(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167234
(43)【公開日】2024-12-03
(54)【発明の名称】グルコース感受性インスリン誘導体
(51)【国際特許分類】
C07K 14/62 20060101AFI20241126BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20241126BHJP
A61K 38/28 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
C07K14/62 ZNA
A61P3/10
A61K38/28
C07K14/62
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024134315
(22)【出願日】2024-08-09
(62)【分割の表示】P 2024069771の分割
【原出願日】2024-04-23
(31)【優先権主張番号】23169455.5
(32)【優先日】2023-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】23199974.9
(32)【優先日】2023-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】509091848
【氏名又は名称】ノヴォ ノルディスク アー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】トマス・ホウ-イェンセン
(72)【発明者】
【氏名】リーネ・デュ・ブロン
(72)【発明者】
【氏名】トマス・ボーグラム・ケルスン
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリク・ヴァローレ
(72)【発明者】
【氏名】アリス・レイヴン・マドセン
(72)【発明者】
【氏名】ペル・サウエルベルク
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、より少ない頻度の投与を可能にするために、より長い半減期を有するグルコース感受性インスリン誘導体を提供することである。
【解決手段】本発明は、新規のインスリン誘導体、および糖尿病に関連する医学的状態の治療または予防におけるそれらの使用に関する。インスリン誘導体は、グルコース感受性であり、グルコース感受性アルブミン結合を示す。インスリン誘導体は、長い半減期を有する。本発明はまた、新規の中間体に関する。最後に、本発明は、本発明のインスリン誘導体を含む医薬組成物、および糖尿病に関連する医学的状態の治療または予防におけるかかる組成物の使用を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インスリン誘導体であって、
A.B29Kを含むインスリンペプチドと、
B.ペプチド延長部Z-Lys-Y-Lys-aa1-aa2-(Gly)
3-Ser-((Gly)
4-Ser)
p-#
(式中、Zが、Gly、Glu、Ala、Ser、Thr、Pro、およびGlnから独立して選択される1~5個のアミノ酸残基からなり、
式中、Yが、Gly、Glu、Ala、Ser、Thr、Pro、およびGlnから独立して選択される15~30個のアミノ酸残基からなり、
式中、aa1が、不在か、またはProであり、
式中、aa2が、GluまたはGlyであり、
式中、pが、1、2、または3であり、
式中、#が、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖のN末端への連結点を示す)と、
C.以下の式A:
【化1】
(式中、R1、R2、またはR3のうちの1個が、電子求引基であり、他の2個が、水素であり、
式中、mが、0、1、2、または3であり、
式中、nが、0、1、2、または3であり、
式中、*が、連結点を示す)の3個の修飾基と、
を含み、
1個の修飾基が、前記インスリンペプチドのB鎖の29位におけるLys残基に連結し、他の2個の修飾基が、前記ペプチド延長部におけるLys残基の各々に連結している、インスリン誘導体。
【請求項2】
Zが、Glyである、請求項1に記載のインスリン誘導体。
【請求項3】
Yが、PE(GEQP)4GEQGG(配列番号13)である、請求項1または2に記載のインスリン誘導体。
【請求項4】
aa1が、Proであり、aa2が、Gluである、請求項1~3のいずれか一項に記載のインスリン誘導体。
【請求項5】
pが、2である、請求項1~4のいずれか一項に記載のインスリン誘導体。
【請求項6】
前記ペプチド延長部が、GKPE(GEQP)4GEQGGKPEGGGS(G4S)2(配列番号4)である、請求項1~5のいずれか一項に記載のインスリン誘導体。
【請求項7】
前記電子求引基が、CF3、F、NO2、CN、COX、SO2X、およびPOX2の群から選択される(式中、Xが、ORまたはNR2であり、Rが、H、アルキルまたはアリールである)、請求項1~6のいずれか一項に記載のインスリン誘導体。
【請求項8】
R1が、電子求引基であり、R2およびR3が、水素である、請求項1~7のいずれか一項に記載のインスリン誘導体。
【請求項9】
R1が、CF3であり、R2およびR3が、水素である、請求項1~8のいずれか一項に記載のインスリン誘導体。
【請求項10】
前記インスリン誘導体が、
【化2】
(実施例4のインスリン誘導体)である、請求項1~9のいずれか一項に記載のインスリン誘導体。
【請求項11】
インスリン誘導体であって、前記インスリン誘導体が、
【化3】
(実施例4のインスリン誘導体)である、インスリン誘導体。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のインスリン誘導体を含む、組成物。
【請求項13】
医薬として使用するための、請求項1~11のいずれか一項に記載のインスリン誘導体または請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
1型糖尿病および2型糖尿病を含む糖尿病の予防または治療に使用するための、請求項1~11のいずれか一項に記載のインスリン誘導体または請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
1型糖尿病および2型糖尿病を含む糖尿病の治療または予防のための方法であって、その治療または予防を必要とする対象者に、治療有効量の請求項1~11のいずれか一項に記載のインスリン誘導体または請求項12に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のインスリン誘導体、およびそれらの薬学的使用に関する。さらに、本発明は、かかるインスリン誘導体を含む医薬組成物、および糖尿病に関連する医学的状態の治療または予防のためのかかる化合物の使用に関する。
【0002】
配列表の参照による組み込み
配列表
本出願は、電子形式の配列表とともに提出される。配列表の全内容が、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
インスリンは、高血糖の治療に最も有効な薬物であるが、インスリン投薬量は、生理学的グルコース範囲が狭いため、過多と過少との間の微妙なバランスである。健康な人は、絶食状態においてほぼ5mMのグルコースレベルを有し、糖尿病患者は、食事および基礎インスリン調製物の両方を投与してほぼ5mMを得ようと試みる。しかしながら、約3mM未満の血糖値(低血糖症)は、しばしば、インスリン治療中に生じ、低血糖症は、不快感、意識を失う(loss of conciseness)、脳損傷、または死亡につながる可能性がある。したがって、糖尿病患者は、低血糖症を恐れて高いまたは中程度に高い血糖値を積極的に治療することに躊躇する。より高い血糖値でのみ活性であるか、またはデポーから放出され、より低い血糖値では不活性または弱く活性であるインスリン薬物が開発されれば、糖尿病治療を助けることができるであろう。
【0004】
特許文献1は、グルコース感受性アルブミン結合を示すジボロン含有部分を有するグルコース感受性インスリン誘導体を開示している。したがって、これらのインスリン誘導体は、グルコース濃度に依存するインスリン活性を示す。より少ない頻度の投与を可能にするために、より長い半減期を有するグルコース感受性インスリン誘導体に対するニーズがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
最も広い態様では、本発明は、インスリン誘導体に関する。これらのインスリン誘導体は、グルコース濃度に依存するインスリン活性を示し、したがってグルコース感受性インスリン誘導体として機能する。
【0007】
本発明のインスリン誘導体は、グルコースおよびアルブミン(ヒト血清アルブミン、HSA)の両方に結合し、HSA親和性はグルコース感受性である。したがって、HSAの存在下での見かけのヒトインスリン受容体(HIR)親和性もまた、グルコース感受性になる。HSA結合されたインスリンの画分は、HIRへの結合から遮蔽されるが、HSAからのグルコース促進放出は、インスリンの遊離画分を増加させ、したがってグルコースは、HIRの見かけの親和性を高める。したがって、本発明のインスリン誘導体は、グルコースおよびアルブミンの存在下において、グルコースが存在しないときよりも高い見かけのインスリン受容体親和性を示す。
【0008】
本発明のインスリン誘導体は、高いグルコース感受性を示し、長い半減期を有する。
【0009】
一態様では、本発明のインスリン誘導体は、B29Kを含むインスリンペプチドと、インスリンペプチドB鎖のN末端におけるペプチド延長部と、3個の修飾基とを含み、1個の修飾基は、インスリンペプチドのB鎖の29位におけるLys残基に連結し、他の2個の修飾基は、ペプチド延長部におけるLys残基に連結している。
【0010】
一態様では、ペプチド延長部は、
Z-Lys-Y-Lys-aa1-aa2-(Gly)3-Ser-((Gly)4-Ser)p-#
の配列を有する
(式中、Zは、Gly、Glu、Ala、Ser、Thr、Pro、およびGlnから独立して選択される1~5個のアミノ酸残基からなり、
式中、Yは、Gly、Glu、Ala、Ser、Thr、Pro、およびGlnから独立して選択される15~30個のアミノ酸残基からなり、
式中、aa1は、不在か、またはProであり、
式中、aa2は、GluまたはGlyであり、
式中、pは、1、2、または3であり、
式中、#は、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖のN末端への連結点を示す)。
【0011】
一態様では、修飾基は、式A:
【化1】
(式中、R1、R2、またはR3のうちの1個は、電子求引基であり、他の2個が、水素であり、
式中、mは、0、1、2、または3であり、nは、0、1、2、または3であり、*は、連結点を示す)である。
【0012】
一態様では、本発明は、本発明によるインスリン誘導体を含む医薬組成物に関する。一態様では、本発明は、医薬として使用するための本発明によるインスリン誘導体に関する。一態様では、本発明は、糖尿病の治療において使用するための本発明によるインスリン誘導体に関する。一態様では、本発明は、本発明によるインスリン誘導体の医学的使用に関する。
【0013】
一態様では、本発明のインスリン誘導体は、高いグルコース感受性を示す。一態様では、本発明のインスリン誘導体は、長い半減期を有する。一態様では、本発明のインスリン誘導体は、高いグルコース感受性を示し、長い半減期を有する。
【0014】
本発明は、例示的な実施形態の開示から明らかになるであろうさらなる問題も解決し得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、それぞれ3mMおよび20mMのD-グルコースでの、実施例4のインスリン誘導体およびヒトインスリンについてのヒト初代肝細胞におけるインスリン受容体リン酸化の濃度応答曲線を示す(実施例13を参照)。
【
図2】
図2は、それぞれ3mMおよび20mMのL-グルコースでの、実施例4のインスリン誘導体についてのSprague Dawleyラットからの脂肪細胞における脂質生成アッセイ(rFFC)からの代表的な濃度応答曲線を示す(実施例14を参照)。
【
図3】
図3は、20mMのD-グルコースでの、実施例4のインスリン誘導体およびヒトインスリンについてのラット初代肝細胞におけるグリコーゲン蓄積の濃度応答曲線を示す(実施例15を参照)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
一態様では、本発明のインスリン誘導体は、インスリンペプチドと、インスリンペプチドB鎖のN末端におけるペプチド延長部と、3個の修飾基とを含む。
【0017】
インスリン誘導体
本明細書で使用される場合、「インスリン誘導体」という用語は、修飾インスリンペプチドを意味し、修飾は、化学部分の連結および/またはペプチド延長部の存在の形態である。
【0018】
一態様では、修飾は、式Aの修飾基の共有結合的連結の形態である。一態様では、修飾は、インスリンペプチドB鎖のN末端におけるペプチド延長部の存在の形態である。一態様では、修飾は、式Aの修飾基の共有結合的連結およびインスリンペプチドB鎖のN末端におけるペプチド延長部の存在の形態である。
【0019】
インスリンペプチド
本明細書で使用される場合、「インスリンペプチド」という用語は、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のいずれかであるペプチドを意味する。一実施形態では、本明細書で使用される「インスリンペプチド」という用語は、インスリン活性を有する、すなわち、インスリン受容体を活性化するヒトインスリンまたはその類似体のいずれかであるペプチドを意味する。
【0020】
ヒトインスリン
本明細書で使用される場合、「ヒトインスリン」という用語は、その構造および特性が周知のヒトインスリンホルモンを意味する。ヒトインスリンは、A鎖およびB鎖と称される2つのポリペプチド鎖を有する。A鎖は、21個のアミノ酸のペプチドであり、B鎖は、30個のアミノ酸のペプチドであり、2つの鎖は、ジスルフィド架橋によって接続され、第1の架橋は、A鎖の7位におけるシステインとB鎖の7位におけるシステインとの間であり、また第2の架橋は、A鎖の20位におけるシステインとB鎖の19位におけるシステインとの間である。第3の架橋は、A鎖の6位におけるシステインとA鎖の11位におけるシステインとの間に存在する。ヒトインスリンA鎖は、次の配列 GIVEQCCTSICSLYQLENYCN(配列番号1)を有する一方、ヒトインスリンB鎖は、次の配列 FVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTPKT(配列番号2)を有する。
【0021】
インスリン類似体
本明細書で使用される場合、「インスリン類似体」という用語は、インスリンの1個以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基によって置換されており、かつ/または1個以上のアミノ酸残基がインスリンから欠失しており、かつ/または1個以上のアミノ酸残基がインスリンに付加および/もしくは挿入されている、修飾ヒトインスリンを意味する。本明細書で使用される場合、「インスリン類似体」という用語は、インスリン活性を示す、すなわち、インスリン受容体に結合しインスリン受容体を活性化する、インスリン類似体を意味する。
【0022】
ヒトインスリン類似体は、ヒトインスリンに対して、10個未満のアミノ酸修飾(置換、欠失、付加(すなわち、延長)、挿入、およびそれらの任意の組み合わせ)、あるいはヒトインスリンに対して、9、8、7、6、5、4、3、2、または1個未満の修飾を含む。一態様では、ヒトインスリン類似体は、ヒトインスリンに対して、10個未満のアミノ酸修飾(置換、欠失、付加(すなわち、延長)、挿入、およびそれらの任意の組み合わせ)、あるいはヒトインスリンに対して、9、8、7、6、5、4、3、2、または1個未満の修飾を有する。
【0023】
インスリン分子における修飾は、鎖(AまたはB)、位置、および天然アミノ酸残基を置換するアミノ酸残基の1文字または3文字のコードを述べることで表される。本明細書では、「A1」、「A2」、および「A3」などの用語は、インスリンのA鎖の(N末端から数えて)それぞれ1位、2位、および3位などにおけるアミノ酸を表す。同様に、B1、B2、およびB3などの用語は、インスリンのB鎖の(N末端から数えて)それぞれ1位、2位、および3位などにおけるアミノ酸を示す。アミノ酸の1文字コードを使用すると、B29Kという用語は、B29位におけるアミノ酸がKであることを指定している。アミノ酸の3文字コードを使用すると、対応する表現は、B29Lysである。「desB30」とは、B30アミノ酸を欠くインスリン類似体を意味する。
【0024】
特定の実施形態では、類似体は、特定の変化を「有する」または「含む」。他の特定の実施形態では、類似体は、変化「からなる」。「からなる」または「からなっている」という用語が類似体に関連して使用される場合、例えば、類似体が、特定のアミノ酸変異の群からなるか、またはなっている場合、当然のことながら、特定のアミノ酸変異は、類似体における唯一のアミノ酸変異である。対照的に、特定のアミノ酸変異の群を「含む」類似体は、追加的な変異を有してもよい。
【0025】
インスリン類似体の例としては、
desB30ヒトインスリン(配列番号1のA鎖および配列番号3のB鎖)が挙げられる。
【0026】
ペプチド延長部
上述のように、本発明のインスリン類似体は、ヒトインスリンに対して、10個未満のアミノ酸修飾(置換、欠失、付加(すなわち、延長)、挿入、およびそれらの任意の組み合わせ)、あるいはヒトインスリンに対して、9、8、7、6、5、4、3、2、または1個未満の修飾を含む。これらの最大9個の修飾に加えて、本発明のインスリンペプチドは、インスリンペプチドのB鎖のN末端にペプチド延長部を有する。
【0027】
様々なペプチド延長部またはスペーサーペプチドは、当該技術分野で公知であり、本発明のインスリン誘導体で使用され得る。一実施形態では、ペプチド延長部は、ペプチド結合を介して接続された28~58個のアミノ酸からなるペプチドセグメントである。本発明のペプチド延長部は、次のアミノ酸残基 Gly(G)、Glu(E)、Ala(A)、Ser(S)、Thr(T)、Pro(P)、Gln(Q)、およびLys(K)のうちの1つ以上を含む。
【0028】
本発明のインスリン誘導体におけるペプチド延長部は、2個の修飾基の連結を可能にするために、2個のLys(K)残基を含む。修飾基の連結の正確な位置は変化してもよく、また正確なペプチド配列のいくらかの変動が許容される。
【0029】
本発明のインスリン誘導体において使用されるペプチド延長部は、以下のペプチド配列:
Z-Lys-Y-Lys-aa1-aa2-(Gly)3-Ser-((Gly)4-Ser)p-#
を有する
(式中、Zは、Gly、Glu、Ala、Ser、Thr、Pro、およびGlnから独立して選択される1~5個のアミノ酸残基からなり、
式中、Yは、Gly、Glu、Ala、Ser、Thr、Pro、およびGlnから独立して選択される15~30個のアミノ酸残基からなり、
式中、aa1は、不在か、またはProであり、
式中、aa2は、GluまたはGlyであり、
式中、pは、1、2、または3であり、
式中、#は、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖のN末端への連結点を示す)。
【0030】
一実施形態では、ペプチド延長部は、例えば、ペプチド延長部における少なくとも5個のグルタミン酸(Glu)アミノ酸残基を有することによって、全体的に極性に保たれる。
【0031】
インスリンが組み換え的に生成される場合、単鎖インスリン前駆体として発現され、これは後に、Achromobacter lyticusリシル特異的エンドプロテアーゼ(ALP)またはトリプシンなどのプロテアーゼを使用して2鎖インスリンへと成熟される。ALPは、リシル-プロリン結合を含むリシル結合を特異的かつ独占的に切断する。しかしながら、本発明のインスリン誘導体で使用されるペプチド延長部は、2個のリシン(Lys)残基を含むため、ALPによる切断は、望ましくない過剰切断産物をもたらし得る。驚くべきことに、Lysの後にPro-Gluを有することによって、ALPによる切断速度が大幅に低減され、したがって、過剰切断が低減され、全体的な収量が増加することが見出された。
【0032】
一実施形態では、本発明のインスリン誘導体において使用されるペプチド延長部は、以下のペプチド配列:
Z-Lys-Y-Lys-aa1-aa2-(Gly)3-Ser-((Gly)4-Ser)p-#
を有する
(式中、Zは、Gly、Glu、Ala、Ser、Thr、Pro、およびGlnから独立して選択される1~5個のアミノ酸残基からなり、
式中、Yは、Pro-Glyとそれに続く、Gly、Glu、Ala、Ser、Thr、Pro、およびGlnから独立して選択される13~28個のアミノ酸残基からなり、
式中、aa1は、Proであり、
式中、aa2は、Gluであり、
式中、pは、1、2、または3であり、
式中、#は、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖のN末端への連結点を示す)。
【0033】
より具体的には、ペプチド延長部は、ペプチド延長部のC末端セリン残基のカルボン酸、およびインスリンペプチドのB鎖のN末端アミノ酸残基のアミノ基を介してインスリンペプチドに連結され、2個のアミノ酸残基の間にアミド結合を形成する。
【0034】
インスリンペプチドのB鎖のN末端におけるペプチド延長部の例としては、GKPE(GEQP)4GEQGGKPEGGGS(G4S)2(配列番号4)が挙げられる。
【0035】
修飾基A
本発明のインスリン誘導体は、3個の修飾基Aを含む。一実施形態では、本発明のインスリン誘導体は、式Aの正確に3個の修飾基を有する。修飾基は、同一であっても異なっていてもよい。一実施形態では、修飾基は、同一である。修飾基は、インスリンペプチドおよびペプチド延長部においてリシン残基のイプシロンアミノ基に共有結合的に連結している。
【0036】
本発明のインスリン誘導体の修飾基は、式A:
【化2】
(式中、R1、R2、またはR3のうちの1個は、電子求引基であり、他の2個は、水素であり、
式中、mは、0、1、2、または3であり、
式中、nは、0、1、2、または3である)である。
【0037】
本出願の式全体を通して、Bは、ホウ素原子を示し、Hは、水素原子を示し、Nは、窒素原子を示し、Oは、酸素原子を示す。
【0038】
言い換えれば、R1、R2、およびR3は、独立して、電子求引基および水素の群から選択されるが、ただし、R1が電子求引基である場合、R2およびR3は水素であり、R2が電子求引基である場合、R1およびR3は水素であり、R3が電子求引基である場合、R1およびR2は水素である。
【0039】
一実施形態では、R1は、電子求引基であり、R2およびR3は、水素である。
【0040】
ボロン酸およびボロキソールのpKaを調整して中性pHでのグルコースの結合を容易にするために、電子求引基を連結する。
【0041】
電子求引基(EWG)は、隣接する原子からそれ自体に向かって電子密度を引き寄せる原子または基である。一実施形態では、電子求引基は、CF3、F、NO2、CN、COX、SO2X、およびPOX2の群から選択される(式中、Xは、ORまたはNR2であり、Rは、独立して、H、アルキル、およびアリールから選択される)。一実施形態では、電子求引基は、CF3、F、NO2、CN、COX、およびSO2Xの群から選択される(式中、Xは、ORまたはNR2であり、Rは、独立して、H、アルキル、およびアリールから選択される)。一実施形態では、電子求引基は、CF3、F、SO2NR2、またはCNである(式中、Rは、アルキルである)。一実施形態では、電子求引基は、CF3である。一実施形態では、R1は、CF3であり、R2およびR3は、水素である。
【0042】
本発明のインスリン誘導体では、1個の修飾基は、インスリンペプチドのB鎖の29位におけるリシン(Lys)残基に連結し、他の2個の修飾基は、ペプチド延長部におけるリシン(Lys)残基の各々に連結している。より具体的には、各修飾基は、アミド結合を形成するリシンのイプシロンアミノ基に連結している。
【0043】
式Aは、*で示される連結点を介してLysに共有結合的に連結する。
【0044】
式Aの修飾基は、2つのキラル中心を有する。式Aの修飾基におけるキラル原子の各々は、独立して、(R)または(S)形態であってもよい。一実施形態では、両方のキラル原子は、(S)形態のものである。さらに別の実施形態では、キラル中心は、式A1:
【化3】
に示されるとおりである。
R1、R2、R3、mおよびnは、式Aについて上記に定義したとおりである。
【0045】
特定の実施形態では、修飾基は、式Aのものである(式中、R1は、CF3であり、R2およびR3は、水素であり、mは、2であり、nは、0である)。
【0046】
特定の実施形態では、修飾基は、式A1のものである(式中、R1は、CF3であり、R2およびR3は、水素であり、mは、2であり、nは、0である)。
【0047】
本発明のインスリン誘導体の機能
驚くべきことに、本発明のインスリン誘導体は、HSAの存在下において、長い半減期および高いグルコース感受性の両方を示すことが見出された。
【0048】
インスリン類似体およびインスリン誘導体のヒトインスリン受容体(HIR)に対する相対結合親和性は、実施例12に記載されるように、シンチレーション近接アッセイ(SPA)での競合結合によって決定され得る。
【0049】
一実施形態では、本発明のインスリン誘導体は、インスリン受容体に結合する能力を有する。一実施形態では、本発明のインスリン誘導体は、HSAおよび20mMのグルコースの存在下において、グルコースが存在しない場合よりも高い見かけのインスリン受容体親和性を有する。HSAの存在下での0~20mMグルコースの見かけの相対親和性(HIRグルコース係数)の増加は、インスリン誘導体のグルコース感受性を反映する。グルコースが存在しない場合と比較して、相対インスリン受容体親和性が、20mMのグルコースの存在下でより高い場合、グルコース係数は、1を上回る。一実施形態では、本発明のインスリン誘導体は、1.5%のHSAの存在下において、少なくとも20、30、または40のグルコース係数を有する。
【0050】
実施例12に示されるデータから分かるように、インスリン骨格のB鎖のN末端におけるペプチド延長部は、0~20mMグルコースの親和性(グルコース係数)の倍率変化によって測定されるように、HSAの存在下においてグルコース感受性の減少をもたらす。驚くべきことに、本発明のインスリン誘導体は、HSAの存在下において、高いグルコース感受性を示すことが見出された。
【0051】
実施例13に記載されるインスリン受容体リン酸化アッセイ、実施例14に記載される脂質生成アッセイ、および実施例15に記載されるグリコーゲン蓄積アッセイは、インスリン誘導体の機能的(アゴニスト)活性の尺度として使用され得る。実施例13、14、および15に示されるデータから分かるように、本発明のインスリン誘導体は、インスリン受容体を活性化する。LYDブタへの皮下投与時の半減期(T1/2)は、実施例16に記載される方法を使用して決定することができる。実施例16におけるLYDブタの薬物動態(PK)研究から分かるように、本発明の化合物は、延長された半減期(T1/2)を示す。
【0052】
中間産物
本発明は、インスリンペプチドのN末端にペプチド延長部を有するインスリン類似体の形態の中間生成物をさらに提供する。
【0053】
インスリンペプチドのB鎖のN末端にペプチド延長部を有するインスリン類似体の例としては、
GKPE(GEQP)4GEQGGKPEGGGS(G4S)2-B1 desB30ヒトインスリン(配列番号1のA鎖および配列番号5のB鎖)が挙げられる。
【0054】
GKPE(GEQP)4GEQGGKPEGGGS(G4S)2-B1 desB30ヒトインスリンは、GKPE(GEQP)4GEQGGKPEGGGS(G4S)2でB1から延長されたdesB30ヒトインスリンを意味する。C末端セリン(S)は、desB30ヒトインスリンのB1位におけるフェニルアラニン(F)に接続される。
【0055】
一般的な定義
「化合物」という用語は、分子実体を指すために本明細書で使用され、それ故に「化合物」は、各化合物または化合物の群に対して定義される最小限の要素以外の異なる構造的要素を有してもよい。「化合物」という用語はまた、本明細書の薬学的に関係のある形態を包含することも意味し、すなわち、本発明は、本明細書で定義される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、アミド、もしくはエステルに関する。
【0056】
「ペプチド」または「ポリペプチド」という用語は、例えば、本発明の文脈で使用される場合、アミド(またはペプチド)結合によって相互接続された一連のアミノ酸を含む化合物を指す。特定の実施形態では、ペプチドは、ペプチド結合によって相互接続されたアミノ酸からなる。
【0057】
「アミノ酸」という用語は、タンパク質原性(または天然)アミノ酸(その中でも、20個の標準アミノ酸)、ならびに非タンパク質原性(または非天然)アミノ酸を含む。タンパク質原性アミノ酸は、タンパク質に自然に組み込まれるものである。標準アミノ酸は、遺伝子コードによってコードされるアミノ酸である。非タンパク質原性アミノ酸は、タンパク質中に見られないか、または標準細胞機構によって生成されないかのいずれかである(例えば、それらは、翻訳後修飾に供された可能性がある)。
【0058】
一般に、アミノ酸残基(ペプチド/タンパク質配列)は、それらの完全な名称、それらの1文字コード、および/またはそれらの3文字コードによって特定され得る。これらの3つの方法は、完全に同等である。本出願の全体を通して、光学異性体が記載されていない本発明のインスリンペプチドおよびペプチド延長部の各アミノ酸は、(別段の指定がない限り)L異性体を意味すると理解されるべきである。アミノ酸は、アミノ基およびカルボン酸基、ならびに任意選択で、しばしば側鎖と呼ばれる1個以上の追加の基を含有する分子である。
【0059】
本明細書では、「アミノ酸残基」という用語は、形式上、ヒドロキシ基がカルボキシ基から除去されており、かつ/または形式上、水素原子がアミノ基から除去されている、アミノ酸である。
【0060】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、1~24個の炭素原子の分枝状または非分枝状の飽和炭化水素基である。例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、s-ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、およびテトラデシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
「アリール」という用語は、5~12個の炭素原子を有する環状または多環式芳香環を意味する。アリール基の例としては、フェニル、ビフェニル、およびナフチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
ある特定の特徴を「含む」または「含んでいる」という用語は、問題の主題がそれらのある特定の特徴を含むが、他の特徴の存在を除外しないことを意味すると解釈されるものである。
【0063】
医薬組成物
本発明はまた、本発明のインスリン誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩、アミド、もしくはエステル、および1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物にも関する。かかる組成物は、当該技術分野で公知のとおりに調製されてもよい。
【0064】
「賦形剤」という用語は、活性治療成分以外の任意の成分を広範に指す。賦形剤は、不活性物質、非活性物質、および/または医薬的に活性でない物質であってもよい。賦形剤は、例えば、担体、ビヒクル、希釈剤として様々な目的を果たし、かつ/または活性物質の投与および/もしくは吸収を改善するように機能し得る。賦形剤の非限定的な例は、溶媒、希釈剤、緩衝液、防腐剤、等張性調節剤、キレート剤および安定剤である。様々な賦形剤を伴う薬学的に活性な成分の製剤は、当該技術分野において公知であり、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(例えば、第21版(2005)および任意のその後の版)を参照されたい。
【0065】
本発明の組成物は、液体製剤、すなわち、水を含む水性製剤の形態であってもよい。液体製剤は、溶液または懸濁液であってもよい。本発明の組成物は、例えば、皮下、筋肉内、腹腔内、または静脈注射によって実施される非経口投与用であってもよい。
【0066】
アリールホウ素化合物は、中性値付近のpHにおいて、水溶液中で低い安定性しか有しない場合がある。本発明のインスリン誘導体は、水溶液中で改善した安定性を示す。安定性は、例えば、長期間、例えば1週間にわたって、25℃または37℃において中性pHで水溶液中に静置した後のインスリン誘導体の純度を測定することによって評価され得る。
【0067】
薬学的適応
糖尿病
「糖尿病(diabetes)」または「糖尿病(diabetes mellitus)」という用語には、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病(妊娠中)、および高血糖症を引き起こす他の状態が含まれる。この用語は、膵臓が生成するインスリンの量が不十分であるか、または体の細胞がインスリンに適切に応答できず、それ故に細胞がグルコースを吸収するのを妨げる、代謝障害に対して使用される。結果として、グルコースは、血液中に蓄積する。
【0068】
インスリン依存性糖尿病(IDDM)および若年発症糖尿病とも呼ばれる、1型糖尿病は、通常は絶対的インスリン欠乏をもたらすベータ細胞破壊によって引き起こされる。
【0069】
非インスリン依存性糖尿病(NIDDM)および成人発症糖尿病としても知られる、2型糖尿病は、主要なインスリン抵抗性、それ故に相対的なインスリン欠乏および/またはインスリン抵抗性を伴う主要なインスリン分泌不全に関連している。
【0070】
一実施形態では、本発明によるインスリン誘導体は、糖尿病、1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能障害、高血糖症、およびメタボリックシンドロームXまたはインスリン抵抗性症候群などのメタボリックシンドロームの治療または予防のための医薬として使用される。一実施形態では、本発明によるインスリン誘導体は、ストレス誘発性高血糖症を含む高血糖症、2型糖尿病、耐糖能障害、または1型糖尿病の治療または予防のための医薬として使用される。別の実施形態では、本発明によるインスリン誘導体は、2型糖尿病における疾患の進行を遅延または予防するための医薬として使用される。「治療」という用語は、参照される疾患、障害、または状態の予防および最小化の両方を含むことを意味する(すなわち、「治療」は、文脈によって別段の指示がないか、または明確に矛盾しない限り、本発明のインスリン誘導体または本発明のインスリン誘導体を含む組成物の予防的および治療的投与の両方を指す)。
【0071】
投与の方法
投与の経路は、本発明のインスリン誘導体を体内の所望のまたは適切な場所に、例えば非経口的に(例えば、皮下、筋肉内、または静脈内で)効果的に輸送する任意の経路であってもよい。
【0072】
非経口投与については、本発明のインスリン誘導体は、既知のインスリンの製剤と類似的に製剤化される。さらに、非経口投与については、本発明のインスリン誘導体は、既知のインスリンの投与と類似的に投与されてもよく、医師は、この手順に精通している。
【0073】
投与される本発明のインスリン誘導体の量、本発明のインスリン誘導体を投与する頻度の決定、および任意選択で別の抗糖尿病化合物と一緒に、どの本発明の化合物を投与するかの選択は、糖尿病の治療に精通している専門家と相談して決定される。
【0074】
非限定的な実施形態
本発明は、本発明の以下の非限定的な実施形態によってさらに説明される。
1.インスリン誘導体であって、
A.B29Kを含むインスリンペプチドと、
B.ペプチド延長部Z-Lys-Y-Lys-aa1-aa2-(Gly)
3-Ser-((Gly)
4-Ser)
p-#と、
(式中、Zが、Gly、Glu、Ala、Ser、Thr、Pro、およびGlnから独立して選択される1~5個のアミノ酸残基からなり、
式中、Yが、Gly、Glu、Ala、Ser、Thr、Pro、およびGlnから独立して選択される15~30個のアミノ酸残基からなり、
式中、aa1が、不在か、またはProであり、
式中、aa2が、GluまたはGlyであり、
式中、pが、1、2、または3であり、
式中、#が、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖のN末端への連結点を示す)
C.式Aの3個の修飾基と、
【化4】
(式中、R1、R2、またはR3のうちの1個が、電子求引基であり、他の2個が、水素であり、
式中、mが、0、1、2、または3であり、
式中、nが、0、1、2、または3であり、
式中、*が、連結点を示す)を含み、
1個の修飾基が、インスリンペプチドのB鎖の29位におけるLys残基に連結し、他の2個の修飾基が、ペプチド延長部におけるLys残基の各々に連結している、インスリン誘導体。
2.Zが、Gly、Glu、Ala、Ser、Thr、Pro、およびGlnから独立して選択される1~4個のアミノ酸残基からなる、先行する実施形態に記載のインスリン誘導体。
3.Zが、Gly、Glu、Ala、Ser、Thr、Pro、およびGlnから独立して選択される1~3個のアミノ酸残基からなる、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
4.Zが、Gly、Glu、Ala、Ser、Thr、Pro、およびGlnから独立して選択される1~2個のアミノ酸残基からなる、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
5.Zが、Gly、Glu、Ala、Ser、Thr、Pro、およびGlnから独立して選択される1個のアミノ酸残基からなる、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
6.Zが、1~4個のGlyアミノ酸残基からなる、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
7.Zが、1~3個のGlyアミノ酸残基からなる、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
8.Zが、1~2個のGlyアミノ酸残基からなる、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
9.Zが、Glyである、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
10.Yが、Gly、Glu、Ala、Ser、Thr、Pro、およびGlnから独立して選択される20~25個のアミノ酸残基からなる、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
11.Yが、Gly、Glu、Ala、Ser、Thr、Pro、およびGlnから独立して選択される23個のアミノ酸残基からなる、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
12.Yが、Gly、Glu、Pro、およびGlnから独立して選択される15~30個のアミノ酸残基からなる、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
13.Yが、Gly、Glu、Pro、およびGlnから独立して選択される20~25個のアミノ酸残基からなる、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
14.Yが、Gly、Glu、Pro、およびGlnから独立して選択される23個のアミノ酸残基からなる、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
15.Yが、Gly、Ala、Pro、およびGlnから独立して選択される15~30個のアミノ酸残基からなる、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
16.Yが、Gly、Ala、Pro、およびGlnから独立して選択される20~25個のアミノ酸残基からなる、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
17.Yが、Gly、Ala、Pro、およびGlnから独立して選択される23個のアミノ酸残基からなる、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
18.Yが、Pro-Glyとそれに続く、Gly、Glu、Ala、Ser、Thr、Pro、およびGlnから独立して選択される18~23個のアミノ酸残基からなる、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
19.Yが、Pro-Glyとそれに続く、Gly、Glu、Ala、Ser、Thr、Pro、およびGlnから独立して選択される20~22個のアミノ酸残基からなる、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
20.Yが、Pro-Glyとそれに続く、Gly、Ala、Ser、Thr、Pro、およびGlnから独立して選択される21個のアミノ酸残基からなる、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
21.Yが、Pro-Glyとそれに続く、Gly、Glu、Pro、およびGlnから独立して選択される18~23個のアミノ酸残基からなる、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
22.Yが、Pro-Glyとそれに続く、Gly、Glu、Pro、およびGlnから独立して選択される20~22個のアミノ酸残基からなる、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
23.Yが、Pro-Glyとそれに続く、Gly、Glu、Pro、およびGlnから独立して選択される21個のアミノ酸残基からなる、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
24.Yが、PE(GEQP)
4GEQGG(配列番号13)である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
25.aa1が、Proである、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
26.aa2が、Gluである、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
27.pが、2である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
28.ペプチド延長部が、GKPE(GEQP)
4GEQGGKPEGGGS(G
4S)
2(配列番号4)である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
29.修飾基が、式A1:
【化5】
(式中、R1、R2、またはR3のうちの1個が、電子求引基であり、他の2個が、水素であり、
式中、mが、0、1、2、または3であり、
式中、nが、0、1、2、または3であり、
式中、*が、連結点を示す)である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
30.電子求引基が、CF
3、F、NO
2、CN、COX、SO
2X、およびPOX
2の群から選択される(式中、Xが、ORまたはNR
2であり、Rが、H、アルキルまたはアリールである)、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
31.電子求引基が、CF
3、F、NO
2、CN、COX、およびSO
2Xの群から選択される(式中、Xが、ORまたはNR
2であり、Rが、H、アルキルまたはアリールである)、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
32.Xが、ORである、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
33.Xが、NR
2である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
34.Rが、Hである、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
35.Rが、アルキルである、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
36.アルキルが、メチル、エチル、n-プロピル、およびイソプロピルの群から選択される、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
37.アルキルが、メチルおよびエチルの群から選択される、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
38.アルキルが、メチルである、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
39.Rが、アリールである、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
40.アリールが、フェニルである、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
41.電子求引基が、CF
3、F、SO
2NR
2、またはCNの群から選択される(式中、Rが、アルキルである)、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
42.電子求引基が、CF
3およびFの群から選択される、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
43.電子求引基が、CF
3である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
44.R1が、電子求引基であり、R2およびR3が、水素である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
45.R1が、CF
3であり、R2およびR3が、水素である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
46.mが、0、1、2、または3であり、nが、0である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
47.mが、1、2、または3であり、nが、0である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
48.mが、3であり、nが、0である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
49.mが、2であり、nが、0である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
50.mが、1であり、nが、0である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
51.mが、0であり、nが、3である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
52.mが、0であり、nが、2である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
53.mが、0であり、nが、1である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
54.式A中の両方のキラル原子が、(S)形態である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
55.インスリンペプチドが、ヒトインスリンである、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
56.インスリンペプチドが、ヒトインスリン類似体である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
57.インスリンペプチドが、ヒトインスリンに対して、10個未満のアミノ酸修飾を含むヒトインスリン類似体である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
58.インスリンペプチドが、ヒトインスリンに対して、9個未満のアミノ酸修飾を含むヒトインスリン類似体である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
59.インスリンペプチドが、ヒトインスリンに対して、8個未満のアミノ酸修飾を含むヒトインスリン類似体である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
60.インスリンペプチドが、ヒトインスリンに対して、7個未満のアミノ酸修飾を含むヒトインスリン類似体である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
61.インスリンペプチドが、ヒトインスリンに対して、6個未満のアミノ酸修飾を含むヒトインスリン類似体である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
62.インスリンペプチドが、ヒトインスリンに対して、5個未満のアミノ酸修飾を含むヒトインスリン類似体である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
63.インスリンペプチドが、ヒトインスリンに対して、4個未満のアミノ酸修飾を含むヒトインスリン類似体である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
64.インスリンペプチドが、ヒトインスリンに対して、3個未満のアミノ酸修飾を含むヒトインスリン類似体である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
65.インスリンペプチドが、ヒトインスリンに対して、2個未満のアミノ酸修飾を含むヒトインスリン類似体である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
66.インスリンペプチドが、desB30を含むヒトインスリン類似体である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
67.インスリンペプチドが、desB30ヒトインスリンである、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
68.インスリンペプチドが、desB30ヒトインスリンであり、
ペプチド延長部が、Z-Lys-Y-Lys-Pro-Glu-(Gly)
3-Ser-((Gly)
4-Ser)
p-#であり、
(式中、Zが、Gly、Glu、Pro、およびGlnから独立して選択される1~5個のアミノ酸残基からなり、
式中、Yが、Lys-Proとそれに続く、Gly、Glu、Pro、およびGlnから独立して選択される13~23個のアミノ酸残基からなり、
式中、pが、1、2、または3であり、
式中、#が、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のB鎖のN末端への連結点を示す)
式中、R1が、CF
3であり、R2およびR3が、水素であり、mが、2であり、nが、0である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
69.Zが、Gly、Glu、Pro、およびGlnから独立して選択される1~3個のアミノ酸残基からなる、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
70.Zが、Glyと任意選択でそれに続く、Gly、Glu、Pro、およびGlnから独立して選択される1~2個のアミノ酸残基からなる、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
71.Zが、Glyである、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
72.Yが、Lys-Proとそれに続く、Gly、Glu、Pro、およびGlnから独立して選択される20~25個のアミノ酸残基からなる、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
73.pが、2である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
74.インスリンペプチドが、インスリン受容体に結合する能力を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
75.インスリンペプチドが、インスリン受容体に結合し、インスリン受容体を活性化する能力を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
76.インスリン誘導体が、インスリン受容体に結合する能力を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
77.インスリン誘導体が、インスリン受容体を活性化する能力を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
78.インスリン誘導体が、20mMのグルコースおよびヒト血清アルブミン(HSA)の存在下において、グルコースが存在しないときより高い見かけのインスリン受容体親和性を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
79.インスリン誘導体が、20mMのグルコースおよびヒト血清アルブミン(HSA)の存在下において、グルコースが存在しないときより少なくとも20倍高い見かけのインスリン受容体親和性を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
80.インスリン誘導体が、20mMのグルコースおよびヒト血清アルブミン(HSA)の存在下において、グルコースが存在しないときより少なくとも30倍高い見かけのインスリン受容体親和性を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
81.インスリン誘導体が、20mMのグルコースおよびヒト血清アルブミン(HSA)の存在下において、グルコースが存在しないときより少なくとも40倍高い見かけのインスリン受容体親和性を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
82.インスリン誘導体が、20mMのグルコースおよびヒト血清アルブミン(HSA)の存在下において、グルコースが存在しないときより20倍~80倍高い見かけのインスリン受容体親和性を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
83.インスリン誘導体が、20mMのグルコースおよびヒト血清アルブミン(HSA)の存在下において、グルコースが存在しないときより30倍~60倍高い見かけのインスリン受容体親和性を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
84.インスリン誘導体が、20mMのグルコースおよびヒト血清アルブミン(HSA)の存在下において、グルコースが存在しないときより40倍~60倍高い見かけのインスリン受容体親和性を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
85.インスリン誘導体が、20mMのグルコースおよびヒト血清アルブミン(HSA)の存在下において、グルコースが存在しないときより50倍~60倍高い見かけのインスリン受容体親和性を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
86.インスリン受容体親和性が、実施例12に記載のアッセイによって決定される、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
87.インスリン誘導体が、LYDブタに皮下投与すると、少なくとも15時間のT1/2を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
88.インスリン誘導体が、LYDブタに皮下投与すると、少なくとも16時間のT1/2を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
89.インスリン誘導体が、LYDブタに皮下投与すると、少なくとも17時間のT1/2を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
90.インスリン誘導体が、LYDブタに皮下投与すると、少なくとも18時間のT1/2を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
91.インスリン誘導体が、LYDブタに皮下投与すると、少なくとも19時間のT1/2を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
92.インスリン誘導体が、LYDブタに皮下投与すると、15~25時間のT1/2を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
93.インスリン誘導体が、LYDブタに皮下投与すると、17~23時間のT1/2を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
94.インスリン誘導体が、LYDブタに皮下投与すると、18~23時間のT1/2を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
95.T1/2が、実施例16に記載の方法によって決定される、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
96.インスリン誘導体が、実施例4のインスリン誘導体である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
97.インスリン誘導体が、下記である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
【化6】
98.インスリン誘導体が、下記である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
【化7】
99.インスリン誘導体が、下記である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
【化8】
100.インスリン誘導体が、下記である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
【化9】
101.インスリン誘導体が、下記である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
【化10】
102.インスリン誘導体が、実施例4のインスリン誘導体である、インスリン誘導体。
103.インスリン誘導体が、下記である、インスリン誘導体。
【化11】
104.実施形態1~103のいずれか1つに記載のインスリン誘導体を含む、組成物。
105.医薬として使用するための、実施形態1~103のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
106.糖尿病、1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能障害、高血糖症、およびメタボリックシンドロームXまたはインスリン抵抗性症候群などのメタボリックシンドロームの予防または治療に使用するための、実施形態1~103のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
107.1型糖尿病および2型糖尿病を含む糖尿病の予防または治療に使用するための、実施形態1~103のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
108.糖尿病の予防または治療に使用するための、実施形態1~103のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
109.糖尿病の治療に使用するための、実施形態1~103のいずれか1つに記載のインスリン誘導体。
110.糖尿病、1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能障害、高血糖症、およびメタボリックシンドロームXまたはインスリン抵抗性症候群などのメタボリックシンドロームの治療または予防のための医薬の製造のための、実施形態1~103のいずれか1つに記載のインスリン誘導体または実施形態104に記載の組成物の使用。
111.1型糖尿病および2型糖尿病を含む糖尿病の治療または予防のための医薬の製造のための、実施形態1~103のいずれか1つに記載のインスリン誘導体または実施形態104に記載の組成物の使用。
112.糖尿病の治療または予防のための医薬の製造のための、実施形態1~103のいずれか1つに記載のインスリン誘導体または実施形態104に記載の組成物の使用。
113.糖尿病、1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能障害、高血糖症、およびメタボリックシンドロームXまたはインスリン抵抗性症候群などのメタボリックシンドロームの治療または予防のための方法であって、その治療または予防を必要とする対象者に、治療有効量の実施形態1~103のいずれか1つに記載のインスリン誘導体または実施形態104に記載の組成物を投与することを含む、方法。
114.1型糖尿病および2型糖尿病を含む糖尿病の治療または予防のための方法であって、その治療または予防を必要とする対象者に、治療有効量の実施形態1~103のいずれか1つに記載のインスリン誘導体または実施形態104に記載の組成物を投与することを含む、方法。
115.糖尿病の治療または予防のための方法であって、その治療または予防を必要とする対象者に、治療有効量の実施形態1~103のいずれか1つに記載のインスリン誘導体または実施形態104に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【実施例0075】
実施例におけるインスリンコンジュゲートは、アミノ酸に対する標準的な一文字略語を使用して描かれる。システイン残基の硫黄原子は、ジスルフィド架橋を図示するために具体的に描き出される。コンジュゲーションによって修飾される残基は、関連するアミノ酸において修飾が行われた正確な場所を示すために描き出される。ペプチド化学において標準的であるように、インスリンのN末端は、小型文字H-で示され、C末端は、小型文字-OHで示される。H-および-OHは、末端残基がコンジュゲーションによって修飾される場合には使用されず、その場合、残基は、上述のように拡大して描かれる。
材料および方法
略語リスト
【0076】
【0077】
インスリン変異体の調製
[実施例1]
[酵母におけるインスリン変異体の発現、およびALPなどでの形質転換]
インスリン類似体を、例えば、国際公開第2017/032798号に開示されるように、周知の技法を使用して酵母において発現させた。より具体的には、イオン交換捕捉によって単離し、以下に記載されるALPでの処理によって2鎖インスリン類似体に切断した単鎖前駆体として、インスリン類似体を発現させた。
【0078】
SPセファロースBB上での前駆体の捕捉:
酵母上清を、SPセファロースBBで充填されたカラム上に10~20CV/時間の流量で充填した。0.1Mのクエン酸、pH3.5による洗浄、および40% EtOHによる洗浄を行った。類似体を0.2M酢酸ナトリウムpH5.5/35% EtOHで溶出した。
【0079】
ALP消化:
単鎖前駆体の溶液をpH9に調整し、ALP酵素を1:100(w/w)添加した。UHPLCで反応を追跡した。RP-HPLC精製用に調製するために、ALP切断プールをpH2.5に調整し、2倍に希釈した。
【0080】
RP-HPLC精製:
精製をRP-HPLC C18によって以下のように実施した:
カラム:15um C18 50×250mm 200Å
緩衝液:
A:0.2%ギ酸、5% EtOH、
B:0.2%ギ酸、50% EtOH
勾配:20~55% B緩衝液。
勾配:20CV
流量 20CV/時間
充填g 約5g/L樹脂
画分をUHPLCによって分析し、プールし、凍結乾燥させた。
【0081】
実施例で調製および使用したインスリン類似体は以下である:
GKPE-(GEQP)4-GEQGGKPEGGGSGGGGSGGGGS-B1 desB30ヒトインスリン(配列番号1および配列番号5)
(GQEP)4-GQEGGKPGGGGSGGGGSGGGGS-B1 desB30ヒトインスリン(配列番号1および配列番号6)
(GQEP)24-GQEGGKPGGGGSGGGGSGGGGS-B1 desB30ヒトインスリン(配列番号1および配列番号7)
(GEQP)4-GEQGGKPEGGGSGGGGSGGGGS-B1 desB30ヒトインスリン(配列番号1および配列番号8)。
GKPE-(GEQP)4-GEQG-GKPEGGGSGGGGSGGGGS-B1 desB30ヒトインスリンは、GKPE-GEQPGEQPGEQPGEQP-GEQG-GKPEGGGSGGGGSGGGGS(B1Fに接続されたC末端S)でB1から延長されたdesB30ヒトインスリンを意味する。他の骨格についても同様である。
【0082】
構成ブロックの調製
[実施例2]
[(S)-4-((S)-2,3-ビス(1-ヒドロキシ-4-(トリフルオロメチル)-1,3-ジヒドロベンゾ[c][1,2]オキサボロール-6-カルボキサミド)プロパンアミド)-5-(tert-ブトキシ)-5-オキソペンタン酸
]
【化12】
NBS(34.0g、191mmol)を濃硫酸(400mL)中の3-トリフルオロメチル-4-メチル安息香酸(39.0g、191mmol)の溶液に添加し、反応混合物を室温で16時間撹拌した。次いで、反応混合物を氷水(2L)に注いだ。得られた沈殿物を濾過して取り除き、水(500mL)で洗浄し、酢酸エチル(400mL)中に溶解し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、蒸発させて、3-ブロモ-4-メチル-5-トリフルオロメチル安息香酸を白色固体として得た。収量:53.4g(98%)。
1H NMRスペクトル(300MHz,DMSO-d6,δH):13.71(bs,1H);8.35(d,J=0.4Hz,1H);8.15(d,J=0.9Hz,1H);2.56(s,3H)。
【0083】
濃硫酸(24mL)をメタノール(500mL)中の3-ブロモ-4-メチル-5-トリフルオロメチル安息香酸(35.0g、124mmol)の溶液に添加し、反応混合物を還流下で4時間、および室温で16時間撹拌した。次いで、反応混合物を減圧下で蒸発させ、ジエチルエーテル(250mL)中に溶解し、水(2×100mL)、ならびに炭酸カリウム(100mL)の飽和溶液および食塩水(100mL)の混合物で洗浄した。有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、蒸発させて、3-ブロモ-4-メチル-5-トリフルオロメチル安息香酸メチルを白色固体として得た。収量:35.3g(96%)。1H NMRスペクトル(300MHz,DMSO-d6,δH):8.36(d,J=1.1Hz,1H);8.13(d,J=1.1Hz,1H);3.90(s,3H);2.55(d,J=1.3Hz,3H)。
【0084】
水(300mL)中のNBS(31.7g、178mmol)および3-ブロモ-4-メチル-5-トリフルオロメチル安息香酸メチル(35.3g、119mmol)の懸濁液を、80℃において100Wの電球下で6時間撹拌した。反応混合物をジエチルエーテル(2×200mL)で抽出した。有機層を食塩水(150mL)で洗浄した。有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、蒸発させて、3-ブロモ-4-ブロモメチル-5-トリフルオロメチル安息香酸メチルを黄色固体として得た。収量:44.0g(98%)。1H NMRスペクトル(300MHz,CDCl3,δH):8.47(d,J=1.5Hz,1H);8.31(d,J=1.3Hz,1H);4.75(s,2H);3.98(s,3H)。
【0085】
MeCN(0.5L)中、3-ブロモ-4-ブロモメチル-5-トリフルオロメチル安息香酸メチル(44.0g、117mmol)および酢酸カリウム(22.9g、234mmol)の溶液を75℃で一晩撹拌した。懸濁液を濾紙を通して濾過し、蒸発させた。粗生成物をジクロロメタン中に溶解し、再び濾過した。蒸発により、4-(アセトキシメチル)-3-ブロモ-5-(トリフルオロメチル)安息香酸メチルを白色固体として得た。収量:37.9g(91%)。1H NMRスペクトル(300MHz,CDCl3,δH):8.49(d,J=1.3Hz,1H);8.34(d,J=1.3Hz,1H);5.37(s,2H);3.99(s,3H);2.11(s,3H)。
【0086】
脱水テトラヒドロフラン(500mL)中、4-(アセトキシメチル)-3-ブロモ-5-(トリフルオロメチル)安息香酸メチル(37.9g、107mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン(29.8g、117mmol)、酢酸カリウム(31.4g、294mmol)、および[1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(1.57g、1.92mmol)の溶液をアルゴン雰囲気下で13日間、75℃で撹拌した。次いで、反応混合物を室温まで冷却し、濾過し、蒸発させた。粗生成物を、シリカゲルカラム(Silicagel、0.063~0.200mm、溶離液:シクロヘキサン/酢酸エチル8:1)を通して濾過して、4-(アセトキシメチル)-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-5-(トリフルオロメチル)安息香酸メチルを得た。収量:31.1g(72%)。RF(SiO2、シクロヘキサン/酢酸エチル8:1):0.40。1H NMRスペクトル(300MHz,CDCl3,δH):8.65(s,1H);8.43(s,1H);5.48(s,2H);3.97(s,3H);2.05(s,3H);1.36(s,12H)。
【0087】
水(300mL)中の4-(アセトキシメチル)-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-5-(トリフルオロメチル)安息香酸メチル(31.0g、77.1mmol)および水酸化ナトリウム(15.4g、386mmol)の溶液を室温で3時間撹拌した。次いで、水(100mL)中の塩酸(35mL)の溶液を添加して、pHを1に低下させた。反応混合物を一晩撹拌した。沈殿物を濾過して取り除き、乾燥させて、1-ヒドロキシ-4-(トリフルオロメチル)-1,3-ジヒドロベンゾ[c][1,2]オキサボロール-6-カルボン酸を白色固体として得た。収量:16.6g(86%)。
1H NMRスペクトル(300MHz,DMSO-d6,δH):13.47(bs,1H);9.66(s,1H);8.62(s,1H);8.24(s,1H);5.22(s,2H)。
【0088】
MeCN(0.5L)中、ペンタフルオロフェノール(7.48g、40.7mmol)、1-ヒドロキシ-4-(トリフルオロメチル)-1,3-ジヒドロベンゾ[c][1,2]オキサボロール-6-カルボン酸(10.0mg、40.7mmol)、およびN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、8.37mg、40.7mmol)の溶液を室温で一晩撹拌した。反応混合物を濾過し、蒸発させ、MeCN中に溶解し、再濾過し、蒸発させて、ペンタフルオロフェニル1-ヒドロキシ-4-(トリフルオロメチル)-1,3-ジヒドロベンゾ[c][1,2]オキサボロール-6-カルボキシレートを白色固体として得た。
収量:16.7g(100%)。1H NMRスペクトル(300MHz,DMSO-d6,δH):9.79(s,1H);8.86(s,1H);8.46(s,1H);5.30(s,2H)。
【0089】
2-クロロトリチルクロリド樹脂100~200メッシュ1.5mmol/g(3、4.47g、6.71mmol)を脱水ジクロロメタン(30mL)中に30分間放置し膨潤させた。脱水ジクロロメタン(30mL)中の(2S)-5-(tert-ブトキシ)-2-{[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル]アミノ}-5-オキソペンタン酸(Fmoc-Glu-OtBu、1.90g、4.47mmol)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.96mL、17.0mmol)の溶液を樹脂に添加し、混合物を一晩振盪した。樹脂を濾過し、メタノール/ジクロロメタン混合物(4:1、2×5分、2×40mL)中のN,N-ジイソプロピルエチルアミン(1.56mL、8.95mmol)の溶液で処理した。次いで、樹脂をDMF(2×30mL)、ジクロロメタン(2×40mL)およびDMF(3×40mL)で洗浄した。DMF中の20%ピペリジン(1×5分、1×20分、2×40mL)で処理することにより、Fmoc基を除去した。樹脂をDMF(3×40mL)、2-プロパノール(2×40mL)およびジクロロメタン(3×40mL)で洗浄した。DMF(40mL)中、(S)-2,3-ビス((((9H-フルオレン-9-yl)メトキシ)カルボニル)アミノ)プロパン酸(Fmoc-Dap(Fmoc)-OH、3.68g、6.71mmol)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(HATU、2.55g、6.71mmol)、および2,4,6-トリメチルピリジン(1.60mL、12.1mmol)の溶液を樹脂に添加し、混合物を2時間振盪した。樹脂を濾過し、DMF(2×40mL)、ジクロロメタン(2×40mL)およびDMF(2×40mL)で洗浄した。DMF中の20%ピペリジン(1×5分、1×30分、2×40mL)で処理することにより、Fmoc基を除去した。樹脂をDMF(3×40mL)、2-プロパノール(2×40mL)およびジクロロメタン(3×40mL)で洗浄した。DMF(40mL)中のペンタフルオロフェニル1-ヒドロキシ-4-(トリフルオロメチル)-1,3-ジヒドロベンゾ[c][1,2]オキサボロール-6-カルボキシレート(5.53g、13.4mmol)およびトリエチルアミン(4.99mL、35.8mmol)の溶液を樹脂に添加し、混合物を一晩振盪した。樹脂を濾過し、DMF(6×40mL)およびジクロロメタン(10×50mL)で洗浄した。生成物を、2,2,2-トリフルオロエタノール(60mL)で16時間処理することによって樹脂から切断した。樹脂を濾過して取り除き、ジクロロメタン(4×50mL)で洗浄した。粗生成物(4)を真空中で乾燥させ、酢酸エチル(2×70mL)および1Mの硫酸水素カリウム水溶液(50mL)で抽出し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を蒸発させた。次いで、粗生成物をジエチルエーテル(20mL)中で粉砕して、(S)-4-((S)-2,3-ビス(1-ヒドロキシ-4-(トリフルオロメチル)-1,3-ジヒドロベンゾ[c][1,2]オキサボロール-6-カルボキサミド)プロパンアミド)-5-(tert-ブトキシ)-5-オキソペンタン酸をベージュ色固体として得た。収量:1.89g(57%)。1H NMRスペクトル(300MHz,AcOD-d4,δH):8.50(s,1H);8.46(s,1H);8.29(s,1H);8.26(s,1H);5.28(d,J=2.6Hz,4H);5.20(t,J=5.9Hz,1H);4.55(dd,J=8.5および5.2Hz,1H);4.08(dd,J=6.0および2.1Hz,2H);2.57-2.42(m,2H);2.34-2.16(m,1H);2.17-2.08(m,1H);1.47(s,9H)。LC-MS:746.3(M+H)+。
【0090】
[実施例3]
[(S)-3-(2,3-ビス(1-ヒドロキシ-4-(トリフルオロメチル)-1,3-ジヒドロベンゾ[c][1,2]オキサボロール-6-カルボキサミド)プロパンアミド)プロパン酸=N
アルファ,N
ベータ-ビス-(1-ヒドロキシ-4-(トリフルオロメチル)-1,3-ジヒドロベンゾ[c][1,2]オキサボロール-6-カルボキサミド)-L-ジアミノプロピオナント]-ベータ-アラニン]
【化13】
MeCN(400mL)および水(400mL)の混合物中、L-ジアミノプロパン酸塩酸塩((S)-2,3-ジアミノプロパン酸塩酸塩)(15.0g、107mmol)、二炭酸ジ-tert-ブチル(46.6g、214mmol)、および重炭酸カリウム(32.0g、320mmol)の溶液を一晩撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、pH=1が達成されるまで残渣を硫酸水素カリウムの飽和水溶液で酸性化した。反応混合物を酢酸エチル(3×200mL)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧下で除去して、(S)-2,3-ビス((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)プロパン酸をオフホワイト色固体として得た。収量:28.2g(87%)。
1H NMRスペクトル(300MHz,CDCl
3,δH):5.85(bs,1H);5.17(bs,1H);4.31(bs,1H);3.64-3.46(m,2H);1.46(s,18H)。
【0091】
ジクロロメタン(300mL)中、(S)-2,3-ビス((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)プロパン酸(27.9g、91.7mmol)、tert-ブチル3-アミノプロパノエート(16.7g、91.7mmol)、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC.HCl、21.1g、110mmol)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt、15.0g、110mmol)、およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(64.0mL、367mmol)の溶液を一晩撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣を酢酸エチル(600mL)中に溶解し、1Mの塩酸水溶液(4×300mL)および重炭酸ナトリウムの飽和水溶液(4×300mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧下で除去して、tert-ブチル(S)-3-(2,3-ビス((tert-ブトキシ-カルボニル)アミノ)プロパンアミド)プロパノエートをオフホワイト色固体として得た。収量:36.1g(91%)。
1H NMRスペクトル(300MHz,CDCl3,δH):7.01(bs,1H);5.75(bs,1H);5.14(bs,1H);4.15(bs,1H);3.57-3.39(m,4H);2.43(t,J=6.0Hz,2H);1.45(s,27H)。
【0092】
ジクロロメタン(50mL)中のtert-ブチル(S)-3-(2,3-ビス((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)プロパンアミド)プロパノエート(36.1g、83.7mmol)の溶液に、95%トリフルロ酢酸水溶液(300mL)を添加し、溶液を3時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をMeCN(3×300mL)で共蒸発させ、脱水ジエチルエーテル(300mL)中の1M塩化水素溶液で処理した。沈殿物を濾過して取り除き、MeCN(2×600mL)で粉砕して、(S)-3-((2-カルボキシエチル)アミノ)-3-オキソプロパン-1,2-ジアミニウムクロリドを白色粉末として得た。
収量:22.2g(100%)。1H NMRスペクトル(300MHz,D2O,δH):4.35(t,J=5.8Hz,1H);3.63-3.46(m,4H);2.67(t,J=6.6Hz,2H)。
【0093】
水(50mL)中の(S)-3-((2-カルボキシエチル)アミノ)-3-オキソプロパン-1,2-ジアミニウムクロリド(6.41g、24.3mmol)およびトリエチルアミン(33.8mmol、243mmol)の溶液に、1,4-ジオキサン(100mL)中のペンタフルオロフェニル1-ヒドロキシ-4-(トリフルオロメチル)-1,3-ジヒドロベンゾ[c][1,2]オキサボロール-6-カルボキシレート(実施例2からの、20.0g、48.6mmol)の溶液を添加し、溶液を一晩撹拌した。反応混合物を酢酸エチル(300mL)と1M硫酸水素カリウム水溶液(1500mL)との間で分割した。有機層を、1M硫酸水素カリウム水溶液(1×300mL)で洗浄し、溶媒を減圧下で除去した。残渣をジエチルエーテル(2×150mL)で粉砕し、濾過した。固体を70%水性MeCN(600mL)中に溶解し、凍結乾燥させて、(S)-3-(2,3-ビス(1-ヒドロキシ-4-(トリフルオロメチル)-1,3-ジヒドロベンゾ[c][1,2]オキサボロール-6-カルボキサミド)プロパンアミド)プロパン酸を白色粉末として得た。収量:12.1g(80%)。
1H NMRスペクトル(300MHz,AcOD-d4,δH):8.51(s,1H);8.47(s,1H);8.29(s,1H);8.27(s,1H);5.28(s,4H);5.15(t,J=6.1Hz,1H);4.15-3.99(m,2H);3.61(t,J=6.4Hz,2H);2.67(t,J=6.3Hz,2H)。LC-MS:632.0(M+H)+。
【0094】
インスリン誘導体の調製
実施例2の構成ブロックをテトラヒドロフラン中でNHS/DICで活性化し、tBu保護基をTFAで処理することによって除去した。次いで、TFAを、インスリンとのコンジュゲーションの前に蒸発させた。
【0095】
実施例3の構成ブロックを、インスリンとのコンジュゲーションの前に、MeCN中のNHS/DICを使用して活性化した。
【0096】
C18カラム、ならびに水中の0.1%TFAを緩衝液Aとして、およびMeCN中の0.1%TFAを緩衝液Bとして使用して、LCMS分析を実施した。
【0097】
ホウ素-インスリン誘導体のLCMSは、一般に、主ピークとして様々な脱水種、例えば、最大で「m」数のボロキソールを有するイオン化状態「n」に関する[M+nH-1×m M水]n+を示す。
【0098】
[実施例4]
【化14】
GKPE-(GEQP)
4-GEQGGKPEGGGSGGGGSGGGGS-B1 desB30ヒトインスリン(536mg、0.057mmol)を0.1MのNa
2HPO
4(5.6mL)およびDMSO(2.4mL)中に溶解し、1.0MのNaOH水溶液によってpHを10.8に調整した。実施例2の構成ブロック(147mg、0.19mmol)を上述のようにNHS活性化し、tBu脱保護し、次いで、DMF(0.5mL)中に溶解し、10分間にわたって所与のインスリン溶液に滴加し、一方で0.1MのNaOHを滴加することによってpHを10.8付近に保持した。LCMSは、所望の生成物の形成を示す。混合物をMeCNおよび水で希釈し、1MのHClを滴加することによってpHを3.8に調整した。生成物を、水中の0.1%TFAを緩衝液Aとして、およびMeCN中の0.1%TFAを緩衝液Bとして使用した、C18カラム上の逆相HPLC(RP-HPLC)によって精製した。生成物を凍結乾燥によって単離した。LCMS測定値1894.1[M+6H-5×水]
6+、計算値1894.1;1623.6[M+7H-5×水]
7+、計算値1623.6;1420.8[M+8H-5×水]
8+、計算値1420.8;および1263.0[M+9H-5×水]
9+、計算値1263.0、C
480H
666B
6F
18N
122O
169S
6に関する。
【0099】
[実施例5]
[(比較化合物)]
【化15】
実施例5のインスリン誘導体を、(GQEP)
4-GQEGGKPGGGGSGGGGSGGGGS-B1 desB30ヒトインスリンおよび実施例2の構成ブロックから、実施例4のインスリン誘導体と同様に調製した。生成物のLCMSの測定値2049.0[M+5H-3×水]
5+、計算値2049.0。
【0100】
[実施例6]
[(比較化合物)]
【化16】
実施例6のインスリン誘導体を、(GQEP)
24-GQEGGKPGGGGSGGGGSGGGGS-B1 desB30ヒトインスリンおよび実施例2の構成ブロックから、実施例4のインスリン誘導体と同様に調製した。生成物のLCMSの測定値1847.8[M+10H-3×水]
10+、計算値1847.8。
【0101】
[実施例7]
[(比較化合物)]
【化17】
実施例7のインスリン誘導体を、(GQEP)
4-GQEGGKPGGGGSGGGGSGGGGS-B1 desB30ヒトインスリンおよび実施例3の構成ブロックから、実施例4のインスリン誘導体と同様に調製した。生成物のLCMSの測定値2029.2[M+5H-2×水]
5+、計算値2029.4。
【0102】
[実施例8]
[(比較化合物)]
【化18】
実施例8のインスリン誘導体を、(GEQP)
4-GEQGGKPEGGGSGGGGSGGGGS-B1 desB30ヒトインスリンおよび実施例3の構成ブロックから、実施例4のインスリン誘導体と同様に調製した。生成物のLCMSの測定値2036.3[M+5H-4×水]
5+、計算値2036.6。
【0103】
[実施例9]
[(先行技術化合物)]
【化19】
ここで示されるインスリン誘導体は、国際公開第2020/201041号における実施例324の化合物である。これは先行技術化合物であるが、参照しやすいように構造をここに示す。
【0104】
[実施例10]
[先行技術化合物)]
【化20】
ここで示されるインスリン誘導体は、国際公開第2020/201041号における実施例280の化合物である。これは先行技術化合物であるが、参照しやすいように構造をここに示す。
【0105】
[実施例11]
[ALP切断速度]
インスリンが組み換え的に生成される場合、単鎖前駆体として発現され、これは後に、Achromobacter lyticusリシル特異的エンドプロテアーゼEC 3.4.21.50(ALP)またはトリプシンなどのプロテアーゼを使用して2鎖インスリンへと成熟される。ALPは、リシル-プロリン結合を含むリシル結合を特異的かつ独占的に切断する(Norioka & Sakiyama(1993)Lysine-specific serine protease from Achromobacter Lyticus:Its substrate specificity and comparison with trypsin.Methods in Protein Sequence Analysis,pp.101-106、Masaki et al.(1978)A New Proteolytic Enzyme from Achromobacter lyticus M497-I.Agricultural and Biological Chemistry,pp.1443-1445)。
【0106】
切断部位の左側にあるPn-P1および右側にあるP1’-Pn
’の周辺位置におけるアミノ酸残基(AA)は、酵素の切断能力に影響を与えることなく、非常に広範囲にわたって変化させることができる(Sakiyama & Masaki(1994)Lysyl Endopeptidase of Achromobacter lyticus.Methods in Enzymology,Vol 244,pp.126-137)。
【0107】
しかしながら、切断速度は、特定の隣接するアミノ酸によって影響を受ける。例えば、プロリンがP1’位に見られる場合、または1もしくは2個の塩基性アミノ酸がリシン残基に先行する場合、切断はゆっくりと進行する(Tsusanawa et al.(1987),Amino Acid Sequence if Thermostable Direct Hemolysin Produced by Vibrio parahaemolyticus,Journal of Biochemistry,vol.101,pp.111-121、Sakiyama & Masaki(1994),Lysyl Endopeptidase of Achromobacter lyticus.Methods in Enzymology,Vol 244,pp.126-137)。
【0108】
この実施例では、リシン(K)の後の第2の位置(P2’)にグルタミン酸(E)を有するALP切断速度に対する効果を決定した。参照インスリン前駆体は、P2’においてグリシン(G)を含有した。両方の場合において、切断部位(P1’)の後の第1の位置におけるアミノ酸は、プロリン(P)であった。
【0109】
ALP切断速度を決定するために、表1の2つのインスリン前駆体をALPで切断し、切断産物の形成をUPLC-MSによって経時的に追跡した(結果を表2および表3に示す)。
【表2】
【0110】
インスリン前駆体を、Saccharomyces cerevisiaeで生成した。簡潔に述べると、関連するインスリン前駆体をコードするDNA断片を、組み換えタンパク質をS.cerevisiaeの分泌経路に誘導するように設計されたベクターにクローニングした。構築物をS.cerevisiae株に変換し、続いて、Verduyn et al.(1992).Effect of Benzoic Acid on Metabolic Fluxes in Yeasts:A Continous-Culture on the Regulation of Respiration and Alcoholic Fermentation.Yeast,vol.8,pp.501-517によって記載されるように調製した(ただし、6%グルコースを添加した)定義されたグルコース培地で培養した。インスリン前駆体を含有する上清を、1MのNaHCO3(pH9.5)を使用してpH8.5に調整し、水で希釈して、150mgの前駆体/Lの最終濃度にした。ALPをpH調整した上清に0.1mg/mlの最終濃度まで添加し、0分、30分、60分、120分、240分、360分、および1440分の時点で試料を取り出すことによって、反応を経時的に追跡した。ALP反応を停止するために、上清を4MのCH3COOHにおいて1:1に希釈した。ALP切断試料中の切断産物を特定し、UPLC-MSを使用して定量化した。結果を表2および表3に示す。
【0111】
所望の切断生成物は、「オープンインスリン前駆体」と示され、ヒトインスリンのB29位におけるLysに対応するLys残基でのみ切断される(それぞれ、配列番号20および配列番号21の77位のLys残基(A77とも示される))。したがって、オープンインスリン前駆体1については、A鎖の配列は、SDDMRGIVEQCCTSICSLYQLENYCN(配列番号22)であり、B鎖の配列は、EEAEPRGKPEGEQPGEQPGEQPGEQPGEQGGKPEGGGSGGGGSGGGGSFVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTPK(配列番号23)である。「過剰切断インスリン前駆体」という用語は、AA77での切断に加えて、それぞれ配列番号20および配列番号21の8位(AA8とも示される)および/または32位(AA32とも示される)のLys残基でさらに切断された切断産物を示すために使用される。
【0112】
オープンインスリン前駆体は、リシン残基で精製および化学修飾され、次いで、それぞれB鎖およびA鎖上のN末端延長部のトリプシン切断によって完全に成熟され得る(この概念は、国際公開第2005/047508A1号に記載されている)。この実施例の特定のオープンインスリン前駆体1について、適切な修飾基で3個のリシン残基で共有結合的にコンジュゲートし、続いてトリプシンによってN末端延長部EEAEPRおよびSDDMRを切断することが、実施例4のインスリン誘導体をもたらすだろう。
【0113】
ALP切断速度は、P2’位のアミノ酸によって大きく影響を受けることが見出された。P2’がグリシン(G)である場合、切断は3個のリシン残基の全てで急速に進行し、AA77が完全に切断されるずっと前に、60分後に既に過剰切断が観察された(表3)。逆に、P2’位のAAがグルタミン酸(E)である場合、切断は非常にゆっくりと進行した。60分および120分の時点で、AA77は、ほぼ100%切断されるが、一方で残基AA8およびAA32での切断は検出できなかった(表2)。AA8およびAA32での切断は、240分よりも長い延長されたインキュベーション時間の後にのみ観察され、全ての場合において、限られた程度までしか観察されない。
【0114】
結論として、リシン残基AA8およびAA32におけるALP過剰切断による前駆体損失は、P1’-P2’位にPEを有することによって、同じ位置にPGを有する場合と比較して、著しく低減され得る。
【表3】
【表4】
【0115】
インスリン誘導体の機能データ
[実施例12]
[グルコースの非存在下または存在下でのヒトインスリン受容体(HIR-A)に対する親和性を決定するためのアッセイ]
インスリン受容体の調製
ヒトインスリン受容体A(HIR-A)を過剰発現させるベビーハムスター腎臓細胞(BHK)細胞を、50mMのHepes pH8.0、150mMのNaCl、1%のTriton X-100、2mMのEDTA、および10%のグリセロール中に溶解させた。除去された細胞溶解物を、小麦胚細胞凝集素(WGA)-アガロース(Triticum vulgaris-Agaroseからのレクチン、L1394、Sigma-Aldrich Steinheim、Germany)で90分間バッチ吸収した。20体積の50mMのHepes pH8.0、150mMのNaCl、および0.1%のTriton X-100で受容体を洗浄し、その後、50mMのHepes pH8.0、150mMのNaCl、0.1%のTriton X-100、0.5Mのn-アセチルグルコサミン、および10%のグリセロールで受容体を溶出した。全ての緩衝液は、Andersen et al.2017 PLos One 12に記載されるようなプロテアーゼカクテルComplete(Roche Diagnostic GmbH、Mannheim、Germany)を含有した。
【0116】
インスリン受容体シンチレーション近接アッセイ(SPA)結合アッセイ
SPA PVT抗マウスビーズ(Perkin Elmer)を、100mMのHepes pH7.4、100mMのNaCl、10mMのMgSO4、0.025%(v/v)のTween-20からなるSPA結合緩衝液中で希釈した。SPAビーズをIR特異性抗体83-7(Soos et al.1986 Biochem J.235,199-208)および可溶化半精製HIR-Aでインキュベートした。5000cpmの125I-(Tyr31)-インスリン(Novo Nordisk A/S)の10%結合を達成するように受容体濃度を調整した。冷たいリガンドの希釈系列を96ウェルOptiplateに添加し、続いてトレーサー(125I-インスリン、5000cpm/ウェル)および最後に受容体/SPA混合物を添加した。グルコース感受性を試験するために、結合実験を、20mMグルコースの非存在下または存在下で設定した。プレートを22℃で22.5時間穏やかに揺動させ、1000rpmで5分間遠心分離し、TopCounter(Perkin Elmer)で計数した。データ点を、4パラメータロジスティックモデルに適合させ、それにより、ヒトインスリン(同一プレート内の)と比較したインスリン誘導体の相対親和性を決定した。ヒトインスリンと比較したインスリン誘導体の相対親和性を決定し、0~20mMグルコースの見かけの相対親和性の増加は、各実験におけるインスリン誘導体のグルコース感受性を反映する。実験は、生理学的状態を模倣するために、1.5%のHSA(w/w)の非存在下および存在下で行われた。データを、表4a(HSAなし)および表4b(1.5%のHSA)に示す。
【0117】
本発明のインスリン誘導体は、HSAに結合し、それ故にHIR親和性がHSAの存在下で測定される場合、ある割合のインスリン誘導体は、HSAに結合され、ヒトインスリン受容体に結合できない。したがって、「見かけの親和性」という用語は、1.5%のHSAの存在下で測定された親和性を説明するために使用される。
【0118】
HIR(ヒトインスリン受容体)グルコース係数は、個々の実験において、20mMのグルコースでの見かけの相対HIR親和性を、グルコースの非存在下での相対親和性で割ったものとして決定された。いくつかの実験からの平均グルコース係数を表4aおよび表4bに提供する。表4aおよび表4bに提供されるグルコース係数は、個々の実験で決定された平均グルコース係数であり、したがって、グルコースの存在下での平均HIR親和性を、グルコースの非存在下での平均HIR親和性で割ることによって得られた値とはわずかに異なり得る。
【0119】
本発明のインスリン誘導体
表4aおよび表4bのデータは、アルブミン依存性グルコース感受性を示す。実施例4のインスリン誘導体の見かけのインスリン受容体親和性は、HSAの非存在下と比較して、HSAの存在下で測定された場合に減少する(表4aのデータを表4bのデータと比較されたい)。グルコースは、HSAへの実施例4のインスリン誘導体の結合を移動させることができ、それによって、グルコースが存在しない場合と比較して、20mMのグルコースおよび1.5%のHSAの存在下で見かけのHIRを増加させる(表4bのデータを参照された)。これは、グルコースが存在しない場合と比較して、相対インスリン受容体親和性が、20mMのグルコースの存在下でより高い場合に、1を上回るグルコース係数から容易に見ることができる。したがって、インスリン誘導体は、HSAの存在下で、グルコース感受性様式でインスリン受容体に結合し、したがって、インスリン誘導体は、糖尿病のグルコース感受性治療の可能性を有し、インスリン誘導体は、低い血糖レベルでは不活性であるか、または活性が低く、より高い血糖レベルではインスリン受容体に結合し、インスリン受容体を活性化する。表4bから分かるように、実施例4のインスリン誘導体は、1.5%のHSAの存在下で、51.9の高いグルコース係数を有する。
【表5】
【表6】
【0120】
比較のために含まれるインスリン誘導体
表5では、インスリンB鎖のN末端でのペプチド延長部を除いて同一である3つのインスリン誘導体についてのデータを示す。インスリン誘導体の構造は、それぞれ実施例5、6、および9に提供されており、ペプチド延長部の配列は、参照しやすいように表5に示される。これらのインスリン誘導体の修飾基は、実施例4のインスリン誘導体の修飾基と同一である。しかしながら、本発明の実施例4のインスリン誘導体と比較して、これらのインスリン誘導体は、2個の修飾基のみを有する。国際公開第2020/201041号からの実施例324の先行技術化合物(参照しやすいように実施例9に示す構造)は、インスリン骨格のB1位にペプチド延長部GKP(G4S)3を有する。ペプチド延長部を20個のアミノ酸残基でさらに長くすることにより(実施例5の比較インスリン誘導体におけるように)、グルコース係数が46.5から26.3に減少することが分かる。ペプチド延長部が、100個のアミノ酸残基で、実施例6の比較インスリン誘導体のように、より一層長くされる場合、グルコース係数は18.6により一層低減される。
【0121】
したがって、驚くべきことに、本発明の実施例4のインスリン誘導体は、実施例5のインスリン誘導体と類似の長さのペプチド延長部を有するにもかかわらず、51.9のグルコース係数を示す。
【表7】
【0122】
表6では、インスリンB鎖のN末端でのペプチド延長部を除いて同一である3つのインスリン誘導体についてのデータを示す。これらのインスリン誘導体の修飾基は、表5のインスリン誘導体の修飾基とは異なる。インスリン誘導体の構造は、それぞれ実施例7、8、および10に提供されており、ペプチド延長部の配列は、参照しやすいように表6に提供される。国際公開第2020/201041号からの実施例280の先行技術化合物(参照しやすいように実施例10に示す構造)は、インスリン骨格のB1位にペプチド延長部GKP(G
4S)
3を有する。実施例7および8の比較インスリン誘導体において、ペプチド延長部を20個のアミノ酸残基でさらに長くすることにより、グルコース係数がそれぞれ18.0から12.6および12.0に減少することが分かる。これは、国際公開第2020/201041号からの実施例324および280などの先行技術化合物においてペプチド延長部を長くすることが、グルコース係数の減少をもたらすという所見をさらに支持している。
【表8】
【0123】
[実施例13]
[ヒト初代肝細胞におけるグルコース感受性インスリン受容体リン酸化を決定するためのアッセイ。]
インスリンがインスリン受容体に結合すると、インスリン受容体の活性化が誘発され、これはチロシンリン酸化として測定され得る。これにより、下流シグナル伝達経路が誘発され、有糸分裂促進性応答および代謝応答がもたらされる。本発明のインスリン誘導体は、アルブミンに結合し、グルコースによって移動させられ得る。実施例4のインスリン誘導体のグルコース感受性は、低グルコース濃度および高グルコース濃度で測定され、それによって、実施例4のインスリン誘導体のグルコース依存性細胞応答を検出することができる。
【0124】
ドナーヒト付着可能肝細胞(cryo-plateable hepatocyte)を、1.5%ヒト血清アルブミン(HSA)の存在下で、増加する濃度のヒトインスリン(HI)または実施例4のインスリン誘導体と15分間インキュベートした。次いで、肝細胞を洗浄し、溶解し、インスリン受容体(p-Tyr1158)のリン酸化を、Novo Nordiskが開発した特異的インスリン受容体抗体D2(Orstrup et al.2019,Journal of Immunological Methods,Volume 465,February 2019,Pages 20-26)およびIR p-Tyr1158抗体(ThermoFischer、Cat.#44-802G)を用いたELISAを使用して明らかにした。
【0125】
インスリン受容体リン酸化方法:
BioIVTから得られたヒト肝細胞(Liverpool cryo-plateable hepatocytes,ref.#X008001-P lot#ACR;単一ドナー付着可能肝細胞#M00995P)を解凍し、製造業者の指示に従って、0.1mL/ウェルの、Torpedo抗生物質混合物”(Z99000)が補充されたInvitrogro CP培地中に、50.000細胞/ウェルの密度で播種した。4時間後、37℃で、一晩培養するために、5.5mMのグルコース、100単位/mlのペニシリン、および100mg/mlのストレプトマイシン、4mg/mlのデキサメタゾン、0.1%のウシ胎仔血清(FCS)、および1nMのヒトインスリン(HI)を補充したM199培地に培地を交換する。播種の翌日、ヒト肝細胞を、1.5%のヒト血清アルブミン(HSA)、および3mMまたは20mMのD-グルコースのいずれか、ならびに増加する濃度のHIまたは実施例4のインスリン誘導体のいずれかを補充した基礎培養培地(M199 w.oフェノールレッド、tween 80、およびアデノシン-5-三リン酸)に対応するアッセイ培地中で、37℃で15分間インキュベートした。刺激後、肝細胞を氷冷PBS中で2回洗浄し、次いで細胞を溶解緩衝液の添加により4℃で30分間可溶化した。続いて、インスリン受容体(p-Tyr1158)のリン酸化を、IR特異性抗体IR(D2(Orstrup et al.(2019)J.Immunological Methods 465.20-26)、バッチ0268-0000-0945-1B)、および検出pIR:pTyr1158抗体(ThermoFischer、Cat.#44-802G)を用いた免疫測定法ELISAを使用して定量化した。次いで、SpectraMax_1_190、Molecular Devicesを使用して、450nmでの吸光度を読み取った。
【0126】
実施例4のインスリン誘導体は、ヒト初代肝細胞における濃度依存的な様式で、より高いEC
50ではあるがHIと同じ最大レベルまで、IR(pIR)のリン酸化を刺激した。実施例4のインスリン誘導体のEC
50は、pIR刺激の濃度応答曲線の左シフト(n=6)によって明らかにされるように、3mM(58.1nM)のD-グルコース濃度よりも20mM(30.8nM)で低いことが見出された(
図1に示す)。次いで、実施例4のインスリン誘導体の3mMのD-グルコースでのEC
50と20mMのD-グルコースmMでのEC
50との比(IR pTyrヒト肝細胞1.5% HSA 3対20mM D-グルコース係数)を計算し、1.89(P値=0.019)であることが見出された(表7)。これは、実施例4のインスリン誘導体が、グルコースのより低いレベルよりもグルコースのより高いレベルでより高い活性を有し、したがって、実施例4のインスリン誘導体がグルコース感受性インスリン活性を示すことを示している。
【表9】
【0127】
実施例14:細胞における炭水化物感受性グルコース取り込みを決定するためのアッセイ(ラット脂質生成アッセイ)
インスリンがインスリン受容体に結合すると、下流シグナル伝達経路の活性化が誘発される。インスリンシグナル伝達の1つの代謝エンドポイントは脂質代謝であり、インスリンの存在下で、細胞による3H-グルコース取り込みが刺激され、脂質に組み込まれるため、脂質生成アッセイを使用してエンドポイント読み出しを測定した。
【0128】
実施例4のインスリン誘導体は、アルブミンに結合し、グルコースによって移動されることができ、グルコース感受性を与える。L-グルコースおよびD-グルコースの両方はアルブミンからの誘導体を移動させることができるが、L-グルコースは、代謝不活性であり、代謝に影響を与えることなく培地中のグルコース濃度を変化させるために使用される。20mMおよび3mMのL-グルコース濃度での実施例4のインスリン誘導体の効力(ヒトインスリンに対する)の倍率変化を決定した。
【0129】
ラット脂質生成アッセイ(rFFC)
Sprague Dawleyラットからの副睾丸脂肪パッドを、激しい振盪下で1~1.5時間、36.5℃でHepes Krebs Ringer緩衝液中のコラゲナーゼで分解した。懸濁液を2層のガーゼを通して濾過した。相を室温に5分間静置することによって分離し、脂肪細胞が上相に集まることを可能にした。下相を注射器で除去した。脂肪細胞を20mlのHepes Krebs Ringer緩衝液で2回洗浄した。細胞を、1.5%のHSA、0.5mMのグルコース、0.1μCi/ウェルのグルコース(D-[3-
3H]グルコース(20.0Ci/mmol)Perkin Elmer)、および3mMまたは20mMのL-グルコースを含有するHepes Krebs Ringer緩衝液中、96ウェルプレートに移した。濃度応答曲線を生成するための増加量の本発明のヒトインスリンまたはインスリン誘導体を添加し、36.5℃で2時間インキュベートした。100μLのMicroscient E(cat#6013661 Perkin Elmer)を添加することによって反応を停止した。Top counterで計数する前に、プレートを3時間静止させた。インスリン誘導体の3mMのL-グルコースでのEC
50と20mMのL-グルコースmMでのEC
50との比(rFFC 1.5% HSA 3対20mM L-グルコース係数)を決定した(表8を参照されたい)。
【表10】
【0130】
代表的な濃度応答曲線(n=1)を
図2に示す。実施例4のインスリン誘導体のEC
50は、脂質生成の濃度応答曲線の左シフトによって明らかにされるように、3mMのL-グルコース濃度よりも20mMで低いことが見出された。表8のデータは、実施例4のインスリン誘導体が、低いL-グルコース(3mM)と比較して、より高いレベルのL-グルコース(20mM)の存在下で、より高いレベルの脂質生成(すなわち、より多くのグルコース輸送)をもたらすことを示している。これは、実施例4のインスリン誘導体が、グルコースのより低いレベルよりもグルコースのより高いレベルでより高い活性を有し、したがって、実施例4のインスリン誘導体がグルコース感受性インスリン活性を示すことを示している。
【0131】
実施例15:ラット初代肝細胞におけるグリコーゲン蓄積を決定するためのアッセイ。
インスリンがインスリン受容体に結合すると、下流シグナル伝達経路の活性化が誘発され、インスリン感受性組織における代謝プロセスの活性化につながる。他の機能の中でも、インスリンは、肝臓におけるグリコーゲン蓄積を誘発する。したがって、20mMのグルコースおよび0.1%のヒト血清アルブミン(HSA)の存在下で、24時間、初代ラット肝細胞におけるヒトインスリンまたは実施例4のインスリン誘導体の用量濃度の増加に応じて、グリコーゲンレベルの推定をエンドポイントとして使用した。細胞グリコーゲン含有量の定量化は、550nmでの吸光度読み取りを用いた過ヨウ素酸シッフ試薬(PAS)アッセイの原則に基づいて、定量的比色アッセイを使用して実施された。
【0132】
グリコーゲン蓄積(PASアッセイ)法:
ラット肝細胞(Lonza、RSCP01)を解凍し、4%のウシ胎仔血清(FCS)および1nMのヒトインスリン(HI)を補充した基礎M199培養培地(5.5mMのグルコース、100単位/mlのペニシリン、および100mg/mlのストレプトマイシン、ならびに4mg/mlのデカドロン)中のコラーゲン被覆96ウェルプレート中に、50.000細胞/ウェルの密度で37℃で播種する。約4時間後、培地を、一晩培養するために、0.1%のFCSおよび1nMのHIを補充した基礎M199培養培地と交換した。単離の翌日、ラット肝細胞を、100u/mlのペニシリン、100mg/mlのストレプトマイシン、4mg/mlのデキサメタゾン、0.1%のヒト血清アルブミン(HSA)、14.5mMのグルコース、および増加する濃度のHIまたは実施例4の誘導体のいずれかを補充した基礎M199培地に対応するアッセイ培地中で、37℃で24時間インキュベートした。刺激後、肝細胞を氷冷PBS中で3回洗浄し、液体窒素で急速凍結し、後の分析のために-80℃で貯蔵した。グリコーゲンレベルを測定するために、次いでプレートを解凍し、細胞を1%のTriton X100に可溶化した。続いて、7%の酢酸中の0.1%の過ヨウ素酸の溶液として調製された100μlの過ヨウ素酸を、光から保護して、37℃、1.5時間でプレートに添加して、グリコーゲン中のヒドロキシル基を酸化させた。次いで、85μlのシッフ試薬を5分間添加して、酸化部分と反応させ、プレートを室温でさらに10分間インキュベートして、発色させた。次いで、550nmでの吸光度を読み取った(spectraMax_1_190、Molecular Devices)。
【表11】
【0133】
データは、実施例4のインスリン誘導体が、濃度依存的様式で、20mMのグルコース濃度での全用量応答曲線で、ラット初代肝細胞におけるグリコーゲン蓄積を誘発したことを示している(
図3)。最大応答は、ヒトインスリンと比較してわずかに減少した(Emax=86%、n=5)。インビトロEC50は、実施例4のインスリン誘導体については20.4nM、20mMのグルコースでのヒトインスリン(n=5)については2.8nMであると計算され、ヒトインスリンに対して効力の低下を示唆した(表9)。
【0134】
実施例16:LYDブタにおける薬物動態研究
LYDブタにおける薬物動態研究
インスリン誘導体を、およそ70~110kgの体重のメスのランドレース・ヨークシャー・デュロック(LYD)ブタに静脈内(iv)または皮下(sc)投与した。iv用量は、0.3nmol/kgであり、sc用量は、1または2nmol/kgのいずれかであった。最大72時間までの選択された時点で血液を採取し、血漿を調製し、インスリン誘導体濃度について分析した(以下を参照されたい)。ブタを一晩絶食させ、インスリン誘導体の投与の8時間後に給餌した。
【0135】
個々の動物からの血漿濃度-時間プロファイルを、WinNonlin Professional(Certara、CA、USA)または特注のRshinyアプリケーション(Rstudio.com、Boston、MA、US)を使用した非コンパートメント薬物動態分析(NCA)によって分析し、WinNonlinに対して検証した。
【0136】
血漿試料中のインスリン類似体濃度の定量化
血漿試料を、商標AlphaLISA(Perkin Elmer、Waltham、Massachusetts、USA)でも知られている発光酸素チャネリング免疫測定法(LOCI)を使用して、投与されたインスリン誘導体のレベルについて分析した。アッセイ原理は、要するに次のとおりである:目的の被分析物に特異的な抗体をアクセプタービーズにコンジュゲートする。被分析物にも特異的である二次抗体をビオチン化する。次いで、2つの抗体コンジュゲートを、被分析物を含有する血漿試料と一緒にインキュベートし、免疫複合体を形成する。次に、ストレプトアビジンドナービーズを添加し、ビオチン化抗体に結合する。680nmでのドナービーズの照明によって、周囲酸素が励起されて、一重項酸素を形成する。アクセプタービーズが近接している場合、一重項酸素からアクセプタービーズへのエネルギー伝達が発生し、これが次に615nmで光を放射する。放射光の信号強度は、被分析物の濃度に比例する。既知の濃度の被分析物を混ぜた血漿試料を使用して、較正曲線を生成する。次いで、5パラメータロジスティック回帰を使用して、未知の試料濃度を較正曲線から計算する。全てのインスリン誘導体を、Novo Nordisk社内の抗体を用いて試験した。結果を表10に示す。
【表12】
【0137】
表10のPKデータは、本発明の実施例4のインスリン誘導体が、国際公開第2020/201041号の実施例324および280の先行技術化合物よりも長い半減期を有することを示している。
【0138】
本発明の特定の特徴が本明細書に例証および記載されているが、ここで、多くの修正、代用、変更、および均等物が当業者に想到されるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨の範囲内に含まれる全てのこうした修正および変更を網羅するよう意図されていることを理解されたい。