前記修飾Cヌクレオチドが、好ましくは、5-ヨードシ
チジンであることを特徴としてもよい。
一部の実施形態では、精製すべきmRNA分子は、Uヌクレオチドの30~50%及び
Cヌクレオチドの5~15%が修飾されており、前記修飾Uヌクレオチドが、好ましくは
、5-ヨードウリジンであり、前記修飾Cヌクレオチドが、好ましくは、5-ヨードシチ
ジンであることを特徴としてもよい。
一部の実施形態では、精製すべきmRNA分子は、Uヌクレオチドの0.5~5%及び
Cヌクレオチドの25~35%が、修飾されており、前記修飾Uヌクレオチドが、好まし
くは、2-チオウリジンであり、前記修飾Cヌクレオチドが、好ましくは、5-メチルシ
チジンであることを特徴としてもよい。
精製すべきmRNA分子は例えば、Uヌクレオチドの50~100%、好ましくは10
0%が、修飾されていることを特徴としてもよい。前記修飾Uヌクレオチドは、好ましく
は、N1-メチルプソイドウリジンである。
【0051】
本発明の一部の実施形態では、本方法は、ステップ(Ia)の前に、酢酸アンモニウム
を使用して、沈殿したmRNA分子を含む懸濁液を得るステップを含む。mRNA分子の
沈殿は、mRNA沈殿が費用効果の高い簡便なものであるという特段の理由により、塩、
ヌクレオチド及びタンパク質を除去するために有利である。例えばGSCN、NHOA
c、エタノール、塩化リチウム、酢酸ナトリウム及び塩化ナトリウムを含む沈殿用の様々
な溶液が、当業者に公知である。しかしながら、特に治療用途に関しては、GSCN及び
LDSのような塩をなくすことは、非常に有利である。したがって、本発明の一部の実施
形態では、mRNA分子は、NHOAcを使用して沈殿させる。したがって、ステップ
(Ia)において使用される懸濁液は好ましくは、mRNA分子を沈殿させるためにNH
OAcを使用して得られる。
【0052】
上記のように、本発明の一部の実施形態では、第1の溶液は、酢酸アンモニウムを含有
する。好ましくは、懸濁液及び第1の溶液中におけるNHOAcの総量は、0.1mo
l/l~5mol/l、好ましくは1mol/l~4mol/l、より好ましくは2mo
l/l~3mol/lであり、したがって、5mol/l未満、好ましくは4mol/l
未満、より好ましくは3mol/l未満である。酢酸アンモニウムの量が少量であること
は、時間効率及び費用対効果が高い下流工程での処理という観点において、非常に有利で
ある。第1の溶液は、1~12の範囲のpH、好ましくは6.5~7.5の範囲のpHを
さらに有することができる。
本発明の一部の実施形態では、第1の溶液は、酢酸アンモニウムを含有し、懸濁液及び
第1の溶液中におけるNHOAcの総量は、1mol/l~4mol/l、好ましくは
2mol/l~3mol/lである。
本発明の一部の実施形態では、第1の溶液は、1~12の範囲のpH、好ましくは6.
5~7.5の範囲のpHを有し、酢酸アンモニウムを含有し、懸濁液及び第1の溶液中に
おけるNHOAcの総量は、1mol/l~4mol/l、好ましくは2mol/l~
3mol/lである。
【0053】
本発明の一部の実施形態では、mRNA分子を精製するための方法は、ステップ(II
a)によってキレート化剤を含む第3の溶液を使用して、mRNA分子を精製する前に、
ステップ(Ib)において得られた溶解したmRNA分子に、第5の溶液を加えることを
さらに含む。第5の溶液は好ましくは、第3の溶液と同じキレート化剤を含む。したがっ
て、第5の溶液は好ましくは、特にマグネシウムカチオン等の二価カチオンを除去するた
めのキレート化剤としてのEDTAと、任意選択により、MOPSバッファーとを含む。
しかしながら、第5の溶液に含まれるキレート化剤の濃度は好ましくは、第3の溶液に含
まれるキレート化剤の濃度より高い。ステップ(Ib)において得られた溶解したmRN
A分子に第5の溶液を加えた後でステップ(IIa)を実施することにより、ステップ(
Ib)において得られたmRNA分子が懸濁された溶液の組成を、ステップ(IIa)に
おいて使用された第3の溶液の組成に調節することができる。これには、潜在的な希釈効
果を減じることができ、この結果、本明細書に開示の方法によるmRNA分子精製の処理
能力及び/又は再現性を高めることができるという利点がある。
【0054】
本発明の一部の実施形態では、mRNA分子を精製するための方法は、mRNA分子を
脱リン酸化及び/又はポリアデニル化及び/又はポストキャッピング(post-cap
ping)することをさらに含む。したがって、mRNA分子は、本発明の方法を用いて
精製することが可能なだけでなく、さらには、mRNA分子をタンパク質等の機能的アミ
ノ酸配列に確実に翻訳できるように修飾されることも可能である。このような修飾は、例
えばmRNA分子のインビトロ合成若しくは転写中及び/又は同時転写5’キャッピング
中に付加される5’-一リン酸、5’-二リン酸及び/又は5’-三リン酸を除去するた
めのmRNA分子の脱リン酸化;ポリ(A)テールが大抵の場合においてmRNA分子の
寿命の主要な決定因子であることを理由とする、mRNA分子のポリアデニル化;並びに
、同時転写5’キャッピングが実施されない場合における、mRNA分子のポストキャッ
ピングを含む。特に、5’キャップ及び3’ポリ(A)テールは、mRNA効率の主要な
決定因子であると考えられているため、このような特徴をmRNA分子精製法に組み込む
ことは、mRNA分子の処理の時間効率及び費用効果の最大化、及び精製済みのmRNA
分子の作用の持続期間の最大化という観点において、有利である。
【0055】
5’キャップの存在は、mRNA分子の安定性を向上させ、この結果として、mRNA
分子の作用の持続期間を延長するために有利である。したがって、沈殿した精製すべきm
RNA分子が5’キャップ又は5’キャップアナログを含まない場合、mRNA分子は好
ましくは、例えばC1-m7Gキャップ又はm7GpppGキャップの酵素的付加によっ
て、転写後5’キャッピングされる。しかしながら、より好ましくはmRNA分子は、例
えばARCAキャップアナログを使用して、又はTrilink技術(CleanCap
technology;US2018/273576A1を参照)の適用によって、同
時転写5’キャッピングされる。この場合、本発明によるTFF法を使用することは、ク
リーンキャップアナログ(clean cap analogue)を除去するために有
利である。
【0056】
さらに、沈殿した精製すべきmRNA分子が3’ポリ(A)テールを含まない場合、m
RNA分子は好ましくは、少なくとも100個のAヌクレオチド、好ましくは少なくとも
120個のAヌクレオチド、より好ましくは少なくとも240個のAヌクレオチドからな
るポリ(A)テールによって酵素的にポリアデニル化される。任意選択により、付加すべ
きポリ(A)テールは、ポリ(A)テール配列内及び/又はポリ(A)テールの一方の末
端に、A以外のヌクレオチド、好ましくはGヌクレオチドを含んでもよいが、前記末端は
、精製すべきmRNA分子の3’末端に付加されるべきでない。mRNA分子へのポリ(
A)テールの付加は、前記mRNA分子の作用の持続期間を延長するため、したがって、
所望の翻訳レベルを達成するために有利であることがわかっている。
【0057】
したがって、本発明の一部の実施形態では、本発明によるmRNA分子を精製するため
の方法は、mRNA分子を脱リン酸化することをさらに含む。
本発明の他の実施形態では、本方法は、mRNA分子をポリアデニル化することをさらに
含む。
本発明のさらなる他の実施形態では、本方法は、mRNA分子をポストキャッピングする
ことをさらに含む。
【0058】
一部の実施形態では、本発明によるmRNA分子を精製するための方法は少なくとも、
mRNA分子を脱リン酸化及びポリアデニル化することを含む。
【0059】
一部の実施形態では、本発明によるmRNA分子を精製するための方法は少なくとも、
mRNA分子を脱リン酸化及びポストキャッピングすることを含み、mRNA分子を脱リ
ン酸化することは、mRNA分子をポストキャッピングした後に実施される。
【0060】
本発明の一部の実施形態では、mRNA分子を精製するための方法は、ステップ(Ib
)において得られたmRNA分子を脱リン酸化することと、続いて、ステップ(Ia)~
(IIb)を実施することと、続いて、得られたmRNA分子をポリアデニル化すること
と、続いて、ステップ(Ia)~(IIb)を再び実施することとを含み、後に挙げたス
テップ(Ia)は好ましくは、20℃~30℃の温度、好ましくは23℃~27℃の温度
、より好ましくは25℃で実施され、任意選択により、続いて、得られたmRNA分子を
含む保持液がろ過される。したがって、mRNA分子処理の費用効果及び時間効率を最大
化するために、mRNA分子を精製するための方法は、mRNA分子を脱リン酸化及びポ
リアデニル化するステップをさらに含む。特に、後に挙げた2つのステップと、脱リン酸
化及びポリアデニル化中に導入された成分も除去するようにmRNA分子を精製するため
のさらなるステップとを一緒に導入することは、有利であることがわかっている。
【0061】
したがって、特に精製すべきmRNA分子が同時転写付加された5’キャップ又は5’
キャップアナログを含む場合、mRNA分子を精製するための方法は、次のステップを含
んでもよい。最初に、ステップ(Ia)において、酢酸アンモニウムを含むことが好まし
い第1の溶液を使用して、沈殿したmRNA分子が、前記沈殿したmRNA分子を含む懸
濁液から精製される。次いで、ステップ(Ib)において、精製済みの沈殿したmRNA
分子は、例えばタンパク質、塩及びヌクレオシド三リン酸を除去するために、第2の溶液
、好ましくは水を使用して洗浄し、溶解される。次いで、溶解したmRNA分子は、キャ
ッピングされなかった可能性があるRNA分子から5’一リン酸、5’二リン酸及び5’
三リン酸を除去するための当業者に公知の方法によって、脱ホスホリル化される。脱ホス
ホリル化されたmRNA分子は、さらなるステップ(Ia)において、酢酸アンモニウム
を含むことが好ましい第1の溶液を使用して精製され、続いて、さらなるステップ(Ib
)において、水であることが好ましい第2の溶液を使用して洗浄される。このようにして
得られたmRNA分子はステップ(IIa)において、失敗作のmRNA分子及び加水分
解生成物を除去するために、キレート化剤を含む第3の溶液、好ましくはEDTA、好ま
しくはMOPSを使用して、0~8のpH、より好ましくは6.5~7.5のpHでさら
に精製される。次いで、第3の溶液は、第4の溶液を使用してステップ(IIb)の洗浄
ステップを実施することによって、除去される。例えば、ポリ(A)テールをコードする
配列を含むDNA鋳型がインビトロ転写のために使用されたという理由で、ポリアデニル
化ステップが必要とされない場合、得られた精製済みのmRNA分子はステップ(IIb
)において、シトレート及び/又は塩化ナトリウムを含むことが好ましい第4の溶液を使
用して洗浄されるが、任意選択により、前記ステップ(IIb)の後に続いて、例えば細
孔径が0.3μm未満のフィルターメンブレンを使用するさらなるろ過ステップを行って
もよい。例えば、ポリ(A)テールをコードする配列を含まないDNA鋳型がインビトロ
転写のために使用されたという理由で、ポリアデニル化ステップが有利である場合、得ら
れた精製済みのmRNA分子はステップ(IIb)において、第4の溶液、好ましくは水
を用いて洗浄され、その後、例えばポリ(A)ポリメラーゼを加えることにより、mRN
A分子の作用を確実に延長するための通例の実験プロトコルを採用して、3’ポリ(A)
テールを酵素的付加することによって伸長されることも可能である。次いで、mRNA分
子は、ステップ(Ia)が好ましくは、例えば加えられたポリ(A)ポリメラーゼを除去
するために、20℃~30℃の温度、好ましくは23℃~27℃の温度、より好ましくは
25℃で実施されることと、ステップ(IIb)において使用された第4の溶液が好まし
くは、5’キャップ又は5’キャップアナログ及び3’ポリ(A)テールを含む精製済み
のmRNA分子を得るための、シトレート及び/又は塩化ナトリウムを含むこととを除い
て前述のようにして、ステップ(Ia)~(IIb)を施される。任意選択により、得ら
れた精製済みのmRNA分子には、例えば0.3μm未満の細孔径を有するフィルターメ
ンブレンを使用する、さらなるろ過ステップを施すこともできる。
【0062】
精製すべきmRNA分子が同時転写付加された5’キャップ又は5’キャップアナログ
を含まない場合、本発明によるmRNA分子を精製するための方法は上記手順との比較で
、5’キャップ又は5’キャップアナログを転写後付加する、好ましくは酵素的に転写後
付加するさらなるステップを含んでもよい。したがって、mRNA分子を精製するための
方法は、次のステップを含んでもよい。最初に、ステップ(Ia)において、酢酸アンモ
ニウムを含むことが好ましい第1の溶液を使用して、沈殿したmRNA分子が、前記沈殿
したmRNA分子を含む懸濁液から精製される。次いで、ステップ(Ib)において、精
製済みの沈殿したmRNA分子は、例えばタンパク質、塩及びヌクレオシド三リン酸を除
去するために、第2の溶液、好ましくは水を使用して洗浄し、溶解される。この後には、
上記本方法は、ステップ(Ib)において得られたmRNA分子をキャッピングすること
と、続いて、ステップ(Ia)及び(Ib)を実施することと、得られたmRNA分子を
脱リン酸化することと、続いて、ステップ(Ia)~(IIb)を実施することとをさら
に含む。例えば、ポリ(A)テールをコードする配列を含むDNA鋳型がインビトロ転写
のために使用されたという理由で、ポリアデニル化ステップが必要とされない場合、得ら
れた精製済みのmRNA分子はステップ(IIb)において、シトレート及び/又は塩化
ナトリウムを含むことが好ましい第4の溶液を使用して洗浄されるが、任意選択により、
前記ステップ(IIb)の後に続いて、例えば細孔径が0.3μm未満のフィルターメン
ブレンを使用するさらなるろ過ステップを行ってもよい。例えば、ポリ(A)テールをコ
ードする配列を含まないDNA鋳型がインビトロ転写のために使用されたという理由で、
ポリアデニル化ステップが有利である場合、得られた精製済みのmRNA分子はステップ
(IIb)において、第4の溶液、好ましくは水を使用して洗浄され、その後、例えばポ
リ(A)ポリメラーゼを加えることにより、mRNA分子の作用を確実に延長するための
通例の実験プロトコルを採用して、3’ポリ(A)テールを酵素的付加することによって
伸長されることも可能である。次いで、mRNA分子は、ステップ(Ia)~(IIb)
を施されるが、ステップ(Ia)は好ましくは、例えば加えられたポリ(A)ポリメラー
ゼを除去するために、20℃~30℃の温度、好ましくは23℃~27℃の温度、より好
ましくは25℃で実施され、ステップ(IIb)は好ましくは、シトレート及び/又は塩
化ナトリウムを第4の溶液を使用して実施され、任意選択により、続いて、得られたmR
NA分子を含む保持液がろ過される。
【0063】
したがって、ステップ(Ia)~(IIb)は好ましくは、3’ポリアデニル化及び任
意選択により5’キャッピング等のmRNA分子の何らかの伸長の実施前に実施される。
特に、ステップ(Ia)~(IIb)は好ましくは、mRNA分子の3’ポリアデニル化
の前に実施され、ステップ(Ia)~(Ib)は好ましくは、5’キャッピングの前に実
施される。これは、上記4つすべての実施形態において当てはまり、すなわち、同時転写
キャッピングされたmRNA分子及び転写後5’キャッピングされmRNA分子のそれぞ
れを精製する場合に当てはまる。
【0064】
さらに、上記4つすべての実施形態では、ステップ(Ia)及び(Ib)の実施前にm
RNA分子を脱リン酸化するステップは、任意選択によるものであってよい。したがって
、一部の実施形態は、ステップ(Ia)及び(Ib)の実施前にmRNA分子を脱リン酸
化するステップを除けば、上記4つの実施形態に対応する。
【0065】
TFFは、フィルター装置としてカプセル、カセット及びカセットホルダー又は中空繊
維モジュールを使用して、実施することができる。特に、中空繊維モジュールは、無菌処
理を可能にする、完成品として事前に組み立てられたあらかじめ滅菌済みの使い捨て型流
路をもたらすものであり、フィルターメンブレンをパッケージ化するための費用効果が高
い方法を提供する。
【0066】
mRNA分子精製のための使用されたフィルターメンブレンは、mRNA分子精製に適
する、したがって、精製すべきmRNA分子と相互作用しない、任意の種類の材料製のも
のであってよい。フィルターメンブレンの材料の例には、無修飾ポリエーテルスルホン(
PES)、修飾ポリエーテルスルホン(mPES)、mPES中空繊維メンブレン、ポリ
ビニリデンフルオリド(PVDF)、セルロースアセテート、ニトロセルロース、混合セ
ルロースエステル(ME)、超高分子量ポリエチレン(UPE)、ポリフルオロテトラエ
チレン(PTFE)、ナイロン、ポリスルホン(PS)、ポリアクリロニトリル、ポリプ
ロピレン、ポリビニルクロリド、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)及びこれらの
組合せが挙げられる。
【0067】
フィルターメンブレンは、分子量カットオフ(MWCO)値によって特徴付けられ、分
子量カットオフ(MWCO)値は、それらの粒子の90%がメンブレンによって保持され
る、ダルトンを単位とする最も低い粒子の分子量を指す。好ましくは、フィルターメンブ
レンは、MWCOより小さいサイズ、したがって、その細孔径より小さいサイズの成分が
、透過物としてフィルターメンブレンを通り抜けることを可能にしながら、mRNA分子
を保持するのに適する、細孔径を有する。様々なサイズの様々な成分を除去しなければな
らないため、フィルターメンブレンの細孔径を、本発明による方法の各ステップにおいて
除去すべき成分のサイズに調節することが有利である。
【0068】
本発明の一部の実施形態では、ステップ(Ia)の場合は、300kDa~0.65μ
mの分子量カットオフ、好ましくは500kDaの分子量カットオフを有するフィルター
メンブレンが、TFFのために使用され、及び/又はステップ(Ib)及び(IIb)の
場合は、1kDa~0.65μmの分子量カットオフ、好ましくは1kDa~300kD
aの分子量カットオフ、より好ましくは1kDa~50kDaの分子量カットオフ、さら
により好ましくは50kDa、70kDa及び/若しくは100kDaの分子量カットオ
フを有するフィルターメンブレンが使用され、及び/又はステップ(IIa)の場合は、
少なくとも50kDaの分子量カットオフ、好ましくは少なくとも70kDaの分子量カ
ットオフ、より好ましくは70kDa又は100kDaの分子量カットオフを有するフィ
ルターメンブレンが使用される。TFFで使用されるフィルターメンブレンは、フィルタ
ーメンブレンの細孔径が、フィルターメンブレンを通過することができ、この結果として
、透過物に含まれる、mRNA分子及び成分等の粒子のサイズを左右するため、重要であ
る。
【0069】
したがって、フィルターメンブレンのMWCOは、ステップ(Ia)の場合、好ましく
は少なくとも300kDa又は0.065μmである。好ましくは、MWCOは、300
kDa、500kDa、750kDa、0.05μm、0.1μm、0.2μm、0.4
5μm、0.5μm、0.65μmからなる群より選択され、500kDaのMWCOが
特に好ましい。これは、例えば、精製すべきmRNA分子を得るために溶解させた細胞に
含まれる酵素及びタンパク質を除去しながら、又はインビトロ転写されたmRNA分子の
場合においては、インビトロ転写反応混合物に含まれる酵素、修飾された三リン酸ヌクレ
オシド及び無修飾三リン酸ヌクレオシド、5’キャップ、5’キャップアナログ並びにバ
ッファー成分を除去しながら、沈殿したmRNA分子を保持するために有利である。した
がって、適切なMWCO値は、例えば、精製すべきmRNA分子のインビトロ転写等の前
処理ステップで使用された、ステップ(Ia)においてTFFによって除去すべき酵素の
サイズを考慮することによって、選択することができる。T7RNAポリメラーゼは、1
00kDa未満のMWCOを有するフィルターメンブレンを使用した場合には効率的に除
去されない、当技術分野において周知の酵素である。ステップ(Ia)において1kDa
~750kDaの範囲のMWCOを採用した場合は、TFFが限外ろ過と呼ばれることも
あり、一方、0.05μm~0.65μmの範囲のMWCOを採用した場合は、TFFが
精密ろ過と呼ばれることもある。
【0070】
ステップ(Ib)及び(IIb)の場合、MWCOは、好ましくは少なくとも1kDa
、好ましくは1kDa~50kDa、より好ましくは少なくとも50kDa、さらにより
好ましくは少なくとも70kDaである。好ましくは、MWCOは、1kDa、3kDa
、5kDa、10kDa、30kDa、50kDa、70kDa、100kDa、300
kDa、0.05μm、0.1μm、0.2μm、0.45μm、0.5μm及び0.6
5μmからなる群より選択され、50kDa、70kDa又は100kDaのMWCOが
特に好ましい。これは、酢酸アンモニウム、EDTA等のキレート化剤、MOPS等のバ
ッファー、失敗作のmRNA分子及び/又は加水分解生成物等、各溶液に含まれる塩及び
他の成分を効率的に除去しながら、mRNA分子を精製するために有利である。比較的大
きいmRNA分子の場合、300kDa超のMWCOも検討され得る。
【0071】
ステップ(IIa)の場合、MWCOは、好ましくは少なくとも50kDa、より好ま
しくは少なくとも70kDa、さらにより好ましくは70kDa又は100kDaである
。例えば上記MOPS-EDTAバッファーを使用する場合、100kDaのMWCOが
特に好ましい。他の強力キレート化剤又は他の強力キレート化剤とバッファーとの組合せ
が採用される場合、100kDa以上のMWCOでさえも、比較的大きいmRNA分子の
精製のために検討され得る。
【0072】
さらに、TFFを用いるプロセスは、様々な変数の観点から特徴付けることも可能であ
るが、最も重要な2つの変数は、膜間差圧及び流量である。
【0073】
「膜間差圧」(TMP)は、成分にフィルターメンブレンを通り抜けさせる、駆動力を
指す。一部の実施形態では、膜間差圧は、ステップ(Ia)及び(Ib)の場合において
は、例えば、典型的な事例における500mgのmRNAという実験室スケールでは、1
00mbar~500mbar、好ましくは200mbar~400mbarであり、ス
テップ(IIa)及び(IIb)の場合においては、2mbar~20mbar、好まし
くは5mbar~15mbarである。
【0074】
「フロー」という用語は、TFFシステムの中を通って流れる、特には、フィルターメ
ンブレン領域内を流れる溶液の体積を指し、「流量」は、所与の時間の間に前記システム
内を流れる溶液の体積を指す。したがって、流量又はクロスフロー速度は、溶液がフィル
ターメンブレンの端から端までを横断して流れる速度を指す。一部の実施形態では、ステ
ップ(Ia)及び(Ib)の場合の流量は、例えば典型的な事例における500mgのm
RNAという実験室スケールでは、1.5L/min~2.5L/min、好ましくは1
.6L/min~1.9L/minであり、ステップ(IIa)及び(IIb)の場合は
、0.2L/min~0.6L/min、好ましくは0.35L/min~0.45L/
minである。
【0075】
本発明の特に好ましい実施形態では、mRNA分子を精製するための方法は、連続式T
FFを用いて実施される。連続式TFFは、保持液が、別の周回のTFF用のフィードと
して使用される、TFFシステムを指す。本明細書において、「フィード」という用語は
、精製すべきmRNA分子を含む溶液又は懸濁液を指す。したがって、mRNA分子を含
む初期フィードは、TFFを用いるろ過の1回目の周回に供され、得られたmRNA分子
を含む保持液は、少なくともmRNA分子を循環させることによって、別の周回のTFF
用のフィードとして再び使用される。これは、システム間の移送を原因とするmRNA分
子喪失のリスクを低下させながら自動で精製ステップが繰り返されるため、精製のレベル
の向上に有利である。
【0076】
したがって、本発明の一部の実施形態では、mRNA分子は、タンジェントフローろ過
後の保持液に含まれ、好ましくは、ステップ(Ia)~(IIa)によって得られた保持
液には少なくとも含まれる。ステップ(IIb)の場合、mRNA分子は、保持液又は透
過物に含まれ得る。
一部の実施形態では、mRNA分子は、ステップ(Ia)~ステップ(IIb)によって
得られた保持液に含まれる。
【0077】
本発明の一部の実施形態では、ステップ(Ia)において得られた保持液は、ステップ
(Ib)において、タンジェントフローろ過のためのフィード溶液として使用され、ステ
ップ(Ib)において得られた保持液は、ステップ(IIa)において、フィード溶液と
して使用され、ステップ(IIa)において得られた保持液は、ステップ(IIb)にお
いて、フィード溶液として使用される。したがって、本発明は好ましくは、少なくともス
テップ(Ia)~(IIb)を実施するために連続式TFFを使用して、実施される。よ
り厳密には、mRNA分子は好ましくは、本発明による精製のための連続式TFFシステ
ムの中を循環している。したがって、本発明の一実施形態では、少なくともステップ(I
a)~(IIa)、好ましくはステップ(Ia)~(IIb)は、連続式TFFを用いて
実施される。
【0078】
TFFシステムのさらなる利点は、TFFシステムがダイアフィルトレーション、特に
連続式ダイアフィルトレーションのために容易に使用され得るという点である。ダイアフ
ィルトレーションにより、溶液又は懸濁液の一部を、別の溶液又は懸濁液と交換すること
ができる。例えば非連続式ダイアフィルトレーションにおいては、溶液は、最初に希釈さ
れ、次いで、最初の体積に戻るまで濃縮される。しかしながら、これは、精製すべきmR
NA分子の機能性に悪影響する可能性がある。
【0079】
したがって、本発明の好ましい実施形態では、精製すべきmRNA分子は、少なくとも
ステップ(Ia)~(IIb)の間は、定体積式ダイアフィルトレーションを用いた上記
方法による精製のために、連続式TFFシステム内で循環している。定体積式又は連続式
ダイアフィルトレーションは、一定の体積がろ過システム内で保たれる、ろ過プロセスを
指す。したがって、透過物としてフィルターメンブレンを通過する溶液又は懸濁液の体積
と同じ量の溶液又は懸濁液が加えられる。したがって、保持液の体積は、最初にTFFシ
ステムに供給された体積、すなわち、フィード体積と同じであり、洗浄量(washin
g volume)、すなわち、ダイアフィルトレーション量(diafiltrati
on volume)は、透過物の体積と同じ体積である。連続式TFFと連続式ダイア
フィルトレーションとの組合せは、TFFシステムの循環処理部分の中で精製すべきmR
NA分子を、これらのmRNA分子の機能を保持するために一定の体積に保ちながら、透
過物として汚染物質を除去するために有利である。
【0080】
したがって、本発明の一部の実施形態では、少なくともステップ(Ia)~(IIa)
、好ましくはステップ(Ia)~(IIb)は、ダイアフィルトレーション、好ましくは
連続式ダイアフィルトレーションを用いて実施される。
【0081】
本発明の一部の実施形態では、第1、第2、第3及び/又は第4の溶液のいずれかのダ
イアフィルトレーション量は、ステップ(Ia)の懸濁液の体積に対して少なくとも1倍
、例えば、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、好ましくは少なくとも10倍である。前記ダ
イアフィルトレーション量の判定は、時間及び費用効果と、達成すべき生成レベルとの最
適なトレードオフという観点においては、特別に興味深いものである。第1、第2、第3
及び/又は第4の溶液のいずれかのダイアフィルトレーション量は、ステップ(Ia)の
懸濁液の体積に対して少なくとも1倍、好ましくは少なくとも10倍であることがわかっ
た。これは、ハイスループット処理、したがって、大規模なmRNA分子精製を可能にし
ながら、成分の実質的な除去を確実に行うために有利である。
【0082】
一部の実施形態では、ダイアフィルトレーション量は、ステップ(Ia)の懸濁液の体
積、したがって、最初にステップ(Ia)においてTFFシステムに供給された沈殿した
mRNA分子を含む懸濁液の体積に対して1倍である。
一部の実施形態では、ダイアフィルトレーション量は、懸濁液の体積に対して2倍である

一部の実施形態では、ダイアフィルトレーション量は、懸濁液の体積に対して3倍である

一部の実施形態では、ダイアフィルトレーション量は、懸濁液の体積に対して4倍である

一部の実施形態では、ダイアフィルトレーション量は、懸濁液の体積に対して5倍である

さらなる一部の実施形態では、ダイアフィルトレーション量は、ステップ(Ia)の懸濁
液の体積に対して少なくとも5倍である。
【0083】
一部の実施形態では、ダイアフィルトレーション量は、ステップ(Ia)の懸濁液の体
積、したがって、最初にステップ(Ia)においてTFFシステムに供給された沈殿した
mRNA分子を含む懸濁液の体積に対して少なくとも10倍である。TFFシステムに供
給された体積の少なくとも10倍のダイアフィルトレーション量を用いることは、上記各
ステップにおいて対象される成分を実質的に除去するために有利であることがわかった。
【0084】
したがって、第1、第2、第3及び/又は第4の溶液のいずれかのダイアフィルトレー
ション量は、ステップ(Ia)の懸濁液の体積に対して少なくとも10倍であることが好
ましい。少なくとも、第3及び第4の溶液のダイアフィルトレーション量は、ステップ(
Ia)の懸濁液の体積に対して少なくとも10倍であることがさらにより好ましい。
【0085】
一部の実施形態では、第1、第2、第3及び第4の溶液のダイアフィルトレーション量
は、ステップ(Ia)の懸濁液の体積に対して少なくとも10倍である。
【0086】
本発明の方法によって精製済みのmRNA分子を得るための完全に自動化可能なクロー
ズドシステムが、図2に例示として示されている。上記システムは、mRNA製造システ
ムと流体連通している、好ましくは第1のバルブを介して流体連通している、図1に示さ
れた連続式TFFシステムを備える。注意点として、本明細書において使用されている「
バルブ」という用語は、バルブ、(例えば、二方及び/又は三方)コック、クランプ及び
MPCコネクタを包含し;バルブ及び/又はMPCコネクタが好ましい。さらに、MPC
コネクタは、クランプと組み合わせて使用されることが好ましい。したがって、2つの要
素、例えば2つの管は、使い捨てを可能にし、並びに/又は、様々なシステムとの適合性
、例えば管のうちの1つにおける高圧及び/若しくは圧力の変化に対する安定性、並びに
/若しくは低コストを確保するような態様で接続されることが可能である。
【0087】
mRNA製造システムは、反応容器及び少なくとも1個のさらなる容器を含んでもよい
。反応容器及び少なくとも1個のさらなる容器は好ましくは、連結管を介して、互いに流
体連通しており、TFFシステムとも流体連通している。第1のバルブは、mRNA製造
システムの連結管と、TFFシステムの管、好ましくは、フィード貯蔵器からフィルター
装置まで循環する管との間に配置されている。代替的には、mRNA製造システムは、フ
ィルター装置から貯蔵器まで循環する管と流体連通していてもよいし、又は貯蔵器と流体
連通していてもよい。注意点として、本明細書において使用されている「管」という用語
は、管、チューブ、配管又はこれらの組合せを指し得る。さらに、mRNA製造システム
の連結管は、補助ポンプを備えてもよい。補助ポンプは、連結管の中を通って移送される
流体の速度を自動的に調節するために有利である。
【0088】
本発明の方法による精製すべきmRNA分子は、例えば細胞mRNA分子増幅のために
細胞を培養することによって得ることもできるし、又は好ましくは、インビトロ転写(I
VT)によって得ることもできる。mRNA分子が細胞から得られる場合、E.コリ(E
.coli)細胞等の細胞は、mRNA分子製造に適した細胞特異的な培養条件下におい
て、発酵槽内で培養されてもよい。前記培養条件のパラメータは好ましくは、例えばそれ
ぞれの量の培地、ガス及び/又はバッファーを供給することによって、自動的に調整され
る。したがって、mRNA製造システムは、反応容器及び少なくとも1個のさらなる容器
を備えてもよく、反応容器は、発酵槽であり、少なくとも1個のさらなる容器は、例えば
各培地、ガス及び/又はバッファー溶液を含む。
【0089】
代替的には、精製すべきmRNA分子がIVTによって得られる場合、IVT鋳型、例
えば、ターゲット精製すべきmRNA分子のIVTのための各DNA鋳型と、IVT用の
酵素、例えばT7 RNAポリメラーゼ及びNTPの混合物等のIVT試薬とが、必要と
される。
【0090】
したがって、mRNA製造システムは、反応容器及び少なくとも1個のさらなる容器を
備えてもよく、少なくとも1個のさらなる容器は、前記IVT試薬のうちの少なくとも1
つを含む。
【0091】
したがって、反応容器は好ましくは、少なくとも1つのさらなる容器、好ましくは少な
くとも第1のさらなる容器及び第2のさらなる容器と流体連通している。
【0092】
第1のさらなる容器は、前記IVT試薬のうちの少なくとも1つを含んでもよく、好ま
しくは、連結管並びに第2及び第3のバルブを介して反応容器と流体連通している。好ま
しくは、第2のバルブは、反応容器と連結管との間に配置されており、第3のバルブは、
連結管と第1のさらなる容器との間に配置されている。第1のバルブを閉じ、第2及び第
3のバルブを開くことにより、mRNA分子を、例えばIVTによって、好ましくは反応
容器内で製造することができる。第3のバルブを閉じ、第1及び第2のバルブを開くこと
により、製造されたmRNA分子を、mRNA製造システムからTFFシステムに移送す
ることができる。
【0093】
第2のさらなる容器は、mRNA分子を沈殿させるための溶液を含んでもよく、前記溶
液は、好ましくは酢酸アンモニウム(NHOAc)、例えば5M NHOAcを含む
。好ましくは、第2のさらなる容器は、第4のバルブを介して連結管と流体連通している
。第2及び第4のバルブを開き、第1及び第3のバルブを閉じることにより、ターゲット
分子を、反応容器内で沈殿させることができ、又は反応容器が発酵槽である場合は、第2
のさらなる容器内で沈殿させることができる。次いで第1のバルブを開くと、懸濁液中の
沈殿したmRNA分子を、mRNA製造システムから本発明の方法によるmRNA分子精
製のためのTFFシステムに移送することができる。
【0094】
したがって、図2に示されたシステムは、貯蔵器を有するTFFシステム、好ましくは
連続式ダイアフィルトレーションシステムを備える。好ましくは、貯蔵器は、それぞれ少
なくとも第5、第6、及び第7のバルブを介して、少なくとも3個のさらなる容器、すな
わち、少なくとも第3のさらなる容器、第4のさらなる容器及び第5のさらなる容器と流
体連通している。第3のさらなる容器は、本発明による第1の溶液を含んでもよく、第4
のさらなる容器は、本発明による第2の溶液を含んでもよく、第5のさらなる容器は、本
発明による第3の溶液を含んでもよい。第2の溶液と第4の溶液とが異なる場合、貯蔵器
は好ましくは、例えば第8のバルブを介して、第4の溶液を含む第6のさらなる容器と流
体連通している。したがって、第3のさらなる容器は、第1の溶液を含み、第1の溶液は
、沈殿したmRNA分子を精製するためのNHOAc、例えば2.5M NHOAc
を含み、第4のさらなる容器は、第2の溶液としての水、例えば、注射用水(WFI)を
含み、第5のさらなる容器は、第3の溶液を含み、第3の溶液は、キレート化剤としての
EDTA及び任意選択によりMOPSを含むことが好ましい。第4の溶液が水ではない場
合、第6のさらなる容器は好ましくは、塩化ナトリウム及び/又はクエン酸ナトリウムを
含む。さらに、補助ポンプが、前記少なくとも3個のさらなる容器のいずれかから貯蔵器
に移送される流体の速度を自動的に調節するために存在してもよい。
【0095】
したがって、貯蔵器は好ましくは、所定の長さの時間にわたって第1のバルブを開いて
おくことにより第1のバルブを介してmRNA製造システムから移送された、懸濁液中の
沈殿したmRNA分子を含む。所定の長さの時間にわたって第5のバルブを開いておくこ
とにより、第1の溶液を、懸濁液中の沈殿したmRNA分子に加えることが可能であり、
その後、この混合物は、少なくとも1回の周回の連続式TFFのためにフィルター装置に
移送されることが可能であり、フィルターメンブレンは好ましくは、300kDa~0.
65μmの分子量カットオフを有する。したがって、沈殿したmRNA分子を含む懸濁液
は、本明細書に開示の方法のステップ(Ia)により、例えばタンパク質、塩及び/又は
NTP等のIVT混合物の成分から精製することができる。精製済みの沈殿したmRNA
分子を含む懸濁液は好ましくは、保持液として貯蔵器に戻される。ステップ(Ib)を実
施するため、したがって、ステップ(Ia)において得られた精製済みの沈殿したmRN
A分子を洗浄し、溶解させるためには、第6のバルブは、所定の長さの時間にわたって開
かれている。この結果、第2の溶液を、貯蔵器内の沈殿したmRNA分子を含む懸濁液に
加えることができる。1kDa~0.65μmの分子量カットオフを有するフィルターメ
ンブレンを有することが好ましいフィルター装置を使用して、少なくとも1回の周回の連
続式TFFを実施することにより、例えば、第1の溶液に含まれるNHOAcを除去す
ることができる。次いで、所定の長さの時間にわたって第7のバルブを開いておくことに
より、第3の溶液を、貯蔵器内の洗浄及び溶解済みのmRNA分子に加えることができる
。フィルターメンブレンが好ましくは50kDa、より好ましくは100kDaの分子量
カットオフを有するフィルター装置を使用して、少なくとも1回の周回の連続式TFFを
実施することにより、失敗作のmRNA分子及びmRNA分子の加水分解生成物を、本明
細書に開示の方法のステップ(IIa)によって効率的に除去することができる。例えば
第3の溶液の成分を除去することによって、ステップ(IIa)において得られた精製済
みのmRNA分子を洗浄するために、次いでステップ(IIb)が実施されてもよい。し
たがって、第6又は第8のバルブは、50kDaの分子量カットオフを有するフィルター
メンブレンを備えるフィルター装置を使用して少なくとも1回の周回の連続式TFFを行
うという目的で、水又は塩化ナトリウム及び/若しくはクエン酸ナトリウムを含む第4の
溶液を精製済みのmRNA分子に加えるために、所定の長さの時間にわたって開かれてい
る。
【0096】
任意選択により、さらなるステップが、ステップ(Ib)とステップ(IIa)との間
に実施される。したがって、TFFシステムは、好ましくは第9のバルブを介して例えば
貯蔵器と流体連通している、第7のさらなる容器をさらに備えてもよい。前記第7のさら
なる容器は、第5の溶液を含んでもよく、第5の溶液は好ましくは少なくとも、第3の溶
液のキレート化剤、好ましくはEDTAを、前記第3の溶液の場合より高い濃度で含む。
ステップ(Ib)の実施後に所定の長さの時間にわたって第9のバルブを開いておくこと
により、第5の溶液を第2の溶液に溶解したmRNA分子に加えることができる。これに
は、TFFシステム内における少なくともキレート化剤の濃度を、本明細書において第3
の溶液との関連で指定された各濃度に調節するために必要な時間を短くすることによって
、本発明の方法の処理能力及び再現性を高めることができるという利点がある。さらに、
補助ポンプが、第7のさらなる容器から貯蔵器(図示なし)に移送される流体の速度を自
動的に調節するために存在してもよい。
【0097】
任意選択により、mRNA分子製造システムは、好ましくは仮置き用バルブを介してm
RNA分子製造システムの連結管と流体連通していることが好ましい、仮置き容器をさら
に含んでもよい。仮置き容器は、無菌であることが好ましい袋であってもよい。所定の長
さの時間にわたって第1のバルブ及び仮置き用バルブを開いておくことにより、mRNA
分子を含む懸濁液又は溶液の少なくとも一部分を、TFFシステムからmRNA分子製造
システムに移送し、及び/又はmRNA分子製造システムからTFFシステムに移送する
ことができる。これは、好ましくは所定の長さの時間にわたって、前記懸濁液又は溶液の
少なくとも一部分を貯蔵するために有利であり得る。したがって、前記懸濁液又は溶液の
前記少なくとも一部分は、さらなる周回の精製、例えば、ステップ(Ia)及び(Ib)
、ステップ(IIa)及び(IIb)及び/又はこれらの組合せに供されなくてもよい。
さらに、懸濁液又は溶液の少なくとも一部分を仮置き容器内に貯蔵している間には、TF
Fシステム及び/又はmRNA分子製造システムをクリーニングし、水及び/若しくはバ
ッファーで洗浄し、及び/又は滅菌することができる。任意選択により又は代替的には、
仮置き容器は、容器に含まれる溶液又は懸濁液、好ましくは、精製済みのmRNA分子を
含む溶液又は懸濁液の少なくとも一部分を得るために使用することができる。任意選択に
より、上記システムは、さらなるろ過ステップのためのフィルター(図示なし)をさらに
含んでもよい。前記フィルターは、最終ろ過ステップのための0.3μm未満、例えば0
.22μmの細孔径のフィルターメンブレンを備えてもよく、したがって、仮置き容器か
ら得られた精製済みのmRNA分子を含む懸濁液の最終ろ過のために有用であり得る。
【0098】
精製すべきmRNA分子を、例えば脱リン酸化し、5’キャップ及び/又は3’ポリ(
A)テールを付加することによって修飾することが有利なこともあり得る。特に、ステッ
プ(Ia)~(IIb)は好ましくは、mRNA分子の3’ポリアデニル化の前に少なく
とも1回実施され、ステップ(Ia)~(Ib)は好ましくは、5’キャッピングの前に
少なくとも1回実施される。任意選択により、得られたmRNA分子は、少なくとも1回
目のステップ(Ia)及び少なくとも1回目のステップ(Ib)の後に脱ホスホリル化さ
れ、続いて、少なくとも2回目のステップ(Ia)及び少なくとも2回目のステップ(I
b)を行うこともできる。したがって、上記システムは、次のもの(図示なし)のうちの
1つ以上をさらに備えてもよい:好ましくはキャッピングのために必要な試薬を含み、好
ましくは第4’のバルブを介してmRNA製造システムの連結管と流体連通している、第
2’のさらなる容器と、好ましくは脱リン酸化のために必要な試薬を含み、好ましくは第
4’’のバルブを介してmRNA製造システムの連結管と流体連通している、第2’’の
さらなる容器と、好ましくはポリ(A)テールを酵素的付加するために必要な試薬、例え
ば、少なくともポリ(A)ポリメラーゼを含み、好ましくは第4’’’のバルブを介して
mRNA製造システムの連結管と流体連通している、第2’’’のさらなる容器。所定の
長さの時間にわたって第1のバルブ及び仮置き用バルブを開いておくことにより、精製す
べきmRNA分子を含む各懸濁液の少なくとも一部分を、TFFシステムからmRNA製
造システムの仮置き容器内に移送することができる。第1のバルブを閉じ、第4’、第4
’’及び/又は第4’’’のバルブを開くことにより、mRNA分子のキャッピング、脱
リン酸化及び/又はポリアデニル化を、好ましくは仮置き容器内で実施することができる
。代替的には又はさらには、反応容器が発酵槽ではない場合、反応容器を仮置き容器の代
わりとして使用すること可能であり、したがって、仮置き用バルブの代わりの第2のバル
ブは、開かれている。第4’、第4’’及び/又は第4’’’のバルブを閉じ、第1のバ
ルブを開くことにより、修飾されたmRNA分子を含む懸濁液を、mRNA分子製造シス
テムからTFFシステムに移送することができる。
【0099】
注意点として、フィルター装置は、自動的に交換され得る1個より多いフィルターメン
ブレンを備えてもよい。好ましくは、フィルター装置は、例えばそれぞれがフィルターカ
ラムを備える1個より多いフィルター装置ユニットを備え、mRNA分子は連続式TFF
のために、上記において各方法ステップとの関連で指定された分子量カットオフを有する
フィルターメンブレンを備えるフィルター装置ユニットのうちの少なくとも1つに移送さ
れる。
【0100】
さらに、図2に図示されているように、上記システムは、例えば第10のバルブを介し
て貯蔵器と流体連通している出口、例えば出口容器を備えてもよい。好ましくは、前記出
口容器は、精製済みのmRNA分子を含む溶液又は懸濁液の少なくとも一部分を貯蔵する
ための、使い捨て型であることが好ましい無菌の袋を指し、又はこの袋と流体連通してい
る。第10のバルブを開くことにより、精製済みのmRNA分子を得ることができる。代
替的には、(最後に実施される)ステップ(IIb)においては、精製済みのmRNA分
子は、保持液ではなく透過物に含まれてもよい。任意選択により、上記システムは、さら
なるろ過ステップのためのフィルター(図示なし)をさらに含んでもよい。前記フィルタ
ーは、最終ろ過ステップのための0.3μm未満、例えば0.22μmの細孔径を有する
フィルターメンブレンを備えてもよく、したがって、精製済みのmRNA分子を含む懸濁
液、例えば透過物、又は出口容器から得られた懸濁液の最終ろ過のために有用であり得る
。さらに、補助ポンプが、貯蔵器から出口(図示なし)に移送される流体の即速度を自動
的に調節するために存在してもよい。
【0101】
上記システムは、自動的に制御されることが好ましい冷却要素及び/又は加熱要素(図
示なし)をさらに備えてもよい。前記冷却要素及び/又は加熱要素は、管、容器(例えば
、反応容器、仮置き容器、さらなる容器及び/又は貯蔵器)及び/又はフィルター装置の
うちの1つ以上を少なくとも部分的に取り巻くように配置されいてもよい。好ましくは、
冷却要素は、貯蔵器及び/又はフィルター装置を少なくとも部分的に取り巻くように配置
されている。したがって、本発明による方法は、各冷却要素及び/又は加熱要素の制御に
よって、0℃~25℃の温度で実施することが可能であり、好ましくは、大部分のステッ
プに関しては、2℃~8℃で実施することが可能である。この結果、多量の精製済みのm
RNA分子を得ることができる。
【0102】
好ましくは、上記システムは、自動的に制御されることが好ましいpH調整のための要
素(図示なし)をさらに備えてもよい。前記要素は、pH計等の溶液及び/又は懸濁液の
pHを測定するための装置及び任意選択によりpH調整容器を備えてもよく、後に挙げた
pH調整容器は好ましくは、容器(例えば、反応容器、仮置き容器、さらなる容器及び/
又は貯蔵器)のうちの少なくとも1つと流体連通している。したがって、各容器内の溶液
又は懸濁液のpHは、測定及び/又は制御することができる。追加事項として又は代替的
には、透過物のpHは、測定することが可能であり、好ましくは、連続的に測定すること
が可能である。したがって、mRNA精製プロセスは、モニタリング及び品質検査するこ
とができる。
【0103】
さらに、核酸の濃度及び/又は純度は、好ましくは透過物を使用して、測定することが
できる。このような測定は、例えばmRNA分子を含む分子の吸光度をUV域の約260
nm及び280nmで測定することにより、測光法によって実施することができる。例え
ば、約260nmで得られた値の、約280nmで得られた値に対する商は、溶液又は懸
濁液中における各拡散の純度を指し示し得る。例えば約1.8~約2.0の比は、高い純
度のDNA又はRNA分子を指し示し得るが、例えば1.8未満の比は、例えばタンパク
質による不純物を指し示し得る。したがって、例えば透過物の組成に関する情報は、mR
NA分子濃度も含めて得ることができる。任意選択により又は代替的には、mRNA分子
濃度は、導電性の測定、好ましくは連続的な導電性の測定によって判定することができる
。したがって、上記システムは、分光計及び/若しくは分光光度計、例えばnanodr
op、並びに/又は導電性の測定を実施するための手段等、自動的に制御されることが好
ましい核酸定量化(図示なし)のための要素をさらに備えてもよい。
【0104】
容器(例えば、反応容器、仮置き容器、さらなる容器及び/又は貯蔵器)のいずれか1
つ又はすべての容器を、各はかりに配置することができる。したがって、各容器の重量は
、精製すべき又は各容器内で精製されるmRNA分子を含む溶液又は懸濁液の重量は、測
定することが可能であり、例えば第1、第2、第3、第4及び/若しくは第5の溶液の各
溶液若しくは各添加成分、並びに/又はIVT試薬の適切な量。したがって、mRNA製
造及び/又は精製プロセスは、最適化及び自動化することができる。
【0105】
mRNA製造及び/又は精製プロセスを確実に自動制御するために、上記システムは好
ましくは、上記手段を制御するようになされた制御手段、例えば、バルブ、(補助)ポン
プ、加熱要素及び/又は冷却要素、pH調整のための要素、核酸の定量化のための要素、
導電性測定を実施するための手段及び/又ははかりを備える。本明細書において、「シス
テム」という用語は、装置として解されることを意味し、装置と相互に置きかえ可能に使
用され得る。
【0106】
mRNA分子製造システムの連結管に関しては、前記連結管は、例えば反応容器とさら
なる容器とを直接に流体連通させる、図2に図示された連結管であってもよい。代替的に
は、連結管は、それぞれの容器を連結する2つ以上の管を指し得る。したがって、連結管
は例えば少なくとも、反応容器と第1のさらなる容器とを流体連通させる第1の管、及び
、反応容器と第2のさらなる容器とを流体連通させる第2の管を指し得る。好ましくは、
前記2つ以上の管のうちの1つ以上は、各容器間にあるバルブと、任意選択により補助ポ
ンプとを備えてもよい。
【0107】
上記システムの構成要素のいずれか1つは、使い捨て型構成要素であってもよい。好ま
しくは、容器(例えば、仮置き容器、反応容器及び/又はさらなる容器)のうちの1つ以
上及び/又は(仮置き用)バルブのうちの1つ以上はそれぞれ、各使い捨て型容器及びバ
ルブであってもよい。好ましくは、仮置き容器及び/又は反応容器は、各使い捨て型容器
である。任意選択により、システム全体が、例えば特定のmRNA分子の製造及び精製を
目的とする、使い捨て用のシステムであってもよい。これには、通常ならば汚染のリスク
を低下させるために必要とされる時間とコストがかかる洗浄、クリーニング及び/又は滅
菌ステップを省略しながら、各mRNA分子を無菌条件下で製造及び精製することができ
るという利点がある。したがって、好ましくは、上記システムに属する1つ以上の構成要
素は、各使い捨て型構成要素である。
【0108】
図2に例示として示されたシステムには、いくつかの利点がある。このようなクローズ
ドシステムにおいては、例えばRNアーゼによる汚染のリスクが最小化され、同時に、連
続式TFFを用いることによりフィルターメンブレンの閉塞が回避されるため、処理能力
を高めることができる。さらに、このようなシステムは、例えばポンプによって制御され
る流体の移送により、容易に取り扱うことができるものであり、例えば(補助)ポンプ及
び/又はバルブを自動的に制御することにより、完全に自動化することさえも可能である
。さらに、このようなシステムは、容易にスケーリングすることが可能であり、顧客に特
有の要件に応じてうまく調節することができる。したがって、mRNA分子のハイスルー
プット精製は、図2に提示のシステムを使用して、本開示の方法による非常に効率的で自
動化された様式で実施することができる。
【0109】
本発明は、(a) 上記mRNA分子を精製する方法によってmRNA分子を精製する
ことと、(b) このようにして得られたmRNA分子を医薬組成物中に配合することと
を含む、医薬組成物を製造するための方法にさらに関する。これは、そのタンパク質の欠
損若しくは欠陥が疾患と関連付けらており、及び/又は、そのタンパク質の存在が細胞内
で必要とされる若しくは有益である、タンパク質の合成を可能にするためのmRNA分子
の投与等、薬学的な観点における精製済みのmRNA分子の用途との関連で、特別に興味
深いことである。
【0110】
好ましくは、本発明によって精製されたmRNA分子から翻訳され得るアミノ酸配列の
機能が、細胞内又は細胞の近傍において必要とされ、又は有益であり、例えば、細胞内又
は細胞の近傍においては、そのアミノ酸配列が欠乏若しくは欠損した形態が疾患若しくは
病気の誘因であり、そのアミノ酸配列の提供が疾患若しくは病気を軽減若しくは予防する
ことができる、アミノ酸配列、又は、身体にとって有益なプロセスを促進することができ
る、アミノ酸配列が、細胞内又は細胞の近傍において必要とされ、又は有益である。コー
ド化アミノ酸配列は、完全なアミノ酸配列又はその機能的バリアントであってよい。さら
に、コード化アミノ酸配列は、因子、インデューサー、制御因子、スティミュレーター若
しくは酵素又はこれらの機能フラグメントとして作用することが可能であり、このアミノ
酸配列は、その機能が障害、特に代謝障害を治療するため、又は新たな血管、組織等の形
成等のインビボプロセスを開始するために必要である、アミノ酸配列である。ここで、機
能的バリアントは、そのアミノ酸配列の機能が細胞内で必要とされ、又は、そのアミノ酸
配列を欠乏若しくは欠損した形態が病原性のものである、アミノ酸配列の機能を細胞内で
担う、フラグメントを意味するように理解されている。
【0111】
好ましくは、このようなアミノ酸配列は、準最適なアミノ酸配列の生合成によって生じ
る生理学的な機能を発生又は再生させるため、したがって、疾患の経過に直接又は間接的
に好ましい影響を与えるための、サプリメント目的又は医療目的での用途において、有利
である。公知の遺伝的基礎を伴う障害は、例えば嚢胞性線維症、血友病、高血圧、コレス
テロールレベルの上昇、がん、神経変性障害及び精神疾患等である。現在22,993件
のヒト遺伝子及び遺伝子障害のエントリーがそれぞれの遺伝子及び表現型に関する説明と
一緒に収載されたオンラインカタログを、ONIM(Online Mendelian
Inheritance in Man)ウェブページ(http://onim.o
rg)で入手可能であり;それぞれの配列は、Uniprotデータベース(http:
//www.uniprot.org)から入手可能である。非限定的な例として、次の
表2では、いくつかの先天性疾患及び対応する遺伝子が列記されている。細胞シグナリン
グ経路どうしは高度に相互作用するため、特定の遺伝子の変異は、種々の病的症状を引き
起こすが、これらの病的症状のうちの特徴的なもののみが表2に列記されている。
【0112】
タンパク質は、免疫原性反応を誘導し、例えば抗原として作用するポテンシャルも有し
得る。このようなタンパク質は、サプリメント用途又は予防接種を含む医療目的での用途
に資するものである。
【0113】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【表2-9】
【表2-10】
【0114】
mRNA分子を精製するステップに関しては、上記に記載したものと同じことが、(I
a) 第1の溶液を使用して、沈殿したmRNA分子を含む懸濁液から沈殿したmRNA
分子を精製するステップと、(Ib) 第2の溶液を使用して、ステップ(Ia)におい
て得られた精製済みの沈殿したmRNA分子を洗浄し、溶解させるステップと、(IIa
) EDTA等のキレート化剤を含む第3の溶液を使用して、ステップ(Ib)において
得られた溶解したmRNA分子からmRNA分子を精製するステップと、続いて、(II
b) 第4の溶液を使用して、ステップ(IIa)において得られた精製済みのmRNA
分子を洗浄するステップとを含む、本発明によるmRNA分子を精製する方法であって、
ステップ(Ia)~(IIb)が、タンジェントフローろ過を用いて実施される、方法に
もあてはまる。
【0115】
このようにして得られた精製済みのmRNA分子を医薬組成物中に配合するステップに
関しては、前記ステップは、水を用いて精製されたmRNA分子が、ステップ(IIb)
において使用される第4の溶液として使用される場合、及び、ステップ(IIb)が1回
より多い場合における最後のステップ(IIb)において使用される第4の溶液として使
用される場合のそれぞれにおいて、塩化ナトリウム又はクエン酸ナトリウムを加えること
を含んでもよい。これは、精製済みのmRNA分子が、塩化ナトリウム又はクエン酸ナト
リウムをすでに含む溶液中では得られない場合、又は、精製済みのmRNA分子が、塩化
ナトリウム又はクエン酸ナトリウムをすでに含有するが、投与用として望まれる濃度とは
別の濃度で含有する溶液中で得られる場合においては、有利である。後者の場合、本方法
は、各濃度を測定し、必要に応じて調節するステップをさらに含んでもよい。好ましくは
、精製済みのmRNA分子は、それぞれの濃度の前記塩化ナトリウム又はクエン酸ナトリ
ウムを含むpH3~6、好ましくはpH4~5の第4の溶液を、上記mRNA分子を精製
するための方法の(最後の)ステップ(IIb)において使用することよる投与のために
有利な濃度の塩化ナトリウム又はクエン酸ナトリウムをさらに含む、溶液に含まれる。
【0116】
得られた精製済みのmRNA分子を医薬組成物に配合することは、薬学的に許容されるキ
ャリアを加えるステップを含んでもよい。精製済みのmRNA分子は好ましくは、有効量
、すなわち、医薬組成物を投与すべき対象において検出可能な治療反応を誘導するのに十
分な量で含まれる。精製済みのmRNA分子及び/又は医薬組成物は、無菌の水溶液又は
非水溶液、懸濁液及びエマルション並びにクリーム及び座薬であり得るが、粉末、錠剤又
はエアロゾルの形態を有することも可能である。
【0117】
本明細書において使用されている「薬学的に許容されるキャリア」という用語は、健全
な医学的判断の範囲では、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応又は他の問題若しくは合併
症を伴うことなく、人間及び動物の組織と接触させて使用するのに適し、ベネフィット/
リスク比に見合う、化合物、資材、原材料及び/又は組成物を指す。したがって、薬学的
に許容されるキャリアは、投与、吸着、溶解度又は薬物動態学的な検討事項の観点から取
り扱いを容易にするために薬学的に活性な物質と一緒に配合された、不活性物質である。
【0118】
適切な薬学的に許容されるキャリアの例は、当技術分野において周知であり、リン酸緩
衝生理食塩水、バッファー、水、オイル/水型エマルション等のエマルション、様々な種
類の湿潤剤及び無菌溶液が挙げられる。特に、水性キャリアには、生理食塩水及び緩衝媒
体を含む、水、アルコール/水溶液、エマルション又は懸濁液が挙げられる。非水性溶媒
の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイル等の植物油及
びエチルオレエート等の有機エステルである。薬学的に許容されるキャリアのさらなる例
には、限定されるわけではないが、生理食塩水、リンゲル液及びデキストロース溶液、シ
トレート、ホスフェート及び他の有機酸;塩を形成する対イオン、例えば、ナトリウムイ
オン及びカリウムイオン;低分子量(10個超のアミノ酸残基)ポリペプチド;タンパク
質、例えば、血清アルブミン若しくはゼラチン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロ
リドン;ヒスチジン、グルタミン、リシン、アスパラギン、アルギニン若しくはグリシン
等のアミノ酸;グルコース、マンノース若しくはデキストリンを含む淡水化物;単糖;二
糖;他の糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース若しくはソルビトール;
キレート化剤、例えば、EDTA;非イオン性界面活性剤、例えば、商品名Tweenで
市販されているポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、プロピレングリコール、
Pluronics若しくはポリエチレングリコール;メチオニン、アスコルビン酸及び
トコフェロールを含む抗酸化剤;並びに/又は、保存料、例えば、オクタデシルジメチル
ベンジルアンモニウムクロリド、ヘキサメトニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリド
、ベンゼトニウムクロリド、フェノールアルコール、ブチルアルコール若しくはベンジル
アルコール、アルキルパラベン、例えばメチルパラベン若しくはプロピルパラベン、カテ
コール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール及びm-クレゾール)
が挙げられる。適切な薬学的に許容されるキャリア及びこれらのキャリアの配合は、Re
mington’s Pharmaceutical Sciences、第17版、1
985、Mack Publishing Co.でさらに詳細に説明されている。さら
に、例えば抗菌剤、抗酸化剤、キレート化剤及び不活性ガス、ナノシステム(nanos
ystem)又はリポソーム等の保存料、安定剤及び他の添加剤が存在してもよい。
【0119】
本発明は、前述の方法によって製造され、本明細書に開示の各方法のいずれかによって
精製された、mRNA分子を含む医薬組成物にさらに関する。医薬組成物は、医薬組成物
が投与された対象の細胞内におけるタンパク質等のアミノ酸配列の翻訳を調節及び/又は
向上させるために有利であり、前記タンパク質等のアミノ酸配列の存在は、例えば疾患と
の関連において、対象にとって有益であり、及び/又は必要とされる。
【0120】
医薬組成物、mRNA分子、mRNA分子の精製及び医薬組成物の配合に関しては、上
記各実施形態との関連で言及された特徴及び利点を含めて、上記に記載したことと同じこ
とが当てはまる。
【0121】
本発明の医薬組成物は、針注射、吸入器の使用、ネブライザー、クリーム、フォーム、
ゲル、ローション及び軟膏等、多種多様な当業者に公知の投与形態及び投与経路によって
投与することができる。用量及び作用の持続期間は、前記精製済みのmRNA分子が果た
すべき機能に依存するが、いずれの場合においても、計画的に調節されなければならない
。作用の持続期間は、例えば前記精製済みのmRNA分子が、欠損遺伝子に起因する疾患
の長期治療のために使用される場合、可能な限り長いものにするが、他の適応症もある場
合、作用の持続期間は、特定の時間枠に調節することもできる。さらに、適切な医薬組成
物に配合された前記精製済みのmRNA分子の全身投与も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0122】
図1】本開示の方法によってmRNA分子を循環させている、連続式タンジェントフローろ過(TFF)システムの概要の図である。mRNA分子は、ステップ(Ia)においては懸濁液中であり、ステップ(Ib)においては溶解しており、ステップ(IIa)及び(IIb)のそれぞれの場合においては溶液中である。
図2】本開示の方法によってmRNA分子を精製するための例示的なシステムの概要の図である(バルブ、(補助)ポンプ及び/又は(さらなる)容器の位置が例示として図示されている。)。
図3】ステップ(Ia)及び(Ib)によってRTで各インビトロ転写(IVT)混合物を精製した後で、無修飾のtdTomatoをコードするmRNAを含むTFF保持液をSDS-PAGEに供し、続いてコロイダルクマシー染色を施した図である。レーン1:コントロールとしての酢酸アンモニウム(NHOAc)中の酵素混合物;レーン2:TFFシステムをプライミングした後の酵素混合物;レーン3:ヌクレアーゼ不含水水中のTFF後の酵素混合物;レーン4:IVT混合物;レーン5:TFFシステムのプライミング後のIVT混合物;レーン6:ヌクレアーゼ不含水水中のTFF後のIVT混合物;レーン7:コントロールとしてのヌクレアーゼ不含水水中の酵素混合物。酵素混合物は、RNアーゼ阻害剤、T7 RNAポリメラーゼ、無機ピロホスファターゼ及びDNアーゼIからなっていた。
図4】ステップ(Ia)及び(b)によってRTで各インビトロ転写(IVT)混合物を精製した後で、無修飾のtdTomatoをコードするmRNAを含むTFF保持液をSDS-PAGEに供し、続いてコロイダルクマシー染色を施した図である。レーン1:コントロールとしてのヌクレアーゼ不含水中の酵素混合物;レーン2:TFF前のIVT混合物;レーン3:TFFシステムのプライミング後のIVT混合物;レーン4:ヌクレアーゼ不含水水中のTFF後のIVT混合物;レーン5:ヌクレアーゼ不含水水中のTFF後のIVT混合物(2.5M酢酸アンモニウム及びヌクレアーゼ不含水によるダイアフィルトレーション後、各混合物を2.5倍に濃縮して、タンパク質の除去を効率的に検出した。)。酵素混合物は、RNアーゼ阻害剤、T7 RNAポリメラーゼ、無機ピロホスファターゼ及びDNアーゼIからなっていた。
図5】ステップ(Ia)及び(b)によって4℃で各インビトロ転写(IVT)混合物を精製した後で、無修飾のtdTomatoをコードするmRNAを含むTFF保持液をSDS-PAGEに供し、続いてコロイダルクマシー染色を施した図である。レーン1:コントロールとしてのヌクレアーゼ不含水中の酵素混合物;レーン2:TFF前のIVT混合物;レーン3:1洗浄量(初期フィード体積に等しい)後のIVT混合物;レーン4:ヌクレアーゼ不含水水中のTFF後のIVT混合物;レーン5:ヌクレアーゼ不含水水中のTFF後のIVT混合物(2.5M酢酸アンモニウム及びヌクレアーゼ不含水によるダイアフィルトレーション後、各混合物を2.5倍に濃縮して、タンパク質の除去を効率的に検出した。)。酵素混合物は、RNアーゼ阻害剤、T7 RNAポリメラーゼ、無機ピロホスファターゼ及びDNアーゼIからなっていた。
図6】A) TFFによって精製されたhCFTR mRNAと、酢酸アンモニウムによる沈殿によって精製され、続いて70%エタノールによって洗浄されたhCFTR mRNAのトランスフェクションとを、Lipofectamine MessengerMaxを使用して実施した、HEK293細胞内で翻訳されたhCFTRタンパク質のウェスタンブロットの図である。ハウスキーピング要素(house keeper)として、Hsp90タンパク質のバンドが示されている。トランスフェクションなしの細胞を、ネガティブコントロールとして使用した。B) 発現したhCFTRは、Image Lab Softwareを使用したデンシトメトリー分析によって定量化し、HSP90タンパク質に対して正規化した。トランスフェクションなし(UT)の細胞を、ネガティブコントロールとして使用した。
図7】百分率を単位とする異なる洗浄量の後の、hCFTRターゲットmRNA分子の量に対する、hCFTRではない様々なスパイクインmRNA分子の残存量の図である。タンジェントフローろ過をRTで実施した。
図8】百分率を単位とする異なる洗浄量の後の、hCFTRターゲットmRNA分子の量に対する、hCFTRではない様々なスパイクインmRNA分子の残存量の図である。タンジェントフローろ過を4℃で実施した。
図9】4℃におけるTFF精製の前(A)及び後(B)に、25ntのアンチセンスDNAオリゴヌクレオチドを含む異なるDNAオリゴヌクレオチド(15nt、25nt及び120nt)をスパイクしたtdTomato mRNAのキャピラリーゲル電気泳動を、Flagment Analyzerを使用して実施した図である。下限マーカー(lower marker)は、各キャピラリーのランにおけるピークの保持時間を正規化するためにFlagment Analyzerの試薬キットに用意された、内部標準(長さ15ntのRNAオリゴヌクレオチド)である。
図10】代表として、異なる膜間差圧セットポイントで透過流束を測定した、図である。
図11】RTにおける手法1による精製前(A)、ステップ(Ib)の後(B)、ステップ(IIa)の後(C)及びステップ(IIb)の後(D)に、長さ25nt及び長さ120ntのDNAオリゴヌクレオチド、並びに長さ256ntのGLP-1 mRNA分子をスパイクしたhCFTR mRNAのキャピラリーゲル電気泳動を、Flagment Analyzerを使用して実施した図である。下限マーカーは、各キャピラリーのランにおけるピークの保持時間を正規化するためにFlagment Analyzerの試薬キットに用意された、内部標準(長さ15ntのRNAオリゴヌクレオチド)である。
図12】RTにおける手法2による精製の前(A)及び後(B)に、長さ25nt及び長さ120ntのDNAオリゴヌクレオチド、並びに長さ256ntのGLP-1 mRNA分子をスパイクしたhCFTR mRNAのキャピラリーゲル電気泳動を、Flagment Analyzerを使用して実施した図である。下限マーカーは、各キャピラリーのランにおけるピークの保持時間を正規化するためにFlagment Analyzerの試薬キットに用意された、内部標準(長さ15ntのRNAオリゴヌクレオチド)である。
【0123】
次の例においては、本発明の他の態様及び利点を説明するが、これらは、例示を目的と
して与えられており、限定として与えられているわけではない。本明細書において引用さ
れた各刊行物、特許、特許出願は、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【実施例0124】
方法及び資材は、本明細書においては、本開示における使用のために記載されており;
当技術分野において知られた他の適切な方法及び資材が使用されてもよい。資材、方法及
び例は、説明用のものにすぎず、限定を加えるものとして意図されていない。
【0125】
本明細書において使用されている略語及び各略語に関する説明は、表3に列記されてい
る。
【表3】
【0126】
資材及び方法
使用された材料、装置、ソフトウェア及び試験系
資材は、表4に列記されている。
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【0127】
装置は、表5に列記されている。
【表5】
【0128】
ソフトウェアは、表6に列記されている。
【表6】
【0129】
試験系は、表7に列記されている。
【表7】
【0130】
TFFによるIVT混合物の精製 - ステップ(Ia)及び(Ib)
下記においては、無修飾で長さ1644ヌクレオチド(nt)のインビトロ転写無修飾
tdTomatoターゲットmRNA分子を含むインビトロ転写(IVT)混合物を使用
した。さらに、T7 RNAポリメラーゼ、無機ピロホスファターゼ、RNアーゼ阻害剤
及びDNアーゼIを含む酵素混合物を使用した。
【0131】
RNA沈殿
IVT混合物及び酵素混合物のそれぞれを、2.5M NHOAcの最終濃度になる
まで、よく冷えた等量の5M NHOAc pH7によって沈殿させ、氷の上で少なく
とも30分間インキュベートした。TFFの前には、混合物中における最終濃度が約0.
5mg/mlのmRNAになるまで、2.5M NHOAc pH7によって各混合物
を1:1に希釈した。IVT又は酵素混合物をTFFシステムにつなげたら、最初にTF
Fシステムを、透過物用クランプを閉じた状態で50ml/minでIVT混合物を循環
させることによって10分間プライミングした。
【0132】
ステップ(Ia):タンパク質、ヌクレオチド及び塩の除去
MWCOが500kDaのmPESフィルターカラムを使用して、約200~300m
barの一定のTMPにおいて、50ml/minで各混合物のダイアフィルトレーショ
ンを実施した。各混合物を、10洗浄量の2.5M NHOAc pH7によってダイ
アフィルトレーションした。このステップにより、インビトロ転写に由来の酵素、ヌクレ
オチド及びバッファー成分が効率的に除去された。ステップ(Ia)を用いて、他の任意
の中間製造ステップ(例えば、脱リン酸化、ポストキャッピング、ポリアデニル化、..
.)に由来の他の任意のタンパク質及び/又は酵素を除去することができる。一部の酵素
(例えば、着目するmRNA分子に高いアフィニティで結合するポリ(A)ポリメラーゼ
)の場合、界面活性剤(例えば、SDS、LDS、...)を酢酸アンモニウムバッファ
ー pH7に加えてもよい。ポリ(A)ポリメラーゼがポリアデニル化のために使用され
る場合、後続するステップ(Ia)は好ましくは、20℃~30℃の温度、好ましくは2
3℃~27℃の温度、より好ましくは25℃で実施される。このような温度は、効率的な
ポリ(A)ポリメラーゼ除去のために有利である。
【0133】
ステップ(Ib):ステップ(Ia)に由来のNHOAcの除去
NHOAcを除去し、mRNA分子を分割するという目的で、50ml/minの流
量及び約200~300mbarのTMPにおけるヌクレアーゼ不含水を使用した10洗
浄量によるダイアフィルトレーションのために、MWCOが100kDAのmPESフィ
ルターカラムを使用した。代替的には、MWCOが50kDaのmPESフィルターカラ
ムを、mRNA分子のサイズに応じて使用してもよい。
【0134】
ステップ(Ia)及び(Ib)の精製効率を調査するために、mRNA分子を含むTF
F保持液は、TFF(すなわち、ステップ(Ib))の前後でサンプリングし、例えばU
V測定、Flagment Analyzer、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリル
アミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を用いて分析し、続いて、例えばコロイダルク
マシー染色を施すことが可能である。
【0135】
図3図5に示されているように、酵素は、上記ステップ(Ia)及び(Ib)を施す
ことによって、mRNA分子から効率的に除去され得る。これにより、mRNA分子は、
TFFカラムによって保持されたが、酵素及び/又はタンパク質は、効率的に除去された
。スメアピーク分析により、スメアプレピークは、TFF精製の前では4.7%であり、
4℃におけるTFF精製に関しては+1.3%の偏差があり、RTでTFF精製を実施し
た後では+1.8%の偏差があることが明らかになった。したがって、mRNAの分解を
観察することはできなかった。
【0136】
TFFによる沈殿及び溶解したmRNAの精製 - ステップ(IIa)及び(IIb)
の発展
下記においては、沈殿及び溶解したmRNAをさらなる精製のために使用した。
【0137】
様々なろ過メンブレン及びmRNAの透過に及ぼされるEDTAの効果の試験
異なる細孔径を有する様々なフィルターメンブレンを、ヌクレアーゼ不含水を単独で使
用した場合、又はヌクレアーゼ不含水をさらなる10mM エチレンジアミン四酢酸(E
DTA)と一緒に使用した場合におけるmRNA分子の透過について試験した。それぞれ
500kDa、300kDa、100kDa及び50kDaの分子量カットオフ(MWC
O)を有する4個のmPESカラムを試験した。膜間差圧(TMP)は、TFFシステム
の保持液用クランプを使用して調節され、それぞれMWCOが500kDa及び50kD
aのカラムに関しては40mbarに保たれ、それぞれMWCOが100kDa及び30
0kDaのカラムに関しては100mbarに保たれた。メインポンプを15ml/mi
nの流量に設定し、TFFをRTで実施した。フィード中における初期mRNA分子濃度
は、0.1mg/mlであり、保持液及び透過物中におけるmRNA分子濃度は、UV測
定を用いて測定された。各カラムは、元々のサンプル体積に対して10x洗浄量によって
試験された。
【0138】
EDTAがない場合、mRNA分子は、500kDaのMWCOを有する供試カラムに
よって保持された。より小さい細孔径(すなわち、300kDa、100kDa及び50
kDa)は、いずれのmRNA分子の通過を許さないと仮定され、したがって、EDTA
が存在しない状態ではさらに試験されなかった。
【0139】
EDTAがある場合、驚くべきことに、mRNA分子は、MWCOが500kDaのフ
ィルターメンブレンの細孔を通過し、MWCOが300kDaのフィルターメンブレンを
使用したときにも部分的に失われた。しかしながら、mRNA分子は、10mM EDT
Aの存在下においては、MWCOが100kDa及び50kDaのフィルターメンブレン
を使用してうまく保持することができた。したがって、以下に提示の実験では、MWCO
が100kDaのカラムが、mRNA分子のろ過のために選択された。
【0140】
10mM EDTAによるろ過後には、mRNA分子の散発的な沈殿が観察されること
もあったことに留意しなければならない。しかしながら、40mM MOPS及び10m
M EDTAを含むバッファーの使用によって、上記沈殿を効率的に防止することができ
た。
【0141】
40mM MOPS及び10mM EDTAダイアフィルトレーションバッファーの調製
MOPSをヌクレアーゼ不含水に溶解させ、1M 3-(N-モルホリノ)プロパンス
ルホン酸(MOPS)バッファーを調製した。次いで、32%NaOHを使用して、1M
MOPSバッファーのpHをpH7に調節した。得られたpH7の1M MOPSバッ
ファーを、0.5M EDTA及びヌクレアーゼ不含水と混合すると、最終的には、40
mM MOPS及び10mM EDTAを含むダイアフィルトレーションバッファーが得
られた。
【0142】
核酸オリゴヌクレオチドを除去するための洗浄バッファー量の判定
TFFプロセスの効率、すなわち、アボーティブ転写産物及び/又は加水分解生成物を
代表とする核酸オリゴヌクレオチド等の不純物の完全な除去に必要な洗浄サイクルの最小
回数は、メンブレンフィルター及びメンブレンフィルターの細孔径による分子の排除に強
く依存する。したがって、洗浄バッファー量のそれぞれの効果を調査して、着目するmR
NA分子を含む沈殿及び溶解したmRNAからスパイク済みの核酸オリゴヌクレオチドを
除去するために必要な洗浄サイクルの数を決定した。
【0143】
この実験に関しては、MWCOが100kDaのmPESフィルターカラムを使用した
上で、TFF流量は、15ml/minに設定され、TMPは、約40mbarに一定に
保たれた。5mlのフィード総体積として、500μLのmRNA分子に、ターゲットm
RNA分子の2.5%(m/m)に相当する長さ10ntのDNAオリゴヌクレオチド、
ターゲットmRNA分子の2.5%(m/m)に相当する長さ50ntのDNAオリゴヌ
クレオチド、及び、ターゲットmRNA分子の5%(m/m)に相当する長さ120nt
のDNAオリゴヌクレオチドをスパイクした。40mM MOPS及び10mM EDT
Aを含むダイアフィルトレーションバッファーを用いた場合の元々のフィード体積に対し
て5x、10x、15x及び20x洗浄量の後に、逆相HPLC分析用のサンプルを抜き
出した。サンプルを抜き出す前には、透過物用クランプを閉じ、保持液の循環のために5
0ml/minで5分間保持液用バルブを開いた。各洗浄サイクルにおいては、無菌シリ
ンジを使用して100μLのサンプルを抜き出し、これらのサンプルは、分析まで氷の上
に置いておいた。TFFを室温で実施した。逆相HPLC分析を用いてサンプルを調査し
たが、260nmで検出された面積は、サンプル中におけるDNAオリゴヌクレオチドの
相対量を表していた。TFF(コントロール)前の対応する面積は、100%オリゴヌク
レオチドに対して設定された。
【0144】
すべての場合において、それぞれフィード体積に対して5x、10x、15x及び20
x洗浄量を適用した後には、核酸オリゴヌクレオチドを検出することができなかった。し
たがって、この結果により、洗浄用バッファーを用いた場合の5x洗浄量後にはすでに、
核酸オリゴヌクレオチドを保持液中で検出することができないことが示された。洗浄用バ
ッファーを用いた場合の10x洗浄量という最低量は、mRNA分子から核酸オリゴヌク
レオチドを除去するのに十分であると判定された。
【0145】
EDTAの除去のためのヌクレアーゼ不含水を用いた場合の洗浄量の判定
TFFによるDNAオリゴヌクレオチドの除去は、洗浄用バッファー、すなわち、40
mM MOPS及び10mM EDTAを含むダイアフィルトレーションバッファーを使
用して実施されるため、後続するろ過ステップは、洗浄用バッファーをヌクレアーゼ不含
水によって交換するために有利である。したがって、実験は、mRNA分子から洗浄用バ
ッファーを除去するために必要な洗浄サイクルの量を決定するために実施された。前述の
実験からは、20x洗浄量のダイアフィルトレーションバッファーによってあらかじめろ
過されたmRNA分子を含む総体積が約5mlのフィード溶液が、MWCOが100kD
AのmPESフィルターカラムを使用して、15ml/minの流量及び40mbarの
一定のTMPにおいて、ヌクレアーゼ不含水によってダイアフィルトレーションされた。
ヌクレアーゼ不含水を用いた場合の元々のフィード体積に対して5x、10x、15x及
び20x洗浄量の後に、逆相HPLC分析のためのサンプルを採取した。ヌクレアーゼ不
含水による各洗浄サイクル後の残留EDTAの量を定量化するために、40mM MOP
S及び10mM EDTAを含むダイアフィルトレーションバッファーを滴定し、検量線
を記録した(表6を参照;MOPS-EDTA検量線:log(y)=0.6467 l
og(x)+1.9128;r=0,99462;r2=0.99877;曲線モデル:
log/log)。単独のMOPSバッファーは260nmで吸収シグナルを示さないた
め、表8及び表9に記載の濃度は、EDTAの濃度に対応する。実験は、22℃のRTで
実施された。表9では、各洗浄サイクルが終わってからEDTAを除去した後のデータが
示されている。
【0146】
表9に示されているように、洗浄量を増大させた後に、逆相HPLCによって260n
mで検出されたピーク面積に応じたEDTAの量が減少することにより、ヌクレアーゼ不
含水を用いた場合の10x洗浄量という最低量が、残留EDTAの部分的な除去のために
は必要であることが明らかになった。
【表8】
【表9】
【0147】
測定されたパラメータの試験
RTで実施された前述の実験においては、ステップ(IIa)においてDNAオリゴヌ
クレオチドを除去するために必要なダイアフィルトレーションバッファーを使用する洗浄
サイクルの最小数と、ステップ(IIb)において残留EDTAを除去するために必要な
ヌクレアーゼ不含水を使用する洗浄サイクルの最小数とを判定した。測定されたパラメー
タを試験するために、5mlのフィード総体積として、500μgのmRNAに、ターゲ
ットmRNA分子の体積の2.5%に相当する長さ10ntの核酸オリゴヌクレオチド、
ターゲットmRNA分子の体積の2.5%に相当する長さ50ntのDNAオリゴヌクレ
オチド、及び、ターゲットmRNA分子の体積の5%に相当する長さ120ntのDNA
オリゴヌクレオチドをスパイクした(表8及び表9では、「TFF前」と呼んでいる。)
【0148】
後述する実験においては、そうではないとの記載がない場合、次の構成を使用した。M
WCOが100kDaのmPESフィルターカラムを使用して、15ml/minの流量
及び約40mbarのTMPにおいて、0.1mg/mlのmRNA分子を含むフィード
溶液をダイアフィルトレーションした。いずれの場合においても、適用された洗浄量は、
10倍の洗浄量、すなわち、40mM MOPS及び10mM EDTAを含むダイアフ
ィルトレーションバッファーを用いた場合の10x洗浄量であり、続いて、ヌクレアーゼ
不含水を用いた場合の10x洗浄量だった(表8及び表9では、「TFF後」と呼んでい
る。)。mRNA分子は、特に高温での加水分解によって分解しやすいため、実験は、m
RNA分子の加水分解を最小限に保つために4℃で実施され、つまりは、氷水を使用して
実施された。
【0149】
逆相HPLCを用いて測定したとき、上記構成により、試験された3種すべての長さの
DNAオリゴヌクレオチド(表10)及び残留ダイアフィルトレーションバッファー(表
11)が効率的に除去された。さらに、精製の前後にFlagment Analyze
rを使用して、キャピラリーゲル電気泳動後にスメアピーク分析を実施した(表12)。
スメアピーク分析により、mRNAの完全性は、TFF精製によって変化せず、したがっ
て、本方法によって影響されないことが示された。
【表10】
【表11】
【表12】
【0150】
精製済みのmRNA分子の翻訳効率の測定
さらに、得られた精製済みのmRNA分子の翻訳効率を測定することは、大変興味深い
ことだった。したがって、1.4×10HEK293細胞を6ウェルプレートに播種し
、上記のように精製された3.75μgのmRNA分子と、標準的な手順によって精製さ
れた3.75μgのmRNA分子とをそれぞれトランスフェクションした。トランスフェ
クションを、MessengerMax(1:15)を使用して実施した。24時間後、
細胞を溶解させたら、SDS-Page及びウェスタンブロットのそれぞれを用いて、5
0μgの細胞溶解物のそれぞれを使って調査した。
【0151】
図6からわかるように、ウェスタンブロット(A)を用いると、同等の量のmRNA分
子が検出され、定量化された(B)。
【0152】
長さが異なる長さmRNAを除去するためのしきい値の測定
合計300μgのmRNAターゲットhCFTR mRNAを、5mlの総体積を採用
した長さが異なる様々なmRNA分子でスパイクした。特に、相異なる6種類のmRNA
分子をスパイクのために使用したが、各種類は、ターゲットmRNA分子の体積の16.
7%に相当した。3種類のmRNA分子は、キャップ及びポリ(A)テールを示し、それ
ぞれ3,632nt、1,864nt及び1,111ntの全長を有していた。2種類の
mRNA分子は、キャップもポリ(A)テールも有さず、それぞれ494nt及び256
ntの全長を示した。最後の種類のmRNA分子は、ポジティブコントロールとして働く
DNAの長さが120ntのオリゴヌクレオチドに当てはまった。
【0153】
スパイク済みのmRNA分子を含む溶液を、上記のようにしてRT(図7)及び4℃(
図8)のそれぞれでろ過した。TFF前(サンプル調製の直後)、上記ダイアフィルトレ
ーションバッファーを使用した元々のサンプル体積に対して5x、10x、15x及び2
0x洗浄量の後、及び、10x洗浄量のヌクレアーゼ不含水水を使用したさらなる洗浄後
に、サンプルを抜き出した。各洗浄サイクルにおいては、無菌シリンジを使用して100
μlのサンプルを抜き出し、分析まで氷の上に置いておいた。分子によるフィルター細孔
の透過を、Flagment Analyzerを使用したキャピラリーゲル電気泳動に
よって評価した。
【0154】
図7及び図8に示されているように、951ntの長さを有するmRNA分子のカット
オフを、100kDaのmPESカラムを使用して観察することができた。951nt未
満の長さを有するmRNA分子の場合、例えば50kDa又は70kDaのmPESカラ
ム等、より低いMWCOを有するカラムが有利なこともあり得る。
【0155】
0.1mg/mlから1mg/mlへのmRNA分子濃度の上昇
下記最終の組の実験(図9)においては、下記に記載のろ過手順を、ターゲットmRN
A分子として無修飾で長さ1644ntの無修飾tdTomato mRNAを含む溶液
に適用した。特には、合計5mgのmRNA分子に相当する1mg/mlのmRNA分子
と、ターゲットmRNA分子の2.5%(m/m)に相当する15ntのDNAオリゴヌ
クレオチド及び長さ25ntのアンチセンスオリゴヌクレオチド(着目するmRNA分子
に相補的に結合する)と、ターゲットmRNA分子の5%(m/m)に相当する長さ12
0ntのオリゴヌクレオチドを含む、合計5mlのフィード溶液を分析した。このスパイ
ク済みのフィード溶液を、MWCOが100kDaのmPESフィルターカラムを使用し
て15ml/minの流量及び約40mbarのTMPにおいて4℃でダイアフィルトレ
ーションした。適用された洗浄量は、i) ヌクレアーゼ不含水を用いた場合の10x洗
浄量と、続いて、ii) 40mM MOPS及び10mM EDTAを含むダイアフィ
ルトレーションバッファーを用いた場合の10x洗浄量と、続いて、iii) ヌクレア
ーゼ不含水を用いた場合の10x洗浄量だった。
【0156】
mRNAの完全性の指標として、スメア値を調査した。特に、次のスメア値が得られた
:TFF前における6.4%のスメアプレピーク及びTFF後の5.9%のスメアプレピ
ーク。スメアプレピーク面積は、mRNAに関係する加水分解生成物の比率を反映してい
る。したがって、Flagment Analyzer分析によって加水分解生成物を測
定することはできず、TFF精製がmRNAの完全性に影響しないことを示すことができ
た。
【0157】
通例の手段を用いた最適なTFFパラメータの判定の例示的な概要
下記は、どのようにして当業者が通例の手段の適用によって上記TFF法を最適するこ
とができるのかについての簡単な説明である。
【0158】
ステップ(Ia)
TFF流量は、TFFシステム内で沈殿したmRNA分子を再循環させ、フィルター表
面から沈殿したmRNA分子を押し流すのに十分なせん断速度をもたらすように調節する
ことができる。透過物用クランプを開くことにより、十分な透過流束を得ることができる
。酵素の除去は例えば、SDS-Page分析によって測定することができ、必要な洗浄
量は、通例の手段によって調節することができる(好ましくは1~20倍の洗浄量;より
好ましくは5~15倍;最も好ましくは9~11倍)。1洗浄量は、初期フィード体積に
等しいダイアフィルトレーション媒体、例えば、pH7の酢酸アンモニウムバッファーの
体積として規定されている。
【0159】
ステップ(Ib)
ステップ(Ia)に記載のものと同じパラメータを適用した。これにより、バッファー
は例えば、mRNA分子を分解し、バッファー(例えば、酢酸アンモニウム)を除去する
ために、ヌクレアーゼ不含水によって交換することができる。バッファーの除去は例えば
、導電性、UV測定によって測定することができ、必要な洗浄量は、通例の手段によって
調節することができる(好ましくは1~20倍の洗浄量;より好ましくは5~15倍;最
も好ましくは9~11倍)。1洗浄量は、初期フィード体積に等しいダイアフィルトレー
ション媒体、例えば、ヌクレアーゼ不含水の体積として規定されている。
【0160】
ステップ(IIa)
TFF流量は、TFFシステム内でmRNA分子を再循環させ、フィルター表面からm
RNA分子を押し流すのに十分なせん断速度をもたらすように調節することができる。透
過物用クランプを開くことにより、十分な透過流束を得ることができる。着目するmRN
Aの損失は例えば、透過物ラインにおけるUV測定(例えば、オンライン式/オフライン
式の測定)によってモニタリングすることができる。着目するmRNAの損失が観察され
る場合、流量及び/又はTMPは、着目するmRNAのさらなる損失が観察されなくなる
まで、通例の手段によって調節することができる。必要な洗浄量は、不純物(例えば、ア
ボーティブ転写産物及び/又は加水分解生成物)の量に応じた通例の手段によって調節す
ることができる(好ましくは1~20倍の洗浄量;より好ましくは5~15倍;最も好ま
しくは9~11倍)。1洗浄量は、初期フィード体積に等しいダイアフィルトレーション
媒体、例えば、pH7のMOPS-EDTAの体積として規定されている。
【0161】
ステップ(IIb)
ステップ(IIa)に記載のものと同じパラメータを適用した。これにより、バッファ
ーは例えば、バッファー、例えばMOPS-EDTAを除去するために、ヌクレアーゼ不
含水によって交換することができる。バッファーの除去は例えば、導電性、UV測定によ
って測定することができ、必要な洗浄量は、通例の手段によって調節することができる(
好ましくは1~20倍の洗浄量;より好ましくは5~15倍;最も好ましくは9~11倍
)。1洗浄量は、初期フィード体積に等しいダイアフィルトレーション媒体、例えば、ヌ
クレアーゼ不含水の体積として規定されている。
【0162】
TMP上昇実験(TMP excursion experiment)は、mRNA
分子精製に最適な条件を決定するのに役立ち得る。例示として、上記ステップ(IIa)
において使用されたダイアフィルトレーションバッファー中における1.0mg/mlの
濃度のターゲットmRNA分子を含む合計5mlのフィード溶液を、MWCOが100k
DaのmPESフィルターカラム及び15ml/minの流量を用いてダイアフィルトレ
ーションした。透過流束は、約50mbar~約150mbarの範囲の6つの異なるT
MP値において、ml/minを単位として測定された。図10のtdTomato m
RNAを見ればわかるように、最適なTMPは、15ml/minの流量では約50mb
arであると決定されたが、この最適なTMPは、実験設定に依存し得る。
【0163】
比較例
下記には、本明細書に開示の方法(手法1)によって得られた結果と、WO2015/
164773A1に開示の方法(手法2)によって得られた結果とを比較するために実施
された、一例が記載されている。
【0164】
手法1
インビトロ転写無修飾hCFTR mRNA(US9713626B2を参照;5mg
のペレット)に、長さ25ヌクレオチド(nt)及び長さ120ntのDNAオリゴヌク
レオチド、並びに長さ256ntのグルカゴン様ペプチド1分子(GLP-1 mRNA
分子(配列番号:1)をスパイクした。長さ25ntのDNAオリゴヌクレオチドを、μ
gを単位とするmRNAの総量に対して2.5%の比になるようにmRNAにスパイクし
た。長さ120ntのDNAオリゴヌクレオチドを、μgを単位とするmRNAの総量に
対して5.0%の比になるようにmRNAにスパイクした。加えて、長さ256ntのG
LP-1 mRNA分子を、μgを単位とするmRNA総量に対して16%の比になるよ
うにmRNAにスパイクした。
2.5M NHOAc(pH7)を使用して、スパイク済みのmRNA分子を沈殿さ
せた。
タンパク質、塩及びアボーティブ転写産物を除去するために、50mL/minの流量
及び約200~300mbarのTMP(mRNA濃度:0.5mg/mL)でMWCO
が500kDaのmPESを使用して、10x洗浄量の2.5M NHOAcによって
ステップ(Ia)を実施した。
NHOAcを除去し、mRNA分子を分解するために、50mL/minの流量及び
約200~300mbarのTMPでMWCOの50kDaのmPESを使用して、10
x洗浄量のヌクレアーゼ不含水によってステップ(Ib)を実施した(mRNA濃度:0
.5mg/mL)。
二価カチオン、アボーティブ転写産物、及び/又は加水分解生成物を除去するために、
15mL/minの流量及び約20mbarのTMPでMWCOが100kDaのmPE
Sを使用して、10x洗浄量の40mM MOPS及び10mM EDTAによってステ
ップ(IIa)を実施した(mRNA濃度:1.0mg/mL)。
MOPS-EDTAダイアフィルトレーションバッファーを除去するために、15mL
/minの流量及び約20mbarのTMPでMWCOが100kDaのmPESを使用
して、10x洗浄量のヌクレアーゼ不含水を用いてステップ(IIb)を実施した(mR
NA濃度:1.0mg/mL)。
得られたmRNA分子は、スパイク済みのオリゴヌクレオチドの除去に関しては、Fl
agment Analyzer/逆相HPLCを用いて調査し、mRNA分子の回収の
測定に関しては、Nanodropを用いて調査した。
【0165】
手法2(WO2015/164773A1に記載のもの)
インビトロ転写無修飾hCFTR mRNA(US9713626B2を参照;10.
26mgのペレット)に、長さ25ヌクレオチド(nt)及び長さ120ntのDNAオ
リゴヌクレオチド、並びに長さ256ntのGLP-1 mRNA分子(配列番号:1)
をスパイクした。長さ25ntのDNAオリゴヌクレオチドを、μgを単位とするmRN
Aの総量に対して2.5%の比になるようにmRNAにスパイクした。長さ120ntの
DNAオリゴヌクレオチドを、μgを単位とするmRNAの総量に対して5.0%の比に
なるようにmRNAにスパイクした。加えて、長さ256ntのGLP-1 mRNA分
子を、μgを単位とするmRNA総量に対して16%の比になるようにmRNAにスパイ
クした。
スパイク済みのmRNA分子を、i) 2.09M グアニジニウムチオシアネート、
0.26%ラウリルサルコシルナトリウム(sodium lauryl sarcos
yl)及び13.0mM クエン酸ナトリウムの最終濃度になるようにグアニジニウムチ
オシアネート、ラウリルサルコシルナトリウム及びクエン酸ナトリウムを使用し、ii)
約38%EtOHの最終濃度になるように無水エタノールを使用して沈殿させ、RTで
5分間インキュベートした。
約6mL/minの流量でMWCOが500kDaのmPESを使用して、約22mLの
沈殿したmRNAを用いてローディングを実施した(mRNA濃度:0.52mg/mL
)。
約6mL/minの流量でMWCOが500kDaのmPESを使用して、次の2つの
ステップを5回より多く繰り返すことによって洗浄を実施した(mRNA濃度:0.52
mg/mL)。ステップa) 5mLの2.09Mグアニジニウムチオシアネートと、0
.26%ラウリルサルコシルナトリウムと、13.0mM クエン酸ナトリウムと、約3
8%EtOHとを使用して洗浄すること、及びステップb) 5mLの80%エタノール
を使用して洗浄すること。
得られた固体状mRNAを5mLのヌクレアーゼ不含水で処理し、5~10分間(透過物
は閉じた状態で)再循環させて、確実に溶解させることによって、溶出(ステップC)を
実施した。mRNA分子が回収されなくなるまで、約6mL/minの流量及びMWCO
が500kDaのmPESを用いて、この手順を繰り返した(mRNA濃度:0.52m
g/mL)。
1mMクエン酸ナトリウム(pH6.4)を用いた場合の約5洗浄量、約6mL/min
の流量及びMWCOが100kDaのmPES(mRNA濃度:0.52mg/mL)を
用いて、透析(ステップD)を実施した。
得られたmRNA分子は、スパイク済みのオリゴヌクレオチドの除去に関しては、Fla
gment Analyzer/逆相HPLCを用いて調査し、mRNA分子の回収の測
定に関しては、Nanodropを用いて調査した。
【0166】
注意点として、上記2手法の場合、WO2015/164773A1に記載の方法に比
べて、次の変更がなされた。フィルターカラムにおけるせん断速度を一定に保つための線
形のダウンスケーリング後、最初に計画された流量は、6mL/minだった。しかしな
がら、この流量は、非常に低いTMPをもたらしており、つまりは、効果的な透過物流量
が0mL/minであり、ダイアフィルトレーションは可能ではなかった。そのため、か
なりの透過流束をもたらすのに十分なTMPが観察されるまで、流量を段階的に増大させ
た。したがって、ステップa)~d)のために使用される最終的な流量は、20~24m
L/minの範囲だった(1.1~1.25mL/minの透過物流量)。
【0167】
無精製のhCFTR mRNAサンプル及び精製されたhCFTR mRNAサンプル
を対象にして実施されたFlagment Analyzer分析により、表13に示さ
れた結果が得られた。各電気泳動図は、それぞれ、手法1に関しては図11に示されてお
り、手法2に関しては図12に示されている。
【表13】
【0168】
手法1の場合、スパイク済みのDNAオリゴヌクレオチド(25nt及び120nt)
の除去は、主に、ステップ(Ia)/(Ib)によって達成された。ステップ(IIa)
は、より長い加水分解生成物に相当する256ntのmRNAを除去するために必要とさ
れた。ステップ(IIb)は、256ntのmRNAをさらに除去せず、これにより、加
水分解生成物及び失敗作の配列(abortive sequence)を除去するため
には、EDTA等の強力キレート化剤を使用したステップ(IIa)が必須であることが
示された。
【0169】
手法2の場合、スパイク済みのDNAオリゴヌクレオチド(25nt及び120nt)
の除去は、ステップA~Cによって、部分的にのみ達成された。ステップDは、120n
tのDNAオリゴヌクレオチドを完全には除去しなかった。より長い加水分解生成物に相
当する256ntのmRNAは、TFF精製後のサンブル中にほぼ完全に残留していた。
したがって、1mMクエン酸ナトリウム(ステップD)を用いてダイアリシスを実施する
ことは、失敗作のmRNA分子に相当する長さ120ntのDNAオリゴヌクレオチド、
特に、より長い加水分解生成物に相当する長さ256ntのmRNAのさらなる除去に強
い影響を与えなかった。
【0170】
下記では、本明細書において使用された長さ256ntのmRNA配列が、さらに詳細
に記載されている。
配列番号:1
コドン最適化されたGLP-1配列
GGGAGACUGCCAAGAUGAAGAUCAUCCUGUGGCUGUGCGU
GUUCGGCCUGUUCCUGGCCACCCUGUUCCCCAUCAGCUGG
CAGAUGCCUGUGGAAAGCGGCCUGAGCAGCGAGGAUAGCG
CCAGCAGCGAGAGCUUCGCCAAGCGGAUCAAGAGACACGG
CGAGGGCACCUUCACCAGCGACGUGUCCAGCUACCUGGAA
GGCCAGGCCGCCAAAGAGUUUAUCGCCUGGCUCGUGAAGG
GCAGAGGCUGAGAAUU
T7プロモーターの部分、C:Ethris minimal 5’UTR、後続するさ
らなるUヌクレオチド、TISU 5’UTR、開始コドン、コドン最適化されたGLP
-1 mRNA配列、終始コドン、EcoRI制限部位の部分
ポリアデニル化されていないmRNAを、スパイク実験のために使用した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11-1】
図11-2】
図12
【配列表】
2024167197000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-08-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(Ia) 第1の溶液を使用して、沈殿したmRNA分子を含む懸濁液から沈殿したmRNA分子を精製するステップと、
(Ib) 第2の溶液を使用して、ステップ(Ia)において得られた精製済みの沈殿したmRNA分子を洗浄し、溶解させるステップと、
(IIa) キレート化剤を含む第3の溶液を使用して、ステップ(Ib)において得られた溶解したmRNA分子からmRNA分子を精製するステップと、続いて、
(IIb) 第4の溶液を使用して、ステップ(IIa)において得られた精製済みのmRNA分子を洗浄するステップと
を含む、mRNA分子を精製する方法であって、ステップ(Ia)~(IIb)が、タンジェントフローろ過を用いて実施される、方法。
【手続補正書】
【提出日】2024-09-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(Ia) 第1の溶液を使用して、沈殿したRNA分子を含む懸濁液から沈殿したRNA分子を精製するステップと、
(Ib) 第2の溶液を使用して、ステップ(Ia)において得られた精製済みの沈殿したRNA分子を洗浄し、溶解させるステップと、
(IIa) キレート化剤を含む第3の溶液を使用して、ステップ(Ib)において得られた溶解したRNA分子からRNA分子を精製するステップと、続いて、
(IIb) 第4の溶液を使用して、ステップ(IIa)において得られた精製済みのRNA分子を洗浄するステップと
を含む、RNA分子を精製する方法であって、ステップ(Ia)~(IIb)が、タンジェントフローろ過を用いて実施される、方法。
【請求項2】
(IIa)のキレート化剤は、キレート化されるカチオンにおいて少なくとも4つの配位座を有するキレート化剤であり、好ましくは、(IIa)のキレート化剤は、以下の表から選択される、請求項1に記載の方法。
【表1】
【請求項3】
キレート化剤が、EDTAである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第3の溶液が、1~10のpH、好ましくは3~9のpH、を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第3の溶液は、2-[ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール(Bis-Tris;pH範囲5.8~7.2)、N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸(ADA;pH範囲6.0~7.2)、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸(ACES;pH範囲6.1~7.5)、1,4-ピペラジンジエタンスルホン酸(PIPES;pH範囲6.1~7.5)、2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イルプロパン-1-スルホン酸(MOPSO;pH範囲6.2~7.6)、1,3-ビス(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)プロパン(Bis-Trisプロパン;pH範囲6.3~9.5)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(BES;pH範囲6.4~7.8)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS;pH範囲6.5~7.9)、2-[[1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イル]アミノ]エタンスルホン酸(TES;pH範囲6.8~8.2)、2-[4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル]エタンスルホン酸(HEPES;pH範囲6.8~8.2)、3-(N,N-ビス[2-ヒドロキシエチル]アミノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO;pH範囲7.0~8.2)、4-(N-モルホリノ)ブタンスルホン酸(MOBS;pH範囲6.9~8.3)、及び、3-[[1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イル]アミノ]-2-ヒドロキシプロパン-1-スルホン酸(TAPSO;pH範囲7.0~8.2)からなるリストから選択される緩衝液(それぞれのpH範囲は括弧内に示される)を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
第3の溶液が、MOPSバッファーを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(Ia)~(IIb)が、0℃~25℃の温度で実施される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(Ia)の前に、前記懸濁液が、RNA分子を沈殿させるために、グアニジンチオシアネート(GSCN)、酢酸アンモニウム(NH4OAc)、エタノール、塩化リチウム、酢酸ナトリウム、または塩化ナトリウム、好ましくは酢酸アンモニウム(NH4OAc)を使用して得られ、第1の溶液が、酢酸アンモニウムを含有する、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
第2の溶液が、水であり、及び/又は、第4の溶液が、水であり、若しくは塩化ナトリウム及び/若しくはクエン酸ナトリウムを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
NA分子が、タンジェントフローろ過後の保持液に含まれる、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(Ia)において得られた保持液が、ステップ(Ib)において、タンジェントフローろ過のためのフィード溶液として使用され、ステップ(Ib)において得られた保持液が、ステップ(IIa)において、フィード溶液として使用され、ステップ(IIa)において得られた保持液が、ステップ(IIb)において、フィード溶液として使用される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
懸濁液に含まれるRNA分子が、インビトロ転写によって得られる、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
精製されるRNA分子は、無修飾ヌクレオチド及び/又は修飾ヌクレオチドの存在下でのインビトロ転写によって生成され、好ましくは、修飾ヌクレオチドは以下の、
a)1-メチルアデノシン、2-メチルチオ-N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン、2-メチルアデノシン、2’-O-リボシルリン酸アデノシン、N6-メチル-N6-トレオニルカルバモイルアデノシン、N6-アセチルアデノシン、N6-グリシニルカルバモイルアデノシン、N6-イソペンテニルアデノシン、N6-メチルアデノシン、N6-トレオニルカルバモイルアデノシン、N6,N6-ジメチルアデノシン、N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン、1,2’-O-ジメチルアデノシン、N6,2’-O-ジメチルアデノシン、2’-O-メチルアデノシン、N6,N6,2’-O-トリメチルアデノシン、2-メチルチオ-N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、2-メチルチオ-N6-メチルアデノシン、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデノシン、2-メチルチオ-N6-トレオニルカルバモイルアデノシン、N6-2-メチルチオ-N6-トレオニルカルバモイルアデノシン、2-メチルチオ-N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、7-メチルアデノシン、2-メチルチオアデノシン、2-メトキシアデノシン、2’-アミノ-2’-デオキシアデノシン、2’-アジド-2’-デオキシアデノシン、2’-フルオロ-2’-デオキシアデノシン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、7-デアザアデノシン、7-デアザ-8-アザアデノシン、7-デアザ-2-アミノプリン、7-デアザ-8-アザ-2-アミノプリン、7-デアザ-2,6-ジアミノプリン、7-デアザ-8-アザ-2,6-ジアミノプリン、2-チオシチジン、3-メチルシチジン、N4-アセチルシチジン、5-ホルミルシチジン、N4-メチルシチジン、5-メチルシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、5-ヒドロキシシチジン、リシジン、N4-アセチル-2’-O-メチルシチジン、5-ホルミル-2’-O-メチルシチジン、5,2’-O-ジメチルシチジン、2-O-メチルシチジン、N4,2’-O-ジメチルシチジン、N4,N4,2’-O-トリメチルシチジン、イソシチジン、プソイドシチジン、プソイドイソシチジン、2-チオシチジン、2’-メチル-2’-デオキシシチジン、2’-アミノ-2’-デオキシシチジン、2’-フルオロ-2’-デオキシシチジン、5-ヨードシチジン、5-ブロモシチジン、2’-アジド-2’-デオキシシチジン、2’-アミノ-2’-デオキシシチジン、2’-フルオロ-2’-デオキシシチジン、5-アザシチジン、3-メチルシチジン、1-メチルプソイドイソシチジン、ピロロシチジン、ピロロプソイドイソシチジン、2-チオ-5-メチルシチジン、4-チオプソイドイソシチジン、4-チオ-1-メチルプソイドイソシチジン、4-チオ-1-メチル-1-デアザプソイドイソシチジン、1-メチル-1-デアザプソイドイソシチジン、2-メトキシシチジン、2-メトキシ-5-メチルシチジン、4-メトキシプソイドイソシチジン、4-メトキシ-1-メチルプソイドイソシチジン、ゼブラリン、5-アザゼブラリン、5-メチルゼブラリン、5-アザ-2-チオゼブラリン、2-チオゼブラリン、1-メチルグアノシン、N2,7-ジメチルグアノシン、N2-メチルグアノシン、2’-O-リボシルリン酸グアノシン、7-メチルグアノシン、ヒドロキシワイブトシン、7-アミノメチル-7-デアザグアノシン、7-シアノ-7-デアザグアノシン、N2,N2-ジメチルグアノシン、N2,7,2’-O-トリメチルグアノシン、N2,2’-O-ジメチルグアノシン、1,2’-O-ジメチルグアノシン、2’-O-メチルグアノシン、N2,N2,2’-O-トリメチルグアノシン、N2,N2J-トリメチルグアノシン、イソグアノシン、4-デメチルワイオシン、エポキシクエオシン、不完全修飾型(undermodified)ヒドロキシワイブトシン、メチル化不完全修飾型ヒドロキシワイブトシン、イソワイオシン、ペルオキシワイブトシン、ガラクトシルクエオシン、マンノシルクエオシン、クエオシン、アルカエオシン、ワイブトシン、メチルワイオシン、ワイオシン、7-アミノカルボキシプロピルデメチルワイオシン、7-アミノカルボキシプロピルワイオシン、7-アミノカルボキシプロピルワイオシンメチルエステル、7-デアザグアノシン、7-デアザ-8-アザグアノシン、6-チオグアノシン、6-チオ-7-デアザグアノシン、6-チオ-7-デアザ-8-アザグアノシン、7-メチルグアノシン、6-チオ-7-メチルグアノシン、7-メチルイノシン、6-メトキシグアノシン、1-メチルグアノシン、8-オキソグアノシン、7-メチル-8-オキソグアノシン、1-メチル-6-チオグアノシン、N2-メチル-6-チオグアノシン、N2,N2-ジメチル-6-チオグアノシン、N1-メチルグアノシン、2’-アミノ-3’-デオキシグアノシン、2’-アジド-2’-デオキシグアノシン、2’-フルオロ-2’-デオキシグアノシン、2-チオウリジン、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン、3-メチルウリジン、4-チオウリジン、5-メチル-2-チオウリジン、5-メチルアミノメチルウリジン、5-カルボキシメチルウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウリジン、5-ヒドロキシウリジン、5-メチルウリジン、5-タウリノメチルウリジン、5-カルバモイルメチルウリジン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジンメチルエステル、ジヒドロウリジン、5-メチルジヒドロウリジン、5-メチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)-2’-O-メチルウリジンメチルエステル、5-(イソペンテニルアミノメチル)ウリジン、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2-チオウリジン、3,2’-O-ジメチルウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチル-2’-O-メチルウリジン、5-カルバモイルヒドロキシメチルウリジン、5-カルバモイルメチル-2’-O-メチルウリジン、5-カルバモイルメチル-2-チオウリジン、5-メトキシカルボニルメチル-2’-O-メチルウリジン、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2’-O-メチルウリジン、5,2’-O-ジメチルウリジン、2’-O-メチルウリジン、2’-O-メチル-2-チオルジン、2-チオ-2’-O-メチルウリジン、ウリジン5-オキシ酢酸、5-メトキシカルボニルメチルウリジン、ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル、5-メトキシウリジン、5-アミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-メチルアミノメチル-2-セレノウリジン、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウリジン、5-タウリノメチル-2-チオウリジン、プソイドウリジン、1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)プソイドウリジン、1-メチルプソイドウリジン、3-メチルプソイドウリジン、2’-O-メチルプソイドウリジン、5-ホルミルウリジン、5-アミノメチル-2-ゲラニルウリジン、5-タウリノメチルウリジン、5-ヨードウリジン、5-ブロモウリジン、2’-メチル-2’-デオキシウリジン、2’-アミノ-2’-デオキシウリジン、2’-アジド-2’-デオキシウリジン、2’-フルオロ-2’-デオキシウリジン、イノシン、1-メチルイノシン、1,2’-O-ジメチルイノシン、2’-O-メチルイノシン、5-アザウリジン、2-チオ-5-アザウリジン、4-チオプソイドウリジン、2-チオプソイドウリジン、5-カルボキシメチルウリジン、1-カルボキシメチルプソイドウリジン、5-プロピニルウリジン、1-プロピニルプソイドウリジン、1-タウリノメチルプソイドウリジン、5-タウリノメチル-2-チオウリジン、1-タウリノメチル-4-チオウリジン、5-メチルウリジン、1-メチルプソイドウリジン、4-チオ-1-メチルプソイドウリジン、2-チオ-1-メチルプソイドウリジン、1-メチル-1-デアザプソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザプソイドウリジン、ジヒドロプソイドウリジン、2-チオジヒドロウリジン、2-チオジヒドロプソイドウリジン、2-メトキシウリジン、2-メトキシ-4-チオウリジン、4-メトキシプソイドウリジン、4-メトキシ-2-チオプソイドウリジン、1,2’-O-ジメチルアデノシン、1,2’-O-ジメチルグアノシン、1,2’-O-ジメチルイノシン、2,8-ジメチルアデノシン、2-メチルチオメチレンチオ-N6-イソペンテニルアデノシン、2-ゲラニルチオウリジン、2-リシジン、2-メチルチオ環状N6-トレオニルカルバモイルアデノシン、2-メチルチオ-N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、2-メチルチオ-N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン、2-メチルチオ-N6-トレオニルカルバモイルアデノシン、2-セレノウリジン、2-チオ-2’-O-メチルウリジン、2’-O-メチルアデノシン、2’-O-メチルシチジン、2’-O-メチルグアノシン、2’-O-メチルイノシン、2’-O-メチルプソイドウリジン、2’-O-メチルウリジン、2’-O-メチルウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル、2’-O-リボシルアデノシンホスフェート、2’-O-リボシルグアノシンホスフェート、3,2’-O-ジメチルウリジン、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)-5,6-ジヒドロウリジン、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)プソイドウリジン、5,2’-O-ジメチルシチジン、5,2’-O-ジメチルウリジン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)-2’-O-メチルウリジンメチルエステル、55-(イソペンテニルアミノメチル)-2’-O-メチルウリジン、5-アミノメチル-2-ゲラニルチオウリジン、5-アミノメチル-2-セレノウリジン、5-アミノメチルウリジン、5-カルバモイルメチル-2’-O-メチルウリジン、5-カルボキシヒドロキシメチルウリジン、5-カルボキシメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-ゲラニルチオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-セレノウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチル-2’-O-メチルウリジン、5-シアノメチルウリジン、5-ホルミル-2’-O-メチルシチジン、5-メトキシカルボニルメチル-2’-O-メチルウリジン、5-メチルアミノメチル-2-ゲラニルチオウリジン、7-アミノカルボキシプロピルデメチルワイオシン、7-メチルグアノシン、8-メチルアデノシン、N2,2’-O-ジメチルグアノシン、N2,7,2’-O-トリメチル
グアノシン、N2,7-ジメチルグアノシン、N2,N2,2’-O-トリメチルグアノシン、N2,N2,7-トリメチルグアノシン、N2,N2,7-トリメチルグアノシン、N4,2’-O-ジメチルシチジン、N4,N4,2’-O-トリメチルシチジン、N4,N4-ジメチルシチジン、N4-アセチル-2’-O-メチルシチジン、N6,2’-O-ジメチルアデノシン、N6,N6,2’-O-トリメチルアデノシン、N6-ホルミルアデノシン、N6-ヒドロキシメチルアデノシン、アグマチジン、2-メチルチオ環状N6-トレオニルカルバモイルアデノシン、グルタミルクエオシン、任意のヌクレオチドに付加されたグアノシン、グアニリル化された5’末端、ヒドロキシ-N6-トレオニルカルバモイルアデノシン、
最も好ましくは、プソイドウリジン、N1-メチルプソイドウリジン、2’-フルオロ-2’-デオキシシチジン、5-ヨードシチジン、5-メチルシチジン、2-チオウリジン、5-ヨードウリジン、及び/又は5-メチルウリジン、並びに/又は、
b)重水素や三重水素などの水素同位体、及び、炭素、酸素、窒素、リンを含む他の元素の同位体から選択される同位体を含む、ヌクレオチド、
からなるリストから選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
NA分子を脱リン酸化及び/又はポリアデニル化及び/又はポストキャッピングすることをさらに含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(Ib)において得られたRNA分子を脱リン酸化することと、続いて、ステップ(Ia)~(IIb)を実施することと、続いて、得られたRNA分子をポリアデニル化することと、続いて、ステップ(Ia)~(IIb)を実施することとを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(Ia)の場合は、300kDa~0.65μmの分子量カットオフを有するフィルターメンブレンが、タンジェントフローろ過のために使用され、及び/又はステップ(Ib)及び(IIb)の場合は、1kDa~0.65μmの分子量カットオフを有するフィルターメンブレンが、使用され、及び/又はステップ(IIa)の場合は、少なくとも50kDa、好ましくは少なくとも70kDa、の分子量カットオフを有するフィルターメンブレンが、使用される、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
第1、第2、第3及び/又は第4の溶液のいずれかのダイアフィルトレーション量が、ステップ(Ia)の懸濁液の体積に対して少なくとも1倍である、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
(a) 請求項1から17のいずれか一項に記載の方法によってRNA分子を精製することと、
(b) このようにして得られたRNA分子を医薬組成物中に配合することと
を含む、医薬組成物を製造するための方法。
【請求項19】
請求項1~17のいずれか一項に記載の方法によって得られた、精製されたRNA分子。
【請求項20】
請求項1~17のいずれか一項に記載の方法によって精製されたRNA分子を含む、医薬組成物。
【外国語明細書】