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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167224
(43)【公開日】2024-12-03
(54)【発明の名称】物質の分離保管のための薬剤貯蔵部
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/19 20060101AFI20241126BHJP
【FI】
A61M5/19
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024128668
(22)【出願日】2024-08-05
(62)【分割の表示】P 2021537974の分割
【原出願日】2019-12-20
(31)【優先権主張番号】18248210.9
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ウィンザー, クヌーズ スキフター
(57)【要約】      (修正有)
【課題】2つ以上の物質を送達するための注射装置で使用するための薬剤貯蔵部を提供する。
【解決手段】遠位端部分4と開放近位端部7との間に延在する、貯蔵部本体2と、出口端部と近位端部との間で、貯蔵部本体内に使用前位置に配設された前部ピストン8と、前部ピストンと近位端部との間で、貯蔵部本体内に配設された後部ピストン9と、出口端部、貯蔵部本体の第1の部分、および前部ピストンによって画定された前部チャンバー10であって、前部チャンバーが、第1の液体物質を保持する、前部チャンバーと、前部ピストン、貯蔵部本体の第2の部分、および後部ピストンによって画定された後部チャンバー11であって、後部チャンバーが、近位ガス体積12を含む第2の液体物質19を保持する、後部チャンバーと、前部ピストンの前進位置で、前部ピストンを通過する流体流を可能にする、バイパスチャンネル3と、を含む、薬剤貯蔵部1を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤貯蔵部(1)であって、
-出口端部(4)と近位端部(7)との間に延在している、貯蔵部本体(2)と、
-前記出口端部(4)と前記近位端部(7)との間で、前記貯蔵部本体(2)内に使用前位置に配設された前部ピストン(8)と、
-前記前部ピストン(8)と前記近位端部(7)との間で、前記貯蔵部本体(2)内に配設された後部ピストン(9)と、
-前記出口端部(4)、前記貯蔵部本体(2)の第1の部分、および前記前部ピストン(8)によって画定された遠位チャンバー(10)であって、前記遠位チャンバー(10)が、第1の内容物(18)を保持する、遠位チャンバー(10)と、
-前記前部ピストン(8)、前記貯蔵部本体(2)の第2の部分、および前記後部ピストン(9)によって画定された近位チャンバー(11)であって、前記近位チャンバー(11)が、近位液体体積(19)を含む第2の内容物(12、19)を保持する、近位チャンバー(11)と、
-前記貯蔵部本体(2)内の前記前部ピストン(8)の前進位置で、前記前部ピストン(8)を通過する流体流を可能にする、バイパス手段(3)と、を含み、
前記第2の内容物(12、19)が、所定の最小値を有する体積範囲内にある、近位ガス体積(12)をさらに含む、薬剤貯蔵部(1)。
【請求項2】
前記所定の最小値が、15μlである、請求項1に記載の薬剤貯蔵部。
【請求項3】
前記体積範囲が、所定の閉体積範囲である、請求項1に記載の薬剤貯蔵部。
【請求項4】
前記所定の閉体積範囲が、[15μl;200μl]である、請求項3に記載の薬剤貯蔵部。
【請求項5】
前記所定の閉体積範囲が、[20μl;50μl]である、請求項3に記載の薬剤貯蔵部。
【請求項6】
前記第1の内容物(18)が、遠位液体体積および遠位ガス体積を含み、前記遠位ガス体積が、前記近位ガス体積(12)よりも小さい、請求項1~5のいずれか一項に記載の薬剤貯蔵部。
【請求項7】
前記近位ガス体積(12)が、空気を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の薬剤貯蔵部。
【請求項8】
前記近位ガス体積(12)が、不活性ガスを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の薬剤貯蔵部。
【請求項9】
前記出口端部(4)に固定的に配設されており、かつ前記遠位チャンバー(10)と流体的に接続されている、中空針(5)をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の薬剤貯蔵部。
【請求項10】
薬剤送達装置(20)であって、
-請求項1~9のいずれか一項に記載の薬剤貯蔵部(1)と、
-前記近位チャンバー(11)を加圧するための用量排出構造体であって、用量排出構造体が、前記後方ピストン(9)に排出力を伝達するように適合された作動可能なピストンロッド(30)を含む、用量排出構造体と、を含む、薬剤送達装置(20)。
【請求項11】
基準軸に沿って延在している、ハウジング(21)をさらに含み、前記用量排出構造体が、前記ピストンロッド(30)と動作可能に連結されており、かつ前記ピストンロッド(30)を前記出口端部(4)に向かって付勢するように解放可能なエネルギーを保存するよう適合されている、ばね部材(65)によって動力を与えられる、請求項10に記載の薬剤送達装置。
【請求項12】
-有効化されると、前記ばね部材(65)を張力がかけられた状態に保持する、保持構造体(24、26、27)と、
-前記ハウジング(21)の一部分に沿って軸方向に延在しており、かつ解放構造体(51、53)を含む、スリーブ部材(50)と、をさらに含み、
前記スリーブ部材(50)が、前記保持構造体(24、26、27)が使用可能である、第1の位置から、前記保持構造体(24、26、27)が前記解放構造体(51、53)によって不能にされ、結果として、保存されたエネルギーが前記ばね部材(65)から解放される、第2の位置へと、前記ハウジング(21)および前記保持構造体(24、26、27)に対して近位に変位するように構成されている、請求項11に記載の薬剤送達装置。
【請求項13】
バイパスセクション(3)、閉じた出口端部(4)、および開放端部(7)を有する、略円筒形の本体(2)を含む、薬剤貯蔵部(1)を充填する方法であって、
(i)前記開放端部(7)が上向きに向いた状態で、前記薬剤貯蔵部(1)を少なくとも実質的に垂直に配設することと、
(ii)前記バイパスセクション(3)を含む、前記略円筒形の本体(2)の第1の内部部分が、前記開放端部(7)が上向きに向いた状態で、前記薬剤貯蔵部(1)の垂直位置で液体によって覆われるように、前記開放端部(7)を通して前記薬剤貯蔵部(1)内に第1の液体体積(18)を取り入れることと、
(iii)第1の準大気圧環境(100)において、第1のピストン(8)を、前記略円筒形の本体(2)内に、前記第1の液体体積(18)の自由表面に少なくとも実質的に隣接する第1のピストン位置まで挿入し、それによって、前記第1の液体体積(18)を保持する前部チャンバー(10)を確立することと、
(iv)第2の液体体積(19)を、前記開放端部(7)を通して前記薬剤貯蔵部(1)内に取り入れることと、
(v)周囲のガスの第2の準大気圧環境(200)において、第2のピストン(9)を、前記略円筒形の本体(2)内に、第2のピストン位置まで挿入し、それによって、後部チャンバー(11)を確立することであって、前記第2のピストン位置が、前記後部チャンバー(11)が前記第2の液体体積(19)を保持し、後部チャンバーガス体積(12)が、所定の最小値を有する体積範囲内にあるように決定される、確立することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療使用のための貯蔵部に関し、特に、2つ以上のチャンバーを有する貯蔵部に関する。
【背景技術】
【0002】
一部の医療治療領域内では、少なくとも2つの薬剤の併用投与を含む併用療法は、相乗的または相加的効果のために有利である。例えば、糖尿病ケアにおいて、2型糖尿病の管理では、特定のインスリンおよびglp-1産物の同時使用は、対象においてHbA1cレベルを減少させ、それによって、血糖管理を改善することが示されている。
【0003】
多くの薬剤は、身体内で有効であるために非経口的に投与されなければならず、これらのいくつか、例えば、インスリンおよびglp-1は、1回以上の用量を毎日皮下に送達することを必要とする場合がある。皮下薬剤送達は、多くの人々が皮膚を通して注射針を挿入するという考えを嫌うため、しばしば不快感と関連する。針恐怖症にさえ苦しんでいる人の数は不明であり、これらの人々は、特に複数回の毎日の注射療法から逃れたいという強い願望を持っている。
【0004】
したがって、1つの魅力的なシナリオは、単一の注射針を介して、薬剤を同時に、または実質的に同時に投与することによって、必要な皮膚浸透の数を減少させることである。一部の事例では、これは、活性成分の共製剤化によって達成可能であり、共製剤化生成物は、従来の注射装置を使用して投与される。他の場合では、例えば、活性成分が共製剤に適さない場合、個々の物質は、専用の発現手段の使用によって、単一の注射針を介して同時または連続的に発現され得る、二重チャンバーまたはマルチチャンバー、貯蔵装置の別個のチャンバーに格納される。
【0005】
特許文献1は、固定して取り付けられた皮下針を有するカートリッジを有する自動注射器の形態の二重チャンバー貯蔵装置の実施例を開示している。装置の使用前の状態では、カートリッジは、前方液体医薬を前方チャンバーに、および後方液体医薬を後方チャンバーに保持する。2つの液体は、中間ピストンによって分離され、後部チャンバーは、後方ピストンによって近位に封止される。使用中に、応力を受けたばねの放出に応答して、プランジャーを前方に付勢し、後方ピストンを押し、後方液体医薬を加圧して、後方ピストンの動きを中間ピストンに伝達する。最終的に、ばねがプランジャーに前方バイアスを提供し続けるにつれて、これは、皮下針を介して前方液体医薬の排出をもたらし、その後、遠位に配置されるバイパスセクションを介して後方液体医薬の排出をもたらす。
【0006】
特許文献2は、関連するIV注入針の適切な挿入を確実にするための吸引処置を可能にするピストンカップリング配設を有する手動操作の混合装置の形態の二重チャンバー貯蔵装置の実施例を開示している。装置の使用前の状態では、乾燥薬剤または液体が前部チャンバーに保持されており、液体が後部チャンバーに保持されている。2つの物質は、前部ピストンによって分離され、後部チャンバーは、ピストンロッドが延在する後部ピストンによって近位に封止される。使用中、ピストンロッドは手動で前進し、後部ピストンを切断し、後部チャンバー液体を加圧して、後部ピストンの動きを前部ピストンに伝達する。ユーザーがピストンロッドを前方に押し続けると、前部ピストンは、バイパスセクションに入り、圧力が後部チャンバー液体をバイパスに押し込み、前部ピストンを通過して前部チャンバーに入るため、動かなくなる。前部チャンバーでは、後部チャンバーが圧縮するにつれて2つの物質が混合する。後部ピストンが最終的に前部ピストンに到達し、物質が完全に混合されると、ユーザーは、ピストンロッドの継続的な前進によって混合物質を排出することができる。
【0007】
こうした装置の一般的な欠点は、保管中、経時的に、ピストン材料が貯蔵材料に接着する傾向にあるという事実であり、これは、薬剤混合および/または排出を開始するために、著しい静電気摩擦を克服しなければならないことを意味する。後部チャンバー内の液体の圧縮不能性により、2つのピストンは、前部ピストンがバイパスセクションに到達するまで同時に移動する。結果として、この静止摩擦を克服するために必要な力は、実際には、個々のピストンを解放するために必要な力の総和である。
【0008】
手動で駆動されるピストンロッドの場合、ピストンが解放されているときの静止摩擦から運動摩擦への突然のシフトは、ユーザーが力入力を大幅に減少させることによって突然の加速を補償しようと試みるときに、ピストンの急激な前方運動を引き起こす可能性が高い。不快なユーザー体験であるだけでなく、実際には、後部チャンバー液体を前部チャンバーに過度に高速で移送することにつながる場合がある。前部チャンバーが乾燥粉末を担持して再構成される場合、移送プロセスは、望ましくない発泡にさえつながり得る。
【0009】
特許文献1の自動注射器のようなばね駆動式注射装置に関連して、十分な解放力の可用性を確実にするために、ばねは比較的強力である必要がある。これの欠点は、摩擦が動的になると、実際の薬物排出に利用できる動力が非常に高くなり、不快なほど高速な送達につながる可能性があることである。さらに、強力なばねは、予荷重がかけられた状態での潜在的な中期間または長期間の保管期間中にクリープまたは破損を避けるために、より強力な接合注射装置部品を必要とし、注射装置のコストおよび重量の両方を増加させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,394,863号(Survival Technology,Inc.)
【特許文献2】国際特許公開公報第2010/139793号(Novo Nordisk A/S)
【発明の概要】
【0011】
先行技術の少なくとも1つの欠点を除去するかもしくは低減させること、または先行技術の解決策に対する有用な代替案を提供することが、本発明の目的である。
【0012】
特に、本発明の目的は、2つ以上の物質を送達するための注射装置で使用するための薬剤貯蔵部を提供することであり、ここで、薬剤貯蔵部内で直列に配設されたピストンは、低減された力の適用によって移動し得る。
【0013】
本発明のさらなる目的は、比較的小さな力入力に基づいて、単一の針インターフェースを介して複数の物質を送達するための薬剤送達装置を提供することである。
【0014】
また、本発明の目的は、複数の初期段階で分離された物質の送達のための費用効果の高い自動注射装置を提供することである。
【0015】
本発明のなおもさらなる目的は、2つ以上のチャンバーを有する薬剤貯蔵部を充填するための方法を提供することである。
【0016】
本発明の開示では、上記の目的のうちの1つ以上に対処し、かつ/または、以下の文章から明らかである目的に対処する、態様および実施形態が記載される。
【課題を解決するための手段】
【0017】
一態様では、本発明は、請求項1に記載の薬剤貯蔵部を提供する。
【0018】
したがって、近位端部と出口端部との間に基準軸に沿って延在している、貯蔵部本体と、近位端部と出口端部との間で、貯蔵部本体内に使用前位置に配設された前部ピストンと、前部ピストンと近位端部との間で、貯蔵部本体内に配設された後部ピストンと、出口端部、貯蔵部本体の第1の部分、および前部ピストンによって画定された遠位チャンバーと、前部ピストン、貯蔵部本体の第2の部分、および後部ピストンによって画定された近位チャンバーと、前部ピストンの特定の前進位置(すなわち、使用前位置の遠位にある)で、前部ピストンを通過する流体流を可能にする、バイパス手段と、を含む、薬剤貯蔵部が提供されている。遠位チャンバーは、例えば、遠位液体体積または乾燥粉末を含む、第1の内容物を保持しており、近位チャンバーは、近位液体体積および近位ガス体積を含む、第2の内容物を保持している。近位ガス体積は、非液体結合ガス、すなわち、液体内の分子レベルに組み込まれていない、予め設定された最小値を有する体積範囲内にある、遊離ガスの体積である。
【0019】
非液体結合ガスは、近位液体体積の表面部分と近位チャンバーの表面部分との間のガス体積として、または近位液体体積中のガス気泡として存在する。非液体が結合した近位ガス体積であることは、第2の内容物が液体のみからなる場合とは対照的に、第2の内容物が圧縮可能になるという意味で、近位チャンバーに弾性を提供する。これは、2つのピストンが同時にではなく、順次解放されるという効果を有する。十分な大きさの力が後部ピストンに加えられると、後部ピストンは、貯蔵部本体の内壁から解放され得、それによって、後部ピストンの移動に抵抗する力は、加えられた力が第2の内容物を介して前部ピストンに伝達される前に、静止摩擦力からより低い運動摩擦力にシフトすることになる。したがって、2つのピストンを動かすために必要な解放力は、第2の内容物が圧縮不能であり、2つの静止摩擦力を同時に克服しなければならない場合よりも低い。
【0020】
結果として、薬剤送達装置で使用する場合、薬剤貯蔵部は、薬剤排出動作中により低い活性化力を提供する。自動注射装置については、例えば、これは、薬剤排出機構を駆動するために、より力の弱いばねが採用され得ることを意味する。より力の弱いばねは、予め装填された状態では、接合装置構成要素に負担をかけることが少なくなり、クリープもしくは破損のリスクを低減し、ならびに/または変形抵抗性材料および/もしくはもしくは構成の少ない使用を可能にし、それによって、薬剤送達装置のコストを削減する。
【0021】
近位ガス体積がある体積範囲の所定の、または予め設定された最小値は、上述の効果を得るために必要なガスの量を反映する。この最小値は、貯蔵部本体の横方向寸法および後部ピストンの設計に依存し得る。ISO11040-4(2015):プレフィルドシリンジ-パート4:注射用およびすぐに使用可能な充填可能シリンジ用のガラスバレル、(例えば、ISO11040-5(2012):プレフィルドシリンジ-パート5:注射用のプランジャーストッパーに規定されるような外側構成を有するゴムピストンを採用する)に規定される貯蔵部を含む、薬剤の皮下自己投与によって実現されるような、注射または注入療法で一般的に使用されるタイプおよびサイズの薬剤貯蔵部について、発明者らは、近位チャンバーに十分な弾性を提供するために、15μlの最小ガス体積(例えば、6,35mmの内径を有する標準1ml長のPFSに対して)が必要であることを確立し、これにより、2つのピストンの連続的な解放が可能となった。
【0022】
体積範囲は、所定の、または事前設定された最大値をさらに有してもよく、この場合、体積範囲は、所定の閉体積範囲である。最大値は、例えば、最終製品の物理的寸法に関して、近位液体体積および/または製造業者の特定の実用的な考慮事項で安定性の問題を引き起こさないことが保証される最大量のガスを反映し得る。
【0023】
薬剤貯蔵部の物理的サイズに対する要件を満たす最大ガス体積は、例えば、200μl、100μl、75μl、または50μlであり得る。
【0024】
最適な体積範囲は、前述の要件、ならびに特定の近位ガス体積によって生成される効果を考慮して確立または近似され得る。発明者らは、一部の事例では、所定の体積範囲[15μl;200μl]が好ましいが、他の事例では、例えば、所定の体積範囲[20μl;50μl]が好ましいと決定した。
【0025】
本発明の一部の実施形態では、第1の内容物は、遠位液体体積および遠位(非液体結合)ガス体積を含み、ここで、遠位ガス体積は、近位ガス体積よりも小さい。
【0026】
遠位液体体積は、第1の薬剤物質を含有してもよく、または含んでもよく、近位液体体積は、第2の薬剤物質を含有してもよく、または含んでもよい。
【0027】
本発明の一部の実施形態では、近位ガス体積は、空気を含む。これは、貯蔵部本体が従来のクリーンルーム環境で充填され得るため、薬剤貯蔵部の製造に関連して特に魅力的である。
【0028】
本発明の他の実施形態では、近位ガス体積は、近位液体体積との望ましくない化学反応のリスクを減少させるために、不活性ガスを含む。これらの実施形態では、貯蔵部本体は、不活性ガスのクリーンルーム環境で充填されてもよい。
【0029】
薬剤貯蔵部は、例えば、貫通可能な隔壁が出口端部を閉じる、カートリッジタイプの貯蔵部であってもよく、またはシリンジタイプの貯蔵部であってもよい。後者のケースでは、薬剤貯蔵部は、杭打ち中空針、すなわち、出口端部に固定的に配設され、かつ遠位チャンバーと流体的に接続される中空針をさらに含み得る。中空針は、取り外し可能なプラグによって封止されてもよい。
【0030】
バイパス手段は、例えば、US4,394,863に開示されているものなどの二重チャンバー医薬容器から従来的に知られているような、バイパスチャネルを含んでもよい。
【0031】
本発明の別の態様では、上記に記載されるような薬剤貯蔵部を含む薬剤送達装置が、提供されている。薬剤送達装置は、近位チャンバーを加圧するための用量排出構造体をさらに含み得る。用量排出構造体は、排出力を後部ピストンに伝達するよう適合された作動可能なピストンロッドを含んでもよい。
【0032】
ピストンロッドは、後部ピストンに取り付けられてもよく、または取り付け可能であり、薬剤送達装置のユーザーによる直接的な操作に適合されてもよい。あるいは、薬剤貯蔵部は、例えば、薬剤送達装置のハウジングに組み込まれていてもよく、ピストンロッドは、ハウジング内の他の構成要素を介して動作可能であってもよい。
【0033】
用量排出構造体は、ピストンロッドと動作可能に連結されており、かつピストンロッドを出口端部に向かって付勢するように解放可能なエネルギーを保存するよう適合されている、ばね部材によって動力を与えられ得る。これにより、最小限のユーザーの労力で薬剤排出を実行することができる、自動薬剤送達装置が提供される。
【0034】
薬剤送達装置は、有効化されると、ばね部材を張力がかけられた状態に保持する、保持構造体と、ハウジングの一部分に沿って軸方向に延在しており、かつ解放構造体を含む、スリーブ部材と、をさらに含んでもよく、スリーブ部材は、保持構造体が使用可能である、第1の位置から、保持構造体が解放構造体によって不能にされ、結果として、保存されたエネルギーがばね部材から解放される、第2の位置へと、ハウジングおよび保持構造体に対して近位に変位するように構成されている。
【0035】
第1の位置では、スリーブ部材は、出口端部に配設されている中空針が、その遠位端部分によって覆われるように、出口端部を超えてある距離だけ延在していてもよい。それによって、スリーブ部材は、結合された針シールドとして機能し、張力がかけられたばねをトリガし得る。
【0036】
したがって、単純にスリーブを皮膚上に置き、およびハウジングを皮膚に向かって押すだけで、保持構造を不能にし、それによって、ばねからの保存されたエネルギーの解放を引き起こし、そのエネルギーが、ハウジングに対してピストンロッドを遠位方向に付勢するために使用されることになるスリーブ部材の第2の位置への移動の間に、解放構造が、後部ピストンに力を加えて、それにより、第2の内容物の圧縮および貯蔵部本体の内壁からの後部ピストンの解放と、第2の内容物のさらなる加圧および貯蔵部本体の内壁からの前部ピストンの解放と、前部ピストンが特定の前進位置に到達するまでの近位チャンバーの軸方向の変位であって、その間に、第1の内容物の一部分が出口端部を通して排出され得る、軸方向の変位と、第2の内容物がバイパス手段を介して前部ピストンを通過するのに従う近位チャンバーの圧縮と、最終的に遠位チャンバーが空になること、または実質的に空になることと、を含む、段階的なイベントを引き起こすので、ユーザーは自動注射を開始することになる。
【0037】
特に、これを達成するために必要なばねのサイズおよび動力は、上述のように、近位ガス体積の初期段階の存在により、従来技術の薬剤貯蔵部よりも小さくてもよい。
【0038】
本発明のさらなる態様では、バイパスセクション、閉じた出口端部、および開放端部を有する、略円筒形の本体を含む、薬剤貯蔵部を充填する方法が、提供されている。方法は、(i)開放端部が上向きに向いた状態で、薬剤貯蔵部を少なくとも実質的に垂直に配設することと、(ii)バイパスセクションを含む、略円筒形の本体の第1の内部部分が、開放端部が上向きに向いた状態で、薬剤貯蔵部の垂直位置で液体によって覆われるように、開放端部を通して薬剤貯蔵部内に第1の液体体積を取り入れることと、(iii)第1の準大気圧環境において、第1のピストンを、略円筒形の本体内に、第1の液体体積の自由表面に少なくとも実質的に隣接する第1のピストン位置まで挿入し、それによって、第1の液体体積を保持する前部チャンバーを確立することと、(iv)第2の液体体積を、開放端部を通して薬剤貯蔵部内に取り入れることと、(v)周囲のガスの第2の準大気圧環境において、第2のピストンを、略円筒形の本体内に、第2のピストン位置まで挿入し、それによって、後部チャンバーを確立することであって、第2のピストン位置が、後部チャンバーが第2の液体体積を保持し、後部チャンバーガス体積が、所定の最小値を有する体積範囲内にあるように決定される、確立することと、を含む。
【0039】
第1の準大気圧環境は、第1のピストンを第1の液体体積の自由表面に向かって引き寄せる陰圧を前部チャンバー内に確立して、目下の前部チャンバーガス体積を最小化することを確実にする。
【0040】
第2の準大気圧環境は、例えば、空気または不活性ガスである第2の液体体積の構成に従って、製造業者によって選択される周囲ガス内に確立され得る。後者は、第2の液体体積との望ましくない化学反応のリスクを最小化するように選択されてもよい。
【0041】
第2の準大気圧環境は、陰圧が後部チャンバー内に確立されることを確実にし、この陰圧は、略円筒形の本体内の所望の位置に第2のピストンを配置して、それにより、第1のピストンの位置および取り入れられた第2の液体体積の点から、所定の最小量でガスの存在を提供するために制御され得る。
【0042】
本発明の一部の例示的な実施形態では、所定の最小値は、15μlである。本発明の他の例示的な実施形態では、所定の最小値は、20μlである。
【0043】
ステップ(v)では、第2のピストン位置は、後部チャンバーのガス体積が所定の閉体積範囲内にあるように、すなわち、体積範囲が所定の最大値をさらに有するように決定され得る。
【0044】
本発明の一部の例示的な実施形態では、所定の最大値は、200μlである。本発明の他の例示的な実施形態では、所定の最大値は、50μlである。
【0045】
第1のピストンおよび/または第2のピストンは、挿入管が開放端部を通して、略円筒形の本体との物理的接触を確立することなく略円筒形の本体内に取り入れられ得るように、略円筒形の本体の内径よりも小さい外径を有する挿入管を使用して、所望のピストン位置に配設され得る。問題となっているピストンは、挿入管内で摺動するように前もって配設されており、挿入管は、所望のピストン位置の近位の位置まで略円筒形の本体内に挿入され、その上で、ピストンは、遠位挿入管開口部から滑動し、略円筒形の本体の内部壁部分と封止接触する。
【0046】
注射または注入療法で使用される多くの薬剤貯蔵器は、ピストンとの摩擦接合を改善するためにシリコン化内部表面を有する。挿入管を使用することにより、ピストンは、薬剤貯蔵部の内部表面に沿って摺動して、結果として、シリコーンを擦り取ることなく、挿入され得る。シリコーンを擦り取ることは、経時的に液体薬剤物質と相互作用し、沈殿を引き起こし得、その場合、その製品は役に立たなくなる。
【0047】
疑義を避けるために、本文脈において、用語「遠位」および「近位」は、薬剤送達装置若しくは針ユニットにおける位置または薬剤送達装置若しくは針ユニットに沿った方向を指し、「遠位」は薬剤出口端部を指し、また「近位」は薬剤出口端部の反対側の端部を指す。
【0048】
本明細書において、特定の態様または特定の実施形態(例えば、「態様」、「第1の態様」、「一実施形態」、「例示的な実施形態」など)への言及は、それぞれの態様または実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が、少なくとも本発明のその一態様または実施形態に含まれるか、または固有のものであるが、必ずしも本発明のすべての態様または実施形態であるわけでもそれらに含まれるわけでもないことを、表明する。しかしながら、本発明に関連して説明した様々な特徴、構造および/もしくは特性の任意の組み合わせが、本明細書に明示的に記載されていない限り、または明確に文脈上矛盾しない限り、本発明に包含されることが強調される。
【0049】
本文中のありとあらゆる例、または例示的な言語(例えば、など)の使用は、単に本発明をよりよく明らかにすることを意図したものであり、別段の特許請求がされていない限り、本発明の範囲を制限するものではない。さらに、本明細書中のいずれの言語または言い回しも、特許請求されていないいずれかの要素が本発明の実施に必須であると示しているとは解釈されない。
【0050】
以下において、本発明は、図面を参照してさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1図1は、使用前の状態にある、本発明の例示的な実施形態による薬剤貯蔵部の長手方向断面図である。
図2a-2c】図2a~図2cは、近位ガス体積がない場合、それぞれ2つの異なる近位ガス体積を有する場合の、後部貯蔵部ピストンへの初期段階の力の印加を示すグラフである。
図3図3は、2つの液体体積を有する薬剤貯蔵部を充填するためのプロセスの原理的略図である。
図4図4は、図1の薬剤貯蔵部を用いる例示的な薬剤送達装置の長手方向断面図である。
図5図5は、使用準備が整った状態での薬剤送達装置の長手方向断面図である。
図6-10】図6図10は、異なる使用前の状態での薬剤送達装置の長手方向断面図である。
図11図11は、使用後の空になった状態での薬剤送達装置の長手方向断面図である。
【0052】
図において、同様の構造物は、主として同様の参照番号によって特定される。
【発明を実施するための形態】
【0053】
「上」および「下」、「左」および「右」、「水平」および「垂直」、「時計回り」および「反時計回り」などの相対的な表現が以下で使用される時/場合、これらは添付の図を参照しており、必ずしも実際の使用状況を参照するものではない。示される図は、概略図であり、そのため、その相対寸法だけでなく、異なる構造の構成も、例示的な目的でのみ機能することが意図される。
【0054】
図1は、本発明の例示的な実施形態による薬剤貯蔵部1の長手方向断面図である。薬剤貯蔵部1は、使用前の状態、すなわち、製造業者によって供給された状態(ただし、剛性の針プロテクタは付いていない)で示されている。
【0055】
薬剤貯蔵部1は、バイパスチャネル3および狭い遠位端部分4を有する、略円筒形の貯蔵部本体2を有する。注射針5は、遠位端部分4に固定されており、貯蔵部出口6への流体連通を確立する。前部ピストン8は、貯蔵部出口6と開放近位端部7との間で貯蔵部本体2内に配設されており、それによって、前部チャンバー10は、貯蔵部出口6と、バイパスチャネル3を含む貯蔵部本体2の前部部分と、前部ピストン8と、によって画定される。後部ピストン9は、前部ピストン8と開放近位端部7との間で貯蔵部本体2内に配設されており、それによって、後部チャンバー11は、前部ピストン8と、貯蔵部本体2の中央部分と、後部ピストン9と、によって画定される。後部ピストン9は、ピストンロッド(図示せず)の端部分を受容するように適合されたくぼみ13を有する。
【0056】
前部チャンバー10は、第1の液体物質18を保持し、後部チャンバー11は、第2の液体物質19、ならびに液体薬剤19内のガス気泡の形態でスケッチされた近位ガス体積12を保持する。近位ガス体積12は、以下でさらに詳細に説明されることになるように、注射針5を通して貯蔵部内容物の排出を実施するために必要な力を減少させるために、後部チャンバー11に意図的に取り入れられる。本実施例では、近位ガス体積は、15μlである。
【0057】
ピストンロッドがくぼみ13内に挿入され、遠位に配向された力が後部ピストン9に加えられる場合、後部ピストン9は、加えられた力が後部ピストン9の封止外部表面と貯蔵部本体2の内壁との間の接触境界面における静止摩擦を克服するために必要な特定の閾値を超えるまで、その初期位置に留まる。
【0058】
図2a~図2cは、3つの異なるケースで後部ピストン9を動作させるために必要な初期力を示しており、ここで、図2aのグラフは、近位ガス体積のない薬剤貯蔵部に対する力プロファイルであり、図2bのグラフは、15μlの近位ガス体積を有する薬剤貯蔵部に対する力プロファイルであり、図2cのグラフは、20μlの近位ガス体積を有する薬剤貯蔵部に対する力プロファイルである。
【0059】
後部チャンバーに近位ガス体積がない二重チャンバー薬剤貯蔵部では、液体は、前部ピストンと後部ピストンとの間の剛直な接続として作用する。図2aの単一の力のピーク、Fは、こうした装置において、液体の非圧縮性のために、後部ピストンを動かすには、前部ピストンも動かす必要があるという事実を反映している。本実験によれば、両方のピストンを含むシステムの静止摩擦を克服するために、およそ15Nの解放力が必要である。
【0060】
それとは対照的に、図2bのグラフが示すように、所定の近位ガス体積15μlが後部チャンバー11内に存在するときに、ガスは、システムにいくらかの可撓性を加え、これが前部ピストン8の前に後部ピストン9が解放される結果をもたらす。この場合、近位ガス体積が圧縮されるので、7N弱の小さな力であるFr,15が、後部ピストン9を動作させるのに必要がある。その後、ガスが完全に圧縮され、結果として液体/ガスシステムは、前部フロントピストン8が次の力のピーク、Ff,15(約11N)で解放されるまで、2つのピストン間の剛直な接続として機能するため、力が上昇する。前部ピストン8の解放後の力レベルの急激な低下は、ピストンと内側貯蔵部壁との間の静止摩擦から運動摩擦への遷移を反映する。前部チャンバー10内の液体が加圧され、前部ピストン8の継続的な動きで注射針5の小さな内腔を通って押し出されるにつれて、力は、注射針5の流れ抵抗のためにいくらか再び増加するが、Fのレベルには近づかない。
【0061】
図2cでは、差はさらに顕著である。後部チャンバー11の近位ガス体積20μlを用いた実験の結果を示すグラフは、後部ピストン9を解放する、比較可能な力であるFf,20、および9Nの領域にあり、後に前部ピストン8を解放する、有意に小さな力であるFr,20を明らかにしている。全体として、グラフが示すように、少なくとも15μlの近位ガス体積が後部チャンバー11に存在するとき、薬剤排出作用を開始および担持するために必要な最大力は低減される。その理由は、そのガス体積によって提供される可撓性により、後部ピストン9が前部ピストン8とは別個に貯蔵部壁から解放されることが可能になるからである。
【0062】
図3は、2つの液体体積を有する薬剤貯蔵部1を充填するためのプロセスの原理的略図である。左から右に、処理ステップは、注射針5が針プラグ41によって密封された状態で薬剤貯蔵部1を直立位置に保持することと、所定の体積の第1の液体物質18を、貯蔵部本体2内に近位端部7を通して取り入れることと、を含む。
【0063】
貯蔵部本体2の遠位部分を、バイパスチャネル3が覆われるレベルまで充填すると、薬剤貯蔵部1は、第1の準大気圧環境100内に配置される。前部ピストン8は、貯蔵部本体2の内径よりも小さい内径を有する挿入管80内に半径方向に圧縮された状態で配設されており、挿入管80は、特に、貯蔵部本体2の内壁に接触することなく、近位端部7を通って貯蔵部本体2内に取り入れられる。前部ピストン8は次に、挿入管80を通して押し込まれ、第1の液体物質18の自由表面のすぐ上で貯蔵部本体2の内壁と接触して拡張し、それによって、前部チャンバー10が確立され、その後、薬剤貯蔵部1は、正規化された圧力条件に再曝露される。前部ピストン8が第1の準大気圧環境100に挿入されることによる前部チャンバー10の陰圧は、前部ピストン8を第1の液体物質18に向かって移動させ、その自由表面との隙間が閉じられる。
【0064】
第2の液体物質19の所定体積は、近位端部7を通って貯蔵部本体2内に取り入れられ、前部ピストン8の上方の空間を充填する。次いで、薬剤貯蔵部1は、周囲ガスの第2の準大気圧環境200に配置され、ここで半径方向に圧縮された状態で後部ピストン9を担持する挿入管80は、上述のものと類似した様式で貯蔵部本体2内に取り入れられる。このときに、圧力は、後部ピストン9が貯蔵部本体2内に配置され、それによって、後部チャンバー11が確立され、その後、薬剤貯蔵部1が正規化された圧力条件に再曝露されるときに、周囲ガスの体積が、所定の最小値を有する体積範囲内にある自由ガス体積として後部チャンバー11に留まるように制御される。
【0065】
図4は、例示的な特定の目的の自動注射器20の一部を形成する薬剤貯蔵部1の長手方向断面図である。自動注射器20は、横方向の端部壁22によって近位に閉じられ、かつくぼみ13内に挿入されたヘッド部分31と、後方ピストン9に遠位に方向付けられた力を加えるように適合されたショルダー部分32と、を有するピストンロッド30を含む、薬剤排出機構を収容する、管状ハウジング21を含む。
【0066】
一対のスナップアーム24は、横方向の端部壁22から、ピストンロッド30の対応する凹部33と係合するように構成された「v」形状の接合部分27を有するそれぞれの爪部26で終端するハウジング21の内部に遠位まで延在している。各スナップアーム24は、可撓性を提供し、爪部26の半径方向の偏向を可能にする、近位カービング25を有する。
【0067】
予め張力がかけられた圧縮ばね65は、ピストンロッド30内に配設されており、横方向端部壁22から遠位に延在している中央ピン23によって近位に支持されている。ばね65は、ピストンロッド30の遠位端部分と、横方向端部壁22との間に作用するように適合されている。
【0068】
薬剤貯蔵部1は、ハウジング21内に保持されており、針プラグ41を担持する剛直な針プロテクタ40によって遠位に閉じられている。細長いスリーブ50は、薬剤貯蔵部1およびハウジング21と同心に、かつそれらの間に配設されている。スリーブ50は、スリーブばね75によって近位方向に付勢されるハウジング21に対して軸方向に変位可能であり、狭い隣接セクション53を有する半径方向に拡大された近位端部分51を含む。自動注射器20の示された使用前の状態では、スリーブ50は、ハウジング21に対してその最大拡張位置にあり、近位端部分51は、爪部26と軸方向に整列し、接合部分27が凹部33を離れることを物理的に防止する。したがって、自動注射器20は、ピストンロッド30がハウジング21に対して軸方向の動きを受けることができないため、ばね65が予め張力がかけられた状態で維持されるので安全にコックされる。
【0069】
図5は、剛直な針プロテクタ40および針プラグ41の除去後の、使用準備が整った状態での自動注射器20の長手方向断面図である。スリーブ50は、依然としてハウジング21に対してその最大拡張位置にあり、ここで、遠位スリーブ端部分52は、注射針5を覆い、それゆえ、偶発的な針刺し傷からユーザーを保護する。遠位スリーブ端部分52は、薬剤の放出中に所望の注射部位でユーザーの皮膚に当接し、かつユーザーの皮膚に対して押し付けられるように適合されたスリーブリム54を有する。
【0070】
図6図11は、自動注射器20の用量排出手順を段階的に示している。第1に、ユーザーは、スリーブリム54を所望の皮膚場所(図示せず)と接触させて配置し、ハウジング21を皮膚に対して押し付ける。これにより、ハウジング21およびスリーブ50が、図5に示される相互位置から図6に示されるものまでの相対的な軸方向の動きを受けるため、遠位スリーブ端部分52はスリーブばね75を圧縮する。本質的に、スリーブ50は、ハウジング21に対して近位に変位し、これは、それぞれの拡大した近位端部分51を爪部26に沿って近位に摺動させる。いずれかの時点で、注射針5の先端が露出し、皮膚表面を貫通するほどに遠位スリーブ端部分52が十分に押し戻されると、スリーブ50は、拡大した近位端部分51が爪部26と軸方向にもはや整列しないスナップアーム24に対する位置に到達する。代わりに、爪部26は、狭い隣接するセクション53と軸方向に整列し、それによって、半径方向の変位をもはや防止しなくなる。
【0071】
予め張力がかけられたばね65は、常にピストンロッド30に対して遠位に配向されたバイアスを提供し、従って、爪部26がもはや半径方向に固定されていないときに、ばね65からの軸力、ならびに接合部分27および凹部33のそれぞれの構成は、スナップアーム24を近位カービング25の周りで半径方向に偏向させ、爪部26のピストンロッド30からの係合解除および結果としてのばね65の解放をもたらす。これは、図7に示されている。
【0072】
ばね65の解放の初期結果がまた、図7で見られる。近位ガス体積12の存在は、後部チャンバー11の小さな圧縮を可能にし、したがって、拡張ばね65からの力がピストンロッド30を前方に押すと、前部ピストン8は、静止したままであり、一方で後部ピストン9は、貯蔵部本体2の内壁から解放される。したがって、この時点でのばね65は、後部ピストン9と貯蔵部本体2との間の静止摩擦のみを克服しなければならない(前部ピストン8と貯蔵部本体2との間の静止摩擦は克服しなくてよい)。図7では、後部チャンバー11の圧縮は、近位ガス体積12の縮小されたサイズによって示されている。
【0073】
近位ガス体積12が完全に圧縮されると、後部チャンバー11の内容物は、ばね65からの力を前部ピストン8に伝達し、その後、前部ピストン8は、解放され、後部ピストン9、第2の液体物質19、および圧縮された近位ガス体積とともに貯蔵部本体2内で遠位に移動する。したがって、後部チャンバー11は、それ自体として、図8に示すように、第1の液体物質18の体積が注入針5を通って押し出され、前部ピストン8がバイパスチャネル3に到達するまで、貯蔵部本体2内で変位し、そこで、ばね65が拡張し続けるのにつれて、第2の液体物質19は、バイパスチャネル3内に押し込まれて、前部ピストン8を通過する。
【0074】
後部ピストン9が前部ピストン8に近づくと、後部チャンバー11は最終的に圧縮し、第2の液体物質19は、前部チャンバー10に移送され、そこで第1の液体物質18の残留物と混合される。図9は、後部チャンバー11の圧縮直後の自動注射器20の状態を示している。
【0075】
ここで、混合された第1の液体物質18および第2の液体物質19は、ピストンロッド30およびばね65の影響下で、後部ピストン9に従う注入針5を通して前部チャンバー10から排出され、前部ピストン8を、貯蔵部本体2内でさらに遠位に押す。図10では、前部ピストン8は、バイパスチャネル3の遠位端部を覆っており、したがって、近位方向に前部チャンバー10を封止する。
【0076】
薬剤の排出は、前部ピストン8が貯蔵部出口6で貯蔵部本体2の収縮に到達するまで継続し、その後、使用者がハウジング21を注射部位から遠ざけることによって、注射針5が皮膚から引き出される。皮膚表面とスリーブリム74との間の圧力が解放されると、スリーブばね75は、拡張し、遠位スリーブ端部分52が再び注射針5を覆うまで、スリーブ50をハウジング21に対して遠位に付勢する。図11に示すような自動注射器20は、ここにおいて使用後状態にあり、偶発的な針刺し傷のリスクなしに安全に廃棄され得る。
図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-08-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達装置(20)であって、
-基準軸に沿って延在している、ハウジング(21)と、
-薬剤貯蔵部(1)であって、
-出口端部(4)と近位端部(7)との間に延在している、貯蔵部本体(2)と、
-前記出口端部(4)と前記近位端部(7)との間で、前記貯蔵部本体(2)内に使用前位置に配設された前部ピストン(8)と、
-前記前部ピストン(8)と前記近位端部(7)との間で、前記貯蔵部本体(2)内に配設された後部ピストン(9)と、
-前記出口端部(4)、前記貯蔵部本体(2)の第1の部分、および前記前部ピストン(8)によって画定された遠位チャンバー(10)であって、前記遠位チャンバー(10)が、第1の内容物(18)を保持する、遠位チャンバー(10)と、
-前記前部ピストン(8)、前記貯蔵部本体(2)の第2の部分、および前記後部ピストン(9)によって画定された近位チャンバー(11)であって、前記近位チャンバー(11)が、近位液体体積(19)を含む第2の内容物(12、19)を保持する、近位チャンバー(11)と、
-前記貯蔵部本体(2)内の前記前部ピストン(8)の前進位置で、前記前部ピストン(8)を通過する流体流を可能にする、バイパス手段(3)と、を含む、薬剤貯蔵部(1)と、
-前記近位チャンバー(11)を加圧するための用量排出構造体であって、用量排出構造体が、前記後部ピストン(9)に排出力を伝達するように適合された作動可能なピストンロッド(30)を含む、用量排出構造体と、
を含み、
前記用量排出構造体が、前記ピストンロッド(30)と動作可能に連結されており、かつ前記ピストンロッド(30)を前記出口端部(4)に向かって付勢するように解放可能なエネルギーを保存するよう適合されている、ばね部材(65)によって動力を与えられ、
前記第2の内容物(12、19)が、所定の最小値を有する体積範囲内にある、近位ガス体積(12)をさらに含む、薬剤送達装置(20)。
【請求項2】
前記近位ガス体積(12)の前記所定の最小値が、15μlである、請求項1に記載の薬剤送達装置。
【請求項3】
前記体積範囲が、所定の閉体積範囲である、請求項1に記載の薬剤送達装置。
【請求項4】
前記所定の閉体積範囲が、[15μl;200μl]である、請求項3に記載の薬剤送達装置。
【請求項5】
前記所定の閉体積範囲が、[20μl;50μl]である、請求項3に記載の薬剤送達装置。
【請求項6】
前記第1の内容物(18)が、遠位液体体積および遠位ガス体積をさらに含み、前記遠位ガス体積が、前記近位ガス体積(12)よりも小さい、請求項1から請求項5のいずれかに記載の薬剤送達装置。
【請求項7】
前記近位ガス体積(12)が、空気を含む、請求項1から請求項6のいずれかに記載の薬剤送達装置。
【請求項8】
前記近位ガス体積(12)が、不活性ガスを含む、請求項1から請求項6のいずれかに記載の薬剤送達装置。
【請求項9】
前記出口端部(4)に固定的に配設されており、かつ前記遠位チャンバー(10)と流体的に接続されている、中空針(5)をさらに含む、請求項1から請求項8のいずれかに記載の薬剤送達装置。
【請求項10】
-有効化されると、前記ばね部材(65)を張力がかけられた状態に保持する、保持構造体(24、26、27)と、
-前記ハウジング(21)の一部分に沿って軸方向に延在しており、かつ解放構造体(51、53)を含む、スリーブ部材(50)と、をさらに含み、
前記スリーブ部材(50)が、前記保持構造体(24、26、27)が使用可能である、第1の位置から、前記保持構造体(24、26、27)が前記解放構造体(51、53)によって不能にされ、結果として、保存されたエネルギーが前記ばね部材(65)から解放される、第2の位置へと、前記ハウジング(21)および前記保持構造体(24、26、27)に対して近位に変位するように構成されている、請求項1から請求項9のいずれかに記載の薬剤送達装置。
【請求項11】
バイパスセクション(3)、閉じた出口端部(4)、および開放端部(7)を有する、略円筒形の本体(2)を含む、薬剤貯蔵部(1)を充填する方法であって、
(i)前記開放端部(7)が上向きに向いた状態で、前記薬剤貯蔵部(1)を少なくとも実質的に垂直に配設することと、
(ii)前記バイパスセクション(3)を含む、前記略円筒形の本体(2)の第1の内部部分が、前記開放端部(7)が上向きに向いた状態で、前記薬剤貯蔵部(1)の垂直位置で液体によって覆われるように、前記開放端部(7)を通して前記薬剤貯蔵部(1)内に第1の液体体積(18)を取り入れることと、
(iii)第1の準大気圧環境(100)において、第1のピストン(8)を、前記略円筒形の本体(2)内に、前記第1の液体体積(18)の自由表面に少なくとも実質的に隣接する第1のピストン位置まで挿入し、それによって、前記第1の液体体積(18)を保持する前部チャンバー(10)を確立することと、
(iv)第2の液体体積(19)を、前記開放端部(7)を通して前記薬剤貯蔵部(1)内に取り入れることと、
(v)周囲のガスの第2の準大気圧環境(200)において、第2のピストン(9)を、前記略円筒形の本体(2)内に、第2のピストン位置まで挿入し、それによって、後部チャンバー(11)を確立することであって、前記第2のピストン位置が、前記後部チャンバー(11)が前記第2の液体体積(19)を保持し、後部チャンバーガス体積(12)が、所定の最小値を有する体積範囲内にあるように決定される、確立することと、を含む、方法。
【外国語明細書】